説明

走行車システム

【課題】基板カセット保管部を軌道上方に配置することで省スペース化を図り、無人走行台車の搬送効率を向上することができる走行車システムを提供する。
【解決手段】走行車システムAは、基板の保管又は所定の処理を施す基板処理装置と、基板を基板カセット1に収容した状態で上下方向に昇降させる昇降部10及び基板カセット1を基板処理装置に向けて水平移動する水平移動部8a,8bを有し、基板カセット1を基板処理装置に向けて設けた軌道Lに沿って搬送する無人走行台車AGと、軌道Lの上方において基板カセット1を保持して保管する基板カセット保管部BF1と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を収容する基板カセットを載置してループ状の軌道を循環走行する走行車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軌道上を走行する走行車に対し搬送物の出し入れを行う搬送物保管棚を軌道に沿って配置した走行車システム(例えば特許文献1参照)や、搬送物を処理する処理装置に対し搬送物を移載するために走行車が進入可能なバースを設けた走行車システムが知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に係る走行車システムは、ループ状軌道の中央の内部に供給ステーションを設けると共にループ状軌道の側面に沿って保管棚を配置し、走行軌道を走行する走行車に両側から搬送物を移載するようにしたシステムである。
【0004】
また、特許文献2に係る走行車システムは、軌道の外側に走行車を処理装置に横付けするためのバースを設け、バースに進入した走行車と処理装置との間で搬送物のローディング、アンローディングを行うようにしたシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−273204号公報
【特許文献2】特開2001−341640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る走行車システムでは、保管棚(立体自動倉庫)が高層建築物として構成されているので、搬送物の収容能力は大きいが保管棚の保管部から搬送物を出し入れする際にスタッカークレーンが使用されている。
【0007】
したがって、搬送物の出し入れに時間が掛かるだけでなく、搬送物を一時的に保管するバッファ機能を備えていないため搬送効率が低下してしまう。また、保管棚は多段、多連に構成されているが、保管棚と走行車とは別個に構成されていたため、搬送効率が悪くなる問題を有している。
【0008】
また、特許文献2に係る走行車システムでは、軌道の外側には処理装置のローディング、アンローディング位置に走行車を横付けするためのバース(空間)を設けてあるので、走行車に対する移載に時間が掛かり走行車の搬送効率が低下する問題を有している。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、設備の省スペース化と無人走行台車の搬送効率を向上することができる走行車システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る走行車システムでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明に係る走行車システムは、基板の保管又は所定の処理を施す基板処理装置と、前記基板を基板カセットに収容した状態で上下方向に昇降させる昇降部及び前記基板カセットを前記基板処理装置に向けて水平移動する水平移動部を有し、前記基板カセットを前記基板処理装置に向けて設けた軌道に沿って搬送する無人走行台車と、前記軌道の上方において基板カセットを保持して保管する基板カセット保管部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、軌道上方に基板カセット保管部を備えることで走行車システム全体の省スペース化を図ることができる。また、走行車に対する基板カセットの移載時間を短縮し無人走行台車の搬送効率並びにリードタイムを向上することができる。
【0012】
また、前記基板カセットに被保持部材を設け、前記基板カセット保管部に前記被保持部材に係合する保持部材を設けたことを特徴とする。
これにより、容易かつ確実に基板カセット保管部上に基板カセットを載置することができる。
【0013】
また、前記保持部材は、上下方向又は水平方向に可動に構成される。
これにより、容易あるいは効率的に基板カセット保管部に基板カセットを保持することができる。
【0014】
また、前記無人走行台車を前記基板カセット保管部の下方で停止させ、前記昇降部と前記水平移動部を協動させて前記基板カセット保管部に前記基板カセットを保持させることを特徴とする。
【0015】
また、前記無人走行台車の走行部と前記昇降部を協動させて前記基板カセット保管部に基板カセットを保持させる。
【0016】
また、前記基板カセットは、多段に積み重ね可能に構成されていることを特徴とする。
これにより、更に走行車システム全体の省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば以下の効果を得ることができる。
無人走行台車が走行する軌道上方に、基板カセット保管部を備えているので、走行車システム全体の省スペース化を図ることができる。これにより、無人走行台車に対する基板カセットの移載時間を短縮し無人走行台車の稼働効率並びにリードタイムを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る走行車システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】基板カセットを示す図である。
【図3】無人走行台車と基板カセット保管部との関係を示す正面図である。
【図4】無人走行台車と基板カセット保管部との関係を示す側面図である。
【図5】無人走行台車と基板カセット保管部との関係を示す平面図である。
【図6】基板カセットを基板カセット保管部に移載する動作の説明図である。
【図7】基板カセット保管部の変形例を示す正面図である。
【図8】基板カセット保管部の変形例を示す側面図である。
【図9】基板カセット保管部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る走行車システムAの実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、有軌道無人走行台車(以下台車AGと称する)を案内走行するためのループ状の軌道Lが敷設されている。この軌道Lは、バッファ側軌道LAと、処理側軌道LBと、両軌道LA,LBの両末端間を連絡する一対の連絡軌道SLとからループ状に構成されている。したがって、台車AGは前記のように構成されたループ状の軌道Lを循環走行するようになっている。
【0020】
バッファ側軌道LAの両側(処理側軌道LBの片側を兼ねる)には、搬送物となる基板カセット1を一時保管するバッファST1,ST2が配設されている。これらバッファST1,ST2は、一段又は多段の棚から構成されていて、これらバッファST1,ST2には基板カセット1が保管される。
【0021】
一方、処理側軌道LBの残りの片側には、例えばガラス板など基板Gに対し洗浄処理を行う基板処理装置R1と、例えば基板Gに対しコーティング処理を行う基板処理装置R2が隣接して配設されている。
【0022】
両軌道LA,LBの末端には、台車AGを移載する為のトラバーサーTがそれぞれ往復走行可能に配設されており、トラバーサーTの載置面には両軌道LA,LBと同一高さの軌道を備えている。
【0023】
基板処理装置R1,R2は、処理側軌道LBに面する側に台車AG内の未処理の基板Gが収容された基板カセット1を受け入れる2つのローディングステーションLSと、処理済みの基板Gが収容された基板カセット1を台車AG側に払い出すアンローディングステーションULSが配設されている。
【0024】
また、基板処理装置R1,R2には、ローディングステーションLS及びアンローディングステーションULSに載置された基板カセット1との間で基板Gを一枚ずつ搬入、搬出するための搬入コンベアLCと搬出コンベアULCがそれぞれ接続されている。
【0025】
台車AGは、後述する基板カセット1を載置しつつ軌道L上を走行する、四つの車輪4を有する台車本体(走行部)11と、台車本体11上に載置された基板カセット1を上下方向に昇降させるリフト(昇降部)10と、基板カセット1を軌道LA,LBに直交する方向に水平移動させるために一体となって駆動する一対のフォーク(水平移動部)8a,8bから構成されている。
ループ状の軌道Lには、複数台(図1の例では5台)の台車AGが配置される。これら台車AGは、全て同一の構造となっている。
【0026】
次に、台車AGにより搬送される基板カセット1について説明する。
基板カセット1は、例えばガラス基板などの基板Gを複数枚(5〜6枚)保管できるように構成されている。
【0027】
基板カセット1は、図2(a)に示すように、基板Gを出し入れする開口部2を有する扁平型直方体で箱形に構成されている。基板カセット1は、前枠FFL、側枠SFL、後枠BFL、中間梁部材3とからなる一対の枠体と、一対の枠体の四隅に配置されて一対の枠体を連結する支柱(不図示)と、開口部2以外の外周に貼り付けた両側板SPと、天板TPとから構成されている。
【0028】
基板カセット1の下面は、図2(b)に示すように、底板を設けずに側枠SFL、前枠FFL,後枠BFLないし梁部材3が露呈した開放構造となっている。基板カセット1の内部には、複数枚(5〜6枚)の基板Gを所定間隔毎に保持するために、対向する両側枠SFL間には複数本のワイヤーWが横方向に張設されて、前後方向に一定間隔で配置されている。
【0029】
基板カセット1の両側板SPには、一対の幅狭の爪片Nが上端の前後部位に互いに離間して4カ所からそれぞれ水平に突設している。
なお、爪片Nは、幅広の爪片Nとして形成することもでき、この場合は、基板カセット1の両側板SPの中央上端からそれぞれ水平に突設されている。
【0030】
次に、軌道LA(LB)の上方に配設される基板カセット保管部BF1について説明する。
台車AGが循環走行する軌道LA(LB)の上方には、複数の基板カセット保管部(以下バッファBF1と称する)が連設している。
【0031】
バッファBF1は、軌道LA,LBの側面に沿って床面Fに所定間隔で立設した複数の支柱5と、これらの支柱5からバッファ側軌道LAの上方に向けて水平に延出した支持アーム6と、支持アーム6前後の両側4カ所から走行方向に向けて突出した保持片K1とから構成されている。
バッファBF1は、支柱5と支持アーム6により逆L字型に形成されており、支持アーム6は台車AG上に載置される基板カセット1と干渉しない高さに設定されている。
【0032】
次に、台車AG上の基板カセット1を軌道LA(LB)上方のバッファBF1に移載する動作に付き、図6を参照して説明する。
先ず、図6(a)に示すように、基板カセット1を載置した台車AGが軌道LAを走行して、バッファBF1の下方において停止する。より正確には、台車AGの走行方向において、台車AGに載置した基板カセット1の爪片NとバッファBF1の保持片K1が一致する位置で台車AGを停止する。
【0033】
次いで、図6(b)に示すように、台車AGのリフト10を起動させてフォーク8a,8b上の基板カセット1をバッファBF1の保持片K1よりもやや上方まで上昇させる。
この状態では、支持アーム6の保持片K1がバッファ側軌道LAの片側(図6(b)では右側)に位置しているため、基板カセット1を垂直上方に上昇させても基板カセット1の爪片Nとの干渉を回避されている。
【0034】
更に、図6(c)に示すように、フォーク8a,8bをバッファ側軌道LAの片側に伸長させて、基板カセット1の爪片NをバッファBF1の保持片K1上で位置決めする。
【0035】
最後に、図6(d)に示すように、リフト10を下降させる。これにより、台車AG上の基板カセット1は、バッファ側軌道LA上方のバッファBF1に移載される。
そして、リフト10並びにフォーク8a,8bを初期位置に復帰させる。
【0036】
なお、バッファBF1に載置された基板カセット1を台車AG上に移載する場合には、上述した動作を逆の順序で行えばよい。
【0037】
このように、本実施形態に係る走行車システムAでは、軌道LA(LB)の上方にバッファBF1を備えているので、走行車システムA全体の省スペース化を図ることができる。これにより、台車AGに対する基板カセット1の移載時間を短縮し、台車AGの稼働効率並びにリードタイムを向上することができる。
【0038】
また、台車AGが有しているリフト10とフォーク8a,8bを用いることで容易にバッファBF1に基板カセット1を載置できるので、特別な設備を必要とせず、走行車システムAの低コスト化を図ることができる。
【0039】
次に、基板カセット保管部の変形例について、図7〜図9を参照して説明する。
図7〜図9に示すように、バッファBF2は、バッファBF1に対し、基板カセット1との係止位置を90度回転させたものである。
すなわち、バッファBF2は、バッファ側軌道LAの両外側に沿って前後の床面F上に不図示の支柱が立設しており、この支柱の所定高さ位置となる上部にはバッファ側軌道LAと平行な横枠12a,12bがそれぞれ設けられる。これら両横枠12a,12bの内側には、バッファ側軌道LAを向いて水平に突設する保持片K2が前後に離間して対向配置されている。
【0040】
一方、台車AG上に載置される基板カセット1には、幅狭の爪片Mが基板カセット1上端の左右部位にバッファの保持片K2と同一間隔に離間してそれぞれ水平に突設している。つまり、爪片Mは、前述した爪片Nとは異なり、搬送方向に対して左右の面に設けられる。
【0041】
次に、台車AG上の基板カセット1を軌道LA(LB)の上方のバッファBF2に移載する動作に付き、図7〜図9を参照して説明する。
まず、台車AGがバッファBF2の直下まで走行した停止する。より正確には、台車AGの走行方向において、基板カセット1の爪片MとバッファBF2の保持片K1が一致しない場所で台車AGを停止する(図8,図9参照)。
【0042】
次に、台車AGのリフト10を駆動して、基板カセット1を上昇移動する。
そして、爪片Nが保持片K1より高い位置まで上昇させた後に、台車AGを爪片Mと保持片K1が上下方向において重なる位置までバッファ側軌道LA上を移動させる。つまり、台車AGを僅かに走行方向に移動させて停止する。
【0043】
最後に、リフト10を下げる。これにより、保持片K1上に爪片Mがそれぞれ係止されて基板カセット1がバッファBF2に保管される。
【0044】
このように、バッファBF2を用いた場合では、台車AGのリフト10と走行部11を用いることで、台車AG上の基板カセット1をバッファBF2に係止して保管することができる。
【0045】
以上説明したように、本発明に係る走行車システムAによれば、軌道Lの上方に基板カセットを保管するバッファBF1,BF2を設けたので、走行車システムA全体の省スペース化を図ることができる。また、台車AGに対する基板カセット1の移載時間を短縮し、台車AGの搬送効率並びにリードタイムを向上することができる。
【0046】
前述した実施の形態で示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、基板Gは、半導体基板でも良い。
また、台車AGは、床面上を走行する構成で説明したが、天井側を走行するものでも良い。
【0048】
また、爪片N,Mは、両側板SPから外側に向けて突設した構成として説明したが、これに限らず溝や穴として構成することもできる。
【0049】
また、基板カセット1をバッファBF1,BF2に1つだけ載置する場合について説明したが、基板カセット1を多段に積み重ねてもよい。これにより、更に省スペース化を図ることができる。基板カセット1を多段に積み重ねる場合には、バッファBF1,BF2の保持片K1を高さ方向に複数組設けてもよい。また、一組の保持片K1を上下移動可能に構成してもよい。
【0050】
また、保持片K1,K2は、水平方向で進退自在な可動式として構成とすることもできる。これにより、リフト10の駆動のみで基板カセット1を移載することが可能となる。
【0051】
また、バッファBF1,BF2の保持片K1,K2上に爪片N,Mを有する基板カセット1を載置する場合に限らず、バッファBF1,BF2の保持部により基板カセット1の側面を挟持する場合であってもよい。
【0052】
上述した実施形態では、軌道Lをループ状に構成したが、直線軌道であってもよい。つまり、台車AGは、直線軌道を往復移動する場合であってもよい。また、台車AGは全て同一の構造でなくてもよく、複数種類の台車が混在する場合であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…基板カセット、 8a,8b…フォーク(水平移動部)、 10…リフト(昇降部)、 11…台車本体(走行部)、 A…走行車システム、 AG…台車(無人走行台車)、 L(LA,LB)…軌道、 R1,R2…基板処理装置、 BF1,BF2…バッファ(基板カセット保管部)、 ST1,ST2…バッファ(基板処理装置)、 N,M…爪片(保持部材)、 K1,K2…保持片(被保持部材)、 G…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の保管又は所定の処理を施す基板処理装置と、
前記基板を基板カセットに収容した状態で上下方向に昇降させる昇降部及び前記基板カセットを前記基板処理装置に向けて水平移動する水平移動部を有し、前記基板カセットを前記基板処理装置に向けて設けた軌道に沿って搬送する無人走行台車と、
前記軌道の上方において基板カセットを保持して保管する基板カセット保管部と、
を備えることを特徴とする走行車システム。
【請求項2】
前記基板カセットに被保持部材を設け、
前記基板カセット保管部に前記被保持部材に係合する保持部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の走行車システム。
【請求項3】
前記保持部材は、上下方向又は水平方向に可動に構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の走行車システム。
【請求項4】
前記無人走行台車を前記基板カセット保管部の下方で停止させ、
前記昇降部と前記水平移動部を協動させて前記基板カセット保管部に前記基板カセットを保持させることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の走行車システム。
【請求項5】
前記無人走行台車の走行部と前記昇降部を協動させて前記基板カセット保管部に基板カセットを保持させることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の走行車システム。
【請求項6】
前記基板カセットは、多段に積み重ね可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の走行車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−235212(P2010−235212A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81661(P2009−81661)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】