説明

質量分析計

【課題】
【解決手段】親イオンが混合物から溶離するのと実質的に同時に生成されたと分かった娘イオンを照合することによって親イオンを同定する方法を開示する。イオン源(1)から出射されたイオンは、電子捕獲解離、電子移動解離または表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含むフラグメンテーションデバイス(4)へ移送される。フラグメンテーションデバイス(4)は、イオンが実質的にフラグメンテーションされ、娘イオンを生成する第1のモードとイオンが実質的にフラグメンテーションされない第2のモードとの間を交番しておよび繰り返し切り換えられる。質量スペクトルは、両方のモードにおいてとられる。1回の実験稼動の終了時に、親および娘イオンが2つの異なるモードにおいて得られた質量スペクトルを比較することによって認識される。娘イオンは、それらの溶離時間の一致度にしたがって特定の親イオンと照合され、次いでこれによって親イオンを同定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析の方法および質量分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
タンデム質量分析(MS/MS)は、試料から生成された親または前駆体イオンが第1の質量フィルタ/分析器によって選択され、次いで衝突セルに渡され、そこで中性ガス分子と衝突することによってフラグメンテーションされ、娘または生成物イオンを生成する質量分析の方法に与えられた名称である。次いで、フラグメントまたは娘イオンは、第2の質量フィルタ/分析器によって質量分析され、その結果得られるフラグメントまたは娘イオンスペクトルは、その構造を決定し、かつしたがってその親または前駆体イオンを同定するために使用され得る。タンデム質量分析は、質量スペクトル分析の前に化学的クリーニングをする必要がないので、生体分子などの複雑な混合物の分析に特に有用である。
【0003】
親または前駆体イオンスキャンと呼ばれる特定の形態のタンデム質量分析が公知である。この特定の形態のタンデム質量分析では、第1のステップにおいて、第2の質量フィルタ/分析器は、質量フィルタとして作用し、その結果、特定の質量電荷比を有するフラグメントまたは娘イオンのみを移送および検出する。特定の質量電荷比は、特定の親もしくは前駆体イオンまたは特定の種類の親もしくは前駆体イオンをフラグメンテーションして得られる特徴的な生成物であることが既知のフラグメントまたは娘イオンの質量電荷比に対応するように設定される。次いで、第2の質量フィルタ/分析器を特定の質量電荷比を有するフラグメントまたは娘イオンの存在をモニターするように固定したままで、衝突セルの上流にある第1の質量フィルタ/分析器を、スキャンする。次いで、特徴的なフラグメントまたは娘イオンを生成する親または前駆体イオン質量電荷比を決定することができる。次いで、第2のステップとして、特徴的なフラグメントまたは娘イオンを生成する親または前駆体イオン質量電荷比のそれぞれに対する完全なフラグメントまたは娘イオンスペクトルが、特定の質量電荷比を有する親または前駆体イオンを選択するように第1の質量フィルタ/分析器を動作させ、次いで第2の質量フィルタ/分析器をスキャンして、その結果得られる全フラグメントまたは娘イオンスペクトルを記録することによって得られ得る。次いで、これは、他の対象の親または前駆体イオンに対して繰り返してもよい。親イオンスキャンは、例えば生体分子のエレクトロスプレー質量スペクトルにおいて頻繁に見られる化学的ノイズが存在するため、直接質量スペクトルにおいて親または前駆体イオンを同定することが可能でない場合に有用である。
【0004】
第1の四重極質量フィルタ/分析器、衝突ガスが導入される四重極衝突セル、および第2の四重極質量フィルタ/分析器を有する三連四重極質量分析計が周知である。
【0005】
ハイブリッド四重極−飛行時間質量分析計と呼ばれる他の種類の質量分析計が公知である。この質量分析計では、第2の四重極質量フィルタ/分析器が直交加速飛行時間質量分析器によって置き換えられる。
【0006】
後で説明するように、これらの種類の質量分析計は、親または前駆体イオンをスキャンし、その後に候補の親または前駆体イオンのフラグメントまたは娘イオンスペクトルを得る従来の方法において使用する場合、デューティサイクルが低いので、オンラインクロマトグラフィ用途などのより高いデューティサイクルを必要とする用途の使用には不適切である。
【0007】
四重極は、質量フィルタとして使用している際には、デューティサイクルが約100%であるが、次いで、例えば底辺が1質量単位のピークを有する500質量単位の質量範囲を質量分析するために質量分析器としてスキャンモードにおいて使用される場合、そのデューティサイクルは、約0.1%に低下する。
【0008】
直交加速飛行時間分析器は、通常、スペクトルにおける異なるイオンの相対的質量電荷値に応じて、1〜20%の範囲内にデューティサイクルを有する。しかし、デューティサイクルは、飛行時間分析器が特定の質量電荷比を有するイオンを移送するために質量フィルタとして使用されているかどうか、または飛行時間分析器が全質量スペクトルを記録するために使用されているかどうかにかかわらず、同じままである。これは、飛行時間分析器の動作の性質によるものである。フラグメントまたは娘イオンスペクトルを取得または記録するために使用される場合、飛行時間分析器のデューティサイクルは、通常約5%である。
【0009】
おおよそ、三連四重極質量分析計を使用して候補の親または前駆体イオンを発見しようとする際の従来のデューティサイクルは、約0.1%である(第1の四重極質量フィルタ/分析器は、0.1%のデューティサイクルでスキャンされ、第2の四重極質量フィルタ/分析器は、デューティサイクルが100%の質量フィルタとして作用する)。次いで特定の候補の親または前駆体イオンに対するフラグメントまたは娘イオンスペクトルを得る際のデューティサイクルも約0.1%である(第1の四重極質量フィルタ/分析器は、デューティサイクルが100%の質量フィルタとして作用し、第2の四重極質量フィルタ/分析器は、約0.1%のデューティサイクルでスキャンされる)。したがって、その結果得られる、いくつかの候補の親または前駆体イオンを発見し、その候補の親または前駆体イオンのうちの1つについての娘スペクトルを生成するデューティサイクルは、約0.1%/2(各段のデューティサイクルが0.1%である2段階処理のため)=0.05%である。
【0010】
候補の親または前駆体イオンを発見するための四重極−飛行時間質量分析計のデューティサイクルは、約0.005%である(四重極は、約0.1%のデューティサイクルでスキャンされ、飛行時間分析器は、デューティサイクルが約5%の質量フィルタとして作用する)。一旦候補の親または前駆体イオンが発見されると、候補の親または前駆体イオンのフラグメントまたは娘イオンスペクトルが5%のデューティサイクルで得られ得る(四重極は、デューティサイクルが約100%の質量フィルタとして作用し、飛行時間分析器は、5%のデューティサイクルでスキャンされる)。したがって、その結果得られる、いくつかの候補の親または前駆体イオンを発見し、その候補の親または前駆体イオンのうちの1つについての娘スペクトルを生成するデューティサイクルは、約0.005%である(なぜなら、0.005%<<5%)。
【0011】
以上のように、三連四重極質量分析計は、親または前駆体イオンをスキャンし、発見された候補の親または前駆体イオンの確証的なフラグメントまたは娘イオンスペクトルを得る従来の方法を行うためのデューティサイクルが四重極−飛行時間質量分析計よりも一桁高い。しかし、そのようなデューティサイクルの高さは、イオン源がクロマトグラフィデバイスからの溶離剤である場合に必要とされるリアルタイムデータを分析する場合、実用的かつ効率よく使用するには十分でない。
【0012】
エレクトロスプレーおよびレーザ脱離技術は、非常に高い分子量を有する分子イオンを生成することを可能にしてきた。飛行時間質量分析器は、全質量スペクトルを記録する際の効率が高いのでそのような大きな質量生体分子を分析するのに有利である。また、それらは、高い分解能および質量精度を有する。
【0013】
四重極イオントラップなどの他の形態の質量分析器は、いくつかの点で飛行時間分析器と類似する。すなわち、飛行時間分析器と同様に、そのような他の形態の質量分析器は、連続出力を提供できず、したがって、イオンを連続的に移送するための質量フィルタとして使用される場合には、効率が低い。これは、親または前駆体イオンスキャンの従来の方法の重要な特徴である。飛行時間質量分析器および四重極イオントラップは、両方とも「不連続出力質量分析器」と称されることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
改善された質量分析の方法および改善された質量分析計を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一局面によると、質量分析の方法であって、
(a)親または前駆体イオンを、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
(b)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1の動作モードにおいて動作させるステップであって、第1の動作モードにおいては、親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成する、ステップと、
(c)フラグメントまたは娘イオンの質量スペクトルを第1の質量スペクトルとして記録するステップと、
(d)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第2のモードにおいて動作するように切り換え、改変、または変更するステップであって、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
(e)第2のモードにおいて動作する電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスから現れるか、またはそこを通って移送されてきたイオンの質量スペクトルを第2の質量スペクトルとして記録するステップと、
(f)ステップ(b)〜(e)を複数回繰り返すステップと
を含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0017】
上記好適な実施形態によると、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0018】
上記好適な実施形態によると、第1の動作モードにおいて、電子は、(i)<1eV、(ii)1〜2eV、(iii)2〜3eV、(iv)3〜4eV、および(v)4〜5eVからなる群から選択されるエネルギーを有するように構成される。
【0019】
電子は、好ましくは磁場によって閉じ込められる。フラグメンテーションされるべきイオンは、好ましくはイオンガイド内に閉じ込められる。好ましくはイオンをイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する半径方向擬ポテンシャル場または井戸を生成するために、ACまたはRF電圧が好ましくはイオンガイドの電極に印加される。比較的低いエネルギーの電子が好ましくは比較的強い磁場によって閉じ込められ、イオンガイドの磁場およびイオンガイド領域は、多価検体イオンが比較的低いエネルギーの電子と相互作用するように、好ましくは重複または重なり合う。電子捕獲解離によるイオンのフラグメンテーションは、好ましくは内部振動エネルギーをイオンに導入させることを含まない。
【0020】
電子源が好ましくは提供され、第1の動作モードにおいて、好ましくは、電子源は、好ましくは親または前駆体イオンと相互作用するように構成される複数の電子を生成する。第2の動作モードにおいて、電子源は、好ましくはOFFに切り換えられ、検体イオンが好ましくは電子と相互作用せず、かつしたがって好ましくはフラグメンテーションされないようにする。
【0021】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
(a)親または前駆体イオンを、電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
(b)電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1の動作モードにおいて動作させるステップであって、第1の動作モードにおいては、親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成する、ステップと、
(c)フラグメントまたは娘イオンの質量スペクトルを第1の質量スペクトルとして記録するステップと、
(d)電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第2のモードにおいて動作するように切り換え、改変、または変更するステップであって、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
(e)第2のモードにおいて動作する電子移動解離フラグメンテーションデバイスから現れるか、またはそこを通って移送されてきたイオンの質量スペクトルを第2の質量スペクトルとして記録するステップと、
(f)ステップ(b)〜(e)を複数回繰り返すステップと
を含む方法が提供される。
【0022】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0023】
上記好適な実施形態によると、電子移動解離フラグメンテーションデバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0024】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
(a)親または前駆体イオンを、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
(b)表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1の動作モードにおいて動作させるステップであって、第1の動作モードにおいては、親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレート上に当たる際にフラグメンテーションされる、ステップと、
(c)フラグメントまたは娘イオンの質量スペクトルを第1の質量スペクトルとして記録するステップと、
(d)表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第2のモードにおいて動作するように切り換え、改変、または変更するステップであって、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
(e)第2のモードにおいて動作する表面誘起解離フラグメンテーションデバイスから現れるか、またはそこを通って移送されてきたイオンの質量スペクトルを第2の質量スペクトルとして記録するステップと、
(f)ステップ(b)〜(e)を複数回繰り返すステップと
を含む方法が提供される。
【0025】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0026】
上記好適な実施形態によると、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0027】
第1の動作モードにおいて、親または前駆体イオンは、表面またはターゲットプレート上へ方向づけられるか、進路変更されるか、または偏向され得る。第2の動作モードにおいて、親または前駆体イオンは、好ましくは表面またはターゲットプレート上へ方向づけられず、進路変更されず、または偏向されない、すなわち、イオンは、好ましくは偏向されず、かつフラグメンテーションされずに、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを通って、またはそこを通過して前方へ移送され得る。
【0028】
表面またはターゲットプレートは、自己組織化単層を含み得る。表面またはターゲットプレートは、フッ化炭素または炭化水素単層を含み得る。
【0029】
表面またはターゲットプレートは、好ましくは第2の動作モードにおいて親または前駆体イオンの走行方向に実質的に平行である平面内に構成される。すなわち、第2の動作モードは、イオンが好ましくは表面またはターゲットプレート上へ方向づけられずに表面またはターゲットプレートを通過して移送される場合である。
【0030】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
(a)親または前駆体イオンを、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
(b)衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1の動作モードにおいて動作させるステップであって、第1の動作モードにおいては、親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応され、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成する、ステップと、
(c)フラグメント、娘、生成物または付加物イオンの質量スペクトルを第1の質量スペクトルとして記録するステップと、
(d)衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第2のモードにおいて動作するように切り換え、改変、または変更するステップであって、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
(e)第2のモードにおいて動作する衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスから現れるか、またはそこを通って移送されてきたイオンの質量スペクトルを第2の質量スペクトルとして記録するステップと、
(f)ステップ(b)〜(e)を複数回繰り返すステップと
を含む方法が提供される。
【0031】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0032】
反応デバイスは、イオン、原子または分子が新しい種のイオン、原子または分子を形成するように再構成または反応されるデバイスを含むと理解されるべきである。X−Y反応フラグメンテーションデバイスは、XおよびYが組み合わさって生成物を形成し、次いでフラグメンテーションするデバイスを意味すると理解されるべきである。これは、イオンが最初に生成物を形成せずにフラグメンテーションされ得るフラグメンテーションデバイス自体とは異なる。X−Y反応デバイスは、XおよびYが組み合わさって生成物を形成し、かつ次いでその生成物が必ずしもフラグメンテーションしないデバイスを意味すると理解されるべきである。
【0033】
本発明によると、イオンは、衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス以外のデバイス内で衝突、フラグメンテーションまたは反応される。特に好適な実施形態によると、電子捕獲解離(「ECD」)または電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイスが検体イオンをフラグメンテーションするために使用される。
【0034】
ポリペプチド鎖は、所定の質量を有するアミノ酸残基からなる。ペプチド骨格に沿って3つの異なる結合があり、1つの結合が壊れると、その電荷は、その構造のN末端部またはその構造のC末端部のいずれかに残存し得る。ポリペプチドがフラグメンテーションされると、a、b、cおよびx、y、zと一般に呼ばれる6つの可能なフラグメンテーションシリーズが生じる。
【0035】
衝突誘起解離を用いる場合、最も一般的なフラグメンテーション経路は、アミド結合(II)を介して起こるフラグメンテーションに対するものである。電荷がN−末端に残存する場合、イオンは、bシリーズイオンと呼ばれる。電荷がC末端に残存する場合、イオンは、yシリーズイオンと呼ばれる。
【0036】
添え字は、フラグメント中に何個のアミノ酸残基が含まれるかを示すために使用され得る。例えば、b3は、電荷がN−末端に残存するようにアミド結合(II)を切断した結果得られるフラグメントイオンであって、フラグメント中に3個のアミノ酸残基がある。
【0037】
本発明の一実施形態によると、電子捕獲解離(「ECD」)または電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイスを使用してイオンをフラグメンテーションする場合、ポリペプチド鎖は、ポリペプチドが衝突誘起解離によってフラグメンテーションされる場合にフラグメンテーションが生じると予想される位置とは異なる位置でフラグメンテーションされ得る。特に、電子捕獲解離(「ECD」)または電子移動解離(「ETD」)デバイスは、xおよびcシリーズフラグメントイオンが主に生成されることを可能にする。所定の状況においては、イオンをbおよびyシリーズフラグメントイオンではなく、xおよびcシリーズフラグメントイオンにフラグメンテーションさせることが特に有利である(衝突誘起解離の場合)。いくつかの状況においては、ECDまたはETDを使用してより完全な配列が可能となり、また、フラグメントイオンの同定における曖昧性がより低くなる。これによって、ペプチドの配列決定処理がより容易にできる。
【0038】
また、ポリペプチドは、リン酸化などの翻訳後修飾によって修飾され得る。ECDまたはETDフラグメンテーションデバイスの使用およびその結果生成されるフラグメンテーションシリーズによって、リン酸化などの翻訳後修飾をより簡単に観察することが可能になる。また、ポリペプチドの長さに沿ってどこで修飾が生じるかについて決定することが可能である。
【0039】
別の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。衝突誘起解離は、比較的ゆっくりとしたプロセスであって、フラグメンテーションがイオンとガス分子との間の多数回衝突の結果生じることが多いプロセスと考えられ得る。その結果、フラグメンテーションは、平均化されやすく、比較的広い範囲のフラグメンテーション生成物が通常観察される。反対に、表面誘起解離は、比較的急速または瞬時のプロセスであると考えられ得る。その結果、ポリペプチドは、非常に特異的なやり方でフラグメンテーションし得る。所定の状況において、これは、ポリペプチドの構造についての所定の有用な情報を明らかにし得るので特に有用である。
【0040】
したがって、本発明は、親または前駆体イオンが、衝突誘起解離によって得られ得るものに異なるフラグメンテーション経路を介して好ましくはフラグメンテーションされる点で特に有利であることが分かる。さらに、また、本発明は、ペプチドの翻訳後修飾が観察されること、かつ修飾のペプチドにおける位置が決定されることを可能にする。また、本発明は、検体イオンをフラグメンテーションし、および対応するフラグメントイオンを分析することによって検体イオンに関する構造情報を解明しようとする従来のアプローチに比べて、特に有利である。
【0041】
上記好適な方法は、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを少なくとも第1のモードおよび第2のモードの間で、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10秒毎に1回、自動的に切り換え、改変、または変更するステップを含む。
【0042】
上記方法は、好ましくは親または前駆体イオンを認識するステップをさらに含む。上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、第1の質量スペクトルを実質的に同時に得られた第2の質量スペクトルと比較し、第1の質量スペクトルに比べて第2の質量スペクトルにおいてより大きな強度を有するイオンを親または前駆体イオンとして認識することによって、認識され得る。
【0043】
上記方法は、好ましくはフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを認識するステップをさらに含む。フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、第1の質量スペクトルを実質的に同時に得られた第2の質量スペクトルと比較し、第2の質量スペクトルに比べて第1の質量スペクトルにおいてより大きな強度を有するイオンをフラグメント、生成物、娘または付加物イオンとして認識することによって、認識され得る。
【0044】
上記方法は、好ましくはすべての親または前駆体イオンから1サブグループの候補と考えられる親または前駆体イオンを選択するステップをさらに含む。これは、候補と考えられる親または前駆体イオンを所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対するそれらの関係に基づいて選択するステップをさらに含み得る。
【0045】
上記方法は、好ましくは第1の質量スペクトルを使用して、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対する所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応する所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間を決定するステップとをさらに含む。
【0046】
上記方法は、好ましくは所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークに対して、予め認識された親または前駆体イオンの存在について、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直前に得られる第2の質量スペクトルと、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直後に得られる第2の質量スペクトルの両方を調べるステップと、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直前に得られる第2の質量スペクトルおよび所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直後に得られる第2の質量スペクトルの両方に存在が見つかったいずれの予め認識された親または前駆体イオンに対しても、候補と考えられる親または前駆体イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、各候補と考えられる親または前駆体イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応する候補と考えられる親または前駆体イオン溶離時間を決定するステップとをさらに含む。
【0047】
上記好適な実施形態によると、上記方法は、候補と考えられる親または前駆体イオンをそれらの溶離時間と所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間との一致度にしたがって順位づけするステップをさらに含む。
【0048】
上記方法は、好ましくは候補と考えられる親または前駆体イオンの溶離時間が所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間よりも所定量より大きく先行するかまたは超える場合に、候補と考えられる親または前駆体イオンを棄却することによって候補と考えられる親または前駆体イオンから最終候補の親または前駆体イオンのリストを作成するステップをさらに含む。
【0049】
一実施形態によると、上記方法は、候補と考えられる親または前駆体イオンをそれらが所定の質量損失を引き起こすことに基づいて選択するステップをさらに含み得る。上記方法は、好ましくは各第2の質量スペクトルについて、第2の質量スペクトル中に存在する各予め認識された親または前駆体イオンからの所定のイオンまたは中性粒子の損失によって得られ得るターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷値のリストを作成するステップと、ターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷値に対応する質量電荷値を有するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの存在について、第2の質量スペクトルの直前に得られる第1の質量スペクトルおよび第2の質量スペクトルの直後に得られる第1の質量スペクトルの両方を調べるステップと、ターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷値に対応する質量電荷値を有するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンが第2の質量スペクトルの直前の第1の質量スペクトルおよび第2の質量スペクトルの直後の第1の質量スペクトルの両方に存在することが見つかった場合にリストに親または前駆体イオンを含めることによって、候補と考えられる親または前駆体イオンのリストを、必要に応じてそれらに対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンとともに、作成するステップとをさらに含む。
【0050】
一実施形態によると、上記方法は、候補と考えられる親または前駆体イオンおよびそれらに対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに基づいて質量損失クロマトグラムを生成するステップと、質量損失クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応する質量損失溶離時間を決定するステップとをさらに含む。
【0051】
上記方法は、好ましくは各候補と考えられる親または前駆体イオンに対して、第2の質量スペクトルを使用して、候補と考えられる親または前駆体イオンについて候補と考えられる親または前駆体イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンについて対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、候補と考えられる親または前駆体イオン質量クロマトグラムおよび対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応する候補と考えられる親または前駆体イオンの溶離時間および対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間を決定するステップとをさらに含む。
【0052】
上記方法は、好ましくは候補と考えられる親または前駆体イオンの溶離時間が対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間よりも所定量より大きく先行するかまたは超える場合に、候補と考えられる親または前駆体イオンを棄却することによって候補と考えられる親または前駆体イオンから最終候補の親または前駆体イオンのリストを作成するステップをさらに含む。
【0053】
上記好適な実施形態によると、上記方法は、好ましくは各最終候補の親または前駆体イオンを同定するステップをさらに含む。
【0054】
上記方法は、好ましくは各最終候補の親または前駆体イオンに対して、最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間を呼び戻すステップと、最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間の直前に得られる第2の質量スペクトルおよび最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間の直後に得られる第2の質量スペクトルの両方に存在する予め認識されたフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを含む候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストを生成するステップと、各候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、各候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応する候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間を決定するステップとさらに含む。
【0055】
一実施形態によると、上記方法は、好ましくは候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンをそれらの溶離時間と最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間との一致度にしたがって順位づけするステップをさらに含む。
【0056】
上記方法は、好ましくは候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの溶離時間が最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間よりも所定量より大きく先行するかまたは超える場合に、候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを棄却することによって候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンから最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストを作成するステップをさらに含む。
【0057】
上記方法は、好ましくは最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間に時間的に最も近くに得られる第2の質量スペクトルにおいて存在する近接の親または前駆体イオンのリストを生成するステップと、リストにおいて含まれる各親または前駆体イオンの近接の親または前駆体イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、各近接の親または前駆体イオン質量クロマトグラムの中心を決定するステップと、対応する近接の親または前駆体イオン溶離時間を決定するステップとをさらに含む。
【0058】
上記方法は、好ましくは最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストから、最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間よりも近接の親または前駆体イオンの溶離時間により接近して対応する溶離時間を有するいずれの最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンも棄却するステップをさらに含む。
【0059】
一実施形態によると、上記方法は、好ましくは最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンをそれらの溶離時間の一致度にしたがって最終候補の親または前駆体イオンに割り当てるステップをさらに含む。
【0060】
上記方法は、好ましくは最終候補の親または前駆体イオンに対応づけられたすべての最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンをリストするステップをさらに含む。
【0061】
一実施形態によると、上記方法は、好ましくは各認識された親または前駆体イオンに対して親または前駆体イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、親または前駆体イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応する親または前駆体イオンの溶離時間を決定するステップと、各認識されたフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対してフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、フラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間を決定するステップとをさらに含む。
【0062】
上記方法は、好ましくはフラグメント、生成物、娘または付加物イオンをそれらのそれぞれの溶離時間の一致度にしたがって親または前駆体イオンに割り当てるステップをさらに含む。
【0063】
一実施形態によると、上記方法は、好ましくは各親または前駆体イオンに対応づけられたすべてのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンをリストするステップをさらに含む。
【0064】
上記方法は、好ましくはイオン源によって生成されたイオンを、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡すか、またはそこを通って移送させる前に、質量フィルタを通すステップであって、質量フィルタは、所定の範囲内にある質量電荷値を有するイオンを実質的に移送し、かつ範囲外にある質量電荷値を有するイオンを実質的に減衰させる、ステップをさらに含む。
【0065】
一実施形態によると、上記方法は、イオンが第1の質量スペクトル中に存在し、かつ範囲外の質量電荷値を有する場合に、イオンをフラグメント、生成物、娘または付加物イオンとして認識するステップをさらに含む。
【0066】
上記方法は、好ましくは第1のおよび第2の質量スペクトルから親または前駆体イオンおよびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを認識するステップをさらに含む。上記方法は、好ましくは各親または前駆体イオンに対して親または前駆体イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、親または前駆体イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応する親または前駆体イオンの溶離時間を決定するステップと、各フラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対してフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、フラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの溶離時間を決定するステップとをさらに含む。
【0067】
上記方法は、好ましくはフラグメント、生成物、娘または付加物イオンをそれらのそれぞれの溶離時間の一致度にしたがって親または前駆体イオンに割り当てるステップをさらに含む。上記方法は、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流に質量電荷比移送ウィンドウを有する質量フィルタを準備するステップをさらに含む。一実施形態によると、上記方法は、質量フィルタの移送ウィンドウ外にある質量電荷値を有する第1のスペクトルに存在するイオンを認識することによってフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを認識するステップをさらに含む。
【0068】
上記方法は、好ましくは親または前駆体イオンを親または前駆体イオンの質量電荷比に基づいて同定するステップをさらに含む。
【0069】
上記方法は、好ましくは親または前駆体イオンを1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比に基づいて同定するステップをさらに含む。
【0070】
一実施形態によると、上記方法は、好ましくは1つ以上の親または前駆体イオンの質量電荷比を決定することによってタンパク質を同定するステップであって、1つ以上の親または前駆体イオンは、タンパク質のペプチドを含む、ステップをさらに含む。
【0071】
上記方法は、好ましくは1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比を決定することによってタンパク質を同定するステップであって、1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、タンパク質のペプチドのフラグメントを含む、ステップをさらに含む。
【0072】
一実施形態によると、上記方法は、データベースと突き合わせて1つ以上の親または前駆体イオンおよび/あるいは1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比を検索するステップであって、データベースは、既知のタンパク質を含む、ステップをさらに含む。上記方法は、好ましくはデータベースと突き合わせて1つ以上の親または前駆体イオンの質量電荷比を検索するステップであって、データベースは、既知のタンパク質を含む、ステップをさらに含む。
【0073】
上記方法は、好ましくは親または前駆体イオンのフラグメンテーションから得られると予想され得るフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの存在を求めて第1の質量スペクトルを検索するステップをさらに含む。
【0074】
一実施形態によると、所定量は、(i)0.25秒、(ii)0.5秒、(iii)0.75秒、(iv)1秒、(v)2.5秒、(vi)5秒、(vii)10秒、および(viii)半分の高さで測定されたクロマトグラフィピークの幅の5%に対応する時間からなる群から選択される。
【0075】
ヘリウム、アルゴン、窒素またはメタンを含むガスが衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス中に導入され得る。
【0076】
本発明の一局面によると、質量分析計であって、
電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスは、第1の動作モードおよび第2の動作モードにおいて動作可能であり、第1の動作モードにおいては、親または前駆体イオンの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2の動作モードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1のおよび第2の動作モードの間で行ったり来たりするように繰り返し切り換え、改変または変更するように構成および適合される制御手段と
を含む質量分析計が提供される。
【0077】
本発明の一局面によると、質量分析計であって、
電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、電子移動解離フラグメンテーションデバイスは、第1の動作モードおよび第2の動作モードにおいて動作可能であり、第1の動作モードにおいては、親または前駆体イオンの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2の動作モードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1のおよび第2の動作モードの間で行ったり来たりするように繰り返し切り換え、改変または変更するように構成および適合される制御手段と
を含む質量分析計が提供される。
【0078】
本発明の一局面によると、質量分析計であって、
表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスは、第1の動作モードおよび第2の動作モードにおいて動作可能であり、第1の動作モードにおいては、親または前駆体イオンの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2の動作モードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1のおよび第2の動作モードの間で行ったり来たりするように繰り返し切り換え、改変または変更するように構成および適合される制御手段と
を含む質量分析計が提供される。
【0079】
本発明の一局面によると、質量分析計であって、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、第1の動作モードおよび第2の動作モードにおいて動作可能であり、第1の動作モードにおいては、親または前駆体イオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応されて、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成し、第2の動作モードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のおよび第2の動作モードの間で行ったり来たりするように繰り返し切り換え、改変または変更するように構成および適合される制御手段と
を含む質量分析計であって、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
質量分析計が提供される。
【0080】
質量分析計は、好ましくはイオン源を含む。イオン源は、好ましくは(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「AP−MALDI」)イオン源、および(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択される。
【0081】
特に好適な実施形態によると、イオン源は、エレクトロスプレー、大気圧化学イオン化、またはマトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源を含み得る。そのようなイオン源には、所定期間にわたり溶離剤が提供され得、溶離剤は、液体クロマトグラフィまたはキャピラリー電気泳動によって混合物から分離されてきたものである。
【0082】
あるいは、イオン源は、電子衝撃、化学イオン化または電界イオン化イオン源を含み得る。そのようなイオン源には、所定期間にわたり溶離剤が提供され得、溶離剤は、ガスクロマトグラフィによって混合物から分離されてきたものである。
【0083】
質量フィルタ、好ましくは四重極質量フィルタ、が衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流に配置され得る。しかし、質量フィルタは、本発明にとって不可欠のものではない。質量フィルタは、高域通過フィルタ特性を有して動作するように構成され得る。質量フィルタは、例えば、(i)≧100、(ii)≧150、(iii)≧200、(iv)≧250、(v)≧300、(vi)≧350、(vii)≧400、(viii)≧450、および(ix)≧500からなる群から選択される質量電荷比を有するイオンを移送するように構成され得る。あるいは、質量フィルタは、低域通過または帯域通過フィルタ特性を有するように構成され得る。
【0084】
質量分析計は、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流および/または下流に設けられるイオンガイドをさらに含む。イオンガイドは、好ましくは、
(i)四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセットまたは8個より多くのロッドを含むロッドセットを含む多重極ロッドセットまたはセグメント化多重極ロッドセットイオントラップまたはイオンガイド、
(ii)開口を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含むイオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドであって、使用時にイオンは、開口を通って移送され、電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズまたは面積の開口を有するか、またはサイズまたは面積が順次より大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイド、
(iii)平面、プレートまたはメッシュ電極のスタックまたはアレイであって、平面、プレートまたはメッシュ電極のスタックまたはアレイは、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含み、平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時に概してイオンが走行する平面内に配置される、平面、プレートまたはメッシュ電極のスタックまたはアレイ、および
(iv)イオントラップまたはイオンガイドの長さに沿って軸方向に配置される複数のグループの電極を含むイオントラップまたはイオンガイドであって、各グループの電極は、(a)第1および第2の電極ならびにイオンをイオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを第1および第2の電極に印加するための手段、および(b)第3および第4の電極ならびにイオンをイオンガイド内に第2の半径方向(第1の半径方向と直交するのが好ましい)に閉じ込めるためにACまたはRF電圧を第3および第4の電極に印加するための手段を含む、イオントラップまたはイオンガイド
からなる群から選択される。
【0085】
上記好適な実施形態によると、イオントラップまたはイオンガイドは、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドを含み、電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する。
【0086】
イオントラップまたはイオンガイドは、好ましくはイオンをイオントラップまたはイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるためにACまたはRF電圧をイオントラップまたはイオンガイドの複数の電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に印加するように構成および適合される第1のACまたはRF電圧手段をさらに含む。第1のACまたはRF電圧手段は、好ましくは(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有するACまたはRF電圧を印加するように構成および適合される。第1のACまたはRF電圧手段は、好ましくは、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するACまたはRF電圧を印加するように構成および適合される。
【0087】
一実施形態によると、イオントラップまたはイオンガイドは、イオンのビームまたはグループを受け取り、このイオンのビームまたはグループを変換または分割して、複数のまたは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の別々のパケットのイオンが任意の特定の時間にイオントラップまたはイオンガイド内に閉じ込めおよび/または隔離されるよう構成および適合される。各パケットのイオンは、好ましくはイオントラップまたはイオンガイド内に形成される別々の軸方向ポテンシャル井戸内に別々に閉じ込めおよび/または隔離される。
【0088】
質量分析計は、好ましくは、一動作モードにおいて、少なくともいくつかのイオンをイオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を通って、またはそれに沿って上流および/または下流へ駆動するように構成および適合される手段をさらに含む。
【0089】
質量分析計は、少なくともいくつかのイオンをイオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って上流および/または下流へ駆動するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたは1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャル波形をイオントラップまたはイオンガイドを形成する電極に印加するように構成および適合される第1の過渡DC電圧手段をさらに含み得る。
【0090】
好ましさが劣る実施形態によると、質量分析計は、少なくともいくつかのイオンをイオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って上流および/または下流へ駆動するために、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧をイオントラップまたはイオンガイドを形成する電極に印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段をさらに含み得る。
【0091】
質量分析計は、好ましくはイオントラップまたはイオンガイドの少なくとも一部を(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)>1mbar、(viii)0.0001〜100mbar、および(ix)0.001〜10mbarからなる群から選択される圧力に維持するように、一動作モードにおいて、構成および適合される手段をさらに含む。
【0092】
質量分析器は、好ましくは四重極質量フィルタ、飛行時間質量分析器(好ましくは、直交加速飛行時間質量分析器)、イオントラップ、扇形磁場分析器、またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器のいずれかを含む。
【0093】
一実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、または八重極ロッドセットイオンガイドを含み得る。近接するロッドは、好ましくは実質的に同じDC電圧に維持され、ACまたはRF電圧は、好ましくはロッドに印加される。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、イオン入口、イオン出口開口部、および必要に応じてガスを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ導入するためのポートを別にすれば実質的に気密な封入体を形成し得る。ヘリウム、アルゴン、窒素、空気またはメタンなどのガスが衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに導入され得る。
【0094】
特定のクラスの親または前駆体イオンに属し、かつ特徴的な娘もしくはフラグメントイオンまたは特徴的な「ニュートラルロス」によって認識可能な親または前駆体イオンは、従来、「親または前駆体イオン」スキャンまたは「コンスタントニュートラルロス」スキャンの方法によって発見される。
【0095】
「親または前駆体イオン」スキャンまたは「コンスタントニュートラルロス」スキャンを記録するための従来の方法は、三連四重極質量分析計における1つもしくは両方の四重極のスキャン、またはタンデム四重極直交加速飛行時間質量分析計における四重極のスキャン、または他の種類のタンデム質量分析計における少なくとも1つの要素のスキャンを含む。その結果、これらの方法は、機器のスキャンに関連するデューティサイクルが低い。さらにその結果、質量分析計が「親または前駆体イオン」スキャンまたは「コンスタントニュートラルロス」スキャンの記録に占有されている間に、情報が廃棄および喪失され得る。さらなる結果として、これらの方法を質量分析計がガスまたは液体クロマトグラフィ装置から直接溶離する物質を分析する必要がある場合に使用することは適当でない。
【0096】
一実施形態によると、タンデム四重極直交飛行時間質量分析計は、一連の比較的低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルに続いて比較的高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルが記録される方法を使用して候補の親または前駆体イオンが発見されるようなやり方で使用される。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの行ったり来たりを切り換えることは、好ましくは中断されない。その代りに、完全な1セットのデータが好ましくは取得され、次いで、これは、好ましくは後で処理される。フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、それらのそれぞれの溶離時間の一致度によって親または前駆体イオンと対応づけられ得る。このように、候補の親または前駆体イオンは、確定され得、またはそうでなければ、データの取得は中断されず、かつ情報は喪失されずに済む。
【0097】
一旦1回の実験試行が完了すると、次いで、比較的高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルおよび比較的低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルが後処理され得る。親または前駆体イオンは、高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルを実質的に同時に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルと比較し、低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルにおいて高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルと比べてより大きな強度を有するイオンに注目することによって認識され得る。同様に、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルにおいて低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルと比べてより大きな強度を有するイオンに注目することによって認識され得る。
【0098】
一旦いくつかの親または前駆体イオンが認識されると、1サブグループの候補と考えられる親または前駆体イオンがすべての親または前駆体イオンから選択され得る。
【0099】
一実施形態によると、候補と考えられる親または前駆体イオンは、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対するそれらの関係に基づいて選択され得る。所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、例えば、(i)ペプチドからのインモニウムイオン、(ii)リン酸化ペプチドからのリン酸基PO3-イオンを含む官能基、および(iii)特定の分子または特定クラスの分子から切断され、かつその後同定され、したがってその特定の分子または特定クラスの分子の存在を報告するように意図される質量タグからなる群から選択されるイオンを含み得る。
【0100】
親または前駆体イオンは、高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルを使用して所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対する質量クロマトグラムを生成することによって、候補と考えられる親または前駆体イオンとして選抜候補リストに載せられ得る。次いで、質量クロマトグラムにおける各ピークの中心が、対応する所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間とともに決定される。次いで、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークに対して、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直前に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルと、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直後に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルとの両方が予め認識された親または前駆体イオンの存在について調べられる。次いで、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直前に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルおよび所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直後に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの両方に存在すると分かったいずれの予め認識された親または前駆体イオンに対しても質量クロマトグラムが生成され、各質量クロマトグラムにおける各ピークの中心が、対応する候補と考えられる親または前駆体イオン溶離時間とともに決定される。次いで、候補と考えられる親または前駆体イオンは、それらの溶離時間の所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間との一致度にしたがって順位づけされ得、最終候補の親または前駆体イオンのリストが、候補と考えられる親または前駆体イオンを、それらの溶離時間が所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間よりも所定量より多く先行または超える場合に、棄却することによって作成され得る。
【0101】
別の実施形態によると、親または前駆体イオンは、それが所定の質量損失を生じることに基づいて、候補と考えられる親または前駆体イオンとして選抜候補リストに載せられ得る。各低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルに対して、低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトル中に存在する各予め認識された親または前駆体イオンから所定のイオンまたは中性粒子が損失した結果得られ得るターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷値のリストが生成され得る。次いで、低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの直前に得られる高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルと、低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの直後に得られる高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルとの両方が、ターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷値に対応する質量電荷値を有するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの存在について調べられる。次いで、候補と考えられる親または前駆体イオンのリスト(必要に応じて、それらに対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを含む)が、ターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷値に対応する質量電荷値を有するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンが低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの直前の高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルおよび低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの直後の高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの両方において存在することが分かった場合に、親または前駆体イオンをリストに含めることによって作成され得る。次いで、質量損失クロマトグラムが、候補と考えられる親または前駆体イオンおよびそれらに対応するにフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに基づいて生成され得る。質量損失クロマトグラムにおける各ピークの中心が、対応する質量損失溶離時間とともに決定され得る。次いで、各候補と考えられる親または前駆体イオンに対して、質量クロマトグラムが低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルを使用して生成される。また、対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムが、対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対して生成され得る。次いで、候補と考えられる親または前駆体イオン質量クロマトグラムおよび対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心が、対応する候補と考えられる親または前駆体イオン溶離時間および対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間とともに決定される。次いで、最終候補の親または前駆体イオンのリストが、候補と考えられる親または前駆体イオンの溶離時間が対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間から所定量よりも大きく先行または超える場合に、候補と考えられる親または前駆体イオンを棄却することによって作成され得る。
【0102】
一旦最終候補の親または前駆体イオンのリストが作成されると(好ましくは、元々認識された親または前駆体イオンおよび候補と考えられる親または前駆体イオンのいくつかだけを含む)、各最終候補の親または前駆体イオンが同定され得る。
【0103】
親または前駆体イオンの同定は、情報の組み合わせを使用することによってなされ得る。これは、親または前駆体イオンの正確に決定された質量または質量電荷比を含み得る。また、それは、フラグメントイオンの質量または質量電荷比を含み得る。いくつかの場合、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンの正確に決定された質量が好適であり得る。酵素によって消化されたタンパク質からのペプチド生成物の質量または質量電荷比、好ましくは正確な質量または質量電荷比からタンパク質が同定され得ることが知られている。これらは、既知のタンパク質のライブラリから予想されるものと比較され得る。また、この比較結果が1つより多くの可能なタンパク質を示唆する場合、そのペプチドのうちの1つ以上についてそのフラグメントを分析することによって曖昧性が解決され得ることが知られている。
【0104】
上記好適な実施形態によって、酵素によって消化されたタンパク質の混合物が1回の分析によって同定されることが可能となる。すべてのペプチドおよびそれらの関連フラグメントイオンの質量もしくは質量電荷比または正確な質量もしくは質量電荷比は、既知のタンパク質のライブラリと突き合わせて検索され得る。あるいは、ペプチド質量もしくは質量電荷比または正確な質量もしくは質量電荷比は、既知のタンパク質のライブラリと突き合わせて検索され得る。1つより多くのタンパク質が示唆される場合、正しいタンパク質は、各候補タンパク質からの関連ペプチドから予想されるものに一致するフラグメントイオンを求めて検索することによって確定され得る。
【0105】
各最終候補の親または前駆体イオンを同定するステップは、好ましくは、最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間を呼び戻すステップと、最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間の直前に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルおよび最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間の直後に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの両方に存在する予め認識されたフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを含む候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストを生成するステップと、各候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量クロマトグラムを生成するステップと、各候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応する候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間を決定するステップとを含む。次いで、候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、それらの溶離時間の最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間との一致度にしたがって順位づけされ得る。次いで、最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストが、候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの溶離時間が最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間から所定量よりも大きく先行または超える場合に、候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを棄却することによって作成され得る。
【0106】
最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストは、最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間に時間的に最も近くに得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルにおいて存在する近接の親または前駆体イオンのリストを作成することによってさらに絞り込みまたは低減され得る。次いで、リストに含まれる各親または前駆体イオンの質量クロマトグラムが生成され、各質量クロマトグラムの中心が、対応する近接の親または前駆体イオン溶離時間とともに決定される。次いで、最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間よりも近接の親または前駆体イオン溶離時間により接近して対応する溶離時間を有するいずれの最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンも最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストから棄却され得る。
【0107】
最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、それらの溶離時間の一致度にしたがって最終候補の親または前駆体イオンに割り当てられ得、最終候補の親または前駆体イオンに対応づけられたすべての最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンがリストされ得る。
【0108】
また、より大量のデータ処理を含むが、本質的により簡単である別の実施形態が考えられる。一旦親およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンが同定されると、各認識された親または前駆体イオンに対して親または前駆体イオン質量クロマトグラムが生成される。次いで、親または前駆体イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心および対応する親または前駆体イオン溶離時間が決定される。同様に、各認識されたフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムが生成され、次いで、フラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心および対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間が決定される。次いで、認識された親または前駆体イオンのサブセットだけを同定するのではなく、認識された親または前駆体イオンのうちのすべて(または、ほとんどすべて)が同定される。娘、フラグメント、生成物または付加物イオンは、それらのそれぞれの溶離時間の一致度にしたがって親または前駆体イオンに割り当てられ、次いで親または前駆体イオンに対応づけられたすべてのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンがリストされ得る。
【0109】
本発明にとって不可欠ではないが、イオン源によって生成されたイオンは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡される前に、質量フィルタ、好ましくは四重極質量フィルタに通され得る。これは、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンを認識する別のまたはさらなる方法を提供する。フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに移送されない質量電荷比を有する高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルにおけるイオンを認識することによって認識され得る、すなわち、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、質量フィルタの移送ウィンドウ外にある質量電荷比を有するイオンによって認識される。イオンは、質量フィルタによって移送されない場合は、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて生成されたもののはずである。
【0110】
ここで、添付の図面を参照して本発明の種々の実施形態を、あくまで例として、説明する。
【0111】
図1は、本発明の実施形態の模式図である。
【0112】
図2は、試料充填および脱塩の際のバルブスイッチ構成の模式図であり、挿入図は、分析カラムからの試料の脱離を示す。
【0113】
図3Aは、フラグメントまたは娘イオン質量スペクトルを示し、図3Bは、質量電荷比が350より大きい親または前駆体イオンを移送することが可能となった場合の対応する親または前駆体イオン質量スペクトルを示す。
【0114】
図4Aは、種々の質量範囲の時間プロファイルを示す質量クロマトグラムを示す。図4Bは、種々の質量範囲の時間プロファイルを示す質量クロマトグラムを示す。図4Cは、種々の質量範囲の時間プロファイルを示す質量クロマトグラムを示す。図4Dは、種々の質量範囲の時間プロファイルを示す質量クロマトグラムを示す。図4Eは、種々の質量範囲の時間プロファイルを示す質量クロマトグラムを示す。
【0115】
図5は、図4A〜4Eを順に重ねた質量クロマトグラムを示す。
【0116】
図6は、87.04(アスパラギンインモニウムイオン)の質量クロマトグラムを示す。
【0117】
図7は、ADH(配列:ANELLINVK、MW:1012.59)からのフラグメントT5を示す。
【0118】
図8は、β−カゼインのトリプシン消化の低エネルギースペクトルに対する質量スペクトルを示す。
【0119】
図9は、β−カゼインのトリプシン消化の高エネルギースペクトルに対する質量スペクトルを示す。
【0120】
図10は、図9と同じスペクトルを処理および拡大した図である。
【0121】
ここで、図1を参照して好適な実施形態を説明する。好ましくはエレクトロスプレーイオン化源であるイオン源1を好ましくは含む質量分析計6が提供される。イオンガイド2が好ましくはイオン源1の下流に設けられる。四重極ロッドセット質量フィルタ3が好ましくはイオンガイド2の下流かつ衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4の上流に設けられる。一実施形態によると、リフレクトロンを内蔵する直交加速飛行時間質量分析器5が好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4の下流に設けられる。イオンガイド2および質量フィルタ3は、必要に応じて省略され得る。質量分析計6は、好ましくは液体クロマトグラフなどのクロマトグラフ(図示せず)と連結され、イオン源1に入る試料が液体クロマトグラフの溶離剤から取り出され得るようにする。
【0122】
好ましくは、四重極ロッドセット質量フィルタ3は、好ましくは比較的低い圧力(例えば、10-5mbar未満)に維持される真空チャンバに配置される。質量フィルタ3を含むロッド電極が、質量フィルタ3によって移送される質量電荷値の範囲を決定するRFおよびDCポテンシャルの両方を生成する電源に接続される。
【0123】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、好ましくは表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、電子移動解離フラグメンテーションデバイスまたは電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む。
【0124】
一実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含んでもよい。この実施形態によると、多価検体イオンが好ましくは比較的低いエネルギーの電子と相互作用するようにされる。電子は、好ましくは<1eVまたは1〜2eVのエネルギーを有する。電子は、好ましくは比較的強い磁場によって閉じ込められ、かつ方向づけられて、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4内に配置される好ましくはRFイオンガイド内に閉じ込められる検体イオンと衝突するようにする。ACまたはRF電圧が好ましくはRFイオンガイドの電極に印加され、好ましくは半径方向擬ポテンシャル井戸が生成されるようにする。この半径方向擬ポテンシャル井戸は、好ましくはイオンをイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用し、イオンが低エネルギー電子と相互作用し得るようにする。
【0125】
別の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。この実施形態によると、正電荷の検体イオンは、好ましくは負電荷の試薬イオンと相互作用するようにされる。負電荷の試薬イオンは、好ましくはフラグメンテーションデバイス4内に位置するRFイオンガイドまたはイオントラップ中へ注入される。ACまたはRF電圧が好ましくはRFイオンガイドの電極に印加され、半径方向擬ポテンシャル井戸が好ましくは生成されるようにする。半径方向擬ポテンシャル井戸は、好ましくはイオンをイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用し、イオンが負電荷の試薬イオンと相互作用し得るようにする。あるいは、好ましさが劣る実施形態によると、負電荷の検体イオンが正電荷の試薬イオンと相互作用するようにされ得る。
【0126】
別の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。この実施形態によると、イオンは、好ましくは比較的低いエネルギーで表面またはターゲットプレートへ向かって方向づけられる。イオンは、例えば、1〜10eVのエネルギーを有するように構成され得る。表面またはターゲットプレートは、ステンレススチールを含み得、またはより好ましくは表面またはターゲットプレートは、単層のフッ化炭素または炭化水素でコーティングされた金属プレートを含み得る。単層は、好ましくは自己組織化単層を含む。表面またはターゲットプレートは、イオンがフラグメンテーションされない動作モードにおいて表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを通るイオンの走行方向に実質的に平行である平面内に配置され得る。イオンのフラグメンテーションが所望される動作モードにおいて、イオンは、表面またはターゲットプレート上へまたはそこへ向かって偏向され、イオンが表面またはターゲットプレートに対して比較的浅い角度で表面またはターゲットプレートに当たるようにし得る。フラグメントイオンは、好ましくは検体イオンが表面またはターゲットプレートに衝突した結果として生成される。フラグメントイオンは、好ましくは表面またはターゲットプレートに対して比較的浅い角度で表面またはターゲットプレートから外れるか、または離れるように方向づけられる。次いで、フラグメントイオンは、好ましくは、イオンが実質的にフラグメンテーションされない動作モードにおいて、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを通ってまたは通過して移送されるイオンの軌道に好ましくは対応する軌道を想定するように構成される。
【0127】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、イオンが比較的エネルギーの高い電子(例えば、>5eVの電子)と衝突する際にフラグメンテーションされる電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。
【0128】
他の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、赤外放射誘起解離デバイス、紫外放射誘起解離デバイス、熱または温度源フラグメンテーションデバイス、電界誘起フラグメンテーションデバイス、磁場誘起フラグメンテーションデバイス、酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、またはイオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスを含み得る。
【0129】
一実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、イオン源1の一部を形成し得る。例えば、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、インソースフラグメンテーションデバイス、またはイオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。
【0130】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、イオンを閉じ込めるために四重極または六重極ロッドセットイオンガイドを含み得る。イオンガイドは、ヘリウム、アルゴン、窒素、空気またはメタンなどのガスが10-4と10-1mbarとの間の圧力、好ましくは10-3mbar〜10-2mbarの圧力で導入され得る実質的に気密ケーシング(小さなイオン入口および出口孔は別にして)内に封入され得る。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4を構成する電極について適切なRFポテンシャルは、電源(図示せず)によって提供され得る。
【0131】
イオン源1によって生成されたイオンは、好ましくはイオンガイド2によって移送され、チャンバ間孔7を介して質量フィルタ3および衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4を収容する真空チャンバ8中へ渡される。イオンガイド2は、好ましくはイオン源1および真空チャンバ8の中間の圧力に維持される。上記の実施形態において、イオンは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4に入る前に質量フィルタ3によって質量フィルタリングされ得る。しかし、質量フィルタリングは、本発明にとって不可欠のものではない。一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4内でフラグメンテーションまたは反応され、複数のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンが好ましくは生成されるようにする。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4を出たフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4の下流に配置される飛行時間質量分析器5中へ渡る。さらなるイオンガイドおよび/または静電レンズなどの他のイオン光学構成要素(図示せずかつ本明細書中で説明せず)が質量分析計の種々の部分または段の間のイオン移送を最大にするように存在し得る。質量分析計において最適な真空条件を維持するために種々の真空ポンプ(図示せず)が提供され得る。リフレクトロンを内蔵する飛行時間質量分析器5は、好ましくはイオンの通過時間または飛行時間を測定することによって、公知のやり方で動作する。イオンは、好ましくはイオンパケットとして質量分析器5のドリフトまたは飛行時間領域中へ注入される。イオンは、時間的に分離され、それらの質量電荷比は、イオンがドリフトまたは飛行時間領域を通る通過時間または飛行時間を測定することによって決定され得る。
【0132】
制御手段(図示せず)が好ましくはイオン源1、イオンガイド2、四重極質量フィルタ3、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4および飛行時間質量分析器5に対して必要な動作ポテンシャルをそれぞれ提供する種々の電源(図示せず)に対する制御信号を提供する。これらの制御信号は、好ましくは機器の動作パラメータ(例えば、質量フィルタ3を通って移送される質量電荷比および質量分析器5の動作)を決定する。制御手段は、好ましくはコンピュータ(図示せず)からの信号によって制御され得る。また、コンピュータは、取得された質量スペクトルデータを処理するために使用され得る。また、コンピュータは、分析器5から生成された質量スペクトルを表示および格納し、操作者からの命令を受け取り、処理し得る。制御手段は、操作者の介入なしに、種々の方法を行いかつ種々の決定を行うように自動に設定され得るか、または種々の段階で操作者の入力を適宜必要とし得る。
【0133】
制御手段は、好ましくは少なくとも2つの異なるモードの間を行ったり来たりするように衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4を切り換え、変更または改変するように構成される。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4が電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む場合、電子源またはビームは、第1の動作モードにおいてONに切り換えられ得、第2の動作モードにおいてOFFに切り換えられ得る。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4が電子移動解離フラグメンテーションデバイス4を含む場合、第1の動作モードにおいては、試薬イオンが検体イオンを含むイオンガイドまたはイオントラップ中に注入され得、第2の動作モードにおいては、イオンガイドまたはイオントラップ中に試薬イオンが実質的に全く注入されなくてもよい。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4が表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む場合、第1の動作モードにおいては、検体イオンが表面またはターゲットプレート上に衝突または当たるように方向づけられ得、第2の動作モードにおいては、検体イオンが表面またはターゲットプレートに衝突または当たらずに表面またはターゲットプレートを通り過ぎるように真っすぐに方向づけられ得る。
【0134】
制御手段は、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4を上記好適な実施形態にかかるモードの間で、およそ1秒当たり1回切り換える。質量分析計6は、液体またはガスクロマトグラフィによって混合物から分離された溶離剤が提供されているイオン源と併用して設けられる場合、数十分間試行され得る。この期間にわたり、数百個の高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルおよび数百個の低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルが得られ得る。
【0135】
実験試行の終了時に、得られたデータが好ましくは分析され、親または前駆体イオンおよびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4があるモードにあった場合に得られる質量スペクトルにおけるピークの相対強度と、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4が第2のモードにあった場合の時間的に約1秒後に得られる質量スペクトルにおける同じピークの強度との比較に基づいて認識される。
【0136】
一実施形態によると、各親およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対する質量クロマトグラムが好ましくは生成され、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、好ましくはそれらの相対溶離時間に基づいて親または前駆体イオンに割り当てられる。
【0137】
上記好適な方法の利点は、すべてのデータが取得され、その後処理されるので、すべてのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンがそれらのそれぞれの溶離時間の一致度によって親または前駆体イオンと対応づけられ得る。これにより、すべての親または前駆体イオンが、それらが特徴的なフラグメント、生成物、娘もしくは付加物イオンまたは特徴的な「ニュートラルロス」の存在によって発見されたかどうかにかかわらず、それらのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンから同定されることを可能にする。
【0138】
別の実施形態によると、対象の親または前駆体イオンの数を低減するような試みがなされ得る。候補と考えられる(すなわち、まだ最終決定されていない)親または前駆体イオンのリストが、好ましくは対象の所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン(例えば、ペプチドからのインモニウムイオン)を生じさせたかもしれない親または前駆体イオンを探すことによって作成され得る。あるいは、親およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを求めて検索がなされ得る。ここで、親または前駆体イオンは、所定のイオンまたは中性粒子を含む第1の成分およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを含む第2の成分にフラグメンテーションしていた可能性がある。次いで、種々のステップを行って、候補と考えられる親または前駆体イオンのリストをさらに低減/絞り込みして、いくらかの最終候補の親または前駆体イオンを残し得る。次いで、その後に、最終候補の親または前駆体イオンは、親およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの溶離時間を比較することによって同定される。上記からわかるように、2つのイオンは、同様の質量電荷比を有しても、化学構造が異なる場合があり、したがってそのフラグメンテーションは異なる可能性が極めて高いので、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンに基づいて親または前駆体イオンを同定することができる。
【0139】
Micromass社のモジュラーCapLCシステムによって試料を質量分析計中に導入する実験を行った。試料をC18カートリッジ(0.3mm×5mm)上に載せ、30μL/分の流量で0.1%HCOOHを用いて3分間脱塩した(図2を参照)。次いで、10つのポートバルブを切り換えて、ペプチドが分離のための分析カラム上へ溶離するようにした(図2の挿入図を参照)。ポンプAおよびBからのフローを分割して、カラムを通る流量を約200nL/分にした。
【0140】
分析カラムは、Waters(登録商標)社のSymmetryC18(www.waters.com)を詰めたPicoFrit(登録商標)(www.newobjective.com)カラムを使用した。質量分析計中へ直接スプレーするようにこれを設定した。低死容量ステンレススチール継手を介してエレクトロスプレーポテンシャル(約3kV)を液体に印加した。エレクトロスプレー処理を補助するために少量(約5psi)の霧状ガスをスプレー先端の周辺に導入した。
【0141】
Z−spray(登録商標)のナノフローエレクトロスプレーイオン源を取り付けたQ−Time of Flight2(登録商標)の四重極直交加速飛行時間ハイブリッド質量分析計(www.micromass.co.uk)を使用してデータを取得した。質量分析計を正イオンモードにおいて80℃のソース温度および40L/時間の円錐ガス流量で動作させた。
【0142】
機器は、Glu−フィブリノペプチドbの衝突誘起解離(CID)から得られた選択フラグメントイオンを使用した多点較正で較正した。すべてのデータをソフトウェアのMassLynx suiteを使用して処理した。衝突誘起解離フラグメンテーションセルの2つの異なる動作モード間での切り換えが本発明の範囲内に含まれるようには意図されないが、得られる実験結果は本発明の局面を例示する。
【0143】
図3Aおよび3Bは、アルコール脱水素酵素として知られるADHのトリプシン消化のフラグメントまたは娘および親または前駆体イオンスペクトルをそれぞれ示す。図3Aに示すフラグメントまたは娘イオンスペクトルは、ガス衝突セルを約30Vの比較的高いポテンシャルに維持し、ガス衝突セルを通るイオンの著しいフラグメンテーションを生じさせることによって得た。図3Bに示す親または前駆体イオンスペクトルは、低い衝突エネルギー(例えば<5V)で得た。図3Bに表すデータは、質量電荷比が>350であるイオンを移送するように質量フィルタ3を設定して得た。この特定の例における質量スペクトルは、液体クロマトグラフから溶離した試料から得た。質量スペクトルは、十分に迅速かつ時間について互いに接近して得られたので、液体クロマトグラフから溶離した同じ成分に本質的に対応する。
【0144】
図3Aに示す質量スペクトルは、衝突セルを使用し、衝突誘起解離によってイオンをフラグメンテーションして得た。そのようなアプローチは、本発明の範囲内に含まれるようには意図されない。しかし、得られた質量スペクトルおよび質量スペクトルデータの処理に関する以下の記載は、本発明の種々の局面を例示する。
【0145】
図3Bにおいて、親または前駆体イオンスペクトルにおいていくつかの高強度ピーク(例えば、418.7724および568.7813におけるピーク)がある。これらは、図3Aに示す対応のフラグメントイオンスペクトルにおいては実質的に強度がより低い。したがって、これらのピークは、親または前駆体イオンであると認識され得る。同様に、親または前駆体イオンスペクトルよりもフラグメントイオンスペクトルにおいて強度が高いイオン(または、実際には衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流の質量フィルタの動作により親または前駆体イオンスペクトルにおいては存在しない)は、フラグメントイオンであると認識され得る。したがって、図3Aにおける質量電荷値<350を有するすべてのイオンは、それらのイオンが350未満の質量電荷値を有すること、またはより好ましくは、それらのイオンの対応の親または前駆体イオンスペクトルに対する相対強度のいずれかに基づいて、フラグメントイオンであると容易に認識され得る。
【0146】
図4A〜4Eは、3つの親または前駆体イオンおよび2つのフラグメントまたは娘イオンに対する質量クロマトグラム(すなわち、検出されたイオンの強度対取得時間のプロット)をそれぞれ示す。親または前駆体イオンは、質量電荷比が406.2(ピーク「MC1」)、418.7(ピーク「MC2」)および568.8(ピーク「MC3」)であると決定され、2つのフラグメントまたは娘イオンは、質量電荷比が136.1(ピーク「MC4」および「MC5」)および120.1(ピーク「MC6」)であると決定された。
【0147】
親または前駆体イオンピークMC1は、フラグメントまたは娘イオンピークMC5とよく相関すること、すなわち、m/z=406.2である親または前駆体イオンがフラグメンテーションしてm/z=136.1であるフラグメントまたは娘イオンを生成したように見えることが分かる。同様に、親または前駆体イオンピークMC2およびMC3は、フラグメントまたは娘イオンピークMC4およびMC6とよく相関する。しかし、親または前駆体イオンピークMC2およびMC3のどちらがフラグメントまたは娘イオンピークMC4およびMC6のどちらに対応するかを決定することは困難である。
【0148】
図5は、図4A〜4Eのピークを順に重ねたものを示す(異なるスケールで描かれた)。MC2、MC3、MC4およびMC6のピークを注意深く比較すると、親または前駆体イオンMC2およびフラグメントまたは娘イオンMC4がよく相関し、親または前駆体イオンMC3がフラグメントまたは娘イオンMC6とよく相関することが分かる。これは、m/z=418.7である親または前駆体イオンがフラグメンテーションしてm/z=136.1であるフラグメントまたは娘イオンを生成すること、およびm/z=568.8である親または前駆体イオンがフラグメンテーションしてm/z=120.1であるフラグメントまたは娘イオンを生成することを示す。
【0149】
この質量クロマトグラムの相互相関は、操作者によって、またはより好ましくは適切なコンピュータ上で実行する適切なピーク比較ソフトウェアプログラムなどの自動ピーク比較手段によって実施され得る。
【0150】
図6は、Micromass社のQ−TOF(登録商標)質量分析計を使用して得られたHPLC分離および質量分析から抽出されたm/z87.04に対する質量クロマトグラムを示す。アミノ酸であるアスパラギンに対するインモニウムイオンは、m/z値が87.04である。このクロマトグラムは、質量分析計に記録されたすべての高エネルギースペクトルから抽出された。
【0151】
図7は、スキャン番号604に対応する全質量スペクトルを示す。これは、質量分析計上に記録された低エネルギー(または親イオン)質量スペクトルであり、m/zが87.04の質量クロマトグラムにおける最大のピークに対応するスキャン605における高エネルギー(またはフラグメンテーション)スペクトルの隣の低いエネルギースペクトルである。これは、m/zが87.04でのアスパラギンインモニウムイオンに対する親または前駆体イオンが1012.54の質量を有することを示す。なぜなら、m/zが1013.54での一価の(M+H)+イオンおよびm/zが507.27での二価の(M+2H)++イオンを示すからである。
【0152】
図8は、タンパク質β−カゼインのトリプシン消化のQ−TOF(登録商標)質量分析計上に記録された低エネルギー(または親イオン)スペクトルからの質量スペクトルを示す。タンパク質消化生成物は、HPLCによって分離し、次いで質量分析した。質量スペクトルは、MSモードにおいて動作する質量分析計上で記録した。ここで、連続したスペクトルのためにガス衝突フラグメンテーションセルを低および高衝突エネルギーの間で繰り返し切り換えた。
【0153】
図9は、上記図8と同じHPLC分離期間に記録された高エネルギースペクトルからの質量スペクトルを示す。
【0154】
図10は、上記図9と同じ質量スペクトルを処理し、拡大した図を示す。このスペクトルに対して、連続データを処理して、ピークを同定し、ピーク面積に比例した高さを有する線で表示し、かつそれらの質量中心に対応する質量を注釈として付け加えた。m/zが1031.4395でのピークは、ペプチドの二価(M+2H)++イオンであり、m/zが982.4515でのピークは、二価フラグメントイオンである。それは、フラグメントまたは娘イオンのはずである。なぜなら、それは、低エネルギースペクトルには存在しないからである。これらのイオンの質量差は、48.9880である。H3PO4に対する理論質量は、97.9769であり、二価H3PO4++イオンに対するm/z値は、48.9884であり、観察値との差は、ほんの8ppmである。
【0155】
本発明を好適な実施形態を参照して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載されるような発明の範囲を逸脱することなく種々の変更が形態および詳細においてなされ得ることが当業者に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、本発明の実施形態の模式図である。
【図2】図2は、試料充填および脱塩の際のバルブスイッチ構成の模式図であり、挿入図は、分析カラムからの試料の脱離を示す。
【図3】図3Aは、フラグメントまたは娘イオン質量スペクトルを示し、図3Bは、質量電荷比が350より大きい親または前駆体イオンを移送することが可能となった場合の対応する親または前駆体イオン質量スペクトルを示す。
【図4】図4Aは、種々の質量範囲の時間プロファイルを示す質量クロマトグラムを示す。図4Bは、種々の質量範囲の時間プロファイルを示す質量クロマトグラムを示す。図4Cは、種々の質量範囲の時間プロファイルを示す質量クロマトグラムを示す。図4Dは、種々の質量範囲の時間プロファイルを示す質量クロマトグラムを示す。図4Eは、種々の質量範囲の時間プロファイルを示す質量クロマトグラムを示す。
【図5】図5は、図4A〜4Eを順に重ねた質量クロマトグラムを示す。
【図6】図6は、87.04(アスパラギンインモニウムイオン)の質量クロマトグラムを示す。
【図7】図7は、ADH(配列:ANELLINVK、MW:1012.59)からのフラグメントT5を示す。
【図8】図8は、β−カゼインのトリプシン消化の低エネルギースペクトルに対する質量スペクトルを示す。
【図9】図9は、β−カゼインのトリプシン消化の高エネルギースペクトルに対する質量スペクトルを示す。
【図10】図10は、図9と同じスペクトルを処理および拡大した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析の方法であって、
(a)親または前駆体イオンを、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
(b)前記電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1の動作モードにおいて動作させるステップであって、前記第1の動作モードにおいては、前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成する、ステップと、
(c)前記フラグメントまたは娘イオンの質量スペクトルを第1の質量スペクトルとして記録するステップと、
(d)前記電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第2のモードにおいて動作するように切り換え、改変、または変更するステップであって、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
(e)前記第2のモードにおいて動作する前記電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスから現れるか、またはそこを通って移送されてきたイオンの質量スペクトルを第2の質量スペクトルとして記録するステップと、
(f)ステップ(b)〜(e)を複数回繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の動作モードにおいて、前記電子は、(i)<1eV、(ii)1〜2eV、(iii)2〜3eV、(iv)3〜4eV、および(v)4〜5eVからなる群から選択されるエネルギーを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の動作モードにおいて、前記電子は、磁場によって閉じ込められる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
電子源を準備するステップをさらに含む、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の動作モードにおいて、前記電子源は、前記親または前駆体イオンと相互作用するように構成される複数の電子を生成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の動作モードにおいて、前記電子源は、OFFに切り換えられる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
質量分析の方法であって、
(a)親または前駆体イオンを、電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
(b)前記電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1の動作モードにおいて動作させるステップであって、前記第1の動作モードにおいては、前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成する、ステップと、
(c)前記フラグメントまたは娘イオンの質量スペクトルを第1の質量スペクトルとして記録するステップと、
(d)前記電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第2のモードにおいて動作するように切り換え、改変、または変更するステップであって、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
(e)前記第2のモードにおいて動作する前記電子移動解離フラグメンテーションデバイスから現れるか、またはそこを通って移送されてきたイオンの質量スペクトルを第2の質量スペクトルとして記録するステップと、
(f)ステップ(b)〜(e)を複数回繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項8】
質量分析の方法であって、
(a)親または前駆体イオンを、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
(b)前記表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1の動作モードにおいて動作させるステップであって、前記第1の動作モードにおいては、前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレート上に当たる際にフラグメンテーションされる、ステップと、
(c)前記フラグメントまたは娘イオンの質量スペクトルを第1の質量スペクトルとして記録するステップと、
(d)前記表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第2のモードにおいて動作するように切り換え、改変、または変更するステップであって、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
(e)前記第2のモードにおいて動作する前記表面誘起解離フラグメンテーションデバイスから現れるか、またはそこを通って移送されてきたイオンの質量スペクトルを第2の質量スペクトルとして記録するステップと、
(f)ステップ(b)〜(e)を複数回繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記第1の動作モードにおいて、前記親または前駆体イオンは、前記表面またはターゲットプレート上へ方向づけられるか、進路変更されるか、または偏向される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の動作モードにおいて、前記親または前駆体イオンは、前記表面またはターゲットプレート上へ方向づけられず、進路変更されず、または偏向されない、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記表面またはターゲットプレートは、自己組織化単層を含む、請求項8、9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記表面またはターゲットプレートは、フッ化炭素または炭化水素単層を含む、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記表面またはターゲットプレートは、前記第2の動作モードにおいて前記親または前駆体イオンの走行方向に実質的に平行である平面内に構成される、請求項8〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
質量分析の方法であって、
(a)親または前駆体イオンを、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
(b)前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1の動作モードにおいて動作させるステップであって、前記第1の動作モードにおいては、前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応され、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成する、ステップと、
(c)前記フラグメント、娘、生成物または付加物イオンの質量スペクトルを第1の質量スペクトルとして記録するステップと、
(d)前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第2のモードにおいて動作するように切り換え、改変、または変更するステップであって、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
(e)前記第2のモードにおいて動作する衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスから現れるか、またはそこを通って移送されてきたイオンの質量スペクトルを第2の質量スペクトルとして記録するステップと、
(f)ステップ(b)〜(e)を複数回繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを少なくとも前記第1のモードおよび前記第2のモードの間で、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10秒毎に1回、自動的に切り換え、改変、または変更するステップを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
親または前駆体イオンを認識するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
第1の質量スペクトルを実質的に同時に得られた第2の質量スペクトルと比較するステップと、
前記第1の質量スペクトルに比べて前記第2の質量スペクトルにおいてより大きな強度を有するイオンを親または前駆体イオンとして認識するステップと
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
フラグメント、生成物、娘または付加物イオンを認識するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
第1の質量スペクトルを実質的に同時に得られた第2の質量スペクトルと比較するステップと、
前記第2の質量スペクトルに比べて前記第1の質量スペクトルにおいてより大きな強度を有するイオンをフラグメント、生成物、娘または付加物イオンとして認識するステップと
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
すべての前記親または前駆体イオンから1サブグループの候補と考えられる親または前駆体イオンを選択するステップをさらに含む、請求項16〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
候補と考えられる親または前駆体イオンを所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対するそれらの関係に基づいて選択するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第1の質量スペクトルを使用して、前記所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対する所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、
前記所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、
対応する所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間を決定するステップと
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークに対して、
予め認識された親または前駆体イオンの存在について、前記所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直前に得られる前記第2の質量スペクトルおよび前記所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直後に得られる前記第2の質量スペクトルの両方を調べるステップと、
前記所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直前に得られる前記第2の質量スペクトルおよび前記所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直後に得られる前記第2の質量スペクトルの両方に存在が見つかったいずれの予め認識された親または前駆体イオンに対しても、候補と考えられる親または前駆体イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、
各前記候補と考えられる親または前駆体イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、
対応する候補と考えられる親または前駆体イオン溶離時間を決定するステップと
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
候補と考えられる親または前駆体イオンをそれらの溶離時間と前記所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間との一致度にしたがって順位づけするステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
候補と考えられる親または前駆体イオンの溶離時間が前記所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間よりも所定量より大きく先行するかまたは超える場合に、候補と考えられる親または前駆体イオンを棄却することによって前記候補と考えられる親または前駆体イオンから最終候補の親または前駆体イオンのリストを作成するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
候補と考えられる親または前駆体イオンをそれらが所定の質量損失を引き起こすことに基づいて選択するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
各第2の質量スペクトルについて、
前記第2の質量スペクトル中に存在する各予め認識された親または前駆体イオンからの所定のイオンまたは中性粒子の損失によって得られ得るターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷値のリストを作成するステップと、
前記ターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷値に対応する質量電荷値を有するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの存在について、前記第2の質量スペクトルの直前に得られる前記第1の質量スペクトルおよび前記第2の質量スペクトルの直後に得られる前記第1の質量スペクトルの両方を調べるステップと、
前記ターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷値に対応する質量電荷値を有するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンが前記第2の質量スペクトルの直前の前記第1の質量スペクトルおよび前記第2の質量スペクトルの直後の前記第1の質量スペクトルの両方に存在することが見つかった場合に候補と考えられる親または前駆体イオンのリストに親または前駆体イオンを含めることによって、前記候補と考えられる親または前駆体イオンのリストを、必要に応じてそれらに対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンとともに、作成するステップと
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
候補と考えられる親または前駆体イオンおよびそれらに対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに基づいて質量損失クロマトグラムを生成するステップと、
前記質量損失クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、
対応する質量損失溶離時間を決定するステップと
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
各候補と考えられる親または前駆体イオンに対して、
前記第2の質量スペクトルを使用して、候補と考えられる親または前駆体イオンについて前記候補と考えられる親または前駆体イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、
対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンについて前記対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、
前記候補と考えられる親または前駆体イオン質量クロマトグラムおよび前記対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、
対応する候補と考えられる親または前駆体イオンの溶離時間および対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間を決定するステップと
をさらに含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
候補と考えられる親または前駆体イオンの溶離時間が対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間よりも所定量より大きく先行するかまたは超える場合に、候補と考えられる親または前駆体イオンを棄却することによって前記候補と考えられる親または前駆体イオンから最終候補の親または前駆体イオンのリストを作成するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
各最終候補の親または前駆体イオンを同定するステップをさらに含む、請求項25または30に記載の方法。
【請求項32】
各最終候補の親または前駆体イオンに対して、
前記最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間を呼び戻すステップと、
前記最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間の直前に得られる前記第2の質量スペクトルおよび前記最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間の直後に得られる前記第2の質量スペクトルの両方に存在する予め認識されたフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを含む候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストを生成するステップと、
各候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、
各前記候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、
対応する候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間を決定するステップと
さらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンをそれらの溶離時間と前記最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間との一致度にしたがって順位づけするステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの溶離時間が前記最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間よりも所定量より大きく先行するかまたは超える場合に、前記候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを棄却することによって前記候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンから最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストを作成するステップをさらに含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間に時間的に最も近くに得られる第2の質量スペクトルにおいて存在する近接の親または前駆体イオンのリストを生成するステップと、
前記リストにおいて含まれる各親または前駆体イオンの近接の親または前駆体イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、
各近接の親または前駆体イオン質量クロマトグラムの中心を決定するステップと、
対応する近接の親または前駆体イオン溶離時間を決定するステップと
をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストから、前記最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間よりも近接の親または前駆体イオンの溶離時間により接近して対応する溶離時間を有するいずれの最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンも棄却するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンをそれらの溶離時間の一致度にしたがって前記最終候補の親または前駆体イオンに割り当てるステップをさらに含む、請求項34、35または36に記載の方法。
【請求項38】
前記最終候補の親または前駆体イオンに対応づけられたすべての最終候補のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンをリストするステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
各認識された親または前駆体イオンに対して親または前駆体イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、
前記親または前駆体イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、
対応する親または前駆体イオンの溶離時間を決定するステップと、
各認識されたフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対してフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、
前記フラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、
対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間を決定するステップと
をさらに含む、請求項17および19に記載の方法。
【請求項40】
フラグメント、生成物、娘または付加物イオンをそれらのそれぞれの溶離時間の一致度にしたがって親または前駆体イオンに割り当てるステップをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
各親または前駆体イオンに対応づけられたすべてのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンをリストするステップをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
イオン源によって生成されたイオンを、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡すか、またはそこを通って移送させる前に、質量フィルタを通すステップであって、前記質量フィルタは、所定の範囲内にある質量電荷値を有するイオンを実質的に移送し、かつ前記範囲外にある質量電荷値を有するイオンを実質的に減衰させる、ステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
イオンが第1の質量スペクトル中に存在し、かつ前記範囲外の質量電荷値を有する場合に、前記イオンをフラグメント、生成物、娘または付加物イオンとして認識するステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1のおよび第2の質量スペクトルから親または前駆体イオンおよびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを認識するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
各親または前駆体イオンに対して親または前駆体イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、
前記親または前駆体イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、
対応する親または前駆体イオンの溶離時間を決定するステップと、
各フラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対してフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムを生成するステップと、
前記フラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、
対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの溶離時間を決定するステップと
をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
フラグメント、生成物、娘または付加物イオンをそれらのそれぞれの溶離時間の一致度にしたがって親または前駆体イオンに割り当てるステップをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流に質量電荷比移送ウィンドウを有する質量フィルタを準備するステップをさらに含む、請求項44、45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記質量フィルタの移送ウィンドウ外にある質量電荷値を有する第1のスペクトルに存在するイオンを認識することによってフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを認識するステップをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
親または前駆体イオンを前記親または前駆体イオンの質量電荷比に基づいて同定するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
親または前駆体イオンを1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比に基づいて同定するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
1つ以上の親または前駆体イオンの質量電荷比を決定することによってタンパク質を同定するステップであって、前記1つ以上の親または前駆体イオンは、前記タンパク質のペプチドを含む、ステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比を決定することによってタンパク質を同定するステップであって、前記1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、前記タンパク質のペプチドのフラグメントを含む、ステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
データベースと突き合わせて前記1つ以上の親または前駆体イオンおよび/あるいは前記1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比を検索するステップであって、前記データベースは、既知のタンパク質を含む、ステップをさらに含む、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
データベースと突き合わせて前記1つ以上の親または前駆体イオンの質量電荷比を検索するステップであって、前記データベースは、既知のタンパク質を含む、ステップをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
親または前駆体イオンのフラグメンテーションから得られると予想され得るフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの存在を求めて第1の質量スペクトルを検索するステップをさらに含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記所定量は、(i)0.25秒、(ii)0.5秒、(iii)0.75秒、(iv)1秒、(v)2.5秒、(vi)5秒、(vii)10秒、および(viii)半分の高さで測定されたクロマトグラフィピークの幅の5%に対応する時間からなる群から選択される、請求項25、30または34に記載の方法。
【請求項57】
電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、前記電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスは、第1の動作モードおよび第2の動作モードにおいて動作可能であり、前記第1の動作モードにおいては、前記親または前駆体イオンの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2の動作モードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
前記電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを前記第1のおよび第2の動作モードの間で行ったり来たりするように繰り返し切り換え、改変または変更するように構成および適合される制御手段と
を含む質量分析計。
【請求項58】
電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、前記電子移動解離フラグメンテーションデバイスは、第1の動作モードおよび第2の動作モードにおいて動作可能であり、前記第1の動作モードにおいては、前記親または前駆体イオンの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2の動作モードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
前記電子移動解離フラグメンテーションデバイスを前記第1のおよび第2の動作モードの間で行ったり来たりするように繰り返し切り換え、改変または変更するように構成および適合される制御手段と
を含む質量分析計。
【請求項59】
表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、前記表面誘起解離フラグメンテーションデバイスは、第1の動作モードおよび第2の動作モードにおいて動作可能であり、前記第1の動作モードにおいては、前記親または前駆体イオンの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2の動作モードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
前記表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを前記第1のおよび第2の動作モードの間で行ったり来たりするように繰り返し切り換え、改変または変更するように構成および適合される制御手段と
を含む質量分析計。
【請求項60】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、第1の動作モードおよび第2の動作モードにおいて動作可能であり、前記第1の動作モードにおいては、前記親または前駆体イオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応されて、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成し、前記第2の動作モードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを前記第1のおよび第2の動作モードの間で行ったり来たりするように繰り返し切り換え、改変または変更するように構成および適合される制御手段と
を含む質量分析計であって、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
質量分析計。
【請求項61】
イオン源をさらに含む、請求項57〜60のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項62】
前記イオン源は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、および(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択される、請求項61に記載の質量分析計。
【請求項63】
前記イオン源は、パルス化または連続イオン源を含む、請求項61または62に記載の質量分析計。
【請求項64】
前記質量分析器は、(i)四重極質量分析器、(ii)2Dまたは直線四重極質量分析器、(iii)ポールまたは3D四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)扇形磁場質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ質量分析器、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換質量分析器、(xii)飛行時間質量分析器、(xiii)直交加速飛行時間質量分析器、(xiv)軸方向加速飛行時間質量分析器、および(xv)四重極ロッドセット質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択される、請求項57〜63のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項65】
前記イオン源には、所定期間にわたり溶離剤が提供され、前記溶離剤は、液体クロマトグラフィまたはキャピラリー電気泳動によって混合物から分離されてきたものである、請求項61〜64のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項66】
前記イオン源には、所定期間にわたり溶離剤が提供され、前記溶離剤は、ガスクロマトグラフィによって混合物から分離されてきたものである、請求項61〜64のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項67】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流に配置される質量フィルタをさらに含む、請求項57〜66のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項68】
前記質量フィルタは、四重極ロッドセット質量フィルタを含む、請求項67に記載の質量分析計。
【請求項69】
前記質量フィルタは、高域通過質量電荷比フィルタとして動作される、請求項67または68に記載の質量分析計。
【請求項70】
前記質量フィルタは、(i)≧100、(ii)≧150、(iii)≧200、(iv)≧250、(v)≧300、(vi)≧350、(vii)≧400、(viii)≧450、および(ix)≧500からなる群から選択される質量電荷比を有するイオンを移送するように構成される、請求項67、68または69のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項71】
前記質量フィルタは、低域通過または帯域通過質量電荷比フィルタとして動作される、請求項67または68に記載の質量分析計。
【請求項72】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流および/または下流に配置されるイオントラップまたはイオンガイドをさらに含む、請求項57〜71のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項73】
前記イオントラップまたはイオンガイドは、
(i)四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセットまたは8個より多くのロッドを含むロッドセットを含む多重極ロッドセットまたはセグメント化多重極ロッドセットイオントラップまたはイオンガイド、
(ii)開口を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含むイオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドであって、使用時にイオンは、前記開口を通って移送され、前記電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズまたは面積の開口を有するか、またはサイズまたは面積が順次より大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイド、
(iii)平面、プレートまたはメッシュ電極のスタックまたはアレイであって、前記平面、プレートまたはメッシュ電極のスタックまたはアレイは、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含み、前記平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時に概してイオンが走行する平面内に配置される、平面、プレートまたはメッシュ電極のスタックまたはアレイ、および
(iv)イオントラップまたはイオンガイドの長さに沿って軸方向に配置される複数のグループの電極を含むイオントラップまたはイオンガイドであって、各グループの電極は、(a)第1および第2の電極ならびにイオンを前記イオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを前記第1および第2の電極に印加するための手段、および(b)第3および第4の電極ならびにイオンを前記イオンガイド内に第2の半径方向に閉じ込めるためにACまたはRF電圧を前記第3および第4の電極に印加するための手段を含む、イオントラップまたはイオンガイド
からなる群から選択される、請求項72に記載の質量分析計。
【請求項74】
前記イオントラップまたはイオンガイドは、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドを含み、前記電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する、請求項73に記載の質量分析計。
【請求項75】
前記イオントラップまたはイオンガイドは、イオンを前記イオントラップまたはイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるためにACまたはRF電圧を前記イオントラップまたはイオンガイドの前記複数の電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に印加するように構成および適合される第1のACまたはRF電圧手段をさらに含む、請求項72、73または74に記載の質量分析計。
【請求項76】
前記第1のACまたはRF電圧手段は、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有するACまたはRF電圧を印加するように構成および適合される、請求項75に記載の質量分析計。
【請求項77】
前記第1のACまたはRF電圧手段は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するACまたはRF電圧を印加するように構成および適合される、請求項75または76に記載の質量分析計。
【請求項78】
前記イオントラップまたはイオンガイドは、イオンのビームまたはグループを受け取り、前記イオンのビームまたはグループを変換または分割して、複数のまたは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の別々のパケットのイオンが任意の特定の時間に前記イオントラップまたはイオンガイド内に閉じ込めおよび/または隔離されるよう構成および適合され、各パケットのイオンは、前記イオントラップまたはイオンガイド内に形成される別々の軸方向ポテンシャル井戸内に別々に閉じ込めおよび/または隔離される、請求項72〜77のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項79】
一動作モードにおいて、少なくともいくつかのイオンを前記イオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を通って、またはそれに沿って上流および/または下流へ駆動するように構成および適合される手段をさらに含む、請求項72〜78のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項80】
少なくともいくつかのイオンを前記イオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って上流および/または下流へ駆動するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたは1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャル波形を前記イオントラップまたはイオンガイドを形成する前記電極に印加するように構成および適合される第1の過渡DC電圧手段をさらに含む、請求項72〜79のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項81】
少なくともいくつかのイオンを前記イオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って上流および/または下流へ駆動するために、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧を前記イオントラップまたはイオンガイドを形成する電極に印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段をさらに含む、請求項72〜80のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項82】
前記イオントラップまたはイオンガイドの少なくとも一部を(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)>1mbar、(viii)0.0001〜100mbar、および(ix)0.001〜10mbarからなる群から選択される圧力に維持するように、一動作モードにおいて、構成および適合される手段をさらに含む、請求項72〜81のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項83】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセットまたは8より多くのロッドを含むロッドセットを含む、請求項57〜82のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項84】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、イオン入口開口部、イオン出口開口部、および必要に応じてガスを前記筐体へ導入するための手段を別にすれば実質的に気密な封入体を形成する筐体を含む、請求項57〜83のいずれかに記載の質量分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−516903(P2009−516903A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541818(P2008−541818)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004370
【国際公開番号】WO2007/060427
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】