説明

超音波診断装置

【課題】再構成処理により得られる表示画像の信頼性を高める。
【解決手段】位置情報付与部13は、各走査面から得られる各断層画像データに対して三次元空間内におけるその断層画像データの位置を特定するための位置データを付与する。前メモリ14には時系列順に複数の断層画像データが記憶される。再構成処理部20は、複数の基準画像の各々を分割の単位とすることにより、前メモリ14に記憶された複数の断層画像データを複数の画像群に分割する。そして、複数の画像群の各々から、互いに周期的に対応した複数の断層画像データが抽出され、一つのデータブロックとして後メモリ26に記憶される。三次元画像形成部28は、後メモリ26に記憶された再構成後の複数の断層画像データに基づいて、各断層画像データをその位置データから特定される表示空間内の位置に対応付けて、表示画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周期的な運動をする対象物の表示画像を形成する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓などの運動を伴う組織の三次元超音波画像を形成する超音波診断装置が知られている。例えば、三次元空間内において超音波ビームをスキャン(走査)して三次元空間内からエコーデータを収集し、収集したエコーデータに基づいて三次元超音波画像を形成してリアルタイム表示する技術が知られている。但し、リアルタイム表示の場合には、スキャンレートとビーム密度とビーム範囲が互いにトレードオフの関係になるという原理的な制約がある。
【0003】
三次元超音波画像のリアルタイム表示における原理的な制約を回避するための技術も提案されている。例えば、特許文献1には、心電信号などに同期させて三次元空間内において走査面を少しずつ移動させながら、走査面の各位置において複数の時相に亘って複数の断層画像データを収集し、収集された複数の断層画像データを並べ替えて再構築して三次元画像データを形成する技術(再構成処理または再構築処理)が記載されている。この技術は、直接的に心電信号を得ることが困難な胎児などに適用することが難しい。
【0004】
また、特許文献2には、心電信号に換えて、ある時間間隔ごとにスキャンして再構築する技術が記載されている。しかし、この技術では、データ収集中における心臓などの周期が一定と仮定しており、そのため、例えば心臓の周期が一定ではない場合に、再構築後の画像における心臓の形態が実際のものから歪められて信頼性が低くなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3537594号公報
【特許文献2】特開2005−74225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、再構成処理により超音波画像を形成する技術について研究開発を重ねてきた。特に、運動の周期が不安定な対象物に対して好適な再構成処理について研究開発を重ねてきた。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、再構成処理により得られる表示画像の信頼性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、周期的な運動をする対象物を含む三次元空間に対して超音波を送受するプローブと、前記運動の複数の周期に亘って走査面を移動させつつ、前記三次元空間内で複数の走査面を形成するように、前記プローブを制御する送受信制御部と、前記複数の走査面に対応した複数の画像で構成される画像列から、前記運動の周期性に関する特徴量に基づいて、複数の基準画像を探索する基準画像探索部と、前記複数の基準画像の各々を分割の単位とすることにより、前記画像列を複数の画像群に分割し、複数の画像群の各々から互いに周期的に対応した複数の画像を抽出する画像再構成部と、前記互いに周期的に対応した複数の画像に基づいて対象物の表示画像を形成する表示画像形成部と、を有し、前記各走査面から得られる各画像に対して前記三次元空間内におけるその画像の位置を特定するための位置情報を付与し、前記互いに周期的に対応した複数の画像の各々をその位置情報から特定される表示空間内の位置に対応付けて前記表示画像を形成する、ことを特徴とする。
【0009】
望ましい具体例において、前記超音波診断装置は、前記各走査面から得られる各画像に対して前記位置情報を付与する位置情報付与部をさらに有する、ことを特徴とする。
【0010】
望ましい具体例において、前記画像再構成部は、前記複数の画像群の各々から互いに周期的に対応した複数の画像を抽出することにより、前記画像列を並べ替えて再構成画像列を形成し、前記表示画像形成部は、前記再構成画像列から得られる互いに周期的に対応した複数の画像に基づいて、当該複数の画像の各々をその位置情報から特定される表示空間内の位置に対応付けつつ、前記表示画像を形成する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記画像再構成部は、前記複数の画像群の各々から互いに周期的に対応した複数の画像を抽出し、抽出した各画像をその位置情報から特定される表示空間内の位置に対応付けつつ、前記画像列を並べ替えて再構成画像列を形成し、前記表示画像形成部は、前記再構成画像列から得られる互いに周期的に対応した複数の画像に基づいて前記表示画像を形成する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記基準画像探索部は、前記画像列を構成する前記複数の画像の中から、前記対象物に関する運動の仮想周期に対応した間隔で、前記複数の基準画像を探索する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、再構成処理で得られる表示画像の信頼性を高めることが可能になる。例えば、本発明の好適な態様によれば、時間的な乱れを軽減または除去しつつ空間的な歪みも軽減または除去して、極めて信頼性の高い表示画像を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態における三次元的な走査を説明するための図である。
【図3】断面差分値の変化を示す図である。
【図4】相互差分値の変化を示す図である。
【図5】基準画像の探索を説明するための図である。
【図6】再構成処理部による処理を説明するための図である。
【図7】位置データを利用した画像形成の処理例を示す図である。
【図8】補間処理を伴う三次元画像データの形成処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。プローブ10は、対象物を含む三次元空間内において超音波を送受波する。プローブ10は、超音波を送受波する複数の振動素子を備えており、複数の振動素子がビームフォーマ12によって送信制御されて送信ビームが形成される。また、複数の振動素子が対象物から反射された超音波を受波し、これにより得られた信号がビームフォーマ12へ出力され、ビームフォーマ12が受信ビームを形成する。
【0017】
本実施形態のプローブ10は、超音波ビーム(送信ビームと受信ビーム)を三次元空間内において走査して立体的にエコーデータを収集する3Dプローブである。例えば、一次元的に配列された複数の振動素子(1Dアレイ振動子)によって電子的に形成される走査面を機械的に動かすことにより超音波ビームが三次元的に走査される。また、二次元的に配列された複数の振動素子(2Dアレイ振動子)を電子的に制御して超音波ビームを三次元的に走査してもよい。
【0018】
ビームフォーマ12は、プローブ10が備える複数の振動素子の各々に対応した送信信号を供給することにより超音波の送信ビームを形成する。また、ビームフォーマ12は、プローブ10が備える複数の振動素子の各々から得られる受信信号に対して整相加算処理などを施すことにより超音波の受信ビームを形成し、受信ビームに沿って得られるエコーデータを出力する。
【0019】
本実施形態において、対象物は、周期的に運動する組織や周期的に変動する流動体であり、例えば胎児の心臓や胎児の血管を流れる血流などである。そこで、以下においては、好適な例の一つである胎児の心臓を対象物とした場合について説明する。本実施形態においては、対象物である胎児の心臓に関する運動の複数の周期に亘って、走査面を移動させつつ、三次元空間内で複数の走査面が形成される。
【0020】
図2は、本実施形態における三次元的な走査を説明するための図である。図2において対象物を含む三次元空間はXYZ直交座標系で表現されている。本実施形態では、例えばXY平面に対してほぼ平行となるように走査面Sが形成され、その走査面SをZ軸方向にゆっくりと移動させつつ、Z軸方向に沿って複数の走査面Sが形成される。走査面Sは、胎児の心臓などの周期的な運動に関する複数の周期に亘って、例えば約8秒で約20心拍を含む期間に亘って、Z軸方向にゆっくりと移動する。
【0021】
図1に戻り、胎児の心拍の複数の周期に亘ってZ軸方向に沿って複数の走査面が形成されると、各走査面ごとに断層画像データが収集され、複数の走査面に対応した複数の断層画像データが次々に形成される。
【0022】
位置情報付与部13は、各走査面から得られる各断層画像データに対して、三次元空間内におけるその画像データの位置を特定するための位置情報を付与する。位置情報付与部13は、例えば、Z軸方向に沿って次々に形成される走査面の位置情報をビームフォーマ12または制御部40から得て、各走査面の断層画像データに対して、その走査面の位置情報を付与する。なお、プローブ10が走査面を機械的に動かす機械駆動型であれば、プローブ10に設けられた位置センサなどから位置情報を得るようにしてもよい。位置情報の具体例等については後に詳述する。位置情報を付与された複数の断層画像データは、次々に前メモリ14に記憶される。
【0023】
エラー判定部16は、前メモリ14に記憶された複数の断層画像データから得られる画像間の差分量に基づいて、複数の断層画像データが良好か否かを判定する。例えば胎児や母体やプローブの動きにより画像内で胎児の心臓が大きく動いてしまい、良好な画像が得られない可能性がある。そこで、エラー判定部16は、診断のための良好な画像が得られるか否かを判定する。その判定にあたって、エラー判定部16は、次式で定義される断面差分値を利用する。
【0024】
【数1】

【0025】
数1式におけるx,y,zは、図2のXYZ直交座標系における各軸上の座標値でありpは断層画像データ内の各座標に対応した画素値である。数1式により、Z軸方向に隣接する2つの断層画像データ間の差分値が算出される。
【0026】
図3は、断面差分値の変化を示す図であり、図3の横軸は、各断層画像データの位置を示している。つまり、図3の横軸は、各走査面の位置と各走査面が得られた時間に対応しており、図2のZ軸(時間の経過に伴う位置の変化方向)に対応している。
【0027】
胎児の心臓が大きく移動してしまうことが無ければ、隣接する断層画像データは互いに似たものとなり、数1式により得られる差分値は比較的小さくなる。一方、例えば胎児自身の動き、母体の呼吸動作、プローブの位置の大きなずれなどがあると、断層画像内において胎児の心臓が大きく動いてしまい、隣接する断層画像データ間の差分値が比較的大きくなる。そこで、エラー判定部16は、断面差分値が所定の閾値を超えた場合に、画像内において心臓が大きくずれてしまったと判断する。
【0028】
図1に戻り、エラー判定部16により心臓が大きくずれてしまったと判断されると、制御部40は、例えば、ビームフォーマ12などを制御して、断層画像データの収集を中止させる。なお、制御部40は、図1内の各部を集中的に制御しており、例えば、エラー判定部16によりエラーであると判断された場合に、エラーである旨を示す表示や警告などを表示部30に表示させてもよい。エラー判定部16によりエラーの判定が成されなければ、前メモリ14に記憶された複数の断層画像データに基づいて、後述する処理が実行される。
【0029】
仮想周期算出部22は、前メモリ14に記憶された複数の断層画像データに基づいて、胎児の心臓に関する仮の周期となる仮想周期を算出する。仮想周期の算出にあたって、仮想周期算出部22は、次式で定義される相互差分値を利用する。
【0030】
【数2】

【0031】
数2式おけるx,y,zは、図2のXYZ直交座標系における各軸上の座標値であり、pは断層画像データ内の各座標に対応した画素値である。数2式においては、Z軸方向に隣接する2つの断層画像データ間の2つの画素値の差分に対して、一方の画素値が乗算されている。これにより、心臓が収縮する場合に比べて心臓が拡張する場合に相互差分値が比較的大きな値となり、単純な差分値では識別が難しい拡張と収縮を相互差分値により識別することが可能になる。
【0032】
例えば、ある断層画像データz内において、画素p(x,y,z)が心臓内壁の近傍の心筋であると仮定し、その画素値をp(x,y,z)=100とする。心臓が拡張して心腔が大きくなると、断層画像データzに続いて得られる断層画像データz+1内において画素p(x,y,z+1)が心腔の画素となる。心筋に比べて心腔の画素値は小さいためその画素値をp(x,y,z+1)=10とする。この例において、数2式の右辺の絶対値を算出すると100×(100−10)=9000となる。心臓が拡張する場合には、心臓内壁の周辺において、心筋から心腔に変化する画素が多く発生するため、数2式の相互差分値の値が比較的大きくなる。
【0033】
一方、心臓が収縮する場合には、上記の例とは反対の現象が発生する。つまり、心臓が収縮して心腔が小さくなるため、心腔に対応した画素p(x,y,z)=10から、心筋に対応した画素p(x,y,z+1)=100に変化する。この例において、数2式の右辺の絶対値を算出すると|10×(10−100)|=900となり、拡張の場合における値9000よりも小さくなる。そのため、拡張と収縮を相互差分値により識別することが可能になる。
【0034】
図4は、相互差分値の変化を示す図である。図4の横軸は、各断層画像データの位置(各走査面の位置と時間)を示しており、図2のZ軸(時間の経過に伴う位置の変化方向)に対応している。数2式を利用してZ軸上の各位置(z)において相互差分値が算出されると、心臓が拡張する場合に相互差分値が比較的大きな値となる。そこで、仮想周期算出部22は、相互差分値のピーク値(極大値)を検出し、隣接するピーク値の間隔を心臓の周期(心拍の周期)と判断する。
【0035】
但し、例えば胎児の心臓は、心拍の周期が変動する場合があり、心拍の周期が変動するとピーク値の間隔も変動する。そこで、仮想周期算出部22は、例えば、ピーク値の間隔のうちの2番目に大きな間隔を仮想周期に設定する。なお、ピーク値の間隔のヒストグラムから得られる最多頻度の値や重心値などを仮想周期としてもよい。また、予め設定された複数の値の中からユーザまたは装置が仮想周期を選択するようにしてもよいし、ユーザが仮想周期の値を入力するようにしてもよい。仮想周期として、超音波診断装置の計測結果(例えばMモード計測の結果)に基づいて得られる値が利用されてもよいし、常に固定値が利用されてもよい。
【0036】
図1に戻り、仮想周期が設定されると、基準画像探索部24は、複数の断層画像データの中から、仮想周期を利用して、複数の基準画像を探索する。
【0037】
図5は、基準画像の探索を説明するための図である。図5(A)〜(C)の各々には、図4を利用して説明した相互差分値の変化が図示されている。基準画像探索部24は、まず、複数の断層画像の中から代表となる基準画像(代表基準画像)を探索する。基準画像探索部24は、図5(A)に示すように、相互差分値が最大となる位置に対応した断層画像データを代表基準画像(代表基準断面)とする。そして、基準画像探索部24は、代表基準画像を起点として、極大の相互差分値に対応した複数の断層画像の中から、仮想周期だけ離れた位置に最も近い断層画像を次々に探索する。
【0038】
まず、図5(A)に示すように、まず、代表基準画像からZ軸方向の正方向と負方向に仮想周期(VHR)だけ離れた位置に最も近い断層画像が探索されて基準画像とされる。次に、基準画像探索部24は、図5(B)に示すように、探索された基準画像から仮想周期(VHR)だけ離れた位置に最も近い断層画像を探索して新たな基準画像とする。図5(B)において、破線の矢印が複数の基準画像(基準断面)の位置を示している。
【0039】
基準画像探索部24は、代表基準画像を起点として次々に複数の基準画像を探索する。こうして、極大の相互差分値に対応した複数の断層画像の中から、図5(C)に示すように複数の基準画像が探索される。図5(C)において、破線の矢印が複数の基準画像(基準断面)の位置を示している。
【0040】
図1に戻り、複数の基準画像が探索されると、再構成処理部20は、複数の基準画像の各々を分割の単位とすることにより、複数の断層画像を複数の画像群に分割する。そして、再構成処理部20は、複数の画像群の各々から互いに周期的に対応した複数の断層画像を抽出することにより再構成処理(再構築処理)を実現する。再構成処理部20は、前メモリ14に記憶された複数の断層画像データを再構成して後メモリ26に記憶する。
【0041】
図6は、再構成処理部20による処理を説明するための図であり、図6には、前メモリ14に記憶されるデータと後メモリ26に記憶されるデータの対応関係が示されている。図6において、「断層画像Dn(n=1,2,3,・・・,60)」は、Z軸(図2参照)に沿って形成された複数の走査面に対応した複数の断層画像データである。
【0042】
前メモリ14には、Z軸方向に沿って次々に形成される複数の走査面に対応した複数の断層画像データが形成された順に記憶されている。つまり、前メモリ14には、いくつかの断層画像に続いて、断層画像D1,断層画像D2,・・・,断層画像D60,・・・の順に複数の断層画像データが記憶されている。
【0043】
各断層画像データには、三次元空間内におけるその断層画像データの位置情報として、位置データz=1,2,3,・・・,60が付与されている。この位置データは、Z軸(図2参照)上の座標値である。例えば、断層画像D1は、Z軸上の座標値1の位置における走査面から得られた断層画像データである。
【0044】
再構成処理部20は、複数の基準画像の各々を分割の単位とすることにより、前メモリ14に記憶された複数の断層画像データを複数の画像群に分割する。そして、複数の画像群の各々から、互いに周期的に対応した複数の断層画像データが抽出される。
【0045】
図6において、断層画像D1,断層画像D15,・・・,断層画像D51が基準画像探索部24により探索された複数の基準画像である。再構成処理部20は、互いに周期的に対応した複数の断層画像データとして、まず、基準画像である断層画像D1,断層画像D15,・・・,断層画像D51を抽出する。そして、抽出された断層画像D1,断層画像D15,・・・,断層画像D51が一つのデータブロックとなって後メモリ26内に記憶される。
【0046】
次に、再構成処理部20は、互いに周期的に対応した複数の断層画像データとして、複数の基準画像の各々に対してZ軸方向の正方向に隣接する複数の断層画像を抽出する。つまり、断層画像D2,断層画像D16,・・・,断層画像D52が抽出され、これらが一つのデータブロックとなって後メモリ26内に記憶される。
【0047】
さらに、再構成処理部20は、断層画像D2,断層画像D16,・・・,断層画像D52の各々に対してZ軸方向の正方向に隣接する複数の断層画像を抽出する。こうして、複数の基準画像の各々を起点として、互いに周期的に対応した複数の断層画像のデータブロックが次々に抽出されて、後メモリ26内に記憶される。
【0048】
なお、上述した再構成処理によれば、前メモリ14に記憶された複数の断層画像の中で再構成処理に利用されない断層画像がある。例えば、前メモリ14の中の断層画像D10と断層画像D15の間の断層画像(D11〜D14)などが再構成処理に利用されない断層画像である。
【0049】
また、上述した再構成処理では、再構成処理後の後メモリ26内に、複数のデータブロックが形成される。例えば、断層画像D1,断層画像D15,・・・,断層画像D51が一つのデータブロックとなり、断層画像D2,断層画像D16,・・・,断層画像D52が次の一つのデータブロックとなる。再構成処理によって後メモリ26内に形成されるデータブロックの個数は、基準画像に基づいて分割された複数の画像群のうちの、断層画像数が最も少ない画像群の断層画像数に対応している。例えば、図5(C)に示すように複数の基準画像が探索された場合においては、互いに隣り合う2つの基準画像の間隔が最も短い区間に対応した画像群の断層画像数と、図6に示す後メモリ26内のデータブロックの個数が一致する。
【0050】
そこで、例えば、図5(C)に示すように複数の基準画像が探索された後に、互いに隣り合う2つの基準画像の間隔が最も短い区間に対応した画像群の断層画像数eを確認し、それをデータブロック数eとし、再構成処理の結果としてデータブロック数がeに達した時に再構成処理を終了させることにより、再構成処理の無駄を低減(望ましくは完全に除去)することが可能になる。
【0051】
また、図6に示す例においては、基準画像に対応したデータブロックを複数のデータブロックの先頭としているが、基準画像に対応したデータブロックが所望の位置に配置されるように、例えば基準画像に対応したデータブロックが中心となるように、複数のデータブロックを形成してもよい。
【0052】
図1に戻り、三次元画像形成部28は、後メモリ26に記憶された再構成後の複数の断層画像データに基づいて、胎児の心臓等の対象物を立体的に映し出す三次元画像データを形成する。三次元画像形成部28は、後メモリ26に記憶された一つのデータブロックに基づいて各時相の三次元画像データを形成する。例えば、図6に示す後メモリ26に記憶された断層画像D1,断層画像D15,・・・,断層画像D51に基づいて時相T1の三次元画像データが形成され、断層画像D2,断層画像D16,・・・,断層画像D52に基づいて時相T2の三次元画像データが形成される。
【0053】
三次元画像形成部28は、例えば、ボリュームレンダリング法や積算法や投影法などの各種の手法を適用して、各時相ごとに複数の時相に亘って三次元画像データを形成する。こうして、複数の時相に亘って形成された三次元画像データに対応した画像が表示部30に表示され、擬似的にリアルタイムの三次元動画像が表示される。例えば、時相T1から最終時相Teまでの三次元画像データに対応した画像が繰り返し表示されてループ再生が実行されてもよい。
【0054】
そして、本実施形態においては、互いに周期的に対応した複数の断層画像データから三次元画像データを形成する際に、各断層画像データをその位置データから特定される位置に対応付けている。
【0055】
図7は、位置データを利用した画像形成の処理例を示す図である。図7に示す実空間は心臓などの対象物100が実在する空間であり、例えば、図2に示す三次元空間である。また、図7に示す表示空間は、対象物画像100´を含んだ三次元画像データが形成される三次元データ空間である。
【0056】
図7(A)は、位置データを利用した本実施形態における処理例を示している。実空間内に破線の直線で示される複数の断層画像Dは、互いに周期的に対応した複数の断層画像データである。例えば、図6に示す後メモリ26内において、一つのデータブロックとして纏められた、断層画像D1,断層画像D15,・・・,断層画像D51が、図7(A)における複数の断層画像Dに対応する。
【0057】
本実施形態では、心臓などの対象物100の運動周期の変動に応じて適切な基準画像を探索しているため、図7(A)の実空間内に示すように、複数の断層画像Dの空間的な間隔は変動する可能性がある。そこで、本実施形態においては、実空間内から得られた複数の断層画像Dの各々を、その位置データから特定される表示空間内の位置に対応付けて、表示画像となる三次元画像データを形成する。例えば、断層画像D1の位置データはz=1であるため(図6)、断層画像D1は表示空間内においてもz=1の位置に配置され、同様に、他の断層画像Dもその断層画像Dの位置データに応じた位置に配置される。
【0058】
これにより、図7(A)に示すように、実空間内における複数の断層画像Dの各々の位置や断層画像D間の間隔を維持しつつ、表示空間内に複数の断層画像Dが配置される。そして、表示空間内に配置された複数の断層画像Dに基づいて、対象物画像100´を含んだ三次元画像データが形成される。実空間内における複数の断層画像Dの配列状態が、表示空間内においても維持されるため、対象物100の真の形状が維持されつつ対象物画像100´が形成される。
【0059】
これに対し、図7(B)は、位置データを利用しない比較例を示している。図7(B)においても、実空間内に破線の直線で示される複数の断層画像Dは、互いに周期的に対応した複数の断層画像データである。実空間内に示される対象物100の形状と複数の断層画像Dの配列状態は、図7(A)と図7(B)で全く同じである。
【0060】
図7(B)の比較例では、実空間内から得られた複数の断層画像Dを表示空間内において等間隔に配列し、表示画像となる三次元画像データを形成している。実空間内において複数の断層画像Dの空間的な間隔が変動しているにも関わらず、表示空間内において複数の断層画像Dを等間隔に配置してしまうと、対象物100の真の形状を維持することができずに、真の形状から歪んだ対象物画像100´が形成されてしまう。
【0061】
図7(A)と図7(B)の比較からもわかるように、本実施形態においては、位置データを利用することにより、対象物100の真の形状を維持しつつ対象物画像100´を形成することが可能になる。
【0062】
なお、超音波ビームの走査座標系と表示画像の表示座標系が、互いに単純な相似関係ではない場合もある。例えば、コンベックス型の走査の場合には、扇状に形成された走査面を円弧状のスキャン方向に沿って走査して、複数の断層画像が形成される。こうして形成された複数の断層画像を、例えばXYZ直交座標系の表示空間に配置して、三次元画像データを形成することもできる。この場合においては、複数の断層画像を構成する複数のエコーデータから、補間処理などにより、表示空間内の各座標の画素値が形成される。
【0063】
図8は、補間処理を伴う三次元画像データの形成処理を説明するための図である。図8におけるZ軸とY軸は、XYZ直交座標系で表される表示座標系の軸である。そして、円弧状のZ´軸は、走査面のスキャン方向に対応しており、このZ´軸に沿って複数の断層画像Dが形成される。なお、図8に示す断層画像Dは、互いに周期的に対応した複数の断層画像であり、その空間的な間隔は一定とは限らない。そのため、図8に示す走査態様においても、複数の断層画像Dの各々をその位置データから特定される位置に対応付けて、表示座標系内に配置する。
【0064】
そして、図8に示す走査態様においては、断層画像内のエコーデータから、補間処理により、表示座標系内の各座標の画素値が形成される。つまり、表示座標系内のある座標における画素値Pが、その画素値Pの近傍に位置する複数のエコーデータEから補間処理により形成される。例えば、画素値Pに空間的に隣接する8個のエコーデータEに基づいて画素値Pが決定される。なお、図8では、画素値Pに隣接する8個のエコーデータのうちの4個のみを示している。
【0065】
こうして、表示座標系内の全座標における画素値Pが決定され、それらの画素値Pから三次元画像データが形成される。図8に示す走査態様においても、複数の断層画像Dの各々をその位置データから特定される位置に対応付けて表示座標系内に配置しているため、対象物の真の形状を維持しつつ対象物画像を形成することができる。
【0066】
図8を利用して説明した補間処理による画素値の形成、つまり、断層画像内のエコーデータを表示空間内にマッピングする処理は、例えば、三次元画像形成部28が実行する。例えば再構成処理部20における再構成処理の結果として、後メモリ26内に図6に示す再構成処理後の複数の断層画像(データ)が記憶され、三次元画像形成部28が図6に示す再構成処理後の複数の断層画像を用いて、図8に示したマッピングを実行する。
【0067】
なお、再構成処理部20がマッピングを実行してもよい。つまり、再構成処理部20が再構成処理を実行した後に、その再構成処理後の複数の断層画像を用いて、図8に示したマッピングを実行し、表示座標系にマッピングされたデータを後メモリ26に記憶するようにしてもよい。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態によれば、運動の周期が不安定な対象物、例えば胎児の心臓などを診断対象とする場合においても、周期の変動に応じて適切な基準画像が探索されてデータブロックが再構成されるため、周期の変動に伴う時間的な表示画像の乱れなどが軽減され、望ましくは完全に除去される。さらに、位置データを利用して複数の断層画像を適切な位置に配置しつつ表示画像を形成しているため、空間的な表示画像の歪みなども軽減され、望ましくは完全に除去される。
【0069】
このように、本実施形態によれば、時間的な乱れを軽減または除去しつつ、さらに空間的な歪みも軽減または除去して、極めて信頼性の高い表示画像を得ることが可能になる。
【0070】
なお、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。例えば、上述した実施形態においては、Z軸方向に沿って走査面をゆっくりと移動させつつ複数の走査面を形成して三次元空間内からエコーデータを収集する低速スキャンを実行している。この低速スキャンの前に、往復約2秒程度で三次元空間内を試験的に高速スキャンさせて、プローブ位置指定の支援を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 プローブ、12 ビームフォーマ、13 位置情報付与部、16 エラー判定部、20 再構成処理部、22 仮想周期算出部、24 基準画像探索部、28 三次元画像形成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的な運動をする対象物を含む三次元空間に対して超音波を送受するプローブと、
前記運動の複数の周期に亘って走査面を移動させつつ、前記三次元空間内で複数の走査面を形成するように、前記プローブを制御する送受信制御部と、
前記複数の走査面に対応した複数の画像で構成される画像列から、前記運動の周期性に関する特徴量に基づいて、複数の基準画像を探索する基準画像探索部と、
前記複数の基準画像の各々を分割の単位とすることにより、前記画像列を複数の画像群に分割し、複数の画像群の各々から互いに周期的に対応した複数の画像を抽出する画像再構成部と、
前記互いに周期的に対応した複数の画像に基づいて対象物の表示画像を形成する表示画像形成部と、
を有し、
前記各走査面から得られる各画像に対して前記三次元空間内におけるその画像の位置を特定するための位置情報を付与し、
前記互いに周期的に対応した複数の画像の各々をその位置情報から特定される表示空間内の位置に対応付けて前記表示画像を形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記各走査面から得られる各画像に対して前記位置情報を付与する位置情報付与部をさらに有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波診断装置において、
前記画像再構成部は、前記複数の画像群の各々から互いに周期的に対応した複数の画像を抽出することにより、前記画像列を並べ替えて再構成画像列を形成し、
前記表示画像形成部は、前記再構成画像列から得られる互いに周期的に対応した複数の画像に基づいて、当該複数の画像の各々をその位置情報から特定される表示空間内の位置に対応付けつつ、前記表示画像を形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の超音波診断装置において、
前記画像再構成部は、前記複数の画像群の各々から互いに周期的に対応した複数の画像を抽出し、抽出した各画像をその位置情報から特定される表示空間内の位置に対応付けつつ、前記画像列を並べ替えて再構成画像列を形成し、
前記表示画像形成部は、前記再構成画像列から得られる互いに周期的に対応した複数の画像に基づいて前記表示画像を形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記基準画像探索部は、前記画像列を構成する前記複数の画像の中から、前記対象物に関する運動の仮想周期に対応した間隔で、前記複数の基準画像を探索する、
ことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−231(P2012−231A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137183(P2010−137183)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】