説明

赤外線センサ

【課題】開口率を低下させることなく、高い検出精度を有する赤外線センサを実現できるようにする。
【解決手段】赤外線センサは、行列状に配置された複数の参照画素単位2と、各参照画素単位2と対応して設けられた直列容量素子14とを備えている。参照画素単位2は、出力線30と、出力線30と接地との間にスイッチ素子17を介して接続された参照容量素子13と、出力線30と接地との間にスイッチ素子16を介して接続された複数の検出容量素子12とを有している。直列容量素子14は、出力線30と接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体及び人体から放出される赤外線を検出する赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
人体をはじめとする物体から輻射されている赤外線を検出する赤外線センサは、物体の存在や温度についての情報を非接触で得ることができるため、さまざまな分野において応用が期待されている。特に、複数の赤外線センサをマトリックス状に配置した赤外線センサは、2次元的な赤外線イメージが得られるため、さらに応用範囲の広がりが期待される。このような赤外線センサとしては、冷却やチョッパ回路が不要であることから、電界を印加して誘電率の温度変化を検知する誘電ボロメータが有望である。
【0003】
図12は従来の誘電ボロメータ型の赤外線センサの信号読み出し回路を示している。図12に示すように直列容量素子201と赤外線検出容量素子202とが接続点210を介して直列に接続されている。赤外線検出容量素子202は、素子に入射した赤外線の強度に応じて容量が変化する特性を持ち、赤外線が入射していない場合には、赤外線検出容量素子202と直列容量素子201との容量値は等しくなるように設定されている。
【0004】
また、直列容量素子201及び赤外線検出容量素子202にはそれぞれ駆動用の交流電源204及び交流電源205が接続されており、交流電源204と交流電源205との振幅は同じであり、位相は反転している。
【0005】
接続点210は、トランジスタ203を介して出力端子206に接続されており、信号線Sswによりトランジスタ203をオン状態とすることにより出力端子206に接続点210の電位を取り出すことができる。
【0006】
接続点210の電位は、直列容量素子201及び赤外線検出容量素子202の容量値と、交流電源204及び交流電源205の電圧(振幅)とによって決定される。従って、図19に示すように、赤外線検出容量素子202に赤外線が入射し赤外線検出容量素子202の容量値が増加した場合には、図19のAに示すような出力曲線が得られる。なお、図19において曲線C及び曲線Dはそれぞれ交流電源204及び交流電源205の出力電圧を示す。
【0007】
赤外線検出容量素子202に赤外線が照射されていない場合には、直列容量素子201と赤外線検出容量素子202との容量値は等しくなり、図19のBに示すように接続点210の電位は常に0となる。従って、精度よく赤外線を検出することが可能となる(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2002−365130号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の赤外線センサは、赤外線検出容量素子と直列容量素子とが1個ずつ必要であるため、画素内において赤外線検出容量素子が占める割合である開口率が、直列容量素子がない場合と比べて小さくなるという問題がある。特に、複数の赤外線センサをマトリックス状に配置する場合には、画素の面積の制限が大きく、開口率の低下は大きな問題となる。
【0009】
また、赤外線が入射していない場合の赤外線検出容量素子の容量値と、直列容量素子の容量値とにばらつきがある場合には、出力にオフセットを生じるため測定精度が低下してしまうという問題がある。オフセットによる測定精度の低下を防ぐためにオフセットを補正する回路を設けると、開口率がさらに低下してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、前記従来の問題を解決し、開口率を低下させることなく、高い測定精度を有する赤外線センサを実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明は、赤外線センサを複数の赤外線検出容量素子が共通の直列容量素子と参照容量素子とに接続されている構成とする。
【0012】
具体的に本発明に係る赤外線センサは、それぞれが行列状に配置されており、出力線と、該出力線と接地との間にスイッチ素子を介して接続された参照容量素子及び入射した赤外線の強度に応じた容量値を示す複数の赤外線検出容量素子とを含む複数の参照画素単位と、それぞれが各参照画素単位と対応して設けられ、出力線と電源との間に接続された複数の直列容量素子とを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の赤外線センサによれば、赤外線検出容量素子を含む各参照画素単位と対応して直列容量素子が設けられているため、赤外線検出容量素子に対する直列容量素子の占有面積を小さく抑えることができる。従って、開口率を向上させることができる。また、参照画素単位は、参照容量素子を含むため、参照容量素子を用いることによりオフセットの影響を低減し、測定精度を向上させることが可能である。さらに、複数の赤外線検出容量素子に対して参照容量素子は1つであるため、参照容量素子による開口率の低下も抑えることができる。
【0014】
本発明の赤外線センサにおいて、参照容量素子の容量値と、直列容量素子の容量値と、赤外線が入射していない場合の赤外線検出容量素子の容量値とは等しいことが好ましい。このような構成とすることによりオフセットの影響を確実に低減できる。
【0015】
本発明の赤外線センサでは、参照画素単位において、参照容量素子及び赤外線検出容量素子は1次元状に配列されていることが好ましい。
【0016】
本発明の赤外線センサでは、参照画素単位において、参照容量素子及び赤外線検出容量素子は2次元状に配列されていることが好ましい。
【0017】
本発明の赤外線センサにおいて、各直列容量素子は、赤外線が入射する画素エリアの外側部分に設けられていることが好ましい。
【0018】
本発明の赤外線センサにおいて、各直列容量素子及び各参照容量素子は、赤外線が入射する画素エリアの外側部分に設けられていることが好ましい。このような構成とすることにより、直列容量素子及び参照容量素子による開口率の低下を確実に避けることができる。
【0019】
本発明の赤外線センサにおいて、複数の参照容量素子は、画素エリアを挟んで両側にそれぞれ設けられた第1の参照容量素子形成領域又は第2の参照容量素子形成領域にそれぞれ形成され、第1の参照容量素子形成領域に形成された参照容量素子と同一の参照画素単位に含まれる各赤外線検出容量素子は、画素エリアの第1の参照容量素子形成領域側に形成されており、第2の参照容量素子形成領域に形成された参照容量素子と同一の参照画素単位に含まれる各赤外線検出容量素子は、画素エリアの第2の参照容量素子形成領域側に形成されていることが好ましい。また、この場合において、各直列容量素子は、画素エリアの外側部分における各直列容量素子と対応する参照容量素子と同じ側に形成されていることが好ましい。このような構成とすることにより。直列容量素子及び参照容量素子と赤外線検出容量素子との距離を短くすることができるので、測定精度を向上去ることが可能となる。
【0020】
本発明の赤外線センサにおいて、参照容量素子と出力線との間に接続されたスイッチをオン状態として、直列容量素子と参照容量素子との間に所定の電圧を印加した際の出力線の電位を基準電位とし、所定の赤外線検出容量素子と出力線との間に接続されたスイッチをオン状態として、直列容量素子と所定の赤外線検出容量素子との間に所定の電圧を印加した際の出力線の電位を検出電位とし、基準電位と検出電位との電位差を、所定の赤外線検出容量素子に入射した赤外線の強度を示す出力信号として出力することが好ましい。このような構成とすることにより、オフセットの影響を低減できるため、測定精度を向上させることが可能となる。
【0021】
本発明の赤外線センサにおいて、参照容量素子と出力線との間に接続されたスイッチをオン状態として、直列容量素子と参照容量素子との間に所定の電圧を印加した際の出力線の電位を基準電位とし、所定の赤外線検出容量素子と出力線との間に接続されたスイッチをオン状態として、直列容量素子と所定の赤外線検出容量素子との間に所定の電圧を印加した際の出力線の電位を検出電位とし、基準電位と検出電位との電位差を、所定の赤外線検出容量素子に入射した赤外線の強度を示す出力信号として出力し、参照容量素子の周囲に配置され、参照容量素子と同一の参照画素単位に含まれる複数の赤外線検出容量素子の出力信号を用いて、参照容量素子が配置された部分に入射した赤外線の強度を算出することが好ましい。このような構成とすることにより、データの欠落を抑えることができるため、鮮明な赤外画像を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の赤外線センサによれば、開口率を低下させることなく、高い検出精度を有する赤外線センサを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は第1の実施形態に係る赤外線センサのレイアウトを示している。図1に示すように赤外線が入射する画素エリア1には、複数の参照画素単位2が2次元のマトリックス状に配置されている。画素エリア1の外側には、後で述べる直列容量素子及び周辺回路等が設けられている。
【0024】
各参照画素単位2は、複数の赤外線検出容量素子12と、1つの参照容量素子13とを含んでおり、赤外線検出容量素子12と参照容量素子13とは合わせて2次元のマトリックス状に配置されている。
【0025】
図2は本実施形態の赤外線センサにおける1つの参照画素単位2とその周辺回路とを抜き出して、回路構成を示している。図2に示すように参照画素単位2は、1個の参照容量素子13と8個の赤外線検出容量素子12とが、3行3列のマトリックス状に配置されている。
【0026】
本実施形態において、参照容量素子13はマトリックスの中央である2行2列目に設けられている。参照容量素子13の一方の端子は接地されており、他方の端子は、トランジスタである参照容量素子制御スイッチ17を介して、2行目の出力線30と接続されている。各赤外線検出容量素子12の一方の端子は接地されており、他方の端子は、トランジスタである赤外線検出容量素子制御スイッチ16を介して各赤外線検出容量素子12が設けられている行の出力線30とそれぞれ接続されている。
【0027】
各行の出力線30は、共通に接続され、出力ノード41が形成されている。また、各行の出力線30は、直列容量素子制御スイッチ15を介して共通に接続され、直列容量素子14の一方の端子と接続されている。各出力線30にそれぞれ設けられたトランジスタである直列容量制御スイッチ15は独立して制御可能であり、各直列容量制御スイッチ15の制御端子は制御線36A、制御線36B及び制御線36Cとそれぞれ接続されている。
【0028】
直列容量素子14の容量値と、参照容量素子13の容量値と、赤外線検出容量素子12に赤外線が入射していない場合の容量値とは、実質的に等しくなるように設定されている。つまり、各容量値は既知の製造方法により製造した場合の誤差の範囲で等しい。
【0029】
直列容量素子14の他方の端子は、電源線35と接続されている。また、直列容量素子14と各直列容量素子制御スイッチ15との間には、バイアス制御スイッチ18を介してバイアス端子45が接続されており、所定のバイアス電圧を印加することができる。バイアス制御スイッチ18は、バイアス制御線37により駆動される。
【0030】
参照容量素子制御スイッチ17の制御端子は、参照容量素子制御線32と接続されており、各赤外線検出容量素子制御スイッチ16の制御端子は、列ごとに設けられた赤外線検出容量素子制御線31とそれぞれ接続されている。
【0031】
参照容量素子制御線32は、論理積回路22の出力端子と接続されており、論理積回路22の各入力端子は、参照容量素子選択線33及び論理和回路21の出力端子とそれぞれ接続されている。論理和回路21の各入力端子は、3段の垂直シフトレジスタ20の1段目の出力端子42、2段目の出力端子43及び3段目の出力端子44とそれぞれ接続されている。
【0032】
各列に設けられた赤外線検出容量素子制御線31は、列ごとに設けられた論理積回路23の出力端子とそれぞれ接続されており、各論理積回路23の入力端子の一方は、赤外線検出容量素子選択線34と接続され、他方は垂直シフトレジスタ20の出力端子42、出力端子43及び出力端子44のいずれか1つと接続されている。
【0033】
以下に、本実施形態の赤外線センサの動作について説明する。図3は図2に示した参照画素単位2及び周辺回路の動作タイミングを示している。
【0034】
まず、期間T1の期間t1において垂直シフトレジスタ20の1段目の出力端子42の電圧が“H”レベルとなる。これにより論理和回路21の入力端子に“H”レベルの信号が印加されるため論理和回路21の出力は“H”レベルとなる。
【0035】
t1において、参照容量素子選択線33の電圧も“H”レベルとなるため、論理積回路22の出力と接続された参照容量素子制御線32の電圧は“H”レベルとなる。これにより参照容量素子制御スイッチ17が導通状態となり、参照容量素子13と2行目の出力線30とが接続されれる。また、制御線36Bの電圧が“H”レベルとなるから2行目の直列容量素子制御スイッチ15が導通状態となる。これにより、直列容量素子14と参照容量素子13とが接続される。
【0036】
期間taにおいてバイアス制御線37に“H”レベルの電圧が印加されるためバイアス制御スイッチ18が導通状態となる。これにより、バイアス電圧が直列容量素子14と参照容量素子13との接続点に印加される。従って、出力ノード41にバイアス電圧(Vbias)が出力される。
【0037】
次に期間tbにおいて電源線35が“L”レベルから“H”レベルに立ち上がる。これにより直列容量素子14と参照容量素子13との中間の電位が出力ノード41に出力される。直列容量素子14と参照容量素子13の容量値は等しいため、出力ノード41には、電源線35の電圧の2分の1の電圧にバイアス電位が加算された電位であるV1が出力される。このV1を基準電位として用いる。
【0038】
期間T1の期間t2において参照容量素子選択線33の電圧が“L”レベルとなるため論理積回路22の出力が“L”レベルとなり参照容量素子制御スイッチ17が非導通状態となる。代わって、赤外線検出容量素子選択線34の電圧が“H”レベルとなるため、論理積回路23の出力が“H”レベルとなる。従って、1列目の各赤外線検出容量素子制御スイッチ16がそれぞれ導通状態となり、1列目に設けられた各赤外線検出容量素子12と各出力線30とがそれぞれ接続されれる。また、制御線26Aの電圧が“H”レベルとなるため、1行目の直列容量素子制御スイッチ15が導通状態となる。これにより直列容量素子14と1行1列目の赤外線検出容量素子12とが接続される。
【0039】
期間taにおいてバイアス制御線37に“H”レベルの電圧が印加されるためバイアス制御スイッチ18が導通状態となる。これにより、バイアス電圧が直列容量素子14と参照容量素子13の接続点に印加される。従って、出力ノード41にバイアス電圧(Vbias)が出力される。
【0040】
次に、期間tbにおいて電源線35が“L”レベルから“H”レベルに立ち上がる。これにより直列容量素子14と参照容量素子13との中間の電位が出力ノード41に出力される。赤外線検出容量素子12の容量値は入射する赤外線の強度によって異なるため、出力ノード41には、赤外線検出容量素子12に入射する赤外線の強度に応じて、電源線35の電圧の2分の1よりも小さい電圧にバイアス電圧が加算された電位であるV2が出力される。このV2を検出電位とし、基準電位V1と検出電位V2との差を求め、これを1行1列目の赤外線検出容量素子12に入射した赤外線の強度を示す出力信号として出力する。
【0041】
以下、同様にして期間t3において得られた基準電位V1と期間t4において得られた検出電位から1行2列目の赤外線検出容量素子12に入射した赤外線の強度が得られ、期間t5において得られた基準電位V1と期間t6において得られた検出電位から1行3列目の赤外線検出容量素子12に入射した赤外線の強度が得られる。同様に期間T2では2行目の各赤外線検出容量素子に入射した赤外線の強度が得られ、期間T3では3行目の各赤外線検出容量素子に入射した赤外線の強度が得られる。
【0042】
本実施形態の赤外線センサは、直列容量素子を8個の赤外線検出容量素子に対して共通に設けている。このため直列容量素子の占有面積を大幅に削減することができる。また、このように直列容量素子を共通とすることにより、直列容量素子を赤外線の入射領域である画素エリアの外に設けることが可能となる。これにより、直列容量素子による開口率の低下の低下をほとんどなくすことができる。
【0043】
誘電型ボロメータの場合、直列容量素子の容量値と赤外線検出容量素子の容量値との差によって赤外線の強度を検出している。このため、直列容量素子の容量値と赤外線検出容量素子における赤外線が入射していない場合の容量値とを一致させる必要がある。直列容量素子を複数の赤外線検出容量素子に共通とする場合には、各赤外線検出容量素子同士の容量値も一致させる必要がある。しかし、赤外線検出容量素子の製造する際には、膜厚等のばらつきが必ず生じるため、各赤外線検出容量素子の容量値には必ず一定のばらつきが含まれる。このため、単純に直列容量素子を共通とした場合には、赤外線検出容量素子ごとに異なるオフセット電位が発生するので、測定精度が低下してしまう。しかし、本実施形態の赤外線センサにおいては、参照容量素子を設け参照容量素子と直列容量素子とを用いて基準電位を求め、基準電位と検出電位との差を用いて赤外線の強度を検出している。このため、赤外線検出容量素子同士の容量値のばらつきの影響を抑え、精度よく赤外線の強度を検出することができる。
【0044】
また、本実施形態の赤外線センサは、参照容量素子も8個の赤外線検出容量素子に対して共通に設けている。従って、参照容量素子による開口率の低下も、小さく抑えることができる。
【0045】
また、以下のようにして参照容量素子が形成されている部分における赤外線の強度を擬似的に求めることも可能である。
【0046】
図4は1つの3行3列のマトリックスに構成された参照画素単位2のレイアウトを擬似的に示している。この場合に、参照容量素子13は、3行3列のマトリックスの中心である2行目の2列目に配置されている。8個の赤外線検出容量素子12によって検出された赤外線の強度をそれぞれa、b、c、d、e、f、g、hとすると、参照容量素子13の部分における赤外線強度を、例えば隣接する行方向の2個、列方向の2個の4個の赤外線検出素子の平均として(b+d+e+g)/4として求めればよい。
【0047】
また、隣接する8個の赤外線検出素子12の平均として(a+b+c+d+e+f+g+h)/8としてもよく、隣接する赤外線検出素子12に重み付け平均をして、行方向の2個、列方向の2個の4個の赤外線検出素子12の係数をα、対角方向の4個の赤外線検出素子11の係数をβとし、{α×(b+d+e+g)+β×(a+c+f+h)}/8として求めてもよい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の赤外線センサは、検出精度を低下させることなく、開口率を向上させることができる。
【0049】
なお、本実施形態において参照画素単位を構成するマトリックスのサイズを3行3列としたが、マトリックスのサイズは任意に変更してかまわない。また、参照容量素子をマトリックスの中央となる2行目の2列目に配置したが、この位置も任意に変更してかまわない。
【0050】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図5は第2の実施形態に係る赤外線センサのレイアウトを示している。図5に示すように赤外線が入射する画素エリア1には、複数の参照画素単位2が2次元のマトリックス状に配置されている。各参照画素単位2は、複数の赤外線検出容量素子12と、1つの参照容量素子13とを含んでいる。赤外線検出容量素子と参照容量素子とは、合わせて1次元の配列を構成している。
【0051】
図6は本実施形態の赤外線センサの参照画素単位2のうち参照画素単位2A、参照画素単位2B及び参照画素単位2Cとその周辺回路とを抜き出して回路構成を示している。図6に示すように各参照画素単位2は、1個の参照容量素子13と赤外線検出容量素子12a及び赤外線検出容量素子12bとが、1次元の配列を構成している。
【0052】
参照画素単位2Aに含まれる参照容量素子13の一方の端子は接地されており、他方の端子は、参照容量素子制御スイッチ17を介して、出力線30Aと接続されている。赤外線検出容量素子12a及び赤外線検出容量素子12bの一方の端子はそれぞれ接地されており、他方の端子は、赤外線検出容量素子制御スイッチ16a及び赤外線検出容量素子制御スイッチ16bを介して出力線30Aとそれぞれ接続されている。
【0053】
同様にして参照画素単位2Bに含まれる参照容量素子13と赤外線検出容量素子12a及び赤外線検出容量素子12bとは出力線30Bと接続され、参照画素単位2Cに含まれる参照容量素子13と赤外線検出容量素子12a及び赤外線検出容量素子12bとは出力線30Cと接続されている。
【0054】
出力線30A、出力線30B及び出力線30Cの一方の端は直列容量素子14の一方の端子とそれぞれ接続されている。各直列容量素子14の他方の端子は、電源線35とそれぞれ接続されている。また、出力線30A、出力線30B及び出力線30Cには、バイアス制御スイッチ18を介してバイアス端子45がそれぞれ接続されており、所定の電圧を印加することができる。各バイアス制御スイッチ18は、バイアス制御線37により駆動される。
【0055】
各参照容量素子制御スイッチ17の制御端子は、参照容量素子制御線32とそれぞれ接続されている。各赤外線検出容量素子制御スイッチ16aの制御端子は、赤外線検出容量素子制御線31Aとそれぞれ接続されており、各赤外線検出容量素子制御スイッチ16bの制御端子は、赤外線検出容量素子制御線31Bとそれぞれ接続されて
参照容量素子制御線32は、論理積回路22の出力端子と接続されており、論理積回路22の各入力端子は、参照容量素子選択線33及び論理和回路21の出力端子とそれぞれ接続されている。論理和回路21の各入力端子は、2段の垂直シフトレジスタ20の1段目の出力端子42及び2段目の出力端子43とそれぞれ接続されている。
【0056】
赤外線検出容量素子制御線31Aは、論理積回路23の出力端子と接続されており、論理積回路23の入力端子の一方は、赤外線検出容量素子選択線34と接続され、他方は垂直シフトレジスタ20の出力端子42と接続されている。赤外線検出容量素子制御線31Bは、論理積回路23の出力端子と接続されており、論理積回路23の入力端子の一方は、赤外線検出容量素子選択線34と接続され、他方は垂直シフトレジスタ20の出力端子43と接続されている。
【0057】
以下に、本実施形態の赤外線センサの動作について説明する。図7は図2に示した参照画素単位2及び周辺回路の動作タイミングを示している。
【0058】
まず、期間T1の期間t1において垂直シフトレジスタ20の1段目の出力端子42の電圧を“H”レベルとする。これにより論理和回路21の入力端子に“H”レベルの信号が印加されるため論理和回路21の出力は“H”レベルとなる。
【0059】
t1において、参照容量素子選択線33の電圧も“H”レベルとなるため、論理積回路22の出力と接続された参照容量素子制御線32の電圧は“H”レベルとなる。これにより各参照容量素子制御スイッチ17が導通状態となる。これにより、各直列容量素子14と各参照容量素子13とが接続される。
【0060】
期間taにおいてバイアス制御線37に“H”レベルの電圧が印加されるため各バイアス制御スイッチ18が導通状態となる。これにより、バイアス電圧(Vbias)が各直列容量素子14と各参照容量素子13との接続点に印加される。従って、出力線30A、出力線30B及び出力線30Cの電圧はいずれもVbiasとなる。
【0061】
次に期間tbにおいて電源線35が“L”レベルから“H”レベルに立ち上がる。これにより直列容量素子14と参照容量素子13との中間の電位が出力ノード41に出力される。直列容量素子14と参照容量素子13の容量値は等しいため、出力線30A、出力線30B及び出力線30Cには、電源線35の電圧の2分の1の電圧にバイアス電位が加算された電位であるV1がそれぞれ出力される。このV1を基準電位として用いる。
【0062】
期間T1の期間t2において参照容量素子選択線33の電圧が“L”レベルとなるため論理積回路22の出力が“L”レベルとなり参照容量素子制御スイッチ17が非導通状態となる。代わって、赤外線検出容量素子選択線34の電圧が“H”レベルとなるため、論理積回路23の出力が“H”レベルとなる。従って、赤外線検出容量素子制御線31Aの電圧が“H”レベルとなり、各赤外線検出容量素子制御スイッチ16aが導通状態となる。これにより各直列容量素子14と各赤外線検出容量素子12aとが接続される。
【0063】
期間taにおいてバイアス制御線37に“H”レベルの電圧が印加されるためバイアス制御スイッチ18が導通状態となる。これにより、バイアス電圧が直列容量素子14と参照容量素子13の接続点に印加される。従って、出力線30A、出力線30B及び出力線30Cの電圧はいずれもVbiasとなる。
【0064】
次に、期間tbにおいて電源線35が“L”レベルから“H”レベルに立ち上がる。これにより各直列容量素子14赤外線検出容量素子12aとの中間の電位が出力線30A、出力線30B及び出力線30Cにそれぞれ出力される。赤外線検出容量素子12aの容量値は入射する赤外線の強度によって異なるため、出力線30A、出力線30B及び出力線30Cには、赤外線検出容量素子12aに入射する赤外線の強度に応じて、電源線35の電圧の2分の1よりも小さい電圧にバイアス電圧が加算された電位であるV2が出力される。このV2を検出電位とし、基準電位V1と検出電位V2との差を求め、これを赤外線検出容量素子12aに入射した赤外線の強度として出力する。
【0065】
同様にして期間T2において、赤外線検出容量素子12bに入射した赤外線の強度を検出することができる。
【0066】
本実施形態の赤外線センサは、参照画素単位内において赤外線検出容量素子と参照容量素子とを1次元に配列している。このため、第1の実施形態の赤外線センサと比べて赤外線検出容量素子の読み出しを高速に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態の赤外線センサにおいても、第1の実施形態の赤外線センサと同様に、参照容量素子が形成されている部分における赤外線の強度を擬似的に求めることも可能である。この場合には、図8に示すように参照容量素子の両側の2個の赤外線検出容量素子の検出値を平均すればよい。また、重み付け平均をしてもよい。
【0068】
また、本実施形態においては、参照容量素子を2個の赤外線検出容量素子の間に配置する構成としたが、図9に示すように参照容量素子の位置を変更してもかまわない。
【0069】
なお、本実施形態において、参照画素単位を2個の赤外線検出容量素子と1個の参照容量素子とにより構成したが、参照画素単位に含まれる赤外線検出容量素子の数は任意に増やすことができる。
【0070】
(第2の実施形態の一変形例)
以下に、本発明の第2の実施形態の一変形例について図面を参照して説明する。図10は本変形例に係る赤外線センサのレイアウトを示している。図10に示すように本変形例の赤外線センサは、画素エリア1には画素参照単位2のうちの赤外線検出容量素子12の部分のみが形成されており、参照容量素子13は画素エリア1の外側に設けられた参照容量素子形成領域3に形成されている。このようにすることにより、参照容量素子13により開口率が低下することを防ぐことができる。
【0071】
このように、参照容量素子13を画素エリア1の外に設けられた参照容量素子形成領域3に配置することにより、画素エリア1にはすべて赤外線検出素子12が配置される。従って、画素エリア1の全体について入射する赤外線の強度が得られる。なお、回路構成及び動作については、第2の実施形態の赤外線センサとほぼ同じであるため説明を省略する。
【0072】
また、図11に示すように参照容量素子形成領域3を画素エリア1の両側に配置してもよい。このようにすることにより、画素エリア1に設けることができる参照画素単位2の数を増やすことができる。従って、画素エリア1に含まれる赤外線検出容量素子12の数を減らすことなく、1つの参照画素単位2に含まれる赤外線検出容量素子12の数を減らすことができる。その結果、読み出し速度を向上させることが可能となる。
【0073】
また、画素エリア1の一方の側にのみ参照容量素子13を設けた場合と比べて、赤外線検出容量素子12と参照容量素子13との距離を短くすることができるので、検出精度をより向上させることができる。
【0074】
この場合、直列容量素子14も参照容量素子13と同じ側に設けることにより、直列容量素子14と参照容量素子13及び検出容量素子12との距離を短くすることができるので、検出精度をより向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の赤外線センサは、開口率を低下させることなく、高い検出精度を有する赤外線センサを実現でき、物体及び人体から放出される赤外線を検出する赤外線センサ等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る赤外線センサを示すレイアウト図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る赤外線センサの参照画素単位及び周辺回路部分を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る赤外線センサの動作を示すタイミング図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る赤外線センサの参照容量素子部分の赤外線強度を算出する方法を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る赤外線センサを示すレイアウト図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る赤外線センサの参照画素単位及び周辺回路部分を示す回路図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る赤外線センサの動作を示すタイミング図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る赤外線センサの参照容量素子部分の赤外線強度を算出する方法を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る赤外線センサの参照画素単位及び周辺回路部分の別の例を示す回路図である。
【図10】本発明の第2の実施形態の一変形例に係る赤外線センサを示すレイアウト図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の一変形例に係る赤外線センサの別の例を示すレイアウト図である。
【図12】従来例に係る赤外線センサを示す回路図である。
【図13】従来例に係る赤外線センサの駆動信号を示すグラフである。
【符号の説明】
【0077】
1 画素エリア
2 参照画素単位
2A 参照画素単位
2B 参照画素単位
2C 参照画素単位
3 参照容量素子形成領域
12 赤外線検出容量素子
12a 赤外線検出容量素子
12b 赤外線検出容量素子
12c 赤外線検出容量素子
13 参照容量素子
14 直列容量素子
15 直列容量素子制御スイッチ
16 赤外線検出容量素子制御スイッチ
16a 赤外線検出容量素子制御スイッチ
16b 赤外線容量素子制御スイッチ
16c 赤外線検出容量素子制御スイッチ
17 参照容量素子制御スイッチ
18 バイアス制御スイッチ
20 垂直シフトレジスタ
21 論理和回路
22 論理積回路
23 論理積回路
30 出力線
30A 出力線
30B 出力線
30C 出力線
31 赤外線検出容量素子制御線
31A 赤外線検出容量素子制御線
31B 赤外線検出容量素子制御線
31C 赤外線検出容量素子制御線
32 参照容量素子制御線
33 参照容量素子選択線
34 赤外線検出容量素子選択線
35 電源線
37 バイアス制御線
41 出力ノード
42 垂直シフトレジスタ出力
43 垂直シフトレジスタ出力
44 垂直シフトレジスタ出力
45 バイアス端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが行列状に配置されており、出力線と、該出力線と接地との間にスイッチ素子を介して接続された参照容量素子及び入射した赤外線の強度に応じて容量値が変化する複数の赤外線検出容量素子とを含む複数の参照画素単位と、
それぞれが前記各参照画素単位と対応して設けられ、前記出力線と電源との間に接続された複数の直列容量素子とを備えていることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
前記参照容量素子の容量値と、前記直列容量素子の容量値と、赤外線が入射していない場合の前記赤外線検出容量素子の容量値とは等しいことを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記参照画素単位において、前記参照容量素子及び赤外線検出容量素子は1次元状に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記参照画素単位において、前記参照容量素子及び赤外線検出容量素子は2次元状に配列されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線センサ。
【請求項5】
前記各直列容量素子は、赤外線が入射する画素エリアの外側部分に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項の記載の赤外線センサ。
【請求項6】
前記各直列容量素子及び各参照容量素子は、赤外線が入射する画素エリアの外側部分に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項の記載の赤外線センサ。
【請求項7】
前記複数の参照容量素子は、前記画素エリアを挟んで両側にそれぞれ設けられた第1の参照容量素子形成領域及び第2の参照容量素子形成領域にそれぞれ形成され、
前記第1の参照容量素子形成領域に形成された参照容量素子と同一の参照画素単位に含まれる前記各赤外線検出容量素子は、前記画素エリアの前記第1の参照容量素子形成領域側に形成されており、
前記第2の参照容量素子形成領域に形成された参照容量素子と同一の参照画素単位に含まれる前記各赤外線検出容量素子は、前記画素エリアの前記第2の参照容量素子形成領域側に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の赤外線センサ。
【請求項8】
前記各直列容量素子は、前記画素エリアの外側部分における前記各直列容量素子と対応する前記参照容量素子と同一の側に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の赤外線センサ。
【請求項9】
前記参照容量素子と前記出力線との間に接続されたスイッチをオン状態として、前記直列容量素子と前記参照容量素子との間に所定の電圧を印加した際の前記出力線の電位を基準電位とし、
所定の前記赤外線検出容量素子と前記出力線との間に接続されたスイッチをオン状態として、前記直列容量素子と前記所定の赤外線検出容量素子との間に所定の電圧を印加した際の前記出力線の電位を検出電位とし、
前記基準電位と前記検出電位との電位差を、前記所定の赤外線検出容量素子に入射した赤外線の強度を示す出力信号として出力することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の赤外線センサ。
【請求項10】
前記参照容量素子と前記出力線との間に接続されたスイッチをオン状態として、前記直列容量素子と前記参照容量素子との間に所定の電圧を印加した際の前記出力線の電位を基準電位とし、
所定の前記赤外線検出容量素子と前記出力線との間に接続されたスイッチをオン状態として、前記直列容量素子と前記所定の赤外線検出容量素子との間に所定の電圧を印加した際の前記出力線の電位を検出電位とし、
前記基準電位と前記検出電位との電位差を、前記所定の赤外線検出容量素子に入射した赤外線の強度を示す出力信号として出力し、
前記参照容量素子の周囲に配置され、前記参照容量素子と同一の参照画素単位に含まれる前記複数の赤外線検出容量素子の出力信号を用いて、前記参照容量素子が配置された部分に入射した赤外線の強度を算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の赤外線センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−114089(P2007−114089A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306852(P2005−306852)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】