説明

距離検知装置

【課題】距離を検知する際の誤差を抑えて、かつ、安価な距離検知装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電波を送信する第1通信手段11と、音波を受信して電気信号に変換するセンサ14と、センサ14で変換された信号から特定の信号を検出する検出手段15と、を有する第1装置Aと、第1通信手段11からの電波を受信する第2通信手段21と、第2通信手段21が電波を受信したときに音波を発振する音波発振手段23と、を有する第2装置Bと、を備え、第1装置Aは、第1通信手段11が第2通信手段21に電波を送信してから、センサ14が音波発振手段23からの音波を受信し、検出手段15によって特定の信号が検出されるまでの時間を計測する時計13をさらに備え、時計13が計測した時間と、音波の速さとから第1装置Aと第2装置Bとの間の距離を検知する距離検知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波と電波とを併用した距離検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定のもの(人間、動物、及び車両等)までの距離を検知する距離検知装置が開発されている。この距離検出装置は、例えば、対象とするものまでの距離からその接近や離脱を監視して、警報を発する警報装置や、セキュリティや省エネルギーの目的で照明を点灯又は消灯する装置や、扉を開閉する装置等に利用される場合がある。例えば、監視者側装置と移動体装置とを備え、荷物や子供等監視する紛失警報装置が開発されている(特許文献1参照)
また、従来、距離検知装置は、その対象に向けて発射した音波又は電波が、対象に反射して戻るまでの時間を計測し、対象までの距離を算出して警告をする仕組みのものがある。
【0003】
また、対象に向けて発射した音波または電波が、対象まで到達するまでの間に減衰した量から距離を予測する仕組みになっているものがある。
【特許文献1】特開平9−81874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1に記載された距離検知装置は、監視装置と被監視装置との間で、電波を伝送しているが、電波の伝送速度は非常に高速であるため、監視装置と被監視装置との間を電波が伝送される時間を計測するために高精度の計測装置が必要になる。また、電波の伝送時間が短いために、電波の伝送時間に関係する装置の温度等による伝送時間の誤差の割合が比較的大きくなってしまい、その補正をするために誤差管理や温度管理のための高精度な装置が必要になる。このことから、電波のみを用いた距離検知装置は、高価なものになる可能性があった。
【0005】
さらに、電波は指向性が高いため、電波を発射する領域が限られている。そのため、広い範囲において対象物を検知することが難しく、狭い範囲において対象物を検知する場合にも、装置を設置する方法が制約されていた。
【0006】
また、音波は、伝播する媒体(大気等)の影響を受けやすく、その媒体の密度の変化(気圧や風、湿度等)によって伝送速度が変化するため、監視装置と被監視装置との間を音波が伝送される時間から距離を算出すする場合には、距離の計測誤差の原因となる場合があった。
【0007】
また、音波または電磁波の減衰量から距離を検知する場合は、距離以外の環境変化(障害物等)の影響を受けやすく、安定した距離の予測が難しかった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みて成されたものであって、距離を検知する際の誤差を抑えて、かつ、安価な距離検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様による距離検知装置は、電波を送信する第1通信手段と、音波を受信して、電気信号に変換するセンサと、前記センサで変換された電気信号から特定の信号を検出する検出手段と、を有する第1装置と、前記第1通信手段からの電波を受信する第2通信手段と、前記第2通信手段が前記電波を受信したときに音波を発振する音波発振手段と、を有する第2装置と、を備え、前記第1装置は、前記第1通信手段が前記第2通信手段に電波を送信してから、前記センサが前記音波発振手段からの音波を受信し、前記検出手段によって特定の信号が検出されるまでの時間を計測する計測手段をさらに備え、前記計測手段が計測した時間と、前記音波の進む速さとから前記第1装置と前記第2装置との間の距離を検知する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、距離を検知する際の誤差を抑えて、かつ、安価な距離検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の一実施形態に係る距離検出装置を用いた警報装置100について、図面を参照して説明する。図1に示すように、警報装置100は、第1装置Aと第2装置Bとを有している。
【0012】
第1装置Aは、電波を発する第1通信機11を備えている。第1通信機11は、電波を送受信するためのアンテナ12を有している。本実施形態では、第1通信機11は、230MHzの電磁波を送出する周波数変調方式(FM)の無線送信機であって、例えば、充電式のニッカド電池である電源19から起動電力を得ている。また、アンテナ12にはλ/4ホイップアンテナを用いている。
【0013】
第1通信機11には、通信を開始したときに、スタート信号を出力する出力端子も設けられている。この出力端子は、計測手段としての時計13の計数スタート制御端子に接続されている。時計13は、CR発振回路の発振をカウントするもので、分解能は100mm程度である。
【0014】
時計13の計数停止制御端子には、さらに検出器15の出力端子が接続されている。検出器15は、超音波センサ14からの電気信号を増幅し、フィルタで特定の信号のみを選別する。このことによって、特定の信号の受信の有無を判断する。なお、このときの電気信号の増幅度は93dBである。検出器15は、特定の信号を検出したときに時計13を停止することができる。
【0015】
時計13の出力端子は、比較器17の一方の入力端子に接続されている。比較器17の他方の入力端子には、記憶手段16の出力端子が接続されている。比較器17は、予め記憶手段16に記憶された設定数値と時計13の出力する値とを比較する比較手段である。比較器17の出力端子は警報手段18に接続されている。警報手段18は、比較器17での比較結果によって起動される。
【0016】
本実施形態では、音による警報を発するブザーを警報手段18として用いている。警報手段18は、例えば視覚による警告を発する表示灯でもよく、また、ドアの開閉、照明の点灯/消灯、及び、車等の移動体の停止/起動等を行うための制御手段であってもよい。
【0017】
一方、第2装置Bは、第1装置Aの第1通信機11からの電波を受信する第2通信機21を備えている。第2通信機21は、電波を送受信するためのアンテナ22を有している。通信機21の出力端子は超音波発振器23に接続されている。本実施の形態で用いた超音波発振器23は、例えば40KHzの電気信号を発音体(または振動子)に加えて、超音波を発射する。印加電圧は30Vp-pで、発射時間は0.4sである。送信される超音波の指向性は、約100度である。
【0018】
本実施形態で用いた第1通信機11と第2通信機21の組み合せでは、通信できる第1装置Aと第2装置Bとの距離はおよそ30mが最大である。この距離が、検出可能な範囲よりも大きくなるように、第1通信機11及び第2通信機21の性能を決める必要がある。また、超音波発振器23は発射する超音波の周波数、レベル及び時間は、対象を検出する範囲と発音体の性能を考慮して決めるのが望ましい。なお、超音波発振器23は発射する超音波の周波数は、発音体の共振周波数付近に設定することで、効率よく超音波を発射できる。
【0019】
以下に、上記の警報装置100の動作について説明する。
【0020】
第1装置Aは、音波を発する命令を含む電波を、第1通信機11からアンテナ12を介して第2装置Bに送信する。同時に、第1通信機11は、時計13に計測を開始させる信号を送信する。
【0021】
第2装置Bでは、第2通信機21を受信状態で待機させ、第1通信機11から電波が送信されるのを待つ。第2通信機21が第1通信機11からの電波を受信すると、第2通信機21は、音波を発する命令を超音波発振器23に送信する。超音波発振器23は、第2通信機23から音波を発射する命令を受信し、超音波を発射する。
【0022】
この際に、超音波発振器23は、少なくとも受信側が検出できる時間は超音波を発振する。この超音波は空気中を伝送し、第1装置Aの超音波センサ14に到達すると、超音波センサ14は、受信した超音波を電気信号に変換する。超音波センサ14で変換された電気信号は、検出器15に入力される。
【0023】
検出器15は、入力された電気信号を増幅して、その中から特定の信号のみを検出し、その検出結果から超音波発振器23からの超音波が受信されたかどうかを判断する。ここで、超音波発振器23からの超音波を受信したことが判断されると、検出器15は、検出した信号を時計13に送信する。時計13は、検出器15からの信号を受信すると、計測を停止する。
【0024】
すなわち、時計13では、第1通信機11が電波を送信してから、検出器15で超音波を検出するまでの時間を計測する。時計13は、計測した結果を比較器17に送信する。比較器17では、時計13から送信された時間データと、超音波の空気中の伝送スピードから、第1装置Aと第2装置Bとの距離を算出し、予め記憶手段16に記憶された設定数値と算出した距離の値とを比較する。
【0025】
比較器17で比較した結果によって、警報手段18が起動される。例えば、第1装置Aと第2装置Bとの距離が接近していることを知らせるためにブザー等の警報手段18を起動させたりする。
【0026】
以下に、電波と音波との組み合せの優位性について説明する。
【0027】
電波と電波との組み合せの場合、電波の伝送速度は非常に高速であるため、距離を算出する根拠となる時間を計測するために高速で高精度の計測装置が必要になり、距離検知装置が比較的高価な製品になる。
【0028】
また、電波の伝送に関係する装置の温度等による電波の伝送時間の誤差が、電波の伝送時間が短いだけに問題になりやすい。その誤差を補正する高精度な装置は、一般に校正等の誤差管理や温度条件などに制約が多く、効果で取り扱い難い製品になる。
【0029】
それに対して、音波を利用すると、伝送速度が電波に比べて格段に低速(およそ100分の1)になり、時間の計測装置に対する速度や精度の要求が緩和され、安価な製品が可能となる。なお、単なる通信のための電波の送受信装置は、安価な汎用製品が多く、電波と音波との組み合せでも、音波と音波との組み合せとさほどコストは変わらない。
【0030】
一方、音波と音波との組み合せの場合には、音波は、それが伝播する媒体(大気等)の影響を受けやすい。媒体の密度の変化(気圧や風、湿度等)が音波の伝送速度の変化になり、距離の計測誤差になる。仮に、音波を伝送する時の片道で伝送時間に1%の誤差が生じた場合、帰りの伝送の際でも同様の誤差(1%)が生じる。この誤差はそれぞれの経路のものが蓄積され、都合2%の誤差になる。
【0031】
これに対して、音波と電波とを利用すると、電波で伝送する片道分の誤差がなくなり環境による誤差を2分の1に軽減できる。
【0032】
以上のことから、音波と電波とを組み合せた距離検知装置によれば、実用上問題の無い程度の精度で安価な装置を実現することが可能になる。
【0033】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0034】
例えば、第1通信機11と第2通信機21との送受信状態を逆にしてもよい。つまり、超音波発振器23が音波を発したことを第2通信機21が第1通信機11に伝送し、検出器15が音波を検出してから第1通信機11が第2通信機21から電波を受信するまでの時間を計測し、第1装置Aと第2装置Bとの距離を算出してもよい。
【0035】
その場合、第2装置Bは、超音波発振器23から音波を発射し、それと同時に第2通信機21から電波によって、超音波を発射したことを情報として送信する。第1装置Aでは、第1通信機11が受信状態で待機している。第1通信機11が、第2通信機21からの超電波を受信すると、時計13で計数を開始する。
【0036】
そして、超音波センサ14に第2装置Bからの超音波が到達し、検出器15で信号が検出された時点で、時計13の計数を停止する。ここで時計13が計測した時間と音波が空気中を進む速さとから、第1装置Aと第2装置Bとの間の距離を算出する。
【0037】
また、第1装置Aと第2装置Bとの接近スピードを算出して、第1装置Aと第2装置Bとの衝突の定時間前に警報を発するようにしてもよい。この場合には、所定の時間毎に、第1装置Aと第2装置Bとの距離を少なくとも2回算出する必要がある。また、接近する場合と同様に、第1装置Aと第2装置Bとが離脱するスピードを検出して警報してもよい。
【0038】
上記の実施形態では、充電式のニッカド電池を装置全体の電源19としたが、本発明にかかる距離検知装置を用いた警報装置100は扱う電力が比較的小さいので、乾電池や2次電池などを電源にしてもよい。つまり、携帯可能な警報装置100が容易にできる。
【0039】
また、上記の実施形態では第1装置Aで第1装置Aと第2装置Bとの距離を算出しているが、実際は距離を算出する必要はなく、例えば、距離の代わりに時計13で計測した時間等、距離を算出する途中の段階の計数値を距離の代わりに用いてもよい。その際には、距離の代わりに用いた値に対応した設定数値を記憶手段16に記憶させておく必要がある。
【0040】
本実施形態では、時計13としてCR発振回路の出力をカウントするものを用いているが、誤差を少なくして分解能を上げるために、水晶発振等を使って時計13の基準発振の安定度を向上させてもよい。
【0041】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0042】
例えば、第2装置Bにも警報手段を備えさせて、警報手段を作動させる情報を通信機で送信すれば、第1装置Aと第2装置Bとの両方で警報を発することが可能である。
【0043】
また、上記の実施形態では、第2装置Bが1つの場合について説明したが、第2装置Bは複数存在してもよい。その場合には、第2装置Bに識別データを予め与えておき、第1装置Aが第1通信機11で順番に識別データと音波を発する命令を伝送すれば第2装置Bを個別に認識できる。このとき通信周波数を切換えるようにしてもよいし、又は識別コードを切換えるようにしてもよい。
【0044】
なお、上記の実施形態で用いた超音波センサ14が受信する超音波信号の指向性は100度であるが、より広い範囲にある対象から超音波を受信するために、第1装置Aは複数の超音波センサ14を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る距離検知装置を用いた警報装置の概要を説明する図。
【符号の説明】
【0046】
11…第1通信機、13…時計、14…超音波センサ、15…検出器、16…記憶手段、17…比較器、18…警報手段、21…第2通信機、23…超音波発振器、100…警報装置、A…第1装置、B…第2装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信する第1通信手段と、
音波を受信して、電気信号に変換するセンサと、
前記センサで変換された電気信号から特定の信号を検出する検出手段と、
を有する第1装置と、
前記第1通信手段からの電波を受信する第2通信手段と、
前記第2通信手段が前記電波を受信したときに音波を発振する音波発振手段と、
を有する第2装置と、を備え、
前記第1装置は、前記第1通信手段が前記第2通信手段に電波を送信してから、前記センサが前記音波発振手段からの音波を受信し、前記検出手段によって特定の信号が検出されるまでの時間を計測する計測手段をさらに備え、
前記計測手段が計測した時間と、前記音波の進む速さとから前記第1装置と前記第2装置との間の距離を検知する距離検知装置。
【請求項2】
前記第1通信手段は、前記電波の出力周波数を切替える切替手段をさらに備える請求項1記載の距離検知装置。
【請求項3】
請求項1記載の距離検知装置を備え、
前記第1装置は、特定の数値を記憶させる記憶手段と、
前記計測手段が計測した時間と前記記憶手段に記憶された数値とを比較する比較手段と、
前記比較手段での比較結果によって起動される警報手段と、
をさらに備えた警報装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−266886(P2006−266886A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85722(P2005−85722)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(591267338)株式会社エニー (2)
【Fターム(参考)】