踏切障害物検知装置
【課題】設置容易な踏切障害物検知装置を提供する。
【解決手段】センサ装置1a,1bは、踏切への列車Tの接近を検知するために、それぞれ遮断棹32a,32bの降下を検知する。また、センサ装置1a,1bは、検知領域S内の障害物5,6の検知を行うとともに、列車Tの踏切の通過を検知する。センサ装置1a,1bは、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出したときに、検知領域S内の障害物5,6の検知を開始し、踏切を通過する列車Tからの反射波を検出したときに、検知領域Sのうち、少なくとも列車Tが走行する線路Ra,Rb内の障害物5,6の検知を停止する。
【解決手段】センサ装置1a,1bは、踏切への列車Tの接近を検知するために、それぞれ遮断棹32a,32bの降下を検知する。また、センサ装置1a,1bは、検知領域S内の障害物5,6の検知を行うとともに、列車Tの踏切の通過を検知する。センサ装置1a,1bは、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出したときに、検知領域S内の障害物5,6の検知を開始し、踏切を通過する列車Tからの反射波を検出したときに、検知領域Sのうち、少なくとも列車Tが走行する線路Ra,Rb内の障害物5,6の検知を停止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切内に取り残された障害物をミリ波などの電波により検知する踏切障害物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波によって踏切内に取り残された障害物を検知する踏切障害物検知装置が開発されている。このミリ波式踏切障害物検知装置は、例えば特許文献1に開示されており、天候などの外部条件に影響されにくいという優れた特性を有する。
【0003】
ミリ波式踏切障害物検知装置の優れた特性は、他にもある。従来の光式踏切障害物検知装置は、障害物がセンサ装置の光を遮断することにより障害物を検知するから、光軸同士の間隔に入り込める人間や車椅子などの小さい物体を検知しにくいという問題があった。これに対して、ミリ波式踏切障害物検知装置は、ミリ波を検知領域に放出し、障害物からの反射波により検知を行うから、小さい物体でも確実に検知することができる。もちろん、自動車のような大きな物体も、同様に検知することができる。
【0004】
この障害物検知は、軌道に沿って設置された地上子から、列車の踏切への接近と、列車の踏切の通過を通知されることによって、タイミング制御される。すなわち、ミリ波式踏切障害物検知装置は、列車の接近の通知を受けたとき、障害物検知を開始し、一方、列車の通過を通知したとき、列車を誤って検知しないように、障害物検知を停止する。このとき、複線の踏切の場合は、列車が在線する線路側の障害物検知のみを停止し、反対の線路側では障害物検知を継続する。そして、列車の通過が完了すると、完全に障害物検知を停止する。
【0005】
しかし、この機能の実現にあたり、ミリ波式踏切障害物検知装置と、地上子に繋がるトランスポンダ装置等とをケーブルにより接続する必要があるため、設置の際にケーブルの施設工事の手間と費用がかかるという問題があった。とりわけ、既存の踏切にミリ波式踏切障害物検知装置を設置する場合、ケーブルを埋設するために、列車の運行を中断して線路沿いの地面を掘り起こす作業などが必要となるから問題であった。
【特許文献1】特開2005−234813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、設置容易な踏切障害物検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る踏切障害物検知装置は、センサ装置を含む。前記センサ装置は、送信部と、受信部と、信号処理部とを含む。
【0008】
前記送信部は、電波を送信する。前記受信部は、この電波に対する反射波を受信し、電気信号に変換して前記信号処理部に出力する。
【0009】
ここまで述べた構成は、従来技術に見られるが、本発明の特徴部分は次に述べる構成にある。すなわち、前記信号処理部は、前記電気信号を解析し、降下した遮断棹からの反射波を検出したときに、検知領域内の障害物の検知を開始し、踏切を通過する列車からの反射波を検出したときに、前記検知領域のうち、少なくとも前記列車が走行する線路内の障害物の検知を停止する。
【0010】
本発明に係る踏切障害物検知装置は、降下した遮断棹からの反射波を検出することによって、列車の踏切への接近を検知することができ、また、踏切を通過する列車からの反射波を検出することによって、列車の踏切の通過を検知することができる。したがって、本発明に係る踏切障害物検知装置は、上述したような通知を受ける必要がないから、トランスポンダ装置等とケーブルにより接続する必要がない。
【0011】
よって、本発明に係る踏切障害物検知装置は、設置の際にケーブルの施設工事の手間と費用を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、設置容易な踏切障害物検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図3は、本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の構成を示す。この踏切は、複線の線路Ra,Rbと踏切道4が垂直に交差したものであり、遮断機31a,31b及び遮断棹32a,32bが設置され、踏切道4のうち遮断棹32a,32bで挟まれた略長方形の領域を、検知領域Sとする。本発明に係る踏切障害物検知装置は、列車接近時に検知領域Sに取り残された自動車や人間などの障害物5,6を検知するものであって、センサ装置1a,1bと、反射板2a〜2fとを含む。
【0014】
センサ装置1a,1bは、電波を送信し、その反射波を検出することによって、障害物5,6などの物体の存在を検知するものである。また、反射板2a〜2fは、センサ装置1a,1bからの電波を反射するものであって、センサ装置1a,1bが、その反射波を検出することによって、送信した電波の正常性を判定するためのものである。
【0015】
センサ装置1a,1bと反射板2a〜2fは、検知領域Sを挟んで対向するように設置されている。具体的には、センサ装置1aは、踏切道4と線路Raの脇であって、検知領域Sの一角の位置に設置され、センサ装置1bは、踏切道4と線路Rbの脇であって、センサ装置1aの設置位置に対して検知領域Sの対角の位置に設置されている。また、反射板2a〜2cは、センサ装置1bに対して踏切道4を挟んだ反対側であって、それぞれ、線路Ra,Rbの両外側と線路Ra,Rbの間に設置されている。一方、反射板2d〜2fは、センサ装置1aに対して踏切道4を挟んだ反対側であって、それぞれ、線路Ra,Rbの両外側と線路Ra,Rbの間に設置されている。なお、センサ装置1a,1bと反射板2a〜2fは、線路Ra,Rbの建築限界線の基準に従って配置されている。
【0016】
図4は、センサ装置1bの構成を示す。センサ装置1bは、送信部12a,12b,12c,12rと、受信部13a,13b,13c,13rと、信号処理部11a,11b,11c,11rとを含む。送信部12a,12b,12c,12rは、アンテナATN1a,ATN1b,ATN1c,ATN1rによって、それぞれ、領域Sa〜Sc,Rに電波を送信する。受信部13は、アンテナATN2a,ATN2b,ATN2c,ATN2rによって、この電波に対する反射波を受信し、電気信号E1に変換して信号処理部11a,11b,11c,11rに出力する。
【0017】
具体的には、信号処理部11a,11b,11c,11rは、CPUなどを含む演算処理回路であって、送信部12a,12b,12c,12rに送信指示信号E2を出力する。
【0018】
送信部12a,12b,12c,12rは、電波の生成回路であって、送信指示信号E2が入力されると電波を送信する。この電波としては、上述したようなミリ波を採用するのが望ましい。電波は、障害物5,6や反射板2a〜2cなどの物体により反射される。
【0019】
受信部13a,13b,13c,13rは、反射波を電気信号E1に変換する変換回路である。なお、アンテナATN1a,ATN1b,ATN1c,ATN1r,ATN2a,ATN2b,ATN2c,ATN2rとしては、アレイアンテナなどを採用するのが望ましい。
【0020】
信号処理部11a,11b,11c,11rは、受信部13から電気信号E1を受信して、障害物5,6などの物体の有無を判定する。
【0021】
一方、図5は、センサ装置1aの構成を示す。センサ装置1aは、送信部12d,12e,12f,12qと、受信部13d,13e,13f,13qと、信号処理部11d,11e,11f,11qとを含む。送信部12d,12e,12f,12qは、アンテナATN1d,ATN1e,ATN1f,ATN1qが備えられ、それぞれ、領域Sd〜Sf,Qに電波を送信する。また、受信部13d,13e,13f,13qは、アンテナATN2d,ATN2b,ATN2c,ATN2rが備えられている。このように、センサ装置1aの構成はセンサ装置1bと同一であるから、詳細な説明は省略する。センサ装置1aとセンサ装置1bは、後述する接近通知信号ACT1,2と通過通知信号TRM1,2を互いに送受信するために、埋設ケーブルや電波などを介して通信可能に接続されている。
【0022】
信号処理部11a〜11fは、それぞれ、領域Sa〜Sfに障害物5,6が存在すると判定したとき、信号機などに障害物5,6の存在を通知する障害物通知信号ALMa〜ALMfをそれぞれ送信する。これにより、例えば信号機を、踏切に接近中の列車に対して停止現示として、事故を未然に防止することができる。
【0023】
また、信号処理部11a〜11fは、反射板2a〜2fからの反射波を検出できなかったとき、送信部12a〜12f又は受信部13a〜13fに故障が発生したと判定し、故障通知信号FAILa〜FAILfを設備管理装置などに送信する。これにより、センサ装置1a,1bの故障を検出して、修理や交換などの適切な対応をとることができる。なお、信号処理部11r,11qの詳細な機能については、後述する。
【0024】
ここまで述べた構成は、従来技術に見られるが、本発明の特徴部分は次に述べる構成にある。すなわち、信号処理部11a〜11f,11r,11qは、電気信号E1を解析し、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出したときに、検知領域S内の障害物5,6の検知を開始し、踏切を通過する列車Tからの反射波を検出したときに、検知領域Sのうち、少なくとも列車Tが走行する線路Ra,Rb内の障害物5,6の検知を停止する。また、信号処理部11a〜11f,11r,11qは、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出するにあたって、複数の遮断棹32a,32bからの反射波の有無を判定し、少なくとも1つの遮断棹32a,32bからの反射波を検出したときに、検知を開始する。以下に、具体的に動作を説明する。
【0025】
図1は、踏切に接近している列車Tが存在しないときの踏切の状態を表している。この状態において、センサ装置1a,1bは、踏切への列車Tの接近を検知するために、それぞれ遮断棹32a,32bの降下を検知する。このため、送信部12q,12rは、それぞれ領域Q,R(図1の点線で囲まれた領域を参照)に電波を送信し、受信部13q,13rは、その反射波を受信している。
【0026】
領域Q,Rは、半径X0の扇状の領域であり、検知領域Sと重ならないように中心角が狭く、遠端部付近で遮断棹32a,32bと重なるように設定されている。また、このとき、他の送信部12a〜12fは電波を送信していない。これは、列車Tが接近していないので検知領域Sの障害物5,6を検出する必要がないからである。
【0027】
信号処理部11q,11rは、受信部13q,13rからの電気信号E1を解析して、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出する。図6は、図1に示す状態におけるセンサ装置1a,1bからの距離に対する電気信号E1のレベル変化を示す。これは、信号処理部11q,11rが、電気信号E1を解析することによって得られるものであって、横軸の距離は、電波の送信時刻からの経過時間を計測することによって算出される。ここで、曲線G1は、遮断棹32a,32bが降下したとき、一方、曲線G2は、降下していないときの一例である。
【0028】
信号処理部11q,11rは、曲線G1のように、距離(X0−ΔX)〜X0において、所定のしきい値THよりも大きいレベルを検出することにより、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出する。実際、遮断棹32a,32bからの反射波は、距離ΔXの区間のみでなく、領域R,Qと重なっている範囲全体で検出できるが、以下の理由から距離ΔXの区間のみで検出を行う。
【0029】
第1に、図1のように、距離ΔXの区間は、降下した遮断棹32a,32bの遮断機31a,31b近傍の部分に該当し、通常、自動車5や人間6などが入り込むことのできない場所に相当するからである。したがって、信号処理部11q,11rは、曲線G2のように、距離ΔXの区間以外で反射波(符号Pを参照)を検出した場合に、遮断機31a,31bではなく、踏切道4を横断する自動車5や人間6などからの反射波であると判別できる。第2に、自動車5との衝突などにより遮断棹32a,32bが切断された場合であっても、遮断棹32a,32bの根元付近の部分は残存するから、問題なく降下した遮断棹32a,32bを検出することができるからである。
【0030】
また、図4及び図5のように、信号処理部11q,11rは、降下した遮断棹32a,32bを検出したとき、それぞれ接近通知信号ACT2,1を、ORゲートG1,G2を介して他の信号処理部11a〜11fに出力する。つまり、ORゲートG1,G2の2つの入力端には、それぞれ接近通知信号ACT1とACT2が入力され、その出力端は他の信号処理部11a〜11fに接続されている。
【0031】
信号処理部11a〜11fは、接近通知信号ACT1,2の何れか一方が入力されると、図2のように、検知領域S内の障害物5,6の検知を開始する。したがって、遮断棹32a,32bの何れか一方の降下が検知されると障害物検知が行われるから、遮断機31a,31bの一方の故障などが発生しても、動作に影響がない。なお、本実施形態では、信号処理部11q,11rが、両方の遮断棹32a,32bの降下を検知するようにしたが、これに限られず、何れか一方だけを検知するようにしてもよい。
【0032】
図2は、列車Tが接近しているときの踏切の状態を表している。この状態において、センサ装置1a,1bは、検知領域S内の障害物5,6の検知を行うとともに、列車Tの踏切の通過を検知する。このため、送信部12a〜12fは、それぞれ領域Sa〜Sfに電波を送信し、受信部13a〜13fは、その反射波を受信している。
【0033】
領域Sa,Sc,Sd,Sfは、半径X1の扇状の領域であり、領域Sb,Seは、半径X2(>X1)の扇状の領域である。検知領域Sは、この領域Sa〜Sfによってカバーされている。なお、検知領域Sは、本実施形態のように、6つの領域に限られず、最適な領域数でカバーすればよい。
【0034】
また、領域Sb,Seは、障害物5,6だけではなく、列車Tの踏切の通過を検知するために、他の領域Sa,Sc,Sd,Sfよりも半径が長く、遠端部分に踏切外の線路Ra,Rbの一部を含むように設定されている。詳述すると、この領域Sb,Seは、列車Tが検知されてから踏切道4に差し掛かるまでに、領域Sa〜Sfを、後述する図3に示す状態に変更するための所要時間を確保できるように設定されている。つまり、領域Sb,Seは、信号処理部11a〜11fと送信部12a〜12fが領域の変更に要する時間に依存して決定されることになる。
【0035】
反射板2a〜2fは、それぞれ領域Sa〜Sf内で、センサ装置1a,1bからの距離がX1となる位置に設置され、故障検知のために、送信部12a〜12fが送信した電波を反射する(図2の符号Lを参照)。
【0036】
信号処理部11a,11c,11d,11fは、受信部13a,13c,13d,13fからの電気信号E1を解析して、障害物5,6からの反射波と、反射板2a,2c,2d,2fからの反射波を検出する。図7は、図2に示す状態におけるセンサ装置1a,1bからの距離に対する電気信号E1のレベル変化を示す。これは、信号処理部11a,11c,11d,11fが、電気信号E1を解析することによって得られるものであって、横軸の距離は、電波の送信時刻からの経過時間を計測することによって算出される。ここで、曲線G1は、障害物5,6を検知したとき、一方、曲線G2は、検知していないときの一例である。
【0037】
信号処理部11a,11c,11d,11fは、曲線G1のように、距離0〜X1において、所定のしきい値THよりも大きいレベルPを検出することにより、障害物5,6からの反射波を検出する。このとき、信号処理部11a,11c,11d,11fは、障害物5,6が存在すると判定して、それぞれ障害物通知信号ALMa,ALMc,ALMd,ALMfを送信する。一方、曲線G1のように、距離0〜X1において、所定のしきい値THよりも大きいレベルPを検出することができないときは、障害物5,6が存在しないと判定する。
【0038】
また、信号処理部11a,11c,11d,11fは、距離X1の位置に反射板2a〜2fが設置されていることを予め記憶しているから、距離X1におけるレベルP1がしきい値THよりも大きいとき、反射板2a,2c,2d,2fからの反射波が存在すると判定する。一方、レベルP1がしきい値THよりも小さいとき、反射波が存在しないと判定し、信号処理部11a,11c,11d,11fは、それぞれ故障通知信号FAILa,FAILc,FAILd,FAILfを送信する。
【0039】
また、信号処理部11b,11eは、受信部13b,13eからの電気信号E1を解析して、障害物5,6からの反射波と、反射板2b,2eからの反射波とを検出する。これは、他の信号処理部11a,11c,11d,11fと同じ動作であるが、信号処理部11b,11eは、さらに通過する列車Tからの反射波を検出する。本実施形態における踏切は復路であるので、信号処理部11bは、線路Raを走行して近づいてくる列車Tを検知し、信号処理部11eは、線路Rbを走行して近づいてくる列車Tを検知する。なお、単線の踏切においても、同様の構成でよい。
【0040】
図8は、図2に示す状態におけるセンサ装置1a,1bからの距離に対する電気信号E1のレベル変化を示す。これは、信号処理部11b,11eが、電気信号E1を解析することによって得られるものであって、横軸の距離は、電波の送信時刻からの経過時間を計測することによって算出される。ここで、曲線G1は、通過する列車Tを検知したとき、一方、曲線G2は、検知していないときの一例である。ここで、曲線G2のレベルPに基づいて、それぞれ障害物通知信号ALMb,ALMeを送信する動作と、曲線G1,G2のレベルP1に基づいて、それぞれ障害物通知信号FAILb,FAILeを送信する動作は、上述した信号処理部11a,11c,11d,11fと同一であるため、説明を省略する。
【0041】
信号処理部11b,11eは、距離X2の位置を列車Tが通過することを予め記憶しているから、距離X2におけるレベルP2がしきい値THよりも大きいとき、列車Tが踏切を通過開始すると判定し、それぞれ通過通知信号TRM1,2を送信する。一方、レベルP2がしきい値THよりも小さいとき、列車Tが踏切に差し掛かっていないと判定する。
【0042】
線路Raを走行する列車Tの通過が検知されると、通過通知信号TRM1が、信号処理部11a,11d,11e,11fに入力される。そして、図3のように、信号処理部11d〜11fは、列車Tを検知しないように障害物5,6の検知を停止するとともに、信号処理部11a,11bは、領域Sa,Sbの変更を行い、検知領域Sのうち、線路Rb側の領域の障害物6の検知を開始する。ここで、信号処理部11cには通過通知信号TRM1が入力されないのは、図2に示す領域Sa,Sbは、線路Raと重なっているために変更が必要であるが、領域Scは、線路Raと重なっていないために変更の必要がないからである。
【0043】
一方、線路Rbを走行する列車Tの通過が検知されると、通過通知信号TRM2が、信号処理部11a,11b,11c,11fに入力される。そして、上述した場合とは反対に、信号処理部11a〜11cは、列車Tを検知しないように障害物5,6の検知を停止するとともに、信号処理部11e,11fは、領域Se,Sfの変更を行い、検知領域Sのうち、線路Ra側の領域の障害物5,6の検知を開始する。ここで、信号処理部11dに通過通知信号TRM2は入力されないのは、図2に示す領域Se,Sfは、線路Rbと重なっているために変更が必要であるが、領域Sdは、線路Rbと重なっていないために変更の必要がないからである。
【0044】
このように、センサ装置1a,1bが、列車Tの通過を直接的に検知することによって、適時に図2に示す状態から図3に示す状態に領域変更でき、検知領域S内の障害物5,6の検知を十分長く行うことができるという効果を奏する。
【0045】
従来、地上子が列車を検知してから踏切障害物検知装置が通知を受けるまでの時間は、高速の列車を基準としてタイミング調整されていた。このため、障害物検知の開始及び停止のタイミングが早い場合があり、列車が踏切に差し掛かる時間よりも、かなり早く障害物検知を停止することによって、障害物を検知できず、踏切事故を防止できないおそれがあった。これに対して、センサ装置1a,1bは、列車Tが踏切の通過を開始するぎりぎりの時間まで障害物5,6の検知が可能であるから、このようなことはない。
【0046】
図3は、列車Tが通過しているときの踏切の状態を表している。この状態において、センサ装置1bは、検知領域Sのうち、線路Rb側の領域の障害物6の検知を行い、センサ装置1aは、検知を停止している。このため、送信部12d〜12fは、電波を送信せず、送信部12a〜12cが、それぞれ領域Sa〜Scに電波を送信し、受信部13a〜13cは、その反射波を受信している。
【0047】
領域Sa,Sb,Scは、それぞれ半径X3,X4,X1(X3<X4<X1)の扇状の領域である。このうち、領域Sa,Sbは、通過する列車Tが検知されないように、その半径を図2に示す状態よりも短く設定されている。一方、領域Scは、図2に示す状態と同一である。なお、ここでは線路Raを列車Tが通過する場合について説明するが、反対に、線路Rbを列車Tが通過する場合は、センサ装置1aとセンサ装置1bの動作が逆になるだけで、同様の動作となるため、説明を省略する。また、本実施形態では、列車Tが走行する線路Ra,Rb内の障害物5,6の検知のみを停止するように、領域Sa〜Sfを設定しているが、検知領域S全体の障害物5,6の検知を停止してもよい。
【0048】
図9は、図3に示す状態におけるセンサ装置1a,1bからの距離に対する電気信号E1のレベル変化を示す。ここで、曲線G1,G2,G3は、それぞれ障害物6を検知したときの一例である。信号処理部11a,11b,11cは、これまで述べたように、それぞれ曲線G1,G2,G3のレベルPに基づいて、障害物通知信号ALMa,ALMb,ALMcを送信する。また、信号処理部11cは、曲線G1のレベルP1に基づいて、故障通知信号FAILcを送信する。
【0049】
また、センサ装置1a,1bは、図3に示す状態において、列車Tの踏切の通過完了を検知するために、それぞれ遮断棹32a,32bの上昇を検知する。このため、送信部12q,12rは、それぞれ領域Q,Rに電波を送信し、受信部13q,13rは、その反射波を受信している。信号処理部11q,11rが、遮断棹32a,32bの上昇を検知すると、それぞれ接近通知信号ACT2,1の出力を停止する。これにより、他の信号処理部11a〜11fは、全て検知を停止して、再び図1に示す状態となる。
【0050】
次に、本発明に係る踏切障害物検知装置の作用効果を説明する。図10は、信号処理部11q,11rの動作フローを示す。この動作は、図1〜図3に示す状態において共通に行われる。
【0051】
まず、信号処理部11q,11rは、遮断棹32a,32bの降下を検知するために送信指示信号E2を出力して送信部12q,12rに電波を送信させ(St1)、受信部13q,13rから電気信号E1が入力される(St2)。
【0052】
そして、信号処理部11q,11rは、電気信号E2を解析し、遮断棹32a,32bの降下を検知した場合(St3)、接近通知信号ACT2,1を出力して、他の信号処理部11a〜11fに列車Tの接近を通知する(St4)。これにより、図1に示す状態から図2に示す状態になる。一方、検知できない場合(St3)は、接近通知信号ACT2,1を出力しない。これにより、遮断棹32a,32bが上昇を検知し、図3に示す状態から再び図1に示す状態になる。
【0053】
また、図11は、信号処理部11b,11eの動作フローを示す。この動作は、図2に示す状態において行われる。ここで、処理St11,19における括弧内の数字は、信号処理部11eの場合を示し、一方、括弧外の数字は、信号処理部11bの場合を示す。
【0054】
まず、信号処理部11b,11eは、接近通知信号ACT1,2の何れかを受信すると(St10)、それぞれ通過通知信号TRM2,1を受信していない場合は(St11)、障害物5,6を検知するために、送信指示信号E2を出力して送信部12b,12eに電波を送信させ(St12)、受信部13b,13eから電気信号E1が入力される(St13)。一方、それぞれ通過通知信号TRM2,1を受信した場合(St11)は、踏切を通過する列車Tを検知しないように、送信指示信号E2を出力しない。
【0055】
そして、信号処理部11b,11eは、電気信号E1を解析し、受信レベルP1<THであれば(St14)、故障通知信号FAILb,FAILeを送信して、装置の故障を外部に通知する(St15)。また、障害物5,6を検知したときは(St16)、障害物通知信号ALMb,ALMeを送信して、踏切内の障害物5,6の存在を外部に通知する(St17)。
【0056】
さらに、信号処理部11b,11eは、通過する列車Tを検知したとき(St18)、通過通知信号TRM1,2を出力する(St19)。ここで、信号処理部11bが通過通知信号TRM1を出力した場合、線路Raを走行する列車Tを検知しないように、信号処理部11d〜11fが、検知を停止するとともに、信号処理部11aが、検知領域Saの半径X1を半径X3に変更する。さらに、信号処理部11bも、同様に検知領域Sbの半径X2を半径X4に変更する(St20)。
【0057】
一方で、信号処理部11eが通過通知信号TRM2を出力した場合、線路Rbを走行する列車Tを検知しないように、信号処理部11a〜11cが、検知を停止するとともに、信号処理部11fが検知領域Sfの半径X1を半径X3に変更する。さらに、信号処理部11eも、同様に検知領域Seの半径X2を半径X4に変更する(St20)。これにより、図3に示す状態のように、通過する列車Tを検知せず、検知領域Sのうち、列車Tが走行しない線路Ra,Rb側に存在する障害物6のみの検知を継続することができる。
【0058】
図12は、信号処理部11a,11fの動作フローを示す。この動作は、図2に示す状態において行われる。ここで、処理St31,32における括弧内の数字は、信号処理部11fの場合を示し、一方、括弧外の数字は、信号処理部11aの場合を示す。
【0059】
まず、信号処理部11a,11fは、接近通知信号ACT1,2の何れかを受信すると(St30)、通過通知信号TRM1,2の何れも受信していない場合は(St31,St32)、障害物5,6を検知するために、送信指示信号E2を出力して送信部12a,12fに電波を送信させ(St34)、受信部13a,13fから電気信号E1が入力される(St35)。
【0060】
そして、信号処理部11a,11fは、電気信号E1を解析し、受信レベルP1<THであれば(St36)、故障通知信号FAILa,FAILfを送信して、装置の故障を外部に通知する(St37)。また、障害物5,6を検知したときは(St38)、障害物通知信号ALMa,ALMfを送信して、踏切内の障害物5,6の存在を外部に通知する(St39)。
【0061】
また、信号処理部11a,11fは、それぞれ通過通知信号TRM2,1を受信した場合(St31)、踏切を通過する列車Tを検知しないように、送信指示信号E2を出力しない。逆に、それぞれ通過通知信号TRM1,2を受信した場合(St32)、検知領域Sa,Sbの半径X1を半径X3に変更する(St33)。これにより、図11について上述した通り、図2に示す状態から図3に示す状態となる。
【0062】
信号処理部11c,11dの動作フローについては、説明は省略するが、図12の動作フローから処理St32,St33を除いたものと同じである。これは、上述したように、通過通知信号TRM1,2は、それぞれ信号処理部11c,11dに入力されないからである。なお、この場合の図12の処理St31,32における括弧内の数字は、信号処理部11dの場合を示し、一方、括弧外の数字は、信号処理部11cの場合を示す。
【0063】
また、図3に示す状態における信号処理部11a〜11cの動作フローについても、図12の動作フローから処理31〜33を除いたものと同じであるから、説明は省略する。さらに、信号処理部11a,11bは、故障検出を行なわないから、処理36,37も除く。なお、図3に示す状態とは反対に、列車Tが線路Rbを走行する場合における信号処理部11d〜11fの動作フローについても同様である。
【0064】
このように、信号処理部11a〜11f,11r,11qは、それぞれ領域Sa〜Sf,Sr,Sqにおける検知を行い、その検知の結果に応じて、図1に示す状態から図2に示す状態に変化し、さらに図3に示す状態へと遷移する。したがって、信号処理部11a〜11f,11r,11qは、装置外からの通知信号などを受信することなく、自律して動作し、状態に応じて好適に障害物5、6を検知することができる。
【0065】
これまで述べたとおり、本発明に係る踏切障害物検知装置は、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出することによって、列車Tの踏切への接近を検知することができ、また、踏切を通過する列車Tからの反射波を検出することによって、列車Tの踏切の通過を検知することができる。したがって、本発明に係る踏切障害物検知装置は、上述したような通知を受ける必要がないから、トランスポンダ装置等とケーブルにより接続する必要がない。
【0066】
よって、本発明に係る踏切障害物検知装置は、設置の際にケーブルの施設工事の手間と費用を低減することができる。
このように、本発明によれば、設置容易な踏切障害物検知装置を提供することができる。
【0067】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の構成を示す(踏切に接近している列車Tが存在しないとき)。
【図2】本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の構成を示す(列車Tが接近しているとき)。
【図3】本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の構成を示す(列車Tが通過しているとき)。
【図4】センサ装置の構成を示す。
【図5】センサ装置の構成を示す。
【図6】図1に示す状態におけるセンサ装置からの距離に対する電気信号のレベル変化を示す。
【図7】図2に示す状態におけるセンサ装置からの距離に対する電気信号のレベル変化を示す。
【図8】図2に示す状態におけるセンサ装置からの距離に対する電気信号のレベル変化を示す。
【図9】図3に示す状態におけるセンサ装置からの距離に対する電気信号のレベル変化を示す。
【図10】信号処理部の動作フローを示す。
【図11】信号処理部の動作フローを示す。
【図12】信号処理部の動作フローを示す。
【符号の説明】
【0069】
1a,1b センサ装置
11a〜11f,11q,11r 信号処理部
12a〜12f,12q,12r 送信部
13a〜13f,13q,13r 受信部
2a〜2f 反射板
32a,32b 遮断棹
S 検知領域
T 列車
E1 電気信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切内に取り残された障害物をミリ波などの電波により検知する踏切障害物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波によって踏切内に取り残された障害物を検知する踏切障害物検知装置が開発されている。このミリ波式踏切障害物検知装置は、例えば特許文献1に開示されており、天候などの外部条件に影響されにくいという優れた特性を有する。
【0003】
ミリ波式踏切障害物検知装置の優れた特性は、他にもある。従来の光式踏切障害物検知装置は、障害物がセンサ装置の光を遮断することにより障害物を検知するから、光軸同士の間隔に入り込める人間や車椅子などの小さい物体を検知しにくいという問題があった。これに対して、ミリ波式踏切障害物検知装置は、ミリ波を検知領域に放出し、障害物からの反射波により検知を行うから、小さい物体でも確実に検知することができる。もちろん、自動車のような大きな物体も、同様に検知することができる。
【0004】
この障害物検知は、軌道に沿って設置された地上子から、列車の踏切への接近と、列車の踏切の通過を通知されることによって、タイミング制御される。すなわち、ミリ波式踏切障害物検知装置は、列車の接近の通知を受けたとき、障害物検知を開始し、一方、列車の通過を通知したとき、列車を誤って検知しないように、障害物検知を停止する。このとき、複線の踏切の場合は、列車が在線する線路側の障害物検知のみを停止し、反対の線路側では障害物検知を継続する。そして、列車の通過が完了すると、完全に障害物検知を停止する。
【0005】
しかし、この機能の実現にあたり、ミリ波式踏切障害物検知装置と、地上子に繋がるトランスポンダ装置等とをケーブルにより接続する必要があるため、設置の際にケーブルの施設工事の手間と費用がかかるという問題があった。とりわけ、既存の踏切にミリ波式踏切障害物検知装置を設置する場合、ケーブルを埋設するために、列車の運行を中断して線路沿いの地面を掘り起こす作業などが必要となるから問題であった。
【特許文献1】特開2005−234813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、設置容易な踏切障害物検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る踏切障害物検知装置は、センサ装置を含む。前記センサ装置は、送信部と、受信部と、信号処理部とを含む。
【0008】
前記送信部は、電波を送信する。前記受信部は、この電波に対する反射波を受信し、電気信号に変換して前記信号処理部に出力する。
【0009】
ここまで述べた構成は、従来技術に見られるが、本発明の特徴部分は次に述べる構成にある。すなわち、前記信号処理部は、前記電気信号を解析し、降下した遮断棹からの反射波を検出したときに、検知領域内の障害物の検知を開始し、踏切を通過する列車からの反射波を検出したときに、前記検知領域のうち、少なくとも前記列車が走行する線路内の障害物の検知を停止する。
【0010】
本発明に係る踏切障害物検知装置は、降下した遮断棹からの反射波を検出することによって、列車の踏切への接近を検知することができ、また、踏切を通過する列車からの反射波を検出することによって、列車の踏切の通過を検知することができる。したがって、本発明に係る踏切障害物検知装置は、上述したような通知を受ける必要がないから、トランスポンダ装置等とケーブルにより接続する必要がない。
【0011】
よって、本発明に係る踏切障害物検知装置は、設置の際にケーブルの施設工事の手間と費用を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明によれば、設置容易な踏切障害物検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図3は、本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の構成を示す。この踏切は、複線の線路Ra,Rbと踏切道4が垂直に交差したものであり、遮断機31a,31b及び遮断棹32a,32bが設置され、踏切道4のうち遮断棹32a,32bで挟まれた略長方形の領域を、検知領域Sとする。本発明に係る踏切障害物検知装置は、列車接近時に検知領域Sに取り残された自動車や人間などの障害物5,6を検知するものであって、センサ装置1a,1bと、反射板2a〜2fとを含む。
【0014】
センサ装置1a,1bは、電波を送信し、その反射波を検出することによって、障害物5,6などの物体の存在を検知するものである。また、反射板2a〜2fは、センサ装置1a,1bからの電波を反射するものであって、センサ装置1a,1bが、その反射波を検出することによって、送信した電波の正常性を判定するためのものである。
【0015】
センサ装置1a,1bと反射板2a〜2fは、検知領域Sを挟んで対向するように設置されている。具体的には、センサ装置1aは、踏切道4と線路Raの脇であって、検知領域Sの一角の位置に設置され、センサ装置1bは、踏切道4と線路Rbの脇であって、センサ装置1aの設置位置に対して検知領域Sの対角の位置に設置されている。また、反射板2a〜2cは、センサ装置1bに対して踏切道4を挟んだ反対側であって、それぞれ、線路Ra,Rbの両外側と線路Ra,Rbの間に設置されている。一方、反射板2d〜2fは、センサ装置1aに対して踏切道4を挟んだ反対側であって、それぞれ、線路Ra,Rbの両外側と線路Ra,Rbの間に設置されている。なお、センサ装置1a,1bと反射板2a〜2fは、線路Ra,Rbの建築限界線の基準に従って配置されている。
【0016】
図4は、センサ装置1bの構成を示す。センサ装置1bは、送信部12a,12b,12c,12rと、受信部13a,13b,13c,13rと、信号処理部11a,11b,11c,11rとを含む。送信部12a,12b,12c,12rは、アンテナATN1a,ATN1b,ATN1c,ATN1rによって、それぞれ、領域Sa〜Sc,Rに電波を送信する。受信部13は、アンテナATN2a,ATN2b,ATN2c,ATN2rによって、この電波に対する反射波を受信し、電気信号E1に変換して信号処理部11a,11b,11c,11rに出力する。
【0017】
具体的には、信号処理部11a,11b,11c,11rは、CPUなどを含む演算処理回路であって、送信部12a,12b,12c,12rに送信指示信号E2を出力する。
【0018】
送信部12a,12b,12c,12rは、電波の生成回路であって、送信指示信号E2が入力されると電波を送信する。この電波としては、上述したようなミリ波を採用するのが望ましい。電波は、障害物5,6や反射板2a〜2cなどの物体により反射される。
【0019】
受信部13a,13b,13c,13rは、反射波を電気信号E1に変換する変換回路である。なお、アンテナATN1a,ATN1b,ATN1c,ATN1r,ATN2a,ATN2b,ATN2c,ATN2rとしては、アレイアンテナなどを採用するのが望ましい。
【0020】
信号処理部11a,11b,11c,11rは、受信部13から電気信号E1を受信して、障害物5,6などの物体の有無を判定する。
【0021】
一方、図5は、センサ装置1aの構成を示す。センサ装置1aは、送信部12d,12e,12f,12qと、受信部13d,13e,13f,13qと、信号処理部11d,11e,11f,11qとを含む。送信部12d,12e,12f,12qは、アンテナATN1d,ATN1e,ATN1f,ATN1qが備えられ、それぞれ、領域Sd〜Sf,Qに電波を送信する。また、受信部13d,13e,13f,13qは、アンテナATN2d,ATN2b,ATN2c,ATN2rが備えられている。このように、センサ装置1aの構成はセンサ装置1bと同一であるから、詳細な説明は省略する。センサ装置1aとセンサ装置1bは、後述する接近通知信号ACT1,2と通過通知信号TRM1,2を互いに送受信するために、埋設ケーブルや電波などを介して通信可能に接続されている。
【0022】
信号処理部11a〜11fは、それぞれ、領域Sa〜Sfに障害物5,6が存在すると判定したとき、信号機などに障害物5,6の存在を通知する障害物通知信号ALMa〜ALMfをそれぞれ送信する。これにより、例えば信号機を、踏切に接近中の列車に対して停止現示として、事故を未然に防止することができる。
【0023】
また、信号処理部11a〜11fは、反射板2a〜2fからの反射波を検出できなかったとき、送信部12a〜12f又は受信部13a〜13fに故障が発生したと判定し、故障通知信号FAILa〜FAILfを設備管理装置などに送信する。これにより、センサ装置1a,1bの故障を検出して、修理や交換などの適切な対応をとることができる。なお、信号処理部11r,11qの詳細な機能については、後述する。
【0024】
ここまで述べた構成は、従来技術に見られるが、本発明の特徴部分は次に述べる構成にある。すなわち、信号処理部11a〜11f,11r,11qは、電気信号E1を解析し、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出したときに、検知領域S内の障害物5,6の検知を開始し、踏切を通過する列車Tからの反射波を検出したときに、検知領域Sのうち、少なくとも列車Tが走行する線路Ra,Rb内の障害物5,6の検知を停止する。また、信号処理部11a〜11f,11r,11qは、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出するにあたって、複数の遮断棹32a,32bからの反射波の有無を判定し、少なくとも1つの遮断棹32a,32bからの反射波を検出したときに、検知を開始する。以下に、具体的に動作を説明する。
【0025】
図1は、踏切に接近している列車Tが存在しないときの踏切の状態を表している。この状態において、センサ装置1a,1bは、踏切への列車Tの接近を検知するために、それぞれ遮断棹32a,32bの降下を検知する。このため、送信部12q,12rは、それぞれ領域Q,R(図1の点線で囲まれた領域を参照)に電波を送信し、受信部13q,13rは、その反射波を受信している。
【0026】
領域Q,Rは、半径X0の扇状の領域であり、検知領域Sと重ならないように中心角が狭く、遠端部付近で遮断棹32a,32bと重なるように設定されている。また、このとき、他の送信部12a〜12fは電波を送信していない。これは、列車Tが接近していないので検知領域Sの障害物5,6を検出する必要がないからである。
【0027】
信号処理部11q,11rは、受信部13q,13rからの電気信号E1を解析して、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出する。図6は、図1に示す状態におけるセンサ装置1a,1bからの距離に対する電気信号E1のレベル変化を示す。これは、信号処理部11q,11rが、電気信号E1を解析することによって得られるものであって、横軸の距離は、電波の送信時刻からの経過時間を計測することによって算出される。ここで、曲線G1は、遮断棹32a,32bが降下したとき、一方、曲線G2は、降下していないときの一例である。
【0028】
信号処理部11q,11rは、曲線G1のように、距離(X0−ΔX)〜X0において、所定のしきい値THよりも大きいレベルを検出することにより、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出する。実際、遮断棹32a,32bからの反射波は、距離ΔXの区間のみでなく、領域R,Qと重なっている範囲全体で検出できるが、以下の理由から距離ΔXの区間のみで検出を行う。
【0029】
第1に、図1のように、距離ΔXの区間は、降下した遮断棹32a,32bの遮断機31a,31b近傍の部分に該当し、通常、自動車5や人間6などが入り込むことのできない場所に相当するからである。したがって、信号処理部11q,11rは、曲線G2のように、距離ΔXの区間以外で反射波(符号Pを参照)を検出した場合に、遮断機31a,31bではなく、踏切道4を横断する自動車5や人間6などからの反射波であると判別できる。第2に、自動車5との衝突などにより遮断棹32a,32bが切断された場合であっても、遮断棹32a,32bの根元付近の部分は残存するから、問題なく降下した遮断棹32a,32bを検出することができるからである。
【0030】
また、図4及び図5のように、信号処理部11q,11rは、降下した遮断棹32a,32bを検出したとき、それぞれ接近通知信号ACT2,1を、ORゲートG1,G2を介して他の信号処理部11a〜11fに出力する。つまり、ORゲートG1,G2の2つの入力端には、それぞれ接近通知信号ACT1とACT2が入力され、その出力端は他の信号処理部11a〜11fに接続されている。
【0031】
信号処理部11a〜11fは、接近通知信号ACT1,2の何れか一方が入力されると、図2のように、検知領域S内の障害物5,6の検知を開始する。したがって、遮断棹32a,32bの何れか一方の降下が検知されると障害物検知が行われるから、遮断機31a,31bの一方の故障などが発生しても、動作に影響がない。なお、本実施形態では、信号処理部11q,11rが、両方の遮断棹32a,32bの降下を検知するようにしたが、これに限られず、何れか一方だけを検知するようにしてもよい。
【0032】
図2は、列車Tが接近しているときの踏切の状態を表している。この状態において、センサ装置1a,1bは、検知領域S内の障害物5,6の検知を行うとともに、列車Tの踏切の通過を検知する。このため、送信部12a〜12fは、それぞれ領域Sa〜Sfに電波を送信し、受信部13a〜13fは、その反射波を受信している。
【0033】
領域Sa,Sc,Sd,Sfは、半径X1の扇状の領域であり、領域Sb,Seは、半径X2(>X1)の扇状の領域である。検知領域Sは、この領域Sa〜Sfによってカバーされている。なお、検知領域Sは、本実施形態のように、6つの領域に限られず、最適な領域数でカバーすればよい。
【0034】
また、領域Sb,Seは、障害物5,6だけではなく、列車Tの踏切の通過を検知するために、他の領域Sa,Sc,Sd,Sfよりも半径が長く、遠端部分に踏切外の線路Ra,Rbの一部を含むように設定されている。詳述すると、この領域Sb,Seは、列車Tが検知されてから踏切道4に差し掛かるまでに、領域Sa〜Sfを、後述する図3に示す状態に変更するための所要時間を確保できるように設定されている。つまり、領域Sb,Seは、信号処理部11a〜11fと送信部12a〜12fが領域の変更に要する時間に依存して決定されることになる。
【0035】
反射板2a〜2fは、それぞれ領域Sa〜Sf内で、センサ装置1a,1bからの距離がX1となる位置に設置され、故障検知のために、送信部12a〜12fが送信した電波を反射する(図2の符号Lを参照)。
【0036】
信号処理部11a,11c,11d,11fは、受信部13a,13c,13d,13fからの電気信号E1を解析して、障害物5,6からの反射波と、反射板2a,2c,2d,2fからの反射波を検出する。図7は、図2に示す状態におけるセンサ装置1a,1bからの距離に対する電気信号E1のレベル変化を示す。これは、信号処理部11a,11c,11d,11fが、電気信号E1を解析することによって得られるものであって、横軸の距離は、電波の送信時刻からの経過時間を計測することによって算出される。ここで、曲線G1は、障害物5,6を検知したとき、一方、曲線G2は、検知していないときの一例である。
【0037】
信号処理部11a,11c,11d,11fは、曲線G1のように、距離0〜X1において、所定のしきい値THよりも大きいレベルPを検出することにより、障害物5,6からの反射波を検出する。このとき、信号処理部11a,11c,11d,11fは、障害物5,6が存在すると判定して、それぞれ障害物通知信号ALMa,ALMc,ALMd,ALMfを送信する。一方、曲線G1のように、距離0〜X1において、所定のしきい値THよりも大きいレベルPを検出することができないときは、障害物5,6が存在しないと判定する。
【0038】
また、信号処理部11a,11c,11d,11fは、距離X1の位置に反射板2a〜2fが設置されていることを予め記憶しているから、距離X1におけるレベルP1がしきい値THよりも大きいとき、反射板2a,2c,2d,2fからの反射波が存在すると判定する。一方、レベルP1がしきい値THよりも小さいとき、反射波が存在しないと判定し、信号処理部11a,11c,11d,11fは、それぞれ故障通知信号FAILa,FAILc,FAILd,FAILfを送信する。
【0039】
また、信号処理部11b,11eは、受信部13b,13eからの電気信号E1を解析して、障害物5,6からの反射波と、反射板2b,2eからの反射波とを検出する。これは、他の信号処理部11a,11c,11d,11fと同じ動作であるが、信号処理部11b,11eは、さらに通過する列車Tからの反射波を検出する。本実施形態における踏切は復路であるので、信号処理部11bは、線路Raを走行して近づいてくる列車Tを検知し、信号処理部11eは、線路Rbを走行して近づいてくる列車Tを検知する。なお、単線の踏切においても、同様の構成でよい。
【0040】
図8は、図2に示す状態におけるセンサ装置1a,1bからの距離に対する電気信号E1のレベル変化を示す。これは、信号処理部11b,11eが、電気信号E1を解析することによって得られるものであって、横軸の距離は、電波の送信時刻からの経過時間を計測することによって算出される。ここで、曲線G1は、通過する列車Tを検知したとき、一方、曲線G2は、検知していないときの一例である。ここで、曲線G2のレベルPに基づいて、それぞれ障害物通知信号ALMb,ALMeを送信する動作と、曲線G1,G2のレベルP1に基づいて、それぞれ障害物通知信号FAILb,FAILeを送信する動作は、上述した信号処理部11a,11c,11d,11fと同一であるため、説明を省略する。
【0041】
信号処理部11b,11eは、距離X2の位置を列車Tが通過することを予め記憶しているから、距離X2におけるレベルP2がしきい値THよりも大きいとき、列車Tが踏切を通過開始すると判定し、それぞれ通過通知信号TRM1,2を送信する。一方、レベルP2がしきい値THよりも小さいとき、列車Tが踏切に差し掛かっていないと判定する。
【0042】
線路Raを走行する列車Tの通過が検知されると、通過通知信号TRM1が、信号処理部11a,11d,11e,11fに入力される。そして、図3のように、信号処理部11d〜11fは、列車Tを検知しないように障害物5,6の検知を停止するとともに、信号処理部11a,11bは、領域Sa,Sbの変更を行い、検知領域Sのうち、線路Rb側の領域の障害物6の検知を開始する。ここで、信号処理部11cには通過通知信号TRM1が入力されないのは、図2に示す領域Sa,Sbは、線路Raと重なっているために変更が必要であるが、領域Scは、線路Raと重なっていないために変更の必要がないからである。
【0043】
一方、線路Rbを走行する列車Tの通過が検知されると、通過通知信号TRM2が、信号処理部11a,11b,11c,11fに入力される。そして、上述した場合とは反対に、信号処理部11a〜11cは、列車Tを検知しないように障害物5,6の検知を停止するとともに、信号処理部11e,11fは、領域Se,Sfの変更を行い、検知領域Sのうち、線路Ra側の領域の障害物5,6の検知を開始する。ここで、信号処理部11dに通過通知信号TRM2は入力されないのは、図2に示す領域Se,Sfは、線路Rbと重なっているために変更が必要であるが、領域Sdは、線路Rbと重なっていないために変更の必要がないからである。
【0044】
このように、センサ装置1a,1bが、列車Tの通過を直接的に検知することによって、適時に図2に示す状態から図3に示す状態に領域変更でき、検知領域S内の障害物5,6の検知を十分長く行うことができるという効果を奏する。
【0045】
従来、地上子が列車を検知してから踏切障害物検知装置が通知を受けるまでの時間は、高速の列車を基準としてタイミング調整されていた。このため、障害物検知の開始及び停止のタイミングが早い場合があり、列車が踏切に差し掛かる時間よりも、かなり早く障害物検知を停止することによって、障害物を検知できず、踏切事故を防止できないおそれがあった。これに対して、センサ装置1a,1bは、列車Tが踏切の通過を開始するぎりぎりの時間まで障害物5,6の検知が可能であるから、このようなことはない。
【0046】
図3は、列車Tが通過しているときの踏切の状態を表している。この状態において、センサ装置1bは、検知領域Sのうち、線路Rb側の領域の障害物6の検知を行い、センサ装置1aは、検知を停止している。このため、送信部12d〜12fは、電波を送信せず、送信部12a〜12cが、それぞれ領域Sa〜Scに電波を送信し、受信部13a〜13cは、その反射波を受信している。
【0047】
領域Sa,Sb,Scは、それぞれ半径X3,X4,X1(X3<X4<X1)の扇状の領域である。このうち、領域Sa,Sbは、通過する列車Tが検知されないように、その半径を図2に示す状態よりも短く設定されている。一方、領域Scは、図2に示す状態と同一である。なお、ここでは線路Raを列車Tが通過する場合について説明するが、反対に、線路Rbを列車Tが通過する場合は、センサ装置1aとセンサ装置1bの動作が逆になるだけで、同様の動作となるため、説明を省略する。また、本実施形態では、列車Tが走行する線路Ra,Rb内の障害物5,6の検知のみを停止するように、領域Sa〜Sfを設定しているが、検知領域S全体の障害物5,6の検知を停止してもよい。
【0048】
図9は、図3に示す状態におけるセンサ装置1a,1bからの距離に対する電気信号E1のレベル変化を示す。ここで、曲線G1,G2,G3は、それぞれ障害物6を検知したときの一例である。信号処理部11a,11b,11cは、これまで述べたように、それぞれ曲線G1,G2,G3のレベルPに基づいて、障害物通知信号ALMa,ALMb,ALMcを送信する。また、信号処理部11cは、曲線G1のレベルP1に基づいて、故障通知信号FAILcを送信する。
【0049】
また、センサ装置1a,1bは、図3に示す状態において、列車Tの踏切の通過完了を検知するために、それぞれ遮断棹32a,32bの上昇を検知する。このため、送信部12q,12rは、それぞれ領域Q,Rに電波を送信し、受信部13q,13rは、その反射波を受信している。信号処理部11q,11rが、遮断棹32a,32bの上昇を検知すると、それぞれ接近通知信号ACT2,1の出力を停止する。これにより、他の信号処理部11a〜11fは、全て検知を停止して、再び図1に示す状態となる。
【0050】
次に、本発明に係る踏切障害物検知装置の作用効果を説明する。図10は、信号処理部11q,11rの動作フローを示す。この動作は、図1〜図3に示す状態において共通に行われる。
【0051】
まず、信号処理部11q,11rは、遮断棹32a,32bの降下を検知するために送信指示信号E2を出力して送信部12q,12rに電波を送信させ(St1)、受信部13q,13rから電気信号E1が入力される(St2)。
【0052】
そして、信号処理部11q,11rは、電気信号E2を解析し、遮断棹32a,32bの降下を検知した場合(St3)、接近通知信号ACT2,1を出力して、他の信号処理部11a〜11fに列車Tの接近を通知する(St4)。これにより、図1に示す状態から図2に示す状態になる。一方、検知できない場合(St3)は、接近通知信号ACT2,1を出力しない。これにより、遮断棹32a,32bが上昇を検知し、図3に示す状態から再び図1に示す状態になる。
【0053】
また、図11は、信号処理部11b,11eの動作フローを示す。この動作は、図2に示す状態において行われる。ここで、処理St11,19における括弧内の数字は、信号処理部11eの場合を示し、一方、括弧外の数字は、信号処理部11bの場合を示す。
【0054】
まず、信号処理部11b,11eは、接近通知信号ACT1,2の何れかを受信すると(St10)、それぞれ通過通知信号TRM2,1を受信していない場合は(St11)、障害物5,6を検知するために、送信指示信号E2を出力して送信部12b,12eに電波を送信させ(St12)、受信部13b,13eから電気信号E1が入力される(St13)。一方、それぞれ通過通知信号TRM2,1を受信した場合(St11)は、踏切を通過する列車Tを検知しないように、送信指示信号E2を出力しない。
【0055】
そして、信号処理部11b,11eは、電気信号E1を解析し、受信レベルP1<THであれば(St14)、故障通知信号FAILb,FAILeを送信して、装置の故障を外部に通知する(St15)。また、障害物5,6を検知したときは(St16)、障害物通知信号ALMb,ALMeを送信して、踏切内の障害物5,6の存在を外部に通知する(St17)。
【0056】
さらに、信号処理部11b,11eは、通過する列車Tを検知したとき(St18)、通過通知信号TRM1,2を出力する(St19)。ここで、信号処理部11bが通過通知信号TRM1を出力した場合、線路Raを走行する列車Tを検知しないように、信号処理部11d〜11fが、検知を停止するとともに、信号処理部11aが、検知領域Saの半径X1を半径X3に変更する。さらに、信号処理部11bも、同様に検知領域Sbの半径X2を半径X4に変更する(St20)。
【0057】
一方で、信号処理部11eが通過通知信号TRM2を出力した場合、線路Rbを走行する列車Tを検知しないように、信号処理部11a〜11cが、検知を停止するとともに、信号処理部11fが検知領域Sfの半径X1を半径X3に変更する。さらに、信号処理部11eも、同様に検知領域Seの半径X2を半径X4に変更する(St20)。これにより、図3に示す状態のように、通過する列車Tを検知せず、検知領域Sのうち、列車Tが走行しない線路Ra,Rb側に存在する障害物6のみの検知を継続することができる。
【0058】
図12は、信号処理部11a,11fの動作フローを示す。この動作は、図2に示す状態において行われる。ここで、処理St31,32における括弧内の数字は、信号処理部11fの場合を示し、一方、括弧外の数字は、信号処理部11aの場合を示す。
【0059】
まず、信号処理部11a,11fは、接近通知信号ACT1,2の何れかを受信すると(St30)、通過通知信号TRM1,2の何れも受信していない場合は(St31,St32)、障害物5,6を検知するために、送信指示信号E2を出力して送信部12a,12fに電波を送信させ(St34)、受信部13a,13fから電気信号E1が入力される(St35)。
【0060】
そして、信号処理部11a,11fは、電気信号E1を解析し、受信レベルP1<THであれば(St36)、故障通知信号FAILa,FAILfを送信して、装置の故障を外部に通知する(St37)。また、障害物5,6を検知したときは(St38)、障害物通知信号ALMa,ALMfを送信して、踏切内の障害物5,6の存在を外部に通知する(St39)。
【0061】
また、信号処理部11a,11fは、それぞれ通過通知信号TRM2,1を受信した場合(St31)、踏切を通過する列車Tを検知しないように、送信指示信号E2を出力しない。逆に、それぞれ通過通知信号TRM1,2を受信した場合(St32)、検知領域Sa,Sbの半径X1を半径X3に変更する(St33)。これにより、図11について上述した通り、図2に示す状態から図3に示す状態となる。
【0062】
信号処理部11c,11dの動作フローについては、説明は省略するが、図12の動作フローから処理St32,St33を除いたものと同じである。これは、上述したように、通過通知信号TRM1,2は、それぞれ信号処理部11c,11dに入力されないからである。なお、この場合の図12の処理St31,32における括弧内の数字は、信号処理部11dの場合を示し、一方、括弧外の数字は、信号処理部11cの場合を示す。
【0063】
また、図3に示す状態における信号処理部11a〜11cの動作フローについても、図12の動作フローから処理31〜33を除いたものと同じであるから、説明は省略する。さらに、信号処理部11a,11bは、故障検出を行なわないから、処理36,37も除く。なお、図3に示す状態とは反対に、列車Tが線路Rbを走行する場合における信号処理部11d〜11fの動作フローについても同様である。
【0064】
このように、信号処理部11a〜11f,11r,11qは、それぞれ領域Sa〜Sf,Sr,Sqにおける検知を行い、その検知の結果に応じて、図1に示す状態から図2に示す状態に変化し、さらに図3に示す状態へと遷移する。したがって、信号処理部11a〜11f,11r,11qは、装置外からの通知信号などを受信することなく、自律して動作し、状態に応じて好適に障害物5、6を検知することができる。
【0065】
これまで述べたとおり、本発明に係る踏切障害物検知装置は、降下した遮断棹32a,32bからの反射波を検出することによって、列車Tの踏切への接近を検知することができ、また、踏切を通過する列車Tからの反射波を検出することによって、列車Tの踏切の通過を検知することができる。したがって、本発明に係る踏切障害物検知装置は、上述したような通知を受ける必要がないから、トランスポンダ装置等とケーブルにより接続する必要がない。
【0066】
よって、本発明に係る踏切障害物検知装置は、設置の際にケーブルの施設工事の手間と費用を低減することができる。
このように、本発明によれば、設置容易な踏切障害物検知装置を提供することができる。
【0067】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の構成を示す(踏切に接近している列車Tが存在しないとき)。
【図2】本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の構成を示す(列車Tが接近しているとき)。
【図3】本発明に係る踏切障害物検知装置を適用した踏切の構成を示す(列車Tが通過しているとき)。
【図4】センサ装置の構成を示す。
【図5】センサ装置の構成を示す。
【図6】図1に示す状態におけるセンサ装置からの距離に対する電気信号のレベル変化を示す。
【図7】図2に示す状態におけるセンサ装置からの距離に対する電気信号のレベル変化を示す。
【図8】図2に示す状態におけるセンサ装置からの距離に対する電気信号のレベル変化を示す。
【図9】図3に示す状態におけるセンサ装置からの距離に対する電気信号のレベル変化を示す。
【図10】信号処理部の動作フローを示す。
【図11】信号処理部の動作フローを示す。
【図12】信号処理部の動作フローを示す。
【符号の説明】
【0069】
1a,1b センサ装置
11a〜11f,11q,11r 信号処理部
12a〜12f,12q,12r 送信部
13a〜13f,13q,13r 受信部
2a〜2f 反射板
32a,32b 遮断棹
S 検知領域
T 列車
E1 電気信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ装置を含む踏切障害物検知装置であって、
前記センサ装置は、送信部と、受信部と、信号処理部とを含み、
前記送信部は、電波を送信し、
前記受信部は、この電波に対する反射波を受信し、電気信号に変換して前記信号処理部に出力し、
前記信号処理部は、前記電気信号を解析し、降下した遮断棹からの反射波を検出したときに、検知領域内の障害物の検知を開始し、踏切を通過する列車からの反射波を検出したときに、前記検知領域のうち、少なくとも前記列車が走行する線路内の障害物の検知を停止する、
踏切障害物検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載された踏切障害物検知装置であって、
前記信号処理部は、前記降下した遮断棹からの反射波を検出するにあたって、複数の遮断棹からの反射波の有無を判定し、少なくとも1つの遮断棹からの反射波を検出したときに、前記検知を開始する、
踏切障害物検知装置。
【請求項1】
センサ装置を含む踏切障害物検知装置であって、
前記センサ装置は、送信部と、受信部と、信号処理部とを含み、
前記送信部は、電波を送信し、
前記受信部は、この電波に対する反射波を受信し、電気信号に変換して前記信号処理部に出力し、
前記信号処理部は、前記電気信号を解析し、降下した遮断棹からの反射波を検出したときに、検知領域内の障害物の検知を開始し、踏切を通過する列車からの反射波を検出したときに、前記検知領域のうち、少なくとも前記列車が走行する線路内の障害物の検知を停止する、
踏切障害物検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載された踏切障害物検知装置であって、
前記信号処理部は、前記降下した遮断棹からの反射波を検出するにあたって、複数の遮断棹からの反射波の有無を判定し、少なくとも1つの遮断棹からの反射波を検出したときに、前記検知を開始する、
踏切障害物検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−95193(P2010−95193A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268926(P2008−268926)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】
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