説明

車両の下部車体構造

【課題】大きなフレーム補強を必要とせず、車体の前後方向の耐力を向上させ、車体の剛性向上、強度向上を図り、特に後突エネルギを分散して、後突に対する耐力向上を図る車両の下部車体構造を提供する。
【解決手段】フロアパネル3には前後方向に延びる車体フレーム24が配設され、
車体フレーム24に沿ってシートスライドレール16が配設されると共に、車体フレーム24とシートスライドレール16とを連結する連結部材27が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられて乗員が着座可能なシートとを備えたワンボックスカーのような車両の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両の下部車体構造としては特許文献1に開示された構造がある。
すなわち、フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールを設け、このシートスライドレールを車幅方向に一対配設すると共に、該シートスライドレールで第2列目の後席シートと第3列目の後席シートとを摺動すべく、このシートスライドレールをロングレールに設定して、多様な座席配列パターンを形成することができるように構成したものである。
しかしながら、この従来構造においては車両の下部車体剛性が不充分で、下部車体剛性を向上させるためには、大きなフレーム補強が必要となる問題点があった。
【特許文献1】特開2003−146120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、この発明は、フロアパネルに前後方向に延びる車体フレームを配設し、該車体フレームに沿ってシートスライドレールを配設すると共に、該車体フレームとシートスライドレールとを連結する連結部材を設けることで、大きなフレーム補強を必要とせず、車体の前後方向の耐力を向上させることができ、車体の剛性向上、強度向上を図ることができ、特に後突エネルギを分散して、後突に対する耐力向上を図ることができる車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明による車両の下部車体構造は、車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシートとを備えた車両において、上記フロアパネルには前後方向に延びる車体フレームが配設され、該車体フレームに沿って上記シートスライドレールが配設されると共に、該車体フレームとシートスライドレールとを連結する連結部材が設けられたものである。
上記構成によれば、前後方向に延びる車体フレームに沿ってシートスライドレールを配設し、この車体フレームとシートスライドレールとを連結部材で連結したので、大きなフレーム補強を必要とすることなく、上記連結構造により車体の前後方向の耐力を向上させることができ、車体の剛性向上、強度向上を図ることができる。
特に、後突エネルギの入力時には、該エネルギを車体フレーム、およびシートスライドレールに分散させることができるので、後突に対する耐力向上を図ることができる。
【0005】
この発明の一実施態様においては、上記フロアパネルの車室内側に設けられたシートスライドレールに対して、上記車体フレームは車室外側に配設され上記フロアパネルに接合されたものである。
上記構成によれば、車室内側のシートスライドレールと、車室内を広くするために車室外側に配設された車体フレームとの両者で、フロアパネルを挟み、この状態で、これらシートスライドレールと車体フレームとを結合することができるので、フロアパネル全体にも確実に荷重分散することができ、このため車体強度の向上を図ることができる。
【0006】
この発明の一実施態様においては、上記車体フレームと上記シートスライドレールとは上下に重合されて前後方向に延設配置されたものである。
上記構成によれば、シートスライドレールと車体フレームとが上下に重合するので、充分な強度が得られ、結合構造もシンプルとなる。因に、シートスライドレールと車体フレームとが車幅方向にずれている場合には、上下に結合しても充分な強度が確保できない。
【0007】
この発明の一実施態様においては、上記連結部材は上記フロアパネルを介して上記車体フレームと上記シートスライドレールとを連結しているものである。
上記構成によれば、連結部材でフロアパネルを介して車体フレームとシートスライドレールとを連結しているので、フロアパネルにも荷重が充分に伝達され、荷重分散ができるので、下部車体強度がさらに向上する。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記車室内には前後方向に複数のシートが配設され、上記シートは後列シートであり、上記車体フレームは後部フロアパネルの側部を前後方向に延びるリヤサイドフレームであることを特徴とする。
上記構成によれば、多人数乗車が達成できるよう複数のシートを備えた車両において、車体剛性の向上を図ることができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記車体フレームおよび上記シートスライドレールは車幅方向に一対配設され、上記一対のシートスライドレールは同じシートを支持しているものである。
上記構成によれば、シートスライドレールで同じシートを支持しているので、該シートそれ自体を車体剛性の向上に寄与させることができ、またシートの支持剛性を向上することができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記シートスライドレールは前列シートと後列シートとで共用されるものである。
上記構成によれば、部品点数、組付け工数の低減を図りつつ、シート支持剛性の確保ができ、しかも、上述のシートスライドレールをロングレールと成すことができるので、荷重(特に後突荷重)を広範囲に分散させることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記シートスライドレールの間を連結する連結フレーム部材を設け、該連結フレーム部材をフロアパネルに固定したものである。
上記構成によれば、車体の前後方向の耐力向上と併せて、上述の連結フレーム部材により車体の左右方向の耐力向上を図ることができ、特に車体のねじり剛性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、フロアパネルに前後方向に延びる車体フレームを配設し、該車体フレームに沿ってシートスライドレールを配設すると共に、該車体フレームとシートスライドレールとを連結する連結部材を設けたので、大きなフレーム補強を必要とせず、車体の前後方向の耐力を向上させることができ、車体の剛性向上、強度向上を図ることができ、特に後突エネルギを分散して、後突に対する耐力向上を図ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
大きなフレーム補強を必要とせず、車体の前後方向の体力向上、車体の剛性向上、強度向上を図り、特に後突に対する耐力向上を図るという目的を、車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシートとを備えた車両において、上記フロアパネルに、前後方向に延びる車体フレームを配設し、該車体フレームに沿って上記シートスライドレールを配設すると共に、該車体フレームとシートスライドレールとを連結する連結部材を設けるという構成にて実現した。
【実施例】
【0014】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面はワンボックスカーのような車両の下部車体構造を示し、図1、図2、図3において、車室の底部を形成するフロアパネル1を設け、このフロアパネル1の後部には段部2を介して後部フロアパネルとしてのリヤフロア3を連設し、このリヤフロア3の後部における車幅方向中間部にはスペアタイヤパン4を一体に凹設(段下げ)形成している。
【0015】
上述のリヤフロア3の左右両側部の車輪(後輪)と対応した位置には車室内方向に膨出された左右のリヤホイールハウス5,5が設けられている。
一方、上述のフロアパネル1の車幅方向中央には、車室内方に突出したトンネル部6を設けている。
このトンネル部6はダッシュロアパネル(ダッシュパネル)と上記段部2との間にわたって車両の前後方向に延びるもので、該トンネル部6は車体剛性の中心となる。
また、上述のフロアパネル1およびリヤフロア3前部の左右両外側部には前後方向に延びる左右のサイドシル7,7が設けられている。
【0016】
このサイドシル7は図12に示すように、サイドシルインナ8とサイドシルアウタ9とを接合固定して、前後方向に延びるサイドシル閉断面10を備えた車体剛性部材である。
【0017】
図1、図2に示すように、上述の各サイドシル7,7の後部には上下方向に延びる左右の各リヤピラー11,11の下部が配設されている。このリヤピラー11は、同図に示すように、リヤピラーインナ12とリヤピラーアウタ13とを接合固定して、上下方向に延びるリヤピラー閉断面14を備えた車体剛性部材である。
【0018】
また、上述のトンネル部6における左右の縦壁部とサイドシル7の左右のサイドシルインナ8,8との間には、フロアパネル1に接合して、車幅方向に延びる車体剛性部材としてのクロスメンバ15,15を接続している。このクロスメンバ15とフロアパネル1との間には車幅方向に延びる閉断面を形成し、下部車体剛性を確保すべく構成している。
【0019】
さらに、図2に示すようにリヤホイールハウス5とスペアタイヤパン4との間においてリヤフロア3の車室内側には、該リヤフロア3に沿って前後方向に延びるシートスライドレールとしての左右一対のロングレール16,16(ロアレール)を、車幅方向に離間して、平行に配設している。
【0020】
これら左右一対のロングレール16,16の前端部は、上述の段部2よりも前方に位置し、ロングレール16,16の後端部はスペアタイヤパン4の前後方向中間位置で、かつリヤホイールホウス5の後ろ側面5aよりもさらに後方に位置するものである。
【0021】
また、上述の左右一対のロングレール16,16間には、トンネル部6の左右の縦壁部外方位置に対応すべく、リヤフロア3の車室内側において、該リヤフロア3に沿って前後方向に延びるシートスライドレールとしての左右一対のショートレール17,17(ロアレール)を、車幅方向に離間して平行に配設している。
【0022】
これら左右一対のショートレール17,17の前端部は、ロングレール16,16の前端部と同一位置に位置し、ショートレール17,17の後端部はスペアタイヤパン4の前部に位置するものである。
つまり、上記シートスライドレールは、一対のロングレール16,16と、該ロングレール16,16の間に配設された一対のショートレール17,17とから構成されている。ロングレール16は図2に平面図で示すように、後述するリヤサイドフレーム24に沿って重合するように配設されている。
【0023】
そして、上述のシートスライドレール(ロングレール16、ショートレール17参照)には、乗員が着座可能なシートとして第2列目シート18,18(前席シート)と、第3列目シート19(後席シート)との複数のシートを前後方向に摺動可能に配設している。
【0024】
図1〜図3に示すように車室内において前後方向に配設した複数のシート18,19のうち、第2列目シート18は、左右独立したセパレートシートが用いられ、第3列目シート19は、3人乗車が可能なベンチシートが用いられている。
【0025】
ここで、上述の第2列目シート18は、図1、図3に示すようにロングレール16とショートレール17とに対して摺動可能に構成された複数のアッパレール20と、シート支持部材21とにより支持されており、この第2列目シート18は、シートクッション18Cと、シートバック18Bと、ヘッドレスト18Hと、アームレスト18Aとを備えている。
【0026】
また、上述の第3列目シート19は、図1、図3に示すように車幅方向のスパンが長い左右一対のロングレール16,16に対して摺動可能に構成された一対のアッパレール22と、シート支持部材23とにより支持されており、この第3列目シート19は、シートクッション19Cと、シートバック19Bと、2つのヘッドレスト19H,19Hとを備えている。
【0027】
上述の第2列目シート18,18は、左右のそれぞれのシート18,18がロングレール16とショートレール17とに沿って前後方向に摺動可能に形成され、また第3列目シート19は車幅方向のスパンが長く、かつ前後方向の長さも長い左右一対のロングレール16,16に沿って前後方向に摺動可能に形成されている。
【0028】
要するに、上述のロングレール16,16は前席シート(第2列目シート18参照)と後席シート(第3列目シート19参照)とで共用するように構成したものであり、また、この左右一対のロングレール16,16は同じシートとしての第3列目シート19を支持している。
【0029】
一方、図3、図4(但し、図4は図2のA−A線に沿う要部拡大断面図)に示すように、リヤフロア3の下面つまり車室外側において該リヤフロア3の左右の両側部を車両の前後方向に延びる車体フレーム(車体剛性部材)としてのリヤサイドフレーム24を車幅方向に離間して一対設けている。
このリヤサイドフレーム24はリヤフロア3の下面に接合固定され、これら両者24,3間には前後方向に延びるリヤサイド閉断面25が形成されている。
【0030】
上述の左右一対のロングレール16,16は、この一対のリヤサイドフレーム24,24に沿って配設されたものであり、車室外側に位置するリヤサイドフレーム24と、車室内側に位置するロングレール16とは、図4に示すように、リヤフロア3を介して上下に重合されて車両の前後方向に延設配置されたものである。なお、図4においては車両左側の重合構造のみを示すが、車両右側においても同様に構成されている。
【0031】
また、この実施例においては、図4に示すように、ロングレール16の車幅方向の中心部と、リヤサイドフレーム24の車幅方向の中心部とが、リヤフロア3を介して上下に一致するように、これら両者16,24を上下にオーバラップさせている。
【0032】
図4に示すように、上述のロングレール16はその前後複数箇所がボルト、ナット等の締結部材26を用いてリヤフロア3に固定されている。
しかも、車室内側のロングレール16と、車室外側のリヤサイドフレーム24とを上下に連結する一対の連結部材27,27を設けている。
【0033】
図4の実施例においては、リヤフロア3に開口部28を形成し、この開口部28を介して連結部材27を車室内側と車室外側との両側に位置させて、該連結部材27の上片27aとロングレール16の側片16aとを溶接手段により接合固定すると共に、連結部材27の下片27bとリヤサイドフレーム24の縦壁部24aとを、ボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定することにより、連結部材27でリヤフロア3を介してリヤサイドフレーム24とロングレール16とを連結して、車体の前後方向の耐力向上を図ると共に、後突に対する耐力の向上を図るように構成している。
図4に示す連結構造に代えて、図5に示す連結構造を採用してもよい。
【0034】
すなわち、図5に示す連結構造は、上記連結部材27をアッパ連結部材27Uと、ロア連結部材27Lとに2分割し、アッパ連結部材27Uの上片27cとロングレール16の側片16aとを溶接手段により接合固定し、ロア連結部材27Lの下片27dとリヤサイドフレーム24の縦壁部24aとを、ボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定し、さらにアッパ連結部材27Uの下片27eと、ロア連結部材27Lの上片27fとを、リヤフロア3を挟持した状態において、ボルト、ナット等の締結部材30を用いて共締め固定することにより、上下の各連結部材27U,27Lでリヤフロア3を介してリヤサイドフレーム24とロングレール16とを連結したものである。
【0035】
このように構成すると、図4の連結構造に対して部品点数が多くなるが、リヤフロア3に形成される開口部面積は、例えば、ボルト挿通孔のみでよく、該リヤフロア3の開口面積の狭小化を図ることができる。
【0036】
ところで、上述のリヤホイールハウス5は図1、図2に示すように左右の後輪と対応して車幅方向に一対設けられている。図6は図2の右側要部の斜視図であって、右側のリヤホイールハウス5と同側のロングレール16との連結構造を示すが、左側の連結構造は右側のそれと同様に構成されている。
【0037】
図6に示すように、リヤホイールハウス5に対してロングレール16は近接して前後方向に延設配置されていて、このロングレール16の後部と上述のリヤホイールハウス5の後ろ側面5aとを、そのデッドスペースを有効利用して、連結部材31で連結し、車体の前後方向の耐力および後突に対する耐力の向上を図るように構成している。
【0038】
上述の連結部材31は、ロングレール16後部の側片16aにおけるリヤホイールハウス5側の側面部に沿って並設される後部31Rと、該側面部からリヤホイールハウス5の後ろ側面5aに至るように滑らかに湾曲する前部31Fとを有し、ロングレール16の後部と、リヤホイールハウス5の後ろ側面5aとを接続するように前後方向に延設されている。
【0039】
また、上述の連結部材31の前端部には複数の接合フランジ部31aが一体形成されており、これら複数の接合フランジ部31aがリヤホイールハウス5の後ろ側面5aに溶接手段等により接合固定されている。
【0040】
さらに、上述の連結部材31における少なくとも後部31Rは閉断面32構造に形成されており、該連結部材31をそれ自体の剛性向上を図る一方、ロングレール16に並設されて前後方向に延びる該連結部材31の後部31Rは、図7に示すように、ボルト、ナット等の締結部材33を用いて、該ロングレール16のリヤホイールハウス5側の側片16aの外側面部に接続されている。この締結部材33による接続箇所は1箇所または複数箇所に設定することができる。
【0041】
図6に示す連結構造に代えて、図8に示す連結構造を採用してもよい。
すなわち、図8に示す連結構造は、上述の連結部材31の前端部に該連結部材31とは別体で、かつリヤホイールハウス5の後ろ側面5aの曲面形状に対応する接合フランジ34を予め接合固定し、この接合フランジ34をリヤホイールハウス5の後ろ側面5aに連結し、図6の構造に対して両者5a,34の接合面積を増大すべく構成したものである。なお、その他の構造については図6と同様であるから、図8において図6と同一の部分には同一符号を付している。
【0042】
一方、図2に示すように左右の各ロングレール16とショートレール17との間を接続して車幅方向に延びる第1の連結フレーム部材35,36,37を、前後方向に離間して複数かつ平行に配設し、これらの各第1の連結フレーム部材35,36,37をリヤフロア3に固定している。
【0043】
また左右の各ショートレール17,17間を接続して車幅方向に延びる第2の連結フレーム部材38,39,40を、前後方向に離間して複数かつ平行に配設し、これらの各第2の連結フレーム部材38,39,40をリヤフロア3に固定している。
【0044】
ここで、左右両側に位置する第1の連結フレーム部材35,36,37と、中央に位置する第2の連結フレーム部材38,39,40とは車幅方向に一直線状に並ぶように配設されている。
【0045】
すなわち、図2に仮想線で示す前後のシート18,19のノーマル状態下(シート18,19を前後方向に移動させない状態下)において、第2列目シート18のシートクッション18C下方と対応する部位においては、各連結フレーム部材35,38,35を車幅方向に一直線状に配置し、第2列目シート18のシートバック18B下方と対応する部位においては、各連結フレーム部材36,39,36を車幅方向に一直線状に配置し、第3列目シート19のシートクッション19Cの前部下方と対応する部位においては、各連結フレーム部材37,40,37を車幅方向に一直線状に配置して、平面から見て各レール16,17と各連結フレーム部材35〜40とを井型状に組合わせ、擬似ラダーフレーム(ladder frame)構造と成して、車体の前後方向および左右方向の耐力の向上を図るように構成している。
【0046】
図9は図2のC−C線に沿う要部拡大断面図であって、ロングレール16と連結フレーム部材36とは、ボルト、ナット等の締結部材41により固定されている。ここで、締結部材41による両者16,36の固定構造に代えて溶接による両者16,36の固定構造を採用してもよい。なお、各レール16,17と各連結フレーム部材35〜40の他の固定箇所についても、図9と同様に締結固定または溶接固定することができる。
【0047】
図9に示す構造に代えて、図10の構造、または、図11の構造を採用してもよい。
すなわち、図10に示す構造は、図9の構造に加えて、ロングレール16の車外側の側片16aと、リヤサイドフレーム24の車外側の縦壁部24aとを上下に連結する連結部材27を設け、連結部材27の上片27aとロングレール16とを、ボルト、ナット等の締結部材42を用いて固定し、また、連結フレーム部材36の下部とロア連結部材27Lの上片27fとを、リヤフロア3を挟持した状態において、ボルト、ナット等の締結部材43を用いて共締め固定し、さらに、ロア連結部材27Lの下片27dと、リヤサイドフレーム24の車内側の縦壁部24aとを、ボルト、ナット等の締結部材29を用いて固定し、図4の構造と類似する連結構造と成したものである。
【0048】
このように、ロングレール16、連結フレーム部材36、リヤフロア3、リヤサイドフレーム24を、連結部材27,27Lおよび締結部材29,41,42,43で相互連結することで、車体剛性のさらなる向上を図るように構成している。
【0049】
図11に示す構造は、図10における車外側の連結部材27を上下に2分割し、アッパ連結部材27Uの上片27cとロングレール16とを、ボルト、ナット等の締結部材42で固定し、ロア連結部材27Lの下片27dとリヤサイドフレーム24とを、ボルト、ナット等の締結部材29で固定し、アッパ連結部材27Uの下片27eと、ロア連結部材27Lの上片27fとを、リヤフロア3を挟持した状態において、ボルト、ナット等の締結部材30を用いて共締め固定し、図5の構造と類似する連結構造と成して、車体剛性の向上を図るように構成したものである。なお、図11において図10と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0050】
ここで、ロングレール16と他の連結フレーム部材35,37との連結構造についても、図10または図11と同様の連結構造を採用することができる。
一方、図2に示すように、左右一対のロングレール16,16の後端部相互間にも、車幅方向に延びる連結フレーム部材44を横架固定することができるが、スペアタイヤパン4にスペアタイヤを格納する場合には、この連結フレーム部材44は省略するとよい。
【0051】
ところで、図2のD−D線矢視断面図を図12に示すように、フロアパネル1および後部フロアパネルとしてのリヤフロア3の外側部に設けられたサイドシル7と、ロングレール16とを車幅方向に接続する連結部材45を設けている。
【0052】
図12に示すように、上述の連結部材45は、車幅方向内方の立上がり片45aと、車幅方向外方の立上がり片45bと、これら両立上がり片45a,45bを連結する底片45cとを凹形状に一体形成したもので、内方の立上がり片45aとロングレール16とを、ボルト、ナット等の締結部材46で固定し、外方の立上がり片45bとサイドシルインナ8とを溶接手段等によって接合固定し、底片45cはリヤフロア3に固定している。
【0053】
また、図2に示すように上述の連結部材45は連結フレーム部材35と対応した位置に設けられている。この実施例では図2に平面図で示すように、左側の連結部材45と、左側の連結フレーム部材35と、中央の連結フレーム部材38と、右側の連結フレーム部材35と、右側の連結部材45とが車幅方向に一直線状に延びるように配置されていて、車体全体の剛性および側突剛性の向上を図るように構成している。
【0054】
図12に示す凹状の連結部材45に代えて、図13に示すように閉断面45dをもった偏平なボックス形状の連結部材45を設け、この連結部材45の左右両端部を、ロングレール16およびサイドシルインナ8に溶接手段等により接合固定してもよい。また、サイドシルインナ8とサイドシルアウタ9との間には、サイドシルレインフォースメント47を設けてもよい。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印OUTは車両外方を示し、矢印INは車両内方を示す。
【0055】
このように、上記実施例の車両の下部車体構造は、車室の底部を形成するフロアパネル(リヤフロア3参照)と、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレール(ロングレール16参照)と、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシート18,19とを備えた車両において、上記フロアパネル(リヤフロア3)には前後方向に延びる車体剛性部材としての車体フレーム(リヤサイドフレーム24参照)が配設され、該車体フレーム(リヤサイドフレーム24)に沿って上記シートスライドレール(ロングレール16)が配設されると共に、該車体フレーム(リヤサイドフレーム24)とシートスライドレール(ロングレール16)とを連結する連結部材27,27U,27Lが設けられたものである(図4、図5参照)。
この構成によれば、前後方向に延びる車体フレーム(リヤサイドフレーム24参照)に沿ってシートスライドレール(ロングレール16)を配設し、この車体フレーム(リヤサイドフレーム24)とシートスライドレール(ロングレール16)とを連結部材27,27U,27Lで連結したので、大きなフレーム補強を必要とすることなく、上記連結構造により車体の前後方向の耐力を向上させることができ、車体の剛性向上、強度向上を図ることができる。
特に、後突エネルギの入力時には、該エネルギを車体フレーム(リヤサイドフレーム24)、およびシートスライドレール(ロングレール16)に分散させることができるので、後突に対する耐力向上を図ることができる。
【0056】
また、上記フロアパネル(リヤフロア3参照)の車室内側に設けられたシートスライドレール(ロングレール16)に対して、上記車体フレーム(リヤサイドフレーム24)は車室外側に配設され上記フロアパネル(リヤフロア3)に接合されたものである。
この構成によれば、車室内側のシートスライドレール(ロングレール16)と、車室内を広くするために車室外側に配設された車体フレーム(リヤサイドフレーム24)との両者で、フロアパネル(リヤフロア3)を挟み、この状態で、これらシートスライドレール(ロングレール16)と車体フレーム(リヤサイドフレーム24)とを結合することができるので、フロアパネル(リヤフロア3参照)全体にも確実に荷重分散することができ、このため車体強度の向上を図ることができる。
【0057】
さらに、上記車体フレーム(リヤサイドフレーム24)と上記シートスライドレール(ロングレール16)とは上下に重合されて前後方向に延設配置されたものである。
この構成によれば、シートスライドレール(ロングレール16)と車体フレーム(リヤサイドフレーム24)とが上下に重合するので、充分な強度が得られ、結合構造もシンプルとなる。因に、シートスライドレールと車体フレームとが車幅方向にずれている場合には、上下に結合しても充分な強度が確保できない。
【0058】
加えて、上記連結部材27,27U,27Lは上記フロアパネル(リヤフロア3)を介して上記車体フレーム(リヤサイドフレーム24)と上記シートスライドレール(ロングレール16)とを連結しているものである。
この構成によれば、連結部材27,27U,27Lでフロアパネル(リヤフロア3)を介して車体フレーム(リヤサイドフレーム24)とシートスライドレール(ロングレール16)とを連結しているので、フロアパネル(リヤフロア3)にも荷重が充分に伝達され、荷重分散ができるので、下部車体強度がさらに向上する。
【0059】
また、上記車室内には前後方向に複数のシート18,19が配設され、上記シート18,19は後列シートであり、上記車体フレームは後部フロアパネル(リヤフロア3)の側部を前後方向に延びるリヤサイドフレーム24であることを特徴とする。
この構成によれば、多人数乗車が達成できるよう複数のシート18,19を備えた車両において、車体剛性の向上を図ることができる。
【0060】
さらに、上記車体フレーム(リヤサイドフレーム24)および上記シートスライドレール(ロングレール16)は車幅方向に一対配設され、上記一対のシートスライドレール(ロングレール16)は同じシート(第3列目シート19参照)を支持しているものである。
この構成によれば、シートスライドレール(ロングレール16)で同じシート19を支持しているので、該シート19それ自体を車体剛性の向上に寄与させることができ、またシート19の支持剛性を向上することができる。
【0061】
加えて、上記シートスライドレール(ロングレール16)は前列シート(第2列目シート18)と後列シート(第3列目シート19)とで共用されるものである。
この構成によれば、部品点数、組付け工数の低減を図りつつ、シート支持剛性の確保ができ、しかも、上述のシートスライドレールをロングレール16と成すことができるので、荷重(特に後突荷重)を広範囲に分散させることができる。
【0062】
さらに、上記シートスライドレール(ロングレール16)の間を連結する連結フレーム部材(35〜40のうち少なくとも35〜37)を設け、該連結フレーム35〜37部材をフロアパネル(リヤフロア3)に固定したものである。
この構成によれば、車体の前後方向の耐力向上と併せて、上述の連結フレーム部材35〜37により車体の左右方向の耐力向上を図ることができ、特に車体のねじり剛性が向上する。
【0063】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロアパネルは、実施例のリヤフロア3に対応し、
以下同様に、
シートスライドレールは、ロングレール16に対応し、
車体フレームは、リヤサイドフレーム24に対応し、
後部フロアパネルは、リヤフロア3に対応し、
同じシートは、第3列目シート19に対応し、
前列シートは、第2列目シート18に対応し、
後列シートは、第3列目シート19に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の車両の下部車体構造を示す平面図
【図2】シートを取外した状態で示す平面図
【図3】図1の要部側面図
【図4】図2のA−A線に沿う要部拡大断面図
【図5】連結構造の他の実施例を示す断面図
【図6】図2の部分斜視図
【図7】図6のB−B線矢視断面図
【図8】ロングレールとホイールハウスとの連結構造の他の実施例を示す部分斜視図
【図9】図2のC−C線に沿う要部拡大断面図
【図10】連結構造の他の実施例を示す断面図
【図11】連結構造のさらに他の実施例を示す断面図
【図12】図2のD−D線矢視断面図
【図13】サイドシルとロングレールとの連結構造の他の実施例を示す断面図
【符号の説明】
【0065】
3…リヤフロア(フロアパネル)
16…ロングレール(シートスライドレール)
18,19…シート
24…リヤサイドフレーム(車体フレーム)
27,27U,27L…連結部材
35,36,37…連結フレーム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底部を形成するフロアパネルと、該フロアパネルに沿って前後方向に配設されるシートスライドレールと、該シートスライドレールに摺動可能に設けられ乗員が着座可能なシートとを備えた車両において、
上記フロアパネルには前後方向に延びる車体フレームが配設され、
該車体フレームに沿って上記シートスライドレールが配設されると共に、該車体フレームとシートスライドレールとを連結する連結部材が設けられた
車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記フロアパネルの車室内側に設けられたシートスライドレールに対して、上記車体フレームは車室外側に配設され上記フロアパネルに接合された
請求項1記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
上記車体フレームと上記シートスライドレールとは上下に重合されて前後方向に延設配置された
請求項1または2記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記連結部材は上記フロアパネルを介して上記車体フレームと上記シートスライドレールとを連結している
請求項2または3記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記車室内には前後方向に複数のシートが配設され、
上記シートは後列シートであり、上記車体フレームは後部フロアパネルの側部を前後方向に延びるリヤサイドフレームである
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記車体フレームおよび上記シートスライドレールは車幅方向に一対配設され、
上記一対のシートスライドレールは同じシートを支持している
請求項1〜5の何れか1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
上記シートスライドレールは前列シートと後列シートとで共用される
請求項5または6記載の車両の下部車体構造。
【請求項8】
上記シートスライドレールの間を連結する連結フレーム部材を設け、該連結フレーム部材をフロアパネルに固定した
請求項1〜7の何れか1に記載の車両の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−62871(P2008−62871A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245284(P2006−245284)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】