説明

車両のドライブレコーダ

【課題】過去に車両の衝突や危険な状態が発生した地点に関する情報に基づいて、安全に車両を運転するための支援情報を提供すること。
【解決手段】ドライブレコーダ10に、車両の衝突や危険な状態が発生した地点に関する情報が保存され、車両の現在位置を検出するGPS受信機14からの位置信号に基づき、車両がその地点に接近していることが判定されたとき、車両の運転者に警報を与える。その警報によって、車両の運転者は、過去に車両の衝突や危険な状態が発生した地点に接近していることを認識することができ、車両の運転者は、その地点を走行する際に、慎重かつ安全な運転を行うように動機づけることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて、例えば事故に遭ったときの車両の状況を記録する車両のドライブレコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特にタクシーやトラックなどの営業車両を中心に、ドライブレコーダの搭載が拡大しつつある。このドライブレコーダは、事故時や事故につながりそうな急加速や急減速が生じた際に,その前後の映像や車両の走行データを記録する装置である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたドライブレコーダは、車速センサ、加速度センサ、衝突検知センサ、車間距離センサ等のセンサからの出力に基づきの危険運転(特定の状態)が成されたかを判断する。危険運転が成された際には、ドライブレコーダは、音声出力装置から警告音声を出力するとともに、ICカードにより特定された運転者の情報として危険運転の情報を内蔵のメモリへ書き込み、ICカード側にも同様に危険運転の情報を書き込む。
【0004】
このようにして、後に、ドライブレコーダの内臓メモリやICカードに記憶されたデータを読み出して解析することにより、その危険運転の情報などに基づいて運転訓練の必要性などを判断することができる。
【特許文献1】特開2006−69434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、事故につながりそうな危険運転が、交差点の見通しが悪かったり、急カーブであったりなど、その道路環境にも起因してなされた場合には、再び同一地点において、同様の危険運転がなされる可能性がある。
【0006】
従来のドライブレコーダは、危険な運転がなされたときの情報を記録してはいるが、その記録情報は、車両の運転が終了した後に、各運転者が安全な運転を行っているか否かを判断するために用いるのみであった。換言すれば、従来のドライブレコーダは、車両が運転されている最中に、記録された情報に基づいて、運転者がより安全に車両を運転できるように支援を行うことは何ら考慮されていない。
【0007】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであり、過去に車両が危険な状態に陥ったときの情報に基づいて、安全に車両を運転するための支援情報を運転者に提供することが可能な車両のドライブレコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の車両のドライブレコーダは、
車両の走行状態に応じた走行状態信号を出力する走行状態検出手段と、
車両の周囲の状況を撮影した撮影信号を出力する撮影手段と、
走行状態信号及び撮影信号を所定の時間間隔で繰返し記録するとともに、所定時間分の走行状態信号及び撮影信号を記録する記録容量を有し、その所定時間分を超える走行状態信号及び撮影信号を記録する時には、現時点から所定時間前の走行状態信号及び撮影信号に上書きする第1の記録手段と、
走行状態検出手段からの走行状態信号に基づいて、車両が衝突したことを判定する衝突判定手段と、
衝突判定手段が車両が衝突したと判定したときに、第1の記録手段に記録された走行状態信号及び撮影信号を保存する保存手段とを備えた車両のドライブレコーダであって、
車両の位置を示す位置信号を出力する位置検出手段を有し、
第1の記録手段は、位置検出手段から出力される位置信号も、走行状態信号及び撮影信号とともに記録し、
さらに、走行状態検出手段からの走行状態信号に基づいて、車両が衝突には至らないが、危険な状態となったことを判定する危険状態判定手段と、
危険状態判定手段によって、車両が危険状態となったと判定されたことに応じて、第1の記録手段に記録された所定時間分の走行状態信号、撮影信号及び位置信号が転送されて、その転送された信号を記録する第2の記録手段と、
第2の記録手段に記録された位置信号と位置検出手段が出力する位置信号とに基づいて、車両が危険な状態となった地点に接近したことを判定する接近判定手段と、
接近判定手段によって、車両が危険な状態となった地点に接近したと判定されたとき、車両の運転者に警報を与える警報手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上述した構成により、危険状態判定手段によって、車両が衝突には至らないが、危険な状態となったことが判定されると、第1の記録手段に記録された所定時間分の走行状態信号、撮影信号及び位置信号が第2の記録手段に転送されて記録される。これにより、車両が危険な状態となった地点に対応する位置が第2の記録手段に保存される。そして、接近判定手段が、第2記録手段に記録された位置信号と位置検出手段が出力する位置信号とに基づいて、車両が危険な状態となった地点に接近したことを判定すると、警報手段が車両の運転者に警報を与える。従って、その警報によって、車両の運転者は、過去に車両が危険な状態となった地点に接近していることを認識することができる。その結果、車両の運転者は、その地点を走行する際に、慎重な運転を行うことが期待できる。このようにして、請求項1に記載の車両のドライブレコーダによれば、安全に車両を運転するために効果的な支援情報を提供することができる。
【0010】
なお、請求項1に記載の車両のドライブレコーダにおいて、車両が衝突したと判定されたとき、保存手段は、第1の記録手段に記録された走行状態信号、撮影信号及び位置信号を第2の記録手段に転送して記録することによって保存しても良いし、第1の記録手段における新たな信号の上書きを停止することによって、それらの信号を保存しても良い。第2の記録手段に転送して記録した場合、過去に車両の衝突が発生した地点も対象として、その地点に車両が接近したときに警報を与えることが可能になる。
【0011】
請求項2に記載したように、警報手段は、映像を表示する表示手段を有し、第2の記録手段に記録された撮影信号を用いて、過去に車両が危険な状態となったときの映像を表示手段に表示することにより、車両の運転者に警報を与えることが好ましい。ドライブレコーダは、位置信号に加えて、車両が危険な状態となったときの車両周囲の状況を撮影した撮影信号や車両の走行状態信号を記録している。その撮影信号に基づいて映像を表示することにより、運転者に対して、車両が危険な状態となった地点やその状況を提示することができる。このような映像を見ることにより、運転者は、車両が危険な状況になったときの様子をより鮮明に思い出し、慎重かつ安全な運転を行うようになる。
【0012】
請求項3に記載したように、接近判定手段は、第2の記録手段に記録された所定時間分の位置信号から、危険状態判定手段が車両が危険な状態になったと判定した時点の位置信号を抽出し、この抽出位置信号と位置検出手段が出力する位置信号とに基づいて、車両が危険な状態となった地点に接近したことを判定することが好ましい。これにより、実際に車両が危険な状態となった地点を対象として、精度良く接近判定を行うことができる。
【0013】
請求項4に記載したように、接近判定手段は、抽出位置信号をリスト化して保存するとともに、抽出位置信号の抽出回数を、各々の抽出位置信号に対応付けて保存するものであり、リスト化して保存されている抽出位置信号と同じ地点を示す位置信号が新たに抽出されたとき、当該抽出位置信号に対応付けて保存されている抽出回数を更新することが好ましい。このように、同一地点において車両が危険な状態となったときに、その回数を計数して保存しておくことにより、注意して運転すべき地点の中でも、特に注意すべき地点を識別することも可能になる。また、車両が危険な状態となった地点に対応して抽出される抽出位置信号を予めリスト化しておくことにより、接近判定を行う際の処理負荷を軽減することができる。
【0014】
請求項5に記載したように、接近判定手段は、リスト化して保存された抽出位置信号の各々に対して、その抽出回数に応じて、車両の運転者に警報を与えるべき危険地点であることを示す危険地点フラグを付与し、当該危険地点フラグが付与された抽出位置信号のみを対象として、車両が危険な状態となった地点に接近したことを判定するようにしても良い。これにより、例えば1回でも車両が危険な状態になった地点についても警報を行ったり、少なくとも2回以上、危険な状態になった地点についてのみ警報を行ったり、警報を行うべき地点を、抽出回数に応じて柔軟に設定することができる。
【0015】
請求項6に記載したように、接近判定手段は、所定期間が経過するまでに、抽出回数が更新されなかった抽出位置信号に関して、その抽出回数を減少させるようにしても良い。
所定期間が経過するまでに、車両が危険な状態になったとの判定がなされない地点に関しては、その地点における警報によって、運転者が車両を慎重に運転するようになったためと考えられる。この場合、警報を与え続けることは、運転者にとって却って煩わしいことになりかねないためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による車両のドライブレコーダについて、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による車両のドライブレコーダ10の全体構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、ドライブレコーダ10は、車両の走行状態を検出するために、車両の前後方向及び/または横方向に生じる加速度を検出する加速度センサ11と、車両の旋回方向への回転角の変化速度であるヨーレートを検出するヨーレートセンサ12を有する。これらの加速度センサ11やヨーレートセンサ12によって検出される検出信号に基づいて、後述するECU(電子制御装置)16が車両の衝突や、衝突には至らないが危険であるとみなされる状態が発生したことを判定する。
【0018】
すなわち、加速度センサ11やヨーレートセンサ12によって、車両の衝突時に発生するような大きな加速度やヨーレートが検出されると、ECU16は、車両が何らかの物体と衝突したと判定する。また、衝突時の加速度やヨーレートほど大きくはないが、通常の走行では発生する確率が低い大きな加速度やヨーレートが検出されると、ECU16は、車両が急減速や急加速、或いは急旋回を行わなければならない危険な状態になったと判定する。より具体的には、ECU16は、例えば予め車両毎に、衝突時に相当する加速度やヨーレートの範囲、及び危険な状態に相当する加速度やヨーレートの範囲を定めておき、検出された加速度やヨーレートがいずれかの範囲に含まれるかを判定することによって、衝突や危険な状態の発生を判定することができる。
【0019】
ドライブレコーダ10は、上述した加速度センサ11やヨーレートセンサ12の他にも、例えば車両の走行速度を検出する車速センサ、車両のステアリングホイールの操舵角度を検出する操舵角センサ、外気温を検出する外気温センサ、ウインカの動作状態に応じた信号を出力するウインカセンサ、ワイパの動作状態に応じた信号を出力するワイパセンサなど、各種のセンサを備える。これらのセンサは、万一、車両が衝突事故に遭った場合に、その事故原因を解析するのに有用な車両状態や、運転状態についての情報を記録しておくためのものである。
【0020】
さらに、ドライブレコーダ10は、GPS衛星からの衛星信号を利用して車両が現在走行している位置を示す位置信号を出力するGPS受信機14と、車両の周囲の状況を撮影する監視カメラ15とを備える。監視カメラ15は、少なくとも車両の進行方向前方を撮影する前方監視カメラを含み、さらに、車両の後方や側方を撮影するカメラを含むものであっても良い。この監視カメラ15からの画像信号は、車両が衝突事故にあった場合に、真の原因を究明する上で非常に有用なものとなる。
【0021】
ECU16は、記憶部17及び制御部20を有し、主に制御部20の制御処理によって、上述した各センサ11〜13、GPS受信機14、及び監視カメラ15から出力される信号を、所定の時間間隔でサンプリングし、記憶部17に記録する。記憶部17は、第1メモリ18及び第2メモリ19を有する。
【0022】
第1メモリ18は、図2に示すように、所定の時間間隔でサンプリングされる、各センサ11〜13、GPS受信機14、及び監視カメラ15から出力される信号を、所定時間(例えば40秒)分だけ記録可能な記憶容量を有する。この第1メモリ18が、その所定時間分を超える信号を記録する時には、現時点から所定時間前の信号が記録された領域に上書きする。このように、第1メモリ18は、信号の記録に関して無限ループを形成しており、通常、現時点から所定時間前までの期間にサンプリングされた各種の信号が一時記録された状態となっている。
【0023】
このような状態で、制御部20が、上述した加速度センサ11やヨーレートセンサ12の検出信号に基づいて、車両の衝突や危険な状態が発生したと判定すると、記録トリガ信号を発生する。この記録トリガ信号が発生すると、図2に示すように、制御部20は第1メモリ18において、さらに所定時間(例えば10秒)だけサンプリングされた各種信号の書き込みを行い、その後の新たな書き込みを停止する。そして、制御部20は、第1メモリ18に記録されている、記録トリガ信号の発生前後の所定時間分の各種信号を、第2メモリ19に転送する。第2メモリ19は、転送された所定時間分の各種信号を1単位として、記録・保存する。この結果、第2メモリには、車両の衝突や危険な状態が発生したときに対応する所定時間分の各種信号が保存されることになる。
【0024】
ECU16は、第2メモリに記憶された各種信号の中の位置信号を用いて、衝突や危険な状態に陥った地点に、車両が接近しているか否かを判定する。具体的には、保存されている位置信号と、GPS受信機14によって検出された位置信号を対比して、車両が保存されている位置信号に対応する危険地点に対して所定距離以内に接近したか否かを判定する。
【0025】
ここで、車両の衝突事故の発生原因や、衝突につながりそうな危険運転を行った理由が、例えば、交差点の見通しが悪かったり、急カーブであったりなど、その道路環境などの外部環境にも起因している場合には、再び同一地点において、同様の危険運転がなされる可能性がある。
【0026】
そのため、本実施形態によるドライブレコーダ10は、第2メモリに保存されている画像信号に基づく映像を表示するモニタ21や、警告音声や警告アラーム音などを発生する警告装置22などを備え、ECU16が、車両は危険地点に接近していると判定したときに、運転者に対して、警告を行うことができるように構成されている。
【0027】
この場合、単に、音声やアラーム音によって警告するだけでも、車両の運転者は、過去に車両が衝突を含む危険な状態となった地点に接近していることを認識することができる。その結果、車両の運転者は、その地点を走行する際に、慎重な運転を行うことが期待できる。ただし、過去に車両が危険な状態となったときの映像をモニタ21によって表示すると、運転者に対して、車両が危険な状態となった地点やその状況を提示することができる。このような映像を見ることにより、運転者は、車両が危険な状況になったときの様子をより鮮明に思い出し、より一層、慎重かつ安全な運転を行うようになるので好ましい。
【0028】
次に、ECU16において実行される処理について、図3及び図4のフローチャートに基づいて詳細に説明する。なお、図3のフローチャートは、運転者が、車両の運転を開始すると、所定周期毎に繰返し実行される処理を示し、図4のフローチャートは、主に、各種信号が第1メモリ18から第2メモリ19に転送されて保存されたときに実行される処理を示す。
【0029】
図3のフローチャートにおいて、まずステップS100の処理では、各センサ11〜13、GPS受信機14、及び監視カメラ15から出力される信号を入力する。これにより、各センサ11〜13、GPS受信機14、及び監視カメラ15から出力される信号が、所定間隔で、ECU16にサンプリングされる。
【0030】
続くステップS110では、入力した加速度信号やヨーレート信号に基づいて、車両の衝突や危険な状態が発生したか否かを判定し、車両の衝突や危険な状態が発生したと判定したとき、記録トリガ信号を発生する。ステップS120では、ステップS110の処理により記録トリガ信号が発生したか否かを判定する。このステップS120の処理において「Yes」と判定された場合には、ステップS130の処理に進む。
【0031】
ステップS130では、記録トリガ信号の発生前後の所定時間分の各種信号を保存するために、記録トリガ信号が発生してからの所定時間として定められた「10秒」が経過したか否かを判定する。このステップS130の判定において、まだ10秒経過していないと判定されると、ステップS180に進んで、図2に示すように、サンプリングした各種信号を第1メモリ18の所定領域に書き込む。これにより、記録トリガ信号が発生した後も10秒間分だけ各種信号の記録が継続される。
【0032】
そして、記録トリガ信号の発生から10秒経過して、ステップS130の判定が「Yes」に変化すると、ステップS140の処理が実行される。ステップS140では、第1メモリ18に記録された、記録トリガ信号発生前後の所定時間分の各種信号を1単位として、第2メモリ19に転送して保存する。これにより、第2メモリ19には、車両の衝突や危険な状態が発生したときに対応する、各種信号が記録され保存されることになる。
【0033】
ここで、図4のフローチャートに基づいて、車両の衝突や危険な状態が発生したときに対応する各種信号が、第2メモリ19に記録されたときに実行される処理について説明する。
【0034】
まず、ステップS200では、各センサ11〜13、GPS受信機14、及び監視カメラ15から出力された所定時間分の各種信号が、第2メモリへ記録されたか否かを判定する。このステップS200の判定が「Yes」になると、ステップS210の処理に進み、記録トリガ信号に対応する位置信号を抽出する。
【0035】
第2メモリ19には、記録トリガ信号の発生前後の所定時間分の各種信号が転送されて保存されるので、その第2メモリ19には、複数の位置信号が保存される。しかし、実際に車両の衝突や危険な状態が発生した地点は、記録トリガ信号が発生したときにサンプリングされた位置信号に対応する。このため、記録トリガ信号が発生したときの位置信号を抽出することにより、車両の衝突や危険な状態が発生した地点の正確な情報を得ることができる。
【0036】
続くステップS220では、抽出した位置信号を、危険地点リストに登録済みの抽出位置信号と対比する。危険地点リストとは、図5に示すように、ステップS210にて抽出した位置信号をリスト化したものである。この危険地点リストは、記憶部17に保存される。このように、車両の衝突や危険な状態が発生した地点に対応して抽出された抽出位置信号を予めリスト化しておくことにより、それらの抽出位置信号に対応する地点への車両の接近判定を行う際の処理を簡単に行うことができる。
【0037】
さらに、危険地点リストには、抽出位置信号に対応付けて、その抽出回数と、車両の運転者に警報を与えるべき危険地点であることを示す危険地点フラグとが保存されている。この抽出回数は、同一地点に対応する位置信号が何回、ステップS210において抽出されたかを示すものである。すなわち、リスト化して保存されている抽出位置信号と同じ地点を示す位置信号が再度抽出されたとき、当該抽出位置信号に対応付けて保存されている抽出回数が増加される。このように、同一地点において複数回車両が危険な状態となったときに、その回数を計数して保存しておくことにより、注意して運転すべき地点の中でも、特に注意すべき地点を識別することも可能になる。
【0038】
危険地点フラグは、車両が接近したときに警告を行うべき地点を示すものであり、当該危険地点フラグがオンされた抽出位置信号のみを対象として、その地点に車両が接近したときに、警告が行われるものである。この危険地点フラグを、各位置信号の抽出回数に応じてオン、またはオフし、オンされた危険地点フラグの抽出位置信号に対応する地点のみを対象として、車両の接近時に警告を与える。このようにすると、車両が接近したときに警報を行うべき地点を、抽出回数に応じて柔軟に設定することができる。例えば1回でも車両が危険な状態になった地点についても車両の接近時に警報を行ったり、少なくとも2回以上、危険な状態になった地点についてのみ警報を行ったりといった設定も容易に行うことができる。
【0039】
ステップS230では、ステップS220での対比結果に基づいて、既に危険地点リストに登録済みの抽出位置信号の中に、ステップS210にて抽出された位置信号と一致する抽出位置信号があるか否かを判定する。このステップS230の処理において「Yes」と判定された場合には、ステップS240に進み、ステップS210にて抽出された位置信号と一致する抽出位置信号の抽出回数を1だけインクリメントする。一方、ステップS230の処理において「No」と判定された場合には、ステップS250に進み、新規の抽出位置信号として危険地点リストに登録するとともに、その抽出回数を1に設定する。
【0040】
ステップS260では、抽出回数が2以上の抽出位置信号に関して、危険地点フラグをオンする。なお、抽出回数が1の抽出位置信号に対して危険地点フラグをオンするようにしても良いことは言うまでもない。
【0041】
次に、図3のフローチャートにおいて、まだ説明されていないステップS150以降の処理について説明する。ステップS120において、記録トリガ信号が発生していないと判定された場合には、ステップS150の処理が行われる。ステップS150では、GPS受信機14によって検出された、車両の現在位置に対応する検出位置信号と、記憶部17に保存された危険地点リストの中で、危険地点フラグがオンされている抽出位置信号とを対比して、車両の現在位置から抽出位置信号に対応する危険地点までの距離を算出する。
【0042】
続くステップS160では、ステップS150にて算出した距離に基づいて、車両が危険地点に接近しているか否かを判定する。このステップS160にて「Yes」と判定された場合、ステップS170に進んで、上述したモニタ21や警報装置22を用いて、運転者に警報を与える。
【0043】
ステップS160にて、車両は危険地点に接近していないと判定された場合、及びステップS170にて警報処理が実行された後には、上述したステップS180の処理が実行され、第1メモリ18に、各センサ11〜13、GPS受信機14、及び監視カメラ15からの各種信号が記録される。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態のドライブレコーダによれば、車両の衝突や危険な状態が発生した地点に関する情報が保存され、車両がその地点に接近していることが判定されたとき、車両の運転者に警報を与える。従って、その警報によって、車両の運転者は、過去に車両が危険な状態となった地点に接近していることを認識することができ、車両の運転者は、その地点を走行する際に、慎重な運転を行うことが期待できる。このようにして、本実施形態のドライブレコーダによれば、安全に車両を運転するために効果的な支援情報を提供することができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0046】
例えば、上述した実施形態においては、車両が危険な状態となったときに加え、車両が衝突したと判定されたときにも、第1メモリ18から各種信号を第2メモリ19に転送して保存するようにした。しかしながら、車両の衝突が発生したときには、単に第1メモリ18への新たな信号の上書きを停止することによって、それらの信号を第1メモリ18にて保存するようにしても良い。このようにしても、車両の衝突事故発生時において、少なくともその原因を究明する上で有用な情報を保存することが可能であるためである。
【0047】
ただし、車両の衝突が発生したときに、上述した実施形態のように、車両の走行状態などに関する各種信号を第2メモリ19に転送して記録すれば、車両が危険な状態となった地点のみでなく、過去に車両の衝突が発生した地点も対象として、その地点に車両が接近したときに警報を与えることが可能になるため好ましい。
【0048】
また、上述した実施形態では、車両の衝突や危険な状態が発生した地点に対応して抽出された抽出位置信号をリスト化するとともに、その抽出回数を記録するようにしたが、所定期間が経過するまでに、その抽出回数が更新されなかった抽出位置信号に関して、抽出回数を減少させるようにしても良い。所定期間が経過するまでに、車両が危険な状態になったとの判定がなされない地点に関しては、その地点における警報によって、運転者が車両を慎重に運転するようになったと考えられる。この場合、警報を与え続けることは、運転者にとって却って煩わしいことになりかねないためである。
【0049】
なお、所定期間が経過したかどうか判断するために、各抽出位置信号毎に抽出回数が更新されてからの経過時間をカウントし、この経過時間が所定期間に達したか否かを判断しても良いし、全抽出位置信号の抽出回数に対して共通の所定期間を設定し、その所定期間において各抽出位置信号の抽出回数が更新されたか否かを判断しても良い。
【0050】
また、上述した実施形態では、車両の衝突が発生したことや、車両が危険な状態となったことを、加速度センサ11及びヨーレートセンサ12の検出信号に基づいて判定している。このように2つのセンサを設ければ判定精度が向上するが、いずれか一方のセンサの検出信号のみから、車両の衝突や危険な状態の発生を判定するようにしても良い。また、車両の衝突や危険な状態の発生を判定することができる限り、他のセンサを用いても良い。
【0051】
上述した実施形態では、ドライブレコーダのみが車両に搭載される例について説明した。しかしながら、ドライブレコーダとナビゲーション装置とが車両に搭載される場合には、車両の位置信号はナビゲーション装置から取得するようにしても良い。但し、ナビゲーション装置が本発明のドライブレコーダの機能そのものも実行することは好ましくない。なぜならば、ドライブレコーダは、車両が運転されている間、常に、各種信号をサンプリングし、車両の走行状態を判定し、もし車両の衝突や危険な状態が発生していることが判定されたならば、各種信号のメモリ間の転送処理などを継続して実行する必要があるためである。ナビゲーション装置がこのような機能も実行するとなると、ナビゲーション装置における地図表示や経路案内処理に支障が生じたり、ドライブレコーダとしての機能を低下(記録対象とする信号の種類を少なくしたり、サンプリング間隔を長くしたりすること)させざるを得なくなることが予想される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施形態による車両のドライブレコーダの全体構成を示すブロック図である。
【図2】各センサ11〜13、GPS受信機14、及び監視カメラ15から出力される信号を、第1メモリ18に記録する方法について説明するための説明図である。
【図3】運転者が、車両の運転を開始すると、ドライブレコーダ10のECU16において所定周期毎に繰返し実行される処理を示すフローチャートである。
【図4】主に、各種信号が第1メモリ18から第2メモリ19に転送されて保存されたときに実行される処理を示すフローチャートである。
【図5】ドライブレコーダ10のECU16の記憶部17に関して説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0053】
10 ドライブレコーダ
11 加速度センサ
12 ヨーレートセンサ
14 GPS受信機
15 監視カメラ
16 ECU
17 記憶部
20 制御部
21 モニタ
22 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態に応じた走行状態信号を出力する走行状態検出手段と、
前記車両の周囲の状況を撮影した撮影信号を出力する撮影手段と、
前記走行状態信号及び撮影信号を所定の時間間隔で繰返し記録するとともに、所定時間分の走行状態信号及び撮影信号を記録する記録容量を有し、その所定時間分を超える走行状態信号及び撮影信号を記録する時には、現時点から前記所定時間前の走行状態信号及び撮影信号に上書きする第1の記録手段と、
前記走行状態検出手段からの走行状態信号に基づいて前記車両が衝突したことを判定する衝突判定手段と、
前記衝突判定手段が前記車両が衝突したと判定したときに、前記第1の記録手段に記録された走行状態信号及び撮影信号を保存する保存手段とを備えた車両のドライブレコーダであって、
車両の位置を示す位置信号を出力する位置検出手段を有し、
前記第1の記録手段は、前記位置検出手段から出力される位置信号も、前記走行状態信号及び前記撮影信号とともに記録し、
さらに、前記走行状態検出手段からの走行状態信号に基づいて、前記車両が衝突には至らないが、危険な状態となったことを判定する危険状態判定手段と、
前記危険状態判定手段によって、前記車両が危険状態となったと判定されたことに応じて、前記第1の記録手段に記録された所定時間分の走行状態信号、撮影信号及び位置信号が転送されて、その転送された信号を記録する第2の記録手段と、
前記第2の記録手段に記録された位置信号と前記位置検出手段が出力する位置信号とに基づいて、前記車両が危険な状態となった地点に接近したことを判定する接近判定手段と、
前記接近判定手段によって、前記車両が危険な状態となった地点に接近したと判定されたとき、車両の運転者に警報を与える警報手段とを備えることを特徴とする車両のドライブレコーダ。
【請求項2】
前記警報手段は、映像を表示する表示手段を有し、前記第2の記録手段に記録された撮影信号を用いて、過去に前記車両が危険な状態となったときの映像を前記表示手段に表示することにより、前記車両の運転者に警報を与えることを特徴とする請求項1に記載の車両のドライブレコーダ。
【請求項3】
前記接近判定手段は、前記第2の記録手段に記録された所定時間分の位置信号から、前記危険状態判定手段が前記車両が危険な状態になったと判定した時点の位置信号を抽出し、この抽出位置信号と前記位置検出手段が出力する位置信号とに基づいて、前記車両が危険な状態となった地点に接近したことを判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両のドライブレコーダ。
【請求項4】
前記接近判定手段は、前記抽出位置信号をリスト化して保存するとともに、抽出位置信号の抽出回数を、各々の抽出位置信号に対応付けて保存するものであり、リスト化して保存されている抽出位置信号と同じ地点を示す位置信号が新たに抽出されたとき、当該抽出位置信号に対応付けて保存されている抽出回数を更新することを特徴とする請求項3に記載の車両のドライブレコーダ。
【請求項5】
前記接近判定手段は、前記リスト化して保存された抽出位置信号の各々に対して、その抽出回数に応じて、前記車両の運転者に警報を与えるべき危険地点であることを示す危険地点フラグを付与し、当該危険地点フラグが付与された抽出位置信号のみを対象として、前記車両が危険な状態となった地点に接近したことを判定することを特徴とする請求項4に記載の車両のドライブレコーダ。
【請求項6】
前記接近判定手段は、所定期間が経過するまでに、前記抽出回数が更新されなかった抽出位置信号に関して、その抽出回数を減少させることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の車両のドライブレコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−65541(P2008−65541A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241742(P2006−241742)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】