記録媒体の被覆装置
【課題】 複数枚の記録媒体に対して連続的に被覆層を形成することを可能とするとともに、複数の幅の記録媒体に対して被覆シートの交換なしに被覆層を形成することを可能とし、装置の汚れや画像の品質低下を防止できる記録媒体の被覆装置を提供する。
【解決手段】 互いに対向して搬送される被覆シートBと補助シートEとの間に記録媒体Aを供給するための手段5と、記録媒体Aを間に挟んだ被覆シートBと補助シートEとを両面から加圧して記録媒体Aの表面及び記録媒体Aの周囲の補助シートEの表面に転写層Dを圧着させる加圧手段8と、被覆シートBの基材Cの搬送経路を、記録媒体A及び補助シートEの搬送経路Lに対して分岐させる方向に案内する分岐案内手段9と、を備え、分岐案内手段9は、被覆シートBの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有し、被覆シートBの基材Cを記録紙A側へ押圧する押圧面9aを備える。
【解決手段】 互いに対向して搬送される被覆シートBと補助シートEとの間に記録媒体Aを供給するための手段5と、記録媒体Aを間に挟んだ被覆シートBと補助シートEとを両面から加圧して記録媒体Aの表面及び記録媒体Aの周囲の補助シートEの表面に転写層Dを圧着させる加圧手段8と、被覆シートBの基材Cの搬送経路を、記録媒体A及び補助シートEの搬送経路Lに対して分岐させる方向に案内する分岐案内手段9と、を備え、分岐案内手段9は、被覆シートBの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有し、被覆シートBの基材Cを記録紙A側へ押圧する押圧面9aを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真プリント等の画像が記録された記録媒体の表面に被覆層を形成して保護するための記録媒体の被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式や熱転写記録方式といった記録方式は、その記録装置(プリンタ)や記録媒体(記録紙等)に対して様々な改良が加えられてきた結果、銀塩カラ−写真に匹敵する画質が得られるようになり、近年、デジタルカメラで撮影した画像情報やスキャナ等で取り込んだ画像情報等をハードコピーする技術として多用されている。これらの記録方式の利用の拡大に伴い、これらの記録方式で記録された画像の耐水性や耐光性等の向上、或いは画像の記録面の美しさの向上が重要な課題となってきている。
【0003】
そこで、記録媒体に記録された画像を保護し、品質を向上させる技術として、画像記録後の記録媒体の記録面にラミネート加工を施して保護する技術が知られている。このような技術の一例を以下に示す。すなわち、まず長尺の記録媒体(記録紙)を一定の速度で搬送するとともに、この記録媒体の記録面に対向させて、台紙(本発明の「基材」に相当)上にラミネート材(本発明の「転写層」に相当)が剥離可能に形成された長尺のラミネートシート(本発明の「被覆シート」に相当)を供給搬送する。そして、圧着ローラ対により記録媒体とラミネートシートとを積層させた状態で加熱及び加圧することにより、記録媒体の記録面上に連続的にラミネート材を転写する。その後、記録媒体及びラミネートシートを搬送する搬送ローラ対の下流側においてラミネートシートの台紙のみを剥離して記録媒体の記録面上にラミネート加工を施す。そして、ラミネート加工が施された記録媒体は、記録面に形成された画像の切れ目において順次カッターにより切断され、画像毎に分離された状態で排出される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−224779号公報(第1−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、ラミネートシートの台紙を、搬送ローラ対の下流側の円弧状面に沿って記録媒体から剥離することから、台紙が記録媒体に対して浅い角度で分岐されて剥離されることになる。このように台紙が記録媒体に対して浅い角度で剥離される場合には、記録媒体に転写されたラミネート材が台紙とともに剥離する場合があり、ラミネート加工の状態が不完全になる可能性があった。
【0006】
また、上記従来の技術は、長尺の記録媒体に対してラミネート加工を施すことができる技術であるが、例えば既に画像毎に分離された状態の短尺の記録媒体等のように、一定の間隔を空けて搬送される複数枚の記録媒体に対して連続的にラミネート加工を施すことは困難である。すなわち、この場合には、記録媒体と記録媒体の間の部分においてラミネートシートのラミネート材が直接圧着ローラの表面に接することとなり、圧着ローラにラミネート材が付着して装置の汚れの原因となり、ひいてはその汚れが記録媒体に付着して画像の品質を落とすことになるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被覆シートの基材が記録媒体に対して浅い角度で分岐されて剥離されることを防いで被覆層の形成状態を良好なものにするとともに、一定の間隔を空けて搬送される複数枚の記録媒体に対して連続的に被覆層を形成することを可能として装置の汚れや画像の品質低下を防止できる記録媒体の被覆装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る記録媒体の被覆装置の特徴構成は、基材の一方の面に剥離可能な転写層を備えて構成される被覆シートの前記転写層を転写することにより記録媒体の表面に被覆層を形成する記録媒体の被覆装置であって、前記被覆シートに対向させて前記記録媒体を供給する記録媒体供給手段と、前記被覆シートと前記記録媒体とを両面から加圧して、前記記録媒体の表面に前記転写層を圧着させる加圧手段と、前記転写層を圧着後の被覆シートの基材の搬送経路を、前記記録媒体の搬送経路に対して分岐させる方向に案内する分岐案内手段と、を備え、前記分岐案内手段は、前記被覆シートの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有し、前記被覆シートの基材を前記記録媒体側へ押圧する押圧面を備える点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、分岐案内手段の押圧面が被覆シートの基材を記録媒体側へ押圧するように構成されているので、分岐案内手段による搬送経路の分岐位置に到達する前に、被覆シートの基材が記録媒体から分離することにより、被覆シートの基材が、記録媒体に対して浅い角度で剥離することを防止できる。これにより、被覆シートの転写層が記録媒体の表面から剥離することを防止でき、更には、この転写層とともに記録媒体の表面に形成された画像が剥離することを防止することができる。
【0010】
また、本発明に係る記録媒体の被覆装置の更なる特徴構成は、前記加圧手段を第1の加圧手段とし、前記分岐案内手段に対する前記記録媒体の搬送方向下流側に、被覆シートの基材が分離されて被覆層が形成された後の前記記録媒体を両面から加圧する第2の加圧手段を備え、前記第2の加圧手段における前記記録媒体の搬送速度を、前記第1の加圧手段における前記被覆シート及び前記記録媒体の搬送速度に対して、同一又はそれより速い一定速度とした点にある。
【0011】
この特徴構成によれば、記録媒体の最初の装着時に与えられる張力、又はこの最初の装着時に与えられる張力と第1加圧手段と第2の加圧手段との速度差により与えられる張力との合計の張力が、第1加圧手段と第2の加圧手段との間において変化することがなく、常に一定の張力が記録媒体に対して作用している状態が維持される。したがって、記録媒体及びこれと一体的に圧着されて搬送される被覆シートに対する分岐案内手段の押圧面による押圧力も変化せず、一定の押圧力を維持することができ、記録媒体から被覆シートの基材を剥離する際の剥離性を安定させることができる。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明に係る記録媒体の被覆装置のもう一つの特徴構成は、互いに対向して搬送される被覆シートと補助シートとの間に記録媒体を供給するための記録媒体供給手段と、前記記録媒体を間に挟んだ前記被覆シートと前記補助シートとを両面から加圧して、前記記録媒体の表面及び前記記録媒体の周囲の前記補助シートの表面に被覆シートの転写層を圧着させる加圧手段と、前記転写層を圧着後の被覆シートの基材の搬送経路を、前記記録媒体及び前記補助シートの搬送経路に対して分岐させる方向に案内する分岐案内手段と、を備え、前記分岐案内手段は、前記被覆シートの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有し、前記被覆シートの基材を前記記録媒体側へ押圧する押圧面を備えた点にある。
【0013】
この特徴構成によれば、記録媒体同士の間隔や記録媒体の幅より外側等の記録媒体が存在しない部分では補助シートが被覆シートに対向して接することになるので、一定の間隔を空けて搬送される複数枚の記録媒体に対して連続的に被覆層を形成し、或いは複数の幅の記録媒体に対して被覆シートの交換なしに被覆層を形成したとしても、被覆シートが被覆層形成手段の加圧部材等に接することがなく、装置の汚れや画像の品質低下を防止することができる。
【0014】
また、分岐案内手段の押圧面が被覆シートの基材を記録媒体側へ押圧するように構成されているので、分岐案内手段による搬送経路の分岐位置に到達する前に、被覆シートの基材が記録媒体及び補助シートから分離することにより、被覆シートの基材が、記録媒体及び補助シートに対して浅い角度で剥離することを防止できる。これにより、被覆シートの転写層が記録媒体の表面から剥離することを防止でき、更には、この転写層とともに記録媒体の表面に形成された画像が剥離することを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る記録媒体の被覆装置の更なる特徴構成は、前記加圧手段を第1の加圧手段とし、前記分岐案内手段に対する前記記録媒体の搬送方向下流側に、被覆シートの基材が分離されて被覆層が形成された後の前記記録媒体と前記補助シートとを両面から加圧する第2の加圧手段を備え、前記第2の加圧手段における前記補助シート及び前記記録媒体の搬送速度を、前記第1の加圧手段における前記被覆シート、前記補助シート及び前記記録媒体の搬送速度に対して、同一又はそれより速い一定速度とした点にある。
【0016】
この特徴構成によれば、補助シートの最初の装着時に与えられる張力、又はこの最初の装着時に与えられる張力と第1加圧手段と第2の加圧手段との速度差により与えられる張力との合計の張力が、第1加圧手段と第2の加圧手段との間において変化することがなく、常に一定の張力が補助シートに対して作用している状態が維持される。したがって、補助シート及びこれと一体的に圧着されて搬送される被覆シートに対する分岐案内手段の押圧面による押圧力も変化せず、一定の押圧力を維持することができ、記録媒体及び補助シートから被覆シートの基材を剥離する際の剥離性を安定させることができる。また、このように補助シートに作用する張力を一定にすることにより、補助シートの厚みを薄くすることが可能となる。
【0017】
また、記録媒体の表面及び補助シートの表面からの被覆シートの基材の剥離性を良くするため、前記分岐案内手段は、前記押圧面における前記記録媒体の搬送方向下流側端部に対して交差する方向に設けられ、その交差角度が前記押圧面に対して20〜80°の範囲内とされた案内面を備えていると好適である。
【0018】
更に、分岐案内手段の押圧面と案内面との接合部に設けられた分岐エッジ部は、その断面形状が半径3mm以下の略円弧形状となるようにすると好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明の第1の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る被覆装置の斜視図、図2は、本実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面斜視図、図3は、本実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面図である。
【0020】
これらの図に示すように、本実施形態に係る被覆装置においては、記録紙Aは、供給トレイ1とそれに連続する供給ガイド2に沿って装置本体内に供給され、この装置本体内では、図3における略水平方向に設けられた搬送経路Lに沿って搬送されつつその表面に被覆層が形成された後、排出機構3により排出トレイ4に排出される。この際、記録紙Aは画像が記録された記録面を上として搬送され、被覆装置はこの記録面に対して被覆層を形成する構成となっている。よって、本実施形態においては、記録紙Aが、本発明における「記録媒体」を構成し、この供給トレイ1及び供給ガイド2が、本発明における「記録媒体供給手段5」を構成する。
【0021】
被覆装置の装置本体内には、被覆シートBを搬送する被覆シート搬送機構6と、補助シートEを搬送する補助シート搬送機構7と、記録紙Aを間に挟んだ被覆シートBと補助シートEとを両面から加圧する第1加圧機構8と、記録紙Aの搬送経路と被覆シートBの搬送経路とを分岐させる第1分岐ガイド9と、被覆シートBの基材Cが分離されて被覆層Fが形成された後の記録紙Aと補助シートEとを両面から更に加圧する第2加圧機構10と、記録紙Aの搬送経路と補助シートEの搬送経路とを分岐させる第2分岐ガイド11と、補助シートEが分離された後の記録紙Aを排出トレイ4に排出する排出機構3と、が設けられている。そして、これらの各構成は、本体フレーム12により一体的に支持されている。以下、これらの構成について詳細に説明する。
【0022】
本実施形態に係る被覆装置において用いられる被覆シートBは、図4に示すように、基材Cと、この基材Cの一方の面に設けられた剥離可能な転写層Dとを備えている。この転写層Dは、記録紙Aの記録面に転写されて被覆層Fを形成する部分であり、基材C上に設けられ、記録紙Aの記録面を保護するための主要な役割を果たす保護層D1と、この保護層D1の外側に設けられ、保護層D1を記録紙Aの記録面に対して接着するための接着層D2とを有して構成されている。また、ここでは、これらの保護層D1と接着層D2との結合状態を保つために、これらの間にアンカー層D3を設けている。
【0023】
被覆シートBの転写層Dは、記録紙Aの記録面を保護する被覆層となるので、記録紙Aとの密着性に優れ、透明性が高く、熱や光で変色し難く、化学的・物理的バリヤ性に優れていることが好ましい。また、後述するように、記録紙Aの記録面及びその記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に転写されて被覆層Fを形成した後、記録紙Aと補助シートEとが分離する際に、記録紙Aの記録面に形成された部分と、記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に形成された部分とが、記録紙Aの端縁付近に沿って切り離し可能な材質及び厚みで構成すると好適である。そのため、保護層D1には、例えば、アクリル系樹脂や酢酸ビニル系樹脂等を用いると好適である。また、ここでは、後述するように第1加圧機構8において記録紙Aを間に挟んだ被覆シートBと補助シートEとを両面から加圧するとともに加熱する構成としているので、接着層D2には、透明性を有し、加熱することで接着力を発揮する、例えばポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いると好適である。被覆シートBの基材Cは、後述する第1加圧機構8における加圧及び加熱条件下で形状を安定して維持できるような耐熱性及び機械的強度と、転写層Dからの良好な剥離性を備えていることが好ましい。そのため、基材Cには、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等のフィルムを用いると好適である。
【0024】
また、被覆シートBとしては、記録紙Aの幅(複数種類の幅の記録紙Aを対象とする場合にはその中の最大幅の記録紙Aの幅)よりも大きい幅を有する、一定幅の長尺のシートが用いられる。そして、本実施形態においては、被覆シートBとしては、基材Cを外側、転写層Dを内側としてロール状に巻き取られた状態のものが使用される。これにより、被覆シートBは、被覆シート搬送機構6により、その転写層Dが補助シートEと対向する向きに搬送されることになる。
【0025】
図1〜3に示すように、被覆シート搬送機構6は、ロール状に巻き取られた被覆シートBを供給可能に保持する供給保持部6aと、第1分岐ガイド9により記録紙Aの搬送経路と分岐され、転写層Dが剥離された後の被覆シートBの基材Cを巻き取り回収する基材回収部6bとを有している。本実施形態においては、供給保持部6aは、両端が本体フレーム12に支持され、ロール状に巻き取られた被覆シートBを回転可能に保持する保持軸6cと、この保持軸6cの回転を制限するための回転制限機構6dとを有している。この回転制限機構6dとしては、例えば本体フレーム12と保持軸6cとの間にトルクリミッタを備えた構成等が好適に用いられる。そして、被覆シートBは、後述する第1加圧機構8の駆動ローラ8a及びそれに従動する加圧ローラ8bの回転により引き出されるが、この際、回転制限機構6dにより保持軸6cの回転が制限されるので、供給保持部6aから第1加圧機構8の加圧ローラ8bまでの間の被覆シートBの張りを保つことができる。また、供給保持部6aと記録紙Aの搬送経路Lとの間には、フリーローラ6eが回転自在に設けられている。このフリーローラ6eは、その外周に所定の角度範囲で被覆シートBが巻き付けられることにより、記録紙Aの搬送経路Lと合流する部分の被覆シートBの搬送経路の侵入角度を調整している。そして、記録紙Aの搬送経路Lと合流した後の被覆シートBの搬送経路は、第1分岐ガイド9による分岐位置まで、記録紙Aの搬送経路Lと一致するように設けられている。
【0026】
また、基材回収部6bは、第1分岐ガイド9により記録紙Aの搬送経路と分岐された後の被覆シートBの基材Cを巻き取り回収するために所定の方向に回転駆動される巻取軸6fと、この巻取軸6fを駆動する巻取軸駆動機構6gと、この巻取軸駆動機構6gから巻取軸6fに伝達される駆動力を制限するための駆動制限機構6hとを有している。本実施形態においては、図1に示すように、この被覆装置の各部の駆動は単一のモータ13からの駆動力が複数のスプロケット、チェーン及びギヤ等の伝達機構により伝達されることにより行われている。したがって、巻取軸駆動機構6gは、この被覆装置の全体の駆動を行うモータ13と、このモータ13の駆動力を巻取軸6fまで伝達する伝達機構により構成されている。また、駆動制限機構6hとしては、例えば巻取軸駆動機構6gを構成するギヤ等の伝達機構と巻取軸6fとの間にトルクリミッタを備えた構成等が好適に用いられる。ここで、駆動制限機構6hにより制限されていない状態で巻取軸駆動機構6gにより駆動される巻取軸6fの回転速度は、巻取軸6fの周囲に基材Cが巻き取られることによりその外周の径が変化する場合にも、巻取軸6fの周囲に巻き取られた基材Cの外周の周速が第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速よりも速くなるように設定されている。具体的には、巻取軸6fの周囲に基材Cがほとんど巻き取られておらず、基材Cの外周の周速が最も遅い状態での周速が、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速と同等又はそれよりやや速い速度とすると好適である。この際、被覆シートBの基材Cの搬送速度V1は第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速により定まるので、巻取軸6fの周囲に巻き取られた基材Cの外周の周速との速度差により基材Cの張りが保たれ、その速度差は駆動制限機構6hにより巻取軸6fに対して一定以上の駆動力を伝達しないように制限されることで吸収される。
【0027】
本実施形態に係る被覆装置において用いられる補助シートEは、記録紙Aの記録面に被覆シートBの転写層Dを転写して被覆層Fを形成する際に、記録紙Aの幅方向外側や複数枚の記録紙Aの間の記録紙Aの存在しない部分において、対向して搬送されている被覆シートBの転写層Dが転写されるシートである。したがって、補助シートEの材質としては、被覆シートBの転写層Dの表面に設けられている接着層D2が接着しやすい材質を使用することが好ましい。そのため、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムを用いると好適である。
【0028】
また、補助シートEは、被覆シートBの転写層Dを転写する際に、補助シートEの側端縁から外側に転写層Dがはみ出すことを防止するため、被覆シートBの幅と同じかそれ以上の幅を有するものとする。本実施形態においては、補助シートEとしては、被覆シートBの幅よりもやや広い一定幅を有する長尺のシートであって、ロール状に巻き取られた状態のものが使用される。これにより、被覆シートBの下面(転写面)の全体が補助シートEの上面に対向することになるので、被覆シートBの転写層Dが第1加圧機構8の駆動ローラ8aに転写されることを防止することができる。
【0029】
補助シート搬送機構7は、ロール状に巻き取られた補助シートEを供給可能に保持する供給保持部7aと、第2分岐ガイド11により記録紙Aの搬送経路と分岐された後の補助シートEを巻き取り回収するシート回収部7bとを有している。本実施形態においては、供給保持部7aは、両端が本体フレーム12に支持され、ロール状に巻き取られた補助シートEを回転可能に保持する保持軸7cと、この保持軸7cの回転を制限するための回転制限機構7dとを有している。この回転制限機構7dとしては、例えば本体フレーム12と保持軸7cとの間にトルクリミッタを備えた構成等が好適に用いられる。そして、補助シートEは、後述する第1加圧機構8の駆動ローラ8a及びそれに従動する加圧ローラ8bの回転により引き出されるが、この際、回転制限機構7dにより保持軸7cの回転が制限されるので、供給保持部7aから第1加圧機構8の駆動ローラ8aまでの間の補助シートEの張りを保つことができる。また、供給保持部7aと記録紙Aの搬送経路Lとの間には、フリーローラ7eが回転自在に設けられている。このフリーローラ7eは、その外周に所定の角度範囲で補助シートEが巻き付けられることにより、記録紙Aの搬送経路Lと合流する部分の補助シートEの搬送経路の侵入角度を調整している。そして、記録紙Aの搬送経路Lと合流した後の補助シートEの搬送経路は、第2加圧機構10の下流側にある第2分岐ガイド11による分岐位置まで、記録紙Aの搬送経路Lと一致するように設けられている。この際、補助シートEは、第1分岐ガイド9による被覆シートBの搬送経路の分岐位置までは、被覆シートBとの間に記録紙Aを挟んだ状態で被覆シートBに対向して搬送される。
【0030】
また、シート回収部7bは、第2分岐ガイド11により記録紙Aの搬送経路Lと分岐された後の補助シートEを巻き取り回収するために所定の方向に回転駆動される巻取軸7fと、この巻取軸7fを駆動する巻取軸駆動機構7gと、この巻取軸駆動機構7gから巻取軸7fに伝達される駆動力を制限するための駆動制限機構7hとを有している。本実施形態においては、図1に示すように、巻取軸駆動機構7gは、この被覆装置の全体の駆動を行うモータ13と、このモータ13の駆動力を巻取軸7fまで伝達する複数のスプロケット、チェーン及びギヤ等の伝達機構により構成されている。また、駆動制限機構7hとしては、例えば巻取軸駆動機構7gを構成するギヤ等の伝達機構と巻取軸7fとの間にトルクリミッタを備えた構成等が好適に用いられる。ここで、駆動制限機構7hにより制限されていない状態で巻取軸駆動機構7gにより駆動される巻取軸7fの回転速度は、巻取軸7fの周囲に補助シートEが巻き取られることによりその外周の径が変化する場合にも、巻取軸7fの周囲に巻き取られた補助シートEの外周の周速が第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速よりも速くなるように設定されている。具体的には、巻取軸7fの周囲に補助シートEがほとんど巻き取られておらず、補助シートEの外周の周速が最も遅い状態での周速が、第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速と同等又はそれよりやや速い速度とすると好適である。この際、補助シートEの搬送速度V1は、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速により定まるので、巻取軸7fの周囲に巻き取られた補助シートEの外周の周速との速度差により補助シートEの張りが保たれ、その速度差は駆動制限機構7hにより巻取軸7fに対して一定以上の駆動力を伝達しないように制限されることで吸収される。
【0031】
以上のような被覆シート搬送機構6及び補助シート搬送機構7により、互いに対向して搬送される被覆シートBと補助シートEとの間に、供給トレイ1及び供給ガイド2を介して記録紙Aが供給され、この記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとは、積層された状態で第1加圧機構8において両面から加圧される。
【0032】
第1加圧機構8は、図1〜3及び図5に示すように、記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとの搬送方向に回転駆動される駆動ローラ8aと、この駆動ローラ8aを回転駆動するローラ駆動機構8cと、駆動ローラ8aに対向して設けられ、駆動ローラ8aに対して加圧された状態で接するとともに駆動ローラ8aの回転に従動して回転する加圧ローラ8bと、この加圧ローラ8bを駆動ローラ8a側に加圧する加圧機構8dとを有している。本実施形態においては、駆動ローラ8a及び加圧ローラ8bは、ともに中空の金属ローラの表面をシリコンゴム等の弾性部材により覆った構成としている。この金属ローラの表面を覆う弾性部材の厚さは、後述するように金属ローラの内部に設けられるヒータからの熱の伝導性を損なうことがなく、かつ、駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとの間を搬送される記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとを十分に圧着させることができる程度の弾性を有する厚さとすることが好ましく、例えば、シリコンゴムの場合であれば約1mm程度の厚さとすると好適である。ローラ駆動機構8cは、本実施形態においては、図1に示すように、この被覆装置の全体の駆動を行うモータ13と、このモータ13の駆動力を駆動ローラ8aまで伝達する複数のスプロケット、チェーン及びギヤ等の伝達機構により構成されている。
【0033】
また、加圧機構8dは、図5に示すように、加圧ローラ8bの回転軸の両端部を上下方向に変位可能に保持する保持部材8eと、この保持部材8eを下方に付勢するばね等の弾性部材により構成される付勢部材8fとを有して構成されている。この加圧機構8dによる加圧力は、本実施形態においては、駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとのニップ部における圧力が8〜12kg/cm2程度となるように設定している。
【0034】
また、この第1加圧機構8の駆動ローラ8a及び加圧ローラ8bの内部には、それぞれヒータ8gが設けられており、記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとを加圧しながら加熱する構成となっている。本実施形態においては、このヒータ8gとして、ハロゲンランプを駆動ローラ8a及び加圧ローラ8bのそれぞれの軸心部に配設している。このヒータ8gによる加熱温度は、本実施形態においては、各ローラの表面温度で、加圧ローラ8bでは90〜110℃程度、駆動ローラ8aでは50〜70℃程度となるように設定している。
【0035】
したがって、この第1加圧機構8においては、駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとの間で、記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとを積層状態で搬送しながら両面から加圧するとともに加熱する構成となっている。この加熱及び加圧により、被覆シートBと補助シートEとの間に挟まれた記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に被覆シートBの転写層Dが圧着される。すなわち、加熱されることにより被覆シートBの転写層Dを構成する接着層D2が活性化された状態となり、更に第1加圧機構8の駆動ローラ8aと加圧ローラ8bの加圧されることにより、記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に転写層Dが接着された状態となる。そして、後述する第1分岐ガイド9において記録紙Aの搬送経路Lと被覆シートBの搬送経路とが分岐されることにより、記録紙A及び補助シートEから被覆シートBの基材Cが剥離され、記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に転写層Dが転写される。この転写層Dが被覆層Fを形成する。よって、本実施形態においては、この第1加圧機構8が、本発明における「加圧手段」を構成する。
【0036】
第1分岐ガイド9は、記録紙Aの搬送経路Lにおける第1加圧機構8と第2加圧機構10との間に設けられ、転写層を圧着後の被覆シートBの基材Cの搬送経路を、記録紙A及び補助シートEの搬送経路Lに対して分岐させる方向に案内するガイド部材である。本実施形態においては、図6及び図7に示すように、第1分岐ガイド9は、記録紙Aの搬送経路L上で記録紙Aの搬送方向に略直交する方向に延びる長尺の部材により構成され、被覆シートBの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有している。そして、第1分岐ガイド9には、被覆シートBの基材Cを記録紙A側へ押圧する押圧面9aと、押圧面9aにおける記録紙Aの搬送方向下流側端部に対して交差する方向に設けられた案内面9bと、押圧面9aと案内面9bとの接合部に設けられた分岐エッジ部9cとが設けられている。ここでは、記録紙Aの搬送経路Lに略平行に設けられた第1分岐ガイド9の下面が押圧面9aとなっており、記録紙A及び補助シートEから剥離後の被覆シートBの基材Cに対向する第1分岐ガイド9における記録紙Aの搬送方向下流側の面が案内面9bとなっている。
【0037】
そして、図7に示すように、押圧面9aは、被覆シートBの基材Cを記録紙A側へ押圧するために、記録紙Aの搬送経路Lを構成する第1加圧機構8の駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとのニップ部と、第2加圧機構10の駆動ローラ10aと加圧ローラ10bとのニップ部とを結ぶ平面Pよりも下方に位置するように配置されている。すなわち、仮に第1分岐ガイド9が存在しない場合には、第1加圧機構8と第2加圧機構10との間においては、記録紙Aと補助シートEの搬送経路Lは第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部とを結ぶ平面Pとほぼ一致する。ところが、ここでは、第1分岐ガイド9の押圧面9aがこの平面Pよりも下方に位置するように配置されているので、被覆シートB、記録紙A及び補助シートEは、この押圧面9aにより下方に押圧された状態となる。したがって、被覆シートBの基材Cは、その下方にある記録紙A側へ押圧面9aにより押圧されることとなる。この押圧面9aの位置を平面Pに対してどれだけ下方に配置するかは、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部との間における補助シートEの張り具合や、補助シートEの延びやすさの程度等に応じて定める。例えば、本実施形態においては、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部との間隔が約300mm程度であり、その場合に押圧面9aを平面Pに対して0.5〜1mm下方に配置している。また、ここでは、図8にも示すように、押圧面9aは第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部とを結ぶ平面Pに対して略平行な平面を有して構成されている。
【0038】
案内面9bは、第1分岐ガイド9における記録紙Aの搬送方向下流側の面により形成され、記録紙A及び補助シートEから剥離された被覆シートBの基材Cの剥離方向を案内するガイド面を構成する。そのため、図6〜9に示すように、案内面9bは、押圧面9aに対して鋭角をなして交差する方向であって、分岐エッジ部9cから上方に延びる方向に設けられた平面形状に形成されている。ここで、この案内面9bが押圧面9aに対してなす角度θは、20°〜80°の範囲内に設定すると好適である。このような角度範囲内とすることにより、被覆シートBの基材Cの記録紙Aの記録面及び補助シートEの表面に対する剥離方向の角度を大きくすることができるので、基材Cの剥離の際に、基材Cに転写層Dや記録紙Aの記録面のインク等が付着した状態で剥離されることを防止できる。なお、図6〜9では、案内面9bが押圧面9aに対してなす角度θは約50°に設定されている状態を表している。
【0039】
分岐エッジ部9cは、押圧面9aと案内面9bとの接合部の端縁により構成されており、この分岐エッジ部9cに沿って被覆シートBの基材Cが折り曲げられて搬送されることにより、基材Cが記録紙A及び補助シートEから剥離される。ここでは、分岐エッジ部9cは、その断面形状が略円弧形状となるように形成されている。これにより、基材Cの搬送抵抗を低減させることができる。ただし、この分岐エッジ部9cの断面の略円弧形状の半径をあまり大きくすると、基材Cの剥離方向の角度が小さくなり、基材Cの剥離の際に、基材Cに転写層Dや記録紙Aの記録面のインク等が付着した状態で剥離される可能性が高くなるので、分岐エッジ部9cの断面の略円弧形状の半径は3mm以下、より好ましくは2mm以下とすると好適である。本実施形態においては、具体的には、分岐エッジ部9cの断面の略円弧形状の半径は1mmとしている。
【0040】
この第1分岐ガイド9の押圧面9aにより記録紙A側へ押圧された状態で分岐エッジ部9cに沿って記録紙A及び補助シートEから剥離された被覆シートBの基材Cは、案内面9bに沿って案内されて搬送され、基材回収部6bに巻き取り回収される。これにより、記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に被覆層Fが形成される。従って、本実施形態においては、この第1分岐ガイド9が、本発明における「分岐案内手段」を構成する。
【0041】
この第1分岐ガイド9は、第1加圧機構8による加熱により活性化した被覆シートBの接着層D2が冷却されて十分な接着力を発揮するようになる程度の距離を第1加圧機構8に対して有するように配置すると好適である。また、このような冷却のための距離を十分に設けられない場合には、図示しないが、第1加圧機構8から第1分岐ガイド9までの間の記録紙Aの搬送経路L上にファン等の冷却機構を備える構成とすることができる。
【0042】
第2加圧機構10は、図1〜3に示すように、記録紙Aの搬送経路Lにおける第1分岐ガイド9の下流側に設けられ、被覆シートBの基材Cが分離されて被覆層Fが形成された後の記録紙Aと補助シートEとを両面から更に加圧する機構である。本実施形態においては、記録紙Aと補助シートEとの搬送方向に回転駆動される駆動ローラ10aと、この駆動ローラ10aを回転駆動するローラ駆動機構10cと、駆動ローラ10aに対向して設けられ、駆動ローラ10aに対して加圧された状態で接するとともに駆動ローラ10aの回転に従動して回転する加圧ローラ10bと、この加圧ローラ10bを駆動ローラ10a側に加圧する加圧機構10dとを有している。ここでは、駆動ローラ10a及び加圧ローラ10bは、ともに中空の金属ローラの表面をシリコンゴム等の弾性部材により覆った構成としている。この金属ローラの表面を覆う弾性部材の厚さは、後述するように金属ローラの内部に設けられるヒータからの熱の伝導性を損なうことがなく、かつ、駆動ローラ10aと加圧ローラ10bとの間を搬送される被覆層Fが形成された記録紙Aと補助シートEとを十分に圧着させることができる程度の弾性を有する厚さとすることが好ましく、例えば、シリコンゴムの場合であれば約1mm程度の厚さとすると好適である。ローラ駆動機構10cは、本実施形態においては、図1に示すように、この被覆装置の全体の駆動を行うモータ13と、このモータ13の駆動力を駆動ローラ10aまで伝達する複数のスプロケット、チェーン及びギヤ等の伝達機構により構成されている。
【0043】
ここで、伝達機構は、第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速が、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速とほぼ同一又はそれより速い一定速度となるように設定されている。ここで、第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速が、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速とほぼ同一となるように設定されている場合には、第1加圧機構8と第2加圧機構10との間における被覆シートEの張力は、最初の装着時に与えられた張力のまま変化せず一定となる。また、第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速が、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速より速い一定速度となるように設定した場合には、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速と第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速との速度差により被覆シートEに対して一定の張力を付与することができ、被覆シートEの最初の張力が十分に与えられていない場合であっても、被覆シートEの張りを保つことができる。この際の第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速は、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速に対して3%以下程度とすると好適である。具体的には1%程度とすると好適である。
【0044】
また、加圧機構10dは、図1〜3に示すように、加圧ローラ10bの回転軸の両端部を上下方向に変位可能に保持する保持部材10eと、この保持部材10eを下方に付勢するばね等の弾性部材により構成される付勢部材10fとを有して構成されている。この加圧機構10dによる加圧力は、本実施形態においては、駆動ローラ10aと加圧ローラ10bとのニップ部における圧力が3〜7kg/cm2程度となるように設定している。
【0045】
また、この第2加圧機構10の加圧ローラ10bの内部にはヒータ10gが設けられており、被覆層Fが形成された記録紙Aと補助シートEとを加圧しながら加熱する構成となっている。本実施形態においては、このヒータ10gとして、ハロゲンランプを加圧ローラ10bの軸心部に配設している。このヒータ10gによる加熱温度は、本実施形態においては、加圧ローラ10bの表面温度で80〜100℃程度となるように設定している。
【0046】
したがって、第2加圧機構10においては、被覆層Fが形成された記録紙Aと補助シートEとを搬送しながら両面から加圧するとともに被覆層F側の面から加熱する構成となっている。この加熱及び加圧により、記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に形成された被覆層Fが隙間無く圧着されて強固に接着される。よって、本実施形態においては、この第2加圧機構10が、本発明における「第2の加圧手段」を構成する。
【0047】
第2分岐ガイド11は、記録紙Aの搬送経路Lにおける第2加圧機構10の下流側に設けられ、補助シートEの搬送経路を、記録紙Aの搬送経路Lに対して分岐させる方向に案内するガイド部材である。本実施形態においては、図6及び図9に示すように、第2分岐ガイド11は、記録紙Aの搬送経路L上で記録紙Aの搬送方向に略直交する方向に延びる長尺の部材により構成され、補助シートEの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有している。そして、第2分岐ガイド11には、記録紙Aの搬送経路Lに略平行に設けられた第1案内面11aと、この第1案内面11aに対して交差する方向に設けられた第2案内面11bと、第1案内面11aと第2案内面11bとの接合部に設けられた分岐エッジ部11cとが設けられている。ここでは、記録紙Aの搬送経路Lに略平行に設けられた第2分岐ガイド11の上面が第1案内面11aとなっており、記録紙Aから剥離後の補助シートEに対向する第2分岐ガイド11における記録紙Aの搬送方向下流側の面が第2案内面11bとなっている。この第2案内面11bは、第1案内面11aに対して鋭角をなして交差する方向であって、分岐エッジ部11cから下方に延びる方向に設けられた平面形状に形成されている。分岐エッジ部11cは、第1案内面11aと第2案内面11bとの接合部の端縁により構成されており、この分岐エッジ部11cに沿って補助シートEが折り曲げられて搬送されることにより、補助シートEが記録紙Aから剥離される。ここでは、補助シートEの搬送抵抗を低減させるため、分岐エッジ部11cは、その断面形状が略円弧形状となるように形成されている。
【0048】
この第2分岐ガイド11の分岐エッジ部11cに沿って記録紙Aから剥離された補助シートEは、第2案内面11bに沿って案内されて搬送され、シート回収部7bに巻き取り回収される。この際、記録紙Aはその搬送経路Lに沿って略水平方向に直進するのに対して、補助シートEは第2分岐ガイド11の分岐エッジ部11c及びそれに連続する第2案内面11bに沿って下方に折り曲げられて搬送されることから、記録紙Aの記録面に形成された被覆層Fと、その記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に形成された被覆層Fとは互いに離間することとなり、記録紙Aの記録面に形成された被覆層Fと、その記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に形成された被覆層Fとが記録紙Aの端縁付近に沿って切断されて分離される。よって、本実施形態においては、この第2分岐ガイド11が、本発明における「第2の分岐案内手段」を構成する。
【0049】
排出機構3は、図1〜3及び図9に示すように、記録紙Aの搬送経路Lにおける第2分岐ガイド11の下流側に設けられ、第2分岐ガイド11において補助シートEが分離された後の記録紙Aを排出トレイ4に排出するための記録紙Aの搬送機構である。ここでは、記録紙Aの搬送方向に回転駆動される駆動ローラ3aと、この駆動ローラ3aを回転駆動するローラ駆動機構3cと、駆動ローラ3aに対向して設けられ、駆動ローラ3aに対して加圧された状態で接するとともに駆動ローラ3aの回転に従動して回転する加圧ローラ3bと、この加圧ローラ3bを駆動ローラ3a側に加圧する加圧機構3dとを有している。本実施形態においては、駆動ローラ3a及び加圧ローラ3bは、ともに表面を合成ゴム等の弾性部材により覆ったローラにより構成している。ただし、これらのローラは弾性部材により覆わない金属製等のハードローラとすることも可能である。本実施形態においては、ローラ駆動機構3cは、図1に示すように、この被覆装置の全体の駆動を行うモータ13と、このモータ13の駆動力を駆動ローラ3aまで伝達する複数のスプロケット、チェーン及びギヤ等の伝達機構により構成されている。また、加圧機構3dは、図9に示すように、加圧ローラ3bの回転軸の両端部を下方に付勢するばね等の弾性部材により構成される付勢部材3fを有して構成されている。
【0050】
上記のとおり、本実施形態においては、記録紙Aを載せた補助シートEの搬送方向の上流側と下流側とを、第1加圧機構8と第2加圧機構10とによりそれぞれ加圧した状態で保持して搬送する構成としている。そして、第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速が、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速とほぼ同一又はそれより速い一定速度となるように設定されている。したがって、補助シートEの最初の装着時に与えられる張力、又はこの最初の装着時に与えられる張力と第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速と第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速との速度差により与えられる張力との合計の張力が、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部との間において変化することがなく、常に一定の張力が補助シートEに対して作用している状態が維持される。したがって、補助シートE及びこれと一体的に圧着されて搬送される被覆シートBに対する第1分岐ガイド9の押圧面9aによる押圧力も変化せず、一定の押圧力を維持することができる。これにより、第1分岐ガイド9において記録紙A及び補助シートEから被覆シートBの基材Cを剥離する際の剥離性を安定させることができる。また、このように補助シートEに作用する張力を一定にすることにより、補助シートEの厚みを薄くすることが可能となり、補助シートEのコストダウンを図るとともに、ロール状の補助シートEの供給保持部7a及びシート回収部7bにおける補助シートEの格納スペースを減少させ、或いは補助シートEの長さを長くして補助シートEの交換サイクルを長くすることができる。
【0051】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図10は、本実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る被覆装置は、上記第1の実施形態に係る被覆装置における第2加圧機構10に相当する部分を備えておらず、第1分岐ガイド9による記録紙Aの搬送経路と被覆シートBの基材Cの搬送経路との分岐位置と、第2分岐ガイド11による記録紙Aの搬送経路Lと補助シートEの搬送経路との分岐位置とが近接した位置となっている点で、上記第1の実施形態と主に相違する。
【0052】
すなわち、本実施形態においては、図11及び図12に示すように、第1加圧機構8の駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとの間で、記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとを積層状態で搬送しながら両面から加圧するとともに加熱することにより、記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に被覆シートBの転写層Dを圧着する。その後、被覆シートBの接着層D2が冷却される程度の距離に配置された第1分岐ガイド9で被覆シートBの基材Cの搬送経路を記録紙A及び補助シートEの搬送経路Lに対して分岐させることにより、記録紙A及び補助シートEから被覆シートBの基材Cを剥離させる。この第1分岐ガイド9の構成は、上記第1の実施形態の場合と同様である。すなわち、本実施形態においても、第1分岐ガイド9の押圧面9aは、被覆シートBの基材Cを記録紙A側へ押圧するために、記録紙Aの搬送経路Lを構成する第1加圧機構8の駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとのニップ部と、排出機構3の駆動ローラ3aと加圧ローラ3bとのニップ部とを結ぶ平面Pよりも下方に位置するように配置されている。この押圧面9aの位置を平面Pに対してどれだけ下方に配置するかは、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部との間における補助シートEの張り具合や、補助シートEの延びやすさの程度等に応じて定めるが、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と異なり、記録紙Aの搬送方向の下流側の近接した位置に第2分岐ガイド11が配置されていることから、平面Pに対する押圧面9aの下がり量を上記第1の実施形態の場合よりも少なくしても、上記第1の実施形態の場合と同様の押圧力を得ることが可能である。
【0053】
このようにして、被覆シートBの基材Cを記録紙A及び補助シートEから剥離させて記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に被覆層Fを形成する。そして、記録紙Aの搬送方向の下流側の近接した位置には、第2分岐ガイド11が配置されている。この第2分岐ガイド11の第1案内面11aは、記録紙Aの搬送経路Lに略平行に設けられた第2分岐ガイド11の上面により構成されている。この第2分岐ガイド11で補助シートEの搬送経路を、記録紙Aの搬送経路Lに対して分岐させることにより、記録面に被覆層Fが形成された記録紙Aと、その記録紙Aの周囲の表面に被覆層Fが形成された補助シートEとを互いに離間させ、記録紙Aの記録面に形成された被覆層Fと、その記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に形成された被覆層Fとを記録紙Aの端縁付近に沿って切断して分離する。そして、被覆層Fが形成された記録紙Aは排出機構3により排出トレイ4に排出される。
【0054】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態においては、画像毎等に分離された状態の短尺の記録紙Aが被覆層を形成する対象として供給される場合について説明したが、本発明は、長尺の記録紙Aが被覆層を形成する対象として連続的に供給される場合にも適用することが可能である。この場合、補助シートEを供給することは必要ないので、被覆装置は被覆シート搬送機構6を備えない構成となり、その代わりに、ロール状に巻き取られた長尺の記録紙Aを、被覆シートBに対向させて連続的に供給する記録媒体供給手段5を備えた構成となる。そして、互いに対向するように供給され搬送される記録紙Aと被覆シートBとは、第1加圧機構8において両面から加圧され、記録紙Aの表面に被覆シートBの転写層Dが転写されて圧着される。この際、記録媒体供給手段5の具体的構成としては、例えば、上記実施形態における被覆シート搬送機構6と同様の構成とすることが可能である。また、この場合、被覆装置は、当然ながら記録紙Aの搬送経路と補助シートEの搬送経路とを分岐させる第2分岐ガイド11を備えない構成となる。その他の構成については、上記第1の実施形態と同様にすることが可能である。
【0055】
(2)上記実施形態においては、図6〜9に示すように、第1分岐ガイド9の押圧面9aは、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部とを結ぶ平面Pに対して略平行な平面を有して構成されているが、押圧面9aの構成はこのようなものに限定されない。すなわち、押圧面9aは、平面に限定されず、被覆シートBの基材Cを記録紙A側へ押圧することができる構成であればよいため、例えば円弧状等の曲面や、台形状等の複数の平面により構成されるものとすることも可能である。また、押圧面9aを平面とする場合であっても、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部とを結ぶ平面Pに対して交差する方向に設け、分岐エッジ部9cの近傍のみが平面Pよりも下方に位置するように構成することも可能である。
【0056】
(3)上記実施形態においては、図1〜3及び図10に示すように、本発明における「記録媒体供給手段5」として、供給トレイ1及び供給ガイド2を備える構成について説明したが、記録媒体供給手段5として、記録紙Aを自動で連続的に供給する自動供給機構を備える構成とすることも可能である。すなわち、本発明に係る被覆装置は、実際の使用時には、写真プリンタ等の記録紙Aに画像を記録する記録装置の下流側に設置されることになる。したがって、この記録装置から連続的に排出される記録紙Aを自動的に搬送して被覆装置の装置本体内に供給する構成までを備える構成とすると好適である。
【0057】
(4)上記実施形態においては、第1加圧機構8において、加圧とともに加熱を行うことで被覆シートBの転写層Dを記録紙A及び補助シートEに転写する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被覆シートBの転写層Dを加圧のみで記録紙A及び補助シートEに転写できる構成とすることも可能である。この場合、転写層Dを構成する接着層D2として、常温でも良好な接着力を発揮できるものとする必要がある。
【0058】
(5)上記実施形態においては、被覆シートBとして基材Cとこの基材Cに対して剥離可能に設けられた転写層Dとを有するものを用いる場合について説明したが、被覆シートBの構成はこのようなものに限定されることなく、例えば、基材Cを備えず、転写層Dに相当する部分のみからなるシートを用いることも可能である。この場合、被覆シート搬送機構6は、基材回収部6bを備えない構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置の斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面斜視図
【図3】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面図
【図4】本発明の第1の実施形態に係る被覆シートの構造を示す模式断面図
【図5】図3における第1加圧機構近傍の拡大図
【図6】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置の第1分岐ガイド及び第2分岐ガイドにおける各シートの剥離の際の状態を示す斜視図
【図7】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置の第1加圧機構及び第2加圧機構と第1分岐ガイドとの位置関係を示す模式図
【図8】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置の第1分岐ガイドにおいて被覆シートの基材が記録紙及び補助シートから剥離する際の状態を示す模式断面図
【図9】図3における第2分岐ガイド近傍の拡大図
【図10】本発明の第2の実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面図
【図11】本発明の第2の実施形態に係る被覆装置の第1分岐ガイド及び第2分岐ガイドにおいて記録紙が被覆シートの基材及び補助シートから剥離する際の状態を示す斜視図
【図12】本発明の第2の実施形態に係る被覆装置の第1加圧機構及び排出機構と第1分岐ガイド及び第2分岐ガイドとの位置関係を示す模式図
【符号の説明】
【0060】
A 記録紙(記録媒体)
B 被覆シート
C 被覆シートの基材
D 被覆シートの転写層
E 補助シート
F 被覆層
L 記録紙の搬送経路
3 排出機構
5 記録媒体供給手段
6 被覆シート搬送機構
7 補助シート搬送機構
8 第1加圧機構(加圧手段)
9 第1分岐ガイド(分岐案内手段)
9a 押圧面
9b 案内面
9c 分岐エッジ部
10 第2加圧機構(第2の加圧手段)
11 第2分岐ガイド(第2の分岐案内手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真プリント等の画像が記録された記録媒体の表面に被覆層を形成して保護するための記録媒体の被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式や熱転写記録方式といった記録方式は、その記録装置(プリンタ)や記録媒体(記録紙等)に対して様々な改良が加えられてきた結果、銀塩カラ−写真に匹敵する画質が得られるようになり、近年、デジタルカメラで撮影した画像情報やスキャナ等で取り込んだ画像情報等をハードコピーする技術として多用されている。これらの記録方式の利用の拡大に伴い、これらの記録方式で記録された画像の耐水性や耐光性等の向上、或いは画像の記録面の美しさの向上が重要な課題となってきている。
【0003】
そこで、記録媒体に記録された画像を保護し、品質を向上させる技術として、画像記録後の記録媒体の記録面にラミネート加工を施して保護する技術が知られている。このような技術の一例を以下に示す。すなわち、まず長尺の記録媒体(記録紙)を一定の速度で搬送するとともに、この記録媒体の記録面に対向させて、台紙(本発明の「基材」に相当)上にラミネート材(本発明の「転写層」に相当)が剥離可能に形成された長尺のラミネートシート(本発明の「被覆シート」に相当)を供給搬送する。そして、圧着ローラ対により記録媒体とラミネートシートとを積層させた状態で加熱及び加圧することにより、記録媒体の記録面上に連続的にラミネート材を転写する。その後、記録媒体及びラミネートシートを搬送する搬送ローラ対の下流側においてラミネートシートの台紙のみを剥離して記録媒体の記録面上にラミネート加工を施す。そして、ラミネート加工が施された記録媒体は、記録面に形成された画像の切れ目において順次カッターにより切断され、画像毎に分離された状態で排出される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−224779号公報(第1−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、ラミネートシートの台紙を、搬送ローラ対の下流側の円弧状面に沿って記録媒体から剥離することから、台紙が記録媒体に対して浅い角度で分岐されて剥離されることになる。このように台紙が記録媒体に対して浅い角度で剥離される場合には、記録媒体に転写されたラミネート材が台紙とともに剥離する場合があり、ラミネート加工の状態が不完全になる可能性があった。
【0006】
また、上記従来の技術は、長尺の記録媒体に対してラミネート加工を施すことができる技術であるが、例えば既に画像毎に分離された状態の短尺の記録媒体等のように、一定の間隔を空けて搬送される複数枚の記録媒体に対して連続的にラミネート加工を施すことは困難である。すなわち、この場合には、記録媒体と記録媒体の間の部分においてラミネートシートのラミネート材が直接圧着ローラの表面に接することとなり、圧着ローラにラミネート材が付着して装置の汚れの原因となり、ひいてはその汚れが記録媒体に付着して画像の品質を落とすことになるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被覆シートの基材が記録媒体に対して浅い角度で分岐されて剥離されることを防いで被覆層の形成状態を良好なものにするとともに、一定の間隔を空けて搬送される複数枚の記録媒体に対して連続的に被覆層を形成することを可能として装置の汚れや画像の品質低下を防止できる記録媒体の被覆装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る記録媒体の被覆装置の特徴構成は、基材の一方の面に剥離可能な転写層を備えて構成される被覆シートの前記転写層を転写することにより記録媒体の表面に被覆層を形成する記録媒体の被覆装置であって、前記被覆シートに対向させて前記記録媒体を供給する記録媒体供給手段と、前記被覆シートと前記記録媒体とを両面から加圧して、前記記録媒体の表面に前記転写層を圧着させる加圧手段と、前記転写層を圧着後の被覆シートの基材の搬送経路を、前記記録媒体の搬送経路に対して分岐させる方向に案内する分岐案内手段と、を備え、前記分岐案内手段は、前記被覆シートの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有し、前記被覆シートの基材を前記記録媒体側へ押圧する押圧面を備える点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、分岐案内手段の押圧面が被覆シートの基材を記録媒体側へ押圧するように構成されているので、分岐案内手段による搬送経路の分岐位置に到達する前に、被覆シートの基材が記録媒体から分離することにより、被覆シートの基材が、記録媒体に対して浅い角度で剥離することを防止できる。これにより、被覆シートの転写層が記録媒体の表面から剥離することを防止でき、更には、この転写層とともに記録媒体の表面に形成された画像が剥離することを防止することができる。
【0010】
また、本発明に係る記録媒体の被覆装置の更なる特徴構成は、前記加圧手段を第1の加圧手段とし、前記分岐案内手段に対する前記記録媒体の搬送方向下流側に、被覆シートの基材が分離されて被覆層が形成された後の前記記録媒体を両面から加圧する第2の加圧手段を備え、前記第2の加圧手段における前記記録媒体の搬送速度を、前記第1の加圧手段における前記被覆シート及び前記記録媒体の搬送速度に対して、同一又はそれより速い一定速度とした点にある。
【0011】
この特徴構成によれば、記録媒体の最初の装着時に与えられる張力、又はこの最初の装着時に与えられる張力と第1加圧手段と第2の加圧手段との速度差により与えられる張力との合計の張力が、第1加圧手段と第2の加圧手段との間において変化することがなく、常に一定の張力が記録媒体に対して作用している状態が維持される。したがって、記録媒体及びこれと一体的に圧着されて搬送される被覆シートに対する分岐案内手段の押圧面による押圧力も変化せず、一定の押圧力を維持することができ、記録媒体から被覆シートの基材を剥離する際の剥離性を安定させることができる。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明に係る記録媒体の被覆装置のもう一つの特徴構成は、互いに対向して搬送される被覆シートと補助シートとの間に記録媒体を供給するための記録媒体供給手段と、前記記録媒体を間に挟んだ前記被覆シートと前記補助シートとを両面から加圧して、前記記録媒体の表面及び前記記録媒体の周囲の前記補助シートの表面に被覆シートの転写層を圧着させる加圧手段と、前記転写層を圧着後の被覆シートの基材の搬送経路を、前記記録媒体及び前記補助シートの搬送経路に対して分岐させる方向に案内する分岐案内手段と、を備え、前記分岐案内手段は、前記被覆シートの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有し、前記被覆シートの基材を前記記録媒体側へ押圧する押圧面を備えた点にある。
【0013】
この特徴構成によれば、記録媒体同士の間隔や記録媒体の幅より外側等の記録媒体が存在しない部分では補助シートが被覆シートに対向して接することになるので、一定の間隔を空けて搬送される複数枚の記録媒体に対して連続的に被覆層を形成し、或いは複数の幅の記録媒体に対して被覆シートの交換なしに被覆層を形成したとしても、被覆シートが被覆層形成手段の加圧部材等に接することがなく、装置の汚れや画像の品質低下を防止することができる。
【0014】
また、分岐案内手段の押圧面が被覆シートの基材を記録媒体側へ押圧するように構成されているので、分岐案内手段による搬送経路の分岐位置に到達する前に、被覆シートの基材が記録媒体及び補助シートから分離することにより、被覆シートの基材が、記録媒体及び補助シートに対して浅い角度で剥離することを防止できる。これにより、被覆シートの転写層が記録媒体の表面から剥離することを防止でき、更には、この転写層とともに記録媒体の表面に形成された画像が剥離することを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る記録媒体の被覆装置の更なる特徴構成は、前記加圧手段を第1の加圧手段とし、前記分岐案内手段に対する前記記録媒体の搬送方向下流側に、被覆シートの基材が分離されて被覆層が形成された後の前記記録媒体と前記補助シートとを両面から加圧する第2の加圧手段を備え、前記第2の加圧手段における前記補助シート及び前記記録媒体の搬送速度を、前記第1の加圧手段における前記被覆シート、前記補助シート及び前記記録媒体の搬送速度に対して、同一又はそれより速い一定速度とした点にある。
【0016】
この特徴構成によれば、補助シートの最初の装着時に与えられる張力、又はこの最初の装着時に与えられる張力と第1加圧手段と第2の加圧手段との速度差により与えられる張力との合計の張力が、第1加圧手段と第2の加圧手段との間において変化することがなく、常に一定の張力が補助シートに対して作用している状態が維持される。したがって、補助シート及びこれと一体的に圧着されて搬送される被覆シートに対する分岐案内手段の押圧面による押圧力も変化せず、一定の押圧力を維持することができ、記録媒体及び補助シートから被覆シートの基材を剥離する際の剥離性を安定させることができる。また、このように補助シートに作用する張力を一定にすることにより、補助シートの厚みを薄くすることが可能となる。
【0017】
また、記録媒体の表面及び補助シートの表面からの被覆シートの基材の剥離性を良くするため、前記分岐案内手段は、前記押圧面における前記記録媒体の搬送方向下流側端部に対して交差する方向に設けられ、その交差角度が前記押圧面に対して20〜80°の範囲内とされた案内面を備えていると好適である。
【0018】
更に、分岐案内手段の押圧面と案内面との接合部に設けられた分岐エッジ部は、その断面形状が半径3mm以下の略円弧形状となるようにすると好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明の第1の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る被覆装置の斜視図、図2は、本実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面斜視図、図3は、本実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面図である。
【0020】
これらの図に示すように、本実施形態に係る被覆装置においては、記録紙Aは、供給トレイ1とそれに連続する供給ガイド2に沿って装置本体内に供給され、この装置本体内では、図3における略水平方向に設けられた搬送経路Lに沿って搬送されつつその表面に被覆層が形成された後、排出機構3により排出トレイ4に排出される。この際、記録紙Aは画像が記録された記録面を上として搬送され、被覆装置はこの記録面に対して被覆層を形成する構成となっている。よって、本実施形態においては、記録紙Aが、本発明における「記録媒体」を構成し、この供給トレイ1及び供給ガイド2が、本発明における「記録媒体供給手段5」を構成する。
【0021】
被覆装置の装置本体内には、被覆シートBを搬送する被覆シート搬送機構6と、補助シートEを搬送する補助シート搬送機構7と、記録紙Aを間に挟んだ被覆シートBと補助シートEとを両面から加圧する第1加圧機構8と、記録紙Aの搬送経路と被覆シートBの搬送経路とを分岐させる第1分岐ガイド9と、被覆シートBの基材Cが分離されて被覆層Fが形成された後の記録紙Aと補助シートEとを両面から更に加圧する第2加圧機構10と、記録紙Aの搬送経路と補助シートEの搬送経路とを分岐させる第2分岐ガイド11と、補助シートEが分離された後の記録紙Aを排出トレイ4に排出する排出機構3と、が設けられている。そして、これらの各構成は、本体フレーム12により一体的に支持されている。以下、これらの構成について詳細に説明する。
【0022】
本実施形態に係る被覆装置において用いられる被覆シートBは、図4に示すように、基材Cと、この基材Cの一方の面に設けられた剥離可能な転写層Dとを備えている。この転写層Dは、記録紙Aの記録面に転写されて被覆層Fを形成する部分であり、基材C上に設けられ、記録紙Aの記録面を保護するための主要な役割を果たす保護層D1と、この保護層D1の外側に設けられ、保護層D1を記録紙Aの記録面に対して接着するための接着層D2とを有して構成されている。また、ここでは、これらの保護層D1と接着層D2との結合状態を保つために、これらの間にアンカー層D3を設けている。
【0023】
被覆シートBの転写層Dは、記録紙Aの記録面を保護する被覆層となるので、記録紙Aとの密着性に優れ、透明性が高く、熱や光で変色し難く、化学的・物理的バリヤ性に優れていることが好ましい。また、後述するように、記録紙Aの記録面及びその記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に転写されて被覆層Fを形成した後、記録紙Aと補助シートEとが分離する際に、記録紙Aの記録面に形成された部分と、記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に形成された部分とが、記録紙Aの端縁付近に沿って切り離し可能な材質及び厚みで構成すると好適である。そのため、保護層D1には、例えば、アクリル系樹脂や酢酸ビニル系樹脂等を用いると好適である。また、ここでは、後述するように第1加圧機構8において記録紙Aを間に挟んだ被覆シートBと補助シートEとを両面から加圧するとともに加熱する構成としているので、接着層D2には、透明性を有し、加熱することで接着力を発揮する、例えばポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いると好適である。被覆シートBの基材Cは、後述する第1加圧機構8における加圧及び加熱条件下で形状を安定して維持できるような耐熱性及び機械的強度と、転写層Dからの良好な剥離性を備えていることが好ましい。そのため、基材Cには、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート等のフィルムを用いると好適である。
【0024】
また、被覆シートBとしては、記録紙Aの幅(複数種類の幅の記録紙Aを対象とする場合にはその中の最大幅の記録紙Aの幅)よりも大きい幅を有する、一定幅の長尺のシートが用いられる。そして、本実施形態においては、被覆シートBとしては、基材Cを外側、転写層Dを内側としてロール状に巻き取られた状態のものが使用される。これにより、被覆シートBは、被覆シート搬送機構6により、その転写層Dが補助シートEと対向する向きに搬送されることになる。
【0025】
図1〜3に示すように、被覆シート搬送機構6は、ロール状に巻き取られた被覆シートBを供給可能に保持する供給保持部6aと、第1分岐ガイド9により記録紙Aの搬送経路と分岐され、転写層Dが剥離された後の被覆シートBの基材Cを巻き取り回収する基材回収部6bとを有している。本実施形態においては、供給保持部6aは、両端が本体フレーム12に支持され、ロール状に巻き取られた被覆シートBを回転可能に保持する保持軸6cと、この保持軸6cの回転を制限するための回転制限機構6dとを有している。この回転制限機構6dとしては、例えば本体フレーム12と保持軸6cとの間にトルクリミッタを備えた構成等が好適に用いられる。そして、被覆シートBは、後述する第1加圧機構8の駆動ローラ8a及びそれに従動する加圧ローラ8bの回転により引き出されるが、この際、回転制限機構6dにより保持軸6cの回転が制限されるので、供給保持部6aから第1加圧機構8の加圧ローラ8bまでの間の被覆シートBの張りを保つことができる。また、供給保持部6aと記録紙Aの搬送経路Lとの間には、フリーローラ6eが回転自在に設けられている。このフリーローラ6eは、その外周に所定の角度範囲で被覆シートBが巻き付けられることにより、記録紙Aの搬送経路Lと合流する部分の被覆シートBの搬送経路の侵入角度を調整している。そして、記録紙Aの搬送経路Lと合流した後の被覆シートBの搬送経路は、第1分岐ガイド9による分岐位置まで、記録紙Aの搬送経路Lと一致するように設けられている。
【0026】
また、基材回収部6bは、第1分岐ガイド9により記録紙Aの搬送経路と分岐された後の被覆シートBの基材Cを巻き取り回収するために所定の方向に回転駆動される巻取軸6fと、この巻取軸6fを駆動する巻取軸駆動機構6gと、この巻取軸駆動機構6gから巻取軸6fに伝達される駆動力を制限するための駆動制限機構6hとを有している。本実施形態においては、図1に示すように、この被覆装置の各部の駆動は単一のモータ13からの駆動力が複数のスプロケット、チェーン及びギヤ等の伝達機構により伝達されることにより行われている。したがって、巻取軸駆動機構6gは、この被覆装置の全体の駆動を行うモータ13と、このモータ13の駆動力を巻取軸6fまで伝達する伝達機構により構成されている。また、駆動制限機構6hとしては、例えば巻取軸駆動機構6gを構成するギヤ等の伝達機構と巻取軸6fとの間にトルクリミッタを備えた構成等が好適に用いられる。ここで、駆動制限機構6hにより制限されていない状態で巻取軸駆動機構6gにより駆動される巻取軸6fの回転速度は、巻取軸6fの周囲に基材Cが巻き取られることによりその外周の径が変化する場合にも、巻取軸6fの周囲に巻き取られた基材Cの外周の周速が第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速よりも速くなるように設定されている。具体的には、巻取軸6fの周囲に基材Cがほとんど巻き取られておらず、基材Cの外周の周速が最も遅い状態での周速が、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速と同等又はそれよりやや速い速度とすると好適である。この際、被覆シートBの基材Cの搬送速度V1は第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速により定まるので、巻取軸6fの周囲に巻き取られた基材Cの外周の周速との速度差により基材Cの張りが保たれ、その速度差は駆動制限機構6hにより巻取軸6fに対して一定以上の駆動力を伝達しないように制限されることで吸収される。
【0027】
本実施形態に係る被覆装置において用いられる補助シートEは、記録紙Aの記録面に被覆シートBの転写層Dを転写して被覆層Fを形成する際に、記録紙Aの幅方向外側や複数枚の記録紙Aの間の記録紙Aの存在しない部分において、対向して搬送されている被覆シートBの転写層Dが転写されるシートである。したがって、補助シートEの材質としては、被覆シートBの転写層Dの表面に設けられている接着層D2が接着しやすい材質を使用することが好ましい。そのため、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムを用いると好適である。
【0028】
また、補助シートEは、被覆シートBの転写層Dを転写する際に、補助シートEの側端縁から外側に転写層Dがはみ出すことを防止するため、被覆シートBの幅と同じかそれ以上の幅を有するものとする。本実施形態においては、補助シートEとしては、被覆シートBの幅よりもやや広い一定幅を有する長尺のシートであって、ロール状に巻き取られた状態のものが使用される。これにより、被覆シートBの下面(転写面)の全体が補助シートEの上面に対向することになるので、被覆シートBの転写層Dが第1加圧機構8の駆動ローラ8aに転写されることを防止することができる。
【0029】
補助シート搬送機構7は、ロール状に巻き取られた補助シートEを供給可能に保持する供給保持部7aと、第2分岐ガイド11により記録紙Aの搬送経路と分岐された後の補助シートEを巻き取り回収するシート回収部7bとを有している。本実施形態においては、供給保持部7aは、両端が本体フレーム12に支持され、ロール状に巻き取られた補助シートEを回転可能に保持する保持軸7cと、この保持軸7cの回転を制限するための回転制限機構7dとを有している。この回転制限機構7dとしては、例えば本体フレーム12と保持軸7cとの間にトルクリミッタを備えた構成等が好適に用いられる。そして、補助シートEは、後述する第1加圧機構8の駆動ローラ8a及びそれに従動する加圧ローラ8bの回転により引き出されるが、この際、回転制限機構7dにより保持軸7cの回転が制限されるので、供給保持部7aから第1加圧機構8の駆動ローラ8aまでの間の補助シートEの張りを保つことができる。また、供給保持部7aと記録紙Aの搬送経路Lとの間には、フリーローラ7eが回転自在に設けられている。このフリーローラ7eは、その外周に所定の角度範囲で補助シートEが巻き付けられることにより、記録紙Aの搬送経路Lと合流する部分の補助シートEの搬送経路の侵入角度を調整している。そして、記録紙Aの搬送経路Lと合流した後の補助シートEの搬送経路は、第2加圧機構10の下流側にある第2分岐ガイド11による分岐位置まで、記録紙Aの搬送経路Lと一致するように設けられている。この際、補助シートEは、第1分岐ガイド9による被覆シートBの搬送経路の分岐位置までは、被覆シートBとの間に記録紙Aを挟んだ状態で被覆シートBに対向して搬送される。
【0030】
また、シート回収部7bは、第2分岐ガイド11により記録紙Aの搬送経路Lと分岐された後の補助シートEを巻き取り回収するために所定の方向に回転駆動される巻取軸7fと、この巻取軸7fを駆動する巻取軸駆動機構7gと、この巻取軸駆動機構7gから巻取軸7fに伝達される駆動力を制限するための駆動制限機構7hとを有している。本実施形態においては、図1に示すように、巻取軸駆動機構7gは、この被覆装置の全体の駆動を行うモータ13と、このモータ13の駆動力を巻取軸7fまで伝達する複数のスプロケット、チェーン及びギヤ等の伝達機構により構成されている。また、駆動制限機構7hとしては、例えば巻取軸駆動機構7gを構成するギヤ等の伝達機構と巻取軸7fとの間にトルクリミッタを備えた構成等が好適に用いられる。ここで、駆動制限機構7hにより制限されていない状態で巻取軸駆動機構7gにより駆動される巻取軸7fの回転速度は、巻取軸7fの周囲に補助シートEが巻き取られることによりその外周の径が変化する場合にも、巻取軸7fの周囲に巻き取られた補助シートEの外周の周速が第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速よりも速くなるように設定されている。具体的には、巻取軸7fの周囲に補助シートEがほとんど巻き取られておらず、補助シートEの外周の周速が最も遅い状態での周速が、第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速と同等又はそれよりやや速い速度とすると好適である。この際、補助シートEの搬送速度V1は、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速により定まるので、巻取軸7fの周囲に巻き取られた補助シートEの外周の周速との速度差により補助シートEの張りが保たれ、その速度差は駆動制限機構7hにより巻取軸7fに対して一定以上の駆動力を伝達しないように制限されることで吸収される。
【0031】
以上のような被覆シート搬送機構6及び補助シート搬送機構7により、互いに対向して搬送される被覆シートBと補助シートEとの間に、供給トレイ1及び供給ガイド2を介して記録紙Aが供給され、この記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとは、積層された状態で第1加圧機構8において両面から加圧される。
【0032】
第1加圧機構8は、図1〜3及び図5に示すように、記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとの搬送方向に回転駆動される駆動ローラ8aと、この駆動ローラ8aを回転駆動するローラ駆動機構8cと、駆動ローラ8aに対向して設けられ、駆動ローラ8aに対して加圧された状態で接するとともに駆動ローラ8aの回転に従動して回転する加圧ローラ8bと、この加圧ローラ8bを駆動ローラ8a側に加圧する加圧機構8dとを有している。本実施形態においては、駆動ローラ8a及び加圧ローラ8bは、ともに中空の金属ローラの表面をシリコンゴム等の弾性部材により覆った構成としている。この金属ローラの表面を覆う弾性部材の厚さは、後述するように金属ローラの内部に設けられるヒータからの熱の伝導性を損なうことがなく、かつ、駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとの間を搬送される記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとを十分に圧着させることができる程度の弾性を有する厚さとすることが好ましく、例えば、シリコンゴムの場合であれば約1mm程度の厚さとすると好適である。ローラ駆動機構8cは、本実施形態においては、図1に示すように、この被覆装置の全体の駆動を行うモータ13と、このモータ13の駆動力を駆動ローラ8aまで伝達する複数のスプロケット、チェーン及びギヤ等の伝達機構により構成されている。
【0033】
また、加圧機構8dは、図5に示すように、加圧ローラ8bの回転軸の両端部を上下方向に変位可能に保持する保持部材8eと、この保持部材8eを下方に付勢するばね等の弾性部材により構成される付勢部材8fとを有して構成されている。この加圧機構8dによる加圧力は、本実施形態においては、駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとのニップ部における圧力が8〜12kg/cm2程度となるように設定している。
【0034】
また、この第1加圧機構8の駆動ローラ8a及び加圧ローラ8bの内部には、それぞれヒータ8gが設けられており、記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとを加圧しながら加熱する構成となっている。本実施形態においては、このヒータ8gとして、ハロゲンランプを駆動ローラ8a及び加圧ローラ8bのそれぞれの軸心部に配設している。このヒータ8gによる加熱温度は、本実施形態においては、各ローラの表面温度で、加圧ローラ8bでは90〜110℃程度、駆動ローラ8aでは50〜70℃程度となるように設定している。
【0035】
したがって、この第1加圧機構8においては、駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとの間で、記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとを積層状態で搬送しながら両面から加圧するとともに加熱する構成となっている。この加熱及び加圧により、被覆シートBと補助シートEとの間に挟まれた記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に被覆シートBの転写層Dが圧着される。すなわち、加熱されることにより被覆シートBの転写層Dを構成する接着層D2が活性化された状態となり、更に第1加圧機構8の駆動ローラ8aと加圧ローラ8bの加圧されることにより、記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に転写層Dが接着された状態となる。そして、後述する第1分岐ガイド9において記録紙Aの搬送経路Lと被覆シートBの搬送経路とが分岐されることにより、記録紙A及び補助シートEから被覆シートBの基材Cが剥離され、記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に転写層Dが転写される。この転写層Dが被覆層Fを形成する。よって、本実施形態においては、この第1加圧機構8が、本発明における「加圧手段」を構成する。
【0036】
第1分岐ガイド9は、記録紙Aの搬送経路Lにおける第1加圧機構8と第2加圧機構10との間に設けられ、転写層を圧着後の被覆シートBの基材Cの搬送経路を、記録紙A及び補助シートEの搬送経路Lに対して分岐させる方向に案内するガイド部材である。本実施形態においては、図6及び図7に示すように、第1分岐ガイド9は、記録紙Aの搬送経路L上で記録紙Aの搬送方向に略直交する方向に延びる長尺の部材により構成され、被覆シートBの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有している。そして、第1分岐ガイド9には、被覆シートBの基材Cを記録紙A側へ押圧する押圧面9aと、押圧面9aにおける記録紙Aの搬送方向下流側端部に対して交差する方向に設けられた案内面9bと、押圧面9aと案内面9bとの接合部に設けられた分岐エッジ部9cとが設けられている。ここでは、記録紙Aの搬送経路Lに略平行に設けられた第1分岐ガイド9の下面が押圧面9aとなっており、記録紙A及び補助シートEから剥離後の被覆シートBの基材Cに対向する第1分岐ガイド9における記録紙Aの搬送方向下流側の面が案内面9bとなっている。
【0037】
そして、図7に示すように、押圧面9aは、被覆シートBの基材Cを記録紙A側へ押圧するために、記録紙Aの搬送経路Lを構成する第1加圧機構8の駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとのニップ部と、第2加圧機構10の駆動ローラ10aと加圧ローラ10bとのニップ部とを結ぶ平面Pよりも下方に位置するように配置されている。すなわち、仮に第1分岐ガイド9が存在しない場合には、第1加圧機構8と第2加圧機構10との間においては、記録紙Aと補助シートEの搬送経路Lは第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部とを結ぶ平面Pとほぼ一致する。ところが、ここでは、第1分岐ガイド9の押圧面9aがこの平面Pよりも下方に位置するように配置されているので、被覆シートB、記録紙A及び補助シートEは、この押圧面9aにより下方に押圧された状態となる。したがって、被覆シートBの基材Cは、その下方にある記録紙A側へ押圧面9aにより押圧されることとなる。この押圧面9aの位置を平面Pに対してどれだけ下方に配置するかは、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部との間における補助シートEの張り具合や、補助シートEの延びやすさの程度等に応じて定める。例えば、本実施形態においては、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部との間隔が約300mm程度であり、その場合に押圧面9aを平面Pに対して0.5〜1mm下方に配置している。また、ここでは、図8にも示すように、押圧面9aは第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部とを結ぶ平面Pに対して略平行な平面を有して構成されている。
【0038】
案内面9bは、第1分岐ガイド9における記録紙Aの搬送方向下流側の面により形成され、記録紙A及び補助シートEから剥離された被覆シートBの基材Cの剥離方向を案内するガイド面を構成する。そのため、図6〜9に示すように、案内面9bは、押圧面9aに対して鋭角をなして交差する方向であって、分岐エッジ部9cから上方に延びる方向に設けられた平面形状に形成されている。ここで、この案内面9bが押圧面9aに対してなす角度θは、20°〜80°の範囲内に設定すると好適である。このような角度範囲内とすることにより、被覆シートBの基材Cの記録紙Aの記録面及び補助シートEの表面に対する剥離方向の角度を大きくすることができるので、基材Cの剥離の際に、基材Cに転写層Dや記録紙Aの記録面のインク等が付着した状態で剥離されることを防止できる。なお、図6〜9では、案内面9bが押圧面9aに対してなす角度θは約50°に設定されている状態を表している。
【0039】
分岐エッジ部9cは、押圧面9aと案内面9bとの接合部の端縁により構成されており、この分岐エッジ部9cに沿って被覆シートBの基材Cが折り曲げられて搬送されることにより、基材Cが記録紙A及び補助シートEから剥離される。ここでは、分岐エッジ部9cは、その断面形状が略円弧形状となるように形成されている。これにより、基材Cの搬送抵抗を低減させることができる。ただし、この分岐エッジ部9cの断面の略円弧形状の半径をあまり大きくすると、基材Cの剥離方向の角度が小さくなり、基材Cの剥離の際に、基材Cに転写層Dや記録紙Aの記録面のインク等が付着した状態で剥離される可能性が高くなるので、分岐エッジ部9cの断面の略円弧形状の半径は3mm以下、より好ましくは2mm以下とすると好適である。本実施形態においては、具体的には、分岐エッジ部9cの断面の略円弧形状の半径は1mmとしている。
【0040】
この第1分岐ガイド9の押圧面9aにより記録紙A側へ押圧された状態で分岐エッジ部9cに沿って記録紙A及び補助シートEから剥離された被覆シートBの基材Cは、案内面9bに沿って案内されて搬送され、基材回収部6bに巻き取り回収される。これにより、記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に被覆層Fが形成される。従って、本実施形態においては、この第1分岐ガイド9が、本発明における「分岐案内手段」を構成する。
【0041】
この第1分岐ガイド9は、第1加圧機構8による加熱により活性化した被覆シートBの接着層D2が冷却されて十分な接着力を発揮するようになる程度の距離を第1加圧機構8に対して有するように配置すると好適である。また、このような冷却のための距離を十分に設けられない場合には、図示しないが、第1加圧機構8から第1分岐ガイド9までの間の記録紙Aの搬送経路L上にファン等の冷却機構を備える構成とすることができる。
【0042】
第2加圧機構10は、図1〜3に示すように、記録紙Aの搬送経路Lにおける第1分岐ガイド9の下流側に設けられ、被覆シートBの基材Cが分離されて被覆層Fが形成された後の記録紙Aと補助シートEとを両面から更に加圧する機構である。本実施形態においては、記録紙Aと補助シートEとの搬送方向に回転駆動される駆動ローラ10aと、この駆動ローラ10aを回転駆動するローラ駆動機構10cと、駆動ローラ10aに対向して設けられ、駆動ローラ10aに対して加圧された状態で接するとともに駆動ローラ10aの回転に従動して回転する加圧ローラ10bと、この加圧ローラ10bを駆動ローラ10a側に加圧する加圧機構10dとを有している。ここでは、駆動ローラ10a及び加圧ローラ10bは、ともに中空の金属ローラの表面をシリコンゴム等の弾性部材により覆った構成としている。この金属ローラの表面を覆う弾性部材の厚さは、後述するように金属ローラの内部に設けられるヒータからの熱の伝導性を損なうことがなく、かつ、駆動ローラ10aと加圧ローラ10bとの間を搬送される被覆層Fが形成された記録紙Aと補助シートEとを十分に圧着させることができる程度の弾性を有する厚さとすることが好ましく、例えば、シリコンゴムの場合であれば約1mm程度の厚さとすると好適である。ローラ駆動機構10cは、本実施形態においては、図1に示すように、この被覆装置の全体の駆動を行うモータ13と、このモータ13の駆動力を駆動ローラ10aまで伝達する複数のスプロケット、チェーン及びギヤ等の伝達機構により構成されている。
【0043】
ここで、伝達機構は、第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速が、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速とほぼ同一又はそれより速い一定速度となるように設定されている。ここで、第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速が、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速とほぼ同一となるように設定されている場合には、第1加圧機構8と第2加圧機構10との間における被覆シートEの張力は、最初の装着時に与えられた張力のまま変化せず一定となる。また、第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速が、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速より速い一定速度となるように設定した場合には、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速と第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速との速度差により被覆シートEに対して一定の張力を付与することができ、被覆シートEの最初の張力が十分に与えられていない場合であっても、被覆シートEの張りを保つことができる。この際の第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速は、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速に対して3%以下程度とすると好適である。具体的には1%程度とすると好適である。
【0044】
また、加圧機構10dは、図1〜3に示すように、加圧ローラ10bの回転軸の両端部を上下方向に変位可能に保持する保持部材10eと、この保持部材10eを下方に付勢するばね等の弾性部材により構成される付勢部材10fとを有して構成されている。この加圧機構10dによる加圧力は、本実施形態においては、駆動ローラ10aと加圧ローラ10bとのニップ部における圧力が3〜7kg/cm2程度となるように設定している。
【0045】
また、この第2加圧機構10の加圧ローラ10bの内部にはヒータ10gが設けられており、被覆層Fが形成された記録紙Aと補助シートEとを加圧しながら加熱する構成となっている。本実施形態においては、このヒータ10gとして、ハロゲンランプを加圧ローラ10bの軸心部に配設している。このヒータ10gによる加熱温度は、本実施形態においては、加圧ローラ10bの表面温度で80〜100℃程度となるように設定している。
【0046】
したがって、第2加圧機構10においては、被覆層Fが形成された記録紙Aと補助シートEとを搬送しながら両面から加圧するとともに被覆層F側の面から加熱する構成となっている。この加熱及び加圧により、記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に形成された被覆層Fが隙間無く圧着されて強固に接着される。よって、本実施形態においては、この第2加圧機構10が、本発明における「第2の加圧手段」を構成する。
【0047】
第2分岐ガイド11は、記録紙Aの搬送経路Lにおける第2加圧機構10の下流側に設けられ、補助シートEの搬送経路を、記録紙Aの搬送経路Lに対して分岐させる方向に案内するガイド部材である。本実施形態においては、図6及び図9に示すように、第2分岐ガイド11は、記録紙Aの搬送経路L上で記録紙Aの搬送方向に略直交する方向に延びる長尺の部材により構成され、補助シートEの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有している。そして、第2分岐ガイド11には、記録紙Aの搬送経路Lに略平行に設けられた第1案内面11aと、この第1案内面11aに対して交差する方向に設けられた第2案内面11bと、第1案内面11aと第2案内面11bとの接合部に設けられた分岐エッジ部11cとが設けられている。ここでは、記録紙Aの搬送経路Lに略平行に設けられた第2分岐ガイド11の上面が第1案内面11aとなっており、記録紙Aから剥離後の補助シートEに対向する第2分岐ガイド11における記録紙Aの搬送方向下流側の面が第2案内面11bとなっている。この第2案内面11bは、第1案内面11aに対して鋭角をなして交差する方向であって、分岐エッジ部11cから下方に延びる方向に設けられた平面形状に形成されている。分岐エッジ部11cは、第1案内面11aと第2案内面11bとの接合部の端縁により構成されており、この分岐エッジ部11cに沿って補助シートEが折り曲げられて搬送されることにより、補助シートEが記録紙Aから剥離される。ここでは、補助シートEの搬送抵抗を低減させるため、分岐エッジ部11cは、その断面形状が略円弧形状となるように形成されている。
【0048】
この第2分岐ガイド11の分岐エッジ部11cに沿って記録紙Aから剥離された補助シートEは、第2案内面11bに沿って案内されて搬送され、シート回収部7bに巻き取り回収される。この際、記録紙Aはその搬送経路Lに沿って略水平方向に直進するのに対して、補助シートEは第2分岐ガイド11の分岐エッジ部11c及びそれに連続する第2案内面11bに沿って下方に折り曲げられて搬送されることから、記録紙Aの記録面に形成された被覆層Fと、その記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に形成された被覆層Fとは互いに離間することとなり、記録紙Aの記録面に形成された被覆層Fと、その記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に形成された被覆層Fとが記録紙Aの端縁付近に沿って切断されて分離される。よって、本実施形態においては、この第2分岐ガイド11が、本発明における「第2の分岐案内手段」を構成する。
【0049】
排出機構3は、図1〜3及び図9に示すように、記録紙Aの搬送経路Lにおける第2分岐ガイド11の下流側に設けられ、第2分岐ガイド11において補助シートEが分離された後の記録紙Aを排出トレイ4に排出するための記録紙Aの搬送機構である。ここでは、記録紙Aの搬送方向に回転駆動される駆動ローラ3aと、この駆動ローラ3aを回転駆動するローラ駆動機構3cと、駆動ローラ3aに対向して設けられ、駆動ローラ3aに対して加圧された状態で接するとともに駆動ローラ3aの回転に従動して回転する加圧ローラ3bと、この加圧ローラ3bを駆動ローラ3a側に加圧する加圧機構3dとを有している。本実施形態においては、駆動ローラ3a及び加圧ローラ3bは、ともに表面を合成ゴム等の弾性部材により覆ったローラにより構成している。ただし、これらのローラは弾性部材により覆わない金属製等のハードローラとすることも可能である。本実施形態においては、ローラ駆動機構3cは、図1に示すように、この被覆装置の全体の駆動を行うモータ13と、このモータ13の駆動力を駆動ローラ3aまで伝達する複数のスプロケット、チェーン及びギヤ等の伝達機構により構成されている。また、加圧機構3dは、図9に示すように、加圧ローラ3bの回転軸の両端部を下方に付勢するばね等の弾性部材により構成される付勢部材3fを有して構成されている。
【0050】
上記のとおり、本実施形態においては、記録紙Aを載せた補助シートEの搬送方向の上流側と下流側とを、第1加圧機構8と第2加圧機構10とによりそれぞれ加圧した状態で保持して搬送する構成としている。そして、第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速が、第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速とほぼ同一又はそれより速い一定速度となるように設定されている。したがって、補助シートEの最初の装着時に与えられる張力、又はこの最初の装着時に与えられる張力と第1加圧機構8の駆動ローラ8aの外周の周速と第2加圧機構10の駆動ローラ10aの外周の周速との速度差により与えられる張力との合計の張力が、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部との間において変化することがなく、常に一定の張力が補助シートEに対して作用している状態が維持される。したがって、補助シートE及びこれと一体的に圧着されて搬送される被覆シートBに対する第1分岐ガイド9の押圧面9aによる押圧力も変化せず、一定の押圧力を維持することができる。これにより、第1分岐ガイド9において記録紙A及び補助シートEから被覆シートBの基材Cを剥離する際の剥離性を安定させることができる。また、このように補助シートEに作用する張力を一定にすることにより、補助シートEの厚みを薄くすることが可能となり、補助シートEのコストダウンを図るとともに、ロール状の補助シートEの供給保持部7a及びシート回収部7bにおける補助シートEの格納スペースを減少させ、或いは補助シートEの長さを長くして補助シートEの交換サイクルを長くすることができる。
【0051】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図10は、本実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る被覆装置は、上記第1の実施形態に係る被覆装置における第2加圧機構10に相当する部分を備えておらず、第1分岐ガイド9による記録紙Aの搬送経路と被覆シートBの基材Cの搬送経路との分岐位置と、第2分岐ガイド11による記録紙Aの搬送経路Lと補助シートEの搬送経路との分岐位置とが近接した位置となっている点で、上記第1の実施形態と主に相違する。
【0052】
すなわち、本実施形態においては、図11及び図12に示すように、第1加圧機構8の駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとの間で、記録紙Aと被覆シートBと補助シートEとを積層状態で搬送しながら両面から加圧するとともに加熱することにより、記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に被覆シートBの転写層Dを圧着する。その後、被覆シートBの接着層D2が冷却される程度の距離に配置された第1分岐ガイド9で被覆シートBの基材Cの搬送経路を記録紙A及び補助シートEの搬送経路Lに対して分岐させることにより、記録紙A及び補助シートEから被覆シートBの基材Cを剥離させる。この第1分岐ガイド9の構成は、上記第1の実施形態の場合と同様である。すなわち、本実施形態においても、第1分岐ガイド9の押圧面9aは、被覆シートBの基材Cを記録紙A側へ押圧するために、記録紙Aの搬送経路Lを構成する第1加圧機構8の駆動ローラ8aと加圧ローラ8bとのニップ部と、排出機構3の駆動ローラ3aと加圧ローラ3bとのニップ部とを結ぶ平面Pよりも下方に位置するように配置されている。この押圧面9aの位置を平面Pに対してどれだけ下方に配置するかは、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部との間における補助シートEの張り具合や、補助シートEの延びやすさの程度等に応じて定めるが、本実施形態においては、上記第1の実施形態の場合と異なり、記録紙Aの搬送方向の下流側の近接した位置に第2分岐ガイド11が配置されていることから、平面Pに対する押圧面9aの下がり量を上記第1の実施形態の場合よりも少なくしても、上記第1の実施形態の場合と同様の押圧力を得ることが可能である。
【0053】
このようにして、被覆シートBの基材Cを記録紙A及び補助シートEから剥離させて記録紙Aの記録面及びこの記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に被覆層Fを形成する。そして、記録紙Aの搬送方向の下流側の近接した位置には、第2分岐ガイド11が配置されている。この第2分岐ガイド11の第1案内面11aは、記録紙Aの搬送経路Lに略平行に設けられた第2分岐ガイド11の上面により構成されている。この第2分岐ガイド11で補助シートEの搬送経路を、記録紙Aの搬送経路Lに対して分岐させることにより、記録面に被覆層Fが形成された記録紙Aと、その記録紙Aの周囲の表面に被覆層Fが形成された補助シートEとを互いに離間させ、記録紙Aの記録面に形成された被覆層Fと、その記録紙Aの周囲の補助シートEの表面に形成された被覆層Fとを記録紙Aの端縁付近に沿って切断して分離する。そして、被覆層Fが形成された記録紙Aは排出機構3により排出トレイ4に排出される。
【0054】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態においては、画像毎等に分離された状態の短尺の記録紙Aが被覆層を形成する対象として供給される場合について説明したが、本発明は、長尺の記録紙Aが被覆層を形成する対象として連続的に供給される場合にも適用することが可能である。この場合、補助シートEを供給することは必要ないので、被覆装置は被覆シート搬送機構6を備えない構成となり、その代わりに、ロール状に巻き取られた長尺の記録紙Aを、被覆シートBに対向させて連続的に供給する記録媒体供給手段5を備えた構成となる。そして、互いに対向するように供給され搬送される記録紙Aと被覆シートBとは、第1加圧機構8において両面から加圧され、記録紙Aの表面に被覆シートBの転写層Dが転写されて圧着される。この際、記録媒体供給手段5の具体的構成としては、例えば、上記実施形態における被覆シート搬送機構6と同様の構成とすることが可能である。また、この場合、被覆装置は、当然ながら記録紙Aの搬送経路と補助シートEの搬送経路とを分岐させる第2分岐ガイド11を備えない構成となる。その他の構成については、上記第1の実施形態と同様にすることが可能である。
【0055】
(2)上記実施形態においては、図6〜9に示すように、第1分岐ガイド9の押圧面9aは、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部とを結ぶ平面Pに対して略平行な平面を有して構成されているが、押圧面9aの構成はこのようなものに限定されない。すなわち、押圧面9aは、平面に限定されず、被覆シートBの基材Cを記録紙A側へ押圧することができる構成であればよいため、例えば円弧状等の曲面や、台形状等の複数の平面により構成されるものとすることも可能である。また、押圧面9aを平面とする場合であっても、第1加圧機構8のニップ部と第2加圧機構10のニップ部とを結ぶ平面Pに対して交差する方向に設け、分岐エッジ部9cの近傍のみが平面Pよりも下方に位置するように構成することも可能である。
【0056】
(3)上記実施形態においては、図1〜3及び図10に示すように、本発明における「記録媒体供給手段5」として、供給トレイ1及び供給ガイド2を備える構成について説明したが、記録媒体供給手段5として、記録紙Aを自動で連続的に供給する自動供給機構を備える構成とすることも可能である。すなわち、本発明に係る被覆装置は、実際の使用時には、写真プリンタ等の記録紙Aに画像を記録する記録装置の下流側に設置されることになる。したがって、この記録装置から連続的に排出される記録紙Aを自動的に搬送して被覆装置の装置本体内に供給する構成までを備える構成とすると好適である。
【0057】
(4)上記実施形態においては、第1加圧機構8において、加圧とともに加熱を行うことで被覆シートBの転写層Dを記録紙A及び補助シートEに転写する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被覆シートBの転写層Dを加圧のみで記録紙A及び補助シートEに転写できる構成とすることも可能である。この場合、転写層Dを構成する接着層D2として、常温でも良好な接着力を発揮できるものとする必要がある。
【0058】
(5)上記実施形態においては、被覆シートBとして基材Cとこの基材Cに対して剥離可能に設けられた転写層Dとを有するものを用いる場合について説明したが、被覆シートBの構成はこのようなものに限定されることなく、例えば、基材Cを備えず、転写層Dに相当する部分のみからなるシートを用いることも可能である。この場合、被覆シート搬送機構6は、基材回収部6bを備えない構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置の斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面斜視図
【図3】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面図
【図4】本発明の第1の実施形態に係る被覆シートの構造を示す模式断面図
【図5】図3における第1加圧機構近傍の拡大図
【図6】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置の第1分岐ガイド及び第2分岐ガイドにおける各シートの剥離の際の状態を示す斜視図
【図7】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置の第1加圧機構及び第2加圧機構と第1分岐ガイドとの位置関係を示す模式図
【図8】本発明の第1の実施形態に係る被覆装置の第1分岐ガイドにおいて被覆シートの基材が記録紙及び補助シートから剥離する際の状態を示す模式断面図
【図9】図3における第2分岐ガイド近傍の拡大図
【図10】本発明の第2の実施形態に係る被覆装置を幅方向中央付近で切断した断面図
【図11】本発明の第2の実施形態に係る被覆装置の第1分岐ガイド及び第2分岐ガイドにおいて記録紙が被覆シートの基材及び補助シートから剥離する際の状態を示す斜視図
【図12】本発明の第2の実施形態に係る被覆装置の第1加圧機構及び排出機構と第1分岐ガイド及び第2分岐ガイドとの位置関係を示す模式図
【符号の説明】
【0060】
A 記録紙(記録媒体)
B 被覆シート
C 被覆シートの基材
D 被覆シートの転写層
E 補助シート
F 被覆層
L 記録紙の搬送経路
3 排出機構
5 記録媒体供給手段
6 被覆シート搬送機構
7 補助シート搬送機構
8 第1加圧機構(加圧手段)
9 第1分岐ガイド(分岐案内手段)
9a 押圧面
9b 案内面
9c 分岐エッジ部
10 第2加圧機構(第2の加圧手段)
11 第2分岐ガイド(第2の分岐案内手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に剥離可能な転写層を備えて構成される被覆シートの前記転写層を転写することにより記録媒体の表面に被覆層を形成する記録媒体の被覆装置であって、
前記被覆シートに対向させて前記記録媒体を供給する記録媒体供給手段と、
前記被覆シートと前記記録媒体とを両面から加圧して、前記記録媒体の表面に前記転写層を圧着させる加圧手段と、
前記転写層を圧着後の被覆シートの基材の搬送経路を、前記記録媒体の搬送経路に対して分岐させる方向に案内する分岐案内手段と、を備え、
前記分岐案内手段は、前記被覆シートの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有し、前記被覆シートの基材を前記記録媒体側へ押圧する押圧面を備える記録媒体の被覆装置。
【請求項2】
前記加圧手段を第1の加圧手段とし、
前記分岐案内手段に対する前記記録媒体の搬送方向下流側に、被覆シートの基材が分離されて被覆層が形成された後の前記記録媒体を両面から加圧する第2の加圧手段を備え、
前記第2の加圧手段における前記記録媒体の搬送速度を、前記第1の加圧手段における前記被覆シート及び前記記録媒体の搬送速度に対して、同一又はそれより速い一定速度とした請求項1に記載の記録媒体の被覆装置。
【請求項3】
基材の一方の面に剥離可能な転写層を備えて構成される被覆シートの前記転写層を転写することにより記録媒体の表面に被覆層を形成する記録媒体の被覆装置であって、
互いに対向して搬送される被覆シートと補助シートとの間に前記記録媒体を供給するための記録媒体供給手段と、
前記記録媒体を間に挟んだ前記被覆シートと前記補助シートとを両面から加圧して、前記記録媒体の表面及び前記記録媒体の周囲の前記補助シートの表面に前記転写層を圧着させる加圧手段と、
前記転写層を圧着後の被覆シートの基材の搬送経路を、前記記録媒体及び前記補助シートの搬送経路に対して分岐させる方向に案内する分岐案内手段と、を備え、
前記分岐案内手段は、前記被覆シートの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有し、前記被覆シートの基材を前記記録媒体側へ押圧する押圧面を備える記録媒体の被覆装置。
【請求項4】
前記加圧手段を第1の加圧手段とし、
前記分岐案内手段に対する前記記録媒体の搬送方向下流側に、被覆シートの基材が分離されて被覆層が形成された後の前記記録媒体と前記補助シートとを両面から加圧する第2の加圧手段を備え、
前記第2の加圧手段における前記補助シート及び前記記録媒体の搬送速度を、前記第1の加圧手段における前記被覆シート、前記補助シート及び前記記録媒体の搬送速度に対して、同一又はそれより速い一定速度とした請求項3に記載の記録媒体の被覆装置。
【請求項5】
前記分岐案内手段は、前記押圧面における前記記録媒体の搬送方向下流側端部に対して交差する方向に設けられ、その交差角度が前記押圧面に対して20〜80°の範囲内とされた案内面を備えている請求項1から4の何れか1項に記載の記録媒体の被覆装置。
【請求項6】
前記分岐案内手段は、前記押圧面と前記案内面との接合部に設けられた分岐エッジ部を備え、この分岐エッジ部は、その断面形状が半径3mm以下の略円弧形状である請求項5に記載の記録媒体の被覆装置。
【請求項1】
基材の一方の面に剥離可能な転写層を備えて構成される被覆シートの前記転写層を転写することにより記録媒体の表面に被覆層を形成する記録媒体の被覆装置であって、
前記被覆シートに対向させて前記記録媒体を供給する記録媒体供給手段と、
前記被覆シートと前記記録媒体とを両面から加圧して、前記記録媒体の表面に前記転写層を圧着させる加圧手段と、
前記転写層を圧着後の被覆シートの基材の搬送経路を、前記記録媒体の搬送経路に対して分岐させる方向に案内する分岐案内手段と、を備え、
前記分岐案内手段は、前記被覆シートの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有し、前記被覆シートの基材を前記記録媒体側へ押圧する押圧面を備える記録媒体の被覆装置。
【請求項2】
前記加圧手段を第1の加圧手段とし、
前記分岐案内手段に対する前記記録媒体の搬送方向下流側に、被覆シートの基材が分離されて被覆層が形成された後の前記記録媒体を両面から加圧する第2の加圧手段を備え、
前記第2の加圧手段における前記記録媒体の搬送速度を、前記第1の加圧手段における前記被覆シート及び前記記録媒体の搬送速度に対して、同一又はそれより速い一定速度とした請求項1に記載の記録媒体の被覆装置。
【請求項3】
基材の一方の面に剥離可能な転写層を備えて構成される被覆シートの前記転写層を転写することにより記録媒体の表面に被覆層を形成する記録媒体の被覆装置であって、
互いに対向して搬送される被覆シートと補助シートとの間に前記記録媒体を供給するための記録媒体供給手段と、
前記記録媒体を間に挟んだ前記被覆シートと前記補助シートとを両面から加圧して、前記記録媒体の表面及び前記記録媒体の周囲の前記補助シートの表面に前記転写層を圧着させる加圧手段と、
前記転写層を圧着後の被覆シートの基材の搬送経路を、前記記録媒体及び前記補助シートの搬送経路に対して分岐させる方向に案内する分岐案内手段と、を備え、
前記分岐案内手段は、前記被覆シートの搬送方向に直交する方向の幅と同一又はそれ以上の幅を有し、前記被覆シートの基材を前記記録媒体側へ押圧する押圧面を備える記録媒体の被覆装置。
【請求項4】
前記加圧手段を第1の加圧手段とし、
前記分岐案内手段に対する前記記録媒体の搬送方向下流側に、被覆シートの基材が分離されて被覆層が形成された後の前記記録媒体と前記補助シートとを両面から加圧する第2の加圧手段を備え、
前記第2の加圧手段における前記補助シート及び前記記録媒体の搬送速度を、前記第1の加圧手段における前記被覆シート、前記補助シート及び前記記録媒体の搬送速度に対して、同一又はそれより速い一定速度とした請求項3に記載の記録媒体の被覆装置。
【請求項5】
前記分岐案内手段は、前記押圧面における前記記録媒体の搬送方向下流側端部に対して交差する方向に設けられ、その交差角度が前記押圧面に対して20〜80°の範囲内とされた案内面を備えている請求項1から4の何れか1項に記載の記録媒体の被覆装置。
【請求項6】
前記分岐案内手段は、前記押圧面と前記案内面との接合部に設けられた分岐エッジ部を備え、この分岐エッジ部は、その断面形状が半径3mm以下の略円弧形状である請求項5に記載の記録媒体の被覆装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−142528(P2006−142528A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332593(P2004−332593)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]