説明

車両の後部車体構造

【課題】車両に対して車体前方への外力が作用したとき、車体部材の変形による燃料ホースの損傷を防止できる車両の後部車体構造を提供する。
【解決手段】リヤフロアパネル1の下方位置に設置された燃料タンク2と、この燃料タンク2から所定間隔離隔した車体後側位置に形成されたスペアタイヤパン3と、このスペアタイヤパン3の外側に設けられ車体後方に延びるブリーザ配管31と、このブリーザ配管31の下流端と嵌合接続されたブリーザホース32を備え、ブリーザ配管31の湾曲配管部31c下流端は燃料タンク2とスペアタイヤパン3との間の空間部Sにおいて車幅方向に向くように形成され、ブリーザホース32は車幅方向内側程車体前方へ移行する湾曲部32aを備え、空間部Sにおいて湾曲部32aの少なくとも車体後方に設けられ且つ車幅方向内側程車体前方へ移行するガイド部42を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料配管の下流端と嵌合接続された可撓性燃料ホースを備えた車両の後部車体構造に関し、特に燃料ホースの車体後方への移動を規制するガイド部材を備えた車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後部車体構造には、フロアパネルの後方位置において後方上り傾斜状に段上げされたキックアップ部と、フロアパネルの下方且つキックアップ部の車幅方向中間位置に設置された燃料タンクと、燃料タンクから所定間隔離隔した車体前後方向後側位置においてフロアパネルを下方に凹入して形成されたスペアタイヤパンが設けられている。
燃料タンクは、平面視にて前後1対のクロスメンバ間に配置され、タンクバンドを介して車体側、例えば前記前後1対のクロスメンバに吊り下げ支持されている。
【0003】
燃料タンクには、燃料を注入するためのインレットパイプと、燃料注入時の吹き返しを防止するためのブリーザパイプが夫々接続されている。インレットパイプは、左右一方側のリヤピラーの上下方向中段部に形成された給油口から燃料タンクとスペアタイヤパンとの間の燃料タンク近傍位置まで延びた金属製インレット配管と、インレット配管の下流端に嵌合接続され燃料タンクの後側壁部に接続される可撓性インレットホースにより形成されている。インレットパイプよりも小径のブリーザパイプは、インレットパイプの給油口近傍位置からインレットパイプとスペアタイヤパンとの間の燃料タンク近傍位置まで延びた金属製ブリーザ配管と、ブリーザ配管の下流端に嵌合接続され燃料タンクの後側壁部に接続される可撓性ブリーザホースにより形成されている。可撓性のインレットホースとブリーザホースを用いているため、車体に対して燃料タンクが相対移動したとき、燃料タンクの変位量を吸収できると共に燃料タンクの着脱容易性を確保しメインテナンス性を向上している。
【0004】
特許文献1に記載された燃料パイプの保護構造は、シャシフレームの側面にタンクバンドを介して固定された燃料タンクと、シャシフレームの側面に突出して2本配設された燃料パイプと、燃料タンクと燃料パイプとの間に設けられたプロテクタを備え、このプロテクタは、シャシフレームに固定された基端部と、基端部から折り曲げ形成された画成板部と、画成板部の左右両側から折り曲げ形成されたフランジ板部により形成されている。この燃料パイプの保護構造では、車両に対して外力が作用し、燃料タンクが車体に対して燃料パイプ側へ相対移動したとき、プロテクタがシャシフレームに当接して燃料タンクと燃料パイプとの間に空間部を形成し、燃料パイプの潰れを防止できる。
【0005】
特許文献2に記載された流路配管保護構造は、燃料タンクに接続されたタンク側インレット配管と、車両側面の給油口に接続された給油口側インレット配管と、タンク側インレット配管と給油口側インレット配管とを接続する塑性変形自在なホースとを備え、給油口側インレット配管が挿入されたホースの側方位置に車体側から突出するように形成されたピンを設けている。この流路配管保護構造では、車体前方への外力が作用したとき、ピンが給油口側インレット配管に当接し、車体前方への変形量を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−324842号公報
【特許文献2】特開2006−219062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両の後部車体構造では、車両に対して車体前方への外力が作用したとき、車体フレームを座屈、或いは圧縮変形させることにより、乗員へ作用する衝撃荷重を軽減するように構成している。それ故、車両に対して車体前方への外力が作用したとき、車体部材の変形によりリヤピラー等に形成された給油口が車体前方に移動し、これに伴い燃料配管(インレット配管とブリーザ配管)が車体前方に移動する。一方、この外力の作用と同期して、燃料タンクに外力に起因した慣性力が作用するため、燃料タンクが車体後方に移動し、燃料ホース(インレットホースとブリーザホース)が車体後方に移動する。
【0008】
即ち、車両に対して車体前方への外力が作用したとき、燃料ホースによる車体後方への移動と車体の変形、特にスペアタイヤパン等の車体部材の変形が同時に生じるため、車体後方へ移動した燃料ホースが変形したスペアタイヤパン等の車体部材に挟まり、燃料ホース、特にインレットホースよりも小径で強度の低いブリーザホースが損傷する虞がある。また、外力作用後、慣性力により車体後方へ移動した燃料タンクは、タンクバンドにより引張荷重が作用するため、燃料ホースが車体部材に挟み込まれた状態のまま車体前方へ振り戻しを生じ、燃料ホースと燃料配管との嵌合接続が外れる虞もある。
【0009】
特許文献1に記載された燃料パイプの保護構造は、シャシフレームの側面に燃料タンクを配置したトラック等のラダーフレーム式車両において、燃料タンクの移動に伴う燃料ホース(燃料パイプ)等の挟み込みを防止することができる。しかし、特許文献1の保護構造を、通常のモノコックフレーム式車両に適用した場合、プロテクタが当接する車体部材自体が変形するため、車体部材による燃料ホースの挟み込みを防止することは難しい。また、燃料ホースが車体部材に挟み込まれた状態で燃料タンクが車体前方へ振り戻しを生じたとき、燃料ホースと燃料配管との接続外れを防止することは困難である。
【0010】
特許文献2に記載された流路配管保護構造は、車両に対して車体前方への外力が作用したとき、燃料配管(給油口側インレット配管)の車体前方への変形量を抑制することができる。しかし、燃料タンクの移動に伴い燃料ホース(タンク側インレット配管)が車体後方へ移動するため、車体部材の変形による燃料ホースの挟み込みを防止することは難しく、燃料ホースが挟み込まれた状態で燃料タンクが車体前方へ振り戻しを生じたとき、燃料ホースと燃料配管との接続外れを防止できない。
【0011】
本発明の目的は、車両に対して車体前方への外力が作用したとき、車体部材の変形による燃料ホースの損傷を防止でき、外力作用後、燃料タンクが振り戻しを生じたとき、燃料ホースの接続外れを防止できる車両の後部車体構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の車両の後部車体構造は、フロアパネルの下方位置に設置された燃料タンクと、この燃料タンクから所定間隔離隔した車体前後方向後側位置において前記フロアパネルを下方へ凹入して形成された凹入部と、この凹入部の外側に設けられ車体後方に延びる燃料配管と、この燃料配管を前記燃料タンクに接続するための燃料配管の下流端と嵌合接続された可撓性燃料ホースを備えた車両の後部車体構造において、前記燃料配管の下流端は前記燃料タンクと凹入部との間において車幅方向に向くように形成され、前記燃料ホースは車幅方向内側程車体前方へ移行する湾曲部を備え、前記燃料ホースと凹入部との間において前記湾曲部の少なくとも車体後方に設けられ且つ車幅方向内側程車体前方へ移行するガイド部材が設けられたことを特徴としている。
【0013】
この車両の後部車体構造では、ガイド部材が燃料ホースの湾曲部の少なくとも車体後方に設けられているため、車両に対して車体前方への外力が作用したとき、慣性力により燃料タンクが車体後方に移動しても、燃料ホースが車体後方に移動することを阻止でき、燃料ホースが変形したスペアタイヤパン等に挟み込まれることを防止できる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ガイド部材の前端部は前記湾曲部の前端部よりも所定間隔車体後方に形成されたことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記ガイド部材は前記湾曲部に沿うように車幅方向内側程車体前方へ湾曲形成されたことを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記燃料ホースは前記ガイド部材に対して車体前後方向に移動可能に形成されたことを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記ガイド部材は前記湾曲部の車体後方のみに設けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、車両に対して車体前方への外力が作用したとき、慣性力により燃料タンクが車体後方に移動しても、燃料ホースが車体後方に移動することを阻止でき、燃料ホースが変形したスペアタイヤパン等に挟み込まれることを防止できるため、燃料ホースの損傷を防止することができる。また、燃料ホースがスペアタイヤパン等に挟み込まれることを防止できるため、外力作用後、燃料タンクが振り戻しを生じたとき、燃料ホースと燃料配管及び燃料ホースと燃料タンクの接続外れを防止できる。しかも、燃料配管の下流端は燃料タンクと凹入部との間において車幅方向に向くように形成され、ガイド部材が車幅方向内側程車体前方へ移行するように形成されるため、燃料タンクの慣性力を燃料ホースと燃料配管との嵌合方向に作用させることができ、接続外れを確実に防止できる。
【0017】
請求項2の発明によれば、慣性力による燃料タンクの車体後方への移動が大きなとき、湾曲部の前端部分を凹入部の変形領域よりも車体前方位置に相当するガイド部材の前端部と燃料タンクとの間に膨出させることができるため、燃料ホースがスペアタイヤパン等に挟み込まれることを確実に防止できる。
請求項3の発明によれば、ガイド部材により燃料ホースの湾曲部を車幅方向に向くよう能率良く変形でき、湾曲部を略S字状に変形させることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、慣性力による燃料タンクの車体前後方向への移動が小さなとき、燃料ホースの車体前後方向への移動を阻害することなく、接続外れを防止できる。
請求項5の発明によれば、車両に対して車体後方への外力が作用したとき、慣性力により燃料タンクが車体前方に移動しても、燃料ホースの前側にガイド部材が存在しないため、燃料ホースの車体前方への移動を阻害することなく、また、燃料タンクと燃料ホースとの接続部分に引張応力を生じることなく接続外れを防止できる。しかも、ガイド部材を小型化できるため、製造コストを安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る車両の後部車体構造の斜視図である。
【図2】後部車体構造を下方から視た図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】ガイド部材の斜視図である。
【図5】車両に対して車体前方への外力が作用したときの図3の要部相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。尚、車両の前後方向を前後方向とし、車両の給油口が設置される左右一方側を右側として説明する。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の実施例1について図1〜図4に基づいて説明する。
本実施例の車両の後部車体構造には、リヤフロアパネル1(フロアパネル)と、燃料タンク2と、スペアタイヤパン3(凹入部)と、インレットパイプ20と、ブリーザパイプ30と、ガイド部材40等が設けられている。
【0022】
図1〜図3に示すように、リヤフロアパネル1は、フロントフロアパネル(図示略)の後端に連なり左右1対のリヤサイドフレーム4の間に車幅方向に亙って掛け渡されることにより後部車室の底壁を形成している。リヤフロアパネル1は、金属製板材により形成され、キックアップ部5と、スペアタイヤパン3等を備えている。キックアップ部5は、リヤフロアパネル1の前側部分に後方上り傾斜状に段上げ形成され、キックアップ部5の上方にはリヤシート(図示略)が設置されている。スペアタイヤパン3は、キックアップ部5の後側に設けられ、リヤフロアパネル1を下方へ凹入して形成されている。
【0023】
図1,図2に示すように、左右1対のリヤサイドフレーム4は、前後方向に延びる閉断面状に形成されている。左右1対のリヤサイドフレーム4の前端は、夫々、左右1対のサイドシル6の後端に連結されている。リヤサイドフレーム4とサイドシル6とサイドシル6に連なるフロントサイドフレーム(図示略)は、車体の略全長に亙って前後方向に延びるように形成されている。左右1対のサイドシル6は、夫々、左右1対のリヤサイドフレーム4よりも車幅方向外側に設けられ、前後方向に延びる閉断面状に形成されている。左右1対のサイドシル6の上部には、夫々、上下方向に延びる閉断面状のフロントピラー、センタピラー、リヤピラー(図示略)の下部が溶接により連結されている。
【0024】
図2,図3に示すように、キックアップ部5の前側位置において左右1対のリヤサイドフレーム4と左右1対のサイドシル6の連結部分には、左右1対のサイドシル6の間に亙って車幅方向に連結するクロスメンバ7(No.3クロスメンバ)が設置されている。クロスメンバ7は、リヤフロアパネル1の裏面に固着され、リヤフロアパネル1の前側部分と協働して車幅方向へ延びる矩形状の閉断面部を形成している。クロスメンバ7には、車幅方向中間且つ下側位置にブラケット10が固着されている。
【0025】
図1〜図3に示すように、キックアップ部5の後側且つ上方位置において、左右1対のリヤサイドフレーム4の間に亙って車幅方向に連結するクロスメンバ8(No.4クロスメンバ)が設置されている。クロスメンバ8は、リヤフロアパネル1の裏面に固着され、リヤフロアパネル1の前後方向中間部分と協働して車幅方向へ延びる矩形状の閉断面部を形成している。クロスメンバ8の車幅方向左右外側且つ下側部分には、夫々、フランジ部11a,11bが形成されている。クロスメンバ8の車体後方には、クロスメンバ8とスペアタイヤパン3を連結する補強メンバ9が設置されている。補強メンバ9は、リヤフロアパネル1の裏面とクロスメンバ8の後側壁部とスペアタイヤパン3の前部と協働して車幅方向へ延びる矩形状の閉断面部を形成している。
【0026】
図2,図3に示すように、燃料タンク2は、キックアップ部5の下方位置で、且つ平面視にてクロスメンバ7,8と左右1対のリヤサイドフレーム4とによって囲まれた空間内に配設されている。燃料タンク2は、例えば合成樹脂により上下2分割形成され、上面側部分と下面側部分との接合フランジ2aを重ね合せ接合することにより側面視にて略扁平状に形成している。燃料タンク2の上面2cは、前後方向全長に亙って略平坦状に形成され、クロスメンバ8の下面よりも低い高さ位置に設置されている。燃料タンク2の接合フランジ2aは、クロスメンバ7と略同じ高さ位置に設置され、接合フランジ2aの前端部は、クロスメンバ7の後側近傍位置に配置されている。燃料タンク2の下面2dは、前後方向全長に亙って略平坦状に形成され、フロントフロアパネルと略同じ高さ位置に設定されている。この燃料タンク2の下面2dは、例えばアルミニウム製のインシュレータにより覆われている。
【0027】
図1〜図3に示すように、燃料タンク2は、燃料ポンプ12と、左右2本のタンクバンド13a,13b等を備えている。燃料ポンプ12は、平面視にて燃料タンク2の上面側部分の略中央部分に取り付けられている。左右2本のタンクバンド13a,13bは、例えば金属により形成され、帯状に形成されている。
【0028】
タンクバンド13aは、一端がブラケット10にボルト14cを介して固着され、他端が左側フランジ部11aにボルト14aを介して固着されることにより、ブラケット10と左側フランジ部11aとの間に亙って張設されている。タンクバンド13bは、一端がブラケット10にボルト14cを介して固着され、他端が右側フランジ部11bにボルト14bを介して固着されることにより、ブラケット10と右側フランジ部11bとの間に亙って張設されている。これにより、燃料タンク2は、タンクバンド13a,13bによりクロスメンバ7,8の間に車体に対して吊り下げ支持されている。
【0029】
図1〜図3に示すように、リヤフロアパネル1のクロスメンバ8より後側には、スペアタイヤを収容するためのスペアタイヤパン3が設けられている。スペアタイヤパン3は、車幅方向右側寄り位置においてリヤフロアパネル1を下方へ部分球面状に凹入して形成されている。スペアタイヤパン3の下面3aは、クロスメンバ7と略同じ高さ位置に設置され、燃料タンク2の上面2cよりも低い高さ位置に設置されている。スペアタイヤパン3の前端部3bは、燃料タンク2の後側壁部2bから所定間隔離隔した位置に配置されている。それ故、スペアタイヤパン3の前端部3bと燃料タンク2の後側壁部2bとの間には空間部Sが形成されている。
【0030】
インレットパイプ20は、右側リヤピラーの上下方向中段部に形成された給油口15から燃料を燃料タンク2の内部へ注入する配管径路であり、インレット配管21と、インレットホース22と、クリップ23等を備えている。
【0031】
図1,図2に示すように、インレット配管21は、例えば金属により形成され、鉛直配管部21aと、傾斜配管部21bと、湾曲配管部21cから構成されている。
鉛直配管部21aは、上流端が給油口15に接続され、リヤピラー内部に沿ってサイドシル6の近傍位置まで鉛直下方へ延びるように形成されている。傾斜配管部21bは、上流端が鉛直配管部21aの下流端に連なり、平面視にてスペアタイヤパン3の前端部3bに対応する前後方向位置まで車幅方向内側程車体前方へ移行するように形成されている。湾曲配管部21cは、上流端が傾斜配管部21bの下流端に連なり、空間部Sまでスペアタイヤパン3の外形に沿うように湾曲形成されている。湾曲配管部21cの下流端は、空間部Sにおいてスペアタイヤパン3の前端部3bと燃料タンク2の後側壁部2bとの略中間位置に配置され、その開口が左側のリヤサイドフレーム4に向くように形成されている。
【0032】
図1〜図3に示すように、インレットホース22は、例えば合成ゴムにより形成され、その外周を可撓性のインシュレータにより被覆されている。インレットホース22は、平面視にて上流端から下流端に亙って車幅方向内側程車体前方へ移行する湾曲部22aを備えている。インレットホース22の下流端は、燃料タンク2の後側壁部2bの車幅方向略中央位置且つ上側位置において後側壁部2bへ連結されている。インレットホース22の上流端は、インレット配管21の湾曲配管部21cの下流端に外嵌接続され、その接続部分はクリップ23により湾曲配管部21cと締結されている。
【0033】
図1,図2に示すように、ブリーザパイプ30は、燃料を注入する際の吹き返しを防止するため燃料タンク2内のベーパを外部へ排出する配管径路であり、ブリーザ配管31(燃料配管)と、ブリーザホース32(燃料ホース)と、クリップ33等を備えている。
【0034】
ブリーザ配管31は、例えば金属により形成され、鉛直配管部31aと、傾斜配管部31bと、湾曲配管部31cから構成されている。
鉛直配管部31aは、上流端が鉛直配管部21aの後側上方位置に接続され、リヤピラー内部に沿ってサイドシル6の近傍位置まで鉛直配管部21aに沿って鉛直配管部21aの後方を鉛直下方へ延びるように形成されている。傾斜配管部31bは、上流端が鉛直配管部31aの下流端に連なり、平面視にてスペアタイヤパン3の前端部3bに対応する前後方向位置まで傾斜配管部21bの後方を車幅方向内側程車体前方へ移行するように形成されている。湾曲配管部31cは、上流端が傾斜配管部31bの下流端に連なり、湾曲配管部21cの後方を空間部Sまでスペアタイヤパン3の外形に沿うように湾曲形成されている。湾曲配管部31cの下流端は、空間部Sにおいて湾曲配管部21cの下流端と燃料タンク2の後側壁部2bとの略中間位置に配置され、その開口が左側のリヤサイドフレーム4に向くように形成されている。
【0035】
図1〜図3に示すように、ブリーザホース32は、例えば合成ゴムにより形成され、その中間部外周を可撓性のインシュレータ34により被覆されている。ブリーザホース32は、平面視にてインレットホース22に沿ってインレットホース22の所定間隔後方を上流端から下流端に亙って車幅方向内側程車体前方へ移行する湾曲部32a(湾曲部)を備えている。ブリーザホース32の下流端は、燃料タンク2の後側壁部2bの車幅方向略中央位置且つ上側位置においてインレットホース22の下流端の左側に隣接するように後側壁部2bへ連結されている。ブリーザホース32の上流端は、インレットホース22の上流端の後方位置においてブリーザ配管31の湾曲配管部31cの下流端に外嵌接続され、その接続部分はクリップ33により湾曲配管部31cと締結されている。
【0036】
湾曲配管部21cと湾曲配管部31cは、ブラケット16によりクロスメンバ8の下面に固定されている。ブラケット16は、上部材と下部材の2つの部材により形成され、これら上下部材が湾曲配管部21cと湾曲配管部31cとを挟み込んだ状態で固定される。
ブラケット16は、右側端部が固定ボルト17によりクロスメンバ8に締結固定されている。これにより、車体側変形に影響を受けることなく、湾曲配管部21cと湾曲配管部31cとの前後方向距離を一定間隔に維持することができる。
【0037】
図1〜図3に示すように、ガイド部材40は、ブリーザホース32とスペアタイヤパン3との間の空間部Sにおいて湾曲部32aの後方位置に設けられている。図4に示すように、ガイド部材40は、例えば合成樹脂により形成され、上壁部41と、ガイド部42等が一体的に形成されている。上壁部41は、部分円環状に形成され、2つのクリップ部43と、1つの固定部44を有している。各クリップ部43は、ガイド部材40の車体への取付け状態において上方へ突出するように形成され、図3に示すように、クロスメンバ8の下壁に車幅方向に隣り合うよう設けられた取付穴8aに対して嵌合可能に形成されている。固定部44は、ボルト(図示略)が挿通可能に形成され、このボルトによりクロスメンバ9の下壁に対して固定部44を締結可能に形成されている。
【0038】
図1〜図4に示すように、ガイド部42は、上壁部41の外周部分から上壁部41に直交するように屈曲形成されている。ガイド部42は、ガイド部材40の車体への取付け状態において上壁部41から湾曲部32aよりも低い高さ位置まで下方へ延びている。本実施例では、ガイド部42の下端は、湾曲部22a,32aの下端よりも低い高さ位置まで延びるよう構成している。それ故、湾曲部22a,32aとスペアタイヤパン3の前端部3bとの間にガイド部42を介在させることができ、湾曲部22a,32aが前端部3bと直接接触することを防止できる。
【0039】
図2,図3に示すように、ガイド部42は、ガイド部材40の車体への取付け状態において湾曲部32aから所定間隔後方へ離隔し且つ湾曲部32aに沿って車幅方向内側程車体前方へ移行するよう湾曲状に形成されている。ガイド部42の前端部42aは、各クリップ部43を結ぶ延長線上に形成されている。前端部42aは、ガイド部材40の車体への取付け状態において湾曲部32aよりも所定間隔車体後方に形成されている。それ故、前端部42aを燃料タンク2の後側壁部2bから所定間隔後方へ離隔して設置でき、燃料タンク2が車体後方へ大きく移動したとき、湾曲部32aをスペアタイヤパン3の変形領域よりも車体前方に相当する後側壁部2bと前端部42aとの隙間を介してS字状に変形させることができる。
【0040】
次に、本実施例に係る車両の後部車体構造の作用、効果について説明する。
この後部車体構造では、図5に示すように、ガイド部材40のガイド部42がブリーザホース32の湾曲部32aの少なくとも車体後方に設けられているため、車両に対して車体前方への外力が作用したとき、慣性力により燃料タンク2が車体後方に移動しても、ブリーザホース32が車体後方に移動することを阻止でき、ブリーザホース32が変形したスペアタイヤパン3等に挟み込まれることを防止でき、ブリーザホース32の損傷を防止することができる。また、ブリーザホース32がスペアタイヤパン3等に挟み込まれることを防止できるため、外力作用後、燃料タンク2が振り戻しを生じたとき、ブリーザホース32とブリーザ配管31及びブリーザホース32と燃料タンク2の接続外れを防止できる。しかも、湾曲配管部31cの下流端は燃料タンク2の後側壁部2bとスペアタイヤパン3の前端部3bとの間の空間部Sにおいて車幅方向に向くように形成され、ガイド部42が車幅方向内側程車体前方へ移行するように形成されているため、燃料タンク2の慣性力をブリーザホース32と湾曲配管部31cとの嵌合強化方向に作用させることができ、両者の嵌合接続外れを確実に防止できる。
【0041】
ガイド部42の前端部42aは湾曲部32aの前端部よりも所定間隔車体後方に形成されているため、慣性力による燃料タンク2の車体後方への移動が大きなとき、湾曲部32aの前端部分をスペアタイヤパン3の変形領域よりも車体前方に相当するガイド部42の前端部42aと燃料タンク2の後側壁部2bとの間の空間部Sに膨出させることができるため、ブリーザホース32がスペアタイヤパン3等に挟み込まれることを確実に防止できる。
【0042】
ガイド部42は湾曲部32aに沿うように車幅方向内側程車体前方へ湾曲形成されているため、ブリーザホース32の湾曲部32aを車幅方向に向くよう能率良く変形でき、湾曲部32aを略S字状に変形させることができる。
ブリーザホース32はガイド部材40のガイド部42に対して車体前後方向に所定間隔離隔して移動可能に形成されているため、慣性力による燃料タンク2の車体前後方向への移動が小さなとき、ガイド部材40がブリーザホース32の車体前後方向への移動を阻害することなく、接続外れを防止できる。
【0043】
ガイド部材40のガイド部42は湾曲部32aの車体後方のみに設けられているため、車両に対して車体後方への外力が作用したとき、慣性力により燃料タンク2が車体前方に移動しても、ブリーザホース32の前側にガイド部材40が存在しないため、ブリーザホース32の車体前方への移動を阻害することなく、また、燃料タンク2とブリーザホース32との接続部分に引張応力を生じることなく接続外れを防止できる。しかも、ガイド部材40を小型化できるため、製造コストを安価にできる。
【0044】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、給油口を車体右側のリヤピラーに設置した例を説明したが、少なくとも、インレット配管が車体部材に固定されるものであれば良く、給油口を車体左側のリヤピラーに設置しても良く、また、左右何れかのリヤフェンダに設置することも可能である。
【0045】
2〕前記実施例においては、インレットパイプの車体前後方向後方位置にブリーザパイプを配置した例を説明したが、ブリーザパイプの車体後方位置にインレットパイプを配置することも可能である。この場合、インレットホースが変形したスペアタイヤパン等に挟み込まれることを防止でき、インレットホースの損傷を防止することができる。
【0046】
3〕前記実施例においては、インレットホースとブリーザホースを合成ゴムにより形成した例を説明したが、少なくとも、車体に対して外力が作用したとき、燃料タンクの移動変位量を吸収できれば良く、燃料パイプとして可撓性を備えた材料であれば何れの材料を採用しても良い。また、インレットホースとブリーザホースとの上流側部分に湾曲部を備えた例を説明したが、インレットホースとブリーザホースの全体を湾曲部のみで形成することも可能である。
【0047】
4〕前記実施例においては、ガイド部材のガイド部を車幅方向内側程車体前方へ移行するよう湾曲状に形成し、車体後方のみに設置した例を説明したが、ブリーザホースの外周に対して所定距離離隔した状態で全周を覆うガイド部を適用可能であり、ブリーザホースの前方と後方位置にガイド部を形成することも可能である。また、ガイド部は湾曲状に限られず、直線部と屈曲部により形成することも可能である。
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、燃料配管の下流端と嵌合接続された可撓性燃料ホースを備えた車両の後部車体構造において、燃料ホースの車体後方への移動を規制するガイド部材を備えたことにより、車両に対して車体前方への外力が作用したとき、車体部材の変形による燃料ホースの損傷を防止でき、外力作用後、燃料タンクが振り戻しを生じたとき、燃料ホースの接続外れを防止することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 リヤフロアパネル
2 燃料タンク
2b 後側壁部
3 スペアタイヤパン
13a,13b タンクバンド
15 給油口
20 インレットパイプ
21 インレット配管
21a 鉛直配管部
21b 傾斜配管部
21c 湾曲配管部
22 インレットホース
22a 湾曲部
30 ブリーザパイプ
31 ブリーザ配管
31a 鉛直配管部
31b 傾斜配管部
31c 湾曲配管部
32 ブリーザホース
32a 湾曲部
40 ガイド部材
42 ガイド部





【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの下方位置に設置された燃料タンクと、この燃料タンクから所定間隔離隔した車体前後方向後側位置において前記フロアパネルを下方へ凹入して形成された凹入部と、この凹入部の外側に設けられ車体後方に延びる燃料配管と、この燃料配管を前記燃料タンクに接続するための燃料配管の下流端と嵌合接続された可撓性燃料ホースを備えた車両の後部車体構造において、
前記燃料配管の下流端は前記燃料タンクと凹入部との間において車幅方向に向くように形成され、
前記燃料ホースは車幅方向内側程車体前方へ移行する湾曲部を備え、
前記燃料ホースと凹入部との間において前記湾曲部の少なくとも車体後方に設けられ且つ車幅方向内側程車体前方へ移行するガイド部材が設けられたことを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項2】
前記ガイド部材の前端部は前記湾曲部の前端部よりも所定間隔車体後方に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
前記ガイド部材は前記湾曲部に沿うように車幅方向内側程車体前方へ湾曲形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
前記燃料ホースは前記ガイド部材に対して車体前後方向に移動可能に形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
前記ガイド部材は前記湾曲部の車体後方のみに設けられたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の車両の後部車体構造。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−144120(P2012−144120A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3134(P2011−3134)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】