超音波診断装置及びボリュームデータ処理方法
【課題】生体内における対象組織を精度良く抽出する。
【解決手段】ボリュームデータに対して複数の参照断面からなる参照断面列56が設定される。参照断面列56は一定間隔で配列された複数のマニュアルトレース用参照断面58とそれ以外の複数の自動トレース用参照断面60とで構成される。参照断面58についてはマニュアルトレース処理及び自動的な修正処理が適用され、参照断面60については補間トレースラインの生成処理及び自動的な修正処理が適用される。最終的に複数のトレースラインに基づいて対象組織が抽出されあるいは体積が演算される。隣接するマニュアルトレースライン間における形状の類似度が小さい場合に、そこに1又は複数マニュアルトレース用参照断面を追加設定するようにしてもよい。
【解決手段】ボリュームデータに対して複数の参照断面からなる参照断面列56が設定される。参照断面列56は一定間隔で配列された複数のマニュアルトレース用参照断面58とそれ以外の複数の自動トレース用参照断面60とで構成される。参照断面58についてはマニュアルトレース処理及び自動的な修正処理が適用され、参照断面60については補間トレースラインの生成処理及び自動的な修正処理が適用される。最終的に複数のトレースラインに基づいて対象組織が抽出されあるいは体積が演算される。隣接するマニュアルトレースライン間における形状の類似度が小さい場合に、そこに1又は複数マニュアルトレース用参照断面を追加設定するようにしてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置及びボリュームデータ処理方法に関し、特に三次元空間内での対象組織の特定又は計測に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波ビームを走査して形成される走査面をそれと直交する方向へ走査することにより三次元空間(三次元エコーデータ取込空間)を形成できる。三次元空間内に存在する対象組織を抽出してその体積を演算する方法として従来からDisk Summation法が周知である。この従来方法では、対象組織を横切って整列する複数のスライスデータのそれぞれが断層画像として表示され、各断層画像上で対象組織の輪郭がマニュアルでトレースされ、これにより各スライスデータごとに断面積が求まる。各スライスデータごとに断面積と厚み(断面間隔)を利用して対象組織部分の要素体積が演算される。それらの要素体積を加算することによって対象組織の体積が求まる。この従来手法ではスライスデータの個数(つまり計測対象となる断面の個数)を増加させないと、精度良く体積を求められない。一方、多くのスライスデータをマニュアルトレースに委ねると、ユーザーの負担が大きい。マニュアルトレースではなく、各断面に対して自動トレース処理を適用することも考えられる。しかし、輪郭が不明瞭な部分があると、トレースが行えないかトレース結果の信頼性が低下してしまう。
【0003】
特許文献1には三次元空間内に存在する組織(心腔等)の抽出処理が記載されている。特許文献2には輪郭モデルを利用して組織を抽出することが記載されている。特許文献3にはマニュアルトレース結果を補正する技術が記載されている。特許文献4−7には組織の体積を演算する技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−159997号公報
【特許文献2】特開2002−224116号公報
【特許文献3】特開平11−164834号公報
【特許文献4】特開平10−305033号公報
【特許文献5】特開2002−330968号公報
【特許文献6】特開2000−107183号公報
【特許文献7】特開2000−296129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象組織の特定又は計測に際し、高い精度を維持しつつユーザーの負担を軽減することが望まれるが、それに十分に応えるものは未だ実現されていない。上記したいずれの文献にも、組織輪郭が不明瞭な部位と明瞭な部位とが混在する場合において、マニュアルトレースと自動トレースのそれぞれの利点を発揮させるための構成は記載されていない。例えば、妊娠後期における子宮内の胎盤に関し、胎盤周囲において子宮に接している領域部分については輝度差が乏しく、羊水に接している領域部分については輝度差が大きい。そのような状況において胎盤のトレースに当たってユーザーの負担を軽減し、且つ、トレース精度を高めたいとの要請がある。
【0006】
本発明の目的は、ユーザーにあまり負担をかけずに対象組織の特定精度あるいは計測精度を高められるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行ってボリュームデータを取得するデータ取得手段と、前記対象組織に対して設定された複数の代表断面上に複数のマニュアルトレースラインが形成された場合に、各マニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する代表断面処理手段と、前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づく補間処理により前記対象組織に対して設定された複数の非代表断面上に複数の補間トレースラインを形成すると共に、各補間トレースラインに対して第2修正処理を適用する非代表断面処理手段と、前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び前記第2修正処理後の複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて、前記ボリュームデータから対象組織データを抽出し、あるいは、前記対象組織の体積を演算する手段と、を含むことを特徴とする超音波診断装置に関するものである。
【0008】
望ましくは、ボリュームデータ内における対象組織に対して複数の断面からなる断面セットが設定される。この場合には対象組織の全体がカバーされるように断面セットが設定されるのが望ましい。断面セットは走査面セットに相当していてもよいし、走査面セットとは別に設定されてもよい。断面セットにおいて個々の断面間隔は均等であってもよいし、非均等であってもよい。形態が大きく変化するような部位に対しては断面密度を高めるようにしてもよい。いずれにしても、断面セットは、複数の代表断面及び複数の非代表断面を含む。対象組織に対して複数の代表断面が定められると、各代表断面上においてマニュアルトレースラインが形成される。本発明によれば、全断面に対してマニュアルトレースを行うのではなく、代表断面に対してマニュアルトレースを行えばよいので、ユーザーの負担を軽減できる。各マニュアルトレースラインに対して第1修正処理が適用される。第1修正処理は、修正要否の判断と修正の実行とを含む概念である。各マニュアルトレースラインについては、少なくとも修正要否の判断がなされる。このように、各マニュアルトレースラインは必要に応じて修正される。例えば、対象組織の輪郭(境界)が明瞭な部分については自動トレースが可能であり、しかも自動トレースの方がマニュアルトレースよりも一般に精度が良いので(細かい凹凸に対応し易い)、マニュアルトレースの結果が全体的に又は部分的に自動的に修正される(修正済みマニュアルトレースラインの形成)。この場合、例えば対象組織の輪郭の明瞭性を修正処理適用の要否を判断する基準とすることができる。複数の代表断面上にそれぞれ第1修正処理が適用されたマニュアルトレースラインが形成されると、それらを基準として、個々の非代表断面上に補間トレースラインを形成することが容易となる。例えば、隣接する2つの代表断面(隣接代表断面ペア)を構成する2つのマニュアルトレースライン(隣接マニュアルトレースライン)の間に、つまり1又は複数の非代表断面上に、補間処理によって1又は複数の補間トレースラインが形成される。各補間トレースラインに対して第2修正処理が適用される。第2修正処理は、上記第1修正処理と同様に、修正要否の判断と修正の実行とを含む概念である。つまり、各補間トレースラインは必要に応じて実際の組織輪郭に基づいて修正され、これにより修正済み補間トレースラインが形成される。複数の断面上に形成されたトレースライン列(第1修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び第2修正処理後の複数の補間トレースラインを含む)に基づいて、対象組織の表面形状を特定可能であり、これにより対象組織の表面を表す三次元画像が形成され、あるいは、対象組織の体積が演算される。個々のマニュアルトレースライン及び個々の補間トレースラインを実際の組織輪郭に基づいて(且つ、必要に応じて)修正可能であるので演算計測の精度を高められる。換言すれば、上記方法によれば、マニュアルトレースと自動トレースを有機的に組み合わせて両者の利点を効果的に発揮させることができる。
【0009】
望ましくは、前記代表断面処理手段は、前記対象組織に対して設定された断面セットの中から前記複数の代表断面を選択する手段と、前記選択された各代表断面に対するユーザーのトレース入力を受け付ける手段と、前記第1修正処理に当たって、前記各マニュアルトレースライン上における各ポイントごとに修正可否を判断し、修正可能なポイントについて実際の組織輪郭に基づいて当該ポイントの位置を修正する第1修正処理手段と、を含む。代表断面は自動的に指定され、あるいは、ユーザーにより指定される。断面セットを構成する断面の個数あるいは代表断面の個数は、自動的に設定され、あるいはユーザーにより指定される。ユーザーによる組織輪郭のトレースは通常断層画像上で行われる。マニュアルトレースラインを描く場合、どうしても細かい凹凸を十分にトレースできない場合があるが、組織輪郭が明瞭である(あるいは識別できる)限りにおいて、マニュアルトレース結果を自動的に修正すれば(オートトレースの重畳適用)、上記のような細かい凹凸を高精度にトレースできる。あるいは、そのような細かい凹凸に対して忠実にマニュアルトレースを行う必要がないので、ユーザーの負担を軽減できる。
【0010】
望ましくは、前記第1修正処理手段は、前記各ポイントごとに交差ラインを設定してその交差ライン上でエッジ検出を行うことにより修正の可否を判断する。エッジ検出に当たっては輝度値の変化(微分値)等を参照するのが望ましい。
【0011】
望ましくは、前記非代表断面処理手段は、前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づいて補間処理により前記各非代表断面上に補間トレースラインを形成する手段と、前記第2修正処理に当たって、前記各補間トレースライン上における各ポイントごとに修正可否を判断し、修正可能なポイントについて実際の組織輪郭に基づいて当該ポイントの位置を修正する第2修正処理手段と、を含む。この構成によれば、個々の非代表断面上に自動的に補間トレースラインを生成した上で、各補間トレースラインを実際の組織輪郭に基づいて修正して高精度のトレース結果を得られる。非代表断面についてはマニュアルでの作業が不要となるので、ユーザーの負担を軽減できる。また、単に補間トレースラインを生成するのではなく、それを実際の組織輪郭に基づいて修正し得るので補間処理結果の信頼性を高められる。
【0012】
望ましくは、前記第2修正処理手段は、前記各ポイントごとに交差ラインを設定してその交差ライン上でエッジ検出を行うことにより修正の可否を判断する。望ましくは、前記対象組織を通過する基準ラインの指定を受け付ける手段と、前記基準ラインの方向に並んで前記基準ラインに直交する断面セットを設定する手段と、を含み、前記断面セットの中から前記複数の代表断面及び前記複数の非代表断面が定められる。この構成によれば、断面セットはトレース前に予め設定され、それを構成する一部の断面がそれぞれ代表断面になり、他の一部の断面がそれぞれ非代表断面になる。但し、複数の代表断面及び複数の非代表断面を段階的に設定することによって結果として断面セットが構成されてもよい。
【0013】
また、本発明は、対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行って得られたボリュームデータを格納し、前記対象組織に対して設定された複数の代表断面に対する複数のマニュアルトレースを受け付け、前記各代表断面上に形成された各マニュアルトレースライン、及び、前記対象組織に対して設定された各非代表断面上に形成された各補間トレースライン、における各ポイントについて実際の組織輪郭に基づいて位置修正の可否を判断し、修正可能なポイントの位置を修正する修正処理を実行し、前記修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて対象組織を抽出し、あるいは、対象組織の体積を演算する、ことを特徴とするボリュームデータ処理方法に関する。
【0014】
また、本発明は、対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行ってボリュームデータを取得するデータ取得手段と、前記対象組織に対して設定された複数の代表断面上に複数のマニュアルトレースラインが形成された場合に、各マニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する代表断面処理手段と、前記第1修正処理前又は後の複数のマニュアルトレースラインにおける隣接マニュアルトレースラインペアごとに類似度を演算する類似度演算手段と、前記隣接マニュアルトレースラインペアごとの類似度に基づいて前記複数の代表断面の他に1又は複数の追加代表断面を加える追加代表断面設定手段と、前記1又は複数の追加代表断面上に形成された1又は複数のマニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する追加代表断面処理手段と、前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づく補間処理により前記対象組織に対して設定された複数の非代表断面上に複数の補間トレースラインを形成すると共に、各補間トレースラインに対して第2修正処理を適用する非代表断面処理手段と、前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び前記第2修正処理後の複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて、前記ボリュームデータから対象組織データを抽出し、あるいは、前記対象組織の体積を演算する手段と、を含むことを特徴とする超音波診断装置に関するものである。
【0015】
上記構成によれば、マニュアルトレース、補間処理及び自動トレースを組み合わせて対象組織の計測を行える。特に、隣接代表断面ペア間において必要に応じて1又は複数の追加代表断面が事後的に設定され、つまり、隣接マニュアルトレースラインペア間における類似度が小さい場合に(組織形状の変化が大となる部分に対して)、その隣接マニュアルトレースラインペア間に1又は複数のマニュアルトレースラインを追加的に生成可能である。これにより、例えば、対象組織において形状変化が大きい部分には代表断面が密に設定されるので(つまり、そこにマニュアルトレースラインが密に形成されるので)、補間処理と相俟って、対象組織の計測精度を向上できる。勿論、そのような追加設定の要否は類似度の大きさに応じて決定されるので、代表断面(当初の代表断面及び追加の代表断面)の個数を必要最小限にして、マニュアルトレースの負担が著しく増大することを防止できる。上記構成では、複数の当初マニュアルトレースラインと1又は複数の追加マニュアルトレースラインとが生成される。類似度の演算は、第1修正処理前の複数の当初マニュアルトレースラインに対して行われてもよいし、第1修正処理後の複数の当初マニュアルトレースラインに対して行われてもよい。前者の場合には、追加処理後において、すべてのマニュアルトレースラインに対して第1修正処理が適用されることになる。前者の場合には、複数の当初マニュアルトレースラインに対する1回目の第1修正処理と、複数の追加マニュアルトレースラインに対する2回目の第1修正処理と、が段階的に適用される。
【0016】
望ましくは、前記類似度演算手段は、前記隣接マニュアルトレースラインペアごとにそれを構成する2つのマニュアルトレースライン間で相互相関演算を実行することにより前記類似度を演算する。相互相関演算によれば、隣り合うマニュアルトレースライン間において形状がどの程度似ているのかを表す情報を得られる。
【0017】
望ましくは、前記追加代表断面設定手段は、前記類似度が所定の追加条件を満たした隣接代表断面ペア間に前記1又は複数の追加代表断面を加える。望ましくは、前記追加断面設定手段は、前記各類似度の大きさに応じて追加代表断面の追加数を決定する。
【0018】
また、本発明は、対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行って得られたボリュームデータを格納し、前記対象組織に対して設定された複数の代表断面に対する複数のマニュアルトレースを受け付け、前記複数の代表断面に加えて1又は複数の追加代表断面が設定された場合に、1又は複数の追加代表断面に対する1又は複数のマニュアルトレースを受け付け、前記各代表断面上に形成された各マニュアルトレースライン、及び、前記対象組織に対して設定された各非代表断面上に形成された各補間トレースライン、における各ポイントについて実際の組織輪郭に基づいて位置修正の可否を判断し、修正可能なポイントの位置を修正する修正処理を実行し、前記修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて対象組織を抽出し、あるいは、対象組織の体積を演算する、ことを特徴とするボリュームデータ処理方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、ユーザーにあまり負担をかけずに対象組織の特定精度あるいは計測精度を高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の全体構成がブロック図として示されている。この超音波診断装置は医療の分野において用いられ、特に生体内における対象組織を抽出し、その体積を演算する機能を有している。対象組織としては、胎盤、悪性腫瘍、胆嚢、甲状腺等を挙げることができる。以下の説明においては、胎盤を対象組織としてそれを抽出する処理が示されている。
【0022】
図1において、3Dプローブ10は、例えば体表面上に当接して用いられあるいは体腔内に挿入して用いられる超音波送受波器である。本実施形態において、3Dプローブ10は2Dアレイ振動子を有している。2Dアレイ振動子は第一方向及び第二方向に整列した複数の振動素子によって構成されるものである。2Dアレイ振動子により超音波ビームが形成され、その超音波ビームは二次元走査される。これにより三次元空間としての三次元エコーデータ取込空間が形成される。具体的には、その三次元空間は複数の走査面の集合体として構成され、各走査面は超音波ビームを一次元走査することによって構成される。2Dアレイ振動子に代えて、1Dアレイ振動子を機械的に走査することによって、上記同様の三次元空間を形成することが可能である。
【0023】
送信部12は送信ビームフォーマーとして機能する。送信部12は所定の遅延関係をもって複数の送信信号を上記2Dアレイ振動子に対して供給する。これによって送信ビームが形成される。生体内からの反射波は2Dアレイ振動子によって受波され、これによってその2Dアレイ振動子から複数の受信信号が受信部14に対して出力される。受信部14は複数の受信信号に対して整相加算処理を実行し、これによって整相加算後の受信信号(ビームデ−タ)を出力する。その受信信号に対しては所定の信号処理が施され、例えば検波、対数変換処理などが施され、信号処理後の受信信号であるビームデータが3Dデータメモリ16に格納される。
【0024】
3Dデータメモリ16は、生体内の送受波空間である三次元空間に相当する三次元記憶空間を有している。3Dデータメモリ16の書き込みあるいは読み出しに際して各データに対する座標変換が実行される。本実施形態においては、3Dデータメモリ16の書き込み時に、送受波座標系から記憶空間座標系への座標変換が実行される。これによって、後に説明するようにボリュームデータが構成される。ボリュームデータは、複数の走査面に相当する複数のフレームデータ(スライスデータ)の集合体であり、各フレームデータは複数のビームデータからなるものである。各ビームデータは深さ方向に整列した複数のエコーデータからなるものである。ちなみに、この3Dデータメモリ16以降の各構成については専用ハードウェアとして構成することも可能であるし、ソフトウェアの機能として実現することも可能である。
【0025】
三次元画像形成部18は、3Dデータメモリ16に格納されたボリュームデータに基づいて、例えばボリュームレンダリング法に基づく画像処理を実行し、これによって三次元超音波画像を構成する。その画像データは表示処理部26に送られる。任意断層画像形成部20は、ユーザーによって設定された三次元空間内の任意断面に対応する断層画像を形成するものである。その場合において3Dデータメモリ16内における任意断面に相当するデータアレイが読み出され、それらに基づいて任意断層画像としてのBモード画像が形成される。その画像データは表示処理部26に送られる。
【0026】
組織抽出部22は、以下に詳述する本実施形態特有の画像処理を実行するモジュールであり、三次元空間内あるいはボリュームデータ内に存在する対象組織(あるいは対象組織データ)をトレース処理によって抽出するものである。この場合においては、マニュアルトレース処理と補間処理とが併用されており、また、それぞれの処理結果に対する自動修正処理が利用されている。それらについては後に詳述する。抽出された対象組織データは表示処理部26に送られ、対象組織の画像表示に利用される他、本実施形態においては体積演算部24に送られている。
【0027】
この体積演算部24は上述した体積演算法(Disk Summation法)により対象組織の体積を求めるモジュールである。すなわち、組織抽出部22により、対象組織の全体にわたって複数の閉ループとしてのトレースライン列が構成されるため、それらのトレースラインに基づいて対象組織の体積を近似的に求めるものである。その場合においては、各閉ループ間すなわち各断面間の距離も利用される。演算された体積値のデータは表示処理部26へ送られる。体積演算法としては上記の他にAverage Rotation法等がある。
【0028】
上記の三次元画像形成部18、任意断層画像形成部20及び組織抽出部22等の各モジュールは、ユーザーによって選択された動作モードに応じて機能し、表示処理部26にはそれぞれのモードに対応するデータが入力される。表示処理部26は、入力されるデータに対して画像合成処理や色付け処理などの処理を施し、その結果であるデータを表示部28に出力する。表示部28には、選択された動作モードに応じて、三次元超音波画像、任意断層画像、抽出された組織の三次元画像、体積値等が表示される。ちなみに、三次元空間全体の三次元画像と対象組織の三次元画像とを合成して表示することも可能である。
【0029】
制御部30は図1に示される各構成の動作制御を行っており、特に入力部32によってユーザーにより設定されたパラメータに基づいて、上述した組織抽出処理及び体積演算の動作を制御している。また、制御部30は3Dデータメモリ16へのデータ書き込み制御等を担っている。入力部32は、キーボードやトラックボールなどを有する操作パネルによって構成されるものである。制御部30はCPU及び動作プログラムなどによって構成されるものである。単一のCPUが三次元画像処理、任意断層画像形成処理、組織抽出処理及び体積演算を実行するようにしてもよい。
【0030】
次に、図2以降の各図を参照しつつ対象組織の抽出処理を具体的に説明する。図2にはそのプロセスがフローチャートとして示されている。
【0031】
S101では、上述した3Dプローブを用いてデータが収集される。この場合においては、複数の走査面が形成される。図3には、一つの走査面に対応する断面データ40が示されている。本実施形態では、観測対象は胎盤であり、図3にはその断面が符号42Aで示されている。ちなみに、符号41は胎児を示しており、符号43は子宮を示しており、符号45は羊水を示している。図示されるように胎盤42Aは子宮43の内壁に接合されており、断面データ40上においてその接合部分、すなわち境界部分については輝度差があまりなく不明瞭なものとなっている。
【0032】
図2のS102では、図1に示した3Dデータメモリ上にボリュームデータが構築される。すなわち、図3に示したような断面データ40が3Dデータメモリ16に順次格納され、当該メモリ上にボリュームデータが構築されることになる。その様子が図4に示されている。ボリュームデータ(三次元空間)44内には胎盤(胎盤データ)42が含まれている。なお、他の組織については図示省略されている。
【0033】
図2のS103においては、表示部に任意断層画像を表示させながら、その断面の位置を適宜調整することにより、図5に示されるような基準断面46が設定される。この場合においては、対象組織である胎盤42の全体が断面として表れるように、特に、この断面が最大となるように基準断面46の位置決めを行うのが望ましい。ただし、後に説明するように断面セットとしての参照断面列(断面セット)が設定されるため、基準断面46はそのような参照断面列が対象組織である胎盤42の全体をカバーするように設定されれば充分である。図6には基準断面46に相当する断層画像46Aが拡大図として示されている。胎盤(の断面)42Bは子宮(の断面)43に貼り付いている。
【0034】
図2のS104では、図7に示されるように基準断面に相当する断層画像46A上において、対象組織である胎盤42Bについて両端の点がユーザーにより設定される。両端の点は図7において符号50,52で表されている。それらを結ぶ直線が基準線54である。またこのS104では以下に説明する参照断面列を構成する断面の個数mが設定される。
【0035】
基準線54を設定すると、図8に示されるように、三次元空間に相当するボリュームデータ44に対して参照断面列56が自動的に生成される。参照断面列56は、図7に示した基準線に直交する複数の断面として構成され、すなわち、それは一方の点50から他方の点52までにわたって等間隔あるいは非等間隔で複数の断面を並べたものに相当する。ここで、参照断面列56は、複数のマニュアルトレース用参照断面58と、複数の自動トレース用参照断面60とで構成される。ここで、マニュアルトレース用参照断面58は予め定められた個数だけ形成されており、その個数はnである。例えば5〜10の範囲内にnの値が定められる。後述する事後的な追加処理が適用されると、n個を越えて、マニュアルトレース用参照断面が追加設定されることもある。マニュアルトレース用参照断面は代表断面に相当するものであり、その代表断面についてだけマニュアルトレースが行われるので、ユーザーの負担を大幅に軽減できる。一方、後に説明するように個々の自動トレース用参照断面60については補間処理により自動トレースが実行される。
【0036】
具体的に説明すると、図2のS105においては選択されたn個の参照断面が画面上に断層画像として表示される。図9には、n個の参照断面58が示されている。図10には複数の参照断面に対応する複数の断層画像58Aが示されている。それらの断層画像58Aは画像リスト(画像集)64を構成するものである。この場合において、一枚ずつ断層画像を表示させてもよいし、複数の断層画像を並べて同時に表示するようにしてもよい。
【0037】
図2のS106では、個々の断層画像58A(図10)に対してマニュアルトレース処理が実行され、すなわち入力部が用いられて画像観察を行いながらユーザーにより胎盤の輪郭すなわち境界がトレースされる。そのトレース結果が図11に示されている。符号42Bは胎盤の断面を示し、符号42Cは胎盤の輪郭を表している。その輪郭は子宮に接触して不明瞭となっている部分と羊水45に接触して比較的明瞭になっている部分とを有している。不明瞭な部分であっても人間の視覚判断によりある程度のトレースを行うことが可能である。符号66はマニュアルトレースラインが表されており、閉ループとして輪郭42Cがなぞられている。マニュアルトレースライン66は子宮43側の部分66Bと羊水45側の部分66Aを有しているが、いずれも細かい凹凸までは対応できておらず概形がラインとして模擬されている。
【0038】
図2のS107では、図12に示されるようにマニュアルトレースラインの自動的な修正処理が実行される。この修正処理は各マニュアルトレースラインごとに行われ、すなわち代表断面としてのマニュアルトレース用参照断面ごとに実行される。図12に示されるように、マニュアルトレースライン上の個々のポイントごとにその周辺に対してエッジ検出処理が実行され、エッジが検出されたポイントについてはエッジ上の位置に当該ポイントをシフトさせる処理が実行される。ただし、エッジが検出されないような場合にはマニュアルトレース結果がそのまま保存される。つまり、各マニュアルトレースラインに第1修正処理が実行される。その結果、図12に示されるように羊水45側のライン部分については輪郭42Cに沿って忠実にトレースした自動トレースライン部分68Aが構成され、その一方、子宮43側の部分については輝度差があまりないため自動トレースを適正に行うことができない結果、マニュアルトレースライン部分68Bとして元の形状が保存される。その部分については細かな凹凸形状をトレースして結果を得ることはできないが、自動トレース処理による誤差等を考慮すればマニュアルトレース結果を尊重することが優先される。従って、このような処理によれば、マニュアルトレースと、自動トレースあるいは自動的トレースライン修正と、のそれぞれの利点及び欠点に着目し、両者の利点を巧みに引き出し、また両者の欠点を互いに補い合うことが可能となる。また自動的なトレースライン修正を前提とすれば、ユーザーによってマニュアルトレースを行う場合における負担を軽減できるという利点もある。さらに抽出精度及び体積演算精度を高められるという利点がある。
【0039】
図13には、ポイントの修正の具体的な手法が示されている。トレースライン66上のあるポイント72に着目すると、当該ポイント72からトレースライン66に直交する方向74が定義され、当該方向74に沿ってポイント72からエッジ探索が両方向に実行される。そのエッジ探索の範囲が符号76で示されている。エッジ探索は個々の位置において微分値を演算し、その微分値が所定値以上となった場合にエッジとみなすものであり、図示の例においては、輪郭42Cへ探索が到達した時点で微分値が増大した結果、その位置78が新たなトレースラインのポイントとして更新されることになる。このような処理を各トレースライン上の個々のポイントについて適用すれば、結果として輪郭が鮮明な部分についてはその輪郭に合致したトレースライン部分を描くことが可能となる。
【0040】
本実施形態においては微分処理が適用されていたが、エッジを検出できる限りにおいて各種の処理を適用することが可能である。また本実施形態においては輝度差があまりないような不鮮明な部分については強制的なポイント修正が行われないため、すなわちマニュアルでのトレース結果が尊重されるため、トレース修正が過剰に行われてしまう問題を未然に防止できる。ちなみに探索する方向については直交方向以外にも各種の方向が考えられ、例えば組織の中心点が既知であるような場合にはその方向とポイントとを結ぶ直線として探索方向を定義するようにしてもよい。
【0041】
図2のS108では、図8に示した複数の自動トレース用参照断面について自動トレース処理が実行される。この場合においては、図14に示されるように、複数のマニュアルトレース用参照断面58上に形成された、第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインとしての複数の複合トレースラインが基準とされ、それらを基礎として補間処理を行うことにより、複数の閉ループを面状に繋ぎ合わせたものとしてトレース面70が構成される。この場合、完全なる三次元的な曲面を定義する必要はないが、少なくとも個々の自動トレース用参照断面60について補間トレースラインが定義できるように補間処理を実行する。
【0042】
図15には非代表断面に相当する自動トレース用参照断面の断面データ60が示されている。対象組織である胎盤42Bの輪郭42Cをおおよそ取り囲む閉ループとして補間トレースライン74が自動的に設定されている。ただし、それは、実際のトレース結果ではなく、それを挟んで存在する二つあるいは複数の複合トレースラインに基づく補間処理によって生成されたものであるので、補間トレースライン74は輪郭42Cから全体的にあるいは部分的に外れている。
【0043】
そこで、図2のS109においては、図12及び図13を用いて説明したように、自動的にトレースラインを修正する処理が実行される。具体的には、図16に示されるように、羊水45に接しているライン部分について自動的なトレースの修正が行われ、その一方、胎盤43に接している部分については補間によるトレース結果がそのまま保存、尊重される。これにより部分的に修正された補間トレースライン76が構成される。つまり、第2修正処理が実行される。このような処理は個々の自動トレース用参照断面について実行される。
【0044】
以上の処理を行うと、図17に示されるように、対象組織としての胎盤全体をその形態に沿って包み込んだ自動修正処理後のトレース面を定義することができ、当該トレース面72は具体的には複数の閉ループすなわち複数のトレースラインからなるものである。それらのトレースラインは、上述した複数の複合トレースライン(第1修正処理後のマニュアルトレースライン)及び複数の第2修正処理後の補間トレースラインからなるものである。そこで、S111においては、抽出された組織の三次元画像が表示され、また演算された体積値が画面上に表示される。
【0045】
従来においては、高精度の体積演算のためには、例えば200枚あるいは300枚といった多数の断面に対してマニュアルトレースを正確に行う必要があり、極めてユーザー負担が生じていたが、あるいは事実上そのような処理を行えないために体積演算値の信頼性が低下していたが、上記実施形態によれば、複数の代表断面についてだけマニュアルトレースを行えばよいので、ユーザーの負担を大幅に軽減しつつ、しかも高精度の演算結果を得ることが可能である。すなわち、マニュアルトレース結果に対しては自動的なトレース修正処理が適用されるため、ユーザーとしては組織の輪郭が明瞭な部分についてはあまり細かな凹凸にとらわれずにトレース処理を行え、その面においてもユーザー負担を軽減できる。また、非代表断面についてはマニュアルトレースを行う必要がなく、自動トレース処理を適用し、さらにその自動トレース処理結果に対して自動的な修正処理を適用して信頼性の高いものに加工できるので、その意味においてもユーザー負担を軽減でき、また高精度の演算を行えるという利点を得られる。
【0046】
上記実施形態においては、基準断面の設定、両端点の指定、代表断面数の指定、また断面セット全体の個数等についてユーザーによって設定が行われていたが、それらの全部あるいは一部を自動的に設定するようにしてもよい。また状況に応じて自動的にそれらの値を可変するようにしてもよい。上記実施形態において、複数の断面は基本的には互いに均等間隔に設定されるが、例えば組織の形態変化が激しい部位などについては断面の間隔を小さくし、すなわち密に断面を設定し、それ以外の部位においては断面の間隔を大きくし、すなわち粗に断面を設定するようにしてもよい。また、上記実施形態においては、自動的なトレース修正の際に修正の可否がポイント毎に自動的に判断されているため、過剰に修正が行われてしまうような問題を未然に防止できる。すなわち境界あるいは輪郭の明瞭性に応じてマニュアルトレース結果あるいは補間トレース結果を尊重するかあるいは修正を施すのかを適応的に判断することが可能であり、様々な状況に対応した処理を実現できるという利点がある。ちなみに、自動トレース及びトレースラインの修正方法としては従来から提案されている各種の手法を適用することが可能である。
【0047】
次に、図18〜図23を用いて変形例について説明する。図18には、対象組織の抽出処理プロセスがフローチャートとして示されている。なお、図2に示した構成と同様の工程には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
図18に示されるプロセスにおいては、図2におけるS107とS108との間に、必要に応じて、1又は複数の追加のマニュアルトレース用参照断面(つまり、1又は複数の追加のマニュアルトレースライン)を生成する工程S200を含んでいる。この工程S200は、形状の変化が大きい部位について、マニュアルトレース遂行密度を高めて組織抽出精度を向上するためのものである。この処理内容が図19に概念的に示されている。以下に説明する隣接マニュアルトレースラインペア100−1,100−2,100−3,…の中で、対象組織部位の形状変化が大きく、このために類似度が小さくなっている隣接マニュアルトレースラインペアが特定された場合に、当該隣接マニュアルトレースラインペア(図19において、100−1,100−2参照)の間に、追加のマニュアルトレース用参照断面102が事後的に追加設定される。なお、図18に示したプロセスにおいて、追加処理工程S200に相当する工程をS106とS107との間に設けることも可能である。その場合には、1又は複数の追加のマニュアルトレースラインが生成された後に、それらに対して自動修正処理(S107)が適用される。
【0049】
図18に示されるプロセスを具体的に説明する。S201以降の一連の工程が隣接マニュアルトレースラインペアを1つずつシフトさせながら、隣接マニュアルトレースラインペアごとに実行される。隣接マニュアルトレースラインペアは、隣り合う2つのマニュアルトレースライン(自動修正を経ている場合には2つの複合トレースライン)で構成される。追加処理前のマニュアルトレース用参照断面の個数をnとした場合、n−1個の隣接マニュアルトレースラインペアが構成される。
【0050】
S201では、現在注目している隣接マニュアルトレースラインペア間で類似度が演算される。類似度の演算に当たっては例えば相互相関演算が実行される。すなわち、2つのマニュアルトレースラインの形状の類似度を表す情報が求められる。当該情報は、マニュアルトレース用参照断面を事後的に追加するか否か、換言すれば、形状の変化が大きい部位であるか否かを判断する指標となるものである。
【0051】
図20には、類似度演算の具体例が示されている。まず、隣接関係にある2つのマニュアルトレースライン102A,102Bのそれぞれがサンプリングされて、それぞれに対して、後述するペアリングを適正に行う観点から、ポイント列104A,104Bが設定される。そして、所定のルールに従って、それらのポイント列104A,104B間で、複数のポイントペアが定義される。各ポイントペアは、対応関係(符号106参照)にある2つのポイントで構成される。そのルールとしては、状況に応じて相応しい各種のルールを選択的に採用することが可能である。例えば、各ポイント列104A,104Bについて、それぞれ、最も近接している関係にある1番目のポイントペアを特定し、そこから順次、所定方向に回りながらペアリングを行って、最終的にN番目のポイントペアを特定するようにしてもよい。
【0052】
図21には、そのような処理の結果が示されており、隣接する2つのマニュアルトレース用参照断面58A,58B上の2つのマニュアルトレースライン102A,102B上には2つのポイント列104A,104Bが設定されている。その後、それぞれのマニュアルトレースライン102A,102Bについて重心点が求められ、各ポイントごとに重心点と当該ポイントとの間の距離が演算される。符号108に示されるように、各ポイント列104A,104Bごとに、サンプル点(ポイント)番号tごとに、重心までの距離を表すと、グラフ(関数)fA(t),fB(t)が得られる。そして、以下の(1)式の相互相関演算を実行することにより、相互相関係数として類似度αが得られる(類似度α:0.0〜1.0)。なお、類似度αを求める方法は上記のものには限られない。いずれにしても、2つのトレースライン間における形状の類似度を指標する情報が求められる。
【0053】
【数1】
【0054】
図18に戻って、S202では、上記類似度αが所定値以下か否かが判断される。所定値よりも類似度αが大きければ類似性ありと判断され、処理がS205へ移行し、断面追加は行われない。一方、所定値よりも類似度αが小さければ類似性なし、つまり対象組織の形状変化が大きいと判断されて、S203において、隣接する2つのマニュアルトレース用参照断面の間に、1又は複数の追加のマニュアルトレース用参照断面が設定される。追加する個数については1つであってもよいし、状況に応じて可変設定されてもよい。その後、追加された個々のマニュアルトレース用参照断面上において、上記S105〜S107と同様の処理が適用される。すなわち、個々の追加参照断面が画像として表示され、その画像を見ながらマニュアルトレースが実行され、その後、それによる個々のマニュアルトレースラインが自動的に修正される。なお、このような追加のマニュアルトレース作業は、すべての隣接マニュアルトレースラインペアに対して追加要否の判断がなされた後に行われてもよい。S205においては、すべての隣接マニュアルトレースラインペアについて上記の追加要否の判断及び必要な追加処理が行われたか否かが判断されて、残りの隣接マニュアルトレースラインペアがあればそれに対して上記処理が繰り返し適用される。
【0055】
上記のS203に関し、マニュアルトレース用参照断面の追加方法については幾つかの手法が考えられる。それについて図22及び図23を用いて説明する。なお、選択する手法に応じて、図18に示したプロセスの修正が必要となる場合がある。
【0056】
図22には、3つのタイプ(追加方法)が示されている。上段のタイプが適用された場合には、上記の所定値(閾値)が1つ利用されて、その所定値よりも類似度αが小さくなった場合に、1つだけマニュアルトレース用参照断面が追加される。上段には、更に、その条件と具体例が示されている。具体例においては、参照断面BC間、参照断面CD間にそれぞれ1つ参照断面が追加されている(ハッチング参照)。中段のタイプでは、それぞれ異なる複数の閾値が利用される。例えば、条件として図示されているように複数の閾値が利用され、各閾値区間ごとに追加断面数として1,2又は3が選択される。勿論、類似度が最高閾値よりも大きければ参照断面の追加は行われない。その具体例においては、参照断面BC間に1つの参照断面が追加されており、参照断面CD間には2つの参照断面が追加されている。下段のタイプにおいては、追加数として予めkが定められおり、k個の追加断面が動的に配分される。これを図23を用いて説明する。最初に、増分Δαが(αMAX−αMIN)/kで求まっているものとする。αMAXは初期状態におけるすべてのαの中での最大値を示し、αMINは初期状態におけるすべてのαの中の最小値を示す。図23の(1)に示すように、最初に、すべての断面間において最も小さなαを有する断面間が特定され、そこに1つの追加断面が挿入される。ここではCD間に1つの追加断面の挿入が決定される。この処理に伴い、当該最も小さなα(CD間の当初α)に上記Δαが加算される(その時点での最小値のかさ上げ)。次に、図23の(2)に示すように、先の加算処理後の状態において、最も小さなαが特定される。ここでは、やはりCD間のαがなお最も小さいために、CD間に更に1つの追加断面の挿入が決定される。そして、上記同様に、当該加算修正後のαに更にΔαが加算される。次に図23の(3)に示すように、2番目の加算処理後の状態において、最も小さなαが特定される。ここでは、BC間のαが最も小さいため、BC間に追加断面の挿入が決定される。このようにして、追加断面の挿入がk回繰り返されると、追加断面の挿入処理が終了する。この処理条件及び具体例が図22の下段にも示されている。上記においては、幾つかの追加処理方法を示したが、状況に応じて適当な手法を選択すればよい。図22の下段に示した方法によれば、追加上限の範囲内でより追加すべき区間により多くの断面を追加できるという利点がある。図22の上段及び中段に示した方法によれば簡便な処理を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】対象組織の抽出処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】子宮についての断面データを示す図である。
【図4】胎盤を含むボリュームデータを示す図である。
【図5】ボリュームデータに対する基準断面の設定を説明するための図である。
【図6】基準断面に相当する断層画像を示す図である。
【図7】断層画像上における基準線の設定を説明するための図である。
【図8】ボリュームデータに対して基準線を基準に自動的に形成された参照断面列を示す図である。
【図9】参照断面列に含まれる複数のマニュアルトレース用参照断面を示す図である。
【図10】複数のマニュアルトレース用参照断面に対応する複数の断層画像を示す図である。
【図11】マニュアルトレースラインを説明するための図である。
【図12】マニュアルトレースラインの自動的な修正を説明するための図である。
【図13】トレースライン上の点の位置の自動的な修正を説明するための図である。
【図14】補間処理による複数の補間トレースラインの生成方法を説明するための図である。
【図15】補間処理によって生成された補間トレースラインを説明するための図である。
【図16】自動的に修正された補間トレースラインを示す図である。
【図17】対象組織の全体に沿って設定された複数のトレースラインからなるトレース面を示す図である。
【図18】他の実施形態に係る抽出処理を示すフローチャートである。
【図19】マニュアルトレース用参照断面の追加を概念的に示す図である。
【図20】隣接マニュアルトレースラインペアの形状関係を示す図である。
【図21】隣接マニュアルトレースラインペア間における類似度の演算方法を説明するための図である。
【図22】幾つかの断面追加処理方法を説明するための図である。
【図23】図22の下段に示す方法を具体的に説明するための図である。
【符号の説明】
【0058】
10 3Dプローブ、12 送信部、14 受信部、16 3Dデータメモリ、18 三次元画像形成部、20 任意断層画像形成部、22 組織抽出部、24 体積演算部、26 表示処理部。
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置及びボリュームデータ処理方法に関し、特に三次元空間内での対象組織の特定又は計測に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波ビームを走査して形成される走査面をそれと直交する方向へ走査することにより三次元空間(三次元エコーデータ取込空間)を形成できる。三次元空間内に存在する対象組織を抽出してその体積を演算する方法として従来からDisk Summation法が周知である。この従来方法では、対象組織を横切って整列する複数のスライスデータのそれぞれが断層画像として表示され、各断層画像上で対象組織の輪郭がマニュアルでトレースされ、これにより各スライスデータごとに断面積が求まる。各スライスデータごとに断面積と厚み(断面間隔)を利用して対象組織部分の要素体積が演算される。それらの要素体積を加算することによって対象組織の体積が求まる。この従来手法ではスライスデータの個数(つまり計測対象となる断面の個数)を増加させないと、精度良く体積を求められない。一方、多くのスライスデータをマニュアルトレースに委ねると、ユーザーの負担が大きい。マニュアルトレースではなく、各断面に対して自動トレース処理を適用することも考えられる。しかし、輪郭が不明瞭な部分があると、トレースが行えないかトレース結果の信頼性が低下してしまう。
【0003】
特許文献1には三次元空間内に存在する組織(心腔等)の抽出処理が記載されている。特許文献2には輪郭モデルを利用して組織を抽出することが記載されている。特許文献3にはマニュアルトレース結果を補正する技術が記載されている。特許文献4−7には組織の体積を演算する技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−159997号公報
【特許文献2】特開2002−224116号公報
【特許文献3】特開平11−164834号公報
【特許文献4】特開平10−305033号公報
【特許文献5】特開2002−330968号公報
【特許文献6】特開2000−107183号公報
【特許文献7】特開2000−296129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象組織の特定又は計測に際し、高い精度を維持しつつユーザーの負担を軽減することが望まれるが、それに十分に応えるものは未だ実現されていない。上記したいずれの文献にも、組織輪郭が不明瞭な部位と明瞭な部位とが混在する場合において、マニュアルトレースと自動トレースのそれぞれの利点を発揮させるための構成は記載されていない。例えば、妊娠後期における子宮内の胎盤に関し、胎盤周囲において子宮に接している領域部分については輝度差が乏しく、羊水に接している領域部分については輝度差が大きい。そのような状況において胎盤のトレースに当たってユーザーの負担を軽減し、且つ、トレース精度を高めたいとの要請がある。
【0006】
本発明の目的は、ユーザーにあまり負担をかけずに対象組織の特定精度あるいは計測精度を高められるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行ってボリュームデータを取得するデータ取得手段と、前記対象組織に対して設定された複数の代表断面上に複数のマニュアルトレースラインが形成された場合に、各マニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する代表断面処理手段と、前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づく補間処理により前記対象組織に対して設定された複数の非代表断面上に複数の補間トレースラインを形成すると共に、各補間トレースラインに対して第2修正処理を適用する非代表断面処理手段と、前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び前記第2修正処理後の複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて、前記ボリュームデータから対象組織データを抽出し、あるいは、前記対象組織の体積を演算する手段と、を含むことを特徴とする超音波診断装置に関するものである。
【0008】
望ましくは、ボリュームデータ内における対象組織に対して複数の断面からなる断面セットが設定される。この場合には対象組織の全体がカバーされるように断面セットが設定されるのが望ましい。断面セットは走査面セットに相当していてもよいし、走査面セットとは別に設定されてもよい。断面セットにおいて個々の断面間隔は均等であってもよいし、非均等であってもよい。形態が大きく変化するような部位に対しては断面密度を高めるようにしてもよい。いずれにしても、断面セットは、複数の代表断面及び複数の非代表断面を含む。対象組織に対して複数の代表断面が定められると、各代表断面上においてマニュアルトレースラインが形成される。本発明によれば、全断面に対してマニュアルトレースを行うのではなく、代表断面に対してマニュアルトレースを行えばよいので、ユーザーの負担を軽減できる。各マニュアルトレースラインに対して第1修正処理が適用される。第1修正処理は、修正要否の判断と修正の実行とを含む概念である。各マニュアルトレースラインについては、少なくとも修正要否の判断がなされる。このように、各マニュアルトレースラインは必要に応じて修正される。例えば、対象組織の輪郭(境界)が明瞭な部分については自動トレースが可能であり、しかも自動トレースの方がマニュアルトレースよりも一般に精度が良いので(細かい凹凸に対応し易い)、マニュアルトレースの結果が全体的に又は部分的に自動的に修正される(修正済みマニュアルトレースラインの形成)。この場合、例えば対象組織の輪郭の明瞭性を修正処理適用の要否を判断する基準とすることができる。複数の代表断面上にそれぞれ第1修正処理が適用されたマニュアルトレースラインが形成されると、それらを基準として、個々の非代表断面上に補間トレースラインを形成することが容易となる。例えば、隣接する2つの代表断面(隣接代表断面ペア)を構成する2つのマニュアルトレースライン(隣接マニュアルトレースライン)の間に、つまり1又は複数の非代表断面上に、補間処理によって1又は複数の補間トレースラインが形成される。各補間トレースラインに対して第2修正処理が適用される。第2修正処理は、上記第1修正処理と同様に、修正要否の判断と修正の実行とを含む概念である。つまり、各補間トレースラインは必要に応じて実際の組織輪郭に基づいて修正され、これにより修正済み補間トレースラインが形成される。複数の断面上に形成されたトレースライン列(第1修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び第2修正処理後の複数の補間トレースラインを含む)に基づいて、対象組織の表面形状を特定可能であり、これにより対象組織の表面を表す三次元画像が形成され、あるいは、対象組織の体積が演算される。個々のマニュアルトレースライン及び個々の補間トレースラインを実際の組織輪郭に基づいて(且つ、必要に応じて)修正可能であるので演算計測の精度を高められる。換言すれば、上記方法によれば、マニュアルトレースと自動トレースを有機的に組み合わせて両者の利点を効果的に発揮させることができる。
【0009】
望ましくは、前記代表断面処理手段は、前記対象組織に対して設定された断面セットの中から前記複数の代表断面を選択する手段と、前記選択された各代表断面に対するユーザーのトレース入力を受け付ける手段と、前記第1修正処理に当たって、前記各マニュアルトレースライン上における各ポイントごとに修正可否を判断し、修正可能なポイントについて実際の組織輪郭に基づいて当該ポイントの位置を修正する第1修正処理手段と、を含む。代表断面は自動的に指定され、あるいは、ユーザーにより指定される。断面セットを構成する断面の個数あるいは代表断面の個数は、自動的に設定され、あるいはユーザーにより指定される。ユーザーによる組織輪郭のトレースは通常断層画像上で行われる。マニュアルトレースラインを描く場合、どうしても細かい凹凸を十分にトレースできない場合があるが、組織輪郭が明瞭である(あるいは識別できる)限りにおいて、マニュアルトレース結果を自動的に修正すれば(オートトレースの重畳適用)、上記のような細かい凹凸を高精度にトレースできる。あるいは、そのような細かい凹凸に対して忠実にマニュアルトレースを行う必要がないので、ユーザーの負担を軽減できる。
【0010】
望ましくは、前記第1修正処理手段は、前記各ポイントごとに交差ラインを設定してその交差ライン上でエッジ検出を行うことにより修正の可否を判断する。エッジ検出に当たっては輝度値の変化(微分値)等を参照するのが望ましい。
【0011】
望ましくは、前記非代表断面処理手段は、前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づいて補間処理により前記各非代表断面上に補間トレースラインを形成する手段と、前記第2修正処理に当たって、前記各補間トレースライン上における各ポイントごとに修正可否を判断し、修正可能なポイントについて実際の組織輪郭に基づいて当該ポイントの位置を修正する第2修正処理手段と、を含む。この構成によれば、個々の非代表断面上に自動的に補間トレースラインを生成した上で、各補間トレースラインを実際の組織輪郭に基づいて修正して高精度のトレース結果を得られる。非代表断面についてはマニュアルでの作業が不要となるので、ユーザーの負担を軽減できる。また、単に補間トレースラインを生成するのではなく、それを実際の組織輪郭に基づいて修正し得るので補間処理結果の信頼性を高められる。
【0012】
望ましくは、前記第2修正処理手段は、前記各ポイントごとに交差ラインを設定してその交差ライン上でエッジ検出を行うことにより修正の可否を判断する。望ましくは、前記対象組織を通過する基準ラインの指定を受け付ける手段と、前記基準ラインの方向に並んで前記基準ラインに直交する断面セットを設定する手段と、を含み、前記断面セットの中から前記複数の代表断面及び前記複数の非代表断面が定められる。この構成によれば、断面セットはトレース前に予め設定され、それを構成する一部の断面がそれぞれ代表断面になり、他の一部の断面がそれぞれ非代表断面になる。但し、複数の代表断面及び複数の非代表断面を段階的に設定することによって結果として断面セットが構成されてもよい。
【0013】
また、本発明は、対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行って得られたボリュームデータを格納し、前記対象組織に対して設定された複数の代表断面に対する複数のマニュアルトレースを受け付け、前記各代表断面上に形成された各マニュアルトレースライン、及び、前記対象組織に対して設定された各非代表断面上に形成された各補間トレースライン、における各ポイントについて実際の組織輪郭に基づいて位置修正の可否を判断し、修正可能なポイントの位置を修正する修正処理を実行し、前記修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて対象組織を抽出し、あるいは、対象組織の体積を演算する、ことを特徴とするボリュームデータ処理方法に関する。
【0014】
また、本発明は、対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行ってボリュームデータを取得するデータ取得手段と、前記対象組織に対して設定された複数の代表断面上に複数のマニュアルトレースラインが形成された場合に、各マニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する代表断面処理手段と、前記第1修正処理前又は後の複数のマニュアルトレースラインにおける隣接マニュアルトレースラインペアごとに類似度を演算する類似度演算手段と、前記隣接マニュアルトレースラインペアごとの類似度に基づいて前記複数の代表断面の他に1又は複数の追加代表断面を加える追加代表断面設定手段と、前記1又は複数の追加代表断面上に形成された1又は複数のマニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する追加代表断面処理手段と、前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づく補間処理により前記対象組織に対して設定された複数の非代表断面上に複数の補間トレースラインを形成すると共に、各補間トレースラインに対して第2修正処理を適用する非代表断面処理手段と、前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び前記第2修正処理後の複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて、前記ボリュームデータから対象組織データを抽出し、あるいは、前記対象組織の体積を演算する手段と、を含むことを特徴とする超音波診断装置に関するものである。
【0015】
上記構成によれば、マニュアルトレース、補間処理及び自動トレースを組み合わせて対象組織の計測を行える。特に、隣接代表断面ペア間において必要に応じて1又は複数の追加代表断面が事後的に設定され、つまり、隣接マニュアルトレースラインペア間における類似度が小さい場合に(組織形状の変化が大となる部分に対して)、その隣接マニュアルトレースラインペア間に1又は複数のマニュアルトレースラインを追加的に生成可能である。これにより、例えば、対象組織において形状変化が大きい部分には代表断面が密に設定されるので(つまり、そこにマニュアルトレースラインが密に形成されるので)、補間処理と相俟って、対象組織の計測精度を向上できる。勿論、そのような追加設定の要否は類似度の大きさに応じて決定されるので、代表断面(当初の代表断面及び追加の代表断面)の個数を必要最小限にして、マニュアルトレースの負担が著しく増大することを防止できる。上記構成では、複数の当初マニュアルトレースラインと1又は複数の追加マニュアルトレースラインとが生成される。類似度の演算は、第1修正処理前の複数の当初マニュアルトレースラインに対して行われてもよいし、第1修正処理後の複数の当初マニュアルトレースラインに対して行われてもよい。前者の場合には、追加処理後において、すべてのマニュアルトレースラインに対して第1修正処理が適用されることになる。前者の場合には、複数の当初マニュアルトレースラインに対する1回目の第1修正処理と、複数の追加マニュアルトレースラインに対する2回目の第1修正処理と、が段階的に適用される。
【0016】
望ましくは、前記類似度演算手段は、前記隣接マニュアルトレースラインペアごとにそれを構成する2つのマニュアルトレースライン間で相互相関演算を実行することにより前記類似度を演算する。相互相関演算によれば、隣り合うマニュアルトレースライン間において形状がどの程度似ているのかを表す情報を得られる。
【0017】
望ましくは、前記追加代表断面設定手段は、前記類似度が所定の追加条件を満たした隣接代表断面ペア間に前記1又は複数の追加代表断面を加える。望ましくは、前記追加断面設定手段は、前記各類似度の大きさに応じて追加代表断面の追加数を決定する。
【0018】
また、本発明は、対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行って得られたボリュームデータを格納し、前記対象組織に対して設定された複数の代表断面に対する複数のマニュアルトレースを受け付け、前記複数の代表断面に加えて1又は複数の追加代表断面が設定された場合に、1又は複数の追加代表断面に対する1又は複数のマニュアルトレースを受け付け、前記各代表断面上に形成された各マニュアルトレースライン、及び、前記対象組織に対して設定された各非代表断面上に形成された各補間トレースライン、における各ポイントについて実際の組織輪郭に基づいて位置修正の可否を判断し、修正可能なポイントの位置を修正する修正処理を実行し、前記修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて対象組織を抽出し、あるいは、対象組織の体積を演算する、ことを特徴とするボリュームデータ処理方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、ユーザーにあまり負担をかけずに対象組織の特定精度あるいは計測精度を高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の全体構成がブロック図として示されている。この超音波診断装置は医療の分野において用いられ、特に生体内における対象組織を抽出し、その体積を演算する機能を有している。対象組織としては、胎盤、悪性腫瘍、胆嚢、甲状腺等を挙げることができる。以下の説明においては、胎盤を対象組織としてそれを抽出する処理が示されている。
【0022】
図1において、3Dプローブ10は、例えば体表面上に当接して用いられあるいは体腔内に挿入して用いられる超音波送受波器である。本実施形態において、3Dプローブ10は2Dアレイ振動子を有している。2Dアレイ振動子は第一方向及び第二方向に整列した複数の振動素子によって構成されるものである。2Dアレイ振動子により超音波ビームが形成され、その超音波ビームは二次元走査される。これにより三次元空間としての三次元エコーデータ取込空間が形成される。具体的には、その三次元空間は複数の走査面の集合体として構成され、各走査面は超音波ビームを一次元走査することによって構成される。2Dアレイ振動子に代えて、1Dアレイ振動子を機械的に走査することによって、上記同様の三次元空間を形成することが可能である。
【0023】
送信部12は送信ビームフォーマーとして機能する。送信部12は所定の遅延関係をもって複数の送信信号を上記2Dアレイ振動子に対して供給する。これによって送信ビームが形成される。生体内からの反射波は2Dアレイ振動子によって受波され、これによってその2Dアレイ振動子から複数の受信信号が受信部14に対して出力される。受信部14は複数の受信信号に対して整相加算処理を実行し、これによって整相加算後の受信信号(ビームデ−タ)を出力する。その受信信号に対しては所定の信号処理が施され、例えば検波、対数変換処理などが施され、信号処理後の受信信号であるビームデータが3Dデータメモリ16に格納される。
【0024】
3Dデータメモリ16は、生体内の送受波空間である三次元空間に相当する三次元記憶空間を有している。3Dデータメモリ16の書き込みあるいは読み出しに際して各データに対する座標変換が実行される。本実施形態においては、3Dデータメモリ16の書き込み時に、送受波座標系から記憶空間座標系への座標変換が実行される。これによって、後に説明するようにボリュームデータが構成される。ボリュームデータは、複数の走査面に相当する複数のフレームデータ(スライスデータ)の集合体であり、各フレームデータは複数のビームデータからなるものである。各ビームデータは深さ方向に整列した複数のエコーデータからなるものである。ちなみに、この3Dデータメモリ16以降の各構成については専用ハードウェアとして構成することも可能であるし、ソフトウェアの機能として実現することも可能である。
【0025】
三次元画像形成部18は、3Dデータメモリ16に格納されたボリュームデータに基づいて、例えばボリュームレンダリング法に基づく画像処理を実行し、これによって三次元超音波画像を構成する。その画像データは表示処理部26に送られる。任意断層画像形成部20は、ユーザーによって設定された三次元空間内の任意断面に対応する断層画像を形成するものである。その場合において3Dデータメモリ16内における任意断面に相当するデータアレイが読み出され、それらに基づいて任意断層画像としてのBモード画像が形成される。その画像データは表示処理部26に送られる。
【0026】
組織抽出部22は、以下に詳述する本実施形態特有の画像処理を実行するモジュールであり、三次元空間内あるいはボリュームデータ内に存在する対象組織(あるいは対象組織データ)をトレース処理によって抽出するものである。この場合においては、マニュアルトレース処理と補間処理とが併用されており、また、それぞれの処理結果に対する自動修正処理が利用されている。それらについては後に詳述する。抽出された対象組織データは表示処理部26に送られ、対象組織の画像表示に利用される他、本実施形態においては体積演算部24に送られている。
【0027】
この体積演算部24は上述した体積演算法(Disk Summation法)により対象組織の体積を求めるモジュールである。すなわち、組織抽出部22により、対象組織の全体にわたって複数の閉ループとしてのトレースライン列が構成されるため、それらのトレースラインに基づいて対象組織の体積を近似的に求めるものである。その場合においては、各閉ループ間すなわち各断面間の距離も利用される。演算された体積値のデータは表示処理部26へ送られる。体積演算法としては上記の他にAverage Rotation法等がある。
【0028】
上記の三次元画像形成部18、任意断層画像形成部20及び組織抽出部22等の各モジュールは、ユーザーによって選択された動作モードに応じて機能し、表示処理部26にはそれぞれのモードに対応するデータが入力される。表示処理部26は、入力されるデータに対して画像合成処理や色付け処理などの処理を施し、その結果であるデータを表示部28に出力する。表示部28には、選択された動作モードに応じて、三次元超音波画像、任意断層画像、抽出された組織の三次元画像、体積値等が表示される。ちなみに、三次元空間全体の三次元画像と対象組織の三次元画像とを合成して表示することも可能である。
【0029】
制御部30は図1に示される各構成の動作制御を行っており、特に入力部32によってユーザーにより設定されたパラメータに基づいて、上述した組織抽出処理及び体積演算の動作を制御している。また、制御部30は3Dデータメモリ16へのデータ書き込み制御等を担っている。入力部32は、キーボードやトラックボールなどを有する操作パネルによって構成されるものである。制御部30はCPU及び動作プログラムなどによって構成されるものである。単一のCPUが三次元画像処理、任意断層画像形成処理、組織抽出処理及び体積演算を実行するようにしてもよい。
【0030】
次に、図2以降の各図を参照しつつ対象組織の抽出処理を具体的に説明する。図2にはそのプロセスがフローチャートとして示されている。
【0031】
S101では、上述した3Dプローブを用いてデータが収集される。この場合においては、複数の走査面が形成される。図3には、一つの走査面に対応する断面データ40が示されている。本実施形態では、観測対象は胎盤であり、図3にはその断面が符号42Aで示されている。ちなみに、符号41は胎児を示しており、符号43は子宮を示しており、符号45は羊水を示している。図示されるように胎盤42Aは子宮43の内壁に接合されており、断面データ40上においてその接合部分、すなわち境界部分については輝度差があまりなく不明瞭なものとなっている。
【0032】
図2のS102では、図1に示した3Dデータメモリ上にボリュームデータが構築される。すなわち、図3に示したような断面データ40が3Dデータメモリ16に順次格納され、当該メモリ上にボリュームデータが構築されることになる。その様子が図4に示されている。ボリュームデータ(三次元空間)44内には胎盤(胎盤データ)42が含まれている。なお、他の組織については図示省略されている。
【0033】
図2のS103においては、表示部に任意断層画像を表示させながら、その断面の位置を適宜調整することにより、図5に示されるような基準断面46が設定される。この場合においては、対象組織である胎盤42の全体が断面として表れるように、特に、この断面が最大となるように基準断面46の位置決めを行うのが望ましい。ただし、後に説明するように断面セットとしての参照断面列(断面セット)が設定されるため、基準断面46はそのような参照断面列が対象組織である胎盤42の全体をカバーするように設定されれば充分である。図6には基準断面46に相当する断層画像46Aが拡大図として示されている。胎盤(の断面)42Bは子宮(の断面)43に貼り付いている。
【0034】
図2のS104では、図7に示されるように基準断面に相当する断層画像46A上において、対象組織である胎盤42Bについて両端の点がユーザーにより設定される。両端の点は図7において符号50,52で表されている。それらを結ぶ直線が基準線54である。またこのS104では以下に説明する参照断面列を構成する断面の個数mが設定される。
【0035】
基準線54を設定すると、図8に示されるように、三次元空間に相当するボリュームデータ44に対して参照断面列56が自動的に生成される。参照断面列56は、図7に示した基準線に直交する複数の断面として構成され、すなわち、それは一方の点50から他方の点52までにわたって等間隔あるいは非等間隔で複数の断面を並べたものに相当する。ここで、参照断面列56は、複数のマニュアルトレース用参照断面58と、複数の自動トレース用参照断面60とで構成される。ここで、マニュアルトレース用参照断面58は予め定められた個数だけ形成されており、その個数はnである。例えば5〜10の範囲内にnの値が定められる。後述する事後的な追加処理が適用されると、n個を越えて、マニュアルトレース用参照断面が追加設定されることもある。マニュアルトレース用参照断面は代表断面に相当するものであり、その代表断面についてだけマニュアルトレースが行われるので、ユーザーの負担を大幅に軽減できる。一方、後に説明するように個々の自動トレース用参照断面60については補間処理により自動トレースが実行される。
【0036】
具体的に説明すると、図2のS105においては選択されたn個の参照断面が画面上に断層画像として表示される。図9には、n個の参照断面58が示されている。図10には複数の参照断面に対応する複数の断層画像58Aが示されている。それらの断層画像58Aは画像リスト(画像集)64を構成するものである。この場合において、一枚ずつ断層画像を表示させてもよいし、複数の断層画像を並べて同時に表示するようにしてもよい。
【0037】
図2のS106では、個々の断層画像58A(図10)に対してマニュアルトレース処理が実行され、すなわち入力部が用いられて画像観察を行いながらユーザーにより胎盤の輪郭すなわち境界がトレースされる。そのトレース結果が図11に示されている。符号42Bは胎盤の断面を示し、符号42Cは胎盤の輪郭を表している。その輪郭は子宮に接触して不明瞭となっている部分と羊水45に接触して比較的明瞭になっている部分とを有している。不明瞭な部分であっても人間の視覚判断によりある程度のトレースを行うことが可能である。符号66はマニュアルトレースラインが表されており、閉ループとして輪郭42Cがなぞられている。マニュアルトレースライン66は子宮43側の部分66Bと羊水45側の部分66Aを有しているが、いずれも細かい凹凸までは対応できておらず概形がラインとして模擬されている。
【0038】
図2のS107では、図12に示されるようにマニュアルトレースラインの自動的な修正処理が実行される。この修正処理は各マニュアルトレースラインごとに行われ、すなわち代表断面としてのマニュアルトレース用参照断面ごとに実行される。図12に示されるように、マニュアルトレースライン上の個々のポイントごとにその周辺に対してエッジ検出処理が実行され、エッジが検出されたポイントについてはエッジ上の位置に当該ポイントをシフトさせる処理が実行される。ただし、エッジが検出されないような場合にはマニュアルトレース結果がそのまま保存される。つまり、各マニュアルトレースラインに第1修正処理が実行される。その結果、図12に示されるように羊水45側のライン部分については輪郭42Cに沿って忠実にトレースした自動トレースライン部分68Aが構成され、その一方、子宮43側の部分については輝度差があまりないため自動トレースを適正に行うことができない結果、マニュアルトレースライン部分68Bとして元の形状が保存される。その部分については細かな凹凸形状をトレースして結果を得ることはできないが、自動トレース処理による誤差等を考慮すればマニュアルトレース結果を尊重することが優先される。従って、このような処理によれば、マニュアルトレースと、自動トレースあるいは自動的トレースライン修正と、のそれぞれの利点及び欠点に着目し、両者の利点を巧みに引き出し、また両者の欠点を互いに補い合うことが可能となる。また自動的なトレースライン修正を前提とすれば、ユーザーによってマニュアルトレースを行う場合における負担を軽減できるという利点もある。さらに抽出精度及び体積演算精度を高められるという利点がある。
【0039】
図13には、ポイントの修正の具体的な手法が示されている。トレースライン66上のあるポイント72に着目すると、当該ポイント72からトレースライン66に直交する方向74が定義され、当該方向74に沿ってポイント72からエッジ探索が両方向に実行される。そのエッジ探索の範囲が符号76で示されている。エッジ探索は個々の位置において微分値を演算し、その微分値が所定値以上となった場合にエッジとみなすものであり、図示の例においては、輪郭42Cへ探索が到達した時点で微分値が増大した結果、その位置78が新たなトレースラインのポイントとして更新されることになる。このような処理を各トレースライン上の個々のポイントについて適用すれば、結果として輪郭が鮮明な部分についてはその輪郭に合致したトレースライン部分を描くことが可能となる。
【0040】
本実施形態においては微分処理が適用されていたが、エッジを検出できる限りにおいて各種の処理を適用することが可能である。また本実施形態においては輝度差があまりないような不鮮明な部分については強制的なポイント修正が行われないため、すなわちマニュアルでのトレース結果が尊重されるため、トレース修正が過剰に行われてしまう問題を未然に防止できる。ちなみに探索する方向については直交方向以外にも各種の方向が考えられ、例えば組織の中心点が既知であるような場合にはその方向とポイントとを結ぶ直線として探索方向を定義するようにしてもよい。
【0041】
図2のS108では、図8に示した複数の自動トレース用参照断面について自動トレース処理が実行される。この場合においては、図14に示されるように、複数のマニュアルトレース用参照断面58上に形成された、第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインとしての複数の複合トレースラインが基準とされ、それらを基礎として補間処理を行うことにより、複数の閉ループを面状に繋ぎ合わせたものとしてトレース面70が構成される。この場合、完全なる三次元的な曲面を定義する必要はないが、少なくとも個々の自動トレース用参照断面60について補間トレースラインが定義できるように補間処理を実行する。
【0042】
図15には非代表断面に相当する自動トレース用参照断面の断面データ60が示されている。対象組織である胎盤42Bの輪郭42Cをおおよそ取り囲む閉ループとして補間トレースライン74が自動的に設定されている。ただし、それは、実際のトレース結果ではなく、それを挟んで存在する二つあるいは複数の複合トレースラインに基づく補間処理によって生成されたものであるので、補間トレースライン74は輪郭42Cから全体的にあるいは部分的に外れている。
【0043】
そこで、図2のS109においては、図12及び図13を用いて説明したように、自動的にトレースラインを修正する処理が実行される。具体的には、図16に示されるように、羊水45に接しているライン部分について自動的なトレースの修正が行われ、その一方、胎盤43に接している部分については補間によるトレース結果がそのまま保存、尊重される。これにより部分的に修正された補間トレースライン76が構成される。つまり、第2修正処理が実行される。このような処理は個々の自動トレース用参照断面について実行される。
【0044】
以上の処理を行うと、図17に示されるように、対象組織としての胎盤全体をその形態に沿って包み込んだ自動修正処理後のトレース面を定義することができ、当該トレース面72は具体的には複数の閉ループすなわち複数のトレースラインからなるものである。それらのトレースラインは、上述した複数の複合トレースライン(第1修正処理後のマニュアルトレースライン)及び複数の第2修正処理後の補間トレースラインからなるものである。そこで、S111においては、抽出された組織の三次元画像が表示され、また演算された体積値が画面上に表示される。
【0045】
従来においては、高精度の体積演算のためには、例えば200枚あるいは300枚といった多数の断面に対してマニュアルトレースを正確に行う必要があり、極めてユーザー負担が生じていたが、あるいは事実上そのような処理を行えないために体積演算値の信頼性が低下していたが、上記実施形態によれば、複数の代表断面についてだけマニュアルトレースを行えばよいので、ユーザーの負担を大幅に軽減しつつ、しかも高精度の演算結果を得ることが可能である。すなわち、マニュアルトレース結果に対しては自動的なトレース修正処理が適用されるため、ユーザーとしては組織の輪郭が明瞭な部分についてはあまり細かな凹凸にとらわれずにトレース処理を行え、その面においてもユーザー負担を軽減できる。また、非代表断面についてはマニュアルトレースを行う必要がなく、自動トレース処理を適用し、さらにその自動トレース処理結果に対して自動的な修正処理を適用して信頼性の高いものに加工できるので、その意味においてもユーザー負担を軽減でき、また高精度の演算を行えるという利点を得られる。
【0046】
上記実施形態においては、基準断面の設定、両端点の指定、代表断面数の指定、また断面セット全体の個数等についてユーザーによって設定が行われていたが、それらの全部あるいは一部を自動的に設定するようにしてもよい。また状況に応じて自動的にそれらの値を可変するようにしてもよい。上記実施形態において、複数の断面は基本的には互いに均等間隔に設定されるが、例えば組織の形態変化が激しい部位などについては断面の間隔を小さくし、すなわち密に断面を設定し、それ以外の部位においては断面の間隔を大きくし、すなわち粗に断面を設定するようにしてもよい。また、上記実施形態においては、自動的なトレース修正の際に修正の可否がポイント毎に自動的に判断されているため、過剰に修正が行われてしまうような問題を未然に防止できる。すなわち境界あるいは輪郭の明瞭性に応じてマニュアルトレース結果あるいは補間トレース結果を尊重するかあるいは修正を施すのかを適応的に判断することが可能であり、様々な状況に対応した処理を実現できるという利点がある。ちなみに、自動トレース及びトレースラインの修正方法としては従来から提案されている各種の手法を適用することが可能である。
【0047】
次に、図18〜図23を用いて変形例について説明する。図18には、対象組織の抽出処理プロセスがフローチャートとして示されている。なお、図2に示した構成と同様の工程には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
図18に示されるプロセスにおいては、図2におけるS107とS108との間に、必要に応じて、1又は複数の追加のマニュアルトレース用参照断面(つまり、1又は複数の追加のマニュアルトレースライン)を生成する工程S200を含んでいる。この工程S200は、形状の変化が大きい部位について、マニュアルトレース遂行密度を高めて組織抽出精度を向上するためのものである。この処理内容が図19に概念的に示されている。以下に説明する隣接マニュアルトレースラインペア100−1,100−2,100−3,…の中で、対象組織部位の形状変化が大きく、このために類似度が小さくなっている隣接マニュアルトレースラインペアが特定された場合に、当該隣接マニュアルトレースラインペア(図19において、100−1,100−2参照)の間に、追加のマニュアルトレース用参照断面102が事後的に追加設定される。なお、図18に示したプロセスにおいて、追加処理工程S200に相当する工程をS106とS107との間に設けることも可能である。その場合には、1又は複数の追加のマニュアルトレースラインが生成された後に、それらに対して自動修正処理(S107)が適用される。
【0049】
図18に示されるプロセスを具体的に説明する。S201以降の一連の工程が隣接マニュアルトレースラインペアを1つずつシフトさせながら、隣接マニュアルトレースラインペアごとに実行される。隣接マニュアルトレースラインペアは、隣り合う2つのマニュアルトレースライン(自動修正を経ている場合には2つの複合トレースライン)で構成される。追加処理前のマニュアルトレース用参照断面の個数をnとした場合、n−1個の隣接マニュアルトレースラインペアが構成される。
【0050】
S201では、現在注目している隣接マニュアルトレースラインペア間で類似度が演算される。類似度の演算に当たっては例えば相互相関演算が実行される。すなわち、2つのマニュアルトレースラインの形状の類似度を表す情報が求められる。当該情報は、マニュアルトレース用参照断面を事後的に追加するか否か、換言すれば、形状の変化が大きい部位であるか否かを判断する指標となるものである。
【0051】
図20には、類似度演算の具体例が示されている。まず、隣接関係にある2つのマニュアルトレースライン102A,102Bのそれぞれがサンプリングされて、それぞれに対して、後述するペアリングを適正に行う観点から、ポイント列104A,104Bが設定される。そして、所定のルールに従って、それらのポイント列104A,104B間で、複数のポイントペアが定義される。各ポイントペアは、対応関係(符号106参照)にある2つのポイントで構成される。そのルールとしては、状況に応じて相応しい各種のルールを選択的に採用することが可能である。例えば、各ポイント列104A,104Bについて、それぞれ、最も近接している関係にある1番目のポイントペアを特定し、そこから順次、所定方向に回りながらペアリングを行って、最終的にN番目のポイントペアを特定するようにしてもよい。
【0052】
図21には、そのような処理の結果が示されており、隣接する2つのマニュアルトレース用参照断面58A,58B上の2つのマニュアルトレースライン102A,102B上には2つのポイント列104A,104Bが設定されている。その後、それぞれのマニュアルトレースライン102A,102Bについて重心点が求められ、各ポイントごとに重心点と当該ポイントとの間の距離が演算される。符号108に示されるように、各ポイント列104A,104Bごとに、サンプル点(ポイント)番号tごとに、重心までの距離を表すと、グラフ(関数)fA(t),fB(t)が得られる。そして、以下の(1)式の相互相関演算を実行することにより、相互相関係数として類似度αが得られる(類似度α:0.0〜1.0)。なお、類似度αを求める方法は上記のものには限られない。いずれにしても、2つのトレースライン間における形状の類似度を指標する情報が求められる。
【0053】
【数1】
【0054】
図18に戻って、S202では、上記類似度αが所定値以下か否かが判断される。所定値よりも類似度αが大きければ類似性ありと判断され、処理がS205へ移行し、断面追加は行われない。一方、所定値よりも類似度αが小さければ類似性なし、つまり対象組織の形状変化が大きいと判断されて、S203において、隣接する2つのマニュアルトレース用参照断面の間に、1又は複数の追加のマニュアルトレース用参照断面が設定される。追加する個数については1つであってもよいし、状況に応じて可変設定されてもよい。その後、追加された個々のマニュアルトレース用参照断面上において、上記S105〜S107と同様の処理が適用される。すなわち、個々の追加参照断面が画像として表示され、その画像を見ながらマニュアルトレースが実行され、その後、それによる個々のマニュアルトレースラインが自動的に修正される。なお、このような追加のマニュアルトレース作業は、すべての隣接マニュアルトレースラインペアに対して追加要否の判断がなされた後に行われてもよい。S205においては、すべての隣接マニュアルトレースラインペアについて上記の追加要否の判断及び必要な追加処理が行われたか否かが判断されて、残りの隣接マニュアルトレースラインペアがあればそれに対して上記処理が繰り返し適用される。
【0055】
上記のS203に関し、マニュアルトレース用参照断面の追加方法については幾つかの手法が考えられる。それについて図22及び図23を用いて説明する。なお、選択する手法に応じて、図18に示したプロセスの修正が必要となる場合がある。
【0056】
図22には、3つのタイプ(追加方法)が示されている。上段のタイプが適用された場合には、上記の所定値(閾値)が1つ利用されて、その所定値よりも類似度αが小さくなった場合に、1つだけマニュアルトレース用参照断面が追加される。上段には、更に、その条件と具体例が示されている。具体例においては、参照断面BC間、参照断面CD間にそれぞれ1つ参照断面が追加されている(ハッチング参照)。中段のタイプでは、それぞれ異なる複数の閾値が利用される。例えば、条件として図示されているように複数の閾値が利用され、各閾値区間ごとに追加断面数として1,2又は3が選択される。勿論、類似度が最高閾値よりも大きければ参照断面の追加は行われない。その具体例においては、参照断面BC間に1つの参照断面が追加されており、参照断面CD間には2つの参照断面が追加されている。下段のタイプにおいては、追加数として予めkが定められおり、k個の追加断面が動的に配分される。これを図23を用いて説明する。最初に、増分Δαが(αMAX−αMIN)/kで求まっているものとする。αMAXは初期状態におけるすべてのαの中での最大値を示し、αMINは初期状態におけるすべてのαの中の最小値を示す。図23の(1)に示すように、最初に、すべての断面間において最も小さなαを有する断面間が特定され、そこに1つの追加断面が挿入される。ここではCD間に1つの追加断面の挿入が決定される。この処理に伴い、当該最も小さなα(CD間の当初α)に上記Δαが加算される(その時点での最小値のかさ上げ)。次に、図23の(2)に示すように、先の加算処理後の状態において、最も小さなαが特定される。ここでは、やはりCD間のαがなお最も小さいために、CD間に更に1つの追加断面の挿入が決定される。そして、上記同様に、当該加算修正後のαに更にΔαが加算される。次に図23の(3)に示すように、2番目の加算処理後の状態において、最も小さなαが特定される。ここでは、BC間のαが最も小さいため、BC間に追加断面の挿入が決定される。このようにして、追加断面の挿入がk回繰り返されると、追加断面の挿入処理が終了する。この処理条件及び具体例が図22の下段にも示されている。上記においては、幾つかの追加処理方法を示したが、状況に応じて適当な手法を選択すればよい。図22の下段に示した方法によれば、追加上限の範囲内でより追加すべき区間により多くの断面を追加できるという利点がある。図22の上段及び中段に示した方法によれば簡便な処理を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】対象組織の抽出処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】子宮についての断面データを示す図である。
【図4】胎盤を含むボリュームデータを示す図である。
【図5】ボリュームデータに対する基準断面の設定を説明するための図である。
【図6】基準断面に相当する断層画像を示す図である。
【図7】断層画像上における基準線の設定を説明するための図である。
【図8】ボリュームデータに対して基準線を基準に自動的に形成された参照断面列を示す図である。
【図9】参照断面列に含まれる複数のマニュアルトレース用参照断面を示す図である。
【図10】複数のマニュアルトレース用参照断面に対応する複数の断層画像を示す図である。
【図11】マニュアルトレースラインを説明するための図である。
【図12】マニュアルトレースラインの自動的な修正を説明するための図である。
【図13】トレースライン上の点の位置の自動的な修正を説明するための図である。
【図14】補間処理による複数の補間トレースラインの生成方法を説明するための図である。
【図15】補間処理によって生成された補間トレースラインを説明するための図である。
【図16】自動的に修正された補間トレースラインを示す図である。
【図17】対象組織の全体に沿って設定された複数のトレースラインからなるトレース面を示す図である。
【図18】他の実施形態に係る抽出処理を示すフローチャートである。
【図19】マニュアルトレース用参照断面の追加を概念的に示す図である。
【図20】隣接マニュアルトレースラインペアの形状関係を示す図である。
【図21】隣接マニュアルトレースラインペア間における類似度の演算方法を説明するための図である。
【図22】幾つかの断面追加処理方法を説明するための図である。
【図23】図22の下段に示す方法を具体的に説明するための図である。
【符号の説明】
【0058】
10 3Dプローブ、12 送信部、14 受信部、16 3Dデータメモリ、18 三次元画像形成部、20 任意断層画像形成部、22 組織抽出部、24 体積演算部、26 表示処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行ってボリュームデータを取得するデータ取得手段と、
前記対象組織に対して設定された複数の代表断面上に複数のマニュアルトレースラインが形成された場合に、各マニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する代表断面処理手段と、
前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づく補間処理により前記対象組織に対して設定された複数の非代表断面上に複数の補間トレースラインを形成すると共に、各補間トレースラインに対して第2修正処理を適用する非代表断面処理手段と、
前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び前記第2修正処理後の複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて、前記ボリュームデータから対象組織データを抽出し、あるいは、前記対象組織の体積を演算する手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記代表断面処理手段は、
前記対象組織に対して設定された断面セットの中から前記複数の代表断面を選択する手段と、
前記選択された各代表断面に対するユーザーのトレース入力を受け付ける手段と、
前記第1修正処理に当たって、前記各マニュアルトレースライン上における各ポイントごとに修正可否を判断し、修正可能なポイントについて実際の組織輪郭に基づいて当該ポイントの位置を修正する第1修正処理手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記第1修正処理手段は、前記各ポイントごとに交差ラインを設定してその交差ライン上でエッジ検出を行うことにより修正の可否を判断する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記非代表断面処理手段は、
前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づいて補間処理により前記各非代表断面上に補間トレースラインを形成する手段と、
前記第2修正処理に当たって、前記各補間トレースライン上における各ポイントごとに修正可否を判断し、修正可能なポイントについて実際の組織輪郭に基づいて当該ポイントの位置を修正する第2修正処理手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記第2修正処理手段は、前記各ポイントごとに交差ラインを設定してその交差ライン上でエッジ検出を行うことにより修正の可否を判断する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の装置において、
前記対象組織を通過する基準ラインの指定を受け付ける手段と、
前記基準ラインの方向に並んで前記基準ラインに直交する断面セットを設定する手段と、
を含み、
前記断面セットの中から前記複数の代表断面及び前記複数の非代表断面が定められる、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行って得られたボリュームデータを格納し、
前記対象組織に対して設定された複数の代表断面に対する複数のマニュアルトレースを受け付け、
前記各代表断面上に形成された各マニュアルトレースライン、及び、前記対象組織に対して設定された各非代表断面上に形成された各補間トレースライン、における各ポイントについて実際の組織輪郭に基づいて位置修正の可否を判断し、修正可能なポイントの位置を修正する修正処理を実行し、
前記修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて対象組織を抽出し、あるいは、対象組織の体積を演算する、
ことを特徴とするボリュームデータ処理方法。
【請求項8】
対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行ってボリュームデータを取得するデータ取得手段と、
前記対象組織に対して設定された複数の代表断面上に複数のマニュアルトレースラインが形成された場合に、各マニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する代表断面処理手段と、
前記第1修正処理前又は後の複数のマニュアルトレースラインにおける隣接マニュアルトレースラインペアごとに類似度を演算する類似度演算手段と、
前記隣接マニュアルトレースラインペアごとの類似度に基づいて前記複数の代表断面の他に1又は複数の追加代表断面を加える追加代表断面設定手段と、
前記1又は複数の追加代表断面上に形成された1又は複数のマニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する追加代表断面処理手段と、
前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づく補間処理により前記対象組織に対して設定された複数の非代表断面上に複数の補間トレースラインを形成すると共に、各補間トレースラインに対して第2修正処理を適用する非代表断面処理手段と、
前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び前記第2修正処理後の複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて、前記ボリュームデータから対象組織データを抽出し、あるいは、前記対象組織の体積を演算する手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記類似度演算手段は、前記隣接マニュアルトレースラインペアごとにそれを構成する2つのマニュアルトレースライン間で相互相関演算を実行することにより前記類似度を演算する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
請求項8記載の装置において、
前記追加代表断面設定手段は、前記類似度が所定の追加条件を満たした隣接代表断面ペア間に前記1又は複数の追加代表断面を加える、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置において、
前記追加断面設定手段は、前記各類似度の大きさに応じて追加代表断面の追加数を決定する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項12】
対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行って得られたボリュームデータを格納し、
前記対象組織に対して設定された複数の代表断面に対する複数のマニュアルトレースを受け付け、
前記複数の代表断面に加えて1又は複数の追加代表断面が設定された場合に、1又は複数の追加代表断面に対する1又は複数のマニュアルトレースを受け付け、
前記各代表断面上に形成された各マニュアルトレースライン、及び、前記対象組織に対して設定された各非代表断面上に形成された各補間トレースライン、における各ポイントについて実際の組織輪郭に基づいて位置修正の可否を判断し、修正可能なポイントの位置を修正する修正処理を実行し、
前記修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて対象組織を抽出し、あるいは、対象組織の体積を演算する、
ことを特徴とするボリュームデータ処理方法。
【請求項1】
対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行ってボリュームデータを取得するデータ取得手段と、
前記対象組織に対して設定された複数の代表断面上に複数のマニュアルトレースラインが形成された場合に、各マニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する代表断面処理手段と、
前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づく補間処理により前記対象組織に対して設定された複数の非代表断面上に複数の補間トレースラインを形成すると共に、各補間トレースラインに対して第2修正処理を適用する非代表断面処理手段と、
前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び前記第2修正処理後の複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて、前記ボリュームデータから対象組織データを抽出し、あるいは、前記対象組織の体積を演算する手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記代表断面処理手段は、
前記対象組織に対して設定された断面セットの中から前記複数の代表断面を選択する手段と、
前記選択された各代表断面に対するユーザーのトレース入力を受け付ける手段と、
前記第1修正処理に当たって、前記各マニュアルトレースライン上における各ポイントごとに修正可否を判断し、修正可能なポイントについて実際の組織輪郭に基づいて当該ポイントの位置を修正する第1修正処理手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記第1修正処理手段は、前記各ポイントごとに交差ラインを設定してその交差ライン上でエッジ検出を行うことにより修正の可否を判断する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記非代表断面処理手段は、
前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づいて補間処理により前記各非代表断面上に補間トレースラインを形成する手段と、
前記第2修正処理に当たって、前記各補間トレースライン上における各ポイントごとに修正可否を判断し、修正可能なポイントについて実際の組織輪郭に基づいて当該ポイントの位置を修正する第2修正処理手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記第2修正処理手段は、前記各ポイントごとに交差ラインを設定してその交差ライン上でエッジ検出を行うことにより修正の可否を判断する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の装置において、
前記対象組織を通過する基準ラインの指定を受け付ける手段と、
前記基準ラインの方向に並んで前記基準ラインに直交する断面セットを設定する手段と、
を含み、
前記断面セットの中から前記複数の代表断面及び前記複数の非代表断面が定められる、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行って得られたボリュームデータを格納し、
前記対象組織に対して設定された複数の代表断面に対する複数のマニュアルトレースを受け付け、
前記各代表断面上に形成された各マニュアルトレースライン、及び、前記対象組織に対して設定された各非代表断面上に形成された各補間トレースライン、における各ポイントについて実際の組織輪郭に基づいて位置修正の可否を判断し、修正可能なポイントの位置を修正する修正処理を実行し、
前記修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて対象組織を抽出し、あるいは、対象組織の体積を演算する、
ことを特徴とするボリュームデータ処理方法。
【請求項8】
対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行ってボリュームデータを取得するデータ取得手段と、
前記対象組織に対して設定された複数の代表断面上に複数のマニュアルトレースラインが形成された場合に、各マニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する代表断面処理手段と、
前記第1修正処理前又は後の複数のマニュアルトレースラインにおける隣接マニュアルトレースラインペアごとに類似度を演算する類似度演算手段と、
前記隣接マニュアルトレースラインペアごとの類似度に基づいて前記複数の代表断面の他に1又は複数の追加代表断面を加える追加代表断面設定手段と、
前記1又は複数の追加代表断面上に形成された1又は複数のマニュアルトレースラインに対して第1修正処理を適用する追加代表断面処理手段と、
前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースラインに基づく補間処理により前記対象組織に対して設定された複数の非代表断面上に複数の補間トレースラインを形成すると共に、各補間トレースラインに対して第2修正処理を適用する非代表断面処理手段と、
前記第1修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び前記第2修正処理後の複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて、前記ボリュームデータから対象組織データを抽出し、あるいは、前記対象組織の体積を演算する手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
前記類似度演算手段は、前記隣接マニュアルトレースラインペアごとにそれを構成する2つのマニュアルトレースライン間で相互相関演算を実行することにより前記類似度を演算する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
請求項8記載の装置において、
前記追加代表断面設定手段は、前記類似度が所定の追加条件を満たした隣接代表断面ペア間に前記1又は複数の追加代表断面を加える、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置において、
前記追加断面設定手段は、前記各類似度の大きさに応じて追加代表断面の追加数を決定する、ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項12】
対象組織を含む三次元空間に対して超音波の送受波を行って得られたボリュームデータを格納し、
前記対象組織に対して設定された複数の代表断面に対する複数のマニュアルトレースを受け付け、
前記複数の代表断面に加えて1又は複数の追加代表断面が設定された場合に、1又は複数の追加代表断面に対する1又は複数のマニュアルトレースを受け付け、
前記各代表断面上に形成された各マニュアルトレースライン、及び、前記対象組織に対して設定された各非代表断面上に形成された各補間トレースライン、における各ポイントについて実際の組織輪郭に基づいて位置修正の可否を判断し、修正可能なポイントの位置を修正する修正処理を実行し、
前記修正処理後の複数のマニュアルトレースライン及び複数の補間トレースラインからなるトレースライン列に基づいて対象組織を抽出し、あるいは、対象組織の体積を演算する、
ことを特徴とするボリュームデータ処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−142519(P2008−142519A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104733(P2007−104733)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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