説明

距離測定装置、及び距離測定方法

【課題】 定在波を利用した距離測定装置と同様に、「単純な構成」、「近距離測定が可能」、「測定誤差が小さい」という特徴を備え、かつドップラー効果による影響を実用上受けない距離測定装置及び距離測定方法を提供する。
【解決手段】 特定の帯域幅内において異なった複数の周波数成分を有する信号を出力する信号源1と、信号を波動として送信する送信部2と、送信された進行波VTと進行波VTが前記測定対象物6によって反射された反射波VRkとの混合波VCを検出する混合波検出部3と、検出された混合波VCの周波数成分を分析する周波数成分分析部4と、分析されたデータをスペクトル解析することによって距離スペクトルを求め、測定対象物6までの距離を演算する距離演算部5とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、距離測定装置及び距離測定方法に係わり、さらに詳しくは信号源から出力された進行波と、進行波が測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出し、測定対象物までの距離を測定する距離測定装置及び距離測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電波を利用した距離測定装置としては、パルスレーダ、FMCWレーダ等のレーダが知られている。
パルスレーダは、パルス信号を発信しそれが測定対象物によって反射されて戻ってくるまでの時間を計測することにより、測定対象物までの距離を求めるものである。また、FMCWレーダは、周波数掃引した連続波を発信し発信信号と反射信号の周波数差から測定対象物までの距離を測定するものである。その他にも、スペクトル拡散レーダや符号化パルスレーダ等のレーダもあるが、これらはパルスレーダと同様に測定対象物までの信号の往復時間に基づき距離を測定している。
【0003】
しかしながら、上述のレーダは基本的に測定対象物までの信号の往復時間を計測するものであり、数十m以内での分解能が不足するため、数十m以内の近距離の測定が困難であった。また、FMCWレーダでは、発信信号と反射信号の周波数差から測定対象物までの距離を測定するため、発信信号の周波数変化のリニアリティーを必要とすることや、送信信号が受信側に漏れ込むことで「False Target(偽目標)」が発生するという問題があり、周波数変化のリニアリティーが満たすように発信信号を正確に出力することや、「False Target」の発生を防ぐために送信信号が受信側に漏れ込まないように送受信側のアンテナを分離する等の必要性があり、簡易な構造とすることが困難であった。
【0004】
そこで、電磁波発生源から一つの周波数成分のみを有する電磁波を進行波として測定対象物に向けて送信したときに測定対象物からの反射(反射波)があれば定在波が発生する、という考えに基づいて、図23に示すように、一つの周波数成分のみを有する電磁波をステップ状に周波数を切り替えながら測定対象物に送信し、この送信波と測定対象物によって反射された反射波との干渉によって発生した定在波を検出し、この定在波の振幅の変動周期を算出した結果に基づき、検出点と測定対象物との距離を求める距離測定装置がある(特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1記載の距離測定装置では、一つの周波数成分のみを有する進行波と、進行波が測定対象物に反射した反射波とが干渉して発生する定在波を検出するので、FMCWレーダ等のように、送信信号が受信側に漏れ込まないようにする必要性もなく簡易な構造とすることができた。また、パルスレーダやFMCWレーダ等の他のレーダに比べて、近距離測定であっても精度良く測定することが可能であった。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の距離測定装置では、測定対象物と距離測定装置との移動速度が比較的遅く、計測時間内の移動距離が無視できるようなときには有効であったが、測定対象物と距離測定装置との移動速度が速く、計測時間内の移動距離が無視できないときには、ドップラー効果によって正しい測定値を得ることが困難であった。
【0007】
そこで、移動する測定対象物に対しても正しく距離測定できるように、一つの周波数成分を有する信号の周波数を所定のステップ周波数で増加、減少させこれを進行波として送信し、この進行波が測定対象物に反射した反射波とが干渉して発生した定在波の振幅を検出し、検出した振幅に対応する信号を演算して、検出点と測定対象物との距離を求める距離測定装置がある(例えば、特許文献2、非特許文献1参照。)。
特許文献2及び非特許文献1記載の距離測定装置は、周波数を所定のステップ周波数で増加、減少させた進行波と、その反射波との干渉によって発生した定在波の振幅に対応する信号を演算して、検出点と測定対象物との距離、並びに、測定対象物との相対速度を同時に計測することが可能であった。また、特許文献1に記載の距離測定装置と同様に定在波を用いて検出点と測定対象物との距離を求めているので、距離測定装置として簡易な構造とすることができた。
【特許文献1】特開2002−357656号公報
【特許文献2】特開2004−325085号公報
【非特許文献1】「移動体の位置と速度が測定可能な定在波を用いた近距離高分解能レーダ」, 藤森新五, 上保徹志, 入谷忠光, 電子情報通信学会論文誌, vol.J87-B, no.3, pp.437-445, March 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2及び非特許文献1記載の距離測定装置では、測定対象物が1つのときには、測定対象物までの距離と相対速度とを精度良く測定することができた。しかしながら、測定対象物が複数で、測定対象物同士の距離が接近し、速度差が大きいときには、各測定対象物の距離を一意的に決定できず、間違った測定結果が得られることがあった。
【0009】
また、上述の特許文献1,2、非特許文献1に記載されているような定在波を利用した距離測定装置では、信号源から出力される信号は、図23に示しているように、特定の帯域幅内の周波数faの信号(波動)をΔtの間出力し、その後周波数fa+Δfの信号をΔtの間出力するように、ステップ状に周波数を切り替えている。信号源から出力された信号はアンテナ等の送信器から送信され、測定対象物に反射して反射波として検出点に返ってくる(到達する)。このとき、周波数faの進行波と、周波数faの進行波に対応する反射波とが検出点で干渉する(重なり合う)と、定在波が発生する。つまり、周波数faの進行波を出力してから、この周波数faに対応する反射波が検出点に到達するまでは定在波は発生せず、定在波が発生するためには、周波数faの進行波の出力を始めてから、この周波数の進行波が測定対象物によって反射され、反射波が検出点に到達するための時間が必要であった。
したがって、周波数の切り替えの時間間隔Δtは、周波数が変化してから定在波が生成されるまでの時間よりも小さくすることはできなかった。そのため、定在波を利用した距離測定装置は、取得した信号レベルと周波数の関係から距離スペクトルを算出し測定対象物までの距離を得るが、測定対象物が相対速度vで移動しているときには、ドップラー効果により距離スペクトルのピークがずれ、図24に示すように、v・Δt/Δf・f0の測定誤差が発生していた。
【0010】
本願発明は、係る問題に鑑み、定在波を利用した距離測定装置と同様に、「単純な構成」、「近距離測定が可能」、「測定誤差が小さい」という特徴を備え、かつドップラー効果による影響を実用上受けない距離測定装置及び距離測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明に係る距離測定装置は、特定の帯域幅内において異なった複数の周波数成分を有する信号を出力する信号源と、前記信号を波動として送信する送信部と、前記送信部から送信された波動又は前記信号源から出力された信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信部から送信された波動が前記測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出する混合波検出部と、前記混合波検出部により検出された混合波の周波数成分を分析する周波数成分分析部と、前記周波数成分分析部によって分析されたデータをスペクトル解析することによって距離スペクトルを求め、測定対象物までの距離を演算する距離演算部とからなることを特徴とするものである。
また、本願発明に係る距離測定方法は、特定の帯域幅内において異なった複数の周波数成分を有する信号を波動として送信し、前記送信した波動又は前記信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信された波動が測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出し、前記検出した混合波の周波数成分を分析し、周波数成分分析によって分析されたデータをスペクトル解析することによって距離スペクトルを求め、測定対象物までの距離を演算することを特徴とする。
したがって、進行波と反射波との混合波を検出し、その混合波に基づいて測定対象物までの距離を演算しているので、進行波(送信信号)と反射波(受信信号)を分離する必要性がなく、単純で簡易な構造の距離測定装置とすることができる。また、定在波を利用した距離測定装置では、周波数を切り替えた後、その周波数に対応した反射波が検出点に返ってくるまで定在波が発生しない上、周波数を多数段階的に切り替えていく必要があり、それ故高速に距離測定をすることが原理的にできなかったが、定在波を利用しない本願発明は、周波数切り替えの概念がなく、故に原理的に周波数切り替えに要する時間というものが存在せず、定在波を利用した距離測定装置に比べて高速に距離測定が可能となる。
【0012】
前記信号源は、それぞれが異なった単一周波数成分を発振する単一周波数発振器の複数と、前記複数の単一周波数発振器から発振された信号を合成する加算器からなるようにしてもよい。
【0013】
また、前記信号源は、単一周波数成分を発振する単一周波数発振器と、前記単一周波数発振器から発振される信号に変調をかける変調器とからなるようにしてもよい。
【0014】
また、前記信号源は、前記特定の帯域幅内の周波数成分を出力する雑音源からなるようにしてもよい。
【0015】
また、前記周波数成分分析部は、前記混合波検出部により検出された混合波をデジタル信号に変換するAD変換器と、前記AD変換器からの出力データの周波数成分を分析し各周波数成分の大きさを演算する信号処理装置とからなるようにしてもよい。
【0016】
また、前記周波数成分分析部は、複数のバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタの出力レベルを検出するレベル検出器とからなるようにしてもよい。
【0017】
また、前記距離演算部は、前記周波数成分分析部によって分析されたデータをフーリエ解析することによって距離スペクトルを演算してもよい。
【0018】
前記混合波検出部の複数を異なった位置に備え、前記周波数成分分析部は前記混合波検出部により検出された混合波毎に周波数成分を分析してなり、前記距離演算部は、得られた複数の混合波の周波数成分分析データを用いて距離スペクトルを演算してもよい。
【0019】
さらに、別の本願発明に係る距離測定装置は、特定の周波数の搬送波を任意の周期信号で周波数変調した周波数変調信号を出力する信号源と、前記周波数変調信号を波動として送信する送信部と、前記送信部から送信された波動又は前記信号源から出力された周波数変調信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信部から送信された波動が測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出する混合波検出部と、前記混合波検出部によって検出された混合波の振幅成分を検出する振幅成分検出部と、前記振幅成分検出部によって検出された振幅成分をスペクトル解析することによって距離スペクトルを求め、測定対象物までの距離を演算する距離演算部とからなる。
また、本願発明に係る距離測定方法は、特定の周波数の搬送波を任意の周期信号で周波数変調した信号を波動として送信し、前記送信された波動又は前記周波数変調した信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信された波動が前記測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出し、検出した混合波の振幅成分を検出し、前記振幅成分をスペクトル解析することによって距離スペクトルを求め、測定対象物までの距離を測定する。
したがって、進行波と反射波との混合波を検出し、その混合波に基づいて測定対象物までの距離を演算しているので、進行波(送信信号)が受信側に漏れ込まないように送受信側のアンテナを分離する等の必要性がなく、単純で簡易な構造の距離測定装置とすることができる。また、定在波を利用した距離測定装置では、周波数を切り替えた後、その周波数に対応した反射波が検出点に返ってくるまで定在波が発生しない上、周波数を多数段階的に切り替えていく必要があり、それ故高速に距離測定をすることが原理的にできなかったが、定在波を利用しない本願発明は、周波数切り替えの概念がなく、故に原理的に周波数切り替えに要する時間というものが存在せず、定在波を利用した距離測定装置に比べて高速に距離測定が可能となる。
【0020】
また、前記距離演算部は、前記振幅成分検出部によって検出された振幅成分をフーリエ解析することによって距離スペクトルを演算してもよい。
【0021】
前記混合波検出部の複数を異なった位置に備えてなり、前記振幅成分検出部は、前記混合波検出部により検出された混合波毎に振幅成分を検出してなり、前記距離演算部は、得られた複数の混合波の振幅成分データを用いて距離スペクトルを演算してもよい。
【0022】
さらに、別の本願発明に係る距離測定装置は、第1変調信号によって予め周波数変調された第2変調信号で特定の周波数の搬送波を二重に周波数変調した二重変調信号を出力する信号源と、前記二重変調信号を波動として送信する送信部と、前記送信部から送信された波動又は前記信号源から出力された二重変調信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信部から送信された波動が測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出する混合波検出部と、前記混合波検出部によって検出された混合波の振幅成分を検出する振幅成分検出部と、前記振幅成分検出部によって検出された振幅成分から特定の1つの周波数成分を選択する単一周波数選択部と、前記単一周波数選択部で得られた信号のレベルを検出する信号レベル検出部と、前記信号レベル検出部によって得られた信号レベルから測定対象物までの距離を演算する距離演算部とからなる。
また、本願発明に係る距離測定方法は、第1変調信号によって予め周波数変調された第2変調信号で特定の周波数の搬送波を二重に周波数変調した二重変調信号を波動として送信し、前記送信された波動又は前記二重変調信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信部から送信された波動が測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出し、検出した混合波の振幅成分を検出し、前記振幅成分から特定の1つの周波数成分を選択し、選択された周波数成分の信号のレベルを検出し、前記信号レベルから測定対象物までの距離を測定する。
したがって、進行波と反射波との混合波を検出し、その混合波に基づいて測定対象物までの距離を演算しているので、進行波(送信信号)と反射波(受信信号)を分離する必要性がなく、単純で簡易な構造の距離測定装置とすることができる。また、定在波を利用した距離測定装置では、周波数を切り替えた後、その周波数に対応した反射波が検出点に返ってくるまで定在波が発生しない上、周波数を多数段階的に切り替えていく必要があり、それ故高速に距離測定をすることが原理的にできなかったが、定在波を利用しない本願発明は、周波数切り替えの概念がなく、故に原理的に周波数切り替えに要する時間というものが存在せず、定在波を利用した距離測定装置に比べて高速に距離測定が可能となる。
【0023】
前記信号源が、前記第1変調信号を生成する第1変調信号と、前記第1変調信号によって変調された前記第2変調信号と、前記搬送波のそれぞれを生成してもよい。
また、前記信号源が、前記二重変調信号を予め記憶する二重変調信号記憶手段を備えていてもよい。
もしくは、前記信号源が、前記第2変調信号を予め記憶する第2変調信号記憶手段と、前記搬送波を生成する搬送波生成手段とを備えていてもよい。
【0024】
前記第1変調信号を、特定の第1周期で階段状に増加又は減少する波形を描く信号とし、前記第2変調信号を、前記第1周期より短い周期の鋸波を前記第1変調信号で変調した信号としてもよい。
【発明の効果】
【0025】
以上にしてなる本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法は、進行波と測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出しているので、受信用アンテナに進行波が漏れ込まないようにする必要がなく、簡易な構造とすることができ低コスト、かつ大きさの小さな距離測定装置を得ることができる。
また、異なった複数の周波数成分を有する進行波とその反射波との混合波から距離スペクトルを求めることで、その大きさのピークとなる距離から測定対象物と混合波検出部との間の距離を求めることができる。
定在波を利用して測定対象物までの距離を測定するときには、進行波の周波数を切り替えてから定在波ができる時間より周波数切り替え時間を短くすることが原理的にできないため、ドップラー効果の影響を受けてしまい測定誤差が発生するが、本願発明では原理的に周波数切り替えの概念がないので、ドップラー効果の影響をほとんど無視できる程度にまで観測時間を短くすることが可能となり、測定対象物の移動速度及び移動方向に関係なく、正確な距離を測定することができる。
また、定在波を利用した距離測定装置では、測定することが困難であった複数の測定対象物同士の距離が接近し、かつその速度差が大きいときでも、各測定対象物の位置を正しく測定することができる。
【0026】
また、混合波検出部の複数をそれぞれ異なった位置に備え、複数の混合波検出部によって検出された複数の混合波から距離スペクトルを求めるので、より信頼性および精度の高い距離測定を行うことができる。
【0027】
また、信号源から二重変調信号を出力するときには、スペクトル解析を高速で実行可能な高コストのマイクロプロセッサ等を使用する必要性がなく、包絡線検波器、自乗検波器、同期検波器、直交検波器、バンドパスフィルタ、マッチドフィルタ等の機器で信号処理器を構成し、距離スペクトルの大きさ(信号レベル)を検出しているので、マイクロプロセッサ等を使用した信号処理器と略同じ処理速度の信号処理器を低コストで得ることができる。つまり、低コストかつ信号処理速度の速い距離測定装置を得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法は、図1、図8及び図15に示すように、信号源1,9,13から出力された信号を送信部2から波動として送信し、この波動(進行波VT)が測定対象物6によって反射された反射波VRを混合波検出部3で分離せず混合波として検出するものである。
本願発明における信号源は、特定の帯域幅内において異なった複数の周波数成分を有する信号を出力する、又は、特定の周波数の搬送波を任意の周期信号で周波数変調した周波数変調信号を出力する、もしくは、第1変調信号によって予め周波数変調された第2変調信号で特定の周波数の搬送波を二重に周波数変調した二重変調信号を出力するものである。つまり、信号源1,9,13から出力される信号は、常に複数の異なった周波数成分を有する信号である。
また、本願発明における進行波は、信号源1,9,13から出力された信号を送信部2から送信した波動、又は信号源1,9,13から出力された信号である。つまり、本願発明における進行波は、常に複数の周波数成分を有する波動又は信号(信号波)である。また、本願発明に係る反射波は、常に複数の周波数成分を有する波動が測定対象物6によって反射された波動である。
そして、本願発明における混合波とは、前記進行波と前記反射波とが混合(合成)された波動である。つまり、複数の周波数成分を有する進行波と複数の周波数成分を有する前記反射波とが重ね合わさった波動が本願発明における混合波であり、単一の周波数成分を有する複数の波動(波)が重ね合わさった波動を示すものではない。
【0029】
以下の実施例では、波動として電磁波を例に挙げて説明しているが、光、音波、電流、物質内を伝播する物質波等の波動も本願発明における波動である。
【0030】
なお、上述の特許文献1,2、非特許文献1等で記載されている定在波を利用した距離測定装置では、信号源から出力される信号は、図23に示すように、単一の周波数成分の周波数を時間的にステップ状に切り替える信号であり、本願発明のように常に異なった複数の周波数成分を有する信号ではない。また、この単一の周波数成分を有する信号に基づいて送信された進行波と、この単一周波数成分の進行波が測定対象物で反射された反射波との干渉によって発生した波動の振幅は、時間的な変化がなく、空間上の位置によって異なる値となる。具体的には、位置に対して振幅は周期関数となり、これを定在波という。
本願発明のように複数の周波数成分を有する信号に基づく進行波と反射波との干渉では、空間上の位置と混合波の振幅との関係は時間的な変化を伴い、定在波とは異なる現象となる。
したがって、本願発明に係る距離測定装置は、定在波を利用した距離測定装置とは異なる物理現象を利用しており原理的に異なるものである。
【実施例1】
【0031】
以下に、本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法の第1実施例の技術的概要を説明する。
(技術的概要1)
図1は、本願発明に係る距離測定装置の概略を説明するための説明図である。本願発明に係る距離測定装置は、信号源1から出力された信号(進行波VT)が、送信部2から波動として測定対象物6に送信され、k番目の測定対象物6によって反射された反射波VRkと進行波VTとの混合波VCを、混合波検出部3で検出し、周波数成分分析部4で混合波の周波数成分(a(f,xs))を分析し、距離演算部5で距離スペクトルR(x)を演算し、測定対象物6までの距離を測定するものである。
【0032】
信号源1は、特定の帯域幅内において異なった複数の周波数成分を有する信号を出力するものであり、常に2つ以上の周波数成分が含まれる信号を出力する。具体的な例として、信号源1を、それぞれが異なった単一周波数成分の信号を発振する単一周波数発振器の複数と、前記複数の単一周波数発振器から発振された単一周波数成分の信号を合成する加算器とから構成し、常に2つ以上の周波数成分を有する信号を信号源1から出力させる。また、信号源1が、単一周波数成分を発振する単一周波数発振器と、この単一周波数発振器から発振される信号に周波数変調や振幅変調等の所定の変調をかける変調器とから構成し、特定の帯域幅内で異なった周波数成分を有する信号を出力するようにしてもよい。さらに、特定の帯域幅内の周波数成分を出力する雑音源から構成することもできる。特定の帯域幅内の周波数成分を出力する雑音源としては、例えば、雑音源から出力される信号をバンドパスフィルタで特定の帯域内の信号のみを通過させることによって実現することができる。
【0033】
送信部2は、信号源1から出力された信号を波動として送信するためのアンテナ(又は電極)等の双方向性素子である。信号源1と送信部2との間に混合波検出部3を配置する場合には、該送信部2が反射波を受信する役割を担ってもよい。前記送信部2は、前記信号源1から出力された周波数成分の波動を出力し、出力された波動が測定対象物6に送信される。
【0034】
なお、本願発明における進行波VTとは前記送信部2から送信される波動、及び信号源1から出力される信号を示す。
したがって、信号源1からの信号と送信部2を経由して返ってきた反射波の信号との混合波を前記混合波検出部3で検出する場合は、信号源1からの信号が進行波VTとなる。
【0035】
混合波検出部3は、前記進行波VTと前記反射波VRkとの混合波VCを検出するものである。この混合波検出部3は、信号源1と送信部2とをつなぐ給電線の途中に、信号源1から出力される進行波VTと送信部2を経由して返ってきた反射波VRkとの混合波VCを検出するための、方向性を持たない結合器を設けることによって構成することができる。また、進行波VTと反射波VRkとの混合波VCを検出するための受信用アンテナ(又は電極)を、送信部2と測定対象物6との間の空間に設け、混合波検出部3とすることもできる。
【0036】
前記周波数成分分析部4は、前記混合波検出部3によって検出された混合波VCの周波数成分を分析するものである。複数のバンドパスフィルタと、バンドパスフィルタからの出力レベルを検出するためのレベル検出器とによって、前記周波数成分分析部4を構成して、各周波数成分の大きさを分析することもできる。
また、前記混合波検出部3によって検出された混合波をデジタル信号に変換するAD変換器と、AD変換器から出力された混合波のデジタル信号をフーリエ変換等の周波数成分分析を行い、各周波数成分の大きさ(絶対値)a(f,xs)を演算するソフトウエアを組み込んだ信号処理器とによって構成することもできる。
なお、前記混合波検出部3によって検出された混合波を直接前記AD変換器に出力してもよいが、混合波検出部3とAD変換器の間にダウンコンバータ8(図2参照)を設けて、周波数を下げてからAD変換器に入力するように構成してもよい。ダウンコンバータ8は、既知のダウンコンバータであればよく、例えば、ダウンコンバートしたい周波数を発振する局部発振器8aと、混合波検出部3によって検出された混合波VCと前記局部発振器8aからの周期信号をミキシングするミキサ(周波数変換器)8bとによって構成し、所望の周波数にダウンコンバートしてもよい。
【0037】
前記距離演算部5は、前記周波数成分分析部4によって分析されたデータをスペクトル解析して距離スペクトルを求め、この距離スペクトルの大きさを演算し、距離スペクトルの大きさのピークに基づいて測定対象物6までの距離を演算するものである。スペクトル解析の手法としては、フーリエ変換に代表されるノンパラメトリック手法、或いはARモデリング等のパラメトリック手法等の適宜のスペクトル解析手法により解析する。
【0038】
(測定原理1)
以下に、本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法について、図1及び図2を用いてその測定原理について説明する。
【0039】
信号源1から出力される進行波が、f0−fW/2〜f0+fW/2の帯域幅の周波数成分を有し、各周波数成分に対する振幅A(f),位相θ(f)であるとき、測定開始からの経過時間t、位置xにおける進行波VTは以下の数式(1)のように表される。
【数1】

ただし、fは周波数、cは光速、x軸上の任意の一点をx=0としている。
【0040】
k番目の測定対象物6の距離をdk、速度をvk、反射係数の大きさと位相をそれぞれγk,φkとすれば、その測定対象物6からの反射波VRkは以下の数式(2)のように表すことができる。ただし、k=1,2,…である。
【数2】

【0041】
このとき、x=xsの位置にある混合波検出部3で観測される混合波の信号VCは、以下の数式(3)のように表される
【数3】

【0042】
混合波検出部3で検出される混合波VCをバンドパスフィルタを通し各周波数成分に分解する。あるいは、図2に示すように、AD変換器によってデジタル信号に変換し(S100)、このデジタル信号をフーリエ変換等による周波数成分分析によって各周波数成分に分解する(S101)。
分解された周波数fの成分VC(f,t,xs)は、数式(3)における被積分成分(積分の中身)であり、以下の数式(4)である。
【数4】

【0043】
この分解された周波数fの成分の振幅は、以下の数式(5)で表される。
【数5】

ただし、現実的に反射波の大きさは非常に小さいと考えてよいので、γk≪1として近似している。
【0044】
ここでtを十分小さくすることにより、vkt≒0とみなすことができれば(後述するシミュレーションにあるように、観測時間t=3.5[μsec]、速度vk=300[km/h]のときでも、vkt≒0.29[mm]となり、vkt≒0とみなすことができる。)、以下の数式(6)のよう近似できる。
【数6】

【0045】
ところで、A(f)は信号源1の周波数特性を表しており、容易に知ることができるので既知のものと考えてよい。A(f)が定数Aとみなせる場合には、
【数7】

あるいは、A(f)が定数でない場合(例えば、雑音源を用いた場合)には、A(f)で数式(6)を正規化すれば、
【数8】

となる。
前記数式(7)の定数Aの値は距離に関する情報を何ら持たない。そこで、A=1とすれば、数式(7)は数式(8)と同じになるので、以下、振幅を表す数式として(8)を用いる。
【0046】
数式(8)は、周波数fに対してc/2(dk−xs)の周期を持つ周期関数となっているのがわかる。したがって、これを例えばフーリエ変換に代表されるノンパラメトリック手法、あるいはARモデリング等のパラメトリック手法によりスペクトル解析をすれば、混合波検出部3から測定対象までの距離dk−xsが得られる。
【0047】
以下に、フーリエ変換によって距離を演算する例を示す。
フーリエ変換公式
【数9】

において、ω/2πを2x/cに、tをfに、f(t)をa(f,xs)に置き換える。その結果、距離スペクトルR(x)が次のように求められる(S103(図2参照))。
【数10】

ただし、Sa(z)=sin(z)/z
である。
【0048】
数式(10)によれば、R(x)の大きさ(距離スペクトルの強度)|R(x)|は、x=0,±(dk−xs)でピークとなることがわかる。現実的に混合波検出部3から測定対象物6までの距離dk−xsは正であるから、x>0に限定すれば、|R(x)|がピークとなるxの値が、混合波検出部3と測定対象物6との距離dk−xsである。つまり、|R(x)|の値がピークとなるxを求めることによって、混合波検出部3から測定対象物6までの位置を求めることができる(S104(図2参照))。
【0049】
以上のように本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法では、進行波と測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出しているので、進行波と反射波を分離する必要がなく、簡易な構造とすることができ低コストで小さな距離測定装置を得ることができる。
また、異なった複数の周波数成分を有する進行波とその反射波との混合波から距離スペクトルを求めることで、その大きさのピークとなる距離から測定対象物と混合波検出部との間の距離を求めることができる。
定在波を利用して測定対象物までの距離を測定するときには、進行波の周波数を切り替えてから定在波ができる時間よりも観測時間を短くすることが原理的にできないため、ドップラー効果の影響を受けてしまい測定誤差が発生するが、本願発明では原理的に周波数切り替えの概念がなく、故にドップラー効果の影響をほとんど無視できる程度にまで観測時間を短くすることが可能となり、正確な距離を測定することができる。
【0050】
(シミュレーション1)
つぎに上述の測定原理1に基づいて、図2で示す距離測定装置でのシミュレーションを行う。
図2で示した距離測定装置は、信号源1が24.000GHz〜24.075GHzの成分を一様に含む信号を出力し、送信部2から前記帯域幅内の成分を一様に含む進行波VTを測定対象物6,…,6に送信する。そして、k番目の測定対象物6によって反射された反射波VRkと進行波VTとの混合波VC(t,0)を混合波検出部3で検出する。なお、混合波検出部3の位置は、xs=0としている。そして、検出された混合波VCは、ダウンコンバータ8によって0〜75MHzにダウンコンバートされる。ダウンコンバートされたVCは、AD変換器によってデジタル信号に変換され(S100)、デジタル信号に変換されたVC(f,t,0)をフーリエ変換して各周波数成分に分解する(S101)。そして、各周波数成分の振幅を求めるために、各周波数成分に分解した混合波VC(f,t,0)の絶対値を算出した後に(S102)、正規化した振幅a(f,0)を求める。この正規化した振幅a(f,0)をスペクトル解析によって距離スペクトルR(x)を求め(S103)、距離スペクトルR(x)の大きさ(強度)のピークから測定対象物6の位置を算出する(S104)。なお、測定対象物6の速度が、距離測定装置から遠ざかる方向を正、距離測定装置に近づく方向を負とする。
【0051】
図2で示した距離測定装置のシミュレーションでは、進行波と反射波との混合波を3.5μsec間にわたり観測する(t=3.5[μsec]とする)。
シミュレーションは、信号源から出力される24.000GHz〜24.075GHzの成分を一様に含む信号を進行波とし、数式(3)に基づいて混合波VC(t,0)を計算する。そして、混合波VCと−24GHzの複素正弦波を乗算し、ダウンコンバートされたVCを得る。つまり、混合波VCは、0〜75MHzにダウンコンバートされる。
そして、ダウンコンバートされたVCをフーリエ変換し、その絶対値から数式(8)(a(f,0))を求める。そして、数式(10)に従い、a(f,0)をフーリエ変換し、距離スペクトルR(x)及び距離スペクトルの大きさ(|R(x)|)を求める。
【0052】
(シミュレーション1−1)
図3は、測定対象物6が混合波検出部3から距離10m、時速0kmで静止しているときをシミュレーションしたグラフである。図3(a)は、ダウンコンバートされた混合波(進行波+反射波)の時間波形であり、計測時間の各時刻における瞬時値を示したグラフである(ダウンコンバートされたVC(t,0)のグラフである)。図3(b)は、数式(8)で示したa(f,0)のグラフであり、各周波数成分の正規化した振幅を示している。図3(c)は、図3(b)によって求められたa(f,0)をスペクトル解析して距離と距離スペクトルの大きさ|R(x)|の関係を表したグラフである。図3(c)からもわかるように、距離スペクトルの大きさは、距離10mで大きなピーク値となっている。このことから、静止している状態では正しい距離が測定できる。
【0053】
(シミュレーション1−2)
図4は、測定対象物6が混合波検出部3から距離10m、時速+300kmで移動しているときをシミュレーションしたグラフである。図4(a)は、ダウンコンバートされた混合波(進行波+反射波)の時間波形であり、計測時間の各時刻における瞬時値を示したグラフである(ダウンコンバートされたVC(t,0)のグラフである)。図4(b)は、数式(8)で示したa(f,0)のグラフであり、各周波数成分の正規化した振幅を示している。図4(c)は、図4(b)によって求められたa(f,0)をスペクトル解析して距離と距離スペクトルの大きさ|R(x)|の関係を表したグラフである。図4(c)からもわかるように、距離スペクトルの大きさは、距離10mで大きなピーク値となっている。このことから、測定対象物が+300kmで移動しているときも、シミュレーション1−1と同様に正しい距離が測定できる。
【0054】
(シミュレーション1−3)
図5は、測定対象物6が混合波検出部3から距離40m、時速−50kmで移動しているときをシミュレーションしたグラフである。図5(a)は、ダウンコンバートされた混合波(進行波+反射波)の時間波形であり、計測時間の各時刻における瞬時値を示したグラフである(ダウンコンバートされたVC(t,0)のグラフである)。図5(b)は、数式(8)で示したa(f,0)のグラフであり、各周波数成分の正規化した振幅を示している。図5(c)は、図5(b)によって求められたa(f,0)をスペクトル解析して距離と距離スペクトルの大きさ|R(x)|の関係を表したグラフである。図5(c)からもわかるように、距離スペクトルの大きさは、距離40mで大きなピーク値となっている。このことから、測定対象物との距離、移動速度及び移動方向が変わっても正しい距離が測定できることがわかる。
【0055】
(シミュレーション1−4)
図6は、測定対象物6が2つあり、一方の測定対象物6が混合波検出部3から距離5m、時速+100kmで移動し、他方の測定対象物6が混合波検出部3から距離12.5m、時速−300kmで移動しているときをシミュレーションしたグラフである。図6(a)は、ダウンコンバートされた混合波(進行波+反射波)の時間波形であり、計測時間の各時刻における瞬時値を示したグラフである(ダウンコンバートされたVC(t,0)のグラフである)。図6(b)は、数式(8)で示したa(f,0)のグラフであり、各周波数成分の正規化した振幅を示している。図6(c)は、図6(b)によって求められたa(f,0)をスペクトル解析して距離と距離スペクトルの大きさ|R(x)|の関係を表したグラフである。図6(c)からもわかるように、距離スペクトルの大きさは、距離5mと12.5mで大きなピーク値となっている。このことから、測定対象物が複数であっても、正しい距離が測定できることがわかる。また、10m以下の近距離でも正しい距離を測定することができる。 さらに、定在波を利用した距離測定装置では、測定することが困難であった複数の測定対象物同士の距離が接近し、速度差が大きいときでも、各測定対象物の位置を正しく測定することができる。
【0056】
前述のシミュレーション1−1〜1−4からもわかるように、測定対象物の速度にかかわらず、測定対象物の距離を測定することができる。さらに、複数の測定対象物同士の距離が接近し、速度差が大きいときでも各測定対象物の位置を正しく測定することができる。
【0057】
上述の説明では、1つの混合波検出部3で混合波を検出しているが、図7に示すように、複数の混合波検出部3,…,3をそれぞれ異なった位置xs1,…,xsNに配置してもよい。このように複数の混合波検出部3,…,3から検出された混合波VCは、混合波検出部3毎にAD変換器でAD変換し(S110)、デジタル信号に変換された混合波の信号をフーリエ変換し(S111)、その絶対値を算出して混合波検出部3毎の振幅a(f,xsi)(iは、1,2,…,N,…)を求める。そして、任意の2つの振幅(例えば、a(f,xs1)とa(f,xs2))の差を取ることにより、不要な直流成分(数式(8)の第1項)を除去し(S113)、不要な直流成分を除去した振幅a(f,xsi)毎にスペクトル解析し距離スペクトルを求め(S114)、各距離スペクトルの平均化をした後に(S115)、距離スペクトルの大きさのピークから測定対象物6までの距離を演算する(S116)。これらは、例えば、任意の2つの振幅の差を取って不要な直流成分を除去する直流成分除去手段と、複数の距離スペクトルの平均を演算する距離スペクトル平均化手段とを前記距離演算部5に備えさせることによって実現することができる。
したがって、複数の混合波検出部3を設け、図7に示すような信号処理器を構成した場合、不要な直流成分の除去を行うことができる。また、各振幅a(f,xsi)から得られた距離スペクトルを平均化し、ノイズ成分を低減させ、より正確に距離を測定できる。
【実施例2】
【0058】
つぎに、本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法の第2実施例の技術的概要を説明する。
(技術的概要2)
図8は、本願発明に係る距離測定装置の概略を説明するための説明図である。本願発明に係る距離測定装置は、信号源9から出力された信号が、送信部2から波動として測定対象物6に送信され、k番目の測定対象物6によって反射された反射波VRkと進行波VTとの混合波VCを、混合波検出部3で検出し、振幅成分検出部10で混合波の振幅成分(a(t,xs))を検出し、距離演算部11で距離スペクトルR(x)を演算し、測定対象物6までの距離を測定するものである。
【0059】
信号源9は、特定の周波数の搬送波を任意の周期信号で周波数変調した周波数変調信号を出力するものであり、常に2つ以上の周波数成分が含まれる信号を出力する。具体的な例として、信号源9を、図9に示すように、特定の周波数の搬送波信号を発信する搬送波信号源9aと、この搬送波信号を任意の周期信号で変調する変調信号源9bとから構成し、この信号源9から周波数変調信号を出力させる。他の具体例として、マイクロプロセッサを備えた周波数変調信号生成手段(図示しない)と、瞬時周波数f0+fD・m(t)の周波数変調信号を出力するためのデータを記憶させた周波数変調信号記憶手段(図示しない)とによって構成し、該周波数変調信号記憶手段に記憶されているデータを、該周波数変調信号生成手段が読み出し、周波数変調信号を生成するようにしてもよい。
【0060】
送信部2は、信号源9から出力された信号を波動として送信するためのアンテナ(又は電極)等の双方向性素子である。信号源9と送信部2との間に混合波検出部3を配置する場合には、該送信部2が反射波を受信する役割を担ってもよい。前記送信部2は、前記信号源9から出力された周波数成分の波動を出力し、出力された波動が測定対象物6に送信される。
【0061】
なお、本願発明における進行波VTとは、前記送信部2から送信される波動、及び信号源9から出力される信号を示す。
したがって、信号源9からの信号と送信部2を経由して返ってきた反射波の信号との混合波を前記混合波検出部3で検出する場合は、信号源9からの信号が進行波VTとなる。
【0062】
混合波検出部3は、前記進行波VTと前記反射波VRkとの混合波VCを検出するものである。この混合波検出部3は、信号源9と送信部2をつなぐ給電線の途中に、信号源9から出力される進行波VTと送信部2を経由して返ってきた反射波VRkとの混合波VCを検出するための、方向性を持たない結合器を設けることによって構成することもできる。また、進行波VTと反射波VRkとの混合波VCを検出するための受信用アンテナ(又は電極)を、送信部2と測定対象物6との間の空間に設け、混合波検出部3としてもよい。
【0063】
振幅成分検出部10は、前記混合波検出部3によって検出された混合波VCの振幅成分を検出するものであり、包絡線検波器、自乗検波器、同期検波器、直交検波器等の機器のいずれかによって構成される。
【0064】
前記距離演算部11は、振幅成分検出部10によって検出された振幅成分をスペクトル解析することによって距離スペクトルを求め、この距離スペクトルの大きさを演算し、距離スペクトルの大きさのピークに基づいて測定対象物6までの距離を演算するものである。スペクトル解析の手法としては、フーリエ変換に代表されるノンパラメトリック手法、あるいはARモデリング等のパラメトリック手法等の適宜のスペクトル解析手法により解析する。
【0065】
(測定原理2)
以下に、本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法について、図8及び図9を用いてその測定原理について説明する。
【0066】
信号源9が、周波数f0の搬送波信号源9aと、この搬送波信号源9aの搬送波を変調する変調信号源9bとから構成されるとき、測定開始からの経過時間t、位置xにおける進行波VTは、以下の数式(11)で表されるような周波数変調された連続波となる。
【数11】

【0067】
ただし、tは測定開始からの経過時間、m(t)は変調信号であり、振幅が1の任意の周期関数である。周波数変調の最大周波数偏移はfD、中心周波数はf0とする。したがって、進行波VT(t,x)の瞬時周波数はf0+fD・m(t)である。また、cは光速、θは位相であり、x軸上の任意の一点をx=0としている。
k番目の測定対象物6の距離をdk、速度をvk、反射係数の大きさと位相をそれぞれγk、φkとすれば、その測定対象物6からの反射波は、以下の数式(12)のように表すことができる。ただし、k=1,2,…である。
【数12】

【0068】
このとき、x=xsの位置にある混合波検出部3で検出される混合波の信号VCは、以下の数式(13)のように表される。
【数13】

【0069】
そして、VCの振幅は、以下の数式(14)で表される。
【数14】

【0070】
現実的に反射波の大きさは非常に小さいと考えてよいのでγk≪1であり、γkの2次以上の項は、ほぼ0として無視し得る。したがって、以下の数式(15)のように近似できる。
【数15】

【0071】
ここでtを十分小さくすることにより、vkt≒0とみなすことができれば(後述するシミュレーションにあるように、観測時間t=20[μsec]、速度vkt=300[km/h]のときでも、vkt≒1.7[mm]となり、vkt≒0とみなすことができる。)、以下の数式(16)のように近似でき、速度vkの影響を除去できる。
【数16】

【0072】
さらに、以下の数式(17)
【数17】

として近似すれば、数式(16)は、以下の数式(18)となる。
【数18】

ただし、定数Aは本願発明においては、何ら情報を持たないので、A=1とした。
【0073】
さて、数式(18)は、瞬時周波数f0+fD・m(t)に対してc/2(dk−xs)の周期を持つ周期関数となっているのがわかる。したがってこれを、例えばフーリエ変換に代表されるノンパラメトリック手法、あるいはARモデリング等のパラメトリック手法によりスペクトル解析すれば、混合波検出部3から測定対象物6までの距離dk−xsが得られる。
以下に、フーリエ変換によって距離を算出する例を示す。
フーリエ変換公式(9)において、f(t)をa(t,xs)とし、ω/2πに、tを瞬時周波数f0+fD・m(t)に置き換える。df=fD・dm(t)となるので、距離スペクトルR(x)が、以下の数式(19)のように求められる。
【数19】

ただし、Sa(z)=sin(z)/z
である。
【0074】
数式(19)によれば、R(x)の大きさ(距離スペクトルの強度)|R(x)|は、z=0、±(dk−xs)でピークとなることがわかる。現実的に混合波検出部3から測定対象物6までの距離dk−xsは正であるから、x>0に限定すれば、|R(x)|がピークとなるxの値が、求めるべき距離dk−xsである。
【0075】
以上のように本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法では、進行波と測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出しているので、進行波と反射波を分離する必要がなく、簡易な構造とすることができ低コストで小さな距離測定装置を得ることができる。
また、異なった複数の周波数成分を有する進行波とその反射波との混合波から距離スペクトルを求めることで、その大きさのピークとなる距離から測定対象物と混合波検出部との間の距離を求めることができる。
定在波を利用して測定対象物までの距離を測定するときには、進行波の周波数を切り替えてから定在波ができる時間よりも観測時間を短くすることが原理的にできないため、ドップラー効果の影響を受けてしまい測定誤差が発生するが、本願発明では原理的に周波数切り替えの概念がなく、故にドップラー効果の影響をほとんど無視できる程度にまで観測時間を短くすることが可能となり、正確な距離を測定することができる。
【0076】
(シミュレーション2)
つぎに上述の測定原理2に基づいて、図9で示す距離測定装置でのシミュレーションを行う。
図9で示した距離測定装置の信号源9は、周波数f0=24.0375GHzの搬送波信号を出力する搬送波信号源9aと、変調信号m(t)が周波数50kHzの正弦波で、最大周波数偏移fD=37.5MHzの変調信号源9bとを備え、瞬時周波数f0+fD・m(t)の信号を出力する。そして、送信部2から数式(11)で表される進行波VTが送信される。k番目の測定対象物6によって反射された反射波VRkと、前記進行波VTとの混合波VC(t,0)を混合波検出部3で検出する。混合波VCの観測は、変調信号m(t)の1周期にわたり行う。したがって、t=1/50[kHz]=20[μsec]である。なお、混合波検出部3の位置は、xs=0としている。また、測定対象物6の速度が、距離測定装置から遠ざかる方向を正、距離測定装置に近づく方向を負としている。
検出された混合波VCは、包絡線検波器によって包絡線検波を行い、混合波の振幅成分a(t,0)を検出する(S120)。そして、混合波の振幅成分a(t,0)を検出すると、AD変換器によってデジタル信号に変換する(S121)。そして、デジタル変換された振幅a(t,0)をスペクトル解析し、距離スペクトルR(x)を求める(S122)。そして、求めた距離スペクトルの大きさのピークから測定対象物6の位置を演算する(S123)。
【0077】
(シミュレーション2−1)
図10は、測定対象物6が混合波検出部3の位置から距離10m、時速0kmで静止しているときをシミュレーションしたグラフである。図3(a)は、変調信号m(t)と混合波の振幅a(t,0)を示したグラフである。これを基に、スペクトル解析をして距離スペクトルの大きさを示したものが図10(b)である。図10(b)からもわかるように、距離スペクトルの大きさは、距離10mで大きなピーク値となっている。このことから、静止している状態では数十m以内の近距離であっても正しい距離が測定できる。
【0078】
(シミュレーション2−2)
図11は、測定対象物6が混合波検出部3の位置から距離10m、時速+300kmで移動しているときをシミュレーションしたグラフである。図11(a)は、変調信号m(t)と混合波の振幅a(t,0)を示したグラフである。これを基に、スペクトル解析をして距離スペクトルの大きさを示したものが図11(b)である。図11(b)からもわかるように、距離スペクトルの大きさは、距離10mで大きなピーク値となっている。このことから、測定対象物が+300kmで移動しているときも、シミュレーション2−1と同様に正しい距離が測定できる。
【0079】
(シミュレーション2−3)
図12は、測定対象物6が混合波検出部3の位置から距離40m、時速−50kmで移動しているときをシミュレーションしたグラフである。図12(a)は、変調信号m(t)と混合波の振幅a(t,0)を示したグラフである。これを基に、スペクトル解析をして距離スペクトルの大きさを示したものが図12(b)である。図12(b)からもわかるように、距離スペクトルの大きさは、距離40mで大きなピーク値となっている。このことから、測定対象物の距離、移動速度及び移動方向が変わっても正しい距離が測定できる。
【0080】
(シミュレーション2−4)
図13は、2つの測定対象物6,6を測定している。一方の測定対象物6は、混合波検出部3の位置から距離5m、時速+100kmで移動し、他方の測定対象物6は、混合波検出部3の位置から距離12.5m、時速−300kmで移動しているときをシミュレーションしたグラフである。図13(a)は、変調信号m(t)と混合波の振幅a(t,0)を示したグラフである。これを基に、スペクトル解析をして距離スペクトルの大きさを示したものが図13(b)である。図13(b)からもわかるように、距離スペクトルの大きさは、距離5mと12.5mでそれぞれ大きなピーク値をとっている。このことから、測定対象物が複数であっても、正しい距離が測定できることがわかる。また、10m以下の近距離でも正しい距離を測定することができる。 さらに、定在波を利用した距離測定装置では、測定することが困難であった複数の測定対象物同士の距離が接近し、速度差が大きいときでも、各測定対象物の位置を正しく測定できる。
【0081】
前述のシミュレーション2−1〜2−4からもわかるように、測定対象物の速度にかかわらず、測定対象物の距離を測定することができる。さらに、複数の測定対象物同士の距離が接近し、速度差が大きいときでも各測定対象物の位置を正しく測定することができる。
【0082】
上述の説明では、1つの混合波検出部3で混合波を検出しているが、図14に示すように、複数の混合波検出部3,…,3をそれぞれ異なった位置xs1,…,xsNに配置してもよい。このように複数の混合波検出部3,…,3から検出された混合波VCは、各混合波検出部3で検出された混合波VC毎に包絡線検波器によって包絡線を検波することで混合波の振幅成分(振幅a(t,xsi)(iは、1,2,…,N,…))を検出し(S130)、検出された各振幅a(t,xsi)をAD変換器によってAD変換し(S131)、デジタル信号に変換された各振幅のなかから任意の2つの振幅(例えば、a(t,xs1)とa(t,xs2))の差を取ることにより、不要な直流成分(数式(8)の第1項)を除去し(S132)、不要な直流成分を除去した振幅a(t,xsi)毎にスペクトル解析し距離スペクトルを求め(S133)、各距離スペクトルを平均化した後に(S134)、距離スペクトルの大きさのピークから測定対象物までの距離を演算する(S135)。これらは、例えば、任意の2つの振幅の差を取って不要な直流成分を除去する直流成分除去手段と、複数の距離スペクトルの平均を演算する距離スペクトル平均化手段とを前記距離演算部5に備えさせることによって実現することができる。なお、直流成分の除去をアナログ回路(差動増幅器など)で行い、その後にAD変換を行ってもよい。
したがって、複数の混合波検出部3を設け、図14に示すような信号処理器を構成した場合、不要な直流成分の除去を行うことができる。また、各振幅a(t,xsi)から得られた距離スペクトルを平均化し、ノイズ成分を低減させ、より正確に距離を測定できる。
【実施例3】
【0083】
以下に、本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法の第3実施例の技術的概要を説明する。
(技術的概要3)
図15は、本願発明に係る距離測定装置の概略を説明するための説明図である。本願発明に係る距離測定装置は、信号源13から出力された信号が、送信部2から波動として測定対象物6に送信され、k番目の測定対象物6によって反射された反射波VRkと進行波VTとの混合波VCを混合波検出部3で検出し、この混合波VCを信号処理器14で処理し、測定対象物6までの距離を求めるものである。信号処理器14は、振幅成分検出部15、単一周波数選択部16、信号レベル検出部17、距離演算部18から構成し、前記振幅成分検出部15で混合波の振幅成分(a(t,xs))を検出し、前記単一周波数選択部16で特定の周波数fBの成分のみの信号(R(x(t)))を選択し、選択した信号の信号レベル(|R(x(t))|)を前記信号レベル検出部17で検出し、この信号レベルから測定対象物6までの距離を前記距離演算部18で測定する。
【0084】
信号源13は、第1変調信号によって予め周波数変調された第2変調信号で特定の周波数の搬送波を二重に周波数変調した信号(二重変調信号)を出力するものであり、常に2つ以上の周波数成分が含まれる信号を出力するものである。
【0085】
信号源13の具体例としては、図15に示すように、搬送波信号源13aと、第2変調信号源13bと、第1変調信号源13cとから信号源13を構成する。前記第1変調信号源13cは、特定の第1周期の第1変調信号x(t)を出力する。また、前記第2変調信号源13bは、第2変調信号m(t)を出力するものであり、該第2変調信号m(t)は、第2変調信号源13bで発振された特定の第2周期の周期信号を前記第1変調信号x(t)で周波数変調した信号である。前記搬送波信号源13aは、瞬時周波数f0+fD・m(t)の二重変調信号を出力するものであり、該搬送波信号源13aが発振した搬送波を前記第2変調信号m(t)で周波数変調する。
【0086】
つまり、本願発明における信号源13から出力される二重変調信号は、搬送波信号を第2変調信号m(t)で周波数変調したものであり、かつ、第2変調信号m(t)は第1変調信号x(t)で周波数変調したものである。よって、本願発明における二重変調信号は、搬送波信号を第2変調信号m(t)で周波数変調した後の信号を、第1変調信号x(t)で更に周波数変調したものでもなく、搬送波信号を第1変調信号x(t)で周波数変調した後の信号を、第2変調信号m(t)で更に周波数変調したものでもない。
【0087】
また、他の信号源13の具体例としては、図16(a)に示すように、信号源13を前記搬送波信号源13a(搬送波生成手段)、第2変調信号生成手段13d、第2変調信号記憶手段13eから構成する。前記第2変調信号記憶手段13eは、第2変調信号m(t)を出力するためのデータを記憶し、前記第2変調信号生成手段13dは、前記第2変調信号記憶手段13eに記憶されているデータを読み出し、第2変調信号m(t)を出力する。そして、搬送波信号源13aは、特定の周波数の搬送波を発振し、この搬送波を前記第2変調信号m(t)で周波数変調し、瞬時周波数f0+fD・m(t)の二重変調信号を出力する。
前記第2変調信号生成手段13dは、マイクロプロセッサ等によって構成されているが、予め記憶されているデータに基づいて第2変調信号を生成するだけなので、測定原理1及び2におけるフーリエ解析(周波数解析)で用いられるマイクロプロセッサに比べて低機能なプロセッサを使用することができ、低コストとすることができる。
【0088】
さらに、図16(b)に示すように、マイクロプロセッサを備えた二重変調信号生成手段13fと、瞬時周波数f0+fD・m(t)の二重変調信号を出力するためのデータを記憶させた二重変調信号記憶手段13gとによって構成し、該二重変調信号記憶手段13gに記憶されているデータを、該二重変調信号生成手段13fが読み出し、二重変調信号を生成するようにしてもよい。
前記二重変調信号生成手段13fもマイクロプロセッサを備えているが、フーリエ解析(周波数解析)で用いられるマイクロプロセッサより低機能なプロセッサを使用することができ、低コストとすることができる。
【0089】
送信部2は、信号源13から出力された信号を波動として送信するためのアンテナ(又は電極)等の双方向性素子である。信号源13と送信部2との間に混合波検出部3を配置する場合には、該送信部2が反射波を受信する役割を担ってもよい。前記送信部2は、前記信号源13から出力された周波数成分の波動を出力し、出力された波動が測定対象物6に送信される。
【0090】
なお、本願発明における進行波VTとは前記送信部2から送信される波動、及び信号源13から出力される信号を示す。
したがって、信号源13からの信号と送信部2を経由して返ってきた反射波の信号との混合波を前記混合波検出部3で検出する場合は、信号源13からの信号が進行波VTとなる。
【0091】
混合波検出部3は、前記進行波VTと前記反射波VRkとの混合波VCを検出するものである。この混合波検出部3は、信号源13と送信部2とをつなぐ給電線の途中に、信号源13から出力される進行波VTと送信部2を経由して返ってきた反射波VRkとの混合波VCを検出するための、方向性を持たない結合器を設けることによって構成することができる。また、進行波VTと反射波VRkとの混合波VCを検出するための受信用アンテナ(又は電極)を送信部2と測定対象物6との間の空間に設け、混合波検出部3とすることもできる。
【0092】
振幅成分検出部15は、前記混合波検出部3によって検出された混合波VCの振幅成分を検出するものであり、包絡線検波器、自乗検波器、同期検波器、直交検波器等の機器のいずれかによって構成される。
【0093】
前記単一周波数選択部16は、前記振幅成分検出部15によって検出された混合波VCの振幅成分の中から1つの周波数成分を選択するものであり、直交検波器やバンドパスフィルタ、マッチドフィルタ等の機器のいずれかによって構成される。
【0094】
前記信号レベル検出部17は、前記単一周波数選択部16によって得られた信号のレベルを検出するものであり、包絡線検波器、自乗検波器等の機器のいずれかによって構成される。また、信号レベル検出部17を、AD変換器、マイクロプロセッサ等によって構成し、前記単一周波数選択部16からの出力信号をAD変換し、マイクロプロセッサで信号レベルを演算することも可能である。
【0095】
前記距離演算部18は、前記信号レベル検出部17によって検出された信号レベルのピークに基づいて測定対象物6までの距離を演算するものである。
【0096】
(測定原理3)
以下に、本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法について、図15〜図19を用いてその測定原理を説明する。
【0097】
信号源13が、第1変調信号によって予め周波数変調された第2変調信号で特定の周波数の搬送波を二重に周波数変調して、瞬時周波数f0+fD・m(t)の二重変調信号を出力するとき、測定開始からの経過時間t、位置xにおける進行波VTは、以下の数式(20)で示す周波数変調された連続波となる。
【数20】

【0098】
ただし、tは測定開始からの経過時間、cは光速であり、Aは振幅、θは位相、x軸上の任意の一点をx=0としている。また、m(t)は、第2変調信号であり、図16及び以下の数式(21)で示す鋸波とする。
【数21】

ただし、[]は、その値を超えない最大の整数値を表す。m(t)は、図16に示すように周波数fm、最小値−1、最大値+1の鋸波である。
なお、図16で示した鋸波の復帰時間は0であるが、復帰時間を有する鋸波(つまり、三角波)であってもよい。
【0099】
x(t)は、m(t)の周波数fmを変化させるための第1変調信号であり、図17及び以下の数式(22)で表されるように、瞬時値が第1周期TでΔxずつ増加する階段状(ステップ状の)の信号とする。
【数22】

【0100】
つまり、x(t)=NΔx,(N=1,2,…)のとき、m(t)の周波数fmが、以下の数式(23)となるよう、m(t)を周波数変調する。
【数23】

【0101】
なお、x(t)を特定の第1周期TでΔxずつ増加する階段状の信号としているが、原理的にはx(t)をΔxずつ減少する階段状の信号としても同様である。以下では、x(t)をΔxずつ増加する階段状の信号について説明する。
【0102】
自明なことであるが、第1変調信号の第1周期Tは、第2変調信号の鋸波の周期(繰り返し時間)より長い。また、第2変調信号の鋸波の周期は、搬送波の周期より長い。
【0103】
k番目の測定対象物6の距離をdk、速度をvk、反射係数の大きさと位相をそれぞれγk,φkとすれば、その測定対象物6からの反射波VRkは、以下の数式(24)のように表すことができる。ただし、k=1,2…である。
【数24】

【0104】
このとき、x=xsの位置にある混合波検出部3で検出される混合波の信号VCは、以下の数式(25)のように表される。
【数25】

【0105】
そして、信号VCの振幅は以下の数式(26)で表される。
【数26】

【0106】
現実的に、反射波の大きさは非常に小さいと考えてよいので、γk≪1であり、γkの2次以上の項は、ほぼ0として無視し得る。したがって、以下の数式(27)のように近似できる。
【数27】

【0107】
ここで、tを十分小さくすることにより、vkt≒0とみなすことができれば、以下の数式(28)のように近似でき、速度vkの影響を除去できる。
【数28】

【0108】
さらに、以下の数式(29)
【数29】

として近似すれば、数式(28)は、以下の数式(30)となる。
【数30】

ただし、定数Aは本願発明においては、何ら情報を持たないので、A=1とした。
【0109】
x(t)=NΔxのとき、k番目のその測定対象物6に対応する振幅成分fkは、a(t,xs)の位相を微分して以下の数式(31)のように求められる。
【数31】

【0110】
x(t)=NΔxが測定対象物6と混合波検出部間の距離dk−xsに等しいとき、fkは以下の数式(32)で与えられる周波数fBとなる。
【数32】

【0111】
したがって、a(t,xs)を直交検波器やバンドパスフィルタ等の単一周波数選択部16を通し、周波数fBの成分のみを選択し、その信号レベルを検出すれば、x(t)=NΔxの距離に測定対象物6が存在するか否かを知ることができる。
【0112】
周波数fBの成分を選択するための単一周波数選択部16として、直交検波器を用いる場合、x(t)=NΔxにおける直交検波出力R(x(t))は、以下の数式(33)となる。
【数33】

なお、直交検波出力R(x(t))を距離スペクトルと称す。
【0113】
距離スペクトルR(x(t))のレベル(大きさ)は、その絶対値で表される。つまり、|R(x(t))|は、以下の数式(34)となる。
【数34】

【0114】
以上のように本願発明に係る距離測定装置及び距離測定方法では、進行波と測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出しているので、進行波と反射波を分離する必要がなく、簡易な構造とすることができ低コストで小さな距離測定装置を得ることができる。
また、異なった複数の周波数成分を有する進行波とその反射波との混合波から距離スペクトルを求めることで、その大きさのピークとなる距離から測定対象物と混合波検出部との間の距離を求めることができる。
定在波を利用して測定対象物までの距離を測定するときには、進行波の周波数を切り替えてから定在波ができる時間よりも観測時間を短くすることが原理的にできないため、ドップラー効果の影響を受けてしまい測定誤差が発生するが、本願発明では原理的に周波数切り替えの概念がなく、故にドップラー効果の影響をほとんど無視できる程度にまで観測時間を短くすることが可能となり、正確な距離を測定することができる。
また、スペクトル解析を高速で実行可能なマイクロプロセッサ等を使用することなく、包絡線検波器、自乗検波器、同期検波器、直交検波器、バンドパスフィルタ、マッチドフィルタ等の機器で信号処理器を構成し、距離スペクトルの大きさ(信号レベル)を検出しているので、マイクロプロセッサ等を使用した信号処理器と略同じ処理速度の信号処理器を低コストで得ることができる。つまり、低コストでも、信号処理速度の速い距離測定装置を得ることができるようになる。
【0115】
(シミュレーション3)
つぎに上述の測定原理3に基づいて、図19,21で示す距離測定装置でのシミュレーションを行う。
このシミュレーションでは、図19,21に示すように、周波数f0=24.1GHzの正弦波、最大周波数偏移fD=37.5MHz、第1変調信号の変調周期T=20μsec、第1変調信号の瞬時値の増加量Δx=0.2m、第2変調信号m(t)の周波数を決めるための定数η=1/75とし、瞬時周波数f0+fD・m(t)の信号を出力する。そして、送信部2から数式(20)で表される進行波VTが送信される。k番目の測定対象物6によって反射された反射波VRkと、前記進行波VTとの混合波VC(t,0)を混合波検出部3で検出する。検出された混合波VCに基づいて、信号処理器19(24)は測定対象物6の位置を演算する。
【0116】
(シミュレーション3−1)
図19は、信号処理器19を振幅成分を検出するための包絡線検波器20、周波数fB=1MHzの成分のみを選択するための直交検波器21、信号レベルを検出するレベル検出器22、距離演算部23から構成した距離測定装置の説明図である。
図20は、2つの測定対象物6,6が、d1=12m、d2=20mにそれぞれ位置し、d1=12mに位置する測定対象物6の反射係数γ1=0.01、位相φ1=πとし、d2=20mに位置する測定対象物6の反射係数γ2=0.01、位相φ2=πとし、シミュレーションをしたときの位置(x(t))と距離スペクトルの大きさ|R(x(t))|とを示したグラフである。図20からも分かるように、距離スペクトルの大きさは、12mと20mでピークとなっている。このことから、マイクロプロセッサ等の代わりに直交検波器等を用いても、正しい距離が測定できる。
【0117】
(シミュレーション3−2)
図21は、信号処理器24を振幅成分検出用包絡線検波器25、2つのバンドパスフィルタ26a,26b、信号レベル検出用包絡線検波器27、距離演算部28とから構成した距離測定装置の説明図である。
図22は、2つの測定対象物6,6が、d1=12m、d2=20mにそれぞれ位置し、d1=12mに位置する測定対象物6の反射係数γ1=0.01、位相φ1=πとし、d2=20mに位置する測定対象物6の反射係数γ2=0.01、位相φ2=πとし、バンドパスフィルタは、選択する周波数fB=1MHz、Q=20として、シミュレーションをしたときの位置(x(t))と距離スペクトルの大きさ|R(x(t))|とを示したグラフである。
図22からも分かるように、距離スペクトルの大きさは、12mと20mでピークとなっている。このことから、マイクロプロセッサ等の代わりにバンドパスフィルタ等を用いても、正しい距離が測定できる。本例では2つのバンドパスフィルタを直列接続しているが,バンドパスフィルタの数は2に限定されるものではなく、当然ながら必要に応じて任意の数を用いることができる。
【0118】
なお、上述の説明では、1つの混合波検出部3で混合波を検出しているが、複数の混合波検出部3,…,3をそれぞれ異なった位置に配置し、それらから検出された混合波に基づいて距離スペクトルを求め、測定対象物6の位置を計測することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】第1実施形態の距離測定装置の概略を説明したブロック図である。
【図2】第1実施形態において、シミュレーションを行う距離測定装置の説明図である。
【図3】第1実施形態において、距離10m、時速0kmの測定対象物の距離測定のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図4】第1実施形態において、距離10m、時速+300kmの測定対象物の距離測定のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図5】第1実施形態において、距離40m、時速−50kmの測定対象物の距離測定のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図6】第1実施形態において、距離5m、時速+100km、及び距離12.5m、時速−300kmの測定対象物の距離測定のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図7】第1実施形態において、複数の混合波検出部を備えた距離測定装置の説明図である。
【図8】第2実施形態の距離測定装置の概略を説明したブロック図である。
【図9】第2実施形態において、シミュレーションを行う距離測定装置の説明図である。
【図10】第2実施形態において、距離10m、時速0kmの測定対象物の距離測定のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図11】第2実施形態において、距離10m、時速+300kmの測定対象物の距離測定のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図12】第2実施形態において、距離40m、時速−50kmの測定対象物の距離測定のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図13】第2実施形態において、距離5m、時速+100km、及び距離12.5m、時速−300kmの測定対象物の距離測定のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図14】第2実施形態において、複数の混合波検出部を備えた距離測定装置の説明図である。
【図15】第3実施形態の距離測定装置の概略を説明したブロック図である。
【図16】第3実施形態における信号源の別実施例を説明したブロック図である。
【図17】第2変調信号の波形を説明したグラフである。
【図18】第1変調信号の波形を説明したグラフである。
【図19】第3実施形態において、直交検波器を用いた距離測定装置の説明図である。
【図20】第3実施形態において、直交検波器を用いた距離測定装置で、距離12m、及び距離20mの測定対象物の距離測定のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図21】第3実施形態において、バンドパスフィルタを用いた距離測定装置の説明図である。
【図22】第3実施形態において、バンドパスフィルタを用いた距離測定装置で、距離12m、及び距離20mの測定対象物の距離測定のシミュレーション結果を示したグラフである。
【図23】定在波を利用した距離測定装置における信号源の周波数についての説明図である。
【図24】定在波を利用した距離測定装置におけるドップラー効果の影響を説明した図である。
【符号の説明】
【0120】
1 信号源
2 送信部
3 混合波検出部
4 周波数成分分析部
5 距離演算部
6 測定対象物
7 信号処理器
8 ダウンコンバータ
8a 局部発振器
8b ミキサ
9 信号源
9a 搬送波信号源
9b 変調信号源
10 振幅成分検出部
11 距離演算部
12 信号処理器
13 信号源
13a 搬送波信号源
13b 第2変調信号源
13c 第1変調信号源
13d 第2変調信号生成手段
13e 第2変調信号記憶手段
13f 二重変調信号生成手段
13g 二重変調信号記憶手段
14 信号処理器
15 振幅成分検出部
16 単一周波数選択部
17 信号レベル検出部
18 距離演算部
19 信号処理器
20 包絡線検波器
21 直交検波器
22 レベル検出器
23 距離演算部
24 信号処理器
25 振幅成分検出用包絡線検波器
26 バンドパスフィルタ
27 信号レベル検出用包絡線検波器
28 距離演算部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物までの距離を測定する距離測定装置であって、
特定の帯域幅内において異なった複数の周波数成分を有する信号を出力する信号源と、
前記信号を波動として送信する送信部と、
前記送信部から送信された波動又は前記信号源から出力された信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信部から送信された波動が前記測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出する混合波検出部と、
前記混合波検出部により検出された混合波の周波数成分を分析する周波数成分分析部と、
前記周波数成分分析部によって分析されたデータをスペクトル解析することによって距離スペクトルを求め、測定対象物までの距離を演算する距離演算部と、
からなることを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記信号源は、それぞれが異なった単一周波数成分を発振する単一周波数発振器の複数と、前記複数の単一周波数発振器から発振された信号を合成する加算器からなる請求項1記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記信号源は、単一周波数成分を発振する単一周波数発振器と、前記単一周波数発振器から発振される信号に変調をかける変調器とからなる請求項1記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記信号源は、前記特定の帯域幅内の周波数成分を出力する雑音源からなる請求項1記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記周波数成分分析部は、前記混合波検出部により検出された混合波をデジタル信号に変換するAD変換器と、前記AD変換器からの出力データの周波数成分を分析し各周波数成分の大きさを演算する信号処理装置とからなる請求項1〜4のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記周波数成分分析部は、複数のバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタの出力レベルを検出するレベル検出器とからなる請求項1〜4のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項7】
前記距離演算部は、前記周波数成分分析部によって分析されたデータをフーリエ解析することによって距離スペクトルを演算する請求項1〜6のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項8】
前記混合波検出部の複数を異なった位置に備えてなり、
前記周波数成分分析部は、前記混合波検出部により検出された混合波毎に周波数成分を分析してなり、
前記距離演算部は、得られた複数の混合波の周波数成分分析データを用いて距離スペクトルを演算する請求項1〜7のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項9】
測定対象物までの距離を測定する距離測定方法であって、
特定の帯域幅内において異なった複数の周波数成分を有する信号を波動として送信し、
前記送信した波動又は前記信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信された波動が測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出し、
前記検出した混合波の周波数成分を分析し、
周波数成分分析によって分析されたデータをスペクトル解析することによって距離スペクトルを求め、測定対象物までの距離を演算することを特徴とする距離測定方法。
【請求項10】
測定対象物までの距離を測定する距離測定装置であって、
特定の周波数の搬送波を任意の周期信号で周波数変調した周波数変調信号を出力する信号源と、
前記周波数変調信号を波動として送信する送信部と、
前記送信部から送信された波動又は前記信号源から出力された周波数変調信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信部から送信された波動が測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出する混合波検出部と、
前記混合波検出部によって検出された混合波の振幅成分を検出する振幅成分検出部と、
前記振幅成分検出部によって検出された振幅成分をスペクトル解析することによって距離スペクトルを求め、測定対象物までの距離を演算する距離演算部と、
からなることを特徴とする距離測定装置。
【請求項11】
前記距離演算部は、前記振幅成分検出部によって検出された振幅成分をフーリエ解析することによって距離スペクトルを演算する請求項10記載の距離測定装置。
【請求項12】
前記混合波検出部の複数を異なった位置に備えてなり、
前記振幅成分検出部は、前記混合波検出部により検出された混合波毎に振幅成分を検出してなり、
前記距離演算部は、得られた複数の混合波の振幅成分データを用いて距離スペクトルを演算する請求項10又は11に記載の距離測定装置。
【請求項13】
測定対象物までの距離を測定する距離測定方法であって、
特定の周波数の搬送波を任意の周期信号で周波数変調した信号を波動として送信し、
前記送信された波動又は前記周波数変調した信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信された波動が前記測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出し、
検出した混合波の振幅成分を検出し、
前記振幅成分をスペクトル解析することによって距離スペクトルを求め、測定対象物までの距離を測定することを特徴とする距離測定方法。
【請求項14】
測定対象物までの距離を測定する距離測定装置であって、
第1変調信号によって予め周波数変調された第2変調信号で特定の周波数の搬送波を二重に周波数変調した二重変調信号を出力する信号源と、
前記二重変調信号を波動として送信する送信部と、
前記送信部から送信された波動又は前記信号源から出力された二重変調信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信部から送信された波動が測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出する混合波検出部と、
前記混合波検出部によって検出された混合波の振幅成分を検出する振幅成分検出部と、
前記振幅成分検出部によって検出された振幅成分から特定の1つの周波数成分を選択する単一周波数選択部と、
前記単一周波数選択部で得られた信号のレベルを検出する信号レベル検出部と、
前記信号レベル検出部によって得られた信号レベルから測定対象物までの距離を演算する距離演算部とからなることを特徴とする距離測定装置。
【請求項15】
前記信号源は、前記第1変調信号を生成する第1変調信号と、前記第1変調信号によって変調された前記第2変調信号と、前記搬送波のそれぞれを生成してなる、
又は、前記二重変調信号を予め記憶する二重変調信号記憶手段を備えてなる、
もしくは、前記第2変調信号を予め記憶する第2変調信号記憶手段と、前記搬送波を生成する搬送波生成手段とを備えてなる請求項14記載の距離測定装置。
【請求項16】
前記第1変調信号は、特定の第1周期で階段状に増加又は減少する波形を描いてなり、
前記第2変調信号は、前記第1周期より短い周期の鋸波を前記第1変調信号で変調したものである請求項14記載又は15記載の距離測定装置。
【請求項17】
測定対象物までの距離を測定するための距離測定方法であって、
第1変調信号によって予め周波数変調された第2変調信号で特定の周波数の搬送波を二重に周波数変調した二重変調信号を波動として送信し、
前記送信された波動又は前記二重変調信号のいずれか一方からなる進行波と、前記送信部から送信された波動が測定対象物によって反射された反射波との混合波を検出し、
検出した混合波の振幅成分を検出し、
前記振幅成分から特定の1つの周波数成分を選択し、
選択された周波数成分の信号のレベルを検出し、
前記信号レベルから測定対象物までの距離を測定することを特徴とする距離測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−93576(P2007−93576A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54485(P2006−54485)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000173706)財団法人雑賀技術研究所 (11)
【Fターム(参考)】