説明

試料供給方法および試料供給装置

【課題】表面プラズモンセンサー等の測定装置の測定ユニットが備える試料供給用の流路に試料を供給する試料供給方法および試料供給装置において、測定を行う際のメンテナンス性を向上させる。
【解決手段】入口用ピペットチップ装着部および出口用ピペットチップ装着部が形成された本体と、入口用ピペットチップ装着部と連通し、入口用ピペットチップ装着部からエアーを吸入排出する入口用ピストンと、この入口用ピストンを操作するための操作部と、入口用ピペットチップ装着部に装着される入口用ピペットチップ90と、出口用ピペットチップ装着部に装着される出口用ピペットチップ91とから構成された試料供給装置を用いて、測定ユニットの流路60の入口61に入口用ピペットチップ90を、出口65に出口用ピペットチップ91を挿入し、入口用ピペットチップ90から出口用ピペットチップ91に向けて試料を送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモンセンサー等の測定装置の測定ユニットが備える試料用の流路に試料を供給する試料供給方法および試料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エバネッセント波を利用した測定装置の1つとして、表面プラズモンセンサーが知られている。金属中においては、自由電子が集団的に振動して、プラズマ波と呼ばれる粗密波が生じる。そして、金属表面に生じるこの粗密波を量子化したものは、表面プラズモンと呼ばれている。表面プラズモンセンサーは、この表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、試料の特性を分析するものであり、種々のタイプのセンサーが提案されている。そして、それらの中で特に良く知られているものとして、 Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記の系を用いる表面プラズモンセンサーは基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を検出する光検出手段と、該光検出手段の検出結果に基づいて表面プラズモン共鳴の状態を測定する測定手段とを備えてなるものである。
【0004】
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを入射角を変化させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、入射した光ビームの入射角の変化に従って、反射角が変化する光ビームを、上記反射角の変化に同期して移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサーによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサーによって検出することができる。
【0005】
上記構成の表面プラズモンセンサーにおいて、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角θSPで入射させると、該金属膜に接している試料中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と試料との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。
【0006】
なお上記の共鳴は、入射ビームがp偏光のときにだけ生じる。したがって、光ビームがp偏光で入射するように予め設定しておく必要がある。
【0007】
この光強度の低下が生じる全反射角以上の特定入射角θSP(以後全反射減衰角θSPと記載)より表面プラズモンの波数が解ると、試料の誘電率が求められる。すなわち表面プラズモンの波数をKSP、表面プラズモンの角周波数をω、cを真空中の光速、εmとεsをそれぞれ金属、試料の誘電率とすると、以下の関係がある。
【数1】

【0008】
試料の誘電率εsが分かれば、所定の較正曲線等に基づいて試料の屈折率等が分かるので、結局、全反射減衰角θSPを知ることにより、試料の誘電率つまりは屈折率に関連する特性を求めることができる。
【0009】
また、エバネッセント波を利用した類似のセンサーとして、漏洩モードセンサーも知られている(例えば非特許文献1参照)。この漏洩モードセンサーは基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料に接触させられる光導波層と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定する光検出手段と、該光検出手段の検出結果に基づいて導波モードの励起状態を測定する測定手段とを備えてなるものである。
【0010】
上記構成の漏洩モードセンサーにおいて、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過した後に光導波層においては、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の試料の屈折率に依存するので、全反射減衰角θSPを知ることによって、試料の屈折率や、それに関連する試料の特性を分析することができる。
【0011】
また、上述した表面プラズモンセンサーや漏洩モードセンサーは、創薬研究分野等において、所望のリガンドに結合するアナライトを見いだすランダムスクリーニングへ使用されることがあり、この場合には前記薄膜層(表面プラズモンセンサーの場合は金属膜であり、漏洩モードセンサーの場合はクラッド層および光導波層)上にリガンドを固定し、該リガンド上に種々のアナライトを含有するバッファー(液体試料)を供給し、所定時間が経過する毎に前述の全反射減衰角θSPを測定している。バッファー中のアナライトが、リガンドと結合するものであれば、この結合によりリガンドの屈折率が時間経過に伴って変化する。したがって、所定時間経過毎に上記全反射減衰角θSPを測定し、全反射減衰角θSPに変化が生じているか否か測定することにより、アナライトとリガンドの結合が行われているか否か、すなわちアナライトがリガンドと結合する特定物質であるか否かを判定することができる。このようなアナライトとリガンドとの組み合わせとしては、例えば抗原と抗体あるいは抗体と抗体が挙げられ、そのようなものに関する具体的な測定としては、一例として、リガンドをウサギ抗ヒトIgG抗体とし、アナライトであるヒトIgG抗体との結合の有無検出とその定量分析を行う測定が挙げられる。
【0012】
なお、バッファー中のアナライトとリガンドの結合状態を測定するためには、必ずしも全反射減衰角θSPの角度そのものを検出する必要はない。例えば最初にアナライトを含まないバッファーを用いて基準となるベースラインを測定した後、リガンド上にアナライトが含まれたバッファーを供給した際の全反射減衰角θSPの角度変化量を測定して、その角度変化量の大小に基づいて結合状態を測定することもできる。
【特許文献1】特開平6−167443号公報
【非特許文献1】「分光研究」第47巻 第1号(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上記のような表面プラズモンセンサー等の測定装置においては、リガンドが固定された薄膜層上に流路機構を用いてバッファーを連続的に供給して測定を行うものが知られている。この形態のセンサーを用いれば、リガンドとアナライトとの結合状態を測定する際に、常に新しいバッファーが薄膜層上に供給されるため、バッファー中の被検体の濃度が変化せず、結合状態の測定を精度良く行うことができる。また、リガンドとアナライトの結合状態を測定したのち、結合が行われている場合には、この結合体が固定されている薄膜層上に、アナライトが含まれていないバッファーを流すことより、リガンドとアナライトとの解離状態を測定することができる。さらに、例えば試料として気体を用いる場合、あるいは気体が溶在しているバッファーを用いる場合に、流路機構を用いて、容易に薄膜層上に試料を供給することができる。
【0014】
このような流路機構に試料を供給する方法としては、流路機構の出口側に廃液処理用の配管を挿入し、流路機構の入口側にピペットもしくは試料供給用の配管を挿入して試料を供給する方法が考えられるが、いずれにしても配管を用いる必要があった。表面プラズモンセンサー等の測定装置に用いられる流路機構は、流路の内径が数mm以下と非常に狭く、この流路に接続される配管も自ずと内径が狭いものを用いる必要があるため、流路機構への試料の供給に配管を用いると配管内で詰まりが生じてしまう等の問題が生じることがあるため、測定を行う際のメンテナンス性があまり良くなかった。
【0015】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、表面プラズモンセンサー等の測定装置の測定ユニットが備える試料供給用の流路に試料を供給する試料供給方法および試料供給装置において、上記問題を解消した試料供給方法および試料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の試料供給方法は、平滑な一面に薄膜層が形成された誘電体ブロックと、誘電体ブロックの薄膜層上に密接される流路部材とからなり、流路部材が、薄膜層に面した測定部、流路部材上の入口から測定部の一端に至る供給路、および測定部の他端から流路部材上の出口に至る排出路から構成され、入口から測定部を介して出口まで試料が流動可能な流路を備えた測定ユニットに試料を供給する試料供給方法であって、入口に試料が吸引された入口用ピペットチップを装着し、出口に出口用ピペットチップを装着し、入口用ピペットチップに吸引されている試料を入口から送出するとともに、この送出された試料により流路内から出口へ押し出された流体を出口用ピペットチップで回収することを特徴とする方法である。
【0017】
ここで、ピペットチップを装着するとは、ピペットチップ先端を流路部材の入口周縁もしくは出口周縁に密着させてピペットチップ内の試料のみを流路内に注入する態様であってもよいし、ピペットチップ先端部を流路部材の入口内もしくは出口内に挿入してピペットチップ内の試料を流路内に注入する態様であってもよい。なお、ピペットチップ先端を流路部材の入口周縁もしくは出口周縁に密着させるとは、ピペットチップと流路部材とを直接密着させる場合に限らず、ピペットチップと流路部材との間に他の部材を介して、これらピペットチップ、他の部材および流路部材を全て密着させる場合も含む。
【0018】
また「試料により流路内から出口へ押し出された流体を出口用ピペットチップで回収する」とは、流路内には液体試料もしくは空気等の何らかの流体が存在しており、この流体は流路入口側から試料が送出されるとこの試料によって出口側に押し出されることになるため、このような流体を出口用ピペットチップで回収することを意味する。もちろん、入口から流路の体積以上の量の試料を送出した場合には、流路内の流体が完全に排出されたうえに送出された試料がさらに排出されることになるため、流路内の流体と併せて入口から送出した試料までも回収してもよい。
【0019】
さらに、出口用ピペットチップで回収した試料を出口から送出するとともに、この送出された試料により流路内から入口へ押し出された流体を入口用ピペットチップで回収する、すなわち、出口から入口へ向けて試料を逆流させるようにしてもよい。
【0020】
また、本発明の試料供給装置は、平滑な一面に薄膜層が形成された誘電体ブロックと、誘電体ブロックの薄膜層上に密接される流路部材とからなり、流路部材が、薄膜層に面した測定部、流路部材上の入口から測定部の一端に至る供給路、および測定部の他端から流路部材上の出口に至る排出路から構成され、入口から測定部を介して出口まで試料が流動可能な流路を備えた測定ユニットに試料を供給する試料供給装置であって、入口に装着するための入口用ピペットチップと、出口に装着するための出口用ピペットチップと、入口用ピペットチップを着脱可能な入口用ピペットチップ装着部と、出口用ピペットチップを着脱可能な出口用ピペットチップ装着部と、入口用ピペットチップ装着部と連通し、入口用ピペットチップ装着部からエアーを吸入排出する入口用ピストンとを備えてなることを特徴とするものである。
【0021】
本発明による試料供給装置において、出口用ピペットチップ装着部は、出口用ピペットチップ側から侵入した試料の逆流を防止する逆止弁を備えたものとすることが好ましい。
【0022】
また、出口用ピペットチップ装着部と連通し、出口用ピペットチップ装着部からエアーを吸入排出する出口用ピストンをさらに備え、入口用ピストンと出口用ピストンとが、独立して制御可能なように構成することが好ましい。
【0023】
さらに、入口用ピペットチップ、出口用ピペットチップ、入口用ピペットチップ装着部および出口用ピペットチップ装着部を複数組備えたものとしてもよい。なお、この場合は各入口用ピペットチップ装着部毎にそれぞれ入口用ピストンを設けてもよいし、複数の入口用ピペットチップ装着部を一つの入口用ピストンに連通させてもよい。
【0024】
なお、本発明の試料供給方法および試料供給装置における測定ユニットは、薄膜層を、金属膜からなるものとし、前述の表面プラズモン共鳴による効果を利用して測定を行う、所謂表面プラズモンセンサーに用いられる測定ユニットとして構成されたものとすることができる。また、薄膜層を、誘電体ブロックの前記一面に形成されたクラッド層とクラッド層上に形成された光導波層からなるものとし、光導波層における導波モードの励起による効果を利用して測定を行う、所謂漏洩モードセンサーに用いられる測定ユニットとして構成されたものとすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の試料供給方法によれば、平滑な一面に薄膜層が形成された誘電体ブロックと、誘電体ブロックの薄膜層上に密接される流路部材とからなり、流路部材が、薄膜層に面した測定部、流路部材上の入口から測定部の一端に至る供給路、および測定部の他端から流路部材上の出口に至る排出路から構成され、入口から測定部を介して出口まで試料が流動可能な流路を備えた測定ユニットに対して、入口に試料が吸引された入口用ピペットチップを装着し、出口に出口用ピペットチップを装着し、入口用ピペットチップに吸引されている試料を入口から送出するとともに、この送出された試料により流路内から出口へ押し出された流体を出口用ピペットチップで回収するようにしたので、試料の供給に際して入口側および出口側ともに配管を必要とせず、また入口用および出口用のピペットチップはいずれもディスポーザブル型のものを使用することができるため、測定を行う際のメンテナンス性を向上させることができる。
【0026】
また、本発明の試料供給装置によれば、平滑な一面に薄膜層が形成された誘電体ブロックと、誘電体ブロックの薄膜層上に密接される流路部材とからなり、流路部材が、薄膜層に面した測定部、流路部材上の入口から測定部の一端に至る供給路、および測定部の他端から流路部材上の出口に至る排出路から構成され、入口から測定部を介して出口まで試料が流動可能な流路を備えた測定ユニットに試料を供給する試料供給装置において、入口に装着するための入口用ピペットチップと、出口に装着するための出口用ピペットチップと、入口用ピペットチップを着脱可能な入口用ピペットチップ装着部と、出口用ピペットチップを着脱可能な出口用ピペットチップ装着部と、入口用ピペットチップ装着部と連通し、入口用ピペットチップ装着部からエアーを吸入排出する入口用ピストンとを備えてなるものとしたので、試料の供給に際して入口側および出口側ともに配管を必要とせず、また入口用および出口用のピペットチップはいずれもディスポーザブル型のものを使用することができるため、測定を行う際のメンテナンス性を向上させることができる。
【0027】
また、出口用ピペットチップ装着部を、出口用ピペットチップ側から侵入した試料の逆流を防止する逆止弁を備えたものとすることにより、出口用ピペットチップを流路から抜脱した際に出口用ピペットチップから試料が流路内に逆流するのを防止することができる。
【0028】
また、出口用ピペットチップ装着部と連通し、出口用ピペットチップ装着部からエアーを吸入排出する出口用ピストンをさらに備え、入口用ピストンと出口用ピストンとが、独立して制御可能なように構成することにより、流路内に試料を供給する際に入口用ピストンからエアーを排出し出口用ピストンからエアーを吸入することによってスムーズに試料を供給することができる。また、出口用ピペットチップ内に試料が貯留されている際に、出口用ピストンからエアーを排出し入口用ピストンからエアーを吸入することによって試料の逆送を行うことができる。また、このような出口用ピストンを設けることによって出口用ピペットチップ内を負圧にすることができるため、出口用ピペットチップを流路から抜脱した際に出口用ピペットチップ内に貯留された試料が流路内に逆流するのを防止することができる。
【0029】
さらに、入口用ピペットチップ、出口用ピペットチップ、入口用ピペットチップ装着部および出口用ピペットチップ装着部を複数組備えたものとすることにより、複数の流路に対して同時並列的に試料を供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。本発明の第1の実施の形態の試料供給装置は、以下に示す測定装置の測定ユニットに試料を供給するものであって、先にこの測定装置の説明を行う。この測定装置は、測定ユニットの複数の測定部に光ビームを並列的に入射させることにより複数の試料の分析を同時に行うことが可能な表面プラズモンセンサーであり、図1は本実施の形態の試料供給装置に対応した表面プラズモンセンサーの概略構成を示す平面図、図2はこの表面プラズモンセンサーの測定系の平面図、図3はこの表面プラズモンセンサーの測定系の側面図、図9は図2中のIX−IX線断面図である。
【0031】
この表面プラズモンセンサー1は、図1に示すように、測定ユニット10に設けられた複数の測定部毎に光ビームを並列的に入射させることにより複数の試料の分析を同時に行うことが可能な表面プラズモンセンサーであり、同様の構成の複数の表面プラズモン測定系1A、1B…により構成されている。各測定系の構成について、個別の要素を表す符号であるA、B…の符号は省略して説明する。
【0032】
図2、図3および図9に示すように、各測定系は、1本の光ビーム13を発生させる半導体レーザ等からなる光源14(以下、レーザ光源14という)と、上記光ビーム13を測定ユニット10に通し、流路60(測定部)の下の誘電体ブロック50と金属膜55との2箇所の界面50dおよび50eに対して、種々の入射角が得られるように並列的に入射させる光学系15と、上記界面50dおよび50eで全反射した光ビーム13を各々平行光化する2つのコリメーターレンズ16と、この平行光化された光ビーム13を各々検出する2つのフォトダイオードアレイ17と、2つのフォトダイオードアレイ17に接続された差動アンプアレイ18と、ドライバ19と、コンピュータシステム等からなる信号処理部20と、この信号処理部20に接続された表示部21とを備えている。なお、信号処理部20は、後述する補正動作の際に使用される予備測定の結果のデータを記憶する図示しない記憶手段が内蔵されたものであり、また補正手段としても機能するものである。
【0033】
まず、測定ユニット10について説明する。図4は測定ユニット10の斜視図、図5は上記測定ユニットの分解斜視図、図6は上記測定ユニットの上面図、図7は図6中のVII−VII線断面図である。
【0034】
測定ユニット10は、光ビームに対して透明であり、平滑な上面50aに薄膜層としての金属膜55が形成された誘電体ブロック50と、この誘電体ブロック50の金属膜55上に密接される流路部材51と、誘電体ブロック50と係合して、流路部材51を誘電体ブロック50の上面50a上に保持する保持部材52とから構成される。
【0035】
誘電体ブロック50は、例えば透明樹脂等からなるものであり、長手方向に直交する断面が上底よりも下底の方が短い台形状の本体を有し、この本体の長手方向の両端部に上面(もしくは下面)方向から見たときの幅が本体よりも薄く形成された保持部50bが形成されたもので、後述の測定装置の光源から出射された光ビームを誘電体ブロック50と金属膜55との界面に入射させるとともに、この界面で全反射した光ビームを測定装置の光検出手段に向けて出射させるプリズム部が一体的に形成されたものである。本体の長手方向の両側面には後述の保持部材52に形成された係合孔52cに係合させるための係合凸部50cと側面が垂直に形成された垂直凸部50dとが両側面で各々互いに対向するように形成されており、底面には長手方向に平行に延びる摺動溝50eが形成されている。
【0036】
流路部材51は、入口61から測定部63に至る供給路62、および測定部63から出口65に至る排出路64から構成される流路60が、流路部材51の長手方向に渡って複数形成されており、この複数の流路60は直線状に配置されている。
【0037】
図7に示すように、流路部材51の上面には入口61および出口65が開口され、流路部材51の下部部分には、供給路62の出口と排出路64の入口が開口され、また流路部材51の下面に位置する金属膜55の表面と接する領域に、この供給路62の出口と排出路64の入口を囲むシール部51aが形成されており、このシール部51aの内側が測定部63となる。このため、流路部材51を誘電体ブロック50の金属膜55上に密接させた場合に、このシール部51a内の測定部63が流路として機能するようになり、入口61から測定部63を介して出口65までバッファーが略凵字状に流動可能となる。なお、シール部51aは、流路部材51の上部部分と一体形成されたものであってもよいし、上部部分とは異なる素材により形成され、後付されたものであってもよく、例えばOリング等を流路部材51の下部部分に取り付けたものであってもよい。
【0038】
本発明の測定ユニットを使用する表面プラズモンセンサー等の測定装置では、蛋白質を含む液体試料が使用されることが想定されるが、流路60内で液体試料中の蛋白質が固着してしまうと測定を正確に行うことが困難となってしまうため、流路部材51の材料としては蛋白質に対する非特異吸着性を有しないことが好ましく、具体的にはシリコン、ポリプロピレン等を用いるとよい。また、流路部材51をこのような弾性材料からなるものとすることにより、流路部材51を金属膜55上に確実に密接させることができるため、接触面からの液体試料の液漏れを防止することができる。さらに、蛋白質等の吸着を防止すべく流路60内に親水化処理を施してもよい。
【0039】
保持部材52は、ポリプロピレン等の弾性材料からなり、長手方向と直交する方向の断面が略冂字形状をしており、保持部材52の上板(保持板部)の流路部材51の入口61および出口65と対向する位置には流路部材51に向けて狭くなるテーパー状のピペット挿入孔52aが形成されており、保持部材52の上面の各ピペット挿入孔52aの中間、および両端のピペット挿入孔52aのさらに外側には位置決め用のボス52bが形成されている。
【0040】
また、この保持部材52の上面には、蒸発防止部材54が両面テープ(接着部材)53により貼付されている。図5に示すように、両面テープ53のピペット挿入孔52aと対向する位置にはピペット挿入用の孔53aが形成され、ボス52bと対向する位置には位置決め用の孔53bが形成されており、同様に、蒸発防止部材54のピペット挿入孔52aと対向する位置にはスリット54aが形成され、ボス52bと対向する位置には位置決め用の孔54bが形成されており、ボス52bに両面テープ53の孔53bおよび蒸発防止部材54の孔54bを挿通した状態で、蒸発防止部材54を保持部材52の上面に貼付することにより、蒸発防止部材54のスリット54aと流路部材51の入口61および出口65とが対向するように構成される。この蒸発防止部材54は、スリット54aからピペットを挿入できるように弾性を有する材料である必要があり、具体的にはシリコンまたはポリプロピレン等を用いるとよい。なお、上記の保持部材52と蒸発防止部材54とは一体的に形成してもよく、これに加えてさらに流路部材51も一体的に形成してもよい。
【0041】
さらに、保持部材52の長手方向側板には、誘電体ブロック50に形成された係合凸部50cに係合させるための係合孔52cが形成されており、この係合孔52cを係合凸部50cに係合させて保持部材52と誘電体ブロック50とを係合させた状態で、流路部材51が保持部材52と誘電体ブロック50とに挟持され、流路部材51が誘電体ブロック50の上面50a上に保持されるように構成されている。
【0042】
図7に示すように、流路部材51が保持部材52と誘電体ブロック50とに挟持された状態では、流路部材51の入口61および出口65は、蒸発防止部材54のスリット54aにより外気から遮断され、流路60内に注入された液体試料の蒸発を防止するように構成されている。
【0043】
入射光学系15は、レーザ光源14から発散光状態で出射した光ビーム13を平行光化するコリメーターレンズ15aと、該平行光化された光ビーム13を分光するハーフミラー15cと、ハーフミラー15cにより反射された光ビーム13を測定ユニット10方向に反射させるミラー15dと、ハーフミラー15cを透過した光ビーム13、およびミラー15dにより反射された光ビーム13を上記界面50dおよび50e上で各々収束させる2つの集光レンズ15bとから構成されている。
【0044】
光ビーム13は、上述のように集光されるので、界面50dおよび50eに対して種々の入射角θで入射する成分を含むことになる。なおこの入射角θは、全反射角以上の角度とされる。そこで、光ビーム13は界面50dおよび50eで全反射し、この反射した光ビーム13には、種々の反射角で反射する成分が含まれることになる。なお、上記光学系15は、光ビーム13を界面50dおよび50eにデフォーカス状態で入射させるように構成されてもよい。そのようにすれば、表面プラズモン共鳴の状態検出の誤差が平均化されて、測定精度が高められる。
【0045】
なお光ビーム13は、界面50dおよび50eに対してp偏光で入射させる。そのようにするためには、予めレーザ光源14をその偏光方向が所定方向となるように配設すればよい。その他、波長板で光ビーム13の偏光の向きを制御してもよい。
【0046】
図9に示すように、本実施の形態において、測定ユニット10の各流路60の測定部63
には2箇所の界面50dおよび50eに対して光ビーム13が並列的に入射されるが、このうち一方の界面50d上の金属膜55上は何も固定していない参照領域とし、他方の界面50e上の金属膜55上はリガンド73を固定した検出領域とし、後述のリファレンス法による測定結果の校正を行うことができるようにしている。
【0047】
本実施の形態の試料供給装置は上記のように構成された表面プラズモンセンサー1の測定ユニット10の各流路60に試料を供給するものであり、図面を用いてこの試料供給装置について説明する。図8はこの試料供給装置の外観図である。
【0048】
この試料供給装置80は、入口用ピペットチップ装着部83および出口用ピペットチップ装着部84が形成された本体81と、この本体81に内蔵され、入口用ピペットチップ装着部83と連通し、入口用ピペットチップ装着部83からエアーを吸入排出する不図示の入口用ピストンと、本体81に内蔵され、出口用ピペットチップ装着部84と連通し、出口用ピペットチップ装着部84から侵入した試料を貯留する不図示の貯留部と、この入口用ピストンを操作するための操作部82と、入口用ピペットチップ装着部83に装着される入口用ピペットチップ90と、出口用ピペットチップ装着部84に装着される出口用ピペットチップ91とから構成される。また、出口用ピペットチップ装着部84は、出口用ピペットチップ91側から侵入した試料の逆流を防止する不図示の逆止弁を備えている。
【0049】
入口用ピペットチップ装着部83の中心と出口用ピペットチップ装着部84の中心との間隔は、流路60の入口61の中心と出口65の中心との間隔と略等しくなるように構成されており、入口用ピペットチップ装着部83および出口用ピペットチップ装着部84に入口用ピペットチップ90および出口用ピペットチップ91を装着した状態で、両ピペットチップの先端を流路60の入口61および出口65に挿入することによって、入口用ピペットチップ90から出口用ピペットチップ91まで試料を移動させることが可能となる。
【0050】
なお、入口用ピペットチップ90および出口用ピペットチップ91は、それぞれ入口用ピペットチップ装着部83および出口用ピペットチップ装着部84から着脱自在なディスポーザブル型のピペットチップである。
【0051】
また、上記の入口用ピペットチップ90および出口用ピペットチップ91の先端部の外径を、流路60の入口61および出口65の内径(もしくは保持部材52のピペット挿入孔52aの内径)と略等しくすることにより、試料供給装置80を測定ユニット10に挿入した際に、予期しない気泡の混入や試料の蒸発を防止することができる。
【0052】
以下、上記構成の表面プラズモンセンサー1による試料分析について説明する。測定に先立ち、恒温室2からチップ保持部11上の測定位置へ向けて測定ユニット10が移動される。チップ保持部11には誘電体ブロック50に形成された摺動溝50eと係合するレール11aが形成されており、測定ユニット10を移動させる際に高い位置精度を確保することができるようになっている。さらに、測定ユニット10がチップ保持部11上に載置された後、誘電体ブロック50に形成された垂直凸部50dが不図示の固定機構により挟持されてチップ保持部11上の測定位置に固定される。その後、図9に示すように流路部材51の液体試料としてアナライトを含有するバッファー72を吸入した入口用ピペットチップ90および出口用ピペットチップ91をそれぞれ入口61および出口65に挿入した後、操作部82を操作して入口用ピペットチップ90からバッファー72を送出させ、流路60の測定部63にバッファー72を供給する。この際、バッファー72注入前の流路60内にはリガンド73が乾燥するのを防止したりするための保護液75(もしくは前回の測定のバッファー等)が注入されているため、この保護液75(もしくは前回の測定のバッファー等)と新たな測定に用いるバッファー72とが混合してしまわないようにするために、入口用ピペットチップ90の先端に気泡74を吸入しておき、バッファー72を流路60内に注入する際に気泡74が先に流路60内に侵入するようにすれば、この気泡74によってバッファー72と保護液75(もしくは前回の測定のバッファー等)とが分断されるため、両者の混合を防止することができ、そして保護液75(もしくは前回の測定のバッファー等)は気泡74によって押し出されて全て出口用ピペットチップ91内へ排出される。なお、ここではバッファー72と保護液75との交換の場合について述べたが、基準のバッファーからアナライトを含有するバッファーへの交換、またはアナライトを含有するバッファーから基準のバッファーへの交換等、流路60内の試料等の液体の交換の際には全て上記の手法により交換前後の液体の混合を防止することができる。もちろん上記の手法を用いず、直接試料等の液体を注入してもよい。
【0053】
上記のようにして流路60の測定部63にバッファー72を供給した後、測定を開始する。なお、表面プラズモンセンサー1に不要な振動等の悪影響が発生するのを防止するため、測定時には測定ユニット10から試料供給装置80を抜脱する。
【0054】
図3に示す通り、レーザ光源14から発散光状態で出射した光ビーム13は、光学系15の作用により、測定部63の下の誘電体ブロック50と金属膜55との界面50dおよび50e上で収束する。この際、光ビーム13は、界面50dおよび50eに対して種々の入射角θで入射する成分を含むことになる。なおこの入射角θは、全反射角以上の角度とされる。そこで、光ビーム13は界面50dおよび50eで全反射し、この反射した光ビーム13には、種々の反射角で反射する成分が含まれることになる。
【0055】
界面50dおよび50eで全反射した後、2つのコリメーターレンズ16によって各々平行光化された2本の光ビーム13は、2つのフォトダイオードアレイ17により各々検出される。本例におけるフォトダイオードアレイ17は、複数のフォトダイオード17a、17b、17c……が1列に並設されてなり、図3の図示面内において、平行光化された光ビーム13の進行方向に対してフォトダイオード並設方向がほぼ直角となる向きに配設されている。したがって、上記界面50dおよび50eにおいて種々の反射角で全反射した光ビーム13の各成分を、それぞれ異なるフォトダイオード17a、17b、17c……が受光することになる。
【0056】
図10は、この表面プラズモンセンサーの電気的構成を示すブロック図である。図示の通り上記ドライバ19は、差動アンプアレイ18の各差動アンプ18a、18b、18c……の出力をサンプルホールドするサンプルホールド回路22a、22b、22c……、これらのサンプルホールド回路22a、22b、22c……の各出力が入力されるマルチプレクサ23、このマルチプレクサ23の出力をデジタル化して信号処理部20に入力するA/D変換器24、マルチプレクサ23とサンプルホールド回路22a、22b、22c……とを駆動する駆動回路25、および信号処理部20からの指示に基づいて駆動回路25の動作を制御するコントローラ26から構成されている。なお、差動アンプアレイ18、ドライバ19、信号処理部20は、2つのフォトダイオードアレイ17からの入力に対して、同様の処理を並列的に行うように構成されている。
【0057】
上記フォトダイオード17a、17b、17c……の各出力は、差動アンプアレイ18の各差動アンプ18a、18b、18c……に入力される。この際、互いに隣接する2つのフォトダイオードの出力が、共通の差動アンプに入力される。したがって各差動アンプ18a、18b、18c……の出力は、複数のフォトダイオード17a、17b、17c……が出力する光検出信号を、それらの並設方向に関して微分したものと考えることができる。
【0058】
各差動アンプ18a、18b、18c……の出力は、それぞれサンプルホールド回路22a、22b、22c……により所定のタイミングでサンプルホールドされ、マルチプレクサ23に入力される。マルチプレクサ23は、サンプルホールドされた各差動アンプ18a、18b、18c……の出力を、所定の順序に従ってA/D変換器24に入力する。A/D変換器24はこれらの出力をデジタル化して信号処理部20に入力する。
【0059】
図11は、界面50d(または50e)で全反射した光ビーム13の入射角θ毎の光強度と、差動アンプ18a、18b、18c……の出力との関係を説明するものである。ここで、光ビーム13の界面50d(または50e)への入射角θと上記光強度Iとの関係は、同図(1)のグラフに示すようなものであるとする。
【0060】
界面50d(または50e)にある特定の入射角θSPで入射した光は、金属膜55とバッファー72との界面に表面プラズモンを励起させるので、この光については反射光強度Iが鋭く低下する。つまりθSPが全反射減衰角であり、この角度θSPにおいて反射光強度Iは最小値を取る。この反射光強度Iの低下は、図3にDで示すように、反射光中の暗線として観察される。
【0061】
また図11の(2)は、フォトダイオード17a、17b、17c……の並設方向を示しており、先に説明した通り、これらのフォトダイオード17a、17b、17c……の並設方向位置は上記入射角θと一義的に対応している。
【0062】
そしてフォトダイオード17a、17b、17c……の並設方向位置、つまりは入射角θと、差動アンプ18a、18b、18c……の出力I´(反射光強度Iの微分値)との関係は、同図(3)に示すようなものとなる。
【0063】
信号処理部20は、A/D変換器24から入力された微分値I´の値に基づいて、差動アンプ18a、18b、18c……の中から、全反射減衰角θSPに対応する微分値I´=0に最も近い出力が得られているもの(図11の例では差動アンプ18dとなる)を選択し、それが出力する微分値I´に所定の補正処理を施してから、その値を表示部21に表示させる。なお、場合によっては微分値I´=0を出力している差動アンプが存在することもあり、そのときは当然その差動アンプが選択される。
【0064】
以後、所定時間が経過する毎に上記のように選択された差動アンプのいずれかが出力する微分値I´が、所定の補正処理を受けてから表示部21に表示される。この微分値I´は、測定チップの金属膜55に接している物質の誘電率つまりは屈折率が変化し、全反射減衰角θSPが変化して、図11(1)に示す曲線が左右方向に移動する形で変化すると、それに応じて上下する。したがって、この微分値I´を時間の経過とともに測定し続けることにより、金属膜55に接しているバッファー72(またはリガンド73)の屈折率変化を調べることができる。
【0065】
特に上記表面プラズモンセンサー1では検出領域において、バッファー72に含まれるアナライトがリガンド73と結合する特定物質であれば、リガンド73とアナライトとの結合状態に応じてリガンド73の屈折率が変化するので、上記微分値I´を測定し続けることにより、アナライトがリガンド73と結合する特定物質であるか否かを検出することができる。
【0066】
さらに、上記表面プラズモンセンサー1においては、リファレンス法を行うべく検出領域と参照領域の2つの領域を有し、この2つの領域の測定を同時に行っているため、リファレンス法によりバッファーの温度変化や、光源変動等の外乱による誤差を校正することができるため測定精度を向上させることができる。
【0067】
次に、図12を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。なおこの図12において、図8中の要素と同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は特に必要の無い限り省略する。この第2の実施の形態の試料供給装置は、複数の流路に対して同時に試料を供給可能なように変更したものである。図12はこの試料供給装置の外観図である。
【0068】
この試料供給装置80´は、入口用ピペットチップ装着部83および出口用ピペットチップ装着部84の組が複数形成された本体81´と、この本体81´に内蔵され、入口用ピペットチップ装着部83の各々と連通し、入口用ピペットチップ装着部83からエアーを吸入排出する不図示の入口用ピストンと、この入口用ピストンを操作するための操作部82と、入口用ピペットチップ装着部83に装着される複数の入口用ピペットチップ90と、出口用ピペットチップ装着部84に装着される複数の出口用ピペットチップ91とから構成される。
【0069】
このような試料供給装置80´を用いることによって、複数の流路に対して同時に試料を供給することが可能となる。
【0070】
上記第1および第2の実施の形態で説明した試料供給装置は、入口用ピペットチップ装着部と連通し、入口用ピペットチップ装着部からエアーを吸入排出する入口用ピストンのみを備えたものとしたが、出口用ピペットチップ装着部と連通し、出口用ピペットチップ装着部からエアーを吸入排出する出口用ピストンをさらに備え、入口用ピストンと出口用ピストンとが独立して制御可能なように構成してもよい。
【0071】
また、ピペットチップ先端部を流路部材の入口内もしくは出口内に挿入してピペットチップ内の試料を流路内に注入する態様に限らず、図13に示すように入口用ピペットチップ90´の先端90a´および出口用ピペットチップ91´の先端91a´をそれぞれ流路部材上の保持部材52´のピペット係合部52d´に密着させて、ピペットチップ内の試料のみを流路60内に注入する態様としてもよい。勿論、ピペットチップと流路部材を直接密着させる態様としてもよい。
【0072】
また、出口用ピペットチップで回収した試料を出口から送出するとともに、この送出された試料により流路内から入口へ押し出された流体を入口用ピペットチップで回収する、すなわち、出口から入口へ向けて試料を逆流させるようにしてもよい。
【0073】
また、上記試料供給装置は、表面プラズモンセンサーの測定ユニットのみならず、例えば漏洩モードセンサーの測定ユニット等、種々のものに対して使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施の形態の試料供給装置に対応した表面プラズモンセンサーの概略構成を示す平面図
【図2】上記表面プラズモンセンサーの測定系の平面図
【図3】上記表面プラズモンセンサーの測定系の側面図
【図4】上記表面プラズモンセンサーの測定ユニットの斜視図
【図5】上記測定ユニットの分解斜視図
【図6】上記測定ユニットの上面図
【図7】図6中のVII−VII線断面図
【図8】本発明の第1の実施の形態の試料供給装置の外観図
【図9】図2中のIX−IX線断面図
【図10】上記表面プラズモンセンサーの測定系の電気的構成を示すブロック図
【図11】上記表面プラズモンセンサーの測定系における光ビーム入射角と検出光強度との関係、並びに光ビーム入射角と光強度検出信号の微分値との関係を示す概略図
【図12】本発明の第2の実施の形態の試料供給装置の外観図
【図13】本発明の試料供給装置の他の態様を示す断面図
【符号の説明】
【0075】
10 測定ユニット
13 光ビーム
14 レーザ光源
15 光学系
16 コリメーターレンズ
17 フォトダイオードアレイ
17a、17b、17c…… フォトダイオード
18 差動アンプアレイ
18a、18b、18c…… 差動アンプ
19 ドライバ
20 信号処理部
21 表示部
22a、22b、22c…… サンプルホールド回路
23 マルチプレクサ
24 A/D変換器
25 駆動回路
26 コントローラ
50 誘電体ブロック
51 流路部材
52 保持部材
53 両面テープ
54 蒸発防止部材
55 金属膜
56 クラッド層
57 光動波層
60 流路
61 入口
62 供給路
63 測定部
64 排出路
65 出口
72 液体試料
73 リガンド
80 試料供給装置
81 本体
82 操作部
83 入口用ピペットチップ装着部
84 出口用ピペットチップ装着部
90 入口用ピペットチップ
91 出口用ピペットチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑な一面に薄膜層が形成された誘電体ブロックと、該誘電体ブロックの前記薄膜層上に密接される流路部材とからなり、該流路部材が、前記薄膜層に面した測定部、前記流路部材上の入口から前記測定部の一端に至る供給路、および前記測定部の他端から前記流路部材上の出口に至る排出路から構成され、前記入口から前記測定部を介して前記出口まで試料が流動可能な流路を備えた測定ユニットに試料を供給する試料供給方法であって、
前記入口に前記試料が吸引された入口用ピペットチップを装着し、
前記出口に出口用ピペットチップを装着し、
前記入口用ピペットチップに吸引されている前記試料を前記入口から送出するとともに、前記試料により前記流路内から前記出口へ押し出された流体を前記出口用ピペットチップで回収することを特徴とする試料供給方法。
【請求項2】
前記出口用ピペットチップで回収した前記試料を前記出口から送出するとともに、前記試料により前記流路内から前記入口へ押し出された流体を前記入口用ピペットチップで回収することを特徴とする請求項1記載の試料供給方法。
【請求項3】
平滑な一面に薄膜層が形成された誘電体ブロックと、該誘電体ブロックの前記薄膜層上に密接される流路部材とからなり、該流路部材が、前記薄膜層に面した測定部、前記流路部材上の入口から前記測定部の一端に至る供給路、および前記測定部の他端から前記流路部材上の出口に至る排出路から構成され、前記入口から前記測定部を介して前記出口まで試料が流動可能な流路を備えた測定ユニットに試料を供給する試料供給装置であって、
前記入口に装着するための入口用ピペットチップと、
前記出口に装着するための出口用ピペットチップと、
前記入口用ピペットチップを着脱可能な入口用ピペットチップ装着部と、
前記出口用ピペットチップを着脱可能な出口用ピペットチップ装着部と、
前記入口用ピペットチップ装着部と連通し、該入口用ピペットチップ装着部からエアーを吸入排出する入口用ピストンとを備えてなることを特徴とする試料供給装置。
【請求項4】
前記出口用ピペットチップ装着部が、前記出口用ピペットチップ側から侵入した前記試料の逆流を防止する逆止弁を備えたものであることを特徴とする請求項3記載の試料供給装置。
【請求項5】
前記出口用ピペットチップ装着部と連通し、該出口用ピペットチップ装着部からエアーを吸入排出する出口用ピストンを備え、
前記入口用ピストンと前記出口用ピストンとが、独立して制御可能なことを特徴とする請求項3または4記載の試料供給装置。
【請求項6】
前記入口用ピペットチップ、前記出口用ピペットチップ、前記入口用ピペットチップ装着部および前記出口用ピペットチップ装着部を複数組備えたことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項記載の試料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−133220(P2006−133220A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285927(P2005−285927)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】