説明

車両のサスペンションサブフレーム

【課題】車両のサスペンションサブフレームの軽量化を図りつつサスペンションサブフレームの強度に対する信頼性を向上させる。
【解決手段】各車輪支持部材13から車幅方向内側に延びるアッパ及びロアアーム17,19,21を支持するサスペンションサブフレーム1である。前側及び後側車幅方向メンバ25,27と、左側及び右側前後方向メンバ29,31と、前側車幅方向メンバ25の左右両端部に設けられる上側支持部37,39及び下側支持部41,43と、上側及び下側支持部37,39,41,43と後側車幅方向メンバ27の中央部とをそれぞれ連結する左側及び右側傾斜メンバ33,35とを備えている。左側及び右側傾斜メンバ33,35は、上側支持部37,39と下側支持部41,43とをそれぞれ連結している。上側支持部37,39は、その全体が各傾斜メンバ33,35と一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のサスペンションサブフレームに関し、特に、マルチリンクサスペンションのサスペンションアームを支持する車両のサスペンションサブフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、所謂E型サスペンションといわれるマルチリンクサスペンションが知られており、特許文献1には、そのマルチリンクサスペンションのサスペンションアームを支持するサスペンションサブフレームの構造が開示されている。
【0003】
特許文献1のサスペンションサブフレームのように、車両前後方向に延びる左右の前後方向メンバと車幅方向に延びる前後の車幅方向メンバとが平面視で井桁状に組まれた従来のサスペンションサブフレームでは、各サスペンションアームの支持部を車輪近傍に位置する前後方向メンバに溶接で取り付けるものが多い。
【特許文献1】特開2005−193893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サスペンションサブフレームは、例えば車両の旋回時に各サスペンションアームから入力される引張荷重や圧縮荷重等を受け止めるようになっているが、上記特許文献1のように、各サスペンションアームの支持部を前後方向メンバに設けた従来のサスペンションサブフレームには、以下のような問題がある。
【0005】
すなわち、支持部が前後方向メンバに溶接されている場合には、車幅方向一方側の支持部からの入力荷重は、該支持部と前後方向メンバとの溶接部、前後方向メンバ、前後方向メンバと車幅方向メンバとの溶接部、車幅方向メンバという順で伝達し、同様にして伝達してきた車幅方向他方側の支持部からの入力荷重と打ち消し合うことになるが、各アームからの入力荷重が複数の部材及び溶接部を介して伝達されると、各アームからの入力荷重が効果的に分散されず、サスペンションサブフレーム(特に溶接部)に歪みや応力集中が生じ易くなり、サスペンションサブフレームの強度に対する信頼性が低下するおそれがある。
【0006】
また、歪みや曲げ変形を抑制するために溶接部の補強を行うと、サスペンションサブフレームの重量が増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両のサスペンションサブフレームの軽量化を図りつつサスペンションサブフレームの強度に対する信頼性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、左右の各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる左右のアッパ及びロアアームを備えたサスペンションにおける該各アームを支持する車両のサスペンションサブフレームであって、それぞれ車両前後方向に互いに間隔をあけて車幅方向に延設される前側及び後側車幅方向メンバと、それぞれ車両前後方向に延設されて上記前側及び後側車幅方向メンバの左右両端部を連結する左側及び右側前後方向メンバと、上記前側及び後側車幅方向メンバのいずれか一方の左右両端部にそれぞれ設けられ、上記各アームを支持する上側及び下側支持部と、上記左右の上側及び下側支持部と、他方の車幅方向メンバの車幅方向中央部とをそれぞれ連結し、一方の車幅方向メンバ側から他方の車幅方向メンバ側に行くに従って車幅方向内側に傾斜している左側及び右側傾斜メンバとを備え、上記左側及び右側傾斜メンバは、上記上側支持部と上記下側支持部とをそれぞれ連結しており、上記上側及び下側支持部の少なくとも一方は、その全体が上記各傾斜メンバと一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
第1の発明によれば、前側及び後側車幅方向メンバのいずれか一方の車幅方向メンバの左右両端部には、アッパアームを支持する上側支持部及びロアアームを支持する下側支持部がそれぞれ設けられているので、各アームの支持部を前後方向メンバに溶接する従来のサスペンションサブフレームと比較して、各支持部からの入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数を減少させることができる。これにより、補強箇所数を減少させてサスペンションサブフレームの軽量化を図ることができるとともに、入力荷重を分散させてサスペンションサブフレームに歪みや応力集中が生じるのを抑えることができる。
【0010】
また、上側及び下側支持部の少なくとも一方の支持部は、各傾斜メンバと一体に形成されているので、支持部の寸法精度を向上させることができるとともに、入力荷重を効果的に分散させてサスペンションサブフレームに歪みや応力集中が生じるのをさらに抑えることができる。
【0011】
したがって、サスペンションサブフレームの軽量化を図りつつサスペンションサブフレームの強度に対する信頼性を向上させることができる。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記上側及び下側支持部のいずれか一方は、その全体が上記各傾斜メンバと一体に形成され、上記上側及び下側支持部の他方は、その一部が上記車幅方向メンバと一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明によれば、上側及び下側支持部のいずれか一方は、その全体が各傾斜メンバと一体に形成されているので、各支持部からの入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数を減少させることにより、入力荷重を効果的に分散させることができる。加えて、上側及び下側支持部の他方は、その一部が車幅方向メンバと一体に形成されているので、入力荷重を各傾斜メンバと車幅方向メンバとに確実に分散させることができる。
【0014】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記上側及び下側支持部は、共にその全体が上記各傾斜メンバと一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
第3の発明によれば、上側及び下側支持部は、共にその全体が各傾斜メンバと一体に形成されているので、各支持部からの入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数をさらに減少させることができる。これより、補強箇所数をさらに減少させてサスペンションサブフレームの軽量化を図ることができるとともに、入力荷重をより確実に分散させることができる。
【0016】
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか1つの発明において、上記各傾斜メンバは、上記一体に形成されている支持部以外の部分が、車幅方向外側又は内側に開放された断面コ字状に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
第4の発明によれば、各傾斜メンバは、一体に形成されている支持部以外の部分が、車幅方向外側又は内側に開放された断面コ字状に形成されているので、プレス成形等による製造が容易になる。また、アームの支持部に比べて捩れや拗れが発生し難く高剛性が要求されない部分の形状を適正化(閉断面や中実体等にすることなく開断面に)することにより、傾斜メンバを軽量化することができる。
【0018】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか1つの発明において、上記各傾斜メンバは、上記上側支持部と上記他方の車幅方向メンバの中央部とを連結する上側連結部と、上記下側支持部と上記他方の車幅方向メンバの中央部とを連結する下側連結部とを有しており、上記左側及び右側傾斜メンバの上記他方の車幅方向メンバ側の端部は、車幅方向で互いに近接して上記中央部と連結されていることを特徴とするものである。
【0019】
第5の発明によれば、各傾斜メンバは、上側支持部と他方の車幅方向メンバの中央部とを連結する上側連結部と、下側支持部と他方の車幅方向メンバの中央部とを連結する下側連結部とを有していて、その他方の車幅方向メンバ側の端部が車幅方向で互いに近接して中央部と連結されているので、左側傾斜メンバの上側連結部と右側傾斜メンバの下側連結部とが、左側の上側支持部と右側の下側支持部との間で荷重を伝達する荷重伝達経路を構成するとともに、左側傾斜メンバの下側連結部と右側傾斜メンバの上側連結部とが、左側の下側支持部と右側の上側支持部との間で荷重を伝達する荷重伝達経路を構成するようになっている。これにより、左側の支持部からの入力荷重と右側の支持部からの入力荷重とを効率的に打ち消し合わせてサスペンションサブフレームに歪みや応力集中が生じるのを抑えることができる。したがって、サスペンションサブフレームの強度に対する信頼性をより一層向上させることができる。
【0020】
第6の発明は、上記第1〜5のいずれか1つの発明において、上記一方の車幅方向メンバは、左側の下側支持部と右側の上側支持部とを連結する第1連結部と、左側の上側支持部と右側の下側支持部とを連結して該第1連結部と交差する第2連結部とを有していることを特徴とするものである。
【0021】
第6の発明によれば、一方の車幅方向メンバは、左側の下側支持部と右側の上側支持部とを連結する第1連結部と、左側の上側支持部と右側の下側支持部とを連結して該第1連結部と交差する第2連結部とを有しているので、左右の傾斜メンバにより構成された荷重伝達経路に加えて、一方の車幅方向メンバからなる荷重伝達経路にも入力荷重を効果的に分散させることができる。これにより、左側の支持部からの入力荷重と右側の支持部からの入力荷重とを効率的に打ち消し合わせることができる。
【0022】
第7の発明は、上記第1〜6のいずれか1つの発明において、上記右側及び左側前後方向メンバの上記一方の車幅方向メンバ側の部分は、それぞれ上記右側及び左側傾斜メンバの傾斜方向に沿うように車幅方向外側に延びて車体に支持されていることを特徴とするものである。
【0023】
第7の発明によれば、右側及び左側前後方向メンバの一方の車幅方向メンバ側の部分は、それぞれ右側及び左側傾斜メンバの傾斜方向に沿うように車幅方向外側に延びて車体に支持されているので、各アームの支持部からの入力荷重を効果的に車体に分散することができる。
【0024】
第8の発明は、上記第1〜7のいずれか1つの発明において、上記各車輪支持部材は後輪を支持するものであり、上記サスペンションは、上記各車輪支持部材から車両前方に延びる前後方向アームと、上記アッパ及びロアアームを含み、上記各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる少なくとも3本の車幅方向アームとを備え、上記上側及び下側支持部は、上記前側車幅方向メンバに設けられていて、上記車幅方向アームのうち上記各車輪支持部材の前側部分に位置するアッパ及びロアアームを支持していることを特徴とするものである。
【0025】
第8の発明によれば、サスペンションサブフレームは、各車輪支持部材から車両前方に延びる前後方向アームと、該各車輪支持部材から車幅方向に延びる少なくとも3本の車幅方向アームとを備えた所謂E型サスペンションにおいて、サスペンションアームに車幅方向から大きな荷重が入力した場合でも、該サスペンションアームを効果的に支持することができる。
【0026】
第9の発明は、上記第8の発明において、上記後側車幅方向メンバの中央部には、上記車幅方向アームのうち上記各車輪支持部材の後側部分に位置するロアアームを支持する左右の後側支持部が設けられており、上記左側及び右側傾斜メンバの後側の端部は、上記左右の後側支持部の近傍で、上記後側車幅方向メンバの中央部とそれぞれ連結されていることを特徴とするものである。
【0027】
第9の発明によれば、左側及び右側傾斜メンバの後側の端部は、左右の後側支持部の近傍で、後側車幅方向メンバの中央部とそれぞれ連結されているので、左側傾斜メンバの上側連結部が、左側の上側支持部と右側の後側支持部との間で荷重を伝達する荷重伝達経路を構成するとともに、右側傾斜メンバの上側連結部が、右側の上側支持部と左側の後側支持部との間で荷重を伝達する荷重伝達経路を構成するようになっている。これにより、E型サスペンションにおいて、車両後方に位置する左右のロアアームから入力される荷重と、車両前方に位置する左右のアッパアームから入力される荷重とを効率的に打ち消し合わせるとともに、これら入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数を減少させてサスペンションサブフレームの軽量高剛性化を図ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、車幅方向メンバの左右の端部に上側及び下側支持部をそれぞれ設けることにより、荷重伝達経路上の溶接箇所数を減少させて補強箇所数の減少によるサスペンションサブフレームの軽量化を図るとともに、上側及び下側支持部の少なくとも一方の支持部を各傾斜メンバと一体に形成することにより、支持部の寸法精度を向上させつつ入力荷重を効果的に分散させるので、サスペンションサブフレームの軽量化を図りつつサスペンションサブフレームの強度に対する信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るサスペンションサブフレームが適用された車両のリアサスペンションを左斜め前方から見た斜視図であり、図2は、サスペンションサブフレームに取り付けられる右側後輪のサスペンション装置を左斜め前方から見た斜視図であり、図3は、リアサスペンションを前方から見た正面図であり、図4は、リアサスペンションを下方から見た底面図である。なお、図1〜図4では左側後輪のサスペンション装置を図示省略しているが、左側後輪のサスペンション装置も右側後輪7のサスペンション装置5とほぼ同様の構成である。
【0031】
図1に示すように、リアサスペンション3は、サスペンションサブフレーム1とサスペンション装置5と車輪(右側後輪)7とを備えている。
【0032】
上記車輪7は、図1及び図2に示すように、タイヤ9とホイール11と該車輪を支持する車輪支持部材13とを有している。
【0033】
上記サスペンション装置5は、車輪支持部材13から車両前方に延びるトレーリングアーム(前後方向アーム)15と、各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる3本の車幅方向アーム(リアロアアーム17、フロントロアアーム19及びフロントアッパアーム21)とを有している。すなわち、リアサスペンション3の形態は、所謂E型サスペンションとなっている。
【0034】
上記トレーリングアーム15は、その後端部15aが車輪支持部材13に取り付けられているとともに、その前端部15bが車体(図示せず)に取り付けられている。
【0035】
上記リアロアアーム17は、サスペンション装置5の後側部分から車幅方向内側に延びており、その車幅方向外側の端部17aが上記車輪支持部材13に取り付けられている(連結されている)とともに、その内側の端部17bが上記サスペンションサブフレーム1に取付支持されている。このリアロアアーム17には、スプリング23a及びダンパ23bを備える緩衝装置23が取り付けられている。スプリング23aは、その下端部がリアロアアーム17のスプリング受け部17cに受け入れられている一方、その上端部が車体に取り付けられている。ダンパ23bは、その下端部がリアロアアーム17に取り付けられている一方、その上端部が車体に取り付けられている。
【0036】
上記フロントロアアーム19は、サスペンション装置5の前側部分の下側から車幅方向内側に延びており、その外側の端部19aが車輪支持部材13に取り付けられている(連結されている)一方、その内側の端部19bがサスペンションサブフレーム1に取付支持されている。
【0037】
上記フロントアッパアーム21は、サスペンション装置5の前側部分の上側から車幅方向内側に延びており、その外側の端部21aが車輪支持部材13に取り付けられている(連結されている)一方、その内側の端部21bがサスペンションサブフレーム1に取付支持されている。
【0038】
これらのアーム15,17,19,21はホイール11の動きをコントロールするとともに、走行中に車輪が受ける外力(上下力、コーナリング中の横力、制動加速時の前後力等)を支えるようになっている。
【0039】
次に、サスペンションサブフレーム1の構造を説明する。図5は、前側車幅方向メンバを左斜め後方から見た斜視図であり、図6は、前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバとを左斜め後方から見た斜視図であり、図7は、前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバとを後方から見た背面図であり、図8は、前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバと後側車幅方向メンバとを左斜め後方から見た斜視図であり、図9は、サスペンションサブフレームを左斜め後方から見た斜視図であり、図10は、サスペンションサブフレームを下方から見た斜視図であり、図11は、サスペンションサブフレームを左側から見た側面図である。
【0040】
サスペンションサブフレーム1は、それぞれ車両前後方向に互いに間隔をあけて配置される前側及び後側車幅方向メンバ25,27と、それぞれ車両前後方向に延設されて上記前側及び後側車幅方向メンバ25,27の左右両端部を連結する左側及び右側前後方向メンバ29,31と、それぞれ該前側車幅方向メンバ25と該後側車幅方向メンバ27との間に設けられて(架設されて)これらを連結する左右一対の傾斜メンバ33,35とを有している。
【0041】
上記前側車幅方向メンバ(一方の車幅方向メンバ)25は、車輪支持部材13の前側で車幅方向に延びており、車両正面視で2つの三角枠体の頂部を繋いだような形状に形成されている。図1及び図3に示すように、前側車幅方向メンバ25には、その車幅方向右側の上端部25bに、フロントアッパアーム21を支持する上側支持部39が、その車幅方向右側の下端部25dに、フロントロアアーム19を支持する下側支持部43がそれぞれ設けられている。同様に、前側車幅方向メンバ25の車幅方向左側の上端部25aには上側支持部37が、車幅方向左側の下端部25cには下側支持部41がそれぞれ設けられている。左側及び右側の下側支持部41,43は、その一部が該前側車幅方向メンバ25と一体に形成されている一方、左側及び右側の上側支持部37,39は、その全体が上記傾斜メンバ33,35と一体に形成されている。
【0042】
より詳しくは、左側及び右側の下側支持部41,43は、図6に示すように、後側が開放された断面コ字状をなす前側車幅方向メンバ25の左側及び右側の下端部25c、25dと、前側が開放された断面コ字状をなす傾斜メンバ33,35の下側の前端部33a,35aとが組み合わされた閉断面により形成されている。なお、前側車幅方向メンバ25の下端部25c、25dと、傾斜メンバ33,35の下側の前端部33a,35aとは突き合わせ溶接ではなく、両者をラップさせて隅肉溶接することにより接合されている。
【0043】
これに対し、左側の上側支持部37は、下側が開放された断面コ字状に折り曲げ成形された左側傾斜メンバ33の前側上端部33bを、前側車幅方向メンバ25の左側の上端部25aに被せるように配置した状態で(図11参照)、前側車幅方向メンバ25に溶接で取り付けることにより形成されている。同様に、右側の上側支持部39は、下側が開放された断面コ字状に折り曲げ成形された右側傾斜メンバ35の前側上端部35bを、前側車幅方向メンバ25の右側の上端部25bに被せるように配置した状態で、前側車幅方向メンバ25に溶接で取り付けることにより形成されている。このため、図1及び図3に示すように、左側及び右側の上側支持部37,39は、その一部(前部及び上部)が前側車幅方向メンバ25の左右の上端部25a,25bと重なった(ラップした)状態で、該前側車幅方向メンバ25に設けられている。このように、上側支持部37,39は、単一の部材(前側車幅方向メンバ25)を折り曲げ加工することにより形成されているので、2つの部材(前側車幅方向メンバ25及び傾斜メンバ33,35)を溶接により組み合わせた下側支持部41,43に比べて、寸法精度及び剛性が向上している。
【0044】
なお、前側車幅方向メンバ25の左右の上端部25a,25bは、図3に示すように、下方に行くに従って車幅方向外側に延びており、下側ほど上側支持部37,39とのラップ代が大きくなっている。このように、前側車幅方向メンバ25の上端部25a,25bを車幅方向外側に延ばすのは、上記前後方向メンバ29,31を後述する嵌合部に嵌合させた際、前側車幅方向メンバ25と前後方向メンバ29,31との溶接長を確保するためである。
【0045】
左右の上側及び下側支持部37,39,41,43には、フロントロアアーム19及びフロントアッパアーム21の車幅方向内側の端部に設けられたラバーブッシュ部19c、21c(図10参照)を取り付けるための車両前後方向に延びる貫通孔37a,39a,41a,43aがそれぞれ形成されている。そして、図10に示すように、フロントロアアーム19及びフロントアッパアーム21が、ラバーブッシュ部19c、21cを介して上側及び下側支持部37,41に取り付けられる。
【0046】
前側車幅方向メンバ25は、図5に示すように、後側に開放された断面コ字状に形成されており、上側及び下側フランジ部45,47が車両前後方向後側に延びている。これにより、前側車幅方向メンバ25はプレス成形等による製造が容易になる。このように、前側車幅方向メンバ25を断面コ字状に形成するのは、該前側車幅方向メンバ25は上記各支持部37,39,41,43に比べて捩れや拗れが発生し難いので、局部剛性や強度は要求されず、基本的には全体剛性のみが要求されるからである。
【0047】
また、前側車幅方向メンバ25は、右側(一方側)の上側支持部39と左側(他方側)の下側支持部41とを連結する第1連結部49と、右側(一方側)の下側支持部43と左側(他方側)の上側支持部37とを連結して該第1連結部49と交差する第2連結部51とを有している。
【0048】
より詳しくは、上記前側車幅方向メンバ25は、右側の上側支持部39が設けられている右側上端部25bと、左側の下側支持部41が設けられている左側下端部25cとを連結するようにほぼ真っ直ぐに延びるフレーム(第1連結部49)と、右側の下側支持部43が設けられている右側下端部25dと、左側(他方側)の上側支持部37が設けられている左側上端部25aとを連結するようにほぼ真っ直ぐに延びるフレーム(第2連結部51)とを有している。言い換えると、前側車幅方向メンバ25は、図3に示すように、その上下方向の長さが、車幅方向外方から内方に行くに従って短くなるように形成されているとともに、前側車幅方向メンバ25には、車幅方向内方に向かうにつれてその上下方向長さが小さくなる開口部53,53が形成されている。このように、前側車幅方向メンバ25は、第1連結部49と第2連結部51とが車両正面視で略X字状をなすように形成されている。
【0049】
このように形成された第1連結部49及び第2連結部51を有する前側車幅方向メンバ25の左右の上端部25a,25b及び下端部25c,25dに、上記各支持部37,39,41,43を設けることにより、右側の上側支持部39、第1連結部49及び左側の下側支持部41からなる荷重伝達経路と、右側の下側支持部43、第2連結部51及び左側の上側支持部37からなる荷重伝達経路とが形成される。
【0050】
上記左側傾斜メンバ33は、左側の上側及び下側支持部37,41と後側車幅方向メンバ27の車幅方向中央部67とを連結している一方、右側傾斜メンバ35は、右側の上側及び下側支持部39,43と後側車幅方向メンバ27の車幅方向中央部67とを連結しており、該各傾斜メンバ33,35は、後方に行くに従って内側に傾斜するように延びていて、前側車幅方向メンバ25と共に平面視で略三角形状をなしている。また、左側及び右側の傾斜メンバ33,35は、一体に形成されている上側支持部37,39以外の部分が、対向している側(内側)が開放された断面コ字状に成形されていて、上側フランジ部55,59及び下側フランジ部57,61がそれぞれ対向側に延びている。
【0051】
左側及び右側の傾斜メンバ33,35は、上記上側支持部37,39と後側車幅方向メンバ27の車幅方向の中央部67とを連結する上側連結部79,81と、上記下側支持部41,43と後側車幅方向メンバ27の車幅方向の中央部67とを連結する下側連結部83,85とをそれぞれ有している。換言すると、左側及び右側の傾斜メンバ33,35は、図8に示すように、前側車幅方向メンバ25の端部から、後側車幅方向メンバ27の車幅方向中央部に近づくに従って、すなわち、後方に行くに従って上下方向長さが小さくなるように形成されているとともに、各傾斜メンバ33,35には、後方に行くに従って上下方向長さが小さくなる開口部65,65が形成されている。
【0052】
左側及び右側の傾斜メンバ33,35と前側車幅方向メンバ25とは、図6に示すように、それぞれ開放された側が向かい合うように配置されている。このように、前側車幅方向メンバ25と左側及び右側の傾斜メンバ33,35とが取付配置されることにより、前側車幅方向メンバ25の上下のフランジ部45,47と、左側傾斜メンバ33の上下のフランジ部55,57と、右側傾斜メンバ35の上下のフランジ部59,61とがそれぞれ補強し合って、これらのメンバ全体としての断面性能が高められている。
【0053】
左側傾斜メンバ33は、左側の上側支持部37と左側の下側支持部41とを連結している一方、右側傾斜メンバ35は、右側の上側支持部39と右側の下側支持部43とを連結している。このように、各傾斜メンバ33,35が上側支持部37,39と下側支持部41,43とを連結することで、左側の支持部37,41及び右側の支持部39,43を上下方向に補強することができる。
【0054】
また、前側車幅方向メンバ25と傾斜メンバ33,35との接合部近傍(上側支持部37,39と下側支持部41,43との間)には車両平面視で内側に凹んだ嵌合部40が形成されている。この嵌合部40には、後述するように、前後方向メンバ29、31が取り付けられるが、嵌合部40を閉断面にして、より剛性を高めるようにしてもよい。
【0055】
上記後側車幅方向メンバ(他方の車幅方向メンバ)27は、車輪支持部材13の後側で車幅方向に延びており、その車幅方向の中央部67が断面矩形状に形成されている一方、該中央部67以外の部分が下側が開放された断面コ字状に形成されている。また、後側車幅方向メンバ27は、中央部67が略水平に延びている一方、該中央部67以外の部分が車幅方向外側に行くに従って上方に傾斜するように形成されている(図13及び図14参照)。そして、上記各傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cが互いに近接して該中央部67に溶接で取り付けられている(連結されている)。より詳しくは、各傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cにおける上側フランジ部55,59の下面が、後側車幅方向メンバ27の中央部67の上面に載置された状態で溶接されているとともに、上側及び下側連結部79,81,83,85並びに下側フランジ部57,61の後端が、後側車幅方向メンバ27の中央部67の前面(前側フランジ部73)に当接された状態で溶接されている。
【0056】
また、後側車幅方向メンバ27には、中央部67(中央部のやや外側)に、車両前後方向に延びる貫通孔69a,71aが形成されている。この貫通孔69a,71aが形成された部分が、後側車幅方向メンバ27におけるリアロアアーム17を支持する後側支持部69,71を構成しており、図10に示すように、これら貫通孔69a,71aにリアロアアーム17の車幅方向内側の端部に設けられたラバーブッシュ部17dが取り付けられている。上記各傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cは、これら後側支持部69,71の近傍に取り付けられており、該後側支持部69,71の剛性を高めるようにしている。なお、これら後側支持部69,71と同じ位置に、各傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cを取り付けてもよい。
【0057】
さらに、後側車幅方向メンバ27は、本体部77の左右の端部77a,77bが前後方向メンバ29,31に沿うように湾曲しているとともに、前後のフランジ部73,75が本体部77よりも更に車幅方向外側に延びて形成された受部73a,73b,75a,75bに前後方向メンバ27を載置するようになっている。
【0058】
上記前後方向メンバ29,31は、車両前後方向略中央ほど車幅方向内側に湾曲しており、その前側部分(一方の車幅方向メンバ側の部分)がそれぞれ右側及び左側傾斜メンバ33,35の傾斜方向に沿うように車幅方向外側に延びている。左側前後方向メンバ29は、その前側部分を左側嵌合部40に嵌合させるとともに、その後側部分を後側車幅方向メンバ27の左端部77aに当接させるように左側の受部73a,75aに載置されている。一方、右側前後方向メンバ31は、その前側部分を右側嵌合部40に嵌合させるとともに、その後側部分を後側車幅方向メンバ27の右端部77bに当接させるように右側の受部73b,75bに載置されている。そして、左右の前後方向メンバ29、31がこれら嵌合部40,40並びに後側車幅方向メンバ27の本体部77の左右の端部77a,77b及び左右の受部73a,73b,75a,75bに溶接されて、図1及び図9に示すようなサスペンションサブフレーム1を構成している。
【0059】
前後方向メンバ29、31の左右の前端部にはそれぞれマウント部87,89が形成され、左右の後端部にはそれぞれマウント部91,93が形成さており、これらのマウント部87,89,91,93に取り付けられたラバーブッシュ(図示せず)を介して、サスペンションサブフレーム1が車体に取り付けられている(支持されている)。
【0060】
次に、サスペンションサブフレーム1の作用を説明する。図12は、サスペンションサブフレーム1の作用の一例を説明するためのサスペンションサブフレーム1の概略正面図である。
【0061】
図12に示すサスペンションサブフレーム1では、フロントロアアーム19の下側支持部41,43が前側車幅方向メンバ25の左右両側の下端部25c、25dに設けられている一方、傾斜メンバ33,35と一体に形成されたフロントアッパアーム21の上側支持部37,39が前側車幅方向メンバ25の左右両側の上端部25a、25bに設けられている。また、前側車幅方向メンバ25の第1連結部49及び第2連結部51は、図12の二点鎖線63で示すように、車両正面視で略X字状をなすように形成されている。
【0062】
例えば車両の旋回時に、タイヤ9接地点で荷重F1、F2がそれぞれ図12の黒抜き矢印の方向に車輪に加わると、フロントロアアーム19及びフロントアッパアーム21には、それぞれ図12の白抜き矢印の方向に荷重Fが伝達される。具体的には、例えば、接地点同相の左旋回時には、右側のフロントロアアーム19に前側車幅方向メンバ25を圧縮する荷重が加わる一方、左側のフロントアッパアーム21にも前側車幅方向メンバ25を圧縮する荷重が加わり、また、右側のフロントアッパアームに前側車幅方向メンバ25を引っ張る荷重が加わる一方、左側のフロントロアアーム19にも前側車幅方向メンバ25を引っ張る荷重が加わる。
【0063】
ここで、下側支持部41,43及び上側支持部37,39は前側車幅方向メンバ25に設けられているので、各アーム14、16に加わる荷重が前側車幅方向アーム25に効率良く伝わるとともに、車両正面視で略X字状をなすように形成されている第1及び第2連結部49,51を介して左右の荷重同士が効果的に打ち消しあうことになる。
【0064】
さらに、サスペンションサブフレーム1は、前側車幅方向メンバ25と後側車幅方向メンバ27との間に架設されてこれらを連結する左右一対の傾斜メンバ33,35を有しているので、該サスペンションサブフレーム1には、前側車幅方向メンバ25に形成された荷重伝達経路に加えて、図13の二点鎖線66で示すように、左側の上側支持部37、上側連結部79、後側車幅方向メンバ27、下側連結部85、右側の下側支持部43という順で荷重が伝達される荷重伝達経路と、左側の下側支持部41、下側連結部83、後側車幅方向メンバ27、上側連結部81、上側支持部39という順で荷重が伝達される荷重伝達経路とが構成されている。
【0065】
これにより、前側車幅方向メンバ25に形成された荷重伝達経路に加えて、左右の傾斜メンバ33,35及び後側車幅方向メンバ27からなる荷重伝達経路にも入力荷重が伝達されるので、左右の荷重同士が一層確実に打ち消しあうことになる。
【0066】
加えて、左側及び右側傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cは、その上側フランジ部55,59が左右の後側支持部69,71の近傍で、後側車幅方向メンバ27の中央部67上面とそれぞれ連結されているので、図14の二点鎖線68で示すように、左側傾斜メンバ33の上側連結部79が、左側の上側支持部37と右側の後側支持部71との間で荷重を伝達する車両正面視で略直線状の荷重伝達経路を構成するとともに、右側傾斜メンバ35の上側連結部81が、右側の上側支持部39と左側の後側支持部69との間で荷重を伝達する車両正面視で略直線状の荷重伝達経路を構成するようになっている。
【0067】
これにより、車両後方に位置する左右のリアロアアーム17,17から入力される荷重と、車両前方に位置する左右のフロントアッパアーム21,21から入力される荷重とが打ち消しあうことになる。
【0068】
さらに、図15の二点鎖線70で示すように、右側の車輪支持部材13の後側部分から入力される荷重と、左側の車輪支持部材(図示せず)の前側部分から入力される荷重とが打ち消しあうことになるので、サスペンションサブフレーム1の平面的な捩れも抑えることができる。
【0069】
−効果−
本実施形態によれば、前側車幅方向メンバ25の左右両端部には、フロントアッパアーム21,21を支持する上側支持部37,39及びフロントロアアーム19,19を支持する下側支持部41,43がそれぞれ設けられているので、各アームの支持部を前後方向メンバに溶接する従来のサスペンションサブフレームと比較して、各支持部37,39,41,43からの入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数を減少させることができる。これにより、補強箇所数を減少させてサスペンションサブフレーム1の軽量化を図ることができるとともに、入力荷重を分散させてサスペンションサブフレーム1に歪みや応力集中が生じるのを抑えることができる。
【0070】
また、上側支持部37,39は、各傾斜メンバ33,35と一体に形成されているので、上側支持部37,39の寸法精度を向上させることができるとともに、入力荷重を効果的に分散させてサスペンションサブフレーム1に歪みや応力集中が生じるのをさらに抑えることができる。
【0071】
したがって、サスペンションサブフレーム1の軽量化を図りつつサスペンションサブフレーム1の強度に対する信頼性を向上させることができる。
【0072】
また、上側支持部は37,39は、その全体が各傾斜メンバ33,35と一体に形成されているので、上記荷重伝達経路上の溶接箇所数を減少させることにより、入力荷重を効果的に分散させることができる。加えて、下側支持部41,43は、その一部が前側車幅方向メンバ25と一体に形成されているので、入力荷重を各傾斜メンバ33,35と前側車幅方向メンバ25とに確実に分散させることができる。
【0073】
さらに、各傾斜メンバ33,35は、一体に形成されている上側支持部は37,39以外の部分が、車幅方向内側に開放された断面コ字状に形成されているので、プレス成形等による製造が容易になる。また、アームの支持部37,39,41,43に比べて捩れや拗れが発生し難く高剛性が要求されない部分の形状を適正化することにより、傾斜メンバ33,35を軽量化することができる。
【0074】
また、各傾斜メンバ33,35は、上側支持部37,39と後側車幅方向メンバ27の中央部67とを連結する上側連結部79,81と、下側支持部41,43と後側車幅方向メンバ27の中央部67とを連結する下側連結部83,85とを有していて、左側及び右側傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cが車幅方向で互いに近接して中央部67と連結されているので、左側傾斜メンバ33の上側連結部79と右側傾斜メンバ35の下側連結部85とが、左側の上側支持部37と右側の下側支持部43との間で荷重を伝達する荷重伝達経路を形成するとともに、左側傾斜メンバ33の下側連結部83と右側傾斜メンバ35の上側連結部81とが、左側の下側支持部41と右側の上側支持部39との間で荷重を伝達する荷重伝達経路を形成するようになっている。これにより、左側の支持部37,41からの入力荷重と右側の支持部39,43からの入力荷重とを効率的に打ち消し合わせてサスペンションサブフレーム1に歪みや応力集中が生じるのを抑えることができる。したがって、サスペンションサブフレーム1の強度に対する信頼性をより一層向上させることができる。
【0075】
さらに、前側車幅方向メンバ25は、左側の下側支持部41と右側の上側支持部39とを連結する第1連結部49と、左側の上側支持部37と右側の下側支持部43とを連結して該第1連結部49と交差する第2連結部51とを有しているので、左右の傾斜メンバ33,35により形成された荷重伝達経路に加えて、前側車幅方向メンバ25からなる荷重伝達経路にも入力荷重を効果的に分散させることができる。これにより、左側の支持部37,41からの入力荷重と右側の支持部39,43からの入力荷重とを効率的に打ち消し合わせることができる。
【0076】
また、右側及び左側前後方向メンバ29,31の前側部分は、それぞれ右側及び左側傾斜メンバ33,35の傾斜方向に沿うように車幅方向外側に延びて車体に支持されているので、各アームの支持部37,39,41,43からの入力荷重を効果的に車体に分散することができる。
【0077】
さらに、サスペンションサブフレーム1は、各車輪支持部材13から車両前方に延びるトレーリングアーム15と、該各車輪支持部材13から車幅方向に延びる少なくとも3本の車幅方向アーム17,19,21とを備えた所謂E型サスペンションにおいて、各サスペンションアーム17,19,21に車幅方向から大きな荷重が入力した場合でも、該サスペンションアーム17,19,21を効果的に支持することができる。
【0078】
また、左側及び右側傾斜メンバ33,35の後端部33c,35cは、左右の後側支持部69,71の近傍で、後側車幅方向メンバ27の中央部67とそれぞれ連結されているので、左側傾斜メンバ33の上側連結部79が、左側の上側支持部37と右側の後側支持部71との間で荷重を伝達する荷重伝達経路を構成するとともに、右側傾斜メンバ35の上側連結部81が、右側の上側支持部39と左側の後側支持部69との間で荷重を伝達する荷重伝達経路を構成するようになっている。これにより、E型サスペンションにおいて、車両後方に位置する左右のリアロアアーム17,17から入力される荷重と、車両前方に位置する左右のフロントアッパアーム21,21から入力される荷重とを効率的に打ち消し合わせるとともに、これら入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数を減少させてサスペンションサブフレーム1の軽量高剛性化を図ることができる。
【0079】
(実施形態2)
本実施形態は、フロントロアアーム19の支持部41,43の構成が実施形態1と異なるものである。以下、実施形態1と異なる点について説明する。
【0080】
図16は実施形態1の図1に、図17は実施形態1の図3に、図18及び図19は実施形態1の図5及び図6に、図20及び図21は実施形態1の図8及び図9に、図22は実施形態1の図4にそれぞれ対応する図である。
【0081】
図16〜22に示すように、フロントアッパアーム21を支持する上側支持部37,39のみならず、フロントロアアーム19を支持する下側支持部41,43も、その全体が左側及び右側の傾斜メンバ33,35と一体に形成されている。
【0082】
より詳しくは、左側の下側支持部41は、上側が開放された断面コ字状に折り曲げ成形された左側傾斜メンバ33の前側下端部33aを、前側車幅方向メンバ25の左側の下端部25cに被せるように配置した状態で、前側車幅方向メンバ25に溶接で取り付けることにより形成されている。同様に、右側の下側支持部43は、上側が開放された断面コ字状に折り曲げ成形された右側傾斜メンバ35の前側下端部35aを、前側車幅方向メンバ25の右側の下端部25dに被せるように配置した状態で、前側車幅方向メンバ25に溶接で取り付けることにより形成されている。このように、上側支持部37,39及び下側支持部41,43が、単一の部材(左側及び右側の傾斜メンバ33,35)を折り曲げ加工することにより形成されているので、2つの部材(前側車幅方向メンバ25及び傾斜メンバ33,35)を溶接により組み合わせたものに比べて、寸法精度及び剛性がより一層向上するとともに、荷重伝達経路上の溶接箇所数がより一層低減することになる。
【0083】
また、上記下側支持部41,43は、該下側支持部41,43の上縁に沿って、上側支持部37,39と下側支持部41,43との間の嵌合部40に嵌合された前後方向メンバ29、31の下面と溶接されている。このため、下側支持部41,43(前側車幅方向メンバ25)は、バンプ時にも、車体にスプリングを介して取り付けられた前後方向メンバ29,31に追従するので、該下側支持部41,43の上端が前後方向メンバ29,31に当接するのを抑えて、該下側支持部41,43の歪みや曲げ変形を確実に抑制することができる。
【0084】
−効果−
本実施形態によれば、上側及び下側支持部37,39,41,43は、共にその全体が各傾斜メンバ33,35と一体に形成されているので、各支持部37,39,41,43からの入力荷重が伝達する荷重伝達経路上の溶接箇所数をさらに減少させることができる。これより、補強箇所数をさらに減少させてサスペンションサブフレーム1の軽量化を図ることができるとともに、入力荷重をより確実に分散させることができる。
【0085】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、サスペンションサブフレーム1をE型サスペンションに適用したが、これに限らず、他の形式のサスペンションに適用してもよい。
【0086】
また、上記各実施形態では、サスペンションサブフレーム1を車両のリアサスペンションに適用したが、これに限らず、車両のフロントサスペンションに適用してもよい。
【0087】
さらに、上記各実施形態では、前側車幅方向メンバ25に設けられた各支持部37,39,41,43でロアアーム19,アッパアーム21を支持するようにしたが、これに限らず、後側車幅方向メンバ27を、前側車幅方向メンバ25と同様の形状に形成し、ロアアーム19,アッパアーム21及び傾斜補強メンバ28も本実施形態とは前後が逆になるように配置して、後側のサスペンションアームからの荷重を有効に受け止めるようにしてもよい。
【0088】
また、上記各実施形態では、フロントアッパアーム21を支持する上側支持部37,39とフロントロアアーム19を支持する下側支持部41,43とを、前側車幅方向メンバ25の車幅方向両側の端部に設けたが、これに限らず、例えば、これら上側及び下側支持部37,39,41,43を前側及び後側車幅方向メンバ25,27の車幅方向両側の端部に設けてもよい。このようにすれば本発明のサスペンションサブフレーム1を、フロントアームに加えリアアームを備える所謂A型サスペンションに適用することができる。
【0089】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0090】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明したように、本発明は、マルチリンクサスペンションのサスペンションアームを支持する車両のサスペンションサブフレーム等について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施形態1に係るサスペンションサブフレームが適用された車両のリアサスペンションを左斜め前方から見た斜視図である。
【図2】サスペンションサブフレームに取り付けられる右側後輪のサスペンション装置を左斜め前方から見た斜視図である。
【図3】リアサスペンションを前方から見た正面図である。
【図4】リアサスペンションを下方から見た底面図である。
【図5】前側車幅方向メンバを左斜め後方から見た斜視図である。
【図6】前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバとを左斜め後方から見た斜視図である。
【図7】前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバとを後方から見た背面図である。
【図8】前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバと後側車幅方向メンバとを左斜め後方から見た斜視図である。
【図9】サスペンションサブフレームを左斜め後方から見た斜視図である。
【図10】サスペンションサブフレームを下方から見た斜視図である。
【図11】サスペンションサブフレームを左側から見た側面図である。
【図12】サスペンションサブフレームの作用の一例を説明するためのサスペンションサブフレームの概略正面図である。
【図13】サスペンションサブフレームの作用の一例を説明するためのサスペンションサブフレームの概略背面図である。
【図14】サスペンションサブフレームの作用の一例を説明するためのサスペンションサブフレームの概略背面図である。
【図15】サスペンションサブフレームの作用の一例を説明するためのサスペンションサブフレームの底面図である。
【図16】実施形態2に係るサスペンションサブフレームが適用された車両のリアサスペンションを左斜め前方から見た斜視図である。
【図17】リアサスペンションを前方から見た正面図である。
【図18】前側車幅方向メンバを左斜め後方から見た斜視図である。
【図19】前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバとを左斜め後方から見た斜視図である。
【図20】前側車幅方向メンバと左右一対の傾斜メンバと後側車幅方向メンバとを左斜め後方から見た斜視図である。
【図21】サスペンションサブフレームを上方から見た斜視図である。
【図22】リアサスペンションを下方から見た底面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 サスペンションサブフレーム
3 リアサスペンション(サスペンション)
7 後輪
13 車輪支持部材
15 トレーリングアーム(前後方向アーム)
17 リアロアアーム(車幅方向アーム)
19 フロントロアアーム(ロアアーム)(車幅方向アーム)
21 フロントアッパアーム(車幅方向アーム)
25 前側車幅方向メンバ(一方の車幅方向メンバ)
27 後側車幅方向メンバ(他方の車幅方向メンバ)
29 左側前後方向メンバ
31 右側前後方向メンバ
33 左側傾斜メンバ
35 右側傾斜メンバ
37 左側の上側支持部
39 右側の上側支持部
41 左側の下側支持部
43 右側の下側支持部
49 第1連結部
51 第2連結部
67 後側車幅方向メンバの中央部
69 左側の後側支持部
71 右側の後側支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる左右のアッパ及びロアアームを備えたサスペンションにおける該各アームを支持する車両のサスペンションサブフレームであって、
それぞれ車両前後方向に互いに間隔をあけて車幅方向に延設される前側及び後側車幅方向メンバと、
それぞれ車両前後方向に延設されて上記前側及び後側車幅方向メンバの左右両端部を連結する左側及び右側前後方向メンバと、
上記前側及び後側車幅方向メンバのいずれか一方の左右両端部にそれぞれ設けられ、上記各アームを支持する上側及び下側支持部と、
上記左右の上側及び下側支持部と、他方の車幅方向メンバの車幅方向中央部とをそれぞれ連結し、一方の車幅方向メンバ側から他方の車幅方向メンバ側に行くに従って車幅方向内側に傾斜している左側及び右側傾斜メンバとを備え、
上記左側及び右側傾斜メンバは、上記上側支持部と上記下側支持部とをそれぞれ連結しており、
上記上側及び下側支持部の少なくとも一方は、その全体が上記各傾斜メンバと一体に形成されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項2】
請求項1記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記上側及び下側支持部のいずれか一方は、その全体が上記各傾斜メンバと一体に形成され、
上記上側及び下側支持部の他方は、その一部が上記車幅方向メンバと一体に形成されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項3】
請求項1記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記上側及び下側支持部は、共にその全体が上記各傾斜メンバと一体に形成されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記各傾斜メンバは、上記一体に形成されている支持部以外の部分が、車幅方向外側又は内側に開放された断面コ字状に形成されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記各傾斜メンバは、上記上側支持部と上記他方の車幅方向メンバの中央部とを連結する上側連結部と、上記下側支持部と上記他方の車幅方向メンバの中央部とを連結する下側連結部とを有しており、
上記左側及び右側傾斜メンバの上記他方の車幅方向メンバ側の端部は、車幅方向で互いに近接して上記中央部と連結されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記一方の車幅方向メンバは、左側の下側支持部と右側の上側支持部とを連結する第1連結部と、左側の上側支持部と右側の下側支持部とを連結して該第1連結部と交差する第2連結部とを有していることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記右側及び左側前後方向メンバの上記一方の車幅方向メンバ側の部分は、それぞれ上記右側及び左側傾斜メンバの傾斜方向に沿うように車幅方向外側に延びて車体に支持されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記各車輪支持部材は後輪を支持するものであり、
上記サスペンションは、上記各車輪支持部材から車両前方に延びる前後方向アームと、上記アッパ及びロアアームを含み、上記各車輪支持部材から車幅方向内側に延びる少なくとも3本の車幅方向アームとを備え、
上記上側及び下側支持部は、上記前側車幅方向メンバに設けられていて、上記車幅方向アームのうち上記各車輪支持部材の前側部分に位置するアッパ及びロアアームを支持していることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。
【請求項9】
請求項8記載の車両のサスペンションサブフレームにおいて、
上記後側車幅方向メンバの中央部には、上記車幅方向アームのうち上記各車輪支持部材の後側部分に位置するロアアームを支持する左右の後側支持部が設けられており、
上記左側及び右側傾斜メンバの後側の端部は、上記左右の後側支持部の近傍で、上記後側車幅方向メンバの中央部とそれぞれ連結されていることを特徴とする車両のサスペンションサブフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−30532(P2010−30532A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196892(P2008−196892)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】