誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ
【解決手段】本発明のSBS抑制光ファイバは、石英ガラスからなるコアにGe、P、Fなどの添加剤を単独で、若しくは組み合わせて添加するとともにコアの屈折率分布を階段状にして、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段における添加剤の濃度差を所定の濃度差以上にしたり、隣り合う階段における屈折率差を所定の屈折率差以上にすることによりSBS閾値パワーを上昇させるようにしている。
【効果】本発明のSBS抑制光ファイバの構成によれば、SBS閾値パワーを上昇させることが可能なため、SBSを抑制することができるとともに零分散波長やモードフィールド径を通常のSMFと同等のパラメータになるようにしたので、伝送路に適用しても接続損失の増大などの不都合が生じることがない。
【効果】本発明のSBS抑制光ファイバの構成によれば、SBS閾値パワーを上昇させることが可能なため、SBSを抑制することができるとともに零分散波長やモードフィールド径を通常のSMFと同等のパラメータになるようにしたので、伝送路に適用しても接続損失の増大などの不都合が生じることがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送路に高パワーを入力する必要のある、例えばFTTH用光CATVシステム等に使用される光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)システムの導入が要求されてきている。FTTHシステムには光CATVシステムなどが用いられるが、この光CATVシステムではシングルモード光ファイバのコア中に高パワーの光信号を入力することが必要となる。これは、FTTHシステムで使用される光CATVシステムが、まずノイズを低減するために、受光器での光入力パワーを例えば約−10dBmの受光感度を有するようにできるだけ高くする必要があることや光信号をなるべく多く分配するために16分岐や32分岐というようなスプリッタが用いられるが、そのスプリッタの損失を補償するために、光送信器から出力される光信号パワーを例えば32分岐のスプリッタでは16.5〜17dB程度に大きくしなければならない等の理由があるからである。
【0003】
さらに、ユーザーまでの伝送路として使用される光ファイバの長さを短くするため、あるいはユーザーになるべく近いところで光分配をするために、光送信器からスプリッタまでの伝送路ファイバの長さを長くすることが望まれている。また、この伝送路ファイバの長さはFTTHシステムの設計では最長10〜20kmと想定されているが、光ファイバが20km程度の長さで32分岐のスプリッタにより分配するような光CATVシステムを考えた場合、光ファイバの伝送損失が波長1550nmで0.25dB/km程度であるから、光送信器と受光器との間の伝送損失量は22dBとなる。即ち、光送信器での光出力は約12dB必要となる。また、伝送路用ファイバの長さを20km以上としたり、光分配数を32分岐以上に増やしたりすることがあれば、その光出力はより高くする必要が出てくる。
【0004】
このように将来的には現在以上に光出力を大きくする必要性が出てくるものと予想されるが、光ファイバ中に高いパワーの光信号を入力すると誘導ブリユアン散乱(以下SBS;Stimulated Brillouin Scattering)と呼ばれる現象が生じることが知られている。
【0005】
SBSは、超音波によって光の振動数(周波数)がわずかにずれて散乱される現象であり、光のパワーが前方の出射方向に散乱するよりも後方に散乱する方が大きくなる。また、光ファイバのコア中の光パワーが大きくなるとブリユアン散乱の誘導放出が始まり、急激に後方散乱光パワーが増大してしまう。この結果、この後方散乱光が光送信器に悪影響を与え、光源のノイズが増大したり、前方へ伝搬している光信号パワーが飽和してしまい、光信号対ノイズ比(S/N比)が悪くなったりする。このように、SBS現象が伝送路用ファイバに入射できる光パワーの上限を決定することになってしまう。
【0006】
ところで、一般的には低損失な石英ガラス系光ファイバを得るために添加剤としてはGe、P、F等が用いられる。このうちGeとPは添加すると石英ガラスの屈折率よりも高い屈折率が得られるためにコアに添加されることが多い。また、Fは添加すると石英ガラスの屈折率よりも低い屈折率が得られるためにクラッドに添加されることが多い。しかし、Ge、P、Fを共添加することによってコア中にFが添加されたり、クラッド中にGeやFが添加される場合もある。
【0007】
ここで、石英ガラス中の添加剤とSBSの中心周波数シフト量には相関関係があることが知られている。まず、GeO2濃度が10wt%以下の比較的低い濃度のところではGeO2濃度とSBS中心周波数シフト量は線形に相関しており、GeO2の重量%あたりのSBS中心周波数シフト量は89MHz/wt%(=154MHz/mol%)と報告されている(例えば、非特許文献1参照)。この時のSBSの半値全幅(SBSスペクトルの強度のピーク値の2分の1のところのスペクトル幅)は30MHz〜100MHz程度である。
【0008】
また、GeO2濃度とP2O5濃度とSBS中心周波数シフト量との関係はそれぞれ125MHz/mol%、162MHz/mol%という報告もある(例えば、非特許文献1参照)。この時のSBSの半値全幅は150MHz〜270MHzであるとされている。以上のような報告ではコアにGeやPが添加され、クラッドは純粋石英ガラスからなる光ファイバやコアが純粋石英ガラス、クラッドにFが添加された光ファイバを用いている。
【0009】
さらに、コアにGeとFを共添加した光ファイバのSBS中心周波数シフト量を調べた報告もある。この報告によれば、Fの添加量が比屈折率差0.2%で約350MHzだけ周波数シフトしている。これはmol%あたりの周波数シフト量に換算すると600MHz/mol%となる(例えば、非特許文献2参照)。
【0010】
上記のような状況に対して、SBSを抑制した光ファイバあるいはSBSの抑制方法がいくつか提案されている。まず、光ファイバのコア径やコアの屈折率、あるいはコアに残留する歪みを光ファイバの長手方向に変化させた光ファイバが提案されている(例えば、特許文献1参照)。コア径を変化させる方法としては光ファイバ母材の形成条件を適宜変化させたり、コアの屈折率を変化させる方法としてはガラスへの添加剤の種類や添加量を変化させるようにしている。またコア中の残留歪みを変化させる方法としては線引き張力を長手方向に変化させて残留歪みを光ファイバの長手方向に周期的に変化させたりしている。コア中の残留歪みが変化することによってSBSの中心周波数が変化するのでSBSのスペクトルが広がり誘導放出の閾値が上昇するためである。
【0011】
また、コアとクラッド中の添加剤の濃度を光ファイバの長手方向で変化させる方法も提案されている。即ち、コアにはGeとFを添加し、クラッドにはFを添加した光ファイバにおいて、コア及びクラッドのFの濃度を長手方向で変化させたものである(例えば、非特許文献3参照)。
【0012】
さらに、光ファイバの長手方向にコア径を変化させてSBSを抑制する方法も提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献4参照)。非特許文献4ではコア径を変化させることによりブリユアン周波数をシフトさせ、SBSのスペクトル幅を広げて閾値を上げるようにしている。
【0013】
その他、光ファイバのコアの径方向にPまたはFを添加したガラスを層状に交互に配置する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、コア内に不均一な熱膨張分布及び粘度分布を発生させることによってSBSのスペクトル幅を広げてSBSの閾値パワーを大きくしている。
【0014】
【非特許文献1】R.W.Tkach et al.,Electron.Lett.,vol.22,No.19,p.1011,1986
【非特許文献2】N.Shibata et al.,Opt.Lett.,vol.12,No.4,p.269,1987
【非特許文献3】1994年電子情報通信学会秋季大会予稿集 C−137
【非特許文献4】1995年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会予稿集 B−661
【特許文献1】特開平4−367539号公報
【特許文献2】特表2001−510903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記のような従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
【0016】
即ち、特許文献1や非特許文献4に開示されている光ファイバの長手方向にコア径を変化させる方法では、光ファイバの構造が長手方向で変化するのでSBSの抑制には効果があってもその他のパラメータも変化するために、例えば通常の伝送用シングルモード光ファイバ(以下、SMF)と接続する場合などに特性上好ましくないという問題がある。
【0017】
また、特許文献1におけるコアの屈折率を変化させる方法では、添加剤の種類や添加量を光ファイバの長手方向で変化させるものであるが製造工程が煩雑になり安定して長尺の光ファイバを製造することが困難である。さらに、コアの残留歪みを光ファイバの長手方向で変化させる方法は、コアが純粋石英ガラス、クラッドが石英ガラスにFを添加した光ファイバを用いているが、このような光ファイバではFを添加したクラッドの粘度が純粋石英ガラスからなるコアの粘度に比べて低いために線引き張力の影響がコアに集中しやすいという利点を有している。しかし、広く商用で用いられている光ファイバはコアにGeが添加されているものであるため純粋石英ガラスに比べて線引き張力を調整することが困難である。従って、この方法は適用が限られてしまうという問題があった。
【0018】
また、非特許文献3に開示されている方法では、コア及びクラッドに添加されるFの濃度を変化させ、コアのGeの濃度は均一にして全体の屈折率分布は変化しないようにしているが、やはり製造工程が複雑になるので長手方向に安定した特性の光ファイバを得ることが困難で、大量生産には向いていないという問題があった。
【0019】
さらに、特許文献2に開示されている方法では、コアの径方向において交互に異なったガラス組成の層を形成する必要があるので製造工程が煩雑でコストが高くなるという問題があった。
【0020】
本発明は上記のような課題を解決したもので、SBSを抑制するとともに光ファイバの長手方向で安定した特性を有し、しかも通常の製造方法を用いることができるSBS抑制光ファイバを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は以上の点を解決するため次のような構成からなるものである。
【0022】
即ち、本発明のSBS抑制光ファイバはまず第1の態様として、石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアにはGeあるいはPが単独で、若しくはGeとPが同時に添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差あるいはP2O5の濃度差若しくはGeO2とP2O5の合計の濃度差が0.3mol%以上であることを特徴とする。
【0023】
また、第2の態様として、前記第1の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差あるいはP2O5の濃度差若しくはGeO2とP2O5の合計の濃度差が0.6mol%以上であることを特徴とする。
【0024】
さらに、第3の態様として、前記第1または第2の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする。
【0025】
また、第4の態様として、前記第3の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする。
【0026】
さらに、第5の態様として、前記第1から第4までのいずれかの態様において、前記クラッドは純石英ガラスであることを特徴とする。
【0027】
また、第6の態様として、前記第1から第4までのいずれかの態様において、前記クラッドは石英ガラスにFが添加されていることを特徴とする。
【0028】
さらに、第7の態様として、石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コア及びクラッドにはFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差が0.08mol%以上であることを特徴とする。
【0029】
また、第8の態様として、前記第7の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差が0.16mol%以上であることを特徴とする。
【0030】
さらに、第9の態様として、前記第7または第8の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする。
【0031】
また、第10の態様として、前記第9の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする。
【0032】
さらに、第11の態様として、石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアにはGeあるいはPが単独で、若しくはGeとPが同時に添加され、かつさらにFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする。
【0033】
また、第12の態様として、前記第11の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする。
【0034】
さらに、第13の態様として、前記第11または第12の態様において、前記クラッドは純石英ガラスであることを特徴とする。
【0035】
また、第14の態様として、前記第11または第12の態様において、前記クラッドは石英ガラスにFが添加されていることを特徴とする。
【0036】
さらに、第15の態様として、石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアは純石英ガラス及びFが添加されている石英ガラスからなり、前記クラッドにFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする。
【0037】
また、第16の態様として、前記第15の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする。
【0038】
さらに、第17の態様として、前記第1から第16までのいずれかの態様において、前記コアの最大屈折率と前記クラッドの屈折率との差が0.008以下であることを特徴とする。
【0039】
また、第18の態様として、前記第1から第17までのいずれかの態様において、前記光ファイバの誘導ブリユアン散乱のスペクトル幅が200MHz以上であることを特徴とする。
【0040】
さらに、第19の態様として、前記第18の態様において、前記光ファイバの誘導ブリユアン散乱のスペクトル幅が300MHz以上であることを特徴とする。
【0041】
また、第20の態様として、前記第1から第19までのいずれかの態様において、前記光ファイバの零分散波長が1300nm〜1324nmの範囲にあることを特徴とする。
【0042】
さらに、第21の態様として、前記第1から第20までのいずれかの態様において、前記光ファイバの1310nmの波長におけるモードフィールド径が8.6〜9.5μmの範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明のSBS抑制光ファイバによれば、コアやクラッドに添加するGeやPあるいはF等の添加剤の添加量を調整するとともにコアの屈折率分布を階段状にしたのでSBSのスペクトル幅を広げ、SBSを抑制できるとともに、長手方向において安定した特性を有し、製造も従来通りの方法で行うことができ、さらに通常のSMFと安定して接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について具体例を用いて説明する。
【0045】
まず、誘導放出の閾値を上昇させるためには、SBSのスペクトル幅を広くする必要がある。SBSの閾値は、光ファイバの損失、長さ、モードフィールド径等に依存する。一般的に閾値は簡易的に以下のように表すことができる。
【0046】
Pth≒k(Aeff/Leff)
ここで、Pth・・・・SBS閾値
Aeff・・・有効断面積
Leff・・・相互作用距離
k・・・・・・係数
また、Aeff及びLeffは次のような式で表すことができる。
【0047】
Aeff≒πW2
Leff={1−exp(−αL)/α}
ここで、W・・・モードフィールド径
L・・・光ファイバ長
α・・・損失係数
以上のように、AeffとLeffは、モードフィールド径、光ファイバの損失と長さに関わるものである。従って、各光ファイバのSBSの閾値を比較する場合には、係数kを比較すれば光ファイバのモードフィールド径、損失、長さ等によらずによいことがわかる。なお、通常のSMFのk係数は7.6×1014mW/m程度であるので、この値よりもk係数が大きければSBS閾値パワーが大きいことになる。
【0048】
また、このk係数を大きくするためにはSBSのスペクトル幅を広くすることが必要となる。具体的には、効果的にSBSを抑制するためのSBSのスペクトル幅が200MHz以上、好ましくは300MHz以上必要であることがわかった。通常のSMFの場合にはSBSのスペクトル幅は130〜150MHzであるが、SBSのスペクトル幅が200MHz未満では通常のSMFのSBSの抑制効果とあまり変わらず、SBSの抑制効果が十分とはいえないからである。なお、本発明におけるSBSのスペクトル幅はSBSスペクトルの強度のピーク値の10分の1のところのスペクトル幅をいう。
【0049】
従来の技術より、SBS中心周波数シフト量はおおよそGeO2の場合150MHz/mol%、P2O5の場合160MHz/mol%、Fの場合600MHz/mol%であることが知られている。SBSスペクトル幅を広くするために本発明のように屈折率分布を階段状にした場合、各階段部分におけるSBS中心周波数のシフト量が他の階段部分におけるSBS中心周波数に重ならないようにする必要がある。
【0050】
各階段部分におけるSBS中心周波数のシフト量が他の階段部分におけるSBS中心周波数に重ならないようにするためには、隣り合う階段におけるGeやP、あるいはFの添加量を上記シフト量を踏まえて最適に調整するとよい。出願人らが検討した結果、添加剤がGeの場合やPの場合には階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差、あるいはP2O5の濃度差が0.3mol%以上、好ましくは0.6mol%以上あることがよいことがわかった。また、GeとPを共添加した場合にもGeO2とP2O5の合計の濃度差が0.3mol%以上、好ましくは0.6mol%以上あることがよいことがわかった。
【0051】
GeO2の濃度差やP2O5の濃度差、あるいはGeO2とP2O5の合計の濃度差を0.3mol%以上としたのは、0.3mol%未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは0.6mol%以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。またGeO2の濃度差やP2O5の濃度差、あるいはGeO2とP2O5の合計の濃度差の上限としてはこのSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0052】
なお、上記実施の形態において、コアにGeやP、あるいはGeとPを共添加して階段状の屈折率分布とした場合に、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上、好ましくは8×10−4以上としてもよい。このように添加剤の濃度ではなく、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差で本発明を構成しても添加剤の濃度差で構成した場合と同等の効果が得られる。なお、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上としたのは、3×10−4未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは8×10−4以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。また隣り合う階段の屈折率差の上限としては、このSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0053】
しかしながらコア径が小さくなるために屈折率を上昇あるいは下降させる添加剤のガラス合成中や紡糸による拡散等の影響により、その階段段数によって隣り合う階段の屈折率差の上限が制限される。例えば、階段数1段の場合は段数が少ないため隣り合う階段の屈折率差の上限はコアとクラッドの最大屈折率差程度まで可能であり自由度は大きい。一方、階段数2段以上となる場合は階段間の長さが短くなることから隣り合う階段の屈折率差の上限は0.0015程度に屈折率分布を設計することが好ましい。また段数に関わらず階段の形状は、上記で述べた拡散等の影響により矩形になるわけではなく少し丸みの帯びたものとなることが多い。
【0054】
ここで、上記実施の形態においてクラッドは純石英ガラスとしてもよく、純石英ガラスにFを添加してもよい。即ち必要とする光ファイバの特性等から適宜選択すればよい。
【0055】
また、本発明のSBS抑制光ファイバの他の実施の形態として、コア及びクラッドにFが添加されているとともにコアが階段状の屈折率分布を有し、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差が0.08mol%以上、好ましくは0.16mol%以上とした構成とすることもできる。
【0056】
Fの濃度差を0.08mol%以上としたのは、0.08mol%未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは0.16mol%以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。またFの濃度差の上限としてはこのSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0057】
なお、上記実施の形態において、コア及びクラッドにFを添加して階段状の屈折率分布とした場合に、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上、好ましくは8×10−4以上としてもよい。このようにGeやPの場合と同様に添加剤をFとした場合でも添加剤の濃度ではなく、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差で本発明を構成しても添加剤の濃度差で構成した場合と同等の効果が得られる。そして、やはり階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上としたのは、3×10−4未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは8×10−4以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。また隣り合う階段の屈折率差の上限としてはこのSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0058】
さらに他の実施の形態として、本発明のSBS抑制光ファイバはコアにGeとF、PとF、あるいはGe、PとFを共添加するとともにコアの屈折率分布を階段状にし、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上、好ましくは8×10−4以上となるように構成することもできる。やはり階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上としたのは、3×10−4未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは8×10−4以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。また隣り合う階段の屈折率差の上限としては、このSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0059】
そしてやはり、コア径が小さくなるために屈折率を上昇あるいは下降させる添加剤のガラス合成中や紡糸による拡散等の影響により、その階段段数によって隣り合う階段の屈折率差の上限が制限されるので、例えば、階段数1段の場合は段数が少ないため隣り合う階段の屈折率差の上限はコアとクラッドの最大屈折率差程度まで可能であり自由度は大きいが、階段数2段以上となる場合は階段間の長さが短くなることから隣り合う階段の屈折率差の上限は0.0015程度になるように屈折率分布を設計することが好ましいことは前記と同様である。また段数に関わらず階段の形状は、上記で述べた拡散等の影響により矩形になるわけではなく少し丸みの帯びたものとなることが多いことも前記と同様である。なお、本実施の形態においてもクラッドは純石英ガラスとしてもよく、純石英ガラスにFを添加してもよい。即ち必要とする光ファイバの特性等から適宜選択すればよい。
【0060】
またさらに他の実施の形態として、本発明のSBS抑制光ファイバはコアを純石英ガラスとし、クラッドにFを添加するとともにコアの純石英ガラスに部分的にFを添加してコアが階段状の屈折率分布を有するようにし、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上、好ましくは8×10−4以上となるように構成することもできる。階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上としたのは、やはり3×10−4未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは8×10−4以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。また隣り合う階段の屈折率差の上限としては、このSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0061】
そしてやはり、コア径が小さくなるために屈折率を上昇あるいは下降させる添加物のガラス合成中や紡糸による拡散等の影響により、その階段段数によって隣り合う階段の屈折率差の上限が制限されるので、例えば、階段数1段の場合は段数が少ないため隣り合う階段の屈折率差の上限はコアとクラッドの最大屈折率差程度まで可能であり自由度は大きいが、階段数2段以上となる場合は階段間の長さが短くなることから隣り合う階段の屈折率差の上限は0.0015程度になるように屈折率分布を設計することが好ましいことは前記と同様である。また段数に関わらず階段の形状は、上記で述べた拡散等の影響により矩形になるわけではなく少し丸みの帯びたものとなることが多いことも前記と同様である。
【0062】
なお、前述してきた実施の形態において、本発明のSBS抑制光ファイバのコアの最大屈折率とクラッドの屈折率との差が0.008以下であることが望ましい。また、本発明のSBS抑制光ファイバの零分散波長が1300nm〜1324nmの範囲にあることが望ましい。さらに、本発明のSBS抑制光ファイバの1310nmの波長におけるモードフィールド径が8.6〜9.5μmの範囲にあることが望ましい。
【0063】
これは、本発明のSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続した場合でも接続損失が発生せず、伝送特性において光ファイバの伝送路に悪影響を及ぼさないようにするためである。即ち、コアの屈折率分布を階段状にする構成は従来から分散シフトファイバ(DSF;Dispersion Sifted Fiber)で知られているが、このDSFは零分散波長を1300nm付近から1550nm付近にシフトさせたものであり、そのためにコアの最大屈折率とクラッドの屈折率差を0.01以上としている。またこのような構成とした結果、DSFのモードフィールド径は1310nmの波長で7〜8μmと通常のSMFに比べて小さくなっている。従って、DSFと通常のSMFを接続した場合には、屈折率差やモードフィールド径の不整合から接続損失が増大し、伝送路全体に良い影響を与えないことになる。
【0064】
本発明のSBS抑制光ファイバは従来から通常の伝送路に用いているSMFと同等の零分散波長、即ち1300nm付近の零分散波長を有し、コアの最大屈折率とクラッドの屈折率差も通常のSMFと接続しても接続損失が発生しないような0.008以下とし、しかも1310nmの波長におけるモードフィールド径も通常のSMFと同等の値にしたので伝送路に適用しても特性上の問題が生じることがないようにしたものである。
【0065】
なお、本発明のSBS抑制光ファイバに従来公知の例えば長手方向にコア径を変動させたり、残留応力を変動させたりする技術を併用しても差し支えない。SBSを抑制するのに効果があるならば製造方法等において許容される限り特に限定されるものではない。
【実施例1】
【0066】
図1(a)に示すように、石英ガラスからなるコアにGeを添加して、このコアの屈折率分布を1段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は5.2mol%、Nlの部分のGeO2の濃度は3mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差Δcは2.2mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.007、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率Δn2の差は0.004であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.003であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は3μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は8μmである。
【0067】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。図2の測定系は、1550nmの波長の分布帰還型レーザ(DFB−LD)1からの光を光増幅器(EDFA;Erbium Doped Fiber Amplifier)2により増幅して光カプラ3に導入する。この光は光カプラ3により一方は測定するSBS抑制光ファイバ4から伝送された光のパワーを測定する出射光パワーメーター5に分岐され、他方は入射光パワーをモニターするための入射光パワーメーター6に分岐される。そして、SBS抑制光ファイバ4から反射してきた光を再び光カプラ3を通して反射光パワーメーター7により測定する。この反射光パワーメーター7により反射光を測定することによってSBSがどの程度抑制さているかわかるようになっている。
【0068】
図3は、本実施例1のSBS抑制光ファイバを図2の測定系により測定した結果を表したものである。横軸が入射光パワーを表し、縦軸が出射光パワー及び反射光パワーを表している。図3より、入射光パワーが10dBmとなった時に反射光パワーが急激に大きくなっていることがわかる。この時のk係数は1.5×1015mW/mであった。この10dBmの入射光パワーがSBSが発生する閾値(Pth)となる。通常のSMFではSBS閾値パワーは7dBm程度であるため、本実施例1の光ファイバでは3dBm程度の改善が見られ、高い入射光パワーに対してもSBS抑制効果が実現できた。また、通常のSMFのk係数は7.6×1014mW/mであった。なお、本実施例1における光ファイバの1550nmにおける伝送損失は0.2dB/km、モードフィールド径は10.5μmであった。また、SBSのスペクトル幅は330MHzであった。このSBSのスペクトル幅の測定はBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)を用いて行い、以下の各実施例の測定においても同様である。
【0069】
なお、前述したように屈折率分布の形状は実際には添加剤の拡散等の影響により完全な矩形ではなく、図1(b)に示すように角の部分が少し丸みを帯びた形状になることが多い。しかし、本実施例及び以下に説明する各実施例においては説明上屈折率分布を矩形の形状として表すこととする。
【実施例2】
【0070】
図4に示すように、石英ガラスからなるコアにGeを添加して、このコアの屈折率分布を1段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は6mol%、Nlの部分のGeO2の濃度は3mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差Δcは3mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.008、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.004であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.004であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は5μmである。
【0071】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例2の光ファイバのSBS閾値パワーは9.5dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて2.5dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.5×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.2dB/km、モードフィールド径は10μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は300MHzであった。
【実施例3】
【0072】
図5に示すように、石英ガラスからなるコアにGeを添加して、このコアの屈折率分布を2段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。2段の階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の中間部分をNm、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は6mol%、Nmの部分のGeO2の濃度は5.3mol%、Nlの部分のGeO2の濃度は4mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差はそれぞれNhの部分とNmの部分との差Δc1が0.7mol%、Nmの部分とNlの部分の差Δc2が1.3mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.008、コアのNmの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.007、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn3は0.0055であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差はそれぞれNhの部分とNmの部分の差Δn4が0.001、Nmの部分とNlの部分の差Δn5が0.0015であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8μm、屈折率の中間部のコアの部分(Nmの部分)のコア径は5μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は3μmである。
【0073】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例3の光ファイバのSBS閾値パワーは10.5dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて3.5dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.6×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.23dB/km、モードフィールド径は10.4μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は350MHzであった。
【実施例4】
【0074】
図6に示すように、石英ガラスからなるコアにPを添加して、このコアの屈折率分布を1段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のP2O5の濃度は6mol%、Nlの部分のP2O5の濃度は4.5mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるP2O5の濃度差Δcは1.5mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.008、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.006であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.002であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は4μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は8μmである。
【0075】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例4の光ファイバのSBS閾値パワーは9dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて2dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.4×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.3dB/km、モードフィールド径は10.5μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は250MHzであった。
【実施例5】
【0076】
図7に示すように、純石英ガラスからなるコアの外周部にFを添加して、このコアの屈折率分布を1段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCの石英ガラスにもFを添加した。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のFの濃度は0mol%(純石英ガラス)、Nlの部分のFの濃度は0.3mol%である。また、クラッドのFの濃度は1.6mol%である。従って、階段状のコアの屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差Δcは0.3mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.008、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.0065であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.0015であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は4μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は8μmである。
【0077】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例5の光ファイバのSBS閾値パワーは10.5dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて3.5dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.5×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.27dB/km、モードフィールド径は10.3μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は340MHzであった。
【実施例6】
【0078】
図8に示すように、石英ガラスからなるコアにGeを添加して、このコアの屈折率分布を2段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。2段の階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の中間部分をNm、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は5.7mol%、Nmの部分のGeO2の濃度は5.3mol%、Nlの部分のGeO2の濃度は4.5mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差はそれぞれNhの部分とNlの部分との差Δc1が1.2mol%、Nmの部分とNlの部分との差Δc2が0.8mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.0075、コアのNmの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.007、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn3は0.006であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差はそれぞれNhの部分とNlの部分の差Δn4が0.0015、Nmの部分とNlの部分の差Δn5が0.001であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8μm、屈折率の中間部のコアの部分(Nmの部分)のコア径は4μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は6μmである。
【0079】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例6の光ファイバのSBS閾値パワーは10.5dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて3.5dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.8×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.19dB/km、モードフィールド径は10.4μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は350MHzであった。
【実施例7】
【0080】
図9に示すように、石英ガラスからなるコアにGeとPをともに添加して、このコアの屈折率分布を2段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。2段の階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の中間部分をNm、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は4mol%、P2O5の濃度は0.5mol%であり、Nmの部分のGeO2の濃度は3mol%、P2O5の濃度は0.8mol%であり、またNlの部分のGeO2の濃度は2.8mol%、P2O5の濃度は0.6mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2とP2O5の合計の濃度差はそれぞれNhの部分とNlの部分との差Δc1が1.1mol%、Nmの部分とNlの部分の差Δc2が0.4mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.006、コアのNmの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.005、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn3は0.0045であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差はそれぞれNhの部分とNlの部分の差Δn4が0.0015、Nmの部分とNlの部分の差Δn5が0.0005であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8.5μm、屈折率の中間部のコアの部分(Nmの部分)のコア径は4μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は6μmである。
【0081】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例7の光ファイバのSBS閾値パワーは9.7dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて2.7dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.3×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.21dB/km、モードフィールド径は10.7μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は230MHzであった。
【実施例8】
【0082】
図10に示すように、石英ガラスからなるコアにGeとPとFをともに添加して、このコアの屈折率分布を1段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は4.5mol%、P2O5の濃度は1.5mol%、Fの濃度は0.2mol%であり、Nlの部分のGeO2の濃度は4.5mol%、P2O5の濃度は0.8mol%、Fの濃度は0.4mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2とP2O5とFの合計の濃度差Δcは0.5mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.007、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.004であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.003であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は4μmである。
【0083】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例8の光ファイバのSBS閾値パワーは10dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて3dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.4×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.25dB/km、モードフィールド径は10.5μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は300MHzであった。
【0084】
ここで、上記各実施例のSBS抑制光ファイバにおいて、零分散波長はすべて1300nm〜1324nmの範囲にあった。また、波長1310nmにおけるモードフィールド径はすべて8.6〜9.5μmの間に入っていた。
【0085】
本発明のSBS抑制光ファイバを作製するための母材を製造する方法としては通常用いられているMCVD法、プラズマCVD法、VAD法、OVD法など特に限定されるものではなく、目的に応じて最も適した方法を用いればよい。
【比較例】
【0086】
比較のために図11に示すように、石英ガラスからなるコアにGeを添加して、このコアの屈折率分布を階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は5.3mol%、Nlの部分のGeO2の濃度は5.1mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差Δcは0.2mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.007、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.0068であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.0002であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は3μmである。
【0087】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本比較例の光ファイバは1550nmの波長における伝送損失は0.2dB/km、モードフィールド径は10μmであり、通常のSMFと同等だったがSBS閾値パワーは7.5dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて0.5dBmだけ閾値パワーが上昇してはいたが、SBSを十分に抑制することができなかった。この時のk係数は9.4×1014mW/m、SBSのスペクトル幅は180MHzであった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例1の屈折率分布を説明する図である。
【図2】SBS閾値パワーを測定するための測定系を説明する図である。
【図3】SBS閾値パワーの測定結果を表す図である。
【図4】本発明の実施例2の屈折率分布を説明する図である。
【図5】本発明の実施例3の屈折率分布を説明する図である。
【図6】本発明の実施例4の屈折率分布を説明する図である。
【図7】本発明の実施例5の屈折率分布を説明する図である。
【図8】本発明の実施例6の屈折率分布を説明する図である。
【図9】本発明の実施例7の屈折率分布を説明する図である。
【図10】本発明の実施例8の屈折率分布を説明する図である。
【図11】本発明に対する比較例の屈折率分布を説明する図である。
【符号の説明】
【0089】
1・・・分布帰還型レーザ
2・・・光増幅器
3・・・光カプラ
4・・・SBS抑制光ファイバ
5・・・出射光パワーメーター
6・・・入射光パワーメーター
7・・・反射光パワーメーター
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送路に高パワーを入力する必要のある、例えばFTTH用光CATVシステム等に使用される光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)システムの導入が要求されてきている。FTTHシステムには光CATVシステムなどが用いられるが、この光CATVシステムではシングルモード光ファイバのコア中に高パワーの光信号を入力することが必要となる。これは、FTTHシステムで使用される光CATVシステムが、まずノイズを低減するために、受光器での光入力パワーを例えば約−10dBmの受光感度を有するようにできるだけ高くする必要があることや光信号をなるべく多く分配するために16分岐や32分岐というようなスプリッタが用いられるが、そのスプリッタの損失を補償するために、光送信器から出力される光信号パワーを例えば32分岐のスプリッタでは16.5〜17dB程度に大きくしなければならない等の理由があるからである。
【0003】
さらに、ユーザーまでの伝送路として使用される光ファイバの長さを短くするため、あるいはユーザーになるべく近いところで光分配をするために、光送信器からスプリッタまでの伝送路ファイバの長さを長くすることが望まれている。また、この伝送路ファイバの長さはFTTHシステムの設計では最長10〜20kmと想定されているが、光ファイバが20km程度の長さで32分岐のスプリッタにより分配するような光CATVシステムを考えた場合、光ファイバの伝送損失が波長1550nmで0.25dB/km程度であるから、光送信器と受光器との間の伝送損失量は22dBとなる。即ち、光送信器での光出力は約12dB必要となる。また、伝送路用ファイバの長さを20km以上としたり、光分配数を32分岐以上に増やしたりすることがあれば、その光出力はより高くする必要が出てくる。
【0004】
このように将来的には現在以上に光出力を大きくする必要性が出てくるものと予想されるが、光ファイバ中に高いパワーの光信号を入力すると誘導ブリユアン散乱(以下SBS;Stimulated Brillouin Scattering)と呼ばれる現象が生じることが知られている。
【0005】
SBSは、超音波によって光の振動数(周波数)がわずかにずれて散乱される現象であり、光のパワーが前方の出射方向に散乱するよりも後方に散乱する方が大きくなる。また、光ファイバのコア中の光パワーが大きくなるとブリユアン散乱の誘導放出が始まり、急激に後方散乱光パワーが増大してしまう。この結果、この後方散乱光が光送信器に悪影響を与え、光源のノイズが増大したり、前方へ伝搬している光信号パワーが飽和してしまい、光信号対ノイズ比(S/N比)が悪くなったりする。このように、SBS現象が伝送路用ファイバに入射できる光パワーの上限を決定することになってしまう。
【0006】
ところで、一般的には低損失な石英ガラス系光ファイバを得るために添加剤としてはGe、P、F等が用いられる。このうちGeとPは添加すると石英ガラスの屈折率よりも高い屈折率が得られるためにコアに添加されることが多い。また、Fは添加すると石英ガラスの屈折率よりも低い屈折率が得られるためにクラッドに添加されることが多い。しかし、Ge、P、Fを共添加することによってコア中にFが添加されたり、クラッド中にGeやFが添加される場合もある。
【0007】
ここで、石英ガラス中の添加剤とSBSの中心周波数シフト量には相関関係があることが知られている。まず、GeO2濃度が10wt%以下の比較的低い濃度のところではGeO2濃度とSBS中心周波数シフト量は線形に相関しており、GeO2の重量%あたりのSBS中心周波数シフト量は89MHz/wt%(=154MHz/mol%)と報告されている(例えば、非特許文献1参照)。この時のSBSの半値全幅(SBSスペクトルの強度のピーク値の2分の1のところのスペクトル幅)は30MHz〜100MHz程度である。
【0008】
また、GeO2濃度とP2O5濃度とSBS中心周波数シフト量との関係はそれぞれ125MHz/mol%、162MHz/mol%という報告もある(例えば、非特許文献1参照)。この時のSBSの半値全幅は150MHz〜270MHzであるとされている。以上のような報告ではコアにGeやPが添加され、クラッドは純粋石英ガラスからなる光ファイバやコアが純粋石英ガラス、クラッドにFが添加された光ファイバを用いている。
【0009】
さらに、コアにGeとFを共添加した光ファイバのSBS中心周波数シフト量を調べた報告もある。この報告によれば、Fの添加量が比屈折率差0.2%で約350MHzだけ周波数シフトしている。これはmol%あたりの周波数シフト量に換算すると600MHz/mol%となる(例えば、非特許文献2参照)。
【0010】
上記のような状況に対して、SBSを抑制した光ファイバあるいはSBSの抑制方法がいくつか提案されている。まず、光ファイバのコア径やコアの屈折率、あるいはコアに残留する歪みを光ファイバの長手方向に変化させた光ファイバが提案されている(例えば、特許文献1参照)。コア径を変化させる方法としては光ファイバ母材の形成条件を適宜変化させたり、コアの屈折率を変化させる方法としてはガラスへの添加剤の種類や添加量を変化させるようにしている。またコア中の残留歪みを変化させる方法としては線引き張力を長手方向に変化させて残留歪みを光ファイバの長手方向に周期的に変化させたりしている。コア中の残留歪みが変化することによってSBSの中心周波数が変化するのでSBSのスペクトルが広がり誘導放出の閾値が上昇するためである。
【0011】
また、コアとクラッド中の添加剤の濃度を光ファイバの長手方向で変化させる方法も提案されている。即ち、コアにはGeとFを添加し、クラッドにはFを添加した光ファイバにおいて、コア及びクラッドのFの濃度を長手方向で変化させたものである(例えば、非特許文献3参照)。
【0012】
さらに、光ファイバの長手方向にコア径を変化させてSBSを抑制する方法も提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献4参照)。非特許文献4ではコア径を変化させることによりブリユアン周波数をシフトさせ、SBSのスペクトル幅を広げて閾値を上げるようにしている。
【0013】
その他、光ファイバのコアの径方向にPまたはFを添加したガラスを層状に交互に配置する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、コア内に不均一な熱膨張分布及び粘度分布を発生させることによってSBSのスペクトル幅を広げてSBSの閾値パワーを大きくしている。
【0014】
【非特許文献1】R.W.Tkach et al.,Electron.Lett.,vol.22,No.19,p.1011,1986
【非特許文献2】N.Shibata et al.,Opt.Lett.,vol.12,No.4,p.269,1987
【非特許文献3】1994年電子情報通信学会秋季大会予稿集 C−137
【非特許文献4】1995年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会予稿集 B−661
【特許文献1】特開平4−367539号公報
【特許文献2】特表2001−510903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記のような従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
【0016】
即ち、特許文献1や非特許文献4に開示されている光ファイバの長手方向にコア径を変化させる方法では、光ファイバの構造が長手方向で変化するのでSBSの抑制には効果があってもその他のパラメータも変化するために、例えば通常の伝送用シングルモード光ファイバ(以下、SMF)と接続する場合などに特性上好ましくないという問題がある。
【0017】
また、特許文献1におけるコアの屈折率を変化させる方法では、添加剤の種類や添加量を光ファイバの長手方向で変化させるものであるが製造工程が煩雑になり安定して長尺の光ファイバを製造することが困難である。さらに、コアの残留歪みを光ファイバの長手方向で変化させる方法は、コアが純粋石英ガラス、クラッドが石英ガラスにFを添加した光ファイバを用いているが、このような光ファイバではFを添加したクラッドの粘度が純粋石英ガラスからなるコアの粘度に比べて低いために線引き張力の影響がコアに集中しやすいという利点を有している。しかし、広く商用で用いられている光ファイバはコアにGeが添加されているものであるため純粋石英ガラスに比べて線引き張力を調整することが困難である。従って、この方法は適用が限られてしまうという問題があった。
【0018】
また、非特許文献3に開示されている方法では、コア及びクラッドに添加されるFの濃度を変化させ、コアのGeの濃度は均一にして全体の屈折率分布は変化しないようにしているが、やはり製造工程が複雑になるので長手方向に安定した特性の光ファイバを得ることが困難で、大量生産には向いていないという問題があった。
【0019】
さらに、特許文献2に開示されている方法では、コアの径方向において交互に異なったガラス組成の層を形成する必要があるので製造工程が煩雑でコストが高くなるという問題があった。
【0020】
本発明は上記のような課題を解決したもので、SBSを抑制するとともに光ファイバの長手方向で安定した特性を有し、しかも通常の製造方法を用いることができるSBS抑制光ファイバを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は以上の点を解決するため次のような構成からなるものである。
【0022】
即ち、本発明のSBS抑制光ファイバはまず第1の態様として、石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアにはGeあるいはPが単独で、若しくはGeとPが同時に添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差あるいはP2O5の濃度差若しくはGeO2とP2O5の合計の濃度差が0.3mol%以上であることを特徴とする。
【0023】
また、第2の態様として、前記第1の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差あるいはP2O5の濃度差若しくはGeO2とP2O5の合計の濃度差が0.6mol%以上であることを特徴とする。
【0024】
さらに、第3の態様として、前記第1または第2の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする。
【0025】
また、第4の態様として、前記第3の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする。
【0026】
さらに、第5の態様として、前記第1から第4までのいずれかの態様において、前記クラッドは純石英ガラスであることを特徴とする。
【0027】
また、第6の態様として、前記第1から第4までのいずれかの態様において、前記クラッドは石英ガラスにFが添加されていることを特徴とする。
【0028】
さらに、第7の態様として、石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コア及びクラッドにはFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差が0.08mol%以上であることを特徴とする。
【0029】
また、第8の態様として、前記第7の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差が0.16mol%以上であることを特徴とする。
【0030】
さらに、第9の態様として、前記第7または第8の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする。
【0031】
また、第10の態様として、前記第9の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする。
【0032】
さらに、第11の態様として、石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアにはGeあるいはPが単独で、若しくはGeとPが同時に添加され、かつさらにFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする。
【0033】
また、第12の態様として、前記第11の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする。
【0034】
さらに、第13の態様として、前記第11または第12の態様において、前記クラッドは純石英ガラスであることを特徴とする。
【0035】
また、第14の態様として、前記第11または第12の態様において、前記クラッドは石英ガラスにFが添加されていることを特徴とする。
【0036】
さらに、第15の態様として、石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアは純石英ガラス及びFが添加されている石英ガラスからなり、前記クラッドにFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする。
【0037】
また、第16の態様として、前記第15の態様において、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする。
【0038】
さらに、第17の態様として、前記第1から第16までのいずれかの態様において、前記コアの最大屈折率と前記クラッドの屈折率との差が0.008以下であることを特徴とする。
【0039】
また、第18の態様として、前記第1から第17までのいずれかの態様において、前記光ファイバの誘導ブリユアン散乱のスペクトル幅が200MHz以上であることを特徴とする。
【0040】
さらに、第19の態様として、前記第18の態様において、前記光ファイバの誘導ブリユアン散乱のスペクトル幅が300MHz以上であることを特徴とする。
【0041】
また、第20の態様として、前記第1から第19までのいずれかの態様において、前記光ファイバの零分散波長が1300nm〜1324nmの範囲にあることを特徴とする。
【0042】
さらに、第21の態様として、前記第1から第20までのいずれかの態様において、前記光ファイバの1310nmの波長におけるモードフィールド径が8.6〜9.5μmの範囲にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明のSBS抑制光ファイバによれば、コアやクラッドに添加するGeやPあるいはF等の添加剤の添加量を調整するとともにコアの屈折率分布を階段状にしたのでSBSのスペクトル幅を広げ、SBSを抑制できるとともに、長手方向において安定した特性を有し、製造も従来通りの方法で行うことができ、さらに通常のSMFと安定して接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について具体例を用いて説明する。
【0045】
まず、誘導放出の閾値を上昇させるためには、SBSのスペクトル幅を広くする必要がある。SBSの閾値は、光ファイバの損失、長さ、モードフィールド径等に依存する。一般的に閾値は簡易的に以下のように表すことができる。
【0046】
Pth≒k(Aeff/Leff)
ここで、Pth・・・・SBS閾値
Aeff・・・有効断面積
Leff・・・相互作用距離
k・・・・・・係数
また、Aeff及びLeffは次のような式で表すことができる。
【0047】
Aeff≒πW2
Leff={1−exp(−αL)/α}
ここで、W・・・モードフィールド径
L・・・光ファイバ長
α・・・損失係数
以上のように、AeffとLeffは、モードフィールド径、光ファイバの損失と長さに関わるものである。従って、各光ファイバのSBSの閾値を比較する場合には、係数kを比較すれば光ファイバのモードフィールド径、損失、長さ等によらずによいことがわかる。なお、通常のSMFのk係数は7.6×1014mW/m程度であるので、この値よりもk係数が大きければSBS閾値パワーが大きいことになる。
【0048】
また、このk係数を大きくするためにはSBSのスペクトル幅を広くすることが必要となる。具体的には、効果的にSBSを抑制するためのSBSのスペクトル幅が200MHz以上、好ましくは300MHz以上必要であることがわかった。通常のSMFの場合にはSBSのスペクトル幅は130〜150MHzであるが、SBSのスペクトル幅が200MHz未満では通常のSMFのSBSの抑制効果とあまり変わらず、SBSの抑制効果が十分とはいえないからである。なお、本発明におけるSBSのスペクトル幅はSBSスペクトルの強度のピーク値の10分の1のところのスペクトル幅をいう。
【0049】
従来の技術より、SBS中心周波数シフト量はおおよそGeO2の場合150MHz/mol%、P2O5の場合160MHz/mol%、Fの場合600MHz/mol%であることが知られている。SBSスペクトル幅を広くするために本発明のように屈折率分布を階段状にした場合、各階段部分におけるSBS中心周波数のシフト量が他の階段部分におけるSBS中心周波数に重ならないようにする必要がある。
【0050】
各階段部分におけるSBS中心周波数のシフト量が他の階段部分におけるSBS中心周波数に重ならないようにするためには、隣り合う階段におけるGeやP、あるいはFの添加量を上記シフト量を踏まえて最適に調整するとよい。出願人らが検討した結果、添加剤がGeの場合やPの場合には階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差、あるいはP2O5の濃度差が0.3mol%以上、好ましくは0.6mol%以上あることがよいことがわかった。また、GeとPを共添加した場合にもGeO2とP2O5の合計の濃度差が0.3mol%以上、好ましくは0.6mol%以上あることがよいことがわかった。
【0051】
GeO2の濃度差やP2O5の濃度差、あるいはGeO2とP2O5の合計の濃度差を0.3mol%以上としたのは、0.3mol%未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは0.6mol%以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。またGeO2の濃度差やP2O5の濃度差、あるいはGeO2とP2O5の合計の濃度差の上限としてはこのSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0052】
なお、上記実施の形態において、コアにGeやP、あるいはGeとPを共添加して階段状の屈折率分布とした場合に、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上、好ましくは8×10−4以上としてもよい。このように添加剤の濃度ではなく、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差で本発明を構成しても添加剤の濃度差で構成した場合と同等の効果が得られる。なお、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上としたのは、3×10−4未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは8×10−4以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。また隣り合う階段の屈折率差の上限としては、このSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0053】
しかしながらコア径が小さくなるために屈折率を上昇あるいは下降させる添加剤のガラス合成中や紡糸による拡散等の影響により、その階段段数によって隣り合う階段の屈折率差の上限が制限される。例えば、階段数1段の場合は段数が少ないため隣り合う階段の屈折率差の上限はコアとクラッドの最大屈折率差程度まで可能であり自由度は大きい。一方、階段数2段以上となる場合は階段間の長さが短くなることから隣り合う階段の屈折率差の上限は0.0015程度に屈折率分布を設計することが好ましい。また段数に関わらず階段の形状は、上記で述べた拡散等の影響により矩形になるわけではなく少し丸みの帯びたものとなることが多い。
【0054】
ここで、上記実施の形態においてクラッドは純石英ガラスとしてもよく、純石英ガラスにFを添加してもよい。即ち必要とする光ファイバの特性等から適宜選択すればよい。
【0055】
また、本発明のSBS抑制光ファイバの他の実施の形態として、コア及びクラッドにFが添加されているとともにコアが階段状の屈折率分布を有し、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差が0.08mol%以上、好ましくは0.16mol%以上とした構成とすることもできる。
【0056】
Fの濃度差を0.08mol%以上としたのは、0.08mol%未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは0.16mol%以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。またFの濃度差の上限としてはこのSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0057】
なお、上記実施の形態において、コア及びクラッドにFを添加して階段状の屈折率分布とした場合に、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上、好ましくは8×10−4以上としてもよい。このようにGeやPの場合と同様に添加剤をFとした場合でも添加剤の濃度ではなく、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差で本発明を構成しても添加剤の濃度差で構成した場合と同等の効果が得られる。そして、やはり階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上としたのは、3×10−4未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは8×10−4以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。また隣り合う階段の屈折率差の上限としてはこのSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0058】
さらに他の実施の形態として、本発明のSBS抑制光ファイバはコアにGeとF、PとF、あるいはGe、PとFを共添加するとともにコアの屈折率分布を階段状にし、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上、好ましくは8×10−4以上となるように構成することもできる。やはり階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上としたのは、3×10−4未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは8×10−4以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。また隣り合う階段の屈折率差の上限としては、このSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0059】
そしてやはり、コア径が小さくなるために屈折率を上昇あるいは下降させる添加剤のガラス合成中や紡糸による拡散等の影響により、その階段段数によって隣り合う階段の屈折率差の上限が制限されるので、例えば、階段数1段の場合は段数が少ないため隣り合う階段の屈折率差の上限はコアとクラッドの最大屈折率差程度まで可能であり自由度は大きいが、階段数2段以上となる場合は階段間の長さが短くなることから隣り合う階段の屈折率差の上限は0.0015程度になるように屈折率分布を設計することが好ましいことは前記と同様である。また段数に関わらず階段の形状は、上記で述べた拡散等の影響により矩形になるわけではなく少し丸みの帯びたものとなることが多いことも前記と同様である。なお、本実施の形態においてもクラッドは純石英ガラスとしてもよく、純石英ガラスにFを添加してもよい。即ち必要とする光ファイバの特性等から適宜選択すればよい。
【0060】
またさらに他の実施の形態として、本発明のSBS抑制光ファイバはコアを純石英ガラスとし、クラッドにFを添加するとともにコアの純石英ガラスに部分的にFを添加してコアが階段状の屈折率分布を有するようにし、この階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上、好ましくは8×10−4以上となるように構成することもできる。階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差を3×10−4以上としたのは、やはり3×10−4未満では通常のSMFと同程度のSBS抑制効果しかないためである。好ましくは8×10−4以上としたのは、よりSBS抑制効果を奏することができるためである。また隣り合う階段の屈折率差の上限としては、このSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続しても接続損失が増大しないなど伝送特性に影響を与えない範囲になるように屈折率分布の設計において適宜定めればよい。
【0061】
そしてやはり、コア径が小さくなるために屈折率を上昇あるいは下降させる添加物のガラス合成中や紡糸による拡散等の影響により、その階段段数によって隣り合う階段の屈折率差の上限が制限されるので、例えば、階段数1段の場合は段数が少ないため隣り合う階段の屈折率差の上限はコアとクラッドの最大屈折率差程度まで可能であり自由度は大きいが、階段数2段以上となる場合は階段間の長さが短くなることから隣り合う階段の屈折率差の上限は0.0015程度になるように屈折率分布を設計することが好ましいことは前記と同様である。また段数に関わらず階段の形状は、上記で述べた拡散等の影響により矩形になるわけではなく少し丸みの帯びたものとなることが多いことも前記と同様である。
【0062】
なお、前述してきた実施の形態において、本発明のSBS抑制光ファイバのコアの最大屈折率とクラッドの屈折率との差が0.008以下であることが望ましい。また、本発明のSBS抑制光ファイバの零分散波長が1300nm〜1324nmの範囲にあることが望ましい。さらに、本発明のSBS抑制光ファイバの1310nmの波長におけるモードフィールド径が8.6〜9.5μmの範囲にあることが望ましい。
【0063】
これは、本発明のSBS抑制光ファイバを通常のSMFと接続した場合でも接続損失が発生せず、伝送特性において光ファイバの伝送路に悪影響を及ぼさないようにするためである。即ち、コアの屈折率分布を階段状にする構成は従来から分散シフトファイバ(DSF;Dispersion Sifted Fiber)で知られているが、このDSFは零分散波長を1300nm付近から1550nm付近にシフトさせたものであり、そのためにコアの最大屈折率とクラッドの屈折率差を0.01以上としている。またこのような構成とした結果、DSFのモードフィールド径は1310nmの波長で7〜8μmと通常のSMFに比べて小さくなっている。従って、DSFと通常のSMFを接続した場合には、屈折率差やモードフィールド径の不整合から接続損失が増大し、伝送路全体に良い影響を与えないことになる。
【0064】
本発明のSBS抑制光ファイバは従来から通常の伝送路に用いているSMFと同等の零分散波長、即ち1300nm付近の零分散波長を有し、コアの最大屈折率とクラッドの屈折率差も通常のSMFと接続しても接続損失が発生しないような0.008以下とし、しかも1310nmの波長におけるモードフィールド径も通常のSMFと同等の値にしたので伝送路に適用しても特性上の問題が生じることがないようにしたものである。
【0065】
なお、本発明のSBS抑制光ファイバに従来公知の例えば長手方向にコア径を変動させたり、残留応力を変動させたりする技術を併用しても差し支えない。SBSを抑制するのに効果があるならば製造方法等において許容される限り特に限定されるものではない。
【実施例1】
【0066】
図1(a)に示すように、石英ガラスからなるコアにGeを添加して、このコアの屈折率分布を1段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は5.2mol%、Nlの部分のGeO2の濃度は3mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差Δcは2.2mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.007、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率Δn2の差は0.004であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.003であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は3μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は8μmである。
【0067】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。図2の測定系は、1550nmの波長の分布帰還型レーザ(DFB−LD)1からの光を光増幅器(EDFA;Erbium Doped Fiber Amplifier)2により増幅して光カプラ3に導入する。この光は光カプラ3により一方は測定するSBS抑制光ファイバ4から伝送された光のパワーを測定する出射光パワーメーター5に分岐され、他方は入射光パワーをモニターするための入射光パワーメーター6に分岐される。そして、SBS抑制光ファイバ4から反射してきた光を再び光カプラ3を通して反射光パワーメーター7により測定する。この反射光パワーメーター7により反射光を測定することによってSBSがどの程度抑制さているかわかるようになっている。
【0068】
図3は、本実施例1のSBS抑制光ファイバを図2の測定系により測定した結果を表したものである。横軸が入射光パワーを表し、縦軸が出射光パワー及び反射光パワーを表している。図3より、入射光パワーが10dBmとなった時に反射光パワーが急激に大きくなっていることがわかる。この時のk係数は1.5×1015mW/mであった。この10dBmの入射光パワーがSBSが発生する閾値(Pth)となる。通常のSMFではSBS閾値パワーは7dBm程度であるため、本実施例1の光ファイバでは3dBm程度の改善が見られ、高い入射光パワーに対してもSBS抑制効果が実現できた。また、通常のSMFのk係数は7.6×1014mW/mであった。なお、本実施例1における光ファイバの1550nmにおける伝送損失は0.2dB/km、モードフィールド径は10.5μmであった。また、SBSのスペクトル幅は330MHzであった。このSBSのスペクトル幅の測定はBOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer)を用いて行い、以下の各実施例の測定においても同様である。
【0069】
なお、前述したように屈折率分布の形状は実際には添加剤の拡散等の影響により完全な矩形ではなく、図1(b)に示すように角の部分が少し丸みを帯びた形状になることが多い。しかし、本実施例及び以下に説明する各実施例においては説明上屈折率分布を矩形の形状として表すこととする。
【実施例2】
【0070】
図4に示すように、石英ガラスからなるコアにGeを添加して、このコアの屈折率分布を1段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は6mol%、Nlの部分のGeO2の濃度は3mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差Δcは3mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.008、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.004であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.004であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は5μmである。
【0071】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例2の光ファイバのSBS閾値パワーは9.5dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて2.5dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.5×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.2dB/km、モードフィールド径は10μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は300MHzであった。
【実施例3】
【0072】
図5に示すように、石英ガラスからなるコアにGeを添加して、このコアの屈折率分布を2段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。2段の階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の中間部分をNm、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は6mol%、Nmの部分のGeO2の濃度は5.3mol%、Nlの部分のGeO2の濃度は4mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差はそれぞれNhの部分とNmの部分との差Δc1が0.7mol%、Nmの部分とNlの部分の差Δc2が1.3mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.008、コアのNmの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.007、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn3は0.0055であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差はそれぞれNhの部分とNmの部分の差Δn4が0.001、Nmの部分とNlの部分の差Δn5が0.0015であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8μm、屈折率の中間部のコアの部分(Nmの部分)のコア径は5μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は3μmである。
【0073】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例3の光ファイバのSBS閾値パワーは10.5dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて3.5dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.6×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.23dB/km、モードフィールド径は10.4μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は350MHzであった。
【実施例4】
【0074】
図6に示すように、石英ガラスからなるコアにPを添加して、このコアの屈折率分布を1段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のP2O5の濃度は6mol%、Nlの部分のP2O5の濃度は4.5mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるP2O5の濃度差Δcは1.5mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.008、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.006であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.002であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は4μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は8μmである。
【0075】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例4の光ファイバのSBS閾値パワーは9dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて2dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.4×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.3dB/km、モードフィールド径は10.5μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は250MHzであった。
【実施例5】
【0076】
図7に示すように、純石英ガラスからなるコアの外周部にFを添加して、このコアの屈折率分布を1段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCの石英ガラスにもFを添加した。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のFの濃度は0mol%(純石英ガラス)、Nlの部分のFの濃度は0.3mol%である。また、クラッドのFの濃度は1.6mol%である。従って、階段状のコアの屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差Δcは0.3mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.008、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.0065であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.0015であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は4μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は8μmである。
【0077】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例5の光ファイバのSBS閾値パワーは10.5dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて3.5dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.5×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.27dB/km、モードフィールド径は10.3μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は340MHzであった。
【実施例6】
【0078】
図8に示すように、石英ガラスからなるコアにGeを添加して、このコアの屈折率分布を2段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。2段の階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の中間部分をNm、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は5.7mol%、Nmの部分のGeO2の濃度は5.3mol%、Nlの部分のGeO2の濃度は4.5mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差はそれぞれNhの部分とNlの部分との差Δc1が1.2mol%、Nmの部分とNlの部分との差Δc2が0.8mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.0075、コアのNmの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.007、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn3は0.006であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差はそれぞれNhの部分とNlの部分の差Δn4が0.0015、Nmの部分とNlの部分の差Δn5が0.001であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8μm、屈折率の中間部のコアの部分(Nmの部分)のコア径は4μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は6μmである。
【0079】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例6の光ファイバのSBS閾値パワーは10.5dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて3.5dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.8×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.19dB/km、モードフィールド径は10.4μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は350MHzであった。
【実施例7】
【0080】
図9に示すように、石英ガラスからなるコアにGeとPをともに添加して、このコアの屈折率分布を2段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。2段の階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の中間部分をNm、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は4mol%、P2O5の濃度は0.5mol%であり、Nmの部分のGeO2の濃度は3mol%、P2O5の濃度は0.8mol%であり、またNlの部分のGeO2の濃度は2.8mol%、P2O5の濃度は0.6mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2とP2O5の合計の濃度差はそれぞれNhの部分とNlの部分との差Δc1が1.1mol%、Nmの部分とNlの部分の差Δc2が0.4mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.006、コアのNmの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.005、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn3は0.0045であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差はそれぞれNhの部分とNlの部分の差Δn4が0.0015、Nmの部分とNlの部分の差Δn5が0.0005であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8.5μm、屈折率の中間部のコアの部分(Nmの部分)のコア径は4μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は6μmである。
【0081】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例7の光ファイバのSBS閾値パワーは9.7dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて2.7dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.3×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.21dB/km、モードフィールド径は10.7μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は230MHzであった。
【実施例8】
【0082】
図10に示すように、石英ガラスからなるコアにGeとPとFをともに添加して、このコアの屈折率分布を1段の階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は4.5mol%、P2O5の濃度は1.5mol%、Fの濃度は0.2mol%であり、Nlの部分のGeO2の濃度は4.5mol%、P2O5の濃度は0.8mol%、Fの濃度は0.4mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2とP2O5とFの合計の濃度差Δcは0.5mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.007、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.004であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.003であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は4μmである。
【0083】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本実施例8の光ファイバのSBS閾値パワーは10dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて3dBmだけ閾値パワーが上昇しており、SBSを抑制することができた。この時のk係数は1.4×1015mW/mであった。また、1550nmの波長における伝送損失は0.25dB/km、モードフィールド径は10.5μmであった。なお、SBSのスペクトル幅は300MHzであった。
【0084】
ここで、上記各実施例のSBS抑制光ファイバにおいて、零分散波長はすべて1300nm〜1324nmの範囲にあった。また、波長1310nmにおけるモードフィールド径はすべて8.6〜9.5μmの間に入っていた。
【0085】
本発明のSBS抑制光ファイバを作製するための母材を製造する方法としては通常用いられているMCVD法、プラズマCVD法、VAD法、OVD法など特に限定されるものではなく、目的に応じて最も適した方法を用いればよい。
【比較例】
【0086】
比較のために図11に示すように、石英ガラスからなるコアにGeを添加して、このコアの屈折率分布を階段状としたSMFを作製した。クラッドCは純石英ガラスである。階段状の屈折率分布のうち、屈折率の高い部分をNh、屈折率の低い部分をNlとすると、Nhの部分のGeO2の濃度は5.3mol%、Nlの部分のGeO2の濃度は5.1mol%である。即ち階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差Δcは0.2mol%となっている。なお、この時のコアの最大屈折率(Nhの部分)とクラッドの屈折率の差Δn1は0.007、コアのNlの部分の屈折率とクラッドの屈折率の差Δn2は0.0068であり、階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差Δn3は0.0002であった。また、屈折率の高いコアの部分(Nhの部分)のコア径は8μm、屈折率の低いコアの部分(Nlの部分)のコア径は3μmである。
【0087】
このような構成のSBS抑制光ファイバを20km準備し、図2に示すような測定系で1550nmの波長における入射光パワーに対する反射光パワーを測定した。この結果、本比較例の光ファイバは1550nmの波長における伝送損失は0.2dB/km、モードフィールド径は10μmであり、通常のSMFと同等だったがSBS閾値パワーは7.5dBmであり、通常のSMFの閾値パワーに比べて0.5dBmだけ閾値パワーが上昇してはいたが、SBSを十分に抑制することができなかった。この時のk係数は9.4×1014mW/m、SBSのスペクトル幅は180MHzであった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例1の屈折率分布を説明する図である。
【図2】SBS閾値パワーを測定するための測定系を説明する図である。
【図3】SBS閾値パワーの測定結果を表す図である。
【図4】本発明の実施例2の屈折率分布を説明する図である。
【図5】本発明の実施例3の屈折率分布を説明する図である。
【図6】本発明の実施例4の屈折率分布を説明する図である。
【図7】本発明の実施例5の屈折率分布を説明する図である。
【図8】本発明の実施例6の屈折率分布を説明する図である。
【図9】本発明の実施例7の屈折率分布を説明する図である。
【図10】本発明の実施例8の屈折率分布を説明する図である。
【図11】本発明に対する比較例の屈折率分布を説明する図である。
【符号の説明】
【0089】
1・・・分布帰還型レーザ
2・・・光増幅器
3・・・光カプラ
4・・・SBS抑制光ファイバ
5・・・出射光パワーメーター
6・・・入射光パワーメーター
7・・・反射光パワーメーター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアにはGeあるいはPが単独で、若しくはGeとPが同時に添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差あるいはP2O5の濃度差若しくはGeO2とP2O5の合計の濃度差が0.3mol%以上であることを特徴とする誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項2】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差あるいはP2O5の濃度差若しくはGeO2とP2O5の合計の濃度差が0.6mol%以上であることを特徴とする請求項1記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項3】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項4】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする請求項3記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項5】
前記クラッドは純石英ガラスであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項6】
前記クラッドは石英ガラスにFが添加されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項7】
石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コア及びクラッドにはFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差が0.08mol%以上であることを特徴とする誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項8】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差が0.16mol%以上であることを特徴とする請求項7記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項9】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする請求項7または請求項8記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項10】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする請求項9記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項11】
石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアにはGeあるいはPが単独で、若しくはGeとPが同時に添加され、かつさらにFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項12】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする請求項11記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項13】
前記クラッドは純石英ガラスであることを特徴とする請求項11または請求項12記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項14】
前記クラッドは石英ガラスにFが添加されていることを特徴とする請求項11または請求項12記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項15】
石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアは純石英ガラス及びFが添加されている石英ガラスからなり、前記クラッドにFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項16】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする請求項15記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項17】
前記コアの最大屈折率と前記クラッドの屈折率との差が0.008以下であることを特徴とする請求項1から請求項16までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項18】
前記光ファイバの誘導ブリユアン散乱のスペクトル幅が200MHz以上であることを特徴とする請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項19】
前記光ファイバの誘導ブリユアン散乱のスペクトル幅が300MHz以上であることを特徴とする請求項18記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項20】
前記光ファイバの零分散波長が1300nm〜1324nmの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項19までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項21】
前記光ファイバの1310nmの波長におけるモードフィールド径が8.6〜9.5μmの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項20までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項1】
石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアにはGeあるいはPが単独で、若しくはGeとPが同時に添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差あるいはP2O5の濃度差若しくはGeO2とP2O5の合計の濃度差が0.3mol%以上であることを特徴とする誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項2】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるGeO2の濃度差あるいはP2O5の濃度差若しくはGeO2とP2O5の合計の濃度差が0.6mol%以上であることを特徴とする請求項1記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項3】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項4】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする請求項3記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項5】
前記クラッドは純石英ガラスであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項6】
前記クラッドは石英ガラスにFが添加されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項7】
石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コア及びクラッドにはFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差が0.08mol%以上であることを特徴とする誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項8】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段におけるFの濃度差が0.16mol%以上であることを特徴とする請求項7記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項9】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする請求項7または請求項8記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項10】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする請求項9記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項11】
石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアにはGeあるいはPが単独で、若しくはGeとPが同時に添加され、かつさらにFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項12】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする請求項11記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項13】
前記クラッドは純石英ガラスであることを特徴とする請求項11または請求項12記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項14】
前記クラッドは石英ガラスにFが添加されていることを特徴とする請求項11または請求項12記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項15】
石英ガラスからなるコア及びその外周のコアよりも屈折率の低い石英ガラスからなるクラッドから構成された光ファイバであって、前記コアは純石英ガラス及びFが添加されている石英ガラスからなり、前記クラッドにFが添加されているとともに前記コアが階段状の屈折率分布を有し、前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が3×10−4以上であることを特徴とする誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項16】
前記階段状の屈折率分布の隣り合う階段における屈折率差が8×10−4以上であることを特徴とする請求項15記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項17】
前記コアの最大屈折率と前記クラッドの屈折率との差が0.008以下であることを特徴とする請求項1から請求項16までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項18】
前記光ファイバの誘導ブリユアン散乱のスペクトル幅が200MHz以上であることを特徴とする請求項1から請求項17までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項19】
前記光ファイバの誘導ブリユアン散乱のスペクトル幅が300MHz以上であることを特徴とする請求項18記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項20】
前記光ファイバの零分散波長が1300nm〜1324nmの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項19までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【請求項21】
前記光ファイバの1310nmの波長におけるモードフィールド径が8.6〜9.5μmの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項20までのいずれかの請求項に記載の誘導ブリユアン散乱抑制光ファイバ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−232599(P2006−232599A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48472(P2005−48472)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】
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