誘導標識装置
【課題】 視認性に優れてその存在を明確にできるとともに、誘導方向を明確にし得る誘導標識装置の提供。
【解決手段】 標識体の視認用面部に、標識体の存在を発光によって視認者に視認させるための蓄光性蛍光物質が配合された蓄光性成形体を設けるとともに、視認者の誘導方向を発光によって示す複数の発光ダイオードを設けて、昼間の太陽光によって蓄光成形体に蓄光された蓄光成形体からの発光で、夜間であっても標識体の視認性すなわちその存在の認識性が良好となるとともに、発光ダイオードの発光によって誘導方向を明確にする。
【解決手段】 標識体の視認用面部に、標識体の存在を発光によって視認者に視認させるための蓄光性蛍光物質が配合された蓄光性成形体を設けるとともに、視認者の誘導方向を発光によって示す複数の発光ダイオードを設けて、昼間の太陽光によって蓄光成形体に蓄光された蓄光成形体からの発光で、夜間であっても標識体の視認性すなわちその存在の認識性が良好となるとともに、発光ダイオードの発光によって誘導方向を明確にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば災害発生時等の緊急時の避難用に用いられる誘導標識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、夜間においてその存在を示す必要のあるものに蓄光性成形体を取付けて、該蓄光性成形体の発光によりその存在を示すようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。また、表示面に発光ダイオードを配設してその発光により、その存在や指向性を示すようにした技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−314487号公報
【特許文献2】特許第3628208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、夜間においてそこに存在するものを顕著にして、しかも誘導方向を顕著に示すためには、蓄光性成形体のみ、あるいは発光ダイオードのみでは、視認性に欠けるといえる。特に誘導標識装置においては、誘導標識装置そのものの存在を視認者に視認(認識)させる必要があり、また誘導方向をはっきりさせる必要がある。さらに、避難用の誘導標識では、避難者に対して誘導標識装置の存在および避難する方向である誘導方向を明確にする必要がある。
【0004】
そこで本発明は、視認性に優れてその存在を明確にできるとともに、誘導方向を明確にし得る誘導標識装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の誘導標識装置は、標識体の視認用面部に、標識体の存在を発光によって視認者に視認させるための蓄光性蛍光物質が配合された蓄光性成形体を設けるとともに、視認者の誘導方向を発光によって示す複数の発光ダイオードを設けていることを特徴としている。
【0006】
上記構成において、太陽光によって蓄光成形体に蓄光された蓄光成形体から発光されるから、夜間であっても標識体の視認性すなわちその存在の認識性が良好となるとともに、発光ダイオードの発光によって誘導方向が明確になる。
【0007】
本発明の誘導標識装置では、複数の発光ダイオードは誘導方向を示す矢印形状を形成するよう配置されていることを特徴としている。視認用面部に矢印形状の発光ダイオードを配置してそれらを発光させることにより、夜間の誘導性が顕著に向上する。
【0008】
本発明の誘導標識装置では、各発光ダイオードは、その一部が視認用面部に露出するよう埋設されていることを特徴としている。この構成によれば、発光ダイオードの一部が視認用面部に露出した状態で発光するため、視認者による発光ダイオードの発光が極めて明瞭になる。
【0009】
本発明の誘導標識装置では、視認用面部全体が蓄光性成形体で形成されていることを特徴としている。視認用面部全体が蓄光性成形体で形成された構成によれば、標識体全体が発光するから、その存在の視認性が良好になる。
【0010】
本発明の誘導標識装置では、標識体は箱型に形成されており、複数の発光ダイオードが標識体に内装されて視認用面部のうち発光ダイオードの対応部分が透光性材料で形成されていることを特徴としている。
【0011】
上記構成のように、発光ダイオードを標識体に内装しても、発光ダイオードに対応する部分を透光性材料で形成することにより、発光ダイオードの光が透光性材料を透過して、視認性が確保されて誘導方向が明確になるとともに、発光ダイオードが箱内に収納されていることで、雨天や霧の発生時であっても発光ダイオードが水分から保護される。
【0012】
本発明の誘導標識装置では、発光ダイオードが設けられている視認用面部の一部領域が、視認用面部に沿う面に平行な面内で回転自在に該視認用面部に取付けられていることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、標識体の設置場所あるいは誘導方向に応じて発光ダイオードの配置方向が変更できるから、一種類の誘導標識装置であっても汎用性に優れ、設置場所等に応じた用い方が可能となる。
【0014】
本発明の誘導標識装置は、視認用面部の一部に、発光ダイオードを回避して、誘導理由を示すための表示を施したシートを貼着するよう構成されていることを特徴としている。
【0015】
上記構成において、シートという簡単な構成でしかもこれを貼着するという簡単な作業により、誘導理由を示すことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の誘導標識装置は、標識体の視認用面部に、標識体の存在を発光によって視認者に視認させるための蓄光性成形体を設けているから、昼間の太陽光によって蓄光成形体に蓄光された蓄光成形体からの発光によって、夜間であっても標識体の視認性すなわちその存在の認識性が良好となり、しかも視認者の誘導方向を示す複数の発光ダイオードを設けているから、発光ダイオードの発光によって誘導方向を明確にすることができる。
特に、誘導標識装置を避難用として用いる場合には、夜間であっても標識体の存在の視認が明確になり、しかも誘導方向が明確になることにより、視認者(避難者)に安心感を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る誘導標識装置を、避難用の誘導標識装置を例に、図面に基づいて説明する。図1は誘導標識装置の使用状態を示す全体正面図、図2は側面図、図3は一部を省略した平面図、図4は標識体と支柱との取付け状態を示す拡大背面図、図5は標識体の正面図、図6は標識体の内部構造を示す概略図、図7および図8は標識体の視認用面部(前板)の断面図である。
【0018】
これらの図では、誘導標識装置1を屋外の一般道に設置した例を示すものである。すなわち誘導標識装置1は、地面2に埋設されるコンクリート製の基礎3と、基礎3に下部が埋設固定されるようにして上下方向に立設される支柱4(この実施形態では、円筒状の支柱)と、支柱4の上端部に取付け手段5を介して着脱自在に取付けられる標識体6とを有する。
基礎3および支柱4は、一般に道路標識等と同様のものを用いることとして、ここではその説明を省略する。
【0019】
標識体6は縦長の偏平な直方体形状の箱状に形成されている。標識体6は、背面視縦長長方形の背板7と、これに対向配置される視認用面部(以下「前板」という)8と、背板7および前板8をその周囲で連結する側枠10とを有する。
標識体6には一般的な蓄電池11が内装固定されている。側枠10の上面には、複数個の太陽電池モジュールを結合した太陽電池パネル12が取付けられている。太陽電池パネル12は、蓄電池11に電気的に接続されている。
標識体6のサイズ、基礎3のボリューム、支柱4の長さは、誘導標識装置1を設置する場所に応じて適合するよう変更させることが好ましい。
【0020】
取付け手段5は、背板7の背面に上下に離間して平行に設置されたレール部材13と、レール部材13の案内溝14に摺動自在に側方から挿通される平面視略半環状の取付けベルト15と、取付けベルト15の左右何れか一方に延設された延設部16に、案内溝14に頭部が摺動自在に嵌合されネジ部が案内溝14から突出して延設部16に挿通するボルト19と、該ボルト19のネジ部19aに螺合するナット(図示せず)とから構成されている。
上記構成の取付け手段5を用いて標識体6を支柱4に固定するには、次のようにして行う。すなわち、各レール部材13を適宜の手段を用いて背板7に固定し、取付けベルト15にボルト19を挿通した状態でこれを各レール部材13の案内溝14に側方からスライドさせるようにして装着し、支柱4の上部を取付けベルト15に下方から挿入し、例えば各取付けベルト15がそれぞれレール部材13の左右方向中心となる位置で、ボルト19のネジ部19aにナットを後方から螺合する。ナットの締付け力によって、標識体6と支柱4とが固定される。
【0021】
ここで、前板8について説明する。前板8は、蛍光顔料や蓄光顔料等の過度の配合を行うことなく暗所において充分な発光輝度を得る蓄光性成形体によって構成されている。さらに具体的に、この蓄光性成形体は、内部層20と外部層21とを有し、内部層20に外部層21が被着されており、外部層21は透光性の熱可塑性合成樹脂22に蓄光性蛍光物質23が配合されることで形成されている。
内部層20は少なくとも外部層21が被着されている面が、蓄光性蛍光物質23から内部層20に向かって発光された光線を、外部に向かって反射させる光反射面24とされている。光反射面24は全反射面である。
内部層20および外部層21は同時に、一体となるよう形成されている。外部層21および内部層20の厚みは、この場合、成形性を考慮して、
外部層21:0.3〜1.0mm
内部層20:0.5〜5.0mm
が好ましい。
【0022】
内部層20の、外部層21が被着される面に形成される光反射面24は、金属、合成樹脂等の表面を平滑にしたもの、ガラスビーズを付着、埋設したもの、プリズム反射体を形成したもの、表面にアルミニウム、クロム、銀等の金属の被膜を蒸着、スパッタリング等により形成したものでもよいが、明度はL値70以上の範囲となされた色彩の表面とすることで容易に内部層20の表面に光反射面24を形成できる。さらに、明度をL値100近くの白色またはそれに近似する色彩とすれば、紫外線の反射効率を高め、反射される光線L6の紫外線量を高めて蓄光性蛍光物質23に蓄積されるエネルギーをいっそう大きくできる。但し、この実施形態の場合では、色彩として緑色としている。
また、光反射面24を、金属面を鏡面に加工して全反射面としたものとすれば、発光輝度の向上および蓄光に係わるエネルギーの蓄積の効率の何れについてもその効果が可及的に高められる。
【0023】
外部層21に含有される蓄光性蛍光物質23として、硫化亜鉛やそれに銅を配合した硫化系のものを用いている。あるいは、酸化アルミ、酸化ストロンチウム等の酸化物を主体として、それにユーロピューム等の希土類を配合した酸化系のものは、安全性、化学的安定性、耐熱性、発光時間の長さ等において利点があり好ましい。特に、アルミン酸系ストロンチウム系の蓄光性蛍光物質23は、発光輝度および発光時間が長く、好適である。
蓄光性蛍光物質23は、熱可塑性合成樹脂100重量部に対し、10〜20重量部程度配合することで、成形性に悪影響を及ぼすことなく充分な発光輝度が得られる。
【0024】
蓄光性成形体において、昼間においては図7に示すように、外部からの光線(例えば太陽光)が熱可塑性合成樹脂22を透過して蓄光性蛍光物質23に照射されることで、蓄光性蛍光物質23に外部が暗くなったときに発光するためのエネルギーが蓄積される。
内部層20において外部層21が被着された面が光反射面24とされていることで、蓄光性蛍光物質23には外部から直接入射する光線L4に加え、熱可塑性合成樹脂22を透過した光線L5が光反射面24により反射されて光線L6となって入射し、蓄光性蛍光物質23に蓄光されるエネルギーが大きくなって、発光輝度および発光の持続性が高められるようになっている。
【0025】
蓄光性蛍光物質23は、周囲が暗くなったときに蓄光性蛍光物質23から発光される光線は指向性がなく、周囲全体に向かって放射されることになる。このとき、外部へ向かう光線L1は、外部層21の熱可塑性合成樹脂22を透過して外部へ向かって放射される。内部層20方向に放射された光線L2は、外部層21が被着された面が光反射面24とされていることで、光反射面24によって反射されて外部へ向けて放射される。
【0026】
蓄光性蛍光物質23として、青色もしくはそれに近似する色調で発光するものを用いることが好ましい。発光色の色調を青色もしくはそれに近似するものとすることで、プルキニエ現象によって薄暮時における前板8の視認性を高めることになる。一般に、薄暮時は人間の心理が不安定になり易くなるから、その時間帯で災害等が発生した場合に前板8が高い視認性であれば、避難者等に対する安心感をさらに高めることにつながる。
なお、プルキニエ現象は、人間は周囲が暗いほど青い色に敏感になるという目の働きの一現象である。
【0027】
図1、図5、図7に示すように、前板8の表面には、誘導理由を示すための誘導理由表示部30としての印刷が施されている。この実施形態の場合、誘導理由表示部30を示す印刷として「津波」を簡略化した図柄31、山や丘等の「高所」を簡略化した図柄32および「人間」が移動する図柄33を、矩形の誘導理由表示印刷35の中に収まるように配置している。この誘導理由表示部30は前板8の前面上部の一部の左右方向中心領域に印刷されており、印刷として不透明色を着色している部分(図1、図5において斜線を付している)は、「津波」、「高所」および「人間」の図柄31,32,33以外の部分である。
【0028】
前板8の表面の下部左側には、誘導方向(避難方向)を示す矢印37を印刷した矢印シート38が貼着されている。矢印37は不透明色に着色(図5において斜線で示す)されており、矢印シート38の矢印37以外の部分は透明である。矢印シート38の右側隣に誘導場所(避難場所)までの距離表示40(図5において斜線を付している)を印刷した距離シート41が貼着されている。距離シート41において、距離表示40以外の部分は透明である。なお、矢印シート38および距離シート41は、図5においてともに仮想線で示している。
【0029】
特に、矢印シート38の矢印37を間隔を置いて包囲するように複数の発光ダイオード45取付け用の孔が形成されている。すなわち、蓄電池11にリード線46および基板47を介して電気的に各発光ダイオード45(例えば緑色に発光するダイオード)が接続され、各発光ダイオード45は、基板47に矢印形状を形成するよう予め取付けられている。各発光ダイオード45は、その一部(顕著に発光する側)が前板8に露出するよう基部が前板8に形成された孔に埋設されることで前板8に挿通支持されており、露出している部分は矢印シート38の孔から突出している構成である。
なお、矢印シート38の孔は、矢印37の印刷後に形成されることで、確実に矢印37を囲んで、発光ダイオード45によって、矢印の形状を確実に形成することができる。なお、前板8の孔の周壁と発光ダイオード45との間には、水の浸入を防止する、図示しない止水手段(例えばパテ等のシール部材)が介装されている。
矢印シート38および距離シート41の下方には、誘導場所(この場合「津波避難場所」)の文字表示48が不透明色で印刷されている。
【0030】
上記構成の誘導標識装置1では、例えば昼間の太陽光によって蓄光性成形体である前板8に蓄光された発光によって、例えば周りが暗くなった夜間であっても標識体6の視認性、換言すればその存在の認識性が視認者にとって極めて良好となる。しかも、太陽電池パネル12を介して蓄電池11に蓄電された電圧によって発光ダイオード45が発光するから、その発光によって誘導方向を極めて明確に指示することができるようになっている。なお、この発光ダイオード45の発光については、例えば50〜70回/分の常時点滅としている。
【0031】
上記のように、この誘導標識装置1では、前板8を蓄光性成形体によって構成することで、暗所での標識体6の存在の視認性を確保することができ、しかも発光ダイオード45を、矢印形状を構成として誘導方向を明確にすることができるから、例えば避難用の誘導標識装置1として特に有用である。また、標識体6が発光し、発光ダイオード45を常時点滅させることにより、避難場所や、避難方向、避難場所までの距離を視認者に意識付けることができるから、視認者は、津波の発生時等の非常時に対する心構えに貢献することができる。
また、昼から夜に至ることで誘導標識装置1の周囲が暗くなった場合に限らず、雨天時や霧の発生時であっても、前板8および発光ダイオード45が発光することで、視認性を確保することができる。
【0032】
図9は、誘導標識装置1においてその標識体6の別の実施形態を示す正面図である。図1ないし図8で示した誘導標識装置1では、その標識体6の前板8を縦長長方形に設定した。これに対して図9の実施形態では、前板8を横長長方形に設定し、誘導理由表示部30、矢印シート38、距離シート41、および文字表示48のレイアウトを変更し、したがって矢印シート38の位置に応じて発光ダイオード45の位置も変更している。
【0033】
このように、本発明は標識体6の前板8に、標識体6の存在を発光によって視認者に視認させるための蓄光性成形体を設け、視認者の誘導方向を複数の発光ダイオード45を設ける構成であれば、誘導理由表示部30、矢印シート38、距離シート41、および文字表示48のレイアウトや、発光ダイオード45の位置は、設置場所等の周囲の環境に応じて自由に選択することが可能である。
【0034】
図10ないし図14にさらに別の実施形態を示す。これは、誘導方向(矢印)を表示した方向領域部分50を蓄光成形体とは別部材とし、方向領域部分50を前板8に対してほぼ前板8の表面平面に平行な平面内で回転自在に取付けるための回転手段51を介して取付けた構成を有する。
【0035】
さらに具体的に、前板8の所定位置(図では下部左側)に、正面視して円形の孔52を形成しており、孔52の後側には環状に形成した環状取付け部53を前板8に一体的に形成している。この環状取付け部53の内周壁面に雌ネジが形成されている。
【0036】
方向領域部分50は、環状で外周部に雄ネジを形成した螺着部54と、螺着部54に比べて小径で、孔52と略同径かまたはわずかに小径に形成されら突出部55とを有する。この構成により、螺着部54と突出部55との間には環状の段付き面56が形成されており、突出部55に合成ゴム製のシールリング57を外嵌装着し、雄ネジと雌ネジを螺合し、シールリング57を段付き面56と前板8の裏面との間に介装するようにして、方向領域部分50を前板8に装着するようにする。すなわち回転手段51は、環状取付け部53およびその雌ネジ、螺着部54およびその雄ネジ、さらにシールリング57から構成されている。
【0037】
突出部55の後部には装着用溝58が形成されており、基板47に取付けられた複数の発光ダイオード45が基板47を介して方向領域部分50(例えば螺着部54)に着脱自在に取付けられている。方向領域部分50は透明な熱可塑性合成樹脂によって形成されされており、その表面には矢印37が抜かれるようにしてその外周部に発光ダイオード45の光を遮断する印刷60が施されている。したがって、発光ダイオード45は、矢印37に沿うよう基板47の前面に配置されている。
図12〜図14は、誘導理由表示部30、矢印シート38、距離シート41、および文字表示48のレイアウトの変形例を示している。
【0038】
図10ないし図14に示す実施形態の誘導標識装置1では、方向領域部分50を回転させることで矢印の方向、すなわち誘導方向を任意に選択して決定することができる。すなわち、設置場所に応じて矢印の方向を変えるようにすることで、汎用性が付与された構成となっている。
なお、矢印の方向の保持(方向領域部分50の回転位置の保持)は、シールリング57が段付き面56を後方へ押圧する弾性によって確保することが可能であるから、複雑な保持機構を備えることなく矢印の方向の保持ができる。
また、この実施形態では、方向領域部分50を透明な熱可塑性合成樹脂によって形成しており、その表面には矢印37が抜かれるようにしてその外周部に発光ダイオード45の光を遮断する印刷60を施していることにより、内照式の誘導標識装置1の構成となっている。
内照式の誘導標識装置1であっても、発光ダイオード45に対向する部分を透光性を有する材料で形成することにより、発光ダイオード45からの発光は明瞭に視認することができる。また、発光ダイオード45が標識体6に内装された内照式であるから、発光ダイオード45そのもの(あるいはその他の電気部品を含めて)が風雨から保護されることになる。
【0039】
上記各実施形態では、誘導標識装置1を屋外に設置する場合を示した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、屋内に設置することも可能である。この場合、基礎3および支柱4を省略して、標識体6をビル等の建屋の壁面に設置することが考えられる。そして、可及的に日光が照射され易い位置や場所に設置することで、蓄光性蛍光物質23に蓄積されるエネルギーを大きくし、また、太陽電池パネル12から蓄電池11に蓄積するエネルギーを大きくすることが好ましい。このように屋内に設置するようにしても、誘導用の標識として使用することができる。
なお、屋内に設置する場合、必要に応じて誘導理由表示部30である「津波」を簡略化した図柄31,32,33、山や丘等の「高所」を簡略化した図柄31,32,33を、火災、地震等の非常時を表す印刷とすることが好ましい。
【0040】
さらに、上記各実施形態では、前板8は蓄光性成形体によって構成したがこれに限定されず、蓄光性成形体の後面に補強板を重ねる構成とすることも好ましい。
また、誘導理由表示部30を含む最小の領域を回転手段51を介して蓄光性成形体の一部として、誘導方向(矢印の方向)と相まって違和感ないよう一致させることができるよう構成することも可能である。
また、発光ダイオード45は常時点滅でなくてもよく、遠隔操作によって必要に応じて点滅、あるいは点灯させる構成とすることもできる。また、例えば、周囲の明るさを検出するセンサを誘導標識装置1に設けて、このセンサからの信号に応じて、周囲が所定の暗さになったときに発光ダイオード45を発光させるよう構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態を示す誘導標識装置の使用状態を示す全体正面図
【図2】同じく側面図
【図3】同じく一部を省略した平面図
【図4】同じく標識体と支柱との取付け状態を示す拡大背面図
【図5】同じく標識体の正面図
【図6】同じく標識体の内部構造を示す概略図
【図7】同じく標識体の視認用面部(前板)の断面図
【図8】同じく標識体の視認用面部(前板)の断面図
【図9】同じくレイアウト等を変更した標識体の正面図
【図10】別の実施形態を示す誘導標識装置の要部を示す分解斜視図
【図11】同じく要部を示す断面図
【図12】同じくレイアウト等を変更した標識体の正面図
【図13】同じくレイアウト等を変更した標識体の正面図
【図14】同じくレイアウト等を変更した標識体の正面図
【符号の説明】
【0042】
1…誘導標識装置、3…基礎、4…支柱、5…取付け手段、6…標識体、7…背板、8…前板、10…側枠、11…蓄電池、12…太陽電池パネル、13…レール部材、20…内部層、21…外部層、22…熱可塑性合成樹脂、23…蓄光性蛍光物質、24…光反射面、L1,L2,L4,L5…光線、30…誘導理由表示部、31,32,33…図柄、35…誘導理由表示印刷、37…矢印、38…矢印シート、40…距離表示、41…距離シート、45…発光ダイオード、48…文字表示
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば災害発生時等の緊急時の避難用に用いられる誘導標識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、夜間においてその存在を示す必要のあるものに蓄光性成形体を取付けて、該蓄光性成形体の発光によりその存在を示すようにした技術がある(例えば、特許文献1参照)。また、表示面に発光ダイオードを配設してその発光により、その存在や指向性を示すようにした技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−314487号公報
【特許文献2】特許第3628208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、夜間においてそこに存在するものを顕著にして、しかも誘導方向を顕著に示すためには、蓄光性成形体のみ、あるいは発光ダイオードのみでは、視認性に欠けるといえる。特に誘導標識装置においては、誘導標識装置そのものの存在を視認者に視認(認識)させる必要があり、また誘導方向をはっきりさせる必要がある。さらに、避難用の誘導標識では、避難者に対して誘導標識装置の存在および避難する方向である誘導方向を明確にする必要がある。
【0004】
そこで本発明は、視認性に優れてその存在を明確にできるとともに、誘導方向を明確にし得る誘導標識装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の誘導標識装置は、標識体の視認用面部に、標識体の存在を発光によって視認者に視認させるための蓄光性蛍光物質が配合された蓄光性成形体を設けるとともに、視認者の誘導方向を発光によって示す複数の発光ダイオードを設けていることを特徴としている。
【0006】
上記構成において、太陽光によって蓄光成形体に蓄光された蓄光成形体から発光されるから、夜間であっても標識体の視認性すなわちその存在の認識性が良好となるとともに、発光ダイオードの発光によって誘導方向が明確になる。
【0007】
本発明の誘導標識装置では、複数の発光ダイオードは誘導方向を示す矢印形状を形成するよう配置されていることを特徴としている。視認用面部に矢印形状の発光ダイオードを配置してそれらを発光させることにより、夜間の誘導性が顕著に向上する。
【0008】
本発明の誘導標識装置では、各発光ダイオードは、その一部が視認用面部に露出するよう埋設されていることを特徴としている。この構成によれば、発光ダイオードの一部が視認用面部に露出した状態で発光するため、視認者による発光ダイオードの発光が極めて明瞭になる。
【0009】
本発明の誘導標識装置では、視認用面部全体が蓄光性成形体で形成されていることを特徴としている。視認用面部全体が蓄光性成形体で形成された構成によれば、標識体全体が発光するから、その存在の視認性が良好になる。
【0010】
本発明の誘導標識装置では、標識体は箱型に形成されており、複数の発光ダイオードが標識体に内装されて視認用面部のうち発光ダイオードの対応部分が透光性材料で形成されていることを特徴としている。
【0011】
上記構成のように、発光ダイオードを標識体に内装しても、発光ダイオードに対応する部分を透光性材料で形成することにより、発光ダイオードの光が透光性材料を透過して、視認性が確保されて誘導方向が明確になるとともに、発光ダイオードが箱内に収納されていることで、雨天や霧の発生時であっても発光ダイオードが水分から保護される。
【0012】
本発明の誘導標識装置では、発光ダイオードが設けられている視認用面部の一部領域が、視認用面部に沿う面に平行な面内で回転自在に該視認用面部に取付けられていることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、標識体の設置場所あるいは誘導方向に応じて発光ダイオードの配置方向が変更できるから、一種類の誘導標識装置であっても汎用性に優れ、設置場所等に応じた用い方が可能となる。
【0014】
本発明の誘導標識装置は、視認用面部の一部に、発光ダイオードを回避して、誘導理由を示すための表示を施したシートを貼着するよう構成されていることを特徴としている。
【0015】
上記構成において、シートという簡単な構成でしかもこれを貼着するという簡単な作業により、誘導理由を示すことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の誘導標識装置は、標識体の視認用面部に、標識体の存在を発光によって視認者に視認させるための蓄光性成形体を設けているから、昼間の太陽光によって蓄光成形体に蓄光された蓄光成形体からの発光によって、夜間であっても標識体の視認性すなわちその存在の認識性が良好となり、しかも視認者の誘導方向を示す複数の発光ダイオードを設けているから、発光ダイオードの発光によって誘導方向を明確にすることができる。
特に、誘導標識装置を避難用として用いる場合には、夜間であっても標識体の存在の視認が明確になり、しかも誘導方向が明確になることにより、視認者(避難者)に安心感を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る誘導標識装置を、避難用の誘導標識装置を例に、図面に基づいて説明する。図1は誘導標識装置の使用状態を示す全体正面図、図2は側面図、図3は一部を省略した平面図、図4は標識体と支柱との取付け状態を示す拡大背面図、図5は標識体の正面図、図6は標識体の内部構造を示す概略図、図7および図8は標識体の視認用面部(前板)の断面図である。
【0018】
これらの図では、誘導標識装置1を屋外の一般道に設置した例を示すものである。すなわち誘導標識装置1は、地面2に埋設されるコンクリート製の基礎3と、基礎3に下部が埋設固定されるようにして上下方向に立設される支柱4(この実施形態では、円筒状の支柱)と、支柱4の上端部に取付け手段5を介して着脱自在に取付けられる標識体6とを有する。
基礎3および支柱4は、一般に道路標識等と同様のものを用いることとして、ここではその説明を省略する。
【0019】
標識体6は縦長の偏平な直方体形状の箱状に形成されている。標識体6は、背面視縦長長方形の背板7と、これに対向配置される視認用面部(以下「前板」という)8と、背板7および前板8をその周囲で連結する側枠10とを有する。
標識体6には一般的な蓄電池11が内装固定されている。側枠10の上面には、複数個の太陽電池モジュールを結合した太陽電池パネル12が取付けられている。太陽電池パネル12は、蓄電池11に電気的に接続されている。
標識体6のサイズ、基礎3のボリューム、支柱4の長さは、誘導標識装置1を設置する場所に応じて適合するよう変更させることが好ましい。
【0020】
取付け手段5は、背板7の背面に上下に離間して平行に設置されたレール部材13と、レール部材13の案内溝14に摺動自在に側方から挿通される平面視略半環状の取付けベルト15と、取付けベルト15の左右何れか一方に延設された延設部16に、案内溝14に頭部が摺動自在に嵌合されネジ部が案内溝14から突出して延設部16に挿通するボルト19と、該ボルト19のネジ部19aに螺合するナット(図示せず)とから構成されている。
上記構成の取付け手段5を用いて標識体6を支柱4に固定するには、次のようにして行う。すなわち、各レール部材13を適宜の手段を用いて背板7に固定し、取付けベルト15にボルト19を挿通した状態でこれを各レール部材13の案内溝14に側方からスライドさせるようにして装着し、支柱4の上部を取付けベルト15に下方から挿入し、例えば各取付けベルト15がそれぞれレール部材13の左右方向中心となる位置で、ボルト19のネジ部19aにナットを後方から螺合する。ナットの締付け力によって、標識体6と支柱4とが固定される。
【0021】
ここで、前板8について説明する。前板8は、蛍光顔料や蓄光顔料等の過度の配合を行うことなく暗所において充分な発光輝度を得る蓄光性成形体によって構成されている。さらに具体的に、この蓄光性成形体は、内部層20と外部層21とを有し、内部層20に外部層21が被着されており、外部層21は透光性の熱可塑性合成樹脂22に蓄光性蛍光物質23が配合されることで形成されている。
内部層20は少なくとも外部層21が被着されている面が、蓄光性蛍光物質23から内部層20に向かって発光された光線を、外部に向かって反射させる光反射面24とされている。光反射面24は全反射面である。
内部層20および外部層21は同時に、一体となるよう形成されている。外部層21および内部層20の厚みは、この場合、成形性を考慮して、
外部層21:0.3〜1.0mm
内部層20:0.5〜5.0mm
が好ましい。
【0022】
内部層20の、外部層21が被着される面に形成される光反射面24は、金属、合成樹脂等の表面を平滑にしたもの、ガラスビーズを付着、埋設したもの、プリズム反射体を形成したもの、表面にアルミニウム、クロム、銀等の金属の被膜を蒸着、スパッタリング等により形成したものでもよいが、明度はL値70以上の範囲となされた色彩の表面とすることで容易に内部層20の表面に光反射面24を形成できる。さらに、明度をL値100近くの白色またはそれに近似する色彩とすれば、紫外線の反射効率を高め、反射される光線L6の紫外線量を高めて蓄光性蛍光物質23に蓄積されるエネルギーをいっそう大きくできる。但し、この実施形態の場合では、色彩として緑色としている。
また、光反射面24を、金属面を鏡面に加工して全反射面としたものとすれば、発光輝度の向上および蓄光に係わるエネルギーの蓄積の効率の何れについてもその効果が可及的に高められる。
【0023】
外部層21に含有される蓄光性蛍光物質23として、硫化亜鉛やそれに銅を配合した硫化系のものを用いている。あるいは、酸化アルミ、酸化ストロンチウム等の酸化物を主体として、それにユーロピューム等の希土類を配合した酸化系のものは、安全性、化学的安定性、耐熱性、発光時間の長さ等において利点があり好ましい。特に、アルミン酸系ストロンチウム系の蓄光性蛍光物質23は、発光輝度および発光時間が長く、好適である。
蓄光性蛍光物質23は、熱可塑性合成樹脂100重量部に対し、10〜20重量部程度配合することで、成形性に悪影響を及ぼすことなく充分な発光輝度が得られる。
【0024】
蓄光性成形体において、昼間においては図7に示すように、外部からの光線(例えば太陽光)が熱可塑性合成樹脂22を透過して蓄光性蛍光物質23に照射されることで、蓄光性蛍光物質23に外部が暗くなったときに発光するためのエネルギーが蓄積される。
内部層20において外部層21が被着された面が光反射面24とされていることで、蓄光性蛍光物質23には外部から直接入射する光線L4に加え、熱可塑性合成樹脂22を透過した光線L5が光反射面24により反射されて光線L6となって入射し、蓄光性蛍光物質23に蓄光されるエネルギーが大きくなって、発光輝度および発光の持続性が高められるようになっている。
【0025】
蓄光性蛍光物質23は、周囲が暗くなったときに蓄光性蛍光物質23から発光される光線は指向性がなく、周囲全体に向かって放射されることになる。このとき、外部へ向かう光線L1は、外部層21の熱可塑性合成樹脂22を透過して外部へ向かって放射される。内部層20方向に放射された光線L2は、外部層21が被着された面が光反射面24とされていることで、光反射面24によって反射されて外部へ向けて放射される。
【0026】
蓄光性蛍光物質23として、青色もしくはそれに近似する色調で発光するものを用いることが好ましい。発光色の色調を青色もしくはそれに近似するものとすることで、プルキニエ現象によって薄暮時における前板8の視認性を高めることになる。一般に、薄暮時は人間の心理が不安定になり易くなるから、その時間帯で災害等が発生した場合に前板8が高い視認性であれば、避難者等に対する安心感をさらに高めることにつながる。
なお、プルキニエ現象は、人間は周囲が暗いほど青い色に敏感になるという目の働きの一現象である。
【0027】
図1、図5、図7に示すように、前板8の表面には、誘導理由を示すための誘導理由表示部30としての印刷が施されている。この実施形態の場合、誘導理由表示部30を示す印刷として「津波」を簡略化した図柄31、山や丘等の「高所」を簡略化した図柄32および「人間」が移動する図柄33を、矩形の誘導理由表示印刷35の中に収まるように配置している。この誘導理由表示部30は前板8の前面上部の一部の左右方向中心領域に印刷されており、印刷として不透明色を着色している部分(図1、図5において斜線を付している)は、「津波」、「高所」および「人間」の図柄31,32,33以外の部分である。
【0028】
前板8の表面の下部左側には、誘導方向(避難方向)を示す矢印37を印刷した矢印シート38が貼着されている。矢印37は不透明色に着色(図5において斜線で示す)されており、矢印シート38の矢印37以外の部分は透明である。矢印シート38の右側隣に誘導場所(避難場所)までの距離表示40(図5において斜線を付している)を印刷した距離シート41が貼着されている。距離シート41において、距離表示40以外の部分は透明である。なお、矢印シート38および距離シート41は、図5においてともに仮想線で示している。
【0029】
特に、矢印シート38の矢印37を間隔を置いて包囲するように複数の発光ダイオード45取付け用の孔が形成されている。すなわち、蓄電池11にリード線46および基板47を介して電気的に各発光ダイオード45(例えば緑色に発光するダイオード)が接続され、各発光ダイオード45は、基板47に矢印形状を形成するよう予め取付けられている。各発光ダイオード45は、その一部(顕著に発光する側)が前板8に露出するよう基部が前板8に形成された孔に埋設されることで前板8に挿通支持されており、露出している部分は矢印シート38の孔から突出している構成である。
なお、矢印シート38の孔は、矢印37の印刷後に形成されることで、確実に矢印37を囲んで、発光ダイオード45によって、矢印の形状を確実に形成することができる。なお、前板8の孔の周壁と発光ダイオード45との間には、水の浸入を防止する、図示しない止水手段(例えばパテ等のシール部材)が介装されている。
矢印シート38および距離シート41の下方には、誘導場所(この場合「津波避難場所」)の文字表示48が不透明色で印刷されている。
【0030】
上記構成の誘導標識装置1では、例えば昼間の太陽光によって蓄光性成形体である前板8に蓄光された発光によって、例えば周りが暗くなった夜間であっても標識体6の視認性、換言すればその存在の認識性が視認者にとって極めて良好となる。しかも、太陽電池パネル12を介して蓄電池11に蓄電された電圧によって発光ダイオード45が発光するから、その発光によって誘導方向を極めて明確に指示することができるようになっている。なお、この発光ダイオード45の発光については、例えば50〜70回/分の常時点滅としている。
【0031】
上記のように、この誘導標識装置1では、前板8を蓄光性成形体によって構成することで、暗所での標識体6の存在の視認性を確保することができ、しかも発光ダイオード45を、矢印形状を構成として誘導方向を明確にすることができるから、例えば避難用の誘導標識装置1として特に有用である。また、標識体6が発光し、発光ダイオード45を常時点滅させることにより、避難場所や、避難方向、避難場所までの距離を視認者に意識付けることができるから、視認者は、津波の発生時等の非常時に対する心構えに貢献することができる。
また、昼から夜に至ることで誘導標識装置1の周囲が暗くなった場合に限らず、雨天時や霧の発生時であっても、前板8および発光ダイオード45が発光することで、視認性を確保することができる。
【0032】
図9は、誘導標識装置1においてその標識体6の別の実施形態を示す正面図である。図1ないし図8で示した誘導標識装置1では、その標識体6の前板8を縦長長方形に設定した。これに対して図9の実施形態では、前板8を横長長方形に設定し、誘導理由表示部30、矢印シート38、距離シート41、および文字表示48のレイアウトを変更し、したがって矢印シート38の位置に応じて発光ダイオード45の位置も変更している。
【0033】
このように、本発明は標識体6の前板8に、標識体6の存在を発光によって視認者に視認させるための蓄光性成形体を設け、視認者の誘導方向を複数の発光ダイオード45を設ける構成であれば、誘導理由表示部30、矢印シート38、距離シート41、および文字表示48のレイアウトや、発光ダイオード45の位置は、設置場所等の周囲の環境に応じて自由に選択することが可能である。
【0034】
図10ないし図14にさらに別の実施形態を示す。これは、誘導方向(矢印)を表示した方向領域部分50を蓄光成形体とは別部材とし、方向領域部分50を前板8に対してほぼ前板8の表面平面に平行な平面内で回転自在に取付けるための回転手段51を介して取付けた構成を有する。
【0035】
さらに具体的に、前板8の所定位置(図では下部左側)に、正面視して円形の孔52を形成しており、孔52の後側には環状に形成した環状取付け部53を前板8に一体的に形成している。この環状取付け部53の内周壁面に雌ネジが形成されている。
【0036】
方向領域部分50は、環状で外周部に雄ネジを形成した螺着部54と、螺着部54に比べて小径で、孔52と略同径かまたはわずかに小径に形成されら突出部55とを有する。この構成により、螺着部54と突出部55との間には環状の段付き面56が形成されており、突出部55に合成ゴム製のシールリング57を外嵌装着し、雄ネジと雌ネジを螺合し、シールリング57を段付き面56と前板8の裏面との間に介装するようにして、方向領域部分50を前板8に装着するようにする。すなわち回転手段51は、環状取付け部53およびその雌ネジ、螺着部54およびその雄ネジ、さらにシールリング57から構成されている。
【0037】
突出部55の後部には装着用溝58が形成されており、基板47に取付けられた複数の発光ダイオード45が基板47を介して方向領域部分50(例えば螺着部54)に着脱自在に取付けられている。方向領域部分50は透明な熱可塑性合成樹脂によって形成されされており、その表面には矢印37が抜かれるようにしてその外周部に発光ダイオード45の光を遮断する印刷60が施されている。したがって、発光ダイオード45は、矢印37に沿うよう基板47の前面に配置されている。
図12〜図14は、誘導理由表示部30、矢印シート38、距離シート41、および文字表示48のレイアウトの変形例を示している。
【0038】
図10ないし図14に示す実施形態の誘導標識装置1では、方向領域部分50を回転させることで矢印の方向、すなわち誘導方向を任意に選択して決定することができる。すなわち、設置場所に応じて矢印の方向を変えるようにすることで、汎用性が付与された構成となっている。
なお、矢印の方向の保持(方向領域部分50の回転位置の保持)は、シールリング57が段付き面56を後方へ押圧する弾性によって確保することが可能であるから、複雑な保持機構を備えることなく矢印の方向の保持ができる。
また、この実施形態では、方向領域部分50を透明な熱可塑性合成樹脂によって形成しており、その表面には矢印37が抜かれるようにしてその外周部に発光ダイオード45の光を遮断する印刷60を施していることにより、内照式の誘導標識装置1の構成となっている。
内照式の誘導標識装置1であっても、発光ダイオード45に対向する部分を透光性を有する材料で形成することにより、発光ダイオード45からの発光は明瞭に視認することができる。また、発光ダイオード45が標識体6に内装された内照式であるから、発光ダイオード45そのもの(あるいはその他の電気部品を含めて)が風雨から保護されることになる。
【0039】
上記各実施形態では、誘導標識装置1を屋外に設置する場合を示した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、屋内に設置することも可能である。この場合、基礎3および支柱4を省略して、標識体6をビル等の建屋の壁面に設置することが考えられる。そして、可及的に日光が照射され易い位置や場所に設置することで、蓄光性蛍光物質23に蓄積されるエネルギーを大きくし、また、太陽電池パネル12から蓄電池11に蓄積するエネルギーを大きくすることが好ましい。このように屋内に設置するようにしても、誘導用の標識として使用することができる。
なお、屋内に設置する場合、必要に応じて誘導理由表示部30である「津波」を簡略化した図柄31,32,33、山や丘等の「高所」を簡略化した図柄31,32,33を、火災、地震等の非常時を表す印刷とすることが好ましい。
【0040】
さらに、上記各実施形態では、前板8は蓄光性成形体によって構成したがこれに限定されず、蓄光性成形体の後面に補強板を重ねる構成とすることも好ましい。
また、誘導理由表示部30を含む最小の領域を回転手段51を介して蓄光性成形体の一部として、誘導方向(矢印の方向)と相まって違和感ないよう一致させることができるよう構成することも可能である。
また、発光ダイオード45は常時点滅でなくてもよく、遠隔操作によって必要に応じて点滅、あるいは点灯させる構成とすることもできる。また、例えば、周囲の明るさを検出するセンサを誘導標識装置1に設けて、このセンサからの信号に応じて、周囲が所定の暗さになったときに発光ダイオード45を発光させるよう構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態を示す誘導標識装置の使用状態を示す全体正面図
【図2】同じく側面図
【図3】同じく一部を省略した平面図
【図4】同じく標識体と支柱との取付け状態を示す拡大背面図
【図5】同じく標識体の正面図
【図6】同じく標識体の内部構造を示す概略図
【図7】同じく標識体の視認用面部(前板)の断面図
【図8】同じく標識体の視認用面部(前板)の断面図
【図9】同じくレイアウト等を変更した標識体の正面図
【図10】別の実施形態を示す誘導標識装置の要部を示す分解斜視図
【図11】同じく要部を示す断面図
【図12】同じくレイアウト等を変更した標識体の正面図
【図13】同じくレイアウト等を変更した標識体の正面図
【図14】同じくレイアウト等を変更した標識体の正面図
【符号の説明】
【0042】
1…誘導標識装置、3…基礎、4…支柱、5…取付け手段、6…標識体、7…背板、8…前板、10…側枠、11…蓄電池、12…太陽電池パネル、13…レール部材、20…内部層、21…外部層、22…熱可塑性合成樹脂、23…蓄光性蛍光物質、24…光反射面、L1,L2,L4,L5…光線、30…誘導理由表示部、31,32,33…図柄、35…誘導理由表示印刷、37…矢印、38…矢印シート、40…距離表示、41…距離シート、45…発光ダイオード、48…文字表示
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識体の視認用面部に、標識体の存在を発光によって視認者に視認させるための蓄光性成形体を設けるとともに、視認者の誘導方向を示す複数の発光ダイオードを設けていることを特徴とする誘導標識装置。
【請求項2】
複数の発光ダイオードは誘導方向を示す矢印形状を形成するよう配置されていることを特徴とする請求項1記載の誘導標識装置。
【請求項3】
各発光ダイオードは、その一部が視認用面部に露出するよう埋設されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘導標識装置。
【請求項4】
視認用面部全体が蓄光性成形体で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の誘導標識装置。
【請求項5】
標識体は箱型に形成されており、複数の発光ダイオードが標識体に内装されて視認用面部のうち発光ダイオードの対応部分が透光性材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の誘導標識装置。
【請求項6】
発光ダイオードが設けられている視認用面部の一部領域が、視認用面部に沿う面に平行な面内で回転自在に該視認用面部に取付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の誘導標識装置。
【請求項7】
視認用面部の一部に、発光ダイオードを回避して、誘導理由を示すための表示を施したシートを貼着するよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の誘導標識装置。
【請求項1】
標識体の視認用面部に、標識体の存在を発光によって視認者に視認させるための蓄光性成形体を設けるとともに、視認者の誘導方向を示す複数の発光ダイオードを設けていることを特徴とする誘導標識装置。
【請求項2】
複数の発光ダイオードは誘導方向を示す矢印形状を形成するよう配置されていることを特徴とする請求項1記載の誘導標識装置。
【請求項3】
各発光ダイオードは、その一部が視認用面部に露出するよう埋設されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘導標識装置。
【請求項4】
視認用面部全体が蓄光性成形体で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の誘導標識装置。
【請求項5】
標識体は箱型に形成されており、複数の発光ダイオードが標識体に内装されて視認用面部のうち発光ダイオードの対応部分が透光性材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の誘導標識装置。
【請求項6】
発光ダイオードが設けられている視認用面部の一部領域が、視認用面部に沿う面に平行な面内で回転自在に該視認用面部に取付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の誘導標識装置。
【請求項7】
視認用面部の一部に、発光ダイオードを回避して、誘導理由を示すための表示を施したシートを貼着するよう構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかに記載の誘導標識装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−129785(P2008−129785A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313076(P2006−313076)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】
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