説明

車両のステップ構造

【課題】 ステップパネルの剛性を高めるためのみの無駄なコストアップを招くことなしに、ステップパネルの剛性を確保することができる車両のステップ構造の提供。
【解決手段】 ステップアッパーパネル31の下面とステップアンダーパネル32の上面との間を埋める状態でスライドドア2の開閉を案内支持するガイドレール10が車両前後方向に沿って設けられ、ガイドレール10がスライドドア2方向に向けて横方向に開かれ、ガイドレール2内にスライドドア2に備えられた垂直ローラ22が回動自在に収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面開口部にスライドドアの開閉を案内するガイドレールを備えた車両のステップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、側面開口部にスライドドアの開閉を案内するガイドレールを備えた車両のステップ構造としては、例えば、ステップパネルの下面に、ドア開口縁に沿って下方に開いた門型の断面を持つガイドレールを設定し、このガイドレールに水平ローラが収容されることにより、フライドドアの車幅方向の移動を規制し、スライドドアを上下方向に支持する垂直ローラはステップアンダーパネルの上面に沿って回動支持させるようにした構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−115471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来の技術にあっては、上述のように、ステップパネルとステップアンダーパネルとの間がスライドドア開口部の全長に亘り空洞状態であったため、人が乗り降りする時の荷重がかかるステップパネルの剛性確保が困難であり、このため、ステップパネル自体の剛性を高める必要から、コスト高になるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述のような従来の問題点に着目して成されたもので、ステップパネルの剛性を高めるためのみの無駄なコストアップを招くことなしに、ステップパネルの剛性を確保することができる車両のステップ構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本願請求項1に記載の車両のステップ構造は、車両前後方向に沿って設けられスライドドアの開閉を案内するガイドレールがステップアッパーパネルの下面とステップアンダーパネルの上面との間に介装されていることを特徴とする手段とした。
【0007】
また、請求項2に記載の車両のステップ構造は、請求項1に記載の車両のステップ構造において、前記ガイドレールがスライドドア方向に向けて横方向に開かれ、該ガイドレール内にスライドドアに備えられた垂直ローラが回動自在に収容されていることを特徴とする手段とした。
【0008】
また、請求項3に記載の車両のステップ構造は、請求項1または2に記載の車両のステップ構造において、前記ガイドレールがステップアンダーパネルの下面を支持する縦壁の上部に配置されていることを特徴とする手段とした。
【0009】
また、請求項4に記載の車両のステップ構造は、請求項3に記載の車両のステップ構造において、前記縦壁がサイドメンバーとシルインナーとの間の共通の縦壁であることを特徴とする手段とした。
【0010】
また、請求項5に記載の車両のステップ構造は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のステップ構造において、前記ガイドレールの上面に溶接されたスタッドボルトを前記ステップアッパーパネルに形成されたボルト孔を貫通させてナットで締結することにより前記ステップアッパーパネルが前記ガイドレールに対して締結固定されていることを特徴とする手段とした。
【0011】
また、請求項6に記載の車両のステップ構造は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のステップ構造において、前記ステップアッパーパネルの車両側縁部が車両前後方向に上向き凸部と下向き凹部とで波状に形成され、前記下向き凹部が前記ステップアンダーパネルに対し固定され、前記上向き凸部より低く下向き凹部より高い位置にハーネス及びコネクタ類が配置され、該コネクタの少なくとも一部は前記上向き凸部の真下に配置されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の車両のステップ構造では、上述のように、車両前後方向に沿って設けられスライドドアの開閉を案内するガイドレールがステップアッパーパネルの下面とステップアンダーパネルの上面との間に介装されている構成とすることにより、下面がステップアンダーパネルに支持された状態のガイドレールがステップアッパーパネルの補強骨部材の役目をなすため、ステップパネルの剛性を高めるためのみの無駄なコストアップを招くことなしに、ステップパネルの剛性を確保することができるようになるという効果が得られる。
【0013】
また、請求項2に記載の車両のステップ構造では、上述のように、前記ガイドレールがスライドドア方向に向けて開かれ、該ガイドレール内にスライドドアに備えられた垂直ローラが回動自在に収容されている構成とすることにより、垂直ローラ設置面の平滑度を向上させることができるようになる。
【0014】
また、請求項3に記載の車両のステップ構造では、上述のように、前記ガイドレールがステップアンダーパネルの下面を支持する縦壁の上部に配置されている構成とすることにより、ガイドレール及びステップパネルの強度・剛性を向上させることができるようになる。
【0015】
また、請求項4に記載の車両のステップ構造では、上述のように、前記縦壁がサイドメンバーとシルインナーとの間の共通の縦壁である構成とすることにより、車体剛性及び衝突等に対する強度を確保することができるようになる。
【0016】
また、請求項5に記載の車両のステップ構造では、上述のように、前記ガイドレールの上面に溶接されたスタッドボルトをステップアッパーパネルに形成されたボルト孔を貫通させてナットで締結することによりステップアッパーパネルがガイドレールに対して締結固定されている構成とすることにより、ステップアッパーパネルの端部までのオフセット量を短縮することができるため、剛性を向上させることができるようになる。
【0017】
また、請求項6に記載の車両のステップ構造では、上述のように、前記ステップアッパーパネルの車両側縁部が車両前後方向に上向き凸部と下向き凹部とで波状に形成され、下向き凹部がステップアンダーパネルに対し固定され、上向き凸部より低く下向き凹部より高い位置にハーネス及びコネクタ類が配置され、該コネクタの少なくとも一部は上向き凸部の真下に配置されている構成とすることにより、車両への人の昇降時におけるキッキングプレートの撓みによるハーネス等の損傷をステップアッパーパネルにより防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0019】
この実施例の車両のステップ構造は、請求項1〜6に記載の発明に対応する。
図1はこの実施例の車両のステップ構造が採用される車両を示す全体側面図、図2は図1のA−A線における拡大縦断面図である。
【0020】
この実施例の車両のステップ構造が採用される車両は、車体1と、スライドドア2と、ステップパネル3と、フロアパネル4と、シルインナー5と、ボディーサイドアウター6と、ハーネス及びコネクタ類7と、サイドメンバー8と、キッキングプレート9と、ガイドレール10と、を備えている。
さらに詳述すると、上記車体1の側面中央部には後部席への乗り降りをするための開口部11が形成されていて、該開口部11には該開口部11を開閉するスライドドア2が車両後方へ向けてスライド開放可能に設けられている。
【0021】
上記開口部11の下方開口縁部にはステップアッパーパネル31とステップアンダーパネル32とで構成されるステップパネル3が設けられている。そして、ステップアンダーパネル32は車体側縁部がフロアパネル4に対し連結され、開口部11側縁部側はその下方に配置されたシルインナー5とボディーサイドアウター6で構成される筒状部材の上面に対し固定されている。
【0022】
そして、このシルインナー5とボディーサイドアウター6との間にはレインフォースインナーアウター6aが介装され、シルインナー5とレインフォースインナーアウター6aとボディーサイドアウター6との上部接合部には、その長手方向に沿ってスライドドア2の閉時に該スライドドア2の下縁部内面と車体1との間をシールするシール部材11aが取り付けられている。また、シルインナー5の車両内側には該シルインナー5の内側側壁(縦壁)51を共通にする状態でサイドメンバー8が形成されている。
【0023】
また、ステップアッパーパネル31は、ステップアンダーパネル32の上方に所定の隙間を空けた状態で設けられるもので、その車両側縁部が車両前後方向に上向き凸部31aと下向き凹部31aとで波状に形成され、下向き凹部31bがステップアンダーパネル32に対しボルト・ナット32aで締結固定され、上向き凸部31aより低く下向き凹部31bより高い位置にハーネス及びコネクタ類7が配置され、該コネクタの少なくとも一部は上向き凸部31aの真下に配置されている。また、ステップアッパーパネル31の開口部11側端縁部には上向きの突条31cが形成され、この突条31cと上向き凸部31aの上面にキッキングプレート9が固定されている。
【0024】
また、ステップアッパーパネル31の下面とステップアンダーパネル32の上面との間を埋める状態でスライドドア2の開閉を案内支持するガイドレール10が車両前後方向に沿って設けられている。即ち、このガイドレール10は、方形断面のスライドドア2方向側壁面中央部が開口する状態でスライドドア2方向に向けて横方向に開かれた断面略C字状に形成されている。
【0025】
そして、このガイドレール10は、シルインナー5とサイドメンバー8との間の共通の縦壁となるシルインナー5の内側側壁51の上部位置において、その下面がステップアンダーパネル32の上面に固定され、その上面がスタッドボルト・ナット10aでステップアッパーパネル32に対し締結固定されている。
【0026】
そして、スライドドア2の内側下端部から略水平に突出形成されたスライドアーム21の先端に備えられた水平方向軸を中心として垂直面において回転する垂直ローラ22がガイドレール10内に回動自在に収容されている。
【0027】
次に、実施例の作用・効果について説明する。
この実施例の車両のステップ構造では、上述のように、車両前後方向に沿って設けられスライドドア2の開閉を案内するガイドレール10がステップアッパーパネル31の下面とステップアンダーパネル32の上面との間に介装されている構成とすることにより、下面がステップアンダーパネル32に支持された状態のガイドレール10がステップアッパーパネル31の補強骨部材の役目をなすため、ステップパネル3の剛性を高めるためのみの無駄なコストアップを招くことなしに、ステップパネル3の剛性を確保することができるようになるという効果が得られる。
【0028】
また、ガイドレール10がスライドドア2方向に向けて横方向に開かれ、該ガイドレール10内にスライドドア2に備えられた垂直ローラ22が回動自在に収容されている構成とすることにより、単にステップアンダーパネル32上面に設置させる場合に比べて垂直ローラ22の設置面の平滑度を向上させることができるようになる。
【0029】
また、ガイドレール10がステップアンダーパネル32の下面に当接する縦壁であるシルインナー5の内側側壁51の上部に配置されている構成とすることにより、ガイドレール10及びステップパネル3の強度・剛性を向上させることができるようになる。
【0030】
また、縦壁がシルインナー5とサイドメンバー8との間の共通の縦壁であるシルインナー5の内側側壁51で構成されることにより、車体剛性及び衝突等に対する強度を確保することができるようになる。
【0031】
また、ガイドレール10の上面がスタッドボルト・ナット10aでステップアッパーパネル31に対し締結固定されることによりステップアッパーパネル31がガイドレール10に対して締結固定されている構成とすることにより、ステップアッパーパネル31の端部までのオフセット量を短縮することができるため、剛性を向上させることができるようになる。
【0032】
また、ステップアッパーパネル31の車両側縁部が車両前後方向に上向き凸部31aと下向き凹部31bとで波状に形成され、下向き凹部31bがステップアンダーパネル32に対し固定され、上向き凸部31aより低く下向き凹部31bより高い位置にハーネス及びコネクタ類7が配置され、該コネクタの少なくとも一部は上向き凸部31aの真下に配置されている構成とすることにより、車両への人の昇降時におけるキッキングプレート9の撓みによるハーネス等の損傷をステップアッパーパネル32により防止することができるようになる。
【0033】
以上、本発明の実施例を図面に基づき説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例では、該ガイドレール10内にスライドドア2に備えられた垂直ローラ22が回動自在に収容されている構成としたが、水平ローラを回動自在に収容するようにしてもよい。また、水平ローラ及び垂直ローラ22を収容するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例の車両のステップ構造が採用される車両を示す全体側面図である。
【図2】図1のA−A線における拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 車体
11 開口部
11a シール部材
2 スライドドア
21 スライドアーム
22 垂直ローラ
3 ステップパネル
31 ステップアッパーパネル
31a 上向き凸部
31b 下向き凹部
31c 突条
32 ステップアンダーパネル
32a ボルト・ナット
4 フロアパネル
5 シルインナー
51 内側側壁(縦壁)
6 ボディーサイドアウター
6a レインフォースインナーアウター
7 ハーネス及びコネクタ類
8 サイドメンバー
9 キッキングプレート
10 ガイドレール
10a スタッドボルト・ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に沿って設けられスライドドアの開閉を案内するガイドレールがステップアッパーパネルの下面とステップアンダーパネルの上面との間に介装されていることを特徴とする車両のステップ構造。
【請求項2】
前記ガイドレールがスライドドア方向に向けて開かれ、
該ガイドレール内にスライドドアに備えられた垂直ローラが回動自在に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のステップ構造。
【請求項3】
前記ガイドレールがステップアンダーパネルの下面を支持する縦壁の上部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両のステップ構造。
【請求項4】
前記縦壁がサイドメンバーとシルインナーとの間の共通の縦壁であることを特徴とする請求項3に記載の車両のステップ構造。
【請求項5】
前記ガイドレールの上面に溶接されたスタッドボルトを前記ステップアッパーパネルに形成されたボルト孔を貫通させてナットで締結することにより前記ステップアッパーパネルが前記ガイドレールに対して締結固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のステップ構造。
【請求項6】
前記ステップアッパーパネルの車両側縁部が車両前後方向に上向き凸部と下向き凹部とで波状に形成され、
前記下向き凹部が前記ステップアンダーパネルに対し固定され、
前記上向き凸部より低く下向き凹部より高い位置にハーネス及びコネクタ類が配置され、該コネクタの少なくとも一部は前記上向き凸部の真下に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のステップ構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−327222(P2006−327222A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149138(P2005−149138)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】