説明

車両の周囲にある障害物の輪郭を検出するための方法およびコンピュータプログラム

【課題】本発明は、好ましくは車両の側方領域に組み込まれているセンサ手段(110)によって、走行する車両(200)の周囲にある障害物(300)の輪郭を検出する方法に関する。
【解決手段】発生された反射信号をまず数学的に平均化して、かくて得られた平均化された反射信号から、障害物の実際の位置および障害物の輪郭の実際の形状をより正確に導き出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する車両の周囲にある障害物の輪郭を、好ましくは車両の側方領域に設けられたセンサ手段によって、検出するための方法およびコンピュータプログラムに関する。更に、本発明は、この方法を実施するためのコンピュータプログラムおよび駐車用隙間認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術から、特にDE 101 46 712 A1から、自動車両用の隙間駐車補助手段が公知である。この隙間駐車補助手段は、ビーム形状の異なった2つのセンサ信号を発し、共に、クロス・ローブを有する指向特性を生じさせる2つのスペースセンサを有する。これらのセンサ手段が自動車両の側方領域に設けられていることは好ましい。クロス・ローブの構造では、これらのセンサのうちの1が、水平方向では、幅の広いビーム・ローブを有し、垂直方向では、幅の狭いビーム・ローブを有する。従って、車両が障害物の傍を通過する間、少なくとも以下の工程が実行される。
【0003】
障害物が車両に対し走行方向に前方にあるとき、第1のセンサ信号を、センサ手段によって、車両の走行方向にある方向成分を有する方向に送信すること、
第1のセンサ信号の少なくとも一部分を、障害物での反射後に、障害物の第1の位置と、障害物の輪郭の第1の形状とを表わす第1の反射信号の形で受信すること、
車両が既に障害物の傍を通過した後に、第2のセンサ信号を、センサ手段によって、車両の走行方向と反対側にある方向成分を有する方向に送信すること、
第2のセンサ信号の少なくとも一部分を、障害物での反射の後に、障害物の第2の位置と、障害物の輪郭の第2の形状とを表わす第2の反射信号の形で受信すること、および/または、
通過する車両が障害物の高さにあるとき、第3のセンサ信号を、センサ手段によって、走行方向に対し実質的に直角の方向に送信すること、および
第3のセンサ信号の少なくとも一部分を、障害物での反射の後に、障害物の第3の位置と、障害物の輪郭の第3の形状とを表わす第3の反射信号の形で受信すること。
【0004】
DE 101 46 712では、特に、車両が障害物の傍を通過する際に受信される、2つのセンサ手段の反射信号の、その増幅が評価される。この場合、反射信号の評価は、障害物の位置と、障害物の輪郭の形状とを推論する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この従来の技術を前提として、本発明の課題は、走行する車両の周囲にある障害物の輪郭を検出するための知られた方法およびコンピュータプログラムならびに知られた駐車用隙間認識装置を、障害物の位置および/または障害物の輪郭の形状がより正確に認識されることができるように、改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、請求項1に請求された方法によって解決される。より正確に言えば、明細書導入部に記載の方法のための解決策は、以下の特徴的な工程でなされる。すなわち、複数の反射信号の少なくとも2を数学的に、好ましくは算術的に平均化することによって、および平均化された反射信号を、障害物の実際の位置および/または障害物の輪郭の実際の形状に関して評価することによって、平均化された反射信号を発生させること。
【0007】
各々の反射信号自体は、障害物の位置および障害物の輪郭の形状に関する粗い基準値を既に供給する。しかし、個々の反射信号が供給する、位置および形状に関する情報は、実際の位置および実際の形状に関する粗い開始点のみである。これらの情報は、通常は、これらの位置および形状と正確に一致しない。これに対し、複数の反射信号の少なくとも2の、請求された数学的な平均化は、障害物の実際の位置および障害物の輪郭の実際の形状に関して、好都合にも著しく改善された正確度を有する情報を既に供給する。少なくとも2つの平均化される反射信号の選択は、基本的には任意である。しかし、平均化の際にいずれにせよ第3の反射信号を考慮することは望ましい。何故ならば、この反射信号は、自ずから、障害物の実際の位置および障害物の輪郭の実際の形状に関するかなり正確な逆推理を可能にするからである。
【0008】
他の精密化は、数学的に平均化される反射信号の適切な重み付けによって、達成されることができる。
【0009】
第1のおよび第2の、場合によっては第3のセンサ信号は、基本的には、同一の面にある。このとき、請求された方法によって、この面と交わる障害物のみが検出される。垂直方向に可能な限り変化した、障害物の、輪郭の形状を検出するために、検出面が、仮定の垂直面に対する検出面の角度に関して、車両の走行方向におよび車両が移動する路面に対して垂直方向に傾斜されることができることは、好都合である。
【0010】
本発明に係わる方法が、レーダ信号、超音波信号またはレーザ光信号のために適切であることは、好都合である。
【0011】
方法の他の好都合な実施の形態は、従属請求項の主題である。
【0012】
更に、方法の上記課題は、請求された方法を実施するためのコンピュータプログラムおよび駐車用隙間認識装置によって、解決される。これらの解決策の利点は、請求された方法に関して上述した利点に対応する。
【0013】
明細書には、都合8つの図面が添付されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、前記図面を参照して種々の実施の形態に基づいて本発明を詳述する。
【0015】
図1は本発明を実施するための出発状態を示す。この出発状態は、障害物300の、特に駐車中の車両の傍での車両200の走行方向Fでの通過である。通過する車両200の側方領域には、駐車用隙間認識装置(Parklueckenerkennungs- vorrichtung)が設けられている。駐車用隙間認識装置は、センサ信号を送信しかつ反射信号を受信するセンサ手段110と、反射信号を評価する評価手段120とを有する。
【0016】
本発明では、この駐車用隙間認識装置は以下のように機能する。すなわち、特に、障害物300が車両200の走行方向Fに対して前方にある間は、少なくとも1つの第1のセンサ信号は、センサ手段110によって、車両の走行方向Fにある方向成分をもって、障害物300に向かって送信される。以下、この第1のセンサ信号の少なくとも1部分は、障害物300におけるセンサ信号の反射後に、第1の反射信号の形で、同様にセンサ手段110によって受信される。第1のセンサ信号は、障害物300の第1の位置x1と、実際の障害物300の輪郭の第1の形状V1とを表わす。
【0017】
車両が、既に、障害物の傍を通過したときに、センサ手段110は第2のセンサ信号を障害物300の方向に、次に、車両200の走行方向と反対方向にある方向成分をもって送信する。このとき、この第2のセンサ信号の少なくとも1部分は、障害物300における第2のセンサ信号の反射後に、第2の反射信号の形で同様にセンサ手段110によって受信される。この場合、第2の反射信号R2は、障害物300の第2の位置x2と、障害物300の輪郭の第2の形状V2とを表わす。2つの反射信号によって表わされる2つの位置x1およびx2と、2つの輪郭の形状V1およびV2とは、別々に見ると、実際の状況を不十分にしか表わさないので、本発明では、位置および輪郭の形状は、数学的に、好ましくは算術的に平均化される。
【0018】
かくして得られた、平均化された反射信号Rは、障害物300の実際の位置xおよび障害物300の輪郭の実際の形状Vを、第1のまたは第2の反射信号のみから得られた数値よりも著しく正確に表わす。このことは、図2bに明示されている。そこでは、黒い破線は、平均化された反射信号Rによって表わされる輪郭の形状を示し、黒い実線は、障害物300の実際の位置および障害物300の輪郭の実際の形状を示す。
【0019】
障害物の実際の位置xおよび実際の輪郭の形状Vに関する他の著しい改善は、第1のおよび第2の反射信号の他に、第3の反射信号R3も平均化されることによって、達成されることができる。第3の反射信号は、車両が障害物300の高さにあるとき、第3のセンサ信号が、センサ手段110によって、走行方向Fに対し実質的に直角な方向に、障害物300に向かって送信されることを前提とする。このとき、第3の反射信号R3は、障害物300におけるこの第3のセンサ信号の反射後の、第3のセンサ信号の少なくとも一部分を表わす。第3の反射信号R3は、第1のおよび第3の反射信号よりも高い重み付け係数で、平均化されることは好ましい。何故ならば、第3の反射信号は、本発明に基づき、第1のおよび第2のセンサ信号に比較して、障害物300の位置および輪郭の形状に関するより現実的な情報を表わすからである。第1のおよび第2の反射信号が、同一の重み付けによって、平均化されることは好ましい。
【0020】
上述のように、本発明の前提は、障害物が車両200に対して走行方向前方にあるとき、ならびに車両200が既に障害物の傍を通り過ぎたとき、障害物300がセンサ手段110の検出領域に位置していることである。従って、第1のおよび第2のおよび好ましくは第3のセンサ信号および反射信号は、図1に示されているように、実質的に同一面に位置していると見なされる。
【0021】
図3aには、この面の種々の角度位置が側面で示されている。そこに示されたすべての可能な角度面E−1...E−Nの互いの位置は、仮定の垂直な面Evに対する種々の角度α−1...α−Nの点で異なっている。この仮定の垂直な面は、車両200の走行方向におよび車両が移動する路面250に直角方向に規定されている。駐車用隙間認識装置が、センサ信号を、これらの面E−1...E−Nのうちの1にのみ送信するように、形成されるとき、本発明に係わる方法によって、各々の面と交わるこのような障害物300のみが、常に検出される。図3aには、障害物300は、例えば面E−4およびE−5と交わる。これと異なり、図3bに示した、高さの低い障害物300´は、面E−4におけるセンサ手段の整列の際には最早検出されないであろうが、しかし、面E−5での整列の際には検出されるだろう。
【0022】
高さの異なる障害物300をも正確に検出することができるために、センサ手段110が、センサ信号を1つの面のみならず、複数の面E−1...E−Nで送信するように形成されることは好都合である。このことは、時間的にずれてまたは同時になされることができる。図4の(a)に示す段つきの障害物300´´の傍の、車両200の、走行方向Fでの通過の際には、3次元で放射するセンサ手段110を用いて、輪郭の各々の位置を有する障害物300´´の、その段つきの、輪郭の形状を検出することが可能である。本発明に係わる方法の利用の際に、次に、段つきの障害物300´´の、各々の側面310´´,320´´および330´´に関して、夫々複数の反射信号、特に第1の、第2のおよび第3の反射信号が受信され、続いて、本発明に係わる方法により平均化される。平均化された反射信号R310´´,R320´´,330´´は、段つきの障害物300´´の側面の、実際の位置x11ないしx17を、既に、十分な近似で表わす。平均化された反射信号の、図4の(b)に示した形状は、各々の異なった面E−1...E−Nでの第1の、第2のおよび/または第3のセンサ信号の放射の際に、生じる。図4の(b)に従って評価された面がその位置の点で異なる差である角度情報α−1..α−Nを評価することによって、間隔x11...x17に追加して、段つきの障害物300´´の輪郭をも垂直方向に再構成することが可能である。かくして、特に、障害物300´´の高さh1...h6が再構成されることができる。
【0023】
本発明に係わる方法を実施するためのセンサ手段110は、少なくとも、センサ信号を複数の面E−1...E−Nのうちの1で送信するために、形成されていなければならない。更に、センサ手段が、角度α−1..α−Nによって表わされる第3の次元でも、センサ信号を送信することができることは好都合である。このためには、センサ手段が、マルチビームシステムとしてまたはスキャナシステムとして形成されていることは好ましい。
【0024】
本発明に係わる方法が、コンピュータプログラムの形で表わされることは好ましい。この場合、コンピュータプログラムは、場合によっては他のコンピュータプログラムと共に、駐車用隙間認識装置のために、コンピュータにより読み取り可能なデータ媒体で記憶される。データ媒体は、フロッピディスク、コンパクトディスク、いわゆるフラッシュメモリ等である。データ媒体で記憶されたコンピュータプログラムは、製品として、顧客に送られかつ販売される。物理的なデータ媒体なしにも、コンピュータプログラムは、例えば、通信ネットワーク、特にインターネットを介して、顧客に送られかつ販売されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】水平方向の放射特性を有しかつ走行する車両に組み込まれたセンサ手段の、その検出領域にある障害物を示す。
【図2a】種々の反射信号から算出される、障害物の輪郭の形状、その形状に関する種々の例を示す。
【図2b】本発明に基づいて平均化された反射信号を評価することによって発生された、障害物の形状と比較した、障害物の実際の輪郭の形状を示す。
【図3a】種々の面で信号を放射するセンサ手段を有する、第1の障害物の傍を通過する車両を示す。
【図3b】種々の面で信号を放射するセンサ手段を有する、第2の障害物の傍を通過する車両を示す。
【図4】(a)は、垂直方向に段状の障害物の傍の、車両の通過を示し、(b)は、(a)に示した障害物の傍の通過の際に生じる、平均化された反射信号を示し、(c)は、(a)に示した、垂直方向に階段状の、障害物の輪郭の形状の再構成を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは車両の側方領域に組み込まれているセンサ手段(110)によって、走行する車両(200)の周囲にある障害物(300)の輪郭を検出する方法であって、以下の工程、すなわち、
a1)前記障害物が前記車両に対し走行方向(F)に対して前方にあるとき、第1のセンサ信号を、前記センサ手段(110)によって、前記車両(200)の走行方向にある方向成分を有する方向に送信すること、
a2)前記第1のセンサ信号の少なくとも一部分を、前記障害物(300)での反射後に、前記障害物の第1の位置(x1)と、前記障害物の輪郭の第1の形状(V1)とを表わす第1の反射信号の形で受信すること、
b1)前記車両が既に前記障害物(300)の傍を通過した後に、第2のセンサ信号を、前記センサ手段(110)によって、前記車両(200)の走行方向(F)と反対側にある方向成分を有する方向に送信すること、
b2)前記第2のセンサ信号の少なくとも一部分を、前記障害物(300)での反射の後に、前記障害物(300)の第2の位置(x2)と、前記障害物(300)の輪郭の第2の形状(V2)とを表わす第2の反射信号の形で受信することおよび/または、
c1)前記通過する車両(200)が前記障害物(300)の高さにあるとき、第3のセンサ信号を、前記センサ手段(110)によって、走行方向に対し実質的に直角の方向に送信すること、
c2)前記第3のセンサ信号の少なくとも一部分を、前記障害物(300)での反射の後に、前記障害物(300)の第3の位置と、前記障害物(300)の輪郭の第3の形状とを表わす第3の反射信号の形で受信すること、
を有する方法において、
d)前記複数の反射信号の少なくとも2を数学的に、好ましくは算術的に平均化することによって、平均化された反射信号を発生させること、および
e)前記平均化された反射信号を、前記障害物(300)の前記実際の位置(x)および/または前記障害物(300)の輪郭の前記実際の形状(V)に関して評価することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の、第2のおよび/または第3の反射信号は、個々の重み付け係数をもって、方法工程d)に基づく平均化の際に、考慮され、前記第3の反射信号は、好ましくは数値的に同一に重み付けされる前記第1のおよび第2の反射信号よりも、好ましくは強く重み付けされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の、第2のおよび第3の反射信号は、実質的に同一の面(E−1...E−N)にあることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
垂直な面(Ev)に対する前記面(E−1...E−N)の種々の角度位置(α−1...α−N)のための方法が、車両の長手方向で繰り返されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の、第2のおよび第3のセンサ信号を、好ましくは同時に送信することを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項6】
前記センサ信号はレーダ信号、超音波信号またはレーザ光信号であることを特徴とする前記すべての請求項のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
特に駐車用隙間認識装置のためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムにおいて、このコンピュータプログラムは、請求項1ないし6のいずれか1に記載の方法を実施するために形成されていることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
車両(200)の周囲にある障害物(300)の輪郭を前記車両の走行中に検出するための、前記車両(200)用の駐車用隙間認識装置であって、駐車用隙間認識装置は、センサ信号を送信しかつ反射信号を受信するためのセンサ手段(110)と、前記障害物(300)の実際の位置および/または前記障害物(300)の補正の実際の形状に関して前記反射信号を評価するための評価手段(120)とを具備し、前記センサ手段(110)および前記評価手段(120)は、請求項1ないし6のいずれか1に請求された方法を実施するために、形成されている。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−505298(P2007−505298A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525639(P2006−525639)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007507
【国際公開番号】WO2005/033736
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(303049337)バレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー (18)
【Fターム(参考)】