説明

親水性基および疎水性基で置換された可溶化多糖類

本発明は、例えば疎水性医薬物質を可溶化するのに適する疎水性および親水性側基を有する新規な糖質ポリマーに関する。糖質ポリマーの主鎖の鎖長、ならびに疎水性と親水性の側基のタイプおよび数を、糖質ポリマーの溶解特性を改良するために特に選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医薬物質を可溶化するのに適した疎水性および親水性側基を有する新規な糖質ポリマーに関する。糖質ポリマーの溶解特性を改良するためには、特に、糖質ポリマー主鎖の鎖長、ならびに疎水性と親水性側基のタイプおよび数を選択する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリソープとして知られる両親媒性または疎水性側基を有する可溶化ポリマーは、多年にわたって研究されており、疎水性分子2、3に対するそれらの可溶化能の開拓に基づく多数の用途が提案されている1。これらの化合物は、通常分子当たり数個6の分子内ミセル4、5を形づくっており、それらの可溶化能は、小さい分子量のミセル7とは異なり希釈状態で失われることがなく、それらを可溶化剤として特に有用なものにしている。これらの分子はよく知られてはいるが、それらは薬剤の可溶化剤としては広範囲には活用されていない。
【0003】
疎水性医薬物質とは、水に殆ど不溶性である医薬物質である。英国薬局方により使用されている「殆ど不溶性」の定義をここで使用するが、それは1gの上記材料を可溶化するために、10,000ミリリットルを超える溶媒(例えば水)を必要とする8か、別法では、水中0.1mg/mL未満の溶解性を有する材料と定義される。
【0004】
疎水性および親水性に変性したキトサン類、すなわち、N-アシル6-硫酸化キトサン10、第四級アンモニウムパルミトイルグリコールキトサン8およびアルキル化ポリ(L-リシンシトルアミド)11を使用する少数の薬剤可溶化剤が報告されているが、糖質主鎖の解重合の効果は、これらの糖質についてなされた研究では検討されなかった8、9、11。しかしながら、2つの異なる分子量のN-ラウロイル6-カルボキシメチルキトサンであって、1つの分子量の種類をラウロイルおよびカルボキシメチル置換の2つの異なる程度のところで調査したものが、疎水性医薬物質パクリタキセルの「ミセル」担体として、三輪等11により報告されている。これらの研究者等によって記述されているパクリタキセル製剤は、しかしながら、N-ラウロイル6-カルボキシメチルキトサンおよびパクリタキセルの10%v/vエタノール溶液のプローブ超音波破砕により調製されている。透析によるエタノールの除去が試みられたが、これらの研究者等によっては確認されず、最終的なN-ラウロイル6-カルボキシメチルキトサン-パクリタキセル製剤は、30と300nmの間の粒径範囲および32と82nmの間の平均粒径の「混濁状」として記載された。対照的に、本明細書に開示されている発明は、疎水性医薬物質が、可溶化ポリマーが存在する水相(有機溶媒を含まない)に加えられるときに光学的に透明な溶液(感知できる光散乱がない)を生ずる可溶化ポリマーの属性に関する。三輪等は、他方で、疎水性鎖-カルボキシメチルキチンを包含していないN-ラウロイル6-カルボキシメチルキトサンの前駆物質は、透明な溶液を「生じ、ミセル溶液の場合に検出された散乱現象が、カルボキシメチルキチン溶液中には観察されなかった」11ことを報告している。本発明は、したがって、三輪等11によって報告されているものとは異なるものであって、光学的に透明な水溶液が、本ポリマーおよび適当な濃度の溶解性の劣る医薬物質から調製される。有機溶媒もまた本溶液の調製には必要とされない。
【0005】
希薄な酸の溶液に溶解する疎水性になるように変性したキトサンもまた報告されている12、13。水溶性材料13とは対照的に、水性媒体中で粒子状14〜19分散体を生じるように疎水性になるように変性したその他の糖質、すなわち、パルミトイルグリコールキトサン14、15、デオキシコール酸変性したキトサン16、17およびコレステロールを有するプルラン18、19またはその代わりになるべきものとして水不溶性ゲル状材料20、21が報告されている。
【0006】
疎水性医薬物質の光学的に透明な溶液の製造に対する、糖質の解重合、制御された親水性置換、および制御された疎水性置換の有利な影響についてはこれまでに記載されてはいないが、ポリマー挙動に対する解重合、親水性置換、および疎水性置換の個々の影響についての報告は文献に見出すことができる。疎水性化したデンプン22および疎水性化したエチルセルロース20の場合、疎水性側基(疎水性ペンダント基)の長さと水溶性の間には間接的な関係が存在する。この指標は、また、両親媒性キトサン9およびデキストラン23の場合の溶液の状態のときのポリマー凝集の度合いならびに疎水性になるように変性したキトサン9の可溶化能特性に直接の影響を有する。疎水性置換の程度もまたデンプン誘導体の水溶性に間接的影響を有することが報告されており22、ヒドロキシプロピルグアールガムの流動特性に影響する。
【0007】
疎水性および親水性置換のバランスが多くのポリマーの性質に影響することも報告されている。100個のモノマーごとに200の置換基から100個のモノマーごとに140の置換基へのカルボキシメチル置換基の量の減少と合いまった100個のモノマーごとに20の置換基から100個のモノマーごとに90の置換基への疎水性置換基の増加により、パクリタキセルのN-ラウロイル6-カルボキシメチルキトサンコロイド11との会合が減少し、より疎水性のポリマーがパクリタキセルのキトサン系コロイドとの会合を促進することを示した。疎水性と親水性の変性の量の間のバランスもまた両親媒性のヒドロキシエチルセルロースの流動特性に影響し24、両親媒性のキトサンに対する最適な疎水性変性量は、これらの材料を使用して洗濯中の羊毛の収縮を防ぐときと一致することが確認された25
【0008】
両親媒性ポリマーの分子量単独に関しては、これは疎水性化したデンプンの乳化活性に間接的な効果を有することが示されており26、遺伝子搬送用に加工されたDNA-キトサンナノ粒子と関連する両親媒性キトサンを有するデオキシコール酸側基(ペンダント基)に対しては最適な分子量が特定されている27。また、疎水性化した(C-6アシル)デキストランの分子量もこれらの系の相分離に影響し、高分子量材料がより相分離しやすいようである23。疎水性ヒドロキシプロピルグアールガム28の分子量は、それらの流動性に影響することが見出されている。しかしながら、N-ラウロイル6-カルボキシメチルキトサンポリマーの分子量は、キトサンに基づくコロイド内部にパクリタキセルをカプセル化するそれらの能力に影響を及ぼさなかった11
【0009】
Zhangらのアシルデキストランに関する研究23に戻ると、この研究の主目的は、結果を接着剤の開発に応用することを視野に入れた「水溶液中の相容性を微妙なやり方で変化させることができるポリマーの組み合わせの群を用意すること」であった。その著者らは、デキストランおよび疎水性になるように変性したデキストランが相分離する傾向は、分子量、疎水性置換の程度および疎水性の鎖長と共に増大すると結論づけている23。Zhangら23は、疎水性および親水性になるように変性したデキストランの相分離に対する分子量の影響を検討していないことに注意すべきである。
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施形態の目的は、少なくとも1つまたは複数の上記の問題を未然に防ぐかまたは軽減することである。
【0011】
本発明の実施形態のさらなる目的は、医薬物質等の疎水性材料を可溶化するポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、約2から30kDの平均分子量の可溶化糖質ポリマーであって、次式、
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、mは、0.01%から10.00%であり、
nは、0.01%から99.98%であり、
pは、0.00%から99.98%であり、
【0015】
Xは、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミン、アミド、アルコールまたはアシル基であり、
【0016】
R'、R''、R'''は、独立して、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミン、アミド、アルコール、アシル基、任意の糖置換基またはオリゴポリオキサC1〜C3アルキレン単位であり、
【0017】
R1、R2およびR3は、独立して、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状の任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアシル基である)
による可溶化糖質ポリマーが提供される。
【0018】
m+n+pは、100%に等しいであろうことが理解される。また、m、nおよびpは、可溶化糖質ポリマー中で任意の配列を形成することができることも理解されるはずである。m、nおよびp単位の配列は、故にランダムまたはmnpmnpmnp等のようにブロックコポリマーの形であり得る。これは、上に示した構造中で異なるモノマー単位の間の点線により識別している。
【0019】
糖質ポリマーは、対イオンをもちプラスに帯電することができる。対イオンは、任意のマイナスイオンで表すことができる。一般的には、その対イオンは、塩化物、ヨウ化物、酢酸塩およびグルコロナイドのいずれかのイオンである。
【0020】
nによって特定されるモノマー単位が帯電していない(すなわち、親水性側基が帯電していない)場合、該糖質ポリマーは、帯電していなくてよく、したがって対イオンは存在しない。
【0021】
一般的には、Xは、C1〜C30、C8〜C24、またはC12〜C18の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状の任意の基から選択される。
【0022】
X基は、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸の脂肪酸誘導体の任意のタイプ、N-ヒドロキシスクシンイミド酸および任意のその他の活性化アシル化合物、ならびに無水物のいずれかより選択することができる。
【0023】
特に、Xは、CH3(CH2)14CONH、またはCH3(CH2)15NHであり得る。
【0024】
R1、R2およびR3は、独立して、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状のC1〜C30、C1〜C12、C1〜C6、またはC1の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアシル基であり得る。
【0025】
一般的には、R1、R2およびR3は、C1〜C4直鎖アルキル基であり得る。
【0026】
好都合には、R1、R2およびR3は、すべてCH3であり得る。
【0027】
いくつかのモノマーについてC2の窒素は完全には置換されておらず、第二級または第三級アミンとして存在することができる。
【0028】
R'、R''、およびR'''は、独立して、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状のC1〜C30、C1〜C12、およびC1〜C6の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミン、アミド、アルコールまたはアシル基であり得る。
【0029】
一般的に、R'、R''、およびR'''は、C1〜C4の直鎖グリコールに基づく基であり得る。
【0030】
一般的に、R'、R''、およびR'''は、糖置換基、グルコース、ガラクトース、フルクトースおよびムラミン酸のいずれかであり得る。
【0031】
R'、R''、およびR'''は、エチレングリコールオリゴマー等のオリゴポリオキサC1〜C3アルキレン単位であり得る。
【0032】
R'、R''、およびR'''は、すべて、CH2OCH2CH2OHまたはCH2CH2OHであり得る。
【0033】
付加的な疎水性および親水性基を結合させる糖質ポリマー出発原料は、約2から30kDの平均分子量を有することができる。好ましくは、その糖質ポリマー出発原料は、分子量約5から17kDを有する。
【0034】
好都合には、X基は、疎水性であり得る。
【0035】
好都合には、R1、R2およびR3基は、第四級アンモニウム塩を形成しており、それは親水性である。
【0036】
親水性基は、水によって十分に水和されており、水と分子レベルで会合している基である。R'、R''、R'''が、CH2O-Yに相当し、かつYが親水性置換基である場合には、さらなる非イオン性親水性基は、NR1R2R3に代わることができる。その場合、糖質ポリマーの両方の親水性置換基は、モノおよびオリゴヒドロキシ置換C1〜C6アルキル、モノおよびオリゴヒドロキシ置換C2〜C6アシル、アルコキシまたはアルキレン基上に置換されている1つまたは複数のヒドロキシ基を場合によって有するC1〜C2アルコキシアルキル、オリゴまたはポリ-(オキサC1〜C2アルキレン)、好ましくは120以下のエチレンオキシド単位を含む(すなわち、分子量5,000の)ポリエチレングリコール、ならびにC1〜C4アルキル(オリゴまたはポリオキサC1〜C3アルキレン)の場合によってはヒドロキシ置換されているもので、好ましくはオリゴまたはポリグリセロールエーテルから選択することができ、NR1R2R3に代わる基は、多糖類の糖単位にエーテル結合により結合していてもよい。そのアシル基は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を含むことができる。
【0037】
R'、R''、およびR'''基もまた親水性であり得る。
【0038】
一般的に、m:n:pの比は、0.1:1:98.9から9:91:0、1:5:96から8:50:42、または3:10:87から5:19:76の範囲を有することができる。
【0039】
m+n+pのモノマー単位の全体数は、約10から100であり得る。好ましくは、m+n+pのモノマー単位の全体数は、約200未満であり得る。
【0040】
一般的に、X基の数は、糖質主鎖中の100個のモノマー基ごとに10を超えない。
【0041】
上記可溶化糖質ポリマーは、また、ペプチド、抗体、ならびにその他のリガンド、例えば葉酸およびトランスフェリン・リガンド、を含むことができ、これらは前記ポリマーが内因性レセプターを標的にすることを可能にし、したがってその医薬物質本体(payload)に、病変部位の内因性レセプターを標的にさせることができる。
【0042】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による可溶化糖質ポリマーを形成する方法が提供され、その方法は、
糖質ポリマーを解重合して解重合した糖質を形成するステップ、
前記解重合した糖質を第1の反応性化合物と反応させて糖質の主鎖に疎水性側基を形成し、それによって疎水性になるように置換した解重合糖質を形成するステップ、および
第2の反応性化合物を前記疎水性になるように置換した解重合糖質に加えてアミン基を第四級化し、それによって可溶化糖質ポリマーを形成するステップを含む。
【0043】
上記糖質ポリマーは、グリコールキトサン、デキストラン類、アルギン酸、デンプン、デキストラン、グアールガムおよびすべてのその他の糖質ポリマーから選択することができる。
【0044】
上記糖質ポリマーは、酸、塩基、または酵素のいずれかにより解重合することができる。
【0045】
上記糖質ポリマーを解重合するために使用する酸は、HCl、H2SO4、HNO3またはHFのいずれかより選択することができる。
【0046】
上記糖質ポリマーは、数日間例えば48時間解重合した後単離し、所要の可溶化糖質ポリマーの平均分子量によってさらなる解重合にかけることができる。
【0047】
解重合される糖質ポリマーの上記平均分子量は、約3から30kD、好ましくは約15kDである。
【0048】
解重合した糖質ポリマー上に疎水性側基を形成する第1の反応性化合物は、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、の脂肪酸誘導体の任意のタイプ; アルキル、アルケニル、アルキニル、環状または非芳香族ハロゲン化物、塩化アシル、無水物、N-ヒドロキシスクシンイミド、および求核攻撃が可能な化合物によってC1炭素上で攻撃され得るその他の活性化アシル化合物のいずれかより選択することができる。求核攻撃とは低電子密度の原子を攻撃する化合物を意味する。アシル基は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基も含むことができる。
【0049】
好ましくは、解重合したグリコールキトサン上に疎水性側基を形成する第1の反応性化合物は、ヘキサデシルブロミド、ドデシルブロミド、ミリスチン酸N-ヒドロキシスクシンイミドのいずれかより選択する。
【0050】
好ましくは、上記脂肪酸誘導体は、パルミチン酸N-ヒドロキシスクシンイミド、パルミチン酸ベンゾトリアゾールカーボネート、パルミチンアルデヒド、塩化パルミトイル、またはパルミチン酸p-ニトロフェニルカーボネートであり得る。
【0051】
第2の反応性化合物は、有機ハロゲン化物であって、この有機物は、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミン、アミド、アルコールまたはアシル基のいずれかより選択することができる。
【0052】
一般的には、上記第2の反応性化合物は、直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状の、C1〜C30、C1〜C12、C1〜C6、またはC1の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミン、アミド、アルコールまたはアシル基のいずれかであり得る。
【0053】
一般的には、上記有機ハロゲン化物の有機基は、短鎖の直鎖アルキル基であり得る。
【0054】
上記有機ハロゲン化物の有機基は、CH3であり得る。
【0055】
得られた可溶化糖質ポリマーは、カラムクロマトグラフィー、透析および凍結乾燥により精製することができる。
【0056】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様による糖質ポリマーおよび薬剤として許容される担体が提供される。
【0057】
薬剤として許容される担体は、当業者にはよく知られており、0.1M、もしくは好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液、または0.9%生理食塩水が含まれるが、これらに限定されない。さらに上記薬剤として許容される担体は、水性または非水性の、溶液、懸濁液および乳濁液であり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、およびオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルションまたは懸濁液が挙げられ、生理食塩水および緩衝媒体を含む。非経口媒体としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸化リンガーオイルまたは固定油が挙げられる。例えば、抗菌薬、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガスおよび同種のもの等の、防腐剤およびその他の添加剤を存在させることもできる。
【0058】
一般的には、糖質ポリマー対薬剤として許容される担体の割合は、0.05重量%から10重量%の範囲である。
【0059】
本発明の第4の態様によれば、第1の態様による糖質ポリマーおよび医薬物質を含む薬剤組成物が提供される。
【0060】
上記医薬物質は、水等の水性溶媒中での溶解性が劣ってもよい。
【0061】
上記医薬物質は、プレドニゾロン、シクロスポリン、エストラジオール、テストステロン、パクリタキセル等の極性基のない多環状構造の医薬物質、およびエトポサイド等の医薬物質のいずれかより選択することができる。
【0062】
一般的に、糖質ポリマー対医薬物質の比は、10重量%:5000重量%であり得る。
【0063】
一般的に、糖質ポリマー対医薬物質対薬剤として許容される担体の比は、約1mg:1〜5mg:1gであり得る。
【0064】
上記薬剤組成物は、錠剤、座剤、液体カプセル剤、散剤の形、または肺送達に適する形のいずれかの形であり得る。
【0065】
錠剤を経口投与のために使用するとき、一般的に使用される担体としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、マルチトール、デキストラン、コーンスターチ、ステアリン酸マグネシウム等の代表的な滑剤、パラベン、ソルビン(sorbin)等の防腐剤、アスコルビン酸、α-トコフェラール、システイン等の酸化防止剤、崩壊剤または結合剤が挙げられる。カプセルとして経口投与するとき有効な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用のための液体としては、シロップ、懸濁液、溶液および乳濁液が挙げられ、これらはこの分野で使用される代表的な希釈剤、例えば水を含むことができる。
【0066】
座剤は、本発明の配合物を、常温では固体であるが腸内の温度では液体となり、直腸内で融解して活性成分を放出するもののような適当な非刺激性賦形剤、例えばココアバターおよびポリエチレングリコールと混合することにより調製することができる。
【0067】
投与量は、年齢、体重、投与時間、投与方法、医薬物質の組み合わせ、患者が治療を受けている程度または状態、およびその他の要因により決定することができる。1日の投与量は、患者の状態および体重、種類または活性成分、および投与経路によって変化し得るが、経口使用の場合、1日の投与量は、約0.1〜2mg/人/日、好ましくは0.5〜100mg/人/日である。
【0068】
本発明の第5の態様によれば、溶解性が劣る医薬物質を糖質ポリマーに溶解する方法が提供され、ここでこの可溶化糖質ポリマーは、特別に設計した平均分子量、ならびに糖質ポリマーの主鎖上に置換された、特定のタイプと量の親水性および疎水性側基を有しており、それによって溶解性の劣る医薬物質をその可溶化糖質ポリマーに溶解することによって実質的に透明な溶液が得られる方法が提供される。
【0069】
本明細書で実質的に光学的に透明な溶液とは、感知できるような光の散乱がなく肉眼には透明な、光学的に透明な溶液を意味する。
【0070】
溶解性が劣る医薬物質とは、1グラムの医薬物質を溶解するために10,000mlを超える溶媒(水)を必要とすることを意味する。それにかわり、これは、水中に0.1mg/mL未満の溶解性を有する医薬物質を意味する。
【0071】
一般的に、上記可溶化糖質ポリマーは、キトサン、デキストラン類、アルギニン酸、デンプン、デキストラン、グアールガムおよびすべてのその他の糖質ポリマーの任意の誘導体から選択する。
【0072】
特に、第1の態様による糖質ポリマーを使用することができる。
【0073】
上記溶解性の劣る医薬物質は、シクロスポリン、プレドニゾロン等のステロイド、エストラジオール、テストステロン、パクリタキセル等の極性基のない多環状構造の医薬物質、およびエトポサイド等の医薬物質、のいずれかより選択することができる。
【0074】
添付の図面を参照しながら例としてのみ本発明の実施形態をここで説明する。
【0075】
(実施例1)
材料
グリコールキトサン、パルミチン酸N-ヒドロキシスクシンイミド、ヨウ化メチル、1-ブロモヘキサデカン、ピレンおよびパクリタキセルは、すべて英国のSigma Aldrich Coから入手した。酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロンおよびシクロスポリンは、米国のAllerganからすべて入手した。塩酸は、英国のMerckから入手し、すべての有機溶剤は、ストラスクライド大学の純粋・応用化学科(the Department of Pure and Applied Chemistry, University of Strathclyde)から購入した。
【0076】
方法
グリコールキトサン(GC)の分解
グリコールキトサン(GC)の酸分解を、既に記載した15ようにして行った。グリコールキトサン(2g)を塩酸(4M、150ml)に溶解し、その溶液をろ過して不溶性の不純物を除去した。そのろ過した溶液を、予め加熱して50℃に設定した湯浴にセットした。48時間後反応を停止し、生成物を単離して以下に記すようにして精製した。その反応溶液を蒸留水(24時間にわたる6回の交換で5L)に向けて完全に透析した(ヴィスキング(Visking)のシームレスセルロースチューブ、分子量カットオフはシトクロムcに対して12,400)。その透析処理の終点の透析液は、中性のpHを有していた。その透析液をその後凍結乾燥し、その材料をクリーム色の脱脂綿に似た材料として回収した。その酸分解のステップは、4時間、8時間、24時間または48時間のいずれかで繰り返し、さらに解重合した材料を生じさせた。
【0077】
低分子量パルミトイルグリコールキトサン(PGC)の合成
既に説明したようにして14、パルミトイルグリコールキトサン(PGC)を合成した。無水エタノール(24mL)と水(76mL)の混合物中のグリコールキトサン(500mg)、重炭酸ナトリウム(376mg)を、無水エタノール(150mL)中のパルミチン酸N-ヒドロキシスクシンイミド(198mg)と反応させた。パルミチン酸N-ヒドロキシスクシンイミド溶液は、滴下して加えた。72時間攪拌した後、エタノールの殆どを蒸発させ、残った液体を3容量のジエチルエーテル(100mL)で抽出し、水に向けて完全な透析をして生成物を単離し、凍結乾燥して白色の脱脂綿状の固体を生じさせた。
【0078】
低分子量ヘキサデシルグリコールキトサン(GCH)の合成
ヘキサデシルグリコールキトサン(GCH)を、WakitaおよびHashimotoの方法29の修正法に基づいて合成した。グリコールキトサン(500mg)を、メタノールとN-メチルピロリドン(20mL)の1:1の混合物に溶解し、これに無水エタノール(20mL)に溶解した重炭酸ナトリウム(376mg)の溶液を滴下して加えた。1-ブロモヘキサデカン(3.5mL)を、メタノール、N-メチルピロリドン、無水エタノール(5mL:5mL:10mL)の混合物に新たに溶解し、この溶液を塩基性グリコールキトサン溶液に1時間にわたって滴下して加えた。得られた反応混合物を油浴中70〜85℃で攪拌しながら4時間にわたって還流し、続いてろ過してろ過液を保持した。そのエタノールを次に減圧下50℃で蒸発除去し、生成した残留物を蒸留水(30mL)に溶解した。この溶液を次に6回交換する5Lの水に向けて24時間にわたって透析し、冷凍乾燥して灰色がかった固体を生じた。
【0079】
低分子量第四級アンモニウムパルミトイルグリコールキトサン(GCPQ)および低分子量第四級アンモニウムヘキサデシルグリコールキトサン(GCHQ)の合成
第四級化は、Domard等により報告されているもの30と基本的に同じ方法を使用して行った。PGCまたはGCH(300mg)を、N-メチル-2-ピロリドン(25ml)中に分散させ、一晩室温で12時間おいた。水酸化ナトリウム(40mg)、ヨウ化メチル(1.0g)およびヨウ化ナトリウム(45mg)を加え、反応系を窒素気流下36℃で3時間攪拌した。第四級アンモニウム生成物は、ジエチルエーテルで沈殿させて回収し、ろ過して、多量の無水エタノール、続いて多量のジエチルエーテルで洗浄し、褐色の吸湿性固体を生じさせた。その固体を水(100ml)に溶解して黄色の粘稠な溶液を生じさせた。得られた水溶液を6回交換する水(5L)に向けて24時間にわたって完全に透析し、生成物を凍結乾燥してヨウ化物塩として存在する白色の綿状の固体を生じさせた。そのヨウ化第四級アンモニウムを、次に水(150ml)に溶解して透明な溶液を生じさせ、その溶液をアンバーライト(Amberlite)IRA-93Cl-を充填したカラム(1×6cm)に通した。そのカラムは使用前に樹脂を充填し、その後1容量のその樹脂(30ml)を充填し、その後塩酸溶液(90ml、1M)で、続いて蒸留水(500ml)で洗浄して中性のpHを生じさせた。カラムからの透明な溶出液を凍結乾燥し、透明な繊維状固体としてのGCPQを生じさせた。
【0080】
1H NMR
1H NMRスキャン(積分つき)および1H相関分光法実験を、重水素化メタノールに溶解したGCPQおよびGCHQの試料について実施し、糖のピークと対比して、パルミトイルメチル、アルキルメチルまたは第四級アンモニウムメチルのピークを積分することによってパルミトイル化および第四級化の程度を測定した31。パルミトイル化、アルキル化または第四級化のモル%は、それぞれ、100モルの糖モノマー当たりのパルミトイル基、アルキル基または第四級アンモニウム基を有する糖モノマーのモル数を指している。
【0081】
MWの測定
分解したグリコールキトサン(GC)の分子量は、GPC-MALLS(すなわち、ゲル浸透クロマトグラフィー-多角レーザー光散乱法)により測定した。ポリマーを緩衝酢酸溶液(酢酸ナトリウム0.3M、酢酸0.2M)に溶解し、ろ過(0.2μm)した試料(200μL、1〜2mg/mL)を、ウォーターズ社製717プラス型オートサンプラーを用いてGPCカラムに注入した。試料は、PSS HEMA-BIO 300(330×8mm、粒径=10μm、デキストランに対する排除限界=5×105)およびPSS HEMA-BIO 40(330×8mm、粒径=10μm、デキストランに対する排除限界=3×106)カラム(Polymer Standards Services、ドイツ国マインツ)によりクロマトグラフにかけた。移動相は緩衝酢酸溶液(酢酸ナトリウム0.3M、酢酸0.2M)であり、分子量は、30mV直線偏光ガリウムヒ素レーザー(λ=690nm)およびOptilab DSP干渉型屈折計(λ=690nm、Wyatt Technology、米国)を備えたドーン・イオス(DAWN EOS) MALLS検出器(20〜150°における18角度-Wyatt Technology、米国)を用いて測定した。測定はすべて室温で行った。溶液中の、分子量、分子量分布および分子の大きさは、Windows(登録商標)用ソフトウェアAstra(v4.73)を用いてGPCグラフから得た。
【0082】
移動相中のGCの屈折率増分(dn/dc)は、Optilab DSP干渉型屈折計(λ=690nm、Wyatt Technology、米国)により25℃で測定した。様々な濃度のろ過(0.45μm)したポリマー溶液を装入するにはRheodyne 7725試料注入器を使用し、データは、Windows(登録商標)用ソフトウェアDNDC(v5.31)を用いて処理した。
【0083】
蛍光分光法
ピレン(2μM)の希薄水溶液を、最初はピレンをエタノール(0.4mg/mL)に溶解することにより調製した。この溶液の100μlをピペットで容量フラスコ(100mL)に取り、窒素ガスを流してエタノールを乾燥させた。その溶液を次に蒸留水中でつくり上げた。そのピレンの水溶液を溶媒として使用し、様々な濃度でポリマー溶液を作製した。蛍光発光スペクトルを335nmの励起波長のところで記録した(340nm〜600nm)。I3/I1比を、ピレンの発光スペクトルにおける第3(383nm)および第1(375nm)の振電ピークの強度から計算した32。I1ピークに対するI3ピークの大きさの増加は、より疎水性の環境を示す32。水のような極性溶媒においてはこの値はおよそ0.67である。
【0084】
可溶化の検討
様々な量のGCPQおよびGCHQの試料を水に溶解し、計量した医薬物質を加え、プローブ超音波処理(MSE Soniprep 150、Sanyo、英国、装置はその最大出力の60〜85%でセットした)を5分間または透明な溶液が得られるまで行った。光学密度の測定(λ= 600nm、UV1 分光光度計、ThermoUnicam、英国)により透明な溶液の存在が確認された。その試料は、冷却して(4〜8℃)または室温(22℃)で保存した。様々な時間間隔で液体試料をろ過(0.45μm、直径25mm)し、最初のミリリットルを廃棄した。残りのろ過液を保持し、溶解した医薬物質の分析を、HPLCを使用して行った。
【0085】
プレドニゾロンの検定
ポリマー-医薬物質製剤のろ過試料中のプレドニゾロンの量をHPLCにより分析した。移動相(アセトニトリル、水 36:64)で適当に希釈した試料(20μL)を、Waters 717オートサンプラーおよびWaters 515アイソクラティックポンプを用いてSymmetry C18逆相3.5μmカラム(4.6mm×75mm、Waters Instruments、英国)に注入した。ピークの検出は、243nmに波長をセットしたWaters 486波長可変紫外吸光検出器により、データはWaters 746データモジュールを用いて集めた。移動相は、1ml/分の流速にセットした。検量線は、移動相に溶解したプレドニゾロンの試料(0.1〜1.0mg/ml)を用いて用意した。
【0086】
シクロスポリンの検定
シクロスポリンは、カラムがWaters Spherisorb 5μm、4.6mm×250mmカラムで、Jones Chromatography Column Heaterモデル7971により80℃に維持したこと以外は上と同じ器具類でのHPLCにより分析した。アセトニトリル、水(1:1)に溶解したろ過試料(20μL)を、カラムに注入し、移動相は、1.2mL/分の流速の、アセトニトリル:水:t-ブチル-メチル-エーテル:リン酸(600:350:50:1)とした。ピークは、210nmの波長におけるUV検出により検出した。検量線は、その医薬物質の溶液(1〜10μg/ml)を使用して用意した。
【0087】
血液適合性の検討
およそ5mlのヒト血液を遠心分離機にかけ(1000g×10分)、上澄みを除去し、赤血球沈殿物を回収した。その沈殿物をPBS(pH 7.4、4℃)中に再懸濁させて遠心分離機にかけ(1000g×10分)、2回洗浄した。その沈殿物を次に計量し、その赤血球の3%w/w分散物をPBS(pH7.4)中に用意した。この赤血球懸濁液の100μLを96個ウェルプレートの各ウェルに入れた。この赤血球懸濁液に異なる濃度の試料製剤100μLを加えた。試料製剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH=7.4)中または水中のいずれかに用意した。PBS(pH=7.4)およびTriton X-100(1%w/v)が、それぞれネガティブコントロールおよびポジティブコントロールの役目を果たした。上記プレートは、37℃で4時間インキュベートし、その後そのプレートを遠心分離機にかけ(1000g×10分)、100μLの上澄みを除去し、新たなマイクロタイタープレートに入れた。570nmにおける吸光度を測定し、その結果を、Triton X-100が100%の溶血を与え、かつPBS(pH=7.4)が0%の溶血を与えると仮定して溶血の百分率で表した。
【0088】
細胞毒性の検討
ヒトの肺癌細胞株(A549、ATCC CCL-185)およびヒトの類表皮癌細胞株(A431、ATCC CRL-1555)を両方共、10%ウシ胎仔血清(FCS)および2mMのグルタミン(GibcoBRL、英国)を補ったダルベッコの最小必須培地(DMEM)中に、10%CO2および37℃で保存した。
【0089】
製剤の細胞毒性を測定するために、標準的なMTT(3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミドチアゾイルブルー指示染料)検定を行った33。製剤当たり1組ずつ、96個ウェルマイクロタイタープレートに、ウェル当たり約800の細胞を接種し、10%CO2および37℃で72時間インキュベートした。媒体を次にウェルから除去し、異なる濃度の各製剤(200μL、6%デキストロース中で調製し媒体に希釈したもの)を、そのウェルに加えた。DMEM単独およびTriton X-100(1%w/v)を、それぞれポジティブコントロールおよびネガティブコントロールとして使用した。そのプレートを標準状態下で4時間インキュベートし、医薬物質を次にウェルから除去しDMEMと置き換えてその細胞をさらに72時間インキュベートした。指示染料(50μL、50mg/mL)を細胞に続いて加え、それをその後暗所でさらに4時間インキュベートした。インキュベート時間の終わりに染料を除去し、細胞を、ジメチルスルホキシド(200μL)に加えて溶解させた。溶解させた細胞に、次にセーレンセングリシン緩衝液(25μL)を加え、570nmにおいて吸光度を測定した。値は、DMEMだけを含むウェルから得られたバックグラウンドをコントロールから差し引いた百分率として表している。
【0090】
GCPQおよびGCHQの構造は、それぞれ、図1aおよび図1bに示す。GCPQおよびGCHQは、白色の繊維状固体として回収した。既に報告したように15、グリコールキトサン出発原料については、酸分解時間の増加は、解重合の程度の増加(表1)をもたらすが、最初の48時間が過ぎると解重合の量は減速される(表1)。
【0091】
【表1】

【0092】
これらのグリコールキトサンポリマーの脂質のおよび第四級アンモニウムの誘導体は、プレドニゾロンおよびシクロスポリン等の疎水性医薬物質を表2に示すように水性媒体中に可溶化することが可能である。
【0093】
【表2】

【0094】
すべての溶液が、0.000の光学密度を有する蒸留水に対して0.001未満の光学密度測定値である明澄透明な液体であった。
【0095】
溶液は、水で10回希釈しても光学的に透明のままであった。これらの溶液は、「濁度」のある液体が得られ、疎水性医薬物質を10%v/vのエタノールが存在する中のポリマー製剤に加えて、エタノールの除去を試みたが確認されなかった三輪らにより報告されたキトサン-パクリタキセルのコロイド11とは対照的である。第四級化、アシル化およびアルキル化の量を定量化するには1H NMRを使用し、親水性指数(HI)の値を表2に示す。そのHI(1H NMRのデータから誘導される)は、ポリマーの親水度の特性を示すために本明細書で使用する用語であり、この値は、前に水溶性だったポリマーまたは水溶性だったポリマー誘導体に加える追加のイオン性親水性置換基と疎水性置換基の間の関係を定量化する。水溶性ポリマーは、1mg/mLより上の量で水に溶解するポリマーとして説明される8。これらの糖質ポリマーは、本明細書で示す非イオン性親水性単位でさらに置換することができる。
【0096】
下に示す表3のデータは、ポリマーが水性媒体中で凝集すると、I3/I1比の増加によって証明される疎水性ドメインを生成することを示す。
【0097】
【表3】

【0098】
これらの疎水性ドメインは、疎水性溶質の可溶化の領域を提供し、一方親水性置換基は水性溶媒とのポリマーの親和性を増して相分離を防止する。
【0099】
表3に示されているように、ポリマーの疎水性は、1mg/mLのポリマー濃度(ピレンプローブを使用して測定)で存在するときにGCHQ4824 = GCPQ4848 > GCPQ488 > GCHQ488 = GCPQ4824の傾向をたどって集まる。ピレンプローブの使用によって得られたこの疎水性の順位は、HIを使用して得られた疎水性順位: GCPQ4848 = 1.58、GCPQ488 = 3.33、GCHQ488#1(すなわち、異なるバッチのポリマー) = 4.22、およびGCPQ4824 = 4.44(表2)、と類似している。さらに、より極性の医薬物質のプレドニゾロンの場合に可溶化された医薬物質の最大量は、より極性のポリソープの1つであるGCHQ488(表2および4)によって可溶化されている(表2)。
【0100】
【表4】

【0101】
また、最小極性のポリソープ(最低のHI値を有する)および最高の分子量のもの、すなわちGCPQ484およびGCHQ484は、1mg/mLの量では水に溶解しない(表1および2)。
【0102】
比較的高いレベルの疎水性もまた、GCPQ4848およびGCHQ4824により可溶化されたシクロスポリンのどちらかといえば低い最大量から明らかなように、シクロスポリンの可溶化を(程度は小さいけれども)妨げる。これを下の表5に示す。
【0103】
【表5】

【0104】
可溶化ポリマーは、かくして、制御された数の疎水性および親水性残基で置換するとともに解重合しなければならない。上記分子量の範囲内(10〜20kD)で、より大きい極性のパルミトイル置換基の場合、約2を超えるHI(1H NMRから計算したとき)の値が最も効果的なポリマーのようであり、そして、より小さい極性のヘキサデシル置換基の場合、約3を超えるHI値が最も効果的な可溶化剤のようである(表2)。明らかに、プレドニゾロンおよびシクロスポリンの場合、高レベルの第四級化および低レベルの疎水性変性は、これらのポリマーによる可溶化に有利に作用する(表1〜4)。
【0105】
これまでに製造されているN-ラウロイル6-カルボキシメチルキトサンポリマー11については、高レベルのカルボキシメチル基および低レベルのラウロイル基への変動によって、キトサンに基づくコロイドとパクリタキセルの会合の減少が生じた。本発明においては、ポリマー分子が水分子によって完全に水和される能力(イオン性第四級アンモニウム基の存在)の方が、ポリマーが凝集してポリマーのミセル(疎水性基の存在)となり、疎水性溶質を保護することができる疎水性空隙を提供する能力よりも、より一層重要な役割を果たす。
【0106】
上記可溶化ポリマーは、水溶性で解重合された糖質から調製すべきであり、その最も有効なポリマーは、200個のモノマー単位未満の重合度を有する。上記可溶化ポリマーは、さらに、100個のモノマーごとに10を超えない量の疎水性置換基を有することができ、そして最終的にはポリマー鎖当り1つ以上の置換基で追加のイオン性親水性置換量を有することができる。任意のさらなる親水性置換基が、ポリマー鎖ごとに少なくとも1つの親水性置換基として存在してもよい。N-ラウロイル6-カルボキシメチルキトサンについての従前の研究は、パクリタキセルのキトサンに基づくコロイドとの会合が、分子量50kDから2kDに重合度を減少しても増加しないことを示している11。しかしながら、GCPQ484およびGCPQ4848について示されているデータ(表2)により明らかなように、分子量のわずかな変化でさえもポリマーの可溶化特性に影響することが本件に関しては示されている。
【0107】
最後に、N-ラウロイル6-カルボキシメチルキトサンを使用することが記されている研究においては、パクリタキセルをカプセル化するポリマーは、100個のモノマー当たり20の置換基を超える疎水性置換の量と100個のモノマー当たり最低量140のカルボキシメチル基とを有していた11。対照的に、本発明は、100個のモノマー単位当たり最大量10の疎水性置換基のものに関する。
【0108】
本発明の可溶化ポリマーは、ペプチド、抗体、ならびにその他のリガンド、例えば葉酸およびトランスフェリン・リガンド、を含むことができ、これらは前記ポリマーが内因性レセプターを標的にすることを可能にし、したがってその医薬物質本体(payload)に、病変部位の内因性レセプターを標的にさせることができる。
【0109】
HPLC分析では、プレドニゾロンの保持時間は2.7分を使用し、検量線は0.998の相関係数を有しており、一方シクロスポリンの保持時間は13.7分であり、検量線は0.98の相関係数を有していた。可溶化した材料は、キトサンに基づくポリマー製剤で最高12週間安定しており、この期間を通して可溶化した医薬物質の最大90%を保持した。(表4および5)。
【0110】
本明細書で示す可溶化ポリマーは、生体適合性である。GCPQ488およびGCPQ488、シクロスポリン試料の水溶液は、最大40%の細胞溶解を生じ、一方、等張性PBS(pH=7.4)中の製剤は、1mg/mLのポリマー濃度まで約10%の細胞溶解を与えた(図2)。低張性水性環境が、したがって、観察された細胞溶解の原因である。ポリマー製剤内の1mg/mLまでのシクロスポリンの包含は、細胞を溶解から保護するように見える(特に溶媒としての水の存在中で)が、5mg/mLのプレドニゾロンの包含は、ポリマーにより見られる細胞溶解の量を増加した(図2)。これらのグリコールキトサンポリソープは、細胞に対して感知できる量の溶血反応は示さないと結論づけられる。しかしながら、ここで注意すべきことは、ポリソープの存在下において医薬物質の活性が観測されることである。
【0111】
0.1mg/mLの量より下では、グリコールキトサンに基づくポリソープはいずれも、A431およびA549細胞株の両方で特に細胞毒性ではない(図3)。しかしながら、0.01mg/mLのポリマー濃度より下では製剤のいずれもが50%より少ない細胞生存の観測結果をもたらさなかったものの、プレドニゾロンまたはシクロスポリンのいずれかの添加はある程度の細胞毒性の出現を引き起こす。グリコールキトサンポリソープは、特に細胞毒性のポリマーではなく、医薬物質製剤で見られる毒性は、医薬物質の添加が主因であってポリマーそれ自体の毒性によるものではないと結論づけることができる。再度ここで注意すべきことは、ポリソープの存在下で、医薬物質の活性が観測されることである。
【0112】
(実施例2)
この実施例は、糖質可溶化剤を選択する高スループット方法に関する。
【0113】
材料
グリコールキトサン、パルミチン酸N-ヒドロキシスクシンイミド、ヨウ化メチル、N-メチルピロリドン、ヨウ化ナトリウム、水酸化ナトリウム、プレドニゾロンおよび6-メチルプレドニゾロンは、すべて英国のSigma-Aldrich Co.から入手した。無水エタノールは、英国のBamford Laboratoriesにより、ジエチルエーテルは、英国のBDH Laboratoriesにより供給された。アセトニトリルは、ドイツ国のRiedel de-Haenにより供給された。
【0114】
方法
グリコールキトサン(GC)の分解
上記15のようにしてグリコールキトサン(GC)を48時間分解した。25種の第四級アンモニウムパルミトイルグリコールキトサンポリマーを、その分解した材料から異なる量の疎水性(パルミトイル)および親水性(第四級アンモニウム)置換により合成した。
【0115】
エタノール中のパルミチン酸N-ヒドロキシスクシンイミド(PNS)(5.28mg/mL)、N-メチルピロリドン(NMP)中のヨウ化ナトリウム(2mg/mL)、無水エタノール中の水酸化ナトリウム(10mg/mL)、重炭酸ナトリウムの溶液(7.53mg/mL)中のグリコールキトサン(10mg/mL、GC)およびメタノール中のプレドニゾロン(10mg/mL)の溶液を用意した。
【0116】
25種の異なるポリマーを、表6に示す量のパルミチン酸N-ヒドロキシスクシンイミドの溶液を、25mLの試験管に入れてあるグリコールキトサン-重炭酸ナトリウム溶液(1mL)に加えることにより合成した。その管を室温で16時間振とうし、続いて85℃で4時間加熱してエタノールを蒸発除去した。
【0117】
管中の残留物をジエチルエーテル(3×15mL)で抽出して未反応のパルミチン酸を除去し、続いて無水エタノールで洗浄して極性混入物質を除去した。エタノールを除去し残留エタノールは窒素気流下で乾燥した。第四級化反応のために、表6に示す量のNMP中のヨウ化ナトリウムの溶液を、その試験管に加えた。その後続けて表6に示す量の水酸化ナトリウムの溶液およびヨウ化メチルを加えた。
【0118】
その管を36℃で3時間加熱し、その管にジエチルエーテル(5mL)を加えた。これにより第四級アンモニウム生成物の沈殿が起こった。上澄みを管からデカントし、残留物をジエチルエーテルで洗浄した(3×5mL)。その残留物を次に一晩放置して乾燥し、続いて各管に水(2mL)を加えて「濃厚ポリマー溶液」としてここでは区別するポリマー溶液を生成させた。別々の25本一組の管に、プレドニゾロンのメタノール溶液の0.1mLを加えた。メタノールを窒素気流下で除去し、各管に上記の25種の第四級アンモニウムパルミトイルグリコールキトサン溶液の1つの試料(1mL)を加えた。
【0119】
この混合物をプローブ超音波破砕(MSE Instruments、Sanyo、英国)し、0.45μmのフィルターを用いてろ過し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。上の合成ステップから得られたポリマー溶液を、25種の溶液の各1mLに、追加量の水(1mL)を加えて希釈し、「希薄ポリマー溶液」としてここでは名づけるものを生成させ、上で記したプレドニゾロン可溶化手順をその合成したポリマーのより希薄な溶液によりもう一度繰り返した。
【0120】
ポリマー-医薬物質製剤のろ過(0.45μm)した試料中のプレドニゾロンの量を、HPLCにより分析した。移動相(アセトニトリル、水 36:64)で適当に希釈され、6-メチルプレドニゾロンを含む(1μg/mL)試料(20μL)を、Waters 717オートサンプラーおよびWaters 515アイソクラティックポンプを用いてSymmetry C18逆相3.5μmカラム(4.6mm×75mm、Waters Instruments、英国)に注入した。ピークの検出は、243nmに波長をセットしたWaters 486波長可変紫外吸光検出器により、データはWaters Empowerソフトウェアを用いて集めた。移動相は、1ml/分の流速にセットした。検量線は、内部標準としての6-メチルプレドニゾロン(1μg/mL)および移動相に溶解したプレドニゾロンの試料(0.1〜20μg/mL)により作成した。
【0121】
【表6】

【0122】
【表7】

【0123】
結果は以下のとおりである。
【0124】
【表8】

【0125】
結果についてのコメント
上で概要を述べた高スループットの方法は、特定の医薬物質(この場合はプレドニゾロンである。)に対する高い可溶化能をもつポリマー(例えばポリマーE1)を選択することが可能であった。ポリマーE1は、次に、バルク量で合成することができる。約0.01〜5mg/mLの低濃度のポリマー(希薄ポリマー溶液)は、高濃度(約5〜10mg/mLの)ポリマーより優れたモデル医薬物質の可溶化剤であった。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1a】第四級アンモニウムパルミトイルグリコールキトサン(GCPQ)を表す図である。
【図1b】第四級アンモニウムヘキサデシルグリコールキトサン(GCHQ)を表す図である。
【図2a】最初の48時間の酸分解およびさらなる8時間の酸分解を受けさせ、続いてパルミチン酸N-ヒドロキシスクシンイミドによりアシル化し、さらにヨウ化メチルによりアルキル化したグリコールキトサンから調製したGCPQ(すなわちGCPQ488)の溶血活性を表す図である。
【図2b】1:1の比率のGCPQ488とシクロスポリンの溶血活性を表す図である。
【図2c】最初の48時間の酸分解およびさらなる8時間の酸分解を受けさせ、続いてヘキサデシルブロミドによりアルキル化し、ヨウ化メチルによりアルキル化したグリコールキトサンから調製したGCHQ(すなわちGCHQ488)の溶血活性を表す図である。
【図2d】1:5の比率のGCHQ488とプレドニゾロンの溶血活性を表す図である。
【図3a】GCPQ488でのインキュベーション後のA549細胞株に対する細胞毒性を表す図である。
【図3b】GCPQ488およびシクロスポリンでのインキュベーション後のA549細胞株に対する細胞毒性を表す図である。
【図3c】GCHQ488でのインキュベーション後のA549細胞株に対する細胞毒性を表す図である。
【図3d】1:5の比率のGCHQ488およびプレドニゾロンでのインキュベーション後のA549細胞株に対する細胞毒性を表す図である。
【図3e】GCPQ488およびシクロスポリンでのインキュベーション後のA431細胞株に対する細胞毒性を表す図である。
【図3f】GCHQ488でのインキュベーション後のA431細胞株に対する細胞毒性を表す図である。
【図3g】1:5の比率のGCHQ488とプレドニゾロンでのインキュベーション後のA431細胞株に対する細胞毒性を表す図である。
【図1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の約2から30kDの平均分子量の可溶化糖質ポリマー:
【化1】

(式中、mは、0.01%から10.00%であり、
nは、0.01%から99.98%であり、
pは、0.00%から99.98%であり、
Xは、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミン、アミド、アルコールまたはアシル基であり、
R'、R''、R'''は、独立して、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミン、アミド、アルコール、アシル基、任意の糖置換基またはオリゴポリオキサC1〜C3アルキレン単位であり、
R1、R2およびR3は、独立して、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状の任意のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアシル基である)。
【請求項2】
前記m、nおよびpの単位が、可溶化糖質ポリマー中で任意の配列を形成している請求項1に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項3】
前記m、nおよびpの単位の配列が、ランダムまたはブロックコポリマーの形である請求項1に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項4】
前記ブロックコポリマーが、mnpmnpmnpである請求項3に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項5】
前記糖質ポリマーが、対イオンをもちプラスに帯電している請求項1〜4のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項6】
前記対イオンが、任意のマイナスイオンで表される請求項5に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項7】
前記対イオンが、塩化物、ヨウ化物、酢酸塩およびグルコロナイドのいずれかのイオンである請求項5および6のいずれかに記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項8】
nによって特定されるモノマー単位が帯電していない(すなわち、親水性側基が帯電していない)とき、前記糖質ポリマーは、帯電しておらず、したがって対イオンは存在しない請求項1から4のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項9】
Xが、C1〜C30、C8〜C24、またはC12〜C18の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状の任意の基から選択される請求項1〜8のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項10】
X基が、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸の脂肪酸誘導体の任意のタイプ、N-ヒドロキシスクシンイミド酸およびその他の活性化アシル化合物、ならびに無水物のいずれかから選択される請求項1〜9のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項11】
Xが、CH3(CH2)14CONH、またはCH3(CH2)15NHである請求項1から8のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項12】
R1、R2およびR3が、独立して、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状のC1〜C30、C1〜C6、またはC1のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアシル基である請求項1〜11のいずれかに一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項13】
R1、R2およびR3が、C1〜C4直鎖アルキル基である請求項1から11のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項14】
R1、R2およびR3のすべてがCH3である請求項1から11のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項15】
いくつかのモノマーについてC2の窒素は完全には置換されておらず、第二級または第三級アミンとして存在している請求項1〜14のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項16】
R'、R''、およびR'''が、独立して、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状のC1〜C30、C1〜C12、およびC1〜C6のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミン、アミド、アルコールまたはアシル基である請求項1〜15のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項17】
R'、R''、およびR'''が、C1〜C4の直鎖グリコールに基づく基である請求項1から15のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項18】
R'、R''、およびR'''が、以下の糖置換基:グルコース、ガラクトース、フルクトースおよびムラミン酸のいずれかである請求項1から15のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項19】
R'、R''、およびR'''が、エチレングリコールオリゴマー等のオリゴポリオキサC1〜C3アルキレン単位である請求項1から15のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項20】
R'、R''、およびR'''のすべてが、CH2OCH2CH2OHまたはCH2CH2OHである請求項1から15のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項21】
付加的な疎水性および親水性基を結合させる糖質ポリマー出発原料が、約2から30kDの平均分子量を有する請求項1〜20のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項22】
糖質ポリマー出発原料が、分子量約5から17kDを有する請求項1から20のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項23】
前記X基が疎水性である請求項1〜22のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項24】
前記R1、R2およびR3基が、親水性である第四級アンモニウム塩を形成している請求項1〜23のいずれか一項に記載の可溶化糖質。
【請求項25】
R'、R''、およびR'''が、CH2O-Yに相当し、Yが親水性置換基である場合には、非イオン性親水性基がNR1R2R3に置き換わる請求項1〜24のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項26】
糖質ポリマーの親水性置換基が、モノおよびオリゴヒドロキシC1〜C6アルキル、モノおよびオリゴヒドロキシ置換C2〜C6アシル、アルコキシまたはアルキレン基上で置換されている1つまたは複数のヒドロキシ基を場合によって有するC1〜C2アルコキシアルキル、オリゴまたはポリ-(オキサC1〜C2アルキレン)、120個以下のエチレンオキシド単位(すなわち、分子量5,000)を含むポリエチレングリコール、ならびにC1〜C4アルキル(オリゴまたはポリオキサC1〜C3アルキレン)の場合によってはヒドロキシ置換されている好ましくはオリゴまたはポリグリセロールエーテルから選択され、NR1R2R3に置き換わる基が、多糖類の糖単位にエーテル結合により結合している請求項25に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項27】
前記R'、R''、およびR'''基もまた親水性である請求項25または請求項26に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項28】
m:n:pの比が、0.1:1:98.9から9:91:0、1:5:96から8:50:42、または3:10:87から5:19:76の範囲を有する請求項1〜27のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項29】
m+n+pのモノマー単位の全体数が、約10から100である請求項1〜28のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項30】
m+n+pのモノマー単位の全体数が、約200未満である請求項1〜29のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項31】
X基の数が、糖質主鎖中の100個のモノマー基ごとに10を超えない請求項1〜30のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマー。
【請求項32】
前記可溶化糖質ポリマーが内因性レセプターを標的にすることを可能にし、かつその医薬物質本体に病変部位の内因性レセプターを標的にさせることができるペプチド、抗体、ならびにその他のリガンド、例えば葉酸およびトランスフェリン・リガンドなどの追加の標的基をさらに含む、請求項1〜31のいずれか一項に記載の可溶性糖質ポリマー。
【請求項33】
前記請求項1〜32のいずれか一項に記載の可溶化糖質ポリマーを形成する方法であって、
糖質ポリマーを解重合して解重合した糖質を形成するステップ、
前記解重合した糖質を第1の反応性化合物と反応させて糖質の主鎖に疎水性側基を形成し、それによって疎水性となるように置換した解重合糖質を形成するステップ、および
第2の反応性化合物を前記疎水性となるように置換した解重合糖質に加えてアミン基を第四級化し、それによって前記可溶化糖質ポリマーを形成するステップ
を含む方法。
【請求項34】
前記糖質ポリマーを、グリコールキトサン、デキストラン類、アルギン酸、デンプン、デキストラン、グアーガムおよびすべてのその他の糖質ポリマーから選択する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記糖質ポリマーを、酸、塩基、または酵素のいずれかにより解重合する請求項33および34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
糖質ポリマーを解重合するために使用する前記酸を、HCl、H2SO4、HNO3またはHFのいずれかより選択する請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記糖質ポリマーを数日間例えば48時間解重合した後単離し、可溶化糖質ポリマーの所要の平均分子量に応じてさらなる解重合にかける請求項33から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
解重合される糖質ポリマーの前記平均分子量が、約3から30kD、または場合によっては約15kDである請求項33から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
解重合した糖質ポリマー上に疎水性側基を形成する前記第1の反応性化合物を、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸など、の脂肪酸誘導体の任意のタイプ; アルキル、アルケニル、アルキニル、環状または非芳香族ハロゲン化物、塩化アシル、無水物、N-ヒドロキシスクシンイミドおよびC1炭素上で求核攻撃が可能な化合物によって攻撃され得るその他の活性化アシル化合物のいずれかより選択する請求項33から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
解重合したグリコールキトサン上に疎水性側基を形成する前記第1の反応性化合物を、ヘキサデシルブロミド、ドデシルブロミド、ミリスチン酸N-ヒドロキシスクシンイミドのいずれかより選択する請求項33から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記脂肪酸誘導体が、パルミチン酸N-ヒドロキシスクシンイミド、パルミチン酸ベンゾトリアゾールカーボネート、パルミチンアルデヒド、塩化パルミトイル、またはパルミチン酸p-ニトロフェニルカーボネートである請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記第2の反応性化合物が、有機ハロゲン化物であって、該有機物を、任意の直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミン、アミド、アルコールまたはアシル基のいずれかより選択する請求項33から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の反応性化合物が、直鎖もしくは枝分かれ、置換もしくは非置換、または環状の、C1〜C30、C1〜C12、C1〜C6、またはC1の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミン、アミド、アルコールまたはアシル基のいずれかである請求項33から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1から32のいずれか一項に記載の糖質ポリマーおよび薬剤として許容される担体。
【請求項45】
薬剤として許容される担体に対する糖質ポリマーの割合が、0.05重量%から10重量%の範囲である請求項44に記載の糖質ポリマー。
【請求項46】
薬剤組成物であって、請求項1から32のいずれか一項に記載の糖質ポリマーおよび医薬物質を含む薬剤組成物。
【請求項47】
前記医薬物質が、プレドニゾロン、シクロスポリン、エストラジオール、テストステロン、パクリタキセル等の極性基のない多環状構造の医薬物質、およびエトポサイド等の医薬物質のいずれかより選択される請求項46に記載の薬剤組成物。
【請求項48】
前記医薬物質に対する糖質ポリマーの割合が、10重量%:5000重量%である請求項46および47のいずれかに記載の薬剤組成物。
【請求項49】
糖質ポリマー対前記医薬物質対薬剤として許容される担体の比が、約1mg:1〜5mg:1gである請求項46および47のいずれかに記載の薬剤組成物。
【請求項50】
前記薬剤組成物が、錠剤、座剤、液体カプセル剤、散剤の形、または肺送達に適する形のいずれかの形をしている請求項46から49のいずれか一項に記載の薬剤組成物。
【請求項51】
溶解性が劣る医薬物質を糖質ポリマーに溶解する方法であって、前記可溶化糖質ポリマーが、特別に設計した平均分子量、ならびに糖質ポリマーの主鎖上に置換された特定のタイプと量の親水性および疎水性側基を有しており、それによって溶解性の劣る医薬物質を、前記可溶化糖質ポリマーに溶解すると同時に実質的に透明な溶液を得る方法。
【請求項52】
前記可溶化糖質ポリマーを、キトサン、デキストラン類、アルギニン酸、デンプン、デキストラン、グアールガムおよびすべてのその他の糖質ポリマーの任意の誘導体から選択する請求項51に記載の方法。
【請求項53】
請求項1から32のいずれかに記載の糖質ポリマーを使用する請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記溶解性の劣る医薬物質を、シクロスポリン、プレドニゾロン等のステロイド、エストラジオール、テストステロン、パクリタキセル等の極性基のない多環状構造の医薬物質、およびエトポサイド等の医薬物質のいずれかより選択する請求項51から53のいずれか一項に記載の方法。

【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図3g】
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【公表番号】特表2006−503933(P2006−503933A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537308(P2004−537308)
【出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004062
【国際公開番号】WO2004/026912
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(505105327)ザ・ユニバーシティ・オブ・ストラスクライド (2)
【出願人】(503392976)ザ・ユニヴァーシティ・コート・オブ・ザ・ユニヴァーシティ・オブ・グラスゴー (7)
【Fターム(参考)】