説明

複数の有効物質を送達するための開口を備えた拡張医療装置

【課題】治療部位に複数の有効物質を送達するための開口を備えた非取外し式の拡張可能な装置を提供すること。
【解決手段】拡張可能な医療装置であって、第1の直径を有する円柱から第2の直径を有する円柱に拡張可能な実質的に円柱の装置を形成する複数の細長いストラットを含む。複数の異なる有効物質を、組織に送達するためにストラット内の異なる開口内に充填することができる。再狭窄などの症状を治療する場合、再狭窄に関与する異なる生物学的作用に対処するために装置の異なる開口内に異なる有効物質を充填し、治療する各生物学的作用に一致する異なる放出動態で異なる有効物質を送達する。例えば、パクリタキセルとピメクロリムスを、再狭窄を治療するために異なる放出動態で送達する。再狭窄および急性心筋梗塞などの異なる疾患に対処するために、同じ薬物送達装置から異なる有効物質を送達することができる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、組織を支持する医療装置に関し、詳細には、器官を支持して開存性を維持するために生きた動物やヒトの体内の管腔に植え込まれる、治療部位に複数の有効物質を送達するための開口を備えた、非取外し式の拡張可能な装置に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
過去に、永久的な、または生体分解性の装置が、体内の通路内に植え込んで、この通路の開存性を維持するために開発されてきた。このような装置は、通常は経皮的に導入され、所望の場所に位置付けられるまで管腔内を移送される。次に、これらの装置は、例えば、これらの装置の内部に位置づけられたマンドレルやバルーンの拡張などによって、機械的に拡張されるか、または蓄えられたエネルギーを放出することにより、体内で作動時に自己拡張する。いったん管腔内で拡張されると、ステントと呼ばれるこれらの装置は、体組織内に封じ込められ(encapsulated)、永久インプラントとして残る。
【0003】
既知のステントのデザインの例として、モノフィラメントワイヤコイルステント(米国特許第4,969,458号)、溶接金属ケージ(米国特許第4,733,665号および同第4,776,337号)、および周囲に軸方向スロットが形成された最も一般的な薄肉金属シリンダ(米国特許第4,733,665号、同第4,739,762号、および同第4,776,337号)を挙げることができる。ステントに用いられる既知の構造材料の例として、ポリマーや有機繊維、ならびにステンレス鋼、金、銀、タンタル、チタン、およびニチノールなどの形状記憶合金などの生体適合性金属を挙げることができる。
【0004】
参照して開示内容の全てを本明細書に組み入れる米国特許第6,241,762号に、従来のステントのいくつかの性能の欠陥を改善する非柱状ステントが開示されている。加えて、この特許の好適な実施形態は、変形しない大きなストラットやリンク要素を備えたステントを提供する。ストラットおよびリンク要素は、これらのストラット、リンク要素、または装置全体の機械特性を損なうことなく、孔を備えることができる。さらに、このような孔は、ステントの表面コーティングを必要とすることなく、装置の植え込み部位に様々な有効物質を送達するための、保護された大きなレザバーの役割を果たすことができる。
【0005】
ステントを用いた有効物質の局所送達によって対処できる多くの問題の中で、最も重要な問題の1つが再狭窄である。再狭窄は、血管形成術やステントの植え込みなどの血管の処置の後に起こることがある重大な合併症である。単純に定義すると、再狭窄は、細胞外基質の堆積および血管平滑筋細胞の増殖によって血管の管腔の直径が縮小する創傷治癒過程であって、最終的には管腔の狭窄または再閉塞さえもが起こりうる。改善された外科技術、装置、および薬物の導入にもかかわらず、金属がむき出しのステントの全体の再狭窄率は、血管形成術の6ヶ月〜12ヶ月以内で、25%〜50%の範囲と報告されている。この症状を治療するために、別の血管再生手術が必要なる場合が多く、患者の外傷およびリスクが増大する。
【0006】
様々な有効物質の表面コーティングを備えた従来のステントは、再狭窄の軽減に有望な結果を示した。例えば、米国特許第5,716,981号に、ポリマー担体およびパクリタキセル(癌性腫瘍の治療に一般的に用いられている良く知られた化合物)を含む組成物で表面コーティングされたステントが開示されている。この特許は、吹付けおよび浸漬などのステントの表面をコーティングするための方法、ならびにコーティング自体の所望の特徴を詳細に開示している。この所望の特徴は、ステントを平滑かつ均一にコーティングすること、抗血管形成因子の均一で予測できる持続的な放出を可能にすることである。しかしながら、このような表面コーティングは、有効物質の放出動態に対する実際の制御が殆どできない。このようなコーティングは、通常は5μm〜8μmの極めて薄い厚みにする必要がある。ステントの表面積が、比較的大きいため、有効物質の全量が短い拡散経路で周囲組織に放出される。得られる累積薬物放出プロフィールは、所望の「均一で持続的な放出」すなわち線形の放出ではなく、初めに大量に放出され、以降は漸近線に迅速に達するという特徴を有する。
【0007】
表面コーティングの厚みの増大により、薬物放出の良好な制御が可能になることと、薬物を多量に受容することができることを含め、薬物放出動態が改善される有用な効果が得られる。しかしながら、コーティングの厚みが増大すると、ステントの壁部の全体の厚みが増大する。これは、植え込みの際の脈管管腔の外傷の拡大、植え込み後に管腔の流れ横断面の減少、および拡張および植え込みの際の機械的な故障または損傷に対するコーティングの脆さの増大を含め、様々な理由から望ましくない。コーティングの厚みは、有効物質の放出動態に影響を及ぼすいくつかの因子の1つであり、厚みに対する制限により、達成できる放出率および継続時間などの範囲が制限される。
【0008】
また、表面コーティングは、ステントからの複数の薬物の送達を大きく制限する。例えば、複数の薬物が表面コーティングから放出されるとすると、放出率、送達期間、および他の放出特性を個々に制御することができない。しかしながら、再狭窄は、複数の生物学的なプロセスが関与するため、このような異なる生物学的なプロセスに作用するように選択された薬物の組合せによって最も効率的に治療することができる。
【0009】
チャオ・ウェイ・ワン(Chao-Wei Hwang)らによる論文(名称:「生理学的な移送力が、ステントを用いた送達の薬物分布を決定する(Physiological Transport Forces Govern Drug Distribution for Stent-Based Delivery)」)に記載されている近年の研究が、薬物溶出ステントの空間的および時期的な薬物分布特性と細胞の薬物送達機構との間の重要な相互関係を明らかにした。機械性能および構造特性を改善するために、ステントのデザインが、ステントのストラットの円周方向および長手方向の分布に固有の不均一性を有するより複雑なジオメトリに発達した。この傾向の例として、体内の管腔内に配置されるとほぼダイヤモンド型または六角形に拡張する一般的な市販のステントを挙げることができる。両方のステントは、表面コーティングの形態で有効物質を送達するために用いられる。研究から、ストラットの直近の管腔組織部分が、「ダイヤモンド」型ストラットセルの中心部に位置する組織部分などの離れた組織部分よりも大幅に濃度の高い薬物を受け取ることが分かった。注目に値すべきは、管腔壁内の薬物のこの濃度勾配が、現在最も効果的な抗増殖剤であることが証明されているパクリキタセルやラパマイシンなどの疎水性有効物質に対して長期に亘って高く維持されることである。局所薬物濃度および勾配が、生物学的作用に密接に関連しているため、有効物質の供給源(ステントのストラット)の初めの空間的な分布が、有効性にとって重要である。
【0010】
有効物質の空間的な分布が最適以下であるのに加えて、表面コーティングステントには別の問題が存在する。装置のコーティングに頻繁に用いられる固定される基質ポリマー担体は通常、約30%の有効物質をコーティング内に永久に維持する。このような有効物質は、細胞傷害性が高い場合が多いため、慢性炎症、後発血栓症、および脈管壁の遅いまたは不完全な治癒などの亜急性および慢性の問題が起こりうる。加えて、担体ポリマー自体が、脈管壁の組織に対して炎症性である場合が多い。他方、ステント表面に生体分解性ポリマー担体を使用すると、このポリマー担体が分解した後、脈管壁の表面とステントとの間に「付着不良」が起きたり、空隙が形成されたりすることがある。この空隙により、ステントと隣接組織との間で差動運動が可能となる。この結果として起こる問題として、微小磨耗や炎症、ステントのずれ(drift)、および脈管壁の再内皮化不全を挙げることができる。
【0011】
初期のヒトの臨床トライアルにより、第1世代の薬物送達装置に別の問題が存在しうることが示唆された。薬物コーティングステントが移植されてから6ヶ月〜18ヶ月の時点での臨床トライアル患者の追跡検査が、動脈壁に対するステントのストラットの付着不良や縁起因性再狭窄(edge effect restenosis)がかなりの数の患者で起こりうることを示唆している。縁起因性再狭窄は、ステントの近位縁および遠位縁を越えてすぐの部分で生じて、ステントの縁の周りを経て内部(管腔)空間に延びるため、血管再生術が頻繁に必要になる。
【0012】
別の大きな問題は、ステントの拡張により、その上側のポリマーコーティングに圧力がかかって、このコーティングが剥がれる、割れる、または裂けて薬物放出動態に影響が出るか、または他の悪影響が出ることである。このような悪影響は、大きな直径に拡張した時に第1世代の薬物コーティングステントで観察されるため、直径の大きい動脈にこのようなステントを使用することができない。さらに、アテローム性動脈硬化血管において、このようなコーティングステントが拡張すると、このポリマーコーティングに円周方向の剪断力がかかり、コーティングがその下側のステント表面から分離することがある。このような分離は、同様に、コーティング断片の塞栓によって脈管が閉塞することを含め、悪影響を与えることがある。
【0013】
〔発明の概要〕
従来技術の問題点を鑑みて、ステントの有効肉厚を増大させることなく、かつステントの機械拡張特性に悪影響を及ぼさずに、有効物質を含む表面コーティングに関連した様々な問題を回避するとともに、脈管の管腔の外傷部位に比較的多量の有効物質を送達できるステントを提供するのが有利であろう。
【0014】
さらに、2種類以上の有効物質の所望の空間的な分布を実現するために、異なる有効物質が異なる開口内に充填された組織支持装置を提供するのが有利であろう。
【0015】
さらに、同じ装置から2つの異なる有効物質の所望の異なる放出動態を実現するために、異なる有効物質が異なる開口内に充填された組織支持装置を提供することが有利であろう。
【0016】
本発明の一態様に従えば、有効物質を送達するための拡張可能な医療装置は、第1の直径を有する円柱から第2の直径を有する円柱に拡張可能な実質的に円柱の装置と、この実質的に円柱の装置に形成された、組織に送達するための第1の有効物質を含む第1の複数の開口であって、この第1の有効物質が、再狭窄の第1の生物学的プロセスを標的とするために第1の放出曲線に従って送達されるように調製されている、第1の複数の開口と、この実質的に円柱の装置に形成された、組織に送達するための第2の有効物質を含む第2の複数の開口と、を含む。第2の有効物質は、再狭窄の第2の生物学的プロセスを標的とするために第1の放出曲線とは異なる第2の放出曲線に従って送達されるように調製されている。
【0017】
本発明の別の態様に従えば、体内の管腔の再狭窄を低減するための方法は、組織を支持するために体内の管腔内に組織支持装置を位置付けるステップであって、この組織支持装置が、その開口内に第1及び第2の有効物質を含む、ステップと、2つの異なる作用機構によって再狭窄を治療するために組織支持装置に近接した組織に第1および第2の有効物質を送達するステップと、を含む。
【0018】
本発明のさらに別の態様に従えば、有効物質を送達するための拡張可能な医療装置は、第1の直径を有する円柱から第2の直径を有する円柱に拡張可能な実質的に円柱の装置と、この実質的に円柱の装置に形成された、組織に送達するための第1の有効物質を含む第1の複数の開口であって、この第1の有効物質が、再狭窄を標的とするための第1の放出曲線によって送達されるように調製されている、第1の複数の開口と、この実質的に円柱の装置に形成された、組織に送達するための第2の有効物質を含む第2の複数の開口と、を含む。第2の有効物質は、再狭窄以外の疾患を標的とするために第1の放出曲線とは異なる第2の放出曲線に従って送達されるように調製されている。
【0019】
〔詳細な説明〕
同様の構成要素には同様の参照符号が付された添付の図面に例示されている好適な実施形態を参照して、本発明を以降に詳細に説明する。
【0020】
図1は、拡張可能な医療装置を例示している。この拡張可能な医療装置は、拡張可能な医療装置によって組織に送達するための有効物質を含む複数の孔を備えている。図1に示されている拡張可能な医療装置10は、チューブ材料からカットされ、円柱状の拡張可能な装置に形成されている。拡張可能な医療装置10は、複数のブリッジ要素14によって互いに連結された複数の円柱部分12を含む。ブリッジ要素14により、脈管の蛇行した通路を介して配置部位に送る際にこの組織支持装置が軸方向に曲がり、支持する管腔の曲率に一致させる必要がある場合にこの装置が軸方向に曲がることができる。各円柱チューブ12は、延性ヒンジ20および周方向ストラット22によって互いに連結された細長いストラット18のネットワークによって形成されている。医療装置10の拡張の際に、延性ヒンジ20は変形するが、ストラット18は変形しない。拡張可能な医療装置の一例の詳細が、参照して開示内容の全てを本明細書に組み入れる米国特許第6,241,762号に開示されている。
【0021】
図1に示されているように、細長いストラット18および周方向ストラット22は開口30を含む。これらの開口30の幾つかは、拡張可能な医療装置が植え込まれる管腔に送達するための有効物質を含む。加えて、ブリッジ要素14などの装置10の他の部分も、図5を参照して後述するように開口を含むことができる。開口30は、装置10の拡張の際に開口が変形して、有効物質が、破砕される、飛び出る、または他の損傷を受けるリスクなしに送達されるように、ストラット18などの装置10の変形しない部分に形成されるのが好ましい。有効物質を開口30内に充填する方法の一例の詳細が、参照して開示内容の全てを本明細書に組み入れる2001年9月7日出願の米国特許出願第09/948,987号に開示されている。
【0022】
図示されている本発明の実施形態は、有限要素解析および他の技術を用いて改善して、開口30内への有効物質の配置を最適にすることができる。基本的に、開口30の形状および場所を変更して、間隙の容量を最大にするとともに、延性ヒンジ20に対するストラットの比較的高い強度および剛性を維持することができる。本発明の好適な一実施形態に従えば、開口は、少なくとも5×10-6平方インチ(約3.2×10-3mm2)、好ましくは少なくとも7×10-6平方インチ(約4.5×10-3mm2)の面積を有する。一般に、開口は、その約50%〜約95%に有効物質が充填される。
【0023】
定義
ここで用いる語「作用物質(agent)」または「有効物質(beneficial agent)」は、可能な限り最も広い解釈を有するものであり、あらゆる治療薬や薬物、並びに障壁層、担体層、治療層、または保護層などの不活性物質を含むとして用いる。
【0024】
ここで用いる語「薬物(drug)」と「治療薬(therapeutic agent)」は、通常は有益な所望の効果を得るために生物の体内の腔内に送達されるあらゆる治療的に活性な物質を指すために交換可能に用いられる。有効物質は、1または複数の薬物または治療薬を含むことができる。
【0025】
本発明は、抗悪性腫瘍薬、抗血管形成薬(anti-angiogenic agents)、血管形成因子、抗炎症剤、免疫抑制剤、抗狭窄剤(antirestenotics)、抗血小板薬、血管拡張薬、抗血栓薬、パクリタキセルやラパマイシンなどの抗増殖剤、およびヘパリンなどの抗トロンビン剤の送達に特に適している。
【0026】
語「侵食」は、基材(medium)または基質(matrix)の成分が、化学プロセスまたは物理プロセスによって生体吸収および/または分解および/または破壊されるプロセスを意味する。例えば、生体分解性ポリマー基質では、侵食は、ポリマー鎖の切断または加水分解によって起こる場合があり、この加水分解により、基質および懸濁した有効物質の溶解性が上昇する。
【0027】
語「侵食率」は、単位時間当たりの単位面積で通常は報告される侵食プロセスにかかる時間の指標である。
【0028】
語「基質」または「生体吸収性基質」は、患者に移植されても基質の拒絶につながる悪い反応を誘導しない基材または材料を指すために交換可能に用いられる。基質は、通常はそれ自体がいかなる治療反応も起こさないが、基質は、ここで画定する有効物質を含むまたは取り囲むことができる。基質はまた、単純に支持、構造的一体性、または構造障壁を提供することもできる基材である。基質は、重合体、非重合体、疎水性、親水性、親油性、および両親媒性などとすることができる。
【0029】
語「開口」は、貫通開口および凹部の両方を含む。
【0030】
語「薬学的に許容可能な」は、ホストすなわち患者に対して非毒性であり、有効物質の安定性を維持するのに適当であり、かつ標的細胞または組織への有効物質の送達を可能にする特徴を指す。
【0031】
語「ポリマー」は、モノマーと呼ばれる2つ以上の反復単位の化学結合から形成された分子を指す。したがって、語「ポリマー」には、例えば、二量体、三量体、およびオリゴマーが含まれうる。ポリマーは、合成、天然、または半合成とすることができる。好適な形態では、語「ポリマー」は通常、分子量が約3000以上、好ましくは約10,000以上で、約10,000,000未満、好ましくは約1,000,000未満、より好ましくは約200,000未満の分子を指す。ポリマーの例として、限定するものではないが、ポリ乳酸(PLLAまたはDLPLA)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(polylactic-co-glycolic acid)(PLGA)、ポリ乳酸‐コ‐カプロラクトン(polylactic acid-co-caprolactone)などのポリ‐α‐ヒドロキシ酸エステル;ポリ(ブロック‐エチレンオキシド‐ブロック‐ラクチド‐コ‐グリコリド)ポリマー(poly (block-ethylene oxide-block-lactide-co-glycolide) polymers)(PEO‐ブロック‐PLGAおよびPEO‐ブロック‐PLGA‐ブロック‐PEO);ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキシド、ポリ(ブロック‐エチレンオキシド‐ブロック‐プロピレンオキシド‐ブロック‐エチレンオキシド)(poly (block-ethylene oxide-block- propylene oxide-block-ethylene oxide));ポリビニルピロリドン;ポリオルトエステル;ポリサッカリド、およびポリヒアルロン酸、ポリ(グルコース)、ポリアルギン酸、キチン、キトサン、キトサン誘導体、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチレンセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリンおよびβ‐シクロデキストリンスルホブチルエーテル(beta-cyclodextrin sulfobutyl ethers)などの置換シクロデキストリン、などのポリサッカリド誘導体;ポリリシン、ポリグルタミン酸、アルブミンなどのポリペプチドおよびタンパク質;ポリ無水物;ポリヒドロキシバレレート、ポリヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxy alkonoates)を挙げることができる。
【0032】
方向性送達に対して用いる語「主に」は、血管に供給される治療薬の総量の約50%を超える量が主方向に供給されることを意味する。
【0033】
ここに開示する本発明の様々な実施形態は、拡張可能な装置の異なる開口内に異なる有効物質を充填するか、または一部の開口に有効物質を充填して他の開口に有効物質を充填しないようにすることができる。拡張可能な医療装置の具体的な構造は、本発明から逸脱することなく変更することができる。各開口は個々に充填されるため、各開口内の有効物質に個々の化学組成および薬物動態特性を付与することができる。
【0034】
拡張可能な医療装置の異なる開口内に異なる有効物質を充填する例、または一部の開口内に有効物質を充填して他の開口内に有効物質を充填しない例は、縁起因性再狭窄に対する対処である。上記したように、現行世代のコーティングされたステントは、縁起因性再狭窄、すなわちステントの縁を越えてすぐの部分で生じて、ステントの周りを経て裏側の腔内空間内に延びる再狭窄の大きな問題を有する。
【0035】
第1世代の薬物送達ステントにおける縁起因性再狭窄の原因は、現在はよく分かっていない。この原因は、血管形成術および/またはステントの植え込みによる組織の傷害範囲が、パクリタキセルやラパマイシンなどの現行の有効物質の拡散範囲(組織で明確に分離される)を越えて延在するためであると考えられる。同様の現象が、ステントの縁における低線量の放射線が外傷の存在下では刺激になることが分かっている放射線治療で観察された。この場合、損傷を受けていない組織が照射されるまで長く照射することにより、問題を解決できる。薬物送達ステントの場合、ステントの縁に沿って高用量すなわち高濃度の有効物質を配置すること、組織を介して容易に拡散する異なる有効物質をステントの縁に配置すること、または装置の縁に異なる有効物質または有効物質の組合せを配置することにより、縁起因性再狭窄の問題を解消する助けとなる。
【0036】
図1は、縁起因性再狭窄を治療および低減するために装置の端部の開口30a内に有効物質が設けられた「ホット端部」を備えた拡張可能な医療装置10を例示している。この装置の中心部分における残りの開口30bは、空(図示)にするか、または低濃度の有効物質を含むことができる。
【0037】
縁起因性再狭窄の他のメカニズムが、特定の薬物または薬物の組合せの細胞毒性に関係しうる。このようなメカニズムには、表皮瘢痕組織形成で見られるのに類似した組織の物理的または機械的収縮が含まれる。ステントは、それ自体の境界内での収縮応答は防止するが、その縁の越えた位置の収縮応答は防止できない。さらに、後者の形態の再狭窄のメカニズムは、薬物自体や動脈壁に存在しなくなっても明らかな、動脈壁への持続的または局所的な薬物送達の後遺症に関連しうる。すなわち、再狭窄は、薬物および/または薬物担体に関連した有害傷害の形態に応答しうる。この場合、装置の縁からある種の物質を排除するのが有効であろう。
【0038】
図2は、複数の開口230を有する拡張可能な医療装置200の代替の実施形態を例示している。装置の中心部分における開口230bは、有効物質が充填され、装置の縁の開口230aは空のままである。図2の装置は、「クール端部」を有するとして言及する。
【0039】
縁起因性再狭窄に低減に用いるのに加えて、図2の拡張可能な医療装置200は、初めのステント処置を追加のステントで補足しなければならない場合、図1の拡張可能な医療装置10または他の薬物送達ステントとともに用いることができる。例えば、場合によっては、「ホット端部」を備えた図1の装置10または薬物の分布が均一な装置を適切に移植できないことがある。医師が、装置が管腔の十分な部分を覆っていないと判断したら、補足的な装置を、既存の装置の一端に追加し、既存の装置に僅かに重なるように配置することができる。補足的な装置を植え込む場合、図2の装置200を用い、この「クール端部」によって、装置10と装置200の重なっている部分における有効物質が2倍投与されるのを防止することができる。
【0040】
図3は、拡張可能な医療装置300の異なる孔に異なる有効物質が位置付けられた本発明の別の代替の実施形態を例示している。第1の有効物質が、装置の端部の孔330aに充填され、第2の有効物質が、装置の中心部分の孔330bに充填されている。有効物質は、異なる薬物、濃度が異なる同じ薬物、または形態が異なる同じ薬物を含むことができる。図3の実施形態を用いて、「ホット端部」または「クール端部」のいずれかを備えた拡張可能な医療装置300を提供することができる。
【0041】
好ましくは、第1の有効物質を含む孔330aを備えた装置300の各端部は、その縁から少なくとも1つ、最大約15の孔まで延びている。この距離は、拡張していない装置の縁から約0.005インチ(0.127mm)〜約0.1インチ(2.54mm)に相当する。第1の有効物質を含む装置300の縁からの距離は、ブリッジ要素間に画定されているほぼ1つのセクションであるのが好ましい。
【0042】
異なる薬物を含む異なる有効物質を、ステントの異なる開口内に充填することができる。こうすることより、あらゆる所望の送達パターンで1つのステントから2種類以上の有効物質を送達することができる。別法では、濃度が異なる同じ薬物を含む異なる有効物質を、異なる開口に充填することができる。このため、非均一な装置の構造で組織に薬物を均一に送達することができる。
【0043】
ここに開示する装置に充填される2種類以上の異なる有効物質は、(1)異なる薬物、(2)濃度が異なる同じ薬物、(3)放出動態が異なる、すなわち基質の侵食速度が異なる同じ薬物、または(4)形態の異なる同じ薬物を含むことができる。放出動態が異なる同じ薬物を含む異なる有効物質製剤の例では、異なる形状の溶出プロフィールを得るために異なる担体を用いることができる。形態が異なる同じ薬物の一部の例は、様々な親水性または親油性を有する薬物の形態を含む。
【0044】
図3の装置300の一例では、装置の端部における孔330aには、高親油性の薬物を含む第1の有効物質が充填され、装置の中心部分における孔330bには、低親油性の薬物を含む第2の有効物質が充填されている。「ホット端部」における第1の高親油性有効物質は、周囲組織により容易に拡散することができ、縁起因性再狭窄が低減される。
【0045】
装置300は、有効物質が第1の物質から第2の物質に替わる急な移行ラインを有することができる。例えば、装置の端部の0.05インチ(1.27mm)内の全ての開口は、第1の有効物質を含むことができ、残りの開口は、第2の有効物質を含むことができる。別法では、装置は、第1の有効物質と第2の有効物質との間に緩やかな移行部を有することができる。例えば、開口内の薬物の濃度を、装置の端部に向かって徐々に上昇(または低下)させることができる。別の例では、装置の端部に向かって、開口内の第1の薬物の量は増大するが、開口内の第2の薬物の量は減少する。
【0046】
図4は、異なる有効物質が1つ置きまたは散在パターンで装置の異なる開口430a、430b内に位置付けられている拡張可能な医療装置400の別の代替の実施形態を例示している。このようにして、複数の有効物質を、装置によって支持された全領域または一部の領域の組織に送達することができる。この実施形態は、有効物質間の相互作用または安定性の問題によって複数の物質の組合せを1つの組成物として装置内に充填できない場合、複数の有効物質の送達に有用である。
【0047】
組織の様々な画定された領域で様々な薬物濃度を達成するために異なる開口内に異なる有効物質を使用するのに加えて、拡張可能な医療装置が拡張した構造で均一でない開口の分布を有する場合は、有効物質をより均一に空間的送達するために、異なる開口内に異なる有効物質を使用することができる。
【0048】
散在して、または交互に、異なる開口内に異なる薬物を充填することにより、同じポリマー/薬物基質組成物内で組み合わせた場合に送達できない2つの異なる薬物を送達することができる。例えば、薬物同士が、不所望に相互作用することがある。別法では、2種類の薬物が、基質を生成するための同じポリマーに適合しない、またはポリマー/薬物基質を開口内に送達するための同じ溶媒に適合しないことがある。
【0049】
さらに、散在して配置された異なる開口内に異なる薬物を有する図4の実施形態は、同じ医療装置すなわちステントから全く異なる所望の放出動態を有する異なる薬物を送達することができ、かつ個々の作用物質の作用および特性の機構によって放出動態を最適にすることができる。例えば、作用物質の水溶性が、その作用物質のポリマーまたは他の基質からの放出に大きく影響する。高い水溶性の化合物は、通常はポリマー基質から極めて迅速に送達されるが、親油性物質は、同じ基質からより長い期間に亘って送達される。したがって、親水性物質と親油性物質が医療装置から2種類の薬物の組合せとして送達される場合、同じポリマー基質から送達されるこれら2種類の物質に対して所望の放出プロフィールを得るのが困難である。
【0050】
図4のシステムは、同じステントから親水性薬物と親油性薬物とを容易に送達することを可能にする。さらに、図4のシステムは、2つの異なる放出動態および/または投与期間で2種類の有効物質を送達することを可能にする。2種類の薬物の初めの24時間の初めの放出、初めの24時間後の放出率、全投与期間、およびあらゆる他の放出特性を個別に制御することができる。例えば、第1の有効物質の放出率は、初めの24時間に送達される薬物の少なくとも40%(好ましくは少なくとも50%)となるように調製し、第2の有効物質は、初めの24時間に送達される薬物の20%未満(好ましくは10%未満)となるように調製することができる。第1の有効物質の投与期間は、約3週間以下(好ましくは2週間以下)とし、第2の有効物質の投与期間を、約4週間以上とすることができる。
【0051】
閉塞処置後の再狭窄すなわち再発生は、生物学的プロセスの組合せまたは一連の生物学的プロセスが関係する。このようなプロセスには、血小板およびマクロファージの活性化が含まれる。サイトカインおよび成長因子が、平滑筋細胞の増殖に寄与し、遺伝子およびメタロプロテイナーゼのアップレギュレーションが、細胞増殖、細胞外基質のリモデリング、および平滑筋細胞の遊走につながる。薬物の組合せによってこのような複数のプロセスに対処する薬物治療は、最も上手くいっている再狭窄防止治療であろう。本発明は、このような上手くいっている組合せ薬物治療を実現するための手段を提供する。
【0052】
後述する例は、異なる孔で異なる薬物を放出できることから恩恵を受けたある種の組合せ薬物システムを例示する。散在または交互する孔から2種類の薬物を送達するための有利なシステムの一例は、抗増殖剤または抗遊走剤と組み合わせた抗炎症剤または免疫抑制剤の送達である。このような物質の他の組合せを用いて、再狭窄に関与する複数の生物学的プロセスを標的にすることもできる。抗炎症剤は、血管形成術およびステント術に対する血管の初期の炎症反応を緩和し、初めは速い速度で送達され、次に、炎症反応を刺激するマクロファージの発達のピークに一致する約2週間の間、遅い速度で送達される。抗増殖剤は、平滑筋細胞の遊走および増殖を低減するためにより長い期間に亘って相対的に等しい速度で送達される。
【0053】
後述する例に加えて、以下に示す表は、医療装置の異なる開口内に薬物を配置して実現できる有用な2種類の薬物の組合せ治療を例示している。
【表1】

【0054】
異なる開口内に薬物を配置することにより、薬物の疎水性または疎油性にかかわらず、特定の物質に対して放出動態を調節することができる。実質的に一定または線形の放出率で親油性薬物を送達するための幾つかの構成の例が、参照してその開示内容の全てを本明細書に組み入れる2004年12月23日公開の国際公開第04/110302号に開示されている。親水性薬物の送達のための幾つかの構成の例が、参照してその開示内容の全てを本明細書に組み入れる2004年5月27日公開の国際公開題04/043510号に開示されている。親水性薬物の例として、CDA、グリベック(Gleevec)、VIP、インスリン、およびアポA‐Iミラノ(ApoA-I milano)を挙げることができる。親油性薬物の例として、パクリタキセル、エポチロンD(Epothilone D)、ラパマイシン、ピメクロリムス(pimecrolimus)、PKC‐412、およびデキサメタゾン(Dexamethasone)を挙げることができる。ファルグリタザル(Farglitazar)は、部分的に親油性であり、部分的に親水性である。
【0055】
再狭窄に関与する様々な生物学的プロセスに対処するために複数の薬物を送達するのに加えて、本発明は、異なる疾患を治療するために2種類の薬物を同じステントから送達することができる。例えば、ステントは、再狭窄の治療のために一組の開口からパクリタキセルまたはリムス族薬物(limus drug)などの抗増殖剤を送達するとともに、急性心筋梗塞の治療のために別の開口からインスリンなどの心筋温存薬(myocardial preservative drug)を送達することができる。
【0056】
多くの既知の拡張可能な装置、および図5に例示されている装置では、装置500の有効範囲が、装置のブリッジ要素514よりも円柱チューブ部分512で大きい。この有効範囲は、装置が配置される管腔の面積に対する装置の表面積の比率と定義する。有効範囲が変化する装置を用いて、装置の開口内に受容された有効物質を送達する場合、円柱チューブ部分512に近接した組織に送達される有効物質の濃度は、ブリッジ要素514に近接した組織に送達される有効物質よりも高い。有効物質の濃度が不均一に送達されることになる、この装置の構造における長手方向のばらつきと装置の有効範囲の他のばらつきに対処するために、装置の各部分における開口で有効物質の濃度を様々にして、組織全体において有効物質の送達をより均一にすることができる。図5の実施形態の場合は、チューブ部分512の開口530aは、ブリッジ要素514の開口530bよりも薬物濃度が低い有効物質を含む。有効物質送達の均一性は、薬物濃度、開口の直径や形状、開口内の有効物質の量(すなわち、開口に充填されるパーセンテージ)、基質材料、または薬物の形態を変更することを含め、様々な方法で実現することができる。
【0057】
異なる開口に異なる有効物質を用いるための別の適用例は、脈管の分岐部で使用するように構成された、図6に示されている拡張可能な医療装置600である。分岐装置は、脈管の側枝に血液が流れるように配置された側面開口610を含む。分岐装置の一例が、参照して開示内容の全てを本明細書に組み入れる米国特許第6,293,967号に開示されている。分岐装置600は、装置の残りの部分となるビーム部材の通常パターンを中断する側面開口610を含む。分岐の周りの領域が、再狭窄にとって特に問題の領域であるため、必要な部分に高濃度の薬物を送達するために、装置600の側面開口610を取り囲む領域に設けられた開口630aの抗増殖剤の濃度を高くすることができる。側面開口から離れた領域の残りの開口630bは、抗増殖剤の濃度が低い有効物質を含む。異なる薬物を含む異なる有効物質または濃度が高い同じ薬物を含む異なる有効物質によって、分岐開口を取り囲む領域に多量の抗増殖剤を送達することができる。
【0058】
脈管壁の治療のために拡張可能な医療装置の壁側に異なる有効物質を送達するのに加えて、拡張可能な医療装置の管腔側にも有効物質を送達することができる。装置の管腔側から血流に送達される薬物は、装置の近位端または装置の遠位端に配置することができる。
【0059】
拡張可能な医療装置の異なる開口内に異なる有効物質を充填するための方法は、浸漬やコーティングなどの既知の技術および既知の圧電マイクロジェット技術を含むことができる。マイクロインジェクション装置をコンピュータ制御して、既知の要領で拡張可能な医療装置の正確な位置に2種類以上の液体有効物質を正確な量、送達することができる。例えば、2物質噴射装置は、2種類の物質を同時または連続的に開口内に送達することができる。有効物質を拡張可能な医療装置の貫通開口内に充填する場合は、充填の際に貫通開口の管腔側を弾性的なマンドレルで塞いで、有効物質を溶媒などとともに液体の形態で送達することができる。有効物質は、手動注入装置によっても充填することができる。
【0060】
例1
図7は、2薬物ステント700を例示している。この2薬物ステント700は、再狭窄の生物学的プロセスに一致するように特別にプログラムされた2種類の薬物の個々の放出動態を実現するために、ステントの異なる開口から送達される抗炎症剤および抗増殖剤を有する。この例によると、2薬物ステントは、第1のセットの開口710内の抗炎症剤ピメクロリムス(pimecrolimus)および第2のセットの開口720内の抗増殖剤パクリタキセルを含む。これらの各物質は、図8に示されている放出動態を達成するために設計された特殊なインレー構造でステントの孔の中の基質材料中に供給されている。これらの各薬物は、再狭窄の治療のために主に壁側に送達される。
【0061】
図7に示されているように、ピメクロリムスは、孔の管腔側の障壁712を用いてステントの壁側に指向的に送達するためにステント内に供給されている。障壁712は、生体分解性ポリマーから形成されている。ピメクロリムスは、2つの段階を有する放出動態が得られるように孔の中に充填されている。ピメクロリムスの放出の第1の段階は、10%のポリマーに対して約90%の薬物などの薬物濃度が高いピメクロリムスと生体分解性ポリマー(PLGA)を含む迅速放出製剤を有する基質の壁側の領域716によって実現される。放出の第2の段階は、50%のポリマーに対して約50%の薬物の比率でピメクロリムスと生体分解性ポリマー(PLGA)を有する基質の中心領域714によって実現される。図8のグラフから分かるように、ピメクロリムス放出の第1の段階は、初めの約24時間に充填薬物の約50%を送達する。放出の第2の段階は、約2週間かけて残りの50%を送達する。この放出は、血管形成術およびステント術の後の炎症反応の進行に一致するように特別にプログラムされている。2つの段階からなる放出を達成するために2つの領域間の薬物濃度を変えるのに加えて、または代替として、異なるポリマー、または異なるコモノマー比率の同じポリマーを、2つの薬物の異なる領域に用いて、2つの異なる放出速度を達成することができる。
【0062】
図8に示されているように、パクリタキセルを、初めの約24時間後に実質的に線形の放出動態が得られるように開口720内に充填する。パクリタキセルの開口720は、孔の管腔側における薬物が最小の主としてポリマーのベース領域722と、濃度勾配が得られるようにパクリタキセルおよびポリマー(PLGA)が設けられた中心領域724と、パクリタキセルの放出を制御する主としてポリマーのキャップ領域726を含む3つの領域が形成されるように充填されている。パクリタキセルは、初めの日の初めの放出で全充填薬物の約5%〜15%が放出され、次に約20日間〜90日間に亘って実質的に線形に放出される。濃度勾配を持つ孔の中のパクリタキセルの構成の別の例が、上記した国際公開第04/110302号に開示されている。
【0063】
図7は、見やすくするために薬物領域、障壁領域、およびキャップ領域を開口内の明確な領域として示している。これらの領域は、不明確であり、異なる領域を混合することによって形成されることを理解されたい。したがって、障壁層は、薬物を含まない主としてポリマーであるが、使用する製造工程によっては、次の領域の少量の薬物が障壁領域内に取り込まれてもよい。
【0064】
送達される薬物の量は、ステントの大きさによって異なる。3mm×6mmのステントの場合、ピメクロリムスの量は、約50μg〜約300μg、好ましくは約100μg〜約200μgである。このステントから送達されるパクリタキセルの量は、約5μg〜約50μg、好ましくは約10μg〜約30μgである。一例では、約200μgのピメクロリムスおよび約20μgのパクリタキセルが送達される。薬物は、ステントの孔に1つ置きに充填することができる。しかしながら、2つの薬物の間の送達される量に大きい差がある場合には、パクリタキセルをステントの4つの開口の各3番目の開口に充填するのが望ましいであろう。別法では、少量の薬物(パクリタキセル)を送達するための開口は、多量の薬物を送達するための開口よりも小さく形成することができる。
【0065】
ポリマー/薬物インレーは、参照してその開示内容の全てを本明細書に組み入れる2004年4月1日公開の国際公開第04/026182号に開示されているようなコンピュータ制御圧電注入技術によって形成される。圧電インジェクタを用いて、まず第1の物質のインレーを形成し、次に第2の物質のインレーを形成する。別法では、国際公開第04/02182号のシステムは、同時に2種類の物質を分配するために2つの圧電ディスペンサを備えることができる。
【0066】
例2
この例によると、2薬物ステントは、第1のセットの開口710内のグリベック(Gleevec)とともに第2のセットの開口720内の抗増殖剤パクリタキセルを含む。各物質は、図8に示されている放出動態を実現するように設計された特殊なインレー構造でステントの孔の中の基質材料中に含められている。
【0067】
グリベックは、1日目の初めの速い放出と1週間〜2週間に亘る徐放を含む2段階放出で送達される。グリベックの放出の第1の段階は、初めの約24時間の内に充填した薬物の約50%を送達する。放出の第2の段階は、約1週間〜2週間に亘って残りの50%を送達する。パクリタキセルは、図8に示され、例1で上記したように、初めの約24時間の後、放出動態が実質的に線形となるように開口720内に充填されている。
【0068】
送達される薬物の量は、ステントの大きさによって異なる。3mm×6mmのステントの場合、グリベックの量は、約200μg〜約500μg、好ましくは約300μg〜約400μgである。このステントから送達されるパクリタキセルの量は、約5μg〜約50μg、好ましくは約10μg〜約30μgである。例1と同様に、薬物は、ステントの1つ置きの孔、または1つ置きではない散在パターンで充填することができる。ポリマー/薬物インレーは、例1で記載したように形成されている。
【0069】
例3
この例によると、2薬物ステントは、第1のセットの開口内のPKC‐412(細胞増殖調節物質)とともに第2のセットの開口内の抗増殖剤パクリタキセルを含む。各物質は、後述する放出動態を実現するために設計された特殊なインレー構造でステントの孔の中の基質材料中に含められている。
【0070】
PKC‐412は、初めの約24時間の後には実質的に一定の放出率で、約4週間〜16週間、好ましくは約6週間〜12週間の期間に亘る放出により送達される。パクリタキセルは、初めの約24時間後、約4週間〜16週間、好ましくは約6週間〜約12週間の期間に亘って放出動態が実質的に線形になるように開口内に充填されている。
【0071】
送達される薬物の量は、ステントの大きさによって異なる。3mm×6mmのステントの場合、PKC‐412の量は、約100μg〜約400μg、好ましくは約150μg〜約250μgである。このステントから送達されるパクリタキセルの量は、約5μg〜約50μg、好ましくは約10μg〜約30μgである。例1と同様に、薬物は、ステントの1つ置きの孔、または1つ置きではない散在パターンで充填することができる。ポリマー/薬物インレーは、例1で記載したように形成されている。
【0072】
治療薬
本発明は、パクリタキセル、ラパマイシン、エベロリムス(everolimus)、クラドリビン(cladribine)(CdA)、およびこれらの誘導体、ならびに他の細胞毒、細胞増殖抑制剤および微小管安定剤を含む再狭窄防止剤の送達に関する。主に再狭窄防止剤をここに開示したが、本発明は、他の薬物を単独で、または再狭窄防止剤と組み合わせて送達するために用いることができる。主に管腔側、壁側、またはこれらの両方から、単独または組み合わせて送達できる本発明に用いることができる治療薬の一部の例として、限定するものではないが、抗増殖剤、抗トロンビン剤、ラパマイシンを含む免疫抑制剤、抗脂質薬(antilipid agents)、抗炎症薬、抗新生物薬、抗血小板薬、血管形成薬(angiogenic agents)、抗血管形成薬(anti-angiogenic agents)、ビタミン、抗有糸分裂剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、NOドナー、エストラジオール、抗硬化薬、および血管作用薬、内皮成長因子、エストロゲン、β遮断薬、AZ遮断薬、ホルモン、スタチン、インスリン成長因子、酸化防止剤、膜安定剤(membrane stabilizing agents)、カルシウム拮抗薬、レテノイド(retenoid)、ビバリルジン(bivalirudin)、フェノキソジオール(phenoxodiol)、エトポシド、チクロピジン(ticlopidine)、ジピリダモール、およびトラピジル(trapidil)単独、またはここに記載したあらゆる治療薬との組合せを挙げることができる。治療薬には、ペプチド、リポタンパク質、ポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、脂質、タンパク薬物、複合タンパク薬物、酵素、オリゴヌクレオチドおよびその誘導体、リボザイム、他の遺伝物質、細胞、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モノクローナル抗体、血小板、プリオン、ウイルス、細菌、内皮細胞などの真核細胞、幹細胞、ACE阻害剤、単球/マクロファージまたは血管平滑筋細胞を挙げることができる。治療薬は、ホストに投与されると所望の薬物に代謝するプロドラックとすることもできる。加えて、治療薬は、治療層に組み入れる前に、マイクロカプセル、微小球、微小泡、リポソーム、ニオゾーム(niosomes)、エマルジョン、分散などとして予め調剤することができる。治療薬は、光や超音波エネルギーなどのある種の他のエネルギーの形態、または全身投与できる他の循環分子によって活性化される放射性アイソトープまたは放射性物質とすることもできる。治療薬は、脈管形成、再狭窄、細胞増殖、血栓、血小板凝集、凝固、および血管拡張の調節を含め、多数の機能を果たすことができる。
【0073】
抗炎症剤の例として、限定するものではないが、ジクロフェナク(Diclofenac)などのアリル酢酸誘導体、ナプロキセン(Naproxen)などのアリルプロピオン酸誘導体、およびジフニルサル(Diflunisal)などのサリチル酸誘導体などの非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)を挙げることができる。抗炎症剤には、ピメクロリムス(Pimecrolimus)や、デキサメタゾン、アスピリン、プレドニゾロン、およびトリアムシノロンなどの糖質コルチコイド(ステロイド)、ピルフェニドン(pirfenidone)、メクロフェナム酸、トラニラスト(tranilast)、および非ステロイド性抗炎症剤も含まれる。抗炎症剤は、抗増殖剤とともに用いて抗増殖剤に対する組織の反応を緩和することができる。
【0074】
このような作用物質の例として、抗リンパ球物質;抗マクロファージ物質;免疫調節剤;シクロオキシゲナーゼ阻害剤;酸化防止剤;コレステロール降下剤;スタチンおよびアンジオテンシン変換酵素(statins and angiotens in converting enzyme (ACE));線維素溶解薬;内因性凝固カスケードの阻害剤;高抗リポタンパク血症薬;2‐クロロデオキシアデノシン(2‐CdAまたはクラドリビン(cladribine))などの代謝拮抗物質;シロリムス、エベロリムス(everolimus)、タクロリムス、エトポシド、およびミトキサントロンを含む免疫抑制剤;2‐CdA、IL‐I阻害剤、抗CD116/CD18モノクローナル抗体、VCAMやICAMに対するモノクローナル抗体、亜鉛プロトポルフィリンなどの抗白血球物質;酸化窒素を上昇させる薬物などの抗マクロファージ物質;グリタゾン(glitazones)を含むインスリンに対する細胞感作物質;高密度リポタンパク質(HDL)およびその誘導体;およびリパター(lipator)、ロベスタチン(lovestatin)、パラスタチン(pranastatin)、アトルバスタチン(atorvastatin)、シンバスタチン、およびスタチン誘導体などのHDLの合成ファクシミリ(synthetic facsimile);アデノシンなどの血管拡張剤およびジピリダモール;一酸化窒素ドナー;プロスタグランジンおよびその誘導体;抗TNF化合物;β遮断薬、ACE阻害剤、およびカルシウムチャネル遮断薬を含む高血圧薬;血管作用性腸管ポリペプチド(VIP)を含む血管作用物質;インスリン;グリタゾン(glitazones)、PParアゴニスト(P par agonists)、およびメトホルミンを含むインスリンに対する細胞感作物質;プロテインキナーゼ;レステンNG(resten-NG)を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド;チロフィバン(tirofiban)、エプチフィバチド(eptifibatide)、およびアブシキマブ(abciximab)を含む抗血小板物質;VIP、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、アポA‐Iミラノ、アムロジピン、ニコランジル(nicorandil)、シロスタキソン(cilostaxone)、およびチエノピリジン(thienopyridine)を含む心保護剤(cardio protectants);COX‐IおよびCOX‐II阻害剤を含むシクロオキシゲナーゼ阻害剤;およびオムニパトリラット(omnipatrilat)を含むグリコール代謝(glycolitic metabolism)を増大させるペプチド阻害剤も含まれる。炎症を治療するために用いることができる他の薬物には、脂質降下剤、エストロゲンおよびプロゲスチン、エンドセリン受容体作用薬およびインターロイキン‐6拮抗薬、およびアンディポネクチン(Adiponectin)を挙げることができる。
【0075】
作用物質は、拡張可能な医療装置と組み合わせて遺伝子治療手法を用いて送達することもできる。遺伝子治療は、外来遺伝子を細胞または組織に送達して、標的細胞に外来遺伝子産物を発現させることを指す。遺伝子は通常、機械的な方法またはベクターを媒介とした方法によって送達される。
【0076】
ここに開示したある種の作用物質は、その活性を持続させる添加物と組み合わせることができる。例えば、界面活性剤、酸中和剤、酸化防止剤、および洗剤を含む添加物を用いて、蛋白質薬物の変性および凝集を最小限にすることができる。陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、または非イオン性界面活性剤を用いることができる。非イオン性添加物の例として、限定するものではないが、ソルビトール、スクロース、トレハロースを含む糖類;デキストラン、カルボキシメチル(CM)デキストラン、ジメチルアミノエチル(DEAE)デキストランを含むデキストラン類、D‐グルコサミン酸、およびD‐グルコースジエチルメルカプタールを含む糖誘導体;ポリエチレングリコール(PEFおよびPEO)およびポリビニルピロリドン(PVP)を含む合成ポリエーテル;D‐乳酸、グリコール酸、およびプロピオン酸を含むカルボキシル酸;n‐ドデシル‐β‐D‐マルトサイド(n-dodecyl-[beta]-D-maltoside)、n‐オクチル‐β‐D‐グルコサイド(n-octyl-[beta]-D-glucoside)、PEO‐脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸塩(myrj 59)またはオレイン酸塩)、PEO‐ソルビタン‐脂肪酸エステル(例えば、トウィーン80、PEO‐20ソルビタンモノオレエート)、ソルビタン‐脂肪酸エステル(例えば、SPAN 60、ソルビタンモノステアレート)、PEO‐グリセリル‐脂肪酸エステルを含む疎水性界面に対して親和性を有する界面活性剤;グリセリル脂肪酸エステル(例えば、グリセリルモノステアレート)、PEO‐炭化水素‐エーテル(例えば、PEO‐IOオレイルエーテル;トリトンX‐100;およびルブロール)を挙げることができる。イオン性界面活性剤の例として、限定するものではないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸亜鉛を含む脂肪酸塩;レシチンおよびホスファチジルコリンを含むリン脂質;CM‐PEG;コール酸;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ドクセート(AOT);およびタウモコール酸(taumocholic acid)を挙げることができる。
【0077】
本発明の好適な実施形態を参照して、本発明を詳細に説明してきたが、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変更形態および変形形態が可能であり、等価物を用いることができることを理解できよう。
【0078】
〔実施の態様〕
(1)有効物質を送達するための拡張可能な医療装置において、
第1の直径を有する円柱から第2の直径を有する円柱に拡張可能な実質的に円柱の装置と、
前記実質的に円柱の装置に形成された第1の複数の開口であって、組織に送達するための第1の有効物質を含み、前記第1の有効物質は、再狭窄の第1の生物学的プロセスを標的とするために第1の放出曲線に従って送達されるように調製されている、第1の複数の開口と、
前記実質的に円柱の装置に形成された第2の複数の開口であって、組織に送達するための第2の有効物質を含み、前記第2の有効物質は、再狭窄の第2の生物学的プロセスを標的とするために前記第1の放出曲線とは異なる第2の放出曲線に従って送達されるように調製されている、第2の複数の開口と、
を含む、拡張可能な医療装置。
(2)実施態様(1)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、ピメクロリムス(pimecrolimus)であり、
前記第2の有効物質は、パクリタキセルである、拡張可能な医療装置。
(3)実施態様(1)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、ピメクロリムスであり、
前記第2の有効物質は、リムス族薬物(limus drug)である、拡張可能な医療装置。
(4)実施態様(3)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、ラパマイシンである、拡張可能な医療装置。
(5)実施態様(3)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、エベロリムス(everolimus)である、拡張可能な医療装置。
【0079】
(6)実施態様(1)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、グリベック(Gleevec)であり、
前記第2の有効物質は、パクリタキセルである、拡張可能な医療装置。
(7)実施態様(1)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、グリベックであり、
前記第2の有効物質は、リムス族薬物である、拡張可能な医療装置。
(8)実施態様(7)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、ラパマイシンである、拡張可能な医療装置。
(9)実施態様(7)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、シロリムス(sirolimus)である、拡張可能な医療装置。
(10)実施態様(1)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、親水性であり、
前記第2の有効物質は、親油性である、拡張可能な医療装置。
【0080】
(11)実施態様(1)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、抗増殖剤であり、
前記第2の有効物質は、抗炎症剤である、拡張可能な医療装置。
(12)実施態様(1)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、抗増殖剤であり、
前記第2の有効物質は、心筋温存薬(myocardial preservative drug)である、拡張可能な医療装置。
(13)実施態様(1)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、CdAであり、
前記第2の有効物質は、リムス族薬物である、拡張可能な医療装置。
(14)実施態様(13)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、ラパマイシンである、拡張可能な医療装置。
(15)実施態様(13)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、エベロリムスである、拡張可能な医療装置。
【0081】
(16)実施態様(1)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、初めの24時間に送達される薬物の少なくとも40%で送達されるように調製されており、
前記第2の有効物質は、初めの24時間に送達される薬物の20%未満で送達されるように調製されている、拡張可能な医療装置。
(17)実施態様(1)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質の投与期間は、約3週間以下であり、
前記第2の有効物質の投与期間は、約4週間以上である、拡張可能な医療装置。
(18)体内通路内における再狭窄を低減するための方法において、
組織を支持するために体内通路内に組織支持装置を配置するステップであって、この組織支持装置は、この装置の開口内にピメクロリムスおよびパクリタキセルを含む、ステップと、
2つの異なる作動機構によって再狭窄を治療するために前記組織支持装置の近傍の組織に前記ピメクロリムスおよびパクリタキセルを送達するステップと、
を含む、方法。
(19)実施態様(18)に記載の方法において、
前記ピメクロリムスは、初めの24時間に送達される薬物の少なくとも40%で送達され、
前記パクリタキセルは、初めの24時間に送達される薬物の20%未満で送達される、方法。
(20)実施態様(18)に記載の方法において、
50μg〜300μgのピメクロリムスが、3mm×16mmの拡張されたステントから送達され、
他の比例用量(proportional dose)は、他の大きさのステントから送達される、方法。
【0082】
(21)有効物質を送達するための拡張可能な医療装置において、
第1の直径を有する円柱から第2の直径を有する円柱に拡張可能な実質的に円柱の装置と、
前記実質的に円柱の装置に形成された第1の複数の開口であって、組織に送達するための第1の有効物質を含み、前記第1の有効物質は、再狭窄を標的とするために第1の放出曲線に従って送達されるように調製されている、第1の複数の開口と、
前記実質的に円柱の装置に形成された第2の複数の開口であって、組織に送達するための第2の有効物質を含み、前記第2の有効物質は、再狭窄以外の疾患を標的とするために前記第1の放出曲線とは異なる第2の放出曲線に従って送達されるように調製されている、第2の複数の開口と、
を含む、拡張可能な医療装置。
(22)実施態様(21)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第2の有効物質は、インスリンである、拡張可能な医療装置。
(23)実施態様(21)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、初めの24時間に送達される薬物の少なくとも40%で送達され、
前記第2の有効物質は、初めの24時間に送達される薬物の20%未満で送達される、拡張可能な医療装置。
(24)有効物質を送達するための拡張可能な医療装置において、
第1の直径を有する円柱から第2の直径を有する円柱に拡張可能な実質的に円柱の装置と、
前記実質的に円柱の装置に付着され、再狭窄を標的とするために第1の放出曲線に従って送達されるように調製された第1の有効物質であって、前記第1の有効物質は、ピメクロリムスである、第1の有効物質と、
前記実質的に円柱の装置に付着され、再狭窄を標的とするために第2の放出曲線に従って送達されるように調製された2の有効物質であって、前記第2の有効物質は、パクリタキセルである、第2の有効物質と、
を含む、拡張可能な医療装置。
(25)実施態様(24)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記ピメクロリムスは、初めの24時間に送達される薬物の少なくとも40%で送達され、
前記パクリタキセルは、初めの24時間に送達される薬物の20%未満で送達される、拡張可能な医療装置。
【0083】
(26)実施態様(24)に記載の拡張可能な医療装置において、
50μg〜300μgのピメクロリムスが、3mm×16mmの拡張されたステントから送達され、
他の比例用量は、他の大きさのステントから送達される、拡張可能な医療装置。
(27)実施態様(26)に記載の拡張可能な医療装置において、
100μg〜250μgのピメクロリムスが、3mm×16mmの拡張されたステントから送達され、
他の比例用量は、他の大きさのステントから送達される、拡張可能な医療装置。
(28)有効物質を送達するための拡張可能な医療装置において、
第1の直径を有する円柱から第2の直径を有する円柱に拡張可能な実質的に円柱の装置と、
前記実質的に円柱の装置に付着された、薬物送達基質(drug delivery matrix)の第1および第2の段階を有する第1の有効物質であって、
前記第1の段階は、前記第2の段階よりも治療すべき組織に近接して形成されており、
前記第1の段階は、前記第2の段階よりもポリマーに対する薬物の比率が高く、
前記第1の有効物質は、ピメクロリムスである、
第1の有効物質と、
を含む、拡張可能な医療装置。
(29)実施態様(28)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記実質的に円柱の装置に付着された第2の有効物質、
をさらに含む、拡張可能な医療装置。
(30)実施態様(29)に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第2の有効物質は、パクリタキセルである、拡張可能な医療装置。
【0084】
(31)実施態様(30)に記載の方法において、
前記ピメクロリムスは、初めの24時間に送達される薬物の少なくとも40%で送達され、
前記パクリタキセルは、初めの24時間に送達される薬物の20%未満で送達される、拡張可能な医療装置。
(32)実施態様(28)に記載の拡張可能な医療装置において、
50μg〜300μgのピメクロリムスが、3mm×16mmの拡張されたステントから送達され、
他の比例用量は、他の大きさのステントから送達される、拡張可能な医療装置。
(33)実施態様(32)に記載の拡張可能な医療装置において、
100μg〜250μgのピメクロリムスが、3mm×16mmの拡張されたステントから送達され、
他の比例用量は、他の大きさのステントから送達される、拡張可能な医療装置。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】両端部に有効物質を備えた拡張可能な医療装置の等角図である。
【図2】中心部分に有効物質を備え、両端部に有効物質を備えていない拡張可能な医療装置の等角図である。
【図3】異なる有効物質が異なる開口内に充填された拡張可能な医療装置の等角図である。
【図4】異なる有効物質が1つ置きに開口内に充填された拡張可能な医療装置の等角図である。
【図5】有効物質の開口がブリッジ要素に設けられた拡張可能な医療装置の一部の拡大側面図である。
【図6】分岐開口を備えた拡張可能な医療装置の一部の拡大側面図である。
【図7】第1の複数の開口内に設けられた抗炎症剤などの第1の有効物質と、第2の複数の開口内に設けられた抗増殖剤などの第2の有効物質とを有する拡張可能な医療装置の断面図である。
【図8】図7の拡張可能な医療装置によって送達される抗炎症剤および抗増殖剤の一例の放出速度のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効物質を送達するための拡張可能な医療装置において、
第1の直径を有する円柱から第2の直径を有する円柱に拡張可能な実質的に円柱の装置と、
前記実質的に円柱の装置に形成された第1の複数の開口であって、組織に送達するための第1の有効物質を含み、前記第1の有効物質は、再狭窄の第1の生物学的プロセスを標的とするために第1の放出曲線に従って送達されるように調製されている、第1の複数の開口と、
前記実質的に円柱の装置に形成された第2の複数の開口であって、組織に送達するための第2の有効物質を含み、前記第2の有効物質は、再狭窄の第2の生物学的プロセスを標的とするために前記第1の放出曲線とは異なる第2の放出曲線に従って送達されるように調製されている、第2の複数の開口と、
を含む、拡張可能な医療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、ピメクロリムスであり、
前記第2の有効物質は、パクリタキセルである、拡張可能な医療装置。
【請求項3】
請求項1に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、ピメクロリムスであり、
前記第2の有効物質は、リムス族薬物である、拡張可能な医療装置。
【請求項4】
請求項3に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、ラパマイシンである、拡張可能な医療装置。
【請求項5】
請求項3に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、エベロリムスである、拡張可能な医療装置。
【請求項6】
請求項1に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、グリベックであり、
前記第2の有効物質は、パクリタキセルである、拡張可能な医療装置。
【請求項7】
請求項1に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、グリベックであり、
前記第2の有効物質は、リムス族薬物である、拡張可能な医療装置。
【請求項8】
請求項7に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、ラパマイシンである、拡張可能な医療装置。
【請求項9】
請求項7に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、シロリムスである、拡張可能な医療装置。
【請求項10】
請求項1に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、親水性であり、
前記第2の有効物質は、親油性である、拡張可能な医療装置。
【請求項11】
請求項1に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、抗増殖剤であり、
前記第2の有効物質は、抗炎症剤である、拡張可能な医療装置。
【請求項12】
請求項1に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、抗増殖剤であり、
前記第2の有効物質は、心筋温存薬である、拡張可能な医療装置。
【請求項13】
請求項1に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、CdAであり、
前記第2の有効物質は、リムス族薬物である、拡張可能な医療装置。
【請求項14】
請求項13に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、ラパマイシンである、拡張可能な医療装置。
【請求項15】
請求項13に記載の拡張可能な医療装置において、
前記リムス族薬物は、エベロリムスである、拡張可能な医療装置。
【請求項16】
請求項1に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、初めの24時間に送達される薬物の少なくとも40%で送達されるように調製されており、
前記第2の有効物質は、初めの24時間に送達される薬物の20%未満で送達されるように調製されている、拡張可能な医療装置。
【請求項17】
請求項1に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質の投与期間は、約3週間以下であり、
前記第2の有効物質の投与期間は、約4週間以上である、拡張可能な医療装置。
【請求項18】
有効物質を送達するための拡張可能な医療装置において、
第1の直径を有する円柱から第2の直径を有する円柱に拡張可能な実質的に円柱の装置と、
前記実質的に円柱の装置に形成された第1の複数の開口であって、組織に送達するための第1の有効物質を含み、前記第1の有効物質は、再狭窄を標的とするために第1の放出曲線に従って送達されるように調製されている、第1の複数の開口と、
前記実質的に円柱の装置に形成された第2の複数の開口であって、組織に送達するための第2の有効物質を含み、前記第2の有効物質は、再狭窄以外の疾患を標的とするために前記第1の放出曲線とは異なる第2の放出曲線に従って送達されるように調製されている、第2の複数の開口と、
を含む、拡張可能な医療装置。
【請求項19】
請求項18に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第2の有効物質は、インスリンである、拡張可能な医療装置。
【請求項20】
請求項18に記載の拡張可能な医療装置において、
前記第1の有効物質は、初めの24時間に送達される薬物の少なくとも40%で送達され、
前記第2の有効物質は、初めの24時間に送達される薬物の20%未満で送達される、拡張可能な医療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−532692(P2008−532692A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501905(P2008−501905)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/007411
【国際公開番号】WO2006/098889
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(507188898)コナー・ミッドシステムズ・インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】