説明

車両のディーゼルエンジンの排気ラインに組み込まれた汚染除去手段の再生支援を提供するシステム

汚染除去手段(1)が、酸化触媒形成手段(2)と関連付けられ、エンジン(4)が、燃料をエンジンに供給するコモンレール手段(7)と関連付けられ、エンジン(4)が、少なくとも1回の後噴射時にシリンダに燃料を噴射することによって再生の手法を実施するようになされたこのシステムは、再生要求(req.RG)を検知する手段(8)と、車両のアクセルペダルが上げられている状態、または車両のエンジンがアイドルにある段階を検出する手段(9、10)と、触媒形成手段の下流の温度を取得する手段(11)と、前記温度に応答して、アイドルにある段階中およびアクセルペダルが上げられた結果アイドルに戻る段階中に後噴射を適用する最大継続時間を決定する手段(8)と、後噴射の使用継続時間が、アイドルに戻る段階中に最大継続時間に達した場合、後噴射を直ちに中断し、かつ/または、使用継続時間が、アイドルにある段階中に最大継続時間に達した場合、後噴射を次第に減少させる手段(7、8)とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ディーゼルエンジンの排気ラインに組み込まれた酸化触媒形成手段と関連付けられた汚染除去手段を再生するためのシステムに関する。
より詳細には、本発明は、エンジンが、エンジンのシリンダに燃料を供給するための共通マニホルドまたは「レール」手段を伴い、また、少なくとも1つの後噴射の作動過程において、一定トルク時に、シリンダ中に燃料を噴射することによって再生手法を実施するようになされているシステムに関する。
【0002】
たとえばパティキュレートフィルタなどの汚染除去手段の再生中では、エンジンがアイドルにある(排気温度が極めて低い)、または車両のアクセルペダルが上げられている(通常の作動では燃料が噴射されない)段階は、排気、すなわち排気ラインおよびそこに組み込まれている要素類の温度を下げるので、問題が生じ得る。
【0003】
エンジン作動のそのような段階における1つまたは複数の後噴射を利用すると、後噴射の燃焼によってエンジン内で生成される炭化水素(HC)の触媒変換に頼ることによって、排気ラインの温度の低下を抑制することが可能になる。
【0004】
ただし、そのような手法は、触媒形成手段によって行われる発熱反応に頼っており、前記手段が活性であることが前提であり、前記手段は、たとえば、酸化触媒や、一酸化炭素/炭化水素(CO/HC)酸化機能を有するNOxトラップを含む。
【0005】
アクセルペダルが上げられた結果、エンジンがアイドルに戻る段階中は、メイン噴射もパイロット噴射も行われず、1つまたは複数の後噴射それぞれはシリンダ内で燃焼しない。後噴射は、燃料を、後に触媒形成手段によって変換されるHCの形で気化させるに止まるからである。
【0006】
したがって、酸化触媒形成手段の入口温度は極めて低く、1つまたは複数それぞれの後噴射によってもたらされるHCの燃焼によって生成される触媒発熱反応にも拘らず、触媒形成手段の前面は次第に冷めて、その変換活動は、次第に不活性化する。
【0007】
エンジンがアイドルにある間、1つまたは複数の後噴射を行うにも拘らず、触媒形成手段の入口での温度は相対的に低い。アイドル中の後噴射の手法も、エンジン中への後噴射の燃焼によって生成されるHCの触媒変換に頼っている。触媒反応が発熱するにも拘らず、触媒形成手段の前面は次第に冷めて、その変換活動は、次第に不活性化する。
【0008】
したがって、アイドルに戻る段階、またはアイドルが長引くと、その間に、触媒形成手段の活性が、HCを全て変換するのに十分なほど活性ではなくなることが起こり得、それによって触媒形成手段の下流でHCが急増し、青い煙および/または排気臭さえ生じる。
【0009】
さらに、後噴射を用いると、潤滑油が燃料で希釈され、それによって、潤滑油の潤滑特性が劣化し、特にその粘性が低下する。粘性が低くなり過ぎた場合には、エンジンの損傷に至ることがある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、これらの問題を解決することである。
このために、本発明は、自動車用ディーゼルエンジンの排気ラインに組み込まれた、酸化触媒形成手段と関連付けられた汚染除去手段の再生を支援するシステムにおいて、前記エンジンが、エンジンのシリンダへ燃料を供給するコモンレール手段と関連付けられ、一定トルクにおいて、少なくとも1回の後噴射時にシリンダに燃料を噴射することによって再生の手法を実施するようになされたシステムであって、
再生要求、すなわち後噴射の要求を検知する手段と、
車両のアクセルペダルが上げられている状態、または車両のエンジンがアイドルにある段階を検出する手段と、
触媒形成手段の下流の温度を取得する取得手段と、
前記温度に応答して、アクセルペダルが上げられた結果エンジンがアイドルに戻る段階、およびエンジンがアイドルにある段階中に後噴射を適用する最大継続時間を決定する手段と、
後噴射の使用継続時間が、アイドルに戻る段階中に所定の適用最大継続時間に達した場合、前記1つまたは複数の後噴射のそれぞれを直ちに中断し、かつ/または、後噴射の使用継続時間が、エンジンがアイドルにある段階中に所定の適用最大継続時間に達した場合、前記1つまたは複数の後噴射のそれぞれを次第に減少させる手段と
を備えることを特徴とするシステムを提供する。
【0011】
他の特徴によれば、
減少手段が、1つまたは複数の後噴射のそれぞれを、較正可能な勾配を適用して減少させるようになされており、
汚染除去手段がパティキュレートフィルタを備えており、
汚染除去手段が、NOxトラップを備えており、
燃料が、汚染除去手段の再生を容易にするために添加剤を含み、その添加剤が、それに混合したパティキュレートと共に汚染除去手段に付着させられ、
燃料が、NOxトラップを形成する添加剤を含み、
エンジンが、ターボチャージャと関連付けられる。
【0012】
本発明は、純粋に例として与えられ、添付図面を参照して行われる以下の説明を読むことによって、よりよく理解され得る。
図1は、全体として参照符号2を付された酸化触媒形成手段と関連付けられ、自動車のディーゼルエンジン4の排気ライン3に組み込まれ、全体として参照符号1を付された汚染除去手段の再生を支援するためのシステムの全体構成を示す。
【0013】
エンジンはターボチャージャと関連付けられてもよく、その場合は、そのタービン部5は、排気ラインとも関連付けられ、ターボチャージャのコンプレッサ部6はエンジンの上流に配置される。
【0014】
さらに、エンジンはまた、エンジンのシリンダに燃料を供給するコモンレールを形成する手段と関連付けられ、一定トルク時に、少なくとも1つの後噴射中に従来の方法でシリンダに燃料を噴射することによって再生の手法を実行するようになされる。
【0015】
これらの手段は、全体として参照符号8を付されたパイロットユニットによって制御される。パイロットユニット8は、たとえば汚染除去手段に対する監視部が発し、したがって後噴射に対する要求を構成している再生要求req.RGを検知するようになされる。パイロットユニットはまた、自動車のアクセルペダルが上げられていることを検知する手段9、およびエンジンがアイドルにある段階を検出する、全体として参照符号10を付された手段に接続されている。これらの手段は、適切な構成を取ることができる。
【0016】
さらに、パイロットユニット8はまた、触媒形成手段2の下流の温度を得る手段に接続され、これら取得手段は全体として符号11を付されている。これらの手段は、適切な温度センサを備える。
【0017】
したがって、再生に対する、すなわち後噴射に対する要求を検知する際に、パイロットユニット8は、自動車のアクセルペダルが上げられていること、または自動車のエンジンがアイドルにあることを検出することができ、それを図2のステップ12によって表す。
【0018】
次いで、ユニット8は、ステップ13で、触媒形成手段の下流の温度を取得し、それによって、ステップ14で、前記温度に応答してアクセルペダルが上げられた結果としてエンジンがアイドルに戻る間、またはアイドルにある間の、後噴射を行う最大継続時間を決定するようになされている。
【0019】
ステップ15および16の間、ユニット8は、後噴射が用いられている時間を監視し、前記時間の長さが、後噴射の適用に対する所定の最大継続時間に達した時点を検出する。
この継続時間が、アクセルペダルが上げられた結果エンジンがアイドルに戻る間に、ステップ17で表すように、所定の最大適用継続時間に達した場合、その時点で、パイロットユニット8は、ステップ18で表すように、1つまたは複数の後噴射それぞれを直ちに中断するようになされている。
【0020】
そうではなくて、エンジンがアイドルにある間に、ステップ19で表すように、継続使用時間が所定の最大適用継続時間に達した場合、その時点で、パイロットユニットは、ステップ20で、1つまたは複数の後噴射それぞれを、たとえば較正することができる勾配を適用して次第に減少させるようになされている。
【0021】
そのようなシステムは、パティキュレートフィルタまたはNOxトラップによって構成される汚染除去手段とともに作動させることができ、また、添加剤を従来の方法で燃料と混合して、汚染除去手段に捕捉された煤煙の燃焼温度を低下させることによって汚染除去手段の再生を促進するために、添加剤に混合したパティキュレートと共に汚染除去手段に付着させることができることに留意されたい。
【0022】
従来の方法では、添加剤は、添加剤含有燃料がエンジン内で燃焼した後は、パティキュレート中に存在する。
NOxトラップを形成する添加剤の使用を考えることも可能である。
【0023】
そのような構成は、アイドル段階またはアクセルペダルが上げられている間、後噴射を適用する継続時間を最大にすることを可能にすることが理解されよう。
この最大継続時間は、タイマの形で提示され、そのタイマは、アイドル段階および/またはアクセルペダルが上げられている段階中で、再生段階の間、経過時間が増すにつれて、空になる、すなわちカウントダウンし、または減少する。タイマは、これらの段階が終了した後、再初期化される。
【0024】
このシステムでは、アクセルペダルが上げられ、またはエンジンがアイドルにある段階中で、排気ラインの温度レベルがひどく好ましくない間は、後噴射される燃料の量を制限することを可能にする。
【0025】
このように、これら段階中に後噴射される燃料の総量を制限することによって、いずれにしてもこれら段階は、汚染除去手段を再生する観点からは最も効果的な段階ではないが、後噴射の効果的な時間の割合が最適化され、エンジン潤滑油が燃料によって希釈される程度が抑制される。
【0026】
最後に、これにより、酸化機能が突然活性状態でなくなる危険性を抑制することが可能になる。酸化機能が不活性状態になると、HCの変換が不十分になり、したがって、煙および/または異臭の原因となるHCが、排気部から吐出されることになる。
【0027】
もちろん、他の実施形態を考案することができる。すなわち、たとえば汚染除去手段と酸化触媒形成手段とを単一の要素に、具体的には共通基板上に一体にすることができる。たとえば、酸化機能を組み込んだ特定のフィルタを考案することができる。同様に、そのような酸化機能を組み込んだNOxトラップを、トラップは添加剤の形であれそうでない形であれ、考案することもできる。
【0028】
酸化作用および/またはNOxトラップ作用を、たとえば、燃料に混合した添加剤によって発揮することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の再生支援システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】再生支援システムの作動を示す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ディーゼルエンジン(4)の排気ライン(3)に組み込まれた、酸化触媒形成手段(2)に関連付けられた汚染除去手段(1)の再生を支援するシステムにおいて、前記エンジン(4)が、該エンジンのシリンダへ燃料を供給するコモンレール手段(7)と関連付けられ、一定トルクにおいて、少なくとも1回の後噴射時にシリンダに燃料を噴射することによって再生の手法を実施するようになされた、システムであって、
再生要求すなわち後噴射の要求(req.RG)を検知する手段(8)と、
前記車両のアクセルペダルが上げられている状態、または前記車両のエンジンがアイドルにある段階を検出する手段(9、10)と、
前記触媒形成手段(2)の下流の温度を取得する取得手段(11)と、
前記温度に応答して、前記アクセルペダルが上げられた結果として前記エンジンがアイドルに戻る段階、および前記エンジンがアイドルにある段階中に後噴射を適用する最大継続時間を決定する手段(8)と、
後噴射の使用継続時間が、アイドルに戻る段階中に、前記予め決定された適用最大継続時間に達した場合、前記1つまたは複数の後噴射のそれぞれを直ちに中断し、かつ/または、後噴射の使用継続時間が、前記エンジンがアイドルにある段階中に、前記予め決定された適用最大継続時間に達した場合、前記1つまたは複数の後噴射のそれぞれを次第に減少させる手段(7、8)と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記減少手段(7、8)が、前記1つまたは複数の後噴射のそれぞれを、較正可能な勾配(20)を適用して減少させるようになされていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記汚染除去手段(1)が、パティキュレートフィルタを備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記汚染除去手段(1)が、NOxトラップを備えることを特徴とする、請求項1、請求項2、または請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記汚染除去手段(1)の再生を容易にするために、前記燃料が添加剤を含み、該添加剤が、それに混合したパティキュレートと共に前記汚染除去手段(1)に付着させられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項6】
燃料が、NOxトラップを形成する添加剤を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項7】
前記エンジンが、ターボチャージャ(5、6)と関連付けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1つに記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−510840(P2007−510840A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537338(P2006−537338)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002494
【国際公開番号】WO2005/049993
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(503449786)プジョー・シトロエン・オトモビル・ソシエテ・アノニム (33)
【Fターム(参考)】