超音波センサ、及びこれを用いた洋式大便器及びトイレシステム
【課題】 監視空間内に障害物が存在するような狭い空間であっても、複雑な信号処理を必要とせず、検出対象物体の在否を正確に判断できる超音波センサと、これを用いた洋式大便器及びトイレシステムを提供する。
【解決手段】 本発明では、監視空間に向けて、間欠的に超音波を送波する送波器と、前記監視空間内に存在する物体からの反射波を受波する受波器とを備えた超音波センサにおいて、前記受波器の出力を、前記送波後の所定期間にわたって積分する第1の積分手段と、前記受波器の出力を、所定期間内の時間経過に従い漸次増加または減少する信号利得を有する時間利得制御手段を介して、前記所定期間にわたって積分する第2の積分手段と、前記第1の積分手段の出力と前記第2の積分手段の出力の比率を演算する比率演算手段を備えるとともに、前記比率演算手段の出力値の変化によって物体の在否を検出する。
【解決手段】 本発明では、監視空間に向けて、間欠的に超音波を送波する送波器と、前記監視空間内に存在する物体からの反射波を受波する受波器とを備えた超音波センサにおいて、前記受波器の出力を、前記送波後の所定期間にわたって積分する第1の積分手段と、前記受波器の出力を、所定期間内の時間経過に従い漸次増加または減少する信号利得を有する時間利得制御手段を介して、前記所定期間にわたって積分する第2の積分手段と、前記第1の積分手段の出力と前記第2の積分手段の出力の比率を演算する比率演算手段を備えるとともに、前記比率演算手段の出力値の変化によって物体の在否を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を監視空間に発射し、監視空間内の物体からの反射波を検出することにより、監視空間内の物体、主として人体の存在を検知する超音波センサと、これを用いた洋式大便器及びトイレシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波センサは、超音波振動子を使用して所定周波数の超音波を監視空間に送波し、物体からの反射波を超音波振動子によって受波することにより、物体の存在あるいは移動を検知するものである。
【0003】
監視空間内に検出対象物体以外の障害物が何もなければ、検出対象物体からの反射波の有無によって物体の在否が判断できる。しかし、障害物が存在すると、検出対象物体からの反射波と、障害物からの反射波を区別する判断処理が必要となる。そこで、反射波の状態をもとに、目標とする物体の存在を判断する判定処理方法として、さまざまな方法が考案されている。
【0004】
そのひとつとして、受信した反射波の時系列パターンの変化を利用する方法が考案されている。例えば、検出すべき空間に超音波を送信し、受信出力を2値化した時系列のパターンとして扱うものである。
まず、対象空間に人が存在しない時の受信出力を時系列パターンとして記憶し、これと、最新の受信出力の時系列パターンとの比較を行い、時系列パターンに変化があれば対象空間内に人が存在すると判定するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、受信出力の時系列パターンを記憶して比較する点は前記と同様であるが、ドップラー効果を検出する方法を併用し、ドップラー効果による信号が生じた前後の時系列パターンの比較によって物体を検出する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このように、受信出力の時系列パターンに変化があった場合に物体を検出する方法は、例えば、エレベータやトイレなど狭い空間内に人が存在するか否かを検出する際に用いられる。
これは、人が存在しないときの検出対象空間からの超音波の反射波の時系列パターンを記憶し、「人が空間に入ってきた場合は、時系列パターンに変化が現れる」という原理に基づいた方法である。つまり、人が存在しないときの反射波の時系列パターンが長時間にわたって安定し、固定のパターンとして記憶できることが前提である。
【0007】
ところが、トイレなどの狭い空間に壁や手すりなどの障害物がある場合、いろいろな面からの反射波が合成され、反射波の時系列パターンは複雑な波形となる。複数の反射波が合成される場合、その位相によって強め合う場合と弱め合う場合があり、風や温度などの僅かな条件差で変動しやすい傾向がある。そのため、人が存在しない状態の検出対象空間の時系列パターンを記憶することは、実際には難しい。
【0008】
また、人が存在しない状態の時系列パターンに対して、その変化から人の存在を判定するには、高度なパターン認識が必要である。
例えば、時系列パターンの、近距離の部分の変化と遠距離の部分の変化、反射が大きくなる変化と小さくなる変化など、時系列パターンの変化の内容に応じて、人の存在を判断すべきである。
【0009】
そこで、さまざまな条件を考慮して判定ルールを作成することは可能だが、それは非常に複雑なプログラムとなってしまう。逆に、簡単な判定ルールにしてしまうと、検出感度が低下したり、逆に敏感になりすぎて不安定になるという傾向が生じる。
【0010】
このように、従来の、「時系列パターンに変化があると物体を検出」と判断する方式では、単なる「変化」という見方をするため、高感度と確実性の両立は難しいという問題があった。
【0011】
また、受信波形を所定間隔でサンプリングし、更に各サンプリングごとに複数のしきい値でレベルを求め、レベルの組み合わせからなるレベル状態の時間的な移動方向を検出するものがある(例えば、特許文献3参照)。
つまり、波形の変化だけでなく、その波形の形状、特徴を認識して、移動方向を判断するものである。この方法であれば、受信波形の単なる変化として判断する場合に比較して、原理的には、より正確な検出判断が期待できる。
【0012】
しかし、検出対象物体が移動すると、検出対象物体と壁などの障害物との位置関係も変化し、現実の反射波形の変化は非常に複雑な変化となる。これをレベルの組み合わせによるパターンとして認識し、更にその移動方向まで判別するのは容易なことではない。
エレベータやトイレに設置される機器に組み込まれるマイコンによって、上述のような高度な演算を、十分な検出性能をもって実行するのは非常に難しい。
【0013】
また、これら従来の検出方法は、対象物が超音波を反射するという前提で考案されている。しかし、空気層をたくさん含んだ柔らかいもの、例えば冬に柔らかい防寒服を着た人を検出対象とする場合、超音波は反射せずに殆ど吸収されてしまうこともある。このような場合、従来の方法では、人を検出できなかった。
【0014】
【特許文献1】特開昭56−160673号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開平4−83190号公報(第3−4頁、第1図)
【特許文献3】特開2002−6036号公報(第4頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、監視空間内に障害物が存在するような狭い空間であっても、複雑な信号処理を必要とせず、検出対象物体の在否を正確に判断できる超音波センサと、これを用いた洋式大便器及びトイレシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、
監視空間に向けて、間欠的に超音波を送波する送波器と、前記監視空間内に存在する物体からの反射波を受波する受波器とを備えた超音波センサにおいて、
前記受波器の出力を、前記送波後の所定期間にわたって積分する第1の積分手段と、
前記受波器の出力を、所定期間内の時間経過に従い漸次増加または減少する信号利得を有する時間利得制御手段を介して、前記所定期間にわたって積分する第2の積分手段と、
前記第1の積分手段の出力と前記第2の積分手段の出力の比率を演算する比率演算手段を備えるとともに、前記比率演算手段の出力値の変化によって物体の在否を検出することにより、
第1の積分によって、反射波形の総量を定量化し、第2の積分によって、送波から受波までの時間経過、すなわち物体までの距離に応じて利得を増減させた反射波形の総量を定量化し、これらの積分値の比率によって反射波形の距離的なバランスを算出することで、検出対象空間に存在する物体の距離情報を定量化し、物体の在否の検出を可能とする。
【0017】
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の超音波センサにおいて、
前記時間利得制御手段は、前記受波器の出力と前記第2の積分手段の入力を、所定のデューティーで断続的に接続するスイッチ手段であって、前記所定期間内の時間経過に従い前記デューティーを変化させることによって信号利得を制御することにより、
乗算回路のような複雑な回路を用いずに、時間経過に応じた利得の制御を行うことができる。
【0018】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記時間利得制御手段は、前記所定期間内の時間経過に従い信号利得が単調減少する特性を有し、
前記比率演算手段は、前記第2の積分手段の出力を、前記第1の積分手段の出力で除算した値を出力するものであり、
前記比率演算手段の出力が増加した場合に物体が接近したと判断することにより、
複数の反射物があっても、それらの中心位置が除算結果によって定量化され、時系列パターンではなく、数値として物体の移動や静止が判別できる。
【0019】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波センサを、大便器本体に、大便器の前方側に向けて設置し、前記超音波センサの出力に基づいて、大便器の自動洗浄、便蓋の自動開閉、脱臭装置の始動のうち、少なくとも一つが実行されるように設定されている洋式大便器であるので、
狭いトイレブースや、手すりなどの設置されたトイレにおいても、周囲環境からの超音波の反射を使用者と誤検知することなく、安定して機能する大便器を提供することができる。
【0020】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波センサを、トイレブース内の壁面または天井に便器の使用者が存在する方向に向けて設置し、前記超音波センサの出力に基づいて、便器の自動洗浄、便蓋の自動開閉、脱臭装置の始動、照明の点灯、消灯のうち、少なくとも一つが実行されるように設定されているトイレシステムであるので、
狭いトイレブースや、手すりなどの設置されたトイレにおいても、周囲環境からの超音波の反射を使用者と誤検知することなく、安定して機能するトイレシステムを提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来技術のように反射波形を時系列パターンとして認識する必要がないので、高機能のマイコンなど高価な部品を必要としない。同時に、時系列パターンを比較する複雑なソフトウェアが必要ない。
高速の処理回路は一般に消費電力が大きいので、回路の低消費化にもつながり、電池駆動商品への適用や、省エネルギーの効果もある。
【0022】
また、反射波形には、回路が持つ電気的ノイズ、周辺環境の騒音ノイズなどがランダムノイズとして含まれるが、積分することによって、このようなノイズ成分を除去できる。
【0023】
また、時間利得制御手段を、時間経過に従って利得が単調減少する特性とし、比率演算手段を、第2の積分手段の出力を第1の積分手段の出力で除算するものとしたので、除算した結果は、力学に対応させて考えると、反射波形の時間軸を力学のうでの長さに、反射波形の大きさ(検波回路の出力)を力学の質量に置き換えた、反射波形がバランスする重心に相当する値が演算される。
【0024】
これにより、反射波形のどの部分に反射の中心があるかが定量化され、検出対象空間からの反射波の状態が直感的に理解し易い数値となる。この数値によって、物体の動き、物体までの距離などを、マイコンのソフトウェアで処理することが容易となる。
【0025】
また、物体が近づけば、物体によって超音波センサの検出領域が覆われる範囲が広くなり、その結果、周辺の壁などからの反射が減少する。
そのため、超音波を吸収する柔らかい物体が接近した場合、柔らかい物体による反射は増えなくても、柔らかい物体によって遠方の反射が吸収され、反射波形の遠方部分(時間経過の長い方)の値が小さくなる。
【0026】
これによって、相対的に反射波形のバランスは近距離側に傾くことになるが、本発明による比率演算手段で積分値を除算した値は、この結果を反映する。よって、例えばトイレブースのように周囲に壁があるような環境条件で、超音波を反射しない柔らかい服を着た人の接近を検出できる。
【0027】
また、時間利得制御手段を、受波器の出力と第2の積分手段の入力とを所定のデューティーで断続的に接続するスイッチ手段とすれば、可変ゲインアンプや乗算回路などが不要となり、簡単なスイッチ回路だけで実現できる。
【0028】
また、時間利得制御手段及び第1、第2の積分手段の一部、或いは全てを、A/D変換とマイコンのプログラムによっても実現できる。その場合、高速のA/D変換が必要となるが、プログラムで実行する演算は加算、乗算等の単純な命令の繰り返しで良いため、複雑なプログラムは不要である。
そのように、マイコンを主体に構成した場合においても、反射波形のバランス変化によって物体を検出し、積分によってノイズを除去する効果は同様に得られる。
【0029】
また、上述の超音波センサを洋式大便器またはトイレブースに設置することにより、従来の超音波センサが苦手とする、トイレ特有の「狭い空間」「手すりなどの障害物」といった条件を問題とせず、安定してトイレの使用者を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明による好適な実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0031】
図1は、本発明の第1の実施例に係る超音波センサの構成を示している。
図1において、タイミング回路5は、超音波センサの各構成要素に制御タイミング信号を出力する回路である。タイミング回路5の出力によって発振器4が起動し、発振器4から出力されたパルス信号を駆動回路3で電圧増幅して超音波の送波器1に入力する。
【0032】
送波器1から超音波のパルス列が送波され、監視領域内の物体で反射して超音波の受波器2に受波される。
この受波信号は増幅回路6により増幅され、検波回路7により包絡線検波される。以上の構成は従来の超音波センサと何ら変わりない。
【0033】
なお、本発明が適用される用途では、送波する超音波の周波数は40kHz程度、高くても100kHz以下が適当である。40kHzであれば波長が約9mmとなり、トイレ内で使用者の人体を検出するには十分な分解能となる。送波周波数を高くすれば波長が短くなって分解能が上がる一方、空中での超音波の減衰が大きくなるため、遠距離での反射信号が十分に得られなくなり、メリットがない。
例えば数100kHzの超音波を用いてmm単位の測定を行う超音波距離計もあるが、このような用途では、測定環境の障害物を取り除くことは容易であり、出力としても距離の数値を必要としており、本発明の目的とする「狭い空間での物体の検出」とは技術分野が異なる。
【0034】
検波回路7の出力は、第1の積分手段8に入力される。また、検波回路7の出力は時間利得制御手段9を介して、第2の積分手段10に入力される。
第1の積分手段8の出力と、第2の積分手段10の出力は、比率演算手段11で演算され、その結果が検知判断手段12に入力され、第1及び第2の積分手段の出力に応じて物体の在否が判断され、その結果が検知信号として出力される。
【0035】
比率演算手段11及び検知判断手段12は、A/D変換入力を持つマイコンが適当である。第1及び第2の積分手段の出力をそれぞれA/D変換し、それらの比率をマイコンのプログラムによって演算すればよい。
【0036】
時間利得制御手段9は、入力された信号と出力される信号の比率である信号利得が、後述する積分を行う所定期間内の時間経過に従って漸次変化する回路であり、例えば図2のような特性を持つものである。図2の横軸は時間軸であり、基準となるスタート時刻は図1のタイミング回路5の出力によって与えられる。厳密に一致する必要は無いが、送波タイミングとほぼ同じで良い。図2の縦軸が信号利得であり、時間経過に従って漸次変化することが必要条件であって、信号利得の絶対値そのものはいくつでも良い。
【0037】
積分手段及び時間利得制御手段は、具体的には図3のように構成できる。
第1及び第2の積分手段は、それぞれ同様の構成となる。図3の81はオペアンプ、82は基準電圧源、83は積分抵抗、84は積分コンデンサ、85は積分コンデンサ84を放電するリセットスイッチである。これらは良く知られた基本的な積分回路の形態であり、第1の積分手段8を構成する。図3の101乃至105も同様にして、第2の積分手段10を構成する。
80は第1の積分手段への入力を入切するスイッチである。91は、80と同じスイッチであるが、これが時間利得制御手段として機能する。この動作を、図4乃至図8を用いて説明する。
【0038】
図4は、図1の超音波センサの用途の一例である。200はトイレブースの壁であり、201が洋式大便器である。大便器201の前方部分に超音波センサ202(図1に相当するもの)を、大便器の前方側に、かつ若干左向きに設置している。203は超音波センサ202が検出感度を持つ領域を簡略化して示したものである。
超音波センサ202は、大便器201の使用者の片足を検出し、大便器201の洗浄などの機能を自動化するために利用される。なお、片足を検出するのか、両足を検出するのかといった条件は、超音波センサ202の指向性や大便器201の形状、デザインに応じて決定すれば良く、本発明の適用を制約するものではない。
【0039】
図5は図4のトイレブース内の斜視図であり、各要素には同一の番号を付けている。大便器201の内部に電磁バルブ及び制御装置が内蔵され、超音波センサ202の出力に応じて便器の自動洗浄を行う。
すなわち、超音波センサによって一定時間(例えば10秒以上)の人体検出が継続すれば大便器が使用中であると判断し、人体の検出状態から非検出状態になると、便器の洗浄を行う。人体の検出時間の長短(例えば、1分以上か1分未満)によって、大洗浄、小洗浄を切り替え、節水性の向上を図ることもできる。
また、大便器201が、便蓋の電動開閉、脱臭機能などを備えたものであれば、超音波センサ202によって、便蓋の自動開閉、脱臭機能の始動を行う構成も可能である。
【0040】
図6は検知物体(トイレの使用者の足)が存在しない場合の超音波センサの動作を示すタイミングチャートである。
図6において、まず、タイミング回路5の出力により送波信号が出力される。送波出力と同じタイミングで積分手段の積分コンデンサ85及び105のリセット信号RSが出力され、積分コンデンサの電荷がゼロになり、積分手段の出力は基準電圧(基準電圧源82及び102の電圧)に等しくなる。
送波直後は送信波の信号が直接受波され、図6の(ア)のように受波信号の出力が大きくなる。超音波センサにおいては、送波器と受波器を兼用する場合があり、このときは、送波時及び送波直後の受波信号は、残響信号として比較的大きな値となる。
【0041】
図6は検知物体である使用者がいない状態であるが、検知範囲内の壁や床などの物体の反射が存在する。このため、時間軸の長い側に、すなわち比較的遠方に、(イ)のような反射波が受波されている。
第1の積分手段の入力はスイッチ80により制御されるが、スイッチ80は図6の積分タイミング1(信号S1)のようにオンする。つまり、所定の積分期間に亘って受波信号をそのまま積分する。
【0042】
第2の積分手段の入力はスイッチ91により制御されるが、スイッチ91は図6の積分タイミング2(信号S2)のようにオンする。信号S2は、信号S1がオンの期間、つまり積分期間に亘って、徐々に変化するデューティーでオン・オフする。送波直後はオンのデューティーが高く、徐々にオン・デューティーが小さくなり、オフ・デューティーが大きくなる。
つまり、第2の積分手段に入力される受波信号の信号利得が徐々に減少しており、スイッチ91は図1の時間利得制御手段9として機能している。
【0043】
なお、図6の信号S2のようにデューティーが徐々に変化する信号は、周波数の異なる三角波の比較する回路や、マイコンのソフト処理など、さまざまな方法で簡単に生成できる。しかし、積分コンデンサのリセット信号RS、第1の積分手段の積分タイミング信号S1と共に、マイコンで出力するのが最も簡単である。
【0044】
このように、第1の積分手段は受波信号をそのまま積分するため、図6の受波信号の(ア)、(イ)の面積に相当する分が積分出力となる。
第2の積分手段は積分を行う所定期間の時間経過に従って信号利得が漸次減少する時間利得制御手段の出力を積分するため、(ア)の部分の積分量は第1の積分手段に近い値となるが、(イ)の部分の積分量は小さくなり、その結果、第2の積分手段の出力は第1の積分手段の出力より、大幅に小さい値となる。
【0045】
図7は検知物体である使用者が存在する状態のトイレブースであり、図8はそのときの超音波センサの動作を示すタイミングチャートである。
図8において、壁の反射(イ)に加えて、それよりも近い側、時間軸の短い側に検知物体である足からの反射波(ウ)が受波されている。この部分では時間利得制御手段9の信号利得は比較的大きな値であるため、第2の積分手段の出力も比較的大きくなる。
【0046】
(ウ)の部分は、第1の積分手段でも積分され、第2の積分手段でも比較的大きい信号利得で積分されるため、結果として、第1の積分手段の出力と第2の積分手段の出力は、図6の状態に比較すると、近い値となる。
その結果、図6の状態に比較して、第1の積分手段の出力と第2の積分手段の出力の比率は1に近くなる。
この、第1の積分手段の出力と第2の積分手段の出力の比率が1に近くなった時、検知物体が存在すると判断できる。
【0047】
その理由を説明する。
第1の積分手段は、受波信号をそのまま積分する。そのため、第1の積分値は反射波の総量に相当する。第2の積分手段は、時間が短いほど信号利得が大きい、すなわち距離が近いほど信号利得が大きい回路を経由して受波信号を積分する。そのため、第2の積分手段は、距離が近いほど積分量が増える、つまり近距離を重視した積分となる。
よって、第1の積分手段の出力に比較して第2の積分手段の出力の比率が小さい場合は、受波信号が遠い側に存在することを意味する。一方、第1の積分手段の出力に比較して第2の積分手段の出力の比率が大きい(比率が1に近い)場合は、受波信号が近い側に存在することを意味する。
【0048】
以上のことから、第1の積分手段と第2の積分手段の出力の比率を観察すれば、受波信号が遠い側寄りの状態か、近い側寄りの状態かが分かる。仮に壁からの反射波が定常的に存在する環境であっても、検知物体(人)は壁よりも近くに来る。すると、反射波の距離的な分布は、検知物体が無い状態に比較して、より近い側に寄る傾向を示す。その結果が第1の積分手段の出力と第2の積分手段の出力の比率の変化として現れる。
【0049】
例えば、図からおおまかに値を読みとれば、図6の第1の積分出力と第2の積分出力の比率は約3:1であるが、図8においては約4:2(=2:1)になっている。つまり、比率3が比率2に変わったことで、検出物体が近くに入ってきたことが判断できる。
【0050】
図9及び図10に、他の検出事例を示す。図9は使用者の足が、超音波センサ202とトイレブース200の壁の間に置かれた場合である。更に、使用者が超音波を吸収しやすい柔らかい服を着ていた場合を想定する。一般的に超音波センサは、対象物からの超音波の反射を利用するため、超音波を吸収するものの検出は難しい。
【0051】
図10は、図9の状態に柔らかい服を着た使用者が存在する場合のタイミングチャートである。受波波形には、(エ)の部分に小さな反射波が現れる。これは、使用者の服が超音波を吸収しやすい、つまり反射しにくいためである。
更に、壁からの反射は(イ′)のように小さくなる。これは、使用者の足によって超音波センサと壁との間が遮られたためである。超音波センサの指向性と使用者の足の大きさ次第では(イ′)は完全にゼロになることもあり得る。
【0052】
この受波波形の第1の積分出力は、(エ)の増加よりも(イ′)の減少分の影響が大きく、図6の場合よりも小さな値となる。第2の積分出力は、(エ)の部分の信号利得が(イ′)の部分の信号利得よりも大きくなっているため、これらが相殺し、図6の場合に比較して、値の変化は殆どない。
よって、第1の積分出力だけが小さくなり、相対的に第1の積分値と第2の積分値の比率は1に近くなり、検出物体が近くに入ってきたことが判断できる。
このように、検出体によって十分な反射が生じなくても、壁などの周辺環境の反射を吸収するという現象によって、積分値の比率が変化し、物体検知ができる。
【0053】
以上の物体検知の判断を行うプログラムの例を図11のフローチャートに示す。
図11において、ステップ1(以下、S001)では、超音波センサの駆動を行う。これは、図6、図8、または図10のタイミングチャートにおける、送波から積分完了までの動作である。
【0054】
S002で、第1及び第2の積分手段の出力のA/D変換を行い、S003でその比率『(第1の積分手段出力)÷(第2の積分手段出力)=(積分値比率)』を計算する。
なお、ここでA/D変換や除算を行っているが、既に超音波の反射波は積分されているので、特に高速なマイコンは必要としない。
S004で、S003で計算した積分値比率が前回の送波時の値と変化があったかどうかをチェックする。変化がなければS005に、変化があればS007に進む。
【0055】
S005では、変化無しの状態が10分継続したかどうか確認する。積分値比率が変化していない状態が10分継続していれば、その積分比率を基準値として記憶する。基準値とは、検出対象が無い場合(トイレであれば使用者がいない状態)の積分値比率である。更に、S008に進んで、検出対象無しと判断してS001に戻り、同様の動作を繰り返す。
S005で変化無しの状態が継続して10分に達していなければ、S007に進む。
【0056】
S007では、積分値比率と基準値を比較する。
『(積分値比率)≧(基準値)』の場合、積分値比率が基準値と同じ、または大きくなっているので、第2の積分手段出力が第1の積分手段出力に対して、相対的に小さくなっている状態である。つまり、反射波のバランスが、変化しないか、より遠方に移動したことを意味する。よって、S008で、検出対象は無いと判断し、S001に戻る。
【0057】
『(積分値比率)<(基準値)』の関係にあれば、第2の積分手段出力が第1の積分手段出力に対して、相対的に大きくなっている状態である。つまり、反射波のバランスが、より近い側に移動したことを意味する。よって、S008で、検出対象が有ると判断し、S001に戻る。
【0058】
このように、積分値比率は、反射波の状態の変化を反映する値であって、絶対値としての意味を持たないため、積分値比率の絶対値の大小だけでは物体の在否を確定することはできない。しかし、S005からS006によって、検出対象が無い状態の積分値比率を基準値とすることにより、積分値比率によっても、物体の在否を判断できる。
【0059】
図3では、時間利得制御手段を、第2の積分手段への入力デューティーで制御したが、図12のような構成でもよい。
図12の91は三角波発生回路であり、タイミング回路5の出力をトリガとして、時間経過に従って値が次第に小さくなる三角波信号を出力する。この信号と検波回路7の出力を乗算回路92によって掛け算をして第2の積分手段10へ出力する。
【0060】
図13は、本発明の超音波センサを使用したトイレシステムの斜視図である。トイレブースの壁に超音波センサ202が設置されており、その検出領域203は大便器201の使用者が着座する方向に向けられている。
大便器201を洗浄する電磁バルブ及び制御装置(いずれも図示していない)は、大便器201に内蔵しても良いし、トイレブースの壁面に収納しても良い。
【0061】
トイレブースは一般に狭いために、図13のように超音波センサを設置すると、大便器や超音波センサと反対側の壁などの反射波を検出するが、本発明によれば、使用者がトイレブースに入ってきたこと、退出したことを、壁などの反射と区別して検出できる。大便器の周囲に手すりなどが設置された場合も同様に、使用者の入退室を検出できる。
【0062】
更に、便器の自動洗浄だけでなく、便蓋の自動開閉、脱臭装置の始動、照明の点灯、消灯など、トイレブース内に設けられた機能を作動させる信号としても利用できる。照明の点灯、消灯と主目的とすれば、超音波センサを天井に取り付けても良い。
【0063】
なお、超音波の送波器と受波器とは1つの超音波振動子で兼用しても構わない。
また、実施例では時間利得制御手段の信号利得を時間経過に応じて漸次減らすものとしたが、逆に信号利得を増やす構成としても、積分出力の比率の大小を実施例と逆に考えれば、本質的に動作は同じである。
【0064】
つまり、本発明の信号処理は、受波波形を力学的な見方をして、横軸(時間)を長さ、縦軸(振幅)を質量として置き換え重心位置、つまり時間軸方向のバランスを計算していることになる。受波波形のバランスの移動を演算できれば良いため、厳密に重心位置の計算に則って行う必要な無い。信号の増減、分子分母を逆にするなど、演算方法としては、さまざまな組み合わせが可能である。
【0065】
また、図1の超音波センサを構成する各要素は、例えば積分、比率演算のように、単純な機能の要素であるため、マイコンのプログラムによって実現可能なものは、プログラムによる機能実現としても良い。それは、本発明が適用されるシステムの回路規模、使用するマイコンの性能に応じて適宜選択すれば良いことである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の時間利得制御手段の特性を示す特性図である。
【図3】本発明の時間利得制御手段及び積分手段の構成例を示す回路図である。
【図4】本発明の利用例を示す使用者不在時のトイレの上面図である。
【図5】本発明の超音波センサを内蔵した洋式便器の斜視図である。
【図6】本発明の動作を示す使用者不在時のタイミングチャートである。
【図7】本発明の利用例を示す使用時のトイレの上面図である。
【図8】本発明の動作を示す使用時のタイミングチャートである。
【図9】本発明の利用例を示す使用時のトイレの上面図である。
【図10】本発明の動作を示す使用時のタイミングチャートである。
【図11】本発明の動作を示すプログラムのフローチャートである。
【図12】本発明の時間利得制御手段及び積分手段の構成例を示す回路図である。
【図13】本発明の超音波センサを使用したトイレシステムの斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1…送波器
2…受波器
3…駆動回路
4…発振器
5…タイミング回路
6…増幅回路
7…検波回路
8…時間利得制御手段
9…第1の積分手段
10…第2の積分手段
11…検知判断手段
200…トイレブース
201…大便器
202…超音波センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を監視空間に発射し、監視空間内の物体からの反射波を検出することにより、監視空間内の物体、主として人体の存在を検知する超音波センサと、これを用いた洋式大便器及びトイレシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波センサは、超音波振動子を使用して所定周波数の超音波を監視空間に送波し、物体からの反射波を超音波振動子によって受波することにより、物体の存在あるいは移動を検知するものである。
【0003】
監視空間内に検出対象物体以外の障害物が何もなければ、検出対象物体からの反射波の有無によって物体の在否が判断できる。しかし、障害物が存在すると、検出対象物体からの反射波と、障害物からの反射波を区別する判断処理が必要となる。そこで、反射波の状態をもとに、目標とする物体の存在を判断する判定処理方法として、さまざまな方法が考案されている。
【0004】
そのひとつとして、受信した反射波の時系列パターンの変化を利用する方法が考案されている。例えば、検出すべき空間に超音波を送信し、受信出力を2値化した時系列のパターンとして扱うものである。
まず、対象空間に人が存在しない時の受信出力を時系列パターンとして記憶し、これと、最新の受信出力の時系列パターンとの比較を行い、時系列パターンに変化があれば対象空間内に人が存在すると判定するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、受信出力の時系列パターンを記憶して比較する点は前記と同様であるが、ドップラー効果を検出する方法を併用し、ドップラー効果による信号が生じた前後の時系列パターンの比較によって物体を検出する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このように、受信出力の時系列パターンに変化があった場合に物体を検出する方法は、例えば、エレベータやトイレなど狭い空間内に人が存在するか否かを検出する際に用いられる。
これは、人が存在しないときの検出対象空間からの超音波の反射波の時系列パターンを記憶し、「人が空間に入ってきた場合は、時系列パターンに変化が現れる」という原理に基づいた方法である。つまり、人が存在しないときの反射波の時系列パターンが長時間にわたって安定し、固定のパターンとして記憶できることが前提である。
【0007】
ところが、トイレなどの狭い空間に壁や手すりなどの障害物がある場合、いろいろな面からの反射波が合成され、反射波の時系列パターンは複雑な波形となる。複数の反射波が合成される場合、その位相によって強め合う場合と弱め合う場合があり、風や温度などの僅かな条件差で変動しやすい傾向がある。そのため、人が存在しない状態の検出対象空間の時系列パターンを記憶することは、実際には難しい。
【0008】
また、人が存在しない状態の時系列パターンに対して、その変化から人の存在を判定するには、高度なパターン認識が必要である。
例えば、時系列パターンの、近距離の部分の変化と遠距離の部分の変化、反射が大きくなる変化と小さくなる変化など、時系列パターンの変化の内容に応じて、人の存在を判断すべきである。
【0009】
そこで、さまざまな条件を考慮して判定ルールを作成することは可能だが、それは非常に複雑なプログラムとなってしまう。逆に、簡単な判定ルールにしてしまうと、検出感度が低下したり、逆に敏感になりすぎて不安定になるという傾向が生じる。
【0010】
このように、従来の、「時系列パターンに変化があると物体を検出」と判断する方式では、単なる「変化」という見方をするため、高感度と確実性の両立は難しいという問題があった。
【0011】
また、受信波形を所定間隔でサンプリングし、更に各サンプリングごとに複数のしきい値でレベルを求め、レベルの組み合わせからなるレベル状態の時間的な移動方向を検出するものがある(例えば、特許文献3参照)。
つまり、波形の変化だけでなく、その波形の形状、特徴を認識して、移動方向を判断するものである。この方法であれば、受信波形の単なる変化として判断する場合に比較して、原理的には、より正確な検出判断が期待できる。
【0012】
しかし、検出対象物体が移動すると、検出対象物体と壁などの障害物との位置関係も変化し、現実の反射波形の変化は非常に複雑な変化となる。これをレベルの組み合わせによるパターンとして認識し、更にその移動方向まで判別するのは容易なことではない。
エレベータやトイレに設置される機器に組み込まれるマイコンによって、上述のような高度な演算を、十分な検出性能をもって実行するのは非常に難しい。
【0013】
また、これら従来の検出方法は、対象物が超音波を反射するという前提で考案されている。しかし、空気層をたくさん含んだ柔らかいもの、例えば冬に柔らかい防寒服を着た人を検出対象とする場合、超音波は反射せずに殆ど吸収されてしまうこともある。このような場合、従来の方法では、人を検出できなかった。
【0014】
【特許文献1】特開昭56−160673号公報(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特開平4−83190号公報(第3−4頁、第1図)
【特許文献3】特開2002−6036号公報(第4頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、監視空間内に障害物が存在するような狭い空間であっても、複雑な信号処理を必要とせず、検出対象物体の在否を正確に判断できる超音波センサと、これを用いた洋式大便器及びトイレシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、
監視空間に向けて、間欠的に超音波を送波する送波器と、前記監視空間内に存在する物体からの反射波を受波する受波器とを備えた超音波センサにおいて、
前記受波器の出力を、前記送波後の所定期間にわたって積分する第1の積分手段と、
前記受波器の出力を、所定期間内の時間経過に従い漸次増加または減少する信号利得を有する時間利得制御手段を介して、前記所定期間にわたって積分する第2の積分手段と、
前記第1の積分手段の出力と前記第2の積分手段の出力の比率を演算する比率演算手段を備えるとともに、前記比率演算手段の出力値の変化によって物体の在否を検出することにより、
第1の積分によって、反射波形の総量を定量化し、第2の積分によって、送波から受波までの時間経過、すなわち物体までの距離に応じて利得を増減させた反射波形の総量を定量化し、これらの積分値の比率によって反射波形の距離的なバランスを算出することで、検出対象空間に存在する物体の距離情報を定量化し、物体の在否の検出を可能とする。
【0017】
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の超音波センサにおいて、
前記時間利得制御手段は、前記受波器の出力と前記第2の積分手段の入力を、所定のデューティーで断続的に接続するスイッチ手段であって、前記所定期間内の時間経過に従い前記デューティーを変化させることによって信号利得を制御することにより、
乗算回路のような複雑な回路を用いずに、時間経過に応じた利得の制御を行うことができる。
【0018】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1乃至2のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記時間利得制御手段は、前記所定期間内の時間経過に従い信号利得が単調減少する特性を有し、
前記比率演算手段は、前記第2の積分手段の出力を、前記第1の積分手段の出力で除算した値を出力するものであり、
前記比率演算手段の出力が増加した場合に物体が接近したと判断することにより、
複数の反射物があっても、それらの中心位置が除算結果によって定量化され、時系列パターンではなく、数値として物体の移動や静止が判別できる。
【0019】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波センサを、大便器本体に、大便器の前方側に向けて設置し、前記超音波センサの出力に基づいて、大便器の自動洗浄、便蓋の自動開閉、脱臭装置の始動のうち、少なくとも一つが実行されるように設定されている洋式大便器であるので、
狭いトイレブースや、手すりなどの設置されたトイレにおいても、周囲環境からの超音波の反射を使用者と誤検知することなく、安定して機能する大便器を提供することができる。
【0020】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波センサを、トイレブース内の壁面または天井に便器の使用者が存在する方向に向けて設置し、前記超音波センサの出力に基づいて、便器の自動洗浄、便蓋の自動開閉、脱臭装置の始動、照明の点灯、消灯のうち、少なくとも一つが実行されるように設定されているトイレシステムであるので、
狭いトイレブースや、手すりなどの設置されたトイレにおいても、周囲環境からの超音波の反射を使用者と誤検知することなく、安定して機能するトイレシステムを提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来技術のように反射波形を時系列パターンとして認識する必要がないので、高機能のマイコンなど高価な部品を必要としない。同時に、時系列パターンを比較する複雑なソフトウェアが必要ない。
高速の処理回路は一般に消費電力が大きいので、回路の低消費化にもつながり、電池駆動商品への適用や、省エネルギーの効果もある。
【0022】
また、反射波形には、回路が持つ電気的ノイズ、周辺環境の騒音ノイズなどがランダムノイズとして含まれるが、積分することによって、このようなノイズ成分を除去できる。
【0023】
また、時間利得制御手段を、時間経過に従って利得が単調減少する特性とし、比率演算手段を、第2の積分手段の出力を第1の積分手段の出力で除算するものとしたので、除算した結果は、力学に対応させて考えると、反射波形の時間軸を力学のうでの長さに、反射波形の大きさ(検波回路の出力)を力学の質量に置き換えた、反射波形がバランスする重心に相当する値が演算される。
【0024】
これにより、反射波形のどの部分に反射の中心があるかが定量化され、検出対象空間からの反射波の状態が直感的に理解し易い数値となる。この数値によって、物体の動き、物体までの距離などを、マイコンのソフトウェアで処理することが容易となる。
【0025】
また、物体が近づけば、物体によって超音波センサの検出領域が覆われる範囲が広くなり、その結果、周辺の壁などからの反射が減少する。
そのため、超音波を吸収する柔らかい物体が接近した場合、柔らかい物体による反射は増えなくても、柔らかい物体によって遠方の反射が吸収され、反射波形の遠方部分(時間経過の長い方)の値が小さくなる。
【0026】
これによって、相対的に反射波形のバランスは近距離側に傾くことになるが、本発明による比率演算手段で積分値を除算した値は、この結果を反映する。よって、例えばトイレブースのように周囲に壁があるような環境条件で、超音波を反射しない柔らかい服を着た人の接近を検出できる。
【0027】
また、時間利得制御手段を、受波器の出力と第2の積分手段の入力とを所定のデューティーで断続的に接続するスイッチ手段とすれば、可変ゲインアンプや乗算回路などが不要となり、簡単なスイッチ回路だけで実現できる。
【0028】
また、時間利得制御手段及び第1、第2の積分手段の一部、或いは全てを、A/D変換とマイコンのプログラムによっても実現できる。その場合、高速のA/D変換が必要となるが、プログラムで実行する演算は加算、乗算等の単純な命令の繰り返しで良いため、複雑なプログラムは不要である。
そのように、マイコンを主体に構成した場合においても、反射波形のバランス変化によって物体を検出し、積分によってノイズを除去する効果は同様に得られる。
【0029】
また、上述の超音波センサを洋式大便器またはトイレブースに設置することにより、従来の超音波センサが苦手とする、トイレ特有の「狭い空間」「手すりなどの障害物」といった条件を問題とせず、安定してトイレの使用者を検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明による好適な実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0031】
図1は、本発明の第1の実施例に係る超音波センサの構成を示している。
図1において、タイミング回路5は、超音波センサの各構成要素に制御タイミング信号を出力する回路である。タイミング回路5の出力によって発振器4が起動し、発振器4から出力されたパルス信号を駆動回路3で電圧増幅して超音波の送波器1に入力する。
【0032】
送波器1から超音波のパルス列が送波され、監視領域内の物体で反射して超音波の受波器2に受波される。
この受波信号は増幅回路6により増幅され、検波回路7により包絡線検波される。以上の構成は従来の超音波センサと何ら変わりない。
【0033】
なお、本発明が適用される用途では、送波する超音波の周波数は40kHz程度、高くても100kHz以下が適当である。40kHzであれば波長が約9mmとなり、トイレ内で使用者の人体を検出するには十分な分解能となる。送波周波数を高くすれば波長が短くなって分解能が上がる一方、空中での超音波の減衰が大きくなるため、遠距離での反射信号が十分に得られなくなり、メリットがない。
例えば数100kHzの超音波を用いてmm単位の測定を行う超音波距離計もあるが、このような用途では、測定環境の障害物を取り除くことは容易であり、出力としても距離の数値を必要としており、本発明の目的とする「狭い空間での物体の検出」とは技術分野が異なる。
【0034】
検波回路7の出力は、第1の積分手段8に入力される。また、検波回路7の出力は時間利得制御手段9を介して、第2の積分手段10に入力される。
第1の積分手段8の出力と、第2の積分手段10の出力は、比率演算手段11で演算され、その結果が検知判断手段12に入力され、第1及び第2の積分手段の出力に応じて物体の在否が判断され、その結果が検知信号として出力される。
【0035】
比率演算手段11及び検知判断手段12は、A/D変換入力を持つマイコンが適当である。第1及び第2の積分手段の出力をそれぞれA/D変換し、それらの比率をマイコンのプログラムによって演算すればよい。
【0036】
時間利得制御手段9は、入力された信号と出力される信号の比率である信号利得が、後述する積分を行う所定期間内の時間経過に従って漸次変化する回路であり、例えば図2のような特性を持つものである。図2の横軸は時間軸であり、基準となるスタート時刻は図1のタイミング回路5の出力によって与えられる。厳密に一致する必要は無いが、送波タイミングとほぼ同じで良い。図2の縦軸が信号利得であり、時間経過に従って漸次変化することが必要条件であって、信号利得の絶対値そのものはいくつでも良い。
【0037】
積分手段及び時間利得制御手段は、具体的には図3のように構成できる。
第1及び第2の積分手段は、それぞれ同様の構成となる。図3の81はオペアンプ、82は基準電圧源、83は積分抵抗、84は積分コンデンサ、85は積分コンデンサ84を放電するリセットスイッチである。これらは良く知られた基本的な積分回路の形態であり、第1の積分手段8を構成する。図3の101乃至105も同様にして、第2の積分手段10を構成する。
80は第1の積分手段への入力を入切するスイッチである。91は、80と同じスイッチであるが、これが時間利得制御手段として機能する。この動作を、図4乃至図8を用いて説明する。
【0038】
図4は、図1の超音波センサの用途の一例である。200はトイレブースの壁であり、201が洋式大便器である。大便器201の前方部分に超音波センサ202(図1に相当するもの)を、大便器の前方側に、かつ若干左向きに設置している。203は超音波センサ202が検出感度を持つ領域を簡略化して示したものである。
超音波センサ202は、大便器201の使用者の片足を検出し、大便器201の洗浄などの機能を自動化するために利用される。なお、片足を検出するのか、両足を検出するのかといった条件は、超音波センサ202の指向性や大便器201の形状、デザインに応じて決定すれば良く、本発明の適用を制約するものではない。
【0039】
図5は図4のトイレブース内の斜視図であり、各要素には同一の番号を付けている。大便器201の内部に電磁バルブ及び制御装置が内蔵され、超音波センサ202の出力に応じて便器の自動洗浄を行う。
すなわち、超音波センサによって一定時間(例えば10秒以上)の人体検出が継続すれば大便器が使用中であると判断し、人体の検出状態から非検出状態になると、便器の洗浄を行う。人体の検出時間の長短(例えば、1分以上か1分未満)によって、大洗浄、小洗浄を切り替え、節水性の向上を図ることもできる。
また、大便器201が、便蓋の電動開閉、脱臭機能などを備えたものであれば、超音波センサ202によって、便蓋の自動開閉、脱臭機能の始動を行う構成も可能である。
【0040】
図6は検知物体(トイレの使用者の足)が存在しない場合の超音波センサの動作を示すタイミングチャートである。
図6において、まず、タイミング回路5の出力により送波信号が出力される。送波出力と同じタイミングで積分手段の積分コンデンサ85及び105のリセット信号RSが出力され、積分コンデンサの電荷がゼロになり、積分手段の出力は基準電圧(基準電圧源82及び102の電圧)に等しくなる。
送波直後は送信波の信号が直接受波され、図6の(ア)のように受波信号の出力が大きくなる。超音波センサにおいては、送波器と受波器を兼用する場合があり、このときは、送波時及び送波直後の受波信号は、残響信号として比較的大きな値となる。
【0041】
図6は検知物体である使用者がいない状態であるが、検知範囲内の壁や床などの物体の反射が存在する。このため、時間軸の長い側に、すなわち比較的遠方に、(イ)のような反射波が受波されている。
第1の積分手段の入力はスイッチ80により制御されるが、スイッチ80は図6の積分タイミング1(信号S1)のようにオンする。つまり、所定の積分期間に亘って受波信号をそのまま積分する。
【0042】
第2の積分手段の入力はスイッチ91により制御されるが、スイッチ91は図6の積分タイミング2(信号S2)のようにオンする。信号S2は、信号S1がオンの期間、つまり積分期間に亘って、徐々に変化するデューティーでオン・オフする。送波直後はオンのデューティーが高く、徐々にオン・デューティーが小さくなり、オフ・デューティーが大きくなる。
つまり、第2の積分手段に入力される受波信号の信号利得が徐々に減少しており、スイッチ91は図1の時間利得制御手段9として機能している。
【0043】
なお、図6の信号S2のようにデューティーが徐々に変化する信号は、周波数の異なる三角波の比較する回路や、マイコンのソフト処理など、さまざまな方法で簡単に生成できる。しかし、積分コンデンサのリセット信号RS、第1の積分手段の積分タイミング信号S1と共に、マイコンで出力するのが最も簡単である。
【0044】
このように、第1の積分手段は受波信号をそのまま積分するため、図6の受波信号の(ア)、(イ)の面積に相当する分が積分出力となる。
第2の積分手段は積分を行う所定期間の時間経過に従って信号利得が漸次減少する時間利得制御手段の出力を積分するため、(ア)の部分の積分量は第1の積分手段に近い値となるが、(イ)の部分の積分量は小さくなり、その結果、第2の積分手段の出力は第1の積分手段の出力より、大幅に小さい値となる。
【0045】
図7は検知物体である使用者が存在する状態のトイレブースであり、図8はそのときの超音波センサの動作を示すタイミングチャートである。
図8において、壁の反射(イ)に加えて、それよりも近い側、時間軸の短い側に検知物体である足からの反射波(ウ)が受波されている。この部分では時間利得制御手段9の信号利得は比較的大きな値であるため、第2の積分手段の出力も比較的大きくなる。
【0046】
(ウ)の部分は、第1の積分手段でも積分され、第2の積分手段でも比較的大きい信号利得で積分されるため、結果として、第1の積分手段の出力と第2の積分手段の出力は、図6の状態に比較すると、近い値となる。
その結果、図6の状態に比較して、第1の積分手段の出力と第2の積分手段の出力の比率は1に近くなる。
この、第1の積分手段の出力と第2の積分手段の出力の比率が1に近くなった時、検知物体が存在すると判断できる。
【0047】
その理由を説明する。
第1の積分手段は、受波信号をそのまま積分する。そのため、第1の積分値は反射波の総量に相当する。第2の積分手段は、時間が短いほど信号利得が大きい、すなわち距離が近いほど信号利得が大きい回路を経由して受波信号を積分する。そのため、第2の積分手段は、距離が近いほど積分量が増える、つまり近距離を重視した積分となる。
よって、第1の積分手段の出力に比較して第2の積分手段の出力の比率が小さい場合は、受波信号が遠い側に存在することを意味する。一方、第1の積分手段の出力に比較して第2の積分手段の出力の比率が大きい(比率が1に近い)場合は、受波信号が近い側に存在することを意味する。
【0048】
以上のことから、第1の積分手段と第2の積分手段の出力の比率を観察すれば、受波信号が遠い側寄りの状態か、近い側寄りの状態かが分かる。仮に壁からの反射波が定常的に存在する環境であっても、検知物体(人)は壁よりも近くに来る。すると、反射波の距離的な分布は、検知物体が無い状態に比較して、より近い側に寄る傾向を示す。その結果が第1の積分手段の出力と第2の積分手段の出力の比率の変化として現れる。
【0049】
例えば、図からおおまかに値を読みとれば、図6の第1の積分出力と第2の積分出力の比率は約3:1であるが、図8においては約4:2(=2:1)になっている。つまり、比率3が比率2に変わったことで、検出物体が近くに入ってきたことが判断できる。
【0050】
図9及び図10に、他の検出事例を示す。図9は使用者の足が、超音波センサ202とトイレブース200の壁の間に置かれた場合である。更に、使用者が超音波を吸収しやすい柔らかい服を着ていた場合を想定する。一般的に超音波センサは、対象物からの超音波の反射を利用するため、超音波を吸収するものの検出は難しい。
【0051】
図10は、図9の状態に柔らかい服を着た使用者が存在する場合のタイミングチャートである。受波波形には、(エ)の部分に小さな反射波が現れる。これは、使用者の服が超音波を吸収しやすい、つまり反射しにくいためである。
更に、壁からの反射は(イ′)のように小さくなる。これは、使用者の足によって超音波センサと壁との間が遮られたためである。超音波センサの指向性と使用者の足の大きさ次第では(イ′)は完全にゼロになることもあり得る。
【0052】
この受波波形の第1の積分出力は、(エ)の増加よりも(イ′)の減少分の影響が大きく、図6の場合よりも小さな値となる。第2の積分出力は、(エ)の部分の信号利得が(イ′)の部分の信号利得よりも大きくなっているため、これらが相殺し、図6の場合に比較して、値の変化は殆どない。
よって、第1の積分出力だけが小さくなり、相対的に第1の積分値と第2の積分値の比率は1に近くなり、検出物体が近くに入ってきたことが判断できる。
このように、検出体によって十分な反射が生じなくても、壁などの周辺環境の反射を吸収するという現象によって、積分値の比率が変化し、物体検知ができる。
【0053】
以上の物体検知の判断を行うプログラムの例を図11のフローチャートに示す。
図11において、ステップ1(以下、S001)では、超音波センサの駆動を行う。これは、図6、図8、または図10のタイミングチャートにおける、送波から積分完了までの動作である。
【0054】
S002で、第1及び第2の積分手段の出力のA/D変換を行い、S003でその比率『(第1の積分手段出力)÷(第2の積分手段出力)=(積分値比率)』を計算する。
なお、ここでA/D変換や除算を行っているが、既に超音波の反射波は積分されているので、特に高速なマイコンは必要としない。
S004で、S003で計算した積分値比率が前回の送波時の値と変化があったかどうかをチェックする。変化がなければS005に、変化があればS007に進む。
【0055】
S005では、変化無しの状態が10分継続したかどうか確認する。積分値比率が変化していない状態が10分継続していれば、その積分比率を基準値として記憶する。基準値とは、検出対象が無い場合(トイレであれば使用者がいない状態)の積分値比率である。更に、S008に進んで、検出対象無しと判断してS001に戻り、同様の動作を繰り返す。
S005で変化無しの状態が継続して10分に達していなければ、S007に進む。
【0056】
S007では、積分値比率と基準値を比較する。
『(積分値比率)≧(基準値)』の場合、積分値比率が基準値と同じ、または大きくなっているので、第2の積分手段出力が第1の積分手段出力に対して、相対的に小さくなっている状態である。つまり、反射波のバランスが、変化しないか、より遠方に移動したことを意味する。よって、S008で、検出対象は無いと判断し、S001に戻る。
【0057】
『(積分値比率)<(基準値)』の関係にあれば、第2の積分手段出力が第1の積分手段出力に対して、相対的に大きくなっている状態である。つまり、反射波のバランスが、より近い側に移動したことを意味する。よって、S008で、検出対象が有ると判断し、S001に戻る。
【0058】
このように、積分値比率は、反射波の状態の変化を反映する値であって、絶対値としての意味を持たないため、積分値比率の絶対値の大小だけでは物体の在否を確定することはできない。しかし、S005からS006によって、検出対象が無い状態の積分値比率を基準値とすることにより、積分値比率によっても、物体の在否を判断できる。
【0059】
図3では、時間利得制御手段を、第2の積分手段への入力デューティーで制御したが、図12のような構成でもよい。
図12の91は三角波発生回路であり、タイミング回路5の出力をトリガとして、時間経過に従って値が次第に小さくなる三角波信号を出力する。この信号と検波回路7の出力を乗算回路92によって掛け算をして第2の積分手段10へ出力する。
【0060】
図13は、本発明の超音波センサを使用したトイレシステムの斜視図である。トイレブースの壁に超音波センサ202が設置されており、その検出領域203は大便器201の使用者が着座する方向に向けられている。
大便器201を洗浄する電磁バルブ及び制御装置(いずれも図示していない)は、大便器201に内蔵しても良いし、トイレブースの壁面に収納しても良い。
【0061】
トイレブースは一般に狭いために、図13のように超音波センサを設置すると、大便器や超音波センサと反対側の壁などの反射波を検出するが、本発明によれば、使用者がトイレブースに入ってきたこと、退出したことを、壁などの反射と区別して検出できる。大便器の周囲に手すりなどが設置された場合も同様に、使用者の入退室を検出できる。
【0062】
更に、便器の自動洗浄だけでなく、便蓋の自動開閉、脱臭装置の始動、照明の点灯、消灯など、トイレブース内に設けられた機能を作動させる信号としても利用できる。照明の点灯、消灯と主目的とすれば、超音波センサを天井に取り付けても良い。
【0063】
なお、超音波の送波器と受波器とは1つの超音波振動子で兼用しても構わない。
また、実施例では時間利得制御手段の信号利得を時間経過に応じて漸次減らすものとしたが、逆に信号利得を増やす構成としても、積分出力の比率の大小を実施例と逆に考えれば、本質的に動作は同じである。
【0064】
つまり、本発明の信号処理は、受波波形を力学的な見方をして、横軸(時間)を長さ、縦軸(振幅)を質量として置き換え重心位置、つまり時間軸方向のバランスを計算していることになる。受波波形のバランスの移動を演算できれば良いため、厳密に重心位置の計算に則って行う必要な無い。信号の増減、分子分母を逆にするなど、演算方法としては、さまざまな組み合わせが可能である。
【0065】
また、図1の超音波センサを構成する各要素は、例えば積分、比率演算のように、単純な機能の要素であるため、マイコンのプログラムによって実現可能なものは、プログラムによる機能実現としても良い。それは、本発明が適用されるシステムの回路規模、使用するマイコンの性能に応じて適宜選択すれば良いことである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の時間利得制御手段の特性を示す特性図である。
【図3】本発明の時間利得制御手段及び積分手段の構成例を示す回路図である。
【図4】本発明の利用例を示す使用者不在時のトイレの上面図である。
【図5】本発明の超音波センサを内蔵した洋式便器の斜視図である。
【図6】本発明の動作を示す使用者不在時のタイミングチャートである。
【図7】本発明の利用例を示す使用時のトイレの上面図である。
【図8】本発明の動作を示す使用時のタイミングチャートである。
【図9】本発明の利用例を示す使用時のトイレの上面図である。
【図10】本発明の動作を示す使用時のタイミングチャートである。
【図11】本発明の動作を示すプログラムのフローチャートである。
【図12】本発明の時間利得制御手段及び積分手段の構成例を示す回路図である。
【図13】本発明の超音波センサを使用したトイレシステムの斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1…送波器
2…受波器
3…駆動回路
4…発振器
5…タイミング回路
6…増幅回路
7…検波回路
8…時間利得制御手段
9…第1の積分手段
10…第2の積分手段
11…検知判断手段
200…トイレブース
201…大便器
202…超音波センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空間に向けて、間欠的に超音波を送波する送波器と、前記監視空間内に存在する物体からの反射波を受波する受波器とを備えた超音波センサにおいて、
前記受波器の出力を、前記送波後の所定期間にわたって積分する第1の積分手段と、
前記受波器の出力を、所定期間内の時間経過に従い漸次増加または減少する信号利得を有する時間利得制御手段を介して、前記所定期間にわたって積分する第2の積分手段と、
前記第1の積分手段の出力と前記第2の積分手段の出力の比率を演算する比率演算手段を備えるとともに、
前記比率演算手段の出力値の変化によって物体の在否を検出することを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
請求項1記載の超音波センサにおいて、
前記時間利得制御手段は、前記受波器の出力と前記第2の積分手段の入力を、所定のデューティーで断続的に接続するスイッチ手段であって、前記所定期間内の時間経過に従い前記デューティーを変化させることによって信号利得を制御することを特徴とする超音波センサ。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記時間利得制御手段は、前記所定期間内において時間経過に従い信号利得が単調減少する特性を有し、
前記比率演算手段は、前記第2の積分手段の出力を、前記第1の積分手段の出力で除算した値を出力するものであり、
前記比率演算手段の出力が増加した場合に物体が接近したと判断することを特徴とする超音波センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波センサを、大便器本体に、大便器の前方側に向けて設置し、前記超音波センサの出力に基づいて、大便器の自動洗浄、便蓋の自動開閉、脱臭装置の始動のうち、少なくとも一つが実行されるように設定されている洋式大便器。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波センサを、トイレブース内の壁面または天井に、便器の使用者が存在する方向に向けて設置し、前記超音波センサの出力に基づいて、便器の自動洗浄、便蓋の自動開閉、脱臭装置の始動、照明の点灯、消灯のうち、少なくとも一つが実行されるように設定されているトイレシステム。
【請求項1】
監視空間に向けて、間欠的に超音波を送波する送波器と、前記監視空間内に存在する物体からの反射波を受波する受波器とを備えた超音波センサにおいて、
前記受波器の出力を、前記送波後の所定期間にわたって積分する第1の積分手段と、
前記受波器の出力を、所定期間内の時間経過に従い漸次増加または減少する信号利得を有する時間利得制御手段を介して、前記所定期間にわたって積分する第2の積分手段と、
前記第1の積分手段の出力と前記第2の積分手段の出力の比率を演算する比率演算手段を備えるとともに、
前記比率演算手段の出力値の変化によって物体の在否を検出することを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
請求項1記載の超音波センサにおいて、
前記時間利得制御手段は、前記受波器の出力と前記第2の積分手段の入力を、所定のデューティーで断続的に接続するスイッチ手段であって、前記所定期間内の時間経過に従い前記デューティーを変化させることによって信号利得を制御することを特徴とする超音波センサ。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれか1項に記載の超音波センサにおいて、
前記時間利得制御手段は、前記所定期間内において時間経過に従い信号利得が単調減少する特性を有し、
前記比率演算手段は、前記第2の積分手段の出力を、前記第1の積分手段の出力で除算した値を出力するものであり、
前記比率演算手段の出力が増加した場合に物体が接近したと判断することを特徴とする超音波センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波センサを、大便器本体に、大便器の前方側に向けて設置し、前記超音波センサの出力に基づいて、大便器の自動洗浄、便蓋の自動開閉、脱臭装置の始動のうち、少なくとも一つが実行されるように設定されている洋式大便器。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波センサを、トイレブース内の壁面または天井に、便器の使用者が存在する方向に向けて設置し、前記超音波センサの出力に基づいて、便器の自動洗浄、便蓋の自動開閉、脱臭装置の始動、照明の点灯、消灯のうち、少なくとも一つが実行されるように設定されているトイレシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−57412(P2006−57412A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−243110(P2004−243110)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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