説明

誘導発熱ローラ装置

【課題】 内部に誘導発熱機構を配備するローラ本体のたわみを、ローラ本体、誘導発熱機構の大きさにとらわれることなく、確実に防ぐことを目的とする。
【解決手段】 外端を自由端とするローラ本体の内部に、誘導発熱機構を配置してなる誘導発熱ローラ装置であって、ローラ本体1の機台2側の内端に駆動軸10の前端を当接させて連結し、この駆動軸10の後端側を機台2に回転自在に支持する。一方、誘導発熱機構3を、駆動軸10内を貫通する支持具14で支持し、その支持具14を駆動軸10で軸受け15を介してローラ本体1に対して静止状態で支持する。これにより、ローラ本体1、誘導発熱機構3の径に関係なく、機械強度の高い径の駆動軸が選定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘導発熱ローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導発熱ローラ装置において、内部を中空としたローラの軸線に沿う一方の端部側からローラ本体の内部に挿入した駆動軸を、ローラ本体の他方の端部側の端部に固定し、この駆動軸の回転によってローラ本体を回転駆動するとともに、ローラ本体の内部に配置された誘導発熱機構を、機台に固定して支持するようにした構成は、すでによく知られている。
【0003】
このような誘導発熱ローラ装置の従来例を示したのが図3である。同図において、1はローラ本体、71は駆動軸で、ローラ本体1の内部に挿入されてあり、その先端はローラ本体1にボルトおよびナット72により固定連結されている。駆動軸71の他端は、ローラ本体1より外側に導出され、その外側において、機台2に軸受73を介して回転自在に支持されている。外部に導出された駆動軸71に、外部から回転駆動力を与えることにより、ローラ本体1は回転される。すなわち、図7に示すようにローラ本体1は、機台2から外方へ突出する先端部で、機台2に回転自在に支持され先端部が機台2から外方へ突出する駆動軸71の先端部と連結固定されている。
【0004】
3は誘導発熱機構で、筒状の鉄心4とその外周に巻装されている誘導コイル5とによって構成されている。誘導発熱機構3はホルダー6により支持され、更にホルダー6は機台2に連結部材74を介して固定されている。7は誘導コイル5のリード線である。駆動軸71は誘導発熱機構3の内部中心を通っている。なお8はローラ本体1の周壁の肉厚部に設けられたジャケット室で、内部には気液二相の熱媒体が封入されている。
【特許文献1】特開平53−134252号公報
【0005】
ところでこのように構成された誘導発熱ローラ装置は、合成樹脂製の糸の延伸に使用されることがある。その使用例を示したのが図2である。ここでは、一対の機台2A、2Bとが用意されている。各機台には前記のような構成の誘導発熱ローラ装置Aの複数を千鳥状に設置する。延伸される糸Bは各装置Aに順次添纏されていく。糸Bが図示する矢印方向に繰り出されていくとき、繰り出されていく方向にある装置Aのローラ本体の回転速度が順次早く設定されているので、糸Bが各ローラ本体を添纏していく過程で、糸Bにテンションが作用して、順次延伸されていく。
【0006】
このように糸Bが延伸されていくとき、その糸Bに作用するテンションによってローラ本体には、外方の先端部がテンション方向に向かうようなたわみが発生する。このようなたわみがローラ本体に発生すると、糸の延伸作用に悪影響をおよぼす。またこのたわみが大きくなると、ローラ本体とその内部の誘導コイルとが接触し合って、誘導コイルを損傷してしまうことがある。さらには駆動軸71を折損してしまうこともある。
【0007】
このようなたわみの発生を防ぐためには、駆動軸71として機械的強度の大きいもの、すなわち径の大きいものを使用すればよいが、そのためにはローラ本体なり、誘導発熱機構として、内径の大きいものを使用しなければならない。そのため径の大きい駆動軸の使用が制限されることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、内部に誘導発熱機構を配備するローラ本体のたわみを、ローラ本体および誘導発熱機構の大きさにとらわれることなく、確実に防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、先端を自由端とする中空のローラ本体と、機台に回転自在に支持され前記ローラ本体を回転駆動する中空の駆動軸と、前記駆動軸内を貫通し前記ローラ本体の内部に導入された支持具に保持した誘導発熱機構を備え、前記駆動軸の前記機台から突出する先端部を前記ローラ本体の前記機台寄り側に連結固定するとともに、前記支持具を前記駆動軸の内部で軸受けを介して片持ち支持して前記誘導発熱機構を前記駆動軸の連結固定部よりも先端側の前記ローラ本体の中空内に、前記ローラ本体に対して静止状態で配置して誘導発熱ローラ装置を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、機台に回転自在に支持した駆動軸の先端を、ローラ本体の機台寄り側に連結固定するとともに、誘導発熱機構を駆動軸内で片持ち支持して連結固定部よりも先端側のローラ本体の中空内に配置したので、誘導発熱機構の径や取付けやローラ本体の内径に制限されることなく、駆動軸として径の大きいものを使用することができ、ローラ本体に生じるたわみの発生をこの駆動軸によって確実に回避することができる。また、誘導発熱機構を径の大きい駆動軸内で片持ち支持するので、ローラ本体の内部に配置した誘導発熱機構の配置位置が安定するとともに、誘導発熱機構のローラ本体の内部への配置や取り出しを簡単に行うことができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
内部に誘導発熱機構を配備するローラ本体のたわみを、ローラ本体および誘導発熱機構の大きさにとらわれることなく、確実に防ぐ目的を、機台に回転自在に支持した駆動軸の先端を、ローラ本体の機台寄り側で連結固定し、ローラ本体内に配置する誘導発熱機構を駆動軸で軸受けを介して片持ち支持することにより実現した。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例を図1によって説明する。なお図3と同じ符号を付した部分は同一または対応する部分を示す。本発明にしたがい、ローラ本体1の機台2寄り側の端部1Aに駆動軸10の先端部に設けたフランジ10Aをあてがい、そのままの状態で両者を、ボルトなどを利用して固定し連結する。駆動軸10の後端側の外周は、軸受11を介して機台2に回転自在に取り付けられる。ここではローラ本体に加わる糸によるテンションに基づいてたわみの発生する場合でも、そのたわみを阻止し得る程度の機械的強度を具備する直径をもっている駆動軸10を使用する。
【0013】
誘導発熱機構3は、駆動軸10の無い連結固定部よりも先端側のローラ本体1の中空内部に、ローラ本体1に対して静止状態で支持される。すなわち、図1に示すように、誘導発熱機構3を保持するホルダー6の後端にはパイプ状の支持具14が連結されてあり、支持具14を駆動軸10の内部において複数個所(図の例では2個所)で軸受15を介して支持している。つまり、誘導発熱機構3はその後端においてのみ片持ち支持するようにしたもの、すなわち、である。したがって誘導発熱機構3はその前端が自由端となる。なお、12はローラ本体1の外端を閉塞している磁性板である。また、誘導コイル5から導出されたリード線7は支持具14の中を通って外部に導出されている。
【0014】
支持具14は駆動軸10の後端より外部に延長されている。そしてその延長された先端に、駆動軸10の回転につられて回転することのないように、回り止め具5が設けられている。16は回転トランスで、駆動軸10と一体に回転する回転側コイル17と、支持具14と一体の固定側コイル18とによって構成されている。これはローラ本体の温度を検出するための温度検出計Mからの電気的信号を静止側に伝送するのに利用するためのものであり、温度検出器Mと回転側コイル17とは、リード線Lで接続されている。19は固定側コイル18からの引出端子である。
【0015】
図示する構成から理解されるように、駆動軸10はその先端部に設けたフランジ10Aにおいてローラ本体1の機台2寄り側の端部1Aに当接して連結しているので、従来のように駆動軸をローラ本体の内部に通す必要なく、ローラ本体1を駆動軸10によって回転駆動させることができる。また、誘導発熱機構3を駆動軸14内で片持ち支持しているので、ローラ本体1、誘導発熱機構3の大きさ、すなわちその各内径に制限されることなく、自由に駆動軸10としてその径を選定することができ、したがってローラ本体1のたわみを抑制し得る機械的強度をこの駆動軸10に自由に付与することができるようになる。なお、図示する構成では、駆動軸10の先端をローラ本体1の中空内に嵌め込み、先端部に設けたフランジ10Aをローラ本体1の端面にあてがって連結固定しているが、このようなフランジあるいは駆動軸の先端部を誘導発熱機構3と重ならないローラ本体1の機台2寄り側の中空内で連結固定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の使用例を示す斜視図である。
【図3】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ローラ本体
1A 端部
2 機台
3 誘導発熱機構
10 駆動軸
10A フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端を自由端とする中空のローラ本体と、機台に回転自在に支持され前記ローラ本体を回転駆動する中空の駆動軸と、前記駆動軸内を貫通し前記ローラ本体の内部に導入された支持具に保持した誘導発熱機構を備え、前記駆動軸の前記機台から突出する先端部を前記ローラ本体の前記機台寄り側に連結固定するとともに、前記支持具を前記駆動軸の内部で軸受けを介して片持ち支持して前記誘導発熱機構を前記駆動軸の連結固定部よりも先端側の前記ローラ本体の中空内に、前記ローラ本体に対して静止状態で配置してなることを特徴とする誘導発熱ローラ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−262926(P2008−262926A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189521(P2008−189521)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【分割の表示】特願2000−366711(P2000−366711)の分割
【原出願日】平成12年12月1日(2000.12.1)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】