説明

車両の側部構造

【課題】車両の側面衝突時にサイドドアが車室内へ侵入することをより確実に抑制すること。
【解決手段】フロントドア3の閉鎖時にフロントドア3の回動を規制する規制ユニット40が、乗降口1の後縁部1bにおいてセンターピラー7に設けられた車体側係合部41と、フロントドア3の後端部3dに設けられ、フロントドア3の閉鎖時に車体側係合部41と係合して、車両Aの車幅方向及び前後方向におけるフロントドアの変位を規制するドア側係合部42と、を備え、インパクトバー71の前端部71aがヒンジユニット10に連結され、インパクトバー71の後端部71bがドア側係合部42に連結されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突対策として、一般にサイドドアの内部に例えばドアビーム等の補強部材を設けることにより、サイドドアが変形して車内に侵入することを抑制する技術が知られている。
【0003】
また、ドアビームの車内側にテンションワイヤを設けることにより、ドアビームの変形を抑制すると共に、ピラーに環状の骨格部を設けることにより、側面衝突時にドアビームが受けた荷重を効果的に車体全体に伝達し、車体の変形を抑制する技術がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−126004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、サイドドアの前端部は、ヒンジによって開閉可能に固定されており、後端部がストライカにラッチを係止させることによって、その開閉動作が規制されている。ストライカには、一般にU字状のものが用いられるため、車両の側面衝突時にラッチが車両の前後方向前方に引っ張られた際に、ラッチの前後方向の動作もストライカによって規制されることになる。この場合には、ヒンジとラッチとの間に、曲げ応力に対する抗力である引っ張り応力が発生する。
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されている技術は、サイドドアの内部にテンションワイヤを設けて、ドアビームの変形を抑制することはできるが、ヒンジユニットとラッチユニットとの間がインナパネルで連結されているだけであるため、曲げ応力に耐え得るだけの引っ張り応力を生じさせることができない。このため、サイドドアが曲げ応力によって変形して車室内に侵入してしまう可能性がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、車両の側面衝突時にサイドドアが車室内へ侵入することをより確実に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、車体の側部に形成された乗降口を開閉するサイドドアと、前記乗降口の前縁部において前記車体と前記サイドドアの前端部とを連結し、前記サイドドアを車幅方向に回動可能に支持するヒンジユニットと、前記サイドドアの閉鎖時に前記サイドドアの回動を規制する規制ユニットと、前記サイドドアのインナパネルとアウタパネルとの間の内部空間に設けられ、車両の前後方向に延在した補強部材と、を備えた車両の側部構造において、前記規制ユニットが、前記乗降口の後縁部において前記車体に設けられた車体側係合部と、前記サイドドアの後端部に設けられ、前記サイドドアの閉鎖時に前記車体側係合部と係合して、車両の車幅方向及び前後方向における前記サイドドアの変位を規制するドア側係合部と、を備え、前記補強部材の前端部が前記ヒンジユニットに連結され、前記補強部材の後端部が前記ドア側係合部に連結されたことを特徴とする車両の側部構造が提供される。
【0008】
本発明によれば、前記補強部材によって前記ヒンジユニットと前記ドア側係合部とを連結したため、車両の側面衝突時に、前記規制ユニットが車両の前後方向における前記サイドドアの変位を規制した際に、前記ヒンジユニットと前記ドア側係合部との間により大きな引っ張り応力を生じさせることができる。従って、前記サイドドアがより大きな曲げ応力に耐えることができるため、車両の側面衝突時に前記サイドドアが車室内へ侵入することを確実に抑制することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記車体側係合部が、前記車体に固定された第1固定部と、前記第1固定部の前端部に設けられ、上下方向に延びる孔部と、を有し、前記ドア側係合部が、前記サイドドアに固定された第2固定部と、前記第2固定部の後端部に設けられ、前記サイドドアの閉鎖時に、前記孔部と同心上に位置する、上下方向に延びる貫通孔部と、前記孔部及び前記貫通孔部に軸を挿脱可能なアクチュエータと、を有し、前記補強部材の前記後端部が前記第2固定部に連結された構成であってもよい。本発明によれば、簡易な構成により、車両の側面衝突時に前記サイドドアが車室内へ侵入することを確実に抑制することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記車体が、ピラー部を挟んで車両前後方向に2つの前記乗降口を有し、前記サイドドア、前記ヒンジユニット、前記規制ユニット及び前記補強部材が、2つの前記乗降口毎に設けられ、車両前方の前記乗降口側の前記規制ユニットと、車両後方の前記乗降口側の前記ヒンジユニットと、を連結する第2補強部材を備えた構成であってもよい。本発明によれば、車両前方の前記乗降口側の前記規制ユニットと、車両後方の前記乗降口側の前記ヒンジユニットとの間で引っ張り応力を生じさせることができるため、前記サイドドアがより大きな曲げ応力に耐えることができる。
【0011】
また、本発明においては、前記サイドドアの前記内部空間に設けられ、前記補強部材よりも下方において車両の前後方向に延在した第3補強部材を備えた構成であってもよい。本発明によれば、前記補強部材よりも下方に前記第3補強部材を備えたため、より大きな曲げ応力に耐えることができる。これにより、前記サイドドアの変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の側面衝突時にサイドドアが車室内へ侵入することをより確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0015】
<車両Aの側部構造100の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る車両Aの側部構造100の側面図であり、図2は、車両Aの側部構造100の概略断面図である。
【0016】
車両Aは、車体の側部に形成された2つの乗降口1、2と、乗降口1を開閉するフロントドア3と、乗降口2を開閉するリアドア4とを備える。乗降口2は、乗降口1に対して、センターピラー7を挟んで車両Aの前後方向の後方に形成される。すなわち、乗降口1は、ヒンジピラー6とセンターピラー7との間に形成され、乗降口2は、センターピラー7とリアピラー8との間に形成される。また、フロントドア3は、乗員が乗降口1からフロントシート5aに乗降する際に用いられ、リアドア4は、乗員が乗降口2からリアシート5bに乗降する際に用いられる。
【0017】
フロントドア3は、乗降口1の前縁部1aにおいて、ヒンジユニット10によって、その前端部3cが車体(本実施形態では、ヒンジピラー6)と車幅方向に回動可能に支持される。ヒンジユニット10は、上下方向にずれて2ヶ所に設けられる(上側をヒンジユニット11、下側をヒンジユニット12とする)。一方、フロントドア3は、乗降口1の後縁部1bにおいて、閉鎖時に規制ユニット40によって、回動が規制される。なお、規制ユニット40の詳細については後述する。
【0018】
フロントドア3は、強度を向上させるため、インナパネル3aとアウタパネル3bとの間に閉断面である内部空間S1を形成している。フロントドア3の内部空間S1には、車両Aの前後方向に延在した補強部材であるインパクトバー71と、インパクトバー71よりも下方において車両Aの前後方向に延在した補強部材であるインパクトバー72と、を更に備える。
【0019】
インパクトバー71は、フロントドア3のアウタパネル3bの内壁に近接する位置に配設され、その前端部71a及び後端部71bがインナパネル3aに溶接固定される。また、インパクトバー72は、フロントドア3のインナパネル3aの内壁に近接する位置に配設され、その前端部72a及び後端部72bがインナパネル3aに溶接固定される。なお、インパクトバー71、72は、フロントドア3の内部空間S1の車幅方向中央に格納される窓ガラス9aと干渉しないように配設される。
【0020】
インパクトバー71、72には、例えば、高張力鋼板等で成形された部材が用いられる。インパクトバー71は、本実施形態では、フロントドア3の変形を抑制するだけでなく、フロントドア3のアウタパネル3bのベカツキ等を抑制するためにも用いることとする。
【0021】
リアドア4は、フロントドア3と同様に、乗降口2の前縁部2aにおいて、ヒンジユニット20によって、その前端部4cが車体(本実施形態では、センターピラー7)と車幅方向に回動可能に支持される。ヒンジユニット20は、上下方向にずれて2ヶ所に設けられる(上側をヒンジユニット21、下側をヒンジユニット22とする)。一方、リアドア4は、乗降口2の後縁部2bにおいて、閉鎖時に規制ユニット60によって、回動が規制される。なお、規制ユニット60の詳細については後述する。
【0022】
また、リアドア4は、強度を向上させるため、インナパネル4aとアウタパネル4bとの間に閉断面である内部空間S2を形成している。リアドア4の内部空間S2には、車両Aの前後方向に延在する補強部材であるインパクトバー81と、インパクトバー81よりも下方において車両Aの前後方向に延在した補強部材であるインパクトバー82と、を備える。
【0023】
インパクトバー81は、リアドア4のアウタパネル4bの内壁に近接する位置に配設され、その前端部81a及び後端部81bは、インナパネル4aに溶接固定される。また、インパクトバー82は、リアドア4のインナパネル4aの内壁に近接する位置に配設され、その前端部82a及び後端部82bは、インナパネル4aに溶接固定される。なお、インパクトバー81、82は、リアドア4の内部空間S2の車幅方向中央に格納される窓ガラス9bと干渉しないように配設される。
【0024】
インパクトバー81、82には、例えば、高張力鋼板等で成形された部材が用いられる。インパクトバー81は、本実施形態では、リアドア4の変形を抑制するだけでなく、リアドア4のアウタパネル4bのベカツキ等を抑制するためにも用いることとする。
【0025】
<車両Aの側部構造100の詳細構成>
図3は図2のW部の拡大断面図であり、図4は図2のX部の拡大断面図であり、図5は図2のY部の拡大断面図である。図6は、ヒンジユニット21及び規制ユニット40の拡大斜視図である。また、図7において、(a)はヒンジユニット11の拡大斜視図であり、(b)は規制ユニット60の拡大斜視図である。
【0026】
[規制ユニット40の詳細構造]
規制ユニット40は、図4及び図6で示すように、乗降口1の後縁部1bにおいて車体(本実施形態では、センターピラー7)に設けられた車体側係合部41と、フロントドア3の後端部3dに設けられ、フロントドア3の閉鎖時に車体側係合部41と係合して、車両Aの車幅方向及び前後方向におけるフロントドア3の変位を規制するドア側係合部42とを備える。
【0027】
車体側係合部41は、車体に固定された固定部41aと、固定部41aの前端部41a’に設けられ、上下方向に延びる孔部41bと、を有する。すなわち、固定部41aは、本実施形態では、中央に貫通した孔部41bを有する筒状体である。また、フロントドア3のインナパネル3a及びインパクトバー71には、車体側係合部41が通過可能なスリット3eが設けられている。これにより、車体側係合部41は、フロントドア3を閉鎖する際に、フロントドア3の内部空間S1内に侵入することができる。
【0028】
ドア側係合部42は、車両Aの車幅方向の変位を規制することにより、フロントドア3の開閉を禁止し、車両Aの前後方向の変位を規制することにより、フロントドア3とセンターピラー7との間に引っ張り応力を生じさせる。また、ドア側係合部42は、フロントドア3に固定された固定部42aと、固定部42aに設けられ、フロントドア3の閉鎖時に、孔部41bと同心上に位置する、上下方向に延びる孔部42bと、孔部41b、42bに軸部42dを挿脱可能なアクチュエータ42cと、を有する。
【0029】
固定部42aは、本実施形態では、中央に貫通した孔部42bを有する筒状体であり、上下方向に間隔を空けて2つ設けられる。また、固定部42aは、インパクトバー71の後端部71bに溶接されている。すなわち、インパクトバー71は、その後端部71bが固定部42aに連結されることになる。
【0030】
アクチュエータ42cは、配線42eが不図示のECUに接続されている。ECUは、種々のセンサからの入力に基づいて、各装置を制御するCPUである。例えば、フロントドア3の閉鎖を検出した場合には、軸部42dを上昇させて、軸部42dを孔部41b、42bに挿入し、乗員によって不図示のロック解除ボタンが押されたことを検出した場合には、軸部42dを下降させて孔部41b、42bから離脱するようにしてもよい。また、フロントドア3の回動がラッチとストライカで規制されている構成であれば、他車両等が車両Aの側部に衝突が生じ得る距離まで接近していることを検出した場合にだけ、軸部42dを上昇させて、軸部42dを孔部41b、42bに挿入するようにしてもよい。
【0031】
[規制ユニット60の詳細構造]
同様に、規制ユニット60は、図5及び図7(b)で示すように、乗降口2の後縁部2bにおいて車体(本実施形態では、リアピラー8)に設けられた車体側係合部61と、リアドア4の後端部4dに設けられ、リアドア4の閉鎖時に車体側係合部61と係合して、車両Aの車幅方向及び前後方向におけるリアドア4の変位を規制するドア側係合部62とを備える。ドア側係合部62は、車両Aの車幅方向の変位を規制することにより、リアドア4の開閉を禁止し、車両Aの前後方向の変位を規制することにより、リアドア4とリアピラー8との間に引っ張り応力を生じさせる。
【0032】
車体側係合部61は、車体に固定された固定部61aと、固定部61aの前端部61a’に設けられ、上下方向に延びる孔部61bと、を有する。すなわち、固定部61aは、本実施形態では、中央に貫通した孔部61bを有する筒状体である。また、リアドア4のインナパネル4a及びインパクトバー81には、車体側係合部61が通過可能なスリット4eが設けられている。これにより、車体側係合部61は、リアドア4を閉鎖する際に、リアドア4の内部空間S2内に侵入することができる。
【0033】
ドア側係合部62は、リアドア4に固定された固定部62aと、固定部62aに設けられ、フロントドア3の閉鎖時に、孔部61bと同心上に位置する、上下方向に延びる孔部62bと、孔部61b、62bに軸部62dを挿脱可能なアクチュエータ62cと、を有する。
【0034】
固定部62aは、本実施形態では、中央に貫通した孔部62bを有する筒状体であり、上下方向に間隔を空けて2つ設けられる。また、固定部62aは、インパクトバー81の後端部81bに溶接されている。すなわち、インパクトバー81は、その後端部81bが固定部62aに連結されることになる。
【0035】
アクチュエータ62cは、配線62eが不図示のECUに接続されている。ECUは、種々のセンサからの入力に基づいて、各装置を制御するCPUである。例えば、リアドア4の閉鎖を検出した場合には、軸部62dを上昇させて、軸部62dを孔部61b、62bに挿入し、乗員によって不図示のロック解除ボタンが押されたことを検出した場合には、軸部62dを下降させて孔部61b、62bから離脱するようにしてもよい。また、リアドア4の回動がラッチとストライカで規制されている構成であれば、他車両等が車両Aの側部に衝突が生じ得る距離まで接近していることを検出した場合にだけ、軸部62dを上昇させて、軸部62dを孔部61b、62bに挿入するようにしてもよい。
【0036】
[フロントドア3とヒンジピラー6との連結構造]
乗降口1の前縁部1aは、図3及び図7(a)で示すように、ヒンジピラー6で構成される。ヒンジピラー6は、強度を向上させるため、インナパネル6aとアウタパネル6bとの間に、閉断面である内部空間S3を形成している。
【0037】
ヒンジユニット11は、取付部11eにおいて、ヒンジピラー6の内部空間S3側からナット11aが溶接された補強プレート11bと共に、ヒンジピラー6のアウタパネル6bの車幅方向外側から、アウタパネル6bにボルト11cで共締め固定される。これにより、車体とヒンジユニット11とが固定される。
【0038】
また、ヒンジユニット11は、取付部11fにおいて、フロントドア3の内部空間S1側からナット71cが溶接された補強部材71dと共に、フロントドア3のインナパネル3aの外側から、ボルト11dで共締め固定される。補強部材71dは、インパクトバー71の前端部71aと溶接等で接合されている。すなわち、インパクトバー71は、その前端部71aがヒンジユニット11に連結されることになる。なお、インパクトバー71は、本実施形態では、上下方向上側に設けられたヒンジユニット11に連結される。
【0039】
[フロントドア3及びリアドア4とセンターピラー7との連結構造]
乗降口1の後縁部1b及び乗降口2の前縁部2aは、図4及び図6で示すように、センターピラー7で構成される。センターピラー7は、強度を向上させるため、インナパネル7aとアウタパネル7bとの間に、閉断面である内部空間S4を形成している。
【0040】
ヒンジユニット21は、取付部21eにおいて、センターピラー7の内部空間S4側からナット7cが溶接された補強プレート7dと共に、センターピラー7のアウタパネル7bの外側から、ボルト21cでアウタパネル7bに共締め固定される。補強プレート7dは、高張力鋼板等を用いてL字状に成形された部材である。
【0041】
また、ヒンジユニット21は、取付部21fにおいて、リアドア4の内部空間S2側からナット81cが溶接された補強部材81dと共に、リアドア4のインナパネル4aの外側から、ボルト21dで共締め固定される。補強部材81dは、インパクトバー81の前端部81aと溶接等で接合されている。すなわち、インパクトバー81は、その前端部81aがヒンジユニット21に連結されることになる。なお、インパクトバー81は、本実施形態では、上下方向上側に設けられたヒンジユニット21に連結される。
【0042】
また、同様に、車体側係合部41は、センタピラー7の内部空間S4側からナット7eが溶接された補強プレート7dと共に、センターピラー7のアウタパネル7bの外側から、ボルト41cでアウタパネル7bに共締め固定される。
【0043】
インパクトバー71は、その後端部71bがフロントドア3のインナパネル3aに溶接等で接合されている。一方、補強プレート7dによって、車両Aの前後方向前方の乗降口側(乗降口1)の車体側係合部41と車両Aの前後方向後方の乗降口側(乗降口2)のヒンジユニット21とが連結されている。このため、規制ユニット40によって、フロントドア3の前後方向の動きが規制された場合には、インパクトバー71からインパクトバー81までの間の各要素が連結されることになる。
【0044】
[リアドア4とリアピラー8との連結構造]
乗降口2の後縁部2bは、図5及び図7(b)で示すように、リアピラー8のインナパネル8aとアウタパネル8bとの間に、強度を向上させるため、閉断面である内部空間S5を形成している。
【0045】
車体側係合部61は、リアピラー8の内部空間S5側からナット8cが溶接された補強プレート8dと共に、リアピラー8のアウタパネル8bの外側から、ボルト61cでアウタパネル8bに共締め固定される。一方、ドア側係合部62の固定部62aは、インパクトバーの後端部81bに固定されているため、車体側係合部61とドア側係合部62とが係合した際には、インパクトバー81の後端部81bがリアピラー8に連結されることになる。
【0046】
以上述べた通り、本実施形態によれば、インパクトバーによってヒンジユニットと規制ユニットとを連結したため、車両の側面衝突時に、車体側係合部とドア側係合部とが係合した際に、ヒンジユニットと規制ユニットとの間により大きな引っ張り応力を生じさせることができる。従って、サイドドアがより大きな曲げ応力に耐えることができるため、車両の側面衝突時にサイドドアが車室内へ侵入することを確実に抑制することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、車体が、センターピラー7を挟んで車両Aの前後方向に2つの乗降口1、2を有し、サイドドア、ヒンジユニット、規制ユニット及びインパクトバーが、2つの乗降口毎に設けられる車両について説明したが、本発明は1つの乗降口のみを有する車両にも適用することが可能であるし、2つの乗降口を有する車両のいずれかの乗降口についてのみ適用することも可能である。
【0048】
また、車体側係合部41、61の孔部42、62は、本実施形態では、貫通孔としたが、軸部42d、62dによって係合可能であればよいため、有底孔であっても構わない。
【0049】
また、図4で示すように、車体側係合部41とヒンジユニット21とがそれぞれ別々に設けられ、補強プレート7dによって連結されるものとしたが、ヒンジユニット21の取付部21eと車体側係合部41とが一体に成形された部材を用いても構わない。
【0050】
図8は、一実施形態の変形例に係るヒンジユニット121及び規制ユニット140の拡大断面図である。ヒンジユニット121及び車体側係合部141の取付部190は、センターピラー7の内部空間S4側からナット7cが溶接された補強プレート7dと共に、センターピラー7のアウタパネル7bの外側から、ボルト21cでアウタパネル7bに共締め固定される。
【0051】
本変形例によれば、ヒンジユニットと車体側係合部とをそれぞれボルト等で固定する必要がないため、部品点数及び組付工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両Aの側部構造100の側面図である。
【図2】車両Aの側部構造100の概略断面図である。
【図3】図2のW部の拡大断面図である。
【図4】図2のX部の拡大断面図である。
【図5】図2のY部の拡大断面図である。
【図6】ヒンジユニット21及び規制ユニット40の拡大斜視図である。
【図7】(a)はヒンジユニット11の拡大斜視図であり、(b)は規制ユニット60の拡大斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態の変形例に係るヒンジユニット121及び規制ユニット140の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0053】
A 車両
1、2 乗降口
3 フロントドア
4 リアドア
5a フロントシート
5b リアシート
10、20 ヒンジユニット
40、60 規制ユニット
41、61 車体側係合部
42、62 ドア側係合部
71、72、81、82 インパクトバー
100 側部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側部に形成された乗降口を開閉するサイドドアと、
前記乗降口の前縁部において前記車体と前記サイドドアの前端部とを連結し、前記サイドドアを車幅方向に回動可能に支持するヒンジユニットと、
前記サイドドアの閉鎖時に前記サイドドアの回動を規制する規制ユニットと、
前記サイドドアのインナパネルとアウタパネルとの間の内部空間に設けられ、車両の前後方向に延在した補強部材と、を備えた車両の側部構造において、
前記規制ユニットが、
前記乗降口の後縁部において前記車体に設けられた車体側係合部と、
前記サイドドアの後端部に設けられ、前記サイドドアの閉鎖時に前記車体側係合部と係合して、車両の車幅方向及び前後方向における前記サイドドアの変位を規制するドア側係合部と、を備え、
前記補強部材の前端部が前記ヒンジユニットに連結され、前記補強部材の後端部が前記ドア側係合部に連結されたことを特徴とする車両の側部構造。
【請求項2】
前記車体側係合部が、
前記車体に固定された第1固定部と、
前記第1固定部の前端部に設けられ、上下方向に延びる孔部と、を有し、
前記ドア側係合部が、
前記サイドドアに固定された第2固定部と、
前記第2固定部に設けられ、前記サイドドアの閉鎖時に、前記孔部と同心上に位置する、上下方向に延びる貫通孔部と、
前記孔部及び前記貫通孔部に軸を挿脱可能なアクチュエータと、を有し、
前記補強部材の前記後端部が前記第2固定部に連結されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の側部構造。
【請求項3】
前記車体が、ピラー部を挟んで車両前後方向に2つの前記乗降口を有し、
前記サイドドア、前記ヒンジユニット、前記規制ユニット及び前記補強部材が、2つの前記乗降口毎に設けられ、
車両前方の前記乗降口側の前記規制ユニットと、車両後方の前記乗降口側の前記ヒンジユニットと、を連結する第2補強部材を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の側部構造。
【請求項4】
前記サイドドアの前記内部空間に設けられ、前記補強部材よりも下方において車両の前後方向に延在した第3補強部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の側部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−166638(P2009−166638A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6263(P2008−6263)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】