説明

調圧弁

【課題】ダイアフラム式の調圧弁と同等の機能を、より安価な構造で確保することのできる調圧弁を提供する。
【解決手段】流入口Aから弁室B、弁孔C及び調圧室Dを経由して流出口Eへ到る流路が形成されたボディ10と、このボディ10における弁室Bと反対側のシリンダ部内に移動可能に配置され調圧室Dの容積を増減する調圧ピストン20と、弁孔Cの端部に形成された弁座11cと接離可能であって弁室B内に移動可能に配置され流出口E側の二次圧が背圧として与えられた調圧シャフト30と、この調圧シャフト30を弁孔Cの開放方向へ調圧ピストン20を介して付勢する調圧スプリング22と、調圧シャフト30を弁孔Cの閉塞方向へ付勢するサポートスプリング32を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調圧弁であって、例えば便座の局部洗浄装置や、食器洗い機などの給水配管に好適に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
便座の局部洗浄装置において、給水源からの洗浄水は、調圧弁によって所定の水圧に調圧された後、図示されていないヒータや電磁弁を経由して人体局部に吐出されるようになっている。図7は、このような局部洗浄装置に搭載される従来の調圧弁(減圧弁)を示す断面図である。
【0003】
この調圧弁100は、流入口100Aから弁室100B、弁孔100C及び調圧室100Dを経由して流出口100Eに到る給水路が形成されたボディ本体101と、弁室100Bを閉塞するようにボディ本体101に結合された弁ホルダ102と、この弁ホルダ102と反対側でボディ本体101に結合されたカバー103と、外周縁104aがボディ本体101とカバー103の間に密接状態で挟着されて前記調圧室100Dを画成するダイアフラム104と、カバー103とダイアフラム104の間に配置されてこのダイアフラム104を調圧室100D側へ向けて付勢するスプリング105と、弁室100Bから弁孔100C内を通って一端がダイアフラム104の中央部に螺子106a及びプレート106b,106cを介して結合された調圧シャフト106とを備える。
【0004】
調圧シャフト106には、弁孔100Cにおける弁室100B側の弁座101aに接離可能に対向する円錐状の弁体部107が形成されている。また、この調圧シャフト106は、ダイアフラム104との結合部と反対側が、弁ホルダ102におけるガイド筒部102aの内周面にOリング108を介して軸方向移動可能に密接されており、流入口100Aからの一次圧力が軸方向移動力として作用しないように、前記ガイド筒部102aの内径が弁孔100Cと同径に形成されると共に、前記弁ホルダ102と調圧シャフト106との間に前記Oリング108によって画成された背圧室100Fが、この調圧シャフト106に形成された導圧孔106dを介して調圧室100Dと連通している。
【0005】
すなわち上記構成を備える従来の調圧弁100は、例えば、流出口100E側の二次圧が高くなると、ダイアフラム104がスプリング105による付勢力と均衡する方向すなわちスプリング105を圧縮する方向へ変位し、これに伴って調圧シャフト106が変位して弁体部107が弁孔100Cの縁部に形成された弁座101aに接近するので、弁孔100Cの開口面積が縮小され、流量が絞られて二次圧が減圧されるのである(下記の特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3871065号公報
【0006】
しかしながら、上記従来の調圧弁100によれば、ダイアフラム104に加わる調圧室100Dの圧力によって調圧シャフト106を引張る構造となっているので、この引張り力はダイアフラム104の径と圧力により変化するが、温水洗浄便座の局部洗浄装置に用いられる調圧弁では10N以上の引張り力となり、調圧シャフト106を合成樹脂などで製作した場合、螺子106aとの螺合部や弁体部107の上側の最小径部などに応力が集中して破損するおそれがある。このため、調圧シャフト106は金属製とせざるを得ず、その加工コストが高いものとなっていた。しかもダイアフラム104は補強用の基布を埋設してゴム又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料で成形されるために高価であり、しかもこれを調圧シャフト106に結合するための螺子106a及びプレート106b,106cも必要になって、部品数が多いので、全体としての製造コストが高くならざるを得なかった。
【0007】
また、近年は調圧弁の代わりに水ガバナを用いて定流量とした上で、捨て水をすることによって、適正水圧及び必要流量に調整する手法も用いられているが、この場合は、余った水を常に捨てることになるので、近年のエコロジーの要求に逆行することになり、好ましくなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、従来のダイアフラム式の調圧弁と同等の機能を、より安価な構造で確保することのできる調圧弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る調圧弁は、流入口から弁室、弁孔及び調圧室を経由して流出口へ到る流路が形成されたボディと、このボディにおける前記弁室と反対側のシリンダ部内に移動可能に配置され前記調圧室の容積を増減する調圧ピストンと、前記弁孔の端部に形成された弁座と接離可能であって前記弁室内に移動可能に配置され前記流出口側の二次圧が背圧として与えられた調圧シャフトと、この調圧シャフトを前記弁孔の開放方向へ前記調圧ピストンを介して付勢する調圧スプリングと、前記調圧シャフトを前記弁孔の閉塞方向へ付勢するサポートスプリングと、を備えるものである。
【0010】
請求項2の発明に係る調圧弁は、請求項1に記載の構成において、調圧ピストンと調圧シャフトが、互いに軸方向に衝合されたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明に係る調圧弁によれば、調圧シャフトを動作させる調圧手段として高価なダイアフラムに代えて調圧ピストンを用いることによって、部品単価が低減されるばかりでなく、ダイアフラムと調圧シャフトとの結合手段も不要になるため、部品数が削減され、ダイアフラムを用いた調圧弁と同等の減圧機能を、低コストで実現することができる。
【0012】
請求項2の発明に係る調圧弁によれば、調圧ピストンと調圧シャフトが、互いに軸方向に衝合されただけであって、調圧スプリング及びサポートスプリングの付勢力によって互いに衝合された状態で動作するものであるため、調圧ピストンと調圧シャフトを互いに結合する必要がなく、その結果、組立工数が削減されるばかりか、調圧シャフトを合成樹脂成形品とすることもできるため、一層の低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る調圧弁の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず図1は、本発明に係る調圧弁の第一の形態を示す断面図である。
【0014】
図1において、参照符号10はボディで、図における上側の第一筒部11a及び下側の第二筒部11bが互いに同心的に形成されたボディ本体11と、前記第二筒部11bに挿入された状態でボディ本体11に結合された弁ホルダ12と、前記第一筒部11aに一部が挿入された状態でボディ本体11に結合されたカバー13とからなる。第二筒部11bと弁ホルダ12との間はOリング14で密封され、第一筒部11aとカバー13との間はOリング15で密封されている。
【0015】
ボディ10には、流入口Aから弁室B、弁孔C及び調圧室Dを経由して流出口Eに到る給水路が形成されている。弁室Bは、ボディ本体11の第二筒部11bとこれに挿入された弁ホルダ12との間に形成されており、流入口Aは、前記第二筒部11bの周壁を弁室Bへ向けて貫通して形成されており、弁孔Cは、第二筒部11bの内周と第一筒部11aの内周との間に同心的に開設されて、弁室Bと調圧室Dとを連通するものであり、調圧室Dは、第一筒部11aとこれに結合されたカバー13との間に形成されており、流出口Eは、調圧室Dからカバー13と反対側へ向けて延びるようにボディ本体11に開設されている。
【0016】
カバー13には、調圧室Dと同心の円筒状のシリンダ部13aが形成され、調圧室Dに開口している。そしてこのシリンダ部13a内には調圧ピストン20が軸方向移動可能な状態で挿入され、その外周溝に装着されたパッキン21が、前記シリンダ部13aの内周面に摺動可能に密接されている。そして調圧室Dは、この調圧ピストン20の動作によって容積が可変となっている。なお、シリンダ部13aの内周面に形成された溝に装着されたパッキン21が、調圧ピストン20の外周面に摺動可能に密接された構成とすることもできる。
【0017】
カバー13のシリンダ部13a内における調圧ピストン20の背面側(調圧室Dと反対側)のスプリング室13bには、この調圧ピストン20を調圧室D側へ向けて付勢する調圧スプリング22が配置され、調圧ピストン20の背面に形成された保持筒部20aに保持されている。調圧ピストン20における調圧室D側の端面には、ボディ本体11の第一筒部11aの底面に当接することによって、調圧スプリング22の付勢力による調圧ピストン20の移動を制限する突起20bが形成されている。また、前記スプリング室13bは、カバー13に開設された排水ポート13cを介して大気開放されている。
【0018】
弁室B内には、調圧シャフト30が軸方向移動可能に配置されている。詳しくは、この調圧シャフト30は合成樹脂で成形されたものであって、弁孔Cにおける弁室B側の端部に形成された弁座11cと接離可能な円錐状弁体部30aと、その小径側から軸方向へ延びて弁孔Cに遊挿されると共に、調圧ピストン20における調圧室D側の端面に形成された凹部20cに挿入され、先端がこの凹部20cの底面に衝合された軸部30bと、前記円錐状弁体部30aの大径側から軸部30bと反対側へ延びて、端部外周が弁ホルダ12における支持筒部12aに挿入された被支持筒部30cからなる。そして、上述した調圧ピストン20を付勢する調圧スプリング22の付勢力は、この調圧ピストン20を介して、調圧シャフト30を弁孔Cの開放方向(調圧シャフト30の円錐状弁体部30aを弁座11cから離間させる方向)に作用している。
【0019】
調圧シャフト30の被支持筒部30cの外径は弁孔C(弁座11c)の内径と同径であって、この被支持筒部30cの外周面には、弁ホルダ12における支持筒部12aの内周に装着されたパッキン31が、摺動可能に密接されている。また、被支持筒部30cにはサポートスプリング32が保持されていて、その端部が前記支持筒部12aの底部に当接しており、このサポートスプリング32によって、調圧シャフト30は弁孔Cの閉塞方向(円錐状弁体部30aが弁座11cに近接する方向)へ付勢されている。
【0020】
調圧シャフト30の被支持筒部30cと弁ホルダ12における支持筒部12aの底部との間は、パッキン31によって弁室Bから隔絶した背圧室Fとなっており、この背圧室Fには、弁ホルダ12に開設された導圧孔12bを通じて、ボディ本体11の流出口E側の二次圧が、調圧シャフト30の背圧として導入されるようになっている。
【0021】
以上のように構成された第一の形態による調圧弁において、不図示の給水源からの洗浄水は、流入口Aから弁室B、弁孔C(弁座11cと調圧シャフト30との間の絞り流路)及び調圧室Dを経由して流出口Eへ吐出される。
【0022】
調圧室D内を通る洗浄水の圧力は、流出口E側の圧力(二次圧)に相当し、この二次圧は、調圧ピストン20を、調圧スプリング22の圧縮方向(図1における上方)へ移動させるように作用するので、調圧ピストン20は、二次圧による軸方向移動力と、調圧スプリング22による軸方向付勢力とが均衡する位置に保持されることになる。なお、調圧ピストン20への二次圧の作用面積(受圧面積)は、調圧ピストン20の外周溝に装着されたパッキン21によるシール径の断面積、言い換えればシリンダ部13aの内径の断面積に等しい。
【0023】
また、調圧室D内の二次圧は、調圧シャフト30に対しては調圧ピストン20から引き離す方向(図1における下方)に作用するが、この二次圧は、流出口E側では、導圧孔12bを通じて背圧室Fに調圧シャフト30の背圧として導入され、この背圧の作用径(調圧シャフト30における被支持筒部30cの外径)は、調圧室Dからの二次圧の作用径(弁孔Cの内径)と同径であるため、二次圧による調圧シャフト30の軸方向移動力は相殺される。このため、調圧シャフト30にはサポートスプリング32の付勢力のみが軸方向移動力として作用しており、このサポートスプリング32の付勢力によって、調圧シャフト30は常にその軸部30bが調圧ピストン20の凹部20cの底面に衝合された状態を維持するように、調圧ピストン20に追随動作することになる。
【0024】
したがって、例えば流入口Aから流入する洗浄水の圧力(一次圧)の上昇によって、調圧室D内に印加される二次圧が高くなり、調圧ピストン20が調圧スプリング22を圧縮させながらシリンダ部13a内を図1における上方へ変位して行くと、調圧シャフト30がサポートスプリング32の付勢力によって調圧ピストン20に追随して上方へ変位し、この調圧シャフト30の円錐状弁体部30aが弁座11cに接近するので、この弁座11cと円錐状弁体部30a間で流路が絞られ、調圧室D内の二次圧が低下する。また、二次圧が低下すると、調圧ピストン20は、調圧スプリング22の軸方向付勢力によって調圧室D側へ進出しながら調圧シャフト30を図1における下方へ押し下げ、この調圧シャフト30の円錐状弁体部30aが弁座11cから離間するので、この弁座11cと円錐状弁体部30a間で流路が拡張され、流入口Aからの流量が増大して二次圧が上昇する。したがって、この形態による調圧弁によれば、上述のような調圧機能によって二次圧を常に一定とすることができるのである。
【0025】
ここで、調圧ピストン20の背面側のスプリング室13bは、カバー13に形成された排水ポート13cを介して大気開放されているので、調圧ピストン20の動作がスプリング室13b内の残存空気によって阻害されることがない。そして、調圧ピストン20の外周のパッキン21とシリンダ部13aとの摺動部を介して、調圧室Dからスプリング室13bへの僅かな漏水を生じた場合には、この漏水は前記排水ポート13cを通じて排出される。
【0026】
そして上記構成の調圧弁によれば、先に説明した図7の従来技術のような高価なダイアフラム104の代わりに、合成樹脂等によって安価に製造可能な調圧ピストン20を用いており、しかも、調圧ピストン20と調圧シャフト30は、調圧スプリング22及びサポートスプリング32の付勢力によって調圧ピストン20の凹部20cの底面と調圧シャフト30の軸部30bの端面が互いに衝合された状態で動作するものであるため、互いに結合する必要がなく、その結果、先に説明した図7の従来技術のような螺子106a及びプレート106b,106cなどの結合手段が不要になると共に、組立工数も削減されるので、低コストで製造することができる。
【0027】
更に、調圧ピストン20と調圧シャフト30を結合する必要がなくなった結果、調圧シャフト30には調圧ピストン20との螺合手段を設ける必要がなく、しかも調圧シャフト30はサポートスプリング32の押し上げ方向の付勢力で調圧を行っており、調圧ピストン20と調圧シャフト30は連結していないことから無理な引張り力も加わらない。このため、調圧シャフト30を合成樹脂成形品とすることも可能であり、そのようにすることによって、一層のコスト低減を図ることができる。
【0028】
次に図2は、本発明に係る調圧弁の第二の形態を示す断面斜視図である。この形態も、基本的には図1と同様であるが、流入口Aから流出口Eへ到る給水路の経路において相違する。
【0029】
すなわち図2における参照符号10はボディで、底部に流入口Aが開設され、周壁に流出口Eが突設された外殻16と、その内周に挿入され、シリンダ部11d及び第二筒部11bが互いに同心的に形成されたボディ本体11と、前記第二筒部11bに挿入された状態でボディ本体11に固定された弁ホルダ12と、前記外殻16における前記流入口Aと反対側の端部に固定されると共に、この外殻16と前記シリンダ部11dとの間に挿入された筒状部13dを有するカバー13とからなる。第二筒部11bと弁ホルダ12との間、シリンダ部11dとカバー13との間、ボディ本体11におけるシリンダ部11dと第二筒部11bとの間の外周面と外殻16との間、及びシリンダ部11dとカバー13の筒状部13dと外殻16との間は、それぞれOリングで密封されている。
【0030】
ボディ本体11のシリンダ部11d内には調圧ピストン20が軸方向移動可能な状態で挿入され、その外周溝に装着されたパッキンが、前記シリンダ部11dの内周面に摺動可能に密接されている。そして前記シリンダ部11d内における第二筒部11b側の端部には、この調圧ピストン20によって容積が可変の調圧室Dが画成されている。
【0031】
ボディ本体11のシリンダ部11d内における調圧ピストン20の背面側(調圧室Dと反対側)のスプリング室には、この調圧ピストン20を調圧室D側へ向けて付勢する調圧スプリング22が配置され、調圧ピストン20の背面に形成された保持筒部に保持されている。また、前記スプリング室は、カバー13に開設された排水ポート13cを介して大気開放されている。
【0032】
ボディ本体11の第二筒部11bと弁ホルダ12との間には弁室Bが形成されていて、この弁室Bは、弁孔Cを介して調圧室Dと連通している。
【0033】
弁室B内には、合成樹脂で成形された調圧シャフト30が軸方向移動可能に配置されている。この調圧シャフト30は、弁孔Cにおける弁室B側の縁部に形成された弁座11cと接離可能な円錐状弁体部30aと、その小径側から軸方向へ延びて弁孔Cに遊挿されると共に、調圧ピストン20における調圧室D側の端面に形成された凹部20cに挿入され、先端がこの凹部20cの底面に衝合された軸部30bと、前記円錐状弁体部30aの大径側から軸部30bと反対側へ延びて、端部外周が弁ホルダ12における支持筒部12aに挿入された被支持筒部30cからなる。そして、上述した調圧ピストン20を付勢する調圧スプリング22の付勢力は、この調圧ピストン20を介して、調圧シャフト30を弁孔Cの開放方向(調圧シャフト30の円錐状弁体部30aを弁座11cから離間させる方向)に作用している。
【0034】
調圧シャフト30の被支持筒部30cの外径は弁孔C(弁座11c)の内径と同径であって、この被支持筒部30cの外周面には、弁ホルダ12における支持筒部12aの内周に装着されたパッキンが、摺動可能に密接されている。また、被支持筒部30cにはサポートスプリング32が保持されていて、その端部が前記支持筒部12aの底部に当接しており、このサポートスプリング32によって、調圧シャフト30は弁孔Cの閉塞方向(円錐状弁体部30aが弁座11cに近接する方向)へ付勢されている。
【0035】
外殻16の底部に開設された流入口Aは、外殻16とボディ本体11の第二筒部11bの間に形成された筒状空間A1と、前記第二筒部11bに開設された複数の径方向孔A2を介して、第二筒部11bの内周の弁室Bと連通しており、外殻16の周壁に突設された流出口Eは、外殻16とボディ本体11のシリンダ部11dの間に形成された軸方向両側をOリングで密封された環状空間E1と、前記シリンダ部11dに開設された複数の径方向孔E2を介して、シリンダ部11dの内周の調圧室Dに開口している。
【0036】
調圧シャフト30の被支持筒部30cと弁ホルダ12における支持筒部12aの底部との間は、パッキンによって弁室Bから隔絶した背圧室Fとなっており、この背圧室Fには、調圧シャフト30に開設されたT字形の導圧孔30dを通じて、調圧室Dの二次圧が、調圧シャフト30の背圧として導入されるようになっている。そしてこの背圧の作用径(調圧シャフト30における被支持筒部30cの外径)は、調圧室Dからの二次圧の作用径(弁孔Cの内径)と同径に形成されている。
【0037】
以上のように構成された第二の形態による調圧弁は、外殻16に挿入される部分をカートリッジ化することによって、汎用性を持たせたものである。
【0038】
そしてこの形態によれば、不図示の給水源からの洗浄水は、流入口Aから、筒状空間A1、径方向孔A2、弁室B、弁孔C(弁座11cと調圧シャフト30との間の絞り流路)、調圧室D、径方向孔E2、及び環状空間E1を経由して流出口Eへ吐出されるものであって、二次圧の変動によって、調圧ピストン20及び調圧シャフト30が、先に説明した第一の形態と同様に動作し、調圧機能を奏するものである。
【0039】
ここで、上述した第一の形態あるいは第二の形態において、調圧バランスを高精度に維持するためには、調圧ピストン20、調圧スプリング22及びサポートスプリング32を、以下の条件に設定する必要がある。
【0040】
すなわち流入口A側の一次圧をP1、一次圧の変動範囲をP1min〜P1maxとすると、流出口E側の二次圧P2も若干の変動が想定されるので、その変動範囲をP2min〜P2maxとする。図3は、このときの一次圧P1と二次圧P2との関係を示す圧力線図である。
【0041】
次に、二次圧P2と調圧ピストン20及び調圧シャフト30のストロークについて考える。二次圧P2が軸方向に作用する調圧ピストン20の受圧面積をXとすると、調圧ピストン20が受ける圧力荷重FPは、以下のとおりとなる。
FP=P2×X
更に、
FPmin=P2min×X
FPmax=P2max×X
【0042】
また、P2=P2minのときの調圧ピストン20のストロークをSt1、P2=P2maxのときの調圧ピストン20のストロークをSt2とすると、ストロークと圧力荷重は、図4の線図に示されるような比例関係となるように、圧力とストロークを設定することが好ましい。このとき、図4に示される比例線の傾きをαとすると、
【数1】

となる。
【0043】
一方、ストロークがSt1のときの調圧スプリング22の付勢力をSp1、サポートスプリング32の付勢力をSs1とし、ストロークがSt2のときの調圧スプリング22の付勢力をSp2、サポートスプリング32の付勢力をSs2とすると、これら調圧スプリング22とサポートスプリング32の合力は表1のとおりであり、図5の線図に示されるように変化する。
【表1】

【0044】
また、調圧スプリング22のバネ定数をkp、サポートスプリング32のバネ定数をksとすると、以下の関係が導き出される。
【数2】

【0045】
これらの関係式に加え、ストロークに対するスプリング合力の傾きをαsとすると、αsは次式で求められる。
【数3】

【0046】
以上の式により、以下を満足するスプリング荷重、調圧ピストン20の外径及びストロークを設定することによって、図6の線図に示されるように、安定した二次圧を得ることができる。
α=αs (ストローク−圧力荷重の傾きαと、ストローク−スプリング合力の傾きαsを一致させる)
FPmin=Sp1−Ss1 (調圧ピストン20が受ける圧力荷重FPが最低値のときの圧力荷重とスプリング合力を一致させる)
FPmax=Sp2−Ss2 (調圧ピストン20が受ける圧力荷重FPが最高値のときの圧力荷重とスプリング合力を一致させる)
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る調圧弁の第一の形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る調圧弁の第二の形態を示す断面斜視図である。
【図3】一次圧P1と二次圧P2との関係を示す圧力線図である。
【図4】ストロークと圧力荷重の関係を示す線図である。
【図5】ストロークとスプリング合力の関係を示す線図である。
【図6】ストロークと圧力荷重の関係を示す線図である。
【図7】従来の調圧弁を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
10 ボディ
11 ボディ本体
11c 弁座
11d,13a シリンダ部
12 弁ホルダ
13 カバー
13c 排水ポート
16 外殻
20 調圧ピストン
22 調圧スプリング
30 調圧シャフト
30a 円錐状弁体部
30b 軸部
30c 被支持筒部
32 サポートスプリング
A 流入口
B 弁室
C 弁孔
D 調圧室
E 流出口
F 背圧室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口から弁室、弁孔及び調圧室を経由して流出口へ到る流路が形成されたボディと、このボディにおける前記弁室と反対側のシリンダ部内に移動可能に配置され前記調圧室の容積を増減する調圧ピストンと、前記弁孔の端部に形成された弁座と接離可能であって前記弁室内に移動可能に配置され前記流出口側の二次圧が背圧として与えられた調圧シャフトと、この調圧シャフトを前記弁孔の開放方向へ前記調圧ピストンを介して付勢する調圧スプリングと、前記調圧シャフトを前記弁孔の閉塞方向へ付勢するサポートスプリングと、を備えることを特徴とする調圧弁。
【請求項2】
調圧ピストンと調圧シャフトが、互いに軸方向に衝合されたことを特徴とする請求項1に記載の調圧弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−102534(P2010−102534A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273849(P2008−273849)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】