説明

走行軌跡演算装置、および、走行軌跡演算方法

【課題】速度パターンを固定化することなくエンジン特性の不連続性に基づくローカルミニマム問題を回避して、燃費等に関して全体最適化を図ることができる、走行軌跡演算装置、および、走行軌跡演算方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、道路情報を記憶し、記憶した道路情報に基づいて道路上を車両が走行する場合の走行状態を予測し、予測された走行状態に基づいて、道路を複数の道路区間に分割し、道路区間毎に評価関数を設定し、道路区間毎に設定された評価関数に基づいて、道路上を走行する車両の走行軌跡を演算することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行軌跡演算装置、および、走行軌跡演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の原油高、および、CO削減等に対する環境改善技術の必要性から、燃費向上は最優先課題の一つである。従来、1リットルのガソリンでサーキット等を何キロメートル走行することができるかを競うエコラン競技等において、フリーラン(滑空、惰性走行)が燃費上理想であることが経験的に知られている。また、HV(ハイブリッドシステム)など走行中にエンジン停止が可能な車両では、車両の走行において燃費を向上させるために、走行中にエンジンを停止させることが有効であることがわかっている。
【0003】
自動車における究極的な燃費改善は利用者(ドライバー)の希望よりも車両において最適な速度パターンを与えて走らせることであり、実験などの結果においても30%以上という燃費対策としては桁違いの結果がでている。近年、車両の自動走行制御や走行アシストを目的として、燃費等の評価関数を用いて、走行軌跡や変速比を最適化する最適化手法が開発されている(特許文献1、2参照)。ここで、最適化手法は、一般的に、前回生成した走行軌跡から新たに生成した走行軌跡が、連続的に理想解に近づいていくことを前提としている。すなわち、最適化技術は、ある速度パターンAよりも相対的に優れた速度パターンBの先に究極的に優れたパターンCがあるはずであるとの前提に基づいて、AをBに変形するという処理を繰り返し、最適解であるCに到達させる技術であり、現在より良いパターンの延長に最高のパターンが存在し、その間に悪いパターンは存在しないということが前提条件となる。
【0004】
しかしながら、最適化手法を燃費の評価に適用しようとした場合、エンジンは、低回転付近(例えば、アイドル800〜1500回転程度)の効率が最も悪く、ゼロ回転と中回転以上が効率がよいという、不連続な特性を持つために、評価関数の処理を繰り返し行って全体を最適化しようとしても、エンジンを停止させる走行状態(ゼロ回転)が存在する走行パターンが得られず、結果として燃費を向上させるために行う最適化手法で得られた速度パターンが必ずしも燃費のよい速度パターンにならない、という問題があった。すなわち、従来の最適化手法をそのまま適用すると、エンジンの効率がよい回転数(中・高回転)からエンジンが停止状態(ゼロ回転)に向かって回転数が下がる領域(低回転付近)においては、逆にエンジン効率が低下し燃費が悪化して低回転を含む速度パターンは棄却されてしまうためローカルミニマムに陥り、加速走行と惰性走行とを繰り返す等、燃費に理想的な走行パターンには辿り着かないという問題があった。
【0005】
そこで、従来は、加速走行と惰性走行を含む速度パターンを固定化して拘束条件として全体最適を諦めることにより、エンジン作動・停止間の熱効率の不連続性に起因するローカルミニマム問題を回避して、燃費等に関する走行軌跡の最適化を行っていた。ここで、特許文献3の方法は、出発位置から到達位置までの区間において、移動体が走行する際の移動を拘束する拘束条件を設定し、燃費等に関して移動結果を向上させる方法である。例えば、加速→定常走行→減速が1回という範囲において固定の速度パターンを設定して拘束条件を定めることによって、低燃費速度パターンを生成する。
【0006】
また、特許文献4および5の方法は、評価関数による燃費等の評価に代えて、速度や車間距離に関するマップを予め記憶しておき、記憶したマップに照らし合わせて惰性走行等を行うか否かを決定することにより燃費特性の向上を図る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−251597号公報
【特許文献2】特開平10−246325号公報
【特許文献3】特開2006−327545号公報
【特許文献4】特開2007−187090号公報
【特許文献5】特開2007−291919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の最適化手法においては、燃費等に関して局所的な(ローカルな)最適化を行えるものの、必ずしも全体最適を得られるものではないという問題点を有していた。
【0009】
特に、特許文献3の方法では、加速と惰性の繰り返しを行うといった、おおよその走行計画が見積もられている場合に、部分部分において低燃費な走行を提供するものであり、局所的な燃費向上効果はあるものの、実際の走行における出発から到着までの全体の燃費をより向上させるような計算を踏まえて繰り返しパターンが生成されているものではない。すなわち、実際の走行環境では、特許文献3の図17のような連続的な解を求める必要があるが、特許文献3の方法では、固定パターンの結果を流用するのみで部分部分においても具体的な加速度等の調整などが含まれていないため、全体最適を求めるためには別の工夫が必要となる。
【0010】
また、特許文献4および5の方法では、速度や車間距離に関するマップを用いて局所的な燃費の向上を図ることができるものの、全体的な最適化を行うことは考慮されていない。
【0011】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたもので、速度パターンを固定化することなくエンジン特性の不連続性に基づくローカルミニマム問題を回避して、燃費等に関して全体最適化を図ることができる、走行軌跡演算装置、および、走行軌跡演算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するため、本発明の走行軌跡演算装置は、車両の将来の走行軌跡を演算する、記憶部と制御部を少なくとも備えた走行軌跡演算装置において、前記記憶部は、道路情報を記憶する道路情報記憶手段、を備え、前記制御部は、前記道路情報記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、道路上を前記車両が走行する場合の走行状態を予測する走行状態予測手段と、前記走行状態予測手段により予測された前記走行状態に基づいて、前記道路を複数の道路区間に分割し、前記道路区間毎に評価関数を設定する評価関数設定手段と、前記評価関数設定手段により前記道路区間毎に設定された前記評価関数に基づいて、前記道路上を走行する前記車両の走行軌跡を演算する走行軌跡演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の走行軌跡演算装置は、上記記載の走行軌跡演算装置において、前記走行軌跡演算手段は、前記評価関数設定手段により分割された前記道路区間の区切り位置を可変条件として前記走行軌跡を演算すること、を特徴とする。
【0014】
また、本発明の走行軌跡演算装置は、上記記載の走行軌跡演算装置において、前記走行状態予測手段は、前記道路情報記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、前記道路上を前記車両が走行する場合に予測される速度パターンを演算し、前記評価関数設定手段は、前記走行状態予測手段により演算された前記速度パターンに基づいて、前記道路区間として少なくとも加速区間と減速区間に分割し、前記加速区間に加速区間用の前記評価関数を、前記減速区間に減速区間用の前記評価関数を設定すること、を特徴とする。
【0015】
また、本発明の走行軌跡演算装置は、上記記載の走行軌跡演算装置において、前記評価関数設定手段は、前記加速区間用の前記評価関数として、エンジン回転数が中回転以上の場合をゼロ回転付近の場合と比べて望ましいと評価する前記評価関数を設定すること、を特徴とする。
【0016】
また、本発明の走行軌跡演算装置は、上記記載の走行軌跡演算装置において、前記評価関数設定手段は、前記加速区間用の前記評価関数として、エンジンの熱効率の最良点を1としたときの各点の前記熱効率の比率を求め、全体から1を引いたものが評価値となるよう前記評価関数を設定し、エンジン回転数がゼロ回転付近の前記評価値を0より大きな数値とすること、を特徴とする。
【0017】
また、本発明の走行軌跡演算装置は、上記記載の走行軌跡演算装置において、前記評価関数設定手段は、前記減速区間用の前記評価関数として、エンジン回転数がゼロ回転付近の場合を中回転以上の場合と比べて望ましいと評価する前記評価関数を設定すること、を特徴とする。
【0018】
また、本発明の走行軌跡演算装置は、上記記載の走行軌跡演算装置において、前記評価関数設定手段は、前記減速区間用の前記評価関数として、転がり抵抗を基準として0とした場合に、前記転がり抵抗の減速度から離れた加減速度エネルギーに対して、ハイブリッドシステムにおけるエネルギー入出力のロスを比例させた数値が評価値となる前記評価関数を設定し、エンジン回転数が中回転以上の場合を0より大きな数値とすること、を特徴とする。
【0019】
また、本発明の走行軌跡演算装置は、上記記載の走行軌跡演算装置において、前記走行状態予測手段は、前記道路情報記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、前記道路上を前記車両が走行する場合に予測される摩擦円使用率を演算し、前記評価関数設定手段は、前記走行状態予測手段により演算された前記摩擦円使用率が相対的に高い前記道路区間に、前記摩擦円使用率が相対的に低い前記道路区間とは異なる前記評価関数を設定すること、を特徴とする。
【0020】
また、本発明の走行軌跡演算装置は、上記記載の走行軌跡演算装置において、前記評価関数設定手段は、前記走行状態予測手段により演算された前記摩擦円使用率が相対的に高い場合に、前記走行状態が加速状態となる前記道路区間に、エンジン回転状態を基本としてハイブリッドシステムと合わせて熱効率を重視した加速を望ましいと評価する前記評価関数を設定し、前記走行状態が減速状態となる前記道路区間に、エンジンオフ状態を基本として回生と電力アシストによる減速を望ましいと評価する前記評価関数を設定すること、を特徴とする。
【0021】
また、本発明は、車両の将来の走行軌跡を演算する、記憶部と制御部を少なくとも備えた走行軌跡演算装置において実行される走行軌跡演算方法であって、前記記憶部は、道路情報を記憶する道路情報記憶手段、を備えており、前記制御部により実行される、前記道路情報記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、道路上を前記車両が走行する場合の走行状態を予測する走行状態予測ステップと、前記走行状態予測ステップにて予測された前記走行状態に基づいて、前記道路を複数の道路区間に分割し、前記道路区間毎に評価関数を設定する評価関数設定ステップと、前記評価関数設定ステップにて前記道路区間毎に設定された前記評価関数に基づいて、前記道路上を走行する前記車両の走行軌跡を演算する走行軌跡演算ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、速度パターンを固定化することなくエンジン特性の不連続性に基づくローカルミニマム問題を回避して、燃費等に関して全体最適化を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明が適用される車両運動制御装置を備えた本システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施の形態における本車両運動制御装置100の基本処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本実施の形態1における車両運動制御装置100の処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、加速区間用の評価式のグラフを一例として示す図である。
【図5】図5は、減速区間用の評価式のグラフを一例として示す図である。
【図6】図6は、本実施の形態2における車両運動制御装置100の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる走行軌跡演算装置および走行軌跡演算方法並びにプログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
[1.構成]
まず、本発明にかかる走行軌跡演算装置および走行軌跡演算方法並びにプログラムを実施するための車両運動制御装置および当該装置を包含するシステムの構成について図1を参照して説明する。図1は、本発明が適用される車両運動制御装置を備えた本システムの構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。本システムは、概略的に、車両運動制御装置100と、車両や道路等に関する各種の状態量を入力する装置(道路形状情報入力装置11〜レーン認識センサ17)および車両運動制御値の出力先の装置(操舵制御装置21〜ブレーキアクチュエータ25)とを、任意の通信路を介して通信可能に接続して構成されている。
【0026】
図1において、道路形状情報入力装置11は、車両が将来通過する道路の形状等を車両運動制御装置100に入力するナビゲーションシステム等の装置であり、道路形状(幅員、勾配等)等に関する道路形状情報を車両運動制御装置100に入力する。例えば、道路形状情報入力装置11は、GPSアンテナや処理装置などを備えており、自車両の位置などを推定するセンサ等であって、道路形状情報入力装置11は、GPSアンテナでGPS衛星からのGPS信号を受信し、処理装置でそのGPS信号を復調し、復調された各GPS衛星の位置データに基づいて、自車両の位置などを演算する。そして、道路形状情報入力装置11は、自車両の現在位置の検出および目的地までの経路案内を行うナビゲーションシステムを用いて、地図データベース等から現在走行中の道路の道路形状情報を読み出し、道路形状情報をナビ信号として車両運動制御装置100に送信する。なお、ナビゲーションシステムを備えない車両の場合、少なくとも地図データベース等の道路情報を記憶して、自車両の位置から道路形状情報を読み出す構成としてもよく、また、路車間通信等を利用して道路形状情報を取得してもよい。
【0027】
また、ハンドル操作量センサ12、ブレーキ操作量センサ13、アクセル操作量センサ14は、それぞれ、ハンドル、ブレーキ、アクセルの操作量を検出するセンサである。ハンドル操作量センサ12、ブレーキ操作量センサ13、アクセル操作量センサ14は、各操作量を検出し、検出した操作量を車両運動制御装置100に送信する。
【0028】
また、ヨーレートセンサ15は、自車両で発生しているヨーレートを検出するセンサである。ヨーレートセンサ15では、ヨーレートを検出し、検出したヨーレートをヨーレート信号として車両運動制御装置100に送信する。
【0029】
また、車輪速センサ16は、車両の4輪にそれぞれ設けられ、車輪の回転速度(車輪の回転に応じたパルス数)を検出するセンサである。車輪速センサ16では、所定時間毎の車輪の回転パルス数を検出し、検出した車輪回転パルス数を車輪速信号として車両運動制御装置100に送信する。車両運動制御装置100では、各車輪の回転速度から車輪速をそれぞれ演算し、各車輪の車輪速から車体速(車速)を演算する。
【0030】
また、レーン認識センサ17は、カメラや画像処理装置を備えており、一対の白線(車線)を検出するセンサである。レーン認識センサ17は、カメラで自車両の前方の道路を撮像し、画像処理装置で撮像映像から車両が走行している車線を示す一対の白線を認識する。そして、認識した一対の白線から車線幅、一対の白線の中心を通る線(すなわち、車線の中心線)、車線の中心の半径(カーブ半径R)、カーブ半径Rからカーブ曲率γ(=1/R)、車線に対する車両の向き(ヨー角)および車線の中心に対する車両中心の位置(オフセット)等を演算する。そして、レーン認識センサ17は、これらの認識した一対の白線の情報や演算した各情報を白線検知信号として車両運動制御装置100に送信する。
【0031】
図1において車両運動制御装置100は、概略的に、制御部102と記憶部106とインターフェース(図示せず)等を備えて構成されるECU(Engine Control Unit)等の装置である。ここで、制御部102は、車両運動制御装置100の全体を統括的に制御するCPU等である。また、記憶部106は、各種のデータベースやテーブルなどを格納するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の装置である。これら車両運動制御装置100の各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0032】
記憶部106に格納される各種のデータベースやテーブル(道路形状情報ファイル106a)は、固定ディスク装置等のストレージ手段である。例えば、記憶部106は、各種処理に用いる各種のプログラムやテーブルやファイルやデータベース等を格納する。
【0033】
これら記憶部106の各構成要素のうち、道路形状情報ファイル106aは、道路形状情報等の道路情報を記憶する道路情報記憶手段である。ここで、道路形状情報は、車両が将来走行する道路の形状を定義する情報であり、例えば、道路形状情報入力装置11から受信した自車両の位置から目標地点までの経路における道路の形状等を格納している。ここで、道路情報には、レーン認識センサ17から受信した白線検知信号に基づく情報(車線幅、中心線、カーブ半径R、カーブ曲率γ等の情報)を含んでもよい。
【0034】
また、図1において、制御部102は、OS(Operating System)等の制御プログラムや、各種の処理手順等を規定したプログラム、および、所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部102は、機能概念的に、走行状態予測部102a、評価関数設定部102d、走行軌跡最適化部102e、車両運動制御部102fを備えて構成されている。
【0035】
このうち、走行状態予測部102aは、道路形状情報ファイル106aに記憶された道路形状情報等の道路情報に基づいて、道路上を車両が走行する場合の走行状態(状態量)を予測する走行状態予測手段である。車両の走行状態を表す状態量としては、一例として、速度(車速)や、加速度、エンジン回転数、トルク、馬力、摩擦円使用率等が挙げられる。ここで、走行状態予測部102aは、図1に示すように、速度パターン演算部102b、摩擦円使用率演算部102cを備えて構成されている。速度パターン演算部102bは、道路形状情報ファイル106aに記憶された道路形状情報に基づいて、道路上を車両が走行する場合に予測される速度パターンを演算する速度パターン演算手段である。ここで、速度パターンは、車両の速度(車速)についてのパターンに限られず、加速度についての加速ないし減速等のパターンでもよく、また、エンジン回転数やトルクや馬力や駆動力等の値や増減等のパターンでもよい。また、摩擦円使用率演算部102cは、道路形状情報ファイル106aに記憶された道路形状情報に基づいて、道路上を車両が走行する場合に予測される摩擦円使用率を演算する摩擦円使用率演算手段である。
【0036】
また、評価関数設定部102dは、走行状態予測部102aにより予測された走行状態(状態量)に基づいて、道路を複数の道路区間に分割し、道路区間毎に評価関数を設定する評価関数設定手段である。
【0037】
ここで、評価関数設定部102dは、走行状態予測部102aの速度パターン演算部102bにより演算された速度パターンに基づいて、道路区間として少なくとも加速区間と減速区間に分割し、加速区間に加速区間用の評価関数を、減速区間に減速区間用の評価関数を設定してもよい。例えば、速度パターンが車速で定義されている場合には、一例として、加速状態の区間を加速区間とし、減速状態の区間を減速区間と設定する。また、速度パターンが加速度で定義されている場合には、一例として、加速度が0より大きい場合に加速区間とし、0以下の場合に減速区間と設定してもよい。また、速度パターンが、エンジン回転数で定義されている場合には、一例として、回転数が閾値(例えば、ゼロ回転や低回転)より大きい場合に加速区間とし、回転数が閾値以下の場合に減速区間と設定してもよい。この他、速度パターンがトルクや馬力や駆動力等で定義されている場合には、それぞれ予め設定された閾値に基づき加速区間と減速区間を設定する。なお、減速区間には、惰性走行状態の区間(惰行区間)や、一定速度状態の区間(定常走行区間)等を含めてもよく、反対に、加速区間に定常走行区間等を含めてもよい。また、これに限られず、加速区間と減速区間とは別に、惰行区間や定常走行区間等を個別に設定してもよい。
【0038】
ここで、加速区間用の評価関数は、一例として、熱効率が良いエンジン回転状態を望ましいと評価する評価関数であり、例えば、エンジン回転数が中回転以上の場合をゼロ回転付近の場合と比べて望ましいと評価する評価関数である。より具体的には、加速区間用の評価関数は、エンジンの熱効率の最良点を1としたときの各点の熱効率の比率を求め、全体から1を引いたものが評価値となる評価関数であり、エンジン回転数がゼロ回転付近で評価値が0より大きな数値となる。また、減速区間用の評価関数は、一例として、エンジンオフの状態を望ましいと評価する評価関数であり、例えば、エンジン回転数がゼロ回転付近の場合を中回転以上の場合と比べて望ましいと評価する評価関数である。より具体的には、減速区間用の評価関数は、転がり抵抗を基準として0とした場合に、転がり抵抗の減速度から離れた加減速度エネルギーに対して、ハイブリッドシステムにおけるエネルギー入出力のロスを比例させた数値が評価値となる評価関数であり、エンジン回転数が中回転以上の場合に0より大きな数値となる。
【0039】
また、評価関数設定部102dは、走行状態予測部102aの摩擦円使用率演算部102cにより演算された摩擦円使用率に基づいて、摩擦円使用率が相対的に高い場合には、走行状態が加速状態となる道路区間に、エンジン回転状態を基本としてハイブリッドシステムと合わせて熱効率を重視した評価関数を設定してもよい。
【0040】
また、走行軌跡最適化部102eは、評価関数設定部102dにより道路区間毎に設定された評価関数に基づいて、道路上を走行する車両の走行軌跡を演算する走行軌跡演算手段である。なお、走行軌跡には、車両が将来走行する座標位置に関する情報のみならず、速度パターンの情報を含んでもよい。ここで、走行軌跡最適化部102eは、最適化過程において、評価関数設定部102dにより分割された道路区間の区切り位置を可変条件としてもよい。例えば、走行軌跡最適化部102eは、最適化過程の繰り返し処理を行う中で、生成した走行軌跡の速度パターンが速度パターン演算部102bにより演算された速度パターンから変化し、評価関数設定部102dによる道路区間の設定のための閾値を超えたり下回ったりした場合に、それに応じて道路区間の長さを変動させてもよい。すなわち、走行軌跡最適化部102eは、走行軌跡の最適化処理中に、変化した速度パターン等に応じて、それぞれの評価関数に対応付けた道路区間を再設定してもよい。また、区切り位置を可変条件とするための他の例として、速度パターンはドライバの運転操作から読み取られる優先事項(例えば、燃費を優先するか、目的地への到達時間が早いことを優先するか、という事項)によって変化させることもできる。つまり、ドライバの運転操作によって速度パターンが変化し、それに伴って評価関数ならびに道路区間が再設定されるようにしてもよい。
【0041】
また、車両運動制御部102fは、走行軌跡最適化部102eにより演算された走行軌跡に基づいて、操舵制御装置21や加減速制御装置23等に対して車両運動制御値を出力する車両運動制御手段である。
【0042】
図1に示すように、操舵制御装置21は、車両運動制御装置100から受信した車両運動制御値に基づいて、操舵アクチュエータ22に操舵制御信号を送信する制御装置である。
【0043】
また、操舵アクチュエータ22は、例えば、モータによる回転駆動力を、減速機構を介してステアリング機構(ラック、ピニオン、コラム等)に伝達し、ステアリング機構に操舵トルクを付与するためのアクチュエータである。操舵アクチュエータ22では、操舵制御装置21から操舵制御信号を受信すると、操舵制御信号に応じてモータが回転駆動して操舵トルクを発生させる。
【0044】
また、加減速制御装置23は、車両運動制御装置100から受信した車両運動制御値に基づいて、エンジン24やブレーキアクチュエータ25にエンジン制御信号やブレーキ制御信号等を送信する制御装置である。
【0045】
また、エンジン24は、駆動源の一つであり、スロットルバルブの開度を調整したり、エンジンのオン/オフを制御したりすることが可能な構成となっている。エンジン24では、加減速制御装置23からエンジン制御信号を受信すると、アクチュエータがエンジン制御信号に応じて作動し、スロットルバルブの開度の調整やエンジンのオン/オフの制御を行う。なお、本実施の形態をハイブリッド車に適用する場合、駆動力の一部をモータにより発生させてもよい。また、エンジン制御信号がエンジンオフ(ゼロ回転)を指定している場合には、ニュートラル状態となるようエンジンの出力軸と車輪との連結を切断してもよい。
【0046】
また、ブレーキアクチュエータ25は、各車輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ25では、加減速制御装置23からのブレーキ制御信号を受信すると、ブレーキ制御信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。なお、本実施の形態をハイブリッド車に適用する場合、ブレーキとして回生ブレーキを用いてもよい。
【0047】
[2.処理]
次に、このように構成された本実施の形態における本システムの処理の一例について、以下に図2〜図6を参照して詳細に説明する。
【0048】
[基本処理]
まず、本実施の形態における本車両運動制御装置100の基本処理の詳細について図2を参照して説明する。図2は、本実施の形態における本車両運動制御装置100の基本処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
理想的な低燃費走行を行う自動運転用の速度パターン生成を行う上で、勾配などの各種の非線形な情報を考慮して解析的に最適速度パターンを導出することはできないため、最適化処理を用いて導出する必要がある。しかしながら、ハイブリッド車において低燃費上、重要なエンジン停止状態(ゼロ回転)をそのままで最適化に導入することはローカルミニマムに陥りやすいため困難である。そのため、本実施の形態では、加速走行と惰性走行を繰り返す走行パターンを生成して最適化を行うために工夫を行う。すなわち、本実施の形態では、一旦は全体最適を考慮せず速度パターン等の走行状態を算出して、走行状態に応じた各道路区間に別々の評価関数を適用して最適化処理を行うことで、加速走行と惰性走行を繰り返す走行パターンを導入しつつ、さらに燃費向上効果を高める速度パターン(走行軌跡)を算出する。
【0050】
図2に示すように、まず、走行状態予測部102aは、道路形状情報ファイル106aに記憶された道路形状情報に基づいて、道路上を車両が走行する場合の走行状態(状態量)を予測する(ステップSA−1)。ここで、走行状態予測部102aは、速度パターン演算部102bの処理により、道路形状情報に基づいて、道路上を車両が走行する場合に予測される速度パターンを演算してもよく、摩擦円使用率演算部102cの処理により、道路上を車両が走行する場合に予測される摩擦円使用率を演算してもよい。
【0051】
そして、評価関数設定部102dは、走行状態予測部102aにより予測された状態量(速度パターン、摩擦円使用率等)に基づいて、道路を複数の道路区間に分割する(ステップSA−2)。ここで、評価関数設定部102dは、走行状態予測部102aの速度パターン演算部102bにより演算された速度パターンに基づいて、道路を加速区間と減速区間に分割してもよい。
【0052】
そして、評価関数設定部102dは、分割した道路区間毎に評価関数を設定する(ステップSA−3)。例えば、評価関数設定部102dは、加速区間には、エンジン回転数が中回転以上の場合をゼロ回転付近の場合と比べて望ましいと評価する評価関数を設定し、減速区間には、エンジン回転数がゼロ回転付近の場合を中回転以上の場合と比べて望ましいと評価する評価関数を設定する。すなわち、評価関数設定部102dは、加速区間用の評価関数として、熱効率が最もよい中回転付近の評価値を最小として下に凸となるような関数を設定し、減速区間用の評価関数は、転がり抵抗のみのゼロ回転付近の評価値を最小として下に凸となるような評価関数を設定する。
【0053】
そして、走行軌跡最適化部102eは、評価関数設定部102dにより道路区間毎に設定された評価関数に基づいて、道路上を走行する車両の走行軌跡を最適化する(ステップSA−4)。ここで、走行軌跡最適化部102eは、最適化において道路区間の区切り位置を可変条件としてもよい。すなわち、走行軌跡最適化部102eは、最適化過程の繰り返し処理を行う中で、生成した走行軌跡の速度パターンが速度パターン演算部102bにより演算された速度パターンから変化し、評価関数設定部102dによる道路区間の設定のための閾値を超えたり下回ったりした場合に、それに応じて道路区間の長さを変動させてもよい。
【0054】
これにて、車両運動制御装置100の基本処理が終了する。これにより、エンジンの熱効率の不連続性に起因するローカルミニマムを回避しながら、エンジン作動・停止を含んだ低燃費全体最適を求めることが可能となる。以上のように演算された走行軌跡は車両運動制御値となって、車両運動制御部102fにより、操舵制御装置21や加減速制御装置23等に出力され、車両の運転制御に供される。すなわち、車両運動制御装置100は、一定時間毎に、求めた最適な走行軌跡に従って走行するように、最適な走行軌跡と実際の車両状態(道路形状情報入力装置11による自車両の位置、各操作量センサ(ハンドル操作量センサ12〜アクセル操作量センサ14)の入力による操作量、ヨーレートセンサ15の入力によるヨーレート、車輪速センサ16の入力による車速等)との偏差に基づいて、操舵制御装置21に操舵制御信号や、加減速制御装置23にエンジン制御信号またはブレーキ制御信号等を送信する。
【0055】
[2−1.実施の形態1の処理]
次に、本実施の形態1における車両運動制御装置100の処理の詳細について図3〜図5を参照して説明する。図3は、本実施の形態1における車両運動制御装置100の処理の一例を示すフローチャートである。
【0056】
実施の形態1においては、車両運動制御装置100は、車両や道路等に関する各種の状態量を検出する装置(道路形状情報入力装置11やレーン認識センサ17等)からの入力(走行条件)に対して、全体最適を考慮することなく速度パターンを生成し、その加速区間と減速区間に対してそれぞれ異なる評価式を用いて全体最適を考慮に入れた速度パターンを再度演算し、最適化した走行軌跡(速度パターン)に基づく車両走行制御値を出力する。
【0057】
図3に示すように、まず、車両運動制御装置100は、利用者(ドライバ等)に道路形状情報入力装置11を介して目的地を設定させるよう制御し、道路形状情報入力装置11の処理によりルート検索を行って、走行ルートを取得し、道路形状情報ファイル106aに格納する(ステップSB−1)。
【0058】
そして、車両運動制御装置100は、道路形状情報入力装置11等のナビゲーションシステムや、テレマティクス、通信等の機能により、走行ルート上の勾配変化情報等の勾配情報を取得し、道路形状情報ファイル106aに格納する(ステップSB−2)。
【0059】
そして、車両運動制御装置100は、速度パターン演算部102bの処理により、全体最適を考慮しない(その場もしくはその付近のみで最適な)ロジックを用いて走行ルートに従ってシミュレーションを行い、走行ルート上の暫定的な速度パターンを生成する(ステップSB−3)。
【0060】
この全体最適を考慮しないロジックは、一例として、波状走行やギザギザ走行を生成するための技術を用いるものであり、目標下限車速到達後にエンジン24の駆動力を利用して目標上限車速まで加速させる加速走行と、目標上限車速到達後に駆動輪へのエンジンの駆動力の伝達を遮断して目標下限車速まで車両を惰性で走行させる惰性走行と、を交互に繰り返す波状走行パターンを生成するロジックである。目標上限車速には、例えば運転者のアクセルオフ時の車速を設定してもよく、目標上限車速と目標下限車速との車速差は、所定値であってもよく、路面勾配を考慮して加減してもよい。なお、1回の加速走行が始まってから惰性走行が終わるまでの周期が基準値より短い場合には、周期を長く補正して波状走行パターンを生成してもよい。例えば、加速走行時の加速度を小さくすることにより加速区間を長く補正することも可能であり、惰性走行時に電力アシストによる駆動力を加えて惰行区間を長く補正することも可能である。また、加速区間と惰行区間の間に定常走行区間を加えることにより周期を長く補正してもよい。なお、上記の波状走行を生成するロジックは一例であり、本実施の形態は、エンジンという動力発生装置を用いる限り、その熱効率特性(ゼロ回転と中回転の間に熱効率の悪い低回転領域がある不連続な特性)から究極的な低燃費を目指す上で広範囲に適用可能である。
【0061】
つづいて、車両運動制御装置100は、評価関数設定部102dの処理により、生成した走行パターンに基づき、加速度が所定値(例えば、0G)以上の区間に(ステップSB−4、Yes)、加速区間を設定し(ステップSB−5)、加速度が所定値(例えば、0G)未満の区間に(ステップSB−4、No)、減速区間を設定する(ステップSB−6)。
【0062】
そして、車両運動制御装置100は、評価関数設定部102dの処理により、減速区間の後に最大加速度が所定値(例えば、0.1G)未満の加速区間がある場合(ステップSB−7、Yes)、前後の減速区間と合わせて一つの減速区間に設定する(ステップSB−8)。この処理は、定常走行付近では加速区間と減速区間の切り替わりが頻発してしまう懸念があるために行うものであり、評価関数設定部102dは、ハイブリッドシステムにおける電力アシスト限界(例えば、0.1G)まではヒステリシスを持たせて区間の併合を行う。
【0063】
そして、車両運動制御装置100は、評価関数設定部102dの処理により、加速区間に、エンジン回転数が中回転以上を(0回転に比べて)望ましいと判定する評価式を設定する(ステップSB−9)。より具体的には、エンジン24の熱効率の最も良い点(最良点:例えば、最大馬力の半分程度で、40km/h程度)を1としたときの、各点の熱効率比率(1以上の数値)を求めて、全てから1を引いたものを評価式として設定する。この場合、熱効率の最も良い点が0となり、その他の点の熱効率の悪い比率が評価値となる。ここで、好適には、エンジン24の熱効率は、さらにミッション(MG1+MG2)の変換効率(例えば、変換対象エネルギーに対して80%ロス)を掛け合わせたハイブリッドシステム熱効率を用いてもよい。
【0064】
一方、車両運動制御装置100は、評価関数設定部102dの処理により、以上の加速区間の評価式について、エンジン回転数がゼロ回転の場合の評価値を0より大きい一定の値(例えば、10)に設定する(ステップSB−11)。すなわち、本来、評価式においてゼロ回転は熱効率がよい点の一つであるので、(最良点と同じ)0を採用すべきであるが、最適化処理の過程でゼロ回転が一度選択されてしまうと(ローカルミニマムに陥り)望ましい中回転に戻れなくなるので、実際のエンジンの効率とは関係なく相対的に悪い数値を設定する。ここで、図4は、以上のように設定された加速区間用の評価式のグラフを一例として示す図である。図4に示すように、加速区間用の評価式は、エンジンの熱効率が最も良い最良点の評価値を0として、ゼロ回転付近の評価値を0より大きい所定値とした関数である。
【0065】
また、車両運動制御装置100は、評価関数設定部102dの処理により、減速区間に、ゼロ回転を(中回転以上に比べて)望ましいと評価する評価式を設定する(ステップSB−11)。より具体的には、転がり抵抗(例えば、−0.03Gの減速度)を基準として0とし、転がり抵抗減速度(この例では、−0.03G)から離れた加減速度エネルギーに対して、ハイブリッドシステムにおけるMG2入出力とバッテリー入出力のロス(例えば、36%)を比例させた数値を評価式として設定する。
【0066】
そして、車両運動制御装置100は、評価関数設定部102dの処理により、減速区間の評価式において、バッテリーの充電状態に応じた補正を行う(ステップSB−12)。すなわち、満充電状態(バッテリーが耐久面等を考慮してこれ以上充電できない状態)においての電力加速(例えば、+0.1G)や、バッテリーの空状態における回生(例えば、−0.1Gの減速度)を行うことについて、エネルギー廃棄(満充電のため回生不可、バッテリー電力不足のため電力加速不可)に繋がる悪事象を回避するため、そのロスを減少(例えば、20%)とする。
【0067】
一方、車両運動制御装置100は、評価関数設定部102dの処理により、以上の減速区間の評価式について、エンジン回転数が中回転以上の場合の評価値を0より大きい一定の値(例えば、10)に設定する(ステップSB−13)。すなわち、本来、評価式において中回転の熱効率の最良点付近は、(加速区間の場合と同様に)0に近い値を採用すべきであるが、最適化処理の過程で中回転以上が一度選択されてしまうと(ローカルミニマムに陥り)望ましいゼロ回転に戻れなくなるので、実際のエンジンの効率とは関係なく相対的に悪い数値を設定する。ここで、図5は、以上のように設定された減速区間用の評価式のグラフを一例として示す図である。図5に示すように、減速区間用の評価式は、転がり抵抗による走行の評価値を0として、エンジンの熱効率がよい中回転以上の評価値を0より大きい値とした関数である。
【0068】
そして、車両運動制御装置100は、評価関数設定部102dの処理により、以上の燃費に関する評価式に加えて、通過時間に関する評価式を設定する(ステップSB−14)。これは、燃費のみの評価式を用いると、THS(Toyota Hybrid System)等のハイブリッド車においては平均速度が20km/h程度となってしまう可能性が高く、利用者(実際の乗員・ドライバー)の希望に沿わない場合があるため、適切な重み付け等により燃費を大きく損なわない形で平均速度上昇を行うための評価式を設定する。
【0069】
そして、車両運動制御装置100は、走行軌跡最適化部102eの処理により、通常の最適化技術では固定とする区間の区切り位置を可変条件として、最適化処理(例えば、SCGRA(Sequential Conjugate Gradient−Restoration Algorithm)等)を行う(ステップSB−15)。
【0070】
これにて、実施の形態1の処理が終了する。これにより、より燃費効率のよいエンジンを停止させる速度パターンを導入しつつ、さらに燃費向上を図る速度パターン(走行軌跡)を得ることができる。
【0071】
[2−2.実施の形態2の処理]
次に、本実施の形態2における車両運動制御装置100の処理の詳細について図6を参照して説明する。図3は、本実施の形態2における車両運動制御装置100の処理の一例を示すフローチャートである。
【0072】
上述した実施の形態1では、直線路においての加減速および速度パターン生成による前後方向制御だけであれば最適な結果を得ることが可能である。しかし、走行安定性において摩擦円を考慮すべき道路線形に対しては、不安定な(速度が高すぎて曲がりきれない)速度パターンとなる場合がある。そのため、本実施の形態2では、安直にカーブ毎に速度制限を用いるような方法では走行軌跡や回生力の最適配分などが適切でないために、最適な速度パターンおよび走行軌跡とならない場合を考慮して処理を行う。すなわち、実施の形態2では、車両運動制御装置100は、摩擦円使用率が相対的に高い場合と相対的に低い場合とではそれぞれ異なる評価式を用いて速度パターンを演算し、摩擦円使用率が相対的に低い場合に実施の形態1に示される評価式を用い、摩擦円使用率が相対的に高い場合には、加速区間にてエンジン回転状態を基本としてハイブリッドシステムとあわせて熱効率を重視した評価式を導入する。すなわち、実施の形態1により算出された速度パターンから摩擦円使用率を再度求めた際に、危険な摩擦円使用領域(例:70%)となるような場合には、実施の形態1と異なるロジックで評価式を設定する。
【0073】
図6に示すように、まず、車両運動制御装置100は、摩擦円使用率演算部102cの処理により、摩擦円を考慮したロジックにて、道路形状情報ファイル106aに記憶された道路形状情報に基づいて摩擦円使用率を演算し、速度パターンに基づく道路区間の仮見積りを行う(ステップSC−1)。
【0074】
この摩擦円を考慮したロジックは、一例として、理想軌跡と速度パターンを生成するための技術を用いるものであり、駆動方式がハイブリッド方式の車両において、摩擦円限界や道路境界線の条件を含む拘束条件を収束演算し、拘束条件を満たしている状態で燃費に関する評価関数(例えば、速度の分散の評価や、ブレーキ減速放熱総量の評価、ハイブリッドシステムにおける電力収支が正の場合の電力収支の評価、加速時のエンジン出力熱効率の熱効率使用率の評価などの燃費に関する評価関数)によって収束演算して走行軌跡を導出する技術を応用するものである。この摩擦円を考慮したロジックの原理は、以下のとおりである。
【0075】
燃費を考慮して回生だけで減速を行う場合、車両全体の減速能力(回生ブレーキによる減速+油圧ブレーキによる減速)で減速を行う場合に比べて、減速時に油圧ブレーキによる減速分の余裕が生まれ、前後力に余裕ができる。そのため、横力と前後力による摩擦円限界を考慮して回生だけで減速を行うと仮定した場合、カーブ路では減速時に前後力の余裕分を横力に配分することができる。そこで、この摩擦円を考慮したロジックでは、カーブ路において、減速時にその余裕分を使って走行曲線を長くし、加速時には余裕分がないため直線に近い走行軌跡を生成する。具体的には、摩擦円を考慮して、クリッピングポイントをカーブ入り口側に移動し、最小速度ポイントをカーブ出口側に設定して、それらをスムーズな曲線(例えば、クロイド曲線)で結合して走行軌跡を生成する。また、カーブ前半部分の最小速度ポイントまでを減速区間に、最小ポイントからのカーブ後半部分を加速区間に設定する。これにより、走行パターンの生成において、加減速による前後力とカーブ走行による横力を考慮した摩擦円の使用率を考慮して、車両の走行安定性と燃費を考慮に入れた走行パターン(走行軌跡)を演算することができる。なお、上述した摩擦円を考慮したロジックは一例であり、摩擦円限界内で低燃費な走行パターンを生成する技術であればこれに限られない。
【0076】
そして、車両運動制御装置100は、評価関数設定部102dの処理により、横力が必要とされていない区間(例えば、横Gが0.1G以内)や(ステップSC−2、No)、横力が必要だが(ステップSC−2、Yes)摩擦円使用率が比較的低い場合には(ステップSC−3、No)、実施の形態1の処理(例えば、SB−3〜14の処理)で道路区間と評価式の設定を行う(ステップSC−4)。
【0077】
また、車両運動制御装置100は、評価関数設定部102dの処理により、横力が必要であり(ステップSC−2、Yes)、摩擦円使用率が比較的高い(例えば、50%以上)区間や(ステップSC−3、Yes)、ステップSC−4の処理後に摩擦円使用率を再度演算した結果、摩擦円使用率が比較的高い区間(ステップSC−5、Yes)では、減速区間(例えば、カーブの前半)に、エンジンオフ(ゼロ回転、転がり抵抗減速)を基本として、回生と電力アシストによる減速となるよう評価式を設定し、加速区間(例えば、カーブの後半)に、エンジン回転状態を基本としてハイブリッドシステムと合わせて熱効率を重視した加速となるよう評価式を設定する(ステップSC−6)。
【0078】
そして、車両運動制御装置100は、以上のステップSC−2〜6のステップを全区間において行い(ステップSC−7)、ステップSB−15の処理と同様に、減速区間と加速区間の切れ目位置の拘束条件を無効にして(すなわち、可変条件として)、区間長を増減できるようにして最適化処理(例えば、SCGRA等)を行う(ステップSC−8)。
【0079】
以上で、本実施の形態2の処理が終了する。これにより、カーブ路においても走行安定性に優れた最適な速度パターン(走行軌跡)の生成が可能になり、走行安定性と低燃費を両立できる理想的な走行制御が可能となる。
【0080】
[3.本実施の形態のまとめ、および、他の実施の形態]
本実施の形態によれば、道路形状情報ファイルに記憶された道路形状情報に基づいて、道路上を車両が走行する場合の走行状態(状態量)を予測し、予測された走行状態(状態量)に基づいて、道路を複数の道路区間に分割し、道路区間毎に評価関数を設定し、道路区間毎に設定された評価関数に基づいて、道路上を走行する車両の走行軌跡を演算するので、速度パターンを固定化することなくエンジン特性の不連続性に基づくローカルミニマム問題を回避して、燃費等に関して全体最適化を図ることができる。
【0081】
また、本発明によれば、分割された道路区間の区切り位置を可変条件として走行軌跡を演算するので、設定した道路区間を拘束条件とすることなく可変条件として、道路区間における局所的な最適化ではなく走行ルート全体にわたる最適化を行うことができる。
【0082】
また、本実施の形態によれば、道路形状情報ファイルに記憶された道路形状情報に基づいて、道路上を車両が走行する場合に予測される速度パターンを演算し、演算された速度パターンに基づいて、道路区間として少なくとも加速区間と減速区間に分割し、加速区間に加速区間用の評価関数を、減速区間に減速区間用の評価関数を設定するので、速度パターンに従って加速区間と減速区間として適切な評価関数を設定して燃費の評価に関する全体最適化を図ることができる。
【0083】
また、本実施の形態によれば、加速区間には、エンジン回転数が中回転以上の場合をゼロ回転付近の場合と比べて望ましいと評価する評価関数、より具体的には、エンジンの熱効率の最良点を1としたときの各点の熱効率の比率を求め、全体から1を引いたものが評価値となるよう評価関数を設定し、エンジン回転数がゼロ回転付近の評価値を0より大きな数値とするので、エンジンの熱効率がゼロ回転と中回転以上が効率がよいという不連続な特性を持つ場合であっても、加速区間は熱効率がよい中回転以上の加速を評価するような評価関数を設定することができ、エンジン特性の不連続性に起因するローカルミニマム問題を適切に回避して全体最適化を図ることができる。
【0084】
また、本実施の形態によれば、減速区間には、エンジン回転数がゼロ回転付近の場合を中回転以上の場合と比べて望ましいと評価する評価関数、より具体的には、転がり抵抗を基準として0とした場合に、転がり抵抗の減速度から離れた加減速度エネルギーに対して、ハイブリッドシステムにおけるエネルギー入出力のロスを比例させた数値が評価値となる評価関数を設定し、エンジン回転数が中回転以上の場合を0より大きな数値とするので、エンジンの熱効率がゼロ回転と中回転以上が効率がよいという不連続な特性を持つ場合であっても、減速区間でゼロ回転による減速を評価するような評価関数を設定することができ、エンジン特性の不連続性に起因するローカルミニマム問題を適切に回避して全体最適化を図ることができる。
【0085】
また、本実施の形態によれば、道路形状情報ファイルに記憶された道路形状情報に基づいて、道路上を車両が走行する場合に予測される摩擦円使用率を演算し、演算された摩擦円使用率が相対的に高い道路区間に、摩擦円使用率が相対的に低い道路区間とは異なる評価関数、より具体的には、加速区間に、エンジン回転状態を基本としてハイブリッドシステムと合わせて熱効率を重視した加速を望ましいと評価する評価関数を設定し、減速区間に、エンジンオフ状態を基本として回生と電力アシストによる減速を望ましいと評価する価関数を設定するので、摩擦円も考慮に入れて車両の走行安定性を考慮しながら燃費に関して最適な走行軌跡を演算することができる。
【0086】
さて、これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。
【0087】
特に、上述した実施の形態においては、本発明の走行軌跡演算装置を車両に搭載して走行制御装置として構成し、演算した理想走行軌跡に基づいて自動運転制御を行う例について説明した場合があるが、手動運転に対して最適軌跡を用いて各種の運転支援を行う車両についても適用可能である。すなわち、究極的には自動運転制御を行うことが望ましいが、現在の過渡期においては利用者(ドライバー)の意思や希望を無視することは難しいので、本発明により生成される理想速度パターン(走行軌跡)と利用者の操作との折衷案での技術を採用してもよい。
【0088】
また、上述の実施の形態においては、本発明を、内燃機関とモータを駆動源として組合せたハイブリッドシステム(ハイブリッド車)に適用した例について説明を行った場合があるが、この場合に限られず、走行中にエンジン等の内燃機関を停止することが可能なシステムにおいて、同様に適用することができる。また、アイドリング状態で燃料消費量が少ない熱機関の場合には、惰性走行(惰行)中に熱機関を停止させることなく熱機関の駆動力の車輪への伝達を遮断させるのみで実行させてもよい。より具体的には、走行中に自動変速機をニュートラル状態へと制御することができる車両であれば、本発明を適用することが可能である。また、最適な速度パターン生成を実現する上で、プラグインのハイブリッド車両の実現も考慮すると1トリップ(充電場所から次の充電場所まで)を一かたまりの対象として全体最適を求めることが望ましいが、全体最適を求める上で、各種の非線形条件が複合的に与えられる現実を考慮した場合、何らかの数式により一意に速度パターンを解析的に求めることは難しいので、既にVSC(Vehicle Safety Communication)等で一部市販車化されている最適化技術を利用してもよい。
【0089】
また、上述した実施の形態においては、本発明の走行軌跡演算装置を車両に搭載してオンラインで用いる例を一例として示したが、本発明の構成はこれに限られず、車両に搭載することなくオフラインで燃費に最適な走行軌跡を演算するよう構成してもよい。
【0090】
また、車両運動制御装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。特に、車両運動制御装置100は、単一のECUで構成する形態とすることなく、複数のECUで構成してもよく、逆に、操舵制御装置21や加減速制御装置23等の機能は、車両運動制御装置100により実現されるよう構成されてもよい。
【0091】
また、本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。例えば、実施の形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。また、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて又は機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。また、上述した実施の形態では車両運動制御装置100がスタンドアローンの形態で処理を行う場合を一例に説明したが、車両運動制御装置100が、当該車両運動制御装置100とは別筐体で構成されるECUからの要求に応じて情報処理を行い、その処理結果を当該ECUに返却するように構成してもよい。
【0092】
また、本発明は、コンピュータに読取らせることにより車両運動制御装置100の各手段を実現するプログラムや、コンピュータに読取らせることにより本走行軌跡演算方法の各ステップを実行するプログラムにより構成されてもよく、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、MO、DVD等の任意の可搬用の物理媒体を含むものである。また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上詳述に説明したように、本発明にかかる走行軌跡演算装置および走行軌跡演算方法ならびにプログラムは、特に自動車製造産業に代表される様々な分野において好適に実施することができ産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0094】
11 道路形状情報入力装置
12 ハンドル操作量センサ
13 ブレーキ操作量センサ
14 アクセル操作量センサ
15 ヨーレートセンサ
16 車輪速センサ
17 レーン認識センサ
21 操舵制御装置
22 操舵アクチュエータ
23 加減速制御装置
24 エンジン
25 ブレーキアクチュエータ
100 車両運動制御装置
102 制御部
102a 走行状態予測部
102b 速度パターン演算部
102c 摩擦円使用率演算部
102d 評価関数設定部
102e 走行軌跡最適化部
102f 車両運動制御部
106 記憶部
106a 道路形状情報ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の将来の走行軌跡を演算する、記憶部と制御部を少なくとも備えた走行軌跡演算装置において、
前記記憶部は、
道路情報を記憶する道路情報記憶手段、
を備え、
前記制御部は、
前記道路情報記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、道路上を前記車両が走行する場合の走行状態を予測する走行状態予測手段と、
前記走行状態予測手段により予測された前記走行状態に基づいて、前記道路を複数の道路区間に分割し、前記道路区間毎に評価関数を設定する評価関数設定手段と、
前記評価関数設定手段により前記道路区間毎に設定された前記評価関数に基づいて、前記道路上を走行する前記車両の走行軌跡を演算する走行軌跡演算手段と、
を備えたことを特徴とする走行軌跡演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の走行軌跡演算装置において、
前記走行軌跡演算手段は、
前記評価関数設定手段により分割された前記道路区間の区切り位置を可変条件として前記走行軌跡を演算すること、
を特徴とする走行軌跡演算装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の走行軌跡演算装置において、
前記走行状態予測手段は、
前記道路情報記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、前記道路上を前記車両が走行する場合に予測される速度パターンを演算し、
前記評価関数設定手段は、
前記走行状態予測手段により演算された前記速度パターンに基づいて、前記道路区間として少なくとも加速区間と減速区間に分割し、前記加速区間に加速区間用の前記評価関数を、前記減速区間に減速区間用の前記評価関数を設定すること、
を特徴とする走行軌跡演算装置。
【請求項4】
請求項3に記載の走行軌跡演算装置において、
前記評価関数設定手段は、
前記加速区間用の前記評価関数として、エンジン回転数が中回転以上の場合をゼロ回転付近の場合と比べて望ましいと評価する前記評価関数を設定すること、
を特徴とする走行軌跡演算装置。
【請求項5】
請求項3に記載の走行軌跡演算装置において、
前記評価関数設定手段は、
前記加速区間用の前記評価関数として、エンジンの熱効率の最良点を1としたときの各点の前記熱効率の比率を求め、全体から1を引いたものが評価値となるよう前記評価関数を設定し、エンジン回転数がゼロ回転付近の前記評価値を0より大きな数値とすること、
を特徴とする走行軌跡演算装置。
【請求項6】
請求項3に記載の走行軌跡演算装置において、
前記評価関数設定手段は、
前記減速区間用の前記評価関数として、エンジン回転数がゼロ回転付近の場合を中回転以上の場合と比べて望ましいと評価する前記評価関数を設定すること、
を特徴とする走行軌跡演算装置。
【請求項7】
請求項3に記載の走行軌跡演算装置において、
前記評価関数設定手段は、
前記減速区間用の前記評価関数として、転がり抵抗を基準として0とした場合に、前記転がり抵抗の減速度から離れた加減速度エネルギーに対して、ハイブリッドシステムにおけるエネルギー入出力のロスを比例させた数値が評価値となる前記評価関数を設定し、エンジン回転数が中回転以上の場合を0より大きな数値とすること、
を特徴とする走行軌跡演算装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つに記載の走行軌跡演算装置において、
前記走行状態予測手段は、
前記道路情報記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、前記道路上を前記車両が走行する場合に予測される摩擦円使用率を演算し、
前記評価関数設定手段は、
前記走行状態予測手段により演算された前記摩擦円使用率が相対的に高い前記道路区間に、前記摩擦円使用率が相対的に低い前記道路区間とは異なる前記評価関数を設定すること、
を特徴とする走行軌跡演算装置。
【請求項9】
請求項8に記載の走行軌跡演算装置において、
前記評価関数設定手段は、
前記走行状態予測手段により演算された前記摩擦円使用率が相対的に高い場合に、
前記走行状態が加速状態となる前記道路区間に、エンジン回転状態を基本としてハイブリッドシステムと合わせて熱効率を重視した加速を望ましいと評価する前記評価関数を設定し、
前記走行状態が減速状態となる前記道路区間に、エンジンオフ状態を基本として回生と電力アシストによる減速を望ましいと評価する前記評価関数を設定すること、
を特徴とする走行軌跡演算装置。
【請求項10】
車両の将来の走行軌跡を演算する、記憶部と制御部を少なくとも備えた走行軌跡演算装置において実行される走行軌跡演算方法であって、
前記記憶部は、
道路情報を記憶する道路情報記憶手段、
を備えており、
前記制御部により実行される、
前記道路情報記憶手段に記憶された前記道路情報に基づいて、道路上を前記車両が走行する場合の走行状態を予測する走行状態予測ステップと、
前記走行状態予測ステップにて予測された前記走行状態に基づいて、前記道路を複数の道路区間に分割し、前記道路区間毎に評価関数を設定する評価関数設定ステップと、
前記評価関数設定ステップにて前記道路区間毎に設定された前記評価関数に基づいて、前記道路上を走行する前記車両の走行軌跡を演算する走行軌跡演算ステップと、
を含むことを特徴とする走行軌跡演算方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−250442(P2010−250442A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97313(P2009−97313)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】