貯蔵材料にアンモニアを貯蔵し、そこからアンモニアを放出するためのシステムならびにアンモニアを貯蔵および放出するための方法
時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスのための吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料にアンモニアを貯蔵し、そこからアンモニアを放出するためのシステム。そのシステムは、該アンモニア含有貯蔵材料を収容することができる容器と、該固体の貯蔵媒体からのアンモニアの脱離のための熱を供給するように配置されている熱源と、アンモニアを放出するように該熱源を制御するように配置されている制御装置とを有する。その熱源は、該容器の内側に配置されており、アンモニア貯蔵材料に取り囲まれている。制御可能な投入弁が、アンモニアの需要に従って、放出されたアンモニアを投入するように配置されている。該制御装置は、該熱源により供給される熱を該アンモニア需要に基づいて制御するように配置されているフィードフォーワード制御を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア貯蔵に関し、特に、アンモニアを吸着または吸収することによって可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料にアンモニアを貯蔵し、そこからアンモニアを放出するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア吸収材料である金属アンミン塩類は、アンモニアのための固体の貯蔵媒体として使用することができ(例えば、特許文献1を参照)、言い換えると、例えば、NOx排出を減少するための選択触媒還元における還元剤として使用することができる(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
通常、アンモニアは、貯蔵容器の外部加熱により、例えば、金属アンミン塩類からの熱脱離により放出される(例えば、特許文献2を参照)。発熱体をその貯蔵容器内部に置くこともできる(例えば、特許文献3および特許文献1)。
【0004】
特許文献2は、自動車両のNOx排出を減少する選択触媒還元における還元剤としてのアンモニアの使用を開示している。そのアンモニアは、貯蔵容器中の吸着性または吸収性固体貯蔵媒体のいずれか、とりわけ、粒状形態のSr(NH3)8Cl2またはCa(NH3)8Cl2から放出され、バッファ容積中のガスとして一時的に貯蔵される。自動車の排気システムにおける反応体積に供給されるアンモニアの量は、エンジンの最新の運転状態による電子エンジン制御装置の制御のもとで投入される(特許文献2、9頁最後の段落)。貯蔵媒体から脱離されるアンモニアの量は、貯蔵容器中の圧力が圧力センサーによって測定されるフィードバック制御によって制御され、その圧力が圧力閾値に達した場合、熱の供給が中断される(特許文献2、8頁と9頁にまたがる段落)。
【0005】
特許文献4は、冷凍を目的としたアンモニア化した金属ハロゲン化物を用いる急速吸収サイクル(30分未満)のためのプロセスについて記載している。内側に組み込まれている1つまたは複数の熱伝導管を有する貯蔵材料中の適当な反応器が記載されている。その(1つまたは複数の)熱伝導管から周囲の貯蔵材料中への熱伝導を増すために熱伝導板が備えられている。熱拡散経路長および物質拡散経路長は、それぞれ、15mmおよび1.5mm未満である。類似の反応器が、特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/12903号パンフレット
【特許文献2】国際公開第1999/01205号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5161389号明細書
【特許文献4】米国特許第5441716号明細書
【特許文献5】米国特許第5328671号明細書
【特許文献6】国際公開第2006/081824号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料にアンモニアを貯蔵し、そこからアンモニアを放出するためのシステムを対象としている。そのシステムは、該アンモニア含有貯蔵材料を収容することができる容器と、該容器の内側に配置されており、アンモニア貯蔵材料に取り囲まれている熱源(該熱源は、該固体の貯蔵媒体からのアンモニアの脱離のための熱を供給するように配置されている)と、アンモニアの需要に従って、放出されたアンモニアを投入するように配置されている制御可能な投入弁と、該熱源により供給される熱を該アンモニア需要に基づいて制御するように配置されているフィードフォーワード制御を含む制御装置とを含む。
【0008】
別の態様によれば、容器中に収容されており、時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料によって貯蔵されているアンモニアを放出させる方法が提供される。その方法は、アンモニアの脱離のためにアンモニア貯蔵材料に対してどれだけの熱を供給すべきかを、該アンモニア需要に基づいて、フィードフォーワード制御を含む制御を用いて測定するステップと、該容器内部に配置されており、該アンモニア貯蔵材料によって取り囲まれている熱源により熱を供給するステップと、アンモニア需要に従って制御可能な投入弁を用いて放出されたアンモニアを投入するステップとを含む。
【0009】
その他の特徴は、開示されている方法および製品に内在するものであり、すなわち、実施形態およびそれに付随する図面の以下の詳細な説明から当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
(本発明の実施形態を、ここで例により、添付の図面を参照しながら説明するがそれらの図面は以下のものである。)
【図1】アンモニア貯蔵材料を内部で加熱し、熱源がその貯蔵材料中に埋め込まれている貯蔵容器を有するアンモニア貯蔵および放出システムの実施形態を示す図であり、該容器中に詰め込むべきアンモニア収容性貯蔵材料ユニットの適当な形の図面を含む。
【図2】熱源が熱伝導性エレメントを備えている貯蔵容器のさまざまな実施形態の断面図であり、図2aが図1の貯蔵容器に該当する。
【図3】フィンの形態をしている熱伝導性エレメントが、熱源の軸に沿って配置されている円板である実施形態を示す図であり、該容器中に詰め込むべきアンモニア収容性貯蔵材料ユニットの適当な形の図面を含む。
【図4】熱伝導性フィンが、脱離したアンモニアが貯蔵材料の全体ブロックを通過することなくそのフィン中を貯蔵容器の出口に向かって流れることを可能にするように多孔質金属板でできている実施形態を示す図である。
【図5】加熱媒体として高温の流体を供給する熱源を有することを除いて図1と同様の実施形態を示す図である。
【図6】図1の貯蔵容器の断面図に基づいて最大熱拡散経路長の概念を説明している図である。
【図7】外部の熱源と比較した内部に組み込まれた熱源の遅れを縮める効果(速い応答時間、脱離したアンモニアの圧力制御能力の高まり)を実験データにより説明している図である。
【図8】外部の熱源と比較した内部に組み込まれた熱源の投入能力を実験データにより説明している図である。
【図9】外部の熱源と比較した内部に組み込まれた熱源の投入能力を実験データにより説明している図である。
【図10】アンモニア需要および温度の観測に基づく熱源の電力需要の実時間推定を含む熱供給のフィードフォーワード制御を説明している図である。
【図11】貯蔵ユニット中の測定圧に基づく重ね合わせフィードバック制御による熱供給のフィードフォーワード制御を説明している図である。
【図12】放出されたアンモニアが、NOxを減少させるためには使用されないが、燃料電池用燃料として役立つその他の実施形態を説明している図である。
【図13】放出されたアンモニアが、NOxを減少させるためには使用されないが、燃料電池用燃料として役立つその他の実施形態を説明している図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料にアンモニアを貯蔵し、そこからアンモニアを放出するためのシステムおよび方法に関連する。出願人の同時係属の出願である特許文献1に記載されているように、金属アンミン塩類は、アンモニア用の固体貯蔵媒体として使用することができる。したがって、その金属アンミン塩はアンモニアの貯蔵および輸送に対する安全で実用的な選択肢を表すアンモニア用の固体貯蔵媒体を構成する。アンモニアは、その貯蔵材料からの熱脱離により放出される。
【0012】
「段階的なアンモニアの需要」とは、貯蔵されたアンモニアが、いっせいにではなく、長時間に及び(例えば、数時間に及び)、変化した速度で、または断続的でさえあり得る分散した形で必要となることを意味する。該アンモニア収容性貯蔵材料は、貯蔵容器中に保持され、いくつかの実施形態において、放出されたアンモニアは、そこから制御可能な投入弁を通して所望の割合で投入される。該容器と該弁の間には、いくつかの実施形態において、バッファ容積が存在する。
【0013】
可動式ユニットに関しては、その可動式ユニットから容易に分離することができ、新たな金属アンミン容器により置き換えるかそのままでアンモニアを再充填することができる容器中に該貯蔵材料(例えば、金属アンミン錯体)を保持するのが特に有用である。容器の交換の1実施形態において、該金属アンミン容器は、回収され、別の再充填ユニットまたは再充填施設内でアンモニアを再充填する。
【0014】
いくつかの実施形態において、脱離したアンモニアは、例えば、自動車両、ボイラー、加熱炉などから排出されるNOxを還元する選択触媒還元における還元剤として使用することができる。かくして、該システムは、燃焼機関または燃焼過程の酸素含有排気ガスからのNOxを除去するように配置される。例えば、実施形態のいくつかにおいては、供給ライン(バッファ容積を含むことができる)が備えられており、それは、容器から放出されたガス状アンモニアを、例えば、制御可能な投入弁によって投入される望ましい割合で、排気ガス中に直接供給するように配置されている。該排気システムにおける反応体積中には、NOxを該アンモニアとの反応によって還元するための触媒が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態において、該燃焼機関は、ジーゼル、ガソリン、天然ガス、石炭、水素またはその他の化石もしくは合成燃料により燃料供給される可動式燃焼機関ユニットである。除去することができるNOxは、自動車、トラック、列車、船舶またはその他のモーターのついた機械もしくは車両、あるいは発電するための発電所によって発生し得る。
【0016】
アンモニアの需要は、実質的に、排気ガス中のすべてのNOxを除去することができるアンモニアの量であるが、少しでもアンモニアが大気中に漏れることが容認されない場合は、実質的にすべてのアンモニアが分解されることを確保するために少ない割合を排気ガス中に投入することができる。いくつかの実施形態において、アンモニアの需要は、例えばNOx検出器によって測定される排気ガス中のNOxの測定結果に基づいて決定することができる。別の実施形態においては、操作状態についてのエンジン制御装置または燃焼過程からの情報が、目下の操作状態において予想されるNOxを見積もるために使用される。例えば、該操作状態は、現在のエンジン速度、現在の負荷、現在の駆動ペダル位置等によって明確にすることができ、これらのパラメータを知ることによって、エンジン制御装置(または燃焼過程制御装置)が排気ガス中の予想されるNOxをリアルタイムで決定することが可能となる。そのエンジン制御装置は、例えば、予想されるNOxの排出に対応する全体のエンジンの運転区域のマッピング(例えば、ルックアップテーブルの形の)を備えている。上記のリアルタイムで予測されたNOxの信号は、アンモニア需要を決定するためのフィードフォーワード制御装置へのインプットとして使用することができる。いくつかの実施形態において、エンジン制御装置に基づくNOx測定およびNOx予測は、より速いが、正確な需要の指示を得るために結合一体化されており、例えば、マッピング(例えば、ルックアップテーブル)により予測されたNOx値は、実際の(測定された)NOxと比較することができ、そのマッピングは、もし不一致があれば、連続的に修正することができる。
【0017】
その他の実施形態において、脱離したアンモニアは、直接的または間接的に、例えば発電設備のための燃料として使用することができる。例えば、これらの実施形態のいくつかにおいて、脱離したアンモニアは、触媒アンモニア分解反応器において水素を生成するために使用され、その水素は、ガス状の水素に基づく運転が可能な燃料電池における燃料として使用される。他の実施形態において、アンモニアに基づく運転が可能な燃料電池用燃料としては、その脱離したアンモニアが直接機能する。そのガス状アンモニアは、例えば、制御可能な投入弁によって、アンモニア分解反応器中に、または、直接該燃料電池中に投入される。
【0018】
それらの実施形態において、該アンモニア需要は、実質的に、反応器に、または燃料電池が必要な電力を生ずることができるように燃料電池に供給しなければならないアンモニアの量である。
【0019】
アンモニアの熱脱離において使用される熱は、熱源によって供給される。いくつかの実施形態において、その熱源は、それがアンモニア貯蔵材料によって取り囲まれる、すなわち、その中に組み込まれるように該容器の内部に配置されている。容器の外側または容器の内側の熱源の配置とは違って、容器の壁では実質的にすべての供給される熱が該貯蔵材料に入るしかない。したがって、熱の一部はそれでもなお環境へと失われるが、この一部は発熱体が貯蔵材料中に埋め込まれていないときに失われるであろう一部よりは少ない。
【0020】
該熱源による熱の供給は、制御装置によって制御される。例えば車両の排気システム中の反応体積に供給されるアンモニアの量は、いくつかの実施形態において、例えば、エンジンの現在の動作状態による現在のアンモニア需要に基づく制御弁によって投入される。アンモニアの取り出しは一般に変動するので、貯蔵容器中には圧力変動が存在する(バッファがある場合はその圧力変動はそのバッファ中にもある)。例えば、特許文献2によれば、貯蔵媒体から脱離するアンモニアの量は、該容器からアンモニアを取り出すことによって引き起こされる圧力変化に基づいて、貯蔵容器中の圧力を圧力センサーによって測定するフィードバック制御により、間接的に制御し、その圧力が圧力閾値に達した場合は、熱の供給を中断する。それに反して、本発明のいくつかの実施形態においては、その制御装置は、熱源によって供給される熱をアンモニア需要に基づいて制御するように配置されているフィードフォーワード制御を含む。この需要とは、例えば、現在の需要もしくは推測した未来の需要、または現在と未来の需要の組み合わせである。フィードフォーワード制御は、圧力が既に低過ぎるか高過ぎる場合に反応するだけではないので、効果的な脱離の比率を、一般に変化する比率である、アンモニアを取り出す比率に順応させる遅れが短縮される。
【0021】
加熱制御装置は、熱源が、該ユニットが該動力学的脱離過程の適当な作動温度より下に冷めることを許容しないエネルギーの量を常に供給することを確保するために、アンモニア送出し需要および推定される(モデルベースの)容器による熱損失に関する情報を使用する。低過ぎる作動温度に達すると、アンモニアを例えば大気圧よりわずかに上の圧力を有する排気ライン中に投入するために必要な最低限の圧力より下の脱離圧力がもたらされる。
【0022】
したがって、フィードフォーワード制御は、どれだけのアンモニアが実際に放出されたかを測定することに基づくのではなく、アンモニアの需要量を放出するために必要な熱の量を、例えば、得られるアンモニア放出に対して供給される熱の量と結びつく計算されたモデルまたは実験データにより推定する。そのような推定の正確さは限定される可能性があり、加熱の(または加熱を停止する)効果は一定の遅れの後にのみ現れ得るので、いくつかの実施形態においては、以下でより詳細に説明するように、フィードバック制御をフィードフォーワード制御に重ね合わす。
【0023】
実施形態のいくつかにおいて、該フィードフォーワード制御は、熱源のスイッチをただ単純にオンにしたりオフにしたりすることができるだけではない。それよりむしろ、該フィードフォーワード制御は、該熱源を、それが完全にオンの状態とオフの状態の間の中間量の熱流量を供給することもできるように調節することができ、例えば、それは熱流量を、そのオンの状態とオフの状態の間の範囲内の連続する中間の値に調節することができる。いくつかの実施形態において、該熱源それ自体は、例えば、加熱電流(電力による熱源の場合)または高温の液体流(高温流体の熱源の場合)を連続的に調節することによってさまざまな出力で運転することができる。熱源が、必要となる中間値に対応するデューティサイクルにより、熱源を速くオンオフする(例えば電気の供給をオンオフする)ことによって最大出力でのみ運転することができるその他の実施形態においては、必要となる中間値に対応する熱の有効量は加熱システムの熱慣性によって供給される。
【0024】
脱離速度は、貯蔵容器内の温度および圧力の関数である。一定の脱離速度を得るため、または維持するためには、それ故、温度を測定し、その温度が低過ぎる場合は熱の供給を開始、または増し、その温度が高過ぎる場合は熱の供給を停止、または減少することを思いつくことができる。しかし、そのような温度に基づくフィードバック制御は、特許文献2に記載されている圧力に基づくフィードバック制御と同様の遅れを有する。
【0025】
一般に、貯蔵材料からのアンモニアの脱離は吸熱性である。したがって、脱離するアンモニアは冷却効果を有する。いくつかの実施形態においては、フィードフォーワード制御が、熱源により供給される熱を制御して、要求されるアンモニアの貯蔵材料からの吸熱性の脱離に対して必要となるエネルギーを償うように配置されている。上で説明したように、これは温度の測定に(主として)基づくものでなく、かつ、その測定された温度に基づくフィードバック制御ではなくて、要求された量の脱離に対して必要な吸熱性の脱離エネルギーの計算(すなわち、推定)に基づくものである。その脱離エネルギーは、脱離される量に比例するので、必要となる熱エネルギーは、いくつかの実施形態において、そのアンモニア需要にその比例定数を掛けることによって得られる。
【0026】
熱源は、貯蔵材料中に埋め込まれており、その結果すべての熱はその貯蔵材料によって吸収されるが、その熱の一定部分は、貯蔵容器の壁を通って周囲に失われる。いくつかの実施形態において、この熱損失は、フィードフォーワード制御において考慮に入れられる。これらの実施形態においては、その制御装置は、その容器の周囲への熱損失を測定するように配置されており、そのフィードフォーワード制御が、熱源によって供給される熱を、それが周囲への熱損失を償うように制御する。例えば、その熱損失を推定する簡単な方法は、貯蔵容器(好ましくは断熱性)のその外部表面積(例えば、熱が抜け出るm2)および該断熱材の内側から外側までの温度勾配と組み合わせた熱伝導係数(W/m2K)に関するモデル記述に基づく。その実施形態のいくつかにおいて、該温度勾配は、内部温度と外部温度の実際の測定結果の間の差として、または、例えば、内部温度の測定結果と周囲の平均温度の値との差として捉えられる。
【0027】
いくつかの実施形態において、該フィードフォーワード制御は、該発熱体により供給される熱が、要求されるアンモニアの量を脱離するのに要する脱離エネルギーと周囲への熱損失との合計に相当するようにするものである。
【0028】
周囲への熱損失が、フィードフォーワード制御において考慮される実施形態のいくつかにおいて、その熱損失は、温度測定に基づいて推定される。原則として、その熱損失を計算するためには、貯蔵容器内(または容器の壁の内面)の温度および周囲(または容器の壁の外面)の温度を知らなければならない。したがって、いくつかの実施形態において、その貯蔵容器内(または容器の壁の内面)の温度およびその周囲(または容器の壁の外面)の温度の両方が測定され、熱損失計算に使用される。他の実施形態においては、一方の温度測定のみが行われ、他方の温度については、(一定の)平均温度が想定されて計算に使用される(その測定される温度は内温であり、その平均温度が外温であり得、またはその逆でもあり得る)。さらに別の実施形態においては、温度測定は行わずに内温および外温の両方について平均値が使用される。
【0029】
上記のように、いくつかの実施形態において、フィードバック制御が、熱供給のフィードフォーワード制御に重ね合わされる。その重ね合わせフィードバック制御は、その容器内の圧力測定に基づく。それは、その圧力が上限圧力閾値を超えているときは熱源による熱の供給を減少させるまたは停止し、その圧力が下限圧力閾値を下回っているときは熱源による熱の供給を増加または開始する。いくつかの実施形態において、超過圧力では熱供給は完全にスイッチがオフにされ、不十分な圧力では利用できる最大の熱発生率が提供される。重ね合わせフィードバック制御が何故有用であり得るかについては一般に次の2つの理由がある。
(i) 説明したように、フィードフォーワード制御は、要求された量のアンモニアを脱離するために必要な熱量の推定に基づいているが、そのような推定の正確さは制限される可能性があり、その推定の誤りは、時間が経てば蓄積し得るので、重ね合わせフィードバック制御が一種のエラー修正機能を提供する。
(ii) 加熱(または加熱の停止)の効果は、一定の遅れの後にのみ表れる可能性があり、需要が、突然著しく増すかまたは減少し得るために、貯蔵容器中の圧力が圧力の上限または下限にはるかに達しないかまたは超過することが起こり得る。
その重ね合わせフィードバック制御は、フィードフォーワード制御の蓄積誤差を正し、圧力が過剰に高くなるか低くなる場合の一種の「緊急介入」を構成する。
【0030】
ここに示されているシステムおよびプロセスは、熱脱離によってアンモニアを可逆的に放出することができるすべての貯蔵材料と共に使用することができる。これらの材料は、アンモニアを吸着または吸収する材料であり得る。吸着材料の例は、酸により変性されたカーボンおよびゼオライト類である。吸収材料の例は、金属アンミン塩類である。
【0031】
有用な金属アンミン塩類は、一般式M(NH3)nXzを有しており、式中、Mは、アンモニアを結びつけることができる1つまたは複数の金属イオン類、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどであり、nは、通常は2〜12の配位数であり、Xは、Mの原子価に依存する1つまたは複数のアニオンで、Xの代表例は、F、Cl、Br、I、SO4、MoO4、PO4などである。
【0032】
アンモニアを放出する間、元の金属アンミン塩M(NH3)nXzは、徐々にm<nであるM(NH3)mXzに変換される。すべての所望されるアンモニアが放出されたとき、その得られたM(NH3)mXzは、吸収/脱離過程の可逆性によるアンモニア含有ガス流を用いる吸収処理によってM(NH3)nXzに通常は転換して戻すことができる。いくつかの金属アンミン塩については、すべてのアンモニアを放出し、次いでその得られた材料を元の金属アンミン塩に転換して戻すことが多数のサイクルで可能である。
【0033】
該金属アンミン錯体の一般的なアンモニア含量は、20〜60重量%の範囲であり、好ましくは30重量%より上である。一例として、一般的で安価な化合物、例えばMg(NH3)6Cl2などは、51.7重量%のアンモニアを含有する。本出願人の同時係属の特許文献6に開示されているもののような充填成型法を用いると液体アンモニアが数パーセント以内のアンモニア密度(8〜9バール圧の容器)を得ることが可能である。
【0034】
特許文献6に開示されている本出願人の技術を使用することにより、アンモニア水溶液および尿素水溶液の両方より著しく高い密度(体積および重量の両方を基準とする)でのアンモニアの貯蔵が可能となる。尿素水は、NOx還元用触媒および発生したアンモニアを還元剤として用いることによりNOxを除去するためのアンモニアを提供することができる化学的アンモニア担体の例である。
【0035】
アンモニアをガスの形で直接送達することは、流量制御システムの単純化および還元剤アンモニアの排気ガスとの効率的な混合の両方に対して有利である。アンモニアの直接使用は、また、例えば液体ベースの尿素系における沈殿または不純物によって引き起こされる投入系の詰りと関係する問題の可能性も排除する。加えて、排気ラインの温度が尿素のアンモニア(およびCO2)への完全な転化に対して低過ぎることもあり得るので、尿素水溶液は低いエンジン負荷では投入することができない。
【0036】
貯蔵材料中に埋め込まれる加熱部材の配備は、熱供給のフィードフォーワード制御と関数関係にあり、なぜならそれは、熱の予測がよりよい精度でなされるアンモニア需要の関数として提供することを可能にするためである。この関係は、必須のものではないが、フィードフォーワード制御に対してそれは有利である。
【0037】
埋め込まれた熱源から貯蔵材料への熱伝導を改良するために、いくつかの実施形態においては、熱源とアンモニア貯蔵材料とが熱源とアンモニア含有貯蔵材料との間の内部熱交換領域を増すような熱的接続状態にある熱伝導エレメントが提供される。
【0038】
例えば、該熱伝導性エレメントは、熱源に熱的に接続されており、アンモニア含有貯蔵材料によって取り囲まれた複数のフィンである。
【0039】
例えば、該熱伝導性エレメントは、多孔質または密度の高いアルミニウム、チタン、ステンレススチールまたは類似のアンモニア耐性のある金属類または合金類製である。該熱伝導性エレメント用の適当な金属の一例は、例えば真鍮とは異なりアンモニアおよびその塩に耐えることができるアルミニウムである。その上、アルミニウムは、低い質量密度および優れた熱伝導率を有しており、したがって、熱エネルギーを加熱エレメントまたは熱源から容器中に保たれている周囲の貯蔵材料に効率的に伝達するのに好ましい。
【0040】
実施形態のいくつかにおいて、該熱源は、長方形の形状を有している。例えば、フィンは、熱源の縦方向に対して平行に配置されている。しかし、他の実施形態において、それらは熱源の縦方向に対して垂直に配置されている。
【0041】
そのあとの実施形態において、脱離したアンモニアを貯蔵容器の縦方向の端の1つ(または両方)で取り除くことになっている場合、該フィンは、基本的に、そのガス流の障害となり得る(例えば、そのガスがフィンの周りを流れる他の方法がない場合)。
【0042】
いくつかの実施形態において、いくつかの、またはすべての熱伝導性エレメントは、放出されたアンモニアを該フィンと接触している貯蔵材料の表面から通す多孔質の金属構造から構成されている。これは、さもなければガス流に対して障害であり得るフィンの場合に妥当であるばかりでなく、それはまた、例えば縦方向のフィンと共に貯蔵材料内に脱離したガスのための「導管」を提供して該ガスが貯蔵材料を去るのを促進するために有用であり得る。
【0043】
該熱伝導性金属は、多孔質金属板であり得る。例えば部分的に焼結した金属粒子製の多孔質金属シート/板/物体は、加熱エレメント(熱源)から貯蔵材料への熱伝導に対して効果的であり、かつ、アンモニアが加熱フィンの孔を通って流れることを可能にすることによって、該貯蔵材料から容器出口までのガス輸送導管を増加している。加熱フィンの孔は多孔質金属の熱伝導率が緻密金属の伝導率の少なくとも10%であるように制限すべきである。
【0044】
実施形態のいくつかにおいて、最大熱拡散経路長(高度に熱伝導性の表面から高度に熱伝導性の任意の表面から最も離れた貯蔵材料の点までの間隔)は15mmを上回る。いくつかの実施形態において、平均の物質拡散経路長(すべてのアンモニア分子から該アンモニア貯蔵材料に隣接するガス透過性表面までの最短距離のすべてのアンモニア分子を通した算術平均)もまた15mmを上回る。
【0045】
いくつかの実施形態において、該加熱エレメントは、熱を発生するための電流により供給されるように配置されている。その熱源は、該容器中に伸びている1つの熱交換器(または複数の熱交換器)を含むことができる。その熱は、該熱交換器を通過する高温の流体またはガスから獲得することができる。いくつかの実施形態において、その高温の流体またはガスは、化学反応または燃焼過程からの高温の生成ガスまたは流体であるか、あるいはそれによって加熱される。いくつかの実施形態において、該熱源は、1つまたは複数の加熱管の形で提供される。該容器は、縦伸びを有しており、1つまたは複数の該加熱管は、該容器の縦伸びの方向に伸びている。
【0046】
かくして、本発明は、アンモニアの貯蔵および発生のために吸着または吸収によってアンモニアを結びつけることができる貯蔵材料の使用に関する。例えば、アンモニアの貯蔵のためのおよび脱離熱の直接貯蔵容器内側への制御された内部送達を用いて該材料からアンモニアを放出させるための固体金属アンミン錯体を使用することができる。そのアンモニアの放出は、多孔質金属構造を使用することによる熱交換材料中の内部ガス導管によってさらに促進することができる。放出されると同時にアンモニアは燃焼過程からの排出ガス中のNOxの選択触媒還元(SCR)における還元剤として使用することができる。
【0047】
液体アンモニアの貯蔵が危険過ぎる可動式または携帯式ユニットあるいは特別な化学合成ルートにおいてアンモニアを使用するその他の用途も本発明の実施形態と考えられる。これはまた、アンモニアが有効な水素担体であると考えることができる燃料電池システムならびに液体アンモニアとしてのアンモニアの貯蔵が安全性の理由によって許容されないアンモニアを必要とする化学合成ルートを含めたアンモニアを消費するその他のプロセスも含む。
【0048】
加熱された貯蔵媒体の熱時間応答は、殆どの場合、リアルタイムで(すなわち殆ど瞬時に)アンモニア需要に適合するには遅過ぎる。リアルタイムでアンモニア需要に適合するためには、制御可能な投入弁が用意され、それが外部(例えば排気ガス中)に実際に投入されるアンモニアの量を決める。
【0049】
いくつかの実施形態において、該制御可能な投入弁は、アンモニア需要に応じて、放出されたアンモニアを投入するように制御される。例えば、該制御装置によって生じたフィードフォーワードアンモニア需要信号が、該制御可能な投入弁および該熱源の両方を制御するために使用される。熱アンモニア放出の応答は、熱源のフィードフォーワード制御によって比較的速い(フィードバック制御方式と比較して)が、それは投入弁による殆ど瞬時の投入応答と比較すると依然として相対的に遅い。結果として、放出されたアンモニアの量および投入された量は、一定時間ごとに互いに異なり得る。しかし、熱アンモニアの放出および放出されたアンモニアの投入の両方に対して同じ需要信号が使用される場合、これらの量は、加熱による熱アンモニア放出機構の時定数に相当するタイムスケールに基づく平均化効果のために同じになる(両方のプロセスの較正が正しいと仮定して)。
【0050】
直ちに放出されるアンモニアの量は、投入される量と常に同じではないので、アンモニア含有貯蔵材料を収容している容器内の圧力は変化し得る。変化する圧力も考慮して、要求されたアンモニア量を正確に投入することを確実にするために、いくつかの実施形態においては、要求信号は制御可能な投入弁を直接的に調節しないで、間接的に調節するだけとし、それによって、投入弁によって投入されたアンモニアの実際の質量流量を測定する質量流量計にも依存する。制御装置(上記の制御装置、または専用の質量流量制御装置であり得る)が、アンモニア需要および測定された実際の質量流量を比較し、この比較に基づいて、その測定された質量流量が、該フィードフォーワードアンモニア需要信号によって指示されたアンモニア需要に一致するようにその制御可能な投入弁を制御する。
【0051】
超過圧力および不十分な圧力を避けるための熱源の重ね合わせフィードバック制御による実施形態のいくつかにおいては、そのフィードバック制御信号は、熱源を制御するために使用されるのみで、それは投入弁の制御には使用されない。したがって、かかる実施形態においては、該制御弁は、重ね合わせフィードバック信号無しのフィードフォーワード需要信号のみに基づいて常に制御され、一方、熱源を制御するためにも使用されるフィードフォーワード需要信号は、フィードバック信号と重ね合わすことができる。これにより、実際に投入されたアンモニア量がその需要とできるだけ接近して常に一致し、同時に、該加熱による熱アンモニア放出機構の上記のより大きい時定数による、および、もしかすると熱脱離と投入の較正の不一致による不十分な圧力および超過圧力を避けることが確保される。
【0052】
該実施形態は、システム(すなわち製品)にのみではなく、容器中に収容されており、時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料によって貯蔵されているアンモニアを放出させる方法にも関係する。該方法は、アンモニアの脱離のためにアンモニア貯蔵材料に対してどれだけの熱を供給すべきかを、該アンモニア需要に基づいて、フィードフォーワード制御を含む制御を用いて測定するステップと、該容器内部に配置されており、該アンモニア貯蔵材料によって取り囲まれている熱源により熱を供給するステップと、アンモニア需要に従って制御可能な投入弁を用いて放出されたアンモニアを投入するステップとを含む。
【0053】
該方法のいくつかの実施形態において、貯蔵材料からのアンモニアの脱離は吸熱性であり、フィードフォーワード制御が、熱源によって供給される熱を、貯蔵材料からの必要とされるアンモニアの吸熱性の脱離に対して要するエネルギーを補填するように制御する。
【0054】
該方法のいくつかの実施形態において、該制御は、該容器の周囲への熱損失を測定し、該フィードフォーワード制御が、熱源によって供給される熱を、それが該周囲への熱損失を補填するように制御する。これらの実施形態のいくつかにおいて、周囲への熱損失は、該容器の内部温度、容器壁内側の温度、容器壁外側の温度、および周囲の温度の少なくとも1つの測定に基づいて推定される。
【0055】
該方法のいくつかの実施形態において、該フィードフォーワード制御は、該熱源によって供給される熱を、それが、該貯蔵材料からの要求されたアンモニアの吸熱性脱離に対して要するエネルギー、および周囲への熱損失の両方を補填するように制御する。
【0056】
該方法のいくつかの実施形態において、該制御は、該容器内の圧力測定に基づいて、その圧力が上限圧力閾値を超えているときは該熱源による熱の供給を減少させるまたは停止し、該圧力が下限圧力閾値を下回るときは該熱源による熱の供給を増加または開始する重ね合わせフィードバック制御を含む。
【0057】
該方法のいくつかの実施形態において、NOxは、燃焼機関または燃焼過程の酸素含有排気ガスから、容器から放出されたガス状アンモニアをその排気ガス中に供給し、触媒を用いてそのアンモニアによりNOxを還元する反応によって除去し、ここで、その制御は、(i)NOxの測定または推測、および(ii)エンジン制御装置または燃焼過程制御装置からの情報の少なくとも1つに基づくアンモニア需要を得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、該エンジン制御装置からの情報は、該エンジンの作動状態を示し、該フィードフォーワード制御はその作動状態情報に基づくアンモニア需要を推測する。
【0058】
該方法のいくつかの実施形態において、脱離したアンモニアは、発電設備のための燃料として使用される。
【0059】
該方法のいくつかの実施形態において、(a)脱離したアンモニアは、触媒アンモニア分解反応において水素を製造するために使用され、その水素は、ガス状水素に基づいて運転することができる燃料電池の燃料として使用され、または(b)アンモニアに基づいて運転することができる燃料電池はその脱離したアンモニアにより直接運転する。
【0060】
ここで図1を見てみると、貯蔵容器1は、その容器1の内側に配置されている熱源を表す加熱エレメント2によって加熱される。その加熱エレメント2から熱を放散させるためにその加熱エレメント2に取り付けられている熱伝導エレメントを表すフィン3が存在する。図示されている例においてはその加熱エレメントには電流が供給される。そのフィン3は、容器1の縦方向(すなわち、そのシリンダーの軸に沿って)およびその容器の半径方向にある板の状態で配置されている。それらは適切にはアルミニウムまたは高い熱伝導率およびその容器1中の環境に対して耐性を有するその他の軽い材料でできている。アンモニア貯蔵材料は、容器1の中の空間を埋め尽くすブロック9の形でつくられている(または、他の実施形態においては、粉末としてそのユニット中に入れることができる)。その貯蔵材料9は、離れたところと容器1内の両方に図示されている−両方の場所とも項目9によって示されている。アンモニアが熱脱離によって固体から放出されるとき、それはon/off弁4を有する管を通ってバッファ容積5に至る。圧力センサー10は、アンモニアの脱離圧を測定し、投入弁6は、アンモニアを制御装置12によって与えられた需要に応じて排気ライン7中に投入する。該制御装置12は、例えば、エンジン制御ユニット(ECU、ここには図示されていない)と連絡している。NOxセンサー15は、NOx信号を制御装置12に送る排気ライン7中に備えられており、それは順次そのNOxを除去するためのアンモニア需要を計算する。他の実施形態においては、その制御装置12は、ECUからの予測されたアンモニア需要信号を得る。
【0061】
該貯蔵容器1は、断熱材8によって断熱されており、それは、また、その容器1の外側、ただしその断熱材8の下部、に温度を測定する手段11も有する。制御装置12は、温度測定11からの信号を使用して該断熱材を通る熱損失を推定/予測する。温度勾配の殆どは断熱材8に現れるので、この温度測定は、制御装置12によってなされる熱損失の推定において使用される高い方の温度レベルにほぼ一致する。熱損失推定において使用される低い方の温度レベルは、いくつかの実施形態において、例えば、断熱材8の外側表面の第2のセンサーによって測定され、その他の実施形態においては、一定の平均外側温度が単純に仮定される。いくつかの実施形態において、該加熱エレメントそれ自体は内蔵型熱電対付きで構成されている。これは、該加熱エレメントの過熱を避けるための防護として、および、温度測定が温度勾配の予測におけるパラメータとして使用することもできることの両方に役立ち得る。
【0062】
アンモニアを放出する需要と組み合わされたこの熱損失の推定により、フィードフォーワード方式においては、加熱エレメント2への熱の注入を制御する。もちろん、最初にアンモニア需要が計算され、次にこの需要に対する脱離エネルギーを補填するために要する熱を計算する2段階の方法においては、脱離エネルギーを補填するために必要な熱の量を計算することは実際には必要ではない。したがって、いくつかの実施形態において、(測定もしくは予測された)NOxは、適当なマッピングテーブルまたは式によって、測定もしくは予測されたNOxを除去するために放出されるべきアンモニアの量に対する脱離エネルギーを補填するために必要な熱を示す数字に直接マッピングされる。この熱は、次に、加熱エレメント2によって生成される熱の量を得るために推定された熱損失と直接組み合わせることができる。
【0063】
測定の結果に基づいて、該制御装置は、加熱エレメント2に送られる電気エネルギーを、その熱の必要量が加熱エレメント2によって生成されるように制御する。例えば、必要に応じて電圧および/または電流を連続方式で変化させることができる。他の実施形態において、加熱エレメント2への供給は、必要な熱の量に対応するデューティサイクルによって恒久的にスイッチがオン・オフされる。
【0064】
NOx含有排気ガスは、燃焼機関またはバーナー、例えば、内燃エンジン13によって生成され、排気ライン7中に排出される。NOxセンサー15は、排気ライン7の下流に配置される。さらなる下流に投入弁6によって投入されたアンモニアが排気ライン7中に排出される。なおもさらなる下流は、アンモニアとの反応によってNOxを除去することができるNOx還元触媒14を収容する排気チャンバーである。そのアンモニアは、投入弁6によって、その投入量が排気ガス中のその時点の(測定または予測された)NOxを除去するのに何らかの有意量のアンモニアが大気中に排出されることなく丁度十分なように投入される。
【0065】
この目的を達成するために、いくつかの実施形態において、アンモニア需要信号(上記のように制御装置12による計算または予測に基づく)もまた、制御可能な投入弁をそれがアンモニア需要に従って放出されたアンモニアを投入するように制御するために、使用される。
【0066】
図2は、大きな材料の長さスケールを有する貯蔵材料9の内部埋め込み加熱の構想を適用するさまざまな代案(a〜c)を示している(大きな材料の長さスケールについては図6に関連して説明される):
a) 棒の形態をしている加熱エレメント2は、ここではシリンダーの形をした容器の容器1の中央の軸中に置かれている。4つの貯蔵ブロック9がその容器1中に置かれている。加熱フィン3は、加熱エレメント2からの熱を貯蔵ブロック9に伝導する。容器1は、断熱材8により熱的に絶縁されている。
b) 加熱エレメント2は、ここでは角胴形の容器である容器1の中央の軸中に置かれている。この場合もやはり、4つの貯蔵ブロック9がその容器1中に置かれており、加熱フィン3が、加熱エレメント2からの熱を貯蔵ブロック9に伝導する。容器1は、8で断熱されている。
c) 2つの加熱エレメント2が角胴形の容器1の内側に置かれている。8つの貯蔵ブロック9が今度は容器1中に置かれている。この場合もやはり、加熱フィン3は、加熱エレメント2からの熱を貯蔵ブロック9に伝導し、そのユニットは8で断熱されている。2つの内部加熱ゾーンを使用することは、減少した電力要求に対する速い立ち上げのために有利であり得る。
【0067】
図3は、内部に埋め込まれた加熱部材が、シリンダー容器1中に配置されており、シリンダー軸2上に加熱エレメントと円板状の形の加熱フィン3とを有し、その容器のシリンダー軸と垂直に配置されている別の実施形態を示している。この構造において、ブロック9は、例えば、シリンダー形のものであり、加熱棒2を取り付けるための中央の穴を有している。
【0068】
いくつかの実施形態において、該加熱棒2は、別々の内部加熱ゾーン、または「区域」を有しており、各加熱ディスク(またはフィン)3は、1つの区域(または2つの隣り合う区域)にエネルギーを放散させることができ、その間別のゾーンは加熱されない。これは、そのシステムが、全体の貯蔵本体を加熱することなく、より多くのエネルギーを局所的に望ましい脱離圧に達するように向ける能力を有するので、例えば、立ち上げの間低い電力消費が望ましいときに有利であり得る。
【0069】
図4は、加熱棒2が、図1および2と同じように縦方向に沿った加熱棒2に取り付けられている加熱フィン3として作用する多孔質金属シートが備えられている特有の構造を示している。貯蔵ブロック9から放出されたアンモニアは、そのとき、より速いアンモニアの放出を提供することができる多孔質の金属シート3を通って該容器の縦方向に流れることができる。該加熱棒2は、多孔質金属シート3中の伝導によって熱を放散することができる。例えば焼結金属シートの気孔率は、さもなければ熱伝導率が低過ぎる可能性があるため、90%未満である。他の実施形態において、図3におけるような縦軸に配列されているフィンは多孔質金属でできている。
【0070】
図5は、加熱エレメント2として熱交換器を有することを除いては図1と同様の実施形態を示している。加熱媒体として作用する高温の流体を加熱エレメント2中の中央の穴を通して流す。その加熱媒体は、その熱のいくらかを周囲の熱エレメント2に熱伝導によって伝達する。その加熱媒体は、例えば、エンジン(またはバーナーあるいは化学反応チャンバーなど)16によって生成した廃熱によって加熱される。加熱媒体回路に配置されている連続調整弁17は、加熱媒体の流れを、該加熱媒体が加熱エレメント2に必要な熱の量を伝達する方式で調節する(すなわち変化させる)ために制御装置12によって制御する。
【0071】
図6は、図1の貯蔵容器の断面図に基づいて、最大熱拡散経路長とは何を意味しているかを説明している。示されている例において、容器1は、10cm(100mm)の内径を有する円形の断面を有するシリンダーである。中央の加熱エレメント2までの間隔が、すなわち15mmを超える間隔の範囲内に置かれている貯蔵材料が、18のところ(図6の左下の4分の1のところ)に白い領域として示されている。熱伝導エレメント3も考慮に入れると、高温の表面(中央の加熱エレメント2または熱伝導エレメント3)に最も近いところまでの間隔が15mmを超える間隔の範囲内に置かれている貯蔵材料は、19のところ(図6の右下の4分の1のところ)に白い領域として示されている。その後者の間隔が、「熱拡散経路長」である。対照的に、図6における右下4分の1の影部分においては、熱拡散経路長は15mmより狭い。容器1のどこかに現れる熱拡散経路長の最大は、本明細書では「最大熱拡散経路長」と呼ぶ。図6の例においては、「最大熱拡散経路長」は、15mmより大きく、なぜなら、熱拡散経路長が15mmより大きいいくらかの貯蔵材料(つまり19における貯蔵材料)があるためである。
【0072】
熱拡散経路長は、熱拡散時間に形が変わる。したがって、最大熱拡散経路長が小さいほど、それだけ熱の供給とそれに対応するアンモニアの放出との間の遅れは短い。その結果、純粋にフィードバック制御されるシステムにおいては、15mmより著しく小さい小さな最大熱拡散経路長を有する設計を採用する傾向がある。本発明のいくつかの実施形態においてはいずれもフィードフォーワード制御システムにおいてはアンモニア放出の速い応答は不利ではないので、15mmより下の最大熱拡散経路長が選択される。
【0073】
しかし、熱供給のフィードフォーワード制御に基づくと、そのような遅れを切り抜けることができることが認められている。したがって、いくつかの実施形態において、該最大熱拡散経路長は、15mmより大きい、例えば、100mm以上までである。かかるシステムは、内部構造がより複雑ではないフィンを有しており、したがって、産業上の利用可能性の観点からはより興味深い。
【0074】
図7は、熱供給のフィードバック制御に基づいているだけである2つの異なる実験における熱伝導が原因の遅れを示している。両方の実験において、中間の駐車を有する3つの連続した走行サイクルに従ってアンモニア投入を行った。2つの異なるタイプの連邦政府が認可した走行サイクル、FTP−75およびUS−06(後者は、より高速の走行を含む)を用いる。その走行サイクルは、一定の走行条件をシミュレートする。それらは、時間の関数としての車両速度を定義することを特徴とする。この速度曲線に違いが出たとき、自動車がどこで多量のNOx(加速中)を発生し、したがってアンモニアのより大きい投入速度を必要とするかを示す動態曲線を得ることができる。
【0075】
その実験は、t=0の低温ユニット(室温)から始まる。次に、所定量の電力が加熱エレメントに加えられて、バッファ中で約2バールのアンモニア圧に達する。その試験サイクルは、1回のFTP−75、1時間の「駐車時間」、US−06走行サイクル、2時間の駐車および最後に再び1回のFTP−75サイクルからなる。
【0076】
1つのセットアップは次からなる:
− 外部加熱: 容器中の2kgの貯蔵材料(Mg(NH3)6Cl2)、容器の周りに巻きつけられた外部加熱エレメント(最大800W)、加熱容器の周りの断熱材、バッファ、圧力センサー、投入弁(質量流量制御装置)およびフィードバック測定として圧力を用いるフィードバック制御、すなわち、圧力が設定点より低いときに加熱をし、圧力が設定点より高いときにはより少ない加熱をする(または加熱しない)。熱源のスイッチをオフにする上記のそのフィードバック制御の圧力設定点は、2バールである。
− 内部加熱: 内部に埋め込まれた加熱エレメント(最大500W)を有すること以外は上記と同じ容器中の2kgの貯蔵材料、加熱容器の周りの断熱材、バッファ、圧力センサーおよび投入弁(質量流量制御装置)。熱源のスイッチをオフにする上記のそのフィードバック制御の圧力設定点は、2バールである。
両システムとも、3cmのロックウールによって一様に断熱されている。
【0077】
実線の曲線(外部加熱)を見ると、これは実験が外部加熱エレメントを用いて行われる(伝統的にしてきたように)ときの全体の実験の間の時間の関数である圧力を示している。適当なバッファ圧力に達するのに10分以上かかり、それがやっと達したときにそのシステムの熱慣性が最大4バールまでの飛躍的な行過ぎを(駐車中にも)引き起こすことが容易にわかる。次の走行サイクルは、最初のサイクルによる行過ぎが「減じ」られないために、高い圧力でスタートする。しかし、次のサイクルの間に、圧力の大きな負の行過ぎ(設定点よりはるかに下回る)を避けることができず、低過ぎる圧力が、正しい量のアンモニアを投入することを不可能にする。最後のサイクルは、圧力における大きな振動および圧力が低過ぎる最初の約10分間を有するように見られる。
【0078】
内部加熱を用いる曲線は、破線であり、低い電力を使用してさえも(内部加熱棒は低い最大電力レベルを有するため)低温でスタートした後ずっと早く所望の圧力に達し得ることがわかる。その開始時間は、外部加熱を用いての10分を超えるのとは対照的にわずか100〜120秒である。また、実験の残りの時間において、圧力が2バールの設定点付近で全く安定していることがわかる。かくして、迅速なスタートとより安定なシステムが現在の発明を用いて得られることが証明される。これらの3つのサイクルの間の合計の電力需要は、全3サイクル実験に対して下に示す(ワット時間の単位で測定)ようにより少ない。
内部: 203W−h
外部: 379W−h
したがって、内部加熱を用いることによって、該システムは、より良く機能し、同時に電力需要が(379−203)/379 %=46%低減される。本明細書に記載されている実施形態(フィードフォーワード制御による)は、例えば、このタイプの内部に埋め込まれた加熱部材を使用する。
【0079】
図8は、図7の第2の走行サイクル(94〜104分)の間に投入された累積されたアンモニアを示す。これは、US−06走行サイクルであり、想定されるアンモニア需要は約7リットルのアンモニアガスを投入することが全体で必要となる。図は、内部加熱の使用と外部加熱の使用とを対比させた投入能力の違いを示している。
【0080】
2つの曲線の間の垂直距離の増加は、外部加熱を用いるシステムが、想定される走行サイクルによって決まるアンモニアの需要についていくことができないことを意味する。特に、そのサイクルの最後の4分間において、累積アンモニア投入曲線の増加が殆ど見られない。該外部加熱は、必要な7リットルのうちの5リットル未満を供給しているに過ぎない。該内部加熱は、該走行サイクルに従う。再度、図7に関して、外部加熱に対するUS−06サイクル(ほぼt=100分前後で起こる)は、該サイクルの最後の部分で低い圧力を有することが見られる。したがって、図8における投入の厳しい不足に一致する。
【0081】
図9は、実験における最後のFTP−75サイクル(t=222分〜t=257分)に対する投入曲線を示す。ここで、外部加熱システムは、6リットルの必要なアンモニアガスのうちの約4リットルを何とか投入するに過ぎない。ここで、ついていくのが困難なのは主としてそのサイクルの最初の部分にあることを見ることができる。これは、また、外部加熱に対する圧力曲線が最初の5〜10分間に非常に低い図7においても見られる。内部加熱は、所望量のアンモニアを送ることができる。
【0082】
図10は、貯蔵材料の例えば15mmを超える長い熱拡散経路長スケールを有するシステムを含む(がこれらに限定されない)大きなキャパシティのためのシステムの制御をさらに可能にするフィードフォーワード制御戦略を説明している。長さスケールが15mmを超えるとき、熱伝達に対する時間遅延は、内部埋め込み加熱によってさえかなりのものである。制御戦略の狙いは、脱離が吸熱性であるために材料を冷却するアンモニアの大きな放出速度によって引き起こされる「サブクーリング」の状態に達するのを避けることである。この冷却効果はアンモニアが脱離される場所で局所的に引き起こされるが、該新たな熱の供給は該材料中のその脱離「前面」に届かなければならず、これは熱源から遠く離れている可能性がある。かつ、圧力が設定点を上回るときに高いアンモニア放出速度が起こる場合、従来のフィードバック制御においては、その時そのことは、従来のフィードバックシステムが、エネルギーの入力を増すことをそれが「既に遅過ぎる」までは引き起こさせないであろう。それ故、図10に示されているフィードフォーワード制御アルゴリズムは有利である。
【0083】
基本的に、貯蔵ユニットは、2つの事柄のために熱を必要とし、それは、a)アンモニアが脱離することなく系の温度を維持すること(熱損失を補填する)およびb)該材料の冷却を避けるために、アンモニア脱離のための熱の必要量を供給することである。
【0084】
したがって、その制御戦略の要素は以下のものである。
a) 吸熱性アンモニア脱離に対するエネルギー需要を償うために必要な熱出力を計算する。これは、エンジン制御装置から受けた(またはエンジン制御装置からの予想NOx信号から誘導された)あるいはNOxセンサーによって測定されたNOxから誘導されたアンモニア投入需要信号を用いてリアルタイムで行われ、その需要(例えば、モル/秒の単位の速度nとして表される)は知らされると同時に対応する脱離電力PDesorptionを次式によって計算することができる:
PDesorption[W]=n[mol NH3/s]×ΔHNH3,desorp[J/mol NH3];
b) 断熱材による熱損失を償うために必要な熱出力を計算する。これは、温度勾配、断熱層の熱伝導係数および断熱される系の表面積などの適当な入力を用いてリアルタイムで行われ、例えば、温度測定は内部温度TCartridge wall[K]および外部温度TOutside[K]を提供し、貯蔵容器の外部表面積はA[m2]であることが知られ、容器の断熱材の熱伝導係数はh[W/K/m2]であることが知られると、その時熱損失を補填するために要する電力は、次式によって計算することができる;
PHeat loss comp=A×h×(TCartridge wall−TOutside)[W];
c) 全体の電力需要Ptotalを予測するためa)とb)とを加える:
Ptotal=PHeat loss comp+PDesorption;
d) 加熱エレメントをそれが全体の電力需要Ptotalを供給するように制御する。
【0085】
より実際のことを言えば、車を飛躍的に加速する場合、該制御システムは、その圧力が、たとえ設定点が従来のフィードバック制御中にあるより実際にはわずかに上にあっても、直ちにより多くの熱をその貯蔵ユニットに加える。これにより、従来のフィードバックシステムで現れる短時間のアンモニアの不足が避けられる。
【0086】
該容器の表面積A、および熱伝導係数hが先験的に知られていない場合、その制御装置は、また、例えば10分間のシステム運用の間の熱損失パラメータを推測するアルゴリズムを含むこともできる。熱注入量の知識と特定時間(例えば10分間)にわたる放出アンモニアの量との結合は、制御装置がA×hの値を推測することを可能にするであろう(温度勾配が既知の場合)。2つのパラメータAおよびhを独立して推定することはできないであろうが、温度勾配の関数としての熱損失の説明は、A×hの値が既知であれば一般に十分である。
【0087】
図11は、制御システムのさらなる安全機能を提供する重ね合わせフィードバック制御を示す。図示されている圧力スケールは、圧力制御戦略におけるさまざまな圧力レベルを指し示している。
【0088】
基準圧力は、周囲の大気圧である。排気ライン中の圧力はわずかに高く、例えばPExhaust line=1.2バールである。アンモニアの投入は、該投入弁がPMinimumのバッファから一定の圧力の供給(例えば、1.5バール位)を得ない限り可能ではない。標準的な設定点は、PNH3, setpoint(例えば1.8バール)である。図8に示されている制御戦略は、PNH3, setpointとPHeat−off(例えば、2.2バール)との間の圧力範囲内でのみ活性であることができる。一定圧(PHeat−off)より上で、加熱は安全機能としてともかくは止められる。PHeat−offは、それが安全機能であるため、従来のフィードバック制御における設定点である点よりは高いが、その「標準的な」制御は、フィードフォーワードの部分で実行される。PSatefy maxにおいては、任意的な圧力除去弁が開いて、機械設計レベルを超える圧力を避ける。
【0089】
圧力がPNH3, set−pointより下のときは、最大の熱を加えるべきである(自動車がそのときのエンジン負荷の状態でそれだけ大きい力を供給することができないことがない限りは)。PNH3, set−pointは、それが安全機能であるため、従来のフィードバック制御における設定点である点よりは低いが、その「標準的な」制御は、フィードフォーワードの部分で実行される。
【0090】
図12および13は、放出されたアンモニアが、NOxを減少させるためには使用されないが、燃料電池用燃料として役立つその他の実施形態を説明している。図12の実施形態において、貯蔵材料(9)内の容器(1)中に貯蔵されたアンモニアは、前の図に示して説明したように、供給される熱のフィードフォーワード制御に基づいてヒーター(2)によって放出される。その放出されたアンモニアは、触媒分解装置(20)に供給され、その生成した水素は、水素を電気に変換することができる燃料電池(21a)に送り込まれる。図13の実施形態においては、放出されたアンモニアは、アンモニアを電気に直接変換することができる燃料電池(21b)に直接供給される。
【0091】
図11の圧力レベル戦略との任意的組み合わせを含む図10のフィードフォーワード制御戦略は、15mmを超える大きな材料の長さスケールを有する貯蔵ユニットからの吸熱的アンモニア脱離を用いる安全なアンモニア貯蔵システムと組み合わせて、作動の長い時間遅延に対処することができる制御戦略を構成する。図10および11の戦略は、内部加熱の構想に対して、熱補填時間を計算するのがより容易であるので、適切である。1つの理由は、内部加熱エレメントの温度は一般的にかなり大幅に変動するが、容器の壁の温度はより長い時間にわたって殆ど一定であり、それ故、周囲への温度勾配は急速には変化しないことである。外部加熱が加えられた場合は、周囲への温度勾配は、その容器の壁の温度が加熱の開始および終了ごとに上昇および低下するために、非常に動的に変化する。
【符号の説明】
【0092】
1 貯蔵容器
2 加熱エレメント
3 フィン
4 on/off弁
5 バッファ容積
6 投入弁
7 排気ライン
8 断熱材
9 貯蔵ブロック
10 圧力センサー
11 温度
12 制御装置
13 内燃エンジン
14 NOx還元触媒
15 NOxセンサー
16 エンジン(またはバーナーまたは化学反応チャンバーなど)
17 連続調整弁
18 貯蔵容器のシリンダー円形断面の加熱エレメントまでの間隔が15mmを超える範囲
19 18から熱拡散経路長を除いた範囲
20 触媒分解装置
21a 水素の燃料電池
21b アンモニアの燃料電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア貯蔵に関し、特に、アンモニアを吸着または吸収することによって可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料にアンモニアを貯蔵し、そこからアンモニアを放出するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア吸収材料である金属アンミン塩類は、アンモニアのための固体の貯蔵媒体として使用することができ(例えば、特許文献1を参照)、言い換えると、例えば、NOx排出を減少するための選択触媒還元における還元剤として使用することができる(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
通常、アンモニアは、貯蔵容器の外部加熱により、例えば、金属アンミン塩類からの熱脱離により放出される(例えば、特許文献2を参照)。発熱体をその貯蔵容器内部に置くこともできる(例えば、特許文献3および特許文献1)。
【0004】
特許文献2は、自動車両のNOx排出を減少する選択触媒還元における還元剤としてのアンモニアの使用を開示している。そのアンモニアは、貯蔵容器中の吸着性または吸収性固体貯蔵媒体のいずれか、とりわけ、粒状形態のSr(NH3)8Cl2またはCa(NH3)8Cl2から放出され、バッファ容積中のガスとして一時的に貯蔵される。自動車の排気システムにおける反応体積に供給されるアンモニアの量は、エンジンの最新の運転状態による電子エンジン制御装置の制御のもとで投入される(特許文献2、9頁最後の段落)。貯蔵媒体から脱離されるアンモニアの量は、貯蔵容器中の圧力が圧力センサーによって測定されるフィードバック制御によって制御され、その圧力が圧力閾値に達した場合、熱の供給が中断される(特許文献2、8頁と9頁にまたがる段落)。
【0005】
特許文献4は、冷凍を目的としたアンモニア化した金属ハロゲン化物を用いる急速吸収サイクル(30分未満)のためのプロセスについて記載している。内側に組み込まれている1つまたは複数の熱伝導管を有する貯蔵材料中の適当な反応器が記載されている。その(1つまたは複数の)熱伝導管から周囲の貯蔵材料中への熱伝導を増すために熱伝導板が備えられている。熱拡散経路長および物質拡散経路長は、それぞれ、15mmおよび1.5mm未満である。類似の反応器が、特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/12903号パンフレット
【特許文献2】国際公開第1999/01205号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5161389号明細書
【特許文献4】米国特許第5441716号明細書
【特許文献5】米国特許第5328671号明細書
【特許文献6】国際公開第2006/081824号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料にアンモニアを貯蔵し、そこからアンモニアを放出するためのシステムを対象としている。そのシステムは、該アンモニア含有貯蔵材料を収容することができる容器と、該容器の内側に配置されており、アンモニア貯蔵材料に取り囲まれている熱源(該熱源は、該固体の貯蔵媒体からのアンモニアの脱離のための熱を供給するように配置されている)と、アンモニアの需要に従って、放出されたアンモニアを投入するように配置されている制御可能な投入弁と、該熱源により供給される熱を該アンモニア需要に基づいて制御するように配置されているフィードフォーワード制御を含む制御装置とを含む。
【0008】
別の態様によれば、容器中に収容されており、時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料によって貯蔵されているアンモニアを放出させる方法が提供される。その方法は、アンモニアの脱離のためにアンモニア貯蔵材料に対してどれだけの熱を供給すべきかを、該アンモニア需要に基づいて、フィードフォーワード制御を含む制御を用いて測定するステップと、該容器内部に配置されており、該アンモニア貯蔵材料によって取り囲まれている熱源により熱を供給するステップと、アンモニア需要に従って制御可能な投入弁を用いて放出されたアンモニアを投入するステップとを含む。
【0009】
その他の特徴は、開示されている方法および製品に内在するものであり、すなわち、実施形態およびそれに付随する図面の以下の詳細な説明から当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
(本発明の実施形態を、ここで例により、添付の図面を参照しながら説明するがそれらの図面は以下のものである。)
【図1】アンモニア貯蔵材料を内部で加熱し、熱源がその貯蔵材料中に埋め込まれている貯蔵容器を有するアンモニア貯蔵および放出システムの実施形態を示す図であり、該容器中に詰め込むべきアンモニア収容性貯蔵材料ユニットの適当な形の図面を含む。
【図2】熱源が熱伝導性エレメントを備えている貯蔵容器のさまざまな実施形態の断面図であり、図2aが図1の貯蔵容器に該当する。
【図3】フィンの形態をしている熱伝導性エレメントが、熱源の軸に沿って配置されている円板である実施形態を示す図であり、該容器中に詰め込むべきアンモニア収容性貯蔵材料ユニットの適当な形の図面を含む。
【図4】熱伝導性フィンが、脱離したアンモニアが貯蔵材料の全体ブロックを通過することなくそのフィン中を貯蔵容器の出口に向かって流れることを可能にするように多孔質金属板でできている実施形態を示す図である。
【図5】加熱媒体として高温の流体を供給する熱源を有することを除いて図1と同様の実施形態を示す図である。
【図6】図1の貯蔵容器の断面図に基づいて最大熱拡散経路長の概念を説明している図である。
【図7】外部の熱源と比較した内部に組み込まれた熱源の遅れを縮める効果(速い応答時間、脱離したアンモニアの圧力制御能力の高まり)を実験データにより説明している図である。
【図8】外部の熱源と比較した内部に組み込まれた熱源の投入能力を実験データにより説明している図である。
【図9】外部の熱源と比較した内部に組み込まれた熱源の投入能力を実験データにより説明している図である。
【図10】アンモニア需要および温度の観測に基づく熱源の電力需要の実時間推定を含む熱供給のフィードフォーワード制御を説明している図である。
【図11】貯蔵ユニット中の測定圧に基づく重ね合わせフィードバック制御による熱供給のフィードフォーワード制御を説明している図である。
【図12】放出されたアンモニアが、NOxを減少させるためには使用されないが、燃料電池用燃料として役立つその他の実施形態を説明している図である。
【図13】放出されたアンモニアが、NOxを減少させるためには使用されないが、燃料電池用燃料として役立つその他の実施形態を説明している図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料にアンモニアを貯蔵し、そこからアンモニアを放出するためのシステムおよび方法に関連する。出願人の同時係属の出願である特許文献1に記載されているように、金属アンミン塩類は、アンモニア用の固体貯蔵媒体として使用することができる。したがって、その金属アンミン塩はアンモニアの貯蔵および輸送に対する安全で実用的な選択肢を表すアンモニア用の固体貯蔵媒体を構成する。アンモニアは、その貯蔵材料からの熱脱離により放出される。
【0012】
「段階的なアンモニアの需要」とは、貯蔵されたアンモニアが、いっせいにではなく、長時間に及び(例えば、数時間に及び)、変化した速度で、または断続的でさえあり得る分散した形で必要となることを意味する。該アンモニア収容性貯蔵材料は、貯蔵容器中に保持され、いくつかの実施形態において、放出されたアンモニアは、そこから制御可能な投入弁を通して所望の割合で投入される。該容器と該弁の間には、いくつかの実施形態において、バッファ容積が存在する。
【0013】
可動式ユニットに関しては、その可動式ユニットから容易に分離することができ、新たな金属アンミン容器により置き換えるかそのままでアンモニアを再充填することができる容器中に該貯蔵材料(例えば、金属アンミン錯体)を保持するのが特に有用である。容器の交換の1実施形態において、該金属アンミン容器は、回収され、別の再充填ユニットまたは再充填施設内でアンモニアを再充填する。
【0014】
いくつかの実施形態において、脱離したアンモニアは、例えば、自動車両、ボイラー、加熱炉などから排出されるNOxを還元する選択触媒還元における還元剤として使用することができる。かくして、該システムは、燃焼機関または燃焼過程の酸素含有排気ガスからのNOxを除去するように配置される。例えば、実施形態のいくつかにおいては、供給ライン(バッファ容積を含むことができる)が備えられており、それは、容器から放出されたガス状アンモニアを、例えば、制御可能な投入弁によって投入される望ましい割合で、排気ガス中に直接供給するように配置されている。該排気システムにおける反応体積中には、NOxを該アンモニアとの反応によって還元するための触媒が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態において、該燃焼機関は、ジーゼル、ガソリン、天然ガス、石炭、水素またはその他の化石もしくは合成燃料により燃料供給される可動式燃焼機関ユニットである。除去することができるNOxは、自動車、トラック、列車、船舶またはその他のモーターのついた機械もしくは車両、あるいは発電するための発電所によって発生し得る。
【0016】
アンモニアの需要は、実質的に、排気ガス中のすべてのNOxを除去することができるアンモニアの量であるが、少しでもアンモニアが大気中に漏れることが容認されない場合は、実質的にすべてのアンモニアが分解されることを確保するために少ない割合を排気ガス中に投入することができる。いくつかの実施形態において、アンモニアの需要は、例えばNOx検出器によって測定される排気ガス中のNOxの測定結果に基づいて決定することができる。別の実施形態においては、操作状態についてのエンジン制御装置または燃焼過程からの情報が、目下の操作状態において予想されるNOxを見積もるために使用される。例えば、該操作状態は、現在のエンジン速度、現在の負荷、現在の駆動ペダル位置等によって明確にすることができ、これらのパラメータを知ることによって、エンジン制御装置(または燃焼過程制御装置)が排気ガス中の予想されるNOxをリアルタイムで決定することが可能となる。そのエンジン制御装置は、例えば、予想されるNOxの排出に対応する全体のエンジンの運転区域のマッピング(例えば、ルックアップテーブルの形の)を備えている。上記のリアルタイムで予測されたNOxの信号は、アンモニア需要を決定するためのフィードフォーワード制御装置へのインプットとして使用することができる。いくつかの実施形態において、エンジン制御装置に基づくNOx測定およびNOx予測は、より速いが、正確な需要の指示を得るために結合一体化されており、例えば、マッピング(例えば、ルックアップテーブル)により予測されたNOx値は、実際の(測定された)NOxと比較することができ、そのマッピングは、もし不一致があれば、連続的に修正することができる。
【0017】
その他の実施形態において、脱離したアンモニアは、直接的または間接的に、例えば発電設備のための燃料として使用することができる。例えば、これらの実施形態のいくつかにおいて、脱離したアンモニアは、触媒アンモニア分解反応器において水素を生成するために使用され、その水素は、ガス状の水素に基づく運転が可能な燃料電池における燃料として使用される。他の実施形態において、アンモニアに基づく運転が可能な燃料電池用燃料としては、その脱離したアンモニアが直接機能する。そのガス状アンモニアは、例えば、制御可能な投入弁によって、アンモニア分解反応器中に、または、直接該燃料電池中に投入される。
【0018】
それらの実施形態において、該アンモニア需要は、実質的に、反応器に、または燃料電池が必要な電力を生ずることができるように燃料電池に供給しなければならないアンモニアの量である。
【0019】
アンモニアの熱脱離において使用される熱は、熱源によって供給される。いくつかの実施形態において、その熱源は、それがアンモニア貯蔵材料によって取り囲まれる、すなわち、その中に組み込まれるように該容器の内部に配置されている。容器の外側または容器の内側の熱源の配置とは違って、容器の壁では実質的にすべての供給される熱が該貯蔵材料に入るしかない。したがって、熱の一部はそれでもなお環境へと失われるが、この一部は発熱体が貯蔵材料中に埋め込まれていないときに失われるであろう一部よりは少ない。
【0020】
該熱源による熱の供給は、制御装置によって制御される。例えば車両の排気システム中の反応体積に供給されるアンモニアの量は、いくつかの実施形態において、例えば、エンジンの現在の動作状態による現在のアンモニア需要に基づく制御弁によって投入される。アンモニアの取り出しは一般に変動するので、貯蔵容器中には圧力変動が存在する(バッファがある場合はその圧力変動はそのバッファ中にもある)。例えば、特許文献2によれば、貯蔵媒体から脱離するアンモニアの量は、該容器からアンモニアを取り出すことによって引き起こされる圧力変化に基づいて、貯蔵容器中の圧力を圧力センサーによって測定するフィードバック制御により、間接的に制御し、その圧力が圧力閾値に達した場合は、熱の供給を中断する。それに反して、本発明のいくつかの実施形態においては、その制御装置は、熱源によって供給される熱をアンモニア需要に基づいて制御するように配置されているフィードフォーワード制御を含む。この需要とは、例えば、現在の需要もしくは推測した未来の需要、または現在と未来の需要の組み合わせである。フィードフォーワード制御は、圧力が既に低過ぎるか高過ぎる場合に反応するだけではないので、効果的な脱離の比率を、一般に変化する比率である、アンモニアを取り出す比率に順応させる遅れが短縮される。
【0021】
加熱制御装置は、熱源が、該ユニットが該動力学的脱離過程の適当な作動温度より下に冷めることを許容しないエネルギーの量を常に供給することを確保するために、アンモニア送出し需要および推定される(モデルベースの)容器による熱損失に関する情報を使用する。低過ぎる作動温度に達すると、アンモニアを例えば大気圧よりわずかに上の圧力を有する排気ライン中に投入するために必要な最低限の圧力より下の脱離圧力がもたらされる。
【0022】
したがって、フィードフォーワード制御は、どれだけのアンモニアが実際に放出されたかを測定することに基づくのではなく、アンモニアの需要量を放出するために必要な熱の量を、例えば、得られるアンモニア放出に対して供給される熱の量と結びつく計算されたモデルまたは実験データにより推定する。そのような推定の正確さは限定される可能性があり、加熱の(または加熱を停止する)効果は一定の遅れの後にのみ現れ得るので、いくつかの実施形態においては、以下でより詳細に説明するように、フィードバック制御をフィードフォーワード制御に重ね合わす。
【0023】
実施形態のいくつかにおいて、該フィードフォーワード制御は、熱源のスイッチをただ単純にオンにしたりオフにしたりすることができるだけではない。それよりむしろ、該フィードフォーワード制御は、該熱源を、それが完全にオンの状態とオフの状態の間の中間量の熱流量を供給することもできるように調節することができ、例えば、それは熱流量を、そのオンの状態とオフの状態の間の範囲内の連続する中間の値に調節することができる。いくつかの実施形態において、該熱源それ自体は、例えば、加熱電流(電力による熱源の場合)または高温の液体流(高温流体の熱源の場合)を連続的に調節することによってさまざまな出力で運転することができる。熱源が、必要となる中間値に対応するデューティサイクルにより、熱源を速くオンオフする(例えば電気の供給をオンオフする)ことによって最大出力でのみ運転することができるその他の実施形態においては、必要となる中間値に対応する熱の有効量は加熱システムの熱慣性によって供給される。
【0024】
脱離速度は、貯蔵容器内の温度および圧力の関数である。一定の脱離速度を得るため、または維持するためには、それ故、温度を測定し、その温度が低過ぎる場合は熱の供給を開始、または増し、その温度が高過ぎる場合は熱の供給を停止、または減少することを思いつくことができる。しかし、そのような温度に基づくフィードバック制御は、特許文献2に記載されている圧力に基づくフィードバック制御と同様の遅れを有する。
【0025】
一般に、貯蔵材料からのアンモニアの脱離は吸熱性である。したがって、脱離するアンモニアは冷却効果を有する。いくつかの実施形態においては、フィードフォーワード制御が、熱源により供給される熱を制御して、要求されるアンモニアの貯蔵材料からの吸熱性の脱離に対して必要となるエネルギーを償うように配置されている。上で説明したように、これは温度の測定に(主として)基づくものでなく、かつ、その測定された温度に基づくフィードバック制御ではなくて、要求された量の脱離に対して必要な吸熱性の脱離エネルギーの計算(すなわち、推定)に基づくものである。その脱離エネルギーは、脱離される量に比例するので、必要となる熱エネルギーは、いくつかの実施形態において、そのアンモニア需要にその比例定数を掛けることによって得られる。
【0026】
熱源は、貯蔵材料中に埋め込まれており、その結果すべての熱はその貯蔵材料によって吸収されるが、その熱の一定部分は、貯蔵容器の壁を通って周囲に失われる。いくつかの実施形態において、この熱損失は、フィードフォーワード制御において考慮に入れられる。これらの実施形態においては、その制御装置は、その容器の周囲への熱損失を測定するように配置されており、そのフィードフォーワード制御が、熱源によって供給される熱を、それが周囲への熱損失を償うように制御する。例えば、その熱損失を推定する簡単な方法は、貯蔵容器(好ましくは断熱性)のその外部表面積(例えば、熱が抜け出るm2)および該断熱材の内側から外側までの温度勾配と組み合わせた熱伝導係数(W/m2K)に関するモデル記述に基づく。その実施形態のいくつかにおいて、該温度勾配は、内部温度と外部温度の実際の測定結果の間の差として、または、例えば、内部温度の測定結果と周囲の平均温度の値との差として捉えられる。
【0027】
いくつかの実施形態において、該フィードフォーワード制御は、該発熱体により供給される熱が、要求されるアンモニアの量を脱離するのに要する脱離エネルギーと周囲への熱損失との合計に相当するようにするものである。
【0028】
周囲への熱損失が、フィードフォーワード制御において考慮される実施形態のいくつかにおいて、その熱損失は、温度測定に基づいて推定される。原則として、その熱損失を計算するためには、貯蔵容器内(または容器の壁の内面)の温度および周囲(または容器の壁の外面)の温度を知らなければならない。したがって、いくつかの実施形態において、その貯蔵容器内(または容器の壁の内面)の温度およびその周囲(または容器の壁の外面)の温度の両方が測定され、熱損失計算に使用される。他の実施形態においては、一方の温度測定のみが行われ、他方の温度については、(一定の)平均温度が想定されて計算に使用される(その測定される温度は内温であり、その平均温度が外温であり得、またはその逆でもあり得る)。さらに別の実施形態においては、温度測定は行わずに内温および外温の両方について平均値が使用される。
【0029】
上記のように、いくつかの実施形態において、フィードバック制御が、熱供給のフィードフォーワード制御に重ね合わされる。その重ね合わせフィードバック制御は、その容器内の圧力測定に基づく。それは、その圧力が上限圧力閾値を超えているときは熱源による熱の供給を減少させるまたは停止し、その圧力が下限圧力閾値を下回っているときは熱源による熱の供給を増加または開始する。いくつかの実施形態において、超過圧力では熱供給は完全にスイッチがオフにされ、不十分な圧力では利用できる最大の熱発生率が提供される。重ね合わせフィードバック制御が何故有用であり得るかについては一般に次の2つの理由がある。
(i) 説明したように、フィードフォーワード制御は、要求された量のアンモニアを脱離するために必要な熱量の推定に基づいているが、そのような推定の正確さは制限される可能性があり、その推定の誤りは、時間が経てば蓄積し得るので、重ね合わせフィードバック制御が一種のエラー修正機能を提供する。
(ii) 加熱(または加熱の停止)の効果は、一定の遅れの後にのみ表れる可能性があり、需要が、突然著しく増すかまたは減少し得るために、貯蔵容器中の圧力が圧力の上限または下限にはるかに達しないかまたは超過することが起こり得る。
その重ね合わせフィードバック制御は、フィードフォーワード制御の蓄積誤差を正し、圧力が過剰に高くなるか低くなる場合の一種の「緊急介入」を構成する。
【0030】
ここに示されているシステムおよびプロセスは、熱脱離によってアンモニアを可逆的に放出することができるすべての貯蔵材料と共に使用することができる。これらの材料は、アンモニアを吸着または吸収する材料であり得る。吸着材料の例は、酸により変性されたカーボンおよびゼオライト類である。吸収材料の例は、金属アンミン塩類である。
【0031】
有用な金属アンミン塩類は、一般式M(NH3)nXzを有しており、式中、Mは、アンモニアを結びつけることができる1つまたは複数の金属イオン類、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどであり、nは、通常は2〜12の配位数であり、Xは、Mの原子価に依存する1つまたは複数のアニオンで、Xの代表例は、F、Cl、Br、I、SO4、MoO4、PO4などである。
【0032】
アンモニアを放出する間、元の金属アンミン塩M(NH3)nXzは、徐々にm<nであるM(NH3)mXzに変換される。すべての所望されるアンモニアが放出されたとき、その得られたM(NH3)mXzは、吸収/脱離過程の可逆性によるアンモニア含有ガス流を用いる吸収処理によってM(NH3)nXzに通常は転換して戻すことができる。いくつかの金属アンミン塩については、すべてのアンモニアを放出し、次いでその得られた材料を元の金属アンミン塩に転換して戻すことが多数のサイクルで可能である。
【0033】
該金属アンミン錯体の一般的なアンモニア含量は、20〜60重量%の範囲であり、好ましくは30重量%より上である。一例として、一般的で安価な化合物、例えばMg(NH3)6Cl2などは、51.7重量%のアンモニアを含有する。本出願人の同時係属の特許文献6に開示されているもののような充填成型法を用いると液体アンモニアが数パーセント以内のアンモニア密度(8〜9バール圧の容器)を得ることが可能である。
【0034】
特許文献6に開示されている本出願人の技術を使用することにより、アンモニア水溶液および尿素水溶液の両方より著しく高い密度(体積および重量の両方を基準とする)でのアンモニアの貯蔵が可能となる。尿素水は、NOx還元用触媒および発生したアンモニアを還元剤として用いることによりNOxを除去するためのアンモニアを提供することができる化学的アンモニア担体の例である。
【0035】
アンモニアをガスの形で直接送達することは、流量制御システムの単純化および還元剤アンモニアの排気ガスとの効率的な混合の両方に対して有利である。アンモニアの直接使用は、また、例えば液体ベースの尿素系における沈殿または不純物によって引き起こされる投入系の詰りと関係する問題の可能性も排除する。加えて、排気ラインの温度が尿素のアンモニア(およびCO2)への完全な転化に対して低過ぎることもあり得るので、尿素水溶液は低いエンジン負荷では投入することができない。
【0036】
貯蔵材料中に埋め込まれる加熱部材の配備は、熱供給のフィードフォーワード制御と関数関係にあり、なぜならそれは、熱の予測がよりよい精度でなされるアンモニア需要の関数として提供することを可能にするためである。この関係は、必須のものではないが、フィードフォーワード制御に対してそれは有利である。
【0037】
埋め込まれた熱源から貯蔵材料への熱伝導を改良するために、いくつかの実施形態においては、熱源とアンモニア貯蔵材料とが熱源とアンモニア含有貯蔵材料との間の内部熱交換領域を増すような熱的接続状態にある熱伝導エレメントが提供される。
【0038】
例えば、該熱伝導性エレメントは、熱源に熱的に接続されており、アンモニア含有貯蔵材料によって取り囲まれた複数のフィンである。
【0039】
例えば、該熱伝導性エレメントは、多孔質または密度の高いアルミニウム、チタン、ステンレススチールまたは類似のアンモニア耐性のある金属類または合金類製である。該熱伝導性エレメント用の適当な金属の一例は、例えば真鍮とは異なりアンモニアおよびその塩に耐えることができるアルミニウムである。その上、アルミニウムは、低い質量密度および優れた熱伝導率を有しており、したがって、熱エネルギーを加熱エレメントまたは熱源から容器中に保たれている周囲の貯蔵材料に効率的に伝達するのに好ましい。
【0040】
実施形態のいくつかにおいて、該熱源は、長方形の形状を有している。例えば、フィンは、熱源の縦方向に対して平行に配置されている。しかし、他の実施形態において、それらは熱源の縦方向に対して垂直に配置されている。
【0041】
そのあとの実施形態において、脱離したアンモニアを貯蔵容器の縦方向の端の1つ(または両方)で取り除くことになっている場合、該フィンは、基本的に、そのガス流の障害となり得る(例えば、そのガスがフィンの周りを流れる他の方法がない場合)。
【0042】
いくつかの実施形態において、いくつかの、またはすべての熱伝導性エレメントは、放出されたアンモニアを該フィンと接触している貯蔵材料の表面から通す多孔質の金属構造から構成されている。これは、さもなければガス流に対して障害であり得るフィンの場合に妥当であるばかりでなく、それはまた、例えば縦方向のフィンと共に貯蔵材料内に脱離したガスのための「導管」を提供して該ガスが貯蔵材料を去るのを促進するために有用であり得る。
【0043】
該熱伝導性金属は、多孔質金属板であり得る。例えば部分的に焼結した金属粒子製の多孔質金属シート/板/物体は、加熱エレメント(熱源)から貯蔵材料への熱伝導に対して効果的であり、かつ、アンモニアが加熱フィンの孔を通って流れることを可能にすることによって、該貯蔵材料から容器出口までのガス輸送導管を増加している。加熱フィンの孔は多孔質金属の熱伝導率が緻密金属の伝導率の少なくとも10%であるように制限すべきである。
【0044】
実施形態のいくつかにおいて、最大熱拡散経路長(高度に熱伝導性の表面から高度に熱伝導性の任意の表面から最も離れた貯蔵材料の点までの間隔)は15mmを上回る。いくつかの実施形態において、平均の物質拡散経路長(すべてのアンモニア分子から該アンモニア貯蔵材料に隣接するガス透過性表面までの最短距離のすべてのアンモニア分子を通した算術平均)もまた15mmを上回る。
【0045】
いくつかの実施形態において、該加熱エレメントは、熱を発生するための電流により供給されるように配置されている。その熱源は、該容器中に伸びている1つの熱交換器(または複数の熱交換器)を含むことができる。その熱は、該熱交換器を通過する高温の流体またはガスから獲得することができる。いくつかの実施形態において、その高温の流体またはガスは、化学反応または燃焼過程からの高温の生成ガスまたは流体であるか、あるいはそれによって加熱される。いくつかの実施形態において、該熱源は、1つまたは複数の加熱管の形で提供される。該容器は、縦伸びを有しており、1つまたは複数の該加熱管は、該容器の縦伸びの方向に伸びている。
【0046】
かくして、本発明は、アンモニアの貯蔵および発生のために吸着または吸収によってアンモニアを結びつけることができる貯蔵材料の使用に関する。例えば、アンモニアの貯蔵のためのおよび脱離熱の直接貯蔵容器内側への制御された内部送達を用いて該材料からアンモニアを放出させるための固体金属アンミン錯体を使用することができる。そのアンモニアの放出は、多孔質金属構造を使用することによる熱交換材料中の内部ガス導管によってさらに促進することができる。放出されると同時にアンモニアは燃焼過程からの排出ガス中のNOxの選択触媒還元(SCR)における還元剤として使用することができる。
【0047】
液体アンモニアの貯蔵が危険過ぎる可動式または携帯式ユニットあるいは特別な化学合成ルートにおいてアンモニアを使用するその他の用途も本発明の実施形態と考えられる。これはまた、アンモニアが有効な水素担体であると考えることができる燃料電池システムならびに液体アンモニアとしてのアンモニアの貯蔵が安全性の理由によって許容されないアンモニアを必要とする化学合成ルートを含めたアンモニアを消費するその他のプロセスも含む。
【0048】
加熱された貯蔵媒体の熱時間応答は、殆どの場合、リアルタイムで(すなわち殆ど瞬時に)アンモニア需要に適合するには遅過ぎる。リアルタイムでアンモニア需要に適合するためには、制御可能な投入弁が用意され、それが外部(例えば排気ガス中)に実際に投入されるアンモニアの量を決める。
【0049】
いくつかの実施形態において、該制御可能な投入弁は、アンモニア需要に応じて、放出されたアンモニアを投入するように制御される。例えば、該制御装置によって生じたフィードフォーワードアンモニア需要信号が、該制御可能な投入弁および該熱源の両方を制御するために使用される。熱アンモニア放出の応答は、熱源のフィードフォーワード制御によって比較的速い(フィードバック制御方式と比較して)が、それは投入弁による殆ど瞬時の投入応答と比較すると依然として相対的に遅い。結果として、放出されたアンモニアの量および投入された量は、一定時間ごとに互いに異なり得る。しかし、熱アンモニアの放出および放出されたアンモニアの投入の両方に対して同じ需要信号が使用される場合、これらの量は、加熱による熱アンモニア放出機構の時定数に相当するタイムスケールに基づく平均化効果のために同じになる(両方のプロセスの較正が正しいと仮定して)。
【0050】
直ちに放出されるアンモニアの量は、投入される量と常に同じではないので、アンモニア含有貯蔵材料を収容している容器内の圧力は変化し得る。変化する圧力も考慮して、要求されたアンモニア量を正確に投入することを確実にするために、いくつかの実施形態においては、要求信号は制御可能な投入弁を直接的に調節しないで、間接的に調節するだけとし、それによって、投入弁によって投入されたアンモニアの実際の質量流量を測定する質量流量計にも依存する。制御装置(上記の制御装置、または専用の質量流量制御装置であり得る)が、アンモニア需要および測定された実際の質量流量を比較し、この比較に基づいて、その測定された質量流量が、該フィードフォーワードアンモニア需要信号によって指示されたアンモニア需要に一致するようにその制御可能な投入弁を制御する。
【0051】
超過圧力および不十分な圧力を避けるための熱源の重ね合わせフィードバック制御による実施形態のいくつかにおいては、そのフィードバック制御信号は、熱源を制御するために使用されるのみで、それは投入弁の制御には使用されない。したがって、かかる実施形態においては、該制御弁は、重ね合わせフィードバック信号無しのフィードフォーワード需要信号のみに基づいて常に制御され、一方、熱源を制御するためにも使用されるフィードフォーワード需要信号は、フィードバック信号と重ね合わすことができる。これにより、実際に投入されたアンモニア量がその需要とできるだけ接近して常に一致し、同時に、該加熱による熱アンモニア放出機構の上記のより大きい時定数による、および、もしかすると熱脱離と投入の較正の不一致による不十分な圧力および超過圧力を避けることが確保される。
【0052】
該実施形態は、システム(すなわち製品)にのみではなく、容器中に収容されており、時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料によって貯蔵されているアンモニアを放出させる方法にも関係する。該方法は、アンモニアの脱離のためにアンモニア貯蔵材料に対してどれだけの熱を供給すべきかを、該アンモニア需要に基づいて、フィードフォーワード制御を含む制御を用いて測定するステップと、該容器内部に配置されており、該アンモニア貯蔵材料によって取り囲まれている熱源により熱を供給するステップと、アンモニア需要に従って制御可能な投入弁を用いて放出されたアンモニアを投入するステップとを含む。
【0053】
該方法のいくつかの実施形態において、貯蔵材料からのアンモニアの脱離は吸熱性であり、フィードフォーワード制御が、熱源によって供給される熱を、貯蔵材料からの必要とされるアンモニアの吸熱性の脱離に対して要するエネルギーを補填するように制御する。
【0054】
該方法のいくつかの実施形態において、該制御は、該容器の周囲への熱損失を測定し、該フィードフォーワード制御が、熱源によって供給される熱を、それが該周囲への熱損失を補填するように制御する。これらの実施形態のいくつかにおいて、周囲への熱損失は、該容器の内部温度、容器壁内側の温度、容器壁外側の温度、および周囲の温度の少なくとも1つの測定に基づいて推定される。
【0055】
該方法のいくつかの実施形態において、該フィードフォーワード制御は、該熱源によって供給される熱を、それが、該貯蔵材料からの要求されたアンモニアの吸熱性脱離に対して要するエネルギー、および周囲への熱損失の両方を補填するように制御する。
【0056】
該方法のいくつかの実施形態において、該制御は、該容器内の圧力測定に基づいて、その圧力が上限圧力閾値を超えているときは該熱源による熱の供給を減少させるまたは停止し、該圧力が下限圧力閾値を下回るときは該熱源による熱の供給を増加または開始する重ね合わせフィードバック制御を含む。
【0057】
該方法のいくつかの実施形態において、NOxは、燃焼機関または燃焼過程の酸素含有排気ガスから、容器から放出されたガス状アンモニアをその排気ガス中に供給し、触媒を用いてそのアンモニアによりNOxを還元する反応によって除去し、ここで、その制御は、(i)NOxの測定または推測、および(ii)エンジン制御装置または燃焼過程制御装置からの情報の少なくとも1つに基づくアンモニア需要を得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、該エンジン制御装置からの情報は、該エンジンの作動状態を示し、該フィードフォーワード制御はその作動状態情報に基づくアンモニア需要を推測する。
【0058】
該方法のいくつかの実施形態において、脱離したアンモニアは、発電設備のための燃料として使用される。
【0059】
該方法のいくつかの実施形態において、(a)脱離したアンモニアは、触媒アンモニア分解反応において水素を製造するために使用され、その水素は、ガス状水素に基づいて運転することができる燃料電池の燃料として使用され、または(b)アンモニアに基づいて運転することができる燃料電池はその脱離したアンモニアにより直接運転する。
【0060】
ここで図1を見てみると、貯蔵容器1は、その容器1の内側に配置されている熱源を表す加熱エレメント2によって加熱される。その加熱エレメント2から熱を放散させるためにその加熱エレメント2に取り付けられている熱伝導エレメントを表すフィン3が存在する。図示されている例においてはその加熱エレメントには電流が供給される。そのフィン3は、容器1の縦方向(すなわち、そのシリンダーの軸に沿って)およびその容器の半径方向にある板の状態で配置されている。それらは適切にはアルミニウムまたは高い熱伝導率およびその容器1中の環境に対して耐性を有するその他の軽い材料でできている。アンモニア貯蔵材料は、容器1の中の空間を埋め尽くすブロック9の形でつくられている(または、他の実施形態においては、粉末としてそのユニット中に入れることができる)。その貯蔵材料9は、離れたところと容器1内の両方に図示されている−両方の場所とも項目9によって示されている。アンモニアが熱脱離によって固体から放出されるとき、それはon/off弁4を有する管を通ってバッファ容積5に至る。圧力センサー10は、アンモニアの脱離圧を測定し、投入弁6は、アンモニアを制御装置12によって与えられた需要に応じて排気ライン7中に投入する。該制御装置12は、例えば、エンジン制御ユニット(ECU、ここには図示されていない)と連絡している。NOxセンサー15は、NOx信号を制御装置12に送る排気ライン7中に備えられており、それは順次そのNOxを除去するためのアンモニア需要を計算する。他の実施形態においては、その制御装置12は、ECUからの予測されたアンモニア需要信号を得る。
【0061】
該貯蔵容器1は、断熱材8によって断熱されており、それは、また、その容器1の外側、ただしその断熱材8の下部、に温度を測定する手段11も有する。制御装置12は、温度測定11からの信号を使用して該断熱材を通る熱損失を推定/予測する。温度勾配の殆どは断熱材8に現れるので、この温度測定は、制御装置12によってなされる熱損失の推定において使用される高い方の温度レベルにほぼ一致する。熱損失推定において使用される低い方の温度レベルは、いくつかの実施形態において、例えば、断熱材8の外側表面の第2のセンサーによって測定され、その他の実施形態においては、一定の平均外側温度が単純に仮定される。いくつかの実施形態において、該加熱エレメントそれ自体は内蔵型熱電対付きで構成されている。これは、該加熱エレメントの過熱を避けるための防護として、および、温度測定が温度勾配の予測におけるパラメータとして使用することもできることの両方に役立ち得る。
【0062】
アンモニアを放出する需要と組み合わされたこの熱損失の推定により、フィードフォーワード方式においては、加熱エレメント2への熱の注入を制御する。もちろん、最初にアンモニア需要が計算され、次にこの需要に対する脱離エネルギーを補填するために要する熱を計算する2段階の方法においては、脱離エネルギーを補填するために必要な熱の量を計算することは実際には必要ではない。したがって、いくつかの実施形態において、(測定もしくは予測された)NOxは、適当なマッピングテーブルまたは式によって、測定もしくは予測されたNOxを除去するために放出されるべきアンモニアの量に対する脱離エネルギーを補填するために必要な熱を示す数字に直接マッピングされる。この熱は、次に、加熱エレメント2によって生成される熱の量を得るために推定された熱損失と直接組み合わせることができる。
【0063】
測定の結果に基づいて、該制御装置は、加熱エレメント2に送られる電気エネルギーを、その熱の必要量が加熱エレメント2によって生成されるように制御する。例えば、必要に応じて電圧および/または電流を連続方式で変化させることができる。他の実施形態において、加熱エレメント2への供給は、必要な熱の量に対応するデューティサイクルによって恒久的にスイッチがオン・オフされる。
【0064】
NOx含有排気ガスは、燃焼機関またはバーナー、例えば、内燃エンジン13によって生成され、排気ライン7中に排出される。NOxセンサー15は、排気ライン7の下流に配置される。さらなる下流に投入弁6によって投入されたアンモニアが排気ライン7中に排出される。なおもさらなる下流は、アンモニアとの反応によってNOxを除去することができるNOx還元触媒14を収容する排気チャンバーである。そのアンモニアは、投入弁6によって、その投入量が排気ガス中のその時点の(測定または予測された)NOxを除去するのに何らかの有意量のアンモニアが大気中に排出されることなく丁度十分なように投入される。
【0065】
この目的を達成するために、いくつかの実施形態において、アンモニア需要信号(上記のように制御装置12による計算または予測に基づく)もまた、制御可能な投入弁をそれがアンモニア需要に従って放出されたアンモニアを投入するように制御するために、使用される。
【0066】
図2は、大きな材料の長さスケールを有する貯蔵材料9の内部埋め込み加熱の構想を適用するさまざまな代案(a〜c)を示している(大きな材料の長さスケールについては図6に関連して説明される):
a) 棒の形態をしている加熱エレメント2は、ここではシリンダーの形をした容器の容器1の中央の軸中に置かれている。4つの貯蔵ブロック9がその容器1中に置かれている。加熱フィン3は、加熱エレメント2からの熱を貯蔵ブロック9に伝導する。容器1は、断熱材8により熱的に絶縁されている。
b) 加熱エレメント2は、ここでは角胴形の容器である容器1の中央の軸中に置かれている。この場合もやはり、4つの貯蔵ブロック9がその容器1中に置かれており、加熱フィン3が、加熱エレメント2からの熱を貯蔵ブロック9に伝導する。容器1は、8で断熱されている。
c) 2つの加熱エレメント2が角胴形の容器1の内側に置かれている。8つの貯蔵ブロック9が今度は容器1中に置かれている。この場合もやはり、加熱フィン3は、加熱エレメント2からの熱を貯蔵ブロック9に伝導し、そのユニットは8で断熱されている。2つの内部加熱ゾーンを使用することは、減少した電力要求に対する速い立ち上げのために有利であり得る。
【0067】
図3は、内部に埋め込まれた加熱部材が、シリンダー容器1中に配置されており、シリンダー軸2上に加熱エレメントと円板状の形の加熱フィン3とを有し、その容器のシリンダー軸と垂直に配置されている別の実施形態を示している。この構造において、ブロック9は、例えば、シリンダー形のものであり、加熱棒2を取り付けるための中央の穴を有している。
【0068】
いくつかの実施形態において、該加熱棒2は、別々の内部加熱ゾーン、または「区域」を有しており、各加熱ディスク(またはフィン)3は、1つの区域(または2つの隣り合う区域)にエネルギーを放散させることができ、その間別のゾーンは加熱されない。これは、そのシステムが、全体の貯蔵本体を加熱することなく、より多くのエネルギーを局所的に望ましい脱離圧に達するように向ける能力を有するので、例えば、立ち上げの間低い電力消費が望ましいときに有利であり得る。
【0069】
図4は、加熱棒2が、図1および2と同じように縦方向に沿った加熱棒2に取り付けられている加熱フィン3として作用する多孔質金属シートが備えられている特有の構造を示している。貯蔵ブロック9から放出されたアンモニアは、そのとき、より速いアンモニアの放出を提供することができる多孔質の金属シート3を通って該容器の縦方向に流れることができる。該加熱棒2は、多孔質金属シート3中の伝導によって熱を放散することができる。例えば焼結金属シートの気孔率は、さもなければ熱伝導率が低過ぎる可能性があるため、90%未満である。他の実施形態において、図3におけるような縦軸に配列されているフィンは多孔質金属でできている。
【0070】
図5は、加熱エレメント2として熱交換器を有することを除いては図1と同様の実施形態を示している。加熱媒体として作用する高温の流体を加熱エレメント2中の中央の穴を通して流す。その加熱媒体は、その熱のいくらかを周囲の熱エレメント2に熱伝導によって伝達する。その加熱媒体は、例えば、エンジン(またはバーナーあるいは化学反応チャンバーなど)16によって生成した廃熱によって加熱される。加熱媒体回路に配置されている連続調整弁17は、加熱媒体の流れを、該加熱媒体が加熱エレメント2に必要な熱の量を伝達する方式で調節する(すなわち変化させる)ために制御装置12によって制御する。
【0071】
図6は、図1の貯蔵容器の断面図に基づいて、最大熱拡散経路長とは何を意味しているかを説明している。示されている例において、容器1は、10cm(100mm)の内径を有する円形の断面を有するシリンダーである。中央の加熱エレメント2までの間隔が、すなわち15mmを超える間隔の範囲内に置かれている貯蔵材料が、18のところ(図6の左下の4分の1のところ)に白い領域として示されている。熱伝導エレメント3も考慮に入れると、高温の表面(中央の加熱エレメント2または熱伝導エレメント3)に最も近いところまでの間隔が15mmを超える間隔の範囲内に置かれている貯蔵材料は、19のところ(図6の右下の4分の1のところ)に白い領域として示されている。その後者の間隔が、「熱拡散経路長」である。対照的に、図6における右下4分の1の影部分においては、熱拡散経路長は15mmより狭い。容器1のどこかに現れる熱拡散経路長の最大は、本明細書では「最大熱拡散経路長」と呼ぶ。図6の例においては、「最大熱拡散経路長」は、15mmより大きく、なぜなら、熱拡散経路長が15mmより大きいいくらかの貯蔵材料(つまり19における貯蔵材料)があるためである。
【0072】
熱拡散経路長は、熱拡散時間に形が変わる。したがって、最大熱拡散経路長が小さいほど、それだけ熱の供給とそれに対応するアンモニアの放出との間の遅れは短い。その結果、純粋にフィードバック制御されるシステムにおいては、15mmより著しく小さい小さな最大熱拡散経路長を有する設計を採用する傾向がある。本発明のいくつかの実施形態においてはいずれもフィードフォーワード制御システムにおいてはアンモニア放出の速い応答は不利ではないので、15mmより下の最大熱拡散経路長が選択される。
【0073】
しかし、熱供給のフィードフォーワード制御に基づくと、そのような遅れを切り抜けることができることが認められている。したがって、いくつかの実施形態において、該最大熱拡散経路長は、15mmより大きい、例えば、100mm以上までである。かかるシステムは、内部構造がより複雑ではないフィンを有しており、したがって、産業上の利用可能性の観点からはより興味深い。
【0074】
図7は、熱供給のフィードバック制御に基づいているだけである2つの異なる実験における熱伝導が原因の遅れを示している。両方の実験において、中間の駐車を有する3つの連続した走行サイクルに従ってアンモニア投入を行った。2つの異なるタイプの連邦政府が認可した走行サイクル、FTP−75およびUS−06(後者は、より高速の走行を含む)を用いる。その走行サイクルは、一定の走行条件をシミュレートする。それらは、時間の関数としての車両速度を定義することを特徴とする。この速度曲線に違いが出たとき、自動車がどこで多量のNOx(加速中)を発生し、したがってアンモニアのより大きい投入速度を必要とするかを示す動態曲線を得ることができる。
【0075】
その実験は、t=0の低温ユニット(室温)から始まる。次に、所定量の電力が加熱エレメントに加えられて、バッファ中で約2バールのアンモニア圧に達する。その試験サイクルは、1回のFTP−75、1時間の「駐車時間」、US−06走行サイクル、2時間の駐車および最後に再び1回のFTP−75サイクルからなる。
【0076】
1つのセットアップは次からなる:
− 外部加熱: 容器中の2kgの貯蔵材料(Mg(NH3)6Cl2)、容器の周りに巻きつけられた外部加熱エレメント(最大800W)、加熱容器の周りの断熱材、バッファ、圧力センサー、投入弁(質量流量制御装置)およびフィードバック測定として圧力を用いるフィードバック制御、すなわち、圧力が設定点より低いときに加熱をし、圧力が設定点より高いときにはより少ない加熱をする(または加熱しない)。熱源のスイッチをオフにする上記のそのフィードバック制御の圧力設定点は、2バールである。
− 内部加熱: 内部に埋め込まれた加熱エレメント(最大500W)を有すること以外は上記と同じ容器中の2kgの貯蔵材料、加熱容器の周りの断熱材、バッファ、圧力センサーおよび投入弁(質量流量制御装置)。熱源のスイッチをオフにする上記のそのフィードバック制御の圧力設定点は、2バールである。
両システムとも、3cmのロックウールによって一様に断熱されている。
【0077】
実線の曲線(外部加熱)を見ると、これは実験が外部加熱エレメントを用いて行われる(伝統的にしてきたように)ときの全体の実験の間の時間の関数である圧力を示している。適当なバッファ圧力に達するのに10分以上かかり、それがやっと達したときにそのシステムの熱慣性が最大4バールまでの飛躍的な行過ぎを(駐車中にも)引き起こすことが容易にわかる。次の走行サイクルは、最初のサイクルによる行過ぎが「減じ」られないために、高い圧力でスタートする。しかし、次のサイクルの間に、圧力の大きな負の行過ぎ(設定点よりはるかに下回る)を避けることができず、低過ぎる圧力が、正しい量のアンモニアを投入することを不可能にする。最後のサイクルは、圧力における大きな振動および圧力が低過ぎる最初の約10分間を有するように見られる。
【0078】
内部加熱を用いる曲線は、破線であり、低い電力を使用してさえも(内部加熱棒は低い最大電力レベルを有するため)低温でスタートした後ずっと早く所望の圧力に達し得ることがわかる。その開始時間は、外部加熱を用いての10分を超えるのとは対照的にわずか100〜120秒である。また、実験の残りの時間において、圧力が2バールの設定点付近で全く安定していることがわかる。かくして、迅速なスタートとより安定なシステムが現在の発明を用いて得られることが証明される。これらの3つのサイクルの間の合計の電力需要は、全3サイクル実験に対して下に示す(ワット時間の単位で測定)ようにより少ない。
内部: 203W−h
外部: 379W−h
したがって、内部加熱を用いることによって、該システムは、より良く機能し、同時に電力需要が(379−203)/379 %=46%低減される。本明細書に記載されている実施形態(フィードフォーワード制御による)は、例えば、このタイプの内部に埋め込まれた加熱部材を使用する。
【0079】
図8は、図7の第2の走行サイクル(94〜104分)の間に投入された累積されたアンモニアを示す。これは、US−06走行サイクルであり、想定されるアンモニア需要は約7リットルのアンモニアガスを投入することが全体で必要となる。図は、内部加熱の使用と外部加熱の使用とを対比させた投入能力の違いを示している。
【0080】
2つの曲線の間の垂直距離の増加は、外部加熱を用いるシステムが、想定される走行サイクルによって決まるアンモニアの需要についていくことができないことを意味する。特に、そのサイクルの最後の4分間において、累積アンモニア投入曲線の増加が殆ど見られない。該外部加熱は、必要な7リットルのうちの5リットル未満を供給しているに過ぎない。該内部加熱は、該走行サイクルに従う。再度、図7に関して、外部加熱に対するUS−06サイクル(ほぼt=100分前後で起こる)は、該サイクルの最後の部分で低い圧力を有することが見られる。したがって、図8における投入の厳しい不足に一致する。
【0081】
図9は、実験における最後のFTP−75サイクル(t=222分〜t=257分)に対する投入曲線を示す。ここで、外部加熱システムは、6リットルの必要なアンモニアガスのうちの約4リットルを何とか投入するに過ぎない。ここで、ついていくのが困難なのは主としてそのサイクルの最初の部分にあることを見ることができる。これは、また、外部加熱に対する圧力曲線が最初の5〜10分間に非常に低い図7においても見られる。内部加熱は、所望量のアンモニアを送ることができる。
【0082】
図10は、貯蔵材料の例えば15mmを超える長い熱拡散経路長スケールを有するシステムを含む(がこれらに限定されない)大きなキャパシティのためのシステムの制御をさらに可能にするフィードフォーワード制御戦略を説明している。長さスケールが15mmを超えるとき、熱伝達に対する時間遅延は、内部埋め込み加熱によってさえかなりのものである。制御戦略の狙いは、脱離が吸熱性であるために材料を冷却するアンモニアの大きな放出速度によって引き起こされる「サブクーリング」の状態に達するのを避けることである。この冷却効果はアンモニアが脱離される場所で局所的に引き起こされるが、該新たな熱の供給は該材料中のその脱離「前面」に届かなければならず、これは熱源から遠く離れている可能性がある。かつ、圧力が設定点を上回るときに高いアンモニア放出速度が起こる場合、従来のフィードバック制御においては、その時そのことは、従来のフィードバックシステムが、エネルギーの入力を増すことをそれが「既に遅過ぎる」までは引き起こさせないであろう。それ故、図10に示されているフィードフォーワード制御アルゴリズムは有利である。
【0083】
基本的に、貯蔵ユニットは、2つの事柄のために熱を必要とし、それは、a)アンモニアが脱離することなく系の温度を維持すること(熱損失を補填する)およびb)該材料の冷却を避けるために、アンモニア脱離のための熱の必要量を供給することである。
【0084】
したがって、その制御戦略の要素は以下のものである。
a) 吸熱性アンモニア脱離に対するエネルギー需要を償うために必要な熱出力を計算する。これは、エンジン制御装置から受けた(またはエンジン制御装置からの予想NOx信号から誘導された)あるいはNOxセンサーによって測定されたNOxから誘導されたアンモニア投入需要信号を用いてリアルタイムで行われ、その需要(例えば、モル/秒の単位の速度nとして表される)は知らされると同時に対応する脱離電力PDesorptionを次式によって計算することができる:
PDesorption[W]=n[mol NH3/s]×ΔHNH3,desorp[J/mol NH3];
b) 断熱材による熱損失を償うために必要な熱出力を計算する。これは、温度勾配、断熱層の熱伝導係数および断熱される系の表面積などの適当な入力を用いてリアルタイムで行われ、例えば、温度測定は内部温度TCartridge wall[K]および外部温度TOutside[K]を提供し、貯蔵容器の外部表面積はA[m2]であることが知られ、容器の断熱材の熱伝導係数はh[W/K/m2]であることが知られると、その時熱損失を補填するために要する電力は、次式によって計算することができる;
PHeat loss comp=A×h×(TCartridge wall−TOutside)[W];
c) 全体の電力需要Ptotalを予測するためa)とb)とを加える:
Ptotal=PHeat loss comp+PDesorption;
d) 加熱エレメントをそれが全体の電力需要Ptotalを供給するように制御する。
【0085】
より実際のことを言えば、車を飛躍的に加速する場合、該制御システムは、その圧力が、たとえ設定点が従来のフィードバック制御中にあるより実際にはわずかに上にあっても、直ちにより多くの熱をその貯蔵ユニットに加える。これにより、従来のフィードバックシステムで現れる短時間のアンモニアの不足が避けられる。
【0086】
該容器の表面積A、および熱伝導係数hが先験的に知られていない場合、その制御装置は、また、例えば10分間のシステム運用の間の熱損失パラメータを推測するアルゴリズムを含むこともできる。熱注入量の知識と特定時間(例えば10分間)にわたる放出アンモニアの量との結合は、制御装置がA×hの値を推測することを可能にするであろう(温度勾配が既知の場合)。2つのパラメータAおよびhを独立して推定することはできないであろうが、温度勾配の関数としての熱損失の説明は、A×hの値が既知であれば一般に十分である。
【0087】
図11は、制御システムのさらなる安全機能を提供する重ね合わせフィードバック制御を示す。図示されている圧力スケールは、圧力制御戦略におけるさまざまな圧力レベルを指し示している。
【0088】
基準圧力は、周囲の大気圧である。排気ライン中の圧力はわずかに高く、例えばPExhaust line=1.2バールである。アンモニアの投入は、該投入弁がPMinimumのバッファから一定の圧力の供給(例えば、1.5バール位)を得ない限り可能ではない。標準的な設定点は、PNH3, setpoint(例えば1.8バール)である。図8に示されている制御戦略は、PNH3, setpointとPHeat−off(例えば、2.2バール)との間の圧力範囲内でのみ活性であることができる。一定圧(PHeat−off)より上で、加熱は安全機能としてともかくは止められる。PHeat−offは、それが安全機能であるため、従来のフィードバック制御における設定点である点よりは高いが、その「標準的な」制御は、フィードフォーワードの部分で実行される。PSatefy maxにおいては、任意的な圧力除去弁が開いて、機械設計レベルを超える圧力を避ける。
【0089】
圧力がPNH3, set−pointより下のときは、最大の熱を加えるべきである(自動車がそのときのエンジン負荷の状態でそれだけ大きい力を供給することができないことがない限りは)。PNH3, set−pointは、それが安全機能であるため、従来のフィードバック制御における設定点である点よりは低いが、その「標準的な」制御は、フィードフォーワードの部分で実行される。
【0090】
図12および13は、放出されたアンモニアが、NOxを減少させるためには使用されないが、燃料電池用燃料として役立つその他の実施形態を説明している。図12の実施形態において、貯蔵材料(9)内の容器(1)中に貯蔵されたアンモニアは、前の図に示して説明したように、供給される熱のフィードフォーワード制御に基づいてヒーター(2)によって放出される。その放出されたアンモニアは、触媒分解装置(20)に供給され、その生成した水素は、水素を電気に変換することができる燃料電池(21a)に送り込まれる。図13の実施形態においては、放出されたアンモニアは、アンモニアを電気に直接変換することができる燃料電池(21b)に直接供給される。
【0091】
図11の圧力レベル戦略との任意的組み合わせを含む図10のフィードフォーワード制御戦略は、15mmを超える大きな材料の長さスケールを有する貯蔵ユニットからの吸熱的アンモニア脱離を用いる安全なアンモニア貯蔵システムと組み合わせて、作動の長い時間遅延に対処することができる制御戦略を構成する。図10および11の戦略は、内部加熱の構想に対して、熱補填時間を計算するのがより容易であるので、適切である。1つの理由は、内部加熱エレメントの温度は一般的にかなり大幅に変動するが、容器の壁の温度はより長い時間にわたって殆ど一定であり、それ故、周囲への温度勾配は急速には変化しないことである。外部加熱が加えられた場合は、周囲への温度勾配は、その容器の壁の温度が加熱の開始および終了ごとに上昇および低下するために、非常に動的に変化する。
【符号の説明】
【0092】
1 貯蔵容器
2 加熱エレメント
3 フィン
4 on/off弁
5 バッファ容積
6 投入弁
7 排気ライン
8 断熱材
9 貯蔵ブロック
10 圧力センサー
11 温度
12 制御装置
13 内燃エンジン
14 NOx還元触媒
15 NOxセンサー
16 エンジン(またはバーナーまたは化学反応チャンバーなど)
17 連続調整弁
18 貯蔵容器のシリンダー円形断面の加熱エレメントまでの間隔が15mmを超える範囲
19 18から熱拡散経路長を除いた範囲
20 触媒分解装置
21a 水素の燃料電池
21b アンモニアの燃料電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料にアンモニアを貯蔵し、そこからアンモニアを放出するためのシステムであって、
− アンモニア含有貯蔵材料を収容することができる容器と、
− 固体の貯蔵媒体からのアンモニアの脱離のための熱を供給するように配置されている熱源と、
− アンモニアを放出するように、前記熱源を制御するために配置された制御装置であって、前記熱源は、前記容器の内側に配置されており、アンモニア貯蔵材料に取り囲まれている制御装置と、
− アンモニアの需要に従って、放出されたアンモニアを投入するように配置された制御可能な投入弁と
を含み、
− 前記制御装置が、前記熱源により供給される熱を該アンモニアの需要に基づいて制御するように配置されているフィードフォーワード制御を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記貯蔵材料からのアンモニアの脱離が吸熱性であり、前記フィードフォーワード制御が、前記貯蔵材料からの必要とされるアンモニアの吸熱性の脱離に要するエネルギーを補填するように、前記熱源によって供給される熱を制御するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記容器の周囲への熱損失を測定するように配置されており、前記フィードフォーワード制御が、前記周囲への熱損失を補填するように、前記熱源によって供給される熱を制御するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記周囲への熱損失を、前記容器の内部温度、容器壁内側の温度、容器壁外側の温度、および周囲の温度の少なくとも1つの測定に基づいて推定することを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
− 前記貯蔵材料からのアンモニアの脱離が、吸熱性であり、
− 前記制御装置が、容器の周囲への熱損失を測定するように配置されており、
− 前記フィードフォーワード制御が、前記貯蔵材料からの必要とされるアンモニアの吸熱性の脱離に対して要するエネルギーおよび周囲への熱損失を補填するように制御するように、前記熱源によって供給される熱を配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御装置が、前記容器中の圧力測定に基づいて、圧力が上限圧力閾値を超えているときは前記熱源による熱の供給を減少させるまたは停止し、圧力が下限圧力閾値を下回っているときは前記熱源による熱の供給を増加させるまたは開始するように配置されている重ね合わせフィードバック制御を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
燃焼機関または燃焼過程の酸素含有排気ガスからNOxを除去するように配置されており、
− 放出されたガス状のアンモニアを前記容器から該排気ガス中に供給するように配置されている供給ラインと、
− 該アンモニアとの反応によってNOxを減少させるための触媒と、
をさらに含み、前記制御装置が、(i)NOxの測定、および(ii)エンジン制御装置または燃焼過程制御装置からの情報の少なくとも1つに基づいてアンモニアの需要を入手するようにさらに配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御可能な投入弁が放出されたアンモニアを排出ガス中に投入するように配置されていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記NOx測定のよりどころとなるNOx検出器をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記エンジン制御装置からの情報がエンジンの作動状態を示し、前記フィードフォーワード制御が該作動状態の情報に基づくアンモニア需要を推定するように配置されていることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記燃焼機関が、ジーゼル、ガソリン、天然ガス、石炭、水素またはその他の化石もしくは合成燃料により燃料供給される可動式燃焼機関ユニットであることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
自動車、トラック、列車、船舶またはその他のモーターのついた機械もしくは車両、あるいは発電するための発電所によって生ずるNOxの減少のために使用されるように配置されていることを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
発電設備を含み、該システムが、脱離したアンモニアを該発電設備のための燃料として使用することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
脱離したアンモニア、またはそれの誘導体を燃料電池の燃料として使用するように配置されており、さらに、
(a) 水素を製造するための触媒アンモニア分解反応装置、ガス状の水素によって作動が可能な燃料電池、または
(b) 放出したアンモニアによって直接実施が可能な燃料電池
を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記アンモニア貯蔵材料が、アンモニアを吸収によって可逆的に結合および放出することができることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記アンモニア貯蔵材料が、一般式Ma(NH3)nXzのイオン性塩の形態の化学錯体であり、一般式中において、Mは、アルカリ金属類、例えばLi、Na、KまたはCsなど、アルカリ土類金属類、例えばMg、Ca、SrまたはAlなど、および遷移金属類、例えば、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuまたはZnなど、あるいはそれらの組み合わせ、例えばNaAl、KAl、K2Zn、CsCuまたはK2Feなどから選択される1つまたは複数のカチオンであり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩、モリブデン酸塩およびリン酸塩イオン類から選択される1つまたは複数のアニオンであり、aは、塩1分子当たりのカチオンの数であり、zは塩1分子当たりのアニオンの数であり、nは、2から12までの配位数であることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記イオン性塩が、Mg、Ca、Srまたはそれらの混合物の塩化物または硫酸塩であることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記アンモニア貯蔵材料が、アンモニア貯蔵材料の成型ユニットの形態をしていることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記アンモニア貯蔵材料が、飽和固形材料の理論的最大骨格密度の70%を超える密度を有する高密度のブロック、棒、シリンダーリングまたはとがったユニットに圧縮されていることを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
熱伝導エレメントが、熱源とアンモニア含有貯蔵材料との間の内部熱交換領域を増すために、熱源およびアンモニア貯蔵材料と熱的接続状態で提供されることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記熱伝導エレメントが、前記アンモニア含有貯蔵材料によって取り囲まれているフィンであることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記熱源が、長方形の形状を有しており、フィンが、熱源の縦方向に対して平行または垂直に配置されていることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記熱伝導エレメントの少なくとも一部が、フィンに接触した状態にある該貯蔵材料の表面から放出されたアンモニアを通す多孔質の金属構造物から構成されていることを特徴とする請求項20から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記熱伝導エレメントの少なくとも一部が、多孔質または密度の高いアルミニウム、チタン、ステンレススチールまたは類似のアンモニア耐性のある金属類または合金類製であることを特徴とする請求項20から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記アンモニア貯蔵材料の配置が最大熱拡散経路長を決め、前記最大熱拡散経路長が、15mmを超えることを特徴とする請求項1から24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記熱源が、熱を発生するための電流により供給されるように配置されていることを特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記熱源が、前記容器中に伸びている少なくとも1つの熱交換器を含んでおり、熱が、前記熱交換器を通過する高温の流体またはガスから得られることを特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
高温の流体またはガスが、化学反応または燃焼過程の流体の高温の生成ガスであるか、あるいはそれによって加熱されることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記熱源が1つまたは複数の加熱管の形態で提供されることを特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記容器が、縦伸びを有しており、1つまたは複数の加熱管が、前記容器の縦伸びの方向に伸びていることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記制御可能な投入弁もまた、アンモニア需要に従って放出されたアンモニアを投入するようにフィードフォーワード制御されることを特徴とする請求項1から30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記制御装置によるアンモニア需要信号を、前記制御可能な投入弁および前記熱源の両方を前記フィードフォーワード制御するために使用することを特徴とする請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記制御可能な投入弁の制御が、前記制御可能な投入弁により投入されたアンモニアの質量流量を測定するように配置されている質量流量計を具備していることを特徴とする請求項1から32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
アンモニア需要と測定された質量流量とを比較し、前記制御可能な投入弁を、該測定された質量流量が該アンモニア需要と適合するように制御するように配置されていることを特徴とする請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
容器中に収容されており、時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料によって貯蔵されているアンモニアを放出させる方法であって、
− アンモニアの脱離のためにアンモニア貯蔵材料に対してどれだけの熱を供給すべきかを、該アンモニア需要に基づいて、フィードフォーワード制御を含む制御を用いて測定するステップと、
− 前記容器内部に配置されており、前記アンモニア貯蔵材料によって取り囲まれている熱源により熱を供給するステップと、
− アンモニア需要に従って制御可能な投入弁を用いて放出されたアンモニアを投入するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料にアンモニアを貯蔵し、そこからアンモニアを放出するためのシステムであって、
− アンモニア含有貯蔵材料を収容することができる容器と、
− 固体の貯蔵媒体からのアンモニアの脱離のための熱を供給するように配置されている熱源と、
− アンモニアを放出するように、前記熱源を制御するために配置された制御装置であって、前記熱源は、前記容器の内側に配置されており、アンモニア貯蔵材料に取り囲まれている制御装置と、
− アンモニアの需要に従って、放出されたアンモニアを投入するように配置された制御可能な投入弁と
を含み、
− 前記制御装置が、前記熱源により供給される熱を該アンモニアの需要に基づいて制御するように配置されているフィードフォーワード制御を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記貯蔵材料からのアンモニアの脱離が吸熱性であり、前記フィードフォーワード制御が、前記貯蔵材料からの必要とされるアンモニアの吸熱性の脱離に要するエネルギーを補填するように、前記熱源によって供給される熱を制御するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記容器の周囲への熱損失を測定するように配置されており、前記フィードフォーワード制御が、前記周囲への熱損失を補填するように、前記熱源によって供給される熱を制御するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記周囲への熱損失を、前記容器の内部温度、容器壁内側の温度、容器壁外側の温度、および周囲の温度の少なくとも1つの測定に基づいて推定することを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
− 前記貯蔵材料からのアンモニアの脱離が、吸熱性であり、
− 前記制御装置が、容器の周囲への熱損失を測定するように配置されており、
− 前記フィードフォーワード制御が、前記貯蔵材料からの必要とされるアンモニアの吸熱性の脱離に対して要するエネルギーおよび周囲への熱損失を補填するように制御するように、前記熱源によって供給される熱を配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御装置が、前記容器中の圧力測定に基づいて、圧力が上限圧力閾値を超えているときは前記熱源による熱の供給を減少させるまたは停止し、圧力が下限圧力閾値を下回っているときは前記熱源による熱の供給を増加させるまたは開始するように配置されている重ね合わせフィードバック制御を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
燃焼機関または燃焼過程の酸素含有排気ガスからNOxを除去するように配置されており、
− 放出されたガス状のアンモニアを前記容器から該排気ガス中に供給するように配置されている供給ラインと、
− 該アンモニアとの反応によってNOxを減少させるための触媒と、
をさらに含み、前記制御装置が、(i)NOxの測定、および(ii)エンジン制御装置または燃焼過程制御装置からの情報の少なくとも1つに基づいてアンモニアの需要を入手するようにさらに配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御可能な投入弁が放出されたアンモニアを排出ガス中に投入するように配置されていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記NOx測定のよりどころとなるNOx検出器をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記エンジン制御装置からの情報がエンジンの作動状態を示し、前記フィードフォーワード制御が該作動状態の情報に基づくアンモニア需要を推定するように配置されていることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記燃焼機関が、ジーゼル、ガソリン、天然ガス、石炭、水素またはその他の化石もしくは合成燃料により燃料供給される可動式燃焼機関ユニットであることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
自動車、トラック、列車、船舶またはその他のモーターのついた機械もしくは車両、あるいは発電するための発電所によって生ずるNOxの減少のために使用されるように配置されていることを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
発電設備を含み、該システムが、脱離したアンモニアを該発電設備のための燃料として使用することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
脱離したアンモニア、またはそれの誘導体を燃料電池の燃料として使用するように配置されており、さらに、
(a) 水素を製造するための触媒アンモニア分解反応装置、ガス状の水素によって作動が可能な燃料電池、または
(b) 放出したアンモニアによって直接実施が可能な燃料電池
を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記アンモニア貯蔵材料が、アンモニアを吸収によって可逆的に結合および放出することができることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記アンモニア貯蔵材料が、一般式Ma(NH3)nXzのイオン性塩の形態の化学錯体であり、一般式中において、Mは、アルカリ金属類、例えばLi、Na、KまたはCsなど、アルカリ土類金属類、例えばMg、Ca、SrまたはAlなど、および遷移金属類、例えば、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、CuまたはZnなど、あるいはそれらの組み合わせ、例えばNaAl、KAl、K2Zn、CsCuまたはK2Feなどから選択される1つまたは複数のカチオンであり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩、モリブデン酸塩およびリン酸塩イオン類から選択される1つまたは複数のアニオンであり、aは、塩1分子当たりのカチオンの数であり、zは塩1分子当たりのアニオンの数であり、nは、2から12までの配位数であることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記イオン性塩が、Mg、Ca、Srまたはそれらの混合物の塩化物または硫酸塩であることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記アンモニア貯蔵材料が、アンモニア貯蔵材料の成型ユニットの形態をしていることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記アンモニア貯蔵材料が、飽和固形材料の理論的最大骨格密度の70%を超える密度を有する高密度のブロック、棒、シリンダーリングまたはとがったユニットに圧縮されていることを特徴とする請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
熱伝導エレメントが、熱源とアンモニア含有貯蔵材料との間の内部熱交換領域を増すために、熱源およびアンモニア貯蔵材料と熱的接続状態で提供されることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記熱伝導エレメントが、前記アンモニア含有貯蔵材料によって取り囲まれているフィンであることを特徴とする請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記熱源が、長方形の形状を有しており、フィンが、熱源の縦方向に対して平行または垂直に配置されていることを特徴とする請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記熱伝導エレメントの少なくとも一部が、フィンに接触した状態にある該貯蔵材料の表面から放出されたアンモニアを通す多孔質の金属構造物から構成されていることを特徴とする請求項20から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記熱伝導エレメントの少なくとも一部が、多孔質または密度の高いアルミニウム、チタン、ステンレススチールまたは類似のアンモニア耐性のある金属類または合金類製であることを特徴とする請求項20から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記アンモニア貯蔵材料の配置が最大熱拡散経路長を決め、前記最大熱拡散経路長が、15mmを超えることを特徴とする請求項1から24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記熱源が、熱を発生するための電流により供給されるように配置されていることを特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記熱源が、前記容器中に伸びている少なくとも1つの熱交換器を含んでおり、熱が、前記熱交換器を通過する高温の流体またはガスから得られることを特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
高温の流体またはガスが、化学反応または燃焼過程の流体の高温の生成ガスであるか、あるいはそれによって加熱されることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記熱源が1つまたは複数の加熱管の形態で提供されることを特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記容器が、縦伸びを有しており、1つまたは複数の加熱管が、前記容器の縦伸びの方向に伸びていることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記制御可能な投入弁もまた、アンモニア需要に従って放出されたアンモニアを投入するようにフィードフォーワード制御されることを特徴とする請求項1から30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記制御装置によるアンモニア需要信号を、前記制御可能な投入弁および前記熱源の両方を前記フィードフォーワード制御するために使用することを特徴とする請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記制御可能な投入弁の制御が、前記制御可能な投入弁により投入されたアンモニアの質量流量を測定するように配置されている質量流量計を具備していることを特徴とする請求項1から32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
アンモニア需要と測定された質量流量とを比較し、前記制御可能な投入弁を、該測定された質量流量が該アンモニア需要と適合するように制御するように配置されていることを特徴とする請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
容器中に収容されており、時間が経つと変化し得る段階的なアンモニアの需要を有するプロセスに対して吸着または吸収によってアンモニアを可逆的に結合および放出することができる貯蔵材料によって貯蔵されているアンモニアを放出させる方法であって、
− アンモニアの脱離のためにアンモニア貯蔵材料に対してどれだけの熱を供給すべきかを、該アンモニア需要に基づいて、フィードフォーワード制御を含む制御を用いて測定するステップと、
− 前記容器内部に配置されており、前記アンモニア貯蔵材料によって取り囲まれている熱源により熱を供給するステップと、
− アンモニア需要に従って制御可能な投入弁を用いて放出されたアンモニアを投入するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−522852(P2010−522852A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500135(P2010−500135)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002386
【国際公開番号】WO2008/119492
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(506320842)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002386
【国際公開番号】WO2008/119492
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(506320842)
【Fターム(参考)】
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