説明

車両の作動液蓄積装置の制御装置

【課題】 液圧ポンプを制御するECUへの通電開始直後において、液圧ポンプにより吐出された作動液を蓄積するアキュムレータを確実に非作動状態から作動液蓄積機能を発揮する作動状態へと移行させることが可能な安価な車両の作動液蓄積装置を提供すること。
【解決手段】 この装置は、イグニッションスイッチがON状態に変更された時点から少なくとも所定の初期時間Tsに亘って、アキュムレータ液圧Pacにかかわらず初期制御として液圧ポンプを必ず駆動する。これにより、アキュムレータ内をガス室と作動液室とに区画する区画部材の固着が発生していてもアキュムレータを非作動状態から作動状態へ確実に移行させる。初期制御終了後は、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon以上か否かに対応する信号を選択的に発生する安価な圧力スイッチPSの信号にのみ基づいてアキュムレータ液圧Pacを下限圧Ponと上限圧Poffの間の圧力に維持する通常制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧回路に作動液を吐出する液圧ポンプと、液圧ポンプの作動により液圧回路に吐出された作動液を蓄積するアキュムレータとを備えた車両の作動液蓄積装置を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作動液蓄積装置は、例えば、車両のブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧制御装置等に使用される車両の液圧アクチュエータが必要とする高圧のブレーキ液(作動液)を蓄積するために広く使用されている。
【0003】
一般に、係る作動液蓄積装置に使用されるアキュムレータは、圧力空間を形成するシェルと、圧力空間をガス室と作動液室とに区画する区画部材(可動部材)とを備える。この種のアキュムレータとしては、区画部材の種類に応じてブラダ式アキュムレータ、ピストン式アキュムレータ、ベローズ式アキュムレータ等、種々のアキュムレータが知られている。
【0004】
係るアキュムレータのガス室内には所定の圧力(以下、「ガス封入圧」と称呼する。)のガスが予め封入されている。従って、上記液圧回路内の圧力、即ち、作動液室内の圧力(以下、「アキュムレータ液圧」と称呼する。)が上記ガス封入圧以下のときは、アキュムレータ液圧が変化しても区画部材がガス封入時の位置(作動液室の容積が最小となる位置。以下、「原位置」と称呼する。)に維持される。この状態では、係るアキュムレータは作動液を蓄積する機能を発揮し得ない。以下、この状態を「非作動状態」と称呼する。
【0005】
一方、アキュムレータ液圧がガス封入圧(アキュムレータの構造によってはガス封入圧よりも若干高い圧力)よりも大きい圧力になると、区画部材は、原位置から離れるとともに、ガス室内の圧力がアキュムレータ液圧と等しくなるように同アキュムレータ液圧の変化に応じて圧力空間内を移動(変形)する。換言すれば、アキュムレータ液圧の上昇に応じて上記液圧回路内の作動液の量が増加する。これにより、係るアキュムレータは作動液を蓄積する機能を発揮するようになっている。以下、この状態を「作動状態」と称呼する。
【0006】
従って、上記構成を有するアキュムレータの作動液蓄積機能を維持するため(従って、アキュムレータを作動状態に維持するため)には、少なくともアキュムレータ液圧をガス封入圧よりも大きい圧力に維持する必要がある。このため、一般に、係る作動液蓄積装置に使用される液圧ポンプは、車両のイグニッションスイッチがON状態にある場合(具体的には、液圧ポンプ(を駆動するモータ)を駆動制御するためのECUが通電されている状態)において、アキュムレータ液圧が上記ガス封入圧よりも大きい所定の下限圧未満となったときに駆動され、アキュムレータ液圧が下限圧より大きい所定の上限圧以上となったときに停止せしめられるようになっている。なお、上限圧、及び下限圧は、上記液圧アクチュエータ側の要求に従って決定される。
【0007】
この結果、上限圧まで昇圧されたアキュムレータ液圧は、上記液圧アクチュエータへの作動液の供給や液圧回路での作動液の漏れ等により低下する。そして、アキュムレータ液圧が下限圧まで低下すると、液圧ポンプが駆動されてアキュムレータ液圧が再び上限圧まで昇圧される。
【0008】
以上のことから、車両のイグニッションスイッチがON状態にある場合において、アキュムレータ液圧は上記下限圧と上記上限圧の間の圧力に維持されるとともに、係るアキュムレータは作動状態に維持されるようになっている。
【0009】
ところで、例えば、車両のイグニッションスイッチが長時間に亘ってOFF状態に維持される(従って、液圧ポンプが長時間に亘って停止される)場合等においては、アキュムレータ液圧が上記ガス封入圧よりも小さい圧力に維持されることにより上記構成を有するアキュムレータが長時間に亘って非作動状態に維持される。換言すれば、上記区画部材が長時間に亘って原位置に固定される。
【0010】
この場合、区画部材が原位置にてシェル(或いは、シェル側の固定部材)と固着することがある。これは、上記構成を有するアキュムレータにおいてガス室と作動液室とを分離するためなどの理由により区画部材とシェル(或いは、シェル側の固定部材)との間に不可否的に介装されているシール部材のシール面で固着が発生することに主として起因する。
【0011】
以下、係る区画部材の固着が発生している状態で車両のイグニッションスイッチがOFF状態からON状態に変更される場合について考える。この場合、アキュムレータ液圧が上記下限圧よりも小さい圧力(例えば、大気圧近傍の低い圧力)になっているから、液圧ポンプが直ちに駆動される。
【0012】
ここで、区画部材が原位置に維持されている場合、液圧回路内の作動液の体積は実質的に膨張し得ない。更に作動液(例えば、ブレーキ液)の体積弾性係数は相当に高い値である。従って、区画部材が原位置で固着している限りにおいて液圧ポンプが駆動されると、液圧回路内の圧力(即ち、アキュムレータ液圧)は急激に上昇していく。換言すれば、アキュムレータ液圧の増加勾配が非常に大きい値となる。
【0013】
このとき、区画部材の固着の程度が相当に大きくてアキュムレータ液圧が上記上限圧を越えた或る圧力になるまで固着が解消されないものとすると、アキュムレータ液圧が上記上限圧に達したとき、区画部材の固着が解消されないまま(即ち、アキュムレータが非作動状態のまま)液圧ポンプが停止せしめられる事態が発生し得る。
【0014】
この場合、その後においてアキュムレータ液圧が下限圧まで低下することにより液圧ポンプが駆動される毎に同じ事態が繰り返し発生する。即ち、車両のイグニッションがOFF状態からON状態に変更された時点以降、アキュムレータが非作動状態に継続的に維持されるから、アキュムレータ内に作動液が蓄積されることはない。従って、アキュムレータの作動液蓄積機能が発揮され得ないという問題が発生する。
【0015】
係る問題に対処するため、特許文献1に記載の作動液蓄積装置(車両の補助液圧源装置)は、アキュムレータ液圧の時々刻々の変化を常時監視し得る圧力センサを備え、イグニッションスイッチがOFF状態からON状態に変更された直後において最初に液圧ポンプを駆動するときにのみ、アキュムレータ液圧の増加勾配が所定値を超えている場合、アキュムレータ液圧が上記上限圧を超えても液圧ポンプの駆動を更に所定時間継続するようになっている。これにより、アキュムレータ液圧が上記上限圧よりも大きい区画部材の固着が解消される圧力まで上昇し得るようになり、区画部材の固着が解消され得る(従って、アキュムレータが非作動状態から作動状態に移行し得る)。
【特許文献1】特開2002―187541号公報
【0016】
しかしながら、上記文献に記載の装置は、アキュムレータ液圧の増加勾配を検出するためアキュムレータ液圧の時々刻々の変化を常時監視し得る高価な圧力センサを必須の構成としている。従って、装置全体の製造コストが高くなるという問題がある。
【発明の開示】
【0017】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、例えば、車両のイグニッションスイッチがOFF状態からON状態に変更された直後等、液圧ポンプを制御するための制御手段が通電されていない状態から通電されている状態に変化した直後において、アキュムレータを確実に非作動状態から作動状態へと移行せしめることが可能な安価な作動液蓄積装置を制御する制御装置を提供することにある。
【0018】
本発明に係る作動液蓄積装置の制御装置は、液圧回路に作動液を吐出する液圧ポンプと、前記液圧ポンプの作動により前記液圧回路に吐出された作動液を蓄積するアキュムレータと、前記アキュムレータに蓄積されている前記作動液の圧力であるアキュムレータ液圧に係わる信号を発生する液圧信号発生手段とを備えた車両の作動液蓄積装置に適用される。
【0019】
ここで、上記アキュムレータは、液圧回路に連通された作動液室とガスが封入されたガス室とを区画する区画部材(例えば、ピストン、ベローズ等)を備えたアキュムレータであってもよいし、液圧回路に連通された作動液室と大気に開放された大気開放室とを区画する区画部材(例えば、ピストン等)を備えるとともに区画部材を作動液室の容積を減少せしめる方向に常時付勢する付勢力を発生する弾性部材(例えば、コイルスプリング等)を大気開放室内に備えたアキュムレータであってもよい。
【0020】
そして、本発明に係る作動液蓄積装置の制御装置は、通電されている状態において、前記アキュムレータ液圧に係わる信号に基づいて前記アキュムレータ液圧が所定の下限圧未満となったと判定したときに前記液圧ポンプを駆動せしめるとともに同アキュムレータ液圧に係わる信号に基づいて同アキュムレータ液圧が同下限圧より大きい所定の上限圧以上となったと判定したときに同液圧ポンプを停止せしめる通常制御を実行する制御手段(マイクロコンピュータ、ECU等)を備える。
【0021】
更に、この制御手段は、同制御手段が通電されていない状態から通電されている状態に変化した時点以降、所定の初期時間に亘って、前記初期時間内におけるアキュムレータ液圧にかかわらず前記液圧ポンプを駆動せしめる初期制御を前記通常制御に代えて実行するように構成されている。
【0022】
ここにおいて、制御手段(液圧ポンプを駆動制御するマイクロコンピュータ、ECU等)が通電されていない状態とは、例えば、車両のイグニッションスイッチがOFF状態にある場合に対応し、制御手段が通電されている状態は、例えば、車両のイグニッションスイッチがON状態にある場合に対応する。従って、「制御手段が通電されていない状態から通電されている状態に変化した時点」(以下、「通電開始時点」と称呼する。)は、例えば、車両のイグニッションスイッチがOFF状態からON状態に変更された時点に対応する。
【0023】
また、「初期時間内におけるアキュムレータ液圧にかかわらず液圧ポンプを駆動する」には、初期時間内においてアキュムレータ液圧が上記下限圧未満であるか否かの判定、及びアキュムレータ液圧が上記上限圧以上であるか否かの判定を行うことなく液圧ポンプを必ず駆動する場合のみならず、初期時間内において上記判定は行うが同判定結果にかかわらず必ず液圧ポンプを駆動する場合が含まれる。
【0024】
これによれば、通電開始時点以降、少なくとも所定の初期時間に亘って初期制御として液圧ポンプが必ず駆動せしめられる。従って、上記初期時間を、例えば、アキュムレータの区画部材が原位置(作動液室の容積が最小となる位置)にて固着している場合に上述のように液圧ポンプの駆動に伴って急上昇するアキュムレータ液圧が「0」から区画部材の固着を必ず解消することができる程度の大きい圧力(少なくとも上記上限圧よりも大きい圧力)に達するまでに要する時間(実際には、極短時間)よりも長い時間に設定すれば、区画部材の固着を上記初期時間が経過する前に確実に解消することができる。
【0025】
更には、上記初期時間が経過して上記初期制御が終了した時点から開始される上記通常制御では、アキュムレータ液圧が上記下限圧未満であるか否かの判定結果、及びアキュムレータ液圧が上記上限圧以上であるか否かの判定結果に基づいて液圧ポンプの駆動・停止が制御される。
【0026】
従って、係る通常制御を実行する際、上記液圧信号発生手段として、アキュムレータ液圧の時々刻々の変化を常時監視し得る高価な圧力センサを使用する必要はなく、圧力が設定圧以上であるか否かに対応する信号を選択的に発生する安価な圧力スイッチを使用することができる。
【0027】
以上のことから、上記本発明によれば、通電開始時点の直後において、アキュムレータを確実に非作動状態から作動状態へと移行せしめることが可能な安価な作動液蓄積装置を制御する制御装置(液圧ポンプを駆動制御するマイクロコンピュータ、ECU等)を提供することができる。
【0028】
この場合、前記車両の作動液蓄積装置は、前記アキュムレータ液圧が前記上限圧より大きい所定のリリーフ圧を超えたときに開弁して前記液圧回路内の作動液を開放するリリーフ弁を更に備えていて、前記制御手段は、前記初期時間として、(アキュムレータが作動状態にある場合において)前記液圧ポンプの作動により前記アキュムレータ液圧が前記上限圧から前記リリーフ圧に達するまでに要する時間を越えない予め設定された時間(であって、上記極短時間よりも長い時間)を使用するように構成されることが好適である。
【0029】
一般に、上記液圧回路の保護のため、同液圧回路に上記リリーフ弁が配設されることが多い。リリーフ弁を作動させることは、騒音の発生、及び高圧の作動液が有するエネルギーの無駄な消費に繋がる。従って、リリーフ弁を出来る限り作動させないように液圧ポンプを制御することが好ましい。
【0030】
一方、上記通常制御中においてアキュムレータ液圧は上記下限圧と上記上限圧の間の圧力に維持されるから、上記通電開始時点でのアキュムレータ液圧は上記上限圧よりも小さい圧力になっていると考えられる。
【0031】
以上のことから、上記構成のように、上記初期時間を、(アキュムレータが作動状態にある場合において)液圧ポンプの作動によりアキュムレータ液圧が上限圧からリリーフ圧に達するまでに要する時間を越えない時間に設定すれば、初期時間が経過する前にアキュムレータ液圧がリリーフ圧に達することを回避し得、従って、初期制御中においてリリーフ弁が作動することを回避し得る。
【0032】
上記本発明に係る作動液蓄積装置の制御装置においては、前記制御手段は、前記初期時間が経過した時点において前記アキュムレータ液圧に係わる信号に基づいて前記アキュムレータ液圧が前記下限圧以上となっていると判定されたとき、同時点にて前記液圧ポンプを停止せしめるように構成されることが好適である。
【0033】
上記下限圧、及び上限圧は、アキュムレータが蓄積している高圧の作動液を消費する対象である液圧アクチュエータ(例えば、ブレーキ液圧制御装置の液圧ブースタ等)側の要求に従って決定される。即ち、アキュムレータ液圧が下限圧以上の圧力になっていることは、液圧アクチュエータ側の要求が満たされていることを意味する。
【0034】
従って、上記構成のように、上記初期時間が経過して上記初期制御が終了した時点にてアキュムレータ液圧が下限圧以上となっているとき、同時点にて液圧ポンプを停止せしめるように構成すれば、液圧ポンプの駆動を不必要に継続することなく(従って、不必要にエネルギーを消費することなく)液圧アクチュエータ側の要求が満たすアキュムレータ液圧を確保することができる。
【0035】
なお、初期時間が経過した時点においてアキュムレータ液圧が下限圧未満となっている場合、同時点以降に開始される通常制御に従って液圧ポンプの駆動が更に継続され、アキュムレータ液圧が上限圧に達した時点で液圧ポンプが停止せしめられる。
【0036】
また、上記本発明に係る作動液蓄積装置の制御装置においては、前記液圧信号発生手段は、前記アキュムレータ液圧が前記下限圧以上であるか否かに対応する信号を選択的に発生する下限側圧力スイッチを含んで構成されていて、前記制御手段は、(アキュムレータが作動状態にある場合において)前記液圧ポンプの作動により前記アキュムレータ液圧が前記下限圧から前記上限圧に達するまでに要する時間を予め通常ポンプ作動時間として記憶する記憶手段を更に備え、前記通常制御を実行する際、前記下限側圧力スイッチが発生する信号が、前記アキュムレータ液圧が同下限圧未満であることを示す信号になったとき同アキュムレータ液圧が同下限圧未満となったと判定するとともに、前記アキュムレータ液圧が前記下限圧未満となったと判定された時点以降、前記記憶された通常ポンプ作動時間が経過したとき同アキュムレータ液圧が前記上限圧以上となったと判定するように構成されることが好ましい。
【0037】
これによれば、通常制御を実行する際、下限側圧力スイッチが発生する信号がアキュムレータ液圧が下限圧未満であることを示す信号になったとき(即ち、同信号がアキュムレータ液圧が下限圧以上であることを示す信号から下限圧未満であることを示す信号に変化したとき)液圧ポンプが駆動され、その後において「通常ポンプ作動時間」が経過したとき液圧ポンプが停止せしめられる。これにより、アキュムレータ液圧が下限圧と上限圧の間の圧力に制御され得る。
【0038】
換言すれば、下限側圧力スイッチが発生する信号のみで通常制御を達成することができる。従って、アキュムレータ液圧が上限圧以上であるか否かに対応する信号を選択的に発生する上限側圧力スイッチを省略することができ、本発明に係る作動液蓄積装置の制御装置が適用される同作動液蓄積装置をより一層安価とすることができる。
【0039】
このように液圧信号発生手段が下限側圧力スイッチのみで構成される場合、前記制御手段は、前記初期時間が経過した時点において前記下限側圧力スイッチが発生する信号が前記アキュムレータ液圧が前記下限圧以上であることを示す信号になっているとき、同時点にて前記液圧ポンプを停止せしめるように構成されることが好適である。
【0040】
これによれば、上述したように、液圧ポンプの駆動を不必要に継続することなく(従って、不必要にエネルギーを消費することなく)液圧アクチュエータ側の要求が満たすアキュムレータ液圧を確保することができる。
【0041】
更には、このように液圧信号発生手段が下限側圧力スイッチのみで構成される場合において、初期時間が経過した時点において下限側圧力スイッチが発生する信号がアキュムレータ液圧が下限圧未満であることを示す信号となっているとき、前記制御手段は、同時点以降も前記初期制御として前記液圧ポンプを更に継続して駆動せしめるとともに、前記下限側圧力スイッチが発生する信号が前記アキュムレータ液圧が同下限圧以上であることを示す信号になった時点(即ち、同信号がアキュムレータ液圧が下限圧未満であることを示す信号から下限圧以上であることを示す信号に変化した時点)から前記「通常ポンプ作動時間」が経過した時点で、同液圧ポンプを停止せしめるとともに同初期制御を終了して前記通常制御を実行開始するように構成されることが好適である。
【0042】
これによれば、初期時間が経過した時点においてアキュムレータ液圧が下限圧未満となっている場合、初期制御として液圧ポンプの駆動が更に継続され、その後においてアキュムレータ液圧が上限圧に達した時点で、液圧ポンプが停止せしめられるとともに初期制御が終了する。従って、初期制御終了時点において、アキュムレータの状態を通常制御中において駆動されている液圧ポンプが停止される時点と同じ状態とすることができ、初期制御から通常制御へのスムーズな移行が達成され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係る作動液蓄積装置(の制御装置)Aを適用した車両のブレーキ液圧制御装置を概略的に示している。
【0044】
このブレーキ液圧制御装置は、高圧のブレーキ液(作動液)を蓄積する作動液蓄積装置Aと、ブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧を発生するブレーキ液圧発生部Bとを含んで構成されている。
【0045】
作動液蓄積装置Aは、電動モータMと、同電動モータMにより駆動されるとともにリザーバR内のブレーキ液(作動液)を吸入して吐出する液圧ポンプPと、液圧ポンプPの吐出側にチェック弁Vを介して接続されるとともに同液圧ポンプPにより吐出された作動液を蓄積するアキュムレータAccと、圧力スイッチPS(液圧信号発生手段、下限側圧力スイッチ)と、リリーフ弁RVと、CPUを含んだECU(制御装置、制御手段)とから構成されている。
【0046】
電動モータM(従って、液圧ポンプP)は、後述するように、原則的に、アキュムレータAccが接続されている液圧回路内の圧力(以下、「アキュムレータ圧力Pac」と称呼する。)が所定の下限圧Ponと所定の上限圧Poffとの間の圧力(高圧)になるように、CPUからの駆動信号に応じて駆動制御されるようになっている。
【0047】
圧力スイッチPSは、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon以上であるときにON信号(High信号)を発生し、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon未満であるときにOFF信号(Low信号)を発生するようになっている。この圧力スイッチPSが発生する信号はCPUに供給されるようになっている。
【0048】
リリーフ弁RVは、アキュムレータ液圧Pacが上記上限圧Poffよりも高い所定の異常圧(リリーフ圧Prel)になったときに開弁してアキュムレータAccが接続されている液圧回路内の作動液をリザーバRへ開放するようになっている。これにより、アキュムレータAccが接続されている液圧回路が保護されるようになっている。
【0049】
また、CPUは、車両のイグニッションスイッチIGがON状態になっているときにのみ、図示しないバッテリからの電力に基づいて通電されるとともに種々の演算、判定、液圧ポンプPの駆動指示等を実行するようになっている。アキュムレータAccの構成については後に詳述する。
【0050】
ブレーキ液圧発生部Bは、ブレーキペダルBPの作動により応動する液圧ブースタHBと、同液圧ブースタHBに連結されたマスタシリンダMCとから構成されている。
【0051】
液圧ブースタHBは、作動液蓄積装置A(のアキュムレータAccが接続されている液圧回路)に接続されていて、作動液蓄積装置Aから供給される高圧を利用してブレーキペダルBPの操作力を所定の割合で助勢し同助勢された操作力をマスタシリンダMCに伝達するようになっている。
【0052】
マスタシリンダMCは、前記助勢された操作力に応じたマスタシリンダ液圧を発生するようになっていて、このマスタシリンダ液圧はホイールシリンダWCに供給されるようになっている。この結果、ブレーキペダルBPの操作力に応じた制動力が車輪に付与されるようになっている。
【0053】
以下、アキュムレータAccの構成、及び作動について図2及び図3を用いて説明する。アキュムレータAccは金属ベローズ式液圧アキュムレータであって、図2及び図3に示したように、圧力空間Roを形成するシェル11と、圧力空間Ro内に配設した蛇腹状のベローズ12とを備えている。シェル11は、上下2部材で構成されていて、これらの部材は液密的に接合連結されていて、その上端壁11aにはガス充填口11a1を封止する栓部材13が気密的に取付けられている。
【0054】
ベローズ12は、円筒状で金属製の図示上下方向に伸縮可能な蛇腹状部12aと、この蛇腹状部12aの図示上端に気密且つ液密的に結合した金属製の可動プレート12bを備えていて、蛇腹状部12aの図示下端はシェル11の下端壁11bに気密且つ液密的に固定されている。従って、ベローズ12は、圧力空間Roを、所定のガス(例えば、窒素ガス)が封入されている外側のガス室R1と、一端が上記液圧回路に連通する連通路Sの他端に連通する内側の作動液室R2とに区画している。また、このベローズ12の内側空間、即ち、作動液室R2内には、ステー14と筒状体15が配設されている。
【0055】
ステー14は、ベローズ12内の作動液室R2を外側作動液室R2aと内側作動液室R2bとに区画するとともに、ベローズ12の収縮移動を規制するものであり、図示下端をシェル11の下端壁11bに液密的に固定された円筒状壁部14aと、この円筒状壁部14aの上端に一体的に形成した上底壁部14bとを有している。また、ステー14の上底壁部14bには、外側作動液室R2aと内側作動液室R2bを連通させる連通孔14b1が形成されている。
【0056】
筒状体15は、その環状フランジ部15aにてシェル11の下端壁11bとステー14の円筒状壁部14aに液密的に固定されていて、シェル11の下端壁11bを貫通して下方に延びる下方筒部15bを有している。また、筒状体15の中心部には、上述した連通路Sが形成されている。
【0057】
また、筒状体15の下方筒部15bには、Oリング取付溝15cと取付雄ネジ15dが形成されていて、Oリング取付溝15cにOリング17を取付けた状態にて、取付雄ネジ15dを支持体21の雌ネジ21aにねじ込むことにより、アキュムレータAccが支持体21に脱着可能に取付けられるようになっている。
【0058】
また、ベローズ12における可動プレート12bの下面に、環状シール部材12cが設けられている。環状シール部材12cは、可動プレート12bの図示上下方向の移動に応じてステー14の上底壁部14bに対して着座・離座することができるようになっている。換言すれば、ステー14の上底壁部14bの連通孔14b1(即ち、内側作動液室R2b)と外側作動液室R2aとが可動プレート12bの図示上下方向の移動に応じて分離・連通(連通・遮断)され得るようになっている。
【0059】
このアキュムレータAccのガス室R1内には所定の圧力(以下、「ガス封入圧Pg0」と称呼する。)のガスが予め封入されている。従って、作動液室R2内の圧力(即ち、上記アキュムレータ液圧Pac)がガス封入圧Pg0を越える圧力からガス封入圧Pg0以下になると、環状シール部材12cがステー14の上底壁部14bに対して着座する。
【0060】
この結果、アキュムレータ液圧Pacが変化してもベローズ12(可動プレート12b)がガス封入時の位置(図2に示す位置。作動液室R2の容積が最小となる位置。以下、「原位置」と云うこともある。)に維持される。この状態では、アキュムレータAccは作動液を蓄積する機能を発揮し得ない。以下、この状態を「非作動状態」と称呼する。
【0061】
なお、この非作動状態では、外側作動液室R2aが内側作動液室R2bと遮断される。従って、内側作動液室R2b内の圧力(即ち、アキュムレータ液圧Pac)がガス封入圧Pg0から低下しても外側作動液室R2a内の圧力がガス封入圧Pg0に維持され得る(図2を参照)。また、ガス室R1内の圧力(ガス圧力Pg)はガス封入圧Pg0に維持される。
【0062】
この結果、ベローズ12の蛇腹状部12aの径方向内側と径方向外側との間に圧力差が発生しない。従って、蛇腹状部12aの径方向内側への収縮が防止されるから、同蛇腹状部12aが非作動状態において保護されるようになっている。
【0063】
一方、一旦、アキュムレータAccが非作動状態になると、ベローズ12における可動プレート12bがアキュムレータ液圧Pacを図示下方から受ける受圧面積は環状シール部材12cの内側径d(図2を参照)を直径とする円の面積となる。また、上述したように、非作動状態では、ガス圧力Pgも外側作動液室R2a内の圧力もガス封入圧Pg0に維持される。
【0064】
従って、可動プレート12bがガス封入圧Pg0を図示上方から実質的に受ける受圧面積は環状シール部材12cの外側径D(図2を参照)を直径とする円の面積となる。以上のことから、環状シール部材12cを原位置から移動させるために必要なアキュムレータ液圧Pac(即ち、ステー14の上底壁部14bに着座している環状シール部材12cを同上底壁部14bから離座させるために必要なアキュムレータ液圧Pac。以下、「開弁圧Pvo」と称呼する。)は、下記(1)式に従って表すことができる。なお、本例では、開弁圧Pvoは上記下限圧Ponよりも小さい圧力に設定されている。
【0065】
Pvo=Pg0・(D/d) ・・・(1)
【0066】
よって、アキュムレータAccが非作動状態にある場合において液圧ポンプPの作動によりアキュムレータ液圧Pacが上記開弁圧Pvoよりも大きい圧力になると、可動プレート12bは、原則的に、原位置から図示上方に移動する。そして、以降、可動プレート12bは、ガス圧力Pgがアキュムレータ液圧Pacと等しくなるように同アキュムレータ液圧Pacの変化に応じて圧力空間Ro内を図示上下方向に自由に移動する(図3を参照)。換言すれば、アキュムレータ液圧Pacの上昇に応じて上記アキュムレータAccが接続されている液圧回路内の作動液の量が増加する。
【0067】
これにより、アキュムレータAccは作動液を蓄積する機能を発揮するようになる。以下、この状態を「作動状態」と称呼する。このように、非作動状態にあるアキュムレータAccは、通常、アキュムレータ液圧Pacが上記開弁圧Pvoまで上昇すると作動状態に移行するようになっている。
【0068】
ところで、例えば、車両のイグニッションスイッチIGが長時間に亘ってOFF状態に維持される(従って、液圧ポンプPが長時間に亘って停止される)場合等においては、上記液圧回路(特に、チェック弁Vのシール部、液圧ブースタHBのシール部)での作動液の漏れ等によりアキュムレータ液圧Pacが略大気圧にまで低下した状態が長時間継続され得る。この場合、アキュムレータAccは長時間に亘って非作動状態に維持される。
【0069】
このような場合、環状シール部材12c(のシール面(下面))がステー14の上底壁部14bに強い力で押圧された状態に長時間に亘って維持される。この結果、環状シール部材12cがステー14の上底壁部14bに固着する事態が発生する場合がある。係る環状シール部材12cの固着が発生すると、アキュムレータ液圧Pacが上記開弁圧Pvoまで上昇しても、アキュムレータAccが非作動状態に維持されたままとなる事態が発生することがある。
【0070】
本発明に係る作動液蓄積装置(の制御装置)(以下、「本装置」と称呼する。)は、係る環状シール部材12cの固着が発生している場合でも、イグニッションスイッチIGをOFF状態からON状態に変更した直後において、アキュムレータAccを確実に非作動状態から作動状態へと移行させるためのものである。
【0071】
(液圧ポンプPの駆動制御の概要)
以下、本装置(図1に示したCPU)による液圧ポンプPの駆動制御について図4〜図6のタイムチャートを参照しながら説明する。先ず、図4のタイムチャートを参照する。図4は、時刻t1以前においてイグニッションスイッチIGが長時間に亘ってOFF状態に維持され、この結果、アキュムレータ液圧Pacが大気圧に維持されている状態にて、時刻t1にて運転者が車両のイグニッションスイッチIGをOFF状態からON状態に変更する場合における、アキュムレータ液圧Pacの変化、液圧ポンプPの駆動(ON)・停止(OFF)状態、及び圧力スイッチPSの信号の変化を示している。
【0072】
本装置は、イグニッションスイッチIGがOFF状態からON状態に変更されて、CPUへの通電が開始されると、先ず、初期制御を実行する。初期制御とは、原則的には、初期時間Tsの間だけ、アキュムレータ液圧Pacにかかわらず、電動モータM、従って、液圧ポンプPの駆動を継続する制御である。
【0073】
ここで、初期時間Tsは、アキュムレータAccが作動状態にある場合において液圧ポンプPの作動によりアキュムレータ液圧Pacが上記上限圧Poffから上記リリーフ圧Prefに達するまでに要する時間に設定されている。この初期時間Tsは、予め実験等により計測・取得することができる。
【0074】
以降、先ず、時刻t1において上記「環状シール部材12cの固着」が発生していない場合について説明する。時刻t1にて液圧ポンプPが駆動開始されると、時刻t1以降、アキュムレータ液圧Pacが開弁圧Pvoに到達する時刻t2(時刻t1から極短時間が経過した時刻)までの間、アキュムレータ液圧Pacは急上昇する。これは、時刻t1〜t2では、アキュムレータAccが非作動状態に維持されているから上記アキュムレータAccが接続されている液圧回路内の作動液の体積が実質的に膨張し得ないこと、及び、作動液(ブレーキ液)の体積弾性係数は相当に高い値であることに基づく。
【0075】
この場合、時刻t2になると、直ちに環状シール部材12cがステー14の上底壁部14bから離座することでアキュムレータAccは直ちに非作動状態から作動状態に移行する。この結果、時刻t2以降、上記初期時間Tsが経過する時刻t3までの間、アキュムレータ液圧Pacは、液圧ポンプPによる作動液の単位時間あたりの吐出量とガス室R1のガスの状態とに応じて決定される関係に従って比較的緩やかに上昇していく(実線を参照)。これにより、アキュムレータAccの作動液室R2内に作動液が徐々に蓄積されていく。
【0076】
一方、時刻t1において上記「環状シール部材12cの固着」が発生している場合、アキュムレータ液圧Pacが開弁圧Pvoに到達する時刻t2になっても、アキュムレータAccは非作動状態に維持される。この結果、アキュムレータ液圧Pacは、時刻t2以降も更に急上昇を続け、時刻t2の直後にて「環状シール部材12cの固着」が解消される圧力(本例では、上限圧Poffよりも大きくリリーフ圧Prefよりも小さい圧力)に達する(破線を参照)。
【0077】
これにより、「環状シール部材12cの固着」が解消されてアキュムレータAccが作動状態に移行する。以降、ベローズ12の可動プレート12bが原位置から図2における上方へ急激に移動することに伴って上記液圧回路内の作動液の体積が急増する。この結果、アキュムレータ液圧Pacは、上記「環状シール部材12cの固着」が発生していない場合における時刻t2〜t3間のアキュムレータ液圧Pacに向けて急減する(破線を参照)。
【0078】
このように、時刻t1において上記「環状シール部材12cの固着」が発生していても、この初期制御の実行により、「環状シール部材12cの固着」は確実に解消され得る。そして、上記初期時間Tsが経過する時刻t3になると、上記「環状シール部材12cの固着」の有無にかかわらずアキュムレータ液圧Pacは値P1になる。
【0079】
この例では、値P1は、上記下限圧Ponよりも小さい値となっている。即ち、時刻t3にて、圧力スイッチPSはOFF信号を発生している。このように、初期時間Tsが経過した時点で圧力スイッチPSがOFF信号を発生している場合、本装置は、初期制御を終了することなく、アキュムレータ液圧Pacが上記上限圧Poffに達するまでの間、初期制御として液圧ポンプPの駆動を更に継続する。これにより、アキュムレータ液圧Pacは、時刻t3以降も、液圧ポンプPによる作動液の単位時間あたりの吐出量とガス室R1のガスの状態とに応じて決定される関係に従って比較的緩やかに上昇し続ける。
【0080】
より具体的に述べると、本装置は、時刻t3以降、先ず、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Ponに達した時点を認識するため、圧力スイッチPSが発生する信号がON信号になったか否かを監視する。時刻t4にて圧力スイッチPSが発生する信号がON信号になると、本装置は、時刻t4から更に通常ポンプ作動時間Taが経過するまでの間、液圧ポンプPの駆動を継続する。そして、通常ポンプ作動時間Taが経過する時刻t5になると、本装置は、液圧ポンプPを停止せしめるとともに初期制御を終了する。
【0081】
ここで、通常ポンプ作動時間Taは、アキュムレータAccが作動状態にある場合において液圧ポンプPの作動によりアキュムレータ液圧Pacが上記下限圧Ponから上記上限圧Poffに達するまでに要する時間に設定されている。この通常ポンプ作動時間Taも、上記初期時間Tsと同様、予め実験等により計測・取得することができる。これにより、時刻t5は、アキュムレータ液圧Pacが上限圧Poffに達する時刻と一致する。
【0082】
本装置は、初期制御を終了すると、直ちに通常制御を実行する。通常制御とは、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon未満となったときに液圧ポンプPを駆動せしめるとともにアキュムレータ液圧Pacが上限圧Poff以上となったときに液圧ポンプPを停止せしめる制御である。
【0083】
より具体的に述べると、時刻t5にて上限圧Poffまで昇圧されたアキュムレータ液圧Pacは、時刻t5以降において液圧ブースタHBへの作動液の供給やアキュムレータAccが接続されている液圧回路での作動液の漏れ等により低下していく。このとき、本装置は、先ず、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon(未満)まで低下した時点を認識するため、圧力スイッチPSが発生する信号がOFF信号になったか否かを監視する。
【0084】
時刻t6にて圧力スイッチPSが発生する信号がOFF信号になると、本装置は、時刻t6から上記通常ポンプ作動時間Taが経過する時刻t7までの間、液圧ポンプPの駆動を継続する。そして、時刻t7になると、本装置は、液圧ポンプPを停止せしめる。これにより、時刻t7は、アキュムレータ液圧Pacが上限圧Poffに達する時刻と一致する。
【0085】
時刻t7以降も、イグニッションスイッチIGがOFF状態とされるまで、本装置は、上述した時刻t5〜t7までの作動を繰り返し実行することで通常制御を継続する。以上、初期時間Tsが経過した時点(図4における時刻t3)でのアキュムレータ液圧Pac(=P1)が下限圧Pon未満となる場合について図4を参照しながら説明した。
【0086】
次に、図5、及び図6のタイムチャートを参照しながら、初期時間Tsが経過した時点(図5における時刻t13、図6における時刻t23)でのアキュムレータ液圧Pac(=P1)が下限圧Pon以上となる場合について説明する。先ず、図5のタイムチャートを参照する。図5における時刻t11、t13、t16、t17はそれぞれ、図4における時刻t1、t3、t6、t7に対応している。
【0087】
図5は、時刻t11よりも比較的短時間前の時点でイグニッションスイッチIGがON状態からOFF状態に変更されて通常制御が終了し、同時点以降徐々に低下していくアキュムレータ液圧Pacが時刻t11にて開弁圧Pvoと下限圧Ponの間の圧力になっている状態にて、時刻t11にて運転者が車両のイグニッションスイッチIGをOFF状態からON状態に変更する場合における、アキュムレータ液圧Pacの変化、液圧ポンプPの駆動(ON)・停止(OFF)状態、及び圧力スイッチPSの信号の変化を示している。
【0088】
この場合、時刻t11にてアキュムレータAccは未だ作動状態に維持されている。従って、初期制御により液圧ポンプPが駆動される初期時間Ts(時刻t11〜t13)の間、アキュムレータ液圧Pacは、液圧ポンプPによる作動液の単位時間あたりの吐出量とガス室R1のガスの状態とに応じて決定される関係に従って比較的緩やかに上昇していく。これにより、アキュムレータAccの作動液室R2内に作動液が徐々に蓄積されていく。
【0089】
この例では、アキュムレータ液圧Pacは、初期時間Tsが経過する時刻t13より前の時刻t12にて下限圧Ponに達し、時刻t13にて下限圧Pon以上となっている(P1>Pon)。即ち、時刻t13にて、圧力スイッチPSはON信号を発生している。このように、初期時間Tsが経過した時点で圧力スイッチPSがON信号を発生している場合、本装置は、液圧ポンプPを直ちに停止せしめるとともに初期制御を原則どおり直ちに終了する。これにより、液圧ポンプPの駆動を不必要に継続することなく下限圧Pon以上のアキュムレータ液圧Pacを確保することができる。
【0090】
そして、本装置は、時刻t13にて通常制御を直ちに開始するとともに、図4に示した場合と同様、この通常制御をイグニッションスイッチIGがOFF状態になるまで継続する。
【0091】
図6は、時刻t21の直前でイグニッションスイッチIGがON状態からOFF状態に変更されて通常制御が終了し、アキュムレータ液圧Pacが時刻t21にて上限圧Poffより僅かに小さい圧力になっている状態にて、時刻t21にて運転者が車両のイグニッションスイッチIGをOFF状態からON状態に変更する場合における、アキュムレータ液圧Pacの変化、液圧ポンプPの駆動(ON)・停止(OFF)状態、及び圧力スイッチPSの信号の変化を示している。図6における時刻t21、t23、t26、t27はそれぞれ、図5における時刻t11、t13、t16、t17に対応している。
【0092】
この場合も、上述した図5に示した場合と同様、アキュムレータ液圧Pacは、初期時間Tsが経過する時刻t23にて下限圧Pon以上となる(P1>Pon)。従って、本装置は、時刻t23にて液圧ポンプPを直ちに停止せしめるとともに初期制御を原則どおり直ちに終了し、上述した通常制御を直ちに開始する。
【0093】
ここで、時刻t23でのアキュムレータ液圧Pac(=P1)は、リリーフ圧Prelを超えることはない。これは、上述したように初期時間Tsが、アキュムレータAccが作動状態にある場合において液圧ポンプPの作動によりアキュムレータ液圧Pacが上限圧Poffからリリーフ圧Prefに達するまでに要する時間に設定されていること、及び、イグニッションスイッチがOFF状態からON状態に変更される時点(図6では時刻t21)におけるアキュムレータ液圧Pacは、それ以前に実行されていた通常制御により少なくとも上限圧Poff未満の圧力になっていること、に基づく。これにより、リリーフ弁RVの開弁による騒音の発生、及び高圧の作動液が有するエネルギーの無駄な消費を防止することができる。
【0094】
以上、初期時間Tsが経過した時点(図5における時刻t13、図6における時刻t23)でのアキュムレータ液圧Pac(=P1)が下限圧Pon以上となる場合について図5、及び図6を参照しながら説明した。
【0095】
(実際の作動)
次に、以上のように構成された本発明による作動液蓄積装置Aの制御装置(CPU)の実際の作動について、CPUが実行するルーチンをフローチャートにより示した図7、及び図8を参照しながら説明する。CPUは、係る図7、及び図8に示した各ルーチンをイグニッションスイッチIGがON状態となっているときにのみ実行する。
【0096】
CPUは、図7に示した初期制御を実行するルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ700から処理を開始し、ステップ705に進んでイグニッションスイッチIGがOFF状態からON状態に変更されたか否かを判定する。
【0097】
いま、運転者がイグニッションスイッチIGをOFF状態からON状態に変更した直後であるものとすると、CPUはステップ705にて「Yes」と判定してステップ710に進み、初期制御実行フラグINIの値を「1」に、変数Modeの値を「1」に、カウンタNの値を「0」にそれぞれ設定する。
【0098】
ここで、初期制御実行フラグINIは、その値が「1」のとき初期制御実行中であることを示し、その値が「0」のとき通常制御実行中であることを示す。変数Modeは、初期制御実行中において、初期時間Tsが経過するまで(例えば、図4の時刻t1〜t3、図5の時刻t11〜t13、図6の時刻t21〜t23)は「1」に、図4の時刻t3〜t4に相当する期間は「2」に、図4の時刻t4〜t5に相当する期間は「3」に設定される。カウンタNの値は、イグニッションスイッチIGがOFF状態からON状態に変更された時点からの経過時間を表す。
【0099】
次に、CPUはステップ715に進んで、液圧ポンプPの駆動指示をモータMに対して行う。これにより、液圧ポンプPの駆動が開始されて初期制御が開始される(図4の時刻t1、図5の時刻t11、図6の時刻t21を参照)。次いで、CPUはステップ720に進んで初期制御実行フラグINIの値が「1」であるか否かを判定し、「No」と判定する場合、ステップ799に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0100】
現時点では、初期制御実行フラグINIの値が「1」になっている。従って、CPUはステップ720にて「Yes」と判定してステップ725に進み、変数Modeの値が「1」であるか否かを判定するとともに、ここでも「Yes」と判定してステップ730に進む。
【0101】
ステップ730に進むと、CPUはカウンタNの値が上記初期時間Tsに相当する初期時間対応値Nsと等しいか否かを判定する。現時点ではカウンタNの値は「0」であるから、CPU61はステップ730にて「No」と判定してステップ735に進み、カウンタNの値を「1」だけインクリメントした後、ステップ799に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0102】
以降、CPUはカウンタNの値が初期時間対応値Nsと等しくなるまで、ステップ705、720〜735の処理を繰り返し実行する。この間、液圧ポンプPの駆動は継続されている。この結果、ステップ735の処理が繰り返されることにより、カウンタNの値が初期時間対応値Nsと等しくなると(従って、初期時間Tsが経過すると)(図4の時刻t3、図5の時刻t13、図6の時刻t23を参照)、CPUはステップ730に進んだとき「Yes」と判定するようになり、ステップ740に進む。
【0103】
ステップ740に進むと、CPUは圧力スイッチPSがON信号を発生しているか否かを判定する。いま、図4の時刻t3に示すように、現時点でのアキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon未満であるものとして説明を続ける。
【0104】
この場合、現時点での圧力スイッチPSはOFF信号を発生している。従って、CPUはステップ740にて「No」と判定してステップ745に進み、変数Modeの値を「1」から「2」に変更した後、ステップ799に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、液圧ポンプPの駆動が更に継続されることになる。
【0105】
以降、CPUはステップ725に進んだとき「No」と判定してステップ750に進み、同ステップ750にて変数Modeの値が「2」であるか否かを判定するとともに、ここでは「Yes」と判定してステップ755に進むようになる。
【0106】
ステップ755に進むと、CPUは圧力スイッチPSがON信号を発生しているか否かを判定する。現時点は、初期時間Tsが経過した直後(図4の時刻t3の直後)であるからアキュムレータ液圧Pacは未だ下限圧Pon未満となっている。従って、CPUはステップ755にて「No」と判定してステップ799に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0107】
以降、CPUは圧力スイッチPSがON信号を発生するまで、ステップ705、720、725、750、755の処理を繰り返し実行する。この間、液圧ポンプPの駆動は継続されている。これにより、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon以上になると(図4の時刻t4を参照)、CPUはステップ755に進んだとき「Yes」と判定するようになり、ステップ760に進む。
【0108】
ステップ760に進むと、CPUは変数Modeの値を「2」から「3」に変更し、続くステップ765にてカウンタMの値を「0」に設定した後、ステップ799に進んで本ルーチンを一旦終了する。ここで、カウンタMの値はアキュムレータ液圧Pacが下限圧Ponになった時点からの経過時間を表す。
【0109】
この結果、以降、CPUは、ステップ750に進んだとき「No」と判定してステップ770に進むようになり、同ステップ770にてカウンタMの値が通常ポンプ作動時間Taに相当する通常ポンプ作動時間対応値Maと等しいか否かを判定する。現時点では、カウンタMの値は「0」であるから、CPUはステップ770にて「No」と判定してステップ775に進み、カウンタMの値を「1」だけインクリメントする。
【0110】
以降、CPUはカウンタMの値が通常ポンプ作動時間対応値Maと等しくなるまで、ステップ705、720、725、750、770、775の処理を繰り返し実行する。この間も、液圧ポンプPの駆動は継続されている。この結果、ステップ775の処理が繰り返されることにより、カウンタMの値が通常ポンプ作動時間対応値Maと等しくなると(従って、通常ポンプ作動時間Taが経過すると)(図4の時刻t5を参照)、CPUはステップ770に進んだとき「Yes」と判定するようになり、ステップ780に進む。
【0111】
ステップ780に進むと、CPUは液圧ポンプPの停止指示をモータMに対して行い、続くステップ785にて初期制御実行フラグINIの値を「1」から「0」に変更する。これにより、液圧ポンプPが停止されて初期制御が終了する(図4の時刻t5を参照)。以降(即ち、通常制御実行中においては)、CPUはステップ705からステップ720に進んだとき「No」と判定してステップ799に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了するようになる。
【0112】
次に、図5の時刻t13、及び図6の時刻t23に示すように、初期時間Tsが経過した時点でのアキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon以上である場合について説明する。この場合、初期時間Tsの経過によりステップ730にて「Yes」と判定したCPUはステップ740に進み、同ステップ740にて「Yes」と判定した後、ステップ790に進む。
【0113】
ステップ790に進むと、CPUは液圧ポンプPの停止指示をモータMに対して直ちに行い、続くステップ795にて初期制御実行フラグINIの値を「1」から「0」に直ちに変更する。これにより、液圧ポンプPが停止されて初期制御が終了する(図5の時刻t13、図6の時刻t23を参照)。以降(即ち、通常制御実行中においては)、CPUはステップ705からステップ720に進んだとき「No」と判定してステップ799に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了するようになる。以上、初期制御における作動について説明した。
【0114】
次に、通常制御における作動について説明する。CPUは図8に示した通常制御を実行するルーチンを所定時間(例えば、6msec)の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ800から処理を開始し、ステップ805に進んで初期制御実行フラグINIの値が「0」であるか否かを判定し、「No」と判定する場合(INI=1のとき。即ち、初期制御実行中のとき)、ステップ895に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0115】
いま、初期制御が終了した直後(即ち、図7のステップ785、又は795が実行された直後。例えば、図4の時刻t5、図5の時刻t13、図6の時刻t23を参照)であるものとすると、CPUはステップ805にて「Yes」と判定してステップ810に進み、液圧ポンプPが停止中であるか否かを判定する。
【0116】
現時点では、先のステップ780、又はステップ790の実行により液圧ポンプPが停止しているから、CPUはステップ810にて「Yes」と判定してステップ815に進んで圧力スイッチPSがOFF信号を発生しているか否かを判定する。
【0117】
現時点は、初期制御が終了した直後であるからアキュムレータ液圧Pacは下限圧Pon以上となっている。従って、CPUはステップ815にて「No」と判定してステップ895に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0118】
以降、アキュムレータAccが接続されている液圧回路での作動液の漏れ、液圧ブースタHBへの作動液の供給により低下していくアキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon未満となるまで、CPUはステップ805〜815の処理を繰り返し実行する。
【0119】
そして、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon未満となると(例えば、図4の時刻t6、図5の時刻t16、図6の時刻t26を参照)、CPUはステップ815に進んだとき「Yes」と判定してステップ820に進み、液圧ポンプPの駆動指示をモータMに対して行い、続くステップ825にてカウンタMの値を「0」に初期化する。これにより、液圧ポンプPの駆動が開始される。なお、このカウンタMの値は、図7のルーチンと同様、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Ponになった時点からの経過時間を表す。
【0120】
この結果、以降、CPUは、ステップ810に進んだとき「No」と判定してステップ830に進むようになり、同ステップ830にてカウンタMの値が通常ポンプ作動時間Taに相当する上記通常ポンプ作動時間対応値Maと等しいか否かを判定する。現時点では、カウンタMの値は「0」であるから、CPUはステップ830にて「No」と判定してステップ835に進み、カウンタMの値を「1」だけインクリメントする。
【0121】
以降、CPUはカウンタMの値が通常ポンプ作動時間対応値Maと等しくなるまで、ステップ805、810、830、835の処理を繰り返し実行する。この間も、液圧ポンプPの駆動は継続されている。この結果、ステップ835の処理が繰り返されることにより、カウンタMの値が通常ポンプ作動時間対応値Maと等しくなると(従って、通常ポンプ作動時間Taが経過すると)(図4の時刻t7、図5の時刻t17、図6の時刻t27を参照)、CPUはステップ830に進んだとき「Yes」と判定するようになり、ステップ840に進む。
【0122】
ステップ840に進むと、CPUは液圧ポンプPの停止指示をモータMに対して行う。これにより、液圧ポンプPが停止される。以降、CPUはステップ810に進んだとき再び「Yes」と判定するようになり、圧力スイッチPSがOFF信号を発生しているか否かのモニタを再び開始するようになる。以上、CPUはこのような処理をイグニッションスイッチIGがOFF状態になるまで繰り返し実行する。これにより、通常制御が達成される。
【0123】
以上、説明したように、発明による車両の作動液蓄積装置の制御装置によれば、イグニッションスイッチIGがOFF状態からON状態に変更された時点以降、少なくとも所定の初期時間Tsに亘ってアキュムレータ液圧Pacにかかわらず初期制御として液圧ポンプPが必ず駆動せしめられる。従って、アキュムレータAccの区画部材が原位置(非作動状態に対応する位置)にて固着している場合(具体的には、ベローズ12の可能プレート12bの下面に設けられている環状シール部材12cのシール面がステー14の上底壁部14bに固着している場合)であっても、同区画部材の固着を初期時間Tsが経過する前に確実に解消することができ、この結果、アキュムレータAccを非作動状態から作動状態へ確実に移行せしめることができる。
【0124】
また、初期制御終了後には、アキュムレータ液圧Pacを下限圧Ponと上限圧Poffの間の圧力に維持する通常制御が実行される。この通常制御においては、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon以上であるか否かに対応する信号を選択的に発生する安価な圧力スイッチPSの信号にのみ基づいて、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon未満であることを示す信号(OFF信号)が発生したとき液圧ポンプPが駆動されるとともに、OFF信号が発生した時点から、液圧ポンプPの作動によりアキュムレータ液圧Pacが下限圧Ponから上限圧Poffに達するまでに要する時間に相当する予め設定された通常ポンプ作動時間Taが経過したとき液圧ポンプPが停止される。従って、通常制御において高価な圧力センサを不要とする安価な作動液蓄積装置を提供することができる。
【0125】
また、アキュムレータAccの区画部材の固着、即ち、上記環状シール部材12cの固着は、同環状シール部材12cのシール面積Z(即ち、Z=π/4・(D−d))が大きくなるほど発生し難くなる傾向がある。これは、シール面積Zが大きいほどシール面がステー14の上底壁部14bへ押し付けられる際の面圧が小さくなることに基づく。従って、上記環状シール部材12cの固着の発生を抑制するためには、シール面積Zを大きくすることが好ましい。
【0126】
一方、上記(1)式から理解できるように、一般に、シール面積Zを大きくすることは上記開弁圧Pvoを大きくすることに繋がる。開弁圧Pvoを大きくすることは、アキュムレータAccが非作動状態から作動状態へ移行し難くなることを意味する。しかしながら、本発明による車両の作動液蓄積装置の制御装置によれば、開弁圧Pvoが大きくなっても(例えば、開弁圧Pvoが上限圧Poffを超える圧力になっても)、初期制御において初期時間Tsが経過する前にアキュムレータAccを非作動状態から作動状態へ確実に移行せしめることができる。従って、上記シール面積Zを大きめに設定することができるようになり、この結果、環状シール部材12cの固着そのものの発生を抑制することができる。
【0127】
本発明が上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、アキュムレータAccとして金属ベローズ式アキュムレータを採用しているが、ブラダ式アキュムレータ、ピストン式アキュムレータ等であってもよい。
【0128】
また、上記実施形態においては、初期時間Tsが経過した時点でのアキュムレータ液圧Pac(=P1)が下限圧Pon以上となっているとき(図5における時刻t13、図6における時刻t23を参照)、液圧ポンプPを直ちに停止するとともに初期制御を直ちに終了しているが、アキュムレータ液圧Pacが上限圧Poff以上となるまでの間、初期制御として液圧ポンプPの駆動を継続するように構成してもよい。
【0129】
また、上記実施形態においては、初期時間Tsが経過した時点でのアキュムレータ液圧Pac(=P1)が下限圧Pon未満となっているとき(図4における時刻t3を参照)、アキュムレータ液圧Pacが上記上限圧Poffに達するまでの間、初期制御として液圧ポンプPの駆動を更に継続するように構成されているが、アキュムレータ液圧Pacが下限圧Poffと上限圧Ponの間の或る所定の圧力に達するまでの間、初期制御として液圧ポンプPの駆動を更に継続するように構成してもよい。
【0130】
また、上記実施形態においては、初期時間Ts、及び通常ポンプ作動時間Taをそれぞれ一定の時間に設定しているが、初期時間Ts、及び/又は通常ポンプ作動時間Taを、車両の状態(例えば、バッテリ電圧、作動液の温度等)に応じて変更するように構成してもよい。
【0131】
また、上記実施形態においては、通常制御において、アキュムレータ液圧Pacが上限圧Poff以上となったことを、下限側圧力スイッチ(圧力スイッチPS)の信号が変化した時点(アキュムレータ液圧Pacが下限圧Pon未満となった時点)から所定の時間(通常ポンプ作動時間Ta)が経過したことを利用して判定しているが、アキュムレータ液圧Pacが上限圧Poff以上であるか否かに対応する信号を選択的に発生する上限側圧力スイッチを備え、同上限側圧力スイッチの信号に基づいてアキュムレータ液圧Pacが上限圧Poff以上となったことを判定するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】本発明の実施形態に係る作動液蓄積装置を適用した車両のブレーキ液圧制御装置の概略構成図である。
【図2】作動液室に作動液が蓄積されていない状態(非作動状態)にある図1に示したアキュムレータの拡大断面図である。
【図3】作動液室に作動液が蓄積されている状態(作動状態)にある図1に示したアキュムレータの拡大断面図である。
【図4】図1に示した作動液蓄積装置により液圧ポンプが制御される場合であって、初期時間が経過した時点でアキュムレータ液圧が下限圧未満となる場合における、アキュムレータ液圧の変化、液圧ポンプの駆動・停止状態、及び圧力スイッチの信号の変化を示したタイムチャートである。
【図5】図1に示した作動液蓄積装置により液圧ポンプが制御される場合であって、初期時間が経過した時点でアキュムレータ液圧が下限圧以上となる場合における、アキュムレータ液圧の変化、液圧ポンプの駆動・停止状態、及び圧力スイッチの信号の変化を示したタイムチャートである。
【図6】図1に示した作動液蓄積装置により液圧ポンプが制御される場合であって、初期時間が経過した時点でアキュムレータ液圧が下限圧以上となる場合における、アキュムレータ液圧の変化、液圧ポンプの駆動・停止状態、及び圧力スイッチの信号の変化を示したタイムチャートである。
【図7】図1に示したCPUが実行する初期制御を行うためのルーチンを示したフローチャートである。
【図8】図1に示したCPUが実行する通常制御を行うためのルーチンを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0133】
11…シェル、12…ベローズ、12a…蛇腹状部、12b…可動プレート、12c…環状シール部材、14…ステー、14b…上底壁部、Ro…圧力空間、R1…ガス室、R2…作動液室、R2a…内部作動液室、R2b…外部作動液室、Acc…アキュムレータ、P…液圧ポンプ、M…電動モータ、V…チェック弁、PS…圧力センサ、ECU…電気制御装置(CPU)、R…リザーバ、BP…ブレーキペダル、HB…液圧ブースタ(液圧アクチュエータ)、MC…マスタシリンダ、WC…ホイールシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧回路に作動液を吐出する液圧ポンプと、前記液圧ポンプの作動により前記液圧回路に吐出された作動液を蓄積するアキュムレータと、前記アキュムレータに蓄積されている前記作動液の圧力であるアキュムレータ液圧に係わる信号を発生する液圧信号発生手段とを備えた車両の作動液蓄積装置に適用され、
通電されている状態において、前記アキュムレータ液圧に係わる信号に基づいて前記アキュムレータ液圧が所定の下限圧未満となったと判定したときに前記液圧ポンプを駆動せしめるとともに同アキュムレータ液圧に係わる信号に基づいて同アキュムレータ液圧が同下限圧より大きい所定の上限圧以上となったと判定したときに同液圧ポンプを停止せしめる通常制御を実行する制御手段を備えた車両の作動液蓄積装置の制御装置において、
前記制御手段は、
同制御手段が通電されていない状態から通電されている状態に変化した時点以降、所定の初期時間に亘って、前記初期時間内におけるアキュムレータ液圧にかかわらず前記液圧ポンプを駆動せしめる初期制御を前記通常制御に代えて実行するように構成された車両の作動液蓄積装置の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の作動液蓄積装置の制御装置において、
前記車両の作動液蓄積装置は、前記アキュムレータ液圧が前記上限圧より大きい所定のリリーフ圧を超えたときに開弁して前記液圧回路内の作動液を開放するリリーフ弁を更に備えていて、
前記制御手段は、
前記初期時間として、前記液圧ポンプの作動により前記アキュムレータ液圧が前記上限圧から前記リリーフ圧に達するまでに要する時間を越えない予め設定された時間を使用するように構成された車両の作動液蓄積装置の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両の作動液蓄積装置の制御装置において、
前記制御手段は、
前記初期時間が経過した時点において前記アキュムレータ液圧に係わる信号に基づいて前記アキュムレータ液圧が前記下限圧以上となっていると判定されたとき、同時点にて前記液圧ポンプを停止せしめるように構成された車両の作動液蓄積装置の制御装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の車両の作動液蓄積装置の制御装置において、
前記液圧信号発生手段は、前記アキュムレータ液圧が前記下限圧以上であるか否かに対応する信号を選択的に発生する下限側圧力スイッチを含んで構成されていて、
前記制御手段は、
前記液圧ポンプの作動により前記アキュムレータ液圧が前記下限圧から前記上限圧に達するまでに要する時間を予め通常ポンプ作動時間として記憶する記憶手段を更に備え、
前記通常制御を実行する際、
前記下限側圧力スイッチが発生する信号が、前記アキュムレータ液圧が同下限圧未満であることを示す信号になったとき同アキュムレータ液圧が同下限圧未満となったと判定するとともに、前記アキュムレータ液圧が前記下限圧未満となったと判定された時点以降、前記記憶された通常ポンプ作動時間が経過したとき同アキュムレータ液圧が前記上限圧以上となったと判定するように構成された車両の作動液蓄積装置の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の作動液蓄積装置の制御装置において、
前記制御手段は、
前記初期時間が経過した時点において前記下限側圧力スイッチが発生する信号が前記アキュムレータ液圧が前記下限圧以上であることを示す信号になっているとき、同時点にて前記液圧ポンプを停止せしめるように構成された車両の作動液蓄積装置の制御装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の車両の作動液蓄積装置の制御装置において、
前記制御手段は、
前記初期時間が経過した時点において前記下限側圧力スイッチが発生する信号が前記アキュムレータ液圧が前記下限圧未満であることを示す信号となっているとき、同時点以降も前記初期制御として前記液圧ポンプを更に継続して駆動せしめるとともに、前記下限側圧力スイッチが発生する信号が前記アキュムレータ液圧が同下限圧以上であることを示す信号になった時点から前記記憶された通常ポンプ作動時間が経過した時点で、同液圧ポンプを停止せしめるとともに同初期制御を終了して前記通常制御を実行開始するように構成された車両の作動液蓄積装置の制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の車両の作動液蓄積装置の制御装置が適用される車両の作動液蓄積装置であって、同制御装置の制御手段を備えた車両の作動液蓄積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−29484(P2006−29484A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210932(P2004−210932)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】