車両の充電部構造
【課題】車両の前部の軽衝突が発生してもリッドの紛失を防止する上で有利な車両の充電部構造を提供する。
【解決手段】充電用凹部32には受電コネクタ36が設けられている。リッド34は、ヒンジ部50を支点として揺動し、充電用凹部32の開口部32Aを開閉する。ロック機構38は、係止片52と、ロックピン54とを含んで構成される。係止片52は、閉塞状態で充電用凹部32内に位置する。ロックピン54は、充電用凹部32内に出没して係止孔52Aに挿脱可能に挿入され閉塞状態にリッド34がロックされた閉塞ロック状態を形成する。移動阻止部材40は、充電用凹部32内に設けられ、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に係止片52に当接して係止片52の移動を規制し、係止孔52Aからのロックピン54の外れを阻止する。
【解決手段】充電用凹部32には受電コネクタ36が設けられている。リッド34は、ヒンジ部50を支点として揺動し、充電用凹部32の開口部32Aを開閉する。ロック機構38は、係止片52と、ロックピン54とを含んで構成される。係止片52は、閉塞状態で充電用凹部32内に位置する。ロックピン54は、充電用凹部32内に出没して係止孔52Aに挿脱可能に挿入され閉塞状態にリッド34がロックされた閉塞ロック状態を形成する。移動阻止部材40は、充電用凹部32内に設けられ、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に係止片52に当接して係止片52の移動を規制し、係止孔52Aからのロックピン54の外れを阻止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の充電部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーから供給される電力によって駆動される電気モータが搭載された車両においては、バッテリーに電力を充電するための充電部構造が設けられている。
充電部構造として、車両に搭載されたバッテリーへ電力を充電するための充電ソケットを収容し、車両を構成する外板パネルに設けられた充電用凹部と、外板パネルに開口する充電用凹部の開口部を開閉するリッドと、開口部を閉塞する閉塞状態にリッドをロックするロック機構とを備えたものが提供されている(特許文献1参照)。
この充電部構造では、リッドが開口部を開放する開放位置と開口部を閉塞する閉塞位置とに揺動される。
また、前記のロック機構として、リッドに設けられた係止片と、係止片の係止孔に挿脱可能に挿入されるロックピンとを含み、リッドの閉塞位置で係止孔にロックピンを挿入することでリッドを閉塞位置に保持し、係止孔からロックピンを抜去することでリッドを開放位置に揺動可能とするものが提供されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146711号公報
【特許文献2】特開2004−231084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、充電部構造を車両の前面に配置した場合、リッドが閉塞状態にロックされた状態で車両の前部が物体に軽衝突すると、リッドに加わる外力でリッドがヒンジ部から外れ、さらに係止孔がロックピンから外れる方向にリッドが動き、これによりリッドが車両から脱落し紛失してしまうといった不都合が懸念される。ここでの軽衝突とは、走行不能となる程の衝突ではなく、衝突後でも走行が可能な、軽い接触等によるものを示す。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、車両の前部の軽衝突が発生してもリッドの紛失を防止する上で有利な車両の充電部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、車両に搭載されたバッテリーへ電力を充電するための充電ソケットを収容し、前記車両の前面を構成する外板パネルに設けられた充電用凹部と、前記外板パネルに開口する前記充電用凹部の開口部を開閉するリッドと、前記開口部を閉塞する閉塞状態に前記リッドをロックするロック機構とを備え、前記ロック機構は、前記リッドから突設され前記閉塞状態で前記充電用凹部内に位置する係止片と、車両側で支持され前記充電用凹部内に出没して前記係止片に設けられた係止孔に挿脱可能に挿入され前記閉塞状態に前記リッドがロックされた閉塞ロック状態を形成するロックピンとを含んで構成された車両の充電部構造であって、前記閉塞ロック状態で前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向へ前記係止片が移動した際に前記係止片の移動を規制し、前記係止孔からの前記ロックピンの外れを阻止する移動阻止部材が前記充電用凹部内に設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リッドの閉塞ロック状態で車両の前部が物体に軽衝突し、係止孔からロックピンが外れる方向へ係止片が移動したとしても、移動阻止部材が係止片の移動を規制することで、係止孔からのロックピンの外れが阻止される。
したがって、リッドを充電用凹部に留めることができるため、リッドの紛失を防止する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態における車両の充電部構造30を車両10の前後方向を通る鉛直面で切断した断面図である。
【図2】外板パネル42を取り外した車両10の前部を示す斜視図である。
【図3】第1の実施の形態における車両の充電部構造30の斜視図である。
【図4】第1の実施の形態における車両の充電部構造30の拡大断面図である。
【図5】移動阻止部材40およびソレノイド56の斜視図である。
【図6】移動阻止部材40と側壁48とが一体化された場合の車両の充電部構造30の斜視図である。
【図7】移動阻止部材40と側壁48とが一体化された場合の車両の充電部構造30の拡大断面図である。
【図8】ソレノイド56の斜視図である。
【図9】変形例における車両の充電部構造30の斜視図である。
【図10】変形例における車両の充電部構造30の拡大断面図である。
【図11】他の変形例における車両の充電部構造30の拡大断面図である。
【図12】第1の実施の形態における移動阻止部材40の作用を説明する説明図である。
【図13】第2の実施の形態おける移動阻止部材40の作用を説明する説明図である。
【図14】第3の実施の形態おける移動阻止部材40の作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に第1の実施の形態について説明する。
まず、車両の充電部構造が配置される車両前部の構成について説明する。
図2に示すように、車両10の前部には、左右方向(車幅方向)に間隔をおいて一対のフロントサイドメンバ12が前後方向に延在して配設されている。
各フロントサイドメンバ12の前端間は、左右方向に延在する下側バンパリンフォース14で接続されている。
下側バンパリンフォース14の後方で各フロントサイドメンバ12の前部から上方に起立する第1アーム12Aが設けられ、各アームの上端間は、左右方向に延在するアッパークロスバー16で接続されている。
さらに、各第1アーム12Aの上下中間部から前方かつ斜め上方に向かって延びる第2アーム12Bが設けられ、各第2アーム12Bの前端間は上側バンパリンフォース18で接続されている。
図1、図2に示すように、アッパークロスバー16および上側バンパリンフォース18の左右中間部は、前方に至るにつれて下方に変位するチャージャブラケット20で連結されている。
図1において、符号22は、下側バンパリンフォース14と上側バンパリンフォース18とにわたって取着されたバンパカバーを示し、図2において、符号22Aはバンパカバー22に設けられたバンパグリルを示し、符号24はエアコン用の熱交換器を示す。
【0009】
次に、車両の充電部構造について説明する。
図1、図3、図4に示すように、車両の充電部構造30は、充電用凹部32と、リッド34と、ロック機構38と、移動阻止部材40とを含んで構成されている。
【0010】
図1、図3に示すように、充電用凹部32は、車両10に搭載されたバッテリーへ電力を充電するための充電ソケット36を収容するものであり、車両10の前面を構成する外板パネル42に設けられ、車両10の前方に開放状に形成されている。なお、外板パネルは、フード、ラジエータグリルまたはバンパーのいずれかを構成する部品である。また外板パネルは、板金パネル、樹脂成形体のいずれでもよいものとする。
充電用凹部32は、充電ソケット36が設けられた底壁46と、底壁46の周囲から起立し充電用凹部32の開口部32Aにつながる側壁48とを有している。底壁46と側壁48は、外板パネル42およびバンパカバー22に取着されたハウジング部材44に設けられている。
【0011】
リッド34は、ヒンジ部50を支点として揺動し、充電用凹部32の開口部32Aを開閉するものである。ヒンジ部50は、充電用凹部32の外部で側壁48に支持されている。
図4に示すように、ヒンジ部50は、リッド34に挿通された支軸50Aと、この支軸50Aを回転可能に支持する側壁48側の不図示の軸受け部と、リッド34を開放方向に付勢する付勢部材50Bとを含んで構成されている。
【0012】
受電コネクタ36は、図3に示すように、端子36Aを含んで構成され、受電コネクタ36は充電用凹部32の底壁46上に設けられている。受電コネクタ36の端子36Aは、車両10に搭載されたバッテリー(不図示)に電気的に接続されている。
なお、図1において符号2は、受電コネクタ36に接続することで受電コネクタ36を介して前記バッテリーを充電する給電装置の給電コネクタを示す。
【0013】
ロック機構38は、開口部32Aを閉塞する閉塞状態にリッド34をロックするものであり、図4に示すように、係止片52と、ロックピン54とを含んで構成される。
係止片52は、ヒンジ部50に対向するリッド34の裏面から突設され閉塞状態で充電用凹部32内に位置する。
係止片52には係止孔52Aが形成されている。
ロックピン54は、車両10側で支持され充電用凹部32内に出没して係止孔52Aに挿脱可能に挿入され前記閉塞状態にリッド34がロックされた閉塞ロック状態を形成するものである。
ロックピン54は側壁48に設けられた挿通孔49から充電用凹部32内に出没する。
また、ロックピン54は、充電用凹部32内で車両10の前方側の箇所に配置され、ロックピン54は、その先端を車両10の斜め後方に向けて設けられている。
【0014】
本実施の形態では、ロックピン54は、アクチュエータ56によって出没動作される。このようなアクチュエータ56としてソレノイドなど従来公知のさまざまなアクチュエータが使用可能である。
図1に示すように、アクチュエータ56は、充電用凹部32外の車両10の前方箇所に、ハウジング部材44を介してチャージャブラケット20(特許請求の範囲の車体側フレーム部材に相当)で支持されている。
本実施の形態では、アクチュエータ56は側壁48に取着されている。
すなわち、図4、図5に示すようにアクチュエータ56は、直方体状のケース56Aを備えている。
ケース56Aは、ロックピン54が突出する上面56Bと、上面56から垂設される4つの側面56Cとを備えている。
上面56Bは、後述する移動阻止部材40の基板部40Aに取着されている。したがって、本実施の形態では、側壁48と移動阻止部材40とは別体であり、移動阻止部材40はアクチュエータ56に取着されている。
4つの側面56Cのうち互いに対向する2つの側面56Cには、出没可能で側面56Cから突出する方向に付勢された係合爪56Dがそれぞれ設けられている。
係止爪56Dには、ケース56Aの上方から下方に至るに従って次第に側面56Cから離間する傾斜面が形成されている。
側壁48は、前記の挿通孔49の縁部から垂設された壁部48Aを備え、対向する壁部48Aの箇所には、係止爪56Dに係止する係止孔48Bがそれぞれ設けられている。
移動阻止部材40が取り付けられたアクチュエータ56の側壁48への取着は、以下のようになされる。
ケース56Aの下部を下方に向けて挿入口49から挿入して押し込むと、各係止爪56Cは、傾斜面が側壁44Aに押されていったん側面56C内に没入したのち、係止孔48B内で突出して係止孔48Bの縁部に係止する。
これにより、アクチュエータ56のケース56Aが側壁48に取着され、したがって、移動阻止部材40はアクチュエータ56を介して側壁48に取着される。
【0015】
なお、ロックピン54は、付勢部材により常時充電用凹部32内に突出する方向に付勢されており、アクチュエータ56は駆動信号が供給されることによりロックピン54を没入させる。
ロックピン54は、駆動信号が供給されるとき以外常時突出しており、リッド34が開放状態から閉塞状態に揺動する際、係止片52に係合してロックピン54が一旦没入し、ロックピン54上に係止孔52Aが位置した際に再度突出し、閉塞ロック状態が形成される。
したがって、係止片52と係合してロックピン54が没入するように、ロックピン54の上部と係止片52の先部に互いに係合可能な傾斜面が形成されている。
また、本実施の形態では、閉塞ロック状態で車両10の前面の前方から車両10に衝撃が加わった際に、チャージャブラケット20は、ロックピン54が係止孔52Aにさらに挿入される方向に変位する。これは、前述したようにチャージャブラケット20が前方に至るにつれて下方に変位しているからである。
【0016】
移動阻止部材40は、充電用凹部32内に設けられ、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に係止片52に当接することで係止片52の移動を規制し、係止孔52Aからのロックピン54の外れを阻止するものである。
移動阻止部材40は係止片52を挟んで側壁48に対向するように設けられている。
本実施の形態では、図3、図4、図5に示すように、移動阻止部材40は側壁48と別体に形成されている。
移動阻止部材40は、アクチュエータ56を介して側壁48に取着される基板部40Aと、基板部40Aの両側から起立する側板部40Bと、側板部40Bの上端を接続する上板部40Cと、2つの側板部40Bの後部および上板部40Cの後部を接続する後板部40Dとを備えている。そして、上板部40Cが係止片52に当接するように構成され、上板部40Cが係止片52を挟んで側壁48に対向している。
【0017】
また、移動阻止部材40は側壁48と一体に形成されていてもよい。
この場合、図6、図7に示すように、移動阻止部材40は、側壁48から間隔をおいて起立する2つの側板部40Bと、側板部40Bの上端を接続する上板部40Cとを備えている。そして、上板部40Cが係止片52に当接するように構成され、上板部40Cが係止片52を挟んで側壁48に対向している。
アクチュエータ56は、図8に示すように、図5に示したアクチュエータ56と同様に、ケース56Aを備え、ケース56Aは、上面56Bと、4つの側面56Cとを備えている。
4つの側面56Cのうち互いに対向する2つの側面56Cには、出没可能で側面56Cから突出する方向に付勢された係合爪56Dがそれぞれ設けられている。
係止爪56Dには、ケース56Aの下方から上方に至るに従って次第に側面56Cから離間する傾斜面が形成されており、したがって、傾斜面の傾斜が図5と逆になっている。
側壁48は、壁部48Aを備え、対向する壁部48Aの箇所には、係止爪56Dに係止する係止孔48Bがそれぞれ設けられている。
アクチュエータ56が取着された移動阻止部材40の側壁48への取着は、以下のようになされる。
ケース56Aの上部を上向きにして挿入口49の下方から上方に挿入して押し込むと、各係止爪56Cは、傾斜面が側壁44Aに押されていったん側面56C内に没入したのち、係止孔48B内で突出して係止孔48Bの縁部に係止する。
これにより、アクチュエータ56が側壁48に取着される。
【0018】
次に、移動阻止部材40の変形例について図9、図10を参照して説明する。
図9、図10の移動阻止部材40は、後板部40Dを省略したものである。
図11の移動阻止部材40は、後板部40Dを省略し、さらに、上板部40Cの前後方向の長さを、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に係止片52に上板部40Cが当接し、係止孔52Aからのロックピン54の外れを阻止するに足る最小限の寸法で形成したものである。
【0019】
次に作用効果について説明する。
まず、充電時に開放状態となったリッド34を閉塞ロック状態とする場合について説明する。なお、図4では、リッド34の開放状態の途中の段階を二点鎖線で示している。
この状態で、ロックピン54はアクチュエータ56に設けられた付勢部材によって付勢されることで突出している。
ここで、リッド34を閉じる方向に揺動すると、係止片52の傾斜面とロックピン54の傾斜面とが係合し、ロックッピン54は付勢力に抗して没入する。
さらなるリッド34の揺動により、ロックピン54と係止孔52Aとが合致すると、図1、図12に示すように、ロックピン54が付勢力により係止孔52A内に挿入される。
これにより、開口部32Aを閉塞する閉塞状態にリッド34がロックされた閉塞ロック状態となる。
【0020】
次に、閉塞ロック状態のリッド34を開放する場合について説明する。
すなわち、図示しない制御部から駆動信号が供給されることでアクチュエータ56が作動してロックピン54を没入させ、ロックピン54を係止孔52Aから外す。
これにより、リッド34の閉塞ロック状態が解除され、リッド34は、付勢部材50Bの付勢力によって揺動し、開口部32Aを開放した開放状態となる。
【0021】
次に、リッド34の閉塞ロック状態で車両10の前部が物体に軽衝突し、リッド34がヒンジ部50から外れた場合について説明する。
すなわち、図12に破線で示すように、リッド34がヒンジ部50から外れて動くことにより、係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動する。
しかしながら、係止孔52Aからロックピン54が外れようとしても、移動阻止部材40(上板部40C)が係止片52に当接することで係止片52の移動を規制し、係止孔52Aからのロックピン54の外れが阻止される。
したがって、車両10の前部が物体に軽衝突することによってリッド34がヒンジ部50から外れても、リッド34を充電用凹部32に留めることができ、リッド34の紛失を防止する上で有利となる。
【0022】
また、本実施の形態では、リッド34の閉塞ロック状態で車両10の前面の前方から車両10に衝撃が加わることによってチャージャブラケット20は車両の後方に変位し、チャージャブラケット20は、ロックピン54が係止孔52Aにさらに挿入される方向に変位する。
したがって、リッド34を充電用凹部32に留める上でさらに有利となり、リッド34の紛失を防止する上で一層有利となる。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について図13を参照して説明する。なお、以下の実施の形態において第1の実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態は第1の実施の形態の変形例である。
図13に示すように、リッド34の閉塞ロック状態で、充電用凹部32を構成する壁面としての側壁48に係止片52を挟んで対向する移動阻止部材40が充電用凹部32に設けられている。
破線で示すように、車両10の前部に衝撃が加わり、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に、係止片52が移動阻止部材40(上板部40C)に当接し、かつ、ヒンジ部50(図1)に対向するリッド34の縁34Aが側壁48に当接する。
これにより、係止孔52Aからロックピン54が外れる方向への係止片52のさらなる移動が阻止され、係止孔52Aからのロックピン54の外れが阻止される。
第2の実施の形態では、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に、移動阻止部材40(上板部40C)に当接する係止片52の箇所は、第1の実施の形態と同様に、リッド34から離れた係止片52の先端52Bである。
【0024】
このような第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
また、第2の実施の形態では、リッド34がヒンジ部50から外れた場合に、係止片52(先端52B)が移動阻止部材40に当接し、かつ、リッド34の縁34Aが側壁48に当接する。
そのため、係止孔52Aからのロックピン54の外れをより確実に阻止することができ、したがって、充電用凹部32にリッド34をより確実に留めることでリッド34の紛失を防止する上でより有利となる。
【0025】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について図14を参照して説明する。
第3の実施の形態は、移動阻止部材40の形状と、係止片52が移動阻止部材40に当接する箇所とが第2の実施の形態と異なっており、その他の点は第2の実施の形態と同様である。
図14に示すように、リッド34の閉塞ロック状態で、充電用凹部32を構成する壁面としての側壁48に係止片52を挟んで対向する移動阻止部材40が充電用凹部32に設けられている。
移動阻止部材40は、上板部40Cの前部に、前方に至るにつれて下方に傾斜する傾斜板部41が設けられている。
破線で示すように、車両10の前部に衝撃が加わり、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に、係止片52が移動阻止部材40の傾斜板部41の先端に当接し、かつ、ヒンジ部50(図1)に対向するリッド34の縁34Aが側壁48に当接する。
これにより、係止孔52Aからロックピン54が外れる方向への係止片52のさらなる移動が阻止され、係止孔52Aからのロックピン54の外れが阻止される。
第3の実施の形態では、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に、移動阻止部材40(傾斜板部41)に当接する係止片52の箇所は、係止孔52Aよりもリッド34側に変位した係止片52の箇所52Cである。
【0026】
このような第3の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
また、第3の実施の形態でも第2の実施の形態と同様に、リッド34がヒンジ部50から外れた場合に、係止片52(箇所52C)が移動阻止部材40に当接し、かつ、リッド34の縁34Aが壁面48に当接する。そのため、係止孔52Aからのロックピン54の外れをより確実に阻止することができ、したがって、充電部用凹部32にリッド34をより確実に留めることでリッド34の紛失を防止する上でより有利となる。
【符号の説明】
【0027】
10……車両、30……車両の充電部構造、32……充電用凹部、32A……開口部、34……リッド、34A……リッドの縁、36……受電コネクタ、38……ロック機構、40……移動阻止部材、42……外板パネル、50……ヒンジ部、52……係止片、52A……係止孔、54……ロックピン。
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の充電部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーから供給される電力によって駆動される電気モータが搭載された車両においては、バッテリーに電力を充電するための充電部構造が設けられている。
充電部構造として、車両に搭載されたバッテリーへ電力を充電するための充電ソケットを収容し、車両を構成する外板パネルに設けられた充電用凹部と、外板パネルに開口する充電用凹部の開口部を開閉するリッドと、開口部を閉塞する閉塞状態にリッドをロックするロック機構とを備えたものが提供されている(特許文献1参照)。
この充電部構造では、リッドが開口部を開放する開放位置と開口部を閉塞する閉塞位置とに揺動される。
また、前記のロック機構として、リッドに設けられた係止片と、係止片の係止孔に挿脱可能に挿入されるロックピンとを含み、リッドの閉塞位置で係止孔にロックピンを挿入することでリッドを閉塞位置に保持し、係止孔からロックピンを抜去することでリッドを開放位置に揺動可能とするものが提供されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−146711号公報
【特許文献2】特開2004−231084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、充電部構造を車両の前面に配置した場合、リッドが閉塞状態にロックされた状態で車両の前部が物体に軽衝突すると、リッドに加わる外力でリッドがヒンジ部から外れ、さらに係止孔がロックピンから外れる方向にリッドが動き、これによりリッドが車両から脱落し紛失してしまうといった不都合が懸念される。ここでの軽衝突とは、走行不能となる程の衝突ではなく、衝突後でも走行が可能な、軽い接触等によるものを示す。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、車両の前部の軽衝突が発生してもリッドの紛失を防止する上で有利な車両の充電部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、車両に搭載されたバッテリーへ電力を充電するための充電ソケットを収容し、前記車両の前面を構成する外板パネルに設けられた充電用凹部と、前記外板パネルに開口する前記充電用凹部の開口部を開閉するリッドと、前記開口部を閉塞する閉塞状態に前記リッドをロックするロック機構とを備え、前記ロック機構は、前記リッドから突設され前記閉塞状態で前記充電用凹部内に位置する係止片と、車両側で支持され前記充電用凹部内に出没して前記係止片に設けられた係止孔に挿脱可能に挿入され前記閉塞状態に前記リッドがロックされた閉塞ロック状態を形成するロックピンとを含んで構成された車両の充電部構造であって、前記閉塞ロック状態で前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向へ前記係止片が移動した際に前記係止片の移動を規制し、前記係止孔からの前記ロックピンの外れを阻止する移動阻止部材が前記充電用凹部内に設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リッドの閉塞ロック状態で車両の前部が物体に軽衝突し、係止孔からロックピンが外れる方向へ係止片が移動したとしても、移動阻止部材が係止片の移動を規制することで、係止孔からのロックピンの外れが阻止される。
したがって、リッドを充電用凹部に留めることができるため、リッドの紛失を防止する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態における車両の充電部構造30を車両10の前後方向を通る鉛直面で切断した断面図である。
【図2】外板パネル42を取り外した車両10の前部を示す斜視図である。
【図3】第1の実施の形態における車両の充電部構造30の斜視図である。
【図4】第1の実施の形態における車両の充電部構造30の拡大断面図である。
【図5】移動阻止部材40およびソレノイド56の斜視図である。
【図6】移動阻止部材40と側壁48とが一体化された場合の車両の充電部構造30の斜視図である。
【図7】移動阻止部材40と側壁48とが一体化された場合の車両の充電部構造30の拡大断面図である。
【図8】ソレノイド56の斜視図である。
【図9】変形例における車両の充電部構造30の斜視図である。
【図10】変形例における車両の充電部構造30の拡大断面図である。
【図11】他の変形例における車両の充電部構造30の拡大断面図である。
【図12】第1の実施の形態における移動阻止部材40の作用を説明する説明図である。
【図13】第2の実施の形態おける移動阻止部材40の作用を説明する説明図である。
【図14】第3の実施の形態おける移動阻止部材40の作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に第1の実施の形態について説明する。
まず、車両の充電部構造が配置される車両前部の構成について説明する。
図2に示すように、車両10の前部には、左右方向(車幅方向)に間隔をおいて一対のフロントサイドメンバ12が前後方向に延在して配設されている。
各フロントサイドメンバ12の前端間は、左右方向に延在する下側バンパリンフォース14で接続されている。
下側バンパリンフォース14の後方で各フロントサイドメンバ12の前部から上方に起立する第1アーム12Aが設けられ、各アームの上端間は、左右方向に延在するアッパークロスバー16で接続されている。
さらに、各第1アーム12Aの上下中間部から前方かつ斜め上方に向かって延びる第2アーム12Bが設けられ、各第2アーム12Bの前端間は上側バンパリンフォース18で接続されている。
図1、図2に示すように、アッパークロスバー16および上側バンパリンフォース18の左右中間部は、前方に至るにつれて下方に変位するチャージャブラケット20で連結されている。
図1において、符号22は、下側バンパリンフォース14と上側バンパリンフォース18とにわたって取着されたバンパカバーを示し、図2において、符号22Aはバンパカバー22に設けられたバンパグリルを示し、符号24はエアコン用の熱交換器を示す。
【0009】
次に、車両の充電部構造について説明する。
図1、図3、図4に示すように、車両の充電部構造30は、充電用凹部32と、リッド34と、ロック機構38と、移動阻止部材40とを含んで構成されている。
【0010】
図1、図3に示すように、充電用凹部32は、車両10に搭載されたバッテリーへ電力を充電するための充電ソケット36を収容するものであり、車両10の前面を構成する外板パネル42に設けられ、車両10の前方に開放状に形成されている。なお、外板パネルは、フード、ラジエータグリルまたはバンパーのいずれかを構成する部品である。また外板パネルは、板金パネル、樹脂成形体のいずれでもよいものとする。
充電用凹部32は、充電ソケット36が設けられた底壁46と、底壁46の周囲から起立し充電用凹部32の開口部32Aにつながる側壁48とを有している。底壁46と側壁48は、外板パネル42およびバンパカバー22に取着されたハウジング部材44に設けられている。
【0011】
リッド34は、ヒンジ部50を支点として揺動し、充電用凹部32の開口部32Aを開閉するものである。ヒンジ部50は、充電用凹部32の外部で側壁48に支持されている。
図4に示すように、ヒンジ部50は、リッド34に挿通された支軸50Aと、この支軸50Aを回転可能に支持する側壁48側の不図示の軸受け部と、リッド34を開放方向に付勢する付勢部材50Bとを含んで構成されている。
【0012】
受電コネクタ36は、図3に示すように、端子36Aを含んで構成され、受電コネクタ36は充電用凹部32の底壁46上に設けられている。受電コネクタ36の端子36Aは、車両10に搭載されたバッテリー(不図示)に電気的に接続されている。
なお、図1において符号2は、受電コネクタ36に接続することで受電コネクタ36を介して前記バッテリーを充電する給電装置の給電コネクタを示す。
【0013】
ロック機構38は、開口部32Aを閉塞する閉塞状態にリッド34をロックするものであり、図4に示すように、係止片52と、ロックピン54とを含んで構成される。
係止片52は、ヒンジ部50に対向するリッド34の裏面から突設され閉塞状態で充電用凹部32内に位置する。
係止片52には係止孔52Aが形成されている。
ロックピン54は、車両10側で支持され充電用凹部32内に出没して係止孔52Aに挿脱可能に挿入され前記閉塞状態にリッド34がロックされた閉塞ロック状態を形成するものである。
ロックピン54は側壁48に設けられた挿通孔49から充電用凹部32内に出没する。
また、ロックピン54は、充電用凹部32内で車両10の前方側の箇所に配置され、ロックピン54は、その先端を車両10の斜め後方に向けて設けられている。
【0014】
本実施の形態では、ロックピン54は、アクチュエータ56によって出没動作される。このようなアクチュエータ56としてソレノイドなど従来公知のさまざまなアクチュエータが使用可能である。
図1に示すように、アクチュエータ56は、充電用凹部32外の車両10の前方箇所に、ハウジング部材44を介してチャージャブラケット20(特許請求の範囲の車体側フレーム部材に相当)で支持されている。
本実施の形態では、アクチュエータ56は側壁48に取着されている。
すなわち、図4、図5に示すようにアクチュエータ56は、直方体状のケース56Aを備えている。
ケース56Aは、ロックピン54が突出する上面56Bと、上面56から垂設される4つの側面56Cとを備えている。
上面56Bは、後述する移動阻止部材40の基板部40Aに取着されている。したがって、本実施の形態では、側壁48と移動阻止部材40とは別体であり、移動阻止部材40はアクチュエータ56に取着されている。
4つの側面56Cのうち互いに対向する2つの側面56Cには、出没可能で側面56Cから突出する方向に付勢された係合爪56Dがそれぞれ設けられている。
係止爪56Dには、ケース56Aの上方から下方に至るに従って次第に側面56Cから離間する傾斜面が形成されている。
側壁48は、前記の挿通孔49の縁部から垂設された壁部48Aを備え、対向する壁部48Aの箇所には、係止爪56Dに係止する係止孔48Bがそれぞれ設けられている。
移動阻止部材40が取り付けられたアクチュエータ56の側壁48への取着は、以下のようになされる。
ケース56Aの下部を下方に向けて挿入口49から挿入して押し込むと、各係止爪56Cは、傾斜面が側壁44Aに押されていったん側面56C内に没入したのち、係止孔48B内で突出して係止孔48Bの縁部に係止する。
これにより、アクチュエータ56のケース56Aが側壁48に取着され、したがって、移動阻止部材40はアクチュエータ56を介して側壁48に取着される。
【0015】
なお、ロックピン54は、付勢部材により常時充電用凹部32内に突出する方向に付勢されており、アクチュエータ56は駆動信号が供給されることによりロックピン54を没入させる。
ロックピン54は、駆動信号が供給されるとき以外常時突出しており、リッド34が開放状態から閉塞状態に揺動する際、係止片52に係合してロックピン54が一旦没入し、ロックピン54上に係止孔52Aが位置した際に再度突出し、閉塞ロック状態が形成される。
したがって、係止片52と係合してロックピン54が没入するように、ロックピン54の上部と係止片52の先部に互いに係合可能な傾斜面が形成されている。
また、本実施の形態では、閉塞ロック状態で車両10の前面の前方から車両10に衝撃が加わった際に、チャージャブラケット20は、ロックピン54が係止孔52Aにさらに挿入される方向に変位する。これは、前述したようにチャージャブラケット20が前方に至るにつれて下方に変位しているからである。
【0016】
移動阻止部材40は、充電用凹部32内に設けられ、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に係止片52に当接することで係止片52の移動を規制し、係止孔52Aからのロックピン54の外れを阻止するものである。
移動阻止部材40は係止片52を挟んで側壁48に対向するように設けられている。
本実施の形態では、図3、図4、図5に示すように、移動阻止部材40は側壁48と別体に形成されている。
移動阻止部材40は、アクチュエータ56を介して側壁48に取着される基板部40Aと、基板部40Aの両側から起立する側板部40Bと、側板部40Bの上端を接続する上板部40Cと、2つの側板部40Bの後部および上板部40Cの後部を接続する後板部40Dとを備えている。そして、上板部40Cが係止片52に当接するように構成され、上板部40Cが係止片52を挟んで側壁48に対向している。
【0017】
また、移動阻止部材40は側壁48と一体に形成されていてもよい。
この場合、図6、図7に示すように、移動阻止部材40は、側壁48から間隔をおいて起立する2つの側板部40Bと、側板部40Bの上端を接続する上板部40Cとを備えている。そして、上板部40Cが係止片52に当接するように構成され、上板部40Cが係止片52を挟んで側壁48に対向している。
アクチュエータ56は、図8に示すように、図5に示したアクチュエータ56と同様に、ケース56Aを備え、ケース56Aは、上面56Bと、4つの側面56Cとを備えている。
4つの側面56Cのうち互いに対向する2つの側面56Cには、出没可能で側面56Cから突出する方向に付勢された係合爪56Dがそれぞれ設けられている。
係止爪56Dには、ケース56Aの下方から上方に至るに従って次第に側面56Cから離間する傾斜面が形成されており、したがって、傾斜面の傾斜が図5と逆になっている。
側壁48は、壁部48Aを備え、対向する壁部48Aの箇所には、係止爪56Dに係止する係止孔48Bがそれぞれ設けられている。
アクチュエータ56が取着された移動阻止部材40の側壁48への取着は、以下のようになされる。
ケース56Aの上部を上向きにして挿入口49の下方から上方に挿入して押し込むと、各係止爪56Cは、傾斜面が側壁44Aに押されていったん側面56C内に没入したのち、係止孔48B内で突出して係止孔48Bの縁部に係止する。
これにより、アクチュエータ56が側壁48に取着される。
【0018】
次に、移動阻止部材40の変形例について図9、図10を参照して説明する。
図9、図10の移動阻止部材40は、後板部40Dを省略したものである。
図11の移動阻止部材40は、後板部40Dを省略し、さらに、上板部40Cの前後方向の長さを、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に係止片52に上板部40Cが当接し、係止孔52Aからのロックピン54の外れを阻止するに足る最小限の寸法で形成したものである。
【0019】
次に作用効果について説明する。
まず、充電時に開放状態となったリッド34を閉塞ロック状態とする場合について説明する。なお、図4では、リッド34の開放状態の途中の段階を二点鎖線で示している。
この状態で、ロックピン54はアクチュエータ56に設けられた付勢部材によって付勢されることで突出している。
ここで、リッド34を閉じる方向に揺動すると、係止片52の傾斜面とロックピン54の傾斜面とが係合し、ロックッピン54は付勢力に抗して没入する。
さらなるリッド34の揺動により、ロックピン54と係止孔52Aとが合致すると、図1、図12に示すように、ロックピン54が付勢力により係止孔52A内に挿入される。
これにより、開口部32Aを閉塞する閉塞状態にリッド34がロックされた閉塞ロック状態となる。
【0020】
次に、閉塞ロック状態のリッド34を開放する場合について説明する。
すなわち、図示しない制御部から駆動信号が供給されることでアクチュエータ56が作動してロックピン54を没入させ、ロックピン54を係止孔52Aから外す。
これにより、リッド34の閉塞ロック状態が解除され、リッド34は、付勢部材50Bの付勢力によって揺動し、開口部32Aを開放した開放状態となる。
【0021】
次に、リッド34の閉塞ロック状態で車両10の前部が物体に軽衝突し、リッド34がヒンジ部50から外れた場合について説明する。
すなわち、図12に破線で示すように、リッド34がヒンジ部50から外れて動くことにより、係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動する。
しかしながら、係止孔52Aからロックピン54が外れようとしても、移動阻止部材40(上板部40C)が係止片52に当接することで係止片52の移動を規制し、係止孔52Aからのロックピン54の外れが阻止される。
したがって、車両10の前部が物体に軽衝突することによってリッド34がヒンジ部50から外れても、リッド34を充電用凹部32に留めることができ、リッド34の紛失を防止する上で有利となる。
【0022】
また、本実施の形態では、リッド34の閉塞ロック状態で車両10の前面の前方から車両10に衝撃が加わることによってチャージャブラケット20は車両の後方に変位し、チャージャブラケット20は、ロックピン54が係止孔52Aにさらに挿入される方向に変位する。
したがって、リッド34を充電用凹部32に留める上でさらに有利となり、リッド34の紛失を防止する上で一層有利となる。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について図13を参照して説明する。なお、以下の実施の形態において第1の実施の形態と同様の部分、部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態は第1の実施の形態の変形例である。
図13に示すように、リッド34の閉塞ロック状態で、充電用凹部32を構成する壁面としての側壁48に係止片52を挟んで対向する移動阻止部材40が充電用凹部32に設けられている。
破線で示すように、車両10の前部に衝撃が加わり、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に、係止片52が移動阻止部材40(上板部40C)に当接し、かつ、ヒンジ部50(図1)に対向するリッド34の縁34Aが側壁48に当接する。
これにより、係止孔52Aからロックピン54が外れる方向への係止片52のさらなる移動が阻止され、係止孔52Aからのロックピン54の外れが阻止される。
第2の実施の形態では、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に、移動阻止部材40(上板部40C)に当接する係止片52の箇所は、第1の実施の形態と同様に、リッド34から離れた係止片52の先端52Bである。
【0024】
このような第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
また、第2の実施の形態では、リッド34がヒンジ部50から外れた場合に、係止片52(先端52B)が移動阻止部材40に当接し、かつ、リッド34の縁34Aが側壁48に当接する。
そのため、係止孔52Aからのロックピン54の外れをより確実に阻止することができ、したがって、充電用凹部32にリッド34をより確実に留めることでリッド34の紛失を防止する上でより有利となる。
【0025】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について図14を参照して説明する。
第3の実施の形態は、移動阻止部材40の形状と、係止片52が移動阻止部材40に当接する箇所とが第2の実施の形態と異なっており、その他の点は第2の実施の形態と同様である。
図14に示すように、リッド34の閉塞ロック状態で、充電用凹部32を構成する壁面としての側壁48に係止片52を挟んで対向する移動阻止部材40が充電用凹部32に設けられている。
移動阻止部材40は、上板部40Cの前部に、前方に至るにつれて下方に傾斜する傾斜板部41が設けられている。
破線で示すように、車両10の前部に衝撃が加わり、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に、係止片52が移動阻止部材40の傾斜板部41の先端に当接し、かつ、ヒンジ部50(図1)に対向するリッド34の縁34Aが側壁48に当接する。
これにより、係止孔52Aからロックピン54が外れる方向への係止片52のさらなる移動が阻止され、係止孔52Aからのロックピン54の外れが阻止される。
第3の実施の形態では、閉塞ロック状態で係止孔52Aからロックピン54が外れる方向へ係止片52が移動した際に、移動阻止部材40(傾斜板部41)に当接する係止片52の箇所は、係止孔52Aよりもリッド34側に変位した係止片52の箇所52Cである。
【0026】
このような第3の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
また、第3の実施の形態でも第2の実施の形態と同様に、リッド34がヒンジ部50から外れた場合に、係止片52(箇所52C)が移動阻止部材40に当接し、かつ、リッド34の縁34Aが壁面48に当接する。そのため、係止孔52Aからのロックピン54の外れをより確実に阻止することができ、したがって、充電部用凹部32にリッド34をより確実に留めることでリッド34の紛失を防止する上でより有利となる。
【符号の説明】
【0027】
10……車両、30……車両の充電部構造、32……充電用凹部、32A……開口部、34……リッド、34A……リッドの縁、36……受電コネクタ、38……ロック機構、40……移動阻止部材、42……外板パネル、50……ヒンジ部、52……係止片、52A……係止孔、54……ロックピン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリーへ電力を充電するための受電コネクタを収容し、前記車両の前面を構成する外板パネルに設けられた充電用凹部と、
前記外板パネルに開口する前記充電用凹部の開口部を開閉するリッドと、
前記開口部を閉塞する閉塞状態に前記リッドをロックするロック機構とを備え、
前記ロック機構は、前記リッドから突設され前記閉塞状態で前記充電用凹部内に位置する係止片と、車両側で支持され前記充電用凹部内に出没して前記係止片に設けられた係止孔に挿脱可能に挿入され前記閉塞状態に前記リッドがロックされた閉塞ロック状態を形成するロックピンとを含んで構成された車両の充電部構造であって、
前記閉塞ロック状態で前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向へ前記係止片が移動した際に前記係止片の移動を規制し、前記係止孔からの前記ロックピンの外れを阻止する移動阻止部材が前記充電用凹部内に設けられている、
車両の充電部構造。
【請求項2】
前記充電用凹部は、前記受電コネクタが設けられた底壁と、前記底壁の周囲から起立し前記開口部につながる側壁とを有し、
前記ロックピンは前記側壁に設けられた挿通孔から前記充電用凹部内に出没し、
前記移動阻止部材は前記係止片を挟んで前記側壁に対向するように設けられている、
請求項1記載の車両の充電部構造。
【請求項3】
前記リッドはヒンジ部を支点として揺動し、
前記係止片は前記ヒンジ部に対向する前記リッドの箇所から突設され、
前記閉塞ロック状態で前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向へ前記係止片が移動した際に、前記係止片が前記移動阻止部材に当接し、かつ、前記ヒンジ部に対向する前記リッドの縁が前記充電用凹部を構成する壁面に当接することで、前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向への前記係止片のさらなる移動が阻止される、
請求項2記載の車両の充電部構造。
【請求項4】
前記閉塞ロック状態で前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向へ前記係止片が移動した際に、前記移動阻止部材に当接する前記係止片の箇所は、前記リッドから離れた前記係止片の先端である、
請求項3記載の車両の充電部構造。
【請求項5】
前記閉塞ロック状態で前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向へ前記係止片が移動した際に、前記移動阻止部材に当接する前記係止片の箇所は、前記係止孔よりも前記リッド側に変位した前記係止片の箇所である、
請求項3記載の車両の充電部構造。
【請求項6】
前記ロックピンは前記充電用凹部内で車両の前方側の箇所に配置され、
前記充電用凹部外の車両の前方箇所に車体側フレーム部材に支持され前記ロックピンを出没させるアクチュエータが設けられ、
前記ロックピンは、その先端を車両斜め後方に向けて設けられ、
前記閉塞ロック状態で前記車両の前面の前方から前記車両に衝撃が加わった際に、前記車体側フレーム部材は車両の後方に変位し、前記ロックピンが前記係止孔にさらに挿入される方向に変位する、
請求項1乃至5に何れか1項記載の車両の充電部構造。
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリーへ電力を充電するための受電コネクタを収容し、前記車両の前面を構成する外板パネルに設けられた充電用凹部と、
前記外板パネルに開口する前記充電用凹部の開口部を開閉するリッドと、
前記開口部を閉塞する閉塞状態に前記リッドをロックするロック機構とを備え、
前記ロック機構は、前記リッドから突設され前記閉塞状態で前記充電用凹部内に位置する係止片と、車両側で支持され前記充電用凹部内に出没して前記係止片に設けられた係止孔に挿脱可能に挿入され前記閉塞状態に前記リッドがロックされた閉塞ロック状態を形成するロックピンとを含んで構成された車両の充電部構造であって、
前記閉塞ロック状態で前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向へ前記係止片が移動した際に前記係止片の移動を規制し、前記係止孔からの前記ロックピンの外れを阻止する移動阻止部材が前記充電用凹部内に設けられている、
車両の充電部構造。
【請求項2】
前記充電用凹部は、前記受電コネクタが設けられた底壁と、前記底壁の周囲から起立し前記開口部につながる側壁とを有し、
前記ロックピンは前記側壁に設けられた挿通孔から前記充電用凹部内に出没し、
前記移動阻止部材は前記係止片を挟んで前記側壁に対向するように設けられている、
請求項1記載の車両の充電部構造。
【請求項3】
前記リッドはヒンジ部を支点として揺動し、
前記係止片は前記ヒンジ部に対向する前記リッドの箇所から突設され、
前記閉塞ロック状態で前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向へ前記係止片が移動した際に、前記係止片が前記移動阻止部材に当接し、かつ、前記ヒンジ部に対向する前記リッドの縁が前記充電用凹部を構成する壁面に当接することで、前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向への前記係止片のさらなる移動が阻止される、
請求項2記載の車両の充電部構造。
【請求項4】
前記閉塞ロック状態で前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向へ前記係止片が移動した際に、前記移動阻止部材に当接する前記係止片の箇所は、前記リッドから離れた前記係止片の先端である、
請求項3記載の車両の充電部構造。
【請求項5】
前記閉塞ロック状態で前記係止孔から前記ロックピンが外れる方向へ前記係止片が移動した際に、前記移動阻止部材に当接する前記係止片の箇所は、前記係止孔よりも前記リッド側に変位した前記係止片の箇所である、
請求項3記載の車両の充電部構造。
【請求項6】
前記ロックピンは前記充電用凹部内で車両の前方側の箇所に配置され、
前記充電用凹部外の車両の前方箇所に車体側フレーム部材に支持され前記ロックピンを出没させるアクチュエータが設けられ、
前記ロックピンは、その先端を車両斜め後方に向けて設けられ、
前記閉塞ロック状態で前記車両の前面の前方から前記車両に衝撃が加わった際に、前記車体側フレーム部材は車両の後方に変位し、前記ロックピンが前記係止孔にさらに挿入される方向に変位する、
請求項1乃至5に何れか1項記載の車両の充電部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−240753(P2011−240753A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112761(P2010−112761)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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