説明

試料加工装置

【課題】 透過電子顕微鏡の観察に適した試料を作製することができる試料加工装置を提供する。
【解決手段】 遮蔽材支持手段をなす遮蔽材支持ステージ23aの基台100は、試料Sの加工面SAが上下に通過可能とされた切り欠き部100aを備える。基台100上には、供給ホイール101、一対の支持ホイール102、張力印加ホイール103、及び弾性部材105が設けられている。供給ホイール101から供給された長尺状(ワイヤ状)の遮蔽材Mは、一対の支持ホイール102の間で架橋されて支持され、この部分の遮蔽材Mが試料Sの加工面SAの上方に配置される。試料Sのエッチング加工時には、遮蔽材Mが加工面SAの近傍に介在された状態でイオンビームが照射されて行われる。このとき、張力印加ホイール103を介して弾性部材105により遮蔽材Mに所定の張力が印加される。遮蔽材Mの交換時には、供給ホイール101から自動的にイオンビームが未照射の遮蔽材Mが供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡等の観察装置で観察される試料を加工するための試料加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡もしくは透過電子顕微鏡等の電子顕微鏡を用いて試料を観察する場合、予め試料の一部をエッチング加工して加工断面を形成しておき、この加工断面に電子線を照射して観察する。
このときの試料のエッチング加工方法の一例を図16に示す。
図16において、符号Sは観察対象の試料を示すものであり、この試料Sにおける上面S1の近傍に試料Sとは非接触の状態でワイヤ状の遮蔽材(マスク)Mを配置する。ここで、遮蔽材Mは図示しない支持部材によって支持されている。その後、試料Sの上面S1及び遮蔽材Mの所定箇所に上方からイオンビームIBを図16に示すように照射する。
このとき、イオンビームIBが照射された試料Sの部分はイオンビームIBによってエッチング加工されるとともに、遮蔽材Mで遮られた試料Sの部分はエッチング加工されずに残存する。この結果、図17に示すように、試料Sの所定部分がエッチング加工により除去され、これにより試料Sに加工断面S2が形成される。
【0003】
【特許文献1】特開平11−271192号公報
【特許文献2】特開平11−218473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イオンビーム照射によって試料Sの所定部分がエッチング加工されるが、このときに遮蔽材Mも微量ながらエッチングされて消耗する。消耗した遮蔽材Mは交換する必要があるが、この際には上記支持部材に対する遮蔽材Mの張り替えが行われる。
この遮蔽材Mの張り替えのときには、治工具等を用いて人手により消耗した遮蔽材Mを支持部材から取り外し、その後新しい遮蔽材Mを支持部材に固定して行うこととなる。このとき、消耗した遮蔽材Mの交換作業に手間を要するとともに時間もかかっていた。
また、上述のイオンビームIBによる試料Sのエッチング加工の際にはマスクとなる遮蔽材MにもイオンビームIBが照射されることとなるが、このときにイオンビームIBが衝突することにより遮蔽材Mが微少ながら振動を起こす。この振動は、遮蔽材Mが十分に張力が加えられた状態で支持部材により支持されていれば最小限度に抑えることができる。
しかしながら、従来は遮蔽材Mを支持部材に単に固定して支持しているのみであるので、経時的に遮蔽材Mが緩むことがあり、このときにはイオンビームIBの衝突による遮蔽材Mの振動が大きくなる。この場合、試料Sに対するイオンビームによるエッチング加工精度が劣化することとなり好ましくない。
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、透過電子顕微鏡の観察に適した試料を作製することができる試料加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に基づく試料加工装置は、内部が所定の真空度に真空引きされる試料加工室と、前記試料加工室に配置され、試料を保持するための試料台と、前記試料加工室に配置され、前記試料台に保持された試料の加工面にイオンビームを照射するためのイオンビーム照射手段と、前記イオンビーム照射手段と前記試料の間に配置され、前記試料の加工面の所定領域をイオンビームから遮るためのテープ状の遮蔽材と、前記遮蔽材を支持するための遮蔽材支持手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、透過電子顕微鏡の観察に適した試料を作製することができる試料加工装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(実施例1)図1は、本発明の試料加工装置の一概略例を示したものである。同図において、壁部材1により囲まれた試料加工室2内は真空ポンプ3により内部が所定の真空度に真空引きされるようになっている。この試料加工室2内には、昇降テーブル4が、垂直方向(Z軸方向)に昇降自在に配置されている。昇降テーブル4の下面にはナットブロック6が固定されている。ナットブロック6は平面形状が長方形であり、その2箇所のコーナー部がそれぞれガイド7に係合している。このため、ナットブロック6は、このガイド7により回転不能かつ上下方向にスライド可能となっている。
ナットブロック6はスクリューシャフト8と螺合しており、スクリューシャフト8の回転に応じて昇降するように構成されている。このスクリューシャフト8の下端部にはギヤボックス9の回転力伝達ギヤ(図示せず)により回転力が伝達され、このギヤボックス9には、壁部材1の外部に配置されたモータユニット11から回転軸11aを介して回転力が伝達されるように構成されている。昇降テーブル4上にはX−Y平面上(水平面上)で移動可能なX−Yテーブル12が、図示しない水平駆動手段により駆動可能に支持されている。
このX−Yテーブル12上には試料台13が搭載されている。試料台13は、X軸方向に長い直方体の形状をしており、その上面にはその長手方向に延びる長穴状の溝部13aが形成されている。この試料台13の溝部13aには、シリコンウエハ等から切り出された棒状の試料Sが保持され、試料Sの長手方向がX軸方向に沿うように配置される。ここで、試料Sの加工面SAは棒状の試料Sの長手方向(X軸方向)に沿う上面に対応している。そして、試料台13に試料Sを固定した状態で試料台13を昇降させることにより、試料Sの加工面SAを試料加工位置に移動させることができる。
試料加工室2の上端部には、イオンビーム照射装置(イオンビーム照射手段)16が配置されている。このイオンビーム照射装置16は、試料加工室2の上端に設けられたガスイオンビーム発生装置17を有している。ガスイオンビーム発生装置17は、放電ガス(例えば、Arガス)導入部18及び高電圧が印加される放電電極19等を有しており、放電によりガスイオン(Arイオン)を発生させる機能を有している。なお、ガスイオンビーム発生装置17で使用する放電ガスとしては、ネオンガス、窒素ガス等を採用することも可能である。
ガスイオンビーム発生装置17の下方には、このガスイオンビーム発生装置17で発生したガスイオンビームIBを直径約1mmに絞って試料Sの加工面SAに入射させるための絞り21が配置されている。ガスイオン発生装置17及び絞り21等により、ビーム径約1mmのガスイオンビームIBを試料Sの加工面SAに入射させるイオンビーム照射装置16が構成されている。なお、絞り21により絞られたガスイオンビームIBのビーム径は1mmに限られず、適当な値を設定することが可能である。また、ガスイオンビーム発生装置17から発生するイオンビームIBの径が大きい場合には、静電レンズ、電磁レンズ等からなるビーム収束レンズ(図示せず)を用いて所望のビーム径に調節することが可能である。
試料台13の上方には、遮蔽材(マスク)Mを支持するための遮蔽材支持装置23が配置されている。この遮蔽材支持装置23で支持されている遮蔽材Mは、イオンビームIBによる試料Sのエッチング加工の際に試料Sの加工面SAの所定領域をイオンビームIBから遮るためのものであり、タングステン、ニッケル−リン合金等により構成されている。本実施例での遮蔽材Mは、断面形状が略円形の長尺状(例えば、ワイヤ状)の部材であり、線幅(直径)は約70μmとされている。なお、この長尺状の遮蔽材Mの線幅は、10μm〜300μm程度とすることが可能であり、また、その断面形状を長方形としたり、あるいは全体をテープ状とすることもできる。ここで、遮蔽材Mの表面に非晶質金属被膜を形成しておき、この非晶質被膜にイオンビームIBが照射されるようにすれば、該非晶質被膜が徐々にエッチングされても非晶質被膜が残存している間は被膜表面は所定の平滑面とすることができる。このように遮蔽材Mの被膜表面(イオンビームIBが照射される面)が所定の平滑面に保たれることにより、試料Sのエッチング加工精度が一定に保たれるという利点がある。
遮蔽材支持装置23は、遮蔽材Mを支持するための遮蔽材支持ステージ(遮蔽材支持手段)23a、該遮蔽材支持ステージ23aに図示しない締着部材等により接合されて、これを固定して保持するための保持ロッド23b、及び相対移動手段23cを有しており、この相対移動手段23cは図示しないマイクロメータを備え、これにより遮蔽部材Mが試料Sに対して相対的に移動できる構成となっている。
ここで、遮蔽材支持装置23を構成する遮蔽材支持ステージ23aの構造について、図2及び図3を参照して説明する。
図2は遮蔽材支持ステージ23aの構造を示す平面図、図3は図2におけるA−A'断面図である。図示のごとく、遮蔽材支持ステージ23aは、イオンビームが通過する所定形状(例えば、方形状)の切り欠き部(イオンビーム通過部)100aが形成された基台100等から構成され、遮蔽材Mを支持するための構成部材がこの基台100上に備えられている。ここで、この切り欠き部100aは試料Sの上方に位置するようになされており、その幅Dは試料Sの長手方向の長さよりも長く形成され、これにより試料台13による試料Sの昇降時に試料Sの加工面SAが切り欠き部100aを通過可能とされている。
基台100上には、後述する支持ホイール102に遮蔽材Mを繰り出して供給するための供給ホイール101が設けられている。この供給ホイール101は円筒状の形状をしており、その側面には予め所定の長さの遮蔽材Mが巻かれて保持されている。さらに基台100上には、切り欠き部100aを間に挟むように一対の支持ホイール102(102a,102b)が設けられており、この結果切り欠き部100aがこの一対の支持ホイール102の間に位置するように構成されている。そして、供給ホイール101から一対の支持ホイール102のうちの一方の支持ホイール102aに遮蔽材Mが供給されるとともに、この一方の支持ホイール102aに供給された遮蔽材Mは他方の支持ホイール102bに繰り出される。これにより、一方の支持ホイール102aと他方の支持ホイール102bとの間において、遮蔽材Mが基台100の切り欠き部100aの上方を横切る直線部分M1を有するように支持される。なお、一対の支持ホイール102は、切り欠き部100aの上方での所定部分に位置する遮蔽材Mの直線部分M1が試料Sの加工面SAの上方に配置されるように設けられている。また、この直線部分M1の長手方向が、試料Sの長手方向にほぼ平行に沿うような第1の角度に設定されている。
なお、本実施例では、一方の支持ホイール102aから他方の支持ホイール102bに送り出された遮蔽材Mは供給ホイール101に戻され、供給ホイール101にて巻き取られる構成とされている。
供給ホイール101と一方の支持ホイール102aとの間には、この間に位置する遮蔽材Mの所定箇所に接触するように張力印加ホイール103が設けられている。この張力印加ホイール103は回動板104の一端側に設けられている。この回動板104の他端側には、一方の支持ホイール102aの軸と一致する軸が設けられており、回動板104はこの軸を中心に回動可能となっている。回動板104の一端側に位置する側面には、コイルスプリング等からなる弾性部材105の一端部が係合部材106を介して係合されている。そして、この弾性部材105の他端部は、基台100上の所定箇所に設けられた係止部材107により係止されている。したがって、回動板104には、弾性部材105の縮退(縮み)による弾性力が回動板104の一端側に加わることとなり、回動板104の他端側の軸を中心として回動する作用が働く。この結果、供給ホイール101から一方の支持ホイール102aに供給された遮蔽材Mには、弾性部材105の弾性力に起因する所定の張力が、回動板104の他端側に設けられた張力印加ホイール103を介して常に印加されることとなる。これにより、一対の支持ホイール102の間(一方の支持ホイール102aと他方の支持ホイール102bとの間)に位置する遮蔽材Mにも所定の張力が常に印加される。
特に、本実施例では、基台100上にて、供給ホイール101と一対の支持ホイール102との間に位置する弾性部材105の縮退する方向の弾性力により、遮蔽材Mに張力が印加される。すなわち、基台100上の内側方向(支持ホイール102aにより遮蔽材Mが屈曲される内側方向)に張力が印加されるため、各ホイールに架橋される遮蔽材Mの架橋範囲が基台100の外側方向に広がることがなく、装置構成を小型にすることができる。
供給ホイール101の回転軸108には、平面形状が所定の型(例えば、マイナス「−」型)の凹部108aが基台100の外からアクセス可能に形成されている。そして、上記の所定の型に適合する凸部を有する図示しない回転駆動軸を、基台100の外から回転軸108の凹部108aに嵌合することにより、回転軸108を介して供給ホイール101が回転駆動可能とされる。
なお、図1に示した、上述のモータユニット11、イオンビーム照射装置16、及び遮蔽材支持装置23等は、制御部20によって適宜制御される構成とされている。
次に、上述の構成を備えた試料加工装置を用いた試料加工方法について説明する。
本発明で用いられる試料Sは、図4に示すような棒状の直方体の形状をしており、寸法の一例として、長手方向の寸法lが3mm、幅方向の寸法dが0.1mm、厚さ方向の寸法tが0.3mmとなっている。このような形状の試料Sを、図1に示す本発明の試料加工装置における試料加工室2内の試料台13の溝部13a内に、その加工面SAが上を向く状態で保持する。このとき、試料台13の上方に位置する遮蔽材支持装置23の遮蔽材支持ステージ23aでは、図2及び図3に示すごとく、供給ホイール101から供給された長尺状の遮蔽材Mが一対の支持ホイール102の間に予め繰り出されて支持されている。支持ホイール102の間で支持されている遮蔽材Mは、弾性部材105の弾性力に起因する所定の張力が張力印加ホイール103を介して印加されている。
試料台13に試料Sを保持させた後、真空ポンプ3により試料加工室2内を真空引きし、その内部を所定の真空度の真空雰囲気とする。試料加工室2内が所定の真空度に達した後、モータユニット11から回転軸11aを介してギヤボックス9に回転力を伝達し、スクリューシャフト8を適宜回転させる。これにより、スクリューシャフト8と螺合するナットブロック6が上昇し、昇降テーブル4、X−Yテーブル12、及び試料台13が一体的に上昇する。試料台13が上昇すると、これに保持された試料Sも上昇し、試料Sの加工面SAが、遮蔽材支持装置23を構成する基台100に形成された切り欠き部100aを下から上に通過する。試料Sの加工面SAと遮蔽材支持装置23の一対の支持ホイール102に支持された遮蔽材Mの下面との間隔が所定値となった時点で、モータユニット11の回転駆動を停止して試料Sの上昇を止める。これにより、一対の支持ホイール102により繰り出された遮蔽材M(直線部分M1)が、試料Sの加工面SAに非接触の状態で近接配置される。
次に、イオンビーム照射装置16を駆動して、発生したガスイオンビームIBを絞り21によりビーム径を1mm程度に絞った状態で、試料Sの加工面SAに照射し、エッチング加工を行う。このとき、図5に示すように、イオンビームIBは、遮蔽材Mが介在した状態で試料Sの加工面SAに照射されることとなり、遮蔽材Mは加工面SAの所定領域をイオンビームIBから遮るマスクの役目を果たす。この結果、試料Sの加工面SAのうち、イオンビームIBの照射が遮蔽材Mによって遮られた領域は残存するが、遮蔽材Mの両側に位置するイオンビームIBが照射された領域は順次エッチングされて除去される。このように、イオンビームIBによって試料Sの加工面SAを所定深さエッチングすることにより、図6に示すような加工済みの試料Sが形成される。
この後、イオンビーム照射装置16によるイオンビームIBの照射を停止し、モータユニット11の回転駆動により上述のときとは逆方向の回転力を伝達して試料Sを下降させる。その後、試料加工室2内を常圧に復帰させて試料Sを試料加工室2から取り出し、試料加工装置とは別体の図示しない走査電子顕微鏡等の試料観察装置に投入して観察を行う。
上述した試料加工方法において、イオンビーム照射装置16からのイオンビームIBの照射により、遮蔽材Mも微量ながらエッチングされて消耗するが、遮蔽材Mが消耗した時点にて、イオンビームIBが未照射の遮蔽材Mを逐次一対の支持ホイール102の間に送り出すような構成とされている。具体的には、まず遮蔽材Mの表面に被膜されている非晶質金属被膜のイオンビームIBに対するエッチングレートを予め求めておき、非晶質金属被膜の膜厚とこのエッチングレートとから非晶質金属被膜がほぼエッチング除去されるエッチング時間を所定の累積時間として制御部20に記憶させておく。そして、試料Sのエッチング加工時において、試料S及び遮蔽材MへのイオンビームIBの照射時間を、制御部9により加工処理毎に累積して計測する。このとき、制御部9は、計測された累積照射時間が上述した所定の累積時間に達しているかどうかを判定し、所定の累積時間に達したときに遮蔽材Mが消耗したと判断する。遮蔽材Mが消耗したと判断したときには、制御部20によって遮蔽材支持装置23の供給ホイール101を回転駆動制御し、一対の支持ホイール102うちの一方の支持ホイール102aを介して未照射の遮蔽材Mを自動的に送り出す。これにより、未照射の遮蔽材Mが一対の支持ホイール102の間に逐次供給される。
このように、本発明では、遮蔽材Mの消耗をイオンビームIBの累積照射時間を計測することによって検知し、遮蔽材Mの消耗を検知した時点で支持ホイール102等の各ホイールにより未照射の遮蔽材Mを自動的に送り出すので、遮蔽材Mの交換を人手を用いる必要なく短時間で効率的に行うことができる。
さらに、上述した試料加工方法においては、弾性部材105によって遮蔽材Mに常に所定の張力が印加されるので、経時的に遮蔽材Mが緩むことがなく、イオンビームIBの衝突による遮蔽材Mの振動が最小限に抑えることができ、試料Sに対するエッチング加工精度を劣化させずに保つことができる。
(第2実施例)図7は第2実施例を示したものである。
この実施例における遮蔽材支持装置23を構成する遮蔽材支持ステージ23aにおいては、一対の支持ホイール102のうちの他方の支持ホイール102bが図示しない駆動手段により、基台100上にて第1の位置及び第2の位置の間で移動可能に構成されている。これにより、一対の支持ホイール102の間に位置する遮蔽材Mの長手方向の角度が、他方の支持ホイール102bの第1の位置に対応する第1の角度と、該支持ホイール102bの第2の位置に対応する第2の角度との間で任意に設定できる。なお、他の構成部材については、上述の第1実施例と同じである。
このような遮蔽材支持装置23を備える試料加工装置を用いた試料加工方法について、以下に説明する。
まず、一対の支持ホイール102のうちの他方の支持ホイール102bを図5において一点鎖線で示す第1の位置に設定する。このとき、試料Sは図中一点鎖線で示す位置に位置する。これにより、遮蔽材Mの長手方向が、第1実施例の場合と同じように、試料Sの長手方向にほぼ平行に沿うような第1の角度に設定される。この状態で、第1実施例と同様にイオンビームIBによって試料Sのエッチング加工(1回目のエッチング加工)を行う。
その後、イオンビームIBの照射を一旦停止し、試料Sを、X−Yテーブル12の水平方向(この場合、Y軸方向)の移動により図中実線で示す位置に移す。さらに、他方の支持ホイール102bを図中実線で示す第2の位置に移動して設定する。これにより、遮蔽材Mの長手方向の角度も変化し、試料Sの長手方向(X軸方向)に対して所定の傾きを有する第2の角度に設定される。この状態を図8に示す。
ここで、上述した遮蔽材Mの長手方向の第1の角度及び第2の角度は、所定の軸方向(例えば、X軸方向)と遮蔽材Mの長手方向とのなす角度ととらえればよい。
この状態で、遮蔽材Mを介在させてイオンビームIBを照射し、2回目のエッチング加工を行う。このとき、1回目のエッチング加工時での遮蔽材MによりイオンビームIBが遮られた領域と、2回目のエッチング加工時での遮蔽材MによりイオンビームIBが遮られた領域とが重なり合う領域SXが残存する。
この状態を図9、図10、及び図11に示す。図中において、鋭角θを有する平行四辺形で示された領域が残存領域SXであり、この残存領域SXを上面として形成された凸部SYが観察対象とされる。このように、観察対象凸部SYの幅方向断面を、鋭角θを有する平行四辺形とすることにより、別体の図示しない観察装置として、透過電子顕微鏡を用いることができる。
すなわち、透過電子顕微鏡では、電子線を透過させるために、試料の観察対象の幅方向厚みを約200nm以下とする必要がある。そこで、上述のように、観察対象凸部SYの幅方向断面を、鋭角θを有する平行四辺形とすることにより、該鋭角θとなっている角部SZの近傍の領域では、その幅方向厚みdzが200nm以下となる。よって、試料Sにこのような観察対象凸部SYを形成した後、試料加工装置の試料加工室2から試料Sを取り出し、別体の透過電子顕微鏡にて試料Sを観察することができる。
(第3実施例)図12及び図13は第3実施例を示したものである。
上述の実施例においては、遮蔽材支持手段である遮蔽材支持ステージは遮蔽材支持装置を構成する保持ロッドに接合されて固定された例であったが、本実施例では、遮蔽材支持ステージを遮蔽材支持装置から着脱自在に構成したものである。
図中において、遮蔽材支持ステージ23aは、上述の実施例のように、基台100上に供給ホイール101、一対の支持ホイール102、張力印加ホイール103、弾性部材105等を備えて構成され、一対の支持ホイール102の間に遮蔽材Mが架橋されて支持されている。そして、基台100上のこれらの構成部材を覆うように蓋部材31が設けられている。蓋部材31には、基台100の周縁部に沿うように側壁31aが設けられており、この側壁31aには、遮蔽材Mが通過できるように開口部が31bが形成されている。この場合、遮蔽材支持ステージ23a(基台100)と蓋部材31とにより遮蔽材支持手段が構成され、全体がカセット構造とされている。
遮蔽材支持ステージ23aは、遮蔽支持装置を構成する移動ステージ32に着脱自在に取付けられている。移動ステージ32は水平方向に動く保持ロッド23b(図1参照)に接合され、これにより、遮蔽材支持ステージ23aは移動ステージ32を介して水平方向に移動可能となっている。この結果、保持ロッド23bにより移動ステージ32が、試料台に保持された試料に対して移動可能とされ、これにより、遮蔽材支持ステージ23aを有するカセット構造の遮蔽材支持手段が、試料の上方に配置される。なお、このカセット構造の遮蔽材支持手段は、試料加工装置の外にも別に所定個数用意されている。
このような構成とすることにより、本発明では、遮蔽材M全体を交換する際に、カセット構造の遮蔽材支持手段を移動ステージ32から取り外し、予め用意してある別の遮蔽材支持手段に付け替えることができる。これにより、遮蔽材M全体の交換作業を効率よく行うことができる。
なお、このカセット構造の遮蔽材支持手段の変形例として、図14に示す構造も考えられる。
上述の例では、供給ホイール101によって遮蔽材Mを供給するとともに巻き取るような構成とされていたが、この例では、供給ホイール101とは別体に巻き取りホイール101aを基台100上に設けた構造とされる。
(第4実施例)図15は第4実施例を示したものである。
本実施例は、走査電子顕微鏡からなる試料観察装置に、上述の構成の試料加工機構を設けたものである。
図中において、SEMカラム41内には、電子銃42、集束レンズ43、対物レンズ44、及び両レンズ43,44の間に偏向器45が備えられている。偏向器45は、電子ビームを2次元的に走査するためのものである。集束レンズ43及び対物レンズ44は、主に電磁レンズが使用される。ここで、これらSEMカラム41、電子銃42、集束レンズ43、対物レンズ44、及び偏向器45等によって電子ビーム照射手段46が構成されている。
電子銃42から発生した電子ビームは、集束レンズ43、対物レンズ44によって試料S上に細く集束されるとともに、試料Sに照射される電子ビームの照射位置は、偏向器45によって走査されるように構成されている。これら集束レンズ43、対物レンズ44、及び偏向器45はSEMコントローラ47によって制御される。
電子ビーム照射手段46による試料Sへの電子ビームの照射によって試料から発生した2次電子は、2次電子検出器(検出手段)48により検出される。検出器48によって検出された信号は、増幅器49により増幅される。
これら以外の構成は、基本的に図1に示す第1実施例の構成と同様であり、試料観察室(兼試料加工室)50内の試料台13に試料Sが保持され、モータユニット11により試料台13が昇降し、イオンビーム照射装置16からイオンビームIBが遮蔽材支持手段23aに支持された遮蔽材Mを介して試料Sに照射される構成とされている。また、本実施例での遮蔽材支持手段23aは、適宜、上述した実施例1、実施例2、若しくは実施例3いずれかの形態とすることができる。
ここで、SEMコントローラ47、モータユニット11、及びイオンビーム照射装置16等は、システム制御部51により制御される。
次に、上述の構成を備えた試料観察装置を用いた試料観察方法について説明する。
本実施例による試料観察方法は、試料Sの加工面をイオンビーム照射によりエッチング加工する試料加工ステップと、エッチング加工後の試料Sに電子ビームを照射して、試料Sから発生した2次電子検出ステップとを備え、これら2つのステップを同一の試料観察室50内で行うことを特徴としている。
試料加工ステップは、適宜、上述の実施例1、実施例2、若しくは実施例3に記載されたいずれかの試料加工方法を採用することができる。
試料加工後の2次電子検出ステップは、まず電子ビーム照射手段46によって試料Sに電子ビームを照射し、試料Sから発生した2次電子を2次電子検出器48により検出し、この検出信号を増幅器49により増幅することによりなされる。
なお、これらの試料加工ステップ及び2次電子検出ステップは、同一の試料観察室50内において、システム制御部51の制御によって達成される。
このように、本発明では、同一の試料観察室50内にて試料Sに対する試料加工ステップと2次電子検出ステップとを連続的に行うことができるので、試料加工後の試料Sを一旦装置外に取り出す必要がなく、効率的に試料観察を行うことができる。
また、このような試料加工機構を有する試料観察装置において、イオンビームのマスクとして使用している遮蔽材の交換を短時間で効率的に行うことができる。
なお、上述の実施例1ないし実施例4において、基台100に形成されたイオンビーム通過部100aは切り欠き部からなる例であったが、切り欠き部に代えて所定形状を有する開口部からなる例であってもよい。この例においても、上述と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1における試料加工装置を示す概要図である。
【図2】本発明の実施例1における遮蔽材支持手段を示す平面図である。
【図3】図2のA−A'断面図である。
【図4】本発明に使用される試料を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例1における加工工程を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例1における加工後の試料を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例2における遮蔽材支持手段を示す平面図である。
【図8】本発明の実施例2における加工工程を示す平面図である。
【図9】本発明の実施例2における加工後の試料を示す平面図である。
【図10】本発明の実施例2における加工後の試料を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施例2における観察対象を示す平面図である。
【図12】本発明の実施例3における遮蔽材支持手段を示す平面図である。
【図13】図12のB−B'断面図である。
【図14】本発明の実施例3における変形例を示す平面図である。
【図15】本発明の実施例4における試料観察装置を示す概要図である。
【図16】本発明の従来例における加工工程を示す斜視図である。
【図17】本発明の従来例における加工後の試料を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0009】
S…試料、M…遮蔽材、IB…イオンビーム、1…壁部材、2…試料加工室、3…真空ポンプ、4…昇降テーブル、9…ギヤボックス、11…モータユニット、12…X−Yテーブル、13…試料台、16…イオンビーム照射装置、17…ガスイオンビーム発生装置、18…放電ガス導入部、19…放電電極、20…制御部、23…遮蔽材支持装置、23a…遮蔽材支持ステージ(遮蔽材支持手段)、31…蓋部材、32…移動ステージ、41…SEMカラム、42…電子銃、43…集束レンズ、44…対物レンズ、45…偏向器、46…電子ビーム照射手段、47…SEMコントローラ、48…2次電子検出器、49…増幅器、50…試料観察室、51…システム制御部、100…基台、100a…切り欠き部(イオンビーム通過部)、101…供給ホイール、102…支持ホイール、103…張力印加ホイール、105…弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が所定の真空度に真空引きされる試料加工室と、
前記試料加工室に配置され、試料を保持するための試料台と、
前記試料加工室に配置され、前記試料台に保持された試料の加工面にイオンビームを照射するためのイオンビーム照射手段と、
前記イオンビーム照射手段と前記試料の間に配置され、前記試料の加工面の所定領域をイオンビームから遮るためのテープ状の遮蔽材と、
前記遮蔽材を支持するための遮蔽材支持手段
を備えたことを特徴とする試料加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−115706(P2007−115706A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336531(P2006−336531)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【分割の表示】特願2001−372466(P2001−372466)の分割
【原出願日】平成13年12月6日(2001.12.6)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【出願人】(000232324)日本電子エンジニアリング株式会社 (11)
【Fターム(参考)】