説明

走査型フィールド効果が軽減されたイオン注入

イオン注入システムと走査システムが提供され、それにおいて、焦点調整用構成要素が、イオンビームに対するスキャナーのゼロフィールド効果を減少させるために、上記イオンビームの焦点特性を調整するために提供される。上記焦点特性は、ワークピースを横切って走査された上記イオンビームのプロファイルが一定になるために、又は、ワークピースを横切るイオン注入が一定になるために調整され得る。方法は、ワークピースに走査されたイオンビームを提供するために開示されており、走査されたイオンビームを生成するために上記イオンビームを走査する工程と、上記イオンビームに対するスキャナーのゼロフィールド効果に関連してイオンビームの焦点特性を調整する工程と、上記イオンビームを上記ワークピースへ向き付ける工程とを含んでいることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ねイオン注入システムに関する。より具体的には、イオンビーム走査のゼロフィールド効果を軽減することにより、ワークピースを横切って走査されたイオンビームを一定(consistency)にするシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス及び他の製品の製造において、イオン注入は、半導体ウェハー、表示パネル、及び他のワークピースに、電気的な構成要素に対するある電気的特性を生成する不純物をドープするために用いられる。イオン注入器又はイオン注入システムは、n型又はp型のドープ領域を生成するように、ある領域におけるひずみを修正するように、又は、ワークピースにおいてパッシベーション層を形成するようにイオンビームを用いてワークピースを取り扱う。半導体をドープするために用いる場合、イオン注入システムは、所望の不純物マテリアルを生成するように選択されたイオン種を注入する。ここで、アンチモン、砒素、又は燐のようなソースマテリアルから生成された注入イオンは、結果的に半導体ウェハー内にn型の不純物領域を生成し、ホウ素、ガリウム、又はインジウムのようなソースマテリアルから生成された注入イオンは、結果的に半導体ウェハー内にp型の不純物マテリアル領域を生成する。イオンビームは、ソースマテリアルからのイオンを注入するように概ね半導体ウェハー表面を横切って走査され、走査用構成要素により典型的に走査は行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6903350号明細書(2005年6月7日公開)
【特許文献2】米国特許出願公開第11/784709号明細書(2009年6月23日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走査されたビームを伴うシングルウェハーイオン注入システムにおいて、均一性の補正は、走査スピードを変化させることにより典型的に達成されている。これには、高帯域のスキャナーが必要であるが、磁気的な走査システムにおいて、とりわけ渦電流損失が要因のため、その要求を満たすことは難しくなり得る。磁気的及び電気的なシステムの両方においては、スキャナー領域におけるビーム中性化は、走査用フィールドがゼロを通過するにつれて著しく変化し得る。このビーム中性化の変化は、ビームサイズ及びビーム電流を変化させ得る。これらの変化は、ゼロフィールド効果(ZFE)と呼ばれる。ZFEは典型的に小さなものであり、ビームは典型的にスキャナーを通してかなり高いエネルギーであるので、中電流システム及び高エネルギーシステムにおいては、さほど問題にはならない。磁気的走査の高電流ビームラインにおいては、ZFEは、ビーム電流の激しい変化、及び比較できる程の大きさの縮小と共に、劇的なものになり得る。結果として、これによりスキャナーの動的な範囲に重い要求が課され、更にこれには洗練された補正アルゴリズムが必要になる。それ故、二極化走査の簡素化を利用しつつ、ZFEを縮小させないための簡単な方法が必要なのである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下に、本発明を基本的に理解するための概要を示す。この概要は、広範囲の概観ではない。そして、本発明の鍵又は重要な要素を特定することを意図するものでもなく、本発明の範囲を限定するものでもない。むしろ、その主たる目的は、後述する詳細な説明に対する前置きとして、簡単な形での一又は複数の概念を単に提示することである。
【0006】
上述されているように、本発明は、イオン注入システムに関しており、特に、ワークピースを横切る注入が均一になるようにイオンビームのフォーカシングを改善させることに関している。上記注入システムは、例えば、磁場、電場、又はその両方の組合せのようなフィールドを生成することにより、イオンビームを湾曲させたり操舵させたりする走査部を備えている。スキャナーのフィールドは、ワークピースを横切ってイオンビームを走査する、時間変化する角偏向を誘導するためにイオンビームと相互作用する。それはまた、ビームが走査される際に、ビームの焦点特性(focal properties)を大きく変化させる、時間変化するレンズとして振舞う。しかしながら、スキャナーのフィールドは、ビームのイオンに直接的に力を掛けるというよりはむしろ、ビームの有する空間電荷の中性化における変化を通じて相互作用するという意図していない、恐らくは望まない方法により、イオンビームの特性にもまた影響を及ぼし得る。一般に、これらの効果は、走査用フィールド(電場、磁場、又はその両方)の大きさがゼロに向かうにつれて起こり、「ゼロフィールド効果」と呼ばれる。
【0007】
本発明は、ZFEの悪影響を回避し得る構成を有するイオン注入システムについて述べている。走査されたイオンビームをワークピースへ供給するためのイオン注入システム、走査システム、及び方法が開示されており、それにおいて、イオンビームの一又は複数の焦点特性が、走査メカニズムのZFEを補償するために調整又は補正される。本発明は、イオン注入のどのようなタイプに適用されても有益であり、走査方向に沿った入射ビームの変化を軽減させるために有用に用いられ得る。その結果、注入されたワークピースにおける注入の一様性/均一性が改善される。
【0008】
上記の目的及び関連する目的の達成に向けて、(本発明は、以下に詳述され、請求項において示される特徴を含む)以下の記述及び添付の図面は、本発明のある実例的な側面及び実施例を詳述する。これらは、本発明の一又は複数の側面が用いられた様々な方法のごく一部を示すものである。他の側面、利点、及び優れた特徴は、添付の図面と共に考慮すれば、以下の詳細な説明により明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明に係るスキャナー及び焦点調整(focus adjustment)用構成要素を備える走査システムを有する例示的なイオン注入システムを示す概略図である。
【図1B】図1Bの注入システムのスキャナー、及び幾つかの例示的な走査されたイオンビームを示す部分的上面図である。
【図1C】図1A及び図1Bのスキャナーにおける走査コイルの電流波形を示すグラフである。
【図1D】図1A及び図1Bのシステムにおけるワークピースの幾つかの不連続な点に同時に衝突している走査されたイオンビームを示す斜視図である。
【図1E】ワークピースを横切るイオンビームの走査を示す側面図である。
【図1F】図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーの焦点特性による、ワークピースに衝突する際のイオンビーム幅の変化、及び、図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーによる空間電荷の中性化の変化を示す部分的な正面図である。
【図1G】図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーの焦点特性による、ワークピースに衝突する際のイオンビーム幅の変化、及び、図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーによる空間電荷の中性化の変化を示す部分的な正面図である。
【図1H】図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーの焦点特性による、ワークピースに衝突する際のイオンビーム幅の変化、及び、図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーによる空間電荷の中性化の変化を示す部分的な正面図である。
【図1I】図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーの焦点特性による、ワークピースに衝突する際のイオンビーム幅の変化、及び、図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーによる空間電荷の中性化の変化を示す部分的な正面図である。
【図1J】図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーの焦点特性による、ワークピースに衝突する際のイオンビーム幅の変化、及び、図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーによる空間電荷の中性化の変化を示す部分的な正面図である。
【図1K】図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーの焦点特性による、ワークピースに衝突する際のイオンビーム幅の変化、及び、図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーによる空間電荷の中性化の変化を示す部分的な正面図である。
【図1L】図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーの焦点特性による、ワークピースに衝突する際のイオンビーム幅の変化、及び、図1A及び図1Bのイオン注入システムにおけるスキャナーによる空間電荷の中性化の変化を示す部分的な正面図である。
【図2A】ソレノイドを備えている、本発明に係る焦点調整用構成要素を示す簡略化された側面図である。
【図2B】イオンビームパスの周囲に配置された電磁石を有する4重極マグネットを備えている、本発明に係る他の焦点調整用構成要素を示す簡略化された側面図である。
【図2C】図1A及び図1Bにおける、スキャナーの走査用コイルの電流波形及び焦点調整用構成要素の電流波形を示すグラフである。
【図2D】イオン注入システムにおけるワークピースの幾つかの不連続な点に同時に衝突している走査されたイオンビームを示す斜視図である。
【図2E】例示的な焦点調整用構成要素の動作を通して、イオン注入システムにおけるワークピースの幾つかの不連続な点に同時に衝突する際の、より一定であるイオンビーム幅を示す部分的な正面図である。
【図2F】例示的な焦点調整用構成要素の動作を通して、イオン注入システムにおけるワークピースの幾つかの不連続な点に同時に衝突する際の、より一定であるイオンビーム幅を示す部分的な正面図である。
【図2G】例示的な焦点調整用構成要素の動作を通して、イオン注入システムにおけるワークピースの幾つかの不連続な点に同時に衝突する際の、より一定であるイオンビーム幅を示す部分的な正面図である。
【図2H】例示的な焦点調整用構成要素の動作を通して、イオン注入システムにおけるワークピースの幾つかの不連続な点に同時に衝突する際の、より一定であるイオンビーム幅を示す部分的な正面図である。
【図2I】例示的な焦点調整用構成要素の動作を通して、イオン注入システムにおけるワークピースの幾つかの不連続な点に同時に衝突する際の、より一定であるイオンビーム幅を示す部分的な正面図である。
【図2J】例示的な焦点調整用構成要素の動作を通して、イオン注入システムにおけるワークピースの幾つかの不連続な点に同時に衝突する際の、より一定であるイオンビーム幅を示す部分的な正面図である。
【図2K】例示的な焦点調整用構成要素の動作を通して、イオン注入システムにおけるワークピースの幾つかの不連続な点に同時に衝突する際の、より一定であるイオンビーム幅を示す部分的な正面図である。
【図2L】図1A及び図1Bの例示的な焦点調整用構成要素におけるイオンビームパスの互いに反対側に配置された2つの例示的な焦点調整用電極を示す簡略化された斜視図である。
【図2M】イオンビームパスを取り囲んでいるアインツェルレンズを備えている、本発明に係る焦点調整用構成要素を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一又は複数の側面が、図面を参照しながら述べられている。ここで、同様の要素に対しては、終始、同様の符号を概ね用いるものとし、様々な構造は、本来のスケールで書かれている必要はない。以下の記述において、説明をするにあたり、本発明の一又は複数の側面を完全に理解するように、多数の特徴的な詳細が記述されている。しかしながら、これらの特徴的な詳細が少なかったとしても、本発明の一又は複数の側面が実行されることは、当業者にとっては明白であろう。他には、本発明の一又は複数の側面を容易に記述できるように、よく知られている構造及びデバイスが、ブロック図の形式によって示されている。
【0011】
上述のように、本発明は、半導体ウェハーのようなワークピースに不純物を注入するためのイオン注入システムに関する。これらのシステムは、一般的に、不純物種のイオンを含んでいるイオンビームを生成し、様々なフィルタリングを通して該イオンビームを向き付け、該イオンビームの特性を規定し精製するメカニズムを実行し、ワークピースが配置されているエンドステーションに該イオンビーム向き付けることにより機能する。該イオンビームは、該ワークピースの所望の部分を該イオンビームに露出し、それ故、該ワークピースの所望の部分に不純物を注入するように、該ワークピースの表面を横切って走査される。
【0012】
図1Aには、スキャナー136を有する例示的な低エネルギーイオン注入システム又はイオン注入器110、及び、焦点調整又は調整装置135が示されている。図1Aに示されているように、イオン注入システム110は、ターミナル112、ビームラインアセンブリ114、及びエンドステーション116を備えている。ターミナル112におけるイオン源120は、引出しイオンビーム124を生成するように電源120により動力付けられている。ここで、ソース120は、ソースチェンバーからイオンを引出し、その結果、引出しイオンビーム124を生成するための一又は複数の引出し電極(図示なし)を備えている。図1Aのイオン注入システム114には、特定の位置にある、ビームラインに沿って一定の順序に配置されている多くの構成要素が描かれているが、一般の当業者ならば、様々な位置及び順序に配置されている構成要素を備えている、本発明に係る多くのシステムを発明するであろう。
【0013】
ビームラインアセンブリ114は、ソース120の付近に入口を有し、出口開口部134のある出口を有するビームガイド132を備えている。該ビームラインアセンブリは、引出しイオンビーム124を受け入れ、結果的に得られるイオンビームが所望の電荷質量比を有する(又は、所望の比の範囲内にある)イオンのみを含むように、電荷質量比に基づいてイオンビームのイオンを選択的にフィルタリングする双極性の磁場を生成する質量分析器126を更に備えている。結果的に得られる、質量分析されたイオンビーム124は、リゾルビング開口部134を通過し、エンドステーション116におけるワークピース130に向き付けられる。構造を形成及び具体化する様々なビームがイオンビーム124を維持するために生成されてもよい。それらの構造は、ビーム124が、エンドステーション116において支えられる一又は複数のワークピース130へのビームパスに沿って輸送される際に通過する内部空洞又は通路の境界を規定する。
【0014】
ビームラインアセンブリ114は、スキャナー136、焦点調整用装置135、及び平行化器138を有する走査システムを更に備えている。スキャナー136は、イオンビーム124を受け入れ、幾つかの実施形態においては、スキャナーに供給されたイオンビームは、比較的狭いプロファイル(例えば、図示されたシステム110における「ペンシル」ビーム)にフォーカシングされる。上述のように、スキャナー136は、イオンビームの近傍に電場又は磁場(又はその両方)を生成することによりイオンビーム124を修正する。スキャナー136は、ビーム124を拡散し、少なくともワークピース130と同じ幅であるX軸方向の有効幅を有する細長い「リボン」プロファイル(例えば、走査されたビーム124)になるように、ビーム124をX軸方向に前後に走査する。リボンビーム124は、該リボンビームをZ軸方向に略平行な(例えば、ワークピース表面に略垂直な)ワークピース130に向き付ける平行化器138を通過する。なお、角度を持った注入とすることも考えられる。図1の記述において説明されているように、スキャナー136により生成され、イオンビーム124を走査するために用いられるフィールドは、ZFEのような望まれない効果を生じ得る。これは、ワークピース130を横切る一定ではないイオン放射(注入イオン濃度)、又はワークピース130を横切る一定ではないビームサイズ及び瞬間的なビーム電流密度を導き出す。上記走査システムの焦点調整用構成要素135は、イオンビーム124に対するスキャナー136のZFEに関してイオンビーム124の焦点特性を調整するように、そして焦点調整されたイオンビーム124を生成するように構成されてもよい。上記焦点特性は、上記イオンビームに固有の焦点特性、例えば、ビームサイズ、ビーム電流、及び/又はイオンドーズ量の何れでもよい。焦点調整用構成要素135は、結果的に、上記ビームがワークピース130を横切って走査される際に測定されている焦点特性が一定になり得る。
【0015】
注入器110には、異なるタイプのエンドステーション116が用いられてもよい。例えば、「バッチ」式のエンドステーションは同時に複数のワークピース130を支えることができる。ここで、全てのワークピース130が完全に注入されるまで、ワークピース130は、イオンビームのパスを通過しながら動かされる。一方、「枚葉」式エンドステーションにおいては、注入のためのビームパスに沿って単一のワークピース130を支える。ここで、各ワークピース130が次のワークピース130の注入が始まるまでに完全に注入されるように、複数のワークピース130は1度に1つずつ連続的に注入される。図示されているエンドステーション116は、注入のためのビームパスに沿った単一のワークピース130(例えば、ビーム124からのイオンを注入される半導体ウェハー、表示パネル、又は他のワークピース)を支える「枚葉」式エンドステーションである。
【0016】
どちらの場合においても、ビームプロファイリング用構成要素152は、ワークピース位置のごく近傍に位置しており、イオンビームプロファイルのプロファイル特性を測定するように構成されている。イオンビーム124は、断続的にプロファイラーパス158を横切り、その結果、走査されたイオンビームのプロファイルの一又は複数の特性を測定する一又は複数のプロファイラー156を備えているビームプロファイリング用構成要素152を通過する。図示されているビームプロファイリング用構成要素152において、プロファイラー156は、走査されたビームの電流密度を測定するためのファラデーカップのような電流密度センサーを備えている。上記電流密度センサーは、走査されたビームに対し略直行するように移動し、こうして典型的にリボンビームの幅を横切る。ビームプロファイリング用構成要素152は、そこからの命令信号を受信し、そこへ測定値を与えるための制御システム154に実行可能に結合している。ビームプロファイリング用構成要素152は、米国特許出願公開第11/784709号明細書(発明の名称「ION BEAM SCANNING CONTROL METHODS AND SYSTEMS FOR ION IMPLANTATION UNIFORMITY(イオン注入の均一性に対するイオンビーム走査制御方法及びシステム)、出願日:2007年4月9日」)に記述されているように実行されてもよい。なお、その内容は本明細書に組み込まれるものとする。制御システム154は、ワークピース130における、より一定である磁束プロファイルを提供するようにスキャナー136の走査波形を調整する。もしビームの特性が、ワークピースを横切って実質的に変化してしまうのならば、制御システム154は、上記プロファイルをより一定なものにし得る走査波形を生成することは出来ないであろう。例えば、これはスキャナー136に制御信号に従うための動的範囲がない場合に生じ得る。
【0017】
焦点調整用構成要素135は、イオンビーム124に対するスキャナー136のZFEに関連してイオンビーム124の一又は複数の焦点特性を調整する。多くの実施において、ワークピースを横切る全ての点にとってワークピースにおいては、一定のビームサイズを保つことが好ましく、焦点調整用構成要素135は、この目的のために用いられてもよい(例えば、米国特許第6,903,350号明細書を参照)。また、ビームサイズは、ワークピースを横切る磁束密度の一定になるように修正される。従って、制御システム154は、スキャナーが(つまり、スキャナーの動的範囲の内側において)従い得る制御信号を生成してもよい。図2Aから図2Lの例においては、焦点調整用構成要素135は、質量分析されたイオンビーム124のごく近傍に、イオンビーム124の焦点特性を調整するように動作する、時間変化する磁場を生成する。
【0018】
所望の焦点調整をイオンビーム124に誘導するために、焦点調整用構成要素135は、イオンビーム124のごく近傍に他のフィールド、例えば、電場を生成することにより、イオンビーム124の焦点特性を調整してもよい。焦点調整用構成要素135により生成されたフィールドの強度は、イオンビーム124に対するスキャナー136のZFEに関連して調整されてもよく、多くの技術がこの関係にとって有用であろう。実施形態の一組において、焦点調整用構成要素135により誘導された焦点調整は、スキャナー136のフィールドの強度に関するものである。例えば、走査用フィールドが予め決められた閾値よりも低く略ゼロに近づくとき、調整用フィールドは、走査用フィールドに対し逆比の関係を含み、こうして、結果として調整用構成要素により増大され得る。実施形態の他の組において、焦点調整用構成要素135により誘導された焦点調整は、スキャナー136により誘導されたイオンビーム124の角偏向、及び/又はワークピース130を伴うイオンビーム124の入射角に関するものである。実施形態の更に他の組において、焦点調整用構成要素135により誘導された焦点調整は、ワークピース130が露出されるイオンビーム124のプロファイルに関するものである。これらの実施形態において、イオンビーム124のプロファイルは、イオンビーム124のプロファイルを測定するように構成されているイオンビームプロファイリング用構成要素をイオンビーム124のパスに配置することにより測定されてもよい。
【0019】
図1Bから図1Eを参照すると、一対の磁極片、ビームパスの上部及び下部にある一対のコイル36a及び36b、及び、図1Cの波形図60に図示されているようにコイル36a及び36bに交流電流を供給する電流源50を有する磁気的なスキャナー36が図1Bに図示されている。コイル36a及び36bに与えられた時間変化する電流により、時間変化する磁場が磁極間のビームパスを横切って生成され、これによりビーム24は、走査方向(例えば、図1A、図1B、図1Dから図1LにおけるX軸方向)に沿って湾曲される又は偏向される(例えば、走査される)。走査磁場が上部磁極から底部磁極への向きであるとき(例えば、図1cの時間「a」から時間「e」において)、ビーム24の正に荷電されたイオンには、X軸上にて負の方向に横方向の力がかかる。磁場がゼロのとき(例えば、図1Cの時間「g」において)、ビーム24は修正されずにスキャナー35を通過する。磁場が底部磁極から上部磁極への向きであるとき(例えば、図1cの時間「i」から時間「m」において)、ビーム24の正に荷電されたイオンには、X軸上にて正の方向に横方向の力がかかる。上述のように、スキャナー36は、磁気的である必要はない。高エネルギーな低電流ビームにとっては、静電気的なスキャナーがより有効であり得る。
【0020】
図1Bには、スキャナー36を通過する際に角偏向を誘導された、走査されたビーム24が、幾つかの例示的な不連続な時点において示されている。図1Dには、図1Cにそれぞれ対応する時間においてワークピースに衝突しているビーム24が示されている。図1Dにおける走査されて平行化されたイオンビーム24aは、図1Cの時間「a」において与えられたコイル電流に対応する。そして、同様に、ビーム24cから24mは、X軸上ワークピース30を横切った略水平な単一の走査として図1Cに示されている時間「c」、「e」、「g」、「i」、「k」、及び「m」にそれぞれ対応している時間における走査電流として図1Dに示されている。
【0021】
図1Eには、ワークピース30を横切っている、ビーム24の簡略化された走査パスが示されている。ここで、スキャナー36によるX軸走査の間、ワークピース30は、機械的な動作(図示なし)によりY軸に沿って動かされる。この結果、ビーム24は、ワークピース30の露出している表面全面に与えられる。
【0022】
スキャナー36による走査の前に、イオンビーム24は、典型的に、ゼロではない大きさXの幅及びゼロではない大きさYの高さをそれぞれ有する。ビームの大きさX及びYの一方又は両方は、輸送中に変化し得る。例えば、ビーム24は、ワークピース30に向けてビームパスに沿って輸送されるにつれて、ビーム24は、ビームの特性を変化させ得る様々な電場及び/又は磁場、及びデバイスに出くわす。加えて、正に荷電されたビームイオンの相互反発を含んでいる空間電荷効果は、ビームを発散させる(例えば、増大した大きさX及びY)傾向があり、その解決策はない。
【0023】
スキャナー36の結合構造及び操作フィールドには、イオンビーム24に関するあるフォーカシング特性が含まれている。一般に、上記スキャナーには、ビームが偏向される角度に依存している可変の焦点長がある。より大きな角度においては、焦点長がより短くなる。このように、ワークピースの端に近いビーム(例えば、図1Dの24a及び24m)は、走査による偏向の角度が小さい又はゼロである、走査用フィールドの中心に近いビーム(例えば、図1Dの24e、24g、及び24i)よりも、小さく、より集束される傾向がある。加えて、走査用フィールドがゼロに近いとき、ゼロフィールド効果(ZFE)と呼ばれる状態を形成するので、ビームサイズ及びビーム電流の両方は変化し得る。この効果は、スキャナーの電場又は磁場によりビームから排除されるはずの電子が、スキャナーに入り込んだり、スキャナーにおけるビームに残留したりすることにより(全体又は一部において)引き起こされる。この効果は、ビーム電流を増大させ、ビームサイズを減少させ得る。加えて、電子は、先行及び/又は後続の極低強度フィールドに比べて、電流及びビームサイズに対する突然の必ずしも大きくはない変化をゼロフィールドの期間において引き起こしつつ、ゼロに非常に近い走査用フィールドにおいてビームから放出され得る。同様の効果が、電気的スキャナーのような他の走査システムにおいてもまた生じ得るが、その効果は、磁気的走査システムにおいてしばしば明白である。
【0024】
図1Fから図1Lには、走査例24a、24c、24e、24g、24i、24k、及び24mにそれぞれ対応している入射ビーム24が示されている。ビーム24は、X軸方向にワークピース30を横切って走査されるので、スキャナー36のX軸方向におけるフォーカシングは変化し、ビーム24の24cが中心に向かって動くにつれて横方向のフォーカシングは減少するに至り、24eのビームサイズにおいては段々と増加するという結果をもたらす。スキャナー36により誘導された偏向角がゼロに近づくにつれて、スキャナー36により生成されたフィールドの強度もまたゼロに近づき、ZFEが、イオンビーム24gのプロファイルにおける横方向の減少、及び、電流における増加として現れる。スキャナー36がゼロを通過し越えるにつれて、ZFEは減少し、ビームサイズは比較的大きなものへと戻る。イオンビーム24がスキャナー36の反対の最大値に到達するにつれて、低電流イオンビーム24iは、より小さなサイズの24k及び24mに段々と集束される。上述のように、図1Fから図1Lの一連の流れにより示されている、ゼロに漸近したフィールド値における、ビームサイズの増加及び電流の減少は、さほど速くはない。
【0025】
集積回路デバイス及び他の製品の製造において、ワークピース30を横切りながらドーパント種を均一に注入すること、又は既定された分布に従って不均一に注入すること、そして、ワークピース30を横切るビーム特性(例えば、サイズ、形状、及び角度)を均一にすることが好ましい。ZFEにより生じた特性の変化は、走査軸に沿って(例えば、X軸方向において)望んでいない一定ではない注入を誘導し得る。一例において、走査波形を調整することにより、そのような不均一性に対する対処を行ってもよい。不適当な磁束のある場所において、上記スキャナーは、ワークピースにおける、過多な磁束を受けてしまうであろう部分にて、イオンビームがより速く移動するように、そして、ワークピースにおける、過少な磁束を受けてしまうであろう部分にて、イオンビームがより遅く移動するように、ワークピースを横切るビームの横断率を調整すべくプログラムされる。しかしながら、上述のように、ZFEの影響は、上記スキャナーのフィールドの強度がゼロに近づくにつれて、突然現れ得る。そして、走査システムは、ZFEを軽減させるために必要な横断率の調整を操作できなくなることもあり得る。
【0026】
ZFEを補償するための他の技術は、イオンビームに対するスキャナーのZFEに関連して、(例えば)イオンビームのごく近傍に電場を生成するようなことにより、イオンビームの焦点特性を調整することを伴う。この技術に係るイオン注入システムは、イオンビームを生成するように構成されたイオン源、電荷質量比に基づいて該イオンビームのイオンを選択的にフィルタリングするように構成されている質量分析器、イオンビームを走査し、該イオンビームをワークピースに向き付けるように構成されているスキャナー、及び、該イオンビームに対する該スキャナーのZFEに関連して、該イオンビームの焦点特性を調整するように構成されている焦点調整用構成要素を備えていてもよい。この技術は、ワークピースを横切る注入イオン濃度を一定にするために、スキャナーにより誘導されたZFEを補償するために用いられてもよい。また、この技術は、ワークピースを横切ってイオンビームが走査されている際に、イオンビームプロファイルを一定にするために、スキャナーにより誘導されたZFEを補償するために用いられてもよい。
【0027】
図2A及び図2Bを参照すると、焦点調整用構成要素135は、焦点調整されたイオンビーム124の焦点特性を調整するように、質量分析されたイオンビーム126の近傍に一又は複数の時間変化する磁場を生成する。その結果、ZFEやスキャナーの角度依存した焦点長のような、スキャナー136にまつわる一又は複数の時間変化する焦点特性を補償する。図2Aには、時間変化する磁場を生成するように作動する、ビームパスを取り囲んでいる巻き線を有するソレノイド172を備えている焦点調整用構成要素135のような一実施例が示されている。ここで、電源171が、上記ソレノイドに時間変化する電流を供給するように上記ソレノイドに結合されている。電源171は、ソレノイド172に時間変化する電流を供給する。ここで、電源171は、周波数がスキャナーの2倍のパルスであり、図2Cに示されているようにスキャナーにおけるゼロ電流にほぼ対応するように位相が調整されたパルスを、パルス波形に与え得る。他の波形は、スキャナー及び他のビームライン用構成要素からの他の効果を相殺するように、図示されたパルストレインに重ねられ得る。例えば、周波数がスキャナーの2倍の三角波は、スキャナーの角度依存したフォーカシングの影響を相殺するように用いられ得る。これは、示された波形に加えられ、三角波とパルスとが結合された結合波を形成するであろう。
【0028】
図2Bには、他の例示的な実施例が示されている。ここでは、焦点調整用構成要素135は、ビームパスに沿って配置されている4つの電磁石182aから182dを有する4重極マグネット182、及び、時間変化する電流を電磁石182aから182dに供給する電源181を備えている。上述のソレノイドに関して、図2A及び図2Bにおける電源171及び181により供給される電磁石電流は、周波数が走査周波数の2倍のパルスであり、ZFEの影響を相殺するように同期された連続したパルスのような、走査方向軸に沿った走査されたイオンビーム124の位置に関連する強度を有する一又は複数の時間変化する磁場を生成するように調整される。
【0029】
電磁石182aから182dを通過する電流の極性が、磁気的なN極が磁石182a及び128cからビーム124に向いているように、そして、磁気的なS極が磁石182b及び182dからビーム124に向くように存在するとき、4重極182はY軸方向におけるビーム124の分散、及びX軸方向における集束を生じるであろう。電源181からの電流が、磁石182b及び182dにおいて磁気的なN極を生成し、磁石182a及び182cにおいて磁気的なS極を生成するとき、ビーム124はY軸方向において集束し、X軸方向において発散する。反対の極性を有する4重極のペア(ダブレット)、又は極性が交互である3つの4重極(トリプレット)を用いて、X軸方向及びY軸方向の両方向における集束又は発散が生じてもよい。図示された例において、電源181は、周波数が走査周波数の2倍の時間変化するコイル電流を作り出すように、概ね図2Cに示されているように時間変化する電圧を電磁石182aから182dのコイルに供給する(図2Cにおける交流の波形V1)。ここで、時間変化する磁場の強度は、走査方向軸に沿った走査されたイオンビーム124の位置に関連している。上記4重極は、電気的な4重極であってもよい。その動作は、磁極を電極に換え、電流を電圧に換えることにより類似したものとなる。
【0030】
更に、焦点調整は、イオン注入システム多くの特性に関連して有用に変化され得る。図示された例において、焦点調整は、焦点特性の強度とスキャナーのフィールドの強度との間に存在する関係のように、走査電流V1に関連するものである。この関係は、2倍の周波数にて直線状であったり、(図2Cに示されているように)パルス状であったり、対数関数状であったり、階段状等であったりし得る。他の例として、焦点調整の強度は、スキャナーにより誘導されたイオンビームの偏向角、及び/又はワークピースに対するイオンビームの入射角に関連し得る。
【0031】
図2A及び図2Bにおける電源171及び181により供給された電磁石電流は、周波数が走査周波数の2倍の連続したパルスのように、例えば、そして図2Cに示されているように、各パルスが走査用フィールドのゼロとの交点に対応するように、スキャナーのフィールドに関連する強度を有する一又は複数の時間変化する磁場を生成するように調整されてもよい。
【0032】
その後、結果として焦点調整されたビーム124が、ビームパスに沿って焦点調整用構成要素135の下流側にあるスキャナー136に供給される。その後、スキャナー136は、ビームパスに対して略垂直である走査方向軸(例えば、図示されているシステム110におけるX軸方向)に沿って焦点調整されたイオンビームを走査する。ここで、スキャナー136は、図2Cに示されているように、走査周波数にてビーム124を走査する。図示された実施例において、スキャナー136は、図2Cの波形図160において示されているように交流電流をコイル136bに供給する電流源152、及び、ビームパスの上下に磁極片136a及びコイル136bのペアを備えている。
【0033】
コイル136bを通過する時間変化する電流は、磁極136a間のビームパスを横切る時間変化する磁場を生成し、それにより、ビーム124は、リボン状の走査されたイオンビーム124を平行化器138(図1Aを参照)に供給するように、走査方向を横切って湾曲されたり偏向されたりする(例えば、走査されたりする)。走査用フィールドが、上部磁極から底部磁極への方向に存在するとき(例えば、図2Dの時間「a」及び時間「e」において)、ビーム124の正に荷電されたイオンには、X軸の負の方向に横向きの力が掛かる。ここで、走査用フィールドが逆方向に存在するとき、その逆もまた然り。上記スキャナーは、磁場よりもむしろ電場を用いてもよく、本発明における動作は、実質的には同様である。
【0034】
図2Cに示されているように、例示的な焦点調整用波形V1は、焦点調整用電磁石182aから182dに供給される時間変化する電流である。ここで、フォーカシング量(例えば、ビーム124が焦点調整用構成要素135から出る際の集束量)は、調整用電流V1の量及び大きさにより決定される。調整用装置135は、調整用電磁石182aから182dの電流V1、長さ及び形状により決定される調整された又は補正された焦点距離を効果的に供給する。走査用フィールドが高いとき、ZFEに対する補正は必要ない。つまり、焦点調整用電流はゼロである。走査用フィールドが接近し、そしてゼロを通過する際、焦点調整用電流は素早く最大値にまで増大し、そして減少しゼロに戻る。
【0035】
図2Dも参照すると、焦点調整用ビーム124は、こうしてそれぞれスキャナー136において走査され平行化器138において平行化される。そして、ワークピース130がY軸の正の方向に平行移動する際にワークピース130に注入されるようにエンドステーション116に与えられる。図2Dには、幾つかの不連続な時間「a」、「c」、「e」、「g」、「i」、「k」、及び「m」における、ワークピース130に衝突している走査され平行化されたイオンビーム124が示されている。これらの時間は、電源V2 136の例示的な三角形状の走査電流波形の半周期に対するものである。そして、図2Cの波形ダイアグラム160に示されている時間にそれぞれ対応している。ビームサイズの修正は、ゼロフィールド効果異常を補償するように為される。図1Fから図1Lまでを図2Eから図2Kまでと比べると、ビームは、ゼロ磁場付近にてピークを成す電流効果を分散するように、より幅広く生成されるように見え得る。
【0036】
図2Eから図2Kまでには、イオンビームがワークピースを横切る際のビームサイズが示されており、図2E、図2F、図2G、図2H、図2I、図2J、及び図2Kは、図2Dの走査例124a、124c、124e、124g、124i、124k、及び124mにそれぞれ対応している。特に図1Fから図1Lまでと比べると、ビーム幅Wは、イオンビームがX軸方向においてワークピース30を横切って走査される際、より一定であることが分かる。スキャナー36のフィールドがゼロに接近するにつれてイオンビームサイズが突然減少するものとして図1Fから図1Lまでにおいて明らかなZFEは、イオンビーム24の焦点調整がイオンビーム24に対するスキャナー36のZFEを軽減させるにつれて減少される。
【0037】
図2L及び図2Mまでには、例示的なイオン注入システム110における焦点調整用構成要素の他の可能な実施例が示されている。図2Lにおいて、ビームパスの両側面に配置された伝導性の焦点調整用電極又はプレート135a及び135bのペアは、ビームパスに対し略平行に延伸する。焦点調整用構成要素135は、電極135a及び135bに結合された、図2Cにおける波形ダイアグラム160に示されているように時間変化する(例えば、コモンモードの)電位を焦点調整用電極に供給する電源151を更に備えている。それにより、プレート135a及び135bの間に電場が生成され、その囲い又は筐体はグラウンドされる。電源V1 151は、上述され図示されている電圧波形を供給するように、プログラム制御されてもよく、制御システム154により制御されてもよい。焦点調整用電極135a及び135bの入口部及び出口部において、電場線は、グラウンドされた焦点調整用構成要素の筐体と電極135a及び135bとの間にて延伸し、そのフィールドは、ビーム124が電極135aと電極135bとの間にあるビームパスの一部に進入するにつれて、まずビーム124を発散させるように作動し、その後、ビーム124が電極135a及び135bから離れるにつれて、ビーム124を集束するように作動する。
【0038】
図2Mにおいて、焦点調整用構成要素135は、時間変化する電位をアインツェルレンズ135dに供給する電源V1 151、及び、イオンビームパスの周囲を延伸する伝導性のアインツェルレンズ(例えば、単一レンズ電極)135dを備えている。上記の図2Lに示されている2つの調整用電極の例と同様に、アインツェルレンズ135dは、図2Cに示されているように時間変化する電圧V1が印加され、焦点調整されたイオンビーム124の焦点特性を調整するために時間変化する電場をその入口及び出口において生成する。
【0039】
本発明の他の側面には、他のシステムにおいてはもとより、本明細書において記述され図解されたシステムにおいても実行され得る、走査されたイオンビームをワークピースに供給するための方法が含まれている。本発明に係る例示的な方法が、図3に示されている。この図において、方法300には、302にて開始し、そして304にてイオンビームを供給する工程が含まれている。イオンビームが304にて供給された後、方法300には、306にて走査されたイオンビームを生成するために、供給されたイオンビームを走査する工程が含まれている。方法300には、308にてイオンビーム走査のZFEに関連して、イオンビームの焦点特性を調整する工程もまた含まれている。方法300には、イオンビームをワークピース310に向き付ける工程もまた含まれており、方法300は、これらの効果の完了を以って312にて終了する。これらの工程を成し遂げることにより、ワークピースに供給されたイオンビームは、ワークピースを横切って走査され、スキャナーのフィールドにより誘導されたZFEを考慮するために焦点調整される。
【0040】
この方法の各要素は、依然として本発明に係る、順序を入れ替えた方法を作り出すために、様々な順序により実行され得ることが分かる。例えば、幾つかの実施形態において、308におけるイオンビームの焦点特性を調整する前に、306におけるイオンビームの走査をしてもよい。一方、他の実施形態において、308におけるイオンビームの焦点特性を調整した後に、306におけるイオンビームの走査を行ってもよい(例えば、上記システムは、焦点調整用構成要素がビームラインアセンブリにおけるスキャナーの上流側に配置されるように、スキャナーのZFEを変更するために必要な焦点調整の量を検出するためにキャリブレートされてもよい)。他の例示的な変更例として、この方法の各要素は、不連続なユニットとして具体化される必要はない。例えば、スキャナーには、イオンビームの走査、及び、ワークピースへのそれの向き付けの両方が組み込まれていてもよく、そして、これらの目的を同時に成し遂げてもよい。この方法は、本明細書において記述されている様々な利点を有するこの方法の実施形態を作り出すために、本明細書に記述されている原理に従って変更されてもよいことが分かる。そして、そのような方法は本発明に係るであろうことが分かる。
【0041】
本発明は、一又は複数の実施例に関して図解され記述されているが、本明細書及び添付の図面を読み理解することにより、当業者は同等の変更及び修正を行うことができる。本発明にはそのような修正及び変更が全て含まれており、本発明は以下の請求項の範囲によってのみ限定されるものである。特に、上述された構成要素(アセンブリ、エレメント、デバイス、および回路等)により実行される様々な機能に関して、そのような構成要素を記述するために用いられた用語(「手段」として参照されるものも含む)は、本明細書に示されている本発明の例示的な実施例における機能を実行する明示的な構造と構造的に同等でないとしても、他の方法が示されない場合には、上述された構成要素の明細書に記述された機能を実行するどの要素(つまり、機能的に同等である要素)にも対応するものとする。加えて、本発明の特定の特徴は、様々な実施例の一つのみに関して開示されていてもよい一方、そのような特徴は、他の実施例の一又は複数の他の特徴と結び付けられてもよく、どの既存の適用例又はどの特定の適用例に対しても所望であり、かつ有利なものとなり得る。更に、発明の詳細な説明及び請求項の各々において、「含む」、「有している」、「有する」、「付帯の」という用語、及び、その派生語が用いられており、そのような用語は「備えている」という用語と同様な意味において包含的であるものとする。また、本明細書にて用いられている「例示的な」という用語は、「最上の例」というよりは単に「例」を意味している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンをワークピースに注入するためのイオン注入システムであって、
イオンビームを生成するように構成されたイオンビーム源と、
生成された上記イオンビームを質量分析するための質量分析器と、
上記ワークピースを横切って上記イオンビームを走査するように構成されたスキャナーと、
上記イオンビームに対するスキャナーのゼロフィールド効果に関して上記イオンビームの少なくとも1つの焦点特性を調整するように構成された調整用フィールドを備えている焦点調整用構成要素と、
を備えていることを特徴とするイオン注入システム。
【請求項2】
上記焦点特性は、ビームサイズ、ビーム電流、又は、ビームサイズとビーム電流との両方を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
上記焦点調整用構成要素は、上記イオンビームが上記ワークピースを横切って走査される際に、上記イオンビームの上記焦点特性が一定となるように上記焦点特性を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
上記焦点調整用構成要素は、上記イオンビームが上記ワークピースを横切って走査される際に、イオン放射が一定となるように上記焦点特性を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
上記スキャナーは、上記イオンビームの近傍に走査用フィールドを備えており、
上記焦点調整用構成要素は、上記フィールドの強度に関連して上記イオンビームの上記焦点特性を調整するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
上記調整用フィールドは、上記走査用フィールドが閾値よりも小さく、かつゼロに接近するにつれて上記走査用フィールドと逆比の関係を有する調整用フィールド強度であって、上記走査用フィールドが閾値よりも小さく、かつゼロに接近するにつれて強度が増大されるような、調整用フィールド強度を有している、
ことを特徴とする請求項5に記載のイオン注入システム。
【請求項7】
上記焦点調整用構成要素は、走査方向軸に沿った上記イオンビームの位置に関連して上記イオンビームの上記焦点特性を調整するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項8】
上記焦点調整用構成要素は、上記ワークピースへの上記イオンビームの入射角に関連して上記イオンビームの上記焦点特性を調整するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項9】
上記イオンビームのプロファイル特性を測定するように構成されたビームプロファイリング用構成要素を更に備えており、
上記焦点調整用構成要素は、上記プロファイル特性に係る、上記イオンビームの上記焦点特性を調整するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項10】
上記焦点調整用構成要素は、
上記イオンビームのパスの周囲にて互いに離れている焦点調整用電極を有する、一又は複数の電気的な4重極と、
時間変化する電位を少なくとも2つの上記焦点調整用電極に供給する、上記焦点調整用電極に結合された電源と、
を備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項11】
上記焦点調整用構成要素は、
上記イオンビームのパスの周囲にて互いに離れている焦点調整用磁極を有する、一又は複数の磁気的な4重極と、
時間変化する電流を少なくとも1つの焦点調整用コイルに供給する、上記焦点調整用コイルに結合された電源と、
を備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項12】
イオン注入システムにおいてイオンビームをワークピースに供給するための走査システムであって、
イオンビームを受け入れるために、そしてワークピースに向き付けられた走査されたイオンビームを生成するように構成されたスキャナーと、
上記イオンビームのプロファイル特性を測定するように構成されたビームプロファイリング用構成要素と、
上記ビームプロファイリング用構成要素により測定された上記プロファイル特性に関連して上記イオンビームの焦点特性を調整するように構成された焦点調整用構成要素と、
を備えており、
上記焦点調整用構成要素は、ゼロフィールド効果を相殺するためにそこに結合された調整用フィールドを含んでおり、
上記焦点特性を調整するために上記調整用フィールドを変化させるように構成されている、
ことを特徴とする走査システム。
【請求項13】
上記焦点調整用構成要素は、上記ワークピースを横切って走査されたイオンビームのプロファイルが一定になるように上記イオンビームの上記焦点特性を調整するように構成されている、
ことを特徴とする請求項12に記載の走査システム。
【請求項14】
上記焦点調整用構成要素は、上記ワークピースを横切って注入されたイオンの濃度が一定になるように上記イオンビームの上記焦点特性を調整するように構成されている、
ことを特徴とする請求項12に記載の走査システム。
【請求項15】
上記スキャナーは、ビームパスに対して略垂直な走査方向軸に沿って上記イオンビームを走査するように構成されており、
上記焦点調整用構成要素は、上記走査方向軸に沿った上記イオンビームの位置に関連して上記イオンビームの上記焦点特性を調整するように構成されている、
ことを特徴とする請求項12に記載の走査システム。
【請求項16】
上記焦点特性は、ビームサイズ、ビーム電流、又は、ビームサイズとビーム電流との両方を含んでいる、
ことを特徴とする請求項12に記載のイオン注入システム。
【請求項17】
上記焦点調整用構成要素は、
上記イオンビームのパスの周囲にて互いに離れている焦点調整用電極を有する、一又は複数の電気的な4重極と、
時間変化する電位を少なくとも2つの上記焦点調整用電極に供給する、上記焦点調整用電極に結合された電源と、
を備えている、
ことを特徴とする請求項12に記載のイオン注入システム。
【請求項18】
イオン注入システムにおいてイオンビームを供給する方法であって、
イオンビームを生成する工程と、
生成された上記イオンビームを、走査されたイオンビームを生成するための走査用フィールドを用いて走査する工程と、
上記イオンビームの焦点特性を測定する工程と、
測定された上記焦点特性からゼロフィールド効果を決定する工程と、
調整用フィールド用構成要素により生成された調整用フィールドの強度を変化させることにより、上記ゼロフィールド効果に関して上記イオンビームの上記焦点特性を調整する工程と、
を含んでいる、
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
上記イオンビームは走査方向軸に沿って走査され、
上記イオンビームの上記焦点特性は、上記走査方向軸に沿った上記イオンビームの位置に関連して調整され、
上記焦点特性は、ビームサイズ、ビーム電流、又は、ビームサイズとビーム電流との両方を含んでいる、
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記イオンビームは、走査方向軸に沿って走査され、
上記調整用フィールドの強度は、走査方向軸に沿った上記イオンビームの位置が変化するにつれて変化し、
上記走査用フィールドが閾値よりも小さく、そしてゼロに接近しているとき、上記調整用フィールドはスキャナーの上記フィールドと逆比の関係を有し、上記調整用フィールドは増大される、
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図2K】
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【図2L】
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【図2M】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−513089(P2012−513089A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542115(P2011−542115)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/006481
【国際公開番号】WO2010/080097
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(505413587)アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド (53)
【Fターム(参考)】