説明

路車間通信システム、光ビーコン、車載機、及び車両

【課題】 ドライバに対する安全運転支援を精度よく行うことができる路車間通信システムを提供する。
【解決手段】 本発明の路車間通信システムは、通信領域を道路Rの所定範囲に設定する投受光器8を有する光ビーコンと、車両に搭載されるとともに、前記通信領域において投受光器8との間でアップリンク情報及びダウンリンク情報の送受信を行う車載機と、を備えている。投受光器8は、前記アップリンク情報を受光する受光面14aを有する受光部12を備えている。この受光部12は、受光面14aを道路R上に投影するようにアップリンク領域UAを設定するとともに、受光面14aにおける前記アップリンク情報を受光した受光位置に関する受光位置情報を出力する。光ビーコン4は、受光部12が出力する前記受光位置情報に基づいて、アップリンク領域UAにおいて前記車載機が前記アップリンク情報を送信した送信位置を示す車載機位置情報を生成し、この車載機位置情報を含んだ前記ダウンリンク情報を投受光器8に送信させる制御部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路側に設置された光ビーコンと車両に搭載された車載機との間で光信号による双方向通信を行う路車間通信システム、及び、この路車間通信システムに用いることができる光ビーコン、車載機、及び車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路車間通信システムを利用した交通情報サービスとして、光ビーコン、電波ビーコン又はFM多重放送を用いたいわゆるVICS(Vehicle Information and Communication System)が既に展開されている。このうち、光ビーコンは近赤外線を通信媒体とした光通信を採用しており、車載機との双方通信が可能となっている。
具体的には、車両の保持するビーコン間の旅行時間情報等を含むアップリンク情報が車載機からインフラ側の光ビーコンに送信され、逆に、渋滞情報、区間旅行時間情報、事象規制情報及び車線通知情報等を含むダウンリンク情報が光ビーコンから車載機に送信されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記光ビーコンは、車載機との間で双方向通信を行う投受光器を備えており、この投受光器は、ダウンリンク情報を送出する発光ダイオード(LED)と、車載機からのアップリンク情報を受光するフォトセンサとを備えている。
例えば図10に示すように、光ビーコン104の投受光器(投受光器)108は、その直下よりも上流側よりに通信領域Aが設定されている。光ビーコン(光学式車両感知器)104の「近赤外線式インタフェース規格」によれば、アップリンク領域UAは、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の上流部分(図10の右側部分)と重複しており、ダウンリンク領域DAとアップリンク領域UAの上流端は互いに一致するものとされている。また、実際に、現在設定されているダウンリンク領域DAの上流端は、アップリンク領域UAの上流端cよりも上流側(例えば、図10のc′)に設定されている場合が多い。
【0004】
従って、ダウンリンク領域DAの車両進行方向長さは通信領域A全体の同方向長さと一致する。また、上記規格によれば、一般道向けの光ビーコン104の場合で、ダウンリンク領域DAの下流端aは、投受光器108の直下の1.0〜1.3m上流側に位置し、ダウンリンク領域DAの下流端aからアップリンク領域UAの下流端bまでの距離は2.1mと規定され、アップリンク領域UAの下流端bから同領域UAの上流端cまでの距離は1.6mと規定されている。従って、この場合、通信領域Aの車両進行方向の全長は3.7mとなる。
【特許文献1】特開2005−268925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記路車間通信システムでは、光ビーコン104と車載機102との間で次のような通信が行われる。まず、光ビーコン104は、最初に、車線通知情報(車両ID無し)を含む第一のダウンリンク情報を道路のダウンリンク領域DAに所定の送信周期で常時送信する。
このダウンリンク領域DAに車両が進入することで、その車両に搭載された車載機102の投受光器(車載ヘッド)が第一のダウンリンク情報を受信すると、当該車載機102は、自己の車両IDを格納した車線通知情報を含むアップリンク情報の送信を開始する。
そして、上記アップリンク情報を光ビーコン104の投受光器108が受信すると、光ビーコン104は、ダウンリンクの切り替えを行い、車載機102に対して上記車両IDを有する車線通知情報を含む第二のダウンリンク情報の送信を開始する。この第二のダウンリンク情報は、所定時間内において可能な限り繰り返し送信され、車載機102において受信される。
【0006】
このような光ビーコンを用いた路車間通信システムにより、例えば、通信領域A内の特定位置(例えば車両進行方向の上流端)を車両(車載機102)の位置と見立て、当該特定位置からその下流側の所定位置としての停止線P0までの「距離情報」を第二のダウンリンク情報に含ませておき、この距離情報を受信した車載機102により、当該距離情報を利用して、停止線P0の手前で強制停止するように車両を制動させたり、ドライバに停止や減速を促す報知を行ったりして、ドライバに対して安全運転支援を行う場合がある(例えば、本願出願人が提案した特願2006−121692号及び特願2006−121700号)。
【0007】
しかし、このような安全運転支援を行う場合、次のような問題がある。
現在、実際に運用されている光ビーコン104の通信領域A、特にアップリンク領域UAは、車載機102からのアップリンク情報をより確実に受信するため、例えば図10に仮想線で示すように、前記規格で規定された正式な領域よりもかなり広い領域(例えば、△db′c′で示す領域)になっていることが多い。同様に、ダウンリンク領域DAについても前記規格の領域よりも広く設定されている場合が多い。
このように通信領域Aが正式な領域よりも広範であると、「距離情報」の始点となる通信領域A内の特定位置と、車両が前記距離情報を受信した時点における実際の位置との差が大きくなってしまう可能性が高く、距離情報の精度が低下する。このため、この距離情報を利用した安全運転支援の精度も同じように低下することになり、例えば、安全運転支援機能によって、停止線40の手前に停止させるように車両を制動したにも関わらず、停止線40をオーバーして車両が停止するといった事態が起こりうる。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、アップリンク領域の車両進行方向への広狭に関わらず、車載機において所定位置までの正確な距離を認識させることができ、ドライバに対する安全運転支援を精度よく行うことができる路車間通信システム、光ビーコン、車載機、及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、アップリンク情報を受光可能なアップリンク領域とダウンリンク情報を送信可能なダウンリンク領域とからなる通信領域を道路の所定範囲に設定する投受光器を有する光ビーコンと、車両に搭載されるとともに、前記通信領域において前記投受光器との間で前記アップリンク情報及び前記ダウンリンク情報の送受信を行う車載機と、を備えている路車間通信システムであって、前記投受光器は、前記アップリンク情報を受光する受光面を有する受光部を備え、この受光部は、前記受光面を前記道路上に投影するように前記アップリンク領域を設定するとともに、前記受光面における前記アップリンク情報を受光した受光位置に関する受光位置情報を出力するものであり、前記光ビーコンは、前記受光部が出力する前記受光位置情報に基づいて、前記アップリンク領域において前記車載機が前記アップリンク情報を送信した送信位置を示す車載機位置情報を生成し、この車載機位置情報を含んだ前記ダウンリンク情報を前記投受光器に送信させる制御部を備えていることを特徴としている。
【0010】
上記のように構成された路車間通信システム及び光ビーコンによれば、投受光器の受光部が受光面を道路上に投影するようにアップリンク領域を設定するものであり、この受光部が出力する受光位置情報に基づいて送信位置を示す車載機位置情報を生成するとともに、この車載機位置情報を含んだダウンリンク情報を投受光器に送信させる制御部を有しているので、光ビーコンは、アップリンク領域の広狭に関わらず、アップリンク領域において前記車載機がアップリンク情報を送信した送信位置を認識できるとともに、この送信位置を車載機に認識させることができる。
【0011】
さらに、前記車載機位置情報が、前記送信位置からその下流側の所定位置までの距離に関する距離情報を含んでいる場合には、車載機に所定位置までの正確な距離を認識させることができ、安全運転支援を精度よく行うことができる。
【0012】
ダウンリンク情報に含まれる距離情報は、前記送信位置からその下流側の所定位置までの距離そのものとしてもよいし、アップリンク領域の上流端から所定位置までの距離についての第一の距離情報と、前記送信位置からアップリンク領域の上流端までの距離についての第二の距離情報としてもよい。
【0013】
後者の場合、車載機には、前記第一の距離情報と前記第二の距離情報とから、前記送信位置から前記所定位置までの距離を求める距離認識部を備えていることが好ましい。
【0014】
どちらの場合においても、アップリンク領域において前記車載機が前記アップリンク情報を送信した位置からその下流側の所定位置までの距離を正確に認識することができる。
【0015】
また、前記路車間通信システム及び光ビーコンにおいて、前記制御部は、前記受光位置情報に基づいて、前記受光面を車両進行方向に対応する方向に並ぶ複数の受光領域に区分けすることで、前記アップリンク領域を車両進行方向に並ぶ複数の分割領域に分割し、前記複数の受光領域のいずれで受光したかを前記受光位置情報に基づいて特定することで、この特定した前記受光領域に対応する分割領域の位置からその下流側の所定位置までの距離に関する距離情報を含む前記車載機位置情報を生成するものであってもよい。
この場合、制御部は、分割領域の位置から所定位置までの距離に関する距離情報を、複数の分割領域それぞれについて予め用意しておくことで、選択的に距離情報を取得することができる。
【0016】
前記車載機は、前記所定のダウンリンク情報に基づいて前記所定位置までの距離を認識する距離認識部を有していることが好ましい。また、前記車載機は、車両進行方向下流側に設定された信号機の表示予定に関する信号情報を受信する信号情報受信部と、この信号情報と前記距離情報とに基づいて運転支援に関する制御を行う支援制御部とを有していることが好ましい。
この場合、例えば、信号機手前の停止線位置までの距離についての距離情報と、その信号機の灯色についての信号情報とから、車両が停止線に到着するときに信号機の灯色が何色であるか、ということを予測し、この予測に基づいた運転支援を行うことが可能となる。
【0017】
この支援制御部は、運転支援として車両を制動するための制御を行うことができる。これによって、例えば、車両が停止線に到着するときに信号灯色が赤色や黄色であると予測された場合に、車両を停止線で停止させることが可能となる。
また、支援制御部は、運転支援として、車両の搭乗者に対する報知情報を生成する機能を有していることが好ましい。これによって、例えば、車両が停止線に到着するときに信号灯色が赤色や黄色であると予測された場合に、車両を停止線で停止させる必要があることを搭乗者に認識させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アップリンク領域の車両進行方向への広狭に関わらず、車載機において所定位置までの正確な距離を認識させることができ、ドライバに対する安全運転支援を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔第一の実施形態〕
〔システムの全体構成〕
図1は、第一の実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この路車間通信システムは、インフラ側の交通管制システム1と、道路Rを走行する各車両Cに搭載された車載機2とを備えて構成されている。
交通管制システム1は、管制室に設けられた中央装置3と、道路Rの各所に多数設置された光ビーコン(光学式車両感知器)4と、を有している。光ビーコン4は、近赤外線を通信媒体とした光通信によって車載機2との間で双方向通信を行う。なお、中央装置3は交通管制室に設けられている。
【0020】
〔光ビーコンの構成〕
光ビーコン4は、電話回線等の通信回線5を介して中央装置3と接続された通信インタフェースである通信部6と、この通信部6が接続されたビーコン制御機7と、このビーコン制御機7のセンサ用インタフェースに接続された複数(図例では4つ)の投受光器8とを備えている。
図2は、上記光ビーコン4の平面図である。図2に示すように、本実施形態の光ビーコン4は、同じ方向の複数(図例では4つ)の車線R1〜R4を有する道路Rに設置されており、各車線R1〜R4に対応して前記複数の投受光器8が設けられている。
各投受光器8は、道路脇に立設した支柱9から道路R側に水平に架設した架設バー10に取り付けられ、道路Rの各車線R1〜R4の直上に配置されている。
【0021】
ビーコン制御機7は、投受光器8を一括制御する制御部しての機能を有しており、支柱9に設置されている。このビーコン制御機7は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなマイコンよりなり、通信部6(図1)による中央装置3との双方向通信と、投受光器8による車載機2との路車間通信を行う機能、及び、後述する車載機位置情報を生成する制御部としての機能を有する。なお、このビーコン制御機7によるこれらの機能については後述する。
【0022】
各投受光器8は、筐体の内部に発光ダイオード(LED)11、受光部12を収納して構成されている(図3参照)。このうち、LED11は、近赤外線よりなるダウンリンク情報を後述する通信領域Aに発光し、受光部12は、車載機2からの近赤外線よりなるアップリンク情報を受光する。
各投受光器8のLED11は、各車線R1〜R4の直下よりも車両進行方向の上流側に向けて近赤外線を発光しており、これにより、車載機2との間で路車間通信を行うための通信領域Aが投受光器8の上流側に設定されている。
【0023】
〔通信領域について〕
図3は、光ビーコン4の通信領域Aを示す側面図である。
図3に示すように、光ビーコン4の通信領域Aは、後述する車載機2の投受光器である車載ヘッド27(図4参照)がダウンリンク情報を受信することができるダウンリンク領域(図3において実線のハッチングを設けた領域)DAと、光ビーコン4の投受光器8が車載ヘッド27からのアップリンク情報を受信(受光)することができるアップリンク領域(図3において破線のハッチングを設けた領域)UAとからなる。
【0024】
ダウンリンク領域DAは、投受光器8の投受光位置d、道路R上の位置a及びcを頂点とする△dacで示された範囲に設定されている。また、アップリンク領域UAは、前記位置dと、道路R上の位置b及びcを頂点とする△dbcで示された範囲に設定されている。したがって、ダウンリンク領域DAとアップリンク領域UAの上流端cは互いに一致し、アップリンク領域UAは、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の上流部分(図3の右側部分)と重複している。また、ダウンリンク領域DAの車両進行方向長さは通信領域A全体の同方向長さと一致している。
【0025】
光ビーコン(光学式車両感知器)4の「近赤外線式インタフェース規格」によれば、ダウンリンク領域DA及びアップリンク領域UAの正式な領域寸法が規定されている。この規定では、一般道向けの光ビーコン4の場合で、ダウンリンク領域DAの下流端aは、投受光器8の直下の1.0〜1.3m上流側に位置し、ダウンリンク領域DAの下流端aからアップリンク領域UAの下流端bまでの距離は2.1mと規定されている。また、アップリンク領域UAの下流端bから同領域UAの上流端cまでの距離は1.6mと規定されている。したがって、正式な通信領域Aの車両進行方向の全長(ac間の長さ)は3.7mとなる。もっとも、各領域DA,UAの車両進行方向長さは上記各数値に限定されない。
【0026】
〔投受光器の受光部の構成〕
図4(a)は、受光部12と、道路R上に設定されるアップリンク領域UAとの幾何学的な位置関係を示した側面図である。
投受光器8の受光部12は、図4(a)に示すように、投受光器8の内部に配置された基板13上に実装された受光素子14と、この受光素子14に対して所定の寸法をおいて対向配置された集光レンズ15とを備えている。
受光素子14は、フォトダイオードチップ等よりなり、集光レンズ15を通過したアップリンク情報を受光面14aで受光すると光電変換によって、アップリンク情報に含まれる情報を電気信号として出力する。
【0027】
受光部12の集光レンズ15は、焦点FPが、当該集光レンズ15の斜め下方側に位置するように設定されており、車載機2から送信される赤外線光としてのアップリンク情報が通過すると、そのアップリンク情報を受光素子14の受光面14aに対して直交して照射するように集光、屈折させる。受光素子14は、集光レンズ15を通過して受光面14aに照射されたアップリンク情報を受光する。すなわち、受光素子14がアップリンク情報を受光することができるアップリンク領域UAは、受光素子14の受光面14aの輪郭形状を道路R上に、上下、左右両方向を180°反転させた形状で投影するように設定される。つまり、図4(a)において、受光面14aの上端縁14a1が、アップリンク領域UAの下流端である位置bに対応するとともに、下端縁14a2が、アップリンク領域UAの上流端である位置cに対応することとなる。
従って、例えば、車両Cが、アップリンク領域UA内の所定位置からアップリンク情報を送信したとすると、この送信されたアップリンク情報は、受光部12の受光面14a上において、幾何学的に定まる所定位置に照射されることとなる。
【0028】
図4(b)は、受光素子14の受光面14aを正面視したときの図である。なお、図において、車両進行方向に対応する紙面上下方向をx方向、道路Rの幅方向に対応する紙面左右方向をy方向とする。
図に示すように、受光面14aは、その輪郭形状が矩形とされている。車載機2のアップリンク情報は、集光レンズ15によって集光され、受光面14aにスポット的に照射されるので、受光素子14は、この受光面14aの範囲内の一部でアップリンク情報を受光する。
受光部12は、受光素子14とビーコン制御機7(図1)との間に介在して接続された制御部16をさらに有しており、受光素子14は、アップリンク情報を受光すると、アップリンク情報に格納された各種情報を電気信号として制御部16に対して出力する。制御部16は、この電気信号をビーコン制御機7へ出力する。
【0029】
さらに、この受光部12は、アップリンク情報に含まれる各種情報を電気信号として出力すると同時に、受光面14aのx方向におけるアップリンク情報を受光した受光位置に関する受光位置情報を出力することができる。
受光素子14は、受光面14aの上端縁14a1及び下端縁14a2に沿ってそれぞれ設けられた第一の出力電極17及び第二の出力電極18を有しており、これら両電極17,18、及び図示しない受光素子14全体としての共通電極が制御部16に対して接続されている。受光素子14は、これら各電極から、上述の各種情報を含んだ電気信号を制御部16に対して出力する。
【0030】
ここで、例えば、受光素子14がアップリンク情報を図中破線Qで示す範囲で受光したとすると、この受光位置から第一の出力電極17までの距離q1と、受光位置から第二の出力電極18までの距離q2とは、相違することとなる。このとき、受光素子14が出力する電気信号の電荷は、その距離に逆比例して分割され両出力電極17,18から出力される。電極に到達するまでの距離が相対的に長くなればその抵抗値も相対的に大きくなるからである。制御部16は、これら両出力電極17,18から出力される電流値の差を取得することで、受光面14aのx方向における受光位置を把握することができる。
なお、この受光素子14は、両側方側に出力電極が配置されていないので、y方向における受光位置を把握することはできない。
【0031】
制御部16は、受光面14aのx方向における受光位置に関する受光位置情報を、例えば、図中、基準線Sを基準としたx方向の座標値t1として出力するように構成されている。なお、この座標値t1は、基準線S上の値が0であり、紙面上方側でプラス、下方側でマイナスの値を採るように出力される。
制御部16は、上記アップリンク情報に格納された各種情報を含む電気信号とともに、この受光位置情報をビーコン制御機7に出力する。
【0032】
〔車載機がアップリンク情報を送信した送信位置の把握について〕
ビーコン制御機7は、受光部12の制御部16から出力される受光位置情報に基づいて車載機2がアップリンク領域UA内でアップリンク情報を送信した送信位置を把握することができる。
すなわち、図4(a)にて示したように、受光面14aの上端縁14a1が、アップリンク領域UAの下流端である位置bに対応するとともに、下端縁14a2が、アップリンク領域UAの上流端である位置cに対応しており、車載機2が、アップリンク領域UA内の所定の位置からアップリンク情報を送信したとすると、この送信されたアップリンク情報は、受光部12の受光面14a上において、幾何学的に定まる所定の位置に照射、受光される。
例えば、図4(a)中の点eから車載機2がアップリンク情報を送信し、この送信したアップリンク情報が、図4(b)中、受光面14a上の破線Qの部分で受光されたとした場合、位置cから位置eまでの距離D(図4(a))と、受光面14aにおける、距離Dに対応する距離q2(図4(b))との間には、下記式(1)に示すような関係が成立する。
D / L1 = (T / q2)× Z ・・・・(1)
【0033】
なお、上記式(1)中のTは受光面14aのx方向の幅寸法であり、L1はアップリンク領域UAの車両進行方向の距離である。また、Zは補正パラメータであり、受光面14aと、道路Rとは、図4(a)に示すように平行な関係ではないので、距離Dと距離q2との値の関係を補正するために乗じている。
また、距離q2は、座標値t1に基づいて下記式(2)によって求められる。なお、座標値t1は、上述のように、検出部12によって、受光位置情報として出力される。
q2 = (1/2)T + t1 ・・・・(2)
【0034】
以上のように、光ビーコン4を設置する際に、アップリンク領域UAの車両進行方向の距離L1、及び受光面14aの幅寸法Tを把握しておくことで、上記式(1)、(2)に基づいて、距離Dを求めることができる。
【0035】
ビーコン制御機7は、受光部12から出力される受光位置情報(座標値t1)を受け取ると、上記式(1)、(2)に基づいて演算し、車載機2がアップリンク領域UA内でアップリンク情報を送信した送信位置を、アップリンク領域UAの上流端である位置cを基準とした距離Dとして把握することができる。
ビーコン制御機7は、上記送信位置としての距離Dに基づいて車載機位置情報を生成し、これを第二のダウンリンク情報に格納して車載機2に送信する。
【0036】
〔車載機及び車両の構成〕
図5は、光ビーコン4と路車間通信する前記車載機2と、この車載機2が搭載された車両Cの概略構成図である。
図5に示すように、この車両Cは、ドライバの搭乗席(図示せず)を有する車体21と、この車体21に搭載された前記車載機2と、車両Cの各部を統合制御する電子制御装置(ECU)22と、車体21を駆動するエンジン23と、車体21を制動するブレーキ装置24と、車両Cの現時の速度を常時検出している速度検出器25とを備えている。ECU22は、ドライバのアクセル操作に基づくエンジン23の駆動制御や、ブレーキ操作に基づく制動制御等、車両Cに対する各種の制御を行う。
【0037】
車載機2は、車載コンピュータ26と、このコンピュータ26のセンサ用インタフェースに接続された車載ヘッド(投受光器)27と、搭乗席のドライバに対するヒューマンインタフェースとしてのディスプレイ28及びスピーカ装置29とを備えている。
上記車載ヘッド27は、光ビーコンの投受光器8と同様に、発光ダイオード(LED)とフォトセンサを備えている(図示せず)。このうち、LEDは、近赤外線よりなるアップリンク情報を発光し、フォトセンサは、通信領域Aに発光された近赤外線よりなるダウンリンク情報を受光する。
【0038】
車載コンピュータ26は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなマイコンよりなり、車載ヘッド27による光ビーコン4との路車間通信の制御処理を行う。
また、車載コンピュータ26は、所定の各機能を実行するプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムが実行する機能部として、距離認識部30及び支援制御部32を備えている。なお、これらの各機能部30,32の処理内容については後述する。
【0039】
〔路車間通信の内容〕
図6は、通信領域Aにおいて、投受光器8と車載ヘッド27との間で行われる双方向での路車間通信の手順を示している。以下、図5を参照しつつ、本実施形態の路車間通信の内容を説明する。
まず、光ビーコン4のビーコン制御機7は、各車線R1〜R4に対応する投受光器8から、ダウンリンクの切り替え前の第一情報として、車線通知情報を含む第一のダウンリンク情報34を、各車線R1〜R4のダウンリンク領域DAに所定の送信周期で常に送信し続けている(図6のF1)。なお、この段階では、車線通知情報には未だ車両IDは格納されていない。
【0040】
車載機2を搭載した車両Cが実際のダウンリンク領域DAに進入すると、車載機2の車載ヘッド27が車線通知情報(車両ID無し)を含む第一のダウンリンク情報34を受信する。
この際、車載機2の車載コンピュータ26は、当該車両Cが実際の通信領域A内に存在していることを認識する。その後、車載コンピュータ26は、アップリンク情報35の送信を開始し(図6のF2)、このアップリンク情報35を投受光器8に対して所定の送信周期(アップリンク送信周期)で送信する(図6のF3)。
【0041】
車載コンピュータ26は、車両Cに特定の車両IDを上記アップリンク情報35に格納して当該アップリンク情報35を送信し、ビーコン間の旅行時間情報を有している場合には、この情報もアップリンク情報35に含ませる。また、車載コンピュータ26は、光ビーコン4のビーコン制御機7がダウンリンクの切り替えを行ったことを認識するまで、当該アップリンク情報35を送信し続ける。
【0042】
一方、光ビーコン4の投受光器8がアップリンク情報35受光すると(図6のF4)、ビーコン制御機7は、ダウンリンクの切り替えを行い、第二情報として、車両ID情報を有する車線通知情報を含む第二のダウンリンク情報36の送信を開始し(図6のF5)、この第二のダウンリンク情報36の送信を所定時間内において可能な限り繰り返す(図6のF6)。
【0043】
上記車線通知情報には、車線R1〜R4(図2)ごとに車両IDを格納するフィールドがあり、各車両IDに対して車線番号を付与することができる。このため、異なる車線R1〜R4を走行する各車両Cの車載コンピュータ26は、その格納フィールド内のいずれに自車両の車両IDが含まれるかを判断することにより、自車両がどの車線R1〜R4を走行しているかを認識できる。
【0044】
第二のダウンリンク情報36には、車両IDを含む車線通知情報の他に、渋滞情報、区間旅行時間情報、事象規制情報、及び、ドライバに対する安全運転支援のための支援情報等が含まれている。
この支援情報には、光ビーコン4より下流側の信号機の灯色が変わるタイミング情報である信号情報の他、後述する車載機位置情報等が含まれている。
【0045】
図6に示すように、第二のダウンリンク情報36は、単一又は複数の最小フレーム37で構成されている。前記「近赤外線式インタフェース規格」によれば、この最小フレーム37のデータ量は合計128バイトと規定され、ヘッダ部38に5バイト、実データ部39に123バイトが割り当てられている。
前記規格によれば、第二のダウンリンク情報36は、1〜80個の最小フレーム37で構成することができ、送信可能時間は250msに設定されている。また、このダウンリンク情報36は送信すべき情報量に対応した任意数の最小フレーム37で構成され、上記送信可能時間の範囲内で繰り返し送信される。
【0046】
最小フレーム37の送信周期は約1msである。従って、例えば、三つの最小フレーム37で一つのダウンリンク情報36を構成する場合には、ダウンリンク情報36の送信周期は約3msになるので、当該ダウンリンク情報36は所定の送信可能時間(250ms)の間に約80回繰り返して送信されることになる。
車載機2の車載コンピュータ26は、第二のダウンリンク情報36を受信した時点(図6のF7)で光ビーコン4でのダウンリンクの切り替えを認識し、この時点でアップリンク情報35の送信を停止する。
【0047】
車載機2の車載コンピュータ26は、受信した第二のダウンリンク情報36に含まれる前記支援情報等の各種情報に基づいて、車両Cの現状の位置からその下流側の所定位置としての停止線P0までの距離を認識して位置標定を行い(図6のF8)、これに基づいて、ドライバに対する安全運転支援を行う。
以下、上述の車載機位置情報の内容と、これに基づいて車載機2が行う安全運転支援のための距離認識について説明する。
【0048】
〔車載機位置情報について〕
車載機位置情報は、アップリンク領域UAにおいて車載機2がアップリンク情報を送信した送信位置を示す情報であり、光ビーコン4が車載機2からのアップリンク情報を受光した段階で、ビーコン制御機7によって生成される。
例えば、図3中のアップリンク領域UA内の位置Pに位置する車両C(車載機2)がアップリンク情報35を送信し、光ビーコン4がこれを受光した場合、投受光器8の受光部12は、上述したように、ビーコン制御機7に対して受光位置情報を出力する。これを受け取ったビーコン制御機7は、アップリンク領域UAにおいて車載機2がアップリンク情報を送信した送信位置である位置Pを、アップリンク領域UAの上流端である位置cを基準とした距離Dとして把握する。
【0049】
ビーコン制御機7は、アップリンク領域UAの上流端である位置cから、その下流側の所定位置としての停止線P0までの距離L0、及び道路R上におけるアップリンク領域UAの車両進行方向の距離L1を予め記憶装置に記憶しており、これら距離L0、L1、及び上記距離Dに基づいて、車載機2の位置Pから下流側の停止線P0までの距離L2を距離情報として算出する。
ビーコン制御機7は、算出した前記距離情報を車載機位置情報として、第二のダウンリンク情報に格納して投受光器8に送信させる。
車載機2は、投受光器8から送信された、車載機位置情報を含んだ第二のダウンリンク情報を受信し、車載機位置情報を取得することで、安全運転支援を行う。
【0050】
このように、ビーコン制御機7は、受光部12が出力する前記受光位置情報に基づいて、前記送信位置である位置Pを示す車載機位置情報を生成し、この車載機位置情報を含んだダウンリンク情報を投受光器8に送信させる制御部を構成している。
【0051】
〔距離認識(安全運転支援)の内容〕
図5に示すように、上記車載機位置情報等を含む第二のダウンリンク情報36を車載ヘッド27が受信すると、車載コンピュータ26の距離認識部30は、そのダウンリンク情報36のフレームに含まれている車載機位置情報を取得して、前記距離情報としての距離L2を認識する。
そして、車載コンピュータ26の支援制御部32は距離L2を利用して、ドライバに対する安全運転支援を行う。
なお、ここで、車両Cに搭載された車載機2は、図3に示すように、道路R上から高さ寸法Hを有している。また、車載機2の車載ヘッド27は、通常ダッシュボード上に固定されるので、車載ヘッド27は車両Cの前方端から幅寸法D2だけ後方に配置される。このため、これら高さ寸法H、幅寸法D2によって、上記距離L2に誤差が生じるおそれがあるが、車載コンピュータ26は、これら高さ寸法H、及び幅寸法D2を予め記憶しておくことで、これら寸法に起因する誤差を補正し、より正確な距離L2を取得することができるように構成されている。
【0052】
例えば、支援制御部32は、停止線P0までの距離L2と現時点の車両Cの走行速度とから、その停止線P0の手前で停止するための減速度(負の加速度)を算出し、その減速度をECU22に通知する。ECU22は、当該減速度となるようにブレーキ装置24を作動させ、これにより、車両Cを停止線P0の手前で自動停止させることができる。
【0053】
また、支援制御部32の安全運転支援としては、ディスプレイ28やスピーカ装置29を用いたドライバに対する注意喚起であってもよい。
例えば、支援制御部32により、停止線P0までの距離L2をディスプレイ28に表示させてもよい。また、現時の車両Cの走行速度が速すぎる場合には、支援制御部32により、停車や減速を促す注意喚起をディスプレイ28に表示させたり、その注意喚起をスピーカ装置29から音声出力させたりしてもよい。
【0054】
また、支援制御部32は、前記車載機位置情報と共に、第二のダウンリンク情報に含まれる信号情報を用いて安全運転支援を行うこともできる。
ここで、信号情報とは、交通信号機が表示する現在又は将来の信号灯色に関する情報を指し、各信号灯色の表示継続予定期間や表示する順序等に関する情報(表示予定情報)等を含む。例えば、「現在灯色が青信号で継続予定時間が5秒であり、次の灯色が黄信号で継続予定時間が8秒であり、その次の灯色が右折青矢印灯で継続予定時間10秒である」といった情報である。
【0055】
この信号情報を受信した車載コンピュータ27の支援制御部32は、停止線P0までの距離L2(前述の距離情報)と車両Cの走行速度や加速度等から、停止線P0に到着するまでの所要時間を推定した上で、当該所要時間経過後の信号灯色を推定することができる。そして、例えば、現在の信号灯色は青信号であるが、停止線P0に到着する時点で信号灯色が赤信号と予測されるような場合には、安全に停止線P0の手前で停止することができるように、車両Cを制動するための制御を行う。逆に、減速しなければ安全に交差点を通過できると判断できるような場合には、車両Cの速度を維持するための制御を行うことができる。
【0056】
車両Cを制動したり速度を維持したりするため、支援制御部32は、車両のブレーキ装置24(図5)やアクセルに対して直接的に制御を行ってもよい。また、支援制御部32では単に制動や速度維持に関する情報を生成し、その情報をECU22に通知することによってECU22でブレーキ装置24やアクセルを制御するものであってもよい。すなわち、支援制御部32は、間接的な制御を行うものであってもよい。
【0057】
また、支援制御部32は、車載装置の主導による制御のみならず、ブレーキアシストなど、ドライバの運転動作を補助する動作をしても良い。
【0058】
支援制御部32は、車両Cの搭乗者に対して、信号灯色の推定の結果を音声や画像情報によって通知するようにしても良い。例えば、「間もなく信号が変わるので停止すべきである」といった内容の音声をスピーカ装置29からドライバに向けて発したり、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション装置等のディスプレイ28に文字や図柄で表示したりすることができる。
安全運転の支援については、不適切なタイミングや内容でドライバに情報を通知することのないようなヒューマンインタフェースとするため、例えば低速走行時には音声や画像表示による報知を行わないようにすることができる。
【0059】
なお、信号情報は、現在表示している灯色とその継続時間だけとしても良いし、1サイクル分の情報をまとめて提供するようにしても良い。また、これらの情報に加えて、地点感応制御を実施している地点では、当該制御に関するパラメータ情報や制御を実施する時間帯の情報等を含ませても良い。
また、信号情報は、光ビーコンから取得するものであってもよいし、光ビーコン以外のインフラ装置等から取得するものであってもよい。後者の場合、例えば、信号機の信号制御機が無線通信機を備えている場合には、当該無線通信機から取得してもよいし、前記信号情報を取得した先行車両から車々間通信によって取得してもよい。信号情報を受信する信号情報受信部は、車載ヘッド27を用いてもよいし、車載機2に備えた別の受信器であってもよい。
【0060】
上記のように構成された路車間通信システム及び光ビーコン4によれば、ビーコン制御機7が、投受光器8の受光部12が出力する受光位置情報に基づいて、送信位置である位置Pを示す車載機位置情報を生成するとともに、この車載機位置情報を含んだ第二のダウンリンク情報を投受光器8に送信させるので、光ビーコン4は、アップリンク領域UAの広狭に関わらず、アップリンク領域UAにおいて車載機2がアップリンク情報を送信した送信位置(位置P)を認識できるとともに、この送信位置を車載機2に認識させることができる。
さらに、本実施形態では、前記車載機位置情報が、前記送信位置からその下流側の停止線P0までの距離L2を距離情報として含んでいるので、車載機2に停止線P0までの正確な距離を認識させることができ、安全運転支援を精度よく行うことができる。
【0061】
また、本実施形態において、ビーコン制御機7は、車載機位置情報として、車載機2の送信位置である位置Pから停止線P0までの距離L2を算出したが、例えば、アップリンク領域UAの上流端である位置cから停止線P0までの距離L0を第一の距離情報とし、位置Pと、位置cとの間の距離Dを第二の距離情報とし、これら両距離情報を車載機位置情報として送信してもよい。
この場合、上記車載機位置情報を受信した車載機2の距離認識部30は、距離L0からDを差し引く演算を行い、この演算により求められる、送信位置(位置P)からその下流側の停止線P0までの距離L2を利用することで、上記と同様にドライバに対する安全運転支援を行うことができる。
【0062】
〔第二の実施形態〕
図7は、本発明の第二の実施形態の光ビーコン4の通信領域Aを示す側面図である。
本実施形態と第一の実施形態と異なる点は、ビーコン制御機7が、受光部12から出力される受光位置情報について、4つの数値範囲に分け、この数値範囲ごとに車両Cの位置を判断することで、アップリンク領域UAを実質的に4つの領域に分割されている点である。その他の点については、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0063】
本実施形態のアップリンク領域UAは、図7に示すように、アップリンク領域UAが、実質的に4つの分割領域UA1〜UA4に分割されており、ビーコン制御機7は、これら分割領域UA1〜UA4のいずれに車両Cが存在しているか否かを特定する。各分割領域UA1〜UA4には、その分割領域に車両Cが存在した場合に、当該車両Cが位置しているとみなされる各位置P1〜P4から停止線P0までのそれぞれの距離L11〜L14が設定され、ビーコン制御機7は、これら距離L0、及び距離L11〜L14を記憶している。
【0064】
図8は、本実施形態の受光部12の受光面14aを正面視したときの図である。ビーコン制御機7は、上述のように、受光部12から出力される受光位置情報について、4つの数値範囲に分け、この数値範囲ごとに車両Cの位置を判断する。
例えば、図8に示すように、受光面14aをx方向(車両進行方向)に沿って、幅T1ごとに4つの領域19a〜19dとなるように、上記数値範囲は設定される。なお、これら4つの領域19a〜19dは、それぞれ上記分割領域UA1〜UA4と対応している。
ここで、受光位置情報は、基準線Sを基準とした座標値t1として出力されるが、受光面14a上、基準線S上の値が0であり、紙面上方側でプラス、下方側でマイナスの値を採るように出力される。従って、座標値t1の数値範囲は、下記のように定められる。
領域19a : t1 ≦ −T1
領域19b : −T1 < t1 ≦ 0
領域19c : 0< t1 ≦ T1
領域19d : t1 > T1
【0065】
ビーコン制御機7は、上記4つの数値範囲を記憶しており、受光部12から出力される受光位置情報が、上記4つの数値範囲の内、どの数値範囲に属するかを特定することで、上記分割領域UA1〜UA4のいずれに車両Cが存在しているか否かを特定する。
以上のようにして、ビーコン制御機7は、受光位置情報の数値に基づいて、受光面14aを車両進行方向に対応する方向に並ぶ4つの領域19a〜19dに、実質的に区分けすることで、アップリンク領域UAを車両進行方向に並ぶ4つの分割領域UA1〜UA4に分割している。
車両Cが存在する分割領域を特定すると、ビーコン制御機7は、その特定された分割領域に対応する距離を上記距離L11〜L14の中から選択し、車載機位置情報として、第二のダウンリンク情報に格納し、車載機2に送信する。
車載機2は、この車載機位置情報を含んだ第二のダウンリンク情報を受信し、車載機位置情報を取得することで、安全運転支援を行うことができる。
【0066】
本実施形態においては、ビーコン制御機7は、上記分割領域ごとに対応した距離に関する情報を予め用意しておくことで、選択的に距離情報を取得することができる。
また、アップリンク領域UAを実質的に4つの分割領域UA1〜UA4に分割したので、例えば、設置環境等、外的な要因で、受光部12の受光位置情報に誤差が生じやすい場合においても、各分割領域UA1〜UA4、及び領域19a〜19dには、所定の数値幅を有しているので、その誤差を許容し、正確な距離等の情報を車載機2に提供することができる。
【0067】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態における受光素子14は、x方向のみについての受光位置情報を出力するものを用いたが、両側方側にも出力電極が配置され、x方向及びy方向の両方についての受光位置情報を出力することができる受光素子を用いてもよい。
また、受光部12は、受光位置情報を、基準線S(図4(b)参照)を基準とした座標値として出力したが、例えば、アップリンク領域UAの上流端に対応する下端縁14a2を基準とした値として出力するように構成してもよい。なお、この場合、式(1)、(2)等については、これに準じて変更されることは言うまでもない。
【0068】
また、上記実施形態では、ビーコン制御機7が、アップリンク領域UAの上流端である位置cから、その下流側の所定位置としての停止線P0までの距離L0、及び道路R上におけるアップリンク領域UAの車両進行方向の距離L1を予め記憶装置に記憶しておくことで、道路R上の位置としてのアップリンク領域UAと、受光部12の受光面14a上の位置とを、関連づけて車載機位置情報を生成したが、例えば、ビーコン制御機7は、受光部12から受け取る受光位置情報と、それに対応する道路上の緯度経度とを関連づけて生成するように構成してもよい。
この場合、停止線P0までの距離を緯度経度から算出することができる。なお、この場合、必要となる下流側の停止線P0の位置を示す緯度経度は、ビーコン制御機7が記憶しておきダウンリンク情報に含めて送信してもよいし、他の無線通信機から別途送信してもよいし、車載機2の車載コンピュータ26が予め記憶しておいてもよい。
【0069】
また、受光部12の受光面14aの輪郭形状は、上記各実施形態においては、矩形状としたが、例えば、図9(a)及び(b)に示すようにアップリンク領域UAの上流端に対応する下端縁14a2側の辺が短い台形状や、さらに短辺をさらに上流側に突出させた五角形状とすることもできる。光ビーコン4の投受光器8は、図4(a)に示したように、上流方向斜め下方に向けてアップリンク領域UAを投射するので、アップリンク領域UAの上流端側が下流端側よりも広がったり、上流側端部が突出したりといったようにその輪郭が変形して投影される場合がある。アップリンク領域UAの輪郭が前記のように変形して投影されると、隣接する車線にアップリンク領域UAが逸脱する等、適切な路車間通信の妨げになるおそれがある。図9に示すような台形状や五角形状とすることで、その変形を補正することができ、より適切な路車間通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】(a)は、本発明の第一の実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】光ビーコンの平面図である。
【図3】光ビーコンの通信領域Aを示す側面図である。
【図4】(a)は、受光部と、道路上に設定されるアップリンク領域との幾何学的な位置関係を示した側面図であり、(b)は、受光素子の受光面を正面視したときの図である。
【図5】光ビーコンと路車間通信する前記車載機と、この車載機が搭載された車両の概略構成図である。
【図6】通信領域において、投受光器と車載器との間で行われる双方向での路車間通信の手順を示した図である。
【図7】本発明の第二の実施形態の光ビーコンの通信領域を示す側面図である。
【図8】本実施形態の受光部の受光面を正面視したときの図である。
【図9】(a)及び(b)は、受光部の受光面の輪郭形状について、他の態様を示した図である。
【図10】従来の光ビーコンの通信領域を示す側面図である。
【符号の説明】
【0071】
2 車載機
4 光ビーコン
7 ビーコン制御機(制御部)
8 投受光器
12 受光部
14a 受光面
30 距離認識部
32 支援制御部
A 通信領域
C 車両
R 道路
P0 停止線(所定位置)
DA ダウンリンク領域
UA アップリンク領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アップリンク情報を受光可能なアップリンク領域とダウンリンク情報を送信可能なダウンリンク領域とからなる通信領域を道路の所定範囲に設定する投受光器を有する光ビーコンと、車両に搭載されるとともに、前記通信領域において前記投受光器との間で前記アップリンク情報及び前記ダウンリンク情報の送受信を行う車載機と、を備えている路車間通信システムであって、
前記投受光器は、前記アップリンク情報を受光する受光面を有する受光部を備え、この受光部は、前記受光面を前記道路上に投影するように前記アップリンク領域を設定するとともに、前記受光面における前記アップリンク情報を受光した受光位置に関する受光位置情報を出力するものであり、
前記光ビーコンは、前記受光部が出力する前記受光位置情報に基づいて、前記アップリンク領域において前記車載機が前記アップリンク情報を送信した送信位置を示す車載機位置情報を生成し、この車載機位置情報を含んだ前記ダウンリンク情報を前記投受光器に送信させる制御部を備えていることを特徴とする路車間通信システム。
【請求項2】
前記車載機位置情報は、前記送信位置からその下流側の所定位置までの距離に関する距離情報を含んでいる請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項3】
前記車載機位置情報は、前記アップリンク領域の上流端から前記所定位置までの距離についての第一の距離情報と、前記送信位置から前記アップリンク領域の上流端までの距離についての第二の距離情報と、を前記距離情報として含んでいる請求項2に記載の路車間通信システム。
【請求項4】
前記車載機が、前記第一の距離情報と前記第二の距離情報とから、前記送信位置から前記所定位置までの距離を求める距離認識部を有している請求項3に記載の路車間通信システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記受光位置情報に基づいて、前記受光面を車両進行方向に対応する方向に並ぶ複数の受光領域に区分けすることで、前記アップリンク領域を車両進行方向に並ぶ複数の分割領域に分割し、前記複数の受光領域のいずれで受光したかを前記受光位置情報に基づいて特定することで、この特定した前記受光領域に対応する分割領域の位置からその下流側の所定位置までの距離に関する距離情報を含む前記車載機位置情報を生成する請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項6】
道路を走行する車両の車載機からアップリンク情報を受光可能なアップリンク領域と前記車載機にダウンリンク情報を送信可能なダウンリンク領域とからなる通信領域を道路の所定範囲に設定する投受光器を有する光ビーコンであって、
前記投受光器は、前記アップリンク情報を受光する受光面を有する受光部を備え、この受光部は、前記受光面を前記道路上に投影するように前記アップリンク領域を設定するとともに、前記受光面における前記アップリンク情報を受光した受光位置に関する受光位置情報を出力するものであり、
前記光ビーコンは、前記受光部が出力する前記受光位置情報に基づいて、前記アップリンク領域において前記車載機が前記アップリンク情報を送信した送信位置を示す車載機位置情報を生成し、この車載機位置情報を含んだ前記ダウンリンク情報を前記投受光器に送信させる制御部を備えていることを特徴とする光ビーコン。
【請求項7】
前記車載機位置情報は、前記送信位置からその下流側の所定位置までの距離に関する距離情報を含んでいる請求項6に記載の光ビーコン。
【請求項8】
前記車載機位置情報は、前記アップリンク領域の上流端から前記所定位置までの距離についての第一の距離情報と、前記送信位置から前記アップリンク領域の上流端までの距離についての第二の距離情報と、を前記距離情報として含んでいる請求項7に記載の光ビーコン。
【請求項9】
請求項2〜5のいずれかに記載の路車間通信システムに用いられる車載機であって、
前記所定のダウンリンク情報に含まれる車載機位置情報に基づいて、前記所定位置までの距離を認識する距離認識部を有していることを特徴とする車載機。
【請求項10】
車両進行方向下流側に設定された信号機の表示予定に関する信号情報を受信する信号情報受信部と、この信号情報と前記距離情報とに基づいて運転支援に関する制御を行う支援制御部とを有している請求項9記載の車載機。
【請求項11】
前記支援制御部が、前記車両を制動するための制御を行う請求項10記載の車載機。
【請求項12】
前記支援制御部が、前記車両の搭乗者に対する報知情報を生成する機能を有している請求項10又は11に記載の車載機。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1つに記載の車載機を搭載した車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−26033(P2009−26033A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188019(P2007−188019)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】