説明

視機能予防・改善剤

【課題】
本発明の目的は、安全性が高く、優れた視機能予防・改善効果を有する視機能予防・改善剤および該視機能予防・改善剤を含有する経口剤、点眼剤、経皮吸収剤を提供することにある。
【解決手段】
クリプトキサンチンを含有し、好ましくはクリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、ビタミン類からなる群から選択される1種類以上をさらに含有することにより、視機能予防・改善効果を有するため、例えば、VDT作業等における視機能低下の予防剤、該視機能低下後の視機能改善剤として有効であり、視機能予防・改善等を目的とする各種の経口剤、点眼剤、経皮吸収剤などに利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリプトキサンチンを含有する視機能予防・改善剤、さらに詳しくは、該視機能予防・改善剤を含有する経口剤、点眼剤、経皮吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
長時間の読書やVisual Display Terminal(以下、VDTと略す)作業による目の酷使、強い日差しの元での屋外作業等の後に、ものが見づらくなるなどの視機能の低下を引き起こす場合がある。特に最近では、長時間のVDT作業やビデオゲームなどの同じ姿勢で視線を大きく動かすことなく明るい画面を見続ける動作により生じる眼精疲労という目の機能低下が社会問題にもなっている。
【0003】
眼精疲労は目が疲れる、ものが見えにくくなる、といった視機能の低下のみならず、肩こりや頭痛などを併発するなど複合的な症状を呈し、休息をとっても容易には回復しにくいという問題がある。また、これらの症状を自覚していない場合であっても、気づかないうちに蓄積した疲労により作業効率の低下や各種のストレス性症状を呈することもある。
【0004】
眼精疲労の発症メカニズムは未だ明確ではないが、長時間にわたる注視作業が原因となることが多い。特にVDT作業による眼精疲労は目の明暗順応、焦点調節機能が低下すると共に、網膜の酸化ストレスが増大することが関連するといわれている。
【0005】
一方、眼精疲労は目の筋肉疲労という側面もある。目には眼球を動かす外眼筋と焦点調節に関わる内眼筋がある。外眼筋は遠方を見ているときには緊張が少ないが、VDT作業中は近くを見続けるため、外眼筋(特に内直筋)に強い負担がかかり続ける。また内眼筋である毛様体筋も、水晶体を収縮させ続けるために強い緊張状態を強いられ続けて硬直化する。これらの筋肉疲労と、それに伴う酸化ストレスの増大が眼精疲労の原因であるといわれている。
【0006】
眼精疲労への対処として、ビタミンB群やメントールなどを含む点眼剤や、目の疲れに効果的な成分を含有したサプリメントなどが市販されている。また、経口摂取で目の疲れに効果的な成分としては、アントシアニンやルテイン/ゼアキサンチンが有名であり、これを用いた眼精疲労回復剤(例えば、特許文献1、2参照)や機能性飲食品(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
【0007】
また、毛様体筋の疲労回復を促進するものとしては、アスタキサンチン及び/ 又はそのエステルからなる眼の調節機能障害に対する改善作用を有する飲食品(例えば、特許文献4参照)などが開示されている。また、目に直接温冷刺激を与えることで疲労を取るアイマスクも市販されているが、これも毛様体筋や外眼筋の疲労を取る方法と言える。
【0008】
しかしながら、クリプトキサンチンが視機能の低下を予防する効果を奏すること、及び低下した視機能を改善する効果を奏することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−178408号
【特許文献2】特開2007−308396号
【特許文献3】国際公開第01/001798号
【特許文献4】国際公開第02/094253号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、安全性が高く、優れた視機能予防・改善効果を有する視機能予防・改善剤および該視機能予防・改善剤を含有する経口剤、点眼剤、経皮吸収剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、この課題を解決するために鋭意検討した結果、カロテノイドの1種であるクリプトキサンチンが優れた視機能予防・改善効果を発揮することを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)クリプトキサンチンを含有する視機能予防・改善剤。
(2)クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、ビタミン類からなる群から選択される1種類以上を含む(1)記載の視機能予防・改善剤。
(3)(1)又は(2)に記載の視機能予防・改善剤を含有する経口剤。
(4)(1)又は(2)に記載の視機能予防・改善剤を含有する点眼剤。
(5)(1)又は(2)に記載の視機能予防・改善剤を含有する経皮吸収剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の視機能予防・改善剤は、視機能予防・改善効果を有する。そのため、例えば、VDT作業等における視機能低下の予防剤、該視機能低下後の視機能改善剤として有効であり、視機能予防・改善等を目的とする各種の経口剤、点眼剤、経皮吸収剤などに利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明におけるクリプトキサンチンは、その種類は特に限定されるものではないが、例えばα−クリプトキサンチン、β−クリプトキサンチン及びこれらの脂肪酸エステルが挙げられる。該脂肪酸エステル体の脂肪酸種も特に限定されるものではないが、例えばラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)などの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0015】
これらα−クリプトキサンチン、β−クリプトキサンチン及びこれらの脂肪酸エステルは、例えば、温州みかん、柿、パパイヤ、マンゴーなどから抽出するものが好適に使用され、その中でも、日本古来の果物であり、生産量が多く、クリプトキサンチン含有量も高い温州みかんを原料としたものが好ましい。
【0016】
例えば、温州みかんは生の果実だけでなく温州みかんの加工品及びその中間体も原料として用いることができる。加工品及びその中間体としては、温州みかんジュース、温州みかんからジュースを絞った後の残渣、残渣の乾燥物、残渣の酵素処理物、温州みかんからの溶媒抽出物などを原料として用いることができる。中でも残渣にセルラーゼなどの酵素を作用させた温州みかん残渣の酵素処理物は、残渣に多量に含まれる食物繊維を水に可溶化・除去することにより残渣を減容し、相対的にクリプトキサンチン濃度を高めることが可能なため原料として好適である。またこの温州みかん搾汁残渣の酵素処理物の乾燥物はクリプトキサンチン濃度が高くなるためさらに好適である。
【0017】
温州みかんの搾汁残渣、残渣の酵素処理物をそのまま本発明の視機能予防・改善剤として用いてもよいし、なんらかの加工を行ったものを用いてもよい。具体的にはこれらを固液分離した残渣、固液分離した残渣を乾燥させたもの、固液分離せず反応物そのままを乾燥させたものなどを本発明の視機能予防・改善剤として用いてもよい。また、温州みかんの搾汁残渣,残渣の酵素処理物そのもの、又はその固液分離後の残渣に水を添加・攪拌した後、再度固液分離する水洗浄法の実施は、温州みかんの搾汁残渣及びその酵素処理物中に存在する酸や糖などの水溶性不純物を簡単に取り除けるため好ましい。
【0018】
温州みかんの溶剤抽出物とは、温州みかんやその酵素処理物などから溶剤や超臨界二酸化炭素などを用いてクリプトキサンチンを含む成分を抽出したものである。抽出に用いる溶剤としては、原料である温州みかん又はその加工品より機能性成分であるβ-クリプトキサンチンを抽出することができればいかなるものでもよい。また、一種類の溶媒を単独で用いても、複数の溶媒を混合して用いてもよい。これらの条件を満たすものとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、ポリエチレングリコール等のポリエーテル類、ピリジン類等が使用できる。これらうち、エタノールは抽出されるクリプトキサンチンが多く好ましい。また、これらの有機溶媒で抽出する際には抽出効率をあげるために例えば水、界面活性剤等の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で加えることができる。さらに、上記有機溶媒による抽出のほか、近年注目を浴びている技術である超臨界抽出法も利用することができる。
【0019】
更に引き続いて加工を行い、不純物類を取り除くことでクリプトキサンチンの純度を上げることもできる。例えば、濃縮、脱塩、分配精製、カラムクロマトグラフィーなどを用いることができる。また粉末化や乳化といった、抽出物の形状を変える処理を用いることもできる。さらにこれらの方法を単独で行うばかりではなく、複数の方法を組み合わせて実施してもよい。
【0020】
本発明における視機能予防・改善剤中のクリプトキサンチンの量は、特に限定されないが、例えば、成人1日当たりのクリプトキサンチン摂取量として、0.01〜5000μgとなるように摂取することが好ましく、10〜2000μgとなるように摂取することがより好ましい。
【0021】
本発明におけるクリプトキサンチン以外のカロテノイドとしては、α‐カロテン、β‐カロテン、リコピン、フィトエンなどのカロテン類やそのエポキシ体、または、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、ツナキサンチン、サルモキサンチン、パラシロキサンチン、ビオラキサンチン、アンテラキサンチン、ククルビタキサンチン、ディアトキサンチン、アロキサンチン、ペクテノール、ペクテノロン、マクトラキサンチン、カプサンチン、カプサンチノール、フコキサンチン、フコキサンチノール、ペリジニン、ハロシンチアキサンチン、アマロウシアキサンチン、カンタキサンチン、エキネノン、ロドキサンチン、ビキシン、ノルビキシンなどのキサントフィル類、さらには、ノルカロテノイド類やアポカロテノイド類及びこれらの脂肪酸エステル体であり、好ましくは、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン及びこれらの脂肪酸エステル体である。
【0022】
これらは天然物から抽出、精製して得られたもの、発酵法あるいは合成法で得られたもののいずれも用いることができる。天然カロテノイドとしては、例えばアナトー色素、イモカロテン、クチナシ黄色素、エビ色素、オキアミ色素、オレンジ色素、カニ色素、デュナリエラカロテン、トウガラシ色素(別名: パプリカ色素) 、トウモロコシ色素、トマト色素、ニンジンカロテン、パーム油カロテン、ファフィア色素、ベニノキ末色素、ヘマトコッカス藻色素、マリーゴールド色素などを挙げることができる。上記カロテノイド類は、一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。またβ−カロテンやルテインなど、クリプトキサンチン以外のカロテノイドがあらかじめ混合された市販のマルチカロテノイド製剤を用いても良い。
【0023】
本発明の視機能予防・改善剤100g中に配合されるクリプトキサンチン以外のカロテノイドの量は特に限定されないが、10ng〜25gが好ましく、1μg〜5gがより好ましい。成人1日当たりの摂取量としては、10pg〜25mgが好ましく、1μg〜2.5mgがより好ましい。
【0024】
本発明におけるポリフェノールとしては、フラボノイドやリグナン及びこれらの配糖体が好適であるが、中でもアントシアニン類は抗酸化力を有する上、ロドプシンの再生を促進することから更に好適である。
【0025】
アントシアニンはアントシアニジンをアグリコンとする配糖体であり、植物の花、果実、種子、葉、茎、根などに含まれ、赤〜紫〜 青色を呈する色素として植物界に広く存在する。本発明で用いられるアントシアニン類の具体例としては、例えば赤キャベツ、赤米、アカダイコン、アズキ、黒大豆種皮、シソ、ハイビスカス、ブラックキャロット、ムラサキイモ、ムラサキトウモロコシ、ムラサキヤマイモなどを基原とする抽出物、エルダーベリー、イチゴ、イチジク、カウベリー、カシス、グースベリー、クランベリー、サーモンベリー、スィムブルーベリー、ストロベリー、ダークスィートチェリー、チェリー、ハルクベリー、ビルベリー、ブドウ、ブラックカーラント、ブラックベリー、ブルーベリー、プラム、ホワートルベリー、ボイセンベリー、マルベリー、ラズベリー、レッドカーラント、ローガンベリーなどを基原とする濃縮果汁または抽出物などが挙げられる。本発明で用いられるアントシアニン類としては、上記植物由来のアントシアニンを含む粗製品、精製品、またこれらを含有する製剤などを用いることができる。
【0026】
本発明の視機能予防・改善剤100g中に配合されるポリフェノール類の量は、1μg〜50gが好ましく、0.1mg〜10gがさらに好ましい。成人1日当たりの摂取量としては、1μg〜500mgが好ましく、10μg〜250mgがより好ましい。
【0027】
本発明におけるビタミン類としては、ビタミンA、B、C、E、Pおよびこれらの誘導体・類縁体が好適である。中でもビタミンC、E及びこれらの誘導体が好適である。ここで、ビタミンCとはL−アスコルビン酸であり、ビタミンC誘導体とは、例えばアスコルビン酸モノステアレート、アスコルビン酸モノパルミテート、アスコルビン酸モノオレート等のアスコルビン酸モノアルキルエステル類、アスコルビン酸モノ燐酸エステル及びそのマグネシウム塩のようなアスコルビン酸モノエステル誘導体とその塩、アスコルビン酸ジステアレート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸ジオレート等のアスコルビン酸ジアルキルエステル類、アスコルビン酸ジ燐酸エステルとその塩のようなアスコルビン酸ジエステル誘導体、アスコルビン酸トリステアレート、アスコルビン酸トリパルミテート、アスコルビン酸トリオレート等のトリアルキルエステル類等、アスコルビン酸トリ燐酸エステル等のアスコルビン酸トリエステル誘導体等、3−O−エチル,6−アセチルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−ブチルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−ラウロイルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−パルミトイルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−オレオイルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−ステアロイルL−アスコルビン酸、3−O−エチル,6−ベヘルミノイルL−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸−2−グルコシドである。中でもL−アスコルビン酸−2−グルコシドが好適である。
【0028】
またビタミンE及びその誘導体とは、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールと各異性体のニコチン酸、酢酸、コハク酸などのエステルなどが挙げられ、ビタミンE類縁体とはトコトリエノール及びその誘導体が挙げられる。
【0029】
本発明の視機能予防・改善剤100g中に配合されるビタミンB群の量は、0.01mg〜10gが好ましく、1mg〜5gがさらに好ましい。ビタミンB群の成人1日当たりの摂取量としては、1μg〜80mgが好ましく、0.1〜25mgがより好ましい。ビタミンCの量は、0.1mg〜20gが好ましく、10mg〜10gがさらに好ましい。ビタミンCの成人1日当たりの摂取量としては、0.01〜5000mgが好ましく、0.5〜200mgがより好ましい。ビタミンEの量は、1mg〜20gが好ましく、100mg〜1gがさらに好ましい。ビタミンEの成人1日当たりの摂取量としては、0.1〜500mgが好ましく、5〜20mgがより好ましい。
【0030】
本発明の視機能予防・改善剤としては、クリプトキサンチンに、クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、ビタミン類などを含有することにより、後述するように、視機能予防・改善効果をより顕著に発揮することが可能となる。これら相乗効果が奏される理由は明らかではないが、クリプトキサンチン以外のカロテノイド等自体の効果に加え、クリプトキサンチンとクリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、ビタミン類などが共存することにより、クリプトキサンチンの体内への吸収性や吸収後の体内での安定性が向上することで、クリプトキサンチン単独摂取よりも該効果が高くなるものと推定している。
【0031】
本発明における視機能予防・改善剤の形態としては、食品やサプリメント等のように経口で摂取される形態をとることもできる。経口で摂取される形態としては、一般食品に加えて、特定保健用食品、健康食品、医薬部外品などすべての食品および/又は飲料が含まれる。該食品および/又は飲料は特に限定されるものではなく、例えば、打錠品、ソフトカプセル、顆粒などの医薬品的な形態のものに加えて、パン、うどん、そば、ご飯等主食となるもの、チーズ、ウインナー、ソーセージ、ハム、魚介加工品等の食品類、アイスクリーム、クッキー、ケーキ、ゼリー、プリン、キャンディー、チューインガム、ヨーグルト、グミ、チョコレート、ビスケットなどの菓子類、清涼飲料水、調味料類、酒類、栄養ドリンク、コーヒー、茶、牛乳、果汁飲料、清涼飲料などの飲料が挙げられる。
【0032】
本発明における経口剤中のクリプトキサンチンの量は、特に限定されないが、例えば、成人1日当たりのクリプトキサンチン摂取量として、10ng〜5000μgとなるように摂取することが好ましく、1〜2500μgとなるように含有することがより好ましい。
【0033】
本発明における視機能予防・改善剤の形態として、直接目に投与する方法である点眼剤の形態も有効である。
【0034】
本発明における点眼剤中のクリプトキサンチンの量は特に限定されないが、例えば、成人1日当たりのクリプトキサンチン摂取量として、0.01pg〜10μgとなるように摂取することが好ましく、0.1pg〜1μgとなるように摂取することがより好ましい。
【0035】
本発明における視機能予防・改善剤の形態として、経皮的に投与する方法である経皮吸収剤としての形態も有効である。具体的には、アイマスク、アイパッチなどの形態が挙げられる。
【0036】
本発明における経皮吸収剤に含まれるクリプトキサンチンの量は特に限定されず、例えば経皮吸収剤100gに対し10pg〜10g含まれていればよい。中でも100pg〜1gが好適であり、10ng〜500mgは更に好適である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<測定方法>
(1)β−クリプトキサンチン
島津製作所製高速液体クロマトグラフィー(HPLC) LC−10Aを用い、ウォーターズ社製ResolveC18(φ3.9×150mm)カラムを接続し、水:メタノール(容量比)=50/50に試料を溶解させたものをInjectionした。移動相として、メタノール:酢酸エチル(容量比)=7:3、カラム温度30℃、流速1.0ml/min、検出波長450nmで、試料中のクリプトキサンチン含有量を分析した。
【0038】
<視機能予防・改善剤の調整>
製造例1
温州みかん搾汁残渣(みかんジュース粕、水分率約90%)1kgに食品加工用ペクチナーゼ酵素剤であるスミチームPX(新日本化学工業株式会社製、ペクチナーゼ5,000ユニット/g、アラバナーゼ90ユニット/g)1gとセルラーゼ/ヘミセルラーゼ酵素剤であるセルラーゼY−NC(ヤクルト薬品工業株式会社製、セルラーゼ30,000ユニット/g)1gを添加し、よくかき混ぜて室温で8時間静置反応を行った。この反応液を遠心分離して上清を除去した後、水を添加して撹拌し、再度遠心分離により上清を除去した。この沈殿物を凍結乾燥機により乾燥し、ナイフ式粉砕機(Retsch社、GM200)にて5分間粉砕後、300メッシュの篩を通過する粉砕物(組成物1)50gを得た。組成物1中のβ−クリプトキサンチン濃度はフリー体換算で1mg/gであった。
【0039】
製造例2
前記の組成物1の50gに対し500mlのエタノールを添加し、室温で2時間撹拌後に固形分をろ過・除去したろ液を濃縮し、20gの濃縮物を得た(組成物2)。組成物2中のβ−クリプトキサンチン濃度はフリー体換算で2.5mg/gであった。
【0040】
製造例3
前記の組成物1の50gに対し500mlのエタノールを添加し、室温で2時間撹拌後、ろ過してみかん抽出液480mlを得た。得られた抽出液100mlに100mlの10%(w/v)γ-シクロデキストリン水溶液と300mlの蒸留水を加えて室温で30分撹拌した後、凍結乾燥・粉砕して10gの組成物3を得た。組成物3にはβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で1.5mg/g含まれていた。
【0041】
<視機能予防・改善剤を含有する経口剤の調整>
製造例4
次に示す製法により、本発明の飲食品の一態様であるソフトカプセルを製造した。
成分 配合量(100g中)
1)組成物1 50g
2)サフラワー油 50g
製法:1)と2)を均一に混合後、ゼラチン、蜜蝋などからなるソフトカプセル包材内に200mg/錠で充填した。製造物4には1錠あたりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.1mg含有されていた。
【0042】
製造例5
次に示す製法により、本発明の飲食品の一態様であるソフトカプセルを製造した。
成分 配合量(100g中)
1)組成物1 50g
2)ビタミンE 10g
3)ビタミンC誘導体 5g
4)サフラワー油 35g
製法:1)から4)を均一に混合後、ゼラチン、蜜蝋などからなるソフトカプセル包材内に200mg/錠で充填した。製造物5には1錠あたりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.1mg含有されていた。
【0043】
製造例6
次に示す製法により、本発明の飲食品の一態様である錠剤を製造した。
成分 配合量(100g中)
1)組成物3 10g
2)マルチトール 50g
3)結晶セルロース 26g
4)ショ糖脂肪酸エステル 8g
5)ビタミンC 2g
6)マリーゴールド色素 1g
7)甘味料 適量
8)酸味料 適量
9)香料 適量
製法:1)から9)を混合し、更に全体の重量を結晶セルロースにより100gとした後に均一に混合し、常法により顆粒状にした後、0.5g/錠で打錠した。製造物6には1錠あたりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.075mg含有されていた。
【0044】
製造例7
次に示す製法により、本発明の飲食品の一態様であるドリンク剤を製造した。
成分 配合量(100mL中)
1)組成物2 100mg
2)ハチミツ 320mg
3)環状オリゴ糖 600mg
4)ビルベリーエキス 100mg
5)ビタミンC 50mg
6)甘味料 適量
7)酸味料 適量
8)保存料 適量
9)香料 適量
10)水 残余
製法:10)に1)から9)を順次添加した。製造物7には100mlあたりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.25mg含有されていた。
【0045】
製造例8
次に示す製法により、本発明の一態様である点眼剤を製造した。
成分 配合量(100mL中)
1)組成物2 2.00g
2)酢酸トコフェロール 0.05g
3)ヒアルロン酸ナトリウム 0.02g
4)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.50g
5)エデト酸ナトリウム 0.01g
6)ホウ酸 0.50g
7)ホウ砂 0.10g
8)塩化ナトリウム 0.60g
製法:80mlの精製水に1)から8)を順次添加・混合したのち、希塩酸にてpHを7.0に調整した。これに精製水を加えて体積を100mlとした後、フィルター滅菌し、滅菌済みの容器に分注した。製造物8には1mlあたりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.05mg含有されていた。
【0046】
製造例9
次に示す製法により、本発明の経皮吸収剤の一態様であるアイマスクを製造した。
成分 配合量(100g中)
1)組成物2 2.00g
2)白色ワセリン(日本薬局方) 80.00g
3)パラオキシ安息香酸ブチル 0.05g
4)流動パラフィン 17.95g
製法:上記1)〜4)を均一に混合し、厚手の不織布に1平方センチ当たり1gとなるよう均一に塗布し、更に局方ガーゼを重ねた。製造物9には1平方センチあたりβ−クリプトキサンチンがフリー体換算で0.05mg含有されていた。
【0047】
比較物1
製造例4の成分のうち、組成物1を下記クリプトキサンチン以外のカロテノイドに置き換えた以外は、製造例4と同様にしてソフトカプセルを得た。ソフトカプセル1錠中に配合したクリプトキサンチン以外のカロテノイド(フリー体換算)を以下に示す。
1)β−カロテン 0.05mg
2)ルテイン 0.05mg
3)ゼアキサンチン 0.01mg
4)リコペン 0.02mg
【0048】
比較物2
製造例6の成分のうち、組成物3をポリフェノール(アントシアニン類を含む)であるブルーベリーエキス10gに置き換えた以外は、製造例6と同様にしてソフトカプセルを得た。
【0049】
比較物3
製造例7の成分のうち、組成物2をカロテノイド(アスタキサンチン)を含むヘマトコッカス藻色素100mgに置き換えた以外は、製造例7と同様にしてソフトカプセルを得た。
【0050】
比較物4
製造例8の成分のうち、組成物2をビタミンB群0.50gに置き換えた以外は、製造例8と同様にして点眼剤を得た。
【0051】
比較物5
製造例9の成分のうち、組成物2をメントール0.10gに置き換えた以外は、製造例9と同様にしてアイマスクを得た。
【0052】
<クリプトキサンチンの体内動態>
試験例1
ウズラ(メス)に飼料100g当たり組成物1を5g添加したものを与えて飼育した。2週間後にウズラを屠殺して眼を摘出し、構造体ごとに分けてβ−クリプトキサンチン及びルテイン、ゼアキサンチンを定量した。得られた結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示すように、β−クリプトキサンチンは網膜と毛様体、外眼筋に局在していた。一方、飼料に含まれるルテイン/ゼアキサンチンは網膜には多量に移行・局在していたが、毛様体筋や外眼筋にはほとんど含まれていなかった。
【0055】
<視機能予防・改善効果>
試験例2
製造例4、5と比較物1記載のソフトカプセルを用い、健康な成人男女30名を3群(各10名)に分割して二重盲検試験を実施した。被験者は午後3時から3時間、継続的にVDT作業を行った後、眼の疲れ・かすみと肩こり・頭痛の程度を、10cmのビジュアルアナログスケール(VAS)を用いて、疲労度を0cm(感じない)から10cm(極度の疲労/痛み)で自己評価させた。この試験の翌日から1週間、製造例4、5または比較物1の組成物を毎日3錠摂取させた後に同様のVDT作業と疲労度の評価を行い、試験食摂取の有無による疲労度の変化を比較した。
【0056】
試験例3
製造例6と比較物2記載の錠剤を用い、健康な成人男女20名を2群(各10名)に分割し、試験例1と同様のVASによる二重盲検試験を実施した。なお、摂取量はそれぞれを毎日4錠で行った。
【0057】
試験例4
製造例7と比較物3記載の錠剤を用い、試験例2と同様の試験を実施した。なお、摂取量はそれぞれを毎日1本で行った。
【0058】
試験例5
製造例8と比較物4記載の点眼剤を用い、健康な成人男女20名を2群(各10名)に分割して二重盲検試験を実施した。被験者は午後1時から2.5時間、継続的にVDT作業を行った後、眼の疲れ・かすみと肩こり・頭痛の程度を、10cmのビジュアルアナログスケール(VAS)を用いて、疲労度を0cm(感じない)から10cm(極度の疲労/痛み)で自己評価させた。VAS評価後、製造例7または比較物4の点眼剤を投与し、15分間目を閉じて休憩した後に同様のVDT作業と疲労度の評価を行い、点眼剤の違いによる疲労度の変化を比較した。
【0059】
試験例6
製造例9と比較物5記載のアイマスクを用い、健康な成人男女20名を2群(各10名)に分割して二重盲検試験を実施した。被験者は午後1時から2.5時間、継続的にVDT作業を行った後、眼の疲れ・かすみと肩こり・頭痛の程度を、10cmのビジュアルアナログスケール(VAS)を用いて、疲労度を0cm(感じない)から10cm(極度の疲労/痛み)で自己評価させた。VAS評価後、眼を閉じて製造例8または比較物5のアイマスクをし、30分間の休憩の後に同様のVDT作業と疲労度の評価を行い、点眼剤の違いによる疲労度の変化を比較した。
【0060】
試験例2〜6において得られたVAS結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
表2に示すように、試験例2において、クリプトキサンチンを含有する製造例4は、視機能の改善効果が既に報告されているルテイン、ゼアキサンチン等を含有する比較物1に比べて、VASの顕著な改善が認められた。これは、表1に示すように、ルテイン、ゼアキサンチンに比べて、網膜だけでなく、毛様体、外眼筋にも局在するというクリプトキサンチンの特性にもよるものと推定される。また、製造例4とビタミンC、Eが併用された製造物5の比較では、製造物5においてVASのさらに顕著な改善が確認された。
試験例3、4において、クリプトキサンチンに、クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、ビタミン類を併用する製造例6、7は、視機能の改善効果が既に報告されているクリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、ビタミン類を含む比較物2、3に比べ、これらを凌ぐVAS改善が認められた。また、試験例5、6において、点眼剤、経皮吸収剤の剤型である製造例8、9においても優れた視機能予防・改善効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリプトキサンチンを含有する視機能予防・改善剤。
【請求項2】
クリプトキサンチン以外のカロテノイド、ポリフェノール、ビタミン類からなる群から選択される1種類以上を含む請求項1記載の視機能予防・改善剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の視機能予防・改善剤を含有する経口剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の視機能予防・改善剤を含有する点眼剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の視機能予防・改善剤を含有する経皮吸収剤。


【公開番号】特開2012−51821(P2012−51821A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194008(P2010−194008)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】