説明

車両における車体前部構造

【課題】車両の走行時に、車体の左右側部部材と、これら両側部部材に架設されるフロントカウルとを順次介しフロントウィンドガラスなど車体前部の車室形成部品に振動が容易には伝達されないようにして、車室にロードノイズが発生しないようにする。
【解決手段】フロントカウル10が、その下部を構成するインナカウル26と、インナカウル26の後上部から前方に向かって突出し、インナカウル26の後上部に片持ち支持される板形状のアウタカウル27とを備える。アウタカウル27の突出部42に、車体2の幅方向で複数の凸座面46〜50を形成し、各凸座面46〜50にカウルルーバ20の後縁部をそれぞれ固着具22により固着する。各凸座面46〜50のうち、アウタカウル27の長手方向の端部に位置して互いに隣り合う両凸座面46,47を互いに連結するビード51をアウタカウル27に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行時に、前車輪側から車体の左右側部部材と、これら両側部部材に架設されるフロントカウルとを順次介しフロントウィンドガラスなど車体前部の車室形成部品に振動が容易には伝達されないようにするための車両における車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両における車体前部構造は、通常、懸架装置により左右前車輪を支持するサスペンションタワーを有した車体の左右側部部材と、車体の幅方向に延び、上記左右側部部材に架設されるフロントカウルと、このフロントカウル側から後上方に向かって延び、前下縁部がこのフロントカウルに支持される車室形成部品であるフロントウィンドガラスと、上記フロントカウルをその上方から覆うように設けられるカウルルーバとを備えている。
【0003】
また、より具体的には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車体前部構造におけるフロントカウルは、その下部を構成し、車体の側面断面視でU字形状をなすインナカウルと、このインナカウルの後上部から前方に向かって突出し、このインナカウルの後上部に片持ち支持される板形状のアウタカウルとを備えている。このアウタカウルの前方への突出部の上面には凸座面が形成され、この凸座面に上記カウルルーバの後縁部が固着されている。また、上記凸座面の後方の上記アウタカウルの上面に上記フロントウィンドガラスの前下縁部が固着されている。また、従来、上記凸座面が車体の幅方向で複数形成され、これら各凸座面にそれぞれ上記カウルルーバの後縁部を固着したものが提案されている。
【0004】
ここで、車両の前進走行中、この車両が、その前方の何らかの物体に衝突(前突)したとき、この物体が上記前突により跳ね上げられて上記フロントカウルに対しその上方から衝突することがある。この場合、このフロントカウルの強度や剛性である強度等があまりに大きいと、このフロントカウルに物体が衝突するときの衝撃力が過大になりがちであって、好ましくない。
【0005】
そこで、上記フロントカウルのアウタカウルを上記インナカウルの前、後上部に両持ち支持させることによる強度等の向上を避け、上記したようにアウタカウルをインナカウルの後上部に片持ち支持させ、これにより、上記フロントカウルの強度等が大きくなることが抑制されている。このため、前突時に、上記フロントカウルにその上方から何らかの物体が衝突した場合は、上記フロントカウルがより大きく塑性変形し、これにより、上記衝撃力が十分に緩和されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−131149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両の走行時には、通常、前車輪側から車体の左右側部部材と、これら両側部部材に架設されるフロントカウルとを順次介し上記フロントウィンドガラスに振動が伝達される。この場合、前記したように、フロントカウルは強度等の向上が抑制されているため、このフロントカウルのうち、特に片持ち支持されているアウタパネルの突出部がより大きく振動しがちとなる。すると、このアウタパネルに固着され、全体形状が平坦で面積が大きい上記フロントウィンドガラスは、上記アウタカウルに連動して振動しがちとなる。この結果、このフロントウィンドガラスの振動により車室内に、ロードノイズといわれるこもり騒音が発生するおそれが生じる。
【0008】
そこで、上記フロントカウルの強度等の向上を全体的には抑制しつつ、このフロントカウルの長手方向の端部のみを補強して、この端部の強度等を向上させることが考えられる。このようにすれば、車両の走行時、車体の各側部部材から上記フロントカウルの長手方向の中途部側への振動の伝達はこのフロントカウルの各端部で規制され、このため、上記したロードノイズの発生は防止されると考えられる。
【0009】
しかし、上記フロントカウルの端部の強度等を向上させようとして、別途の補強材を設けたり、上記フロントカウルの端部の板厚を大きくしたりすると、この車体前部構造の構成が複雑になり、質量が増加するという不都合が生じて好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両の走行時、車体の左右側部部材と、これら両側部部材に架設されるフロントカウルとを順次介しフロントウィンドガラスなど車体前部の車室形成部品に振動が容易には伝達されないようにして、車室にロードノイズが発生しないようにすると共に、これが簡単な構成で、かつ、質量の増加を回避して達成できるようにすることである。
【0011】
請求項1の発明は、車体2の幅方向に延び、この車体2の左右側部部材4に架設されるフロントカウル10と、このフロントカウル10をその上方から覆うように設けられるカウルルーバ20とを備え、上記フロントカウル10が、その下部を構成するインナカウル26と、このインナカウル26の後上部から前方に向かって突出し、このインナカウル26の後上部に片持ち支持される板形状のアウタカウル27とを備え、このアウタカウル27の突出部42の上面に、車体2の幅方向で複数の凸座面46〜50を形成し、これら各凸座面46〜50に上記カウルルーバ20の後縁部をそれぞれ固着具22により固着した車両における車体前部構造において、
上記各凸座面46〜50のうち、上記アウタカウル27の長手方向の端部に位置して互いに隣り合う両凸座面46,47を互いに連結するビード51を上記アウタカウル27に形成したことを特徴とする車両における車体前部構造である。
【0012】
請求項2の発明は、上記フロントカウル10側から後上方に向かって延びるフロントウィンドガラス14を設け、上記各凸座面46〜50の後方の上記アウタカウル27の上面に上記フロントウィンドガラス14の前下縁部15を接着材16により接着し、この接着材16の前縁に沿って延び、かつ、この接着材16の前縁近傍における上記アウタカウル27の突出部42の上面に稜線44が生じるよう、このアウタカウル27を屈曲させたことを特徴とする請求項1に記載の車両における車体前部構造である。
【0013】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明による効果は、次の如くである。
【0015】
請求項1の発明は、車体の幅方向に延び、この車体の左右側部部材に架設されるフロントカウルと、このフロントカウルをその上方から覆うように設けられるカウルルーバとを備え、上記フロントカウルが、その下部を構成するインナカウルと、このインナカウルの後上部から前方に向かって突出し、このインナカウルの後上部に片持ち支持される板形状のアウタカウルとを備え、このアウタカウルの突出部の上面に、車体の幅方向で複数の凸座面を形成し、これら各凸座面に上記カウルルーバの後縁部をそれぞれ固着具により固着した車両における車体前部構造において、
上記各凸座面のうち、上記アウタカウルの長手方向の端部に位置して互いに隣り合う両凸座面を互いに連結するビードを上記アウタカウルに形成している。
【0016】
ここで、上記フロントカウルのうち、アウタカウルは、このフロントカウルへの衝突時の衝撃力を緩和するため、上記インナカウルに片持ち支持されて強度等が大きくなることが抑制されている。しかし、上記発明によれば、上記アウタカウルの端部における両凸座面を連結するビードを形成したため、これら両凸座面とビードとが協同して、このアウタカウルの端部の強度等を効果的に向上させることとなる。
【0017】
よって、車両の走行時に、車体の各側部部材から上記アウタカウルの長手方向の中途部側への振動の伝達は、強度等が向上させられた上記アウタカウルの各端部で規制される。このため、フロントカウルに固着される車室形成部品が、上記アウタカウルの中途部に伝達される振動に連動して振動することは防止され、この結果、車室内でのロードノイズの発生が防止される。
【0018】
また、上記したアウタカウルの端部における強度等の効果的な向上は、アウタカウルの突出部に対しカウルルーバの後縁部を固着させるための両凸座面をビードにより互いに連結したことにより達成されたのであり、このように両凸座面を利用した分、上記したロードノイズの発生防止は、簡単な構成で、かつ、質量の増加を回避して達成できる。
【0019】
請求項2の発明は、上記フロントカウル側から後上方に向かって延びるフロントウィンドガラスを設け、上記各凸座面の後方の上記アウタカウルの上面に上記フロントウィンドガラスの前下縁部を接着材により接着し、この接着材の前縁に沿って延び、かつ、この接着材の前縁近傍における上記アウタカウルの突出部の上面に稜線が生じるよう、このアウタカウルを屈曲させている。
【0020】
ここで、車両の走行時には、前記したようにビードの形成により車体の各側部部材からフロントカウルの長手方向の中途部側への振動の伝達は規制される。しかし、それでも、車両の走行時に、車体の各側部部材から上記アウタカウルの長手方向の中途部にまで振動が伝達された場合には、このアウタカウルは、その突出部における突出端側が上記のように形成された稜線を中心として比較的容易に振動して、この振動のエネルギーが吸収される。
【0021】
よって、上記アウタカウルの全体が振動することが防止されるため、上記アウタカウルに固着された上記フロントウィンドガラスが上記アウタカウルの振動に連動して振動することが防止され、この結果、車室内でのロードノイズの発生は、より確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車体前部の部分平面図である。
【図2】車体前部の部分斜視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図1のIV−IV線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の車両における車体前部構造に関し、車両の走行時に、車体の左右側部部材と、これら両側部部材に架設されるフロントカウルとを順次介しフロントウィンドガラスなど車体前部の車室形成部品に振動が容易には伝達されないようにして、車室にロードノイズが発生しないようにすると共に、これが簡単な構成で、かつ、質量の増加を回避して達成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0024】
即ち、車両における車体前部構造は、車体の幅方向に延び、この車体の左右側部部材に架設されるフロントカウルと、このフロントカウルをその上方から覆うように設けられるカウルルーバとを備える。上記フロントカウルが、その下部を構成するインナカウルと、このインナカウルの後上部から前方に向かって突出し、このインナカウルの後上部に片持ち支持される板形状のアウタカウルとを備える。このアウタカウルの突出部の上面に、車体の幅方向で複数の凸座面が形成され、これら各凸座面に上記カウルルーバの後縁部がそれぞれ固着具により固着される。上記各凸座面のうち、上記アウタカウルの長手方向の端部に位置して互いに隣り合う両凸座面を互いに連結するビードが上記アウタカウルに形成されている。
【実施例】
【0025】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0026】
図において、符号1は自動車で例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0027】
上記車体2は板金製で、この車体2前部は、この車体2の前後方向に延びる左右サイドメンバ3と、これら各サイドメンバ3から上方に向かって延設される側部部材4とを備えている。この側部部材4は、上記サイドメンバ3の長手方向の中途部側から上方に向かって延出し、その延出端でルーフを支持するセンタピラー7と、このセンタピラー7の長手方向の中途部から前方に向かって突出するエプロンメンバ8と、上記サイドメンバ3とエプロンメンバ8とに架設され、不図示の前車輪を懸架装置を介し懸架させるサスペンションタワー9とを備えている。
【0028】
また、上記車体2は、その幅方向に延び、上記左右側部部材4に架設されるフロントカウル10と、このフロントカウル10の下部から下方に向かって延出するダッシュパネル11とを備えている。この場合、上記フロントカウル10の長手方向の各端部は上記側部部材4のセンタピラー7、エプロンメンバ8、およびサスペンションタワー9のそれぞれに跨って結合されている。また、上記ダッシュパネル11の上縁部は上記フロントカウル10に結合され、かつ、上記ダッシュパネル11の各側縁部は上記サイドメンバ3の長手方向の中途部と上記サスペンションタワー9の後縁部とに結合されている。上記フロントカウル10とダッシュパネル11とは、車体2内の車室12の下部前面を形成し、それぞれ車室形成部品とされている。
【0029】
上記フロントカウル10側から後上方に向かって延び、上記車室12の上部前面を形成するフロントウィンドガラス14が設けられ、このフロントウィンドガラス14も車室形成部品とされている。このフロントウィンドガラス14の前下縁部15は上記フロントカウル10に接着材16により接着されて支持され、上記フロントウィンドガラス14の側縁部は上記センタピラー7の上部に接着されて支持されている。
【0030】
上記フロントカウル10とダッシュパネル11との前方空間がエンジンルーム18とされている。このエンジンルーム18の上端開口をその上方から開閉可能に閉じるフード19が設けられている。また、上記フロントカウル10をその上方から覆うように樹脂製のカウルルーバ20が設けられ、このカウルルーバ20は前、後固着具21,22により上記フロントカウル10に固着されている。また、上記カウルルーバ20の前縁部に取り付けられ、この前縁部と上記フード19の後縁部との間をシールするシール体23が設けられている。図1中符号24は、上記車体2の幅方向の車体中心を示し、この車体2は、上記車体中心24を基準としてほぼ左右対称形とされている。
【0031】
上記フロントカウル10は、その下部を構成するインナカウル26と、このインナカウル26の後上部から前方に向かって突出しこのインナカウル26の後上部に片持ち支持される板形状のアウタカウル27とを備えている。
【0032】
より具体的には、上記インナカウル26は、車体2の側面視(図3,4)で、断面がU字形状とされ、前後方向で互いに離れて対面する前、後面板29,30と、これら前、後面板29,30の各下縁部同士を一体的に結合する底板31と、上記前、後面板29,30の各上縁部にそれぞれ一体的に形成される前、後外向きフランジ32,33とを備えている。上記フロントカウル10の長手方向の端部における上記インナカウル26の底板31と、上記サスペンションタワー9の上面板およびダッシュパネル11の上縁部とは互いにスポット溶接S1により結合されている。
【0033】
上記アウタカウル27は、車体2の側面視(図3,4)で、断面が倒立U字形状とされ、前後方向で互いに離れて対面する前、後面板36,37と、これら前、後面板36,37の各上縁部同士を一体的に結合する天井板38と、上記前、後面板36,37の各下縁部にそれぞれ一体的に形成される前、後外向きフランジ39,40とを備えている。この場合、上記前面板36は全体的に前下方に向かうよう傾斜している。
【0034】
前記インナカウル26の後上部は、このインナカウル26の上記後外向きフランジ33により構成され、この後外向きフランジ33に上記アウタカウル27の後外向きフランジ40がスポット溶接S2により結合されている。そして、上記アウタカウル27の前面板36、後面板37、天井板38、および前外向きフランジ39は、上記インナカウル26の後外向きフランジ33から前方に突出した突出部42とされ、この突出部42は上記インナカウル26の後外向きフランジ33に片持ち支持されている。また、上記アウタカウル27の前外向きフランジ39は、上記インナカウル26の前外向きフランジ32よりも後方に離れて位置し、雨樋構造とされている。
【0035】
上記アウタカウル27の突出部42のうち、前面板36の上部は前下方に延び、この前面板36の上部上面に前記フロントウィンドガラス14の前下縁部15が接着材16により面接着されている。この接着材16の前縁は、上記フロントウィンドガラス14の前下縁部15とアウタカウル27の前面板36との接着部の前縁に相当する。そして、上記接着材16の前縁に沿って車体2の幅方向に延び、かつ、上記接着材16の前縁近傍における上記アウタカウル27の突出部42の上面に稜線(山折線)44が生じるよう、上記アウタカウル27が屈曲させられている。より具体的には、このアウタカウル27の前面板36の後部に対し前部がより下方に向かって屈曲させられている。また、上記稜線44は、上記アウタカウル27の長手方向のほぼ全体にわたり形成されている。
【0036】
上記アウタカウル27の突出部42における上記前面板36の前部上面には、上方に膨出するよう突出する凸座面46〜50が車体2の幅方向に複数(7つ)形成されている。これら凸座面46〜50の後方で、上記したようにアウタカウル27の前面板36の上面に上記フロントウィンドガラス14の前下縁部15が接着されている。前記カウルルーバ20の前縁部は、前記前固着具21により上記インナカウル26の前外向きフランジ32に固着され、上記カウルルーバ20の後縁部は、前記後固着具22により上記各凸座面46〜50にそれぞれ固着されている。
【0037】
上記各凸座面46〜50のうち、上記アウタカウル27の長手方向の端部に位置し、かつ、上記長手方向で隣り合う両凸座面46,47を互いに連結するビード51が上記アウタカウル27の突出部42に形成されている。上記ビード51は上方に膨出するよう形成されて、上記アウタカウル27の長手方向に直線的に延びている。
【0038】
上記フロントウィンドガラス14の外面に付着する水滴を払拭可能とするワイパー装置53が設けられている。このワイパー装置53は、上記インナカウル26に支持される左右一対の回動軸54,54と、これら各回動軸54に固着されると共にブレードを支持するワイパアーム55と、上記インナカウル26内に収容されてこのインナカウル26に支持され、ワイパリンク56と上記回動軸54とを介しワイパアーム55を往復回動させるワイパモータ57とを備えている。
【0039】
上記構成によれば、各凸座面46〜50のうち、上記アウタカウル27の長手方向の端部に位置して互いに上記長手方向で隣り合う両凸座面46,47を互いに連結するビード51を上記アウタカウル27に形成している。
【0040】
ここで、前記従来の技術で説明したように、上記フロントカウル10のうち、アウタカウル27は、このフロントカウル10への衝突時の衝撃力を緩和するため、上記インナカウル26に片持ち支持されて強度等が大きくなることが抑制されている。しかし、上記構成によれば、上記アウタカウル27の端部における両凸座面46,47を連結するビード51を形成したため、これら両凸座面46,47とビード51とが協同して、このアウタカウル27の端部の強度等を効果的に向上させることとなる。
【0041】
よって、車両1の走行時に、車体2の各側部部材4から上記アウタカウル27の長手方向の中途部側への振動の伝達は、強度等が向上させられた上記アウタカウル27の各端部で規制される。このため、このアウタカウル27に固着され、全体形状が平坦で面積が大きいダッシュパネル11やフロントウィンドガラス14など車体2前部の車室形成部品が、上記アウタカウル27の中途部に伝達される振動に連動して振動することは防止され、この結果、車室12内でのロードノイズの発生が防止される。
【0042】
また、上記したアウタカウル27の端部における強度等の効果的な向上は、アウタカウル27の突出部42に対しカウルルーバ20の後縁部を固着させるための両凸座面46,47をビード51により互いに連結したことにより達成されたのであり、このように両凸座面46,47を利用した分、上記したロードノイズの発生防止は、簡単な構成で、かつ、質量の増加を回避して達成できる。
【0043】
更に、上記アウタカウル27の端部における強度等の向上により、上記フロントカウル10の端部の強度等が向上させられて、このフロントカウル10の端部自体がより確実に所定形状に維持される。よって、車体2の側部部材4に対し上記フロントカウル10の端部を組み付ける組み付け作業時に、このフロントカウル10の端部が無用に変形することが防止されて、この組み付け作業が容易にできる。
【0044】
また、前記したように、フロントカウル10側から後上方に向かって延びるフロントウィンドガラス14を設け、上記各凸座面46〜50の後方の上記アウタカウル27の上面に上記フロントウィンドガラス14の前下縁部15を接着材16により接着し、この接着材16の前縁に沿って延び、かつ、この接着材16の前縁近傍における上記アウタカウル27の突出部42の上面に稜線44が生じるよう、このアウタカウル27を屈曲させている。
【0045】
ここで、車両1の走行時には、前記したようにビード51の形成により車体2の各側部部材4からフロントカウル10の長手方向の中途部側への振動の伝達は規制される。しかし、それでも、車両1の走行時に、車体2の各側部部材4から上記アウタカウル27の長手方向の中途部にまで振動が伝達された場合には、このアウタカウル27は、その突出部42における突出端側が上記のように形成された稜線44を中心として比較的容易に振動して、この振動のエネルギーが吸収される。
【0046】
よって、上記アウタカウル27の全体が振動することが防止されるため、上記アウタカウル27に固着された上記フロントウィンドガラス14が上記アウタカウル27の振動に連動して振動することが防止され、この結果、車室12内でのロードノイズの発生は、より確実に防止される。
【0047】
なお、以上は図示の例によるが、上記アウタカウル27の端部における両凸座面46,47同士以外の凸座面47〜50同士を互いに連結するビードを設けてもよい。また、上記インナカウル26の前面板29の上縁部に切り欠きを形成し、この切り欠き内に上記ワイパー装置53の一部であるワイパモータ57などを配置してもよい。また、上記切り欠き内にフード19用のヒンジを配置してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 車両
2 車体
4 側部部材
10 フロントカウル
11 ダッシュパネル
12 車室
14 フロントウィンドガラス
15 前下縁部
16 接着材
20 カウルルーバ
22 固着具
24 車体中心
26 インナカウル
27 アウタカウル
42 突出部
44 稜線
46 凸座面
47 凸座面
48 凸座面
49 凸座面
50 凸座面
51 ビード
A 振動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の幅方向に延び、この車体の左右側部部材に架設されるフロントカウルと、このフロントカウルをその上方から覆うように設けられるカウルルーバとを備え、上記フロントカウルが、その下部を構成するインナカウルと、このインナカウルの後上部から前方に向かって突出し、このインナカウルの後上部に片持ち支持される板形状のアウタカウルとを備え、このアウタカウルの突出部の上面に、車体の幅方向で複数の凸座面を形成し、これら各凸座面に上記カウルルーバの後縁部をそれぞれ固着具により固着した車両における車体前部構造において、
上記各凸座面のうち、上記アウタカウルの長手方向の端部に位置して互いに隣り合う両凸座面を互いに連結するビードを上記アウタカウルに形成したことを特徴とする車両における車体前部構造。
【請求項2】
上記フロントカウル側から後上方に向かって延びるフロントウィンドガラスを設け、上記各凸座面の後方の上記アウタカウルの上面に上記フロントウィンドガラスの前下縁部を接着材により接着し、この接着材の前縁に沿って延び、かつ、この接着材の前縁近傍における上記アウタカウルの突出部の上面に稜線が生じるよう、このアウタカウルを屈曲させたことを特徴とする請求項1に記載の車両における車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−228717(P2010−228717A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81472(P2009−81472)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】