説明

走行用HST

【課題】可変容量型ポンプから走行モータに供給する作動油の流量の制御を実現する構造、および、走行モータと可変容量型ポンプとの間で循環する作動油の流れの方向の制御を実現する構造の両方を簡単にすることができる走行用HSTの提供。
【解決手段】走行モータ4と、この走行モータ4を駆動するための作動油を吐出する片傾転型の可変容量型ポンプ12と、この可変容量型ポンプ12と走行モータ4との間に介在し、可変容量型ポンプ12と走行モータ4との間で循環する作動油の流れの方向を制御する方向制御弁40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールショベルやホイルローダ等のホイール式建設機械に備えられる走行用HSTに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイール式建設機械に備えられる走行用HSTとしては、例えば特許文献1に示される従来技術がある。この従来技術は、油圧モータからなる走行モータと、この走行モータを駆動するための作動油を吐出する可変容量型ポンプとを備えている。これら走行モータと可変容量型ポンプは閉回路接続されている。
【0003】
この従来技術に備えられる可変容量型ポンプは両傾転型の可変容量型ポンプであり、これによって、吐出流量の制御と作動油の流れの方向の制御とを並行して行えるようになっている。
【特許文献1】特開平6−265013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来技術に備えられている可変容量型ポンプは両傾転型の可変容量型ポンプであるため、可変容量型ポンプの傾角を制御するサーボシリンダと、このサーボシリンダを操作する制御弁とが、両傾転型に対応した構造となっている。さらに、両傾転型に対応する構造のサーボシリンダでは、操作されていないときのサーボピストンの位置が不安定なものになりやすいので、操作されていないときのサーボピストンの位置を所定位置に安定させる構造が必要である。
【0005】
つまり、前述した従来技術では、可変容量型ポンプから走行モータに供給する作動油の流量の制御と、走行モータと可変容量型ポンプとの間で循環する作動油の流れの方向の制御とを行うための構造が複雑であり、走行用HSTのコストが嵩むという問題がある。
【0006】
本発明は、前述した実状を考慮してなされたものであり、その目的は、可変容量型ポンプから走行モータに供給する作動油の流量の制御を実現する構造、および、走行モータと可変容量型ポンプとの間で循環する作動油の流れの方向の制御を実現する構造の両方を簡単にすることができる走行用HSTを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕 前述の目的を達成するために、本発明は、走行モータと、この走行モータを駆動するための作動油を吐出する可変容量型ポンプと、この可変容量型ポンプと前記走行モータとの間で循環する作動油の流れの方向を制御する方向制御手段とを備えている走行用HSTにおいて、前記可変容量型ポンプが片傾転型の可変容量型ポンプであり、前記方向制御手段が、前記可変容量型ポンプと前記走行モータとの間に介在する方向制御弁であることを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明では、可変容量型ポンプが片傾転型の可変容量型ポンプであるので、可変容量型ポンプ自体の構造、可変容量型ポンプの傾角を制御するサーボシリンダの構造、サーボシリンダのサーボピストンを操作する制御弁の構造が、前述した従来技術よりも簡単である。また、本実施形態では方向制御手段が方向制御弁であるために、前述した従来技術よりも弁の数が増加することになるが、サーボシリンダおよび制御弁を両傾転型に対応させることと、方向切換弁を設けることとを比較しても、後者の方が簡単な構造である。つまり、本発明によれば、可変容量型ポンプから走行モータに供給する作動油の流量の制御を実現する構造、および、走行モータと可変容量型ポンプとの間で循環する作動油の流れの方向の制御を実現する構造の両方を簡単にすることができる。
【0009】
〔2〕 本発明は「〔1〕」に記載の発明において、前記可変容量型ポンプが斜軸式可変容量型ポンプであることを特徴とする。
【0010】
斜軸式可変容量型ポンプは斜板式可変容量型ポンプよりも効率が良いが、両傾転型にする場合には斜板式よりも大型化するという難点があった。本発明では、可変容量型ポンプが片傾転型であるので、斜軸式可変容量型ポンプを大型化させることなく採用できる。
【0011】
〔3〕 本発明は「〔1〕」に記載の発明において、前記吐出ポートから前記走行モータへの作動油の流れを許容し、前記走行モータから前記吐出ポートへの作動油の流れを阻止する逆止弁が、前記可変容量型ポンプの吐出ポートと前記方向制御弁との間に介在していることを特徴とする。
【0012】
走行用HSTでは、建設機械の登坂時などに、走行モータの負荷圧が可変容量型ポンプの吐出ポートの圧力よりも高くなることがある。このとき、走行モータから可変容量型ポンプへの作動油の逆流を許すと、建設機械の位置が維持されない。本発明は、走行モータから可変容量型ポンプの吐出ポートへの作動油の逆流を逆止弁によって阻止するので、建設機械の登坂時などに、走行モータの負荷圧が可変容量型ポンプの吐出ポートの圧力よりも高くなった場合でも、建設機械の位置を維持することができる。
【0013】
〔4〕本発明は「〔1〕」記載の発明において、前記方向制御弁の中立位置が、前記走行モータと前記可変容量型ポンプとが遮断され、前記可変容量型ポンプと前記方向制御弁との間で作動油が循環するように設定されたタンデムセンタであることを特徴とする。
【0014】
このように構成された本発明では、可変容量型ポンプと走行モータとが方向制御弁により遮断された状態において、可変容量型ポンプと方向制御弁との間で作動油が循環する。これにより、可変容量型ポンプの吐出流量が0でない状態で方向制御弁により可変容量型ポンプと走行モータとが遮断されときに、可変容量型ポンプと方向制御弁との間の油圧回路内に過大な圧力が発生することを防止でき、その油圧回路を構成する油圧機器の損傷を防止することができる。
【0015】
〔5〕本発明は「〔1〕」記載の発明において、前記可変容量型ポンプの吸入ポートと前記方向制御弁とを接続する管路から作動油を補充するチャージ回路を備えていることを特徴とする。
【0016】
このように構成された本発明では、可変容量型ポンプと方向制御弁との間に形成される油圧回路内の作動油不足を防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、前述したように、可変容量型ポンプから走行モータに供給する作動油の流量の制御を実現する構造、および、走行モータと可変容量型ポンプとの間で循環する作動油の流れの方向の制御を実現する構造の両方を簡単にすることができるので、走行用HSTのコスト削減に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の走行用HSTの実施形態について図1〜3を用いて説明する。図1は本発明の走行用HSTの一実施形態を示す油圧回路図、図2は図1に示す可変容量型ポンプとして採用される斜軸式可変容量型ポンプの一例を示す断面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態は、油圧モータからなる走行モータ4と、この走行モータ4を駆動するための作動油を吐出する片傾転型の可変容量型ポンプ、例えば斜軸式可変容量型ポンプ12と、この斜軸式可変容量型ポンプ12と走行モータ4との間に介在し、斜軸式可変容量型ポンプ12と走行モータ4との間で循環する作動油の流れの方向を制御する方向制御手段である方向制御弁40とを備えている。以下では、方向制御弁40と走行モータ4との間に形成される油圧回路をモータ側回路1といい、方向制御弁40と斜軸式可変容量型ポンプ12との間に形成される油圧回路をポンプ側回路10という。
【0020】
方向制御弁40は、弁位置が中立位置40aから第1位置40bと第2位置40cとに切換可能に構成されている。中立位置40aはタンデムセンタであり、弁位置が中立位置40aのときに、走行モータ4と斜軸式可変容量型ポンプ12とが遮断され、斜軸式可変容量型ポンプ12と方向制御弁40との間で作動油を循環させる通路が形成されるようになっている。弁位置が第1位置40bのときには、斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出ポート24を走行モータ4の第1入出ポート5に連通させる通路と、走行モータ4の第2入出ポート6を斜軸式可変容量型ポンプ12の吸入ポート23に連通させる通路とが形成されるようになっている。弁位置が第2位置40cのときには、斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出ポート24を走行モータ4の第2入出ポート6に連通させる通路と、走行モータ4の第1入出ポート5を斜軸式可変容量型ポンプ12の吸入ポート23に連通させる通路とが形成されるようになっている。
【0021】
方向制御弁40と斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出ポート24との間には、吐出ポート24から走行モータ4への作動油の流れを許容し、走行モータ4から吐出ポート24への作動油の流れを阻止する逆止弁50が介在している。
【0022】
モータ側回路1およびポンプ側回路10のそれぞれには、チャージ回路60が接続されている。チャージ回路60は、チャージポンプ61と、第1チャージ管路62と、第2チャージ管路63,64と、チャージ用逆止弁65,66とを備えている。
【0023】
チャージポンプ61は、作動油タンク67から作動油を吸上げて吐出するようになっている。このチャージポンプ61の最大吐出圧はリリーフ弁68により規定されている。第1チャージ管路62は、チャージポンプ61から吐出される作動油を、斜軸式可変容量型ポンプ12の吸入ポート23と方向制御弁40とを接続する管路11に導く管路である。第2チャージ管路63は、チャージポンプ61から吐出される作動油を、走行モータ4の第1入出ポート5と方向制御弁40とを接続する管路2に導く管路であり、第2チャージ管路64は、チャージポンプ61から吐出される作動油を、走行モータ4の第2入出ポート6と方向制御弁40とを接続する管路3に導く管路である。チャージ用逆止弁65,66は、第2チャージ管路63,64上のそれぞれに設けられていて、チャージ回路60からモータ側回路1への作動油の流れを許容し、モータ側回路1からチャージ回路60への作動油の流れを阻止する。
【0024】
また、図1において、30は斜軸式可変容量型ポンプ12の傾角を制御するサーボシリンダであり、7は斜軸式可変容量型ポンプ12とチャージポンプ61を駆動する原動機である。なお、原動機7を示す記号は電動機以外の原動機を示すものであるが、電動機でもよい。
【0025】
斜軸式可変容量型ポンプ12は、例えば図2示すように構成されている。図2において、13はハウジング、17は軸受15,16によりハウジング13に対して回転可能に支持されるドライブシャフト、18はシリンダブロック、25はシリンダブロック18の回転中心線(斜軸)の傾角を制御する傾角制御機構である。傾角制御機構25は、前記サーボシリンダ30により駆動されるようになっている。
【0026】
ハウジング13は、シリンダブロック18やドライブシャフト17等を格納するハウジング本体14と、図2には図示していない前記吸入ポート23および前記吐出ポート24が形成されたヘッドセクタ22とから構成されている。なお、ヘッドセクタ22には、図示していないが方向制御弁40が設けられている。
【0027】
サーボシリンダ30は、ヘッドセクタ22に形成されたシリンダボア31と、このシリンダボア31に摺動可能に格納されたサーボピストン32と、傾角が0°になる方向へサーボピストン32を付勢するばね33とを備えている。図2は、シリンダボア31内に形成された圧力室31aにパイロット圧力が供給された結果、サーボピストン32がばね33に抗して変位し、これに伴って斜軸の傾角が角度αとなった状態を示している。なお、本実施形態はサーボピストン32に与えるパイロット圧力を生成する制御弁を備えているが、その制御弁の図示を省略してある。
【0028】
シリンダブロック18には、複数のシリンダボア19が形成されている。これらのシリンダボア19のそれぞれには、ピストン20が摺動可能に挿入されている。また、シリンダブロック18には回転軸であるセンタロッド21が摺動可能に挿入されている。このセンタロッド21は、ドライブシャフト17の軸線上でこのドライブシャフト17と球面継手により結合している。各ピストン20は、センタロッド21とドライブシャフト17との結合部を中心とする円周上でドライブシャフト17と球面継手により結合している。
【0029】
シリンダブロック18とヘッドセクタ22との間には、弁板27が設けられている。この弁板27は、この弁板27に形成された凸湾曲面27aとヘッドセクタ22に形成された凹湾曲面22aとにより案内されて、シリンダブロック18とともに傾転するようになっている。
【0030】
弁板27の中央には孔27bが形成されていて、サーボピストン32に設けられている突起26が摺動可能に挿入されている。つまり、突起26と弁板27とから傾転制御機構25が構成されていて、サーボピストン32の直線運動が突起26と弁板27とを介してシリンダブロック18に伝達されることによって、シリンダブロック18が傾転するようになっている。
【0031】
このように構成された本実施形態は、次のように動作する。
【0032】
原動機7により斜軸式可変容量型ポンプ12が駆動されている状態において、サーボシリンダ30の圧力室31aにパイロット圧力が与えられると、パイロット圧力に応じてサーボピストン32が変位し、これに伴って、シリンダブロック18の傾角、すなわち、斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出流量が設定される。
【0033】
このとき、方向制御弁40の弁位置が中立位置40aである場合、斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出ポート24から吐出された作動油は、斜軸式可変容量型ポンプ12と方向制御弁40との間で、すなわち、ポンプ側回路10内で循環する。
【0034】
一方、方向制御弁40のパイロット部41にパイロット圧力が与えられて、方向制御弁40の弁位置が第1位置40bに切り換わった場合、斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出ポート24が走行モータ4の第1入出ポート5と連通し、走行モータ4の第2入出ポート6が斜軸式可変容量型ポンプ12の吸入ポート23に連通する。これにより、作動油が走行モータ4を回転させながら、斜軸式可変容量型ポンプ12と走行モータ4との間で循環する。
【0035】
また、方向制御弁40のパイロット部42にパイロット圧力が与えられて、方向制御弁40の弁位置が第2位置40cに切り換わった場合、斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出ポート24が走行モータ4の第2入出ポート6と連通し、走行モータ4の第1入出ポート5が斜軸式可変容量型ポンプ12の吸入ポート23に連通する。この場合、作動油は、方向制御弁40の弁位置が第1位置40bのときとは逆方向に走行モータ4を回転させながら、斜軸式可変容量型ポンプ12と走行モータ4との間で循環する。
【0036】
建設機械の走行時に走行モータ4に与えられる負荷圧は、建設機械の登坂時などに、斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出ポート24の圧力よりも高くなることがある。このとき、走行モータ4から斜軸式可変容量型ポンプ12への作動油の逆流を許すと、走行モータ4が逆転して建設機械の位置が維持されない。本実施形態では、逆止弁50がその逆流を阻止するので、走行モータ4の負荷圧が斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出ポート24の圧力よりも高くなったときでも、建設機械の位置が維持される。
【0037】
また、モータ側回路1の第1入出ポート5や第2入出ポート6側の圧力が、チャージポンプ61の吐出圧よりも低くなった場合には、チャージポンプ61から吐出された作動油が、チャージ用逆止弁65やチャージ用逆止弁66を介して、モータ側回路1に補充される。
【0038】
また、ポンプ側回路10の管路11内の圧力がチャージポンプ61の吐出圧よりも低くなった場合には、チャージポンプ61から吐出された作動油が、ポンプ側回路10における斜軸式可変容量型ポンプ12の吸入ポート23側から、ポンプ側回路10に補充される。
【0039】
本実施形態によれば次の効果を得られる。
【0040】
本実施形態では、斜軸式可変容量型ポンプ12が片傾転型の斜軸式可変容量型ポンプであるので、斜軸式可変容量型ポンプ12自体の構造、斜軸式可変容量型ポンプ12の傾角を制御するサーボシリンダ30の構造、サーボシリンダ30のサーボピストン32を操作する制御弁(図示しない)の構造が、前述した従来技術よりも簡単である。また、本実施形態では斜軸式可変容量型ポンプ12と走行モータ4との間で循環する作動油の流れの方向を制御する方向制御手段が方向制御弁40であるために、前述した従来技術よりも弁の数が増加することになるが、サーボシリンダ30および制御弁を両傾転型に対応させることと、方向切換弁40を設けることとを比較しても、後者の方が簡単な構造である。これらの結果、斜軸式可変容量型ポンプから走行モータに供給する作動油の流量の制御を実現する構造と、走行モータと斜軸式可変容量型ポンプとの間で循環する作動油の流れの方向の制御を実現する構造との両方を簡単にでき、走行用HSTのコスト削減に貢献できる。
【0041】
本実施形態は、可変容量型ポンプとして斜板式可変容量型ポンプよりも効率のよい斜軸式可変容量型ポンプ12が採用されている例である。斜軸式可変容量型ポンプが両傾転型の場合には斜板式よりも大型化するという難点があるが、本実施形態に備えられる可変容量型ポンプは片傾転型であるので、斜軸式可変容量型ポンプを大型化させることなく採用できる。
【0042】
また、本実施形態は、走行モータ4から斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出ポート24への作動油の逆流を逆止弁50によって阻止するので、建設機械の登坂時などに、走行モータ4の負荷圧が斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出ポート24の圧力よりも高くなった場合でも、建設機械の位置を維持することができる。
【0043】
また、本実施形態では、斜軸式可変容量型ポンプ12の吐出流量が0でない状態で方向制御弁40により斜軸式可変容量型ポンプ12と走行モータ4とが遮断されたときに、斜軸式可変容量型ポンプ12と方向制御弁40との間で作動油が循環するようになる。これにより、ポンプ側回路10内に過大な圧力が発生することを防止でき、ポンプ側回路10を構成する油圧機器の損傷を防止することができる。
【0044】
また、本実施形態は、ポンプ側回路10から作動油を補充するチャージ回路60を備えているので、ポンプ側回路10内の作動油不足を防止できる。
【0045】
なお、本実施形態は、油圧パイロット式の方向制御弁40を備えている例であるが、本発明に備えられる方向制御弁の操作方式は油圧パイロット式に限定するものでなく、電磁パイロット式であってもよい。
【0046】
また、本実施形態は、可変容量型ポンプとして斜軸式可変容量型ポンプ12が採用されている例であるが、本発明に備えられる可変容量型ポンプは斜軸式に限られるものではなく、斜板式でもよい。斜板式可変容量型ポンプとしては例えば図3に示す斜板式可変容量型ポンプ70がある。
【0047】
図3において、71はハウジング本体72とヘッドセクタ80から構成されたハウジング、75は軸受73,74によりハウジング71に対して回転可能に支持されるドライブシャフト、76はドライブシャフト75にスプライン結合したシリンダブロック、83は傾転可能に設けられる斜板、84は斜板83の傾角を制御する傾角制御機構、88は傾角制御機構84を駆動するサーボシリンダ、91はシリンダブロック76とヘッドセクタ80との間に摺動可能に設けられる弁板である。
【0048】
サーボシリンダ87は、ハウジング本体72に形成されたシリンダボア88と、このシリンダボア88に摺動可能に格納されたサーボピストン89と、このサーボピストン89を傾角が0°になる方向へ付勢するばね90とを備えている。シリンダボア88内に形成された圧力室89aは制御弁(図示しない)に接続されていて、この制御弁から圧力室89aにパイロット圧力を供給されることで、サーボピストン89がばね90に抗して変位するようになっている。
【0049】
サーボピストン89には先端部が球状に形成された突起85が設けられている。斜板83にはアーム86が設けられていて、このアーム86に孔86aが形成されている。サーボピストン89と斜板83とは、突起85が孔86aに摺動可能に挿入されることによって結合している。つまり、突起85とアーム86とから傾転制御機構83が構成されていて、サーボピストン89の直線運動が突起85とアーム86とを介して斜板83に伝達されることで、斜板83が傾転するようになっている。図3は、シリンダボア88内に形成された圧力室88aにパイロット圧力が供給された結果、サーボピストン89がばね90に抗して変位し、これに伴って斜板83の傾角が角度βとなった状態を示している。
【0050】
シリンダブロック76には、複数のシリンダボア77が形成されている。これらのシリンダボア77のそれぞれには、ピストン78が摺動可能に挿入されている。各シリンダボア77から突出する各ピストン78の端部と、斜板83との間には、シュー79が設けられている。各シュー79はピストン78と球面継手により結合している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の走行用HSTの一実施形態を示す油圧回路図である。
【図2】図1に示す可変容量型ポンプとして採用される斜軸式可変容量型ピストンポンプの一例を示す断面図である。
【図3】図1に示す可変容量型ポンプとして採用される斜板式可変容量型ピストンポンプの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 モータ側回路
4 走行モータ
5 第1入出ポート
6 第2入出ポート
10 ポンプ側回路
12 斜軸式可変容量型ポンプ
30 サーボシリンダ
40 方向制御弁
40a 中立位置
40b 第1位置
40c 第2位置
50 逆止弁
60 チャージ回路
61 チャージポンプ
62 第1チャージ管路
63,64 第2チャージ管路
65,66 チャージ用逆止弁
70 斜板式可変容量型ポンプ
87 サーボシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行モータと、この走行モータを駆動するための作動油を吐出する可変容量型ポンプと、この可変容量型ポンプと前記走行モータとの間で循環する作動油の流れの方向を制御する方向制御手段とを備えている走行用HSTにおいて、
前記可変容量型ポンプが、片傾転型の可変容量型ポンプであり、
前記方向制御手段が、前記可変容量型ポンプと前記走行モータとの間に介在する方向制御弁であることを特徴とする走行用HST。
【請求項2】
前記可変容量型ポンプが斜軸式可変容量型ポンプであることを特徴とする請求項1記載の走行用HST。
【請求項3】
前記吐出ポートから前記走行モータへの作動油の流れを許容し、前記走行モータから前記吐出ポートへの作動油の流れを阻止する逆止弁が、前記可変容量型ポンプの吐出ポートと前記方向制御弁との間に介在していることを特徴とする請求項1記載の走行用HST。
【請求項4】
前記方向制御弁の中立位置が、前記走行モータと前記可変容量型ポンプとが遮断され、前記可変容量型ポンプと前記方向制御弁との間で作動油が循環するように設定されたタンデムセンタであることを特徴とする請求項1記載の走行用HST。
【請求項5】
前記可変容量型ポンプの吸入ポートと前記方向制御弁とを接続する管路から作動油を補充するチャージ回路を備えていることを特徴とする請求項1記載の走行用HST。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−315430(P2007−315430A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143065(P2006−143065)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】