説明

路面摩擦状態推定方法、路面摩擦状態推定装置、及び、路面摩擦状態推定用タイヤ

【課題】タイヤと路面との間の摩擦状態を精度良く推定する方法とその装置、及び、路面摩擦状態の推定に用いられる路面摩擦状態推定用タイヤを提供する。
【解決手段】タイヤトレッドの幅方向中心に位置する陸部内に埋設した垂直応力検出手段11a及び剪断応力検出手段11bとにより、上記陸部のトレッドゴムに作用する垂直応力σzとタイヤ周方向の剪断応力τxとを検出した後、応力比算出手段12にて応力比rx=(τx/σz)を算出し、この応力比rxと上記垂直応力σzのデータとを車体側の路面摩擦状態推定装置20に送信し、接地中心位置から路面蹴出し点の間の領域の最大値rbを抽出し、上記抽出された最大値rbと上記記憶手段24に記憶されたr−μマップ24Mとに基づいて、路面とタイヤとの間の路面摩擦係数μを推定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行する路面とタイヤとの間の摩擦状態を推定する方法とその装置、及び、路面摩擦状態の推定に使用されるタイヤに関するもので、特に、タイヤトレッドゴムに作用する剪断応力と荷重とから路面摩擦状態を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行安定性を高めるため、車両の走行している路面の状態、あるいは、タイヤと路面との間の摩擦係数(路面摩擦係数)を精度良く推定し、車両制御へフィードバックすることが求められている。特に、制駆動や操舵といった危険回避の操作を起こす前に、予め路面状態や路面摩擦係数の値を推定することができれば、ABSやVSC等の車両制御技術の精度を高めることが可能となり、安全性が一段と高まることが予想される。
従来、路面摩擦係数を推定する方法としては、アクセル、あるいはブレーキ操作を行ったときのスリップ率の変化と車両の車体加速度との関係から、路面状態、特に路面の最大摩擦係数を推定する手法が提案されている。これは、路面摩擦係数μの大きさが車体加速度Abと対応していることを利用したもので、車体加速度−車輪滑り特性曲線の安定領域内において、車体加速度Abと車輪滑りSとを検出してその比(Ab/S)を算出するとともに、上記比(Ab/S)と、予め求めておいた低μ路、中μ路、あるいは高μ路を走行した時の比(Ab/S)の値とを比較して、走行中の路面の状態を推定する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、安全性の高いブロックパターンを開発する目的で、空気入りタイヤのトレッドブロックに感圧導電ゴム体を埋設し、タイヤ踏面が接地したときに上記トレッドブロックの変形に伴って変形する上記感圧導電ゴム体の抵抗変化を検知して、上記トレッドブロックに作用する力の関係を調べる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。具体的には、図7(a)〜(d)に示すように、タイヤのトレッドブロック50内に、感圧導電ゴム体50Sとこの感圧導電ゴム体50Sのタイヤ径方向(Z方向)の外側面と内側面とにそれぞれ設けられた電極51a,52aとを備え、上記感圧導電ゴム体50Sのタイヤ径方向の圧縮変形を検出する第1のセンサ50Aと、感圧導電ゴム体50Sとそのタイヤ幅方向(Y方向)の両外側面にそれぞれ設けられた電極51b,52bとを備え、上記感圧導電ゴム体50Sのタイヤ径方向の圧縮変形を検出する第2のセンサ50Bと、感圧導電ゴム体50Sとそのタイヤ周方向(X方向)の両外側面にそれぞれ設けられた電極51c,52cとを備え、上記感圧導電ゴム体50Sのタイヤ径方向の圧縮変形を検出する第3のセンサ50Cとを埋設し、上記トレッドブロック50が接地したときの上記感圧導電ゴム体50Sの抵抗変化による電流値の変化をそれぞれ検出して車体側の車両装着ユニット60に送信する。車両装着ユニット60では、演算部61にて、上記各センサ50A〜50Cの出力からタイヤの接地時に上記トレッドブロックに作用するタイヤ径方向の力Fv、幅方向の力Fw、及び、周方向の力Fcをそれぞれ算出して、これを表示部62に表示する。
また、上記Fvは接地時に上記トレッドブロックに作用する垂直抗力に相当するので、上記演算部61に摩擦係数推定手段61kを設けて、上記算出された径方向の力Fvと幅方向の力Fwとの比(Fw/Fv)からタイヤ幅方向の摩擦係数を、上記径方向の力Fvと周方向の力Fcとの比(Fc/Fv)からタイヤ周方向の摩擦係数を推定する。これにより、トレッドブロック50に作用する力Fv,Fw,Fcに加えて、タイヤのグリップ力についても評価することができるので、安全性を高めたブロックパターンを設計することができる。
【特許文献1】特開平7−112659号公報
【特許文献2】特開2005−82010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両の車体加速度Abと車輪滑りSとから路面摩擦係数を推定する方法では、運転者が加速や減速などの一定の操作を行ったときには路面摩擦係数の推定が可能であるが、定常走行時においては路面摩擦係数を推定することができないことから、リアルタイムで路面状態を推定するには適していない。
また、トレッドブロック50にそれぞれ検出方向の異なる感圧導電ゴム体50Sを備えたセンサ50A〜50Cを埋設する方法では、上記感圧導電ゴム体50Sにより検出される上記幅方向の力Fw及び上記周方向の力Fcは、主に、タイヤのマクロな変形状態に伴うものではあるが、いずれも圧縮力であり、図8に示すような、タイヤ接地面に作用する前後力Fxや横力Fy、あるいはその合力であるFxyのような剪断力の大きさを反映したものではないので、上記比(Fc/Fv)や比(Fw/Fv)からタイヤと路面との間の最大摩擦係数を精度よく推定することは困難であった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、タイヤと路面との間の摩擦状態を精度よく推定することのできる方法とその装置、及び、路面摩擦状態の推定に用いられる路面摩擦状態推定用タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、走行時において、タイヤ踏面は粘着域と滑り域とに分けられ、その境界位置で路面摩擦係数μが最大値を取ること、及び、その最大値の大きさと発現する位置が路面状態により変化することから、タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧と剪断力とを検出するとともに、上記検出された剪断力と上記接地荷重または接地圧との比である応力比の最大値、もしくは時間軸上で上記応力比が最大値となる位置を検出すれば、タイヤと路面との間の摩擦状態を精度良く推定できることを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定する方法であって、タイヤトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかと、上記タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧とを計測して、上記接地荷重または接地圧に対する上記タイヤ進行方向剪断力またはタイヤ幅方向剪断力または上記両剪断力の合力の比である応力比rを算出するとともに、この応力比rの、当該タイヤの路面踏込み点から路面蹴出し点までの間における最大値rMまたは極大値に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の路面摩擦状態推定方法において、上記応力比rの、路面踏込み点から接地中心点までの間における最大値raに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにしたものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の路面摩擦状態推定方法において、上記応力比rの、接地中心点から路面蹴出し点までの間における最大値rbに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにしたものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の路面摩擦状態推定方法において、上記応力比rの、路面踏込み点から接地中心点における最大値raと接地中心点から路面蹴出し点までの間における最大値rbとの比Rを算出するとともに、上記算出された比Rに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにしたものである。なお、上記比Rとしては、(ra/rb)であってもよいし、(rb/ra)であってもよい。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の路面摩擦状態推定方法において、上記最大値ra、または上記最大値rb、または上記比Rと路面状態との関係を予め求めておき、上記関係に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の路面摩擦状態推定方法において、上記最大値ra、または上記最大値rbが所定の値を下回ったときに、路面が滑りやすい状態であると判断することを特徴とする。
【0009】
また、請求項7に記載の発明は、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定する方法であって、タイヤトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかと、上記タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧とを計測し、上記計測された接地荷重または接地圧に対する上記タイヤ進行方向剪断力またはタイヤ幅方向剪断力または上記両剪断力の合力の比である応力比rを算出するとともに、当該タイヤが路面に踏込んだ時点から上記応力比rが最大となるまでに要する時間Ta及び上記応力比rが最大となった時点から当該タイヤが路面を蹴出すまでに要する時間Tbのいずれか一方または両方を用いて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の路面摩擦状態推定方法において、上記所要時間Taまたは上記所要時間Tbと予め設定した所要時間の閾値Tkとを比較し、この比較結果に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の路面摩擦状態推定方法において、上記所要時間Taと上記所要時間Tbの比Qを算出し、上記算出された比Qに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする。なお、上記比Qは、(Ta/Tb)でもよいし、(Tb/Ta)でもよい。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の路面摩擦状態推定方法において、上記比Qと、路面状態との関係を予め求めておき、上記関係に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする。
【0010】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の路面摩擦状態推定方法に用いられるタイヤであって、タイヤトレッド陸部に、当該タイヤのトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかを計測する手段と、上記タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧を計測する手段とを設けたことを特徴とするものである。
また、請求項12に記載の発明は、請求項1〜請求項10のいずれかに記載の路面摩擦状態推定方法に用いられるタイヤであって、タイヤトレッドゴム表面と最外ベルト層との間に、上記タイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかを計測する手段と、上記タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧を計測する手段とを設けたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項13に記載の発明は、タイヤと路面間の摩擦状態を推定する装置であって、当該タイヤのトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかを計測する手段と、タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧を計測する手段と、上記計測された接地荷重または接地圧に対する上記タイヤ進行方向剪断力またはタイヤ幅方向剪断力または上記両剪断力の合力の比である応力比rを算出する手段と、上記応力比rの最大値または極大値を検出する手段と、上記検出された上記応力比rの最大値または極大値に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定する路面摩擦状態推定手段とを備えたことを特徴とするものである。
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の路面摩擦状態推定装置において、当該タイヤの路面踏込み点と路面蹴出し点とを検出する手段と、上記検出された路面踏込み点と路面蹴出し点の中間点を接地中心点とし、路面踏込み点から上記接地中心点までの間における上記比rの最大値raと上記接地中心点から路面蹴出し点までの間における上記比rの最大値rbのいずれか一方または両方を検出する手段とを備えたものである。
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の路面摩擦状態推定装置において、上記検出された最大値rと最大値rbとの比Rを算出する手段を備えたものである。
請求項16に記載の発明は、請求項14または請求項15に記載の路面摩擦状態推定装置において、予め求めた、上記最大値ra、または上記最大値rb、または上記比Rと路面状態との関係を示すマップを備えるとともに、上記路面摩擦状態推定手段は、上記検出された最大値r、または上記最大値rb、または上記算出された上記比Rと上記マップとに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するように構成したものである。
また、請求項17に記載の発明は、請求項14に記載の路面摩擦状態推定装置において、上記最大値ra、または上記最大値rbが所定の値を下回ったときに、路面が滑りやすい状態であると判定する判定手段を設けたものである。
【0012】
請求項18に記載の発明は、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定する装置であって、タイヤトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかを計測する手段と、タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧を計測する手段と、上記計測された接地荷重または接地圧に対する上記タイヤ進行方向剪断力またはタイヤ幅方向剪断力または上記両剪断力の合力の比である応力比rを算出する手段と、当該タイヤが路面に踏込んだ時点から上記応力比rが最大となるまでに要する時間Ta及び上記応力比rが最大となった時点から当該タイヤが路面を蹴出すまでに要する時間Tbのいずれか一方または両方を算出する手段と、上記算出された所用時間Taまたは所用時間Tbまたは所用時間Ta及びTbに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定する路面摩擦状態推定手段とを備えたことを特徴とするものである。
請求項19に記載の発明は、請求項18に記載の路面摩擦状態推定装置において、上記所要時間Taまたは上記所要時間Tbと予め設定した所要時間Tkとを比較する比較手段を設けるとともに、上記路面摩擦状態推定手段において、上記比較手段の比較結果に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにしたものである。
また、請求項20に記載の発明は、請求項18に記載の路面摩擦状態推定装置において、上記所要時間Taに対する上記所要時間Tbの比Qを算出する所用時間比算出手段を設けるとともに、上記路面摩擦状態推定手段において、上記所用時間比算出手段で算出された比Qに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにしたものである。
請求項21に記載の発明は、請求項20に記載の路面摩擦状態推定装置において、予め求めた、上記比Qと路面状態との関係を示すマップを備えるとともに、上記路面摩擦状態推定手段を、上記算出された比Qと上記マップとに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するように構成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タイヤと路面との間に働く前後力Fxや横力Fyの大きさと良好な対応関係を示すタイヤトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかと、タイヤの接地荷重Fzと良好な対応関係を示すタイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧とを計測して、上記計測された接地荷重または接地圧に対する上記タイヤ進行方向剪断力またはタイヤ幅方向剪断力または上記両剪断力の合力の比である応力比rを算出するとともに、当該タイヤの路面踏込み点から路面蹴出し点までの間における上記応力比rの最大値または極大値、具体的には、当該タイヤの路面踏込み点から接地中心点までの間における上記応力比rの最大値raと当該タイヤの接地中心点から路面蹴出し点までの間における上記応力比rの最大値rbのうちの大きい方の値に基づいてタイヤと路面間の摩擦状態を推定するようにしたので、タイヤと路面間の摩擦状態を精度良く推定することができる。このとき、上記最大値ra、または上記最大値rbが所定の値を下回ったときに、路面が滑りやすい状態である判断し、これをドライバーへ知らせて注意を喚起するようにすれば、車両の走行安全性を向上させることができる。
また、上記路面状態のデータを車両制御へフィードバックするようにすれば、ABSやVSC等の車両制御技術の精度を高めることが可能となり、車両の安全性を一層向上させることができる。
【0014】
また、上記最大値raと上記最大値rbとの比Rを算出し、この算出された比Rに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにしてもよい。
また、上記最大値ra、または上記最大値rb、または上記比Rと路面状態との関係を予め求めておき、上記関係に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにすれば、タイヤと路面との間の摩擦状態の推定精度を更に向上させることができる。
また、当該タイヤが路面に踏込んだ時点から上記応力比rが最大となるまでに要する時間Ta及び上記応力比rが最大となった時点から当該タイヤが路面を蹴出すまでに要する時間Tbのいずれか一方または両方を用いて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにしても、同様の効果を得ることができる。このとき、上記所要時間Taまたは上記所要時間Tbと予め設定した所要時間の閾値Tkとを比較し、その比較結果から路面との間の摩擦状態を推定するようにすれば、路面摩擦状態を更に精度よく推定できる。
あるいは、上記所要時間Taまたは上記所要時間Tbと予め設定した所要時間の閾値Tkとを比較し、その比較結果から路面との間の摩擦状態を推定したり、上記所要時間Taと上記所要時間Tbの比Qを算出し、上記算出された比Qに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにしてもよい。なお、この場合にも、上記比Qと、路面状態との関係を予め求めておき、上記関係に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定するようにすれば、推定精度を更に向上させることができる。
【0015】
また、当該タイヤのトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかを計測する手段と、タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧とを計測する手段とをタイヤトレッド陸部、またはタイヤトレッドゴム表面と最外ベルト層との間に設けたタイヤを用いれば、当該タイヤのトレッドゴムに作用する剪断力や接地荷重または接地圧を精度よく検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
最良の形態1.
図1は、本最良の形態1に係わる路面摩擦状態推定システムの構成を示す機能ブロック図で、同図において、10は当該タイヤのトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧に相当する路面に垂直な応力(垂直応力)σzを検出する垂直応力検出手段11aとタイヤ進行方向の剪断力τxを検出する剪断応力検出手段11bとを備えた応力検出ユニット11と、この応力検出ユニット11の出力である上記垂直応力σzの大きさと上記剪断力τxの大きさとから、応力比r=(τx/σz)を算出する応力比算出手段12と、アンテナ13aを備え、上記算出された応力比rのデータと上記垂直応力検出手段11aから出力される垂直応力σzの時系列データとを車体側に送信する送信手段13とが取付けられたセンサ付タイヤ、14は上記タイヤ10の回転速度を検出するための車輪速センサ、20は車体側に設けられた、上記センサ付タイヤ10から送信される応力比rのデータと垂直応力σzのデータとを受信するとともに、上記各データに基づいて、走行中のタイヤと路面との間の摩擦係数(路面摩擦係数μ)を推定する路面摩擦状態推定装置である。
【0017】
上記応力検出ユニット11の垂直応力検出手段11aとしては、加速度センサや圧力センサ、もしくは歪センサなどの周知のセンサを用いることができる。また、上記剪断応力検出手段11bとしては、複数個の歪ゲージを配列した剪断歪ゲージを用いることができる。また、上記応力検出ユニット11として、例えば、特開2003−262502号公報に開示された、主軸の方向の異なる2つの異方性圧電体から成り、垂直応力と剪断応力とを検出する2軸歪センサを用いてもよい。
本例では、図2に示すように、上記応力検出ユニット11と応力比算出手段12とを、本発明によるセンサ付きタイヤ10のタイヤトレッド15の幅方向中心に位置する陸部15c内に埋設するとともに、上記送信手段13をリム部16のタイヤ気室17側に設置するようにしている。
なお、上記応力比算出手段12と上記送信手段13とは図示しない信号線により接続されるが、無線により接続する構成としてもよい。また、上記応力検出ユニット11、応力比算出手段12及び送信手段13を駆動するための電力は、電源をタイヤ内面または外面側に配置して供給する形態としてもよいし、上記送信手段13に受信機能を付加して上記路面摩擦状態推定装置20より無線にて電力を供給する形態としてもよい。
【0018】
一方、上記路面摩擦状態推定装置20は、アンテナ21aを備え、上記センサ付タイヤ10から送信される応力比rxのデータと垂直応力σzのデータとを受信する受信手段21と、上記垂直応力σzのデータと上記車輪速センサ14の出力とから、上記応力検出手段11が埋設されている陸部15cが接地する路面踏込み点の位置と上記陸部15cが離陸する路面蹴出し点の位置とを検出するとともに、上記踏込み位置と蹴出し位置とから上記踏込み位置と蹴出し位置との中間点である接地中心位置を検出する接地点検出手段22と、この接地点検出手段22で検出された接地中心位置と蹴出し位置との間の領域における上記応力比rxの最大値rbを抽出する最大応力比抽出手段23と、予め求めておいた路面摩擦係数μと上記応力比rxの最大値rbとの関係を示すr-μマップ24Mを記憶する記憶手段24と、上記最大応力比抽出手段23で抽出された上記最大値rbと上記r-μマップ24Mとに基づいて車両の走行している路面の路面摩擦係数μを推定する路面摩擦状態推定手段25とを備え、上記センサ付タイヤ10で検出したトレッドゴムに作用する垂直応力σzと剪断応力τxとに基づいてタイヤと路面間の路面摩擦係数μを推定する。
【0019】
タイヤ踏面は、上記のように、粘着域と滑り域とに分けられるが、路面踏込み点から接地中心位置との間の領域は、比較的μの高い路面では粘着域であり、この領域においては、μの最大値はある一定以上の値をとる。一方、低μ路では、この領域に粘着域と滑り域の境界があり、その路面条件における最大の摩擦係数が発現するが、その値は上記高μ路の場合よりも低い。
これに対して、接地中心位置から路面蹴出し点の間の領域においては、比較的μの高い路面の場合には粘着域と滑り域の境界があり、最大の摩擦係数が発現する。一方、低μ路では、この領域は滑り域となり、μは小さくなる。
図3及び図4は、上記センサ付きタイヤ10を搭載した車両をDRYアスファルト(高μ路)とICE(低μ路)にてそれぞれ走行させたときに、上記応力検出ユニット11で検出した上記陸部15cのタイヤトレッドゴムに作用する垂直応力σzとタイヤ進行方向の剪断応力τxとの比rx=(τx/σz)の時間変化波形である。
上記陸部15cが接地していない場合には、垂直応力検出手段11aで検出した垂直応力σzは0であるので、上記垂直応力σzの時系列データを用いれば、図3,4において「接地」と示した上記陸部15cが接地する路面踏込み点の位置、「離陸」と示した上記陸部15cが離陸する路面蹴出し点、及び、「接地中心」と示した路面踏込み点と路面蹴出し点の中間点の位置を容易に求めることができる。
なお、車輪速センサ14の出力を用いれば、上記時間変化波形をタイヤトレッド位置と垂直応力σzまたはタイヤ進行方向の剪断応力τxとの関係に変換することが可能である。
【0020】
図3,4に示すように、上記応力比rx=(τx/σz)は、路面踏込み位置と接地中心位置間(踏み側)、及び、接地中心位置と蹴出し位置間(蹴り側)にそれぞれ極値を1個ずつ有しており、蹴り側の極値である応力比rxの蹴り側における最大値rbは、高μ路であるDRYアスファルト路面走行時には大きく、低μ路であるICE路面走行時には小さくなる。一方、踏み側の極値である応力比rxの最大値raは、高μ路であるDRYアスファルト路面走行時には小さく、低μ路であるICE路面走行時には大きくなる。
このように、上記応力比rx=(τx/σz)は、高μ路においては、路面踏込み点から接地中心位置との間の領域においては一定以上の値をとり、接地中心位置と路面蹴出し位置との間の領域では最大値rMをとるが、低μ路になると、その最大値は路面踏込み位置と接地中心位置との間の領域に移動し、しかもその値は小さくなる。このように、上記応力比rxの最大値rMの変化、もしくは、最大値ra, 最大値rbの変化は、上述したタイヤと路面間の最大摩擦係数μの変化に対応していることがわかる。
上記応力比rxは、上記のように2つの極値をもつが、本例では、タイヤと路面間の路面摩擦係数μを推定するメジャーとして、抽出の容易な接地中心位置と路面蹴出し位置との間の領域の最大値rbを用いるとともに、様々な路面での路面摩擦係数μと上記最大値rbとの関係を予め求めておき、この関係と、抽出された最大値rbとを比較して、タイヤと路面間の摩擦状態を表わす路面摩擦係数μの値を推定する。
【0021】
次に、本最良の形態1に係る路面摩擦状態の推定方法について説明する。
まず、応力検出ユニット11の垂直応力検出手段11a及び剪断応力検出手段11bとにより、当該陸部15cのトレッドゴムに作用する接地圧σzとτxとをそれぞれ検出し、その出力を応力比算出手段12に送り、応力比rx=(τx/σz)を算出するとともに、この算出した応力比rxのデータと、上記接地圧σzのデータ(接地圧波形のデータ)とを、送信手段13を介して、路面摩擦状態推定装置20に送信する。
路面摩擦状態推定装置20では、上記応力比rxのデータと接地圧波形のデータとを受信手段21で受信し、接地点検出手段22にて、車輪速センサ14から送られてきた車輪速データと上記接地圧波形のデータとから、踏込み位置、蹴出し位置、及び接地中心位置を決定する。そして、最大応力比抽出手段23に入力された上記応力比rxのデータから、接地中心位置と路面蹴出し位置との間の領域における上記応力比rxの最大値rbを抽出した後、路面摩擦状態推定手段25にて、上記抽出された最大値rbと上記記憶手段24に記憶されたr−μマップ24Mとに基づいて、路面摩擦係数μを推定する。これにより、タイヤと路面間の摩擦状態を精度よく推定することができる。
【0022】
このように、本最良の形態1によれば、タイヤトレッド15の幅方向中心に位置する陸部15c内に埋設した垂直応力検出手段11a及び剪断応力検出手段11bとにより、上記陸部15cのトレッドゴムに作用する垂直応力σzとタイヤ進行方向の剪断応力τxとを検出し、応力比算出手段12にて応力比rx=(τx/σz)を算出し、この応力比rxのデータと上記垂直応力σzとを車体側の路面摩擦状態推定装置20に送信し、路面摩擦状態推定装置20にて、接地中心位置と路面蹴出し位置との間の領域における応力比rxの最大値rbを抽出し、この抽出された最大値rbと上記記憶手段24に記憶されたr−μマップ24Mとに基づいて、車両の走行している路面とタイヤとの間の路面摩擦係数μを推定するようにしたので、タイヤと路面との間の摩擦状態を精度よく推定することができる。
また、本例では、タイヤのトレッドゴムに作用する垂直応力σzとタイヤ進行方向の剪断応力τxとから路面摩擦係数μの値を推定するようにしているので、スリップ率が実質0の場合でも、路面摩擦係数μを推定することが可能であり、このため、制動開始前に適切な初期制動力を決定することができる。
【0023】
なお、上記最良の形態1では、接地中心位置から路面蹴出し位置との間の領域における応力比rxの最大値rbを用いて路面摩擦係数μを推定したが、上記応力比rxの接地領域内の最大値rM、もしくは、路面踏込み点と接地中心点の間の領域の最大値raを用いて、路面摩擦係数μを推定するようにしても、同様の効果を得ることができる。
また、上記最大値raと上記最大値rbとの比Rも路面摩擦係数μの大きさに対応して変化するので、上記比R=(ra/rb)もしくはR’=(rb/ra)を算出し、この比RまたはR’に基づいて、路面摩擦係数μを推定するようにしてもよい。
また、上記例では、タイヤ進行方向の応力比rxを用いてタイヤ進行方向の路面摩擦係数を推定したが、タイヤ幅方向剪断力τyを計測して、タイヤ幅方向の応力比ryを求め、この応力比ryの最大値を用いてタイヤ幅方向の路面摩擦係数を推定することができる。あるいは、タイヤ進行方向剪断力τxとタイヤ幅方向剪断力τyとの合力τを算出し、この合力τと垂直応力σzとの比である応力比rtotの最大値に基づいて路面摩擦係数を推定するようにしてもよい。
なお、上記応力比ryまたは応力比rtotを用いる場合にも、上記応力比ryまたは応力比rtotと路面摩擦係数との関係を示すマップを準備し、このマップに基づいて路面摩擦係数を推定することが好ましい。
【0024】
また、上記例では、応力検出ユニット11をタイヤトレッド15の幅方向中心に位置する陸部15c内に埋設したが、応力検出ユニット11の設置個所はこれに限るものではなく、タイヤトレッドゴム表面と最外ベルト層との間に設置すれば、接地荷重または接地圧だけでなく、タイヤトレッドゴムに作用する剪断応力を確実に検出できるので、路面摩擦係数μを精度よく推定することができる。なお、応力比算出手段12については、送信手段13と同様に、リム部16のタイヤ気室17側に設置してもよいし、車体側に設けられる路面摩擦状態推定装置20に組込んでもよい。
【0025】
また、上記例では路面摩擦係数μを推定したが、走行中の路面が低μ路であるか、あるいは高μ路であるかなど、路面状態を推定することも可能である。具体的には、路面状態を、例えば、低μ路、中μ路、高μ路の3つの路面状態に分けるとともに、上記r-μマップに代えて、上記応力比rxの最大値rbと上記路面状態との関係を示すマップを予め求めておけば、計測された応力比rxから路面状態を精度よく推定することができる。
また、上記路面状態推定システムを、路面摩擦係数μあるいは路面状態を推定する構成ではなく、単に、路面が滑りやすい状態であるかどうかを判定する構成としてもよい。具体的には、上記路面状態判定手段25に代えて、上記最大値ra、または上記最大値rbが所定の閾値Kを下回ったときに、路面が滑りやすい状態であると判定する。あるいは、複数の閾値K1,K2を設けて、K1≦rbならば高μ路面、K2<rb<K1ならば中μ路面、rb≦K2ならば低μ路面と判定する路面状態判定手段を設けて走行中の路面状態を判定する。このような構成では、マップが不要となるとともに、データとマップとを対応させる操作も不要なので、装置を簡素化できる。
【0026】
最良の形態2.
上記最良の形態1では、応力比rx=(τx/σz)を算出し、この応力比rxの接地中心位置から路面蹴出し点の間の領域の最大値rbを抽出し、上記抽出された最大値rbと、r−μマップ24Mとに基づいて、車両の走行している路面とタイヤとの間の路面摩擦係数μを推定するようにしたが、図5に示すように、路面μが高い場合には接地中心位置と路面蹴出し位置との間の領域にあった上記応力比rxが最大となる位置は、路面μが低い場合には路面踏込み位置と接地中心位置との間に移動するので、当該タイヤ10が路面に踏込んだ時点から上記応力比rxが最大となるまでに要する時間Ta及び上記応力比rxが最大となった時点から当該タイヤが路面を蹴出すまでに要する時間Tbのいずれか一方または両方を用いて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することも可能である。
具体的には、当該タイヤ10が路面に踏込んだ時点から上記応力比rxが最大となるまでに要する時間Taと上記応力比rxが最大となった時点から当該タイヤが路面を蹴出すまでに要する時間Tbとの比Qを算出し、上記算出された比Qに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定する。これにより、路面摩擦係数μあるいは路面状態を精度よく推定することができる。このとき、上記最良の形態1と同様に、上記比Qと路面摩擦係数μまたは上記比Qと路面状態との関係を予め求めておき、これをマップとして記憶し、上記算出された比Qと上記マップとから、タイヤと路面との間の路面摩擦係数μまたは路面状態を推定するようにすれば、路面摩擦係数μあるいは路面状態を精度よく推定することができる。
あるいは、踏込みから蹴出しまでの所用時間よりも短い所要時間Tkを所用時間の閾値として設定し、上記所要時間Taが上記閾値Tkよりも長い場合には走行中の路面が高μ路であると判定し、短い場合には低μ路であると判定するようにしてもよい。また、複数の閾値T1,T2を設けて、T1≦Taならば高μ路、T2<Ta<T1ならば中μ路、Ta≦T2ならば低μ路であると判定するようにしてもよい。
また、上記閾値Tkと上記所要時間Taとの差ΔTと路面状態との関係を予め求めておき、これをマップとして記憶し、上記差ΔTと上記マップとから、タイヤと路面との間の路面摩擦係数μを推定するようにすれば、路面摩擦係数μについても精度よく推定することができる。
【実施例】
【0027】
図6は、車両を様々な路面で走行させてブレーキング試験を行い、ブレーキをかけてから車両が停止するまでの距離を測定して求めた路面間の摩擦係数(実測値)と、本発明による応力比rx=(τx/σz)の接地中心位置と路面蹴出し位置との間の領域の最大値rbから推定した路面摩擦係数μ(推定値)との関係を示すグラフである。このグラフから明らかなように、実測値と推定値とは極めて高い相関を示す。これにより、タイヤトレッドゴムに作用する剪断力の接地荷重を計測して求められる応力比から、車両の走行している路面とタイヤとの間の路面摩擦係数μを精度よく推定できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、タイヤと路面間の路面摩擦係数μあるいは路面摩擦状態を精度良く推定することができるので、上記推定された情報を用いれば、ドライバーへ注意を喚起したりできるとともに、ABSやVSC等の車両制御の精度を格段に向上させることができるので、車両の走行安全性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の最良の形態に係わる路面摩擦状態推定システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明によるセンサ付きタイヤの概略構成を示す図である。
【図3】DRYアスファルト路走行時のトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向の剪断応力と接地荷重との比(応力比)の時間波形の一例を示す図である。
【図4】ICE路走行時のトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向の剪断応力と接地荷重との比(応力比)の時間波形の一例を示す図である。
【図5】応力比の最大値の発現位置を示す図である。
【図6】ブレーキング試験にて計測した路面摩擦係数μと応力比の最大値から推定した路面摩擦係数μとの関係を示す図である。
【図7】従来の路面摩擦状態の推定方法を示す図である。
【図8】タイヤ接地面に作用する前後力Fx、横力Fy、及びその合力を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10 センサ付タイヤ、11 応力検出ユニット、11a 垂直応力検出手段、
11b 剪断応力検出手段、12 応力比算出手段、13 送信手段、
13a アンテ、14 車輪速センサ、15 タイヤトレッド、15c 陸部、
16 リム部、17 タイヤ気室、20 路面摩擦状態推定装置、21 受信手段、
21a アンテナ、22 接地点検出手段、23 最大応力比抽出手段、
24 記憶手段、24M r-μマップ、25 路面摩擦状態推定手段。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかと、上記タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧とを計測して、上記接地荷重または接地圧に対する上記タイヤ進行方向剪断力またはタイヤ幅方向剪断力または上記両剪断力の合力の比である応力比rを算出するとともに、この応力比rの、当該タイヤの路面踏込み点から路面蹴出し点までの間における最大値rMまたは極大値に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする路面摩擦状態推定方法。
【請求項2】
上記応力比rの、路面踏込み点から接地中心点までの間における最大値raに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする請求項1に記載の路面摩擦状態推定方法。
【請求項3】
上記応力比rの、接地中心点から路面蹴出し点までの間における最大値rbに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする請求項1に記載の路面摩擦状態推定方法。
【請求項4】
上記応力比rの、路面踏込み点から接地中心点における最大値raと接地中心点から路面蹴出し点までの間における最大値rbとの比Rを算出するとともに、上記算出された比Rに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする請求項1に記載の路面摩擦状態推定方法。
【請求項5】
上記最大値ra、または上記最大値rb、または上記比Rと路面状態との関係を予め求めておき、上記関係に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の路面摩擦状態推定方法。
【請求項6】
上記最大値ra、または上記最大値rbが所定の値を下回ったときに、路面が滑りやすい状態であると判断することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の路面摩擦状態推定方法。
【請求項7】
タイヤトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかと、上記タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧とを計測し、上記計測された接地荷重または接地圧に対する上記タイヤ進行方向剪断力またはタイヤ幅方向剪断力または上記両剪断力の合力の比である応力比rを算出するとともに、当該タイヤが路面に踏込んだ時点から上記応力比rが最大となるまでに要する時間Ta及び上記応力比rが最大となった時点から当該タイヤが路面を蹴出すまでに要する時間Tbのいずれか一方または両方を用いて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする路面摩擦状態推定方法。
【請求項8】
上記所要時間Taまたは上記所要時間Tbと予め設定した所要時間の閾値Tkとを比較し、この比較結果に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする請求項7に記載の路面摩擦状態推定方法。
【請求項9】
上記所要時間Taと上記所要時間Tbの比Qを算出し、上記算出された比Qに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする請求項7に記載の路面摩擦状態推定方法。
【請求項10】
上記比Qと、路面状態との関係を予め求めておき、上記関係に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする請求項9に記載の路面摩擦状態推定方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の路面摩擦状態推定方法に用いられるタイヤであって、タイヤトレッド陸部に、当該タイヤのトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかを計測する手段と、上記タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧を計測する手段とを設けたことを特徴とする路面摩擦状態推定用タイヤ。
【請求項12】
請求項1〜請求項10のいずれかに記載の路面摩擦状態推定方法に用いられるタイヤであって、タイヤトレッドゴム表面と最外ベルト層との間に、上記タイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかを計測する手段と、上記タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧を計測する手段とを設けたことを特徴とする路面摩擦状態推定用タイヤ。
【請求項13】
当該タイヤのトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかを計測する手段と、タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧を計測する手段と、上記計測された接地荷重または接地圧に対する上記タイヤ進行方向剪断力またはタイヤ幅方向剪断力または上記両剪断力の合力の比である応力比rを算出する手段と、上記応力比rの最大値または極大値を検出する手段と、上記検出された上記応力比rの最大値または極大値に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定する路面摩擦状態推定手段とを備えたことを特徴とする路面摩擦状態推定装置。
【請求項14】
当該タイヤの路面踏込み点と路面蹴出し点とを検出する手段と、上記検出された路面踏込み点と路面蹴出し点との中間点を接地中心点とし、路面踏込み点から上記接地中心点までの間における上記応力比rの最大値raと上記接地中心点から路面蹴出し点までの間における上記応力比rの最大値rbのいずれか一方または両方を検出する手段とを備えたことを特徴とする請求項13に記載の路面摩擦状態推定装置。
【請求項15】
上記検出された最大値rと最大値rbとの比Rを算出する手段を備えたことを特徴とする請求項14に記載の路面摩擦状態推定装置。
【請求項16】
予め求めた、上記最大値ra、または上記最大値rb、または上記比Rと路面状態との関係を示すマップを備えるとともに、上記路面摩擦状態推定手段は、上記検出された最大値r、または上記最大値rb、または上記算出された上記比Rと上記マップとに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴する請求項14または請求項15に記載の路面摩擦状態推定装置。
【請求項17】
上記最大値ra、または上記最大値rbが所定の値を下回ったときに、路面が滑りやすい状態であると判定する判定手段を設けたことを特徴とする請求項14に記載の路面摩擦状態推定装置。
【請求項18】
タイヤトレッドゴムに作用するタイヤ進行方向剪断力、タイヤ幅方向剪断力、及び、上記両剪断力の合力のいずれかを計測する手段と、タイヤトレッドゴムに作用する接地荷重または接地圧を計測する手段と、上記計測された接地荷重または接地圧に対する上記タイヤ進行方向剪断力またはタイヤ幅方向剪断力または上記両剪断力の合力の比である応力比rを算出する手段と、当該タイヤが路面に踏込んだ時点から上記応力比rが最大となるまでに要する時間Ta及び上記応力比rが最大となった時点から当該タイヤが路面を蹴出すまでに要する時間Tbのいずれか一方または両方を算出する手段と、上記算出された所用時間Taまたは所用時間Tbまたは所用時間Ta及びTbに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定する路面摩擦状態推定手段とを備えたことを特徴とする路面摩擦状態推定装置。
【請求項19】
上記所要時間Taまたは上記所要時間Tbと予め設定した所要時間Tkとを比較する比較手段を設けるとともに、上記路面摩擦状態推定手段は、上記比較手段の比較結果に基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする請求項18に記載の路面摩擦状態推定装置。
【請求項20】
上記所要時間Taに対する上記所要時間Tbの比Qを算出する所用時間比算出手段を設けるとともに、上記路面摩擦状態推定手段は、上記所用時間比算出手段で算出された比Qに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴とする請求項18に記載の路面摩擦状態推定装置。
【請求項21】
予め求めた、上記比Qと路面状態との関係を示すマップを備えるとともに、上記路面摩擦状態推定手段は、上記算出された比Qと上記マップとに基づいて、タイヤと路面との間の摩擦状態を推定することを特徴する請求項20に記載の路面摩擦状態推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−24205(P2008−24205A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200553(P2006−200553)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】