説明

評価装置、評価方法及びプログラム

【課題】模範音に対して臨場感を与えるような効果を付与して再生しつつ、その模範音と学習者の発音や演奏音とをより正確に比較する。
【解決手段】予め決められた模範音を示す模範音データと、当該模範音に付与する効果の内容を表した効果付与データとを対応付けて記憶しておく。このようにすれば、模範音データに対して効果付与データが表す効果を付与して再生させることが可能であるとともに、模範音データと効果付与データとを分離させることも容易である。よって、模範音声と学習者の発音とを従来よりも正確に比較することが可能となる。また、学習者の発音に効果を付与して再生することにより、例えば自動車のクラクションや走行音或いは人々の話し声といった効果音(雑音)の中で自らの発音がどの程度聞きやすいかといったことを確認することも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、語学や楽器演奏等の学習において学習者の修得レベルを評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
語学学習において発音練習を行う際には、例えばCD(Compact Disk)等の記録媒体に記録された模範音声を再生し、学習者がその模範音声の真似を繰り返すという方法が採られている。模範音声は、代表的な言い回しやセンテンス(以下、フレーズという)をネイティブスピーカーが発音したものであり、学習者はこれを繰り返し真似することで正しい発音を自然と身につけることができる。例えば特許文献1には、模範音声と学習者の発音とを比較し、その一致度によって学習者の修得レベルを評価する技術が提案されている。
【0003】
ところで、この模範音声のフレーズとしては、例えば空港やホテルなどの代表的な場面で用いられる頻度の多いものが選ばれているが、学習者はそれぞれの場面の臨場感を感じながら発音を真似ることが重要である。例えば空港でよく用いられるフレーズを学習するときには、学習者自身が実際に空港に居ることを想像しながらその発音を修得したほうがよい。人間は実際の場面のイメージとともにフレーズの発音を記憶することができるから、再び同じような場面に居るときには、そのイメージと共に記憶している発音の内容を思い出し、その通りに発音する。
【0004】
そこで、模範音声を再生する際には、それぞれの場面をイメージできるような象徴的な効果音をその模範音声に重ねあわせて再生することが望ましい。例えば空港でよく用いられるフレーズの模範音声に、空港内に流れる場内アナウンスの音声などを重ね合わせて再生すれば、学習者は自身があたかも空港にいるかのような臨場感を感じることができる。また、例えば教会などで用いられるフレーズの模範音声にリバーブ(残響)を付与して再生すると、学習者は実際に教会にいるような臨場感を感じることができる。このような理由から、現在市販されている学習教材においても、それぞれの場面に応じた効果音が模範音声に重ね合わされていることが多い。
【特許文献1】特開2003−131548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、模範音声に対してその模範音声以外の音(効果音)が加えられてしまうと、学習者の発音を評価しようとした場合に、その学習者が発音した音声と模範音声とを正確に比較することができないという問題がある。なぜなら、模範音声を記録した記録媒体においては、模範音声とその模範音声以外の音とが区別されることなく両者一体となって記録された状態であり、比較対象である模範音声だけを取り出して学習者の発音と比較することは複雑な処理が必要とされるからである。
【0006】
この種の問題は、語学学習だけではなく、楽器の演奏を学習する場合であっても発生する。例えば学習者がベースのパートを修得しようとする際には、ベースの模範演奏とともに、それ以外の楽器であるドラムやギターの模範演奏を同時に再生し、学習者はそれらの演奏のうちベースのパートを真似て演奏する場合がある。このとき、ベースの模範演奏にエフェクトが掛かっているような場合、そのベースの模範演奏(エフェクトが掛かっていない状態の演奏)と学習者の演奏とを比較しづらいという問題がある。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、模範音に対して臨場感を与えるような効果を付与して再生しつつも、その模範音と学習者の発音や演奏音とをより正確に比較することが可能な仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、音データが表す音を再生する再生手段と、予め決められた模範音を示す模範音データと、当該模範音に付与する効果の内容を表した効果付与データとを対応付けて記憶する模範データ記憶手段と、前記模範データ記憶手段に記憶されている模範音データに対して、当該模範音データに対応付けられて記憶されている前記効果付与データが表す効果を付与して再生させる制御手段と、前記再生手段によって前記模範音データが再生された後に収音手段から供給される信号が表す音と、前記模範データ記憶手段に記憶されている前記模範音データが表す音とを比較し、双方の音の一致度に応じた評価内容を出力する評価手段とを備えることを特徴とする評価装置を提供する。前記効果付与データとして、例えば、前記再生手段によって前記模範音と同時に再生すべき音を表す音データ、又は、前記模範音に音響効果を与えつつ前記再生手段によって再生するためのパラメータを用いることが望ましい。本発明によれば、模範音を示す模範音データと、当該模範音に付与する効果の内容を表した効果付与データとを対応付けて記憶しているので、模範音データに対して効果付与データが表す効果を付与して再生させることが可能であるとともに、模範音データと効果付与データとを分離させることも容易である。よって、模範音データが再生された後に収音手段から供給される信号が表す音と、模範音データが表す音とを比較し、双方の音の一致度に応じて評価することが可能となる。つまり、模範音に対して臨場感を与えるような効果を付与して再生しつつも、その模範音と学習者の発音や演奏とをより正確に比較することが可能となる。
【0009】
本発明の好ましい態様においては、前記再生手段によって前記模範音データが再生された後に前記収音手段から供給される信号に応じた録音データを記憶する録音データ記憶手段を備え、前記制御手段は、前記模範音データを前記再生手段によって再生させる場合には、前記再生手段によって、前記模範データ記憶手段に記憶されている模範音データに対して、当該模範音データに対応付けられて記憶されている前記効果付与データが表す効果を付与して再生させる一方、前記録音データを前記再生手段によって再生させる場合には、前記再生手段によって、前記録音データ記憶手段に記憶されている前記録音データを再生させるか又は当該録音データに対して、前記模範音データに対応付けられて記憶されている前記効果付与データが表す効果を付与して再生させる。録音データに対して、模範音データに対応付けられて記憶されている効果付与データが表す効果を付与して再生させることで、学習者は自身の発音を効果が付与された状態で聞くことが可能となる。
【0010】
さらに、前記模範音データに付与される前記効果付与データが表す効果のレベルを指定する指定手段を備え、前記制御手段は、前記再生手段によって前記模範音データを再生させる際には、前記指定手段によって指定されたレベルで前記効果付与データが表す効果を付与して再生させるようにしてもよい。効果付与データが表す効果のレベルが大きくなるように指定することで、例えば学習者はより大きなレベルの効果が付与された状態で模範音を聞くことができる。効果のレベルが大きくなればなるほど模範音を聞きづらくなるから、より大きなレベルの効果が付与された状態で模範音を聞くことにより、学習者のヒアリング能力を高めることが可能となる。
【0011】
また、前記模範データ記憶手段は、複数種類の前記模範音データと、複数種類の前記効果付与データとをそれぞれ対応付けて記憶しており、学習者が操作を行う操作手段と、前記操作手段における学習者の操作内容に応じて、前記模範データ記憶手段における前記模範音データと前記効果付与データとの対応付けを変更する変更手段とを備えるようにしてもよい。このようにすれば、模範音に対して、学習者の任意の効果を付与することができる。
【0012】
また、本発明は、予め決められた模範音を示す模範音データと、当該模範音に付与する効果の内容を表した効果付与データとを対応付けて記憶した記憶手段を有する評価装置が行う評価方法であって、前記記憶手段に記憶されている模範音データに対して、当該模範音データに対応付けられて記憶されている前記効果付与データが表す効果を付与して再生するステップと、収音手段から供給される信号を取り込むステップと、前記模範データ記憶手段に記憶されている模範音データを読み出し、読み出した模範音データが表す音と、取り込んだ前記信号が表す音とを比較するステップと、比較された音の一致度に応じた評価内容を出力するステップとを備えることを特徴とする評価方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、コンピュータに、音データが表す音を再生する機能と、予め決められた模範音を示す模範音データと、当該模範音に付与する効果の内容を表した効果付与データとを対応付けて記憶手段に記憶させる機能と、前記記憶手段に記憶されている模範音データに対して、当該模範音データに対応付けられて記憶されている前記効果付与データが表す効果を付与して再生させる機能と、収音手段から供給される信号が表す音と、前記記憶手段に記憶されている模範音データが表す音とを比較し、双方の音の一致度に応じた評価内容を出力する機能とを実現させるプログラムを提供する。このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(1)構成
図1は、本発明の実施形態に係る評価装置1の構成を例示したブロック図である。図1に示すように、評価装置1は、制御部11と、記憶部12と、再生部13と、録音部14と、評価部16と、表示部17と、操作部18とを備えている。再生部13は、効果付与部15を備えている。
記憶部12は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やCD(Compact Disk)或いはDVD(Digital Versatile Disk)である。この記憶部12には、後述する各種の画面データが記憶されるほか、録音データ記憶領域12rと模範データ記憶領域12sという2つの記憶領域が設けられている。録音データ記憶領域12rには、学習者が発した音声を示す音声データ(以下、録音音声データという)が記憶される。模範データ記憶領域12sには、予め予め決められた例文をネイティブスピーカが読み上げた時の音声を表すデータ(以下、模範音声データと称する)と、その模範音声データに付与される効果の内容を表す効果付与データとが対応付けられて記憶されている。ここで、模範音声データに付与される効果には、模範音声データの再生と同時に再生される音と、模範音声データに対する音響効果という2種類がある。前者は、例えば空港内に流れるアナウンスの音声や、街頭における自動車のクラクションや走行音或いは教会内に流れる合唱コーラスの音などのように、模範音声のバックグラウンドとして再生されるものである。後者は、例えば模範音声に対して付与されるリバーブやエコーなどである。
【0015】
ここで、図2は、模範データ記憶領域12sにおいて模範音声データと効果付与データとがどのように記憶されているかを模式的に示す図である。
模範音声は幾つかの場面毎に用意されており、例えば「街頭」、「ホテル」、「教会」、「空港」・・・といった場面毎に用意されている。図2に示す例では、例えば「街頭」という場面でよく用いられる「Where is a post office?」(郵便局はどこですか?)という例文の模範音声データと、街頭での様々な音(つまり断続的な自動車のクラクション、走行音及び人々の話し声)を表す音データとが対応付けられて模範データ記憶領域12sに記憶されていることを示している。模範データ記憶領域12sには、これらのデータに加えて、「例文ID」と、「効果付与形態」という情報が対応付けられて記憶されている。「例文ID」とは、各例文(模範音声データ)に割り当てられた識別情報である。「効果付与形態」とは、模範音声データに対してどのようにして効果を付与するかということを示した情報である。この効果付与形態には、模範音声と同時に再生する形態(「同時再生」)と、模範音声そのものに対して音響効果を与える形態(「音響効果」)とがある。効果付与形態が「同時再生」の場合、効果付与データは、模範音声と同時に再生すべき音そのものを表す音データである。一方、効果付与形態が「音響効果」の場合、効果付与データは、模範音声(原音)からエフェクト音を放音するまでの遅延時間を表すディレイタイムや、フィードバックタイム、フィードバックレベル、フィードバックの音量または回数などの各種パラメータとなる。なお、「同時再生」と「音響効果」はそれぞれ単独で模範音声データに付与される場合もあるし、これら両方が同時に模範音声データに付与される場合もある。
【0016】
再び図1に戻り、評価装置1の説明を続ける。
録音部14には収音手段であるマイクロホン22が接続されている。この録音部14はマイクロホン22から供給される音声信号をデジタルデータ(音声データ)に変換して記憶部12の録音データ記憶領域12rに記憶させる。
【0017】
再生部13には、放音手段であるスピーカ21が接続されている。再生部13は、記憶部12の模範データ記憶領域12sに記憶されている模範音声データや、記憶部12の録音データ記憶領域12rに記憶されている録音音声データを読み出し、これを音声信号に変換してスピーカ21へ出力する。このときに、効果付与部15は、模範データ記憶領域12sに記憶されている効果付与データを読み出し、この効果付与データが表す効果を模範音声データの音声信号又は録音音声データの音声信号に付与する。このときの効果を付与するときの動作は、上述した効果付与形態の種類に応じて異なる。効果付与形態が「同時再生」である場合には、効果付与部15は、効果付与データ(音データ)が表す音声信号を模範音声データの音声信号と合わせてスピーカ21に供給する。一方、効果付与形態が「音響効果」である場合には、効果付与部15は、効果付与データ(パラメータ)が表す音響効果を模範音声データの音声信号に付与する。具体的には、模範音声(原音)からディレイタイム分だけ遅延させてその模範音声のエフェクト音を表す音声信号をスピーカ21に供給するなどの処理を行う。スピーカ21は再生部13(及び効果付与部15)から出力される音声信号に応じて放音する。よって、このスピーカ21からは、模範音声に効果が付与されて放音されるか、又は、マイクロホン22で収音された学習者の音声に効果が付与されて放音されることになる。
【0018】
評価部16は、録音部14によって録音データ記憶領域12rに記憶された録音音声データと、模範データ記憶領域12sに記憶されている模範音声データとを比較し、双方の音の一致度に応じた評価内容を制御部11に出力する。一致度が高いほどより高い評価となるし、一致度が低いほどより低い評価となる。音の一致度を測定する技術としては、周知の技術を適宜用いればよい。表示部17は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスを備えており、制御部11からの指示に基づいて各種のメッセージや情報を表示する。操作部18は、キーボードやマウス等(いずれも図示略)の入力装置を具備しており、キーの押下やマウスの操作等に応じて操作内容に対応した操作信号を制御部11に供給する。制御部11は、CPUと、このCPUが実行するプログラムを記憶したROMと、CPUのワークエリアとして用いられるRAMとを備えている。
【0019】
(2)動作
次に、図3,4に示したフローチャートを用いて評価装置1の動作を説明する。なお、以下の説明においては、図2に示した「Where is a post office?」という例文を学習者が学習する場合を想定している。
図3において、学習者が操作部18を用いて、予め用意された全ての場面の一覧表示を指示する操作を行うと(ステップS1;Yes)、制御部11は記憶部12に記憶されている画面データを読み出し、読み出したデータに従って場面の一覧を表示部17に表示する(ステップS2)。この画面には、図2で説明したような各場面、つまり「街頭での会話」、「ホテルでの会話」、「教会での会話」、「空港での会話」・・・といった場面の一覧が表示される。学習者が操作部18を用いて、表示された場面の中から一つを選択する操作を行うと(ステップS3;Yes)、制御部11は選択された場面(ここでは「街頭」という場面)の模範音声(例文)の一覧を表す画面データを記憶部12から読み出し、それらの例文の一覧を表示部17に表示する(ステップS4)。この画面に示された例文には図2で説明したような例文IDがそれぞれ関連づけられている。学習者が操作部18を操作して、表示された例文の中から一つを選択する操作を行うと(ステップS5;Yes)、制御部11は、選択された例文に関連づけられている例文IDに基づいて、どの例文が選択されたかを特定する(ステップS6)。ここでは、例文ID「id001」が割り当てられた「Where is a post office?」という例文が選択されたものとする。
【0020】
次に、制御部11は、選択された例文の効果付与形態を確認する(ステップS7)。図2に示すとおり、例文ID「id001」の効果付与形態は「同時再生」である。よって、制御部11は、例文ID「id001」に対応する模範音声データと、その模範音声データに対応付けられている効果付与データとを模範データ記憶領域12sから読み出し、読み出した模範音声データ及び効果付与データを再生部13(及び効果付与部15)へ出力し、これらを再生させる(ステップS8)。再生部13(及び効果付与部15)に模範音声データ及び効果付与データが供給されると、デジタルデータである模範音声データ及び効果付与データがアナログの音声信号に変換されてスピーカ21へと出力される。スピーカ21からは、断続的な自動車のクラクション、走行音及び人々の話し声といった効果音が放音されると同時に、「Where is a post office?」という模範音声が放音される。このとき、制御部11は、模範音声が再生されるタイミングと同期して、表示部17に例文を表示し、さらにこの例文において再生されている部分を強調表示するなどしてもよい。
【0021】
次に、制御部11は、模範音声データ及び効果付与データの再生が終了すると、「○○キーを押してから発音し、発音が終わったら再度、○○キーを押してください」というように、例文の発音を促すメッセージを表示部17に表示する(図4のステップS9)。学習者が、上記メッセージに従って操作部18のキーを押下すると、制御部11は発音が開始されたと判断する(ステップS10;Yes)。そして学習者が模範音声を真似て例文を読み上げると、学習者の音声はマイクロホン22によって音声信号に変換され、この音声信号が録音部14によって取り込まれる。録音部14は、マイクロホン22から取り込んだ音声信号をデジタルデータに変換し、これを録音音声データとして記憶部12の録音データ記憶領域12rに書き込んでいく(ステップS11)。
【0022】
次に制御部11は、操作部18から送られる信号を監視し、学習者が発音を終了したか否かを判断する(ステップS12)。学習者が発音を終了して操作部18のキーを押下すると、制御部11は発音が終了したと判断し(ステップS12;Yes)、録音部14による録音動作を終了させる。そして、制御部11は、「発音を評価する場合は□□キーを押してください。自分の発音を聞く場合には△△キーを押してください。このまま終了する場合は○○キーを押してください」というように、「発音の評価」、「発音の再生」または「動作の終了」といった各動作の選択を促すメッセージを表示部17に表示する(ステップS13)。学習者は上記メッセージに従って操作部18を操作し、所望する動作を選択する(ステップS14;Yes)。
【0023】
ここでは、学習者によって「発音の評価」が選択されたものとする(ステップS15;評価)。この選択操作に応じて、制御部11は評価部16に指示して、記憶部12の録音データ記憶領域12rに記憶された録音音声データを読み出させ、これを模範音声データと比較させて学習者の発音レベルを評価させる。評価部16は、所定のアルゴリズムに従って、録音音声データと模範音声データとの一致度に応じた評価結果を得点に換算する。そして、制御部11は、その評価結果に基づいて「あなたの発音は××点です。」というメッセージを表示部17に表示する(ステップS16)。
【0024】
そして制御部11の処理はステップS13に戻り、再び、「発音を評価する場合は□□キーを押してください。自分の発音を聞く場合には△△キーを押してください。このまま終了する場合は○○キーを押してください」といったメッセージが表示部17に表示される。今度は、学習者によって「発音の再生」が選択されたものとする(ステップS15;再生)。この操作に応じて、制御部11は、録音データ記憶領域12rから録音音声データを読み出すと共に、上記例文IDが表す模範音声データに対応付けられている効果付与データを模範データ記憶領域12sから読み出し、読み出した録音音声データ及び効果付与データを再生部13(及び効果付与部15)に出力して、これらを再生させる(ステップS17)。再生部13(及び効果付与部15)に録音音声データ及び効果付与データが供給されると、デジタルデータである録音音声データ及び効果付与データがアナログの音声信号に変換されてスピーカ21へと出力される。スピーカ21からは、断続的な自動車のクラクション、走行音及び人々の話し声といった効果音が放音されると同時に、学習者が発した「Where is a post office?」という発音が放音される。学習者は自らの発音と模範音声とを聞き比べることで、発音の修得レベルを確認することができる。また、自動車のクラクションや走行音或いは人々の話し声といった雑音の中で自らの発音がどの程度聞きやすいかといったことを確認することも可能となる。
【0025】
そして制御部11の処理はステップS13に戻り、再び、「発音を評価する場合は□□キーを押してください。自分の発音を聞く場合には△△キーを押してください。このまま終了する場合は○○キーを押してください」といったメッセージが表示部17に表示される。今度は、学習者によって「動作の終了」が選択されたものとする(ステップS15;終了)。この操作に応じて、制御部11の処理は終了する。
なお、上記の動作例では、効果付与形態が「同時再生」である場合を説明したが、効果付与形態が「音響効果」である場合も上記と同様の手順に従って、再生部13(効果付与部15)が効果付与データ(パラメータ)が表す音響効果を模範音声データ又は録音音声データの音声信号に付与して再生すればよい。
【0026】
以上説明した実施形態によれば、模範音声に対して臨場感を与えるような効果を付与しつつも、その模範音声と学習者の発音とを従来よりも正確に比較することが可能となる。また、学習者の発音(録音音声データ)に効果を付与して再生することにより、例えば自動車のクラクションや走行音或いは人々の話し声といった雑音の中で自らの発音がどの程度聞きやすいかといったことを確認することも可能となる。
【0027】
(3)変形例
以上の実施形態を次のように変形してもよい。
実施形態では、学習者の発音(録音音声データ)に効果付与データが表す効果を付与して再生するようにしていたが、これに限らず、録音音声データのみを単独で再生してもよい。このようにすれば、学習者は自らの発音のみを確認することが可能となる。即ち、制御部11は、再生部13(及び効果付与部15)によって、録音音声データに対して、模範音声データに対応付けられて記憶されている効果付与データが表す効果を付与して再生させてもよいし、録音データを単独で再生させてもよい。
【0028】
また、学習者が操作部18を用いて、効果付与データが表す効果のレベルを指定できるようにしてもよい。制御部11は、再生部13(効果付与部15)によって模範音声データを再生させる際には、操作部18を用いて指定されたレベルで効果付与データが表す効果を模範音声データに付与して再生させる。ここでいう「効果のレベル」とは、効果付与データに基づいて再生される音(効果音)の音量レベルや、効果付与データに基づく音響効果の強度レベルを意味している。付与される効果のレベルが大きくなればなるほど学習者は模範音声を聞きづらくなる。このような聞き取りが困難な状態で模範音声を繰り返し聞くことにより、学習者のヒアリング能力を高めることが可能となる。
【0029】
また、学習者が操作部18を操作することによって、模範データ記憶領域12sにおける模範音声データと効果付与データとの対応付けを変更するようにしてもよい。図2に示すように、「Where is a post office?」(郵便局はどこですか?)という例文の模範音声データには、街頭での様々な音データが対応付けられていたが、これを例えばホテルにおける効果音であるクラシック音楽の音データと対応付けるように変更してもよい。このようにすれば、「Where is a post office?」をホテルで用いられるフレーズとして再生することが可能となる。つまり、例文とその例文が用いられる場面との対応付けを学習者の任意の内容へと変更することができ、学習範囲を拡張することが可能となる。
【0030】
評価装置1は、英語だけでなく他の言語の模範音声を記憶して再生することもできる。さらに、評価装置1は、語学の学習に限定されるものではなく、例えば、楽器の模範演奏を記憶して再生するようにし、学習者が楽器演奏をした時の評価を行うものとしても利用することができる。この場合、実施形態における模範音声データに代えて、模範演奏を表す模範演奏データを記憶部12に記憶させておき、模範音声データに代えてこの模範演奏データを再生部13によって再生させるようにすればよい。
【0031】
評価装置1は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよいし、汎用コンピュータにアプリケーションプログラムに従った処理を実行させることにより実現されるものであってもよい。また、評価装置1は、上記実施形態に示すようなスタンドアロンのシステム構成のみならず、ネットワークを利用したサーバ・クライアントのシステム構成にも適用可能である。例えば、再生機能をクライアント装置に持たせ、評価機能と記憶機能とをサーバに持たせるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る評価装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】模範データ記憶領域12sにおいて模範音声データと効果付与データとがどのように記憶されているかを模式的に示す図である。
【図3】実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1・・・評価装置、11・・・制御部、12・・・記憶部、13・・・再生部、14・・・録音部、15・・・効果付与部、16・・・評価部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音データが表す音を再生する再生手段と、
予め決められた模範音を示す模範音データと、当該模範音に付与する効果の内容を表した効果付与データとを対応付けて記憶する模範データ記憶手段と、
前記模範データ記憶手段に記憶されている模範音データに対して、当該模範音データに対応付けられて記憶されている前記効果付与データが表す効果を付与して再生させる制御手段と、
前記再生手段によって前記模範音データが再生された後に収音手段から供給される信号が表す音と、前記模範データ記憶手段に記憶されている前記模範音データが表す音とを比較し、双方の音の一致度に応じた評価内容を出力する評価手段と
を備えることを特徴とする評価装置。
【請求項2】
前記再生手段によって前記模範音データが再生された後に前記収音手段から供給される信号に応じた録音データを記憶する録音データ記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記模範音データを前記再生手段によって再生させる場合には、前記再生手段によって、前記模範データ記憶手段に記憶されている模範音データに対して、当該模範音データに対応付けられて記憶されている前記効果付与データが表す効果を付与して再生させる一方、前記録音データを前記再生手段によって再生させる場合には、前記再生手段によって、前記録音データ記憶手段に記憶されている前記録音データを再生させるか又は当該録音データに対して、前記模範音データに対応付けられて記憶されている前記効果付与データが表す効果を付与して再生させることを特徴とする請求項1記載の評価装置。
【請求項3】
前記模範音データに付与される前記効果付与データが表す効果のレベルを指定する指定手段を備え、
前記制御手段は、前記再生手段によって前記模範音データを再生させる際には、前記指定手段によって指定されたレベルで前記効果付与データが表す効果を付与して再生させることを特徴とする請求項1記載の評価装置。
【請求項4】
前記模範データ記憶手段は、複数種類の前記模範音データと、複数種類の前記効果付与データとをそれぞれ対応付けて記憶しており、
学習者が操作を行う操作手段と、
前記操作手段における学習者の操作内容に応じて、前記模範データ記憶手段における前記模範音データと前記効果付与データとの対応付けを変更する変更手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の評価装置。
【請求項5】
予め決められた模範音を示す模範音データと、当該模範音に付与する効果の内容を表した効果付与データとを対応付けて記憶した記憶手段を有する評価装置が行う評価方法であって、
前記記憶手段に記憶されている模範音データに対して、当該模範音データに対応付けられて記憶されている前記効果付与データが表す効果を付与して再生するステップと、
収音手段から供給される信号を取り込むステップと、
前記模範データ記憶手段に記憶されている模範音データを読み出し、読み出した模範音データが表す音と、取り込んだ前記信号が表す音とを比較するステップと、
比較された音の一致度に応じた評価内容を出力するステップと
を備えることを特徴とする評価方法。
【請求項6】
コンピュータに、
音データが表す音を再生する機能と、
予め決められた模範音を示す模範音データと、当該模範音に付与する効果の内容を表した効果付与データとを対応付けて記憶手段に記憶させる機能と、
前記記憶手段に記憶されている模範音データに対して、当該模範音データに対応付けられて記憶されている前記効果付与データが表す効果を付与して再生させる機能と、
収音手段から供給される信号が表す音と、前記記憶手段に記憶されている模範音データが表す音とを比較し、双方の音の一致度に応じた評価内容を出力する機能と
を実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−192882(P2007−192882A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8578(P2006−8578)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】