警備装置および警備動作切替え方法
【課題】センサ反応要因を的確に推定して、推定されるセンサ反応要因に対して効果的な警備動作を行うことができる警備装置および警備動作切替え方法を提供する。
【解決手段】警備装置は、監視領域に設置された複数のセンサと、複数のセンサから得られるセンサ反応信号の時系列データに基づいて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する確信度算出部32と、複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、確信度算出部32により算出された確信度とに基づいて、予め定めた複数の警備動作のうち、実行する警備動作を切替える警備動作制御部34とを備える。
【解決手段】警備装置は、監視領域に設置された複数のセンサと、複数のセンサから得られるセンサ反応信号の時系列データに基づいて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する確信度算出部32と、複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、確信度算出部32により算出された確信度とに基づいて、予め定めた複数の警備動作のうち、実行する警備動作を切替える警備動作制御部34とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域における異常を検知した際に警備動作を実行する警備装置および警備動作切替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域における異常を検知した際に警備動作を実行する警備装置が知られている。このような警備装置は、近年のセキュリティに対する関心の高まりや敷設コストの低コスト化に伴って、一般家庭においても広く導入されるようになってきている。
【0003】
一般家庭に導入される警備装置としては、建物の敷地内にセンサを設置し、敷地内のセンサが物体に反応したときに、建物に侵入を企てる不法侵入者が存在すると判断して、威嚇ベルや非常灯などの機器を作動させるといった、不法侵入者を排除するような警備動作(以下、このような警備動作を侵入者排除動作という。)を行うものが知られている。
【0004】
しかしながら、敷地内のセンサが物体に反応したときに侵入者排除動作を行う警備装置では、家人や正規訪問者にセンサが反応した場合にも侵入者排除動作が実行され、家人や正規訪問者に対して精神的な苦痛を与える場合がある。また、人間以外の小動物や無生物にセンサが反応した場合にも侵入者排除動作が実行され、近隣住民に対して迷惑をかける結果となる場合がある。このため、この種の警備装置においては、センサが反応している要因(センサ反応要因)が不法侵入者である場合に、不法侵入者に対して効果的な侵入者排除動作を行う仕組みを構築することが重要な課題とされている。
【0005】
侵入者排除動作を行う警備装置に関して、特許文献1には、監視領域を撮像した画像データに対する画像認識処理により、監視領域に侵入者が存在する確度を「人検出」、「侵入者検出」、「侵入者確定」の3段階で判定し、その判定結果に応じた適切な侵入者排除動作を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−277639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術は、監視領域を撮像した画像データに対する画像認識処理により侵入者が存在する確度を判定する構成であるため、物体を検知するセンサの信号に基づいて侵入者排除動作を実行する警備装置に対して適用することができない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、センサ反応要因を的確に推定して、推定されるセンサ反応要因に対して効果的な警備動作を行うことができる警備装置および警備動作切替え方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる警備装置は、監視領域における異常を検知した際に予め定めた複数の警備動作のうち少なくとも一つを実行する警備装置において、前記監視領域に設置された複数のセンサと、前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号の時系列データに基づいて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する確信度算出手段と、前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、前記確信度とに基づいて、実行する警備動作を切替える警備動作制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる警備動作切替え方法は、監視領域における異常を検知した際に予め定めた複数の警備動作のうち少なくとも一つを実行する警備装置において実行される警備動作切替え方法であって、前記監視領域に設置された複数のセンサから得られるセンサ反応信号の時系列データに基づいて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出するステップと、前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、前記確信度とに基づいて、実行する警備動作を切替えるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、センサ反応要因を的確に推定して、推定されるセンサ反応要因に対して効果的な警備動作を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、警備装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、制御装置の内部の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、警備装置において実行される一連の警備動作の遷移を説明するメインフローチャートである。
【図4】図4は、誘導動作の実行時における処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5は、警告動作および物理的防御動作の実行時における処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6は、威嚇動作の実行時における処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は、攻撃動作の実行時における処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図8は、ベイジアンネットワークの概要を説明するためのモデル図である。
【図9】図9は、図8に示す条件付確率P(B|A)を表す条件付確率表の一例を示す図である。
【図10】図10は、ダイナミックベイジアンネットワークの概要を説明するためのモデル図である。
【図11】図11は、図10に示すダイナミックベイジアンネットワークの初期状態における基本モデルを示すモデル図である。
【図12】図12は、図11に示す基本モデルに対してユニットが追加された様子を示すモデル図である。
【図13】図13は、判断モデルの概要を示すモデル図である。
【図14】図14は、基本モデルに対してユニットが追加されることで判断モデルが拡大していく様子を説明する図である。
【図15】図15は、位置モデルを説明する図であり、監視領域となる建物の敷地を複数のエリア(検知対象領域)にエリア分けした様子を示す図である。
【図16】図16は、物体の行動の遷移を表現する条件付確率表の具体例を示す図である。
【図17】図17は、物体の位置の遷移を表現する条件付確率表の具体例を示す図である。
【図18】図18は、物体の初期位置を表現する条件付確率表の具体例を示す図である。
【図19】図19は、物体の初期行動を表現する条件付確率表の具体例を示す図である。
【図20】図20は、センサモデルを説明する図であり、警備対象となる住居の敷地内におけるセンサ設置の具体例を示す図である。
【図21】図21は、センサモデルを表す条件付確率表の具体例を示す図である。
【図22】図22は、警備対象となる住居の敷地内におけるセンサ設置の他の例を示す図である。
【図23】図23は、センサモデルを表す条件付確率表の他の例を示す図である。
【図24】図24は、確信度算出の具体例を説明する図であり、不審者の行動パターンの一例を示す図である。
【図25】図25は、確信度算出の具体例を説明する図であり、小動物の行動パターンの一例を示す図である。
【図26】図26は、図24の例における確信度の算出結果を示す図である。
【図27】図27は、図25の例における確信度の算出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる警備装置および警備動作切替え方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
[概要]
本実施形態にかかる警備装置は、監視領域における異常を検知した際に予め定めた複数の警備動作のうち少なくとも一つを実行する警備装置である。具体的には、この警備装置は、一般家庭の住居として使用される建物の敷地を監視領域としており、建物の敷地内に侵入した侵入者を排除するための警備動作(侵入者排除動作)として、「誘導動作」、「警告動作」、「威嚇動作」および「攻撃動作」を有する。そして、この警備装置は、建物の敷地(監視領域)に設置された複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、このセンサ反応信号の時系列データに基づいて算出される確信度および確信度加重和(詳細は後述する)とに基づいて、上記の各警備動作のうち、実行する警備動作の切替えを行う機能を持つ。
【0015】
ここで、上記の各警備動作の概要について説明する。上記の各警備動作には「駆動」と「停止」の2つのモードがある。「駆動」モードは、各警備動作で使用する機器として指定されている機器を作動させるモードであり、「停止」モードは機器の作動を停止するモードである。
【0016】
「誘導動作」は、敷地の入口である門扉から建物の入口である玄関までの経路(以下、アクセスエリアという。)を少なくとも可聴領域とする音声出力機器から、誘導音声を出力する警備動作である。誘導音声とは、家人に対して警備解除を促したり、正規訪問者に対して退去を促したりする音声メッセージである。「誘導動作」の実行中は、例えば「ただいま警備中です。すみやかに退去して下さい。家人の方は警備解除をお願いします。」といった音声メッセージ(誘導音声)を音声出力機器から出力する。
【0017】
「誘導動作」の目的は、敷地内が警備中であることを優しく報知することである。これにより、家人に対しては警備解除、正規訪問者に対しては退去を促し、不法侵入者に対しては精神的不安を与えることができる。なお、「誘導動作」で使用する音声出力機器は、アクセスエリアを可聴領域とする指向性スピーカを用いることが望ましい。ただし、指向性のない通常のスピーカを用いるようにしてもよい。
【0018】
「警告動作」は、建物の開口部付近(以下、開口部エリアという。)を少なくとも可聴領域とする音声出力機器から、警告音声を出力する動作である。警告音声とは、退去しない場合に警備会社等に通報されるなどの警告を行う音声メッセージである。「警告動作」の実行中は、例えば「警備エリアに侵入しています。滞在を続けた場合、警備会社に通報されます。」といった音声メッセージ(警告音声)を音声出力機器から出力する。また、「警告動作」では、音声出力機器からの警告音声の出力と併せて、限定報知用機器を作動させる。限定報知用機器とは、敷地内に異常が発生していることを敷地内に報知するものであり、例えば、敷地内に存在する人間に対してのみ影響を与えるように設置されたライトなどである。
【0019】
「警告動作」の目的は、警備中の敷地内に侵入していることを強めに報知することである。これにより、警備会社等に通報される可能性があることを示唆し、家人に対しては速やかな警備解除、正規訪問者に対しては速やかな退去を促し、不法侵入者に対しては発見される感覚を与えることができる。なお、「警告動作」で使用する音声出力機器は、開口部エリアを可聴領域とする指向性スピーカを用いることが望ましい。ただし、「誘導動作」で使用する音声出力機器として指向性スピーカを用いている場合は、これを「警告動作」で使用する音声出力機器として代用することも可能である。この場合、実行する警備動作が「誘導動作」から「警告動作」に切替わると、指向性スピーカから出力される音声が、誘導音声から警告音声に切替わる。
【0020】
「威嚇動作」は、開口部エリアを少なくとも可聴領域とする音声出力機器から、威嚇音声を出力する動作である。威嚇音声とは、警備会社等への通報が完了したなどの内容の威嚇を行う音声メッセージである。「威嚇動作」の実行中は、例えば「警備会社に通報されました。まもなく警備員が到着します。」といった音声メッセージ(威嚇音声)を音声出力機器から出力する。また、「威嚇動作」では、音声出力機器からの威嚇音声の出力と併せて、周囲報知用機器を作動させる。周囲報知用機器とは、敷地内に異常が発生していることを敷地内および敷地外に報知するものであり、例えば、敷地内だけでなく敷地外にも影響を与えるように設置された点滅用ライトや威嚇ベルなどである。
【0021】
「威嚇動作」の目的は2つあり、1つは侵入者に対して人(警備員など)が来ることを報知することであり、もう1つは監視対象の敷地に異常が発生していることを近隣の住民に報知することである。これにより、警備会社などに通報されたこと及び周囲からの注目を浴びる可能性が高いことを不法侵入者に理解させ、不法侵入者に対して、発見される感覚を「警告動作」よりも強く与えることができる。なお、「威嚇動作」で使用する音声出力機器としては、「警告動作」で用いる指向性スピーカをそのまま利用することができる。この場合、実行する警備動作が「警告動作」から「威嚇動作」に切替わると、指向性スピーカから出力される音声が、警告音声から威嚇音声に切替わる。また、「威嚇動作」で使用する音声出力機器として指向性のない通常のスピーカを用いる場合には、このスピーカから敷地外にも届く音量で威嚇音声または威嚇ベルに相当する威嚇音を出力することで、このスピーカを周囲報知用機器として代用することも可能である。
【0022】
「攻撃動作」は、「威嚇動作」の実行中にこの「威嚇動作」に加えて実行されるものであり、建物への侵入危険度の高い開口部エリアに存在する人間に対して負荷を与える攻撃用機器を作動させる動作である。攻撃用機器としては、開口部エリアに存在する人間の動きを制限し、また、不快な気分にさせる効果のある機器が用いられる。例えば、捕縛ネットや催涙ガス、フラッシュライトなどが攻撃用機器の一例として考えられる。
【0023】
「攻撃動作」の目的は、不法侵入者に対して身体的及び精神的に負荷を与え、侵入工作の継続を困難にさせることである。これにより、不法侵入者は、その場に滞在を続けて侵入工作を継続することが困難になり、侵入意欲が低下することで侵入を断念させることができる。
【0024】
本実施形態にかかる警備装置では、上記の各警備動作のほかに、「警告動作」に付随する警備動作として「物理的防御動作」を有する。「物理的防御動作」は、建物の開口部に設けた物理的防御用機器を作動させる動作である。物理的防御用機器とは、電動補助錠や電動シャッタなど、建物の開口部の遮断状態を物理的に強化する機器である。
【0025】
「物理的防御動作」の目的は、建物の開口部の遮断状態を物理的に強化することにより、不法侵入者による侵入工作を困難にさせることである。これにより、建物外での滞在時間を延ばし、発見される感覚を高めることで、侵入を断念させることができる。
【0026】
[装置構成]
図1は、本実施形態にかかる警備装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態にかかる警備装置は、図1に示すように、監視領域である建物の敷地に設置された複数のセンサ1と、センサインターフェース2と、制御装置3と、機器インターフェース4と、警備動作(侵入者排除動作)を実行するための各種機器5とを備える。制御装置3は、通信ネットワークを介して、警備会社に設置された監視装置6に接続されている。
【0027】
センサ1は、監視領域である建物の敷地を複数の検知対象領域に分けたときに、各検知対象領域に対してそれぞれ一つ以上設置される。つまり、本実施形態にかかる警備装置では、監視領域である建物の敷地に複数のセンサ1を設置しており、それぞれのセンサ1の種類としては、当該センサ1が設置される検知対象領域での物体検知に適したものが用いられる。例えば、敷地の入口である門扉の開閉を検出するセンサや、焦電素子を用いたパッシブ型の赤外線センサ、赤外線ビームの遮断を検出するセンサ、赤外線の反射を利用して物体の有無や物体までの距離を検出するセンサ等が、本実施形態におけるセンサ1として有効に利用可能である。
【0028】
センサインターフェース2は、上記の複数のセンサ1の制御および各センサ1からのセンサ反応信号の受信を実施するための装置である。センサ反応信号は、センサ1が物体に反応していることを示す「反応」と、センサ1が物体に反応していないことを示す「無反応」の2値をとる。本実施形態にかかる警備装置では、センサ1が物体に反応しているか否かにかかわらず、センサインターフェース2によって所定の計測周期で定期的に複数のセンサ1からセンサ反応信号が取得され、制御装置3に供給される。
【0029】
制御装置3は、本実施形態にかかる警備装置の全体を統括的に制御するものである。特に、この制御装置3は、センサインターフェース2によって複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号を入力し、このセンサ反応信号の時系列データから、後述する確信度および確信度加重和を算出する。そして、制御装置3は、センサインターフェース2によって複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号と、センサ反応信号の時系列データから算出した確信度および確信度加重和とに基づいて、実行する警備動作の切替えを行い、各種機器5の動作を制御するための制御指令を機器インターフェース4に出力する。
【0030】
また、制御装置3は、例えば「威嚇動作」を実行させるように警備動作を切替えた場合など、予め定めた所定条件が成立したときに、警備会社に設置された監視装置6に対して、異常を知らせる信号を発報(通報)する機能も有している。
【0031】
機器インターフェース4は、制御装置3から出力された制御指令に従って、各種機器5のうちで、実行する警備動作に関わる機器を作動させ、それ以外の機器を停止させる。
【0032】
警備動作を実行するための各種機器5は、上述した音声出力機器5a、限定報知用機器5b、周囲報知用機器5c、攻撃用機器5dおよび物理的防御用機器5eを含む。なお、図1では、「誘導動作」、「警告動作」および「威嚇動作」のそれぞれで使用する音声出力機器を音声出力機器5aとして総称しているが、それぞれの警備動作で個別の音声出力機器を用いるようにしてもよいし、一部の音声出力機器を共有するようにしてもよい。
【0033】
図2は、制御装置3内部の機能的な構成を示す機能ブロック図である。制御装置3は、図2に示すように、判断モデル記憶部31と、確信度算出部32と、確信度加重和算出部33と、警備動作制御部34とを備える。
【0034】
判断モデル記憶部31は、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した確率モデルによりセンサ反応の因果関係を表現したモデルである判断モデルを記憶するデータベースである。
【0035】
判断モデルは、センサ1の反応要因となり得る予め定めた複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体の行動の遷移の条件付確率と位置の遷移の条件付確率とを定めた確率モデルである行動モデルと、物体が存在する位置と複数のセンサ1の反応との関係を表した確率モデルであるセンサモデルと、を含んでいる。また、本実施形態では、監視領域である建物の敷地を複数の検知対象領域に分けて、各検知対象領域に対してそれぞれ一つ以上のセンサ1を設置する構成を想定しているため、これら複数の検知対象領域の位置を表す位置モデルを定義し、この位置モデルを、確率モデルである行動モデルおよびセンサモデルとともに、判断モデルに含めている。なお、判断モデルの具体例については、詳細を後述する。
【0036】
確信度算出部32は、判断モデル記憶部31に記憶されている判断モデルを用いることで、センサインターフェース2によって複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号の時系列データから、予め定めた複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する。
【0037】
具体的には、確信度算出部32は、センサインターフェース2によってセンサ反応信号が取得されるたびにそのセンサ反応信号をチェックするとともに、そのセンサ反応信号を内部メモリなどにバッファリングしていく。そして、新たに得られたセンサ反応信号と過去のセンサ反応信号とを組み合わせた時系列データを随時生成し、このセンサ反応信号の時系列データを、判断モデル記憶部31に記憶されている判断モデルと照合することによって、物体カテゴリごとの確信度を算出する。ここで、本実施形態では、物体カテゴリとして、人間、小動物、無生物の3種類のカテゴリを想定している。なお、確信度算出部32は、計算結果を内部メモリなどに一時的に保存し、次の処理周期において確信度を算出する際に、前回の計算結果を用いて再帰的な計算を行うことで、計算負荷を低減させるようにしている。この確信度算出部32による物体カテゴリごとの確信度の算出方法の具体例については、詳細を後述する。
【0038】
確信度加重和算出部33は、確信度算出部32により時系列で算出される各物体カテゴリの確信度のうち、物体カテゴリ=人間に対応する確信度を、時系列の初期段階ほど低い重み係数により重み付け加算した値である確信度加重和を算出する。
【0039】
物体カテゴリごとの確信度は、上述したように、センサ反応信号の時系列データを判断モデルと照合することによって算出されるが、時系列の初期段階では得られている情報が少ないため、確信度の誤差が大きいと考えられる。そこで、本実施形態では、信頼性の高い情報を得るために、確信度加重和算出部33が、確信度算出部32により時系列で算出される物体カテゴリごとの確信度のうち、特に物体カテゴリ=人間に対応する確信度について、時系列で算出される確信度の積分をとる(毎回の確信度の総和をとる)。この際、観測の初期段階の確信度は信頼できないと考えて、初期段階の確信度には低い重み係数により重み付け加算して確信度加重和を算出する。なお、重み係数は、観測時間が経過するごとに増加していく値であり、種々の単調増加の関数を用いることができるが、シグモイド関数を用いるのが最適と考えられる。
【0040】
警備動作制御部34は、センサインターフェース2によって複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号と、確信度算出部32により算出される物体カテゴリごとの確信度と、確信度加重和算出部33により算出される確信度加重和とに基づいて、上記の各警備動作のうちで現在の状況に応じた最適な警備動作が実行されるように、上記の各警備動作の「駆動」モードや「停止」モードを設定し、各種機器5の動作を制御するための制御指令を機器インターフェース4に出力する。
【0041】
[警備動作切替えの具体例]
ここで、警備動作制御部34による警備動作の切替えの具体例について説明する。なお、以下で説明する警備動作の切替えはあくまで一例を例示したものであり、切替えの判断基準(条件)は、以下で説明する例に限られるものではなく、警備装置を適用する環境などに応じて様々に変形して設定することができる。
【0042】
本実施形態にかかる警備装置は「警備セットモード」と「警備解除モード」とを有し、警備装置が「警備セットモード」に設定されている間、監視領域に設置された複数のセンサ1のいずれかが物体に反応すると、警備動作制御部34による制御が開始される。そして、この警備動作制御部34による制御に従って、上記の各警備動作のうちのいずれかが実行される。なお、警備装置が「警備解除モード」に設定されている場合には、監視領域に設置されたセンサ1が物体に反応しても警備動作は行われない。
【0043】
(誘導動作)
警備動作制御部34は、監視領域である建物の敷地に設置された複数のセンサ1のうち、最初に反応したセンサが門扉の開閉を検出するセンサである場合、最初に実行する警備動作として「誘導動作」を選択する。これは、「誘導動作」の主な対象として想定している正規利用者が、通常は門扉から敷地内に進入することを考慮したものである。
【0044】
また、警備動作制御部34は、「誘導動作」の実行中は、以下の条件に従って警備動作の切替えを行う。すなわち、「誘導動作」の実行中に、複数のセンサ1のうち、アクセスエリアに設置されたセンサが反応し続けており、且つ、確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和が閾値Th1(第1の閾値)以上であり、且つ、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度よりも高い場合、警備動作制御部34は、実行する警備動作を「誘導動作」から「警告動作」に切替える。これは、音声出力機器5aから誘導音声を出力しているにも関わらず、アクセスエリアに設置されたセンサが反応し続け、そのアクセスエリアに滞在している物体が人間である可能性が高い状況は、不法侵入者がアクセスエリアに滞在している可能性が高く、確信度加重和がある閾値を超えた時点で「警告動作」に移行することが有効と考えられるためである。
【0045】
また、「誘導動作」の実行中に、複数のセンサ1のうち、アクセスエリア以外に設置されたセンサが反応し、且つ、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度よりも高い場合、警備動作制御部34は、実行する警備動作を「誘導動作」から「警告動作」に切替える。これは、音声出力機器5aから誘導音声を出力した結果、物体がアクセスエリアから敷地内の他のエリアに移動し、その移動した物体が人間である可能性が高い状況は、不法侵入者がアクセスエリア以外のエリアに移動した可能性が高く、「警告動作」に移行することが有効と考えられるためである。
【0046】
また、「誘導動作」の実行中に、複数のセンサ1のうち、アクセスエリア以外に設置されたセンサが反応し、且つ、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度よりも、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度の方が高い状態が、予め定めた所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「誘導動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、アクセスエリアから敷地内の他のエリアに移動した物体が人間以外の小動物や無生物である可能性が高い状況では、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。なお、ここでは、アクセスエリア以外に設置されたセンサが反応していることを警備動作終了の条件の1つとしているが、アクセスエリアに設置されたセンサが反応している場合であっても、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度よりも、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度の方が高い状態が所定時間以上継続した場合は、「誘導動作」を含めたすべての警備動作を終了させるようにしてもよい。
【0047】
また、「誘導動作」の実行中に、複数のセンサ1のうちのいずれも反応していない状態が、予め定めた所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「誘導動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、いずれのセンサも反応していない状況は、センサ反応要因となっていた物体が敷地外に移動した可能性が高く、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。
【0048】
また、「誘導動作」の実行中に、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられた場合には、家人が警備解除の操作を行ったと判断できるため、警備動作制御部34は、「誘導動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。
【0049】
なお、「誘導動作」の実行中、「誘導動作」において作動させる音声出力機器5aの可聴領域内(つまり、音声出力機器5aからの誘導音声の効果が及ぶ範囲)のセンサが反応していない状況では、音声出力機器5aを作動させることは無駄である。そのため、このような状況では、警備動作制御部34は、音声出力機器5aからの誘導音声の出力を中断させ、無駄な消費電力の削減を図ることが望ましい。
【0050】
(警告動作)
一方、監視領域である建物の敷地に設置された複数のセンサ1のうち、最初に反応したセンサが門扉の開閉を検出するセンサ以外のセンサであり、且つ、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度よりも高い場合、警備動作制御部34は、最初に実行する警備動作として「警告動作」を選択する。これは、「警告動作」の主な対象として想定している不法侵入者が、門扉以外の場所から敷地内に侵入する可能性が高いことを考慮したものである。つまり、門扉の開閉を検出するセンサ以外のセンサが最初に反応し、人間に対応する確信度が高い状況は、不法侵入者が敷地内に侵入した可能性が高く、すぐに「警告動作」を行うことが有効と考えられるためである。
【0051】
なお、警備動作制御部34は、実行する警備動作として「警告動作」を選択した場合には、この「警告動作」に付随して「物理的防御動作」を実行させる。この「物理的防御動作」は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられた場合や、建物の玄関に設置された本錠の正規開錠動作が確認できた場合などに終了する。本錠の正規開錠動作は、例えば本錠の施開錠状態を検出可能なセンサを設けることで確認できる。
【0052】
また、警備動作制御部34は、「警告動作」の実行中は、以下の条件に従って警備動作の切替えを行う。すなわち、「警告動作」の実行中に、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度よりも高く、且つ、複数のセンサ1のうち、開口部エリアに設置されたセンサが反応しており、且つ、確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和が閾値Th2(第2の閾値)以上であり、且つ、確信度算出部32により算出された人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が、十分に小さい値に設定された閾値Th3(第3の閾値)以下である場合、警備動作制御部34は、実行する警備動作を「警告動作」から「威嚇動作」に切替える。これは、音声出力機器5aから警告音声を出力しているにも関わらず、人間である可能性が高い物体が開口部エリアに存在する状況は、高い侵入意図を持った不法侵入者が建物内部への侵入を企てようとしている可能性が高いため、「警告動作」よりも侵入者排除効果の強い「威嚇動作」を行うことが有効と考えられるためである。
【0053】
なお、建物の開口部としては、一般的に、建物内部への侵入危険度が高い開口部(例えば、掃出し窓のような開口部が広く、破壊工作が比較的容易な開口部)と、侵入危険度が低い開口部(例えば、高窓のような開口部が狭く、破壊工作が困難な開口部)とが存在する。建物内部への侵入危険度が高い開口部エリアのセンサが反応している場合と、建物内部への侵入危険度が低い開口部エリアのセンサが反応している場合とで、確信度総和値に対する閾値を変化させるようにしてもよい。具体的には、侵入危険度の高い開口部エリアのセンサが反応している場合の閾値は、侵入危険度の低い開口部エリアのセンサが反応している場合の閾値よりも低くすることで、「警告動作」から「威嚇動作」への切替えを早めに行う仕組みとすることが望ましい。
【0054】
また、「警告動作」の実行中に、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度よりも、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度の方が高い状態が所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「警告動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、センサ反応要因となっている物体が人間以外の小動物や無生物である可能性が高い状況では、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。
【0055】
また、「警告動作」の実行中に、複数のセンサ1のうちのいずれも反応していない状態が、予め定めた所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「警告動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、いずれのセンサも反応していない状況は、センサ反応要因となっていた物体が敷地外に移動した可能性が高く、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。
【0056】
また、「警告動作」の実行中に、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられた場合には、家人が警備解除の操作を行ったと判断できるため、警備動作制御部34は、「警告動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。
【0057】
なお、「警告動作」の実行中、「警告動作」において作動させる音声出力機器5aの可聴領域内(つまり、音声出力機器5aからの警告音声の効果が及ぶ範囲)や、限定報知用機器5bによる異常報知の効果が及ぶ範囲のセンサが反応していない状況では、これら音声出力機器5aや限定報知用機器5bを作動させることは無駄である。そのため、警備動作制御部34は、音声出力機器5aの可聴領域内のセンサが反応していなければ、音声出力機器5aからの警告音声の出力を中断し、また、限定報知用機器5bによる異常報知の効果が及ぶ範囲のセンサが反応していなければ、限定報知用機器5bの作動を中断させることで、無駄な消費電力の削減を図ることが望ましい。
【0058】
(威嚇動作)
警備動作制御部34は、「警告動作」から「威嚇動作」への切替えを、上述した条件に従って行う。ただし、「威嚇動作」において使用する周囲報知用機器5cは、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を開始するタイミングよりも遅らせて作動させることが望ましい。つまり、「警告動作」から「威嚇動作」への切替えの条件の1つとして、確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和が閾値Th2以上という条件があるが、この閾値Th2をTh2a,Th2bの2段階(Th2a<Th2b)とし、確信度加重和が閾値Th2a以上となったら音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を開始し、確信度加重和が閾値Th2b以上となったら周囲報知用機器5cの作動を開始させる。これは、周囲に与える影響を考慮すると、周囲に対する影響が小さい順番に機器を作動させる方が、利便性の高い警備装置になると考えられるからである。なお、周囲報知用機器5cとして、光を発する機器と音を発する機器がある場合、周囲に与える影響の大きさを考えて、光を発する機器、音を発する機器の順番に作動させることが望ましい。
【0059】
また、警備動作制御部34は、「威嚇動作」の実行中は、以下の条件に従って警備動作の切替えを行う。すなわち、「威嚇動作」の実行中に、確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和が、上記の閾値Th2(第2の閾値)よりも大きい閾値Th4(第4の閾値)以上となった場合に、「威嚇動作」に加えて「攻撃動作」を実行させる。これは、音声出力機器5aから威嚇音声を出力し、また周囲報知用機器5cを作動させているにも関わらず、不法侵入者である可能性が極めて高い物体が開口部エリアに存在し続けている状況では、不法侵入者に対して直接的な負荷を与える「攻撃動作」を行うことが有効と考えられるためである。
【0060】
また、「威嚇動作」の実行中に、複数のセンサ1のいずれかが反応しているが開口部エリアのセンサは反応しなくなった場合、警備動作制御部34は、実行する警備動作を「威嚇動作」から「警告動作」に切替える。これは、開口部エリアのセンサが反応しなくなった状況では、不法侵入者が建物内部へ侵入する危険度が下がったと判断でき、「威嚇動作」よりも侵入者排除効果の弱い「警告動作」を行うことが有効と考えられるためである。なお、「威嚇動作」に加えて「攻撃動作」も実行している場合には、「威嚇動作」から「警告動作」への切替えが行われるときに、「攻撃動作」は終了させる。
【0061】
また、「威嚇動作」の実行中に、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度よりも、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度の方が高い状態が所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「威嚇動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、センサ反応要因となっている物体が人間以外の小動物や無生物である可能性が高い状況では、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。
【0062】
また、「威嚇動作」の実行中に、複数のセンサ1のうちのいずれも反応していない状態が、予め定めた所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「威嚇動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、いずれのセンサも反応していない状況は、センサ反応要因となっていた物体が敷地外に移動した可能性が高く、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。
【0063】
また、「威嚇動作」の実行中に、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられた場合には、家人が警備解除の操作を行ったと判断できるため、警備動作制御部34は、「威嚇動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。
【0064】
なお、「威嚇動作」の実行中、「威嚇動作」において作動させる音声出力機器5aの可聴領域内(つまり、音声出力機器5aからの威嚇音声の効果が及ぶ範囲)や、周囲報知用機器5cによる異常報知の効果が及ぶ範囲のセンサが反応していない状況では、これら音声出力機器5aや周囲報知用機器5cを作動させることは無駄である。そのため、警備動作制御部34は、音声出力機器5aの可聴領域内のセンサが反応していなければ、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を中断し、また、周囲報知用機器5cによる異常報知の効果が及ぶ範囲のセンサが反応していなければ、周囲報知用機器5cの作動を中断させることで、無駄な消費電力の削減を図ることが望ましい。同様に、警備動作制御部34は、「攻撃動作」の実行中、攻撃用機器5dの効果が及ぶ範囲のセンサが反応していなければ、攻撃用機器5dの作動を中断させることで、無駄な消費電力の削減を図ることが望ましい。
【0065】
[警備動作の遷移の具体例]
次に、本実施形態にかかる警備装置により実行される警備動作の遷移の具体例について、図3乃至図7を参照して説明する。図3は、一連の警備動作の遷移を説明するメインフローチャートであり、図4は、「誘導動作」実行時の処理の流れを示すフローチャートであり、図5は、「警告動作」および「物理的防御動作」実行時の処理の流れを示すフローチャートであり、図6は、「威嚇動作」実行時の処理の流れを示すフローチャートであり、図7は、「攻撃動作」実行時の処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
(メインフロー)
まず、図3を参照して、本実施形態にかかる警備装置による動作の概要を説明する。本実施形態にかかる警備装置が「警備セットモード」に設定されると、センサインターフェース2によって複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号が制御装置3に入力される。制御装置3は、センサインターフェース2から入力されるセンサ反応信号の監視を行い、いずれかのセンサから出力されたセンサ反応信号が「反応」になったか否か、つまり、複数のセンサ1のいずれかが反応しているか否かを判定する(ステップS1)。そして、制御装置3は、いずれかのセンサが反応している場合(ステップS1:Yes)、警備動作制御部34による制御を開始させる(ステップS2)。
【0067】
警備動作制御部34による制御が開始されると、まず、ステップS1で反応していると判定されたセンサが門扉の開閉を検出するセンサであるか否かが判定される(ステップS3)。そして、門扉の開閉を検出するセンサが反応している場合は(ステップS3:Yes)、「誘導動作」が実行される(ステップS4)。一方、門扉の開閉を検出するセンサ以外の他のセンサが反応している場合は(ステップS3:No)、「警告動作」が実行される(ステップS5)。
【0068】
ステップS4の「誘導動作」の実行中、警備動作制御部34は、上述した「警告動作」に移行する条件が成立したか否かを随時判定し(ステップS6)、「警告動作」に移行する条件が成立した場合は(ステップS6:Yes)、実行する警備動作を「誘導動作」から「警告動作」に切替える(ステップS5)。一方、「警告動作」に移行する条件が成立する前に、上述した警備動作を終了する条件が成立した場合には(ステップS6:No)、警備動作制御部34は、「誘導動作」を終了するとともに自身の制御を終了する(ステップS7)。このとき、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替えである場合には(ステップS8:Yes)、警備動作制御部34による制御の終了に伴って、警備装置による一連の動作が終了する。一方、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替え以外の条件である場合には(ステップS8:No)、ステップS1に戻ってセンサ反応信号の監視が継続される。
【0069】
また、ステップS5の「警告動作」の実行中、警備動作制御部34は、上述した「威嚇動作」に移行する条件が成立したか否かを随時判定し(ステップS9)、「威嚇動作」に移行する条件が成立した場合は(ステップS9:Yes)、実行する警備動作を「警告動作」から「威嚇動作」に切替える(ステップS10)。一方、「威嚇動作」に移行する条件が成立する前に、上述した警備動作を終了する条件が成立した場合には(ステップS9:No)、警備動作制御部34は、「警告動作」を終了するとともに自身の制御を終了する(ステップS7)。このとき、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替えである場合には(ステップS8:Yes)、警備動作制御部34による制御の終了に伴って、警備装置による一連の動作が終了する。一方、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替え以外の条件である場合には(ステップS8:No)、ステップS1に戻ってセンサ反応信号の監視が継続される。
【0070】
また、ステップS10の「威嚇動作」の実行中、警備動作制御部34は、上述した「警告動作」に移行する条件が成立したか否かを随時判定し(ステップS11)、「警告動作」に移行する条件が成立した場合は(ステップS11:Yes)、実行する警備動作を「威嚇動作」から「警告動作」に切替える(ステップS5)。また、警備動作制御部34は、ステップS10の「威嚇動作」の実行中、上述した「攻撃動作」を追加する条件が成立したか否かを随時判定し(ステップS12)、「攻撃動作」を追加する条件が成立した場合は(ステップS12:Yes)、「攻撃動作」を実行する(ステップS13)。一方、「警告動作」に移行する条件や、「攻撃動作」を追加する条件が成立する前に、上述した警備動作を終了する条件が成立した場合には(ステップS12:No)、警備動作制御部34は、「威嚇動作」を終了するとともに自身の制御を終了する(ステップS7)。このとき、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替えである場合には(ステップS8:Yes)、警備動作制御部34による制御の終了に伴って、警備装置による一連の動作が終了する。一方、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替え以外の条件である場合には(ステップS8:No)、ステップS1に戻ってセンサ反応信号の監視が継続される。
【0071】
また、警備動作制御部34は、ステップS10の「威嚇動作」に追加して、ステップS13の「攻撃動作」を実行している場合も、上述した「警告動作」に移行する条件が成立したか否かを随時判定し(ステップS14)、「警告動作」に移行する条件が成立した場合は(ステップS14:Yes)、実行する警備動作を「威嚇動作」から「警告動作」に切替える(ステップS5)。一方、「警告動作」に移行する条件が成立する前に、上述した警備動作を終了する条件が成立した場合には(ステップS14:No)、警備動作制御部34は、「威嚇動作」および「攻撃動作」を終了するとともに自身の制御を終了する(ステップS7)。このとき、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替えである場合には(ステップS8:Yes)、警備動作制御部34による制御の終了に伴って、警備装置による一連の動作が終了する。一方、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替え以外の条件である場合には(ステップS8:No)、ステップS1に戻ってセンサ反応信号の監視が継続される。
【0072】
(誘導動作)
次に、図3のステップS4における「誘導動作」実行時の警備動作制御部34による制御の具体例について、図4を参照して説明する。
【0073】
ステップS101:「誘導動作」が開始されると、警備動作制御部34は、「誘導動作」で使用する音声出力機器5aを作動させるための制御指令を機器インターフェース4に出力し、音声出力機器5aから誘導音声を出力させる。
【0074】
ステップS102:警備動作制御部34は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられたか否かを判定する。そして、警備装置が「警備解除モード」に切替えられていなければ(ステップS102:No)、ステップS103に進む。一方、警備装置が「警備解除モード」に切替えられた場合は(ステップS102:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの誘導音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0075】
ステップS103:警備動作制御部34は、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されているか否かを判定する。そして、いずれのセンサも反応していない場合は(ステップS103:No)、ステップS104に進む。一方、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されている場合は(ステップS103:Yes)、ステップS105に進む。
【0076】
ステップS104:警備動作制御部34は、いずれのセンサも反応しなくなってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS104:No)、ステップS102に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS104:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの誘導音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0077】
ステップS105:警備動作制御部34は、反応しているセンサがアクセスエリアに設置されたセンサであるか否かを判定する。そして、反応しているセンサがアクセスエリアに設置されたセンサであれば(ステップS105:Yes)、ステップS106に進む。一方、反応しているセンサがアクセスエリアに設置されたセンサ以外の他のセンサであれば(ステップS105:No)、ステップS108に進む。
【0078】
ステップS106:警備動作制御部34は、現時点で確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和(物体カテゴリ=人間に対応する確信度の加重和)が、予め定めた閾値Th1(第1の閾値)以上となっているか否かを判定する。そして、確信度加重和が閾値Th1以上であれば(ステップS106:Yes)、ステップS107に進む。一方、確信度加重和が閾値Th1未満であれば(ステップS106:No)、ステップS102に戻って以降の判定を繰り返す。
【0079】
ステップS107:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS107:Yes)、実行する警備動作を「誘導動作」から「警告動作」に切替える。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS107:No)、ステップS102に戻って以降の判定を繰り返す。
【0080】
ステップS108:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS108:Yes)、実行する警備動作を「誘導動作」から「警告動作」に切替える。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS108:No)、ステップS109に進む。
【0081】
ステップS109:警備動作制御部34は、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値となってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS109:No)、ステップS102に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS109:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの誘導音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0082】
(警告動作)
次に、図3のステップS5における「警告動作」実行時の警備動作制御部34による制御の具体例について、図5を参照して説明する。
【0083】
ステップS201:「警告動作」が開始されると、警備動作制御部34は、その「警告動作」が「誘導動作」からの移行により開始されるものであるか否かを判定する。そして、「警告動作」が「誘導動作」からの移行により開始されるものでない場合は(ステップS201:No)、ステップS202に進む。一方、「警告動作」が「誘導動作」からの移行により開始されるものであれば(ステップS201:Yes)、ステップS203に進む。なお、「警告動作」が「誘導動作」からの移行により開始されるものでない場合とは、警備装置が「警備セットモード」に設定された後、複数のセンサ1のうち、門扉の開閉を検知するセンサ以外の他のセンサが最初に反応したことにより、警備装置による警備動作が「警告動作」から開始される場合である。
【0084】
ステップS202:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS202:Yes)、ステップS203に進む。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS202:No)、図3のステップS7に進み、警備動作を終了させる。
【0085】
ステップS203:警備動作制御部34は、物理的防御用機器5eを作動させるための制御指令を機器インターフェース4に出力し、物理的防御用機器5eを作動させる。
【0086】
ステップS204:警備動作制御部34は、「警告動作」で使用する音声出力機器5aを作動させるための制御指令と、限定報知用機器5bを作動させるための制御指令とを機器インターフェース4に出力し、音声出力機器5aから警告音声を出力させるとともに、限定報知用機器5bを作動させる。
【0087】
ステップS205:警備動作制御部34は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられたか否かを判定する。そして、警備装置が「警備解除モード」に切替えられていなければ(ステップS205:No)、ステップS206に進む。一方、警備装置が「警備解除モード」に切替えられた場合は(ステップS205:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの警告音声の出力と限定報知用機器5bの作動、および、物理的防御用機器5eの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0088】
ステップS206:警備動作制御部34は、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されているか否かを判定する。そして、いずれのセンサも反応していない場合は(ステップS206:No)、ステップS207に進む。一方、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されている場合は(ステップS206:Yes)、ステップS208に進む。
【0089】
ステップS207:警備動作制御部34は、いずれのセンサも反応しなくなってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS207:No)、ステップS205に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS207:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの警告音声の出力と限定報知用機器5bの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0090】
ステップS208:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS208:No)、ステップS209に進む。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS208:Yes)、ステップS210に進む。
【0091】
ステップS209:警備動作制御部34は、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値になってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS209:No)、ステップS205に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS209:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの警告音声の出力と限定報知用機器5bの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0092】
ステップS210:警備動作制御部34は、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであるか否かを判定する。そして、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであれば(ステップS210:Yes)、ステップS211に進む。一方、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサ以外の他のセンサであれば(ステップS210:No)、ステップS205に戻って以降の判定を繰り返す。
【0093】
ステップS211:警備動作制御部34は、現時点で確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和(物体カテゴリ=人間に対応する確信度の加重和)が、予め定めた閾値Th2a(第2の閾値)以上となっているか否かを判定する。そして、確信度加重和が閾値Th2a以上であれば(ステップS211:Yes)、ステップS212に進む。一方、確信度加重和が閾値Th2a未満であれば(ステップS211:No)、ステップS205に戻って以降の判定を繰り返す。
【0094】
ステップS212:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が、予め定めた閾値Th3(第3の閾値)以下となっているか否かを判定する。そして、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が閾値Th3以下であれば(ステップS212:Yes)、実行する警備動作を「警告動作」から「威嚇動作」に切替える。一方、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が閾値Th3を超えていれば(ステップS212:No)、ステップS205に戻って以降の判定を繰り返す。
【0095】
(威嚇動作)
次に、図3のステップS10における「威嚇動作」実行時の警備動作制御部34による制御の具体例について、図6を参照して説明する。
【0096】
ステップS301:「威嚇動作」が開始されると、警備動作制御部34は、「威嚇動作」で使用する音声出力機器5aを作動させるための制御指令を機器インターフェース4に出力し、音声出力機器5aから威嚇音声を出力させる。
【0097】
ステップS302:警備動作制御部34は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられたか否かを判定する。そして、警備装置が「警備解除モード」に切替えられていなければ(ステップS302:No)、ステップS303に進む。一方、警備装置が「警備解除モード」に切替えられた場合は(ステップS302:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0098】
ステップS303:警備動作制御部34は、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されているか否かを判定する。そして、いずれのセンサも反応していない場合は(ステップS303:No)、ステップS304に進む。一方、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されている場合は(ステップS303:Yes)、ステップS305に進む。
【0099】
ステップS304:警備動作制御部34は、いずれのセンサも反応しなくなってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS304:No)、ステップS302に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS304:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0100】
ステップS305:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS305:No)、ステップS306に進む。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS305:Yes)、ステップS307に進む。
【0101】
ステップS306:警備動作制御部34は、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値となってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS306:No)、ステップS302に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS306:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0102】
ステップS307:警備動作制御部34は、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであるか否かを判定する。そして、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであれば(ステップS307:Yes)、ステップS308に進む。一方、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサ以外の他のセンサであれば(ステップS307:No)、実行する警備動作を「威嚇動作」から「警告動作」に切替える。
【0103】
ステップS308:警備動作制御部34は、現時点で確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和(物体カテゴリ=人間に対応する確信度の加重和)が、閾値Th2aよりも大きな値に設定された閾値Th2b以上となっているか否かを判定する。そして、確信度加重和が閾値Th2b以上であれば(ステップS308:Yes)、ステップS309に進む。一方、確信度加重和が閾値Th2b未満であれば(ステップS308:No)、ステップS302に戻って以降の判定を繰り返す。
【0104】
ステップS309:警備動作制御部34は、周囲報知用機器5cを作動させるための制御指令を機器インターフェース4に出力し、周囲報知用機器5cを作動させる。
【0105】
ステップS310:警備動作制御部34は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられたか否かを判定する。そして、警備装置が「警備解除モード」に切替えられていなければ(ステップS310:No)、ステップS311に進む。一方、警備装置が「警備解除モード」に切替えられた場合は(ステップS310:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0106】
ステップS311:警備動作制御部34は、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されているか否かを判定する。そして、いずれのセンサも反応していない場合は(ステップS311:No)、ステップS312に進む。一方、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されている場合は(ステップS311:Yes)、ステップS313に進む。
【0107】
ステップS312:警備動作制御部34は、いずれのセンサも反応しなくなってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS312:No)、ステップS310に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS312:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0108】
ステップS313:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS313:No)、ステップS314に進む。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS313:Yes)、ステップS315に進む。
【0109】
ステップS314:警備動作制御部34は、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値となってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS314:No)、ステップS310に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS314:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0110】
ステップS315:警備動作制御部34は、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであるか否かを判定する。そして、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであれば(ステップS315:Yes)、ステップS316に進む。一方、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサ以外の他のセンサであれば(ステップS315:No)、実行する警備動作を「威嚇動作」から「警告動作」に切替える。
【0111】
ステップS316:警備動作制御部34は、現時点で確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和(物体カテゴリ=人間に対応する確信度の加重和)が、閾値Th2bよりも大きな値に設定された閾値Th4(第4の閾値)以上となっているか否かを判定する。そして、確信度加重和が閾値Th4以上であれば(ステップS316:Yes)、ステップS317に進む。一方、確信度加重和が閾値Th4未満であれば(ステップS316:No)、ステップS310に戻って以降の判定を繰り返す。
【0112】
ステップS317:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が、予め定めた閾値Th3(第3の閾値)以下となっているか否かを判定する。そして、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が閾値Th3以下であれば(ステップS317:Yes)、「攻撃動作」を追加する。一方、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が閾値Th3を超えていれば(ステップS317:No)、ステップS310に戻って以降の判定を繰り返す。
【0113】
(攻撃動作)
次に、図3のステップS13における「攻撃動作」実行時の警備動作制御部34による制御の具体例について、図7を参照して説明する。
【0114】
ステップS401:「攻撃動作」が開始されると、警備動作制御部34は、攻撃用機器5dを作動させるための制御指令を機器インターフェース4に出力し、攻撃用機器5dを作動させる。
【0115】
ステップS402:警備動作制御部34は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられたか否かを判定する。そして、警備装置が「警備解除モード」に切替えられていなければ(ステップS402:No)、ステップS403に進む。一方、警備装置が「警備解除モード」に切替えられた場合は(ステップS402:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動停止とともに、攻撃用機器5dの作動を停止させ、警備動作を終了させる。
【0116】
ステップS403:警備動作制御部34は、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されているか否かを判定する。そして、いずれのセンサも反応していない場合は(ステップS403:No)、ステップS404に進む。一方、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されている場合は(ステップS403:Yes)、ステップS405に進む。
【0117】
ステップS404:警備動作制御部34は、いずれのセンサも反応しなくなってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS404:No)、ステップS402に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS404:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動停止とともに、攻撃用機器5dの作動を停止させ、警備動作を終了させる。
【0118】
ステップS405:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS405:No)、ステップS406に進む。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS405:Yes)、ステップS407に進む。
【0119】
ステップS406:警備動作制御部34は、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値となってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS406:No)、ステップS402に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS406:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動停止とともに、攻撃用機器5dの作動を停止させ、警備動作を終了させる。
【0120】
ステップS407:警備動作制御部34は、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであるか否かを判定する。そして、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであれば(ステップS407:Yes)、ステップS402に戻って以降の判定を繰り返す。一方、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサ以外の他のセンサであれば(ステップS407:No)、実行する警備動作を「警告動作」に切替える。
【0121】
[確信度の算出]
以上、警備動作制御部34による警備動作の切替えについて具体例を挙げながら詳細に説明したが、次に、警備動作を切替える際の判定の基準の1つとして用いられる確信度を算出する方法の具体例について、詳細に説明する。
【0122】
本実施形態にかかる警備装置において、制御装置3の確信度算出部32が算出する物体カテゴリごとの確信度は、上述したように、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す値である。ここで、本実施形態では、物体カテゴリとして人間、小動物、無生物を想定しており、これらの行動は画一的ではない。つまり、これらの物体カテゴリに属する物体が毎回全く同じ行動を取るとは考えられず、移動経路や移動速度などは毎回変化するものと考えられる。したがって、各物体カテゴリの行動モデルとして決定的な単一モデルを構築することは困難であり、確率的な行動モデルを構築することが必要となる。そこで、本実施形態にかかる警備装置では、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した確率モデルを構築し、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した確率推論によって、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する。
【0123】
すなわち、本実施形態にかかる警備装置では、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した確率推論を実行するために、各種の物体カテゴリごとの行動の選択基準(行動モデル)を確率モデルによって構築し、また、センサの反応と物体の行動との関係性をセンサモデルとして行動モデルと同様の確率モデルによって構築する。そして、これら二つの確率モデルと、上述した複数の検知対象領域の位置を表す位置モデルとを組み合わせた「判断モデル」を利用することによって、時系列で得られるセンサ反応信号からセンサ反応要因を推定できるようにしている。
【0124】
(ダイナミックベイジアンネットワーク)
以下では、まず、判断モデルに用いるダイナミックベイジアンネットワークの概要について説明する。ダイナミックベイジアンネットワークとは、観測された事象からその原因を推定する確率モデルであるベイジアンネットワークを時間軸に展開したものである。
【0125】
ベイジアンネットワークは、事象を構成する複数の要素間の因果関係を視覚的に表現し、それらの因果関係を条件付確率で表したものである。つまり、ベイジアンネットワークは、図8に示すように、事象を構成する各要素を確率変数で表されるノードとして表し、因果関係を有する各ノード間を有向辺(矢印)で結んで、ノード間の因果関係を条件付確率で定義したモデルとして表現される。図8に示した例では、事象を構成するノードAとノードBの因果関係が条件付確率P(B|A)として与えられ、ノードBとノードCの因果関係が条件付確率P(C|B)として与えられる。なお、先頭のノードAには、このノードに接続される矢印がなく、条件付確率を定義できないので、このノード自体の確率変数で定まる事前確率P(A)を与える。このような事前確率と条件付確率によって表現される図8のモデルは、下記の式(1)に示すような数式によって表すことができる。
P(A,B,C)=P(A)P(B|A)P(C|B) ・・・(1)
【0126】
以上のようなベイジアンネットワークにおいて、あるノードに対して当該ノードに接続される矢印の起点となるノードは、一般に親ノードと呼ばれている。ここで、あるノードXに対する親ノードをPa(X)と表し、ノードがn個あるモデルを一般式で表現すると、下記の式(2)のようになる。
【数1】
【0127】
ベイジアンネットワークでは、上述したように、事象を構成する各要素間の因果関係を条件付確率によって定義するが、各要素の実現値は離散的に表現するのが一般的である。図8に示した例において、ノードAとノードBの因果関係を表す条件付確率P(B|A)は、図9に示すような条件付確率表によって表現される。この図9の条件付確率表では、ノードAが「1」のときにノードBが「1」となる確率は0.6、ノードAが「1」のときにノードBが「0」となる確率は0.4、ノードAが「0」のときにノードBが「1」となる確率は0.1、ノードAが「0」のときにノードBが「0」となる確率は0.9であることを示している。ベイジアンネットワークでは、各ノード間の条件付確率としてそれぞれ以上のような条件付確率表を用意してネットワーク全体のモデルを構築する。
【0128】
ベイジアンネットワークを利用した原因の推定は、観測できる要素を固定して未知の要素の全てのパターンの組み合わせを考えることで行う。例えば、図8に示した例において、ノードCが「1」であることが観測された場合、ノードCが「1」という結果が、ノードAが「1」であることに起因するものかどうかを推定するには、ノードAが「1」の条件下でノードBが「1」となってノードCが「1」となる確率と、ノードAが「1」の条件下でノードBが「0」となってノードCが「1」となる確率の和を計算する。以上を数式で表すと、下記の式(3)のようになる。
P(C=1|A=1)=α(P(A=1)P(B=1|A=1)P(C=1|B=1)+P(A=1)P(B=0|A=1)P(C=1|B=0))
=α(ΣBP(A=1)P(B|A=1)P(C=1|B)) ・・・(3)
ここで、αは正規化定数であり、C=1の場合のA=0の確率との正規化を行う定数である。
【0129】
以上のように、ベイジアンネットワークでは、観測できる要素の値を固定して観測できない未知の要素の全ての実現値分のパターンの確率の和を求めることで原因の確率を求めることができ、原因の推定が可能となる。
【0130】
以上説明したベイジアンネットワークは、時間軸を考慮しない静的なモデルである。したがって、本実施形態にかかる警備装置のように、時々刻々とセンサ反応信号が得られるような対象への適用を考えた場合には、時系列に対応したモデルを構築する必要がある。そこで、ベイジアンネットワークを時間軸に展開したモデルであるダイナミックベイジアンネットワークを利用する。
【0131】
ダイナミックベイジアンネットワークは、図10に示すように、一つの基本的なモデルをユニットとして、観測結果が得られるごとに時々刻々とユニットが追加され、増大していくモデルとなっている。このようなダイナミックベイジアンネットワークを利用した推定方法は、基本的には上述したベイジアンネットワークを利用した推定方法と同様であり、観測結果が得られるたびにノード数が増えていくだけである。
【0132】
図10に示した例では、1回目の観測結果O1が得られたときのモデルは図11のようになる。この図11のモデルを上記の式(1)のように表すと、下記の式(4)のようになる。
P(X0,X1,O1)=P(X0)P(X1|X0)P(O1|X1) ・・・(4)
ここで、X1の状態の推定を行うことを考える。O1は観測結果のため固定し、未知の要素はX0となる。上記の式(3)を利用すると、下記の式(5)のとおりに計算することによってX1の状態の推定値を得ることができる。
P(X1|O1)=ΣX0P(X0)P(X1|X0)P(O1|X1)
=P(O1|X1)ΣX0P(X0)P(X1|X0) ・・・(5)
【0133】
次に、2回目の観測時点では、図12に示すように、X2とO2のノードが追加されたモデルとなる。この図12に示すモデルをこれまでと同様に数式で表すと、下記の式(6)のようになる。
P(X0,X1,X2,O1,O2)=P(X0)P(X1|X0)P(O1|X1)P(X2|X1)P(O2|X2) ・・・(6)
ここで、X2の状態の推定値は、未知の要素がX0およびX1であるため、下記の式(7)のとおりに計算することで得ることができる。
P(X2|O1,O2)=ΣX0ΣX1P(X0)P(X1|X0)P(O1|X1)P(X2|X1)P(O2|X2)
=P(O2|X2)ΣX1P(O1|X1)P(X2|X1)ΣX0P(X0)P(X1|X0) ・・・(7)
【0134】
ダイナミックベイジアンネットワークでは、新たな観測結果が得られるたびにモデルにユニットを追加して上述のように計算を行うことによって、時系列で得られる観測結果からその原因を推定することが可能となる。ただし、時々刻々とユニットを追加していけば、ある時間が経過すると非常に巨大なモデルとなり、それだけ計算量が増大して実用に値しないものとなる虞がある。そこで、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した因果関係の推定を行う場合には、下記の式(8)に示すような再帰的な計算を行うことによって計算量の増大を抑えるようにすることが望ましい。
P(Xt+1|O1,O2,・・・,Ot+1)=P(Ot+1|Xt+1)ΣXtP(Xt+1|Xt,O1,O2,・・・,Ot)P(Xt|O1,O2,・・・,Ot)
=P(Ot+1|Xt+1)ΣXtP(Xt+1|Xt)P(Xt|O1,O2,・・・,Ot) ・・・(8)
この式(8)において、最後の項が前のタイミングでの推定値である。このように、前のタイミングの推定値を用いた再帰的な計算を行うことによって、計算量の増大を有効に抑制することが可能となる。
【0135】
(判断モデル)
次に、確信度の算出に用いられる判断モデルについて、さらに詳しく説明する。図13は、判断モデルの概要を示すモデル図である。判断モデルは、図13に示すように、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した確率モデルであり、大きく分けて、位置モデルと、行動モデルと、センサモデルの3つのモデルから構成されている。このうち、行動モデルとセンサモデルは、図9に示したような条件付確率表で表現される確率モデルである。なお、図13の判断モデルでは、各ノードの添え字の部分が観測時間を表し、“0”は初期状態を表している。この判断モデルは時系列の変化を表したモデル(ダイナミックベイジアンネットワーク)であり、図14に示すように、初期状態の基本モデルに対して、添え字が共通する部分がユニットとして観測タイミングごとに追加されていくものである。以下、この判断モデルを構成する位置モデル、行動モデル、センサモデルについて、具体例を挙げながら説明する。
【0136】
(位置モデル)
位置モデルは、センサ1を用いた物体検知の対象となる複数の検知対象領域の位置を表すモデルである。すなわち、監視領域となる建物の敷地構造を周辺状況等によって複数の抽象的なエリアに分け、各エリアをそれぞれ検知対象領域とする。このときの各エリアの位置を位置モデルとして表現する。具体的には、一般的な建物の敷地構造は、例えば図15に示すように、門扉エリアと、囲障エリアと、アクセスエリアと、プライベートエリアと、開口部エリアとに分けることができ、これら各エリアの位置を位置モデルとして表す。
【0137】
ここで、図15に例示する位置モデルの各エリアは、次のような意味を持つ。
門扉エリア:外部からの通常のアクセスが行われるエリアであり、門扉は通常閉じられており、開閉はレバーを引く等の動作を要するものとする。
囲障エリア:囲障(塀)の部分を表している。
アクセスエリア:通常の外部から入ってくる人間が建物の玄関へ向かうのに通過するエリアである。
プライベートエリア:アクセスエリアと空間的には繋がっているが、門扉から玄関までのルートを外れた庭の奥の部分の空間を表す。
開口部エリア:建物の開口部及びその手前部分の空間を表す。
【0138】
(行動モデル)
行動モデルは、予め定めた複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体の行動様式を表した確率モデルである。すなわち、行動モデルは、各物体カテゴリに属する物体が上記の位置モデルで表現される建物敷地内をどのような行動を取りながらどのように移動していくのかを、図9に示したような条件付確率表の形で表現したモデルである。本実施形態で想定する判断モデルは、図13に示したように、行動モデルの部分の要素間を繋ぐ矢印が、物体行動(At)と物体位置(Xt)の2種類のノードに向かっている。したがって、行動モデルは、各物体カテゴリに属する物体の行動の遷移を表現する条件付確率表と、各物体カテゴリに属する物体の位置の遷移を表現する条件付確率表との2つの条件付確率表によって表される。
【0139】
ここで、それぞれの条件付確率表について説明する前に、図13に示した判断モデル(ダイナミックベイジアンネットワーク)のノードとなる物体カテゴリと物体行動および物体位置の具体的な実現値の例を説明する。
【0140】
物体カテゴリは、センサ反応要因の分類であり、本実施の形態では、人間、小動物、無生物の3つのカテゴリとしている。なお、ここで無生物とは、小動物以外のセンサ誤報の要因となり得るものを総称したカテゴリであり、例えば、太陽光や風、ゴミ袋等の飛来物などである。
【0141】
物体行動は、物体カテゴリが取り得る行動を分類したものであり、本実施の形態では、消失、進入、移動、滞在の4つの行動に分類している。ここで消失とは、敷地外から消える動作であり、外部に離脱するような動きをいう。また、進入とは、外部から敷地内部に入ってくる動作をいう。また、移動とは、敷地内を移動する動作をいう。また、滞在とは、敷地内の現在位置からほとんど動かない動作をいう。
【0142】
物体位置は、図15に示したように、上記の位置モデルにおいて表現された敷地内のそれぞれのエリアを表したものである。
【0143】
次に、行動モデルを表現する2つの条件付確率表について説明する。図16は、物体の行動の遷移を表現する条件付確率表の具体例を示し、図17は、物体の位置の遷移を表現する条件付確率表の具体例を示している。
【0144】
物体の行動の遷移を表現する条件付確率表とは、物体が前に選択した行動によって敷地内のある位置に存在しているとの条件の下で、次に選択する行動の確率を表現したものである。言い換えると、物体がある行動を取って現在の位置にいるときに、続けてどの行動を選択するのかという確率を表している。このような行動の遷移の条件付確率を式で表すと、P(行動|物体,現在位置,前回行動)となる。この条件付確率を、上述した物体行動の分類と図15に示した位置モデルとを用いて図9に示したような条件付確率表として表すことにより、図16に示すような物体の行動の遷移を表現する条件付確率表が得られる。
【0145】
物体の位置の遷移を表現する条件付確率表とは、物体が前のタイミングで存在していた位置においてある行動を取ったとの条件の下で、現在存在する位置はどこなのかを確率で表現したものである。言い換えると、物体が前にいた位置である行動を取った後に、どの位置にいるのかという確率を表している。このような位置の遷移の条件付確率を式で表すと、P(位置|物体,前位置,前行動)となる。この条件付確率を、上述した物体行動の分類と図15に示した位置モデルとを用いて図9に示したような条件付確率表として表すことにより、図17に示すような物体の位置の遷移を表現する条件付確率表が得られる。
【0146】
ところで、初期状態の判断モデル(図14の左側に示す基本モデル)では、前のタイミングでの行動や位置のノードが存在しないため、図16や図17に示した条件付確率表をそのまま適用することはできない。そこで、このような初期状態に対応した条件付確率表、つまり、センサ1が最初に反応した場合に適合する条件付確率表を別に用意しておく。
【0147】
初期状態の位置については、センサ1の反応要因となる物体が最初に建物敷地内のどこに存在するか(初期位置)を条件付確率P(位置|物体)として表すことができ、これを図9に示したような条件付確率表として表すと、図18に示すような初期位置の条件付確率表が得られる。また、初期状態の行動については、センサ1の反応要因となる物体が最初にどのような行動をとるか(初期行動)を条件付確率P(行動|物体,現在位置)として表すことができ、これを図9に示したような条件付確率表として表すと、図19に示すような初期行動の条件付確率表が得られる。
【0148】
なお、図13に示した判断モデルにおいては、物体カテゴリ(Ct)を表すノード間が矢印で繋がっているため、この物体カテゴリを表すノード間の因果関係についての条件付確率を定義する必要があるが、物体が動いている最中に変化することはないと考えられる(例えば人間が小動物に変化するといったことはない)ため、前の物体と現在の物体が等しい確率を1.0、変化する確率を0として与えておけばよい。
【0149】
(センサモデル)
センサモデルは、物体が存在する位置と複数のセンサ1の反応との関係を表した確率モデルである。すなわち、センサモデルは、物体がある位置に存在した場合に、各センサ1がどのように反応するのかを表している。図13に示した判断モデルのセンサモデル部分に示すように、センサモデルは、物体位置(Xt)のノードと観測結果であるセンサ反応信号(Ot)のノード間が矢印で結ばれた形をしており、条件付確率P(センサ|位置)によって定義される。なお、センサ反応信号は反応/無反応の2値をとるものとしている。以下、具体例を挙げながらセンサモデルについてさらに詳しく説明する。
【0150】
監視領域となる建物の敷地内を図15に示したように門扉エリア、囲障エリア、アクセスエリア、プライベートエリア、開口部エリアの5つの検知対象領域にエリア分けし、図20に示すように、門扉エリアには屋外開閉センサ1a、囲障エリアには2つの対向式赤外線センサ1b,1c、アクセスエリアには屋外空間センサ1d、プライベートエリアには屋外空間センサ1e、開口部エリアには滞留検知センサ1fがそれぞれ設置されているものとする。なお、屋外開閉センサ1aは門扉の開閉を検出するセンサであり、対向式赤外線センサ1b,1cは赤外線ビームの遮断を検出するセンサである。また、屋外空間センサ1d,1eは焦電素子を用いたパッシブ型の赤外線センサであり、滞留検知センサ1fは赤外線の反射を利用して物体の有無や物体までの距離を検出するセンサである。これら各センサ1a〜1fの検知エリアは、図20中のハッチングを付した領域となる。
【0151】
以上のように住宅の敷地内にセンサ1a〜1fを設置したとの仮定のもとで、条件付確率P(センサ|位置)を図9に示したような条件付確率表として表すことにより、図21に示すようなセンサモデルの条件付確率表が得られる。各センサ1a〜1fから得られるセンサ反応信号は上述したように反応/無反応の2値であり、図21に示す条件付確率表では反応を示す確率が示される。この図21に示す条件付確率は、敷地内のある位置に物体が存在したときに、どのセンサが反応するかを表現したものである。
【0152】
なお、このセンサモデルの条件付確率表では、敷地内のいずれかのエリア(検知対象領域)に物体が存在するにも関わらずセンサ1a〜1fのいずれも反応しない無反応の状態となる確率も与えている。これは、位置モデルによって定義される各エリア(検知対象領域)をセンサ1a〜1fの検知エリアで完全に覆うことは困難であることや、検知エリア内に物体が存在してもセンサ1a〜1fが誤って反応しない(失報)場合があることを考慮したものである。このようにセンサモデルの条件付確率表に無反応の状態の確率を与えておくことにより、位置モデルによって定義される敷地内のエリア全てをセンサ1の検知エリアで覆う必要はなくなり、また、センサ1が誤って反応しなかった場合にも対応することが可能となる。
【0153】
以上のように、確信度の算出に用いる判断モデルは、監視領域となる建物の敷地をエリア分けして位置モデルを生成するとともに、行動モデルを表現する4つの条件付確率表(図16〜図19)と、センサモデルを表す条件付確率表(図21)とを作成することによって構築されるものである。判断モデルを構成する上記の5つの条件付確率表は、人間(侵入者)や小動物、無生物の行動パターンやそれに応じたセンサ反応状態を数値に変換したものであり、設計者が予め作成しておくものであるが、経験的に得られる警備に関するノウハウを利用してこれらの条件付確率表を作成することによって、警備装置に適用する上で最適な判断モデルを構築することができる。以下、警備に適した判断モデルを構成する条件付確率表の具体的な作成基準の一例について説明する。
【0154】
(人間の行動パターン)
まず、人間の行動パターンについて、基本的な考え方として次のような仮定をおく。
「人間は地面を移動し(空を飛ばない)、敷地外から敷地内へ移動する。敷地内においても地面を移動し、建物へ向かう。」
このような仮定をおくため、図18に示した初期位置の条件付確率表では、人間が敷地内部のエリア(アクセスエリア、プライベートエリア、開口部エリア等)に初期状態で存在する確率は0とする。
【0155】
また、上述した物体行動の定義から、「進入」は敷地外から敷地内へ移動することと定義しているため、図19に示した初期行動の条件付確率表では、門扉エリアと囲障エリア以外のエリアでは、人間の初期行動が「進入」である確率を0としている。同様に、図16に示した行動遷移の条件付確率表では、前のタイミングでの行動に拠らず敷地内部のエリア(アクセスエリア、プライベートエリア、開口部エリア等)に存在している状態で人間が「進入」を選択する確率を0としている。また、図17に示した位置遷移の条件付確率表では、図15に示した位置モデルにおいて、進入の直後に玄関前に存在することは不可能であるため(距離が離れすぎている)、前行動が「進入」の場合に人間が開口部エリアに存在する確率を0としている。
【0156】
以上は、物体行動や物体位置の定義のもとで人間の物理的な挙動に関して明示的な行動パターンに関して述べたものである。図16〜図19に示した条件付確率表の他の部分に関しては、侵入者等の人間の行動に関して警備のノウハウを応用する。以下では、その例を簡単に説明する。
【0157】
侵入者は、周囲から見られることを嫌悪する傾向が強く現れる。そのため、見通しが悪い箇所や見られたとしても周囲から怪しまれない箇所/行動、極度に短時間で目的が達成される箇所/行動を好む傾向にある。そのため、図18に示した初期位置の条件付確率表では、人間の初期位置の確率として、「囲障」よりも「門扉」を高く設定している。これは、門扉を開けることは通常の訪問者のようで怪しまれにくい上に、乗り越えるよりも短時間で敷地内へ入ることができると考えられるからである。ただし、門扉自体が強固な場合や、門扉が頑丈に施錠されている場合、門扉が高い場合等においては、人間の初期位置の確率として「門扉」よりも「囲障」のほうを高く設定することが好ましい場合もある。
【0158】
同様に、門扉周辺に滞在することは周囲から見つかり怪しまれるリスクを負うことになるため、図16に示した行動遷移の条件付確率表では、前のタイミングでの行動に拠らず門扉エリアに存在している人間がとる行動として、「滞在」よりも「移動」を選択する確率を高く設定している。
【0159】
また、アクセスエリアは門扉から直接繋がったエリアであり、門扉が格子状であるような場合にはアクセスエリアの見通しがよくなる。そのため、図16に示した行動遷移の条件付確率表では、アクセスエリア内では人間が「滞在」を選択する確率を低く設定しており、「移動」を選択する確率を高く設定している。また、プライベートエリアは周囲を囲障で囲まれており滞在しても周囲から見られるリスクが低いため、プライベートエリアに存在している人間が「滞在」を選択する確率は、アクセスエリアに存在している場合より高く設定する。
【0160】
人間は建物の中を目指して進み、建物内へ入るには開口部を通る。そのため、人間は開口部エリアに向かう。したがって、開口部エリア以外のエリアでは人間が「移動」を選択する確率が全体的に高く、逆に、開口部エリアでは人間が「滞在」を選択する確率が高い。図17に示した位置遷移の条件付確率表は、物体の移動の方向性を表している。侵入者は見通しが悪いエリアを移動しながら、見通しが悪く侵入しやすい開口部のエリアへ向かうように位置を遷移する。このため、図17に示した位置遷移の条件付確率表では、侵入者が好むエリアへ進むように人間の位置の遷移確率を与える。
【0161】
以上のような基準に従って人間の位置や行動に関する条件付確率を定めるが、これらは警備対象となる住宅の物理的な構造や周辺環境に依存して調整する。例えば、囲障が1m程度であれば、乗り越える方が短時間で済む場合があり、そのような建物の場合には、図18に示した初期位置の条件確率表において、人間の初期位置が「囲障」である確率を高めるようにする。
【0162】
(小動物の行動パターン)
小動物についても、人間の場合と同様に「地面を移動し(空を飛ばない)、敷地外から敷地内へ移動する。敷地内においても地面を移動する」との仮定をおく。このような仮定をおくため、図18に示した初期位置の条件付確率表では、小動物の初期位置が「囲障」である確率を高く設定している。なお、小動物は門扉を開閉することがないと考えられるため、門扉エリアに存在する確率は0としている。
【0163】
その他の条件付確率表では、「小動物はランダムに行動を選択し、方向性の定めがなく移動する」との仮定をおいて、それぞれの条件付確率表の小動物に関する項目を埋めていく。
【0164】
(無生物のパターン)
無生物は、ゴミ袋等の飛来物のほか、風や太陽光線などの自然要因がある。したがって、敷地内のどの位置も無生物の初期位置となり得るが、その確率は各エリアの大きさに依存することとなる。このため、図18に示した初期位置の条件付確率表では、無生物の初期位置の確率の大小を各エリアの大きさに応じて設定している。
【0165】
また、無生物は移動することがほとんどないと考えられるため、「移動」を選択する確率はどのような状態(位置、前のタイミングの行動)でも非常に小さい確率を与える。また、無生物はその要因自体がなくなる場合(太陽光が雲で覆われる場合や日が傾く等)があるため、行動として「消失」を選択する確率を高く設定する。以上のような考え方に従って、図16〜図19に示した条件付確率表の無生物に関する項目を埋めていく。
【0166】
(センサ反応信号のパターン)
センサ反応信号は、物体の行動パターンによって変化するものではなく、センサ1の種類や検知エリアの大きさ、センサ1の設置位置に依存して反応の確率が変化する。図21に示したセンサモデルの条件付確率表は、物体がある位置Xに存在したときにどのセンサが反応するかを表したものであり、図20に示した例において、物体が存在しているエリアに設置されているセンサ以外のセンサが反応する確率を0としている。
【0167】
また、図21に示したセンサモデルの条件付確率表では、上述したように、センサ1の種類に応じて、物体が存在するのに誤って反応しないような確率を「無反応」の確率として与えている。図20に示した例では、門扉エリアに設置した屋外開閉センサ1aや、囲障エリアに設置した対向式赤外線センサ1b,1c、開口部エリアに設置した滞留検知センサ1fは、誤って反応しない場合が非常に少ないと想定しているため、無反応の確率を非常に小さな値に設定している。逆に、アクセスエリアやプライベートエリアに設置する屋外空間センサ1d,1eは誤って反応しない確率はある程度高いことを想定しているため、無反応の確率を他のセンサよりも高く設定している。
【0168】
ところで、図20に示した例では、位置モデルによって定義される各エリア(検知対象領域)がセンサ1a〜1fの検知エリアによってほぼ覆われていることを想定しているが、実際には、センサ1の検知エリアで全てのエリア(検知対象領域)を完全に覆うことは困難な場合が多い。そこで、このような場合には、位置モデルによって定義されるエリア内ではあるがセンサ1の検知エリアからは外れている位置に物体が存在する可能性も考慮して、センサモデルの条件付確率表における「無反応」の確率を定める。
【0169】
具体的な例を挙げて説明すると、例えば図22に示すように、監視領域となる建物の敷地に、アクセスエリアの一部を検知エリアとする屋外空間センサ1g、アクセスエリアの一部とプライベートエリアの一部とを検知エリアとする屋外空間センサ1h、プライベートエリアの一部を検知エリアとする屋外空間センサ1iがそれぞれ設置されているものとする(図中のハッチングを付した領域が各センサ1g〜1iの検知エリアを示している。)。この図22に示す例では、特にプライベートエリアにおいてセンサ検知エリアから外れる領域が広くなっているため、プライベートエリアに物体が存在しても、無反応の状態となる確率が高い。そこで、センサモデルの条件付確率表では、位置がプライベートエリアの場合に、そのセンサ検知エリアから抜けている面積に応じて確率を低く設定する。図23は、このような場合のセンサモデルの条件付確率表の一例を示している。なお、ここでは簡単のために、アクセスエリアとプライベートエリアのみに焦点を絞って記述している。
【0170】
また、図22に示した例では、屋外空間センサ1hがアクセスエリアとプライベートエリアにまたがって設置されている。この場合には、アクセスエリアとプライベートエリアのどちらに物体が存在しても屋外空間センサ1hが反応する場合がある。そのため、図23に示したセンサモデルの条件付確率表では、物体の位置がアクセスエリアとプライベートエリアのどちらの場合にも屋外空間センサ1hの確率を0にせず、各エリアにどれほどセンサの検知エリアがかかっているかに応じた確率を与える。
【0171】
(確信度の算出)
次に、制御装置3の確信度算出部32において、センサ1の反応信号の時系列データと上述した判断モデルとを用いて、物体カテゴリごとにセンサ反応要因となっている確信度を算出する手法について説明する。
【0172】
ベイジアンネットワークを利用した原因推定の計算式は、上記の式(3)で示したように、条件付確率の積と和で構成されている。センサ反応要因推定アルゴリズムにおいて、図13に示したような判断モデルを利用して確信度の算出を行うために、上記の式(3)を図13の判断モデルに適用すると、下記の式(9)のようになる。
P(C0=c|O0=o)=α(P(C0=c)ΣXΣAP(A0|C0=c,X0)P(X0|C0=c)P(O0=o|X0)) ・・・(9)
また、2回目以降の観測値が得られた際の確信度の計算式は、下記の式(10)のように、再帰的な計算を行う計算式として表される。
P(C=c|Ot=ot,Ot-1=ot-1,Ot-2=ot-2,・・・)
=α((ΣXtΣAtΣXt−1ΣAt−1P(At|C=c,Xt,At-1)P(Xt|C=c,At-1,Xt-1)P(Ot=ot|Xt))P(C=c|Ot-1=ot-1,Ot-2=ot-2,・・・)) ・・・(10)
なお、上記の式(9)および式(10)において、Cは物体カテゴリを表し、Oはセンサ反応信号(反応したセンサ)を表している。また、Aは物体の行動を表し、Xは物体の存在する位置を表している。また、各変数の添え字は観測タイミングを表し、添え字の“0”は初期状態を表している。また、ΣA(・・・)は行動Aに関して総和をとるという意味であり、ΣX(・・・)は位置Xに関して総和をとるという意味である。
【0173】
上記の式(9)では、初期行動の条件付確率を表すP(A0|C0=c,X0)に関して図19に示したような条件付確率表から値を参照し、初期位置の条件付確率を表すP(X0|C0=c)に関して図18に示したような条件付確率表から値を参照し、センサモデルの条件付確率を表すP(O0=o|X0)に関して図21に示したような条件付確率表から値を参照することによって、初期状態のセンサ反応信号としてoが観測された際にその反応要因の物体カテゴリがcである確信度P(C0=c|O0=o)を算出することができる。
【0174】
また、上記の式(10)では、行動遷移の条件付確率を表すP(At|C=c,Xt,At-1)に関して図16に示したような条件付確率表から値を参照し、位置遷移の条件付確率を表すP(Xt|C=c,At-1,Xt-1)に関して図17に示したような条件付確率表から値を参照し、センサモデルの条件付確率を表すP(Ot=ot|Xt)に関して図21に示したような条件付確率表から値を参照し、前回の計算結果P(C=c|Ot-1=ot-1,Ot-2=ot-2,・・・)を用いた再帰的な計算をすることによって、2回目以降のセンサ反応信号としてoが観測された際にその反応要因の物体カテゴリがcである確信度P(C=c|Ot=ot,Ot-1=ot-1,Ot-2=ot-2,・・・)を算出することができる。
【0175】
ここで、図20に示した例において、初期状態のセンサ反応信号として門扉エリアに設置した屋外開閉センサ1aの反応が観測された場合に、そのセンサ反応要因が人間である確信度を算出する場合を想定して上記の式(9)を具体化すると、下記の式(11)のようになる。
【数2】
上記の式(11)から分かるように、知りたい物体カテゴリと観測で得たセンサ反応の部分は固定し、行動Aと位置Xの組み合わせを変えた全てのパターンの確率の総和をとっている。それぞれの条件付確率は、図16〜図19、図21に示したような条件付確率表に照らし合わせることで即座に具体的な数値が割り当てられ、それらの数値を使って確信度を算出する。
【0176】
なお、上記の式(9)〜式(11)において、右辺の先頭にあるαは正規化定数であり、cを人間、小動物、無生物と3つの物体カテゴリで変化させたときに算出される3つの値の和を1.0とするような係数である。実際の計算上は、αを考慮しないで上記の式を使って3つの物体カテゴリごとにそれぞれ確信度を計算し、3つの値が得られた後に、それぞれの値を3つの値の和で割ることで確信度を得る。
【0177】
(確信度算出の具体例)
次に、図24および図25に示す物体の行動パターンを想定し、物体カテゴリごとの確信度を算出する具体例について説明する。図24は、不審者が囲障エリアからアクセスエリアに侵入し、そのまま開口部エリア(玄関)へ向かった場合の例である。センサの反応としては、{囲障エリア、アクセスエリア、開口部エリア}と3回反応したとする。一方、図25は、小動物が図24と同様に囲障を乗り越えてアクセスエリアに進入し、そのまま囲障エリアから外へ抜けた場合の例である。この場合のセンサの反応としては、{囲障エリア、アクセスエリア、囲障エリア}となる。
【0178】
物体カテゴリごとの確信度の算出は、センサ反応の1回目については上記の式(9)と図18、図19、図21に示したような条件付確率表を利用して計算する。2回目のセンサ反応からは、計算量が増えないよう上記の式(10)と図16、図17、図21に示したような条件付確率表を利用して再帰的に計算する。
【0179】
図24の例において物体カテゴリごとに確信度を算出した場合の結果を図26に示す。また、図25の例において物体カテゴリごとに確信度を算出した場合の結果を図27に示す。これら図26および図27において、実数部分が各センサ反応要因の推定値(確信度)を表している。図26に示すように、図24の例の場合では、道路に面する囲障エリアのセンサの反応から始まっており、初めのうちは動物と区別がつかない。しかしながら、その方向性が開口部エリア(玄関)へまっすぐ進んでいる様子がわかったことで(つまり、センサ反応O2が得られたことで)、センサの反応要因が人間である確信度が高い値となる。一方、図27に示すように、図25の例の場合では、図24の例と同様に囲障エリアのセンサから反応が始まっており、その後も方向の定めがなく再度囲障エリアのセンサが反応する。特定の目的を持たないようなセンサ反応系列が得られたことで、目的を持たずに移動する物体として小動物がセンサ反応要因である確信度が高い値となる。
【0180】
[実施形態の効果]
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態にかかる警備装置では、制御装置3の確信度算出部32が、複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号の時系列データを、判断モデル記憶部31が記憶する判断モデルに照らし合わせて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する。また、制御装置3の確信度加重和算出部33が、確信度算出部32により時系列で算出される、物体カテゴリ=人間に対応する確信度を、時系列の初期段階ほど低い重み係数により重み付け加算した確信度加重和を算出する。そして、制御装置3の警備動作制御部34が、複数のセンサ1から得られるセンサ反応信号と、確信度算出部32により算出される物体カテゴリごとの確信度と、確信度加重和算出部33により算出される確信度加重和とに基づいて、現在の状況に応じた最適な警備動作が実行されるように、警備動作の切替えを行うようにしている。したがって、本実施形態にかかる警備装置によれば、センサ反応要因を的確に推定して、推定されるセンサ反応要因に対して効果的な警備動作を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0181】
以上のように、本発明にかかる警備装置および警備動作切替え方法は、不法侵入者に対して効果的な侵入者排除動作を行うための技術として有用である。
【符号の説明】
【0182】
1 センサ
3 制御装置
5a 音声出力機器
5b 限定報知用機器
5c 周囲報知用機器
5d 攻撃用機器
5e 物理的防御用機器
31 判断モデル記憶部
32 確信度算出部
33 確信度加重和算出部
34 警備動作制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域における異常を検知した際に警備動作を実行する警備装置および警備動作切替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域における異常を検知した際に警備動作を実行する警備装置が知られている。このような警備装置は、近年のセキュリティに対する関心の高まりや敷設コストの低コスト化に伴って、一般家庭においても広く導入されるようになってきている。
【0003】
一般家庭に導入される警備装置としては、建物の敷地内にセンサを設置し、敷地内のセンサが物体に反応したときに、建物に侵入を企てる不法侵入者が存在すると判断して、威嚇ベルや非常灯などの機器を作動させるといった、不法侵入者を排除するような警備動作(以下、このような警備動作を侵入者排除動作という。)を行うものが知られている。
【0004】
しかしながら、敷地内のセンサが物体に反応したときに侵入者排除動作を行う警備装置では、家人や正規訪問者にセンサが反応した場合にも侵入者排除動作が実行され、家人や正規訪問者に対して精神的な苦痛を与える場合がある。また、人間以外の小動物や無生物にセンサが反応した場合にも侵入者排除動作が実行され、近隣住民に対して迷惑をかける結果となる場合がある。このため、この種の警備装置においては、センサが反応している要因(センサ反応要因)が不法侵入者である場合に、不法侵入者に対して効果的な侵入者排除動作を行う仕組みを構築することが重要な課題とされている。
【0005】
侵入者排除動作を行う警備装置に関して、特許文献1には、監視領域を撮像した画像データに対する画像認識処理により、監視領域に侵入者が存在する確度を「人検出」、「侵入者検出」、「侵入者確定」の3段階で判定し、その判定結果に応じた適切な侵入者排除動作を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−277639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術は、監視領域を撮像した画像データに対する画像認識処理により侵入者が存在する確度を判定する構成であるため、物体を検知するセンサの信号に基づいて侵入者排除動作を実行する警備装置に対して適用することができない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、センサ反応要因を的確に推定して、推定されるセンサ反応要因に対して効果的な警備動作を行うことができる警備装置および警備動作切替え方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる警備装置は、監視領域における異常を検知した際に予め定めた複数の警備動作のうち少なくとも一つを実行する警備装置において、前記監視領域に設置された複数のセンサと、前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号の時系列データに基づいて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する確信度算出手段と、前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、前記確信度とに基づいて、実行する警備動作を切替える警備動作制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる警備動作切替え方法は、監視領域における異常を検知した際に予め定めた複数の警備動作のうち少なくとも一つを実行する警備装置において実行される警備動作切替え方法であって、前記監視領域に設置された複数のセンサから得られるセンサ反応信号の時系列データに基づいて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出するステップと、前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、前記確信度とに基づいて、実行する警備動作を切替えるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、センサ反応要因を的確に推定して、推定されるセンサ反応要因に対して効果的な警備動作を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、警備装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、制御装置の内部の機能的な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、警備装置において実行される一連の警備動作の遷移を説明するメインフローチャートである。
【図4】図4は、誘導動作の実行時における処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5は、警告動作および物理的防御動作の実行時における処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6は、威嚇動作の実行時における処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は、攻撃動作の実行時における処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図8は、ベイジアンネットワークの概要を説明するためのモデル図である。
【図9】図9は、図8に示す条件付確率P(B|A)を表す条件付確率表の一例を示す図である。
【図10】図10は、ダイナミックベイジアンネットワークの概要を説明するためのモデル図である。
【図11】図11は、図10に示すダイナミックベイジアンネットワークの初期状態における基本モデルを示すモデル図である。
【図12】図12は、図11に示す基本モデルに対してユニットが追加された様子を示すモデル図である。
【図13】図13は、判断モデルの概要を示すモデル図である。
【図14】図14は、基本モデルに対してユニットが追加されることで判断モデルが拡大していく様子を説明する図である。
【図15】図15は、位置モデルを説明する図であり、監視領域となる建物の敷地を複数のエリア(検知対象領域)にエリア分けした様子を示す図である。
【図16】図16は、物体の行動の遷移を表現する条件付確率表の具体例を示す図である。
【図17】図17は、物体の位置の遷移を表現する条件付確率表の具体例を示す図である。
【図18】図18は、物体の初期位置を表現する条件付確率表の具体例を示す図である。
【図19】図19は、物体の初期行動を表現する条件付確率表の具体例を示す図である。
【図20】図20は、センサモデルを説明する図であり、警備対象となる住居の敷地内におけるセンサ設置の具体例を示す図である。
【図21】図21は、センサモデルを表す条件付確率表の具体例を示す図である。
【図22】図22は、警備対象となる住居の敷地内におけるセンサ設置の他の例を示す図である。
【図23】図23は、センサモデルを表す条件付確率表の他の例を示す図である。
【図24】図24は、確信度算出の具体例を説明する図であり、不審者の行動パターンの一例を示す図である。
【図25】図25は、確信度算出の具体例を説明する図であり、小動物の行動パターンの一例を示す図である。
【図26】図26は、図24の例における確信度の算出結果を示す図である。
【図27】図27は、図25の例における確信度の算出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる警備装置および警備動作切替え方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
[概要]
本実施形態にかかる警備装置は、監視領域における異常を検知した際に予め定めた複数の警備動作のうち少なくとも一つを実行する警備装置である。具体的には、この警備装置は、一般家庭の住居として使用される建物の敷地を監視領域としており、建物の敷地内に侵入した侵入者を排除するための警備動作(侵入者排除動作)として、「誘導動作」、「警告動作」、「威嚇動作」および「攻撃動作」を有する。そして、この警備装置は、建物の敷地(監視領域)に設置された複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、このセンサ反応信号の時系列データに基づいて算出される確信度および確信度加重和(詳細は後述する)とに基づいて、上記の各警備動作のうち、実行する警備動作の切替えを行う機能を持つ。
【0015】
ここで、上記の各警備動作の概要について説明する。上記の各警備動作には「駆動」と「停止」の2つのモードがある。「駆動」モードは、各警備動作で使用する機器として指定されている機器を作動させるモードであり、「停止」モードは機器の作動を停止するモードである。
【0016】
「誘導動作」は、敷地の入口である門扉から建物の入口である玄関までの経路(以下、アクセスエリアという。)を少なくとも可聴領域とする音声出力機器から、誘導音声を出力する警備動作である。誘導音声とは、家人に対して警備解除を促したり、正規訪問者に対して退去を促したりする音声メッセージである。「誘導動作」の実行中は、例えば「ただいま警備中です。すみやかに退去して下さい。家人の方は警備解除をお願いします。」といった音声メッセージ(誘導音声)を音声出力機器から出力する。
【0017】
「誘導動作」の目的は、敷地内が警備中であることを優しく報知することである。これにより、家人に対しては警備解除、正規訪問者に対しては退去を促し、不法侵入者に対しては精神的不安を与えることができる。なお、「誘導動作」で使用する音声出力機器は、アクセスエリアを可聴領域とする指向性スピーカを用いることが望ましい。ただし、指向性のない通常のスピーカを用いるようにしてもよい。
【0018】
「警告動作」は、建物の開口部付近(以下、開口部エリアという。)を少なくとも可聴領域とする音声出力機器から、警告音声を出力する動作である。警告音声とは、退去しない場合に警備会社等に通報されるなどの警告を行う音声メッセージである。「警告動作」の実行中は、例えば「警備エリアに侵入しています。滞在を続けた場合、警備会社に通報されます。」といった音声メッセージ(警告音声)を音声出力機器から出力する。また、「警告動作」では、音声出力機器からの警告音声の出力と併せて、限定報知用機器を作動させる。限定報知用機器とは、敷地内に異常が発生していることを敷地内に報知するものであり、例えば、敷地内に存在する人間に対してのみ影響を与えるように設置されたライトなどである。
【0019】
「警告動作」の目的は、警備中の敷地内に侵入していることを強めに報知することである。これにより、警備会社等に通報される可能性があることを示唆し、家人に対しては速やかな警備解除、正規訪問者に対しては速やかな退去を促し、不法侵入者に対しては発見される感覚を与えることができる。なお、「警告動作」で使用する音声出力機器は、開口部エリアを可聴領域とする指向性スピーカを用いることが望ましい。ただし、「誘導動作」で使用する音声出力機器として指向性スピーカを用いている場合は、これを「警告動作」で使用する音声出力機器として代用することも可能である。この場合、実行する警備動作が「誘導動作」から「警告動作」に切替わると、指向性スピーカから出力される音声が、誘導音声から警告音声に切替わる。
【0020】
「威嚇動作」は、開口部エリアを少なくとも可聴領域とする音声出力機器から、威嚇音声を出力する動作である。威嚇音声とは、警備会社等への通報が完了したなどの内容の威嚇を行う音声メッセージである。「威嚇動作」の実行中は、例えば「警備会社に通報されました。まもなく警備員が到着します。」といった音声メッセージ(威嚇音声)を音声出力機器から出力する。また、「威嚇動作」では、音声出力機器からの威嚇音声の出力と併せて、周囲報知用機器を作動させる。周囲報知用機器とは、敷地内に異常が発生していることを敷地内および敷地外に報知するものであり、例えば、敷地内だけでなく敷地外にも影響を与えるように設置された点滅用ライトや威嚇ベルなどである。
【0021】
「威嚇動作」の目的は2つあり、1つは侵入者に対して人(警備員など)が来ることを報知することであり、もう1つは監視対象の敷地に異常が発生していることを近隣の住民に報知することである。これにより、警備会社などに通報されたこと及び周囲からの注目を浴びる可能性が高いことを不法侵入者に理解させ、不法侵入者に対して、発見される感覚を「警告動作」よりも強く与えることができる。なお、「威嚇動作」で使用する音声出力機器としては、「警告動作」で用いる指向性スピーカをそのまま利用することができる。この場合、実行する警備動作が「警告動作」から「威嚇動作」に切替わると、指向性スピーカから出力される音声が、警告音声から威嚇音声に切替わる。また、「威嚇動作」で使用する音声出力機器として指向性のない通常のスピーカを用いる場合には、このスピーカから敷地外にも届く音量で威嚇音声または威嚇ベルに相当する威嚇音を出力することで、このスピーカを周囲報知用機器として代用することも可能である。
【0022】
「攻撃動作」は、「威嚇動作」の実行中にこの「威嚇動作」に加えて実行されるものであり、建物への侵入危険度の高い開口部エリアに存在する人間に対して負荷を与える攻撃用機器を作動させる動作である。攻撃用機器としては、開口部エリアに存在する人間の動きを制限し、また、不快な気分にさせる効果のある機器が用いられる。例えば、捕縛ネットや催涙ガス、フラッシュライトなどが攻撃用機器の一例として考えられる。
【0023】
「攻撃動作」の目的は、不法侵入者に対して身体的及び精神的に負荷を与え、侵入工作の継続を困難にさせることである。これにより、不法侵入者は、その場に滞在を続けて侵入工作を継続することが困難になり、侵入意欲が低下することで侵入を断念させることができる。
【0024】
本実施形態にかかる警備装置では、上記の各警備動作のほかに、「警告動作」に付随する警備動作として「物理的防御動作」を有する。「物理的防御動作」は、建物の開口部に設けた物理的防御用機器を作動させる動作である。物理的防御用機器とは、電動補助錠や電動シャッタなど、建物の開口部の遮断状態を物理的に強化する機器である。
【0025】
「物理的防御動作」の目的は、建物の開口部の遮断状態を物理的に強化することにより、不法侵入者による侵入工作を困難にさせることである。これにより、建物外での滞在時間を延ばし、発見される感覚を高めることで、侵入を断念させることができる。
【0026】
[装置構成]
図1は、本実施形態にかかる警備装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態にかかる警備装置は、図1に示すように、監視領域である建物の敷地に設置された複数のセンサ1と、センサインターフェース2と、制御装置3と、機器インターフェース4と、警備動作(侵入者排除動作)を実行するための各種機器5とを備える。制御装置3は、通信ネットワークを介して、警備会社に設置された監視装置6に接続されている。
【0027】
センサ1は、監視領域である建物の敷地を複数の検知対象領域に分けたときに、各検知対象領域に対してそれぞれ一つ以上設置される。つまり、本実施形態にかかる警備装置では、監視領域である建物の敷地に複数のセンサ1を設置しており、それぞれのセンサ1の種類としては、当該センサ1が設置される検知対象領域での物体検知に適したものが用いられる。例えば、敷地の入口である門扉の開閉を検出するセンサや、焦電素子を用いたパッシブ型の赤外線センサ、赤外線ビームの遮断を検出するセンサ、赤外線の反射を利用して物体の有無や物体までの距離を検出するセンサ等が、本実施形態におけるセンサ1として有効に利用可能である。
【0028】
センサインターフェース2は、上記の複数のセンサ1の制御および各センサ1からのセンサ反応信号の受信を実施するための装置である。センサ反応信号は、センサ1が物体に反応していることを示す「反応」と、センサ1が物体に反応していないことを示す「無反応」の2値をとる。本実施形態にかかる警備装置では、センサ1が物体に反応しているか否かにかかわらず、センサインターフェース2によって所定の計測周期で定期的に複数のセンサ1からセンサ反応信号が取得され、制御装置3に供給される。
【0029】
制御装置3は、本実施形態にかかる警備装置の全体を統括的に制御するものである。特に、この制御装置3は、センサインターフェース2によって複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号を入力し、このセンサ反応信号の時系列データから、後述する確信度および確信度加重和を算出する。そして、制御装置3は、センサインターフェース2によって複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号と、センサ反応信号の時系列データから算出した確信度および確信度加重和とに基づいて、実行する警備動作の切替えを行い、各種機器5の動作を制御するための制御指令を機器インターフェース4に出力する。
【0030】
また、制御装置3は、例えば「威嚇動作」を実行させるように警備動作を切替えた場合など、予め定めた所定条件が成立したときに、警備会社に設置された監視装置6に対して、異常を知らせる信号を発報(通報)する機能も有している。
【0031】
機器インターフェース4は、制御装置3から出力された制御指令に従って、各種機器5のうちで、実行する警備動作に関わる機器を作動させ、それ以外の機器を停止させる。
【0032】
警備動作を実行するための各種機器5は、上述した音声出力機器5a、限定報知用機器5b、周囲報知用機器5c、攻撃用機器5dおよび物理的防御用機器5eを含む。なお、図1では、「誘導動作」、「警告動作」および「威嚇動作」のそれぞれで使用する音声出力機器を音声出力機器5aとして総称しているが、それぞれの警備動作で個別の音声出力機器を用いるようにしてもよいし、一部の音声出力機器を共有するようにしてもよい。
【0033】
図2は、制御装置3内部の機能的な構成を示す機能ブロック図である。制御装置3は、図2に示すように、判断モデル記憶部31と、確信度算出部32と、確信度加重和算出部33と、警備動作制御部34とを備える。
【0034】
判断モデル記憶部31は、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した確率モデルによりセンサ反応の因果関係を表現したモデルである判断モデルを記憶するデータベースである。
【0035】
判断モデルは、センサ1の反応要因となり得る予め定めた複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体の行動の遷移の条件付確率と位置の遷移の条件付確率とを定めた確率モデルである行動モデルと、物体が存在する位置と複数のセンサ1の反応との関係を表した確率モデルであるセンサモデルと、を含んでいる。また、本実施形態では、監視領域である建物の敷地を複数の検知対象領域に分けて、各検知対象領域に対してそれぞれ一つ以上のセンサ1を設置する構成を想定しているため、これら複数の検知対象領域の位置を表す位置モデルを定義し、この位置モデルを、確率モデルである行動モデルおよびセンサモデルとともに、判断モデルに含めている。なお、判断モデルの具体例については、詳細を後述する。
【0036】
確信度算出部32は、判断モデル記憶部31に記憶されている判断モデルを用いることで、センサインターフェース2によって複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号の時系列データから、予め定めた複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する。
【0037】
具体的には、確信度算出部32は、センサインターフェース2によってセンサ反応信号が取得されるたびにそのセンサ反応信号をチェックするとともに、そのセンサ反応信号を内部メモリなどにバッファリングしていく。そして、新たに得られたセンサ反応信号と過去のセンサ反応信号とを組み合わせた時系列データを随時生成し、このセンサ反応信号の時系列データを、判断モデル記憶部31に記憶されている判断モデルと照合することによって、物体カテゴリごとの確信度を算出する。ここで、本実施形態では、物体カテゴリとして、人間、小動物、無生物の3種類のカテゴリを想定している。なお、確信度算出部32は、計算結果を内部メモリなどに一時的に保存し、次の処理周期において確信度を算出する際に、前回の計算結果を用いて再帰的な計算を行うことで、計算負荷を低減させるようにしている。この確信度算出部32による物体カテゴリごとの確信度の算出方法の具体例については、詳細を後述する。
【0038】
確信度加重和算出部33は、確信度算出部32により時系列で算出される各物体カテゴリの確信度のうち、物体カテゴリ=人間に対応する確信度を、時系列の初期段階ほど低い重み係数により重み付け加算した値である確信度加重和を算出する。
【0039】
物体カテゴリごとの確信度は、上述したように、センサ反応信号の時系列データを判断モデルと照合することによって算出されるが、時系列の初期段階では得られている情報が少ないため、確信度の誤差が大きいと考えられる。そこで、本実施形態では、信頼性の高い情報を得るために、確信度加重和算出部33が、確信度算出部32により時系列で算出される物体カテゴリごとの確信度のうち、特に物体カテゴリ=人間に対応する確信度について、時系列で算出される確信度の積分をとる(毎回の確信度の総和をとる)。この際、観測の初期段階の確信度は信頼できないと考えて、初期段階の確信度には低い重み係数により重み付け加算して確信度加重和を算出する。なお、重み係数は、観測時間が経過するごとに増加していく値であり、種々の単調増加の関数を用いることができるが、シグモイド関数を用いるのが最適と考えられる。
【0040】
警備動作制御部34は、センサインターフェース2によって複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号と、確信度算出部32により算出される物体カテゴリごとの確信度と、確信度加重和算出部33により算出される確信度加重和とに基づいて、上記の各警備動作のうちで現在の状況に応じた最適な警備動作が実行されるように、上記の各警備動作の「駆動」モードや「停止」モードを設定し、各種機器5の動作を制御するための制御指令を機器インターフェース4に出力する。
【0041】
[警備動作切替えの具体例]
ここで、警備動作制御部34による警備動作の切替えの具体例について説明する。なお、以下で説明する警備動作の切替えはあくまで一例を例示したものであり、切替えの判断基準(条件)は、以下で説明する例に限られるものではなく、警備装置を適用する環境などに応じて様々に変形して設定することができる。
【0042】
本実施形態にかかる警備装置は「警備セットモード」と「警備解除モード」とを有し、警備装置が「警備セットモード」に設定されている間、監視領域に設置された複数のセンサ1のいずれかが物体に反応すると、警備動作制御部34による制御が開始される。そして、この警備動作制御部34による制御に従って、上記の各警備動作のうちのいずれかが実行される。なお、警備装置が「警備解除モード」に設定されている場合には、監視領域に設置されたセンサ1が物体に反応しても警備動作は行われない。
【0043】
(誘導動作)
警備動作制御部34は、監視領域である建物の敷地に設置された複数のセンサ1のうち、最初に反応したセンサが門扉の開閉を検出するセンサである場合、最初に実行する警備動作として「誘導動作」を選択する。これは、「誘導動作」の主な対象として想定している正規利用者が、通常は門扉から敷地内に進入することを考慮したものである。
【0044】
また、警備動作制御部34は、「誘導動作」の実行中は、以下の条件に従って警備動作の切替えを行う。すなわち、「誘導動作」の実行中に、複数のセンサ1のうち、アクセスエリアに設置されたセンサが反応し続けており、且つ、確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和が閾値Th1(第1の閾値)以上であり、且つ、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度よりも高い場合、警備動作制御部34は、実行する警備動作を「誘導動作」から「警告動作」に切替える。これは、音声出力機器5aから誘導音声を出力しているにも関わらず、アクセスエリアに設置されたセンサが反応し続け、そのアクセスエリアに滞在している物体が人間である可能性が高い状況は、不法侵入者がアクセスエリアに滞在している可能性が高く、確信度加重和がある閾値を超えた時点で「警告動作」に移行することが有効と考えられるためである。
【0045】
また、「誘導動作」の実行中に、複数のセンサ1のうち、アクセスエリア以外に設置されたセンサが反応し、且つ、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度よりも高い場合、警備動作制御部34は、実行する警備動作を「誘導動作」から「警告動作」に切替える。これは、音声出力機器5aから誘導音声を出力した結果、物体がアクセスエリアから敷地内の他のエリアに移動し、その移動した物体が人間である可能性が高い状況は、不法侵入者がアクセスエリア以外のエリアに移動した可能性が高く、「警告動作」に移行することが有効と考えられるためである。
【0046】
また、「誘導動作」の実行中に、複数のセンサ1のうち、アクセスエリア以外に設置されたセンサが反応し、且つ、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度よりも、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度の方が高い状態が、予め定めた所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「誘導動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、アクセスエリアから敷地内の他のエリアに移動した物体が人間以外の小動物や無生物である可能性が高い状況では、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。なお、ここでは、アクセスエリア以外に設置されたセンサが反応していることを警備動作終了の条件の1つとしているが、アクセスエリアに設置されたセンサが反応している場合であっても、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度よりも、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度の方が高い状態が所定時間以上継続した場合は、「誘導動作」を含めたすべての警備動作を終了させるようにしてもよい。
【0047】
また、「誘導動作」の実行中に、複数のセンサ1のうちのいずれも反応していない状態が、予め定めた所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「誘導動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、いずれのセンサも反応していない状況は、センサ反応要因となっていた物体が敷地外に移動した可能性が高く、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。
【0048】
また、「誘導動作」の実行中に、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられた場合には、家人が警備解除の操作を行ったと判断できるため、警備動作制御部34は、「誘導動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。
【0049】
なお、「誘導動作」の実行中、「誘導動作」において作動させる音声出力機器5aの可聴領域内(つまり、音声出力機器5aからの誘導音声の効果が及ぶ範囲)のセンサが反応していない状況では、音声出力機器5aを作動させることは無駄である。そのため、このような状況では、警備動作制御部34は、音声出力機器5aからの誘導音声の出力を中断させ、無駄な消費電力の削減を図ることが望ましい。
【0050】
(警告動作)
一方、監視領域である建物の敷地に設置された複数のセンサ1のうち、最初に反応したセンサが門扉の開閉を検出するセンサ以外のセンサであり、且つ、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度よりも高い場合、警備動作制御部34は、最初に実行する警備動作として「警告動作」を選択する。これは、「警告動作」の主な対象として想定している不法侵入者が、門扉以外の場所から敷地内に侵入する可能性が高いことを考慮したものである。つまり、門扉の開閉を検出するセンサ以外のセンサが最初に反応し、人間に対応する確信度が高い状況は、不法侵入者が敷地内に侵入した可能性が高く、すぐに「警告動作」を行うことが有効と考えられるためである。
【0051】
なお、警備動作制御部34は、実行する警備動作として「警告動作」を選択した場合には、この「警告動作」に付随して「物理的防御動作」を実行させる。この「物理的防御動作」は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられた場合や、建物の玄関に設置された本錠の正規開錠動作が確認できた場合などに終了する。本錠の正規開錠動作は、例えば本錠の施開錠状態を検出可能なセンサを設けることで確認できる。
【0052】
また、警備動作制御部34は、「警告動作」の実行中は、以下の条件に従って警備動作の切替えを行う。すなわち、「警告動作」の実行中に、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度よりも高く、且つ、複数のセンサ1のうち、開口部エリアに設置されたセンサが反応しており、且つ、確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和が閾値Th2(第2の閾値)以上であり、且つ、確信度算出部32により算出された人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が、十分に小さい値に設定された閾値Th3(第3の閾値)以下である場合、警備動作制御部34は、実行する警備動作を「警告動作」から「威嚇動作」に切替える。これは、音声出力機器5aから警告音声を出力しているにも関わらず、人間である可能性が高い物体が開口部エリアに存在する状況は、高い侵入意図を持った不法侵入者が建物内部への侵入を企てようとしている可能性が高いため、「警告動作」よりも侵入者排除効果の強い「威嚇動作」を行うことが有効と考えられるためである。
【0053】
なお、建物の開口部としては、一般的に、建物内部への侵入危険度が高い開口部(例えば、掃出し窓のような開口部が広く、破壊工作が比較的容易な開口部)と、侵入危険度が低い開口部(例えば、高窓のような開口部が狭く、破壊工作が困難な開口部)とが存在する。建物内部への侵入危険度が高い開口部エリアのセンサが反応している場合と、建物内部への侵入危険度が低い開口部エリアのセンサが反応している場合とで、確信度総和値に対する閾値を変化させるようにしてもよい。具体的には、侵入危険度の高い開口部エリアのセンサが反応している場合の閾値は、侵入危険度の低い開口部エリアのセンサが反応している場合の閾値よりも低くすることで、「警告動作」から「威嚇動作」への切替えを早めに行う仕組みとすることが望ましい。
【0054】
また、「警告動作」の実行中に、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度よりも、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度の方が高い状態が所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「警告動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、センサ反応要因となっている物体が人間以外の小動物や無生物である可能性が高い状況では、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。
【0055】
また、「警告動作」の実行中に、複数のセンサ1のうちのいずれも反応していない状態が、予め定めた所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「警告動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、いずれのセンサも反応していない状況は、センサ反応要因となっていた物体が敷地外に移動した可能性が高く、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。
【0056】
また、「警告動作」の実行中に、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられた場合には、家人が警備解除の操作を行ったと判断できるため、警備動作制御部34は、「警告動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。
【0057】
なお、「警告動作」の実行中、「警告動作」において作動させる音声出力機器5aの可聴領域内(つまり、音声出力機器5aからの警告音声の効果が及ぶ範囲)や、限定報知用機器5bによる異常報知の効果が及ぶ範囲のセンサが反応していない状況では、これら音声出力機器5aや限定報知用機器5bを作動させることは無駄である。そのため、警備動作制御部34は、音声出力機器5aの可聴領域内のセンサが反応していなければ、音声出力機器5aからの警告音声の出力を中断し、また、限定報知用機器5bによる異常報知の効果が及ぶ範囲のセンサが反応していなければ、限定報知用機器5bの作動を中断させることで、無駄な消費電力の削減を図ることが望ましい。
【0058】
(威嚇動作)
警備動作制御部34は、「警告動作」から「威嚇動作」への切替えを、上述した条件に従って行う。ただし、「威嚇動作」において使用する周囲報知用機器5cは、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を開始するタイミングよりも遅らせて作動させることが望ましい。つまり、「警告動作」から「威嚇動作」への切替えの条件の1つとして、確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和が閾値Th2以上という条件があるが、この閾値Th2をTh2a,Th2bの2段階(Th2a<Th2b)とし、確信度加重和が閾値Th2a以上となったら音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を開始し、確信度加重和が閾値Th2b以上となったら周囲報知用機器5cの作動を開始させる。これは、周囲に与える影響を考慮すると、周囲に対する影響が小さい順番に機器を作動させる方が、利便性の高い警備装置になると考えられるからである。なお、周囲報知用機器5cとして、光を発する機器と音を発する機器がある場合、周囲に与える影響の大きさを考えて、光を発する機器、音を発する機器の順番に作動させることが望ましい。
【0059】
また、警備動作制御部34は、「威嚇動作」の実行中は、以下の条件に従って警備動作の切替えを行う。すなわち、「威嚇動作」の実行中に、確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和が、上記の閾値Th2(第2の閾値)よりも大きい閾値Th4(第4の閾値)以上となった場合に、「威嚇動作」に加えて「攻撃動作」を実行させる。これは、音声出力機器5aから威嚇音声を出力し、また周囲報知用機器5cを作動させているにも関わらず、不法侵入者である可能性が極めて高い物体が開口部エリアに存在し続けている状況では、不法侵入者に対して直接的な負荷を与える「攻撃動作」を行うことが有効と考えられるためである。
【0060】
また、「威嚇動作」の実行中に、複数のセンサ1のいずれかが反応しているが開口部エリアのセンサは反応しなくなった場合、警備動作制御部34は、実行する警備動作を「威嚇動作」から「警告動作」に切替える。これは、開口部エリアのセンサが反応しなくなった状況では、不法侵入者が建物内部へ侵入する危険度が下がったと判断でき、「威嚇動作」よりも侵入者排除効果の弱い「警告動作」を行うことが有効と考えられるためである。なお、「威嚇動作」に加えて「攻撃動作」も実行している場合には、「威嚇動作」から「警告動作」への切替えが行われるときに、「攻撃動作」は終了させる。
【0061】
また、「威嚇動作」の実行中に、確信度算出部32により算出された人間に対応する確信度よりも、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度の方が高い状態が所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「威嚇動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、センサ反応要因となっている物体が人間以外の小動物や無生物である可能性が高い状況では、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。
【0062】
また、「威嚇動作」の実行中に、複数のセンサ1のうちのいずれも反応していない状態が、予め定めた所定時間以上継続した場合、警備動作制御部34は、「威嚇動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。これは、いずれのセンサも反応していない状況は、センサ反応要因となっていた物体が敷地外に移動した可能性が高く、警備動作を実行する必要がないと考えられるためである。
【0063】
また、「威嚇動作」の実行中に、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられた場合には、家人が警備解除の操作を行ったと判断できるため、警備動作制御部34は、「威嚇動作」を含めたすべての警備動作を終了させる。
【0064】
なお、「威嚇動作」の実行中、「威嚇動作」において作動させる音声出力機器5aの可聴領域内(つまり、音声出力機器5aからの威嚇音声の効果が及ぶ範囲)や、周囲報知用機器5cによる異常報知の効果が及ぶ範囲のセンサが反応していない状況では、これら音声出力機器5aや周囲報知用機器5cを作動させることは無駄である。そのため、警備動作制御部34は、音声出力機器5aの可聴領域内のセンサが反応していなければ、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を中断し、また、周囲報知用機器5cによる異常報知の効果が及ぶ範囲のセンサが反応していなければ、周囲報知用機器5cの作動を中断させることで、無駄な消費電力の削減を図ることが望ましい。同様に、警備動作制御部34は、「攻撃動作」の実行中、攻撃用機器5dの効果が及ぶ範囲のセンサが反応していなければ、攻撃用機器5dの作動を中断させることで、無駄な消費電力の削減を図ることが望ましい。
【0065】
[警備動作の遷移の具体例]
次に、本実施形態にかかる警備装置により実行される警備動作の遷移の具体例について、図3乃至図7を参照して説明する。図3は、一連の警備動作の遷移を説明するメインフローチャートであり、図4は、「誘導動作」実行時の処理の流れを示すフローチャートであり、図5は、「警告動作」および「物理的防御動作」実行時の処理の流れを示すフローチャートであり、図6は、「威嚇動作」実行時の処理の流れを示すフローチャートであり、図7は、「攻撃動作」実行時の処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
(メインフロー)
まず、図3を参照して、本実施形態にかかる警備装置による動作の概要を説明する。本実施形態にかかる警備装置が「警備セットモード」に設定されると、センサインターフェース2によって複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号が制御装置3に入力される。制御装置3は、センサインターフェース2から入力されるセンサ反応信号の監視を行い、いずれかのセンサから出力されたセンサ反応信号が「反応」になったか否か、つまり、複数のセンサ1のいずれかが反応しているか否かを判定する(ステップS1)。そして、制御装置3は、いずれかのセンサが反応している場合(ステップS1:Yes)、警備動作制御部34による制御を開始させる(ステップS2)。
【0067】
警備動作制御部34による制御が開始されると、まず、ステップS1で反応していると判定されたセンサが門扉の開閉を検出するセンサであるか否かが判定される(ステップS3)。そして、門扉の開閉を検出するセンサが反応している場合は(ステップS3:Yes)、「誘導動作」が実行される(ステップS4)。一方、門扉の開閉を検出するセンサ以外の他のセンサが反応している場合は(ステップS3:No)、「警告動作」が実行される(ステップS5)。
【0068】
ステップS4の「誘導動作」の実行中、警備動作制御部34は、上述した「警告動作」に移行する条件が成立したか否かを随時判定し(ステップS6)、「警告動作」に移行する条件が成立した場合は(ステップS6:Yes)、実行する警備動作を「誘導動作」から「警告動作」に切替える(ステップS5)。一方、「警告動作」に移行する条件が成立する前に、上述した警備動作を終了する条件が成立した場合には(ステップS6:No)、警備動作制御部34は、「誘導動作」を終了するとともに自身の制御を終了する(ステップS7)。このとき、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替えである場合には(ステップS8:Yes)、警備動作制御部34による制御の終了に伴って、警備装置による一連の動作が終了する。一方、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替え以外の条件である場合には(ステップS8:No)、ステップS1に戻ってセンサ反応信号の監視が継続される。
【0069】
また、ステップS5の「警告動作」の実行中、警備動作制御部34は、上述した「威嚇動作」に移行する条件が成立したか否かを随時判定し(ステップS9)、「威嚇動作」に移行する条件が成立した場合は(ステップS9:Yes)、実行する警備動作を「警告動作」から「威嚇動作」に切替える(ステップS10)。一方、「威嚇動作」に移行する条件が成立する前に、上述した警備動作を終了する条件が成立した場合には(ステップS9:No)、警備動作制御部34は、「警告動作」を終了するとともに自身の制御を終了する(ステップS7)。このとき、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替えである場合には(ステップS8:Yes)、警備動作制御部34による制御の終了に伴って、警備装置による一連の動作が終了する。一方、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替え以外の条件である場合には(ステップS8:No)、ステップS1に戻ってセンサ反応信号の監視が継続される。
【0070】
また、ステップS10の「威嚇動作」の実行中、警備動作制御部34は、上述した「警告動作」に移行する条件が成立したか否かを随時判定し(ステップS11)、「警告動作」に移行する条件が成立した場合は(ステップS11:Yes)、実行する警備動作を「威嚇動作」から「警告動作」に切替える(ステップS5)。また、警備動作制御部34は、ステップS10の「威嚇動作」の実行中、上述した「攻撃動作」を追加する条件が成立したか否かを随時判定し(ステップS12)、「攻撃動作」を追加する条件が成立した場合は(ステップS12:Yes)、「攻撃動作」を実行する(ステップS13)。一方、「警告動作」に移行する条件や、「攻撃動作」を追加する条件が成立する前に、上述した警備動作を終了する条件が成立した場合には(ステップS12:No)、警備動作制御部34は、「威嚇動作」を終了するとともに自身の制御を終了する(ステップS7)。このとき、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替えである場合には(ステップS8:Yes)、警備動作制御部34による制御の終了に伴って、警備装置による一連の動作が終了する。一方、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替え以外の条件である場合には(ステップS8:No)、ステップS1に戻ってセンサ反応信号の監視が継続される。
【0071】
また、警備動作制御部34は、ステップS10の「威嚇動作」に追加して、ステップS13の「攻撃動作」を実行している場合も、上述した「警告動作」に移行する条件が成立したか否かを随時判定し(ステップS14)、「警告動作」に移行する条件が成立した場合は(ステップS14:Yes)、実行する警備動作を「威嚇動作」から「警告動作」に切替える(ステップS5)。一方、「警告動作」に移行する条件が成立する前に、上述した警備動作を終了する条件が成立した場合には(ステップS14:No)、警備動作制御部34は、「威嚇動作」および「攻撃動作」を終了するとともに自身の制御を終了する(ステップS7)。このとき、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替えである場合には(ステップS8:Yes)、警備動作制御部34による制御の終了に伴って、警備装置による一連の動作が終了する。一方、警備動作を終了する条件が「警備解除モード」への切替え以外の条件である場合には(ステップS8:No)、ステップS1に戻ってセンサ反応信号の監視が継続される。
【0072】
(誘導動作)
次に、図3のステップS4における「誘導動作」実行時の警備動作制御部34による制御の具体例について、図4を参照して説明する。
【0073】
ステップS101:「誘導動作」が開始されると、警備動作制御部34は、「誘導動作」で使用する音声出力機器5aを作動させるための制御指令を機器インターフェース4に出力し、音声出力機器5aから誘導音声を出力させる。
【0074】
ステップS102:警備動作制御部34は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられたか否かを判定する。そして、警備装置が「警備解除モード」に切替えられていなければ(ステップS102:No)、ステップS103に進む。一方、警備装置が「警備解除モード」に切替えられた場合は(ステップS102:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの誘導音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0075】
ステップS103:警備動作制御部34は、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されているか否かを判定する。そして、いずれのセンサも反応していない場合は(ステップS103:No)、ステップS104に進む。一方、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されている場合は(ステップS103:Yes)、ステップS105に進む。
【0076】
ステップS104:警備動作制御部34は、いずれのセンサも反応しなくなってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS104:No)、ステップS102に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS104:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの誘導音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0077】
ステップS105:警備動作制御部34は、反応しているセンサがアクセスエリアに設置されたセンサであるか否かを判定する。そして、反応しているセンサがアクセスエリアに設置されたセンサであれば(ステップS105:Yes)、ステップS106に進む。一方、反応しているセンサがアクセスエリアに設置されたセンサ以外の他のセンサであれば(ステップS105:No)、ステップS108に進む。
【0078】
ステップS106:警備動作制御部34は、現時点で確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和(物体カテゴリ=人間に対応する確信度の加重和)が、予め定めた閾値Th1(第1の閾値)以上となっているか否かを判定する。そして、確信度加重和が閾値Th1以上であれば(ステップS106:Yes)、ステップS107に進む。一方、確信度加重和が閾値Th1未満であれば(ステップS106:No)、ステップS102に戻って以降の判定を繰り返す。
【0079】
ステップS107:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS107:Yes)、実行する警備動作を「誘導動作」から「警告動作」に切替える。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS107:No)、ステップS102に戻って以降の判定を繰り返す。
【0080】
ステップS108:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS108:Yes)、実行する警備動作を「誘導動作」から「警告動作」に切替える。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS108:No)、ステップS109に進む。
【0081】
ステップS109:警備動作制御部34は、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値となってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS109:No)、ステップS102に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS109:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの誘導音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0082】
(警告動作)
次に、図3のステップS5における「警告動作」実行時の警備動作制御部34による制御の具体例について、図5を参照して説明する。
【0083】
ステップS201:「警告動作」が開始されると、警備動作制御部34は、その「警告動作」が「誘導動作」からの移行により開始されるものであるか否かを判定する。そして、「警告動作」が「誘導動作」からの移行により開始されるものでない場合は(ステップS201:No)、ステップS202に進む。一方、「警告動作」が「誘導動作」からの移行により開始されるものであれば(ステップS201:Yes)、ステップS203に進む。なお、「警告動作」が「誘導動作」からの移行により開始されるものでない場合とは、警備装置が「警備セットモード」に設定された後、複数のセンサ1のうち、門扉の開閉を検知するセンサ以外の他のセンサが最初に反応したことにより、警備装置による警備動作が「警告動作」から開始される場合である。
【0084】
ステップS202:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS202:Yes)、ステップS203に進む。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS202:No)、図3のステップS7に進み、警備動作を終了させる。
【0085】
ステップS203:警備動作制御部34は、物理的防御用機器5eを作動させるための制御指令を機器インターフェース4に出力し、物理的防御用機器5eを作動させる。
【0086】
ステップS204:警備動作制御部34は、「警告動作」で使用する音声出力機器5aを作動させるための制御指令と、限定報知用機器5bを作動させるための制御指令とを機器インターフェース4に出力し、音声出力機器5aから警告音声を出力させるとともに、限定報知用機器5bを作動させる。
【0087】
ステップS205:警備動作制御部34は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられたか否かを判定する。そして、警備装置が「警備解除モード」に切替えられていなければ(ステップS205:No)、ステップS206に進む。一方、警備装置が「警備解除モード」に切替えられた場合は(ステップS205:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの警告音声の出力と限定報知用機器5bの作動、および、物理的防御用機器5eの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0088】
ステップS206:警備動作制御部34は、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されているか否かを判定する。そして、いずれのセンサも反応していない場合は(ステップS206:No)、ステップS207に進む。一方、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されている場合は(ステップS206:Yes)、ステップS208に進む。
【0089】
ステップS207:警備動作制御部34は、いずれのセンサも反応しなくなってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS207:No)、ステップS205に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS207:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの警告音声の出力と限定報知用機器5bの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0090】
ステップS208:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS208:No)、ステップS209に進む。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS208:Yes)、ステップS210に進む。
【0091】
ステップS209:警備動作制御部34は、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値になってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS209:No)、ステップS205に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS209:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの警告音声の出力と限定報知用機器5bの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0092】
ステップS210:警備動作制御部34は、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであるか否かを判定する。そして、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであれば(ステップS210:Yes)、ステップS211に進む。一方、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサ以外の他のセンサであれば(ステップS210:No)、ステップS205に戻って以降の判定を繰り返す。
【0093】
ステップS211:警備動作制御部34は、現時点で確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和(物体カテゴリ=人間に対応する確信度の加重和)が、予め定めた閾値Th2a(第2の閾値)以上となっているか否かを判定する。そして、確信度加重和が閾値Th2a以上であれば(ステップS211:Yes)、ステップS212に進む。一方、確信度加重和が閾値Th2a未満であれば(ステップS211:No)、ステップS205に戻って以降の判定を繰り返す。
【0094】
ステップS212:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が、予め定めた閾値Th3(第3の閾値)以下となっているか否かを判定する。そして、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が閾値Th3以下であれば(ステップS212:Yes)、実行する警備動作を「警告動作」から「威嚇動作」に切替える。一方、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が閾値Th3を超えていれば(ステップS212:No)、ステップS205に戻って以降の判定を繰り返す。
【0095】
(威嚇動作)
次に、図3のステップS10における「威嚇動作」実行時の警備動作制御部34による制御の具体例について、図6を参照して説明する。
【0096】
ステップS301:「威嚇動作」が開始されると、警備動作制御部34は、「威嚇動作」で使用する音声出力機器5aを作動させるための制御指令を機器インターフェース4に出力し、音声出力機器5aから威嚇音声を出力させる。
【0097】
ステップS302:警備動作制御部34は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられたか否かを判定する。そして、警備装置が「警備解除モード」に切替えられていなければ(ステップS302:No)、ステップS303に進む。一方、警備装置が「警備解除モード」に切替えられた場合は(ステップS302:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0098】
ステップS303:警備動作制御部34は、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されているか否かを判定する。そして、いずれのセンサも反応していない場合は(ステップS303:No)、ステップS304に進む。一方、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されている場合は(ステップS303:Yes)、ステップS305に進む。
【0099】
ステップS304:警備動作制御部34は、いずれのセンサも反応しなくなってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS304:No)、ステップS302に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS304:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0100】
ステップS305:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS305:No)、ステップS306に進む。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS305:Yes)、ステップS307に進む。
【0101】
ステップS306:警備動作制御部34は、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値となってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS306:No)、ステップS302に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS306:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力を停止させて、警備動作を終了させる。
【0102】
ステップS307:警備動作制御部34は、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであるか否かを判定する。そして、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであれば(ステップS307:Yes)、ステップS308に進む。一方、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサ以外の他のセンサであれば(ステップS307:No)、実行する警備動作を「威嚇動作」から「警告動作」に切替える。
【0103】
ステップS308:警備動作制御部34は、現時点で確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和(物体カテゴリ=人間に対応する確信度の加重和)が、閾値Th2aよりも大きな値に設定された閾値Th2b以上となっているか否かを判定する。そして、確信度加重和が閾値Th2b以上であれば(ステップS308:Yes)、ステップS309に進む。一方、確信度加重和が閾値Th2b未満であれば(ステップS308:No)、ステップS302に戻って以降の判定を繰り返す。
【0104】
ステップS309:警備動作制御部34は、周囲報知用機器5cを作動させるための制御指令を機器インターフェース4に出力し、周囲報知用機器5cを作動させる。
【0105】
ステップS310:警備動作制御部34は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられたか否かを判定する。そして、警備装置が「警備解除モード」に切替えられていなければ(ステップS310:No)、ステップS311に進む。一方、警備装置が「警備解除モード」に切替えられた場合は(ステップS310:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0106】
ステップS311:警備動作制御部34は、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されているか否かを判定する。そして、いずれのセンサも反応していない場合は(ステップS311:No)、ステップS312に進む。一方、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されている場合は(ステップS311:Yes)、ステップS313に進む。
【0107】
ステップS312:警備動作制御部34は、いずれのセンサも反応しなくなってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS312:No)、ステップS310に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS312:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0108】
ステップS313:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS313:No)、ステップS314に進む。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS313:Yes)、ステップS315に進む。
【0109】
ステップS314:警備動作制御部34は、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値となってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS314:No)、ステップS310に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS314:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動を停止させて、警備動作を終了させる。
【0110】
ステップS315:警備動作制御部34は、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであるか否かを判定する。そして、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであれば(ステップS315:Yes)、ステップS316に進む。一方、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサ以外の他のセンサであれば(ステップS315:No)、実行する警備動作を「威嚇動作」から「警告動作」に切替える。
【0111】
ステップS316:警備動作制御部34は、現時点で確信度加重和算出部33により算出された確信度加重和(物体カテゴリ=人間に対応する確信度の加重和)が、閾値Th2bよりも大きな値に設定された閾値Th4(第4の閾値)以上となっているか否かを判定する。そして、確信度加重和が閾値Th4以上であれば(ステップS316:Yes)、ステップS317に進む。一方、確信度加重和が閾値Th4未満であれば(ステップS316:No)、ステップS310に戻って以降の判定を繰り返す。
【0112】
ステップS317:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が、予め定めた閾値Th3(第3の閾値)以下となっているか否かを判定する。そして、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が閾値Th3以下であれば(ステップS317:Yes)、「攻撃動作」を追加する。一方、人間以外の物体カテゴリに対応する確信度が閾値Th3を超えていれば(ステップS317:No)、ステップS310に戻って以降の判定を繰り返す。
【0113】
(攻撃動作)
次に、図3のステップS13における「攻撃動作」実行時の警備動作制御部34による制御の具体例について、図7を参照して説明する。
【0114】
ステップS401:「攻撃動作」が開始されると、警備動作制御部34は、攻撃用機器5dを作動させるための制御指令を機器インターフェース4に出力し、攻撃用機器5dを作動させる。
【0115】
ステップS402:警備動作制御部34は、警備装置が「警備セットモード」から「警備解除モード」に切替えられたか否かを判定する。そして、警備装置が「警備解除モード」に切替えられていなければ(ステップS402:No)、ステップS403に進む。一方、警備装置が「警備解除モード」に切替えられた場合は(ステップS402:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動停止とともに、攻撃用機器5dの作動を停止させ、警備動作を終了させる。
【0116】
ステップS403:警備動作制御部34は、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されているか否かを判定する。そして、いずれのセンサも反応していない場合は(ステップS403:No)、ステップS404に進む。一方、複数のセンサ1のいずれかが反応している状態が継続されている場合は(ステップS403:Yes)、ステップS405に進む。
【0117】
ステップS404:警備動作制御部34は、いずれのセンサも反応しなくなってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS404:No)、ステップS402に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS404:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動停止とともに、攻撃用機器5dの作動を停止させ、警備動作を終了させる。
【0118】
ステップS405:警備動作制御部34は、現時点で確信度算出部32により算出された物体カテゴリ=人間に対応する確信度が、他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高いか否かを判定する。そして、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値であれば(ステップS405:No)、ステップS406に進む。一方、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度よりも高ければ(ステップS405:Yes)、ステップS407に進む。
【0119】
ステップS406:警備動作制御部34は、物体カテゴリ=人間に対応する確信度が他の物体カテゴリに対応する確信度以下の値となってから予め定めた所定時間が経過したか否かを判定する。そして、所定時間が経過していなければ(ステップS406:No)、ステップS402に戻って以降の判定を繰り返す。一方、所定時間が経過していれば(ステップS406:Yes)、図3のステップS7に進み、音声出力機器5aからの威嚇音声の出力および周囲報知用機器5cの作動停止とともに、攻撃用機器5dの作動を停止させ、警備動作を終了させる。
【0120】
ステップS407:警備動作制御部34は、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであるか否かを判定する。そして、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサであれば(ステップS407:Yes)、ステップS402に戻って以降の判定を繰り返す。一方、反応しているセンサが開口部エリアに設置されたセンサ以外の他のセンサであれば(ステップS407:No)、実行する警備動作を「警告動作」に切替える。
【0121】
[確信度の算出]
以上、警備動作制御部34による警備動作の切替えについて具体例を挙げながら詳細に説明したが、次に、警備動作を切替える際の判定の基準の1つとして用いられる確信度を算出する方法の具体例について、詳細に説明する。
【0122】
本実施形態にかかる警備装置において、制御装置3の確信度算出部32が算出する物体カテゴリごとの確信度は、上述したように、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す値である。ここで、本実施形態では、物体カテゴリとして人間、小動物、無生物を想定しており、これらの行動は画一的ではない。つまり、これらの物体カテゴリに属する物体が毎回全く同じ行動を取るとは考えられず、移動経路や移動速度などは毎回変化するものと考えられる。したがって、各物体カテゴリの行動モデルとして決定的な単一モデルを構築することは困難であり、確率的な行動モデルを構築することが必要となる。そこで、本実施形態にかかる警備装置では、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した確率モデルを構築し、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した確率推論によって、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する。
【0123】
すなわち、本実施形態にかかる警備装置では、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した確率推論を実行するために、各種の物体カテゴリごとの行動の選択基準(行動モデル)を確率モデルによって構築し、また、センサの反応と物体の行動との関係性をセンサモデルとして行動モデルと同様の確率モデルによって構築する。そして、これら二つの確率モデルと、上述した複数の検知対象領域の位置を表す位置モデルとを組み合わせた「判断モデル」を利用することによって、時系列で得られるセンサ反応信号からセンサ反応要因を推定できるようにしている。
【0124】
(ダイナミックベイジアンネットワーク)
以下では、まず、判断モデルに用いるダイナミックベイジアンネットワークの概要について説明する。ダイナミックベイジアンネットワークとは、観測された事象からその原因を推定する確率モデルであるベイジアンネットワークを時間軸に展開したものである。
【0125】
ベイジアンネットワークは、事象を構成する複数の要素間の因果関係を視覚的に表現し、それらの因果関係を条件付確率で表したものである。つまり、ベイジアンネットワークは、図8に示すように、事象を構成する各要素を確率変数で表されるノードとして表し、因果関係を有する各ノード間を有向辺(矢印)で結んで、ノード間の因果関係を条件付確率で定義したモデルとして表現される。図8に示した例では、事象を構成するノードAとノードBの因果関係が条件付確率P(B|A)として与えられ、ノードBとノードCの因果関係が条件付確率P(C|B)として与えられる。なお、先頭のノードAには、このノードに接続される矢印がなく、条件付確率を定義できないので、このノード自体の確率変数で定まる事前確率P(A)を与える。このような事前確率と条件付確率によって表現される図8のモデルは、下記の式(1)に示すような数式によって表すことができる。
P(A,B,C)=P(A)P(B|A)P(C|B) ・・・(1)
【0126】
以上のようなベイジアンネットワークにおいて、あるノードに対して当該ノードに接続される矢印の起点となるノードは、一般に親ノードと呼ばれている。ここで、あるノードXに対する親ノードをPa(X)と表し、ノードがn個あるモデルを一般式で表現すると、下記の式(2)のようになる。
【数1】
【0127】
ベイジアンネットワークでは、上述したように、事象を構成する各要素間の因果関係を条件付確率によって定義するが、各要素の実現値は離散的に表現するのが一般的である。図8に示した例において、ノードAとノードBの因果関係を表す条件付確率P(B|A)は、図9に示すような条件付確率表によって表現される。この図9の条件付確率表では、ノードAが「1」のときにノードBが「1」となる確率は0.6、ノードAが「1」のときにノードBが「0」となる確率は0.4、ノードAが「0」のときにノードBが「1」となる確率は0.1、ノードAが「0」のときにノードBが「0」となる確率は0.9であることを示している。ベイジアンネットワークでは、各ノード間の条件付確率としてそれぞれ以上のような条件付確率表を用意してネットワーク全体のモデルを構築する。
【0128】
ベイジアンネットワークを利用した原因の推定は、観測できる要素を固定して未知の要素の全てのパターンの組み合わせを考えることで行う。例えば、図8に示した例において、ノードCが「1」であることが観測された場合、ノードCが「1」という結果が、ノードAが「1」であることに起因するものかどうかを推定するには、ノードAが「1」の条件下でノードBが「1」となってノードCが「1」となる確率と、ノードAが「1」の条件下でノードBが「0」となってノードCが「1」となる確率の和を計算する。以上を数式で表すと、下記の式(3)のようになる。
P(C=1|A=1)=α(P(A=1)P(B=1|A=1)P(C=1|B=1)+P(A=1)P(B=0|A=1)P(C=1|B=0))
=α(ΣBP(A=1)P(B|A=1)P(C=1|B)) ・・・(3)
ここで、αは正規化定数であり、C=1の場合のA=0の確率との正規化を行う定数である。
【0129】
以上のように、ベイジアンネットワークでは、観測できる要素の値を固定して観測できない未知の要素の全ての実現値分のパターンの確率の和を求めることで原因の確率を求めることができ、原因の推定が可能となる。
【0130】
以上説明したベイジアンネットワークは、時間軸を考慮しない静的なモデルである。したがって、本実施形態にかかる警備装置のように、時々刻々とセンサ反応信号が得られるような対象への適用を考えた場合には、時系列に対応したモデルを構築する必要がある。そこで、ベイジアンネットワークを時間軸に展開したモデルであるダイナミックベイジアンネットワークを利用する。
【0131】
ダイナミックベイジアンネットワークは、図10に示すように、一つの基本的なモデルをユニットとして、観測結果が得られるごとに時々刻々とユニットが追加され、増大していくモデルとなっている。このようなダイナミックベイジアンネットワークを利用した推定方法は、基本的には上述したベイジアンネットワークを利用した推定方法と同様であり、観測結果が得られるたびにノード数が増えていくだけである。
【0132】
図10に示した例では、1回目の観測結果O1が得られたときのモデルは図11のようになる。この図11のモデルを上記の式(1)のように表すと、下記の式(4)のようになる。
P(X0,X1,O1)=P(X0)P(X1|X0)P(O1|X1) ・・・(4)
ここで、X1の状態の推定を行うことを考える。O1は観測結果のため固定し、未知の要素はX0となる。上記の式(3)を利用すると、下記の式(5)のとおりに計算することによってX1の状態の推定値を得ることができる。
P(X1|O1)=ΣX0P(X0)P(X1|X0)P(O1|X1)
=P(O1|X1)ΣX0P(X0)P(X1|X0) ・・・(5)
【0133】
次に、2回目の観測時点では、図12に示すように、X2とO2のノードが追加されたモデルとなる。この図12に示すモデルをこれまでと同様に数式で表すと、下記の式(6)のようになる。
P(X0,X1,X2,O1,O2)=P(X0)P(X1|X0)P(O1|X1)P(X2|X1)P(O2|X2) ・・・(6)
ここで、X2の状態の推定値は、未知の要素がX0およびX1であるため、下記の式(7)のとおりに計算することで得ることができる。
P(X2|O1,O2)=ΣX0ΣX1P(X0)P(X1|X0)P(O1|X1)P(X2|X1)P(O2|X2)
=P(O2|X2)ΣX1P(O1|X1)P(X2|X1)ΣX0P(X0)P(X1|X0) ・・・(7)
【0134】
ダイナミックベイジアンネットワークでは、新たな観測結果が得られるたびにモデルにユニットを追加して上述のように計算を行うことによって、時系列で得られる観測結果からその原因を推定することが可能となる。ただし、時々刻々とユニットを追加していけば、ある時間が経過すると非常に巨大なモデルとなり、それだけ計算量が増大して実用に値しないものとなる虞がある。そこで、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した因果関係の推定を行う場合には、下記の式(8)に示すような再帰的な計算を行うことによって計算量の増大を抑えるようにすることが望ましい。
P(Xt+1|O1,O2,・・・,Ot+1)=P(Ot+1|Xt+1)ΣXtP(Xt+1|Xt,O1,O2,・・・,Ot)P(Xt|O1,O2,・・・,Ot)
=P(Ot+1|Xt+1)ΣXtP(Xt+1|Xt)P(Xt|O1,O2,・・・,Ot) ・・・(8)
この式(8)において、最後の項が前のタイミングでの推定値である。このように、前のタイミングの推定値を用いた再帰的な計算を行うことによって、計算量の増大を有効に抑制することが可能となる。
【0135】
(判断モデル)
次に、確信度の算出に用いられる判断モデルについて、さらに詳しく説明する。図13は、判断モデルの概要を示すモデル図である。判断モデルは、図13に示すように、ダイナミックベイジアンネットワークを利用した確率モデルであり、大きく分けて、位置モデルと、行動モデルと、センサモデルの3つのモデルから構成されている。このうち、行動モデルとセンサモデルは、図9に示したような条件付確率表で表現される確率モデルである。なお、図13の判断モデルでは、各ノードの添え字の部分が観測時間を表し、“0”は初期状態を表している。この判断モデルは時系列の変化を表したモデル(ダイナミックベイジアンネットワーク)であり、図14に示すように、初期状態の基本モデルに対して、添え字が共通する部分がユニットとして観測タイミングごとに追加されていくものである。以下、この判断モデルを構成する位置モデル、行動モデル、センサモデルについて、具体例を挙げながら説明する。
【0136】
(位置モデル)
位置モデルは、センサ1を用いた物体検知の対象となる複数の検知対象領域の位置を表すモデルである。すなわち、監視領域となる建物の敷地構造を周辺状況等によって複数の抽象的なエリアに分け、各エリアをそれぞれ検知対象領域とする。このときの各エリアの位置を位置モデルとして表現する。具体的には、一般的な建物の敷地構造は、例えば図15に示すように、門扉エリアと、囲障エリアと、アクセスエリアと、プライベートエリアと、開口部エリアとに分けることができ、これら各エリアの位置を位置モデルとして表す。
【0137】
ここで、図15に例示する位置モデルの各エリアは、次のような意味を持つ。
門扉エリア:外部からの通常のアクセスが行われるエリアであり、門扉は通常閉じられており、開閉はレバーを引く等の動作を要するものとする。
囲障エリア:囲障(塀)の部分を表している。
アクセスエリア:通常の外部から入ってくる人間が建物の玄関へ向かうのに通過するエリアである。
プライベートエリア:アクセスエリアと空間的には繋がっているが、門扉から玄関までのルートを外れた庭の奥の部分の空間を表す。
開口部エリア:建物の開口部及びその手前部分の空間を表す。
【0138】
(行動モデル)
行動モデルは、予め定めた複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体の行動様式を表した確率モデルである。すなわち、行動モデルは、各物体カテゴリに属する物体が上記の位置モデルで表現される建物敷地内をどのような行動を取りながらどのように移動していくのかを、図9に示したような条件付確率表の形で表現したモデルである。本実施形態で想定する判断モデルは、図13に示したように、行動モデルの部分の要素間を繋ぐ矢印が、物体行動(At)と物体位置(Xt)の2種類のノードに向かっている。したがって、行動モデルは、各物体カテゴリに属する物体の行動の遷移を表現する条件付確率表と、各物体カテゴリに属する物体の位置の遷移を表現する条件付確率表との2つの条件付確率表によって表される。
【0139】
ここで、それぞれの条件付確率表について説明する前に、図13に示した判断モデル(ダイナミックベイジアンネットワーク)のノードとなる物体カテゴリと物体行動および物体位置の具体的な実現値の例を説明する。
【0140】
物体カテゴリは、センサ反応要因の分類であり、本実施の形態では、人間、小動物、無生物の3つのカテゴリとしている。なお、ここで無生物とは、小動物以外のセンサ誤報の要因となり得るものを総称したカテゴリであり、例えば、太陽光や風、ゴミ袋等の飛来物などである。
【0141】
物体行動は、物体カテゴリが取り得る行動を分類したものであり、本実施の形態では、消失、進入、移動、滞在の4つの行動に分類している。ここで消失とは、敷地外から消える動作であり、外部に離脱するような動きをいう。また、進入とは、外部から敷地内部に入ってくる動作をいう。また、移動とは、敷地内を移動する動作をいう。また、滞在とは、敷地内の現在位置からほとんど動かない動作をいう。
【0142】
物体位置は、図15に示したように、上記の位置モデルにおいて表現された敷地内のそれぞれのエリアを表したものである。
【0143】
次に、行動モデルを表現する2つの条件付確率表について説明する。図16は、物体の行動の遷移を表現する条件付確率表の具体例を示し、図17は、物体の位置の遷移を表現する条件付確率表の具体例を示している。
【0144】
物体の行動の遷移を表現する条件付確率表とは、物体が前に選択した行動によって敷地内のある位置に存在しているとの条件の下で、次に選択する行動の確率を表現したものである。言い換えると、物体がある行動を取って現在の位置にいるときに、続けてどの行動を選択するのかという確率を表している。このような行動の遷移の条件付確率を式で表すと、P(行動|物体,現在位置,前回行動)となる。この条件付確率を、上述した物体行動の分類と図15に示した位置モデルとを用いて図9に示したような条件付確率表として表すことにより、図16に示すような物体の行動の遷移を表現する条件付確率表が得られる。
【0145】
物体の位置の遷移を表現する条件付確率表とは、物体が前のタイミングで存在していた位置においてある行動を取ったとの条件の下で、現在存在する位置はどこなのかを確率で表現したものである。言い換えると、物体が前にいた位置である行動を取った後に、どの位置にいるのかという確率を表している。このような位置の遷移の条件付確率を式で表すと、P(位置|物体,前位置,前行動)となる。この条件付確率を、上述した物体行動の分類と図15に示した位置モデルとを用いて図9に示したような条件付確率表として表すことにより、図17に示すような物体の位置の遷移を表現する条件付確率表が得られる。
【0146】
ところで、初期状態の判断モデル(図14の左側に示す基本モデル)では、前のタイミングでの行動や位置のノードが存在しないため、図16や図17に示した条件付確率表をそのまま適用することはできない。そこで、このような初期状態に対応した条件付確率表、つまり、センサ1が最初に反応した場合に適合する条件付確率表を別に用意しておく。
【0147】
初期状態の位置については、センサ1の反応要因となる物体が最初に建物敷地内のどこに存在するか(初期位置)を条件付確率P(位置|物体)として表すことができ、これを図9に示したような条件付確率表として表すと、図18に示すような初期位置の条件付確率表が得られる。また、初期状態の行動については、センサ1の反応要因となる物体が最初にどのような行動をとるか(初期行動)を条件付確率P(行動|物体,現在位置)として表すことができ、これを図9に示したような条件付確率表として表すと、図19に示すような初期行動の条件付確率表が得られる。
【0148】
なお、図13に示した判断モデルにおいては、物体カテゴリ(Ct)を表すノード間が矢印で繋がっているため、この物体カテゴリを表すノード間の因果関係についての条件付確率を定義する必要があるが、物体が動いている最中に変化することはないと考えられる(例えば人間が小動物に変化するといったことはない)ため、前の物体と現在の物体が等しい確率を1.0、変化する確率を0として与えておけばよい。
【0149】
(センサモデル)
センサモデルは、物体が存在する位置と複数のセンサ1の反応との関係を表した確率モデルである。すなわち、センサモデルは、物体がある位置に存在した場合に、各センサ1がどのように反応するのかを表している。図13に示した判断モデルのセンサモデル部分に示すように、センサモデルは、物体位置(Xt)のノードと観測結果であるセンサ反応信号(Ot)のノード間が矢印で結ばれた形をしており、条件付確率P(センサ|位置)によって定義される。なお、センサ反応信号は反応/無反応の2値をとるものとしている。以下、具体例を挙げながらセンサモデルについてさらに詳しく説明する。
【0150】
監視領域となる建物の敷地内を図15に示したように門扉エリア、囲障エリア、アクセスエリア、プライベートエリア、開口部エリアの5つの検知対象領域にエリア分けし、図20に示すように、門扉エリアには屋外開閉センサ1a、囲障エリアには2つの対向式赤外線センサ1b,1c、アクセスエリアには屋外空間センサ1d、プライベートエリアには屋外空間センサ1e、開口部エリアには滞留検知センサ1fがそれぞれ設置されているものとする。なお、屋外開閉センサ1aは門扉の開閉を検出するセンサであり、対向式赤外線センサ1b,1cは赤外線ビームの遮断を検出するセンサである。また、屋外空間センサ1d,1eは焦電素子を用いたパッシブ型の赤外線センサであり、滞留検知センサ1fは赤外線の反射を利用して物体の有無や物体までの距離を検出するセンサである。これら各センサ1a〜1fの検知エリアは、図20中のハッチングを付した領域となる。
【0151】
以上のように住宅の敷地内にセンサ1a〜1fを設置したとの仮定のもとで、条件付確率P(センサ|位置)を図9に示したような条件付確率表として表すことにより、図21に示すようなセンサモデルの条件付確率表が得られる。各センサ1a〜1fから得られるセンサ反応信号は上述したように反応/無反応の2値であり、図21に示す条件付確率表では反応を示す確率が示される。この図21に示す条件付確率は、敷地内のある位置に物体が存在したときに、どのセンサが反応するかを表現したものである。
【0152】
なお、このセンサモデルの条件付確率表では、敷地内のいずれかのエリア(検知対象領域)に物体が存在するにも関わらずセンサ1a〜1fのいずれも反応しない無反応の状態となる確率も与えている。これは、位置モデルによって定義される各エリア(検知対象領域)をセンサ1a〜1fの検知エリアで完全に覆うことは困難であることや、検知エリア内に物体が存在してもセンサ1a〜1fが誤って反応しない(失報)場合があることを考慮したものである。このようにセンサモデルの条件付確率表に無反応の状態の確率を与えておくことにより、位置モデルによって定義される敷地内のエリア全てをセンサ1の検知エリアで覆う必要はなくなり、また、センサ1が誤って反応しなかった場合にも対応することが可能となる。
【0153】
以上のように、確信度の算出に用いる判断モデルは、監視領域となる建物の敷地をエリア分けして位置モデルを生成するとともに、行動モデルを表現する4つの条件付確率表(図16〜図19)と、センサモデルを表す条件付確率表(図21)とを作成することによって構築されるものである。判断モデルを構成する上記の5つの条件付確率表は、人間(侵入者)や小動物、無生物の行動パターンやそれに応じたセンサ反応状態を数値に変換したものであり、設計者が予め作成しておくものであるが、経験的に得られる警備に関するノウハウを利用してこれらの条件付確率表を作成することによって、警備装置に適用する上で最適な判断モデルを構築することができる。以下、警備に適した判断モデルを構成する条件付確率表の具体的な作成基準の一例について説明する。
【0154】
(人間の行動パターン)
まず、人間の行動パターンについて、基本的な考え方として次のような仮定をおく。
「人間は地面を移動し(空を飛ばない)、敷地外から敷地内へ移動する。敷地内においても地面を移動し、建物へ向かう。」
このような仮定をおくため、図18に示した初期位置の条件付確率表では、人間が敷地内部のエリア(アクセスエリア、プライベートエリア、開口部エリア等)に初期状態で存在する確率は0とする。
【0155】
また、上述した物体行動の定義から、「進入」は敷地外から敷地内へ移動することと定義しているため、図19に示した初期行動の条件付確率表では、門扉エリアと囲障エリア以外のエリアでは、人間の初期行動が「進入」である確率を0としている。同様に、図16に示した行動遷移の条件付確率表では、前のタイミングでの行動に拠らず敷地内部のエリア(アクセスエリア、プライベートエリア、開口部エリア等)に存在している状態で人間が「進入」を選択する確率を0としている。また、図17に示した位置遷移の条件付確率表では、図15に示した位置モデルにおいて、進入の直後に玄関前に存在することは不可能であるため(距離が離れすぎている)、前行動が「進入」の場合に人間が開口部エリアに存在する確率を0としている。
【0156】
以上は、物体行動や物体位置の定義のもとで人間の物理的な挙動に関して明示的な行動パターンに関して述べたものである。図16〜図19に示した条件付確率表の他の部分に関しては、侵入者等の人間の行動に関して警備のノウハウを応用する。以下では、その例を簡単に説明する。
【0157】
侵入者は、周囲から見られることを嫌悪する傾向が強く現れる。そのため、見通しが悪い箇所や見られたとしても周囲から怪しまれない箇所/行動、極度に短時間で目的が達成される箇所/行動を好む傾向にある。そのため、図18に示した初期位置の条件付確率表では、人間の初期位置の確率として、「囲障」よりも「門扉」を高く設定している。これは、門扉を開けることは通常の訪問者のようで怪しまれにくい上に、乗り越えるよりも短時間で敷地内へ入ることができると考えられるからである。ただし、門扉自体が強固な場合や、門扉が頑丈に施錠されている場合、門扉が高い場合等においては、人間の初期位置の確率として「門扉」よりも「囲障」のほうを高く設定することが好ましい場合もある。
【0158】
同様に、門扉周辺に滞在することは周囲から見つかり怪しまれるリスクを負うことになるため、図16に示した行動遷移の条件付確率表では、前のタイミングでの行動に拠らず門扉エリアに存在している人間がとる行動として、「滞在」よりも「移動」を選択する確率を高く設定している。
【0159】
また、アクセスエリアは門扉から直接繋がったエリアであり、門扉が格子状であるような場合にはアクセスエリアの見通しがよくなる。そのため、図16に示した行動遷移の条件付確率表では、アクセスエリア内では人間が「滞在」を選択する確率を低く設定しており、「移動」を選択する確率を高く設定している。また、プライベートエリアは周囲を囲障で囲まれており滞在しても周囲から見られるリスクが低いため、プライベートエリアに存在している人間が「滞在」を選択する確率は、アクセスエリアに存在している場合より高く設定する。
【0160】
人間は建物の中を目指して進み、建物内へ入るには開口部を通る。そのため、人間は開口部エリアに向かう。したがって、開口部エリア以外のエリアでは人間が「移動」を選択する確率が全体的に高く、逆に、開口部エリアでは人間が「滞在」を選択する確率が高い。図17に示した位置遷移の条件付確率表は、物体の移動の方向性を表している。侵入者は見通しが悪いエリアを移動しながら、見通しが悪く侵入しやすい開口部のエリアへ向かうように位置を遷移する。このため、図17に示した位置遷移の条件付確率表では、侵入者が好むエリアへ進むように人間の位置の遷移確率を与える。
【0161】
以上のような基準に従って人間の位置や行動に関する条件付確率を定めるが、これらは警備対象となる住宅の物理的な構造や周辺環境に依存して調整する。例えば、囲障が1m程度であれば、乗り越える方が短時間で済む場合があり、そのような建物の場合には、図18に示した初期位置の条件確率表において、人間の初期位置が「囲障」である確率を高めるようにする。
【0162】
(小動物の行動パターン)
小動物についても、人間の場合と同様に「地面を移動し(空を飛ばない)、敷地外から敷地内へ移動する。敷地内においても地面を移動する」との仮定をおく。このような仮定をおくため、図18に示した初期位置の条件付確率表では、小動物の初期位置が「囲障」である確率を高く設定している。なお、小動物は門扉を開閉することがないと考えられるため、門扉エリアに存在する確率は0としている。
【0163】
その他の条件付確率表では、「小動物はランダムに行動を選択し、方向性の定めがなく移動する」との仮定をおいて、それぞれの条件付確率表の小動物に関する項目を埋めていく。
【0164】
(無生物のパターン)
無生物は、ゴミ袋等の飛来物のほか、風や太陽光線などの自然要因がある。したがって、敷地内のどの位置も無生物の初期位置となり得るが、その確率は各エリアの大きさに依存することとなる。このため、図18に示した初期位置の条件付確率表では、無生物の初期位置の確率の大小を各エリアの大きさに応じて設定している。
【0165】
また、無生物は移動することがほとんどないと考えられるため、「移動」を選択する確率はどのような状態(位置、前のタイミングの行動)でも非常に小さい確率を与える。また、無生物はその要因自体がなくなる場合(太陽光が雲で覆われる場合や日が傾く等)があるため、行動として「消失」を選択する確率を高く設定する。以上のような考え方に従って、図16〜図19に示した条件付確率表の無生物に関する項目を埋めていく。
【0166】
(センサ反応信号のパターン)
センサ反応信号は、物体の行動パターンによって変化するものではなく、センサ1の種類や検知エリアの大きさ、センサ1の設置位置に依存して反応の確率が変化する。図21に示したセンサモデルの条件付確率表は、物体がある位置Xに存在したときにどのセンサが反応するかを表したものであり、図20に示した例において、物体が存在しているエリアに設置されているセンサ以外のセンサが反応する確率を0としている。
【0167】
また、図21に示したセンサモデルの条件付確率表では、上述したように、センサ1の種類に応じて、物体が存在するのに誤って反応しないような確率を「無反応」の確率として与えている。図20に示した例では、門扉エリアに設置した屋外開閉センサ1aや、囲障エリアに設置した対向式赤外線センサ1b,1c、開口部エリアに設置した滞留検知センサ1fは、誤って反応しない場合が非常に少ないと想定しているため、無反応の確率を非常に小さな値に設定している。逆に、アクセスエリアやプライベートエリアに設置する屋外空間センサ1d,1eは誤って反応しない確率はある程度高いことを想定しているため、無反応の確率を他のセンサよりも高く設定している。
【0168】
ところで、図20に示した例では、位置モデルによって定義される各エリア(検知対象領域)がセンサ1a〜1fの検知エリアによってほぼ覆われていることを想定しているが、実際には、センサ1の検知エリアで全てのエリア(検知対象領域)を完全に覆うことは困難な場合が多い。そこで、このような場合には、位置モデルによって定義されるエリア内ではあるがセンサ1の検知エリアからは外れている位置に物体が存在する可能性も考慮して、センサモデルの条件付確率表における「無反応」の確率を定める。
【0169】
具体的な例を挙げて説明すると、例えば図22に示すように、監視領域となる建物の敷地に、アクセスエリアの一部を検知エリアとする屋外空間センサ1g、アクセスエリアの一部とプライベートエリアの一部とを検知エリアとする屋外空間センサ1h、プライベートエリアの一部を検知エリアとする屋外空間センサ1iがそれぞれ設置されているものとする(図中のハッチングを付した領域が各センサ1g〜1iの検知エリアを示している。)。この図22に示す例では、特にプライベートエリアにおいてセンサ検知エリアから外れる領域が広くなっているため、プライベートエリアに物体が存在しても、無反応の状態となる確率が高い。そこで、センサモデルの条件付確率表では、位置がプライベートエリアの場合に、そのセンサ検知エリアから抜けている面積に応じて確率を低く設定する。図23は、このような場合のセンサモデルの条件付確率表の一例を示している。なお、ここでは簡単のために、アクセスエリアとプライベートエリアのみに焦点を絞って記述している。
【0170】
また、図22に示した例では、屋外空間センサ1hがアクセスエリアとプライベートエリアにまたがって設置されている。この場合には、アクセスエリアとプライベートエリアのどちらに物体が存在しても屋外空間センサ1hが反応する場合がある。そのため、図23に示したセンサモデルの条件付確率表では、物体の位置がアクセスエリアとプライベートエリアのどちらの場合にも屋外空間センサ1hの確率を0にせず、各エリアにどれほどセンサの検知エリアがかかっているかに応じた確率を与える。
【0171】
(確信度の算出)
次に、制御装置3の確信度算出部32において、センサ1の反応信号の時系列データと上述した判断モデルとを用いて、物体カテゴリごとにセンサ反応要因となっている確信度を算出する手法について説明する。
【0172】
ベイジアンネットワークを利用した原因推定の計算式は、上記の式(3)で示したように、条件付確率の積と和で構成されている。センサ反応要因推定アルゴリズムにおいて、図13に示したような判断モデルを利用して確信度の算出を行うために、上記の式(3)を図13の判断モデルに適用すると、下記の式(9)のようになる。
P(C0=c|O0=o)=α(P(C0=c)ΣXΣAP(A0|C0=c,X0)P(X0|C0=c)P(O0=o|X0)) ・・・(9)
また、2回目以降の観測値が得られた際の確信度の計算式は、下記の式(10)のように、再帰的な計算を行う計算式として表される。
P(C=c|Ot=ot,Ot-1=ot-1,Ot-2=ot-2,・・・)
=α((ΣXtΣAtΣXt−1ΣAt−1P(At|C=c,Xt,At-1)P(Xt|C=c,At-1,Xt-1)P(Ot=ot|Xt))P(C=c|Ot-1=ot-1,Ot-2=ot-2,・・・)) ・・・(10)
なお、上記の式(9)および式(10)において、Cは物体カテゴリを表し、Oはセンサ反応信号(反応したセンサ)を表している。また、Aは物体の行動を表し、Xは物体の存在する位置を表している。また、各変数の添え字は観測タイミングを表し、添え字の“0”は初期状態を表している。また、ΣA(・・・)は行動Aに関して総和をとるという意味であり、ΣX(・・・)は位置Xに関して総和をとるという意味である。
【0173】
上記の式(9)では、初期行動の条件付確率を表すP(A0|C0=c,X0)に関して図19に示したような条件付確率表から値を参照し、初期位置の条件付確率を表すP(X0|C0=c)に関して図18に示したような条件付確率表から値を参照し、センサモデルの条件付確率を表すP(O0=o|X0)に関して図21に示したような条件付確率表から値を参照することによって、初期状態のセンサ反応信号としてoが観測された際にその反応要因の物体カテゴリがcである確信度P(C0=c|O0=o)を算出することができる。
【0174】
また、上記の式(10)では、行動遷移の条件付確率を表すP(At|C=c,Xt,At-1)に関して図16に示したような条件付確率表から値を参照し、位置遷移の条件付確率を表すP(Xt|C=c,At-1,Xt-1)に関して図17に示したような条件付確率表から値を参照し、センサモデルの条件付確率を表すP(Ot=ot|Xt)に関して図21に示したような条件付確率表から値を参照し、前回の計算結果P(C=c|Ot-1=ot-1,Ot-2=ot-2,・・・)を用いた再帰的な計算をすることによって、2回目以降のセンサ反応信号としてoが観測された際にその反応要因の物体カテゴリがcである確信度P(C=c|Ot=ot,Ot-1=ot-1,Ot-2=ot-2,・・・)を算出することができる。
【0175】
ここで、図20に示した例において、初期状態のセンサ反応信号として門扉エリアに設置した屋外開閉センサ1aの反応が観測された場合に、そのセンサ反応要因が人間である確信度を算出する場合を想定して上記の式(9)を具体化すると、下記の式(11)のようになる。
【数2】
上記の式(11)から分かるように、知りたい物体カテゴリと観測で得たセンサ反応の部分は固定し、行動Aと位置Xの組み合わせを変えた全てのパターンの確率の総和をとっている。それぞれの条件付確率は、図16〜図19、図21に示したような条件付確率表に照らし合わせることで即座に具体的な数値が割り当てられ、それらの数値を使って確信度を算出する。
【0176】
なお、上記の式(9)〜式(11)において、右辺の先頭にあるαは正規化定数であり、cを人間、小動物、無生物と3つの物体カテゴリで変化させたときに算出される3つの値の和を1.0とするような係数である。実際の計算上は、αを考慮しないで上記の式を使って3つの物体カテゴリごとにそれぞれ確信度を計算し、3つの値が得られた後に、それぞれの値を3つの値の和で割ることで確信度を得る。
【0177】
(確信度算出の具体例)
次に、図24および図25に示す物体の行動パターンを想定し、物体カテゴリごとの確信度を算出する具体例について説明する。図24は、不審者が囲障エリアからアクセスエリアに侵入し、そのまま開口部エリア(玄関)へ向かった場合の例である。センサの反応としては、{囲障エリア、アクセスエリア、開口部エリア}と3回反応したとする。一方、図25は、小動物が図24と同様に囲障を乗り越えてアクセスエリアに進入し、そのまま囲障エリアから外へ抜けた場合の例である。この場合のセンサの反応としては、{囲障エリア、アクセスエリア、囲障エリア}となる。
【0178】
物体カテゴリごとの確信度の算出は、センサ反応の1回目については上記の式(9)と図18、図19、図21に示したような条件付確率表を利用して計算する。2回目のセンサ反応からは、計算量が増えないよう上記の式(10)と図16、図17、図21に示したような条件付確率表を利用して再帰的に計算する。
【0179】
図24の例において物体カテゴリごとに確信度を算出した場合の結果を図26に示す。また、図25の例において物体カテゴリごとに確信度を算出した場合の結果を図27に示す。これら図26および図27において、実数部分が各センサ反応要因の推定値(確信度)を表している。図26に示すように、図24の例の場合では、道路に面する囲障エリアのセンサの反応から始まっており、初めのうちは動物と区別がつかない。しかしながら、その方向性が開口部エリア(玄関)へまっすぐ進んでいる様子がわかったことで(つまり、センサ反応O2が得られたことで)、センサの反応要因が人間である確信度が高い値となる。一方、図27に示すように、図25の例の場合では、図24の例と同様に囲障エリアのセンサから反応が始まっており、その後も方向の定めがなく再度囲障エリアのセンサが反応する。特定の目的を持たないようなセンサ反応系列が得られたことで、目的を持たずに移動する物体として小動物がセンサ反応要因である確信度が高い値となる。
【0180】
[実施形態の効果]
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態にかかる警備装置では、制御装置3の確信度算出部32が、複数のセンサ1から定期的に取得されるセンサ反応信号の時系列データを、判断モデル記憶部31が記憶する判断モデルに照らし合わせて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する。また、制御装置3の確信度加重和算出部33が、確信度算出部32により時系列で算出される、物体カテゴリ=人間に対応する確信度を、時系列の初期段階ほど低い重み係数により重み付け加算した確信度加重和を算出する。そして、制御装置3の警備動作制御部34が、複数のセンサ1から得られるセンサ反応信号と、確信度算出部32により算出される物体カテゴリごとの確信度と、確信度加重和算出部33により算出される確信度加重和とに基づいて、現在の状況に応じた最適な警備動作が実行されるように、警備動作の切替えを行うようにしている。したがって、本実施形態にかかる警備装置によれば、センサ反応要因を的確に推定して、推定されるセンサ反応要因に対して効果的な警備動作を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0181】
以上のように、本発明にかかる警備装置および警備動作切替え方法は、不法侵入者に対して効果的な侵入者排除動作を行うための技術として有用である。
【符号の説明】
【0182】
1 センサ
3 制御装置
5a 音声出力機器
5b 限定報知用機器
5c 周囲報知用機器
5d 攻撃用機器
5e 物理的防御用機器
31 判断モデル記憶部
32 確信度算出部
33 確信度加重和算出部
34 警備動作制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域における異常を検知した際に予め定めた複数の警備動作のうち少なくとも一つを実行する警備装置において、
前記監視領域に設置された複数のセンサと、
前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号の時系列データに基づいて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する確信度算出手段と、
前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、前記確信度とに基づいて、実行する警備動作を切替える警備動作制御手段と、を備えることを特徴とする警備装置。
【請求項2】
前記複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体の行動の遷移の条件付確率と位置の遷移の条件付確率とを定めた確率モデルである行動モデルと、物体が存在する位置と前記複数のセンサの反応との関係を表した確率モデルであるセンサモデルと、を含む判断モデルを記憶する判断モデル記憶手段をさらに備え、
前記確信度算出手段は、前記行動モデルを用いて前記センサ反応信号の時系列データに適合する行動パターンをとる確率を前記複数の物体カテゴリごとに求めるとともに、該確率に対して前記センサモデルで表される物体の位置に対するセンサ反応の確率を乗算して、前記複数の物体カテゴリごとの前記確信度を算出することを特徴とする請求項1に記載の警備装置。
【請求項3】
前記物体カテゴリは、人間を示すカテゴリを含み、
前記確信度算出手段により時系列で算出される、人間に対応する前記確信度を、時系列の初期段階ほど低い重み係数により重み付け加算した確信度加重和を算出する確信度加重和算出手段をさらに備え、
前記警備動作制御手段は、前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、前記確信度と、前記確信度加重和とに基づいて、実行する警備動作を切替えることを特徴とする請求項1または2に記載の警備装置。
【請求項4】
建物の敷地を前記監視領域とし、
前記複数の警備動作は、
前記敷地の入口から前記建物の入口に至る経路であるアクセスエリアを少なくとも可聴領域とする音声出力機器から誘導音声を出力する誘導動作と、
前記建物の開口部付近を少なくとも可聴領域とする音声出力機器から警告音声を出力する警告動作と、
前記建物の開口部付近を少なくとも可聴領域とする音声出力機器から威嚇音声を出力する威嚇動作と、
前記建物の開口部付近に存在する人間に対して負荷を与える攻撃用機器を作動させる攻撃動作と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の警備装置。
【請求項5】
前記警備動作制御手段は、前記誘導動作の実行中に、前記アクセスエリアに設置されたセンサが反応しており、且つ、前記確信度加重和が第1の閾値以上であり、且つ、人間に対応する前記確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する前記確信度よりも高い場合に、実行する警備動作を前記誘導動作から前記警告動作に切替えることを特徴とする請求項4に記載の警備装置。
【請求項6】
前記警備動作制御手段は、前記警告動作の実行中に、人間に対応する前記確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する前記確信度よりも高く、且つ、前記建物の開口部付近に設置されたセンサが反応しており、且つ、前記確信度加重和が第2の閾値以上であり、且つ、人間以外の物体カテゴリに対応する前記確信度が第3の閾値以下である場合に、実行する警備動作を前記警告動作から前記威嚇動作に切替えることを特徴とする請求項4に記載の警備装置。
【請求項7】
前記警備動作制御手段は、前記威嚇動作の実行中に、前記確信度加重和が前記第2の閾値よりも大きい第4の閾値以上となった場合に、前記威嚇動作に加えて前記攻撃動作を実行させることを特徴とする請求項6に記載の警備装置。
【請求項8】
前記警備動作制御手段は、前記威嚇動作の実行中に、前記建物の開口部付近に設置されたセンサが反応しなくなった場合に、実行する警備動作を前記威嚇動作から前記警告動作に切替えることを特徴とする請求項4に記載の警備装置。
【請求項9】
前記警備動作制御手段は、前記複数の警備動作の少なくともいずれかを実行中に、人間に対応する前記確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する前記確信度よりも低い状態が一定時間以上継続した場合に、すべての警備動作を終了させることを特徴とする請求項1に記載の警備装置。
【請求項10】
前記警告動作は、前記音声出力機器からの前記警告音声の出力に加えて、さらに、前記敷地内に異常が発生していることを前記敷地内に報知する限定報知用機器を作動させることを特徴とする請求項4に記載の警備装置。
【請求項11】
前記威嚇動作は、前記音声出力機器からの前記威嚇音声の出力に加えて、さらに、前記敷地内に異常が発生していることを前記敷地内および前記敷地外に報知する周囲報知用機器を作動させることを特徴とする請求項4に記載の警備装置。
【請求項12】
監視領域における異常を検知した際に予め定めた複数の警備動作のうち少なくとも一つを実行する警備装置において実行される警備動作切替え方法であって、
前記監視領域に設置された複数のセンサから得られるセンサ反応信号の時系列データに基づいて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出するステップと、
前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、前記確信度とに基づいて、実行する警備動作を切替えるステップと、を含むことを特徴とする警備動作切替え方法。
【請求項1】
監視領域における異常を検知した際に予め定めた複数の警備動作のうち少なくとも一つを実行する警備装置において、
前記監視領域に設置された複数のセンサと、
前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号の時系列データに基づいて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出する確信度算出手段と、
前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、前記確信度とに基づいて、実行する警備動作を切替える警備動作制御手段と、を備えることを特徴とする警備装置。
【請求項2】
前記複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体の行動の遷移の条件付確率と位置の遷移の条件付確率とを定めた確率モデルである行動モデルと、物体が存在する位置と前記複数のセンサの反応との関係を表した確率モデルであるセンサモデルと、を含む判断モデルを記憶する判断モデル記憶手段をさらに備え、
前記確信度算出手段は、前記行動モデルを用いて前記センサ反応信号の時系列データに適合する行動パターンをとる確率を前記複数の物体カテゴリごとに求めるとともに、該確率に対して前記センサモデルで表される物体の位置に対するセンサ反応の確率を乗算して、前記複数の物体カテゴリごとの前記確信度を算出することを特徴とする請求項1に記載の警備装置。
【請求項3】
前記物体カテゴリは、人間を示すカテゴリを含み、
前記確信度算出手段により時系列で算出される、人間に対応する前記確信度を、時系列の初期段階ほど低い重み係数により重み付け加算した確信度加重和を算出する確信度加重和算出手段をさらに備え、
前記警備動作制御手段は、前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、前記確信度と、前記確信度加重和とに基づいて、実行する警備動作を切替えることを特徴とする請求項1または2に記載の警備装置。
【請求項4】
建物の敷地を前記監視領域とし、
前記複数の警備動作は、
前記敷地の入口から前記建物の入口に至る経路であるアクセスエリアを少なくとも可聴領域とする音声出力機器から誘導音声を出力する誘導動作と、
前記建物の開口部付近を少なくとも可聴領域とする音声出力機器から警告音声を出力する警告動作と、
前記建物の開口部付近を少なくとも可聴領域とする音声出力機器から威嚇音声を出力する威嚇動作と、
前記建物の開口部付近に存在する人間に対して負荷を与える攻撃用機器を作動させる攻撃動作と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の警備装置。
【請求項5】
前記警備動作制御手段は、前記誘導動作の実行中に、前記アクセスエリアに設置されたセンサが反応しており、且つ、前記確信度加重和が第1の閾値以上であり、且つ、人間に対応する前記確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する前記確信度よりも高い場合に、実行する警備動作を前記誘導動作から前記警告動作に切替えることを特徴とする請求項4に記載の警備装置。
【請求項6】
前記警備動作制御手段は、前記警告動作の実行中に、人間に対応する前記確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する前記確信度よりも高く、且つ、前記建物の開口部付近に設置されたセンサが反応しており、且つ、前記確信度加重和が第2の閾値以上であり、且つ、人間以外の物体カテゴリに対応する前記確信度が第3の閾値以下である場合に、実行する警備動作を前記警告動作から前記威嚇動作に切替えることを特徴とする請求項4に記載の警備装置。
【請求項7】
前記警備動作制御手段は、前記威嚇動作の実行中に、前記確信度加重和が前記第2の閾値よりも大きい第4の閾値以上となった場合に、前記威嚇動作に加えて前記攻撃動作を実行させることを特徴とする請求項6に記載の警備装置。
【請求項8】
前記警備動作制御手段は、前記威嚇動作の実行中に、前記建物の開口部付近に設置されたセンサが反応しなくなった場合に、実行する警備動作を前記威嚇動作から前記警告動作に切替えることを特徴とする請求項4に記載の警備装置。
【請求項9】
前記警備動作制御手段は、前記複数の警備動作の少なくともいずれかを実行中に、人間に対応する前記確信度が、人間以外の物体カテゴリに対応する前記確信度よりも低い状態が一定時間以上継続した場合に、すべての警備動作を終了させることを特徴とする請求項1に記載の警備装置。
【請求項10】
前記警告動作は、前記音声出力機器からの前記警告音声の出力に加えて、さらに、前記敷地内に異常が発生していることを前記敷地内に報知する限定報知用機器を作動させることを特徴とする請求項4に記載の警備装置。
【請求項11】
前記威嚇動作は、前記音声出力機器からの前記威嚇音声の出力に加えて、さらに、前記敷地内に異常が発生していることを前記敷地内および前記敷地外に報知する周囲報知用機器を作動させることを特徴とする請求項4に記載の警備装置。
【請求項12】
監視領域における異常を検知した際に予め定めた複数の警備動作のうち少なくとも一つを実行する警備装置において実行される警備動作切替え方法であって、
前記監視領域に設置された複数のセンサから得られるセンサ反応信号の時系列データに基づいて、複数の物体カテゴリごとに、各物体カテゴリに属する物体がセンサ反応要因となっている確からしさを表す確信度を算出するステップと、
前記複数のセンサから得られるセンサ反応信号と、前記確信度とに基づいて、実行する警備動作を切替えるステップと、を含むことを特徴とする警備動作切替え方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2012−181630(P2012−181630A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43205(P2011−43205)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【Fターム(参考)】
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