説明

車両のサイドスカート

【課題】車両の走行時における横風安定性の向上と空気抵抗の低減との両立を図ることが可能な車両のサイドスカートの提供を目的とする。
【解決手段】車両1のサイドスカート5は、荷台4の車幅方向両端の下部に車両前後方向に亘って配設され、車両上下方向に延びて車体の下部を覆う車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17と、車両前方側スカート本体部16と車両後方側スカート本体部17とにそれぞれ車両前後方向に亘って設けられ、車幅方向外側の外面と車体の下部側の内面とを連通する車両前方側連通部と車両後方側連通部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の車幅方向両端の下部に配設される車両のサイドスカートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両後方に荷台を搭載した貨物車等の車両では、走行時における空気抵抗を低減するために、荷台等の両側面の下方にサイドスカートを配置することが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平9―109826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなサイドスカートは、平板状に形成されているため、車両の走行時に横風を受けた際に、横風を整流することが困難である。
【0005】
ここで、一般に、走行時に車両が横風を受けると、車両の両側面(左右側面)、特にその後部側に圧力差が生じ、車体には横力が作用する。また、この横力の空力中心が車両の重心位置から所定長離間した場合、車体には、上下方向の軸を中心として車体を回転させるヨーイングモーメントが作用する。このような横力及びヨーイングモーメントの発生は、車両の操縦安定性(横風安定性)を著しく低下させてしまう。
【0006】
かかる不都合は、サイドスカート自体の大きさ(面積)を縮小化することにより回避することが可能であるが、このようなサイドスカートの縮小化は、車両走行時における空気抵抗の増大を招く。
【0007】
そこで、本発明は、車両の走行時における横風安定性の向上と空気抵抗の低減との両立を図ることが可能な車両のサイドスカートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明に係る車両のサイドスカートは、車体の車幅方向両端の下部に車両前後方向に亘って配設され、車両上下方向に延びて車体の下部を覆うスカート本体と、スカート本体に車両前後方向に亘って設けられ、車幅方向外側の外面と車体の下部側の内面とを連通する連通部と、を備えている。
【0009】
上記構成では、連通部が設けられるスカート本体は、車体の車幅方向両端の下部において、車両上下方向に延びると共に、車両前後方向に亘って配設される。このため、車両走行時における空気の流れは、スカート本体の外面によって整流となるように調整される。従って、車両の走行時に車体の車幅方向両側の下方を流れる空気は、車両の後方へ良好に案内されるため、車両の空気抵抗の低減を図ることができる。
【0010】
また、車体の車幅方向両端の下部に配設されるスカート本体には、その外面と内面とを連通する連通部が車両前後方向に亘って形成されている。このため、車両の走行時に横風を受けると、この横風は、横風を受ける側のサイドスカートの連通部を通過して車体の下部に達し、この車体の下部に流入された空気は、横風を受けない側のサイドスカートの連通部を介して車両の外部に排出される。すなわち、横風の連通部を介した車体の下部への流入により、横風を受ける側のサイドスカートの外面側と内面側との圧力差が緩和されるため、車両に対する横力を軽減することができる。一方、車体の下部に流入された空気の連通部を介した車両の外部への排出により、横風を受ける側のサイドスカートの外面側と横風を受けない側のサイドスカートの外面側との圧力差が緩和されるため、ヨーイングモーメントの発生を抑制することが可能となる。従って、車体への横風の影響が十分に緩和されるため、車両の横風安定性の向上を確実に図ることができる。
【0011】
このように、スカート本体に連通部を設けるという簡単な構成により、空気抵抗の低減というサイドスカートの本来的な機能を損なうことなく、車両の横風安定性の向上を図ることができる。
【0012】
また、連通部の車両後方側の開口面積を、車両前方側の開口面積よりも大きく設定してもよい。
【0013】
上記構成では、サイドスカートの連通部を介して通過する空気は、車両前方側に比して車両後方側の方が多く流通する。すなわち、車両走行時に横風を受けた際、最も圧力差が生じる車体の車幅方向両側の後方側には、車両後方側の連通部を通過して多くの空気が流通し、これにより、車両に作用する横力が効果的に軽減されるため、ヨーイングモーメントの発生の抑制化を一段と図ることができる。また、車両走行時に車体の側面に沿って流れる空気は、車両後方側へ向かうに従って、その乱流状態が解消されるため、車両後方側の連通部の開口面積を大きく設定しても、車両の空気抵抗に及ぼす影響が比較的小さい。従って、車両の空気抵抗の低減効果を維持しつつ、横風安定性を効果的に向上させることができる。
【0014】
また、スカート本体には、車両上下方向に並んで配置され、それぞれが車両前後方向へ延びる複数の板状部を設けると共に、連通部は、複数の板状部のうち上下で隣接する板状部の下端部と上端部とによって区画形成されて車両前後方向に沿って延びるスリット形状としてもよく、板状部の下端部と上端部との少なくとも一方には、車幅方向外側で水平方向から連通部を視たときに、車体の下部の視認を妨げる目隠し部を設けてもよい。
【0015】
上記構成では、連通部が、スカート本体の複数の板状部のうち上下で隣接する板状部の下端部と上端部とによって区画形成され、連通部を車幅方向外側で水平方向から視た状態では、車体の下部が、板状部の下端部と上端部との少なくとも一方に設けられる目隠し部によって目隠しされる。すなわち、連通部による空気の流通を確保しつつ、車体の下部に配設されるエンジン等の車両の構成部材が外部から露出しない構造とすることができる。従って、外観上の見栄えを向上させつつ、車両の横風安定性の向上を図ることができる。
【0016】
また、連通部は、車両前後方向に沿って延びるスリット形状を有し、車両走行時に車両後方へ向かって流れる空気と略同一の方向に設けられているため、車両走行時における空気の流れが連通部によって阻害されることがない。従って、車両の走行時に車体の車幅方向両側の下方を流れる空気は、スカート本体の外面に沿って円滑に流通するため、車両の空気抵抗の低減化を図ることができる。
【0017】
また、連通部を、スカート本体に形成された貫通孔としてもよい。
【0018】
上記構成では、連通部はスカート本体と一体的に形成される貫通孔であるため、連通部の製作の簡易化、車体に対するサイドスカートの組付作業の簡略化及び部品点数の削減を確実に図ることができる。
【0019】
また、連通部は、貫通孔であり、その製作が容易であることから、貫通孔の形状を多種多様な形状、例えば、空気抵抗を低減する形状として、スカート本体の外面側から内面側に向かって、開口面積が縮小する断面略腕型の形状に形成することも可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡単な構成により、車両の横風安定性の向上と空気抵抗の低減との両立を確実に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係るサイドスカートが設けられたトラックの側面図、図2は車両前方側のサイドスカートの要部拡大断面図、図3は図2の要部拡大断面図、図4は車両後方側のサイドスカートの要部拡大断面図、図5は図4の要部拡大断面図、図6は無風時に車両が走行した際の空気の流れを示す図、図7は横風を受けながら車両が走行した際の空気の流れを示す図である。なお、図中FRは車両前方を、UPは車両上方を、図6中A及び図7中B,C,Dは空気の流れ(気流)を、図7中(+)は正圧を、図7中(−)は負圧をそれぞれ示している。また、以下の説明における左右方向は、車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、車幅方向両側で前後方向に延設されたシャシフレーム2と、シャシフレーム2の前部に下方から支持されるキャブ3と、シャシフレーム2の後部に下方から支持される荷台4と、荷台4の車幅方向両側の下部に配設されるサイドスカート5と、荷台4の下側に配置されるエンジン等の車両構成部材(図示省略)とを備えている。
【0023】
図1、図2及び図4に示すように、シャシフレーム2には、その上方に車幅方向に延びる横根太6が車両前後方向に亘って複数個取り付けられている。横根太6の両端部には、車両前後方向に延びるサイドレール7が取り付けられており、サイドレール7の上方には、荷台4が載置され固定されている。横根太6の下方には、サイドスカート5を取り付けるためのステー8が車両前後方向に亘って複数個取り付けられている。
【0024】
ステー8は、パイプ状部材からなるステー本体9と、略板状の補強部材10とを有する。ステー本体9は、略L字状に形成され、横根太6の下部に溶接やボルト等により固着される上棒部11と、上棒部11の車幅方向外側の端部から下方へ曲折して延びる側棒部12とを有する。補強部材10は、ステー本体9の車両前後方向の両側に配置され、その両端がそれぞれ上棒部11及び側棒部12の所定位置に溶接や溶接等により固着されている。
【0025】
図2及び図4に示すように、サイドスカート5は、前輪13と後輪14との間に配設され(図1参照)、車両上下方向に延びて荷台4の車両前方側の下部を覆う車両前方側スカート本体部(スカート本体)16と、後輪14の車両後方側に配設され、車両上下方向に延びて荷台4の車両後方側の下部を覆う車両後方側スカート本体部(スカート本体)17と、車両前方側スカート本体部16と車両後方側スカート本体部17とのそれぞれに車両前後方向に亘って設けられ、車幅方向外側の外面と荷台4の下部側の内面とを連通する車両前方側連通部(連通部)18と車両後方側連通部(連通部)19と、を備えている。
【0026】
図2及び図3に示すように、車両前方側スカート本体部16は、車両上下方向に略平行に配置され、車両上下方向へ延びる複数の板状部21を有する。板状部21は、断面略Z形状からなり、略板状の前壁部23と、前壁部23の下端から荷台4の下部側へ曲折して延びる略板状の側壁部24と、側壁部24の荷台4の下部側の端部から下方へ曲折して延びる略板状の後壁部25とを有する。
【0027】
図4及び図5に示すように、車両後方側スカート本体部17は、車両上下方向に略平行に配置され、車両上下方向へ延びる複数の板状部22を有する。板状部22は、複数の板状部21と同様に、断面略Z形状からなり、略板状の前壁部26と、前壁部26の下端から荷台4の下部側へ曲折して延びる略板状の側壁部27と、側壁部の荷台4の下部側の端部から下方へ曲折して延びる後壁部28とを有する。
【0028】
図2〜図5に示すように、板状部21の前壁部23及び後壁部25の車両上下方向の幅は、板状部22の前壁部26及び後壁部28の車両上下方向の幅よりも長く設定されている。また、板状部21の側壁部24と板状部22の側壁部27とは、車幅方向の幅が略同一に設定されている。
【0029】
車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17のステー8に対する取り付けは、複数の板状部21の後壁部25及び複数の板状部22の後壁部28の荷台4の下部側の内面を、ステー8の側棒部12の車幅方向外側の所定位置にそれぞれ当接した状態で溶接やボルト締め等をすることにより行われる。
【0030】
車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17がステー8に対して取り付けられた状態では、複数の板状部21のそれぞれの前壁部23の外面、及び、複数の板状部22のそれぞれの前壁部26の外面は、車両上下方向において略同一直線上に配置され、板状部21の前壁部23の外面と板状部22の前壁部26の外面とは、車両前後方向において略同一直線上に配置されている。また、この状態において、車両前方側スカート本体部16と車両後方側スカート本体部17とは、車両上下方向において、略同一の幅を有する。
【0031】
また、車両前方側スカート本体部16がステー8に対して取り付けられた状態では、上下で隣接する上側の板状部21の後壁部25の下端部(目隠し部)31と下側の板状部21の前壁部23の上端部(目隠し部)32とは対向して配置されている。同様に、車両後方側スカート本体部17がステー8に対して取り付けられた状態では、上下で隣接する上側の板状部22の後壁部28の下端部(目隠し部)33と下側の板状部22の前壁部26の上端部(目隠し部)34とは対向して配置されている。このような複数の板状部21及び複数の板状部22の配置により、車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17を車幅方向外側で水平方向から視た状態では、荷台4の下部が、上側の板状部21の下端部31と下側の板状部21の上端部32、及び、上側の板状部22の下端部33と下側の板状部22の上端部34によって目隠しされる。
【0032】
図2及び図3に示すように、車両前方側連通部18は、複数の板状部21のうち上下で隣接する上側の板状部21の側壁部24及び後壁部25と、下側の板状部21の前壁部23及び側壁部24とによって区画形成されて車両前後方向に沿って延びるスリット形状からなり、上側の板状部21の下端部31と下側の板状部21の上端部32との間には、開口35が車両前後方向に亘って形成されている。
【0033】
図4及び図5に示すように、車両後方側連通部19は、複数の板状部22のうち上下で隣接する上側の板状部22の側壁部27及び後壁部28と、下側の板状部22の前壁部26及び側壁部27とによって区画形成されて車両前後方向に沿って延びるスリット形状からなり、上側の板状部22の下端部33と下側の板状部22の上端部34との間には、開口36が車両前後方向に亘って形成されている。
【0034】
また、車両後方側連通部19の車両上下方向の幅は、板状部22の前壁部26及び後壁部28の車両上下方向の幅が板状部21の前壁部23及び後壁部25の車両上下方向の幅よりも短く設定されている関係上、車両前方側連通部18の車両上下方向の幅よりも幅狭に設定されている。
【0035】
図2及び図4に示すように、本実施形態では、車両後方側連通部19が設けられる数量を、車両前方側連通部18が設けられる数量よりも多く設定することにより、車両後方側連通部19の開口36の総面積を、車両前方側連通部18の開口35の総面積よりも大きくしている。このため、車両前方側のサイドスカート5と車両後方側のサイドスカート5とを比較した場合、車両後方側のサイドスカート5の方が車両前方側のサイドスカート5よりも多くの空気を流通させることが可能となっている。
【0036】
次に、本発明に係るサイドスカートを備えた車両に対する空気の流れを、無風状態で走行した場合と、横風を受けながら走行した場合とに分けて、図6及び図7に基づいて説明する。
【0037】
図6に示すように、無風状態においてサイドスカート5(図1参照)を備えた車両1が走行した場合では、車両1の前部へ向かう気流Aは、車両1の両側面に沿って流通する。この際、気流Aは、車両前後方向に配置される車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17(図1参照)の略板状の滑らかな外面により、車両後方へ向かうに従って乱流状態から整流状態となるように調整され、車両後方へ良好に案内される。
【0038】
図7に示すように、車両1の走行時において横風を受けた状態では、車両1は、車両前方からの空気流と車両左側方からの空気流とを合成した気流B、即ち、車両斜め前方からの気流を受けて走行することとなる。かかる場合に、車両1の荷台4の左側方側(横風を受ける側)では、空気流の流速が比較的遅いため正圧が発生し、一方、荷台4の右側方側(横風を受けない側)では、荷台4の左側方側に比して、空気流の流速が速いため負圧が発生する。このように、荷台4の左側方側と右側方側とには、圧力差が生じ、特に、荷台4の後方側には、大きな圧力差が生じ得る。
【0039】
しかし、荷台4の車幅方向両端の下方には、車両前方側連通部18と車両後方側連通部19とが設けられた車両前方側スカート本体部16と車両後方側スカート本体部17とが配置されているため(図1、図2及び図4参照)、左側方側の車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17に向かう気流Cは、車両前方側連通部18及び車両後方側連通部19を良好に通過して荷台4の下部に流通する。このため、車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17の車両後方側の外面と荷台4の下部側の内面との間に生じる圧力差は緩和されるため、車両1に対する横力は、軽減される。
【0040】
また、車両左斜め前方から車両右斜め後方へ向かう気流Bのうち、特に、車両前方側連通部18を通過して荷台4の下部へ流入した気流Cは、右側方側の車両後方側連通部19を通過して、車両後方側スカート本体部17の外面から渦流状態の気流Dとなって効果的に排出される。このため、荷台4の両側面の後方側に生じ易い大きな圧力差が緩和されるため、ヨーイングモーメントの発生を抑制することができる。
【0041】
このように本実施形態によれば、車両前方側連通部18が設けられる車両前方側スカート本体部16及び車両後方側連通部19が設けられる車両後方側スカート本体部17は、荷台4の車幅方向両端の下部において、車両上下方向に延びると共に、車両前後方向に亘って配設される。このため、車両1の走行時における空気の流れは、車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17の外面によって整流となるように調整される。従って、車両1の走行時に荷台4の車幅方向両側の下方を流れる空気は、車両1の後方へ良好に案内されるため、車両1の空気抵抗の低減を図ることができる。
【0042】
また、荷台4の車幅方向両端の下部に配設される車両前方側スカート本体部16と車両後方側スカート本体部17とには、その外面と内面とを連通する車両前方側連通部18と車両後方側連通部19が車両前後方向に亘ってそれぞれ形成されている。このため、車両1の走行時に横風を受けると、この横風は、横風を受ける側の車両前方側連通部18及び車両後方側連通部19を通過して荷台4の下部に達し、この荷台4の下部に流入された空気は、横風を受けない側の車両前方側連通部18及び車両後方側連通部19を介して車両1の外部に排出される。すなわち、横風の車両前方側連通部18及び車両後方側連通部19を介した荷台4の下部への流入により、横風を受ける側の車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17の外面側と内面側との圧力差が緩和されるため、車両1に対する横力を軽減することができる。一方、荷台4の下部に流入された空気の車両前方側連通部18及び車両後方側連通部19を介した車両1の外部への排出により、横風を受ける側の車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17の外面側と横風を受けない側の車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17の外面側との圧力差が緩和されるため、ヨーイングモーメントの発生を抑制することが可能となる。従って、車両1への横風の影響が十分に緩和されるため、車両1の横風安定性の向上を確実に図ることができる。
【0043】
このように、車両前方側スカート本体部16と車両後方側スカート本体部17とにそれぞれ車両前方側連通部18と車両後方側連通部19とを設けるという簡単な構成により、空気抵抗の低減というサイドスカート5の本来的な機能を損なうことなく、車両1の横風安定性の向上を図ることができる。
【0044】
また、車両後方側連通部19の開口36の総面積は、車両前方側連通部18の開口35の総面積よりも大きく設定されているため、横風を受けた際、車両後方側のサイドスカート5の方が車両前方側のサイドスカート5よりも多くの空気を流通させることが可能である。このため、車両1の走行時に横風を受けた際、最も圧力差が生じる荷台4の車幅方向両側の後方側には、車両後方側連通部19を介して多くの空気が流通し、これにより、車両1に作用する横力が効果的に軽減されるため、ヨーイングモーメントの発生の抑制化を一段と図ることができる。また、車両1の走行時に荷台4の側面に沿って流れる空気は、荷台4の後方側へ向かうに従って、その乱流状態が解消されるため、車両後方側連通部19の開口面積を大きく設定しても、車両1の空気抵抗に及ぼす影響が比較的小さい。従って、車両1の空気抵抗の低減効果を維持しつつ、横風安定性を効果的に向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態では、車両前方側連通部18が、複数の板状部21のうち上下で隣接する上側の板状部21の側壁部24及び後壁部25と、下側の板状部21の前壁部23及び側壁部24とによって区画形成され、車両後方側連通部19が、複数の板状部22のうち上下で隣接する上側の板状部22の側壁部27及び後壁部28と、下側の板状部22の前壁部26及び側壁部27とによって区画形成されている。また、車両前方側連通部18及び車両後方側連通部19を車幅方向外側で水平方向から視た状態では、荷台4の下部が、上側の板状部21の下端部31と下側の板状部21の上端部32、及び、上側の板状部22の下端部33と下側の板状部22の上端部34によって目隠しされる。すなわち、車両前方側連通部18及び車両後方側連通部19による空気の流通を確保しつつ、荷台4の下部に配設されるエンジン等の車両構成部材が外部から露出しない構造とすることができる。従って、外観上の見栄えを向上させつつ、車両1の横風安定性の向上を図ることができる。
【0046】
また、車両前方側連通部18及び車両後方側連通部19は、車両前後方向に沿って延びるスリット形状を有し、車両1の走行時に車両後方へ向かって流れる空気と略同一の方向に設けられているため、走行時における空気の流れが車両前方側連通部18及び車両後方側連通部19によって阻害されることがない。従って、車両1の走行時に車体の車幅方向両側の下方を流れる空気は、車両前方側スカート本体部16及び車両後方側スカート本体部17の外面に沿って円滑に流通するため、車両の空気抵抗の低減化を図ることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、車両前方側スカート本体部16の板状部21及び車両後方側スカート本体部17の板状部22を断面略Z形状としたが、これに限られず、図8に示すように、断面略矩形状としてもよく、また、図9及び図10に示すように、断面略菱形形状とすることも可能である。
【0048】
また、上側の車両前方側連通部18と下側の車両前方側連通部18との車両上下方向の間隔、及び、上側の車両後方側連通部19と下側の車両後方側連通部19との車両上下方向の間隔を、略同一に設定したが、車両後方へ向かうに従って増大させることも可能である
次に、本発明に係る第2の実施形態のサイドスカートについて、図11〜図13に基づいて説明する。図11は本実施形態に係るサイドスカートが設けられたトラックの側面図、図12は車両前方側のサイドスカートの要部拡大側面図、図13は車両後方側のサイドスカートの要部拡大側面図である。また、図11〜図13に示す第2の実施形態は、上述した第1の実施形態のうちサイドスカートの態様のみが異なり、他の構成は第1の実施形態と同様な構成であるため、同一番号を付して重複説明を省略する。
【0049】
図11〜図13に示すように、荷台4の車幅方向両側の下方には、サイドスカート41が配置されている。
【0050】
サイドスカート41は、車両前方側スカート本体部(スカート本体)42と、車両前方側スカート本体部42の車両後方側に配設される車両後方側スカート本体部(スカート本体)43と、車両前方側スカート本体部42と車両後方側スカート本体部43とのそれぞれに車両前後方向に亘って設けられ、車幅方向外側の外面と荷台4の下部側の内面とを連通する車両前方側連通部(連通部)44と車両後方側連通部(連通部)45と、を備えている。
【0051】
車両前方側スカート本体部42及び車両後方側スカート本体部43は、板状部材からなり、その荷台4の下部側の内面の所定部位が、複数のステー8の側棒部12(図2及び図4参照)に対して、それぞれ溶接やボルト締め等により固着されている。
【0052】
車両前方側連通部44は、略円柱形状を有する貫通孔であり、車両前方側スカート本体部42に略均一に複数形成されている。
【0053】
車両後方側連通部45は、車両前方側連通部44と略同一の形状を有する貫通孔であり、車両後方側スカート本体部43に略均一に複数形成されている。
【0054】
車両後方側スカート本体部43に対する車両後方側連通部45の開口率は、車両前方側スカート本体部42に対する車両後方側連通部45の開口率よりも大きく設定されていると共に、車両後方側連通部45の総開口面積は、車両後方側連通部45の総開口面積よりも大きく設定されている。このため、車両前方側スカート本体部42と車両後方側スカート本体部43とを比較した場合、車両後方側スカート本体部43の方が車両前方側スカート本体部42よりも多くの空気を流通させることが可能となっている。なお、車両前方側連通部44及び車両後方側連通部45は、第1の実施形態の車両前方側連通部18及び車両後方側連通部19のように、車両上下方向に略均一に配列させて設けることが好適である。
【0055】
このように本実施形態によれば、車両前方側連通部44及び車両後方側連通部45は、それぞれ車両前方側スカート本体部42と車両後方側スカート本体部43とに一体的に形成される貫通孔であるため、車両前方側連通部44及び車両後方側連通部45の製作の簡易化、車体に対するサイドスカート41の組付作業の簡略化及び部品点数の削減を確実に図ることができる。
【0056】
また、車両前方側連通部44及び車両後方側連通部45は、貫通孔であり、その製作が容易であることから、貫通孔の形状を多種多様な形状に形成することが可能である。例えば、図14に示すように、貫通孔の形状を、空気抵抗を低減する形状として、車両前方側スカート本体部42及び車両後方側スカート本体部43の外面側から内面側に向かって、開口面積が縮小する断面略腕型形状に形成することもできる。
【0057】
なお、本実施形態では、車両前方側連通部44と車両後方側連通部45とを略同一の形状に形成したが、これに限られず、例えば、車両後方側連通部45の貫通孔の形状を、車両前方側連通部44のそれよりも大きく設定してもよい。また、車両前方側連通部44と車両後方側連通部45とを、それぞれ車両前方側スカート本体部42と車両後方側スカート本体部43とに略均一に形成したしたが、これに限られず、例えば、車両後方へ向かうに従って増大するように形成してもよい。
【0058】
また、第1の実施形態及び第2の実施形態では、ステー8にサイドスカート5又はサイドスカート41を取り付けたが、このステー8は、サイドスカート5又はサイドスカート41を取り付ける専用のものである必要はなく、例えば、既存のサイドバンパ等を取り付けるためのステーであってもよい。
【0059】
さらに、第1の実施形態及び第2の実施形態では、サイドスカート5及びサイドスカート41を、荷台4を搭載した車両1に配設したが、バスや乗用車等の様々な車種に適用することもできる。
【0060】
また、スカート本体部に対する連通部の開口率(開口面積の比率)は、5%以上50%以下に設定することが望ましく、特に、20%以上50%以下に設定することが最適である。
【0061】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1の実施形態に係るサイドスカートが設けられたトラックの側面図である。
【図2】車両前方側のサイドスカートの要部拡大断面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】車両後方側のサイドスカートの要部拡大断面図である。
【図5】図4の要部拡大断面図である。
【図6】無風時に車両が走行した際の空気の流れを示す図である。
【図7】横風を受けながら車両が走行した際の空気の流れを示す図である。
【図8】第1の実施形態に係るサイドスカートの他の例を示す要部拡大断面図である。
【図9】第1の実施形態に係るサイドスカートの他の例を示す要部拡大断面図である。
【図10】第1の実施形態に係るサイドスカートの他の例を示す要部拡大断面図である。
【図11】第2の実施形態に係るサイドスカートが設けられたトラックの側面図である。
【図12】車両前方側のサイドスカートの要部拡大側面図である。
【図13】車両後方側のサイドスカートの要部拡大側面図である。
【図14】第2の実施形態に係る車両前方側連通部又は車両後方側連通部の他の例を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
4 荷台
5 サイドスカート
8 ステー
16 車両前方側スカート本体部(スカート本体)
17 車両後方側スカート本体部(スカート本体)
18 車両前方側連通部(連通部)
19 車両後方側連通部(連通部)
21 板状部
22 板状部
31 下端部(目隠し部)
32 上端部(目隠し部)
33 下端部(目隠し部)
34 上端部(目隠し部)
41 サイドスカート
42 車両前方側スカート本体部(スカート本体)
43 車両後方側スカート本体部(スカート本体)
44 車両前方側連通部(連通部)
45 車両後方側連通部(連通部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の車幅方向両端の下部に車両前後方向に亘って配設され、車両上下方向に延びて前記車体の下部を覆うスカート本体と、
前記スカート本体に車両前後方向に亘って設けられ、車幅方向外側の外面と前記車体の下部側の内面とを連通する連通部と、を備えた
ことを特徴とする車両のサイドスカート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のサイドスカートであって、
前記連通部の開口面積は、車両後方側の方が車両前方側よりも大きく設定されている
ことを特徴とする車両のサイドスカート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両のサイドスカートであって、
前記スカート本体は、車両上下方向に並んで配置され、それぞれが車両前後方向へ延びる複数の板状部を有し、
前記連通部は、前記複数の板状部のうち上下で隣接する板状部の下端部と上端部とによって区画形成されて車両前後方向に沿って延びるスリット形状を有し、
前記板状部の下端部と上端部との少なくとも一方は、車幅方向外側で水平方向から前記連通部を視たときに、前記車体の下部の視認を妨げる目隠し部を有する
ことを特徴とする車両のサイドスカート。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の車両のサイドスカートであって、
前記連通部は、前記スカート本体に形成された貫通孔である
ことを特徴とする車両のサイドスカート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2007−223359(P2007−223359A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43863(P2006−43863)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】