説明

車両のフードヒンジ及びそれを備えた車両前部構造

【課題】ボディブラケットを備えずにフロントフェンダパネルをその位置を調節してボディに取り付けるためのフードヒンジを提供する。
【解決手段】フードヒンジ1は、フードを支持するヒンジアーム2と、車体へ取り付けられるヒンジブラケット3と、ヒンジアーム2を回動可能にヒンジブラケット3に軸支する連結手段4と、を備え、ヒンジブラケット3が、車体へ取り付けられると共に連結手段4を介してヒンジアーム2を回動可能に支持する第1ブラケット70と、第1ブラケット70に接合されフロントフェンダパネルを支持する第2ブラケット80と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のフードを回動可能に支持すると共にフロントフェンダパネルが取り付けられるフードヒンジに係り、特に車体に直に固定する第1ブラケットと、これに固定する第2ブラケットとの2分割構造で成るフードヒンジ及びそれを備えた車両前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部のエンジンルームを覆うフードは、その後端部における車幅方向の両端部をそれぞれ車体に固定したフードヒンジに支持されている。この種の従来のフードヒンジは、フードへ取り付けられるヒンジアームと、車体へ取り付けられるヒンジブラケットと、ヒンジアームを回動可能にヒンジブラケットに軸支するピン等の連結手段と、から構成されている。左右のフードヒンジの各ヒンジブラケットは車体前部の骨格部材に固定されている。
【0003】
一方、車体前部の側面にはフロントフェンダパネルが配設されている。このフロントフェンダパネルは、前輪領域を除いた車体外面領域の意匠面を成す縦壁状のエプロン部と、このエプロン部の上端部から垂下してエンジンルーム側へ突出したフランジ部と、を備えている。
【0004】
この種のフロントフェンダパネルは次のように車体に取り付けられている。
図7は従来の車両前部の右側周辺領域をエンジンルーム側から見た図であり、フロントフェンダパネル110には、フランジ部として、パネル前部から後方へ向けて全長の2/3程度の距離迄延びた第1フランジ部110Aと、この第1フランジ部110Aの後端から離れた位置に設けられた第2フランジ部110Bとが設けられている。第1フランジ部110Aはその中間部位(以下、第1取付部位110Cという)がボディから立設したボディブラケット120に取り付けられ、さらに、第2フランジ部110Bがフードヒンジ130のヒンジブラケット131に取り付けられている。ボルトとそれに螺着するナット等の締結手段を利用して、第1フランジ部110A,第2フランジ部110Bはボディブラケット120,ヒンジブラケット131に固定されている。図7では、フードヒンジのヒンジアーム、それに支持されたフードの表示を省略し、また、ボディブラケット120及びヒンジブラケット131が取り付けられる車体骨格部材を点線で簡略して表している。
【0005】
特許文献1,2にはフードヒンジが開示されており、特許文献3にはフロントフェンダパネルがボディから立設したブラケットによって支持されている構造が開示されている。
【特許文献1】特開2001−354164号公報
【特許文献2】特開2002−145121号公報
【特許文献3】特開2005−14763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フロントフェンダパネルの意匠面を成すエプロン部の縦幅が長い車両では、ボディと第1取付部位110Cとの距離D(図7参照)が長くなるため、それらを連結するボディブラケット120を高く構成する必要がある。しかし、ボディブラケット120が高くなりすぎると、ボディブラケット120の上端部とそこに固定されるべき第1取付部位110Cとに位置ずれが生じて、フロントフェンダパネル110の建付け精度が落ちてしまう。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて創作されたものであり、ボディブラケットを備えずにフロントフェンダパネルをその位置を調節してボディに取り付けるためのフードヒンジを提供することを第1の目的としている。さらに、第2の目的として、このフードヒンジを適用した車両前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するために、本発明の車両のフードヒンジは、フードを支持するヒンジアームと、車体へ取り付けられるヒンジブラケットと、ヒンジアームを回動可能にヒンジブラケットに軸支する連結手段と、を備え、ヒンジブラケットが、車体へ取り付けられると共に連結手段を介してヒンジアームを回動可能に支持する第1ブラケットと、第1ブラケットに接合されフロントフェンダパネルを支持する第2ブラケットと、の2部品に分割して構成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明の車両のフードヒンジにおいて、第2ブラケットは車両前後方向に離れた2つのフロントフェンダ取付部を備えており、好ましくは、前方のフロントフェンダ取付部周辺が後方のフロントフェンダ取付部周辺よりも剛性が低く構成されている。例えば、第2ブラケットの後方のフロントフェンダ取付部周辺にフランジ及び/又はビードが設けられる。
【0010】
上記第2の目的を達成するために、本発明の車両前部構造は、車体前部側面に設けられたフロントフェンダパネルと、左右のフロントフェンダパネル間に画成されるエンジンルームを覆うフードと、車体に取り付けられていてフロントフェンダパネルが取り付けられると共にフードを回転可能に支持するフードヒンジと、を備え、フードヒンジが、フードを支持するヒンジアームと、車体へ取り付けられるヒンジブラケットと、ヒンジアームを回動可能に上記ヒンジブラケットに軸支する連結手段と、を備え、ヒンジブラケットが、車体へ取り付けられると共に連結手段を介してヒンジアームを回動可能に支持する第1ブラケットと、この第1ブラケットに接合される第2ブラケットと、から構成されていて、フェンダパネルが第2ブラケットに取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両前部構造の組立てにおいて、フロントフェンダパネルを車体に固定したブラケットに直接固定するのではなく、フロントフェンダパネルが適正な位置に配置されるよう予め第1ブラケットに対する位置が調節されて第1ブラケットに取り付けた第2ブラケットにフロントフェンダパネルが取り付けられる。このようにヒンジブラケットを2部材に分割構成したので、第2ブラケットを第1ブラケットに固定する際にその位置を例えば車種に応じて調節して第1ブラケットに固定することができる。よって、フロントフェンダパネルの建て付けを、第1ブラケットに対する第2ブラケットの相対的な位置を変えることで調節することができる。これにより、例えば、車体外側の意匠面を成すエプロン部が高い車両であっても、そのフロントフェンダパネルの配設位置が高くなるようにフロントフェンダパネルを支持する第2ブラケットを第1ブラケットに固定することで対応できる。
【0012】
フードヒンジにフロントフェンダパネルの取付部を2つ設けることで、図7に示す従来の構造におけるボディブラケットを廃止することができる。さらに、第2ブラケットの前方周辺部はその後方周辺部よりも剛性が低く設定されているため、例えば、第2ブラケット前方周辺領域にその上方から衝突物が衝接した場合には、その荷重によって第2ブラケットの前端部は外側方向へ折れ曲がる。このように容易に変形することで、衝突物の車両衝突後のストロークを増やすことができる。即ち、第2ブラケットのエネルギー吸収ストロークが増加する。よって、衝突物に対する衝撃を一層低減することができる。したがって、本発明によれば歩行者保護性能の向上を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係るフードヒンジ1を適用した車両前部構造10を示す斜視図である。なお、図中のFrは車両前方、Upは車両上方、Outは車幅外方向を示す。
【0014】
先ず、車両前部構造10について概略説明する。
車体前部側面にはフロントフェンダパネル20が配設されていて、左右のフロントフェンダパネル間にエンジンルームRが画成されている。このエンジンルームRを覆うフード30が、その後部における両端部付近を車体前部の骨格部材である左右のエプロンアッパメンバ40にフードヒンジ1を介して取り付けられている。フロントフェンダパネル20もフードヒンジ1に取り付けられている。なお、図1では、フロントフェンダパネル20、フード30、エプロンアッパメンバ40はその一部が表示されている。また、図中の31はフードアッパパネル、32はフードインナパネルである。
【0015】
フロントフェンダパネル20は、前輪領域を除いた車体外面領域の意匠面を成す縦壁状のエプロン部21と、このエプロン部21の上端部から垂下してエンジンルーム側へ突出したフランジ部22と、を備えている。
【0016】
このフロントフェンダパネル20のフランジ部22の下方に、エプロンアッパメンバ40が設けられている。エプロンアッパメンバ40は、その長手方向を車両前後方向に沿わせて配設されている。このエプロンアッパメンバ40は、断面ハット型のアッパパネル41と、断面L字型のロアパネル42と、から成り、両パネルのフランジが接合されることで閉断面Sが画成されている。このエプロンアッパメンバ40の上面にフードヒンジ1が取り付けられている。
【0017】
図2は本実施形態に係るフードヒンジ1の分解斜視図である。フードヒンジ1は、フード30を支持するヒンジアーム2と、車体へ取り付けられるヒンジブラケット3と、ヒンジアーム2を回動可能にヒンジブラケット3に軸支する連結手段4と、から構成されている。
【0018】
ヒンジアーム2は、車両前後方向に延びた長手のアーム本体2Aと、アーム本体2Aの基部(一方の端部)に形成された第1の孔2Bと、アーム本体2Aの先端部に形成された第2の孔2Cと、から構成されている。なお、アーム本体2Aは板状に形成され、その面が車幅外側と対向するように前後方向に延出して形成され、面に対して垂直なフランジ2Dがアーム本体周縁から突出している。アーム本体2Aの先端部の縁からはエンジンルームR側に取付片2Eが突出しており、この取付片2Eに二つの第2の孔2C,2Cが前後に並設されている。
これらの第2の孔2C,2Cに対応した第3の孔32Aがフード30のフードインナパネル32に設けられており、図1に示すようにヒンジアーム2の取付片2Eをフードインナパネル32の取付面に当て、両者の孔2C,32Aの中心を同軸上に配置した状態でボルト51を下方から孔2C,32Aに差し込み、その反対側からナット61を締結することでヒンジアーム2の先端部がフード30に固定される。なお、図1では、ボルト51とナット61の表示を簡略化している。
【0019】
このヒンジアーム2は、その基部をヒンジブラケット3に設けたアーム取付部(後述)72Aに重ね合わせ、それらに形成された第1の孔2Bと第5の孔(後述)74の中心とが同軸上になるように位置調整して、図1に示すように両方の孔2B、74に連結手段としてのヒンジピン4が抜け止め状態で挿通されることで、ヒンジアーム2は上下方向へ回転可能にヒンジブラケット3に軸支される。
【0020】
次に、ヒンジブラケット3について説明する。本実施形態では、ヒンジブラケット3は2つの部材から構成されている。即ち、ヒンジブラケット3は、車体へ取り付けられると共に連結手段4を介してヒンジアーム2を回動可能に支持する第1ブラケット70と、この第1ブラケット70に接合されフロントフェンダパネル20を支持する第2ブラケット80と、から構成されている。
【0021】
先ず、第1ブラケット70について説明する。第1ブラケット70は、図2に示すように、エプロンアッパメンバ上面に固定するベース部71と、このベース部71の側縁から起立した縦壁部72と、から構成され、断面L字型を呈する。ベース部71は車両前後方向に延びた細幅の平坦状のパネル部材であり、前方が一部切り欠いて形成されている。このベース部71には、二つの第4の孔73,73が前後に並設されている。縦壁部72はベース部71のエンジンルームR側の側縁から上方へ延出しており、車両前後方向における中間部位が最も高く形成され、その前後が中間から離れるにしたがって次第に低くなるように形成されている。この縦壁部72の中間部位の上部がアーム取付部72Aとして形成されており、その面内に第5の孔74が開設されている。また、縦壁部72の車両外側に対向する面はその前部領域A1と中間部の下部領域A2とがフラットな垂直壁面75として形成されている。このフラットな面75に後述するように、第2ブラケット80の垂直壁面89Bがスポット溶接によって固定される。
【0022】
上記第1ブラケット70の第4の孔73に対応した第6の孔41A(図1参照)がエプロンアッパメンバ上面に形成されており、図1に示すように、ベース部71をエプロンアッパメンバ上に載置し、それらの孔73,41Aの中心を同軸上に配置した状態でボルト52を上方から孔73,41Aに差し込み、その反対側からナット62を締結することで、第1ブラケット70が車体、即ちエプロンアッパメンバ40に固定される。なお、図1では、ボルト52とナット62の表示を簡略化している。
【0023】
次に、第2ブラケット80は、図2に示すように、車両前後方向に沿って長手の垂直パネル部81と、この垂直パネル部81の上縁から車幅外側方向へ向けて延出した幅狭の突片部82と、を備えている。垂直パネル部81は車両外側と対向するように面が広がっている。また、垂直パネル部81の上縁はその前後方向における中間領域A3が下方に凹んで形成されている。第2ブラケット80の前端部Fと後端部Bにおける突片部82はフラットな面に形成されている。これらの前後のフラット部が後述するように、フロントフェンダ取付部83,84として利用される。このため、これらのフロントフェンダ取付部83,84には孔、即ち前方の第7の孔85と後方の第8の孔86とが開設されている。
【0024】
後方のフロントフェンダ取付部周辺では、図3に示すように、後部領域の垂直パネル部81の下縁から車幅外側方向へ突出したフランジ87が形成されており、このフランジ87の上方の垂直パネル面にはブラケット中央側から後部へ向けて筋状にビード88が形成されている。このビード88は断面が車幅外側方向へ張り出した凸状を成している。
一方、前方のフロントフェンダ取付部周辺には、図2に示すように、前部領域の垂直パネル部の下縁にフランジは存在せず、且つ、ビードも形成されていない。
よって、前方のフロントフェンダ取付部周辺は後方のフロントフェンダ取付部周辺よりも剛性が低く設定されている。
【0025】
図2に示すように、第2ブラケット80の垂直パネル部81の中間領域には、エンジンルーム側に張り出した膨出部89Aが前後2箇所に設けられている。この膨出部89Aにはフラットな垂直壁面89Bが形成されている。図示例では、円形の面89Bとして形成されている。この円形領域を補強するように、そのまわりが段差状に形成されている。これらの垂直壁面89Bが第1ブラケット70の垂直壁面75にスポット溶接等によって接合されて、第2ブラケット80が第1ブラケット70に固定される。図2中のX印はスポット溶接箇所を示す。
【0026】
第2ブラケットの第7の孔85と第8の孔86とに対応した孔が、フロントフェンダパネル20のフランジ部22に形成されている。ここで、図4(A)は右側のフロントフェンダパネル20をエンジンルームR側から見た側面図である。フロントフェンダパネル20のフランジ部22は、前部から全長の2/3程度まで後方へ延在した長手の第1フランジ部22Aと、第1フランジ部22Aの後端から後方の離れた位置に設けられた幅狭の第2フランジ部22Bと、から構成されている。第1フランジ部22Aの後端部22Cと、第2フランジ部22Bとが取付部として利用される。具体的には、第1フランジ部22Aの後端部22Cが第2ブラケット80の前端部Fのフロントフェンダ取付部83に対応するものであり、第2フランジ部22Bが第2ブラケット80の後端部Bのフロントフェンダ取付部84に対応するものである。このため、第7の孔85に対応した第9の孔22Dが図4(B)に示すように第1フランジ部22Aの後端部22Cに形成されており、第8の孔86に対応した第10の孔22Eが図4(C)に示すように第2のフランジ部22Bに形成されている。よって、第2ブラケット80のフロントフェンダ取付部83(84)を対応するフロントフェンダパネルの取付部に当て、両者の孔22D,85(22E,86)の中心を同軸上に配置した状態で、図1に示すように、ボルト53を上方から孔22D,85(22E,86)に差し込み、その反対側からナット63を締結することで、第2ブラケット80にフロントフェンダパネル20が取り付けられる。
【0027】
さらに、本実施形態に係るフードヒンジ1では、第1ブラケット70に対する第2ブラケット80の位置が調節される。即ち、第1ブラケット70に対して第2ブラケット80を車両前後方向或いは車両上下方向等にずらして取付位置が調節されて、第2ブラケット80は第1ブラケット70にスポット溶接によって固定されている。
このような第2ブラケット80の第1ブラケット70に対する位置は、例えば、フードヒンジ1を取り付ける車種に応じて調節されるものであり、フードヒンジ1に取り付けるフロントフェンダパネル20がその車体に対して適正な取付位置に配置されるよう、その車体に固定する第1ブラケット70に対する第2ブラケット80の位置が車種毎に決められている。このような両ブラケットの相対的な位置調節を考慮して、フードヒンジ1は、例えば、それを製造する工場で車種毎に、ヒンジアーム2,ヒンジブラケット3(第1ブラケット70,第2ブラケット80),連結手段4がアッシーされる。
【0028】
以上のように、車両前部構造10及びそれに適用されるフードヒンジ1は構成される。車両前部構造10の組立手順の一例を説明する。
自動車製造ラインの工程で、ヒンジアーム2,ヒンジブラケット3(第1ブラケット70,第2ブラケット80),連結手段4をアッシーして成るフードヒンジ1を車体に取り付け、それにフード30及びフロントフェンダパネル20を取り付ける。具体的には、(I)エプロンアッパメンバ40にフードヒンジ1の第1ブラケット70を取り付け、(II)フードヒンジ1の第2ブラケット80にフロンフェンダパネル20を取り付け、(III)フードヒンジ1のヒンジアーム2にフード30を取り付ける。ここで、部材の取付手段としては、上記したようにボルト51〜53及びそれに螺着するナット61〜63等の締結手段を利用する。具体的な取付構造の説明は上述したのでここでは省略する。このようにして、車両前部構造10が構成される。
【0029】
図5はフードヒンジ1とそれに支持されたフロントフェンダパネル20をエンジンルームR側から見た側面図である。なお、この図ではフード30、ヒンジアーム2の表示を省略している。車両前部構造10では、フロントフェンダパネル20がその2箇所のフランジ(第1フランジ部22Aの後端部22C,第2フランジ部22B)を第2ブラケット80に取り付けられており、この第2ブラケット80を介して車体に固定されている。図5中では、二点鎖線で車体の骨格部材であるエプロンアッパメンバ40を概略的に表示している。
【0030】
このような車両前部構造10では、その組立てにおいて、フロントフェンダパネル20を車体に固定したブラケットに直接固定するのではなく、フロントフェンダパネル20が適正な位置に配置されるよう予め第1ブラケット70に対する位置が調節されて第1ブラケット70に取り付けた第2ブラケット80にフロントフェンダパネル20が取り付けられる。このようにヒンジブラケット3を2部材(70,80)に分割構成したので、第2ブラケット80を第1ブラケット70に固定する際にその位置を車種に応じて調節して第1ブラケット70に固定することができる。よって、フロントフェンダパネル20の建て付けを、第1ブラケット70に対する第2ブラケット80の相対的な位置を変えることで調節することができる。例えば、車体外側の意匠面を成すエプロン部21が高い車両であっても、そのフロントフェンダパネル20の配設位置が高くなるようにフロントフェンダパネル20を支持する第2ブラケット80を第1ブラケット70に固定することで対応できる。また、本ヒンジブラケット1は、第1ブラケット70と第2ブラケット80との相対的な位置を変えれば複数の車両に対応できるので、製造するヒンジブラケットの種類を少なくすることができて、製造コストを低減できる。
【0031】
本発明の車両前部構造10では、フードヒンジ1にフロントフェンダパネル20の取付部83,84を2つ設けていることで、図7に示す従来の構造におけるボディブラケット120を廃止することができる。
【0032】
車両前部構造10において、第2ブラケット80の前方周辺部はその後方周辺部よりも剛性が低く設定されているため、例えば、第2ブラケット前方周辺領域にその上方から衝突物Yが図5に示すように衝接した場合には、その荷重Zによって第2ブラケット80の前端部Fは図6に示すように、外側方向へ折れ曲がる。このように容易に変形することで、衝突物Yの車両衝突後のストロークを増やすことができる。即ち、第2ブラケット80のエネルギー吸収ストロークが増加する。よって、衝突物Yに対する衝撃を一層低減することができ、歩行者保護性能の向上を図れる。
【0033】
一方、第2ブラケット80の後方周辺部は、そこに設けたフランジ87やビード88によって高剛性に構成されているため、フロントフェンダパネル20の取付部の剛性を確保できる。例えば、第2ブラケット80の後部周縁領域をその上方から手で押した場合、当該領域のフロントフェンダパネル20がしっかりと第2ブラケット80に支持されている感触をユーザに与えることができて、商品イメージの向上を図ることができる。
【0034】
以上説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。例えば、フランジとビードの何れかを第2ブラケットの後部に設ける構成にしてもよく、或いはフランジ及びビードの何れも第2ブラケットの後部に設けずに構成してもよい。車両前部構造10の組立順序は上述の例に限定されるものではない。第1ブラケット及び第2ブラケットの形状は図示例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るフードヒンジを適用した車両前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフードヒンジの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る第2ブラケットの後部周辺領域を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るフロントフェンダパネルを示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るフードヒンジに支持されたフロントフェンダパネルを示す側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る第2ブラケットの前端部のフェンダ取付部の正面図である。
【図7】従来のフロントフェンダパネルの取付構成を示す側面図である。
【0036】
1 フードヒンジ
2 ヒンジアーム
2A アーム本体
2B,2C,22D,22E,32A,41A,73,74,85,86 孔
2D フランジ
2E 取付片
3 ヒンジブラケット
4 連結手段
10 車両前部構造
20 フロントフェンダパネル
21 エプロン部
22 フランジ部
22A 第1フランジ部
22B 第2フランジ部
22C 後端部
30 フード
31 フードアッパパネル
32 フードインナパネル
40 エプロンアッパメンバ
41 アッパパネル
42 ロアパネル
51〜53 ボルト
61〜63 ナット
70 第1ブラケット
71 ベース部
72 縦壁部
72A アーム取付部
75,89B 垂直壁面
80 第2ブラケット
81 垂直パネル部
82 突片部
83,84 フロントフェンダ取付部
87 フランジ
88 ビード
89A 膨出部
A1 前部領域
A2 下部領域
B 後端部
F 前端部
R エンジンルーム
S 閉断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードを支持するヒンジアームと、
車体へ取り付けられるヒンジブラケットと、
上記ヒンジアームを回動可能に上記ヒンジブラケットに軸支する連結手段と、を備えた車両のフードヒンジであって、
上記ヒンジブラケットが、車体へ取り付けられると共に上記連結手段を介して上記ヒンジアームを回動可能に支持する第1ブラケットと、この第1ブラケットに接合されフロントフェンダパネルを支持する第2ブラケットと、から構成されていることを特徴とする、車両のフードヒンジ。
【請求項2】
前記第2ブラケットが、車両前後方向に離れた2つのフロントフェンダ取付部を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の車両のフードヒンジ。
【請求項3】
前記第2ブラケットの2つのフロントフェンダ取付部のうち、前方のフロントフェンダ取付部周辺が後方のフロントフェンダ取付部周辺よりも剛性が低く構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の車両のフードヒンジ。
【請求項4】
前記第2ブラケットが、後方のフロントフェンダ取付部周辺にフランジ及び/又はビードを備えていることを特徴とする、請求項3に記載の車両のフードヒンジ。
【請求項5】
車体前部側面に設けられたフロントフェンダパネルと、左右のフロントフェンダパネル間に画成されるエンジンルームを覆うフードと、車体に取り付けられていて上記フロントフェンダパネルが取り付けられると共に上記フードを回転可能に支持するフードヒンジと、を備えた車両前部構造であって、
上記フードヒンジが、上記フードを支持するヒンジアームと、上記車体へ取り付けられるヒンジブラケットと、上記ヒンジアームを回動可能に上記ヒンジブラケットに軸支する連結手段と、を備え、
上記ヒンジブラケットが、車体へ取り付けられると共に上記連結手段を介して上記ヒンジアームを回動可能に支持する第1ブラケットと、この第1ブラケットに接合される第2ブラケットと、から構成されていて、
上記フェンダパネルが上記第2ブラケットに取り付けられていることを特徴とする、車両前部構造。
【請求項6】
前記第2ブラケットが車両前後方向に離れた2つのフロントフェンダ取付部を備えていて、これらのフロントフェンダ取付部に前記フロントフェンダパネルが取り付けられていることを特徴とする、請求項5に記載の車両前部構造。
【請求項7】
前記第2ブラケットの2つのフロントフェンダ取付部のうち、前方のフロントフェンダ取付部周辺が後方のフロントフェンダ取付部周辺よりも剛性が低く構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の車両前部構造。
【請求項8】
前記第2ブラケットが、後方のフロントフェンダ取付部周辺にフランジ及び/又はビードを備えていることを特徴とする、請求項7に記載の車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−239101(P2008−239101A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85921(P2007−85921)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】