説明

車両のサスペンションサブフレーム

【課題】車両のサスペンションサブフレームの軽量高剛性化を図りつつサスペンションサブフレームの強度に対する信頼性を向上させる。
【解決手段】各車輪支持部材13から車幅方向内側に延びるアッパ及びロアアーム17,19,21を支持するサスペンションサブフレーム1である。前側及び後側車幅方向メンバ25,27と、左側及び右側前後方向メンバ29,31とを備えている。前側車幅方向メンバ25の左右両端部には、フロントアッパ及びフロントロアアーム19,21を支持する上側及び下側支持部37,39,41,43が設けられている。前側車幅方向メンバ25は、左側の下側支持部37と右側の上側支持部43とを連結する第1連結部49と、左側の上側支持部41と右側の下側支持部39とを連結する第2連結部51とを有している。上側支持部37,39は、前側車幅方向メンバ25と一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンションサブフレームに関し、特に、マルチリンクサスペンションのサスペンションアームを支持する車両のサスペンションサブフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、所謂E型サスペンションといわれるマルチリンクサスペンションが知られており、特許文献1には、そのマルチリンクサスペンションのサスペンションアームを支持するサスペンションサブフレームの構造が開示されている。
【0003】
特許文献1のサスペンションサブフレームのように、車両前後方向に延びる左右の前後方向メンバと車幅方向に延びる前後の車幅方向メンバとが平面視で井桁状に組まれた従来のサスペンションサブフレームでは、各サスペンションアームの支持部を車輪近傍に位置する前後方向メンバに溶接で取り付けるものが多い。
【特許文献1】特開2005−193893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サスペンションサブフレームは、例えば車両の旋回時に各サスペンションアームから入力される引張荷重や圧縮荷重等を受け止めるようになっているが、各サスペンションアームの支持部を前後方向メンバに設けた従来のサスペンションサブフレームには、以下のような問題がある。
【0005】
すなわち、支持部が前後方向メンバに溶接されている場合には、車幅方向一方側の支持部からの入力荷重は、該支持部と前後方向メンバとの溶接部、前後方向メンバ、前後方向メンバと車幅方向メンバとの溶接部、車幅方向メンバという順で伝達し、同様にして伝達してきた車幅方向他方側の支持部からの入力荷重と打ち消し合うことになるが、各アームからの入力荷重が複数の部材及び溶接部を介して伝達されると、サスペンションサブフレーム(特に溶接部)に歪みや応力集中が生じ易くなり、サスペンションサブフレームの強度に対する信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
また、歪みや曲げ変形を抑制するために溶接部の補強を行うと、サスペンションサブフレームの重量が増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両のサスペンションサブフレームの軽量高剛性化を図りつつサスペンションサブフレームの強度に対する信頼性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、左右の各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる左右のアッパ及びロアアームを備えたサスペンションにおける該各アームを支持する車両のサスペンションサブフレームであって、それぞれ車両前後方向に互いに間隔をあけて車幅方向に延設される前側及び後側車幅方向メンバと、それぞれ車両前後方向に延設されて上記前側及び後側車幅方向メンバの左右両端部を連結する左側及び右側前後方向メンバとを備え、上記前側及び後側車幅方向メンバの少なくとも一方には、その左右両端部に上記アッパアームを支持する上側支持部と上記ロアアームを支持する下側支持部とがそれぞれ設けられ、上記支持部が設けられている車幅方向メンバは、上記左側の下側支持部と上記右側の上側支持部とを連結する第1連結部と、上記左側の上側支持部と上記右側の下側支持部とを連結して該第1連結部と交差する第2連結部とを有しており、上記上側及び下側支持部の少なくとも一方は、その全体が上記車幅方向メンバと一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
第1の発明によれば、前側及び後側車幅方向メンバの少なくとも一方には、その左右両端部にアッパアームを支持する上側支持部とロアアームを支持する下側支持部とがそれぞれ設けられているので、各アームの支持部を前後方向メンバに溶接する従来のサスペンションサブフレームと比較して、各支持部からの入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数を減少させてサスペンションサブフレームに歪みや応力集中が生じるのを抑えることができる。さらに、支持部が設けられている車幅方向メンバは、左側の下側支持部と右側の上側支持部とを連結する第1連結部と、左側の上側支持部と右側の下側支持部とを連結して該第1連結部と交差する第2連結部とを有しているので、左側の支持部からの入力荷重と右側の支持部からの入力荷重とを、これら第1及び第2連結部を介して効率的に打ち消し合わせることができる。
【0010】
また、上側及び下側支持部の少なくとも一方の支持部は、その全体が該支持部が設けられている車幅方向メンバと一体に形成されているので、例えば車幅方向メンバと他の部材とを接合することにより形成される支持部と比較して、支持部の寸法精度及び剛性を向上させることができるとともに、入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数をさらに減少させることができる。これにより、補強箇所数を減少させてサスペンションサブフレームの軽量化を図ることができる。
【0011】
したがって、サスペンションサブフレームの軽量高剛性化を図りつつサスペンションサブフレームの強度に対する信頼性を向上させることができる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記上側支持部は、その全体が上記車幅方向メンバと一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明によれば、上側支持部は、その全体が車幅方向メンバと一体に形成されていることから、該上側支持部の剛性を向上させることができる。
【0014】
ところで、サスペンションサブフレームを組み立てる際には、前後方向メンバに車幅方向メンバの上側支持部の下端を引っ掛けた状態で、前後方向メンバと車幅方向メンバとの溶接を行うことが考えられる。このため、サスペンションサブフレームの組立時には、車幅方向メンバは自重を主に上側支持部で支えることになるが、本発明では、上側支持部の剛性を向上させているので、該上側支持部の歪みや曲げ変形を抑制することができる。
【0015】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記下側支持部は、その全体が上記車幅方向メンバと一体に形成されているとともに、上記前後方向メンバの下面に接合されていることを特徴とするものである。
【0016】
第3の発明によれば、下側支持部は、その全体が車幅方向メンバと一体に形成されていることから、該下側支持部の剛性を向上させることができる。
【0017】
ところで、バンプ時には、車体にスプリングを介して取り付けられた前後方向メンバに車幅方向メンバの下側支持部の上端が当接するため、車幅方向メンバの下側支持部に大きな上下方向荷重が入力されることになる。
【0018】
ここで、本発明によれば、下側支持部は、その剛性が向上しているとともに、左側及び右側前後方向メンバの下面に接合されているので、該下側支持部の上端が前後方向メンバに当接するのを抑えて、該下側支持部の歪みや曲げ変形を確実に抑制することができる。
【0019】
特に、上記第2の発明では、上側及び下側支持部が共に車幅方向メンバと一体に形成されていることから、各支持部の寸法精度及び剛性を向上させつつ各支持部からの入力荷重を伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数をより一層減少させることができる。これにより、補強箇所数を減少させてサスペンションサブフレームの軽量化を図ることができる。したがって、サスペンションサブフレームの更なる軽量高剛性化を図りつつサスペンションサブフレームの強度に対する信頼性を一層向上させることができる。
【0020】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか1つの発明において、上記支持部が設けられている車幅方向メンバは、上記一体に形成されている支持部以外の部分が、車両前後方向前側又は後側に開放された断面コ字状に形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
第4の発明によれば、支持部が設けられている車幅方向メンバは、一体に形成されている支持部以外の部分が、車両前後方向前側又は後側に開放された断面コ字状に形成されているので、プレス成形等による製造が容易になる。また、アームの支持部に比べて捩れや拗れが発生し難く高剛性が要求されない部分の形状を適正化(閉断面や中実体等にすることなく開断面に)することにより、車幅方向メンバを軽量化することができる。
【0022】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか1つの発明において、上記前側及び後側車幅方向メンバのうち一方の車幅方向メンバに設けられている上記左右の上側及び下側支持部と、他方の車幅方向メンバの車幅方向中央部とをそれぞれ連結し、一方の車幅方向メンバ側から他方の車幅方向メンバ側に行くに従って車幅方向内側に傾斜している左側及び右側傾斜メンバをさらに備えており、上記左側及び右側傾斜メンバは、上記上側支持部と上記下側支持部とをそれぞれ連結していることを特徴とするものである。
【0023】
第5の発明によれば、一方の車幅方向メンバに設けられている左右の上側及び下側支持部と、他方の車幅方向メンバの車幅方向中央部とをそれぞれ連結する左側及び右側傾斜メンバを備えているので、上側及び下側支持部から入力される車幅方向の荷重を、一方の車幅方向メンバに形成された荷重伝達経路に加えて、左右の傾斜メンバ及び他方の車幅方向メンバからなる荷重伝達経路でも伝達することができる。また、傾斜メンバは上側支持部と下側支持部とを連結しているので、これらの支持部を上下方向に補強することができる。
【0024】
特に、上記第4の発明において、車幅方向メンバの車両前後方向後側が開放されている場合には、コ字状の上下のフランジ部が傾斜メンバによって固定されることから、該車幅方向メンバを効果的に補強することができる。
【0025】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記左側及び右側傾斜メンバ並びに上記一方の車幅方向メンバは、それぞれ向かい合う側に開放された断面コ字状に形成されていることを特徴とするものである。
【0026】
第6の発明によれば、傾斜メンバを断面コ字状に形成することにより、傾斜メンバの軽量化を図ることができるとともに、左側及び右側傾斜メンバ並びに一方の車幅方向メンバを開放側が向かい合うように連結することにより、これらのメンバがそれぞれの上下のフランジ部で補強し合うので、メンバ全体としての断面性能を高めることができる。
【0027】
第7の発明は、上記第1〜6のいずれか1つの発明において、上記各車輪支持部材は後輪を支持するものであり、上記サスペンションは、上記各車輪支持部材から車両前方に延びる前後方向アームと、上記アッパ及びロアアームを含み、上記各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる少なくとも3本の車幅方向アームとを備え、上記上側及び下側支持部は、上記前側車幅方向メンバに設けられていて、上記車幅方向アームのうち上記各車輪支持部材の前側部分に位置するアッパ及びロアアームを支持していることを特徴とするものである。
【0028】
第7の発明によれば、サスペンションサブフレームは、各車輪支持部材から車両前方に延びる前後方向アームと、該各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる少なくとも3本の車幅方向アームとを備えた所謂E型サスペンションにおいて、サスペンションアームに車幅方向から大きな荷重が入力した場合でも、該サスペンションアームを効果的に支持することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、車幅方向メンバの左右両端部に上側及び下側支持部をそれぞれ設けることにより、荷重伝達経路上の溶接箇所数を減少させてサスペンションサブフレームに歪みや応力集中が生じるのを抑えるとともに、上側及び下側支持部の少なくとも一方の支持部を車幅方向メンバと一体に形成することにより、補強箇所数のさらなる減少によるサスペンションサブフレームの軽量化を図りつつ支持部の寸法精度及び剛性が高められるので、サスペンションサブフレームの軽量高剛性化を図りつつサスペンションサブフレームの強度に対する信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るサスペンションサブフレームが適用された車両のリアサスペンションを左斜め前方から見た斜視図であり、図2は、サスペンションサブフレームに取り付けられる右側後輪のサスペンション装置を左斜め前方から見た斜視図であり、図3は、リアサスペンションを前方から見た正面図であり、図4は、リアサスペンションを下方から見た底面図である。なお、図1〜図4では左側後輪のサスペンション装置を図示省略しているが、左側後輪のサスペンション装置も右側後輪7のサスペンション装置5とほぼ同様の構成である。
【0032】
図1に示すように、リアサスペンション3は、サスペンションサブフレーム1とサスペンション装置5と車輪(右側後輪)7とを備えている。
【0033】
上記車輪7は、図1及び図2に示すように、タイヤ9とホイール11と該車輪を支持する車輪支持部材13とを有している。
【0034】
上記サスペンション装置5は、車輪支持部材13から車両前方に延びるトレーリングアーム(前後方向アーム)15と、各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる3本の車幅方向アーム(リアロアアーム17、フロントロアアーム19及びフロントアッパアーム21)とを有している。すなわち、リアサスペンション3の形態は、所謂E型サスペンションとなっている。
【0035】
上記トレーリングアーム15は、その後端部15aが車輪支持部材13に取り付けられているとともに、その前端部15bが車体(図示せず)に取り付けられている。
【0036】
上記リアロアアーム17は、サスペンション装置5の後側部分から車幅方向内側に延びており、その車幅方向外側の端部17aが上記車輪支持部材13に取り付けられている(連結されている)とともに、その内側の端部17bが上記サスペンションサブフレーム1に取付支持されている。このリアロアアーム17には、スプリング23a及びダンパ23bを備える緩衝装置23が取り付けられている。スプリング23aは、その下端部がリアロアアーム17のスプリング受け部17cに受け入れられている一方、その上端部が車体に取り付けられている。ダンパ23bは、その下端部がリアロアアーム17に取り付けられている一方、その上端部が車体に取り付けられている。
【0037】
上記フロントロアアーム19は、サスペンション装置5の前側部分の下側から車幅方向内側に延びており、その外側の端部19aが車輪支持部材13に取り付けられている(連結されている)一方、その内側の端部19bがサスペンションサブフレーム1に取付支持されている。
【0038】
上記フロントアッパアーム21は、サスペンション装置5の前側部分の上側から車幅方向内側に延びており、その外側の端部21aが車輪支持部材13に取り付けられている(連結されている)一方、その内側の端部21bがサスペンションサブフレーム1に取付支持されている。
【0039】
これらのアーム15,17,19,21はホイール11の動きをコントロールするとともに、走行中に車輪が受ける外力(上下力、コーナリング中の横力、制動加速時の前後力等)を支えるようになっている。
【0040】
次に、サスペンションサブフレーム1の構造を説明する。図5は、前側車幅方向メンバを左斜め後方から見た斜視図であり、図6は、前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバとを左斜め後方から見た斜視図であり、図7は、前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバと後側車幅方向メンバとを左斜め後方から見た斜視図であり、図8は、サスペンションサブフレームを左斜め後方から見た斜視図であり、図9は、サスペンションサブフレームを下方から見た斜視図であり、図10は、サスペンションサブフレームを左側から見た側面図である。
【0041】
サスペンションサブフレーム1は、それぞれ車両前後方向に互いに間隔をあけて配置される前側及び後側車幅方向メンバ25,27と、それぞれ車両前後方向に延設されて上記前側及び後側車幅方向メンバ25,27の左右両端部を連結する左側及び右側前後方向メンバ29,31と、それぞれ該前側車幅方向メンバ25と該後側車幅方向メンバ27との間に設けられて(架設されて)これらを連結する左右一対の傾斜メンバ33,35とを有している。
【0042】
上記前側車幅方向メンバ(一方の車幅方向メンバ)25は、車輪支持部材13の前側で車幅方向に延びており、車両正面視で2つの三角枠体の頂部を繋いだような形状に形成されている。図1及び図3に示すように、前側車幅方向メンバ25には、その車幅方向右側の上端部25bに、フロントアッパアーム21を支持する上側支持部39が、その車幅方向右側の下端部25dに、フロントロアアーム19を支持する下側支持部43がそれぞれ設けられている。同様に、前側車幅方向メンバ25の車幅方向左側の上端部25aには上側支持部37が、車幅方向左側の下端部25cには下側支持部41がそれぞれ設けられている。左側及び右側の下側支持部41,43は、その一部が該前側車幅方向メンバ25と一体に形成されている一方、左側及び右側の上側支持部37,39は、その全体が該前側車幅方向メンバ25と一体に形成されている。
【0043】
より詳しくは、左側及び右側の下側支持部41,43は、図6に示すように、後側が開放された断面コ字状をなす前側車幅方向メンバ25の左側及び右側の下端部25c、25dと、前側が開放された断面コ字状をなす傾斜メンバ33,35の下側の前端部33a,35aとが組み合わされた閉断面により形成されている。なお、前側車幅方向メンバ25の下端部25c、25dと、傾斜メンバ33,35の下側の前端部33a,35aとは突き合わせ溶接ではなく、両者をラップさせて隅肉溶接することにより接合されている。
【0044】
これに対し、左側及び右側の上側支持部37,39は、前側車幅方向メンバ25の左側及び右側の上端部25a、25bを下側が開放された断面コ字状をなすように折り曲げることにより形成されている。このように、上側支持部37,39は、単一の部材(前側車幅方向メンバ25)を折り曲げ加工することにより形成されているので、2つの部材(前側車幅方向メンバ25及び傾斜メンバ33,35)を溶接により組み合わせた下側支持部41,43に比べて、寸法精度及び剛性が向上している。
【0045】
左右の上側及び下側支持部37,39,41,43には、フロントロアアーム19及びフロントアッパアーム21の車幅方向内側の端部に設けられたラバーブッシュ部19c、21c(図9参照)を取り付けるための車両前後方向に延びる貫通孔37a,39a,41a,43aがそれぞれ形成されている。そして、図9に示すように、フロントロアアーム19及びフロントアッパアーム21が、ラバーブッシュ部19c、21cを介して上側及び下側支持部37,41に取り付けられる。
【0046】
前側車幅方向メンバ25は、一体に形成された左側及び右側の上側支持部37,39以外の部分が、後側が開放された断面コ字状に形成されており、上側及び下側フランジ部45,47が車両前後方向後側に延びている。これにより、前側車幅方向メンバ25はプレス成形等による製造が容易になる。このように、前側車幅方向メンバ25のうち一体に形成された上側支持部37,39以外の部分を断面コ字状に形成するのは、該支持部37,39以外の部分は、上記各支持部37,39,41,43に比べて捩れや拗れが発生し難いので、局部剛性や強度は要求されず、基本的には全体剛性のみが要求されるからである。
【0047】
また、前側車幅方向メンバ25は、右側(一方側)の上側支持部39と左側(他方側)の下側支持部41とを連結する第1連結部49と、右側(一方側)の下側支持部43と左側(他方側)の上側支持部37とを連結して該第1連結部49と交差する第2連結部51とを有している。
【0048】
より詳しくは、上記前側車幅方向メンバ25は、右側の上側支持部39が設けられている右側上端部25bと、左側の下側支持部41が設けられている左側下端部25cとを連結するようにほぼ真っ直ぐに延びるフレーム(第1連結部49)と、右側の下側支持部43が設けられている右側下端部25dと、左側(他方側)の上側支持部37が設けられている左側上端部25aとを連結するようにほぼ真っ直ぐに延びるフレーム(第2連結部51)とを有している。言い換えると、前側車幅方向メンバ25は、図3に示すように、その上下方向の長さが、車幅方向外方から内方に行くに従って短くなるように形成されているとともに、前側車幅方向メンバ25には、車幅方向内方に向かうにつれてその上下方向長さが小さくなる開口部53,53が形成されている。このように、前側車幅方向メンバ25は、第1連結部49と第2連結部51とが車両正面視で略X字状をなすように形成されている。
【0049】
このように形成された第1連結部49及び第2連結部51を有する前側車幅方向メンバ25の左右の上端部25a,25b及び下端部25c,25dに、上記各支持部37,39,41,43を設けることにより、右側の上側支持部39、第1連結部49及び左側の下側支持部41からなる荷重伝達経路と、右側の下側支持部43、第2連結部51及び左側の上側支持部37からなる荷重伝達経路とが形成される。上述の通り、左側及び右側の上側支持部37,39は、その全体が該前側車幅方向メンバ25と一体に形成されているので、上記各荷重伝達経路上の溶接箇所は下側支持部41,43近傍のみとなる。
【0050】
上記左側及び右側の傾斜メンバ33,35は、前側車幅方向メンバ25の左右両端部と後側車幅方向メンバ27の車幅方向中央部とを連結し、後方に行くに従って内側に傾斜するように延びており、前側車幅方向メンバ25と共に平面視で略三角形状をなしている。また、左側及び右側の傾斜メンバ33,35は、対向している側が開放された断面コ字状に成形されていて、上側フランジ部55,59及び下側フランジ部57,61がそれぞれ対向側に延びている。
【0051】
左側及び右側の傾斜メンバ33,35は、上記上側支持部37,39と後側車幅方向メンバ27の車幅方向の中央部67とを連結する上側連結部79,81と、上記下側支持部41,43と後側車幅方向メンバ27の車幅方向の中央部67とを連結する下側連結部83,85とをそれぞれ有している。換言すると、左側及び右側の傾斜メンバ33,35は、図8に示すように、前側車幅方向メンバ25の端部から、後側車幅方向メンバ27の車幅方向中央部に近づくに従って、すなわち、後方に行くに従って上下方向長さが小さくなるように形成されているとともに、各傾斜メンバ33,35には、後方に行くに従って上下方向長さが小さくなる開口部65,65が形成されている。
【0052】
左側及び右側の傾斜メンバ33,35と前側車幅方向メンバ25とは、図6に示すように、それぞれ開放された側が向かい合うように配置されている。このように、前側車幅方向メンバ25と左側及び右側の傾斜メンバ33,35とが取付配置されることにより、前側車幅方向メンバ25の上下のフランジ部45,47と、左側傾斜メンバ33の上下のフランジ部55,57と、右側傾斜メンバ35の上下のフランジ部59,61とがそれぞれ補強し合って、これらのメンバ全体としての断面性能が高められている。
【0053】
また、右側及び左側傾斜メンバ33,35は、前側車幅方向メンバ25における車幅方向両側の端部で上側支持部37,39と下側支持部41,43とをそれぞれ連結するようになっている。具体的には、上述の通り、各傾斜メンバ33,35の下側の前端部33a,35aが前側が開放された断面コ字状に形成されているのに対し、各傾斜メンバ33,35の上側の前端部33b,35bは断面L字状に形成されていて、該上側の前端部33b,35bの上側部分(上側フランジ部55,59)が上側支持部37,39近傍における前側車幅方向メンバ25の上側フランジ部45に溶接されている一方、該前端部33b,35bの外側部分が上側支持部37,39に溶接されている。これにより、各上側支持部37,39近傍に各傾斜メンバ33,35と前側車幅方向メンバ25とからなる閉断面が更に形成されるので、各上側支持部37,39の剛性が向上するとともに、各傾斜メンバ33,35が上側支持部37,39と下側支持部41,43とを連結することで、左側の支持部37,41及び右側の支持部39,43を上下方向に補強することができる。
【0054】
また、前側車幅方向メンバ25と傾斜メンバ33,35との接合部近傍(上側支持部37,39と下側支持部41,43との間)には車両正面視で内側に凹んだ嵌合部40が形成されている。この嵌合部40には、後述するように、前後方向メンバ29、31が取り付けられるが、嵌合部40を閉断面にして、より剛性を高めるようにしてもよい。
【0055】
上記後側車幅方向メンバ(他方の車幅方向メンバ)27は、車輪支持部材13の後側で車幅方向に延びており、その車幅方向の中央部67が断面矩形状に形成されている一方、該中央部67以外の部分が下側が開放された断面コ字状に形成されている。また、後側車幅方向メンバ27は、中央部67が略水平に延びている一方、該中央部67以外の部分が車幅方向外側に行くに従って上方に傾斜するように形成されている(図12及び図13参照)。そして、上記各傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cが互いに近接して該中央部67に溶接で取り付けられている(連結されている)。より詳しくは、各傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cにおける上側フランジ部55,59の下面が、後側車幅方向メンバ27の中央部67の上面に載置された状態で溶接されているとともに、上側及び下側連結部79,81,83,85並びに下側フランジ部57,61の後端が、後側車幅方向メンバ27の中央部67の前面(前側フランジ部73)に当接された状態で溶接されている。
【0056】
また、後側車幅方向メンバ27には、中央部67(中央部のやや外側)に、車両前後方向に延びる貫通孔69a,71aが形成されている。この貫通孔69a,71aが形成された部分が、後側車幅方向メンバ27におけるリアロアアーム17を支持する後側支持部69,71を構成しており、図9に示すように、これら貫通孔69a,71aにリアロアアーム17の車幅方向内側の端部に設けられたラバーブッシュ部17dが取り付けられている。上記各傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cは、これら後側支持部69,71の近傍に取り付けられており、該後側支持部69,71の剛性を高めるようにしている。なお、これら後側支持部69,71と同じ位置に、各傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cを取り付けてもよい。
【0057】
さらに、後側車幅方向メンバ27は、本体部77の左右の端部77a,77bが前後方向メンバ29,31に沿うように湾曲しているとともに、前後のフランジ部73,75が本体部77よりも更に車幅方向外側に延びて形成された受部73a,73b,75a,75bに前後方向メンバ27を載置するようになっている。
【0058】
上記前後方向メンバ29,31は、車両前後方向略中央ほど車幅方向内側に湾曲しており、その前側部分がそれぞれ右側及び左側傾斜メンバ33,35の傾斜方向に沿うように車幅方向外側に延びている。左側前後方向メンバ29は、その前側部分を左側嵌合部40に嵌合させるとともに、その後側部分を後側車幅方向メンバ27の左端部77aに当接させるように左側の受部73a,75aに載置されている。一方、右側前後方向メンバ31は、その前側部分を右側嵌合部40に嵌合させるとともに、その後側部分を後側車幅方向メンバ27の右端部77bに当接させるように右側の受部73b,75bに載置されている。そして、左右の前後方向メンバ29,31がこれら嵌合部40,40並びに後側車幅方向メンバ27の本体部77の左右の端部77a,77b及び左右の受部73a,73b,75a,75bに溶接されて、図1及び図8に示すようなサスペンションサブフレーム1を構成している。
【0059】
前後方向メンバ29、31の左右の前端部にはそれぞれマウント部87,89が形成され、左右の後端部にはそれぞれマウント部91,93が形成さており、これらのマウント部87,89,91,93に取り付けられたラバーブッシュ(図示せず)を介して、サスペンションサブフレーム1が車体に取り付けられている(支持されている)。
【0060】
次に、サスペンションサブフレーム1の作用を説明する。図11は、サスペンションサブフレーム1の作用の一例を説明するためのサスペンションサブフレーム1の概略正面図である。
【0061】
図11に示すサスペンションサブフレーム1では、フロントロアアーム19の下側支持部41,43が前側車幅方向メンバ25の左右両側の下端部25c、25dに設けられている一方、フロントアッパアーム21の上側支持部37,39が前側車幅方向メンバ25の左右両側の上端部25a、25bに設けられている。また、前側車幅方向メンバ25の第1連結部49及び第2連結部51は、図11の二点鎖線63で示すように、車両正面視で略X字状をなすように形成されている。
【0062】
例えば車両の旋回時に、タイヤ9接地点で荷重F1、F2がそれぞれ図11の黒抜き矢印の方向に車輪に加わると、フロントロアアーム19及びフロントアッパアーム21には、それぞれ図11の白抜き矢印の方向に荷重Fが伝達される。具体的には、例えば、接地点同相の左旋回時には、右側のフロントロアアーム19に前側車幅方向メンバ25を圧縮する荷重が加わる一方、左側のフロントアッパアーム21にも前側車幅方向メンバ25を圧縮する荷重が加わり、また、右側のフロントアッパアームに前側車幅方向メンバ25を引っ張る荷重が加わる一方、左側のフロントロアアーム19にも前側車幅方向メンバ25を引っ張る荷重が加わる。
【0063】
ここで、下側支持部41,43及び上側支持部37,39は前側車幅方向メンバ25に設けられているので、各アーム14、16に加わる荷重が前側車幅方向アーム25に効率良く伝わるとともに、車両正面視で略X字状をなすように形成されている第1及び第2連結部49,51を介して左右の荷重同士が効果的に打ち消しあうことになる。
【0064】
さらに、サスペンションサブフレーム1は、前側車幅方向メンバ25と後側車幅方向メンバ27との間に架設されてこれらを連結する左右一対の傾斜メンバ33,35を有しているので、該サスペンションサブフレーム1には、前側車幅方向メンバ25に形成された荷重伝達経路に加えて、図12の二点鎖線66で示すように、左側の上側支持部37、上側連結部79、後側車幅方向メンバ27、下側連結部85、右側の下側支持部43という順で荷重が伝達される荷重伝達経路と、左側の下側支持部41、下側連結部83、後側車幅方向メンバ27、上側連結部81、上側支持部39という順で荷重が伝達される荷重伝達経路とが構成されている。
【0065】
これにより、前側車幅方向メンバ25に形成された荷重伝達経路に加えて、左右の傾斜メンバ33,35及び後側車幅方向メンバ27からなる荷重伝達経路にも入力荷重が伝達されるので、左右の荷重同士が一層確実に打ち消しあうことになる。
【0066】
加えて、左側及び右側傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cは、その上側フランジ部55,59が左右の後側支持部69,71の近傍で、後側車幅方向メンバ27の中央部67上面とそれぞれ連結されているので、図13の二点鎖線68で示すように、左側傾斜メンバ33の上側連結部79が、左側の上側支持部37と右側の後側支持部71との間で荷重を伝達する車両正面視で略直線状の荷重伝達経路を構成するとともに、右側傾斜メンバ35の上側連結部81が、右側の上側支持部39と左側の後側支持部69との間で荷重を伝達する車両正面視で略直線状の荷重伝達経路を構成するようになっている。
【0067】
これにより、車両後方に位置する左右のリアロアアーム17,17から入力される荷重と、車両前方に位置する左右のフロントアッパアーム21,21から入力される荷重とが打ち消しあうことになる。
【0068】
さらに、図14の二点鎖線70で示すように、右側の車輪支持部材13の後側部分から入力される荷重と、左側の車輪支持部材(図示せず)の前側部分から入力される荷重とが打ち消しあうことになるので、サスペンションサブフレーム1の平面的な捩れも抑えることができる。
【0069】
−効果−
本実施形態によれば、前側車幅方向メンバ25には、その左右両端部にフロントアッパアーム21,21を支持する上側支持部37,39とフロントロアアーム19,19を支持する下側支持部41,43とがそれぞれ設けられているので、各アームの支持部を前後方向メンバに溶接する従来のサスペンションサブフレームと比較して、各支持部37,39,41,43からの入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数を減少させてサスペンションサブフレーム1に歪みや応力集中が生じるのを抑えることができる。さらに、前側車幅方向メンバ25は、左側の下側支持部41と右側の上側支持部39とを連結する第1連結部49と、左側の上側支持部37と右側の下側支持部43とを連結して第1連結部49と交差する第2連結部51とを有しているので、左側の支持部37,41からの入力荷重と右側の支持部39,43からの入力荷重とを、これら第1及び第2連結部49,51を介して効率的に打ち消し合わせることができる。
【0070】
また、上側支持部37,39は、その全体が前側車幅方向メンバ25と一体に形成されているので、前側車幅方向メンバ25と各傾斜メンバ33,35とを接合することにより形成される下側支持部41,43と比較して、上側支持部37,39の寸法精度及び剛性を向上させることができるとともに、入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数をさらに減少させることができる。これにより、補強箇所数を減少させてサスペンションサブフレーム1の軽量化を図ることができる。
【0071】
したがって、サスペンションサブフレーム1の軽量高剛性化を図りつつサスペンションサブフレーム1の強度に対する信頼性を向上させることができる。
【0072】
ところで、サスペンションサブフレーム1を組み立てる際には、治具に前後方向メンバを取り付け、該前後方向メンバ29,31に前側車幅方向メンバ25の上側支持部37,39の下端を引っ掛けた状態で、前後方向メンバ29,31と前側車幅方向メンバ25との溶接を行うことが多い。このため、サスペンションサブフレーム1の組立時には、前側車幅方向メンバ25は自重を上側支持部37,39のみで支えることになるが、本実施形態によれば、上側支持部37,39の剛性を向上させているので、該上側支持部37,39の歪みや曲げ変形を抑制することができる。
【0073】
また、前側車幅方向メンバ25は、一体に形成されている上側支持部37,39以外の部分が、車両前後方向後側に開放された断面コ字状に形成されているので、プレス成形等による製造が容易になる。このように、アーム19,21の支持部37,39に比べて捩れや拗れが発生し難く高剛性が要求されない車幅方向中央部の形状を適正化することにより、前側車幅方向メンバ25を軽量化することができる。
【0074】
さらに、前側車幅方向メンバ25に設けられている左右の上側及び下側支持部37,39,41,43と、後側車幅方向メンバ27の車幅方向中央部67とをそれぞれ連結する左側及び右側傾斜メンバ33,35を備えているので、上側及び下側支持部37,39,41,43から入力される車幅方向の荷重を、前側車幅方向メンバ25に形成された荷重伝達経路に加えて、左右の傾斜メンバ33,35及び後側車幅方向メンバ27からなる荷重伝達経路でも伝達することができる。また、傾斜メンバ33,35は、上側支持部37,39と下側支持部41,43とを連結しているので、これらの支持部37,39,41,43を上下方向に補強することができる。
【0075】
特に、前側車幅方向メンバ25の後側が開放されている場合には、コ字状の上下のフランジ部45,47が傾斜メンバ33,35によって固定されることから、該前側車幅方向メンバ25を効果的に補強することができる。
【0076】
さらに、傾斜メンバ33,35を断面コ字状に形成することにより、傾斜メンバ33,35の軽量化を図ることができるとともに、左側及び右側傾斜メンバ33,35並びに前側車幅方向メンバ25を開放側が向かい合うように連結することにより、これらのメンバがそれぞれの上下のフランジ部45,47,55,57,59,61で補強し合うので、メンバ全体としての断面性能を高めることができる。
【0077】
また、サスペンションサブフレーム1は、各車輪支持部材13から車両前方に延びるトレーリングアーム15と、該各車輪支持部材13から車幅方向内側に延びる3本の車幅方向アーム17,19,21とを備えた所謂E型サスペンションにおいて、各サスペンションアーム17,19,21に車幅方向から大きな荷重が入力した場合でも、該サスペンションアーム17,19,21を効果的に支持することができる。
【0078】
さらに、上側支持部37,39だけを前側車幅方向メンバ25と一体に形成しているので、上側及び下側支持部37,39,41,43の両方を前側車幅方向メンバ25と一体に形成するものに比べて、サスペンションサブフレーム1の製造コストを抑えることができる。
【0079】
(実施形態2)
本実施形態は、フロントロアアーム19の支持部41,43の構成が実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点について説明する。
【0080】
図15〜図18は、実施形態1の図5〜図8に対応する図であり、図19は実施形態1の図4に対応する図である。
【0081】
図15〜19に示すように、フロントアッパアーム21を支持する上側支持部37,39のみならず、フロントロアアーム19を支持する下側支持部41,43も、その全体が前側車幅方向メンバ25と一体に形成されている。
【0082】
より詳しくは、下側支持部41,43は、前側車幅方向メンバ25の左側及び右側の上端部25a、25bを下側が開放された断面コ字状をなすように折り曲げることにより形成されている。このように、上側支持部37,39及び下側支持部41,43が、単一の部材(前側車幅方向メンバ25)を折り曲げ加工することにより形成されているので、2つの部材(前側車幅方向メンバ25及び傾斜メンバ33,35)を溶接により組み合わせたものに比べて、寸法精度及び剛性がより一層向上するとともに、荷重伝達経路上の溶接箇所数がより一層低減することになる。
【0083】
また、上記下側支持部41,43は、該下側支持部41,43の上縁に沿って、上側支持部37,39と下側支持部41,43との間の嵌合部40に嵌合された前後方向メンバ29、31の下面と溶接されている。このため、下側支持部41,43(前側車幅方向メンバ25)は、バンプ時にも、車体にスプリングを介して取り付けられた前後方向メンバ29,31に追従するようになっている。
【0084】
また、右側及び左側傾斜メンバ33,35は、前側車幅方向メンバ25における車幅方向両側の端部で上側支持部37,39と下側支持部41,43とをそれぞれ連結するようになっている。具体的には、各傾斜メンバ33,35の上側の前端部33a,35aと同様に、各傾斜メンバ33,35の下側の前端部33b,35bも断面L字状に形成されていて、図19に示すように、該前端部33a,35aの下側部分(下側フランジ部57,61)が下側支持部41,43近傍における前側車幅方向メンバ25の下側フランジ部47に溶接されているとともに、該前端部33a,35aの外側部分が下側支持部41,43に溶接されている。これにより、各下側支持部41,43近傍に各傾斜メンバ33,35と前側車幅方向メンバ25とからなる閉断面が更に形成されるので、各下側支持部41,43の剛性が向上するとともに、各傾斜メンバ33,35が上側支持部37,39と下側支持部41,43とを連結することで、左側の支持部37,41及び右側の支持部39,43を上下方向に補強することができる。
【0085】
−効果−
本実施形態によれば、下側支持部41,43は、前側車幅方向メンバ25と一体に形成されていることから、該下側支持部41,43の剛性を向上させることができる。
【0086】
ところで、バンプ時には、車体にスプリングを介して取り付けられた前後方向メンバ29,31に前側車幅方向メンバ25の下側支持部41,43の上端が当接するため、前側車幅方向メンバ25の下側支持部41,43に大きな上下方向荷重が入力されることになる。
【0087】
ここで、本実施形態によれば、下側支持部41,43は、その剛性が向上しているとともに、左側及び右側前後方向メンバ29,31の下面に接合されているので、該下側支持部41,43の上端が前後方向メンバ29,31に当接するのを抑えて、該下側支持部41,43の歪みや曲げ変形を確実に抑制することができる。
【0088】
また、上側及び下側支持部37,39,41,43が共に前側車幅方向メンバ25と一体に形成されていることから、各支持部37,39,41,43の寸法精度及び剛性を向上させつつ各支持部37,39,41,43からの入力荷重を伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数をより一層低減させることができる。これにより、補強箇所数を減少させてサスペンションサブフレーム1の軽量化を図ることができる。したがって、サスペンションサブフレーム1の更なる軽量高剛性化を図りつつサスペンションサブフレーム1の強度に対する信頼性を一層向上させることができる。
【0089】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、サスペンションサブフレーム1をE型サスペンションに適用したが、これに限らず、他の形式のサスペンションに適用してもよい。
【0090】
また、上記各実施形態では、サスペンションサブフレーム1を車両のリアサスペンションに適用したが、これに限らず、車両のフロントサスペンションに適用してもよい。
【0091】
さらに、上記各実施形態では、前側車幅方向メンバ25でロアアーム19,アッパアーム21を支持するようにしたが、これに限らず、後側車幅方向メンバ27を、前側車幅方向メンバ25と同様の形状に形成し、ロアアーム19,アッパアーム21及び傾斜補強メンバ28も本実施形態とは前後が逆になるように配置して、後側のサスペンションアームからの荷重を有効に受け止めるようにしてもよい。
【0092】
また、上記各実施形態では、フロントアッパアーム21を支持する上側支持部37,39とフロントロアアーム19を支持する下側支持部41,43とを、前側車幅方向メンバ25の車幅方向両側の端部に設けたが、これに限らず、例えば、これら上側及び下側支持部37,39,41,43を前側及び後側車幅方向メンバ25,27の車幅方向両側の端部に設けてもよい。このようにすれば本発明のサスペンションサブフレーム1を、フロントアームに加えリアアームを備える所謂A型サスペンションに適用することができる。
【0093】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0094】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上説明したように、本発明は、マルチリンクサスペンションのサスペンションアームを支持する車両のサスペンションサブフレーム等について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施形態1に係るサスペンションサブフレームが適用された車両のリアサスペンションを左斜め前方から見た斜視図である。
【図2】サスペンションサブフレームに取り付けられる右側後輪のサスペンション装置を左斜め前方から見た斜視図である。
【図3】リアサスペンションを前方から見た正面図である。
【図4】リアサスペンションを下方から見た底面図である。
【図5】前側車幅方向メンバを左斜め後方から見た斜視図である。
【図6】前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバとを左斜め後方から見た斜視図である。
【図7】前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバと後側車幅方向メンバとを左斜め後方から見た斜視図である。
【図8】サスペンションサブフレームを左斜め後方から見た斜視図である。
【図9】サスペンションサブフレームを下方から見た斜視図である。
【図10】サスペンションサブフレームを左側から見た側面図である。
【図11】サスペンションサブフレームの作用の一例を説明するためのサスペンションサブフレームの概略正面図である。
【図12】サスペンションサブフレームの作用の一例を説明するためのサスペンションサブフレームの概略背面図である。
【図13】サスペンションサブフレームの作用の一例を説明するためのサスペンションサブフレームの概略背面図である。
【図14】サスペンションサブフレームの作用の一例を説明するためのサスペンションサブフレームの底面図である。
【図15】実施形態2に係る前側車幅方向メンバを左斜め後方から見た斜視図である。
【図16】前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバとを左斜め後方から見た斜視図である。
【図17】前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバと後側車幅方向メンバとを左斜め後方から見た斜視図である。
【図18】サスペンションサブフレームを上方から見た斜視図である。
【図19】リアサスペンションを下方から見た底面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 サスペンションサブフレーム
3 リアサスペンション(サスペンション)
7 後輪
13 車輪支持部材
15 トレーリングアーム(前後方向アーム)
17 リアロアアーム(車幅方向アーム)
19 フロントロアアーム(ロアアーム)(車幅方向アーム)
21 フロントアッパアーム(車幅方向アーム)
25 前側車幅方向メンバ(一方の車幅方向メンバ)
27 後側車幅方向メンバ(他方の車幅方向メンバ)
29 左側前後方向メンバ
31 右側前後方向メンバ
33 左側傾斜メンバ
35 右側傾斜メンバ
37 左側の上側支持部
39 右側の上側支持部
41 左側の下側支持部
43 右側の下側支持部
49 第1連結部
51 第2連結部
67 後側車幅方向メンバの中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる左右のアッパ及びロアアームを備えたサスペンションにおける該各アームを支持する車両のサスペンションサブフレームであって、
それぞれ車両前後方向に互いに間隔をあけて車幅方向に延設される前側及び後側車幅方向メンバと、
それぞれ車両前後方向に延設されて上記前側及び後側車幅方向メンバの左右両端部を連結する左側及び右側前後方向メンバとを備え、
上記前側及び後側車幅方向メンバの少なくとも一方には、その左右両端部に上記アッパアームを支持する上側支持部と上記ロアアームを支持する下側支持部とがそれぞれ設けられ、
上記支持部が設けられている車幅方向メンバは、上記左側の下側支持部と上記右側の上側支持部とを連結する第1連結部と、上記左側の上側支持部と上記右側の下側支持部とを連結して該第1連結部と交差する第2連結部とを有しており、
上記上側及び下側支持部の少なくとも一方は、その全体が上記車幅方向メンバと一体に形成されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項2】
請求項1記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記上側支持部は、その全体が上記車幅方向メンバと一体に形成されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記下側支持部は、その全体が上記車幅方向メンバと一体に形成されているとともに、上記前後方向メンバの下面に接合されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記支持部が設けられている車幅方向メンバは、上記一体に形成されている支持部以外の部分が、車両前後方向前側又は後側に開放された断面コ字状に形成されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記前側及び後側車幅方向メンバのうち一方の車幅方向メンバに設けられている上記左右の上側及び下側支持部と、他方の車幅方向メンバの車幅方向中央部とをそれぞれ連結し、一方の車幅方向メンバ側から他方の車幅方向メンバ側に行くに従って車幅方向内側に傾斜している左側及び右側傾斜メンバをさらに備えており、
上記左側及び右側傾斜メンバは、上記上側支持部と上記下側支持部とをそれぞれ連結していることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項6】
請求項5記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記左側及び右側傾斜メンバ並びに上記一方の車幅方向メンバは、それぞれ向かい合う側に開放された断面コ字状に形成されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記各車輪支持部材は後輪を支持するものであり、
上記サスペンションは、上記各車輪支持部材から車両前方に延びる前後方向アームと、上記アッパ及びロアアームを含み、上記各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる少なくとも3本の車幅方向アームとを備え、
上記上側及び下側支持部は、上記前側車幅方向メンバに設けられていて、上記車幅方向アームのうち上記各車輪支持部材の前側部分に位置するアッパ及びロアアームを支持していることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−30531(P2010−30531A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196878(P2008−196878)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】