説明

走行支援装置

【課題】本発明は、移動体の適切な上限速度を設定する走行支援装置を提供することを課題とする。
【解決手段】移動体の移動速度の上限速度に基づいて走行支援を行う走行支援装置1であって、移動体の周辺に存在する物体を検出する周辺物体検出手段10,31と、周辺物体検出手段で検出した周辺物体が移動体の進路上の領域に存在する場合と当該進路上の領域の側方領域に存在する場合とで異なる上限速度を設定する上限速度設定手段32とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
お年寄りなどの歩行を補助するために、シニアカー、電動車椅子などの車両がある。このような車両は人が通常歩行しているエリアで走行するので、人などの障害物に対して安全に走行しなければならない。安全走行には、障害物との相対的な関係に応じて車両の速度が重要となる。例えば、特許文献1に記載の装置では、駐車支援時に、車両と障害物との距離が近いほど上限速度を低く設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−335239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
障害物との相対距離が同じでも、車両の進路上に障害物が存在する場合と進路の側方に障害物が存在する場合とでは、車両の適切な速度が異なる。例えば、障害物が進路の側方に存在する場合、その障害物の側方を車両がすり抜けるときには、減速する必要はあるが、障害物が進路上に存在する場合ほど低い速度にすると、運転者は違和感を受ける虞がある。したがって、上記した装置のように、車両と障害物との相対距離に応じて一律に上限速度を設定すると、適切な上限速度になっていない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、移動体の適切な上限速度を設定する走行支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る走行支援装置は、移動体の移動速度の上限速度に基づいて走行支援を行う走行支援装置であって、移動体の周辺に存在する物体を検出する周辺物体検出手段と、周辺物体検出手段で検出した周辺物体が移動体の進路上の領域に存在する場合と当該進路上の領域の側方領域に存在する場合とで異なる上限速度を設定する上限速度設定手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
この走行支援装置では、周辺物体検出手段により、移動体の周辺に存在する物体を検出する。そして、走行支援装置では、上限速度設定手段により、検出された周辺物体が移動体の進路上の領域に存在するかあるいはその側方領域に存在するかを判別し、周辺物体が進路上の領域に存在する場合と側方領域に存在する場合とで異なる上限速度を設定する。周辺物体が進路上の領域に存在する場合、移動体が進行すると衝突する可能性があるので、十分に減速(必要に応じて停止)する必要がある。一方、周辺物体が進路の側方領域に存在する場合、移動体がその障害物の脇をすり抜けて走行するので、安全性を確保するためにある程度減速する必要がある。このように、走行支援装置では、周辺物体が移動体の進路上の領域に存在する場合とその側方領域に存在する場合とで上限速度を異ならせて設定するので、周辺物体との位置関係(特に、車両幅方向の位置関係)に応じて移動体の適切な上限速度を設定することができる。
【0008】
本発明の上記走行支援装置では、上限速度設定手段は、移動体の進行方向領域を少なくとも進路上の領域と側方領域を含む複数の領域に分割し、当該分割した各領域内に周辺物体が存在するか否かによって上限速度を設定する構成としてもよい。
【0009】
この走行支援装置の上限速度設定手段では、移動体の進行方向における移動可能な領域を複数の領域(進路上の領域、側方領域など)に分割する。そして、上限速度設定手段では、検出された周辺物体がその分割した領域のどの領域に存在するか否かを判別し、存在する領域に応じて上限速度を設定する。このように、走行支援装置では、複数の領域に分割し、周辺物体がどの領域に存在するかによって、簡単に上限速度を設定することができる。
【0010】
本発明の上記走行支援装置では、上限速度設定手段は、周辺物体が移動体の進路上の領域に存在する場合には側方領域に存在する場合よりも低い上限速度を設定すると好適である。
【0011】
移動体の進路上に周辺物体が存在する場合には、十分に速度を低下させる必要がある。一方、移動体が周辺物体の脇をすり抜ける場合には、進路上に周辺物体が存在する場合ほど速度を低下させる必要はない。そこで、この走行支援装置では、周辺物体が移動体の進路上の領域に存在する場合には側方領域に存在する場合よりも低い上限速度を設定することにより、周辺物体との衝突を防止できるとともに、移動体が周辺物体の脇をすり抜けるときに必要以上に速度が制限されないので、運転者が違和感を受けない。
【0012】
本発明の上記走行支援装置では、上限速度設定手段は、移動体と周辺物体との相対速度に応じて上限速度を設定すると好適である。
【0013】
例えば、周辺物体との相対速度が移動体の速度より高い場合、周辺物体が移動体の方に近づいてきているので、通常よりも速度を制限する方が望ましい。逆に、周辺物体との相対速度が移動体の速度より低い場合、周辺物体が移動体から遠ざかっているので、通常よりも速度を制限する必要はない。そこで、走行支援装置では、移動体と周辺物体との相対速度に応じて上限速度を設定することにより、周辺物体との関係に応じてより適切な上限速度を設定することができる。このように、相対速度も考慮して上限速度を設定することにより、追従走行も安定して行うことも可能であり、また、安全性や利便性も向上させることができる。
【0014】
本発明の上記走行支援装置では、上限速度設定手段は、周辺物体が移動物体と静止物体とで異なる上限速度を設定すると好適である。
【0015】
周辺物体が人などの移動物体の場合、移動体に対してより接近してきたりする可能性があるので、より安全性を確保した走行が必要であり、通常よりも速度を制限する方が望ましい。逆に、周辺物体が静止物体の場合、必要以上に速度を制限する必要はない。そこで、この走行支援装置では、周辺物体が移動物体と静止物体とで異なる上限速度を設定することにより、周辺物体の種類に応じてより適切な上限速度を設定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、周辺物体が移動体の進路上の領域に存在する場合とその側方領域に存在する場合とで上限速度を異ならせて設定するので、周辺物体との位置関係に応じて移動体の適切な上限速度を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係る速度制御装置の構成図である。
【図2】本実施の形態に係る障害物検知ゾーンの一例であり、(a)が直進時の障害物検知ゾーンであり、(b)が旋回時の障害物検知ゾーンである。
【図3】図1のECUにおける最高速度制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る走行支援装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
本実施の形態では、本発明に係る走行支援装置を、車両に搭載される速度制御装置に適用する。本実施の形態に係る車両は、シニアカーや電動車椅子などの人が行き交うエリアで走行することが可能な車両であり、モータの駆動によって駆動力を発生し、モータの回生とメカブレーキによって制動力を発生する。
【0020】
図1及び図2を参照して、本実施の形態に係る速度制御装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る速度制御装置の構成図である。図2は、本実施の形態に係る障害物検知ゾーンの一例であり、(a)が直進時の障害物検知ゾーンであり、(b)が旋回時の障害物検知ゾーンである。
【0021】
速度制御装置1は、通常、運転者によるアクセル操作とブレーキ操作に応じた速度に制御する。特に、速度制御装置1は、障害物(歩行者、自転車などの移動物体、電柱、郵便ポスト、落下物などの静止物体)との関係で安全に走行するために、自車両と障害物との相対位置関係に応じて最高速度を設定し、最高速度を超える場合には減速制御する。
【0022】
速度制御装置1は、レーザレーダ10、速度センサ11、操作量検知センサ12、インバータ20、ブレーキアクチュエータ21及びECU[Electronic ControlUnit]30を備えており、ECU30に障害物情報検知部31、最高速度設定部32、速度制御部33が構成される。
【0023】
なお、本実施の形態では、レーザレーダ10及び障害物情報検知部31が特許請求の範囲に記載する周辺物体検出手段に相当し、最高速度設定部32が特許請求の範囲に記載する上限速度設定手段に相当する。
【0024】
レーザレーダ10は、レーザ光を利用して物体を検出するためのレーダである。レーザレーダ10は、自車両の前側の中央に取り付けられ、自車両の進行方向の物体を検出する。レーザレーダ10では、一定時間毎に、レーザ光を所定角度毎に水平にスキャンしながら自車両から前方に向けて出射し、反射してきたレーダ光を受光する。そして、レーザレーダ10では、そのレーザ光のデータをレーダ信号としてECU30に送信する。このデータには、スキャンした角度毎の出射したレーザ光の情報(自車両進行方向を中心とした出射角度、出射時刻など)、出射したレーザ光を受光できたか否かの情報、受光できた場合にはその受光情報(受光角度、受光時刻、受光強度など)などが含まれる。なお、このレーダ信号として送信するデータについては、受光できた場合のデータだけでもよい。
【0025】
速度センサ11は、自車両の速度を検知するセンサである。速度センサ11では、一定時間毎に、自車両の速度を検出し、その検知した速度を速度信号としてECU30に送信する。
【0026】
操作量検知センサ12は、自車両のアクセル用、ブレーキ用、旋回用の各操作レバー(ジョイスティックなどでもよい)にそれぞれ設けられ、各操作レバーの操作量を検知するセンサである。操作量検知センサ12では、一定時間毎に、操作レバーの操作量を検知し、その検知した操作量を操作量信号としてECU30に送信する。
【0027】
インバータ20は、モータ(図示せず)の回転駆動/回生発電を制御するインバータである。インバータ20では、ECU30からモータ駆動制御信号を受信すると、そのモータ駆動信号に応じてバッテリ(図示せず)に充電されている電力を直流から交流に変換し、その交流電流をモータに供給する。また、インバータ20では、ECU30からモータ回生制御信号を受信すると、そのモータ回生制御信号に応じてモータの回生発電による電力を交流から直流に変換し、バッテリに充電する。
【0028】
モータは、自車両の駆動源である電気モータである。また、モータは、ジェネレータとしての機能を有しており、車輪の回転エネルギ(運動エネルギ)を電気エネルギに変換し、回生発電を行う。モータでは、インバータ20から電流が供給されると、その電流に応じて回転駆動して駆動力を発生する。また、モータは、インバータ20による制御によって回生発電し、その発電した電力をインバータ20を介してバッテリに充電する。
【0029】
ブレーキアクチュエータ21は、自車両のメカブレーキ(図示せず)を作動させるアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ21では、ECU30からメカブレーキ制御信号を受信すると、そのメカブレーキ制御信号に応じてメカブレーキを作動させる。
【0030】
ECU30は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[RandomAccess Memory]などからなる電子制御ユニットであり、速度制御装置1を統括制御する。ECU30は、ROMに格納されているアプリケーションプログラムをRAM上にロードし、CPUで実行することによって障害物情報検知部31、最高速度設定部32、速度制御部33を構成する。ECU30では、所定時間毎に、各センサ10,11,12から検知信号をそれぞれ受信する。そして、ECU30では、各検知信号に基づいて各部31,32,33の処理を行い、必要に応じてインバータ20、ブレーキアクチュエータ21に各制御信号をそれぞれ送信する。
【0031】
障害物情報検知部31では、レーダ信号に基づいて、レーダ光を受光できたときのデータがある場合(検出点(反射点)がある場合)には自車両の前方に障害物が存在すると判定し、検出点のデータがない場合には自車両の前方に障害物が存在しないと判定する。この際、障害物はある程度の大きさを有するので、隣り合う検出点の個数が所定個数以上の場合に、障害物が存在すると判定してもよい。障害物が存在すると判定した場合、障害物情報検知部31では、各検出点についてのデータに基づいて、自車両に対する障害物の相対位置を算出する。この算出方法としては、例えば、レーザ光の出射から受光までの時間に基づいて検出点との相対距離を算出するとともにレーザ光の出射角度から検出点との相対方向を算出する。
【0032】
最高速度設定部32では、旋回用の操作レバーの操作量信号に示される操作レバーの操作量に基づいて自車両の進路を予測し、その進路に応じて障害物検知ゾーンを設定する。自車両が直進走行している場合、障害物検知ゾーンZとして、図2(a)に示すように、自車両の進行方向において直進進路に沿って長方形状の領域ASが設定される。一方、自車両が旋回走行している場合、障害物検知ゾーンZとして、図2(b)に示すように、自車両の進行方向において旋回進路(カーブR)に沿って部分的なドーナツ形状の領域ACが設定される。
【0033】
障害物検知ゾーンZは、幅方向に3分割と奥行き方向に3分割の9つのエリアC1,C2,C3,L1,L2,L3,R1,R2,R3に分割される。障害物検知ゾーンZには、中央に衝突監視エリアC1,C2,C3が設けられ、その左側に周辺監視エリアL1,L2,L3が設けられ、右側に周辺監視エリアR1,R2,R3が設けられる。衝突監視エリアは、自車両の進路上のエリアであるため、そのエリアに障害物が存在すると自車両と衝突する可能性があるので十分な安全性を確保する必要である。周辺監視エリアは、自車両の進路の側方のエリアであるため、そのエリアに障害物が存在すると自車両がその障害物の脇をすり抜けて走行するので注意する必要がある。
【0034】
この衝突監視エリアの幅は、車両の幅よりも広く、周辺監視エリアに障害物が存在する場合にその脇を安全にすり抜けるための余裕分の幅を有している。周辺監視エリアの幅は、衝突監視エリアの幅と同程度でもよいし、あるいは、道路幅などに応じた幅などでもよい。また、障害物検知ゾーンZで最も自車両寄りのエリアC1,L1,R1、次のエリアC2,L2,R3、最も自車両から離れたエリアC3,L3,R3の奥行き方向の各長さは、同じでもよいし、あるいは、図2に示すように自車両寄りほど短くするなど長さを変えてもよい。また、障害物検知ゾーンZで衝突監視エリアと周辺監視エリアの奥行き方向の各長さは、同じでもよいし、あるいは、図2に示すように衝突監視エリアの自車両寄りを短くするなど長さを変えてもよい。これらの幅や奥行き方向の長さについては、実験などによって設定される。
【0035】
障害物検知ゾーンZの各エリアC1,C2,C3,L1,L2,L3,R1,R2,R3には最高速度がそれぞれ設定され、最高速度マップが設けられる。障害物検知ゾーンZのうち最も自車両寄りのエリアC1,L1,R1、次のエリアC2,L2,R3、最も自車両から離れたエリアC3,L3,R3の各最高速度は、自車両に近いほど低い最高速度が設定される。さらに、衝突監視エリアと周辺監視エリアとでは、衝突監視エリアの方が低い最高速度が設定される。直進時の障害物検知ゾーンZの各エリアと旋回時の障害物検知ゾーンZの各エリアとでは、同じ最高速度がそれぞれ設定されてもよいし、あるいは、旋回時の障害物検知ゾーンZの各エリアの方に低い最高速度がそれぞれ設定されてもよい。また、旋回時の障害物検知ゾーンZの各エリアには、カーブRが小さいほど低い最高速度がそれぞれ設定されてもよい。これらの各エリアの最高速度については、実験などによって設定される。自車両に適用される法律上の最高速度に応じて、少なくともそれ以下の速度がそれぞれ設定される。
【0036】
旋回操作量に応じて障害物検知ゾーンを設定すると、最高速度設定部32では、障害物情報検知部31で障害物が存在すると判定している場合、その障害物と自車両との相対位置に基づいて障害物が障害物検知ゾーンのどのエリアに存在するかを判定する。そして、最高速度設定部32では、最高速度マップを参照し、その判定したエリアに応じた最高速度Vmaxを設定する。障害物が複数存在する場合、各障害物に対してそれぞれ最高速度Vmaxが設定される。この場合、最高速度設定部32では、各障害物に対して設定された最高速度Vmaxを比較し、最も低い最高速度Vmaxを最終的な最高速度Vmaxとして設定する。一方、最高速度設定部32では、障害物情報検知部31で障害物が存在しないと判定している場合、最高速度Vmaxを設定しない。この場合、常時、運転者によるアクセル操作に応じた速度となる。
【0037】
速度制御部33では、通常、運転者がアクセル用の操作レバーを操作している場合、アクセル用の操作レバーの操作量信号に示される操作レバーの操作量に応じてモータによる目標駆動力を設定する。そして、速度制御部33では、その目標駆動力をモータで発生させるために必要な目標電流を設定し、その目標電流を示すモータ駆動制御信号をインバータ20に送信する。
【0038】
また、速度制御部33では、通常、運転者がブレーキ用の操作レバーを操作している場合、ブレーキ用の操作レバーの操作量信号に示される操作レバーの操作量に応じて目標制動力を設定する。そして、速度制御部33では、その目標制動力をモータによる回生制動力だけで発生できるか否かを判定する。目標制動力をモータによる回生制動力だけで発生できると判定した場合、速度制御部33では、その目標制動力をモータによる回生制動力で発生させるために必要な目標回生量を設定し、その目標回生量を示すモータ回生制御信号をインバータ20に送信する。一方、目標制動力をモータによる回生制動力だけで発生できないと判定した場合、速度制御部33では、そのときにモータで発生できる最大の回生制動力に応じて目標回生量を設定し、その目標回生量を示すモータ回生制御信号をインバータ20に送信するとともに、目標制動力から最大の回生制動力を引いた制動力をメカブレーキで発生させるために必要な目標ブレーキ量を設定し、その目標ブレーキ量を示すブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ21に送信する。
【0039】
特に、速度制御部33では、速度信号に示される自車両の現在速度が最高速度設定部32で設定されている最高速度Vmax以下か否かを判定する。自車両の現在速度が最高速度Vmaxより高いと判定した場合、速度制御部33では、自車両の速度が最高速度Vmax以下になるために必要な目標制動力を設定し、この目標制動力に基づいて上記と同様の処理によって減速制御を行う。自車両の現在速度が最高速度Vmax以下と判定した場合、速度制御部33では、減速制御を行わない。
【0040】
図1及び図2を参照して、速度制御装置1における最高速度制御の動作について説明する。特に、ECU30における処理については、図3のフローチャートに沿って説明する。図3は、図1のECUにおける最高速度制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0041】
レーザレーダ10では、一定時間毎に、自車両の前方をスキャンしながらレーザ光を出射するとともに反射してきたレーザ光を受光し、レーザ信号をECU30に送信している。速度センサ11では、一定時間毎に、自車両の速度を検出し、速度信号をECU30に送信している。各操作レバーの操作量検知センサ12では、一定時間毎に、操作量を検知し、操作量信号をECU30にそれぞれ送信している。ECU30では、各検知信号を受信する。
【0042】
一定時間毎に、ECU30では、旋回用の操作レバーの操作量信号に基づいて、旋回操作量に応じて障害物検知ゾーン(最高速度マップ)を設定する(S1)。また、ECU30では、レーダ信号に基づいて、自車両の前方に障害物が存在するか否かを判定し、存在すると判定した場合にはその各障害物の自車両に対する相対位置を算出する。そして、ECU30では、障害物検知ゾーンに障害物が存在するか否かを判定する(S2)。S2にて障害物検知ゾーンに障害物が存在しないと判定した場合、ECU30では、今回の処理を終了する。
【0043】
S2にて障害物検知ゾーンに障害物が存在すると判定した場合、ECU30では、障害物毎に、障害物の相対位置に基づいて障害物検知ゾーンのいずれのエリアに存在するかを判定し、その判定したエリアに応じて最高速度マップにより最高速度Vmaxを設定する(S3)。ECU30では、1個の障害物が存在する場合にはその障害物に対応して設定された最高速度Vmaxをそのまま最終的な最高速度Vmaxとして設定し、複数の障害物が存在する場合には各障害物に対応して設定された最高速度Vmaxの中で最も低い速度を最終的な最高速度Vmaxとして設定する(S4)。
【0044】
ECU30では、速度信号に基づいて、自車両の現在速度が最高速度Vmax以下か否かを判定する(S5)。S5にて自車両の現在速度が最高速度Vmax以下と判定した場合、ECU30では、今回の処理を終了する。一方、S5にて自車両の現在速度が最高速度Vmaxより高いと判定した場合、ECU30では、自車両の速度が最高速度Vmax以下になるために必要な目標制動力を設定し、この目標制動力に基づいて目標回生量を示すモータ回生制御信号をインバータ20に送信し、更に必要な場合には目標ブレーキ量を示すブレーキ制御信号をブレーキアクチュエータ21に送信する。インバータ20では、ECU30からモータ回生制御信号を受信すると、そのモータ回生制御信号に応じてモータの回生発電による電力を交流から直流に変換し、バッテリに充電する。この際、モータは、回転エネルギを電気エネルギに変換して回生発電し、回生制動力を発生させる。また、ブレーキアクチュエータ21では、ECU30からメカブレーキ制御信号を受信すると、そのメカブレーキ制御信号に応じてメカブレーキを作動させる、その際、メカブレーキでは、作動し、制動力を発生させる。これによって、自車両では、速度が最高速度Vmax以下に低下する。
【0045】
特に、障害物が衝突監視エリアに存在する場合、周辺監視エリアよりも低い最高速度Vmaxが設定されるので、自車両は、十分に低い速度まで減速する(障害物に近い場合には停止させてもよい)。そのため、障害物との関係で安全性を確保することができる。一方、障害物が周辺監視エリアに存在する場合、衝突監視エリアよりも高い最高速度Vmaxが設定されるので、自車両は、極端に低い速度まで減速しない。そのため、障害物に注意しながら脇をすり抜けて走行することができ、運転者は違和感を受けない。また、障害物が未だ離れている場合、自車両に近いエリアよりも高い最高速度Vmaxが設定されるので、自車両は、極端に低い速度まで減速しない。そのため、運転者は違和感を受けない。
【0046】
この速度制御装置1によれば、自車両の前方の障害物が移動体の進路上の衝突監視エリアに存在する場合には側方の周辺監視エリアに存在する場合よりも最高速度を低い速度に設定するので、障害物との位置関係(特に、車両幅方向の位置関係)に応じて適切な最高速度を設定することができる。そのため、障害物が衝突監視エリアに存在する場合には、十分に低い速度まで減速でき、障害物に対して安全性を確保できる。一方、障害物が周辺監視エリアに存在する場合には、衝突監視エリアほど低い速度まで減速せず、運転者は違和感を受けない。
【0047】
また、この速度制御装置1によれば、自車両の進行方向における領域を9つのエリアに分割し、各エリアに最高速度を設定することにより、障害物が存在する位置に応じて簡単に最高速度を設定することができる。
【0048】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0049】
例えば、本実施の形態ではシニアカーや電動車椅子などの車両に適用したが、一般的な四輪自動車、オートバイなどにも適用可能である。
【0050】
また、本実施の形態では障害物を検出する手段としてレーザレーダを適用したが、ミリ波レーダ、カメラなどの他の検出手段でもよい。
【0051】
また、本実施の形態では現在速度が設定した最高速度を超えるような場合には減速制御を行う構成としたが、警報出力、音声出力、アクセルレバーへの反力を大きくするなどの他の支援を行ってもよい。
【0052】
また、本実施の形態では車両が前方に走行する場合に適用したが、後方に走行する場合にも適用可能である。
【0053】
また、本実施の形態では障害物検知ゾーンとして中央に3個、左右に3個ずつの計9個のエリアに分割する構成としたが、エリアの分割個数、配置、大きさ、形状などについては他の様々な構成が適用可能である。障害物検知ゾーン全体の大きさや形状などについても他の様々な構成が適用可能である。
【0054】
また、本実施の形態では障害物検知ゾーン内の全てのエリアに所定の最高速度をそれぞれ設定したが、不要なエリア(例えば、R3やL3)には最高速度として無限大を設定してもよい。
【0055】
また、車両と障害物との相対速度も考慮して、最高速度を設定(補正)してもよい。例えば、相対速度が自車両の速度と同じ場合、周辺物体が停止(静止)しているので、通常通りに最高速度を設定する(補正無し)。相対速度が自車両の速度より高い場合、周辺物体が自車両に近づいてきているので、通常よりも距離が近いエリアの最高速度を設定する(通常より低い最高速度に補正する)。相対速度が自車両の速度より低い場合、周辺物体が自車両から遠ざかっているので、通常よりも距離が遠いエリアの最高速度を設定する(通常より高い最高速度に補正する)。このように、相対速度も考慮して最高速度を設定することにより、追従走行する場合に不要な減速がなくなったり、あるいは、近づいてくる障害物に対して早めに減速できるというように、更に安全性や利便性を向上させることができる。
【0056】
また、障害物の種類も考慮して、最高速度を設定してもよい。障害物が人などの移動物体の場合、より安全性を確保するために、静止物体より低い最高速度を設定する。障害物が電柱や郵便ポストなどの静止物体の場合、移動物体より高い最高速度を設定する。このように、移動物体と静止物体とで異なる最高速度を設定することにより、より適切な最高速度を設定することができる。障害物の種類の判別は、従来の手法を適用し、例えば、カメラの撮像画像に基づく画像認識、より精密なレーザレーダを利用した物体認識で行う。
【0057】
また、障害物検知ゾーンの大きさや形状については自車両の速度やカーブRなどのパラメータに応じて変えてもよい。例えば、自車両の速度が高い場合には障害物検知ゾーンの奥行き方向の長さを長くし、自車両の速度が低い場合には障害物検知ゾーンの奥行き方向の長さを短くする。また、自車両の速度が高い場合には障害物検知ゾーンの全体形状を奥行き方向に長めにし、自車両の速度が低い場合には障害物検知ゾーンの全体形状を幅方向に長めにする。また、カーブRが小さいほど、障害物検知ゾーンの奥行き方向の長さを短くする。
【符号の説明】
【0058】
1…速度制御装置、10…レーザレーダ、11…速度センサ、12…操作量検知センサ、20…インバータ、21…ブレーキアクチュエータ、30…ECU、31…障害物情報検知部、32…最高速度設定部、33…速度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の移動速度の上限速度に基づいて走行支援を行う走行支援装置であって、
移動体の周辺に存在する物体を検出する周辺物体検出手段と、
前記周辺物体検出手段で検出した周辺物体が前記移動体の進路上の領域に存在する場合と当該進路上の領域の側方領域に存在する場合とで異なる上限速度を設定する上限速度設定手段と
を備えることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記上限速度設定手段は、前記移動体の進行方向領域を少なくとも進路上の領域と側方領域を含む複数の領域に分割し、当該分割した各領域内に前記周辺物体が存在するか否かによって上限速度を設定することを特徴とする請求項1に記載する走行支援装置。
【請求項3】
前記上限速度設定手段は、前記周辺物体が前記移動体の進路上の領域に存在する場合には側方領域に存在する場合よりも低い上限速度を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する走行支援装置。
【請求項4】
前記上限速度設定手段は、前記移動体と前記周辺物体との相対速度に応じて上限速度を設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載する走行支援装置。
【請求項5】
前記上限速度設定手段は、前記周辺物体が移動物体と静止物体とで異なる上限速度を設定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載する走行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−208583(P2010−208583A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59604(P2009−59604)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】