距離計測装置及び距離計測方法
【課題】計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる距離計測装置及び距離計測方法を提供する。
【解決手段】距離演算部26は、受光装置20で受光された反射光に基づいて、床面上の任意の点までの距離を演算する。姿勢検出部28は、距離演算部26により演算された任意の点までの距離に基づいて、姿勢角θを検出する。光源制御部24は、検出された姿勢角θと、演算された任意の点までの距離とに基づいて、任意の点の照射強度が任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、光源18から照射される光の強度を制御する。
【解決手段】距離演算部26は、受光装置20で受光された反射光に基づいて、床面上の任意の点までの距離を演算する。姿勢検出部28は、距離演算部26により演算された任意の点までの距離に基づいて、姿勢角θを検出する。光源制御部24は、検出された姿勢角θと、演算された任意の点までの距離とに基づいて、任意の点の照射強度が任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、光源18から照射される光の強度を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離計測装置及び距離計測方法に係り、特に、受光手段で受光された反射光に基づいて距離を計測する距離計測装置及び距離計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物に対して光を出射してから、対象物からの反射光を受光部で受光するまでの時間に基づいて対象物までの距離を計測するタイムオブフライト方式の距離画像センサを搭載し、この距離画像センサを用いて床面までの距離を計測する障害物検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−262009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の障害物検出装置では、距離画像センサから遠い床面部分からの反射光の強度は、近い床面部分からの反射光の強度より弱くなる。これは、受光された反射光の各々の強度は、光が投光されてから受光するまでの移動距離の2乗に反比例する等の理由による。これによって、受光された複数の反射光の強度に差が生じる。そのため、特許文献1に記載の障害物検出装置における距離画像センサは、計測範囲が狭くなり、また、計測精度が悪化する、という問題点がある。
【0004】
本発明は上記問題点を解決するために成されたもので、計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる距離計測装置及び距離計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る距離計測装置は、床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段と、前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の任意の点までの距離を演算する距離演算手段と、前記姿勢角を検出する姿勢角検出手段と、前記姿勢角検出手段で検出された姿勢角と、前記距離演算手段により演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する光源制御手段とを含んで構成されている。
【0006】
第1の発明に係る距離計測装置によれば、距離演算手段は、受光手段で受光された反射光に基づいて、床面上の任意の点までの距離を演算する。姿勢角検出手段は、姿勢角を検出する。光源制御手段は、検出された姿勢角と、演算された任意の点までの距離とに基づいて、任意の点の照射強度が任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、光源から照射される光の強度を制御する。これにより、遠い床面部分からの反射光の強度は、近い床面部分からの反射光の強度と差が小さくなる。従って、第1の発明に係る距離計測装置は、本構成を有していない場合と比較して、計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる。
【0007】
また、第1の発明に係る距離計測装置によれば、姿勢角が変動した場合であっても、その姿勢角を検出することができ、検出した姿勢角に基づいて適切に光源から照射される光の強度を制御することができる。
【0008】
また、第1の発明に係る距離計測装置において、前記光源制御手段は、更に、前記姿勢角検出手段で検出された姿勢角と、前記距離演算手段により演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する前に、前記所定の姿勢角における前記床面までの任意の点までの距離に基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御することができる。
【0009】
また、第1の発明に係る距離計測装置において、前記姿勢角検出手段は、前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離と、複数の候補姿勢角の各々の場合における前記計測手段から前記床面までの理論上の各々の距離とに基づいて、前記姿勢角を検出することができる。
【0010】
また、第2の発明に係る距離計測方法は、床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段の受光手段が前記反射光を受光し、前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の任意の点までの距離を演算し、前記姿勢角を検出し、検出された姿勢角と、演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する。
【0011】
第2の発明に係る距離計測方法では、受光手段で受光された反射光に基づいて、床面上の任意の点までの距離を演算する。そして、本距離計測方法では、演算された任意の点までの距離に基づいて、姿勢角を検出する。そして、本距離計測方法は、検出された姿勢角と、演算された任意の点までの距離とに基づいて、任意の点の照射強度が任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、光源から照射される光の強度を制御する。これにより、遠い床面部分からの反射光の強度は、近い床面部分からの反射光の強度と差が小さくなる。従って、第2の発明に係る距離計測方法は、計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる。
【0012】
また、第2の発明に係る距離計測方法によれば、姿勢角が変動した場合であっても、その姿勢角を検出することができ、検出した姿勢角に基づいて適切に光源から照射される光の強度を制御することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の距離計測装置及び距離計測方法によれば、計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の形態の距離計測装置10は、床面を走行する走行体16に搭載されている。
【0016】
距離計測装置10は、図2に示すように、床面から所定の高さH、例えば床面からの高さ0.5mの位置に、光源18から照射される光の光軸70と水平方向との成す角度が所定の姿勢角θ、例えば姿勢角30°で設置されている。
【0017】
距離計測装置10は、図3に示すように、制御装置14と、光源18と、受光装置20とを備えている。
【0018】
光源18は、図4に示すように、マトリックス状に配列された光を照射するLEDを複数個、例えば50〜60個含んで構成されている。各LEDは、以下で詳細を説明する光源制御部24からの制御によって、所定周波数、例えば20MHzの正弦波で強度変調された光を照射する。また、各LEDは、光源制御部24によって、照射する光の強度が制御される。
【0019】
受光装置20は、複数の受光素子を含んで構成されており、例えば、複数の画素を備えたCMOSセンサを含んで構成されている。受光装置20は、対象物22または床面からの反射光を受光する。
【0020】
制御装置14は、反射光一様化処理ルーチンを実行するプログラム、姿勢検出処理ルーチンを実行するプログラム、及び各種処理ルーチンを実行するプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM(図示せず)、プログラムをROMから読み出して実行するCPU(図示せず)、データを一時的に記憶するRAM(図示せず)、及びI/O(入出力)ポート(図示せず)を含んだマイクロコンピュータで構成されている。制御装置14は、光源制御部24、距離演算部26、姿勢検出部28、設置条件記憶部30、及び理論距離演算部32を備えている。
【0021】
光源制御部24は、姿勢検出部28によって検出された姿勢角と、距離演算部26によって演算された任意の点までの距離とに基づいて、光源18の各LEDから照射される光の強度を制御する。
【0022】
距離演算部26は、光源18から光が照射されてから対象物からの反射光が受光装置20で受光されるまでの時間に基づいて、対象物までの距離を受光装置20の受光素子毎に演算する。
【0023】
設置条件記憶部30には、候補姿勢角θ´が複数記憶されている。この候補姿勢角θ´は、走行体16が走行した際に距離計測装置10に振動が加わったことにより姿勢角θが所定の姿勢角θ(本実施の形態では、例えばθ=30°)からずれた場合に予想される距離計測装置10の姿勢角θを表す。例えば、本実施の形態では、予め距離計測装置10の姿勢角を30°として設置した場合に、走行体16が走行した際に姿勢角が最大で±5°ずれることが予想されるとする。このときには、設置条件記憶部30に、25°から35°までの、例えば1°毎の候補姿勢角θ´を記憶しておく。また、設置条件記憶部30には、床面から距離計測装置10までの高さH(例えば、0.5m)が記憶されている。
【0024】
理論距離演算部32は、設置条件記憶部30に記憶されている高さH及び候補姿勢角θ´を用いて、距離計測装置10の姿勢角θが各候補姿勢角θ´である場合の距離計測装置10から床面までの光源18の光軸70上における理論上の距離(理論距離)を演算する。
【0025】
姿勢検出部28は、距離演算部26で演算された、受光装置20の複数の受光素子のそれぞれの距離のうち、N個の受光素子のそれぞれに対応する距離と、理論距離演算部32によって演算された、候補姿勢角θ´毎の理論距離とに基づいて、距離計測装置10の姿勢角θを検出する。
【0026】
走行体16は、走行を制御する走行体制御部34を備えている。
【0027】
走行体制御部34は、距離演算部26で演算された受光素子毎の距離、姿勢検出部28によって検出された姿勢角θ等を用いて床面を検出する。そして、走行体制御部34は、検出した床面に対する障害物を検出する。そして、走行体制御部34は、検出した障害物に対応するように、走行体16の走行(例えば、移動速度及び移動方向)を制御する。
【0028】
次に、制御装置14のCPUが行う反射光一様化処理ルーチンについて図5を用いて説明する。なお、本実施の形態において、この反射光一様化処理ルーチンは、走行体制御部34からの信号に基づいて走行体16が所定距離を走行する毎に実行される。
【0029】
まず、ステップ100で、姿勢検出処理が実行される。
【0030】
この姿勢検出処理のルーチンについて図6を参照して説明すると、まずステップ200で、距離演算部26は、図7に示すように、光源18から照射された光の反射光を受光した受光装置20の複数の受光素子のうち、N個の受光素子の各々から床面m(i)(i=1、2、・・・、N)までの距離Lm(i)(i=1、2、・・・、N)を演算する。ここで、N個の受光素子についてはどのような方法で選んでもよく、受光装置20の複数の受光素子のうち、等間隔となるようにN個の受光素子を選んでもよい。なお、同図に図示されるθm(i)(i=1、2、・・・、N)は、床面m(i)の各々から反射されて受光装置20(P)まで到達する光と、床面との成す角度を表している。
【0031】
次のステップ202では、理論距離演算部32は、図8に示すように、設置条件記憶部30に記憶されている各候補姿勢θ´と高さHとから、距離計測装置10の姿勢角θが各候補姿勢角θ´である場合の距離計測装置10から床面までの光源18の光軸70上における理論距離Lr(θ´)(θ´=25、26、・・・、35)を下記の式(1)により演算する。
【0032】
Lr(θ´)=H/sinθ´・・・・・式(1)
なお、図8には、例として、候補姿勢角θ´が25°の場合(A)、候補姿勢角θ´が26°の場合(B)、候補姿勢角θ´が35°の場合(C)における理論距離Lr(25)、Lr(26)、Lr(35)が示されている。
【0033】
この結果、複数の候補姿勢角θ´の各々について、理論距離Lr(θ´)が演算される。
【0034】
次のステップ204では、姿勢角検出部28は、ステップ202で演算した理論距離Lr(θ´)(θ´=25、26、・・・、35)とステップ200で演算した距離Lm(i)(i=1、2、・・・、N)の各々とを比較して、比較結果に基づいたヒストグラムを作成する。具体的には、姿勢角検出部28は、各々の候補姿勢角θ´において、理論距離Lr(θ´)と複数の距離Lm(i)の各々との絶対値の差を示すN個の差分を算出する。そして、姿勢角検出部28は、算出したN個の差分のうち所定の閾値Q以下となる数を候補姿勢角θ´の点数として、θ´=25〜35の点数をそれぞれ算出する。(すなわち、|Lm(i)−Lr(θ)|≦Qとなる数を候補姿勢角θ´の点数として、θ´=25〜35の点数をそれぞれ算出する。)
【0035】
以上のステップ200〜ステップ204の処理により、図9に示すようなヒストグラムが作成される。このヒストグラムは、候補姿勢角θ´の点数が高くなるに従って、その候補姿勢角θ´が実際の姿勢角θである可能性が高いことを表す。
【0036】
次のステップ206では、姿勢角検出部28は、点数が最大の候補姿勢角θ´を現在の距離計測装置10の姿勢角θとして検出する。
【0037】
なお、図9に示すようなヒストグラムが作成された場合には、点数が最大である候補姿勢角θ´は29°であるので、姿勢角検出部28は、29°を現在の距離計測装置10の姿勢角θとして検出する。
【0038】
以上の姿勢角検出処理によって、距離計測装置10の実際の姿勢角θが検出される。
【0039】
次のステップ102では、光源制御部24は、光源18の各LEDの投射光強度比を決定する。具体的には、ステップ102で、光源制御部24は、図7に示すように、光源18から照射される光と床面との成す角度の最大の照射角度(θ+α)と、床面から距離計測装置10までの高さHとを用いて、光源18の照射範囲において、床面から反射された反射光を距離計測装置10の受光装置20が受光するまでの光の最短の移動距離PAを下記の式(2)によって演算する。
PA=H/sin(θ+α)・・・・・式(2)
【0040】
そして、光源制御部24は、光源18から照射される光と床面との成す角度の最小の照射角度(θ−α)と、床面から距離計測装置10までの高さHとを用いて、光源18の照射範囲において、床面から反射された反射光を距離計測装置10の受光装置20が受光するまでの光の最長の移動距離PBを下記の式(3)によって演算する。
PB=H/sin(θ−α)・・・・・式(3)
【0041】
さらに、光源制御部24は、床面m(1)、・・・、m(n)の各々から反射された反射光を距離計測装置10の受光装置20が受光するまでの光の移動距離Lm(1)、・・・、Lm(n)を下記の式(4)によって演算する。
Lm(k)=H/sin(θm(k))(k=1、2、・・・、n)・・・・・式(4)
【0042】
次のステップ104では、光源制御部24は、反射光の強度分布の差を所定値以下とするために、PからA、m(1)、・・・、m(n)、Bの各々に向けて照射する光の照射強度の比を決定する。例えば、光源制御部24は、光の強度はその光の移動距離の2乗に反比例するという事象に基づいて、ステップ102で演算した移動距離PA、PB、Lm(1)〜Lm(n)の比の関係を表す以下の式(5)における各値を2乗した以下の式(6)を光の照射強度の比として決定する。
【0043】
PA:Lm(1):・・・:Lm(n):PB
={sin(θ−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))}:{sin(θ−α)×sin(θm(2))×・・・×sin(θm(n))×sin(θ+α)}:・・・:{sin(θ−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n−1))×sin(θ+α)}:{sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))×sin(θ+α)}・・・・式(5)
(PA)2:(Lm(1))2:・・・:(Lm(n))2:(PB)2
={sin(θ−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))}2:{sin(θ−α)×sin(θm(2))×・・・×sin(θm(n))×sin(θ+α)}2:・・・:{sin(θ−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n−1))×sin(θ+α)}2:{sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))×sin(θ+α)}2・・・・式(6)
【0044】
次のステップ106では、光源制御部24は、PからA、m(1)、・・・、m(n)、Bの各々に向けて照射する光の照射強度の比が、距離の関数である上記の式(6)により得られた照射強度となるように、例えば、上記の式(6)が示す比となるように光源18から照射される光を制御する。すなわち、光源制御部24は、床面上の任意の点の照射強度がこの任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、例えば、床面上の任意の点の照射強度がこの任意の点までの距離の2乗に比例するように光源18から照射される光の強度を制御する。
【0045】
以上の反射光強度一様化処理によれば、図10(B)に示すように、光源制御部24は、PからA、m(1)、・・・、m(n)、Bの各々に向けて照射する光の照射強度の比が上記の式(6)と同様になるように光源18から照射される光の強度を制御する。これにより、図10(A)に示すように、反射光強度が一様でなく、距離が遠いほど小さくなっていた反射光の強度が、図10(C)に示すように、反射光の強度分布の差が所定値以下となる。そのため、距離計測装置10の受光装置20が受光する床面からの反射光の強度が一様化される。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態の距離計測装置10によれば、姿勢検出部28によって検出された姿勢角θと、床面上の任意の点であるm(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)とに基づいて、任意の点m(1)〜m(n)の照射強度が任意の点m(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)の関数により得られた照射強度となるように、例えば、距離Lm(1)〜Lm(n)の各々の2乗に比例するように、光源18から照射される光の強度を制御する。これにより、受光装置20で受光する反射光の強度分布の差が所定値以下となり、すなわち受光装置20で受光する反射光の強度が一様化される。この結果、本実施の形態の距離計測装置10は、計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる。
【0047】
また、本実施の形態の距離計測装置10は、姿勢角θが変動した場合であっても、その姿勢角θを検出できるので、検出した姿勢角θに基づいて適切に光源18から照射される光の強度を制御することができる。
【0048】
なお、上記で説明した姿勢検出処理ルーチンは、上述したステップ204及びステップ206に限定されるものではない。例えば、ステップ204及びステップ206において、姿勢検出部28は、理論距離Lr(θ´)と複数の距離Lm(i)の差分の絶対値の総和(Σ|Lr(θ´)−Lm(i)|)が最も小さくなる候補姿勢角θ´を現在の距離計測装置10の姿勢角θとして検出してもよい。
【0049】
また、本実施の形態において、距離計測装置10の姿勢角θを、光源18から照射される光の光軸70と水平方向との成す角度とする例について説明したが、光源18から照射される光の光軸70と鉛直方向との成す角度としてもよい。このとき、上記の説明で用いたsinθはsin(90−θ)として用いることができる。
【0050】
また、上記で説明した姿勢検出処理ルーチンのステップ200で、光源18から照射される光は、以下のようなものであってもよい。すなわち、図11に示すように、姿勢角θが設計時の所定の値(本実施の形態では30°)の場合に、光源18の照射範囲において、床面から反射された反射光を距離計測装置10の受光装置20が受光するまでの光の最短の移動距離PA、光の最長の移動距離PB、及び床面m(1)、・・・、m(n)の各々から反射された反射光を距離計測装置10の受光装置20が受光するまでの光の移動距離Lm(1)、・・・、Lm(n)を上記で説明した処理と同様に演算し、演算した移動距離PA、PB、Lm(1)〜Lm(n)の比の関係を表す以下の式(7)における各値を2乗した以下の式(8)を光の照射強度の比として決定する。
【0051】
PA:Lm(1):・・・:Lm(n):PB
={sin(30°−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))}:{sin(30°−α)×sin(θm(2))×・・・×sin(θm(n))×sin(30°+α)}:・・・:{sin(30°−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n−1))×sin(30°+α)}:{sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))×sin(30°+α)}・・・・式(7)
(PA)2:(Lm(1))2:・・・:(Lm(n))2:(PB)2
={sin(30°−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))}2:{sin(30°−α)×sin(θm(2))×・・・×sin(θm(n))×sin(30°+α)}2:・・・:{sin(30°−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n−1))×sin(30°+α)}2:{sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))×sin(30°+α)}2・・・・式(8)
【0052】
そして、光源制御部24は、PからA、m(1)、・・・、m(n)、Bの各々に向けて照射する光の照射強度の比が、上記の式(8)が示す比となるように光源18から照射される光の強度を制御するようにしてもよい。すなわち、光源制御部24は、ステップ106において、姿勢検出処理のステップ206で検出された姿勢角θと、床面上の任意の点であるm(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)とに基づいて、任意の点m(1)〜m(n)の照射強度が任意の点m(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)の各々の2乗に比例するように、光源18から照射される光の強度を制御する前に、ステップ200において、所定の姿勢角θ(本実施の形態では30°)における床面上の任意の点であるm(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)に基づいて、任意の点m(1)〜m(n)の照射強度が任意の点m(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)の2乗に比例するように、光源18から照射される光の強度を制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態における距離計測装置の配置位置を示す図である。
【図2】本実施の形態における距離計測装置の配置位置を示す図である。
【図3】本実施の形態を示す概略図である。
【図4】本実施の形態における光源を説明するための図である。
【図5】本実施の形態における制御装置のCPUが行う反射光一様化処理ルーチンのフローチャートを示す図である。
【図6】本実施の形態における制御装置のCPUが行う姿勢検出処理ルーチンのフローチャートを示す図である。
【図7】本実施の形態における光源からの光の照射範囲を示す図である。
【図8】本実施の形態における理論距離を説明するための図である。
【図9】本実施の形態における候補姿勢角のヒストグラムを示す図である。
【図10】本発明の効果を示す図である。
【図11】本実施の形態における光源から照射される光の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 距離計測装置
14 制御装置
18 光源
20 受光装置
24 光源制御部
26 距離演算部
28 姿勢検出部
30 設置条件記憶部
32 理論距離演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離計測装置及び距離計測方法に係り、特に、受光手段で受光された反射光に基づいて距離を計測する距離計測装置及び距離計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物に対して光を出射してから、対象物からの反射光を受光部で受光するまでの時間に基づいて対象物までの距離を計測するタイムオブフライト方式の距離画像センサを搭載し、この距離画像センサを用いて床面までの距離を計測する障害物検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−262009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の障害物検出装置では、距離画像センサから遠い床面部分からの反射光の強度は、近い床面部分からの反射光の強度より弱くなる。これは、受光された反射光の各々の強度は、光が投光されてから受光するまでの移動距離の2乗に反比例する等の理由による。これによって、受光された複数の反射光の強度に差が生じる。そのため、特許文献1に記載の障害物検出装置における距離画像センサは、計測範囲が狭くなり、また、計測精度が悪化する、という問題点がある。
【0004】
本発明は上記問題点を解決するために成されたもので、計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる距離計測装置及び距離計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る距離計測装置は、床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段と、前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の任意の点までの距離を演算する距離演算手段と、前記姿勢角を検出する姿勢角検出手段と、前記姿勢角検出手段で検出された姿勢角と、前記距離演算手段により演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する光源制御手段とを含んで構成されている。
【0006】
第1の発明に係る距離計測装置によれば、距離演算手段は、受光手段で受光された反射光に基づいて、床面上の任意の点までの距離を演算する。姿勢角検出手段は、姿勢角を検出する。光源制御手段は、検出された姿勢角と、演算された任意の点までの距離とに基づいて、任意の点の照射強度が任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、光源から照射される光の強度を制御する。これにより、遠い床面部分からの反射光の強度は、近い床面部分からの反射光の強度と差が小さくなる。従って、第1の発明に係る距離計測装置は、本構成を有していない場合と比較して、計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる。
【0007】
また、第1の発明に係る距離計測装置によれば、姿勢角が変動した場合であっても、その姿勢角を検出することができ、検出した姿勢角に基づいて適切に光源から照射される光の強度を制御することができる。
【0008】
また、第1の発明に係る距離計測装置において、前記光源制御手段は、更に、前記姿勢角検出手段で検出された姿勢角と、前記距離演算手段により演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する前に、前記所定の姿勢角における前記床面までの任意の点までの距離に基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御することができる。
【0009】
また、第1の発明に係る距離計測装置において、前記姿勢角検出手段は、前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離と、複数の候補姿勢角の各々の場合における前記計測手段から前記床面までの理論上の各々の距離とに基づいて、前記姿勢角を検出することができる。
【0010】
また、第2の発明に係る距離計測方法は、床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段の受光手段が前記反射光を受光し、前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の任意の点までの距離を演算し、前記姿勢角を検出し、検出された姿勢角と、演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する。
【0011】
第2の発明に係る距離計測方法では、受光手段で受光された反射光に基づいて、床面上の任意の点までの距離を演算する。そして、本距離計測方法では、演算された任意の点までの距離に基づいて、姿勢角を検出する。そして、本距離計測方法は、検出された姿勢角と、演算された任意の点までの距離とに基づいて、任意の点の照射強度が任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、光源から照射される光の強度を制御する。これにより、遠い床面部分からの反射光の強度は、近い床面部分からの反射光の強度と差が小さくなる。従って、第2の発明に係る距離計測方法は、計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる。
【0012】
また、第2の発明に係る距離計測方法によれば、姿勢角が変動した場合であっても、その姿勢角を検出することができ、検出した姿勢角に基づいて適切に光源から照射される光の強度を制御することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の距離計測装置及び距離計測方法によれば、計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の形態の距離計測装置10は、床面を走行する走行体16に搭載されている。
【0016】
距離計測装置10は、図2に示すように、床面から所定の高さH、例えば床面からの高さ0.5mの位置に、光源18から照射される光の光軸70と水平方向との成す角度が所定の姿勢角θ、例えば姿勢角30°で設置されている。
【0017】
距離計測装置10は、図3に示すように、制御装置14と、光源18と、受光装置20とを備えている。
【0018】
光源18は、図4に示すように、マトリックス状に配列された光を照射するLEDを複数個、例えば50〜60個含んで構成されている。各LEDは、以下で詳細を説明する光源制御部24からの制御によって、所定周波数、例えば20MHzの正弦波で強度変調された光を照射する。また、各LEDは、光源制御部24によって、照射する光の強度が制御される。
【0019】
受光装置20は、複数の受光素子を含んで構成されており、例えば、複数の画素を備えたCMOSセンサを含んで構成されている。受光装置20は、対象物22または床面からの反射光を受光する。
【0020】
制御装置14は、反射光一様化処理ルーチンを実行するプログラム、姿勢検出処理ルーチンを実行するプログラム、及び各種処理ルーチンを実行するプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM(図示せず)、プログラムをROMから読み出して実行するCPU(図示せず)、データを一時的に記憶するRAM(図示せず)、及びI/O(入出力)ポート(図示せず)を含んだマイクロコンピュータで構成されている。制御装置14は、光源制御部24、距離演算部26、姿勢検出部28、設置条件記憶部30、及び理論距離演算部32を備えている。
【0021】
光源制御部24は、姿勢検出部28によって検出された姿勢角と、距離演算部26によって演算された任意の点までの距離とに基づいて、光源18の各LEDから照射される光の強度を制御する。
【0022】
距離演算部26は、光源18から光が照射されてから対象物からの反射光が受光装置20で受光されるまでの時間に基づいて、対象物までの距離を受光装置20の受光素子毎に演算する。
【0023】
設置条件記憶部30には、候補姿勢角θ´が複数記憶されている。この候補姿勢角θ´は、走行体16が走行した際に距離計測装置10に振動が加わったことにより姿勢角θが所定の姿勢角θ(本実施の形態では、例えばθ=30°)からずれた場合に予想される距離計測装置10の姿勢角θを表す。例えば、本実施の形態では、予め距離計測装置10の姿勢角を30°として設置した場合に、走行体16が走行した際に姿勢角が最大で±5°ずれることが予想されるとする。このときには、設置条件記憶部30に、25°から35°までの、例えば1°毎の候補姿勢角θ´を記憶しておく。また、設置条件記憶部30には、床面から距離計測装置10までの高さH(例えば、0.5m)が記憶されている。
【0024】
理論距離演算部32は、設置条件記憶部30に記憶されている高さH及び候補姿勢角θ´を用いて、距離計測装置10の姿勢角θが各候補姿勢角θ´である場合の距離計測装置10から床面までの光源18の光軸70上における理論上の距離(理論距離)を演算する。
【0025】
姿勢検出部28は、距離演算部26で演算された、受光装置20の複数の受光素子のそれぞれの距離のうち、N個の受光素子のそれぞれに対応する距離と、理論距離演算部32によって演算された、候補姿勢角θ´毎の理論距離とに基づいて、距離計測装置10の姿勢角θを検出する。
【0026】
走行体16は、走行を制御する走行体制御部34を備えている。
【0027】
走行体制御部34は、距離演算部26で演算された受光素子毎の距離、姿勢検出部28によって検出された姿勢角θ等を用いて床面を検出する。そして、走行体制御部34は、検出した床面に対する障害物を検出する。そして、走行体制御部34は、検出した障害物に対応するように、走行体16の走行(例えば、移動速度及び移動方向)を制御する。
【0028】
次に、制御装置14のCPUが行う反射光一様化処理ルーチンについて図5を用いて説明する。なお、本実施の形態において、この反射光一様化処理ルーチンは、走行体制御部34からの信号に基づいて走行体16が所定距離を走行する毎に実行される。
【0029】
まず、ステップ100で、姿勢検出処理が実行される。
【0030】
この姿勢検出処理のルーチンについて図6を参照して説明すると、まずステップ200で、距離演算部26は、図7に示すように、光源18から照射された光の反射光を受光した受光装置20の複数の受光素子のうち、N個の受光素子の各々から床面m(i)(i=1、2、・・・、N)までの距離Lm(i)(i=1、2、・・・、N)を演算する。ここで、N個の受光素子についてはどのような方法で選んでもよく、受光装置20の複数の受光素子のうち、等間隔となるようにN個の受光素子を選んでもよい。なお、同図に図示されるθm(i)(i=1、2、・・・、N)は、床面m(i)の各々から反射されて受光装置20(P)まで到達する光と、床面との成す角度を表している。
【0031】
次のステップ202では、理論距離演算部32は、図8に示すように、設置条件記憶部30に記憶されている各候補姿勢θ´と高さHとから、距離計測装置10の姿勢角θが各候補姿勢角θ´である場合の距離計測装置10から床面までの光源18の光軸70上における理論距離Lr(θ´)(θ´=25、26、・・・、35)を下記の式(1)により演算する。
【0032】
Lr(θ´)=H/sinθ´・・・・・式(1)
なお、図8には、例として、候補姿勢角θ´が25°の場合(A)、候補姿勢角θ´が26°の場合(B)、候補姿勢角θ´が35°の場合(C)における理論距離Lr(25)、Lr(26)、Lr(35)が示されている。
【0033】
この結果、複数の候補姿勢角θ´の各々について、理論距離Lr(θ´)が演算される。
【0034】
次のステップ204では、姿勢角検出部28は、ステップ202で演算した理論距離Lr(θ´)(θ´=25、26、・・・、35)とステップ200で演算した距離Lm(i)(i=1、2、・・・、N)の各々とを比較して、比較結果に基づいたヒストグラムを作成する。具体的には、姿勢角検出部28は、各々の候補姿勢角θ´において、理論距離Lr(θ´)と複数の距離Lm(i)の各々との絶対値の差を示すN個の差分を算出する。そして、姿勢角検出部28は、算出したN個の差分のうち所定の閾値Q以下となる数を候補姿勢角θ´の点数として、θ´=25〜35の点数をそれぞれ算出する。(すなわち、|Lm(i)−Lr(θ)|≦Qとなる数を候補姿勢角θ´の点数として、θ´=25〜35の点数をそれぞれ算出する。)
【0035】
以上のステップ200〜ステップ204の処理により、図9に示すようなヒストグラムが作成される。このヒストグラムは、候補姿勢角θ´の点数が高くなるに従って、その候補姿勢角θ´が実際の姿勢角θである可能性が高いことを表す。
【0036】
次のステップ206では、姿勢角検出部28は、点数が最大の候補姿勢角θ´を現在の距離計測装置10の姿勢角θとして検出する。
【0037】
なお、図9に示すようなヒストグラムが作成された場合には、点数が最大である候補姿勢角θ´は29°であるので、姿勢角検出部28は、29°を現在の距離計測装置10の姿勢角θとして検出する。
【0038】
以上の姿勢角検出処理によって、距離計測装置10の実際の姿勢角θが検出される。
【0039】
次のステップ102では、光源制御部24は、光源18の各LEDの投射光強度比を決定する。具体的には、ステップ102で、光源制御部24は、図7に示すように、光源18から照射される光と床面との成す角度の最大の照射角度(θ+α)と、床面から距離計測装置10までの高さHとを用いて、光源18の照射範囲において、床面から反射された反射光を距離計測装置10の受光装置20が受光するまでの光の最短の移動距離PAを下記の式(2)によって演算する。
PA=H/sin(θ+α)・・・・・式(2)
【0040】
そして、光源制御部24は、光源18から照射される光と床面との成す角度の最小の照射角度(θ−α)と、床面から距離計測装置10までの高さHとを用いて、光源18の照射範囲において、床面から反射された反射光を距離計測装置10の受光装置20が受光するまでの光の最長の移動距離PBを下記の式(3)によって演算する。
PB=H/sin(θ−α)・・・・・式(3)
【0041】
さらに、光源制御部24は、床面m(1)、・・・、m(n)の各々から反射された反射光を距離計測装置10の受光装置20が受光するまでの光の移動距離Lm(1)、・・・、Lm(n)を下記の式(4)によって演算する。
Lm(k)=H/sin(θm(k))(k=1、2、・・・、n)・・・・・式(4)
【0042】
次のステップ104では、光源制御部24は、反射光の強度分布の差を所定値以下とするために、PからA、m(1)、・・・、m(n)、Bの各々に向けて照射する光の照射強度の比を決定する。例えば、光源制御部24は、光の強度はその光の移動距離の2乗に反比例するという事象に基づいて、ステップ102で演算した移動距離PA、PB、Lm(1)〜Lm(n)の比の関係を表す以下の式(5)における各値を2乗した以下の式(6)を光の照射強度の比として決定する。
【0043】
PA:Lm(1):・・・:Lm(n):PB
={sin(θ−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))}:{sin(θ−α)×sin(θm(2))×・・・×sin(θm(n))×sin(θ+α)}:・・・:{sin(θ−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n−1))×sin(θ+α)}:{sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))×sin(θ+α)}・・・・式(5)
(PA)2:(Lm(1))2:・・・:(Lm(n))2:(PB)2
={sin(θ−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))}2:{sin(θ−α)×sin(θm(2))×・・・×sin(θm(n))×sin(θ+α)}2:・・・:{sin(θ−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n−1))×sin(θ+α)}2:{sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))×sin(θ+α)}2・・・・式(6)
【0044】
次のステップ106では、光源制御部24は、PからA、m(1)、・・・、m(n)、Bの各々に向けて照射する光の照射強度の比が、距離の関数である上記の式(6)により得られた照射強度となるように、例えば、上記の式(6)が示す比となるように光源18から照射される光を制御する。すなわち、光源制御部24は、床面上の任意の点の照射強度がこの任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、例えば、床面上の任意の点の照射強度がこの任意の点までの距離の2乗に比例するように光源18から照射される光の強度を制御する。
【0045】
以上の反射光強度一様化処理によれば、図10(B)に示すように、光源制御部24は、PからA、m(1)、・・・、m(n)、Bの各々に向けて照射する光の照射強度の比が上記の式(6)と同様になるように光源18から照射される光の強度を制御する。これにより、図10(A)に示すように、反射光強度が一様でなく、距離が遠いほど小さくなっていた反射光の強度が、図10(C)に示すように、反射光の強度分布の差が所定値以下となる。そのため、距離計測装置10の受光装置20が受光する床面からの反射光の強度が一様化される。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態の距離計測装置10によれば、姿勢検出部28によって検出された姿勢角θと、床面上の任意の点であるm(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)とに基づいて、任意の点m(1)〜m(n)の照射強度が任意の点m(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)の関数により得られた照射強度となるように、例えば、距離Lm(1)〜Lm(n)の各々の2乗に比例するように、光源18から照射される光の強度を制御する。これにより、受光装置20で受光する反射光の強度分布の差が所定値以下となり、すなわち受光装置20で受光する反射光の強度が一様化される。この結果、本実施の形態の距離計測装置10は、計測範囲が広くなり、かつ計測精度が良好となる。
【0047】
また、本実施の形態の距離計測装置10は、姿勢角θが変動した場合であっても、その姿勢角θを検出できるので、検出した姿勢角θに基づいて適切に光源18から照射される光の強度を制御することができる。
【0048】
なお、上記で説明した姿勢検出処理ルーチンは、上述したステップ204及びステップ206に限定されるものではない。例えば、ステップ204及びステップ206において、姿勢検出部28は、理論距離Lr(θ´)と複数の距離Lm(i)の差分の絶対値の総和(Σ|Lr(θ´)−Lm(i)|)が最も小さくなる候補姿勢角θ´を現在の距離計測装置10の姿勢角θとして検出してもよい。
【0049】
また、本実施の形態において、距離計測装置10の姿勢角θを、光源18から照射される光の光軸70と水平方向との成す角度とする例について説明したが、光源18から照射される光の光軸70と鉛直方向との成す角度としてもよい。このとき、上記の説明で用いたsinθはsin(90−θ)として用いることができる。
【0050】
また、上記で説明した姿勢検出処理ルーチンのステップ200で、光源18から照射される光は、以下のようなものであってもよい。すなわち、図11に示すように、姿勢角θが設計時の所定の値(本実施の形態では30°)の場合に、光源18の照射範囲において、床面から反射された反射光を距離計測装置10の受光装置20が受光するまでの光の最短の移動距離PA、光の最長の移動距離PB、及び床面m(1)、・・・、m(n)の各々から反射された反射光を距離計測装置10の受光装置20が受光するまでの光の移動距離Lm(1)、・・・、Lm(n)を上記で説明した処理と同様に演算し、演算した移動距離PA、PB、Lm(1)〜Lm(n)の比の関係を表す以下の式(7)における各値を2乗した以下の式(8)を光の照射強度の比として決定する。
【0051】
PA:Lm(1):・・・:Lm(n):PB
={sin(30°−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))}:{sin(30°−α)×sin(θm(2))×・・・×sin(θm(n))×sin(30°+α)}:・・・:{sin(30°−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n−1))×sin(30°+α)}:{sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))×sin(30°+α)}・・・・式(7)
(PA)2:(Lm(1))2:・・・:(Lm(n))2:(PB)2
={sin(30°−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))}2:{sin(30°−α)×sin(θm(2))×・・・×sin(θm(n))×sin(30°+α)}2:・・・:{sin(30°−α)×sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n−1))×sin(30°+α)}2:{sin(θm(1))×・・・×sin(θm(n))×sin(30°+α)}2・・・・式(8)
【0052】
そして、光源制御部24は、PからA、m(1)、・・・、m(n)、Bの各々に向けて照射する光の照射強度の比が、上記の式(8)が示す比となるように光源18から照射される光の強度を制御するようにしてもよい。すなわち、光源制御部24は、ステップ106において、姿勢検出処理のステップ206で検出された姿勢角θと、床面上の任意の点であるm(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)とに基づいて、任意の点m(1)〜m(n)の照射強度が任意の点m(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)の各々の2乗に比例するように、光源18から照射される光の強度を制御する前に、ステップ200において、所定の姿勢角θ(本実施の形態では30°)における床面上の任意の点であるm(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)に基づいて、任意の点m(1)〜m(n)の照射強度が任意の点m(1)〜m(n)までの距離Lm(1)〜Lm(n)の2乗に比例するように、光源18から照射される光の強度を制御するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施の形態における距離計測装置の配置位置を示す図である。
【図2】本実施の形態における距離計測装置の配置位置を示す図である。
【図3】本実施の形態を示す概略図である。
【図4】本実施の形態における光源を説明するための図である。
【図5】本実施の形態における制御装置のCPUが行う反射光一様化処理ルーチンのフローチャートを示す図である。
【図6】本実施の形態における制御装置のCPUが行う姿勢検出処理ルーチンのフローチャートを示す図である。
【図7】本実施の形態における光源からの光の照射範囲を示す図である。
【図8】本実施の形態における理論距離を説明するための図である。
【図9】本実施の形態における候補姿勢角のヒストグラムを示す図である。
【図10】本発明の効果を示す図である。
【図11】本実施の形態における光源から照射される光の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
10 距離計測装置
14 制御装置
18 光源
20 受光装置
24 光源制御部
26 距離演算部
28 姿勢検出部
30 設置条件記憶部
32 理論距離演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段と、
前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の任意の点までの距離を演算する距離演算手段と、
前記姿勢角を検出する姿勢角検出手段と、
前記姿勢角検出手段で検出された姿勢角と、前記距離演算手段により演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する光源制御手段と、
を含む距離計測装置。
【請求項2】
前記光源制御手段は、更に、前記姿勢角検出手段で検出された姿勢角と、前記距離演算手段により演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する前に、前記所定の姿勢角における前記床面までの任意の点までの距離に基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する請求項1記載の距離計測装置。
【請求項3】
前記姿勢角検出手段は、前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離と、複数の候補姿勢角の各々の場合における前記計測手段から前記床面までの理論上の各々の距離とに基づいて、前記姿勢角を検出する請求項1または請求項2記載の距離計測装置。
【請求項4】
床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段の受光手段が前記反射光を受光し、
前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の任意の点までの距離を演算し、
前記姿勢角を検出し、
検出された姿勢角と、演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する
距離計測方法。
【請求項1】
床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段と、
前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の任意の点までの距離を演算する距離演算手段と、
前記姿勢角を検出する姿勢角検出手段と、
前記姿勢角検出手段で検出された姿勢角と、前記距離演算手段により演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する光源制御手段と、
を含む距離計測装置。
【請求項2】
前記光源制御手段は、更に、前記姿勢角検出手段で検出された姿勢角と、前記距離演算手段により演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する前に、前記所定の姿勢角における前記床面までの任意の点までの距離に基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する請求項1記載の距離計測装置。
【請求項3】
前記姿勢角検出手段は、前記受光手段の各受光素子の出力から演算された各々の距離と、複数の候補姿勢角の各々の場合における前記計測手段から前記床面までの理論上の各々の距離とに基づいて、前記姿勢角を検出する請求項1または請求項2記載の距離計測装置。
【請求項4】
床面上に変調光を照射する光源、及び前記光源から照射された光の反射光を受光する複数の受光素子が配列された受光手段を備え、前記床面から所定の高さの位置に前記床面に対して所定の姿勢角になるように設けられた計測手段の受光手段が前記反射光を受光し、
前記受光手段で受光された反射光に基づいて、前記床面上の任意の点までの距離を演算し、
前記姿勢角を検出し、
検出された姿勢角と、演算された任意の点までの距離とに基づいて、前記任意の点の照射強度が前記任意の点までの距離の関数により得られた照射強度となるように、前記光源から照射される光の強度を制御する
距離計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−298741(P2008−298741A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148271(P2007−148271)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]