設備監視方法および設備監視装置
【課題】設備の正常運転時のデータのみを用いて異常の発生ないし異常の兆候を検出することを可能とする。
【解決手段】設備から発生する音波と振動との周波数成分を周波数成分抽出部2で抽出し、さらに周波数成分修正部3で周波数軸方向に伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成する。設備の正常運転時の修正周波数成分を用いて競合型ニューラルネットワーク5aを学習させ、設備の正常動作に対応付けたクラスタのみを有し各ニューロンごとに設備の正常と異常とを判定する閾値を対応付けたクラスタリングマップを生成する。クラスタ判定部5bは、クラスタリングマップの各ニューロンで、設備の運転時に得られる修正周波数成分に対応するニューロンとの距離が最小になるニューロンを抽出し、この距離を当該ニューロンに設定されている閾値と比較することにより設備の正常と異常とを判定する。
【解決手段】設備から発生する音波と振動との周波数成分を周波数成分抽出部2で抽出し、さらに周波数成分修正部3で周波数軸方向に伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成する。設備の正常運転時の修正周波数成分を用いて競合型ニューラルネットワーク5aを学習させ、設備の正常動作に対応付けたクラスタのみを有し各ニューロンごとに設備の正常と異常とを判定する閾値を対応付けたクラスタリングマップを生成する。クラスタ判定部5bは、クラスタリングマップの各ニューロンで、設備の運転時に得られる修正周波数成分に対応するニューロンとの距離が最小になるニューロンを抽出し、この距離を当該ニューロンに設定されている閾値と比較することにより設備の正常と異常とを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転動作あるいは回転往復動作・直進往復動作のように周期性動作を行う機構を含む設備に関して、設備の異常あるいは異常の兆候を音や振動から検出する設備監視方法および設備監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場で用いる製造設備、空調設備、発電設備、あるいはビルや一般家庭で用いる空調設備は、モータやエンジンのような駆動源とともに各種の機械要素を含み、回転動作のほか回転往復動作や直進往復動作を行う各種機構を備えている。したがって、これらの設備では、動作に伴って周期性振動が発生している。
【0003】
ところで、設備において機械要素の焼き付きや破損を生じると、故障を生じた箇所以外にもストレスがかかって変形したり破損したりして損害が大きくなり修理費用が増大することがあり、また故障が生じてから修理部品や修理する人員を調達すると復旧までの時間が長くなって長期間に亘って設備の動作を停止しなければならなくなる。そこで、故障に至るまでに故障の徴候を検出し、兆候が検出された時点で対策をとることにより、修理費用を低減しまた設備の停止期間を短くしなければならない。
【0004】
設備について、必ずしも異常とは言えない程度の故障の徴候の発見は一般に人の五感に頼っているのが現状である。ところが、工場内では設備の台数が多く、また人手によって設備の監視をしようとすれば判定のできる熟練者を必要とする。その結果、人件費が大きくなるという問題が生じる。さらに、異常の兆候の有無の判定基準には個人差がある上に、同じ人でも体調などによって判定基準にずれが生じるから、判定にばらつきが生じるという問題もある。
【0005】
一方、設備について異常ないし異常の兆候を検出する技術として、回転体を有する設備において回転体の回転数に同期する基本周波数成分の大きさと、基本周波数成分の整数倍の周波数成分の大きさとの関係を用いる技術が提案されている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特許第3214233号公報
【特許文献2】特開2003−232674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、基本周波数成分と2倍、3倍、5倍の周波数成分との比率を振動劣化指数として求め、振動劣化指数が閾値を越えると異常ないし異常の兆候と判定し、また振動劣化指数を用いて振動原因を判定している。また、特許文献2に記載の技術は、主として転がり軸受の損傷に起因した異常を検出するものであり、基本周波数のレベルと整数倍の周波数成分のレベルとの比を所定の基準値と比較することにより、異常の有無を検出している。
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、閾値ないし基準値を決めなければならないから、正常値と異常値との境界を決める必要がある。言い換えると、正常状態での計測値と異常状態での計測値とを必要とするから、既知の異常についてしか異常と判定することができないという問題がある。一方、設備では実際に各種の異常を生じさせてデータを取ることはできず、また、異常が生じたときのデータを収集するとしても必要なデータを集めるには膨大な時間を要する。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、設備の正常運転時のデータのみを用いて異常の発生ないし異常の兆候を検出することを可能とした設備監視方法および設備監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、周期的に動作する駆動部分を備える設備から発生する音波と振動との少なくとも一方を信号入力部により電気信号に変換し、この電気信号から周波数成分抽出部において周波数成分を抽出した後、設備の正常動作に対応付けたクラスタを有するクラスタリングマップが生成されている学習済みの競合型ニューラルネットワークに前記周波数成分を入力するにあたり、設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した周波数成分の分布パターンを、競合型ニューラルネットワークの学習時に用いた設備の規定動作の周波数成分の分布パターンに近付けるように周波数軸方向において伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成し、クラスタリングマップの各ニューロンのうちで修正周波数成分に対応するニューロンの位置により設備の正常と異常とを判定することを特徴とする。
【0010】
この方法によれば、設備から得られた周波数成分について周波数軸方向に伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成することにより、競合型ニューラルネットワークに入力するデータを設備の駆動部分の動作周期に依存しなように加工しているから、設備の動作周期(たとえば、回転数)が変化する場合でも設備の正常と異常とを判断することができる。
【0011】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記周波数成分のうち前記設備に固有の周波数特性の影響を除去するように周波数特性を補正した後に修正周波数成分を生成することを特徴とする。
【0012】
この方法によれば、設備の固有振動などにより周波数成分のうちの特定周波数のレベルが増加したり減少したりするような場合であっても、設備に固有な周波数特性が補正されているから、設備の駆動部分の動作周期が変化したときに周波数特性の分布パターンが周波数軸方向において伸縮しても分布パターンの形状は相似性が保たれる。その結果、設備の固有の周波数特性に依存することなく設備の正常と異常とを判断することができる。
【0013】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記設備の駆動部分の動作周期を変化させて得られる前記周波数成分を加算した加算値を求め、加算値のピーク値の配列を当て嵌めた周波数特性を設備に固有の周波数特性とみなし、当該周波数特性とは逆特性のフィルタリングを施すことを特徴する。
【0014】
この方法によれば、設備の駆動部分の動作周期を変化させて得られる多数のデータを加算することにより、加算値が特異な変化をする周波数を抽出することができ、結果的に設備における固有の周波数特性を抽出することができる。つまり、各設備について固有の周波数特性を自動的に抽出することが可能になり、設備の周波数特性を補正するためのパラメータを自動で設定することが可能になる。
【0015】
請求項4の発明では、請求項2の発明において、前記設備の駆動部分の動作周期を検出し、設備を動作させて得られた前記周波数成分を動作周期の度数に対応付けておき、周波数成分に度数の逆数に比例する値を乗じて正規化した周波数成分を加算した加算値を求め、加算値のピーク値の配列を当て嵌めた周波数特性を設備に固有の周波数特性とみなし、当該周波数特性とは逆特性のフィルタリングを施すことを特徴する。
【0016】
この方法によれば、設備の駆動部分の動作周期を変化させて得られる多数のデータを加算することにより、加算値が特異な変化をする周波数を抽出することができ、結果的に設備における固有の周波数特性を抽出することができる。つまり、各設備について固有の周波数特性を自動的に抽出することが可能になり、設備の周波数特性を補正するためのパラメータを自動で設定することが可能になる。しかも、加算する周波数成分を動作周期について正規化しているから、特定の動作周期で得られた周波数成分が強調されることがなく、設備の周波数特性を補正するためのパラメータを精度よく決定することができる。
【0017】
請求項5の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記修正周波数成分は、前記設備の駆動部分の動作周期を検出し、前記周波数成分を規定の動作周期の周波数成分に合致させるように周波数軸方向において伸縮させることにより得ることを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、周波数成分を設備の駆動部分の動作周期に応じて周波数軸方向に伸縮させるから、競合型ニューラルネットワークに与えるデータのうち動作周期に依存する成分を確実に除去することができる。
【0019】
請求項6の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明において、前記周波数成分に含まれるピーク値のうち周波数軸方向において等間隔で並ぶ複数個のピーク値からなるピーク値群についてピーク値の個数を計数し、ピーク値群が1個の場合は当該ピーク値群に含まれるピーク値の間隔の逆数を前記動作周期とし、ピーク値群が複数個の場合は計数値が最大であるピーク値群におけるピーク値の間隔の逆数を前記動作周期として求めることを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、設備の駆動部分の動作周期を求めるにあたって、別途にセンサなどを必要とせず、構成要素を増加させることなく動作周期の検出が可能になる。
【0021】
請求項7の発明は、周期性を有する動作を行う設備から発生する音波と振動との少なくとも一方を電気信号に変換する信号入力部と、信号入力部から出力される電気信号から周波数成分を抽出する周波数成分抽出部と、設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した周波数成分の分布パターンをあらかじめ記憶されている設備の規定動作の周波数成分の分布パターンに近付けるように周波数軸方向において伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成する周波数成分修正部と、周波数成分修正部から出力される修正周波数成分を入力とし設備の正常動作に対応付けたクラスタを有するクラスタリングマップが生成されている学習済みの競合型ニューラルネットワークと、クラスタリングマップの各ニューロンのうちで設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した修正周波数成分に対応するニューロンの位置により設備の正常と異常とを判定するクラスタ判定部とを備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、設備から得られた周波数成分について周波数軸方向に伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成することにより、競合型ニューラルネットワークに入力するデータを設備の駆動部分の動作周期に依存しなように加工しているから、設備の動作周期(たとえば、回転数)が変化する場合でも設備の正常と異常とを判断することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、設備から得られた周波数成分を周波数軸方向に伸縮させ、競合型ニューラルネットワークに入力するデータを設備の駆動部分の動作周期に依存しなように正規化しているから、設備の動作周期が変化しても設備の正常と異常とを判断することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施形態1)
本発明では、従来技術とは異常の有無を判定する技術が相違する。すなわち、異常の有無を検出するための情報として、設備から発生する音と振動との少なくとも一方に関する周波数成分を用いる点は従来技術と同様である。ただし、従来技術では複数の周波数におけるレベルの比を基準値と比較しているのに対して、本発明では、周波数成分を教師なしの競合型ニューラルネットワークを備えた分類部に入力することにより、正常な動作からのずれの程度を評価し、正常な動作からのずれに応じて異常の兆候や異常の判定を行っている点で従来技術とは相違している。
【0025】
また、回転や往復のような周期性動作を伴う設備では、設備の運転状態に応じて周波数成分の分布パターンの形を保ったままで周波数軸方向に偏移を生じるから、設備から検出した周波数成分を競合型ニューラルネットワークにそのまま入力しても、設備の運転状態によっては設備が正常か異常かを判断することができないが、本発明では、設備から検出した周波数成分に対して周波数軸方向に修正して正規化することにより、設備の運転状態によらず競合型ニューラルネットワークに同条件でデータを入力することを可能とし、正常か異常かの判断を正確に行えるようにしている。
【0026】
以下に具体的に説明する。本実施形態は、図1に示すように、設備から発生する振動と音波とを検出する信号入力部1として、振動センサ1aとマイクロホン1bとを備える。図示例では、信号入力部1に振動センサ1aとマイクロホン1bとの両方を設けているが、対象となる設備に応じて振動センサ1aとマイクロホン1bとのいずれか一方のみを設けてもよい。信号入力部1では、設備から発生する振動と音波とを電気信号に変換する。ここに、設備としてはモータを備え回転駆動される機構が含まれている場合を想定する。この種の設備から発生する振動や音波の周波数成分は、モータの回転数に同期する基本周波数の成分と基本周波数の整数倍あるいは整数分の1の周波数の成分とを含む。設備によっては、基本周波数の整数倍や整数分の1以外の周波数成分を含むこともある。いずれにせよ、この種の設備は周期性振動を生じる。基本周波数はモータの回転数に相当するから、基本周波数の逆数は設備の動作周期になる。
【0027】
信号入力部1から出力された電気信号は周波数成分抽出部2に入力され、周波数成分抽出部2ではA/D変換が施される。さらに、周波数成分抽出部2では電気信号を所定の時間区間に区切り、時間区間ごとに電気信号から周波数成分を抽出する。すなわち、周波数成分抽出部2では、抽出しようとする最大周波数の2倍以上に設定されたサンプリング周波数で、信号入力部1から与えられた電気信号のサンプリングを行い、サンプリングして得られた離散時間信号に対して時間窓(時間区間に相当する)をかけることにより、複数個の離散時間信号からなる信号列を得る。この信号列に対して高速フーリエ変換を行うことにより、信号入力部1から出力された電気信号について時間区間ごとの周波数成分(周波数ごとのレベル)を抽出する。ここに、フーリエ変換に代えてフィルタバンクを用いることも可能である。
【0028】
上述のようにして、図2(a)のような電気信号が周波数成分抽出部2に入力されると、周波数成分抽出部2からは、図2(b)のように離散的に設定した周波数毎のレベルが出力される。このようにして得られた周波数成分の分布パターンを評価すれば、設備が正常であるか否かを判別することが可能になる。
【0029】
ところで、周波数成分抽出部2から出力される周波数成分は設備の動作状態(つまり、回転駆動部分の回転数)に応じて周波数軸方向に偏移する。いま、設備を規定した回転数で運転させたときには、周波数成分の分布パターンが図3(a)のようになったとする。この規定の回転数に対して低速で運転すると、図3(b)のように周波数成分の分布パターンの形が保存されたままで全体に低周波側に偏移する。逆に、規定の回転数に対して高速で運転すると、図3(c)のように周波数成分の分布パターンの形が保存されたままで全体に高周波側に偏移する。
【0030】
そこで、本実施形態では、周波数成分抽出部2の出力を周波数成分修正部3に入力している。周波数成分修正部3では、入力された周波数成分の分布パターンを、図3(a)のような規定の回転数に対応する周波数成分の分布パターンに近付けるように周波数軸方向に伸縮させて正規化する機能を有している。要するに、周波数成分修正部3では、設備の回転数によらず、図3(a)に示すような規定動作での回転数における周波数成分の分布パターンに近付くように周波数軸方向のずれを修正する。周波数成分修正部3の具体的な動作は後述する。
【0031】
周波数成分修正部3から出力された周波数成分は競合型ニューラルネットワーク5aを備えた分類部5に入力される。競合型ニューラルネットワーク5aは、入力層と出力層とにそれぞれ複数個のニューロンを含み、学習モードと検査モードとが選択可能になっている。また、出力層のニューロンは所定の大きさ(たとえば、6×6個のニューロン)のクラスタリングマップを構成する。
【0032】
競合型ニューラルネットワーク5aにおいて学習モードを選択したときには、周波数成分修正部3から出力された修正周波数成分を競合型ニューラルネットワーク5aに直接入力するのではなく、設備が正常である場合の周波数成分を周波数成分抽出部2で抽出した後に、この周波数成分を周波数成分修正部3に入力して必要に応じて周波数軸方向の補正を行って正規化することにより修正周波数成分を生成し、この修正周波数成分を学習データ記憶部4に格納する。学習データ記憶部4には、上述した時間区間について規定した複数区間分の修正周波数成分が学習データとして格納される。言い換えると、規定した複数区間分の修正周波数成分が学習データ記憶部4に格納されるまで、設備が正常であるときの修正周波数成分が収集される。
【0033】
学習モードでは、学習データ記憶部4に格納された複数区間分の修正周波数成分(学習データ)がすべて競合型ニューラルネットワーク5aに入力される。つまり、修正周波数成分抽出部3から出力された修正周波数成分が学習データ記憶部4を介して、競合型ニューラルネットワーク5aに間接的に引き渡される。この学習モードでは、競合型ニューラルネットワーク5aの出力層において、設備が正常であるときの電気信号に対するクラスタのみが生成される。ここで、複数区間分の修正周波数成分を競合型ニューラルネットワーク5aに与えているのは、採取したデータのばらつきを考慮しているからであり、複数区間分のデータを用いることにより、クラスタリングマップにおいて正常の範囲を示すクラスタを形成することができる。
【0034】
クラスタを形成した後には、設備が正常か異常かの判断を行うための閾値を以下の手順で求める。いま、競合型ニューラルネットワーク5aの出力層における各ニューロンの重み係数がn次元で表されるものとし、また学習データ記憶部4にはM個の時間区間の周波数成分が格納されているものとする。クラスタリングマップにおいてj番目のニューロンの重み係数がbj(bj1,bj2,bj3,…,bjn)であるものとする。ここで、学習データ記憶部4に格納された修正周波数成分のうちk番目のデータを入力したときに出力層において発火したニューロンがak(ak1,ak2,ak3,…,akn)という出力値になったとすると、両ニューロンのユークリッド距離Ljを、数1の形で求めることができる。
【0035】
【数1】
【0036】
k番目の学習データについて、クラスタリングマップ内のすべてのニューロンに対するユークリッド距離Lj(j=1,2,…,36)を求め、そのうちユークリッド距離Ljが最小であったニューロンを発火ニューロンとする。
【0037】
上述の演算をすべての学習データについて行い、各学習データごとに発火ニューロンを求めた後、クラスタリングマップ内の各ニューロンについて、各ニューロン(たとえば、j番目のニューロン)が発火ニューロンとなったすべての学習データに関してユークリッド距離Ljの標準偏差Djを求める。このようにして求めた標準偏差Djに定数(たとえば、2または3)を乗じた値を各ニューロン(たとえば、j番目)の閾値とする。
【0038】
上述のようにしてクラスタリングマップが生成され、かつクラスタリングマップにおける各ニューロンの閾値が決定されると、クラスタリングマップおよび閾値が、分類部5に付設されたマップ記憶部6に格納される。
【0039】
学習モードの動作をまとめると、図4のようになる。すなわち、まず学習データ記憶部4に格納されている学習データを消去し、学習情報を初期化する(S1)。次に、設備が正常に動作している状態で信号入力部1から得られる電気信号をサンプリングし(S2)、所定の時間区間における周波数成分を周波数成分抽出部2で抽出し(S3)、抽出結果を周波数軸方向に伸縮させることにより標準化して修正周波数成分を求める(S4)。その後、修正周波数成分を学習データ記憶部4に格納する。学習データ記憶部4には、あらかじめ定めた個数の時間区間について修正周波数成分を格納する(S5)。学習データ記憶部4に所要個数の修正周波数成分が格納された後には、学習データ記憶部4に格納されたデータを競合型ニューラルネットワーク5aに与えることにより、設備が正常である状態に対応したクラスタを持つクラスタリングマップを生成する(S6)。また、クラスタリングマップの各ニューロンに対応する閾値が設定される。
【0040】
一方、競合型ニューラルネットワーク5aを検査モードにすると、周波数成分修正部3から出力される修正周波数成分が競合型ニューラルネットワーク5aに直接入力される。入力された修正周波数成分は競合型ニューラルネットワーク5aの出力層において、周波数成分の分布パターンに対応した出力値c(c1,c2,c3,…,cn)を持つから、数1と同様の演算を行ってクラスタリングマップの各ニューロンとのユークリッド距離Ljを求め、ユークリッド距離Ljが最小になったニューロンに設定されている閾値と、求めたユークリッド距離Ljとを比較する。
【0041】
上述したように、学習モードにおいてクラスタリングマップには設備が正常であるときのクラスタが形成されているから、検査モードにおいて発火したニューロンの位置が当該クラスタに含まれていれば、検査した対象は正常に動作していると判定することができる。一方、検査モードにおいて発火したニューロンの位置が当該クラスタに含まれていなければ設備に異常が生じているか異常の兆候があると考えられる。そこで、検査モードでは、分類部5に設けたクラスタ判定部4bにおいて、クラスタリングマップ内において発火したニューロンの位置を求めるとともに、当該ニューロンに対応して設定されている閾値と比較し、閾値を越えているときに設備が異常(異常の兆候を含む)であると判定する。
【0042】
ここに、クラスタ判定部4bで異常と判定したときに、上述した時間区間の1区間だけで異常と判定するのではなく、異常と判定される時間区間が複数区間連続したときに異常と判定する構成を採用している。つまり、クラスタ判定部4bでの異常の判定は仮判定であって、クラスタ判定部4bは仮判定部に兼用されている。仮判定の結果は、判定記憶部6に格納される。判定記憶部6は、たとえばシフトレジスタを用いて構成することができる。つまり、仮判定の結果が判定記憶部6に格納されるたびにシフトレジスタをシフトさせるようにし、シフトレジスタの出力値がすべて異常になったときに、異常と決定すればよい。この決定もクラスタ判定部4bにおいて行う。したがって、クラスタ判定部4bは主判定部としても機能する。判定記憶部6に格納した結果を用いてクラスタ判定部4bが異常と判断したときには、出力部7を通して「異常」に相当する信号を出力する。また、出力部7は異常に相当する信号を出力するとき以外は「正常」に相当する信号を出力する。
【0043】
検査モードの動作をまとめると、図5のようになる。すなわち、信号入力部1から得られる電気信号をサンプリングし(S1)、所定の時間区間における周波数成分を周波数成分抽出部2で抽出し(S2)、抽出結果を周波数成分修正部3に入力して修正周波数成分を求める(S3)。得られた修正周波数成分は、分類部5における競合型ニューラルネットワーク5aに入力される(S4)。競合型ニューラルネットワーク5aの出力層では、周波数成分抽出部2で抽出された周波数成分の分布パターンに相当する位置のニューロンが発火する。どの位置のニューロンが発火しているかは、クラスタリングマップの各ニューロンとのユークリッド距離によって評価し(S5)、当該ユークリッド距離が発火したニューロンについて設定されている閾値以下であれば(S6)、出力部7から「正常」に相当する信号を出力する(S7)。また、閾値を越えているときには異常と仮判定し、異常と判定される時間区間が複数区間連続すると「異常」に相当する信号を出力部7から出力する(S8)。上述のように学習モードと検査モードとのいずれにおいても、周波数成分抽出部2で抽出した周波数成分を周波数成分修正部3で正規化して分類部5に与えているから、設備の運転時の周波数成分を競合型ニューラルネットワーク5aの学習時に用いた設備の規定動作の周波数成分の分布パターンに近付けることと等価である。
【0044】
以下に、本実施形態での周波数成分修正部3の動作を説明する。周波数成分抽出部2の出力は周波数とパワーとの組からなる多次元データであって、周波数成分抽出部2が出力する周波数は既知であるから、周波数成分抽出部2の出力は周波数の並び順にパワーを並べた多次元ベクトルになる。この多次元ベクトルの要素のうちで大きいほうから順に適数個(たとえば3個)選択し、それらの要素の周波数軸方向における間隔が、設備の規定した回転数で得られるベクトルの要素と同じ間隔になるように、ベクトルの各要素の間隔を拡大あるいは縮小する。
【0045】
基本的には、上述の処理により、設備の回転数にかかわらず、周波数成分を設備の規定した回転数におけるベクトルの各要素と同じ間隔に配列することが可能になる。たとえば、パワーが上位3位以内である要素E1〜E3に着目すると、設備の回転駆動部分の回転数が変化したときに、図6(a)(b)のように周波数軸方向において各要素E1〜E3の位置が偏移する。つまり、各要素E1〜E3に対応する周波数は回転数に依存する。一方、設備が規定の回転数であるときの周波数成分は学習データとして既知であるから、図6(c)のように、この既知の周波数成分であるベクトルからパワーが上位3位以内である要素E1′〜E3′を選択し、設備の運転時に得られた要素E1〜E3の周波数軸方向における各位置を、それぞれ周波数軸方向における要素E1′〜E3′の位置に合うように、要素E1〜E3の周波数軸方向における間隔を伸縮させる。
【0046】
要するに、設備を規定の回転数で動作させたときの周波数成分を既知として、設備の運転中に得られる周波数成分と既知の周波数成分とから同じ条件で複数個の要素E1〜E3,E1′〜E3′を抽出し、要素E1〜E3の周波数を要素E1′〜E3′の周波数に合わせるのである。このようにして、設備が正常であれば、修正周波数成分は設備の回転数に関わりなく同じ分布パターン(つまり、図6(c)の分布パターン)になる。なお、抽出する要素の個数は上述の例では3個としているが、実際にはさらに多数の要素(たとえば90個)を抽出する。
【0047】
ところで、上述の処理が可能であるのは、設備に固有振動などが生じない場合であって、一般的には設備は固有振動を生じるから、特定の周波数において周波数成分のパワーが大きくなる可能性がある。たとえば、図7に示すように、設備が周波数fx付近の固有振動を生じる場合であって、図7(a)のように、要素E2が周波数fx付近であると、本来ならば要素E1よりもパワーが小さいはずの要素E2のパワーが、要素E1よりも大きくなる場合が生じる。また、図7(b)のように、設備の回転数によっては要素E1が周波数fx付近になるから、この場合には要素E1のパワーが要素E2よりも大きくなる。つまり、図7(a)(b)のような分布パターンが得られたとすると、設備には異常がなく設備の回転数だけが変化した場合であっても、各要素E1〜E3,E1′〜E3′の周波数を単純に合わせるだけでは、図8(a)(b)のように修正周波数成分の分布パターンに相違が生じる。
【0048】
そこで、設備の固有振動の周波数のような特異周波数に対しては、周波数成分修正部3もしくは周波数成分修正部3よりも前段において周波数フィルタを設定し、特異周波数を減衰(場合によっては増幅)させる。たとえば、図7に示した例では周波数fxが特異周波数であって、この周波数fxではパワーが大きくなるから、図7に曲線Aで示すように、周波数fx付近のパワーを減衰させる特性を有したフィルタを設定する。特異周波数によるパワーの増減を相殺するように特性を設定したフィルタでフィルタリングを行えば、設備の固有信号などによる特異周波数の影響を除去することができる。すなわち、図7(a)(b)の要素E1〜E3は、フィルタリングを行うことによりそれぞれ図9(a)(b)に示す要素E1″〜E3″に修正される。したがって、要素E1″〜E3″について周波数軸方向に伸縮させれば、図6(c)のような分布パターンを得ることができる。つまり、設備が特異周波数を有している場合でも回転数とは関係なく周波数成分の分布パターンを評価することが可能になる。
【0049】
なお、フィルタは、周波数成分抽出部2または周波数成分修正部3を構成するデジタルフィルタにおいて、各周波数成分のパワーを増減させるように、フィルタのパラメータを調節することにより実現することができる。このように、フィルタのパラメータを調節するだけであるから、設備に合わせて周波数成分抽出部2または周波数成分修正部3の動作を調節するだけで容易に対応することができる。
【0050】
ところで、上述したフィルタの特性は、以下の手順で決定することが可能である。たとえば、周波数成分抽出部2の出力がn次元であってj番目の出力がaj(a1j,a2j,a3j,…,a4j)で表されるものとする。ここで、設備の回転数を複数段階に変化させて得られた複数個の周波数成分(たとえば、図10(a)(b)(c))のような周波数成分)を互いに加算すると、図11のような分布パターンが得られる。一般に設備に特異周波数がなければ高周波数の領域ほど加算される成分が多くなるから、高周波領域ほど加算値は大きくなる傾向になるが、設備に特異周波数が存在すると、特異周波数付近にも加算値に極大値が生じる。したがって、複数個の周波数成分を加算した図11のような加算値の分布パターンを用いると、特異周波数を抽出してフィルタの特性を決定することが可能になる。
【0051】
具体的には、図12(a)に丸印を付しているように加算値のピーク値を求め、次に図12(b)のようにピーク値に対応する指数関数(曲線C1で表す)を最小二乗法を用いて決定する。さらに、この指数関数と各ピーク値との差分の標準偏差σを求め、図12(c)のように、標準偏差σの3倍だけ元の指数関数から上に離れた指数関数(曲線C2で表す)を設定する。たとえば、曲線C1で示す指数関数をf1(i)=10(A×i)+Bで表すと、曲線C2はf2(i)=10(A×i)+B+3σと表すことができる。曲線C1に対して曲線C2よりも上方に離れているピーク値は異常値と考えられるから、このような異常値を抽出する。図12(c)においては異常値が3点抽出されている。
【0052】
異常値は設備の特異周波数に対応すると考えられるから、図12(d)のように、異常値の近傍の複数個のピーク値に対して指数関数を当て嵌める(曲線C3,C4)。このようにして求めた曲線C3,C4を曲線C1とつなぎ合わせることにより、図12(e)のような曲線C5を得ることができる。この曲線C5は装置の特異周波数にピークを有しているから、この曲線C5とは逆特性でフィルタリングを行えば、設備の持つ特異周波数によるパワーの増減を抑制することができる。
【0053】
上述したように、設備の回転数を種々変化させたときに得られる周波数特性を加算するにあたっては、設備の回転駆動部分の回転数が均等に分布していることが望ましい。したがって、回転数を検出するとともに、回転数に関する度数分布を求め、回転数の度数に応じて周波数成分を加算する確率(重み)を増減させる。つまり、回転数ごとに度数の逆数に比例する値を確率に用い、各回転数に対応した周波数成分の加算値ごとに確率を乗じた後、すべての回転数について周波数成分を加算する。
【0054】
回転数が離散的に設定される設備では、回転数ごとの度数を容易に求めることができるが、回転数が連続的に変化する設備では、回転数ごとの度数を求めることができない。そこで、回転数について区間(回転数を一定間隔で区切った区間)を設定し、区間ごとの度数を求めるようにしてもよい。度数を回転数の区間ごとに求める場合には、区間内の回転数に対応する周波数成分を加算し、その加算値を度数で除して各区間ごとに正規化し、正規化後にすべての区間の周波数成分を加算する。
【0055】
上述のように、周波数特性を加算するにあたっては設備の回転数を求めておく必要がある。設備の回転数はエンコーダのようなセンサを設備に設けることによって検出することが可能であるが、本実施形態では、周波数成分修正部3において、周波数成分抽出部2の出力を用いて設備の回転数を求める構成を採用している。
【0056】
すなわち、周波数成分抽出部2から出力される周波数成分のうちピーク値が得られる周波数について、周波数軸方向の間隔を評価し、求めた間隔を設備の回転数とする。ピーク値となる条件は、周波数成分抽出部2における周波数の分解能にもよるが、通常は着目する周波数に隣接する前後3個の周波数についてパワーを比較し、前後3個のいずれよりも大きいパワーが得られている周波数をピーク値が得られる周波数とする。つまり、周波数出力部2の出力として得られるベクトルの要素について、隣接する7個ずつの要素の大小を比較し、各7個の要素のうちで中央の要素が最大であるときに、最大である要素をピーク値の要素とみなすのである。
【0057】
このようにしてピーク値が得られている周波数を抽出すると、各周波数が高調波成分により生じているときには、図13に示すように、ピーク値が得られている周波数f1,f2,…,fnが周波数軸方向において等間隔に並ぶから(f2−f1=f3−f2=…=fn−f(n−1))、ピーク値の間隔は回転数に相当する。ただし、ピーク値の間隔が等間隔であっても、当該間隔が複数存在する場合もある。そこで、周波数軸方向において等間隔で並ぶピーク値をピーク値群とし、ピーク値群に含まれるピーク値の個数を計数する。そして、ピーク値群が1個の場合には、当該ピーク値群に含まれるピーク値の間隔を回転数とする。また、ピーク値群が複数個の場合には、計数値が最大になるピーク値群におけるピーク値の間隔を回転数とする。たとえば、100Hz間隔のピーク値群と120Hz間隔のピーク値群とが検出され、100Hz間隔のピーク値群が10個のピーク値からなり、120Hz間隔のピーク値群が3個のピーク値からなるとすれば、100Hzを回転数として採用する。なお、上述したように回転数の逆数が設備の動作周期になる。
【0058】
運転中の設備に関して上述のようにして回転数を求めると、規定の回転数との比率を求めることができる。つまり、運転中の設備から得た回転数と規定の回転数との比を求めると、この値を拡大率または縮小率として運転中の設備から得たベクトルの要素の間隔を調節することが可能になる。そこで、回転数に一致する周波数を基本周波数とし、運転中の設備から得た回転数に対応する基本周波数に対する規定の回転数での基本周波数の倍率を求め、運転中の設備から得た周波数成分にこの倍率を乗じると、運転中の設備から得た周波数成分を規定の回転数に一致させることができる。
【0059】
なお、上述した倍率が1より小さいときにはデータの一部が脱落し、逆に倍率が1より大きいときにはデータに隙間が生じる。したがって、設備の運転中に得られる周波数成分は全データを用いるのではなく、ピーク値が得られる周波数のような一部の周波数のレベルを取り出して拡大ないし縮小を行う。また、規定の回転数としては設備で設定可能な最小の回転数または最大の回転数を採用すれば、拡大と縮小との一方のみを行えばよいから処理が簡単になる。とくに、最小の回転数を規定の回転数に選択しておけば、運転中の設備から得られる周波数成分は、つねに規定の回転数から得られる周波数成分よりもピーク値の間隔が広くなるから、周波数成分を圧縮してデータを間引きすればよいことになり、周波数成分を拡大する場合よりも処理が簡単である。
【0060】
周波数成分を周波数軸方向において圧縮する際には、間引きする方法以外に以下の方法を採用することもできる。いま、縮小率をα(<1)とし、圧縮前のデータ数をn、圧縮後のデータ数をmとする。つまり、周波数成分を表すベクトルの要素数をn個からm個に圧縮するのであって、α=m/nになる。また、圧縮前の周波数成分を表すベクトルを(a1,a2,a3,a4,a5,…)とし、圧縮後の周波数成分を表すベクトルを(b1,b2,b3,b4,…)とする。圧縮する際には、圧縮前のベクトルの各要素の重み付き加算を行うことで、圧縮後のベクトルの各要素を求める。重み係数は、縮小率αの逆数k(=n/m)を用いて決定する。たとえば、k=1.3の場合には、ベクトル(b1,b2,b3,b4,…)の各要素を以下のように求める。
b1=a1+(k−1)a2=a1+0.3×a2
b2=(2−k)a2+(2k−2)a3=0.7×a2+0.6×a3
b3=(3−2k)a3+(3k−3)a4=0.4×a3+0.9×a4
b4=(4−3k)a4+a5+(4k−5)a6=0.1×a4+a5+0.2×a6
重み係数は縮小率αの逆数kの値によって変化するが、要するに、逆数kの間隔でベクトル(a1,a2,a3,a4,a5,…)を区切ったときに、ベクトル(a1,a2,a3,a4,a5,…)の各要素がベクトル(b1,b2,b3,b4,…)の各要素に貢献する程度を重み係数に用いる。たとえば、k=3であれば、ベクトル(b1,b2,b3,b4,…)の各要素を以下のように求めることになる。
b1=a1+a2+a3
b2=a4+a5+a6
ところで、上述の方法では、運転中の設備の回転数を用い周波数成分を修正するための縮小率を求めているが、以下のようにして縮小率を求めてもよい。いま、規定の回転数に対応する周波数成分のベクトル(b1,b2,b3,b4,…)の要素数をn個とし、運転中の設備から得た周波数成分のベクトル(a1,a2,a3,a4,a5,…)の要素数がm個であるとする。ここで、mを1ずつ減少させて、上述のような重み付き加算を行うことにより、様々な縮小率のベクトルを生成し、生成したベクトルと規定の回転数に対応する周波数成分のベクトルとのノルム(ユークリッド距離)を求める。こうして求めたノルムが最小になるときのmの値を用いて縮小率を決定することができる。
【0061】
なお、上述した各実施形態ではクラスタリングマップにおいて正常動作にのみ対応付けたクラスタを設定しているが、正常動作と異常動作とに対応付けたクラスタを設定しておき、正常動作のクラスタと異常動作のクラスタとのどちらとの距離が近いかに応じて正常と異常との判断を行う構成であっても、本発明の技術思想を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】同上において設備の回転数の相違による周波数成分の変化を示す動作説明図である。
【図4】同上における学習モードの手順を示す動作説明図である。
【図5】同上における検査モードの手順を示す動作説明図である。
【図6】同上における周波数成分の修正の概念を示す動作説明図である。
【図7】同上における周波数成分に対するフィルタリングの概念を示す動作説明図である。
【図8】同上において特異周波数の例を示す動作説明図である。
【図9】同上において特異周波数に対する補正後の周波数特性を示す動作説明図である。
【図10】同上において回転数の相違による周波数成分の変化例を示す動作説明図である。
【図11】同上において回転数の異なる周波数成分を加算した後の周波数特性を示す動作説明図である。
【図12】同上においてフィルタリングの特性を決定する過程を示す動作説明図である。
【図13】同上において周波数特性から回転数を求める方法に関する動作説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 信号入力部
2 周波数成分抽出部
3 周波数成分修正部
4 学習データ記憶部
5a 競合型ニューラルネットワーク
5b クラスタ判定部
6 マップ記憶部
7 判定記憶部
8 出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転動作あるいは回転往復動作・直進往復動作のように周期性動作を行う機構を含む設備に関して、設備の異常あるいは異常の兆候を音や振動から検出する設備監視方法および設備監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場で用いる製造設備、空調設備、発電設備、あるいはビルや一般家庭で用いる空調設備は、モータやエンジンのような駆動源とともに各種の機械要素を含み、回転動作のほか回転往復動作や直進往復動作を行う各種機構を備えている。したがって、これらの設備では、動作に伴って周期性振動が発生している。
【0003】
ところで、設備において機械要素の焼き付きや破損を生じると、故障を生じた箇所以外にもストレスがかかって変形したり破損したりして損害が大きくなり修理費用が増大することがあり、また故障が生じてから修理部品や修理する人員を調達すると復旧までの時間が長くなって長期間に亘って設備の動作を停止しなければならなくなる。そこで、故障に至るまでに故障の徴候を検出し、兆候が検出された時点で対策をとることにより、修理費用を低減しまた設備の停止期間を短くしなければならない。
【0004】
設備について、必ずしも異常とは言えない程度の故障の徴候の発見は一般に人の五感に頼っているのが現状である。ところが、工場内では設備の台数が多く、また人手によって設備の監視をしようとすれば判定のできる熟練者を必要とする。その結果、人件費が大きくなるという問題が生じる。さらに、異常の兆候の有無の判定基準には個人差がある上に、同じ人でも体調などによって判定基準にずれが生じるから、判定にばらつきが生じるという問題もある。
【0005】
一方、設備について異常ないし異常の兆候を検出する技術として、回転体を有する設備において回転体の回転数に同期する基本周波数成分の大きさと、基本周波数成分の整数倍の周波数成分の大きさとの関係を用いる技術が提案されている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特許第3214233号公報
【特許文献2】特開2003−232674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、基本周波数成分と2倍、3倍、5倍の周波数成分との比率を振動劣化指数として求め、振動劣化指数が閾値を越えると異常ないし異常の兆候と判定し、また振動劣化指数を用いて振動原因を判定している。また、特許文献2に記載の技術は、主として転がり軸受の損傷に起因した異常を検出するものであり、基本周波数のレベルと整数倍の周波数成分のレベルとの比を所定の基準値と比較することにより、異常の有無を検出している。
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では、閾値ないし基準値を決めなければならないから、正常値と異常値との境界を決める必要がある。言い換えると、正常状態での計測値と異常状態での計測値とを必要とするから、既知の異常についてしか異常と判定することができないという問題がある。一方、設備では実際に各種の異常を生じさせてデータを取ることはできず、また、異常が生じたときのデータを収集するとしても必要なデータを集めるには膨大な時間を要する。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、設備の正常運転時のデータのみを用いて異常の発生ないし異常の兆候を検出することを可能とした設備監視方法および設備監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、周期的に動作する駆動部分を備える設備から発生する音波と振動との少なくとも一方を信号入力部により電気信号に変換し、この電気信号から周波数成分抽出部において周波数成分を抽出した後、設備の正常動作に対応付けたクラスタを有するクラスタリングマップが生成されている学習済みの競合型ニューラルネットワークに前記周波数成分を入力するにあたり、設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した周波数成分の分布パターンを、競合型ニューラルネットワークの学習時に用いた設備の規定動作の周波数成分の分布パターンに近付けるように周波数軸方向において伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成し、クラスタリングマップの各ニューロンのうちで修正周波数成分に対応するニューロンの位置により設備の正常と異常とを判定することを特徴とする。
【0010】
この方法によれば、設備から得られた周波数成分について周波数軸方向に伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成することにより、競合型ニューラルネットワークに入力するデータを設備の駆動部分の動作周期に依存しなように加工しているから、設備の動作周期(たとえば、回転数)が変化する場合でも設備の正常と異常とを判断することができる。
【0011】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記周波数成分のうち前記設備に固有の周波数特性の影響を除去するように周波数特性を補正した後に修正周波数成分を生成することを特徴とする。
【0012】
この方法によれば、設備の固有振動などにより周波数成分のうちの特定周波数のレベルが増加したり減少したりするような場合であっても、設備に固有な周波数特性が補正されているから、設備の駆動部分の動作周期が変化したときに周波数特性の分布パターンが周波数軸方向において伸縮しても分布パターンの形状は相似性が保たれる。その結果、設備の固有の周波数特性に依存することなく設備の正常と異常とを判断することができる。
【0013】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記設備の駆動部分の動作周期を変化させて得られる前記周波数成分を加算した加算値を求め、加算値のピーク値の配列を当て嵌めた周波数特性を設備に固有の周波数特性とみなし、当該周波数特性とは逆特性のフィルタリングを施すことを特徴する。
【0014】
この方法によれば、設備の駆動部分の動作周期を変化させて得られる多数のデータを加算することにより、加算値が特異な変化をする周波数を抽出することができ、結果的に設備における固有の周波数特性を抽出することができる。つまり、各設備について固有の周波数特性を自動的に抽出することが可能になり、設備の周波数特性を補正するためのパラメータを自動で設定することが可能になる。
【0015】
請求項4の発明では、請求項2の発明において、前記設備の駆動部分の動作周期を検出し、設備を動作させて得られた前記周波数成分を動作周期の度数に対応付けておき、周波数成分に度数の逆数に比例する値を乗じて正規化した周波数成分を加算した加算値を求め、加算値のピーク値の配列を当て嵌めた周波数特性を設備に固有の周波数特性とみなし、当該周波数特性とは逆特性のフィルタリングを施すことを特徴する。
【0016】
この方法によれば、設備の駆動部分の動作周期を変化させて得られる多数のデータを加算することにより、加算値が特異な変化をする周波数を抽出することができ、結果的に設備における固有の周波数特性を抽出することができる。つまり、各設備について固有の周波数特性を自動的に抽出することが可能になり、設備の周波数特性を補正するためのパラメータを自動で設定することが可能になる。しかも、加算する周波数成分を動作周期について正規化しているから、特定の動作周期で得られた周波数成分が強調されることがなく、設備の周波数特性を補正するためのパラメータを精度よく決定することができる。
【0017】
請求項5の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明において、前記修正周波数成分は、前記設備の駆動部分の動作周期を検出し、前記周波数成分を規定の動作周期の周波数成分に合致させるように周波数軸方向において伸縮させることにより得ることを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、周波数成分を設備の駆動部分の動作周期に応じて周波数軸方向に伸縮させるから、競合型ニューラルネットワークに与えるデータのうち動作周期に依存する成分を確実に除去することができる。
【0019】
請求項6の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれかの発明において、前記周波数成分に含まれるピーク値のうち周波数軸方向において等間隔で並ぶ複数個のピーク値からなるピーク値群についてピーク値の個数を計数し、ピーク値群が1個の場合は当該ピーク値群に含まれるピーク値の間隔の逆数を前記動作周期とし、ピーク値群が複数個の場合は計数値が最大であるピーク値群におけるピーク値の間隔の逆数を前記動作周期として求めることを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、設備の駆動部分の動作周期を求めるにあたって、別途にセンサなどを必要とせず、構成要素を増加させることなく動作周期の検出が可能になる。
【0021】
請求項7の発明は、周期性を有する動作を行う設備から発生する音波と振動との少なくとも一方を電気信号に変換する信号入力部と、信号入力部から出力される電気信号から周波数成分を抽出する周波数成分抽出部と、設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した周波数成分の分布パターンをあらかじめ記憶されている設備の規定動作の周波数成分の分布パターンに近付けるように周波数軸方向において伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成する周波数成分修正部と、周波数成分修正部から出力される修正周波数成分を入力とし設備の正常動作に対応付けたクラスタを有するクラスタリングマップが生成されている学習済みの競合型ニューラルネットワークと、クラスタリングマップの各ニューロンのうちで設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した修正周波数成分に対応するニューロンの位置により設備の正常と異常とを判定するクラスタ判定部とを備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、設備から得られた周波数成分について周波数軸方向に伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成することにより、競合型ニューラルネットワークに入力するデータを設備の駆動部分の動作周期に依存しなように加工しているから、設備の動作周期(たとえば、回転数)が変化する場合でも設備の正常と異常とを判断することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、設備から得られた周波数成分を周波数軸方向に伸縮させ、競合型ニューラルネットワークに入力するデータを設備の駆動部分の動作周期に依存しなように正規化しているから、設備の動作周期が変化しても設備の正常と異常とを判断することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施形態1)
本発明では、従来技術とは異常の有無を判定する技術が相違する。すなわち、異常の有無を検出するための情報として、設備から発生する音と振動との少なくとも一方に関する周波数成分を用いる点は従来技術と同様である。ただし、従来技術では複数の周波数におけるレベルの比を基準値と比較しているのに対して、本発明では、周波数成分を教師なしの競合型ニューラルネットワークを備えた分類部に入力することにより、正常な動作からのずれの程度を評価し、正常な動作からのずれに応じて異常の兆候や異常の判定を行っている点で従来技術とは相違している。
【0025】
また、回転や往復のような周期性動作を伴う設備では、設備の運転状態に応じて周波数成分の分布パターンの形を保ったままで周波数軸方向に偏移を生じるから、設備から検出した周波数成分を競合型ニューラルネットワークにそのまま入力しても、設備の運転状態によっては設備が正常か異常かを判断することができないが、本発明では、設備から検出した周波数成分に対して周波数軸方向に修正して正規化することにより、設備の運転状態によらず競合型ニューラルネットワークに同条件でデータを入力することを可能とし、正常か異常かの判断を正確に行えるようにしている。
【0026】
以下に具体的に説明する。本実施形態は、図1に示すように、設備から発生する振動と音波とを検出する信号入力部1として、振動センサ1aとマイクロホン1bとを備える。図示例では、信号入力部1に振動センサ1aとマイクロホン1bとの両方を設けているが、対象となる設備に応じて振動センサ1aとマイクロホン1bとのいずれか一方のみを設けてもよい。信号入力部1では、設備から発生する振動と音波とを電気信号に変換する。ここに、設備としてはモータを備え回転駆動される機構が含まれている場合を想定する。この種の設備から発生する振動や音波の周波数成分は、モータの回転数に同期する基本周波数の成分と基本周波数の整数倍あるいは整数分の1の周波数の成分とを含む。設備によっては、基本周波数の整数倍や整数分の1以外の周波数成分を含むこともある。いずれにせよ、この種の設備は周期性振動を生じる。基本周波数はモータの回転数に相当するから、基本周波数の逆数は設備の動作周期になる。
【0027】
信号入力部1から出力された電気信号は周波数成分抽出部2に入力され、周波数成分抽出部2ではA/D変換が施される。さらに、周波数成分抽出部2では電気信号を所定の時間区間に区切り、時間区間ごとに電気信号から周波数成分を抽出する。すなわち、周波数成分抽出部2では、抽出しようとする最大周波数の2倍以上に設定されたサンプリング周波数で、信号入力部1から与えられた電気信号のサンプリングを行い、サンプリングして得られた離散時間信号に対して時間窓(時間区間に相当する)をかけることにより、複数個の離散時間信号からなる信号列を得る。この信号列に対して高速フーリエ変換を行うことにより、信号入力部1から出力された電気信号について時間区間ごとの周波数成分(周波数ごとのレベル)を抽出する。ここに、フーリエ変換に代えてフィルタバンクを用いることも可能である。
【0028】
上述のようにして、図2(a)のような電気信号が周波数成分抽出部2に入力されると、周波数成分抽出部2からは、図2(b)のように離散的に設定した周波数毎のレベルが出力される。このようにして得られた周波数成分の分布パターンを評価すれば、設備が正常であるか否かを判別することが可能になる。
【0029】
ところで、周波数成分抽出部2から出力される周波数成分は設備の動作状態(つまり、回転駆動部分の回転数)に応じて周波数軸方向に偏移する。いま、設備を規定した回転数で運転させたときには、周波数成分の分布パターンが図3(a)のようになったとする。この規定の回転数に対して低速で運転すると、図3(b)のように周波数成分の分布パターンの形が保存されたままで全体に低周波側に偏移する。逆に、規定の回転数に対して高速で運転すると、図3(c)のように周波数成分の分布パターンの形が保存されたままで全体に高周波側に偏移する。
【0030】
そこで、本実施形態では、周波数成分抽出部2の出力を周波数成分修正部3に入力している。周波数成分修正部3では、入力された周波数成分の分布パターンを、図3(a)のような規定の回転数に対応する周波数成分の分布パターンに近付けるように周波数軸方向に伸縮させて正規化する機能を有している。要するに、周波数成分修正部3では、設備の回転数によらず、図3(a)に示すような規定動作での回転数における周波数成分の分布パターンに近付くように周波数軸方向のずれを修正する。周波数成分修正部3の具体的な動作は後述する。
【0031】
周波数成分修正部3から出力された周波数成分は競合型ニューラルネットワーク5aを備えた分類部5に入力される。競合型ニューラルネットワーク5aは、入力層と出力層とにそれぞれ複数個のニューロンを含み、学習モードと検査モードとが選択可能になっている。また、出力層のニューロンは所定の大きさ(たとえば、6×6個のニューロン)のクラスタリングマップを構成する。
【0032】
競合型ニューラルネットワーク5aにおいて学習モードを選択したときには、周波数成分修正部3から出力された修正周波数成分を競合型ニューラルネットワーク5aに直接入力するのではなく、設備が正常である場合の周波数成分を周波数成分抽出部2で抽出した後に、この周波数成分を周波数成分修正部3に入力して必要に応じて周波数軸方向の補正を行って正規化することにより修正周波数成分を生成し、この修正周波数成分を学習データ記憶部4に格納する。学習データ記憶部4には、上述した時間区間について規定した複数区間分の修正周波数成分が学習データとして格納される。言い換えると、規定した複数区間分の修正周波数成分が学習データ記憶部4に格納されるまで、設備が正常であるときの修正周波数成分が収集される。
【0033】
学習モードでは、学習データ記憶部4に格納された複数区間分の修正周波数成分(学習データ)がすべて競合型ニューラルネットワーク5aに入力される。つまり、修正周波数成分抽出部3から出力された修正周波数成分が学習データ記憶部4を介して、競合型ニューラルネットワーク5aに間接的に引き渡される。この学習モードでは、競合型ニューラルネットワーク5aの出力層において、設備が正常であるときの電気信号に対するクラスタのみが生成される。ここで、複数区間分の修正周波数成分を競合型ニューラルネットワーク5aに与えているのは、採取したデータのばらつきを考慮しているからであり、複数区間分のデータを用いることにより、クラスタリングマップにおいて正常の範囲を示すクラスタを形成することができる。
【0034】
クラスタを形成した後には、設備が正常か異常かの判断を行うための閾値を以下の手順で求める。いま、競合型ニューラルネットワーク5aの出力層における各ニューロンの重み係数がn次元で表されるものとし、また学習データ記憶部4にはM個の時間区間の周波数成分が格納されているものとする。クラスタリングマップにおいてj番目のニューロンの重み係数がbj(bj1,bj2,bj3,…,bjn)であるものとする。ここで、学習データ記憶部4に格納された修正周波数成分のうちk番目のデータを入力したときに出力層において発火したニューロンがak(ak1,ak2,ak3,…,akn)という出力値になったとすると、両ニューロンのユークリッド距離Ljを、数1の形で求めることができる。
【0035】
【数1】
【0036】
k番目の学習データについて、クラスタリングマップ内のすべてのニューロンに対するユークリッド距離Lj(j=1,2,…,36)を求め、そのうちユークリッド距離Ljが最小であったニューロンを発火ニューロンとする。
【0037】
上述の演算をすべての学習データについて行い、各学習データごとに発火ニューロンを求めた後、クラスタリングマップ内の各ニューロンについて、各ニューロン(たとえば、j番目のニューロン)が発火ニューロンとなったすべての学習データに関してユークリッド距離Ljの標準偏差Djを求める。このようにして求めた標準偏差Djに定数(たとえば、2または3)を乗じた値を各ニューロン(たとえば、j番目)の閾値とする。
【0038】
上述のようにしてクラスタリングマップが生成され、かつクラスタリングマップにおける各ニューロンの閾値が決定されると、クラスタリングマップおよび閾値が、分類部5に付設されたマップ記憶部6に格納される。
【0039】
学習モードの動作をまとめると、図4のようになる。すなわち、まず学習データ記憶部4に格納されている学習データを消去し、学習情報を初期化する(S1)。次に、設備が正常に動作している状態で信号入力部1から得られる電気信号をサンプリングし(S2)、所定の時間区間における周波数成分を周波数成分抽出部2で抽出し(S3)、抽出結果を周波数軸方向に伸縮させることにより標準化して修正周波数成分を求める(S4)。その後、修正周波数成分を学習データ記憶部4に格納する。学習データ記憶部4には、あらかじめ定めた個数の時間区間について修正周波数成分を格納する(S5)。学習データ記憶部4に所要個数の修正周波数成分が格納された後には、学習データ記憶部4に格納されたデータを競合型ニューラルネットワーク5aに与えることにより、設備が正常である状態に対応したクラスタを持つクラスタリングマップを生成する(S6)。また、クラスタリングマップの各ニューロンに対応する閾値が設定される。
【0040】
一方、競合型ニューラルネットワーク5aを検査モードにすると、周波数成分修正部3から出力される修正周波数成分が競合型ニューラルネットワーク5aに直接入力される。入力された修正周波数成分は競合型ニューラルネットワーク5aの出力層において、周波数成分の分布パターンに対応した出力値c(c1,c2,c3,…,cn)を持つから、数1と同様の演算を行ってクラスタリングマップの各ニューロンとのユークリッド距離Ljを求め、ユークリッド距離Ljが最小になったニューロンに設定されている閾値と、求めたユークリッド距離Ljとを比較する。
【0041】
上述したように、学習モードにおいてクラスタリングマップには設備が正常であるときのクラスタが形成されているから、検査モードにおいて発火したニューロンの位置が当該クラスタに含まれていれば、検査した対象は正常に動作していると判定することができる。一方、検査モードにおいて発火したニューロンの位置が当該クラスタに含まれていなければ設備に異常が生じているか異常の兆候があると考えられる。そこで、検査モードでは、分類部5に設けたクラスタ判定部4bにおいて、クラスタリングマップ内において発火したニューロンの位置を求めるとともに、当該ニューロンに対応して設定されている閾値と比較し、閾値を越えているときに設備が異常(異常の兆候を含む)であると判定する。
【0042】
ここに、クラスタ判定部4bで異常と判定したときに、上述した時間区間の1区間だけで異常と判定するのではなく、異常と判定される時間区間が複数区間連続したときに異常と判定する構成を採用している。つまり、クラスタ判定部4bでの異常の判定は仮判定であって、クラスタ判定部4bは仮判定部に兼用されている。仮判定の結果は、判定記憶部6に格納される。判定記憶部6は、たとえばシフトレジスタを用いて構成することができる。つまり、仮判定の結果が判定記憶部6に格納されるたびにシフトレジスタをシフトさせるようにし、シフトレジスタの出力値がすべて異常になったときに、異常と決定すればよい。この決定もクラスタ判定部4bにおいて行う。したがって、クラスタ判定部4bは主判定部としても機能する。判定記憶部6に格納した結果を用いてクラスタ判定部4bが異常と判断したときには、出力部7を通して「異常」に相当する信号を出力する。また、出力部7は異常に相当する信号を出力するとき以外は「正常」に相当する信号を出力する。
【0043】
検査モードの動作をまとめると、図5のようになる。すなわち、信号入力部1から得られる電気信号をサンプリングし(S1)、所定の時間区間における周波数成分を周波数成分抽出部2で抽出し(S2)、抽出結果を周波数成分修正部3に入力して修正周波数成分を求める(S3)。得られた修正周波数成分は、分類部5における競合型ニューラルネットワーク5aに入力される(S4)。競合型ニューラルネットワーク5aの出力層では、周波数成分抽出部2で抽出された周波数成分の分布パターンに相当する位置のニューロンが発火する。どの位置のニューロンが発火しているかは、クラスタリングマップの各ニューロンとのユークリッド距離によって評価し(S5)、当該ユークリッド距離が発火したニューロンについて設定されている閾値以下であれば(S6)、出力部7から「正常」に相当する信号を出力する(S7)。また、閾値を越えているときには異常と仮判定し、異常と判定される時間区間が複数区間連続すると「異常」に相当する信号を出力部7から出力する(S8)。上述のように学習モードと検査モードとのいずれにおいても、周波数成分抽出部2で抽出した周波数成分を周波数成分修正部3で正規化して分類部5に与えているから、設備の運転時の周波数成分を競合型ニューラルネットワーク5aの学習時に用いた設備の規定動作の周波数成分の分布パターンに近付けることと等価である。
【0044】
以下に、本実施形態での周波数成分修正部3の動作を説明する。周波数成分抽出部2の出力は周波数とパワーとの組からなる多次元データであって、周波数成分抽出部2が出力する周波数は既知であるから、周波数成分抽出部2の出力は周波数の並び順にパワーを並べた多次元ベクトルになる。この多次元ベクトルの要素のうちで大きいほうから順に適数個(たとえば3個)選択し、それらの要素の周波数軸方向における間隔が、設備の規定した回転数で得られるベクトルの要素と同じ間隔になるように、ベクトルの各要素の間隔を拡大あるいは縮小する。
【0045】
基本的には、上述の処理により、設備の回転数にかかわらず、周波数成分を設備の規定した回転数におけるベクトルの各要素と同じ間隔に配列することが可能になる。たとえば、パワーが上位3位以内である要素E1〜E3に着目すると、設備の回転駆動部分の回転数が変化したときに、図6(a)(b)のように周波数軸方向において各要素E1〜E3の位置が偏移する。つまり、各要素E1〜E3に対応する周波数は回転数に依存する。一方、設備が規定の回転数であるときの周波数成分は学習データとして既知であるから、図6(c)のように、この既知の周波数成分であるベクトルからパワーが上位3位以内である要素E1′〜E3′を選択し、設備の運転時に得られた要素E1〜E3の周波数軸方向における各位置を、それぞれ周波数軸方向における要素E1′〜E3′の位置に合うように、要素E1〜E3の周波数軸方向における間隔を伸縮させる。
【0046】
要するに、設備を規定の回転数で動作させたときの周波数成分を既知として、設備の運転中に得られる周波数成分と既知の周波数成分とから同じ条件で複数個の要素E1〜E3,E1′〜E3′を抽出し、要素E1〜E3の周波数を要素E1′〜E3′の周波数に合わせるのである。このようにして、設備が正常であれば、修正周波数成分は設備の回転数に関わりなく同じ分布パターン(つまり、図6(c)の分布パターン)になる。なお、抽出する要素の個数は上述の例では3個としているが、実際にはさらに多数の要素(たとえば90個)を抽出する。
【0047】
ところで、上述の処理が可能であるのは、設備に固有振動などが生じない場合であって、一般的には設備は固有振動を生じるから、特定の周波数において周波数成分のパワーが大きくなる可能性がある。たとえば、図7に示すように、設備が周波数fx付近の固有振動を生じる場合であって、図7(a)のように、要素E2が周波数fx付近であると、本来ならば要素E1よりもパワーが小さいはずの要素E2のパワーが、要素E1よりも大きくなる場合が生じる。また、図7(b)のように、設備の回転数によっては要素E1が周波数fx付近になるから、この場合には要素E1のパワーが要素E2よりも大きくなる。つまり、図7(a)(b)のような分布パターンが得られたとすると、設備には異常がなく設備の回転数だけが変化した場合であっても、各要素E1〜E3,E1′〜E3′の周波数を単純に合わせるだけでは、図8(a)(b)のように修正周波数成分の分布パターンに相違が生じる。
【0048】
そこで、設備の固有振動の周波数のような特異周波数に対しては、周波数成分修正部3もしくは周波数成分修正部3よりも前段において周波数フィルタを設定し、特異周波数を減衰(場合によっては増幅)させる。たとえば、図7に示した例では周波数fxが特異周波数であって、この周波数fxではパワーが大きくなるから、図7に曲線Aで示すように、周波数fx付近のパワーを減衰させる特性を有したフィルタを設定する。特異周波数によるパワーの増減を相殺するように特性を設定したフィルタでフィルタリングを行えば、設備の固有信号などによる特異周波数の影響を除去することができる。すなわち、図7(a)(b)の要素E1〜E3は、フィルタリングを行うことによりそれぞれ図9(a)(b)に示す要素E1″〜E3″に修正される。したがって、要素E1″〜E3″について周波数軸方向に伸縮させれば、図6(c)のような分布パターンを得ることができる。つまり、設備が特異周波数を有している場合でも回転数とは関係なく周波数成分の分布パターンを評価することが可能になる。
【0049】
なお、フィルタは、周波数成分抽出部2または周波数成分修正部3を構成するデジタルフィルタにおいて、各周波数成分のパワーを増減させるように、フィルタのパラメータを調節することにより実現することができる。このように、フィルタのパラメータを調節するだけであるから、設備に合わせて周波数成分抽出部2または周波数成分修正部3の動作を調節するだけで容易に対応することができる。
【0050】
ところで、上述したフィルタの特性は、以下の手順で決定することが可能である。たとえば、周波数成分抽出部2の出力がn次元であってj番目の出力がaj(a1j,a2j,a3j,…,a4j)で表されるものとする。ここで、設備の回転数を複数段階に変化させて得られた複数個の周波数成分(たとえば、図10(a)(b)(c))のような周波数成分)を互いに加算すると、図11のような分布パターンが得られる。一般に設備に特異周波数がなければ高周波数の領域ほど加算される成分が多くなるから、高周波領域ほど加算値は大きくなる傾向になるが、設備に特異周波数が存在すると、特異周波数付近にも加算値に極大値が生じる。したがって、複数個の周波数成分を加算した図11のような加算値の分布パターンを用いると、特異周波数を抽出してフィルタの特性を決定することが可能になる。
【0051】
具体的には、図12(a)に丸印を付しているように加算値のピーク値を求め、次に図12(b)のようにピーク値に対応する指数関数(曲線C1で表す)を最小二乗法を用いて決定する。さらに、この指数関数と各ピーク値との差分の標準偏差σを求め、図12(c)のように、標準偏差σの3倍だけ元の指数関数から上に離れた指数関数(曲線C2で表す)を設定する。たとえば、曲線C1で示す指数関数をf1(i)=10(A×i)+Bで表すと、曲線C2はf2(i)=10(A×i)+B+3σと表すことができる。曲線C1に対して曲線C2よりも上方に離れているピーク値は異常値と考えられるから、このような異常値を抽出する。図12(c)においては異常値が3点抽出されている。
【0052】
異常値は設備の特異周波数に対応すると考えられるから、図12(d)のように、異常値の近傍の複数個のピーク値に対して指数関数を当て嵌める(曲線C3,C4)。このようにして求めた曲線C3,C4を曲線C1とつなぎ合わせることにより、図12(e)のような曲線C5を得ることができる。この曲線C5は装置の特異周波数にピークを有しているから、この曲線C5とは逆特性でフィルタリングを行えば、設備の持つ特異周波数によるパワーの増減を抑制することができる。
【0053】
上述したように、設備の回転数を種々変化させたときに得られる周波数特性を加算するにあたっては、設備の回転駆動部分の回転数が均等に分布していることが望ましい。したがって、回転数を検出するとともに、回転数に関する度数分布を求め、回転数の度数に応じて周波数成分を加算する確率(重み)を増減させる。つまり、回転数ごとに度数の逆数に比例する値を確率に用い、各回転数に対応した周波数成分の加算値ごとに確率を乗じた後、すべての回転数について周波数成分を加算する。
【0054】
回転数が離散的に設定される設備では、回転数ごとの度数を容易に求めることができるが、回転数が連続的に変化する設備では、回転数ごとの度数を求めることができない。そこで、回転数について区間(回転数を一定間隔で区切った区間)を設定し、区間ごとの度数を求めるようにしてもよい。度数を回転数の区間ごとに求める場合には、区間内の回転数に対応する周波数成分を加算し、その加算値を度数で除して各区間ごとに正規化し、正規化後にすべての区間の周波数成分を加算する。
【0055】
上述のように、周波数特性を加算するにあたっては設備の回転数を求めておく必要がある。設備の回転数はエンコーダのようなセンサを設備に設けることによって検出することが可能であるが、本実施形態では、周波数成分修正部3において、周波数成分抽出部2の出力を用いて設備の回転数を求める構成を採用している。
【0056】
すなわち、周波数成分抽出部2から出力される周波数成分のうちピーク値が得られる周波数について、周波数軸方向の間隔を評価し、求めた間隔を設備の回転数とする。ピーク値となる条件は、周波数成分抽出部2における周波数の分解能にもよるが、通常は着目する周波数に隣接する前後3個の周波数についてパワーを比較し、前後3個のいずれよりも大きいパワーが得られている周波数をピーク値が得られる周波数とする。つまり、周波数出力部2の出力として得られるベクトルの要素について、隣接する7個ずつの要素の大小を比較し、各7個の要素のうちで中央の要素が最大であるときに、最大である要素をピーク値の要素とみなすのである。
【0057】
このようにしてピーク値が得られている周波数を抽出すると、各周波数が高調波成分により生じているときには、図13に示すように、ピーク値が得られている周波数f1,f2,…,fnが周波数軸方向において等間隔に並ぶから(f2−f1=f3−f2=…=fn−f(n−1))、ピーク値の間隔は回転数に相当する。ただし、ピーク値の間隔が等間隔であっても、当該間隔が複数存在する場合もある。そこで、周波数軸方向において等間隔で並ぶピーク値をピーク値群とし、ピーク値群に含まれるピーク値の個数を計数する。そして、ピーク値群が1個の場合には、当該ピーク値群に含まれるピーク値の間隔を回転数とする。また、ピーク値群が複数個の場合には、計数値が最大になるピーク値群におけるピーク値の間隔を回転数とする。たとえば、100Hz間隔のピーク値群と120Hz間隔のピーク値群とが検出され、100Hz間隔のピーク値群が10個のピーク値からなり、120Hz間隔のピーク値群が3個のピーク値からなるとすれば、100Hzを回転数として採用する。なお、上述したように回転数の逆数が設備の動作周期になる。
【0058】
運転中の設備に関して上述のようにして回転数を求めると、規定の回転数との比率を求めることができる。つまり、運転中の設備から得た回転数と規定の回転数との比を求めると、この値を拡大率または縮小率として運転中の設備から得たベクトルの要素の間隔を調節することが可能になる。そこで、回転数に一致する周波数を基本周波数とし、運転中の設備から得た回転数に対応する基本周波数に対する規定の回転数での基本周波数の倍率を求め、運転中の設備から得た周波数成分にこの倍率を乗じると、運転中の設備から得た周波数成分を規定の回転数に一致させることができる。
【0059】
なお、上述した倍率が1より小さいときにはデータの一部が脱落し、逆に倍率が1より大きいときにはデータに隙間が生じる。したがって、設備の運転中に得られる周波数成分は全データを用いるのではなく、ピーク値が得られる周波数のような一部の周波数のレベルを取り出して拡大ないし縮小を行う。また、規定の回転数としては設備で設定可能な最小の回転数または最大の回転数を採用すれば、拡大と縮小との一方のみを行えばよいから処理が簡単になる。とくに、最小の回転数を規定の回転数に選択しておけば、運転中の設備から得られる周波数成分は、つねに規定の回転数から得られる周波数成分よりもピーク値の間隔が広くなるから、周波数成分を圧縮してデータを間引きすればよいことになり、周波数成分を拡大する場合よりも処理が簡単である。
【0060】
周波数成分を周波数軸方向において圧縮する際には、間引きする方法以外に以下の方法を採用することもできる。いま、縮小率をα(<1)とし、圧縮前のデータ数をn、圧縮後のデータ数をmとする。つまり、周波数成分を表すベクトルの要素数をn個からm個に圧縮するのであって、α=m/nになる。また、圧縮前の周波数成分を表すベクトルを(a1,a2,a3,a4,a5,…)とし、圧縮後の周波数成分を表すベクトルを(b1,b2,b3,b4,…)とする。圧縮する際には、圧縮前のベクトルの各要素の重み付き加算を行うことで、圧縮後のベクトルの各要素を求める。重み係数は、縮小率αの逆数k(=n/m)を用いて決定する。たとえば、k=1.3の場合には、ベクトル(b1,b2,b3,b4,…)の各要素を以下のように求める。
b1=a1+(k−1)a2=a1+0.3×a2
b2=(2−k)a2+(2k−2)a3=0.7×a2+0.6×a3
b3=(3−2k)a3+(3k−3)a4=0.4×a3+0.9×a4
b4=(4−3k)a4+a5+(4k−5)a6=0.1×a4+a5+0.2×a6
重み係数は縮小率αの逆数kの値によって変化するが、要するに、逆数kの間隔でベクトル(a1,a2,a3,a4,a5,…)を区切ったときに、ベクトル(a1,a2,a3,a4,a5,…)の各要素がベクトル(b1,b2,b3,b4,…)の各要素に貢献する程度を重み係数に用いる。たとえば、k=3であれば、ベクトル(b1,b2,b3,b4,…)の各要素を以下のように求めることになる。
b1=a1+a2+a3
b2=a4+a5+a6
ところで、上述の方法では、運転中の設備の回転数を用い周波数成分を修正するための縮小率を求めているが、以下のようにして縮小率を求めてもよい。いま、規定の回転数に対応する周波数成分のベクトル(b1,b2,b3,b4,…)の要素数をn個とし、運転中の設備から得た周波数成分のベクトル(a1,a2,a3,a4,a5,…)の要素数がm個であるとする。ここで、mを1ずつ減少させて、上述のような重み付き加算を行うことにより、様々な縮小率のベクトルを生成し、生成したベクトルと規定の回転数に対応する周波数成分のベクトルとのノルム(ユークリッド距離)を求める。こうして求めたノルムが最小になるときのmの値を用いて縮小率を決定することができる。
【0061】
なお、上述した各実施形態ではクラスタリングマップにおいて正常動作にのみ対応付けたクラスタを設定しているが、正常動作と異常動作とに対応付けたクラスタを設定しておき、正常動作のクラスタと異常動作のクラスタとのどちらとの距離が近いかに応じて正常と異常との判断を行う構成であっても、本発明の技術思想を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上の動作説明図である。
【図3】同上において設備の回転数の相違による周波数成分の変化を示す動作説明図である。
【図4】同上における学習モードの手順を示す動作説明図である。
【図5】同上における検査モードの手順を示す動作説明図である。
【図6】同上における周波数成分の修正の概念を示す動作説明図である。
【図7】同上における周波数成分に対するフィルタリングの概念を示す動作説明図である。
【図8】同上において特異周波数の例を示す動作説明図である。
【図9】同上において特異周波数に対する補正後の周波数特性を示す動作説明図である。
【図10】同上において回転数の相違による周波数成分の変化例を示す動作説明図である。
【図11】同上において回転数の異なる周波数成分を加算した後の周波数特性を示す動作説明図である。
【図12】同上においてフィルタリングの特性を決定する過程を示す動作説明図である。
【図13】同上において周波数特性から回転数を求める方法に関する動作説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 信号入力部
2 周波数成分抽出部
3 周波数成分修正部
4 学習データ記憶部
5a 競合型ニューラルネットワーク
5b クラスタ判定部
6 マップ記憶部
7 判定記憶部
8 出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に動作する駆動部分を備える設備から発生する音波と振動との少なくとも一方を信号入力部により電気信号に変換し、この電気信号から周波数成分抽出部において周波数成分を抽出した後、設備の正常動作に対応付けたクラスタを有するクラスタリングマップが生成されている学習済みの競合型ニューラルネットワークに前記周波数成分を入力するにあたり、設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した周波数成分の分布パターンを、競合型ニューラルネットワークの学習時に用いた設備の規定動作の周波数成分の分布パターンに近付けるように周波数軸方向において伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成し、クラスタリングマップの各ニューロンのうちで修正周波数成分に対応するニューロンの位置により設備の正常と異常とを判定することを特徴とする設備監視方法。
【請求項2】
前記周波数成分のうち前記設備に固有の周波数特性の影響を除去するように周波数特性を補正した後に修正周波数成分を生成することを特徴とする請求項1記載の設備監視方法。
【請求項3】
前記設備の駆動部分の動作周期を変化させて得られる前記周波数成分を加算した加算値を求め、加算値のピーク値の配列を当て嵌めた周波数特性を設備に固有の周波数特性とみなし、当該周波数特性とは逆特性のフィルタリングを施すことを特徴する請求項2記載の設備監視方法。
【請求項4】
前記設備の駆動部分の動作周期を検出し、設備を動作させて得られた前記周波数成分を動作周期の度数に対応付けておき、周波数成分に度数の逆数に比例する値を乗じて正規化した周波数成分を加算した加算値を求め、加算値のピーク値の配列を当て嵌めた周波数特性を設備に固有の周波数特性とみなし、当該周波数特性とは逆特性のフィルタリングを施すことを特徴する請求項2記載の設備監視方法。
【請求項5】
前記修正周波数成分は、前記設備の駆動部分の動作周期を検出し、前記周波数成分を規定の動作周期の周波数成分に合致させるように周波数軸方向において伸縮させることにより得ることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の設備監視方法。
【請求項6】
前記周波数成分に含まれるピーク値のうち周波数軸方向において等間隔で並ぶ複数個のピーク値からなるピーク値群についてピーク値の個数を計数し、ピーク値群が1個の場合は当該ピーク値群に含まれるピーク値の間隔の逆数を前記動作周期とし、ピーク値群が複数個の場合は計数値が最大であるピーク値群におけるピーク値の間隔の逆数を前記動作周期として求めることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の設備監視方法。
【請求項7】
周期性を有する動作を行う設備から発生する音波と振動との少なくとも一方を電気信号に変換する信号入力部と、信号入力部から出力される電気信号から周波数成分を抽出する周波数成分抽出部と、設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した周波数成分の分布パターンをあらかじめ記憶されている設備の規定動作の周波数成分の分布パターンに近付けるように周波数軸方向において伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成する周波数成分修正部と、周波数成分修正部から出力される修正周波数成分を入力とし設備の正常動作に対応付けたクラスタを有するクラスタリングマップが生成されている学習済みの競合型ニューラルネットワークと、クラスタリングマップの各ニューロンのうちで設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した修正周波数成分に対応するニューロンの位置により設備の正常と異常とを判定するクラスタ判定部とを備えることを特徴とする設備監視装置。
【請求項1】
周期的に動作する駆動部分を備える設備から発生する音波と振動との少なくとも一方を信号入力部により電気信号に変換し、この電気信号から周波数成分抽出部において周波数成分を抽出した後、設備の正常動作に対応付けたクラスタを有するクラスタリングマップが生成されている学習済みの競合型ニューラルネットワークに前記周波数成分を入力するにあたり、設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した周波数成分の分布パターンを、競合型ニューラルネットワークの学習時に用いた設備の規定動作の周波数成分の分布パターンに近付けるように周波数軸方向において伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成し、クラスタリングマップの各ニューロンのうちで修正周波数成分に対応するニューロンの位置により設備の正常と異常とを判定することを特徴とする設備監視方法。
【請求項2】
前記周波数成分のうち前記設備に固有の周波数特性の影響を除去するように周波数特性を補正した後に修正周波数成分を生成することを特徴とする請求項1記載の設備監視方法。
【請求項3】
前記設備の駆動部分の動作周期を変化させて得られる前記周波数成分を加算した加算値を求め、加算値のピーク値の配列を当て嵌めた周波数特性を設備に固有の周波数特性とみなし、当該周波数特性とは逆特性のフィルタリングを施すことを特徴する請求項2記載の設備監視方法。
【請求項4】
前記設備の駆動部分の動作周期を検出し、設備を動作させて得られた前記周波数成分を動作周期の度数に対応付けておき、周波数成分に度数の逆数に比例する値を乗じて正規化した周波数成分を加算した加算値を求め、加算値のピーク値の配列を当て嵌めた周波数特性を設備に固有の周波数特性とみなし、当該周波数特性とは逆特性のフィルタリングを施すことを特徴する請求項2記載の設備監視方法。
【請求項5】
前記修正周波数成分は、前記設備の駆動部分の動作周期を検出し、前記周波数成分を規定の動作周期の周波数成分に合致させるように周波数軸方向において伸縮させることにより得ることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の設備監視方法。
【請求項6】
前記周波数成分に含まれるピーク値のうち周波数軸方向において等間隔で並ぶ複数個のピーク値からなるピーク値群についてピーク値の個数を計数し、ピーク値群が1個の場合は当該ピーク値群に含まれるピーク値の間隔の逆数を前記動作周期とし、ピーク値群が複数個の場合は計数値が最大であるピーク値群におけるピーク値の間隔の逆数を前記動作周期として求めることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の設備監視方法。
【請求項7】
周期性を有する動作を行う設備から発生する音波と振動との少なくとも一方を電気信号に変換する信号入力部と、信号入力部から出力される電気信号から周波数成分を抽出する周波数成分抽出部と、設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した周波数成分の分布パターンをあらかじめ記憶されている設備の規定動作の周波数成分の分布パターンに近付けるように周波数軸方向において伸縮させて正規化した修正周波数成分を生成する周波数成分修正部と、周波数成分修正部から出力される修正周波数成分を入力とし設備の正常動作に対応付けたクラスタを有するクラスタリングマップが生成されている学習済みの競合型ニューラルネットワークと、クラスタリングマップの各ニューロンのうちで設備の運転時に信号入力部の出力から抽出した修正周波数成分に対応するニューロンの位置により設備の正常と異常とを判定するクラスタ判定部とを備えることを特徴とする設備監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−300896(P2006−300896A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126903(P2005−126903)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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