説明

記録装置、記録システム、および記録方法

【課題】展開後の画像データをメモリ上にてシフトさせることなく、画像を良好にレイアウトして記録することができる記録装置、記録システム、および記録方法を提供すること。
【解決手段】上下左右のはみ出し領域a1,a2,a3,a4におけるはみ出し量の少なくとも1つが異なる場合に、それらのはみ出し量の内の最小のはみ出し量を上下左右に共通のはみ出し量として、上下左右のはみ出し領域を設定する。そして、その設定した上下左右のはみ出し領域と、記録媒体上の実記録領域A0と、に対応する展開領域A2に画像データを展開し、その展開後の画像データに基づいてふち無し記録を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に対してふち無し記録が可能な記録装置、記録システム、および記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆるパソコンプリントシステムにおいては、パソコン上のアプリケーションによって画像の編集およびレイアウトの処理をし、このような処理後のデータをプリンタに送信して、そのプリンタにてプリントアウトする。近年、このようなパソコンプリントシステムに加えて、いわゆるカメラダイレクトプリントシステムやカードダイレクトプリントシステムが普及してきている。
【0003】
カメラダイレクトプリントシステムにおいては、プリンタとデジタルカメラ(以下「DSC」ともいう)とがUSB等のI/Fを介して接続される。そして、そのDSC、または、そのDSCの記憶媒体に記憶されている複数の画像とレイアウト種別に関する情報がプリンタに送信され。プリンタは、そのレイアウト種別にしたがって画像をプリントする。例えば、プリンタに記憶媒体(メモリカード)、表示器、および操作パネルを備え、その操作パネル上にてプリントすべき画像とレイアウト種別を指定し、その指定された画像を指定されたレイアウト種別にしたがってプリントを行う。
【0004】
パソコンプリントシステムでは、一般的に、パソコン上のアプリケーションにて、プリント対象となる画像のJPEGファイルを解凍する。そして、設定された情報にしたがって、プリント対象の画像をページメモリ上にRGB形式でレイアウトし、そのレイアウトされたデータをバンド単位でプリンタに送信する。プリンタは、バンド単位で受け取ったRGBデータに対して、色補正、解像度変換、および色変換等の処理をして、プリント可能なデータ形式へ変換し、それをプリンタエンジンに送信する。このように、パソコンから送信されたデータがプリンタにてプリントされる。
【0005】
カメラダイレクトプリントシステムでは、一般的に、DSCからプリンタに対して、プリント対象となる画像のJPEGファイルとレイアウト種別情報が送信される。そして、プリンタ側において、そのJPEGファイルの解凍、色変換、リサイズ、回転等の処理を行って、プリント可能なデータ形式へ変換し、予め用意された固定的なレイアウト情報にしたがって、JPEG画像をプリントする。
【0006】
カードダイレクトプリントシステムでは、操作パネルにて指定されたプリントの対象となるJPEGファイルがメモリカードからプリンタに読み込まれる。そして、プリンタ側において、JPEGファイルの解凍、色変換、リサイズ、回転等の処理を行って、プリント可能なデータ形式へ変換し、操作パネルにて指定されたレイアウト情報にしたがって、JPEG画像をプリントする。
【0007】
特許文献1には、画像のプリント領域(画像出力領域)に余白がなくなるように、所望の画像を縦横同じ率で変倍し、変倍した画像の中心がプリント領域(出力領域)の中心となるように、画像のプリント位置(画像出力位置)を移動する方法が提案されている。また、この特許文献1には、変倍した画像がプリント領域からはみ出る部分を少なくなるように、画像を90度回転する画像工程を有するレイアウト方法およびプログラムも提案されている。
【0008】
特許文献2には、撮影した肖像画像から人物を検出して、フレーム内に人物をレイアウト可能な方法が提案されている。この方法によれば、人物の頭部上端とフレーム上端との間の距離、頭部左端とフレーム左端との間の距離、および頭部右端とフレーム右端との間の距離のそれぞれを均等に保つように、フレーム内に人物をレイアウトすることが可能となる。
【0009】
特許文献3には、人物の頭頂部から口までの距離と、顔を左右に等分する中心線に基づいて、トリミング範囲を決定するすることにより、人物の天部、顔部、胸部の比率を有効に配置して記録する方法が提案されている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−274155号公報
【特許文献2】特開2002−42116号公報
【特許文献3】特開2004−96487号公報
【特許文献4】特開2005−74809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このようなパソコンプリントシステム、カメラダイレクトプリントシステム、およびカードダイレクトプリントシステムにおいては、操作パネル上にて指定された単一画像、あるいは、複数画像を指定されたレイアウトにしたがってプリント可能となってきている。さらに最近では、用紙の記録領域いっぱいに画像をレイアウトしてプリントするためのふち無しプリントシステムも普及してきている。
【0012】
このようなふち無しプリントシステムにおいては、システムの構成上の制約などから、記録領域の上下左右のそれぞれからはみ出る画像のはみ出し量が異なる場合がある。このような場合には、記録領域と、その記録領域から上下左右にはみ出るはみ出し領域と、を含む領域に対応する大きさの画像を生成してから、その画像をメモリ上にてシフトすることにより、記録領域の中央に画像の中央を配置することができる。撮影写真の場合、画像の中央は構図の中央となる。しかし、このような方法は、生成した画像をメモリ上にてシフトするために、画像の処理速度が遅くなり、高速プリントが難しくなる。また、プリンタにおいて、用紙の給紙誤差や斜行が発生した場合には、プリント画像の周囲の一部分に空白部が出現するおそれがある。
【0013】
また、撮影した写真構図の中央を記録領域の中央に配置した場合に、記録領域の上下左右からはみ出るはみ出し領域に、例えば、写真の中で最も重要である人物の顔領域が入ってしまうことがある。このような場合には、人物の顔領域の上下左右の端部が欠けてプリントされてしまう。
【0014】
また、人物の頭部上端とフレーム上端との間の距離、頭部左端とフレーム左端との間の距離、および頭部右端とフレーム右端との間の距離のそれぞれを均等に保つように、画像をレイアウト可能な装置においては、そのようなレイアウトができない場合がある。すなわち、上下左右におけるはみ出し領域のはみ出し量が異なる場合には、画像を均等にレイアウトすることができない。また、撮影画像内に複数の人物が存在する場合には、フレーム内に複数の人物をバランス良く配置すること、つまり用紙上にバランスよく配置してプリントすることができず、所望のプリント結果を得ることができない。
【0015】
本発明の目的は、展開後の画像データをメモリ上にてシフトさせることなく、画像を良好にレイアウトして記録することができる記録装置、記録システム、および記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の記録装置は、記録媒体上の実記録領域と、前記実記録領域から上下左右にはみ出るはみ出し量の少なくとも1つが異なる上下左右のはみ出し領域と、に対応する展開領域に、記録対象の画像の画像データを展開し、前記展開された画像データに基づいて前記記録媒体にふち無し記録が可能な記録装置において、前記上下左右のはみ出し量の内の最小のはみ出し量を前記上下左右のはみ出し量として、前記上下左右のはみ出し領域を設定するはみ出し領域設定手段と、前記実記録領域と、前記設定手段によって設定された前記上下左右のはみ出し領域と、に対応する領域を前記展開領域として設定する展開領域設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の記録システムは、上記の記録装置と、前記記録装置に前記画像データを供給する供給装置と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の記録方法は、記録媒体上の実記録領域と、前記実記録領域から上下左右にはみ出るはみ出し量の少なくとも1つが異なる上下左右のはみ出し領域と、に対応する展開領域に、記録対象の画像の画像データを展開し、前記展開された画像データに基づいて、前記記録媒体にふち無し記録を行う記録方法において、前記上下左右のはみ出し量の内の最小のはみ出し量を前記上下左右のはみ出し量として、前記上下左右のはみ出し領域を設定し、前記実記録領域と、前記設定手段によって設定された前記上下左右のはみ出し領域と、に対応する領域を前記展開領域として設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上下左右のはみ出し領域におけるはみ出し量の少なくとも1つが異なる場合に、それらのはみ出し量の内の最小のはみ出し量を上下左右に共通のはみ出し量として、上下左右のはみ出し領域を設定する。そして、その設定した上下左右のはみ出し領域と、記録媒体上の実記録領域と、に対応する展開領域に画像データを展開し、その展開後の画像データに基づいてふち無し記録を行うため、画像データの展開領域を小さくして、画像の拡大率を小さくすることができる。また、展開後の画像データをメモリ上にてシフトさせることなく、画像の構図の中央を記録結果の中央(記録媒体の中央)に配置することができる。これらの結果、画像データの処理速度を大幅に向上させることができる。
【0020】
また、記録媒体の位置決め誤差によって、記録媒体上に画像が記録されない空白領域が生じるおそれがある場合には、その空白領域に対しても画像を記録するように擬似画像データを生成することにより、空白領域の発生を防止することができる。記録媒体の位置決め誤差は、例えば、記録媒体の搬送誤差や斜行などによって生じるおそれがある。
【0021】
また、画像内に含まれる人物の顔領域がはみ出し領域にかかる場合に、画像データを補正することにより、その顔領域を記録媒体上の実記録領域内に記録することができる。その場合に、顔領域以外の領域、例えば、背景領域や余白領域を優先的に間引いたり、画像データを180度回転させることができる。
【0022】
また、画像の構図の中央を記録結果の中央に位置させるように記録データを補正することにより、画像中の人物などを良好にレイアウトして記録することができる。例えば、画像中に奇数の顔領域があるときには、中央に位置する顔領域を構図の中央とすることができる。また画像中に偶数の顔領域があるときには、中央に位置する2つの顔領域の中間を構図の中央とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0024】
以下の本発明の実施形態は、デジタルカメラとプリンタ(記録装置)との間にてダイレクトプリントを実現する通信規格の「PictBridge」を利用した場合について説明する。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」ともいう)とプリンタとの間のUSB接続、およびカメラ付き携帯電話とプリンタと間の「PictBridge」接続によって、ダイレクトプリントやカードダイレクトプリンタを実現することも可能である。
【0025】
(第1の実施形態)
まず、本発明の記録システムを構成するプリンタ(記録装置)の構成について説明する。
【0026】
「プリンタ(記録装置)の構成」
図1は、本発明の記録システムを構成するフォトダイレクトプリンタ(以下、「PDプリンタ」ともいう)1000の概観斜視図である。このPDプリンタ1000は、ホスト装置としてのPC(パーソナルコンピュータ)からデータを受信した画像データに基づいて記録する通常のPCプリンタとしての機能を備えている。また、このPDプリンタ1000は、メモリカードなどの記憶媒体に記憶されている画像データを直接読取って記録する機能を備えている。さらに、このPDプリンタ1000は、デジタルカメラ等からの画像データを受信して記録する機能をも備えている。
【0027】
図1において、PDプリンタ1000の外殻をなす本体は、下ケース1001、上ケース1002、アクセスカバー1003、および排出トレイ1004の外装部材を有している。また、下ケース1001は、PDプリンタ1000の本体の略下半部を形成し、上ケース1002はPDプリンタ1000の本体の略上半部を形成する。これらのケース1001,1002は、後述の各機構を収納するための収納空間を形成する中空体構造を成しており、その上面部および前面部には、それぞれ開口部が形成されている。
【0028】
排出トレイ1004は、その一端部が下ケース1001に回転自在に保持されており、その回転によって、下ケース1001の前面部に形成される開口部が開閉される。記録動作を実行する際には、排出トレイ1004を前面側へ回転させて開口部を開くことにより、その開口部から、画像が記録された記録媒体としてのシート(普通紙、専用紙、樹脂シート等を含む。以下、単に「シート」という)が排出されて、順次積載される。排紙トレイ1004には、2枚の補助トレイ1004a,1004bが収納されており、それらの補助トレイを必要に応じて手前に引き出すことにより、シートの支持面積を3段階に拡大、縮小させることができる。
【0029】
アクセスカバー1003は、その一端部が上ケース1002に回転自在に保持されており、上ケース1002の上面に形成される開口部を開閉することができる。このアクセスカバー1003を開くことによって、本体内部に収納されている記録ヘッドカートリッジ(不図示)、およびインクタンク(不図示)等の交換が可能となる。ここでは特に図示しないが、アクセスカバー1003の開閉によって、その裏面に形成された突起がカバー開閉レバーを回転させるようになっている。そして、そのレバーの回転位置をマイクロスイッチなどで検出することにより、アクセスカバー1003の開閉状態が検出できるようになっている。
【0030】
また、上ケース1002の上面には、電源キー1005が設けられている。また、上ケース1002の右側には、液晶表示部1006や各種キースイッチ等を備える操作パネル1010が設けられている。この操作パネル1010の構造は、図2を参照して詳しく後述する。1007は自動給送部であり、シートを装置本体内へと自動的に給送する。1008は紙間選択レバーであり、記録ヘッドカートリッジにおける記録ヘッド(プリントヘッド)と、シートと、の間隔を調整するためのレバーである。1009はカードスロットであり、ここに、メモリカード(MC)を装着可能なアダプタが挿入されることにより、このアダプタを介してメモリカードに記憶されている画像データを直接取り込んで記録することができる。このメモリカードとしては、例えばコンパクトフラッシュ(登録商標)メモリ、スマートメディア、メモリスティック等がある。1011は、PDプリンタ1000の本体に着脱可能なビューワ(液晶表示部)であり、PCカードに記憶されている画像の中から記録したい画像を検索する場合などに、1コマ毎の画像やインデックス画像などを表示するために使用される。1012は、後述するデジタルカメラを接続するためのUSB端子である。また、このPD装置1000の後面には、PCを接続するためのUSBコネクタが設けられている。
【0031】
図2は、PDプリンタ1000の操作パネル1010の概観図である。
【0032】
液晶表示部1006には、記録に関するデータを設定するためのメニュー項目が表示される。ここに表示される項目としては、例えば、複数ある写真画像ファイルの内、記録したい写真画像の先頭番号、指定コマ番号(開始コマ指定/印刷コマ指定)、記録を終了したい最後の写真番号(終了)、記録部数(部数)、シートの種類(用紙種類)などである。表示項目として、1枚のシートに記録する写真の枚数設定(レイアウト)、記録の品位の指定(品位)、撮影した日付を記録するか否かの指定(日付印刷)、写真を補正して記録するか否かの指定(画像補正)、記録に必要なシートの枚数表示(用紙枚数)等もある。これらの項目は、カーソルキー2001を用いて、選択あるいは指定される。2002はモードキーであり、このキーを押下する毎に、記録の種類(インデックス印刷、全コマ印刷、1コマ印刷、指定コマ印刷等)を切り替えることができる。このような切り替えに応じて、対応するLED2003が点灯される。2004はメンテナンスキーであり、記録ヘッドのクリーニング等、プリンタのメンテナンスを行わせるときに操作される。2005は記録開始キーであり、記録の開始を指示する時、或いはメンテナンスの設定を確立する際に押下される。2006は記録中止キーであり、記録を中止させる時や、メンテナンスの中止を指示する際に押下される。
【0033】
図3は、本実施の形態に係るPDプリンタ1000の制御に係る主要部の構成を示すブロック図である。
【0034】
図3において、3000は制御基板上に構成された制御部である。3001は、ASIC(専用カスタムLSI)である。3002は、内部にCPUを有するDSP(デジタル信号処理プロセッサ)であり、後述する各種制御処理、および、輝度信号(RGB)から濃度信号(CMYK)への変換、スケーリング、ガンマ変換、誤差拡散等の画像処理等を担当する。3003はメモリであり、DSP3002内のCPUの制御プログラムを記憶するプログラムメモリ3003aと、他のプログラムを記憶するRAMエリアと、画像データなどを記憶するワークメモリとして機能するメモリエリアと、を含む。3004はプリンタエンジンであり、本例においては、複数色のカラーインクを用いてカラー画像を記録するインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)のプリンタエンジンが搭載されている。3005は、DSC3012を接続するためのポートとしてのUSBコネクタである。3006は、ビューワ1011を接続するためのコネクタである。3008はUSBハブ(USB HUB)であり、PDプリンタ1000がPC3010からの画像データに基づいて記録を行う際には、PC3010からのデータをそのままスルーし、USB3021を介してプリンタエンジン3004に出力する。これにより、PC3010は、プリンタエンジン3004と直接、データや信号のやり取りを行って、記録を実行させることができる(一般的なPCプリンタとして機能する)。3009は電源コネクタであり、商用ACから変換された直流電圧を電源3019から入力する。PC3010は一般的なパーソナルコンピュータである。3011は前述したメモリカード(MC)、3012はDSCである。
【0035】
制御部3000とプリンタエンジン3004との間の信号のやり取りは、前述したUSB3021またはIEEE1284バス3022を介して行われる。
【0036】
「デジタルカメラ(DSC)の構成」
次に、デジタルカメラの構成について説明する。
【0037】
図4は、本実施形態におけるデジタルカメラ(DSC)3012の構成を示すブロック図である。
【0038】
図4において、3100は、DSC3012全体の制御を司るCPUであり、3101は、CPU3100によって実行される処理手順を記憶するROMである。3102は、CPU3100のワークエリアとして使用されるRAMである。3103は、各種操作を行うスイッチ群であり、シャッター、モード切替スイッチ、選択スイッチ、およびカーソルキー等が含まれている。2700は液晶表示部であり、現時点で撮影している映像や、撮像されてメモリカードに記憶されている画像を表示したり、各種設定を行う際のメニューを表示するために使用される。
【0039】
3120Bは内蔵電源(ATT)である。3105は光学ユニットであり、主として、レンズとその駆動系によって構成される。3106はCCD素子、3107は、CPU3100の制御下において光学ユニット3105を駆動制御するドライバである。3108は、記憶媒体3109(SDカード等)を接続するためのコネクタである。3110は、PC或いは本実施形態におけるPDプリンタ1000に対して、DSC3012を接続するためのUSBインターフェース(USBのスレーブ側)である。
【0040】
「ダイレクトプリントの概要」
次に、ダイレクトプリントの概要について説明する。
【0041】
図5は、上述のPictBridgeを採用した記録システムにおいて、DSC3012からPDプリンタ1000に対してプリント要求を発行して、記録を行う場合の大まかな信号の流れを説明するための図である。
【0042】
この図5の処理手順は、PDプリンタ1000とDSC3012とがUSBケーブルを介して接続された後、あるいは、無線により通信を行って互いにDPS仕様に準拠していることを確認した後に実行される。まずDSCP3012は、「Configure Print Service」(600)をPDプリンタ1000に送信して、PDプリンタ1000の状態をチェックする。これに対して、PDプリンタ1000から、その時点におけるPDプリンタ1000の「ステータス情報(Notify Device Status)」(601)が通知される。ここでは、「アイドル(Idle)」状態が通知される。PDプリンタ1000が「アイドル」状態であるため、DSCP3012はPDプリンタ1000の「能力情報(Capability)」(602)を問合せ、その能力に応じた「プリント開始要求(Start Job)」(603)を発行する。このプリント開始要求(603)は、後述するように、PDプリンタ1000からのステータス情報(601)の中の「new Job OK」が「真(True)」になっていることを条件として、DSC3012からPDプリンタ1000に発行される。
【0043】
このプリント開始要求(603)に対して、PDプリンタ1000は、記録が指示された画像データのファイルIDに基づいて、「ファイル情報の要求(Get File Info)」(604)をDSC3012に発する。これに応答して、DSC3012は、その「ファイル情報(File Info)」をPDプリンタ1000に送信する。このファイル情報には、ファイル容量等の情報が含まれる。PDプリンタ1000は、そのファイル情報の処理が可能であると判断することにより、そのファイルの要求(Get File)(605)をDSC3012に発する。これにより、その要求されたファイルの画像データ(Image File)がDSC3012からPDプリンタ1000に送られる。
【0044】
そして、PDプリンタ1000がプリント処理を開始することにより、「ステータス情報(Notify Device Status)」(606)として、「印刷中(Printing)」を示す情報がPDプリンタ1000からDSCP3012に送られる。そして、シートの1頁に対するプリント処理が終了してから、次のページのプリント処理を開始するときに、PDプリンタ1000からDSC3012に「ステータス情報(Notify Job Status)」(607)が通知される。1頁だけの記録を行うときには、プリント要求した1頁の記録が終了してから、次の「ステータス情報(Notify Device Status)」(608)によって、PDプリンタ1000が「アイドル(Idle)」状態になったことが通知される。
【0045】
1頁に、複数(N)の画像をレイアウトして記録(「N−up記録」ともいう)する場合、N枚の画像を記録する度に、「ステータス情報(Notify Job Status)」(607)がPDプリンタ1000からDSC3012に送られることになる。本実施形態において、ステータス情報「Notify Job Status」および「Notify Device Status」の発行タイミングと、画像データの取得の順番は、一例にすぎず、製品の実装形態などに応じて様々に設定することができる。
【0046】
「レイアウト処理を含む記録動作」
図6および図7は、DSP3012からPDプリンタ1000に1画像もしくは複数の画像データを供給することにより、PDプリンタ1000にて、画像を自働的にレイアウトして記録を行う場合の処理の説明図である。図6および図7において、ステップS1〜S13はDSC3012における処理を示し、ステップS21〜S37はPDプリンタ1000における処理を示す。
【0047】
まず、ステップS1及びステップS21では、DSC3012とPDプリンタ1000が互いにDPS仕様に準拠していることを確認する。それが確認できた状態において、DSC3012はPDプリンタ1000に対して、プリンタの状態やデバイス情報を問合せる。これに応答して、PDプリンタ1000からDSC3012に対して、その時点でのPDプリンタ1000の状態やデバイス情報が通知される。このデバイス情報には、例えば、接続プロトコルのバージョン、PDプリンタ1000のベンダー名や機種名等が含まれる。DSC3012は、ステップS2において、プリンタの状態、およびデバイス情報の中で必要とする情報をRAM3102に記憶する。このような情報(以下、「情報1」という)には、後に、DSC3012が画像ファイルを変換する際に必要となる情報が含まれている。次にDSC3012は、図5中の602のように、PDプリンタ1000に対して、その「能力情報(Capability)」(602)を問い合わせる。
【0048】
PDプリンタ1000は、ステップS22において、そのPDプリンタ1000の記録機能に関する能力情報(Capability)を作成して、DSC3012に送信する。DSC3012は、この能力情報(Capability)を受信し(ステップS3)、この情報を基に、UI(User Interface)を構築して表示部2700に表示する。PDプリンタ1000は、例えば、用紙サイズがA4判とB5判の普通紙と写真用用紙を装着しており、1−up、2−up,4−upのレイアウト記録を「ふち無し」、或は「ふち有り」で可能である。またPDプリンタ1000は、例えば、日付記録が可能である。これらのPDプリンタ1000の機能を選択するために、それらの機能の項目を任意に選択することができ、かつ、それ以外の項目は選択できないようなUI画面が表示部2700に表示される。
【0049】
次のステップS5において、DSC3012のユーザーは、構築されたUI画面を参照して、記録したい画像を選択し、その画像の記録形式を設定する。この画像の記録形式の設定とは、記録枚数や、用紙サイズ、レイアウト、日付記録の有無等の設定であり、ステップS3にて受信したPDプリンタ1000の能力情報(Capability)に基づくものである。
【0050】
このようにUIを使用してユーザーにより記録の開始が指示されると、その記録を指示するための記録ジョブファイル(印刷ジョブファイル)を作成(ステップS6)し、その作成した記録ジョブファイルをPDプリンタ1000に送信(ステップS7)する。PDプリンタ1000は、この記録ジョブファイルを受信(ステップS23)し、その受信した記録ジョブファイルを解析してプリントの準備を行う。そして、その記録ジョブファイルに記載されている記録対象の「画像ファイル情報(画像ファイル名)の取得要求」をDSC3012に対して発行する(ステップS24)。記録ジョブファイルに複数画像の記述がある場合には、それらの記述された画像の全てに対して、「画像ファイル情報(画像ファイル名)の取得要求」をDSC3012に対して発行する。
【0051】
「画像ファイル情報の取得要求」は、PictBridgeのようなUSB上のPTP(Picture Transfer Protocol)で動作するサービスでは、そのPTPで規定される「Get Object Info(対象情報要求)」に当たる。しかしながら、本実施形態における「画像ファイル情報の取得要求」の役割は、画像ファイルの作成タイミングをPDプリンタ1000からDSC3012に伝えることにある。本実施形態では、この作成タイミングを伝える一つの手段として、「画像ファイル情報の取得要求」を用いたが限定されるものでなく、他の専用のコマンドや既存の通信コマンドを利用してもよい。本実施形態においては、「記録用の画像ファイル作成」のタイミングをPDプリンタ1000からDSC3012に対して通知する。
【0052】
DSC3012は、この「画像ファイル情報の取得要求」を受信(ステップS8)してから、PDプリンタ1000に送信するするための記録用の画像ファイルの作成処理を実行する。そして、その作成した画像ファイルの情報(Object Info Dataset:画像ファイル名、データサイズ、ディレクトリ、日付情報、画像回転方向、等を含む)をPDプリンタ1000に送信する(ステップS9)。複数画像を記録するジョブの場合には、対象画像の全てに関する画像ファイルの情報をPDプリンタ1000に送信する。
【0053】
PDプリンタ1000は、記録対象となる画像ファイルの情報を受信(ステップS25)してから、ジョブファイルを参照して、1頁に複数画像をレイアウトして記録するN−upのジョブか否かを判定する(ステップS26)。1-up記録の場合、つまり1頁に1つの画像をレイアウトして記録する場合には、ステップS29にジャンプする。N−up記録の場合、つまり1頁にN個の画像をレイアウトして記録する場合には、画像ファイルの情報に含まれる画像回転情報を解析し、各頁内の画像の向きが揃うように、受信順序、すなわち記録順序の並べ替え処理を行う(ステップS27)。
【0054】
続いてPDプリンタ1000は、並べ替えられた順序に従って、頁内のレイアウトに関する情報(レイアウト情報)を生成する(ステップS28)。このレイアウト情報の生成処理については後述する。
【0055】
その後、PDプリンタ1000は、送信するファイルIDの順序(ステップS27にて生成される)をDSC3012に通知すべく、「送信するファイル順序の通知」を送信する(ステップS29)。そしてPDプリンタ1000は、メモリ確保などの記録開始処理を行って(ステップS30)を行なって、DSC3012からの画像ファイルの受信待ち状態となる。
【0056】
DSC3012は、「送信するファイル順序の通知」を受信(ステップS10)し、その順序に従って、1ファイル毎に、PDプリンタ1000に対してJPEG画像の送信処理を行う(ステップS11)。1ファイルの送信が完了する毎に、記録対象となる全画像を送信したか否かの判定処理を行い(ステップS12)、全画像の送信が完了していない場合は、ファイルを更新し、ステップS11に戻ってJPEG画像の送信処理を繰り返す。全画像の送信が完了した場合には、PDプリンタ1000からの記録終了通知を待ち受ける状態(ステップS13)となり、その記録終了通知を受信することによって、DSC3012の記録処理が終了する。
【0057】
PDプリンタ1000は、ステップS31からステップS36において、JPEGファイルを受信して、デコード、色処理、レイアウトを行い、プリンタエンジンに出力する処理までを行う。
【0058】
すなわちDSC3012は、まず、JPEG画像ファイルを受信する(ステップS31)。そして、後述するようにステップS28にて生成したレイアウト情報に対応するように、ステップS32において、受信した画像の縦横サイズのサイズを参照して画像の拡大率の算出処理を行う。またステップS32においては、画像ファイル情報に含まれる画像回転方向と、生成されたレイアウト情報と、を参照して、最終的な回転方向を決定する。
【0059】
その後、ステップS32にて算出した画像の拡大率と回転方向を入力情報として、デコード処理を実行してから、矩形のレイアウトにフィッティングするように画像の拡大処理を行う(ステップS33)。画像の拡大率は、指定されたレイアウトの種別や記録モード(ふち有りモード/ふち無しモード)に従って適切に設定される。
【0060】
ステップS33において生成される画像データは、RGBもしくはYCC形式のデータとして出力することができる。本例においては、RGB形式のデータとして出力する。実装状況に応じて、YCC形式のデータとして出力できることは言うまでもない。
【0061】
そのRGB形式の画像データは、プリンタデバイスのCMYK形式に変換して、量子化処理を施し(ステップS34)、その結果をプリンタエンジンに送信(ステップS35)することによって、シートへの記録が行われる。
【0062】
複数画像をN−up記録する場合には、全画像データを受信して全画像を記録したか否かを判定し(ステップS36)、全画像を処理していない場合には、JPEG画像ファイルの受信待ち状態に遷移(ステップS31)して処理を繰り返す。全画像の処理がされたと判定された場合には、DSC3012に記録終了通知を送信(ステップS37)して、PRT1000側の記録処理を終了する。
【0063】
(レイアウト情報の生成処理(ステップ28))
図8は、図6中のステップS28の詳細を説明するためのフローチャートである。
【0064】
本実施形態におけるプリントシステムは、シート(記録媒体)から上下左右にはみ出るように画像をプリント(ふち無しプリント)し、かつ上下左右の画像のはみ出し量が異なるプリントシステム(ふち無しプリントシステム)である。このようなプリントシステムにおいて、上下左右のはみ出し量は、それらの全てが異なる必要はなく、それらの内の少なくとも1つが異なる場合も含む。以下、このようなプリントシステムは、単に「上下左右の画像のはみ出し量が異なるプリントシステム」ともいう。このようなプリントシステムにおいて、上下左右の最小のはみ出し領域に対応する画像を生成することにより、撮影写真構図の中央をプリント結果の中央に配置することができる。具体的には図11(b)に示すように、シート上の実記録領域A0からの上下左右のはみ出し量が最小(図11(b)では一律2mm)の領域A2を設定し、領域A0を拡張したような領域A2に対して画像を展開処理する。
【0065】
まず、図8中のステップS40において、先に受信したJOB情報を参照して、画像のレイアウトモードがふち無しレイアウトモードか否かを判定する。ふち無しレイアウトモードであると判定された場合には、ステップS41からステップS43の処理が実行される。一方、ふち無しレイアウトモードでないと判定された場合には、ステップS44の処理が実行される。
【0066】
ふち無しレイアウトモードの場合には、先ずステップS41にて、ふち無しレイアウト用のレイアウト矩形情報を検索して取得する。そのレイアウト矩形情報は、予め、用紙サイズ、およびN−up記録用のレイアウト毎に、PD1000のROMに格納されている。用紙サイズやN−up記録用のレイアウト情報は、JOB情報として渡されており、それらの情報を参照することによってレイアウト矩形情報を検索して取得する。このレイアウト矩形情報は、シート上の領域の大きさに関する情報であり、図11(b)の場合には、領域A0の大きさに関する情報である。
【0067】
次に、ふち無しプリントのためのはみ出し量を検索して取得する(ステップS42)。そのはみ出し量は、予め、用紙サイズ、およびN−up記録用のレイアウト毎に、PD1000のROMに格納されている。本例においては、領域A0から上下左右にはみ出るはみ出し領域a1,a2,a3,a4のはみ出し量、つまり上はみ出し量、下はみ出し量、左はみ出し量、および右はみ出し量を検索して取得する。
【0068】
次のステップS43においては、まず、それらの上下左右の4つのはみ出し領域a1〜a4のはみ出し量を比較して、それらの中から最小のはみ出し量を選出する(ステップS43)。図11(b)の場合には、最小のはみ出し量として2mmが選出されることになる。そして、その最小のはみ出し量と、先のステップS41にて取得したレイアウト矩形情報と、に基づいて、画像の展開領域を決定する。図11(b)の場合には、領域A0を上下左右に2mmずつ拡張した領域A2が画像の展開領域として決定される。この展開領域に関する情報は、上位のモジュールに対して出力情報として戻される。
【0069】
一方、ステップS40においてふち無しレイアウトモードではないと判定された場合には、ふち有りレイアウト矩形情報を検索して取得する(ステップS44)。そのふち有りレイアウト矩形情報は、予め、用紙サイズ、およびN−up記録用のレイアウト毎に、PD1000のROMに格納されている。ふち有りレイアウトの場合には、ふち無しプリントの場合におけるレイアウト矩形情報の拡張処理(ステップS43)は必要ない。そのため、ふち有りレイアウトの場合には、取得したふち有りレイアウト矩形情報そのものが上位モジュールに対して出力情報として戻される。
【0070】
(ふち無しプリントの参考例1)
図9は、ふち無しプリントの参考例1として、上下左右のはみ出し量が異なる従来のプリントシステムにおいて、ふち無しプリントを実施した場合の説明図である。
【0071】
図9(a)は、DSC3012等の機器により撮影されたJPEGファイルの説明図であり、それは、横4:縦3のアスペクト比のJPEGファイルであり、3名の人物が図のような構図で撮影されて保存される。f1,f2,f3は、それら3名の人物の顔領域である。図9(b)は、上下左右のはみ出し量a1〜a4が異なる場合において、用紙上の矩形の実記録領域A0と上下左右のはみ出し領域a1〜a4の具体的な関係を説明するための図である。上部はみ出し領域a1のはみ出し量は2mm、下部はみ出し領域a2のはみ出し量は5mm、左部はみ出し領域のはみ出し量は2mm、右部はみ出し領域のはみ出し量は3mmである。このように、上部および左部のはみ出し量(2mm)と、下部のはみ出し量(5mm)と、右部のはみ出し量(3mm)と、が異なっている。A1は、実記録領域A0とはみ出し領域a1〜a4とを含む領域(以下、「出力領域」ともいう)である。
【0072】
図9(c)は、図9(b)の領域A1に対応するように、図9(a)の画像を縦横の比率を保ったまま拡大して展開した画像Iを示している。記録用紙上の実線矩形の領域A0の外部に展開された画像は実質記録されないため、結果として、右側の女性の顔領域f1の一部が記録されないことになる。図9(d)は、ユーザーが実際手にする記録結果の説明図であり、右側の女性の顔領域f1を含む画像の一部、および中央の人物の左足の一部は記録されていない。このように画像の一部が記録されないことは、「記録切れ」ともいう。
【0073】
このような記録切れの発生は、上下左右のはみ出し量が異なることによる。具体的には、下部のはみ出し量5mmが上部のはみ出し量2mmよりも3mmも多いために、画像の下側領域が3mmも多く切り取られてしまうことが原因となっている。画像の重要な部分が切り取られてしまうだけではなく、撮影した写真の構図が用紙の中央からずれて記録されてしまう問題も発生する。
【0074】
(ふち無しプリントの参考例2)
図10は、ふち無しプリントの参考例2として、撮影した写真の構図の中央が記録結果の中央となるように、特許文献1に記載の技術を用いた場合の説明図である。
【0075】
図9(c)のように領域A1に応じて生成した画像Iは、図10(c)のように、上下のはみ出し量の差に応じて、全体的にシフトされる。上部のはみ出し領域a1のはみ出し量をTH、下部のはみ大領域a2のはみ出し量をBHとした場合、画像Iの上下方向のシフト量は、次の計算式によって求まられる。
上下方向のシフト量=(BH−TH)/2
【0076】
そのシフト量がプラスであれば画像Iは上方向にシフトされ、また、それがマイナスであれば画像Iは下方向にシフトされることになる。本例ではBH=5mm、TH=2mmであるのため、シフト量として1.5mmが算出されて、メモリ上において画像Iが上方向に1.5mmシフトされることになる。このような上下方向のシフトと同様に、左右方向についてもシフトすることができでき、それは、上下方向と同様の計算式およびシフト操作によって実現することができる。具体的には、左部のはみ出し領域a3のはみ出し量をLH、右部のはみ出し領域a4のはみ出し量をRHとした場合、左右方向のシフト量は、次の計算式によって求められる。
左右方向のシフト量=(RH−LH)/2
【0077】
そのシフト量がプラスであれば画像Iは左方向に、また、それがマイナスであれば画像Iは右方向にシフトされることになる。本例ではRH=3mm、LH=2mmであるため、シフト量として0.5mmが算出されて、メモリ上において画像Iが左方向に0.5mmシフトされることになる。
【0078】
図10(b)は、このようなシフト処理を行った後の記録結果の説明図であり、撮影した写真の構図が記録用紙の中央となるように補正されて、図9(d)と比較して良好な記録結果となる。
【0079】
図10(c)は、図10(b)のように画像を記録する際に、プリンタのメカ性能等により、記録用紙の給紙時に給紙誤差が発生した場合の説明図である。本例のようにシフト処理する方式においては、図10(a)のように、画像Iを上下左右のはみ出し量の差分に応じてシフトするだけであることから、給紙誤差が発生した場合には、例えば、記録用紙上に空白領域が現れるおそれがある。例えば、給紙誤差によって、図10(c)のように、画像Iに対して用紙上の領域A0が下側に2mmずれた場合には、用紙上の下部に1.5mmの空白領域Sが発生してしまう。また、給紙誤差がない場合には、撮影写真の構図の中央が記録用紙の中央となるように補正できるものの、撮影状況によっては、左右に撮影された人物の顔領域が欠けてしまうおそれがある。
【0080】
(本発明によるふち無しプリント)
図11は、本発明の第1実施形態におけるふち無しプリントの説明図であり、このふち無しプリントによれば、上述したふち無しプリントの参考例1および2における問題の一部を解決することができる。
【0081】
図11(a)は、前述した図9(a)と同様に、DSC3012等の機器により撮影された写真画像である。図11(b)は、はみ出し領域の設定方法の説明図である。
【0082】
本例においては、前述したように、上下左右のはみ出し領域a1〜a4のはみ出し量が異なるプリンタシステムにおいて、上下左右のはみ出し量から最小のはみ出し量を選定する。そして、そのはみ出し量を上下左右の均一のはみ出し量として設定し、そして、その均一なはみ出し領域を含む領域A2に対して画像を展開することにより、撮影画像の中央を記録用紙の中央に配置する。本例では、はみ出し領域a1〜a4のそれぞれのはみ出し量が2mm、5mm、2mm、3mmであるから、上下左右すべてのはみ出し量を最小の2mmに設定して、領域(以下、「展開領域」ともいう)A2を定める。その展開領域A2は、用紙上の実記録領域A0から、上下左右に一律2mmずつはみ出した領域となる。出力領域A1と展開領域A2とがずれる領域、つまり、下部のはみ出し領域a2における下寄り3mm(5mm−2mm)の領域、および右部のはみ出し領域a4において右寄り1mm(3mm−2mm)の領域は、画像が展開されない領域となる。したがって、画像が展開される領域A2は、用紙上の領域A0と、その領域から上下左右に2mmずるはみ出た領域と、を合わせた矩形領域となる。
【0083】
図11(c)は、領域A2に対して図11(a)の画像を展開した結果を示す。図11(d)は、実際にユーザーが手にする記録結果の説明図である。
【0084】
本実施形態においては、図11(d)のように、前述した比較例2の図10(b)と同様に、撮影画像の構図の中心を記録用紙の中央に位置させることができる。さらに、画像が展開される領域A2は、前述した比較例2において画像が展開される領域、つまり領域A1をシフトした領域よりも小さい。これにより、画像の拡大率を小さくすることができる。また、本例においては、展開後の画像をメモリ上においてシフトさせる必要がないため、画像の処理速度を大幅に高めることができる。
【0085】
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態の説明図である。本実施形態においては、用紙の給紙誤差が生じた場合にも、前述した図10(d)のような空白領域Sの発生をなくすことができる。
【0086】
本例においては、前述した本発明の第1の実施形態のように画像の展開領域A2(図11(c)参照)を設定した上、さらに図12(a)のように、その領域A2の周囲の領域に擬似画像Iaを形成する。図12(a)は、前述した比較例2の図10(c)と同様に給紙誤差が生じた状況を示し、このような給紙誤差を考慮して、図12(a)中の斜線の領域に擬似画像Iaを形成する。
【0087】
擬似画像Iaは、原画像Iに対して端部処理を施すことによって生成することができる。例えば、原画像Iのミラーリング処理、または単純に原画像Iの端部をコピーする等の処理によって、擬似画像Iaを生成することができる。擬似画像Iaの生成方法は限定されず、任意の方法を採用することができる。また、擬似画像Iaが形成される領域(擬似画像が展開される領域)は、用紙の給紙誤差によって空白領域Sが生じる可能性がある領域であり、例えば、領域A1と領域A2との間の領域である。
【0088】
図12(a)のように、給紙誤差が生じて、用紙上の領域A0が領域A2内から外れた場合には、図12(a)のように擬似画像Iaが記録されることになる。つまり、給紙誤差によって図10(d)のように生じるおそれがある空白領域Sに、擬似画像Iaが記録される。
【0089】
本実施形態のように、空白領域Sを埋めるように擬似画像Iaを生成する処理は、補正処理として、前述した図7のステップS33の処理に含まれる。
【0090】
(第3の実施形態)
図13は、本発明の第3の実施形態の説明図である。本実施形態は、前述した第1または第2の実施形態において、さらに補正処理を施する。その補正処理は、撮影された人物が極端に画像の端にある場合に、撮影画像の重要な人物の顔領域が切れて記録されなくなる事態を回避するための処理である。
【0091】
図13(a)は、DSC3012等の機器により撮影された写真画像であり、その画像中において、右側の女性は極端に右端に位置している。図13(b)は、前述した第1の実施形態と同様に、上下左右のはみ出し領域のはみ出し量を均一にして画像展開した場合の説明図である。画像中における右側の女性が極端に右に寄って位置するため、その女性の顔領域f1が右のはみ出し領域にかかってしまう。そのため図13(c)のように、ユーザーが手にする最終的な記録結果においては、その女性の顔の一部分が欠けて記録されなくなってしまう。
【0092】
本発明の第3の実施形態においては、撮影された画像データの中から顔領域を検索し、さらに、その検索された顔領域がはみ出し領域にかかっているか否かを判定する。そして、顔領域がはみ出し領域にかかっている場合には、少なくとも顔領域の部分を避けて画像を間引き処理することにより、顔領域がはみ出し領域にかからないようにする。具体的には図13(d)のように、少なくとも顔領域f1、f2、f3以外の領域部分(本例の場合は人物以外の領域部分)Itを間引きの対象領域(以下、「間引き領域」ともいう)とする。領域Itを間引き処理してから記録することにより、図13(e)のように、最終的に顔領域の欠けが生じない記録結果をユーザーが手にすることになる。このように、顔領域を認識して、その顔領域がはみ出し領域にかかるか否かを判定し、そして、その判定結果に基づいて間引き処理を行うことにより、顔領域が欠けることのない記録結果を得ることができる。画像の顔領域の認識技術としては、公知の技術を使用することができる。間引き対象の領域Itの位置、大きさ、数、および間引きの程度は、顔領域がはみ出し領域にかかる程度に応じて設定することができる。また、本例のように画像の一部に間引き処理を施す他、画像全体または画像の一部に対して縮小処理を施すことによっても同様の効果を得ることができる。
【0093】
本実施形態のように、顔領域がはみ出し領域にかからないように画像を間引く処理は、補正処理として、前述した図7のステップS33の処理に含まれる。
【0094】
(第4の実施形態)
図14は、本発明の第4の実施形態の説明図である。
【0095】
本実施形態は、上下左右のはみ出し領域a1〜a4のはみ出し量が異なるプリンタシステムにおいて、前述した参考例1の図9(d)のように顔領域が切れて記録される事態を回避するために、画像の回転処理を伴うものである。本例においては、前述した図9(b)のようにはみ出し領域a1〜a4のはみ出し量が設定されているプリンタを用いて、図9(a)の写真画像を記録する。前述した参考例1の場合には、図9(c)のように右側の女性の顔領域f1がはみ出し領域にかかって、その顔領域f1が図9(d)のように欠けてしまう。
【0096】
本実施形態においては、図9(c)のように画像を成立させて展開した場合に、顔領域がはみ出し領域にかかってしまうか否かを判定する。そして、その顔領域がはみ出し領域にかかってしまう場合には、画像を180度回転させてから展開した場合に、顔領域がはみ出し領域にかからなくなるか否かを判定する。画像を180度回転させることによって、顔領域がはみ出し領域にかかる事態が回避できる場合には、図13(a)のように、画像を180度回転させてから展開処理をする。図13(b)は、このような回転処理を伴って記録された画像の記録結果である。
【0097】
葉書のように、搬送方向(副走査方向)に方向性があるような用紙を用いる場合には、画像と用紙との位置関係を考慮する必要がある。このような場合には、その用紙の装着方法をユーザーに伝える必要がある。そのために、本プリントシステムは、用紙の装着方法を事前にユーザーに伝えるための処理機能を備える。
【0098】
本実施形態のように、顔領域がはみ出し領域にかからないように画像を180度回転させる処理は、補正処理として、前述した図7のステップS33の処理に含まれる。また本実施形態は、前述した第1および第2の実施形態と組み合わせることにより、より良好がふち無しプリントを行うことができる。
【0099】
(ふち無しプリントの参考例3)
図15は、上下左右のはみ出し領域のはみ出し量が異なる従来のふち無しプリントシステムにおいて、マルチレイアウトによるふち無しプリントを行う場合の説明図である。
【0100】
図15(a)は、前述した図9(a)と同様に、DSC3012等の機器により撮影された写真画像である。図15(b)は、1枚の用紙に6つの画像をレイアウトしてプリントする6upプリントにおいて、ふち無しプリントをする場合のレイアウトの説明図である。図15(b)中実線の矩形領域A0は、記録用紙上の領域である。その領域A0内に区切られた6つの矩形領域(実記録領域)A0−1〜A0−6は、領域A0を6等分割した領域であり、これらの領域に対して実際に画像が記録されることなる。記録用紙の外側の領域a1,a2,a3,a4は、図9(b)と同様のはみ出し領域であり、それぞれのはみ出し量は2mm、5mm、2mm、3mmである。
【0101】
図15(c)は、6つの画像のそれぞれが展開される展開領域A1−1〜A1−6の説明図である。それらの展開領域A1−1〜A1−6において、図15(b),(c)中の左右方向の幅と、同図中の上下方向の高さは、以下の計算式によって求めることができ、それぞれの展開領域は異なった矩形サイズとなる。
領域A1−1の幅 = 領域A0−1の幅 + 左側のはみ出し量(2mm)
領域A1−1の高さ= 領域A0−1の高さ + 上側のはみ出し量(2mm)
領域A1−2の幅 = 領域A0−2の幅 + 右側のはみ出し量(3mm)
領域A1−2の高さ= 領域A0−2の高さ + 上側のはみ出し量(2mm)
領域A1−3の幅 = 領域A0−3の幅 + 左側のはみ出し量(2mm)
領域A1−3の高さ= 領域A0−3の高さ + 右側のはみ出し量(3mm)
領域A1−4の幅 = 領域A0−4の幅 + 右側のはみ出し量(3mm)
領域A1−4の高さ= 領域A0−4の高さ + 右側のはみ出し量(3mm)
領域A1−5の幅 = 領域A0−5の幅 + 左側のはみ出し量(2mm)
領域A1−5の高さ= 領域A0−5の高さ + 下側のはみ出し量(5mm)
領域A1−6の幅 = 領域A0−6の幅 + 右側のはみ出し量(3mm)
領域A1−6の高さ= 領域A0−6の高さ + 下側のはみ出し量(5mm)
【0102】
図15(d)は、展開領域A1−1〜A1−6のそれぞれに対して、図15(a)の写真画像を展開した結果の説明図である。展開領域A1−1〜A1−6の幅と高さが異なるために、それらに展開される画像のサイズおよびレイアウトは異なることになる。このように画像を展開して記録した場合には、実際にユーザーが手にする記録結果が図15(e)のようになり、それぞれの実記録領域A0−1〜A0−6における記録結果は異なる。このように、同じ画像をN−upプリント(本例の場合は、6upプリント)した場合には、違和感を与える記録結果となってしまい、人物の顔領域f1,f2,f3もレイアウト場所によって異なってしまう。
【0103】
(ふち無しプリントの参考例3)
図16は、特許文献4に記載の技術を用いて、実記録領域A0−1〜A0−6のそれぞれに対して同一のはみ出し領域を設定することによって、展開領域A1−1〜A1−6を同じ大きさとした場合の説明図である。
【0104】
本例においては、図16(a)のように、実記録領域A0−1〜A0−6のそれぞれに同一のはみ出し領域を加えた領域を展開領域A1−1〜A1−6とする。したがって、それらの展開領域A1−1〜A1−6は同じ大きさとなる。具体的には、実記録領域A0−1〜A0−6のそれぞれに対して上下左右のはみ出し領域を加え、それらのはみ出し領域のはみ出し量は2mm,5mm,2mm,3mmとした。そのため、展開領域A1−0〜A1−6のそれぞれの幅および高さは、いずれも以下のような値となる。
領域A1−0〜A1−6の幅=領域A0−1〜A0−6の幅
+左側のはみ出し量(2mm)
+右側のはみ出し量(3mm)
領域A1−0〜A1−6の高さ=領域A0−1〜A0−6高さ
+上側のはみ出し量(2mm)
+下側のはみ出し量(5mm)
【0105】
このように、展開領域A1−1〜A1−6を同一のサイズとすることにより、図16(c)のように、それらの領域に対して、同じ倍率の画像が同じように展開されてレイアウトされて、図16(c)のように記録結果が得られることになる。
【0106】
しかし、このようなマルチレイアウトによるふち無しプリントにおいては、写真構図の中央が実記録領域A0−1〜A0−6の中央とならない場合がある。さらに、図16(c)からも分かるように、顔領域がはみ出し領域にかかって、顔領域が欠けて記録されてしまうことがある。
【0107】
(第5の実施形態)
図17は、本発明の第5の実施形態の説明図である。本例においては、前述した図15(a)と同様の画像を1枚の用紙に6つレイアウトしてふち無しプリント(マルチレイアウトによるふち無しプリント)する。領域A0、A1、およびはみ出し領域a1,a2,a3,a4の関係は、前述した図15(b)と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0108】
本実施形態においては、図17(a)のように、実記録領域A0−1〜A0−6のそれぞれの上下左右に対して、はみ出し量が均一のはみ出し領域を加えた領域を展開領域A1−1〜A1−6とする。上下左右における均一なはみ出し量は、はみ出し領域a1〜a4(図15(b)参照)のはみ出し量2mm,5mm,2mm,3mmの内の最小の値の2mmとする。したがって、展開領域A1−0〜A1−6のそれぞれの幅および高さは、いずれも以下のような値となる。
領域A1−0〜A1−6の幅=領域A0−1〜A0−6の幅
+左側のはみ出し量(2mm)
+右側のはみ出し量(2mm)
領域A1−0〜A1−6の高さ=領域A0−1〜A0−6高さ
+上側のはみ出し量(2mm)
+下側のはみ出し量(2mm)
【0109】
図17(b)は、このような展開領域A1−0〜A1−6に対して、図15(a)の画像を展開した場合の説明図である。図17(b)から明らかなように、それぞれの展開領域における画像の展開結果が同一となると共に、撮影写真の構図の中央が記録結果の中央となるように補正される。顔領域f1,f2,f3(図15(a)参照)がはみ出し領域にかかる場合には、前述した本発明の第3および/または第4の実施形態と同様の処理を適用することにより、顔領域が欠ける事態を回避することができる。
【0110】
また、図17(b)中の斜線部分は画像が展開されない領域であり、用紙の給紙誤差などによって、その領域が用紙上の領域A0に位置した場合には、記録画像上に空白領域が形成されてしまう。その図17(b)中の斜線部分に関しては、前述した本発明の第2の実施形態と同様に、画像の端部処理によって擬似画像を生成することにより、空白領域の発生を防止することができる。
【0111】
図17(c)は、図17(b)のように展開された画像を記録することによって、ユーザーが実際に手にする記録結果を示す。図17(c)のように、それぞれの実記録領域A0−1〜A0−6において、画像の記録結果が同一となり、かつ写真構図の中央が記録結果の中央となって、良好な記録結果が得られる。
【0112】
本実施形態のように、画像の構図の中央が記録結果の中央となるように画像を補正する処理は、前述した図7のステップS33の処理に含まれる。
【0113】
(第6の実施形態)
図18は、本発明の第6の実施形態の説明図である。
【0114】
前述した本発明の第1の実施形態を適用した場合、写真撮影時に、写真構図の中央にずれが無ければ、写真構図の中央を記録結果(記録画像)の中央とすることができる。しかし、写真撮影時に、写真構図の中央にずれがあった場合には、撮影時のずれが記録結果のずれに反映されて、写真構図の中央が記録結果の中央にならないことがある。本例においては、撮影写真の中に奇数の人物が撮影されている場合に、構図のずれを補正するための処理をする。
【0115】
図18(a)は、3人の人物が撮影された画像であり、写真構図の中央Caが写真の中央Cからやや左にずれている。図18(b)は、前述した本発明の第1の実施形態によって図18(a)の画像を展開した場合の説明図であり、上下左右のはみ出し量が均一に設定される。写真構図のずれに関しては補正が施されないため、最終的に図18(c)のような記録結果となり、写真構図の中央Caが用紙の中央Cからずれる。
【0116】
図18(d)は、本発明の第6の実施形態によって画像を展開した場合の説明図である。画像中における人物の顔領域f1,f2,f3を検出する技術を用いて、撮影写真に人物が含まれるか否かを検出する。本実施形態においては、このような検出ができることを前提として、撮影写真内に奇数の人物が撮影されているか否かを判定する。本例のように奇数の人物が撮影されている場合には、図18(d)のように展開領域A2の位置を調整して、中央の人物の顔領域f2の中央Cbが記録結果の中央Cとなるように画像を展開する。このように画像を展開して記録することにより、図18(e)のような良好な記録結果を得ることができる。
【0117】
両端の人物の顔領域f1,f3がはみ出し領域にかかる場合には、前述した本発明の第3の実施形態をも複合的に適用して、写真構図の中心Caのずれを補正しつつ、顔領域が欠ける事態を回避することができる。また、記録結果に空白領域を発生させないように、前述した本発明の第2の実施形態をも複合的に適用させることもできる。
【0118】
本実施形態のように、画像の構図の中央が記録結果の中央となるように画像を補正する処理は、前述した図7のステップS33の処理に含まれる。
【0119】
(第7の実施形態)
図19は、本発明の第7の実施形態の説明図である。本実施形態においては、撮影写真内に偶数の人物が撮影されている場合に、構図のずれを補正するための処理をする。
【0120】
図19(a)は撮影された画像であり、撮影画像内に2人の人物が存在し、写真構図の中央Caが写真の中央Cからやや左にずれている。図19(b)は、前述した本発明の第1の実施形態によって図19(a)の画像を展開した場合の説明図であり、上下左右のはみ出し量が均一に設定される。写真構図のずれに関しては補正が施されないため、最終的に図19(c)のような記録結果となり、写真構図の中央Caが用紙の中央Cからずれる。
【0121】
図19(d)は、本発明の第7の実施形態によって画像を展開した場合の説明図である。画像中における人物の顔領域f1,f2を検出する技術を用いて、撮影写真に人物が含まれるか否かを検出する。本実施形態においては、このような検出ができることを前提として、撮影写真内に偶数の人物が撮影されているか否かを判定する。本例のように偶数の人物が撮影されている場合には、図19(d)のように展開領域A2の位置を調整して、中央の2人の人物の顔領域f1,f2の中心Ccが記録結果の中央Cとなるように画像を展開する。このように画像を展開して記録することにより、図19(e)のような良好な記録結果を得ることができる。
【0122】
人物の顔領域がはみ出し領域にかかる場合には、前述した本発明の第3の実施形態をも複合的に適用して、写真構図の中心Caのずれを補正しつつ、顔領域が欠ける事態を回避することができる。また、記録結果に空白領域を発生させないように、前述した本発明の第2の実施形態をも複合的に適用させることもできる。
【0123】
本実施形態のように、画像の構図の中央が記録結果の中央となるように画像を補正する処理は、前述した図7のステップS33の処理に含まれる。
【0124】
(第8の実施形態)
図20は、本発明の第8の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【0125】
本実施形態は、第1の実施形態における図7のステップS33の処理に、前述した第2、第3、および第4の実施形態における補正処理を組み合わせた場合の適用例である。つまり、前述した第3および第4の実施形態のように、レイアウトされた拡大後の画像データから顔領域を検出し、それが検出された場合には、シート(記録媒体)上の領域からはみ出るはみ出し領域に、その顔領域がかからないように補正処理を行う。さらに、前述した第2の実施形態のように、用紙の搬送誤差などにより生成されるおそれがある空白領域を埋めるように、元画像から擬似画像を作成するための補正処理を行なう。
【0126】
本実施形態においては、第1の実施形態における図7のステップS33において、図20の処理を行う。
【0127】
まず、ステップ50において、先の処理によって取得したJOB情報を参照して、ふち無しレイアウトモードであるか否かを判定する。ふち無しレイアウトモードである場合には、ステップS51からステップS58の処理が実行される。一方、ふち無しレイアウトモードではない場合、つまりふち有りレイアウトモードである場合には、ステップS59の処理が実行される。そのステップS59においては、先の図7のステップS32にて求められた画像の拡大率および回転方向に基づいて、画像の展開処理をする。
【0128】
ふち無しレイアウトモードの場合には、先ずステップS51において、図7のステップS31にて取得したJPEGデータに対してデコード処理を行ない、かつ図7のステップS32にて求められた拡大率および回転方向にしたがって、画像の展開処理を実行する。そして、その展開された画像(展開画像)に、顔領域が含まれているか否かを検知し、さらに、その顔領域が含まれいる場合には、展開画像内における顔領域の位置を検出する(ステップS52)。このようなステップS52の処理は、プリントシステム内に含まれる顔検出モジュールを使用して行なう。
【0129】
次に、ステップS53にて、ステップS52の検出結果を基にして、顔領域が存在した否かの判定処理を行う。顔領域が存在しないと判定された場合には、後述するステップS58の処理を実行してからリターンする。
【0130】
ステップS53において、顔領域が存在すると判定された場合には、ステップS54にて、その顔領域がはみ出し領域にかかっているか否かの判定処理を行う。はみ出し領域は、先の処理によって取得されている。そして、顔領域がはみ出し領域にかかっていないと判定された場合には、後述するステップS58の処理を実行してからリターンする。
【0131】
ステップS54において顔領域がはみ出し領域にかかっている判定された場合には、展開画像を180度回転することによって、顔領域がはみ出し領域にかからなくなるか否かを判定する(ステップS55)。展開画像を180度回転することによって、顔領域がはみ出し領域にかからなくなる場合には、ステップS56において、展開画像を180度回転させる処理を行って、展開画像を回転させたか否かを示すフラグをセットする。このフラグは、本処理からのリターン情報として返され、はがきなどの方向性のある用紙に対して画像を記録する場合に、画面に表示する情報の処理において用いられて、ユーザーに対して用紙の挿入方向を指示するために役立つ。このようなステップS55およびS56の処理は、前述した第4の実施形態における補正処理に相当する。
【0132】
展開画像を180度回転しても顔領域がはみ出し領域にかかる場合には、ステップS57にて、顔領域がはみ出し領域にかからないようにするための画像の補正処理を行う。基本的には、背景領域や余白領域等の顔領域以外の部分から、画像間引き処理を施すことによって、顔領域がはみ出し領域にかかることを回避する。このようなステップS57の処理は、前述した第3の実施形態における補正処理に相当する。
【0133】
その後、ステップS58において、用紙の搬送誤差などによって生じるおそれがある空白領域を埋めるように、擬似画像を生成する。このようなステップS58の処理は、前述した第2の実施形態における補正処理に相当する。この擬似画像の生成処理に際しては、前述したように、原画像の端部画像に対して単純複写やミラーリング処理などを行う既知の技術を用いることができる。
【0134】
(他の実施形態)
本発明は、記録装置1000と、それに画像データを供給するデジタルカメラ(DSC)3012やパーソナルコンピュータ(PC)3012などの供給装置と、を組み合わせた種々のプリントシステムとして広く適用することができる。また、上述した記録装置1000が備える画像の処理機能の少なくとも一部は供給装置に持たせてもよく、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)3012に搭載されるドライバー(プログラム)によって、その画像の処理機能を果たすようにしてもよい。したがって、本願発明は、そのような画像の処理機能を持つ画像処理装置および画像処理方法としても適用可能であり、さらに、そのような画像の処理を実行するためのプログラムとして構成することもできる。
【0135】
また、記録装置としては種々の記録方式のものを用いることができる。例えば、インクの吐出エネルギー発生手段として、電気熱変換体(ヒータ)やピエゾ素子などを用いるインクジェット記録方式の他、感熱方式などの種々の記録装置を用いることができる。上述した実施形態における記録装置は、記録ヘッドの主走査方向の移動と、記録媒体の副走査方向の搬送動作と、を伴って画像を記録する所謂シリアルスキャン方式である。しかし、例えば、記録媒体の幅方向の全域に渡って延在する長尺な記録ヘッドを用いて、記録媒体の搬送を伴って画像を記録する所謂フルライン方式などの記録装置を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の第1の実施形態における記録装置の概観斜視図である。
【図2】図1における記録装置の操作パネルの概観図である。
【図3】図1における記録装置の制御系の主要部のブロック構成図である。
【図4】図1の記録装置に接続可能なデジタルカメラのブロック構成図である。
【図5】図1の記録装置と図4のデジタルカメラとの間における信号の流れの概略説明図である。
【図6】図1の記録装置と図4のデジタルカメラとの間における信号の流れを説明するためのフローチャートである。
【図7】図1の記録装置と図4のデジタルカメラとの間における信号の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】図6中のステップS28の処理の詳細を説明するためフローチャートである。
【図9】ふち無しプリントの参考例1の説明図である。
【図10】ふち無しプリントの参考例2の説明図である。
【図11】本発明の第1の実施形態におけるふち無しプリントの説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態におけるふち無しプリントの説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態におけるふち無しプリントの説明図である。
【図14】本発明の第4の実施形態におけるふち無しプリントの説明図である。
【図15】ふち無しプリントの参考例3の説明図である。
【図16】ふち無しプリントの参考例4の説明図である。
【図17】本発明の第5の実施形態におけるふち無しプリントの説明図である。
【図18】本発明の第6の実施形態におけるふち無しプリントの説明図である。
【図19】本発明の第7の実施形態におけるふち無しプリントの説明図である。
【図20】本発明の第8の実施形態における主要部の処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0137】
1000 PDプリンタ(フォトダイレクトプリント装置;記録装置)
3012 DSC(デジタルカメラ)
3000 制御部
3001 ASIC
3002 DSP(デジタル信号処理プロセッサ)
3003 メモリ
3004 プリンタエンジン
3010 PC(パーソナルコンピュータ)
A0 実記録領域
A1 出力領域
A2 展開領域
I 画像
Ia 擬似画像
It 間引き領域
a1,a2,a3,a4 はみ出し領域
f1,f2,f3 顔領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上の実記録領域と、前記実記録領域から上下左右にはみ出るはみ出し量の少なくとも1つが異なる上下左右のはみ出し領域と、に対応する展開領域に、記録対象の画像の画像データを展開し、前記展開された画像データに基づいて前記記録媒体にふち無し記録が可能な記録装置において、
前記上下左右のはみ出し量の内の最小のはみ出し量を前記上下左右のはみ出し量として、前記上下左右のはみ出し領域を設定するはみ出し領域設定手段と、
前記実記録領域と、前記設定手段によって設定された前記上下左右のはみ出し領域と、に対応する領域を前記展開領域として設定する展開領域設定手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記展開領域から上下左右にはみ出る領域の少なくとも1つに対応する画像データとして、前記画像データから擬似的に生成した擬似画像データを付与する擬似画像データ付与手段を備え、
前記擬似画像データを含む前記画像データに基づいて前記ふち無し記録を行うことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
前記擬似画像データは、前記ふち無し記録時における前記記録媒体の位置決め誤差によって、前記実記録領域内に位置する領域に対応することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記画像データに基づいて、前記画像中における人物の顔領域を検出する顔領域検出手段と、
前記顔領域が前記はみ出し領域にかかるときに、前記顔領域を前記実記録領域内に記録するように前記画像データを補正する第1の補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1の補正手段は、前記顔領域を除く前記画像中の領域を間引くことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1の補正手段は、前記画像中の背景領域を間引くことを特徴とする請求項4または5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記第1の補正手段は、前記画像中の余白領域を間引くことを特徴とする請求項4または5に記載の記録装置。
【請求項8】
前記第1の補正手段は、前記画像データを180度回転させることを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の記録装置。
【請求項9】
前記第1の補正手段は、前記展開された後の前記画像データを補正することを特徴とする請求項4から8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記画像の構図の中央を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記構図の中央を前記記録媒体の中央に位置させるように、前記画像データを補正する第2の補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の記録装置。
【請求項11】
前記検出手段は、前記画像中における人物の顔領域の位置に基づいて、前記構図の中央を検出することを特徴とする請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記検出手段は、前記画像中に奇数の顔領域があるときに、中央に位置する顔領域を前記構図の中央として検出することを特徴とする請求項11に記載の記録装置。
【請求項13】
前記検出手段は、前記画像中に偶数の顔領域があるときに、中央に位置する2つの顔領域の中間を前記構図の中央として検出することを特徴とする請求項11に記載の記録装置。
【請求項14】
前記記録媒体に対して複数の画像を記録する際に、展開領域設定手段は、前記複数の画像の画像データのそれぞれに対して前記展開領域を設定することを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の記録装置。
【請求項15】
前記第2の補正手段は、前記展開された後の前記画像データを補正することを特徴とする請求項10から14のいずれかに記載の記録装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の記録装置と、前記記録装置に前記画像データを供給する供給装置と、を含むことを特徴とする記録システム。
【請求項17】
前記記録装置の機能の一部は、前記供給装置に備わることを特徴とする請求項16に記載の記録システム。
【請求項18】
記録媒体上の実記録領域と、前記実記録領域から上下左右にはみ出るはみ出し量の少なくとも1つが異なる上下左右のはみ出し領域と、に対応する展開領域に、記録対象の画像の画像データを展開し、前記展開された画像データに基づいて、前記記録媒体にふち無し記録を行う記録方法において、
前記上下左右のはみ出し量の内の最小のはみ出し量を前記上下左右のはみ出し量として、前記上下左右のはみ出し領域を設定し、
前記実記録領域と、前記設定手段によって設定された前記上下左右のはみ出し領域と、に対応する領域を前記展開領域として設定する
ことを特徴とする記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−104101(P2008−104101A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286770(P2006−286770)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】