説明

超音波センサ

【課題】 円形状の振動面を有する超音波振動子と、円筒状のクッション部材と、ケースとの組み付けを容易に行うことができる超音波センサを提供すること。
【解決手段】 超音波部品55を挿入する際に、案内用凸部31、33が案内用切り欠き41、43内を摺動する。これにより、超音波部品55は、回動することなく軸方向に沿って移動する。そして、クッション部材17のクッション側係止部23が嵌合孔39の係止凸部45に当たると、クッション側係止部23が内側にしなって、その爪部27が係止凸部45を乗り越えて自身に弾性による戻り、爪部27と係止凸部45とが係止する。同時に、クッション部材17の後端面のうち、クッション側係止部23が無い部分がケース29の張出部49の先端面に当接する。超音波部品55の軸方向への移動が阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子を有する超音波センサに関し、この超音波センサは、例えば車両のバンパーに取り付けて車両後方あるいはコーナー部の障害物を検出する車両用障害物検出装置に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用障害物検出装置においては、車両のバンパーに超音波センサを取り付け、車両後方あるいはコーナー部に超音波を送信し、障害物にて反射した超音波を受信してその障害物を検出するようにしている。
【0003】
ここで、超音波センサは、円柱状の空孔を有するケース内に、超音波による振動を吸収する円筒状のクッション部材を介して、先端が閉塞された円筒状の超音波振動子を組み付けることにより構成されている。この超音波振動子は、先端に円形状の振動面を有し、電圧を印加すると圧電効果により振動して超音波信号を送信するとともに、この送信した超音波信号の反射を受信すると逆圧電効果により電圧を発生する圧電素子を備えたものである。
【0004】
この超音波振動子としては、水平方向と垂直方向とで指向性が等しくなっているものが使用されているが、近年では、その性能を高めるために、水平方向と垂直方向とで指向性が異なる超音波振動子が考えられている。
【0005】
前記超音波振動子では、振動面を長円形状にすることで、水平方向と垂直方向の指向性を異ならせているが、超音波振動子においては、その振動面を円形状にすることが好ましいので、最近では、振動面を円形にし且つ指向性が異なるようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
この超音波振動子では、クッション部材に取り付ける際に、水平方向と垂直方向とを間違えないように、円筒状の超音波素子の外側面の一部を平坦にして、その取り付け方向を規定している。
【0007】
また、(超音波振動子を内嵌した)クッション部材をケースに取り付ける際には、クッション部材をケースの空孔に嵌め込むとともに、クッション部材の外側面に設けられた突起を、空孔の内周面に設けられた凹部に嵌め込んでいた。つまり、突起を凹部に嵌め込むことにより、周方向の位置決めを行って、クッション部材が回動することを規制していた。
【特許文献1】特開2002−238095号公報 (第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した技術では、クッション部材はケースの空孔に密着するように構成されているので、超音波振動子を内嵌したクッション部材をケースの空孔に嵌め込む際の作業性に問題があった。
【0009】
つまり、クッション部材を空孔に嵌め込む際には、クッション部材の突起に逃げがないので、クッション部材の嵌め込み作業に手間がかかるという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みたものであり、円形状の振動面を有する超音波振動子(特に水平方向と垂直方向とで指向性が異なる超音波振動子)と、円筒状のクッション部材と、ケースとの組み付けを容易に行うことができる超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)請求項1の発明は、先端側の外側表面が円形状の振動面である振動部及び円筒状の側壁部を有するハウジングと、前記振動部の内側表面に貼り付けられた圧電素子とを備えた超音波振動子と、前記超音波振動子の側壁部に外嵌し、ゴム状の弾性を有する円筒状のクッション部材と、前記クッション部材が挿入される円筒状の嵌合孔が形成された嵌合部を有するケースと、を備えた超音波センサであって、前記クッション部材の後端側にクッション側係止部を前記クッション部材の軸方向に立設するとともに、前記クッション側係止部を、前記超音波振動子が内嵌した前記クッション部材を前記嵌合部の嵌合孔に挿入した際に、前記ケース側に設けられたケース側係止部に係止して前記クッション部材の軸方向への移動を規制するように構成したことを特徴とする。
【0011】
本発明では、クッション部材の後端側には、クッション側係止部がクッション部材の軸方向に立設されており、このクッション側係止部が、クッション部材を嵌合孔に挿入した際に、ケース側係止部に係止して、クッション部材の軸方向への移動を規制する。
【0012】
つまり、クッション側係止部は、クッション部材の後端側から軸方向に突出する構成であるので、(超音波振動子を内嵌した)クッション部材を嵌合孔に嵌め込んだ場合でも、内側にたわむことが可能である。即ち、従来に比べて十分な逃げを確保することができるので、クッション部材を容易に嵌合孔に嵌め込むことができ、極めて作業性が良いという効果がある。
【0013】
尚、ここで、先端側とは超音波センサにおいて振動面が形成された側であり、後端側とはその反対側である(以下同様)。
(2)請求項2の発明は、前記クッション側係止部は、前記軸方向に伸びる脚部と該脚部から径方向外側に向かって突出する爪部とからなり、前記ケース側係止部は、前記爪部が係止するように、前記嵌合孔の内周面から嵌合孔の軸中心側に向かって突出する係止用凸部からなることを特徴とする。
【0014】
本発明は、クッション側係止部とケース側係止部との構成を例示したものであり、この構成であれば、クッション部材を容易に嵌合孔に嵌め込むことができるとともに、確実な係止が可能である。
【0015】
(3)請求項3の発明は、前記クッション側係止部の軸方向から見た幅を前記クッション部材の内径より小さくするとともに、前記嵌合部の嵌合孔の後端側の径を小さくして円形形状とは異なる変形貫通孔とし、前記挿入時に前記クッション側係止部が前記変形貫通孔に嵌合する構成としたことを特徴とする。
【0016】
本発明では、クッション側係止部を変形貫通孔に嵌め込む構成であるので、クッション側係止部の位置がずれる恐れがない。
(4)請求項4の発明は、前記クッション部材が外嵌された超音波振動子の後端側にて、前記クッション側係止部より内側に、前記超音波振動子に接触してその振動を減衰する円柱状のダンパ部材を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明は、ダンパ部材をクッション側係止部より内側に配置することができ、よって、例えば対向するクッション側係止部間に挟まれる様に配置することができるので、ダンパ部材を設置する際にずれにくいという利点がある。
【0018】
(5)請求項5の発明は、前記クッション部材の後端側の内周面側に、前記ダンパ部材を接合する接着剤を前記後端側より注入する注入用凹部を設けたことを特徴とする。
従って、超音波振動子を内嵌したクッション部材の後端側から、注入用凹部に接着剤を注入することにより、超音波振動子とクッション部材とダンパ部材とを一体に接合することが可能である。
【0019】
(6)請求項6の発明は、先端側の外側表面が円形状の振動面である振動部及び円筒状の側壁部を有するハウジングと、前記振動部の内側表面に貼り付けられた圧電素子とを備えた超音波振動子と、前記超音波振動子の側壁部に外嵌し、ゴム状の弾性を有する円筒状のクッション部材と、前記クッション部材が挿入される円筒状の嵌合孔を有する嵌合部を有するケースと、を備えた超音波センサであって、前記クッション部材の外周面と前記嵌合部とのそれぞれに、1個又は複数個の互いに係合するクッション側案内部と嵌合側案内部とを設けるとともに、前記クッション側案内部と嵌合側案内部とを、前記クッション部材の周方向への回動を防止するとともに該クッション部材の軸方向への移動を案内するように構成したことを特徴とする。
【0020】
本発明では、クッション部材の外周面に1個又は複数個のクッション側案内部が設けられるとともに、それに対応して、嵌合部に1個又は複数個の嵌合側案内部が設けられている。このクッション側案内部と嵌合側案内部とは、(超音波振動子が内嵌した)クッション部材を嵌合孔に嵌め込む際に、互いに係合して、クッション部材の周方向への回動を防止するとともに軸方向への移動を案内するものである。よって、クッション部材を嵌合孔に嵌め込む作業が極めて容易である。
【0021】
(7)請求項7の発明は、前記クッション側案内部が前記クッション部材の外周面から突出する案内用凸部であり、前記嵌合側案内部が前記嵌合部の軸方向に伸びる案内用切り欠きであり、前記案内用凸部が前記案内用切り欠きに係合して前記クッション部材の軸方向に摺動する構成であることを特徴とする。
【0022】
本発明は、クッション側案内部と嵌合側案内部との構成を例示したものであり、この構成であれば、前記回動の防止及び嵌合の際の案内(ガイド)を確実に行うことができる。
(8)請求項8の発明は、前記クッション側案内部及び前記嵌合側案内部の位置は、前記軸方向からみて、前記クッション部材を前記嵌合部に挿入して取り付ける際の位置が1つに定まるように設けられていることを特徴とする。
【0023】
本発明では、クッション部材を嵌め込む位置が1つに定まるように、例えば軸方向から見て(円の半分側において)3箇所等に偏在する様に、クッション側案内部及び嵌合側案内部が設けられている。
【0024】
従って、作業者がクッション部材を嵌合孔に嵌め込む際には、どの位置で嵌め込めば良いかが瞬時に分かるので、極めて作業性が良いという効果がある。
(9)請求項9の発明は、前記請求項1〜5に記載の超音波センサの構成と、前記請求項6〜8のいずれかに記載の超音波センサの構成とを備えたことを特徴とする。
【0025】
本発明は、より好ましい超音波センサの構成を例示したものである。
(10)請求項10の発明は、前記超音波振動子を内嵌した前記クッション部材が挿入された前記ケースの後端側に、前記クッション部材と接触するように、充填剤を注入して凝固させた充填部を有することを特徴とする。
【0026】
この様に充填剤を注入することにより、ケース内部の構成同士が接合して一体化するので、部品の脱落等を好適に防止することができる。
尚、充填剤としては、クッション部材と同様なゴム状の材料(例えばシリコンゴム)を用いることが好ましい。
【0027】
(11)請求項11の発明は、前記ハウジングに前記超音波振動子の水平方向と垂直方向とを識別するためのハウジング側識別手段を設けるとともに、
前記クッション部材にも、前記ハウジング側識別手段に対応して、該識別手段と当接するクッション側識別手段を設けたことを特徴とする。
【0028】
これにより、クッション部材に対する超音波振動子の周方向に関する位置決めができるので、超音波振動子が回動することを防止できる。
尚、ハウジング側識別手段としては、ハウジングの側壁部に形成された平面部を採用でき、クッション側識別手段としては、クッション部材の内周面から突出して設けられた平面部を採用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の最良の形態の例(実施例)について説明する。
【実施例1】
【0030】
a)まず、図1に基づいて、本実施例の超音波センサに用いられる超音波振動子(超音波マイク)の構成を説明する。
図1(a)は超音波振動子1の正面図、(b)は右側面図、(c)は裏面図である。この超音波振動子1は、中空状のハウジング3の中に充填物5が充填されて構成されており、この充填物5を取り除いた状態の側面断面図、裏面図を、図1(d)、(e)に示す。尚、図1(d)は、図1(e)のA−A断面図である。
【0031】
前記超音波振動子1は、導電性のハウジング3の中に圧電素子7を有して構成されている。ハウジング3の内部には、図1(d)に示すように、内部空間9が形成されており、圧電素子7がハウジング3における振動部(振動板)3aの内側表面に貼り付けられている。この振動部3aの外側表面、すなわち振動面3bは、円形状になっている。
【0032】
前記圧電素子7には、リード11の一端がはんだ付けされている。また、ハウジング3には、内部側面に切り欠き13が形成されており、この切り欠き13に、リード11の他端がはんだ付けされている。このことによって、ハウジング3を介して圧電素子7の両端に交流信号を印加することができる。
【0033】
内部空間9は、図1(e)に示すように、裏面から見た場合、縦と横で径が異なる形状(長方形に角が丸くなった形状)になっている。内部空間9をこのような形状にすることにより、水平方向と垂直方向とで指向性を異ならせることができる。尚、前記内部空間13には、リード11のはんだ付けを行った後、圧電素子7側から順に、フェルト、シリコンの充填物5が充填される。
【0034】
図2に、この超音波振動子1の指向特性を示す。垂直方向に比べて水平方向に広い指向性を有している。尚、図1においては、上下方向が指向性の狭い垂直方向、左右方向が指向性の広い水平方向となっている。
【0035】
また、図1(a)、(b)、(c)に示すように、超音波振動子1のハウジング3の両側面、即ち円筒状の側壁部4の対向する側面を凹ませるように、表面が平らな平面部15が形成されている。この平面部15によって、図1(a)の上下方向が垂直方向の指向性、左右方向が水平方向の指向性を有していることを識別することができる。
【0036】
b)次に、図3に基づいて、前記超音波振動子1が嵌め込まれるクッション部材17について説明する。
図3(a)はクッション部材1の正面図、(b)は右側面図、(c)は裏面図、(d)は上面図、(e)は図3(c)のB−B断面図である。
【0037】
クッション部材17は、シリコンゴムからなる円筒状の部材であり、その軸方向に超音波振動子1の外形形状と同様な円柱状の貫通孔19が設けられている。従って、この貫通孔19に、その軸中心を合わせるようにして超音波振動子1が嵌め込まれる。
【0038】
また、貫通孔19の後端側(図3(e)の右側)には、超音波振動子1の側壁部4を凹ませて形成した左右一対の平面部15に当接するように、貫通孔19の内周面から軸中心に向かって左右一対の段部21が張り出している。従って、超音波振動子1をクッション部材17に嵌め込む際に、平面部15と段部21の平面部21aとが当接することにより、クッション部材17に対する超音波振動子1の周方向(回動方向)に関する位置決めがなされる。
【0039】
尚、段部21の表面には、後述する接着剤を充填するために、後端側が広がった凹部(注入用凹部)21bが形成されている。この凹部21bは、図2(c)に示す様に、貫通孔19の後端側の径より外側に伸びており、よって、後述する円柱状のダンパ部材22(図5参照)を配置した際にも、ダンパ部材22より外側に張り出すように開口している。
【0040】
特に本実施例では、クッション部材17の後端側の端面には、一対のクッション側係止部23が対向するように軸方向に沿って立設されている。このクッション側係止部23は、クッション部材17の湾曲に従って同様に湾曲しており、貫通孔19の直径L1より短い幅L2に設定されている。クッション側係止部23は、脚部25及びその先端に設けられた爪部27からなり、爪部27は径方向外側に突出している。
【0041】
また、クッション部材17の外周面の先端側には、後述する様に、ケース29(図4参照)に対するクッション部材17の周方向への位置決めを行うために、即ちクッション部材17の周方向への回動を防止するために、3箇所に直方体状のクッション側案内部(案内用凸部)31、33が設けられている。このうち、左右の案内用凸部33は、中央の案内用凸部31よりは軸方向に長い形状である。
【0042】
この3箇所の案内用凸部31、33の配置は、軸方向からみて、ケース29に対するクッション部材17の位置が1つに定まる様に、中心角が60度の間隔となるように設けられている。
【0043】
c)次に、図4に基づいて、前記超音波振動子1を内嵌した前記クッション部材17が嵌め込まれるケース29について説明する。
図4(a)はケース29の正面図、(b)は右側面図、(c)は裏面図、(d)は上面図、(e)は図4(c)のC−C断面図である。
【0044】
ケース29は、硬質のプラスチック製で、後端側が開口した直方体状の基部35と、基部35の先端側に立設された円筒状の嵌合部37とから構成されており、基部35の内部空間38と嵌合部37の軸中心を貫く貫通孔(嵌合孔)39とは連通している。
【0045】
前記嵌合部37の先端側には、前記クッション部材17の外周面に設けられた案内用凸部31、33の形状に合わせて、3箇所に嵌合側案内部(案内用切り欠き)41、43が設けられている。この案内用切り欠き41、43は、案内用凸部31、33が嵌り込んで摺動可能な切り欠きであり、案内用凸部31、33と同様に、中心角が60度の間隔で配置されている。
【0046】
また、嵌合孔39の内周面の後端側には、前記クッション側係止部23の爪部27が係止するために、一対のケース側係止部(係止用凸部)45が形成されている。この係止用凸部45は、嵌合孔39の内周面から軸中心に向かって湾曲して突出する凸部であり、クッション側係止部23と同様な幅となるように、図4(a)の上下方向のみに設けられている。
【0047】
更に、嵌合孔39の先端側は、軸方向に垂直の断面が円形であるが、後端側は図4(a)の上下方向が湾曲した略長方形の異形形状(変形貫通孔39a)となっている。つまり、嵌合孔39の後端側は、左右から張り出す張出部49により、左右方向の幅が円形より狭くなっており、これによって、クッション側係止部23の幅とほぼ同一の幅の変形貫通孔39aとなっている。尚、張出部49には、後述するダンパ部材51(図5参照)が嵌合するように円弧状に湾曲した凹部53が設けてある。
【0048】
d)次に、図5に基づいて、超音波センサの全体構成を、その組み付け方法とともに説明する。
図5(a)は超音波センサの分解図、(b)は超音波センサの縦断面図、(c)は超音波センサの斜視図である。
【0049】
本実施例の超音波センサは、超音波振動子1とクッション部材17とケース29の嵌合部27とを、同軸に一体に組み付けたものである。つまり、超音波振動子1をクッション部材17の貫通孔19に嵌めこみ、そのクッション部材17を嵌合部37の嵌合孔39に嵌め込んだものである。以下、順を追ってその組み付け手順等を説明する。
【0050】
前記超音波センサを組み付ける場合には、まず、クッション部材17の貫通孔19の先端側から、超音波振動子1のリード11を先にして嵌め込む。
このとき、超音波振動子1の側壁部4の平面部15とクッション部材17の内周面の平面部21aとが当接することにより、クッション部材17に対する超音波素子1の回動方向の位置決めが行われる。
【0051】
次に、クッション部材17の後端側から円盤状のダンパ部材22を嵌めこむ。つまり、クッション側係止部23の間にダンパ部材22を嵌め込み、超音波振動子1の後端側に当接させる。そして、クッション部材17の後端側から前記クッション部材17の凹部21bに接着剤を注入し、クッション部材17と超音波振動子1とダンパ部材22とを接合する。尚、ダンパ部材22とは、発泡性ゴム材料からなるクッション性を有する部材である。
【0052】
次に、上述した様に一体化したクッション部材17及び超音波振動子1及びダンパ部材22(以下超音波部品55と総称する)を、ケース29の嵌合部37の嵌合孔39の先端から挿入する。
【0053】
このとき、クッション部材17の外周面に設けられた案内用凸部31、33が、嵌合部37に設けられ案内用切り欠き41、43に嵌合して、前記一体化した超音波部品55を挿入する際に、案内用凸部31、33が案内用切り欠き41、43内を摺動する。これにより、一体化した超音波部品55は、回動することなく軸方向に沿って移動する。
【0054】
そして、クッション部材17のクッション側係止部23が嵌合孔39の係止凸部45に当たると、クッション側係止部23が内側にしなって若干曲がった後に、その爪部27が係止凸部45を乗り越えて、クッション側係止部23自身の弾性によって戻り、爪部27と係止凸部45とが係止する。同時に、クッション部材17の後端面のうち、クッション側係止部23が無い部分がケース29の張出部49の先端面に当接する。これによって、一体化した超音波部品55の軸方向への移動が阻止される。
【0055】
その後、超音波振動子1のリード11を基板57に接合し、更に、ケース29の後端側からシリコンゴムを充填する(図4(b)の点線の斜線部分)。これによって、シリコンゴム製のクッション部材17と充填したシリコンゴム(充填部59)とが強固に接合するので、一体化した超音波部品55の脱落が防止できる。
【0056】
e)この様に、本実施例では、クッション部材17の後端側には、クッション側係止部23がクッション部材17の軸方向に立設されており、このクッション側係止部23が、クッション部材17を嵌合孔39に挿入した際に、ケース側係止部45に係止して、クッション部材17の軸方向への移動を規制している。
【0057】
つまり、クッション側係止部23は、(超音波振動子1を内嵌した)クッション部材17を嵌合孔39に嵌め込んだ場合に、内側にたわむことが可能であるので、即ち従来に比べて十分な逃げがあるので、クッション部材17を容易に嵌合孔39に嵌め込むことができ、極めて作業性が良いという効果がある。
【0058】
また、本実施例では、ダンパ部材22を、対向するクッション側係止部23に挟まれる様に配置することができるので、ダンパ部材22を設置する際にずれにくいという利点がある。
【0059】
更に、本実施例では、クッション部材17の後端側の内周面側に、凹部21bを設けているので、超音波振動子1を内嵌したクッション部材17の後端側から、凹部21bに接着剤を注入することにより、超音波振動子1とクッション部材17とダンパ部材22とを容易に一体に接合することができる。
【0060】
また、本実施例では、クッション部材17の外周面に案内用凸部31、33を設けるとともに、嵌合部37に案内用切り欠き41、43を設けているので、この案内用凸部31、33と案内用切り欠き41、43とは、クッション部材17を嵌合孔39に嵌め込む際に、互いに係合して、クッション部材17の周方向への回動を防止するとともに軸方向への移動を案内することができる。よって、クッション部材17を嵌合孔39に嵌め込む作業が極めて容易である。
【0061】
更に、本実施例では、案内用凸部31、33及び案内用切り欠き41、43が、嵌合部37の軸方向から見て(半円の部分に偏って)3箇所に配置されている。これにより、クッション部材を嵌め込む位置が1つに定まっているので、作業者がクッション部材17を嵌合孔39に嵌め込む際には、どの位置で嵌め込めば良いかが瞬時に分かり、極めて作業性が良いという効果がある。
【0062】
その上、本実施例では、超音波振動子1を内嵌したクッション部材17が挿入されたケース29の後端側に、クッション部材17と接触するように、シリコンゴムを注入して凝固させるので、ケース内部の構成同士が接合して一体化し、部品の脱落等を好適に防止することができる。
【0063】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば図6(a)に示す様に、クッション部材61の軸方向の位置決めのために、クッション部材61の後端側から突出するクッション側係止部63として、湾曲した板状の脚部65を設けるとともに、その脚部65には板圧方向に貫く貫通孔67(又は凹部)を設け、更に、ケース69の嵌合孔71の内周面に、貫通孔67等と係合する凸部73を設け、この凸部73と貫通孔67等により係止する構成としてもよい。
【0064】
(2)また、図6(b)に示す様に、クッション部材81の軸方向の位置決めのために、クッション部材81にクッション側係止部83を立設するとともに、嵌合孔85の内周に凹部87(又は貫通孔)を設けてもよい。
【0065】
(3)更に、図7(a)に示す様に、クッション部材91の周方向の位置決めのために、クッション部材91の外周面に凸部93を設けるとともに、嵌合部95の内周面に、前記凸部93が軸方向に摺動可能な凹部97を設けてもよい。
【0066】
(4)或いは、図7(b)に示す様に、クッション部材101の周方向の位置決めのために、嵌合部103の内周面に凸部105を設けるとともに、クッション部材101の外周面に前記凸部105が摺動可能な凹部107を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例の超音波振動子の構成を示す図である。
【図2】実施例の超音波振動子の指向特性を示す図である。
【図3】実施例のクッション部材の構成を示す図である。
【図4】実施例のケースの構成を示す図である。
【図5】実施例の超音波センサの構成を示す図である。
【図6】超音波センサの他の実施例を示す説明図である。
【図7】超音波センサの更に他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1…超音波振動子
3…ハウジング
4…側壁部
7…圧電素子
17、61、81、91、101…クッション部材
23、63、83…クッション側係止部
45…嵌合側係止部(係止凸部)
22…ダンパ部材
29、69…ケース
31、33…クッション側案内部(案内用凸部)
37、95、103…嵌合部
39、71、85…嵌合孔
41、43…嵌合側案内部(案内用切り欠き)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側の外側表面が円形状の振動面(3b)である振動部(3a)及び円筒状の側壁部(4)を有するハウジング(3)と、前記振動部(3a)の内側表面に貼り付けられた圧電素子(7)とを備えた超音波振動子(1)と、
前記超音波振動子(1)の側壁部(4)に外嵌し、ゴム状の弾性を有する円筒状のクッション部材(17)と、
前記クッション部材(17)が挿入される円筒状の嵌合孔(39)が形成された嵌合部(37)を有するケース(29)と、
を備えた超音波センサであって、
前記クッション部材(17)の後端側にクッション側係止部(23)を前記クッション部材(17)の軸方向に立設するとともに、前記クッション側係止部(23)を、前記超音波振動子(1)が内嵌した前記クッション部材(17)を前記嵌合部(37)の嵌合孔(39)に挿入した際に、前記ケース側に設けられたケース側係止部(45)に係止して前記クッション部材(17)の軸方向への移動を規制するように構成したことを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
前記クッション側係止部(23)は、前記軸方向に伸びる脚部(25)と該脚部(25)から径方向外側に向かって突出する爪部(27)とからなり、前記ケース側係止部(45)は、前記爪部(27)が係止するように、前記嵌合孔(39)の内周面から嵌合孔(39)の軸中心側に向かって突出する係止用凸部(45)からなることを特徴とする前記請求項1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記クッション側係止部(23)の軸方向から見た幅を前記クッション部材(17)の内径より小さくするとともに、前記嵌合部(37)の嵌合孔(39)の後端側の径を小さくして円形形状とは異なる変形貫通孔(39a)とし、前記挿入時に前記クッション側係止部(23)が前記変形貫通孔(39a)に嵌合する構成としたことを特徴とする前記請求項1又は2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記クッション部材(17)が外嵌された超音波振動子(1)の後端側にて、前記クッション側係止部(23)より内側に、前記超音波振動子(1)に接触してその振動を減衰する円柱状のダンパ部材(22)を備えたことを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記クッション部材(17)の後端側の内周面側に、前記ダンパ部材(22)を接合する接着剤を前記後端側より注入する注入用凹部(21b)を設けたことを特徴とする前記請求項4に記載の超音波センサ。
【請求項6】
先端側の外側表面が円形状の振動面(3b)である振動部(3a)及び円筒状の側壁部(4)を有するハウジング(3)と、前記振動部(3a)の内側表面に貼り付けられた圧電素子(7)とを備えた超音波振動子(1)と、
前記超音波振動子(1)の側壁部(4)に外嵌し、ゴム状の弾性を有する円筒状のクッション部材(17)と、
前記クッション部材(17)が挿入される円筒状の嵌合孔(39)が形成された嵌合部(37)を有するケース(29)と、
を備えた超音波センサであって、
前記クッション部材(17)の外周面と前記嵌合部(37)とのそれぞれに、1個又は複数個の互いに係合するクッション側案内部(31、33)と嵌合側案内部(41、43)とを設けるとともに、前記クッション側案内部(31、33)と嵌合側案内部(41、43)とを、前記クッション部材(17)の周方向への回動を防止するとともに該クッション部材(17)の軸方向への移動を案内するように構成したことを特徴とする超音波センサ。
【請求項7】
前記クッション側案内部(31、33)が前記クッション部材(17)の外周面から突出する案内用凸部(31、33)であり、前記嵌合側案内部(41、43)が前記嵌合部(37)の軸方向に伸びる案内用切り欠き(41、43)であり、前記案内用凸部(31、33)が前記案内用切り欠き(41、43)に係合して前記クッション部材(17)の軸方向に摺動する構成であることを特徴とする前記請求項6に記載の超音波センサ。
【請求項8】
前記クッション側案内部(31、33)及び前記嵌合側案内部(41、43)の位置は、前記軸方向からみて、前記クッション部材(17)を前記嵌合部(37)に挿入して取り付ける際の位置が1つに定まるように設けられていることを特徴とする前記請求項6又は7に記載の超音波センサ。
【請求項9】
前記請求項1〜5に記載の超音波センサの構成と、前記請求項6〜8のいずれかに記載の超音波センサの構成とを備えたことを特徴とする超音波センサ。
【請求項10】
前記超音波振動子(1)を内嵌した前記クッション部材(17)が挿入された前記ケース(29)の後端側に、前記クッション部材(17)と接触するように、充填剤を注入して凝固させた充填部(59)を有することを特徴とする前記請求項1〜9のいずれかに記載の超音波センサ。
【請求項11】
前記ハウジング(3)に前記超音波振動子(1)の水平方向と垂直方向とを識別するためのハウジング側識別手段(15)を設けるとともに、
前記クッション部材(17)にも、前記ハウジング側識別手段(15)に対応して、該識別手段(15)と当接するクッション側識別手段(21a)を設けたことを特徴とする前記請求項1〜10のいずれかに記載の超音波センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−54647(P2006−54647A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234447(P2004−234447)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】