説明

車両の操舵制御装置

【課題】荷物の積載状態に拘わらず、安定した制御性能を得ることが可能な車両の操舵制御装置の提供。
【解決手段】車両質量演算部41は、変位センサ36が検出した相対変位HFL,HFR,HRL,HRRを用いて車両の質量を算出する。ヨー慣性モーメント演算部43は、車両質量演算部41が算出した車両の質量からヨー慣性モーメントを算出する。状態フィードバックゲイン演算部44は、車両質量演算部41が算出した車両の質量と、ヨー慣性モーメント演算部43が算出したヨー慣性モーメントIとを用いて、目標操舵角を入力量とする操舵系の状態方程式を設定し、設定した状態方程式に対する評価関数を設定し、設定評価関数を最小とする状態フィードバックゲインを、LQ制御側に従って算出する。目標操舵角演算部45は、算出された状態フィードバックゲインKを用いて、車両を目標進路に従って走行させるための目標操舵角を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動操舵制御を実行する車両の操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010−23682号公報には、車両の操舵系の状態方程式を設定し、車線追従規則として評価関数を設定し、評価関数を最小化する最適なゲインを算出し、算出したゲインを用いて目標操舵角を算出する操舵制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−23682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の質量は、積荷の総重量に応じて変動する。特に、トラックなどの貨物車両の場合、積載状態に応じて、車両の質量や重心位置やヨー慣性モーメントが大きく変動する。
【0005】
しかし、上記特許文献1の装置では、車両の質量やヨー慣性モーメントを固定値として状態方程式を設定している。従って、これらの固定値と実際の値との間に大きな隔たりがある場合、車両のヨー方向のふらつきが大きくなり、制御性能や悪化や制御不能を招く恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、荷物の積載状態に拘わらず、安定した制御性能を得ることが可能な車両の操舵制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の車両の操舵制御装置は、車両質量検知手段と慣性モーメント推定手段とフィードバックゲイン算出手段と操舵制御手段とを備える。
【0008】
車両質量検知手段は、車両の質量を検知する。慣性モーメント推定手段は、車両質量検知手段が検知した車両の質量に基づいて、車両のヨー慣性モーメントを推定する。フィードバックゲイン算出手段は、車両質量検知手段が検知した車両の質量と、慣性モーメント推定手段が推定した車両のヨー慣性モーメントとを用いて、目標操舵角を入力量とする状態方程式を設定し、設定した状態方程式に対する評価関数を設定し、設定した評価関数を最小とする状態フィードバックゲインを算出する。操舵制御手段は、算出された状態フィードバックゲインに基づいて、車両の操舵を制御する。
【0009】
上記構成では、フィードバックゲイン算出手段は、車両質量検知手段が検知した車両の質量と、慣性モーメント推定手段が推定した車両のヨー慣性モーメントとを用いて、目標操舵角を入力量とする状態方程式を設定し、設定した状態方程式に対する評価関数を設定し、設定した評価関数を最小とする状態フィードバックゲインを算出する。すなわち、算出される状態フィードバックゲインは、車両の荷物の積載状態に応じた値となる。従って、荷物の積載状態に拘わらず、安定したフィードバック制御による操舵制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の操舵制御装置によれば、荷物の積載状態に拘わらず、安定した制御性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る操舵制御装置を備えた車両の模式図である。
【図2】図1の操舵制御装置のブロック図である。
【図3】図2のコントローラのブロック図である。
【図4】状態フードバックゲインによる制御を示すブロック図である。
【図5】輪重−変位マップの一例である。
【図6】状態フィードバックゲインの更新処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、ステアリングホイール2と、センサ部3と、コントローラ4と、駆動電流出力部5と、操舵アクチュエータ6とを備える。センサ部3と、コントローラ4と、駆動電流出力部5と、操舵アクチュエータ6とは、本実施形態の操舵制御装置を構成する。操舵制御装置は、LQ制御又はLQI制御により、車線を維持して車両1を走行させる自動操舵制御を実行する。
【0014】
ステアリングホイール2は、車両1の運転室内に設けられ、運転者が操舵入力を行う。
【0015】
図1〜図3に示すように、センサ部3は、カメラ31及び画像処理ユニット32と、ヨーレートセンサ33と、操舵角センサ34と、車速センサ35と、変位センサ36と、自動操舵スイッチ37を備える。
【0016】
カメラ31は、CCDカメラであり、車両1の進行方向の路面を撮像し、撮像した撮像信号を画像処理ユニット32へ出力する。本実施形態では、車両1の進行路の両側に形成された白線の間の目標進路を自動操舵によって走行するため、カメラ31は、進行方向の路面に形成された白線を撮像する。
【0017】
画像処理ユニット32は、カメラ31が撮像した撮像信号を解析して路面の白線を検出する。目標進路とは、車両1が自動操舵によって走行する走行進路であり、路面には、目標進路の両側にそれぞれ沿って白線が付されている。画像処理ユニット32は、検出した白線に基づいて、進行方向の白線と白線との間の中央の位置(進路)を目標進路として検出し、水平面内における目標進路と車両1との距離(横変位)y(m)と、横変位の時間変化である横移動速度y’(m/s)と、目標進路に対する車両1の角度(ヨー角)φ(rad)とを算出し、算出した横移動速度y’と横変位yとヨー角φとをコントローラ4へ出力する。
【0018】
なお、本実施形態では、横変位y、横移動速度y’及びヨー角φ(rad)とを検知するために、カメラ31が撮像した撮像信号を使用するが、これらの検知は、カメラ31の撮像信号に限らず、位置を特定できる他の情報を使用してもよい。例えば、GPSによって検知された情報を受信して、受信した情報に基づいて目標進路と現在位置とを検知してもよい。また、路面に目標進路に沿って予め情報発生装置を設け、当該情報発生装置から目標進路の位置情報を取得して目標進路と現在位置と進行方向とを検知してもよい。また、ヨー角φは、後述するヨーレートセンサ33が検出するヨー角速度φ’の時間積分値として算出してもよい。
【0019】
ヨーレートセンサ33は、旋回走行時に車両1に発生するヨー角速度φ’(ヨーレート:rad/s)を検出し、検出したヨー角速度φ’をコントローラ4へ出力する。
【0020】
操舵角センサ34は、操舵角θ(rad)を検出し、検出した操舵角θをコントローラ4へ出力する。
【0021】
車速センサ35は、車両1の車速V(m/s)を検出し、検出した車速Vをコントローラ4へ出力する。
【0022】
変位センサ36は、車両1の前後左右の各車輪のサスペンション(図示省略)に対してそれぞれ設けられ、各サスペンションのバネ上とバネ下との間の相対変位(基準長に対する変動量)HFL,HFR,HRL,HRRを検出し、検出した相対変位HFL,HFR,HRL,HRRをコントローラ4へ出力する。
【0023】
自動操舵スイッチ37は、車両1の運転室内に設けられ、運転者からの操作入力に応じてオン信号とオフ信号とをコントローラ4へ出力する。自動操舵スイッチ37は、電源投入による初期設定時にはオフに設定され、運転者によってオンに設定される。コントローラ4は、自動操舵スイッチ37がオンである場合、後述する自動操舵制御を実行し、オフである場合、自動操舵制御を実行しない。
【0024】
図2に示すように、コントローラ4は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを備え、コントローラ4には、センサ部3から各種信号が逐次入力する。ROMには、自動操舵制御プログラムが記憶され、CPUは、自動操舵制御プログラムに従って自動操舵制御処理を実行することによって、車両質量演算部41、重心位置距離演算部42、ヨー慣性モーメント演算部43、状態フィードバックゲイン演算部44、目標操舵角演算部45及び自動操舵電流演算部46として機能する。RAMは、ROMから読み出されたプログラムの展開領域、センサ部3から入力した各種信号(情報)の一時記憶領域、CPUの演算結果の一時記憶領域、及び後述する制御許可フラグの設定領域等として機能する。
【0025】
車両質量演算部41は、各変位センサ36が検出した相対変位HFL,HFR,HRL,HRRから各車輪7に負荷される荷重(輪重)WFL,WFR,WRL,WRRを求め、求めた各輪重WFL,WFR,WRL,WRRから車両1の質量(総重量)mを算出する。すなわち、各変位センサ36と車両質量演算部41とは、車両1の質量mを検知する車両質量検知手段を構成する。
【0026】
重心位置距離演算部42は、車両質量演算部41が求めた各輪重WFL,WFR,WRL,WRRと質量mとから、前軸(前側の車軸)と重心位置との距離Lと、後軸(後側の車軸)と重心位置との距離Lとを算出する。
【0027】
ヨー慣性モーメント演算部43は、車両質量演算部41が算出した車両1の質量mからヨー慣性モーメントIを算出する。すなわち、ヨー慣性モーメント演算部43は、車両質量演算部41が算出した車両1の質量mに基づいて車両1のヨー慣性モーメントIを推定する慣性モーメント推定手段を構成する。
【0028】
状態フィードバックゲイン演算部44は、車両質量演算部41が算出した車両1の質量mと、重心位置距離演算部42が算出した前軸と重心位置との距離L及び後軸と重心位置との距離Lと、ヨー慣性モーメント演算部43が算出したヨー慣性モーメントIとを用いて、目標操舵角(操舵角指令値)δを入力量とする操舵系の状態方程式を設定し、設定した状態方程式に対する評価関数を設定し、設定した評価関数を最小とする状態フィードバックゲインKを、LQ制御側に従って算出する。すなわち、状態フィードバックゲイン演算部44は、フィードバックゲイン算出手段を構成する。算出された状態フィードバックゲインKにより、図4に示す構成で車両1の自動操舵制御が実行される。
【0029】
目標操舵角演算部45は、状態フィードバックゲイン演算部44が算出した状態フィードバックゲインKを用いて、車両1を目標進路に従って走行させるための目標操舵角δを算出する。
【0030】
自動操舵電流演算部46は、目標操舵角演算部45が算出した目標操舵角δに基づき、自動操舵電流を算出する。自動操舵電流とは、車両1を目標進路に沿って走行させるために操舵アクチュエータ6を駆動する電流であり、自動操舵電流演算部46が算出し自動操舵電流が駆動電流出力部5に入力する。
【0031】
次に、本実施形態の操舵制御装置による自動操舵制御処理について説明する。
【0032】
自動操舵制御処理は、車両重量推定処理と重心位置距離算出処理とヨー慣性モーメント導出処理とフィードバックゲイン算出処理と目標操舵角演算処理とを含む。
【0033】
車両重量推定処理は、車両質量演算部41によって実行される。本処理において、車両質量演算部41は、各変位センサ36が検出した相対変位HFL,HFR,HRL,HRRに対応する各輪重WFL,WFR,WRL,WRRを、予め記憶された輪重−変位マップ(図5参照)から求め、求めた各輪重WFL,WFR,WRL,WRRを次式(1)に代入して、車両1の質量(総重量)mを算出する。
【0034】
【数1】

【0035】
輪重−変位マップは、個々の特性に対応して各車輪7毎に設定されている。また、上記処理は、相対変位HFL,HFR,HRL,HRRから車両1の質量mを簡易に求める場合の例示であり、所定の演算式を用いたりマップと演算式とを併用するなど他の演算方法によって質量mを求めてもよい。また、荷重を直接検出する荷重センサを設けるなど、他の検出値によって質量mを求めてもよい。
【0036】
重心位置距離算出処理は、重心位置距離演算部42によって実行される。本処理において、重心位置距離演算部42は、車両質量演算部41が求めた各輪重WFL,WFR,WRL,WRRを次式(2)及び(3)に代入して、前軸(前側の車軸)と重心位置との距離Lと、後軸(後側の車軸)と重心位置との距離Lとを算出する。
【0037】
【数2】

【0038】
【数3】

【0039】
上式(2)及び(3)のWBは、予め記憶された車両1のホイールベースである。
【0040】
ヨー慣性モーメント導出処理は、ヨー慣性モーメント演算部43によって実行される。
【0041】
車両1が質量Mである場合のヨー平面における慣性モーメント(ヨー慣性モーメント)Iは、簡易的に次式(4)によって表すことができる。
【0042】
【数4】

【0043】
上式(4)のLとLとは車両1に固有の値であるため、ヨー慣性モーメントIは、車両1の質量Mに比例することが判る。
【0044】
従って、ヨー慣性モーメント演算部43は、車両質量演算部41が算出した車両1の質量mを次式(5)に代入して、ヨー慣性モーメントIを算出する。
【0045】
【数5】

【0046】
上式(5)のIは、車両1が質量mである場合のヨー慣性モーメントであり、実験やシミュレーション等によって予め精度良く求められ記憶されている。
【0047】
フィードバックゲイン算出処理は、状態フィードバックゲイン演算部44によって実行される。
【0048】
一般的な二輪等価モデルを用いると、車両1の状態方程式は、次式(6)によって表すことができる。
【0049】
【数6】

【0050】
上式(6)の各記号の定義は以下の通りである。
【0051】
:前軸から車両重心位置までの距離(m)
:後軸から車両重心位置までの距離(m)
:前輪コーナリングパワー(N/rad)
:後輪コーナリングパワー(N/rad)
φ’:ヨー角速度(rad/s)
φ:ヨー角(rad)
’:横移動速度
:横変位
m:車両1の質量(kg)
I:ヨー慣性モーメント(kg・m
V:車速(m/s)
N:ステアリングギヤ比
θ:操舵角
ここで、操舵角制御を実行するため、操舵角指令値(目標操舵角)δと実際の操舵角θとの間の動特性を次式(7)として定義し、上式(6)を再構築すると次式(8)となる。
【0052】
【数7】

【0053】
【数8】

【0054】
上式(7)及び(8)のωは操舵角サーボ系の固有振動数、sはラプラス演算子、ζは操舵角サーボ系の減衰比である。上式(8)のa16とa36とは、それぞれ次式(9)及び(10)である。
【0055】
16=b11=L/(IN) ・・・(9)
【0056】
36=b31=C/(mN) ・・・(10)
【0057】
従って、状態フィードバックゲイン演算部44が設定する状態方程式及び出力方程式は、それぞれ次式(11)及び(12)となる。
【0058】
【数9】

【0059】
【数10】

【0060】
上式(11)及び(12)に対して実際に自動操舵制御(車線維持制御)を実施するための状態フィードバックゲインKを、LQ制御側(例えば、リカッチ代数方程式を用いる方法)に従って導出する。ここで、最小とすべき2次形式評価関数Jとして、次式(13)を設定する。
【0061】
【数11】

【0062】
上式(13)のQ及びRは、プラントの特性を考慮して設計者が試行錯誤によって設定する値である。
【0063】
このように、状態フィードバックゲイン演算部44は、車両質量演算部41が算出した車両1の質量mと、重心位置距離演算部42が算出した前軸と重心位置との距離L及び後軸と重心位置との距離Lと、ヨー慣性モーメント演算部43が算出したヨー慣性モーメントIとを用いて、目標操舵角(操舵角指令値)δを入力量とする操舵系の状態方程式(上式(8)及び(11))を設定し、設定した状態方程式に対する評価関数J(上式(13))を設定し、設定した評価関数Jを最小とする状態フィードバックゲインKを算出する。
【0064】
目標操舵角演算処理は、目標操舵角演算部45によって実行される。目標操舵角演算部45は、状態フィードバックゲイン演算部44が算出した状態フィードバックゲインK(K,K,K,K)を、例えば次式(14)に代入することによって、車両1を目標進路に従って走行させるための目標操舵角δを算出する。
【0065】
δ=−(Kφ’+Kφ+Ky’+Ky) ・・・(14)
【0066】
次に、コントローラ4が実行する状態フィードバックゲインKの更新処理について、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。本処理は、車両1の駆動中(エンジンが回転中)に繰り返して実行される。
【0067】
本処理が開始されると、自動操舵スイッチ37がオンか否かを判定する(ステップS1)。自動操舵スイッチ37がオフの場合(ステップS1:NO)、制御許可フラグをオフ(Flag=0)に設定し(ステップS10)、本処理を終了する。
【0068】
自動操舵スイッチ37がオンの場合(ステップS1:YES)、車速Vがゼロであるか否か(車両1が走行中であるか否か)を判定する(ステップS2)。車速Vがゼロではない場合(ステップS2:NO)、荷物の積載量が変動しない車両1の走行中であるため、状態フィードバックゲインKを更新せず、制御許可フラグをオン(Flag=1)に設定し(ステップS9)、本処理を終了する。
【0069】
車速Vがゼロの場合(ステップS2:YES)、荷物の積載量が変動する可能性がある車両1の停車時であるため、ステップS3へ移行して状態フィードバックゲインKを更新する。
【0070】
状態フィードバックゲインKの更新では、まず、各変位センサ36が検出した相対変位HFL,HFR,HRL,HRRを取得し(ステップS3)、取得した相対変位HFL,HFR,HRL,HRRに対応する各輪重WFL,WFR,WRL,WRRを、輪重−変位マップ(図5参照)から読み込み(ステップS4)、読み込んだ各輪重WFL,WFR,WRL,WRRを上式(1)に代入して、車両1の質量(総重量)mを算出する(ステップS5)。
【0071】
次に、ステップS4で読み込んだ輪重WFL,WFR,WRL,WRRを上式(2)及び(3)に代入して、前軸と重心位置との距離Lと、後軸と重心位置との距離Lとを算出する(ステップS6)。
【0072】
次に、ステップS5で算出した車両1の質量mを上式(5)に代入して、ヨー慣性モーメントIを算出する(ステップS7)。
【0073】
次に、ステップS5で算出した車両1の質量mと、ステップS6で算出した前軸と重心位置との距離L及び後軸と重心位置との距離Lと、ステップS7で算出したヨー慣性モーメントIとを用いて、目標操舵角δを入力量とする状態方程式(上式(8)及び(11))を設定し、設定した状態方程式に対する評価関数J(上式(13))を設定し、設定した評価関数Jを最小とする状態フィードバックゲインKを算出し、算出した状態フィードバックゲインKを更新して記憶する(ステップS8)。
【0074】
最後に、制御許可フラグをオン(Flag=1)に設定し(ステップS9)、本処理を終了する。
【0075】
制御許可フラグをオンに設定されている場合、目標操舵角演算部45は、最新の状態フィードバックゲインKを用いて目標操舵角δを算出し、自動操舵電流演算部46は、自動操舵電流を算出して駆動電流出力部5に入力する。
【0076】
一方、制御許可フラグがオフに設定されている場合、目標操舵角演算部45は、目標操舵角δを算出せず、自動操舵電流演算部46は、自動操舵電流を駆動電流出力部5に入力しない。
【0077】
このように本実施形態によれば、車両1の荷物の積載状態が変動した場合、状態フィードバックゲインKの値が積載状態の変動に応じて更新される。従って、荷物の積載状態に拘わらず、モデルベース制御手法であるLQ制御やLQI制御により車線維持特性を確保しつつ、ヨー方向のふらつきが少ない車両の走行安定性を実現した自動操舵制御を行うことができる。
【0078】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
1:車両
3:センサ部
4:コントローラ
5:駆動電流出力部
6:操舵アクチュエータ
31:カメラ
32:画像処理ユニット
33:ヨーレートセンサ
34:操舵角センサ
35:車速センサ
36:変位センサ(車両質量検知手段)
41:車両質量演算部(車両質量検知手段)
42:受信位置距離演算部
43:ヨー慣性モーメント演算部(慣性モーメント推定手段)
44:状態フィードバックゲイン演算部(フィードバックゲイン算出手段)
45:目標操舵角演算部(目標操舵角演算手段)
46:自動操舵電流演算部(自動操舵電流演算手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の質量を検知する車両質量検知手段と、
前記検知された車両の質量に基づいて、前記車両のヨー慣性モーメントを推定する慣性モーメント推定手段と、
前記検知された車両の質量と前記推定されたヨー慣性モーメントとを用いて、目標操舵角を入力量とする状態方程式を設定し、設定した状態方程式に対する評価関数を設定し、設定した評価関数を最小とする状態フィードバックゲインを算出するフィードバックゲイン算出手段と、
前記算出された状態フィードバックゲインに基づいて、前記車両の操舵を制御する操舵制御手段と、を備えた
ことを特徴とする車両の操舵制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−126293(P2012−126293A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280620(P2010−280620)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】