説明

誘電体磁器および積層型電子部品

【課題】AC電界に対する室温及び100℃近傍の比誘電率の変化が小さく、DC電界印加による比誘電率の減少率の小さい誘電体磁器を提供する。
【解決手段】誘電体セラミックスからなる誘電体磁器であって、前記誘電体セラミック結晶のc軸及びa軸の格子定数比c/aが1.004以上であり、比誘電率の最大温度が、0.15V/μm以下の測定交流電界において60〜125℃、且つ0.15V/μmより大きい測定交流電界において60℃未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器および積層型電子部品に関するものであり、より詳細には、例えば誘電体層が2μm以下の薄層誘電体磁器で構成される単位体積当たりの容量の大きな積層セラミックコンデンサ等の形成に特に有用な誘電体磁器および該磁器を用いて形成された積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化の要求が高まってきている。このような要求に応えるために、積層セラミックコンデンサ(MLCC)においては、誘電体層を薄層化することにより静電容量を高めると共に、誘電体層の積層数を増やすことにより、小型・高容量化を図っている。
【0003】
また、近年電子機器において電子回路の高速化とともに、回路の低電圧化、大電流化が進んでいる。低電圧化、大電流化により回路の温度上昇が大きくなり、従来に比べより高い動作保証温度が要求されている。積層型電子部品に対しても、100℃近傍での特性発現および安定動作保証が要求されている。
【0004】
この為、積層型電子部品を構成する誘電体層の形成に使用される誘電体磁器については、小型・高容量化の為に、大きな比誘電率が要求されることはもちろんのこと、高温での性能実現のために、誘電特性の温度に対する依存性(温度依存性)がより小さく、薄層化により増大する直流電界に対する依存性(DCバイアス依存性)が小さいものが望まれている。特に、室温以上の高温で実効容量の大きなものが望まれている。
【0005】
このような誘電体磁器として、強誘電体であるBaTiOが用いられており、室温近傍に遂次相転移を示す事に起因して、室温での比誘電率は大きいのはもちろんの事、温度依存性も小さいという特徴があった(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平10−308321号公報
【特許文献2】Euro. Ceram. 2, vol.3, pp.1909-13 (1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、強誘電性を示す材料ほど誘電率はAC電界依存性が高いため、強誘電性の高い特許文献1、2に記載の誘電体磁器では、AC電界が大きくなると共に、100℃近傍の温度領域における比誘電率も大きく変化し、そのAC電界依存性が大きいという問題があった。
【0007】
また、薄層化による実効印加電界の増大により125℃以下の比誘電率の増大率が増加する。従来のBaTiOでは、125℃より低温では、室温近傍でブロードな比誘電率ピークを持ち、AC電界の増大とともにピーク温度は殆ど変わらず比誘電率が増大するが、AC電界により励起増大した比誘電率については、DCバイアス印加による減少率も大きい問題があった。
【0008】
例えば、従来の誘電体磁器は、図3に示したように、低いAC電界が印加された低AC電界時には、約120℃付近に最大のピークが存在し、約100℃付近の比誘電率は低い。そのため、高いAC電圧が印加された高AC電界時には、100℃付近の比誘電率の変化が大きくなる。
【0009】
また、特許文献1、2に記載の誘電体磁器では、室温より高温で、大きな比誘電率と小さなAC及びDC電界依存性を両立する材料を得る事が出来なかった。
【0010】
従って、本発明の目的は、AC電界に対する室温及び100℃近傍の比誘電率の変化が小さく、DC電界印加による比誘電率の減少率の小さい誘電体磁器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、格子定数を制御し、低いAC電界の印加時における比誘電率のピークを60〜125℃に移動させることで、100℃近傍においても大きな比誘電率を実現するとともに、そのAC電圧依存性を小さくし、また、DC電界印加に対する変化率も小さくすることができるとの知見に基づき、その結果、室温から100℃近傍の温度範囲において大きな実効容量を実現する事ができる。
【0012】
即ち、本発明の誘電体磁器は、誘電体セラミックスからなる誘電体磁器であって、前記誘電体セラミック結晶のc軸及びa軸の格子定数比c/aが1.004以上であり、比誘電率の最大温度が、0.15V/μm以下の測定交流電界において60〜125℃、且つ0.15V/μmより大きい測定交流電界において60℃未満であることを特徴とする。
【0013】
特に、前記誘電体セラミック結晶が、金属元素として少なくともMg、希土類元素、Ba、及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶からなり、該ペロブスカイト型酸化物結晶の中心よりも表面にMg及び希土類元素が多く存在し、前記誘電体セラミック結晶粒子の平均粒子径が0.3μm以下であることが好ましい。これにより、焼結時の粒成長を抑制することができるため、結晶粒子内部の優れた誘電特性と結晶粒界の優れた絶縁性を容易に得ることができる。特に、誘電体セラミック結晶粒子の平均粒子径を0.3μm以下とすることで、比誘電率の温度依存性をより効果的に改善できる。
【0014】
前記希土類元素が、Y、Tb、Dy、Ho、Er及びYbの少なくとも1種であることが好ましい。これにより、添加する希土類元素がペロブスカイト構造のAサイトを占有する事によりドナー元素として有効に働き、高温高電圧負荷に対する寿命が大きくなるという効果が期待できる。
【0015】
誘電体セラミックスが、Mgを酸化物換算で0.05〜0.5質量%、希土類元素を酸化物換算で0.1〜1.7質量%の割合で含有することが好ましい。これにより、高い比誘電率を実現できるという効果が期待できる。
【0016】
誘電体セラミックスが、MnをMnCO換算で0.4質量%以下の割合で含有することが好ましい。これにより、高い絶縁抵抗と大きな比誘電率および小さなDCバイアス依存性を実現するという効果が期待できる。
【0017】
前記誘電体セラミックスが、前記誘電体セラミック結晶粒子間に存在する2面間粒界に少なくともBa、Ca、Siを含有し、前記2面間粒界の粒界領域幅が1.2nm以下であり、該粒界領域において格子欠陥を含む歪んだ結晶格子像が観察されることが好ましい。これにより、大きな粒界抵抗を実現するとともに、粒界層厚が小さくなることで、小さな比誘電率を持つ粒界による磁器誘電率の低下が抑制され、大きな比誘電率が得られるという効果が期待できる。
【0018】
本発明の積層型電子部品は、上記の誘電体磁器の内部に、卑金属からなる内部電極層を複数それぞれ平行に、且つ一定の間隔をおいて配列してなることを特徴とする。これにより、小型で高容量のコンデンサを安価に作製できるという効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図を用いて説明する。図1は、比誘電率の温度依存性を示すもので、低AC電界を印加した場合と、高いAC電圧を印加した場合とを表示したものである。また、図2は、図1において、AC電圧を徐々に増加させた場合の比誘電率の温度依存性を示したものである。
【0020】
本発明の誘電体磁器は、c軸及びa軸の格子定数比c/aが1.004以上の誘電体セラミック結晶で構成されることを特徴とする。格子定数比c/aが1.004以上では、誘電体磁器中の誘電体セラミック結晶粒子に作用している応力が緩和され、結晶格子がその粒子単体本来の大きな分極率を実現することができ。これにより、誘電体セラミック結晶の平均粒子径が小さくても、平均粒子径が大きなバルク体の結晶状態により近い結晶状態となり、大きな比誘電率を実現できる。
【0021】
また、本発明の誘電体磁器は、比誘電率の最大温度が、0.15V/μm以下の測定交流電界において60〜125℃、且つ0.15V/μmより大きい測定交流電界において60℃未満であることも特徴とするものである。
【0022】
例えば、0.15V/μm以下の低いAC電界における比誘電率の最大ピークは、従来、室温〜50℃の温度領域に存在していたが、この最大ピークを60〜125℃に存在させることで、100℃近傍における比誘電率を大きくでき、且つ100℃近傍における比誘電率の変化を小さくすることができる。これにより、DC電界を印加しても、100℃近傍における比誘電率の低下を小さくすることができる。
【0023】
即ち、図1によれば、0.15V/μm以下の低いAC電界において、比誘電率の最大ピークは約100℃に存在しているため、AC電界が、例えば0.5V/μm以上と高くなっても、100℃近傍での比誘電率の変化率を、図3に示した従来の材料の比誘電率に比べて顕著に低減することができる。
【0024】
本発明の誘電体磁器を構成する誘電体セラミックスの結晶が、金属元素として少なくともMg、希土類元素、Ba、及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶からなり、該ペロブスカイト型酸化物結晶の中心よりも表面にMg及び希土類元素が多く存在し、前記誘電体セラミック結晶粒子の平均粒子径が0.3μm以下であることが好ましい。
【0025】
例えば、BaTiOのBaの一部をMgやYで置換したものを例示できる。
【0026】
そして、Mgや希土類元素が、ペロブスカイト型酸化物結晶の中心よりも表面に多く存在することが好ましい。結晶表面のMgや希土類元素が、焼結時の粒成長を抑制するとともに、結晶粒子内部にはMgや希土類元素が少ないため、ペロブスカイト型酸化物結晶の優れた誘電特性を発現でき、さらにMgや希土類元素の多い結晶粒界における優れた絶縁性を容易に得ることができる。特に、誘電体セラミック結晶粒子の平均粒子径を0.3μm以下、特に、0.2μm以下とすることによって、比誘電率の温度依存性をさらに小さくすることが容易になる。
【0027】
なお、誘電体セラミック結晶粒子の平均粒子径の下限値は、比誘電率を確保するという理由で、0.05μm、特に0.07μmであることが好ましい。
【0028】
希土類元素は、特に、Y、Tb、Dy、Ho、Er及びYbの少なくとも1種であることが好ましい。これらの希土類元素は、ペロブスカイト構造のAサイトを占有し、ドナー元素として有効に働き、高温高電圧負荷に対する寿命を大きくするという効果が期待できる。さらに、これらの中でも、Yが高寿命化とコストの点で好ましい。
【0029】
Mgを酸化物換算で0.05〜0.5質量%、特に0.1〜0.3質量%、希土類元素を酸化物換算で0.1〜1.7質量%、特に0.2〜1.2質量%の割合で含有することが好ましい。これにより、比誘電率をより高める効果が期待できる。
【0030】
さらに、本発明の誘電体磁器は、Mgや希土類元素の他の成分を含有させることもできる。例えば、還元雰囲気における焼成で生成するBaTiO結晶中の酸素欠陥を補償し、絶縁性に間する信頼性を向上するために、MnをMnCO換算で0.4質量%以下、特に、0.2質量%以下の割合で含有することが好ましい。その結果、高い絶縁抵抗と大きな比誘電率および小さなDCバイアス依存性を実現するという効果が期待できる。
【0031】
誘電体セラミックスは、透過型電子顕微鏡による元素分析によって誘電体セラミック結晶粒子間に存在する2面間粒界に少なくともBa、Ca、Siを含有し、透過型電子顕微鏡による格子像観察において2面間粒界の粒界領域幅が1.2nm以下、特に、1nm以下であり、粒界領域において格子欠陥を含む歪んだ結晶格子像が観察されることが好ましい。これにより、大きな粒界抵抗を実現するとともに、粒界層厚が小さくなることで、小さな比誘電率を持つ粒界による磁器誘電率の低下が抑制され、大きな比誘電率が得られるという効果が期待できる。
【0032】
本発明の誘電体磁器の製造方法を説明する。
【0033】
また、原料のBaTiO粉末として、平均粒径が、0.03〜0.3μm、特に0.05〜0.2μmの粉末、例えば、ゾルゲル法、蓚酸法、水熱合成法などによって合成された粉末を使用することができる。なお、上記BaTiO粉末は、Mgや希土類元素が固溶していないものである。
【0034】
上記原料粉末に対して、所定量のMg又は希土類元素の酸化物や炭酸塩などの化合物、所望によりMn化合物などの副成分と、ガラス粉末と溶媒を回転ミルなどで10〜30時間混合する。
【0035】
ここで用いるガラス粉末として、Si及び/又はBを含有し、平均粒径が0.5μm以下のものを用いるのが良い。ガラスを用いることにより、焼結温度を低減できるため、ペロブスカイト結晶粒子内へのMgや希土類元素の拡散量を制御でき、ペロブスカイト結晶の表面にMgや希土類元素が多く固溶し、内部の固溶を少なくすることが容易にできる。
【0036】
このようにして作成した誘電体シートの厚みは、電子部品の小型化、大容量化を実現するために、1〜5μm、特に、1〜2.5μmであることが好ましい。
【0037】
次に、有機バインダや有機溶媒を添加して成形用スラリーを調整する。有機バインダとしては、ポリビニルアルコールなどを例示できる。この成形用スラリーを用いてテープ上の誘電体シートを成形する。成形には、引き上げ法、ドクターブレード法、リバースロールコータ法、グラビアコータ法、スクリーン印刷法、グラビア印刷などの周知の方法を用いることができる。
【0038】
得られた誘電体シートの表面に、Ni、Cuなどの卑金属を含有する導電性ペーストを塗布して内部電極パターンを形成する。なお、導電性ペーストの塗布は、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法などの周知の印刷方法を採用することができる。
【0039】
内部電極パターンの厚みは、コンデンサの小型化、薄型化、及び高信頼性の観点から、2μm以下、特に1.5μm以下、更には1μm以下であるのが望ましい。
【0040】
このようにして表面に内部電極パターンを形成した誘電体シートを複数積層し、得られた積層体を脱脂処理を行い、しかる後に、非酸化性雰囲気で焼成し、積層焼結体を作製する。焼成温度は、1100〜1350℃程度で、2〜3時間の焼成時間に設定することができる。焼成後に、所望によって、酸化雰囲気において熱処理することによる酸化処理を行うことができる。この処理によって、還元された誘電体層を酸化し、絶縁特性を改善することも可能である。
【0041】
最後に、得られた積層焼結体に対して、各端面にCuを含む導電性ペーストを塗布して焼付け、さらにその上にメッキを施し、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成し、積層セラミックコンデンサを得ることができる.
このようにして得られた本発明の積層型電子部品は、誘電体磁器が高い比誘電率を有し、しかも誘電特性の温度依存性やDCバイアス依存性が小さく、優れた特性を有している。例えば、20℃での比誘電率が2200以上、特に3000以上であり、−25〜85℃における温度変化率は±10%以下、85℃での比誘電率のDCバイアス依存性は−25%以下にすることができる。
【実施例】
【0042】
原料粉末として水熱合成で得られ、表1に示す平均粒径を有するBaTiO粉末を準備した。次いで、BaTiO粉末、MgCO粉末、Y粉末、BaCO粉末、MnCO粉末を表1に示した割合で混合し、ブチラール樹脂およびトルエンを加えてスラリーを作製した。
【0043】
得られたスラリーをドクターブレード法によりPETフィルム上に塗布し、厚みが9μmのセラミックグリーンシートを作製した。PETフィルムを除去したグリーンシートを10枚積層し端面セラミックグリーンシートとした。
【0044】
次に、同様にしてPETフィルム上に厚みが2.3μmのセラミックグリーンシートを作製した。次いで、平均粒径が0.2μmのNi粉末を45質量%、ビヒクル55質量%を3本ロールで混練して内部電極ペーストを作製した。なお、ビヒクルは、エチルセルロース5.5質量%、オクチル
アルコール94.5質量%で構成した。
【0045】
上記のセラミックグリーンシートの表面にスクリーン印刷装置を用いて内部電極ペーストを塗布して、内部電極パターンを形成した。次いで、内部電極パターンを形成したセラミックグリーンシートを300枚積層し、さらにその上に端面セラミックグリーンシートを積層し、コンデンサ用積層成形体を作製した。
【0046】
得られた成形体を切断し、10−7Paの酸素分圧を含有する窒素雰囲気中で、表1に示す温度で焼成し、さらに10−2Paの酸素分圧を含む窒素雰囲気中で1000℃、5時間の熱処理を行って積層部品を得た。
【0047】
得られた積層部品の端面に銅ペーストを900℃で焼付け、さらにNi/Snメッキを施し、内部電極と接続する外部端子を形成し、積層型電子部品を作製した。
【0048】
作製した積層型電子部品を研磨し、電極の有効面積を求めた。また、破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により誘電体層の厚みを求めた。その結果、積層型電子部品は、内部電極間の誘電層厚みが1.80μm、積層数が300層の体積層セラミックコンデンサとして形成されていた。
【0049】
DCバイアス依存性Δε/εは下記式より求めた。
【0050】
Δε/ε={ε(3.6V,85℃)−ε(0V,20℃)}×100/ε(0V,20℃)
また、電気特性はLCRメーターを用いて−25〜85℃の温度範囲において、AC0.5V、測定周波数1kHzの条件で静電容量を測定し、20℃を基準温度として、温度Tにおける比誘電率を算出した。比誘電率の温度変化率TCCを次式から求めた。
【0051】
CC(%)={ε(T)−ε(20℃)}×100/ε(20℃)
なお、Δε/ε及びTCCは絶対値が小さい方が優れた特性を示す。表1に結果を示す。
【表1】

【0052】
本発明の試料No.2〜12、15及び16は、−25℃におけるTCCが−5%〜2%、85℃におけるTCCが−7〜−3%、Δε/εが−11〜−24%であった。
【0053】
これに対して、c/aが1.004未満の本発明の範囲外の試料No.1、13及び14は、85℃におけるTCCが、−13〜−20%であり、比誘電率の温度変化率が大きかった。また、Δε/εが−32〜−36%で、DCバイアス依存性が悪かった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の誘電体磁器の比誘電率の温度特性を示す説明図である。
【図2】本発明の誘電体磁器の比誘電率の温度特性を示す説明図であり、図1においてAC電圧を徐々に増加させた場合を示すものである。
【図3】従来の誘電体磁器の比誘電率の温度特性を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体セラミックスからなる誘電体磁器であって、前記誘電体セラミック結晶のc軸及びa軸の格子定数比c/aが1.004以上であり、比誘電率の最大温度が、0.15V/μm以下の測定交流電界において60〜125℃、且つ0.15V/μmより大きい測定交流電界において60℃未満であることを特徴とする誘電体磁器。
【請求項2】
前記誘電体セラミック結晶が、金属元素として少なくともMg、希土類元素、Ba、及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物結晶からなり、該誘電体セラミック結晶の中心よりも表面にMg及び希土類元素が多く存在し、前記誘電体セラミック結晶粒子の平均粒子径が0.3μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体磁器。
【請求項3】
前記希土類元素が、Y、Tb、Dy、Ho、Er及びYbの少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の誘電体磁器。
【請求項4】
誘電体セラミックスが、Mgを酸化物換算で0.05〜0.5質量%、希土類元素を酸化物換算で0.1〜1.7質量%の割合で含有することを特徴とする請求項2又は3記載の誘電体磁器。
【請求項5】
誘電体セラミックスが、MnをMnCO換算で0.4質量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の誘電体磁器。
【請求項6】
前記誘電体セラミックスが、前記誘電体セラミック結晶粒子間に存在する2面間粒界に少なくともBa、Ca、Siを含有し、前記2面間粒界の粒界領域幅が1.2nm以下であり、該粒界領域において格子欠陥を含む歪んだ結晶格子像が観察されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の誘電体磁器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の誘電体磁器の内部に、卑金属からなる内部電極層を複数それぞれ平行に、且つ一定の間隔をおいて配列してなることを特徴とする積層型電子部品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−165259(P2006−165259A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354335(P2004−354335)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】