説明

車両の操舵制御装置

【課題】 トルクセンサを構成する複数のセンサの異常をそれぞれ正確に判別し、正常なセンサによる検出値を用いてアシストトルクを付与する車両の操舵制御装置を提供すること。
【解決手段】 電子制御ユニット28は、2つの磁気センサ24A,24Bのいずれかに異常が発生し、トルクセンサ20全体として異常が発生しているときには異常の発生している磁気センサを特定する。すなわち、ユニット28は、センサ24A,24Bからそれぞれ磁束密度の変化に起因して検出される回転トルクT1,T2を出力させるためにEPSモータ13を駆動させて出力側シャフト12a2に付与する回転トルクを変動させる。そして、ユニット28は、出力されたトルクT1,T2と判定トルクTrefとを比較して異常の発生している磁気センサを特定し、正常な磁気センサが検出した回転トルクを用いてアシストトルクを付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者によって操作される操舵ハンドルを支持するステアリングシャフトと、操舵ハンドルの操作に対してアシストトルクを付与する電動モータと、ステアリングシャフトに入力される操舵トルクを検出する操舵トルク取得手段と、操舵トルク取得手段によって取得された操舵トルクを用いて目標アシストトルクを算出し、同算出した目標アシストトルクに基づいて電動モータを駆動制御するアシスト制御手段とを備えた車両の操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に示されているように、この種の電動パワーステアリング装置は広く知られている。この従来の電動パワーステアリング装置は、電動機と操舵トルクセンサと車速センサと操舵角センサと制御手段と電動機駆動手段と電動機電流検出手段とを備えている。そして、この従来の電動パワーステアリング装置においては、操舵トルクセンサが故障していると判定されると、制御手段が車速センサからの車速信号と操舵角センサからの操舵角信号とに基づいて操舵トルクを推定し、この推定した操舵トルクに基づいて電動機の駆動を制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−59447号公報
【発明の概要】
【0004】
上記従来の電動パワーステアリング装置においては、操舵トルクセンサが故障した場合であっても、他のセンサによる検出値を用いて操舵トルクを推定することができ、この推定された操舵トルクに基づくことにより電動機の駆動を制御、すなわち、運転者による操舵ハンドルの操作に対してアシストトルクを継続して付与することができるようになっている。ところで、他のセンサによる検出値を用いて操舵トルクを推定する場合、当然ながら、操舵トルクによって検出される操舵トルクに比して、その精度は悪化するものと考えられる。したがって、上記従来の電動パワーステアリング装置のように、操舵トルクを他のセンサによる検出値を用いて推定しアシストトルクの付与を継続する場合には、操舵トルクセンサが正常であるときと同等に適切なアシストトルクを付与することが困難となる場合がある。
【0005】
ここで、操舵トルクセンサ(操舵トルク取得手段)は複数(例えば、2つ)の異なるセンサを含んで構成される場合がある。この場合、操舵トルクセンサ(操舵トルク取得手段)を構成する何れかのセンサに異常が発生すると、一般に、操舵トルクセンサ(操舵トルク取得手段)全体が故障していると判定され、上記従来の電動パワーステアリング装置のように、故障と判定された操舵トルクセンサ(操舵トルク取得手段)によって検出された操舵トルク(操舵トルク)を採用しないようになる。しかしながら、この場合、操舵トルクセンサ(操舵トルク取得手段)を構成する複数のセンサのうち、正常に作動しているセンサも存在する場合がある。このため、より精度よくアシストトルクを付与する観点からすれば、操舵トルクセンサ(操舵トルク取得手段)を構成する複数のセンサのうち異常が発生しているセンサを精度よく特定し、異常の発生していない正常なセンサによって検出された値を用いて操舵トルクを決定してアシストトルクを継続して付与することが望まれる。
【0006】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その目的は、トルクセンサを構成する複数のセンサの正常又は異常をそれぞれ正確に判別するとともに、正常なセンサによる検出値を用いてアシストトルクを付与することができる車両の操舵制御装置を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による車両の操舵制御装置(本装置)は、ステアリングシャフトと、電動モータと、操舵トルク取得手段と、アシスト制御手段とを備える。前記ステアリングシャフトは、運転者によって操作される操舵ハンドルを支持する。前記電動モータは、前記操舵ハンドルの操作に対してアシストトルクを付与する。前記操舵トルク取得手段は、前記ステアリングシャフトに入力される操舵トルクを検出するための複数のセンサを含んで構成される。前記アシスト制御手段は、前記操舵トルク取得手段によって取得された操舵トルクを用いて目標アシストトルクを算出し、同算出した目標アシストトルクに基づいて前記電動モータを駆動制御する。これにより、運転者によって車両を旋回させるために操舵ハンドルを介してステアリングシャフトに入力される操舵トルクは、目標アシストトルクに相当するアシストトルクが電動モータによって付与されることにより、軽減される。
【0008】
本装置の特徴の1つは、前記操舵トルク取得手段を構成する前記複数のセンサが、それぞれ、前記ステアリングシャフトに入力されるトルクの変動に起因して変化する同一の物理量を検出し、同検出した物理量に対応する信号を出力することにある。ここで、前記複数のセンサは、それぞれ、前記ステアリングシャフトに入力されるトルクの変動に起因して変化する磁束密度を前記物理量として検出するものであるとよく、この場合、前記磁束密度は、前記ステアリングシャフトに入力されるトルクの変動に起因した前記ステアリングシャフトの軸線回りにおける捩れによって変化するものであるとよい。これによれば、操舵トルク取得手段を構成する複数のセンサは、それぞれが検出した物理量(磁束密度)に対応する信号、すなわち、ステアリングシャフトに入力されるトルクの変動に対応したトルクを表す信号を出力することができる。
【0009】
また、本装置の特徴の1つは、センサ信号出力手段を備えることにある。前記センサ信号出力手段は、前記電動モータを所定の条件により駆動させて前記ステアリングシャフトに入力されるトルクを変動させ、前記複数のセンサからそれぞれが検出した物理量に対応する前記信号を出力させる。この場合、前記操舵トルク取得手段によって取得された前記操舵トルクが異常であるか否かを判定する取得操舵トルク異常判定手段を備えている場合には、前記センサ信号出力手段は、前記取得操舵トルク異常判定手段によって前記操舵トルクが異常であると判定されたとき、前記複数のセンサのそれぞれに前記信号を出力させる。これらによれば、センサ信号出力手段は、常に、あるいは、所定の時間間隔により複数のセンサから信号を出力させたり、操舵トルク取得手段によって取得された操舵トルクが異常であると判定されたときに複数のセンサから信号を出力させることができる。
【0010】
このとき、前記ステアリングシャフトが、少なくとも、前記操舵ハンドルに連結された第1シャフトと、前記電動モータに連結された第2シャフトと、前記第1シャフトと前記第2シャフトとが軸線回りにて捩れ変形可能な弾性体を介して互いに軸線回りに相対的に回転可能に連結されていれば、前記センサ信号出力手段は、前記所定の条件として、前記第2シャフトを軸線回りにて回転させても前記第1シャフトに連結された前記操舵ハンドルを回転方向に変位させないように前記弾性体を捩れ変形させて前記ステアリングシャフトに入力されるトルクを変動させる条件により前記電動モータを駆動させる。さらに、より詳しくは、前記センサ信号出力手段は、前記所定の条件として、前記弾性体を介して互いに連結された前記第1シャフトと前記第2シャフトに対して、前記第2シャフトを介して前記弾性体を軸線回りにて捩り方向に振動させたときに前記第2シャフトのみが振動し、前記第1シャフトが振動しなくなる反共振周波数よりも大きく、かつ、前記第2シャフトを介して前記弾性体を軸線回りにて捩り方向に振動させたときに前記第2シャフトと前記第1シャフトとが共振して振動する共振周波数よりも小さい周波数によって前記ステアリングシャフトに入力されるトルクを変動させる条件により前記電動モータを駆動させる。
【0011】
これらによれば、弾性体を適切に捩れ変形させる所定の条件により電動モータを駆動させて、第1シャフト、弾性体及び第2シャフトからなるステアリングシャフトに入力されるトルクを変動させ、複数のセンサから信号を出力させることができる。したがって、必要に応じて、センサ信号出力手段が複数のセンサから信号を出力させるときであっても、操舵ハンドルの変位を効果的に抑制することができるため、運転者が違和感を覚えることがない。
【0012】
また、本装置の特徴の1つは、異常発生センサ特定手段を備えていることにある。前記異常発生センサ特定手段は、前記センサ信号出力手段によって前記複数のセンサからそれぞれ前記信号が出力されると、出力された前記信号をそれぞれ前記ステアリングシャフトに入力されたトルクに変換し、同変換したトルクと前記所定の条件により前記電動モータを駆動させたときに前記ステアリングシャフトに入力されるトルクとして予め設定された判定トルクとを比較して、前記複数のセンサのうちで異常の発生しているセンサを特定する。これによれば、異常発生センサ特定手段は、複数のセンサのうち、的確に異常の発生しているセンサを特定することができる。言い換えれば、異常発生センサ特定手段は、複数のセンサのうち、的確に正常に作動しているセンサを特定することができる。また、この正常に作動しているセンサの出力を利用することにより、アシスト制御手段はアシストトルクを継続して付与することができる。
【0013】
さらに、本装置の他の特徴の1つは、前記操舵トルク取得手段は、前記複数のセンサのうち、前記異常発生センサ特定手段によって異常の発生しているセンサとして特定されていないセンサが検出した物理量を用いて前記操舵トルクを取得し、前記アシスト制御手段は、前記操舵トルク取得手段によって前記取得された前記操舵トルクを用いて前記目標アシストトルクを算出し、同算出した目標アシストトルクに基づいて前記電動モータを駆動制御することにもある。これによれば、正常に作動しているセンサを特定し、このセンサからの信号を利用することにより、操舵トルク取得手段が正確な操舵トルクを取得することができる。したがって、アシスト制御手段は、この正確な操舵トルクを用いて適切な目標アシストトルクを算出することができるため、複数のセンサのうちで異常の発生しているセンサが存在していても、目標アシストトルクに基づく電動モータの駆動制御を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る操舵制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1のトルクセンサの構成を説明するための概略的な断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、図2のトルクセンサにおける磁気ヨークの磁極爪と磁石の磁極との周方向の位置関係を説明するための概略図である。
【図4】図1のトルクセンサによって検出された操舵トルクと目標アシストトルクとの関係を表すアシスト特性を示すグラフである。
【図5】図1の電動パワーステアリング装置における反共振周波数及び共振周波数を説明するための検討モデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の操舵制御装置(以下、単に「本装置」とも称呼する。)について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本装置が適用され得る電動パワーステアリング装置10の概略構成を示している。この電動パワーステアリング装置10は、転舵輪としての左右前輪FW1,FW2を転舵させるために、運転者によって回動操作される操舵ハンドル11を備えている。操舵ハンドル11はステアリングシャフト12の上端に固定されて支持されており、ステアリングシャフト12の下端は転舵ギアユニットUに接続されている。ステアリングシャフト12は、操舵ハンドル11を上端に連結したメインシャフト12aと、転舵ギアユニットUに連結されるピニオンシャフト12cと、メインシャフト12aとピニオンシャフト12cとをユニバーサルジョイント12d,12eを介して連結するインターミディエイトシャフト12bとから構成される。ここで、本実施形態において、メインシャフト12aは、操舵ハンドル11が連結された第1シャフトとしての入力側シャフト12a1と、インターミディエイトシャフト12bに連結される第2シャフトとしての出力側シャフト12a2とから形成される。
【0017】
そして、ステアリングシャフト12、より具体的には、メインシャフト12aを形成する出力側シャフト12a2には、図示を省略する減速機構を介して電動モータ13が組み付けられている。なお、以下においては、電動モータ13を「EPSモータ13」と称呼する。EPSモータ13は、例えば、3相同期式永久磁石モータ(ブラシレスモータ)であり、減速機構を介してメインシャフト12aを形成する出力側シャフト12a2をその軸線回りに回転駆動する。これにより、EPSモータ13は、運転者によって操舵ハンドル11に入力される操作力(より具体的には、操舵トルク)を軽減するためのアシスト力(より具体的には、アシストトルク)を付与する。
【0018】
転舵ギアユニットUは、例えば、ラックアンドピニオン式を採用したギアユニットであり、ステアリングシャフト12(より具体的には、ピニオンシャフト12c)の下端に一体的に組み付けられたピニオンギア14の回転がラックバー15に伝達されるようになっている。この構成により、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に伴いステアリングシャフト12に入力された操舵トルクがピニオンギア14を介してラックバー15に伝達されるとともに、EPSモータ13によるアシストトルクがピニオンギア14を介してラックバー15に伝達される。これにより、ラックバー15はピニオンギア14からの操舵トルク及びアシストトルクによって軸線方向に変位し、ラックバー15の両端に接続された左右前輪FW1,FW2が左右方向に転舵されるようになっている。
【0019】
また、このように構成される電動パワーステアリング装置10に適用される本装置としての電気制御装置Cは、トルク取得手段としてのトルクセンサ20を備えている。トルクセンサ20は、図2に示すように、メインシャフト12aを形成する入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2との間に設けられて、操舵ハンドル11を介してステアリングシャフト12に入力される回転トルク(操舵トルクに相当)を検出する。トルクセンサ20は、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とを同軸上に相対回転可能に連結する弾性体としてのトーションバー21、入力側シャフト12a1の端部(又は、トーションバー21の一端部)に組み付けられる磁石22(硬磁性体)、出力側シャフト12a2の端部(又は、トーションバー21の他端部)に組み付けられる2個一組の磁気ヨーク23(軟磁性体)、及び、この一組の磁気ヨーク23A,23B(以下、まとめて磁気ヨーク23とも称呼する)間に生じる磁束密度を検出する複数(本実施形態においては2つ一組)のセンサとしての磁気センサ24A、24B(以下、まとめて磁気センサ24とも称呼する)等から構成される。
【0020】
トーションバー21は、両端がそれぞれピンにより入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とに固定され、目的に応じた捩れ/トルク特性(具体的には、弾性又は剛性)に設定されている。これにより、ステアリングシャフト12すなわち入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とに回転トルクが加えられた場合、この回転トルクの作用によりトーションバー21が捩れ変形し、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2との間には、回転トルクの入力方向に入力された回転トルクの大きさに対応する相対角変位が生じる。
【0021】
磁石22は、リング状に設けられていて、図3に概略的に示すように、周方向に複数のS極とN極とが交互に着磁されている。一組の磁気ヨーク23A,23Bは、図2及び図3に概略的に示すように、磁石22の外周に近接して配置される環状体であり、それぞれ磁石22のN極及びS極と同数の磁極爪23aが全周に等間隔に設けられている。この一組の磁気ヨーク23A,23Bは、互いに磁気爪23aが周方向にずれて交互に配置されるように、固定されるようになっている。
【0022】
ここで、一組の磁気ヨーク23A,23Bと磁石22は、図3(b)に示すように、トーションバー21に捩れが生じていない状態(すなわち、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2との間に回転トルクが加わっていない状態)で、磁気ヨーク23A,23Bに設けられた磁気爪23aの中心と磁石22のS極とN極との境界とが一致するように配置されている。そして、このような組み付け状態においては、2個の磁気ヨーク23A,23Bの磁極爪23aは、磁石22の周上にて互いに隣接するS極とN極との間に形成される磁界内に同一の条件下によって位置しており、これらの磁極爪23aの基部を連絡する円環状のヨーク本体部に生じる磁束は同一となる。
【0023】
一方、磁石22が組み付けられた入力側シャフト12a1と一組の磁気ヨーク23A,23Bが組み付けられた出力側シャフト12a2との間にトーションバー21の捩れを伴って相対角変位が生じた場合、それぞれの磁気ヨーク23A,23Bの磁極爪23aと磁石22のS極及びN極との位相は、図3(a)又は図3(c)に示すように、互いに逆向きに変化する。このように位相変化が生じた場合、一方の磁気ヨーク23Aの磁極爪23aと他方の磁気ヨーク23Bの磁極爪23aとには、互いに逆の極性を有する磁力線が増加し、磁気ヨーク23A,23Bのヨーク本体にそれぞれ正負の磁束が発生する。このとき発生する磁束の正負は、磁石22と磁気ヨーク23A,23Bとの間、すなわち、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2との間に生じる相対角変位の向きに応じて定まり、正負の磁束密度はこの相対角変位の大きさに対応する。
【0024】
一組の磁気センサ24A,24Bは、図2に示すように、それぞれの磁気ヨーク23A,23Bの外側に配設された2個の集磁リング25A,25B(以下、まとめて集磁リング25とも称呼する。)のそれぞれに2箇所ずつ軸線方向にて対向するように形成された集磁突起25a間に設けられるエアギャップ内に挿入され、両磁気ヨーク23A,23B間に生じる磁束密度を検出する。ここで、磁気センサ24A,24Bとしては、例えば、ホール素子、ホールIC、磁気抵抗素子等を採用することができ、検出した磁束密度を電気信号(例えば電圧信号等)に変換して出力する。なお、磁気センサ24A,24Bは、磁気ヨーク23A,23Bに接触することなく、詳細な図示を省略するハウジングやコラムチューブ等に固定されている。
【0025】
それぞれの磁気センサ24(24A,24B)の出力は、集磁リング25(25A,25B)に対向する磁気ヨーク23(23A,23B)のヨーク本体内部における発生磁束によって変化し、これらの発生磁束は、上述したように、磁石22に対する磁気ヨーク23(23A,23B)の位相変化、言い換えれば、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2との間の相対角変位に対応する。したがって、それぞれの磁気センサ24(24A,24B)の出力は、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2に加えられ、相対角変位を生じさせる回転トルクの方向及び大きさに対応するものとなる。このため、トルクセンサ20は、それぞれの磁気センサ24(24A,24B)の出力変化に基づいて入力側シャフト12a1及び出力側シャフト12a2に加わる回転トルクT1,T2(操舵トルクに相当)を検出することができ、同検出した回転トルクT1,T2のそれぞれに対応する信号を出力することができる。なお、以下の説明においては、回転トルクT1、T2を、単に「回転トルクT」とも称呼する場合がある。
【0026】
また、電気制御装置Cは、図1に示すように、操舵角センサ26及び車速センサ27を備えている。操舵角センサ26は、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に伴うステアリングシャフト12の回転角としての操舵角θを検出し、この操舵角θに対応する信号を出力する。車速センサ27は、車両の車速Vを検出し、同検出した車速Vに対応する信号を出力する。
【0027】
さらに、電気制御装置Cは、図1に示すように、EPSモータ13の作動を制御する電子制御ユニット28を備えている。電子制御ユニット28は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするものであり、EPSモータ13の作動を制御する。このため、電子制御ユニット28の入力側には、上記各センサ20,26,27が接続されており、これら各センサ20,26,27によって検出された各検出値を用いてEPSモータ13の駆動を制御する。一方、電子制御ユニット28の出力側には、EPSモータ13を駆動させるための駆動回路29が接続されている。
【0028】
次に、上記のように構成した電気制御装置C(より詳しくは、電子制御ユニット28)によるEPSモータ13の駆動制御(以下、この駆動制御を「アシスト制御」と称呼する。)について具体的に説明する。電子制御ユニット28は、運転者による操舵ハンドル11の回動操作に伴う負担を軽減するために、EPSモータ13の駆動を制御して、すなわち、アシスト制御して、適切なアシストトルクを付与する。
【0029】
このため、電子制御ユニット28は、運転者が操舵ハンドル11を介して入力する操舵トルクTsを軽減するための目標アシストトルクTaを演算し、この演算した目標アシストトルクTaをEPSモータ13に発生させる。この目標アシストトルクTaを演算するにあたり、電子制御ユニット28は、トルクセンサ20によって検出された回転トルクT1,T2を用いて目標アシストトルクTaを演算する。具体的に例示すると、電子制御ユニット28は、所定のサンプリング周期によってトルクセンサ20(より具体的には、磁気センサ24A,24B)から回転トルクT1,T2に対応する出力信号を取得し、例えば、取得した出力信号によって表される回転トルクT1と回転トルクT2の偏差ΔTを算出する。そして、電子制御ユニット28は、例えば、算出した偏差ΔTが予め設定された所定値Tg以下であるか否かを判定し、偏差ΔTが所定値Tg以下である場合には、トルクセンサ20を構成する2つ磁気センサ24A,24Bの出力である回転トルクT1及び回転トルクT2がいずれも正常であるすなわちトルクセンサ20が正常であると判定する。
【0030】
このような判定処理によってトルクセンサ20を構成する2つ磁気センサ24A,24Bによって出力される回転トルクT1及び回転トルクT2がいずれも正常である場合には、電子制御ユニット28は、取得した回転トルクT1及び回転トルクT2のいずれか一方又は両方の平均値等をトルクセンサ20によって取得された操舵トルクTsとして決定して採用する。そして、電子制御ユニット28は、採用した操舵トルクTsの絶対値の増加に伴って増加する目標アシストトルクTaを演算する。なお、この場合、電子制御ユニット28は、例えば、図4に示すようなアシストトルクマップを参照して、上述したように採用した操舵トルクTsの絶対値に対応する目標アシストトルクTaを演算する。なお、アシストトルクマップは、代表的な車速Vごとに設定されるものであり、車速センサ27によって検出された車速Vの増大に伴って目標アシストトルクTaが相対的に小さくなり、車速Vの減少に伴って目標アシストトルクTaが相対的に大きくなるように設定されている。
【0031】
このように目標アシストトルクTaを演算すると、電子制御ユニット28は、演算した目標アシストトルクTaの大きさと予め定めた関係にあり、EPSモータ13に供給する電流を表すモータ電流指令値を決定する。そして、電子制御ユニット35は決定したモータ電流指令値を駆動回路29に供給し、駆動回路29は供給されたモータ電流指令値に相当する駆動電流をEPSモータ13に供給する。これにより、EPSモータ13が目標アシストトルクTaをラックバー15に伝達することができ、運転者は良好な操舵フィーリングを知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作することができる。
【0032】
一方、電子制御ユニット28は、上述したように算出した偏差ΔTが所定値Tgを超えている場合には、トルクセンサ20を構成する2つ磁気センサ24A及び磁気センサ24Bのうちの少なくとも一方に異常が発生しており、トルクセンサ20に異常が発生していると判定する。ところで、このようにトルクセンサ20に異常が発生している状況、より具体的には、磁気センサ24A及び磁気センサ24Bのうちの少なくとも一方に異常が発生している状況においては、何れの磁気センサ24に異常が発生しているかを特定しない限り、磁気センサ24A,24Bの出力である回転トルクT1及び回転トルクT2を用いて操舵トルクTsを決定することができない。そこで、電子制御ユニット28は、トルクセンサ20に異常が発生しているとき、何れの磁気センサ24に異常が発生しているかを特定する。以下、この特定を詳細に説明する。
【0033】
上述したように、磁気センサ24A,24Bは、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2に相対角変位を生じさせると、加えられた回転トルクの方向及び大きさに対応する磁束密度、言い換えれば、回転トルクT1,T2をそれぞれ検出し、同検出した回転トルクT1,T2のそれぞれに対応する信号を出力することができる。したがって、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とに強制的に相対角変位を生じさせたときに、磁気センサ24A,24Bから出力される信号によって表される回転トルクT1,T2を確認すれば、異常の発生している磁気センサ24を特定することができる。
【0034】
ところが、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とにおいては、入力側シャフト12a1が操舵ハンドル11に連結されており、出力側シャフト12a2が転舵ギアユニットUに連結されている。このため、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とに強制的に相対角変位を生じさせる場合には、この相対角変位の発生に起因する操舵ハンドル11の回動及び左右前輪FW1,FW2の転舵動作が生じないように、あるいは、生じても極めて小さくなるように、トーションバー21を捩れ変形させて相対角変位を生じさせる必要がある。
【0035】
ここで、このようにトーションバー21のような弾性体の捩れ変形を利用する場合には、弾性体を軸線回りにて捩り方向に振動させるためにEPSモータ13から付与される回転トルクTtを変動させる周波数(以下、この周波数を加振周波数と称呼する。)の大きさに依存して、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2との相対角変位の発生挙動が変化する。すなわち、弾性体の一端部側を小さな加振周波数で捩り方向に振動させる場合には、弾性体に捩れ変形が生じず、一端部側と他端部側とが一体的に振動し、加振周波数を増加させるほど一端部側と他端部側とに捩れ変形が生じる。この捩れ変形量は、加振周波数を増加させるほど小さくなる傾向がある。このような系においては、入力側シャフト12a1が振動(回転)しなくなり、出力側シャフト12a2のみが振動(回転)する周波数が存在する。以下、この時の加振周波数を特に「反共振周波数」と称呼する。そして、この反共振周波数から加振周波数を増加させ、ある程度加振周波数が大きくなると、一端部側と他端部側とが共振する周波数が存在する。以下、この時の加振周波数を特に「共振周波数」と称呼する。
【0036】
このことを入力側シャフト12a1、トーションバー21及び出力側シャフト12a2について、図5に示すような検討モデルを用いて説明する。なお、この検討モデルにおいては、トーションバー21の弾性率(又は剛性率)をKtとするとともに、入力側シャフト12a1の剛性率(又は弾性率)をKcとする。また、EPSモータ13を駆動させることにより出力側シャフト12a2に付与される回転トルクTtに起因する出力側シャフト12a2の回転角をθmとするとともに、入力側シャフト12a1の回転角をθcとし、又、操舵ハンドル11の回転角をθwとする。さらに、出力側シャフト12a2の慣性モーメントをJm、入力側シャフト12a1の慣性モーメントをJc及び操舵ハンドル11の慣性モーメントをJwとする。
【0037】
このようなモデルに対して、本願発明者は種々の実験を行うことにより、上記モデルにおける反共振周波数すなわちトーションバー21の一端部側のみが振動(回転)し、他端部側が振動(回転)しなくなる加振周波数を特定するとともに、上記モデルにおける共振周波数すなわちトーションバー21の一端部側と他端部側とが共振する加振周波数を特定した。なお、上記モデルにおける反共振周波数及び共振周波数は、上記各物性値、具体的には、トーションバー21の弾性率Kt、入力側シャフト12a1の剛性率(弾性率)Kc、出力側シャフト12a2の慣性モーメントJm、入力側シャフト12a1の慣性モーメントJc及び操舵ハンドル11の慣性モーメントJwを適宜設定することにより変化させることができる。また、上記のように特定される共振周波数については、反共振周波数から周波数を増加させたときに最初に出力側シャフト12a2と入力側シャフト12a1とに共振が発生する周波数であるとよい。
【0038】
ところで、加振周波数によってEPSモータ13による回転トルクTtを変動させるすなわち出力側シャフト12a2を捩り方向に振動させると入力側シャフト12a1も捩り方向に振動する。このため、入力側シャフト12a1に連結された操舵ハンドル11も回動方向に振動するようになる。
【0039】
したがって、異常の発生している磁気センサ24を特定するために入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とに強制的に相対角変位を生じさせるときに、操舵ハンドル11の回動及び左右前輪FW1,FW2の転舵動作が生じないように、あるいは、生じても極めて小さくなるようにするためには、EPSモータ13により出力側シャフト12a2に付与される回転トルクTtを上記反共振周波数よりも大きな周波数であり、かつ、上記共振周波数よりも小さな周波数で変動させればよい。これにより、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とを連結するトーションバー21を適切に捩れ変形させることができて、操舵ハンドル11の回動及び左右前輪FW1,FW2の転舵動作が生じないように、あるいは、生じても極めて小さくなるようにすることができる。
【0040】
このため、電子制御ユニット28は、トルクセンサ20に異常が発生していると判定すると、まず、車両が直進状態により走行しているか否かを判定する。すなわち、電子制御ユニット28は、操舵角センサ26から出力された信号を入力して操舵角θ(操舵ハンドル11の回転角θwに相当)を取得するとともに、車速センサ27から出力された信号を入力して車速Vを取得する。そして、例えば、操舵角θの値が略「0」であり、かつ、車速Vの値が正の値であれば、車両が直進状態により走行していると判定することができる。そして、電子制御ユニット28は、このように車両が直進状態により走行していると判定した場合、上記反共振周波数よりも大きく、かつ、上記共振周波数よりも小さな周波数として予め設定された加振周波数(以下、「特定加振周波数」と称呼する。)で出力側シャフト12a2を捩り方向に振動させるように、駆動回路29を介してEPSモータ13を駆動させて出力側シャフト12a2に所定の大きさの回転トルクTtを変動させて付与させる。
【0041】
このように、EPSモータ13が特定加振周波数によって所定の回転トルクTtを変動させて付与することにより、出力側シャフト12a2は捩れ方向に振動し、トーションバー21を介して連結された入力側シャフト12a1は振動しない。すなわち、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2との間には、強制的に相対角変位が生じる。これにより、トルクセンサ20を構成する2つの磁気センサ24A,24Bは、それぞれ、相対角変位に応じた回転トルクT1,T2を表す信号を電子制御ユニット28に出力する。
【0042】
電子制御ユニット28においては、磁気センサ24A,24Bから出力された信号を入力し、この信号によって表される回転トルクT1、T2を取得する。ここで、電子制御ユニット28は、特定加振周波数によってEPSモータ13を駆動させて所定の回転トルクTtを出力側シャフト12a2に付与した場合、トルクセンサ20(すなわち、磁気センサ24A,24B)が出力すべき回転トルクとして実験的に決定され得る判定トルクTrefを予め記憶している。これにより、電子制御ユニット28は、前記取得した回転トルクT1,T2と判定トルクTrefとをそれぞれ比較し、回転トルクT1及び回転トルクT2のうち、判定トルクTrefに略一致する側の回転トルクを出力した磁気センサ24が正常であると判定する。すなわち、判定トルクTrefと一致しない回転トルクTを出力した磁気センサ24が異常を発生した磁気センサ24であると特定する。
【0043】
そして、このように、異常の発生した磁気センサ24を特定すると、電子制御ユニット28は、正常な磁気センサ24によって出力された回転トルクTを操舵トルクTsとして採用し、上述したアシスト制御を継続させる。この場合においては、正常な磁気センサ24から出力される回転トルクTすなわち操舵トルクTsは、直接的にステアリングシャフト12に入力されるトルクを検出したものであり、かつ、極めて精度が高く正確である。このため、正常な磁気センサ24によって出力された回転トルクTを用いたアシスト制御は、トルクセンサ20が正常であるとき(すなわち、2つの磁気センサ24A,24Bがともに正常であるとき)と同等の目標アシストトルクTaを演算することができる。
【0044】
したがって、電子制御ユニット28は演算した目標アシストトルクTaの大きさと予め定めた関係にあるモータ電流指令値を決定して駆動回路29に供給し、駆動回路29は供給されたモータ電流指令値に相当する駆動電流をEPSモータ13に供給することができる。これにより、トルクセンサ20に異常が発生した場合であっても、EPSモータ13が適切かつ正確な目標アシストトルクTaをラックバー15に伝達することができ、運転者は良好な操舵フィーリングを知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作することができる。
【0045】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、トルクセンサ20に異常が発生した場合において、強制的に2つの磁気センサ24A,24Bから回転トルクT1,T2を表す信号を出力させて、これら出力された回転トルクT1,T2(出力信号)を用いて異常の発生した磁気センサ24を正確に特定することができる。このとき、EPSモータ13を反共振周波数よりも大きく、かつ、共振周波数よりも小さな特定加振周波数によって駆動させて出力側シャフト12a2に付与するトルクを変動させて出力側シャフト12a2を捩り方向に振動させることにより、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とに相対角変位を適切に生じさせる一方で、操舵ハンドル11の大きな回動及び左右前輪FW1,FW2の大きな転舵動作が生じさせないようにすることができる。これにより、電子制御ユニット28が2つの磁気センサ24A,24Bのうちの何れかに異常が発生しているか否かを特定する場合であっても、運転者が違和感を覚えることがない。
【0046】
さらに、異常の発生した磁気センサ24を特定する、言い換えれば、正常に作動している磁気センサ24を特定し、この正常な磁気センサ24による回転トルクTを操舵トルクTsとして採用することができる。これにより、トルクセンサ20に異常が発生した場合であっても、トルクセンサ20が正常であるとき(すなわち、2つの磁気センサ24A,24Bがともに正常であるとき)と同等の極めて適切なアシスト制御を継続させることができる。これにより、運転者が操舵ハンドル11を操作する際の負担を適切に軽減することができるとともに、運転者が良好な操舵フィーリングを知覚しながら操舵ハンドル11を回動操作することができて、極めて好適である。
【0047】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態においては、電子制御ユニット28が、トルクセンサ20に異常が発生した場合に、トルクセンサ20を構成する2つの磁気センサ24A,24Bの何れかに異常が発生しているか否かを判定するように実施した。これに対して、電子制御ユニット28が、トルクセンサ20に異常が発生しているか否かに関わらず、常に、あるいは、所定の時間間隔により、2つの磁気センサ24A,24Bの何れかに異常が発生しているか否かを判定するように実施することも可能である。これにより、常にトルクセンサ20(すなわち、2つの磁気センサ24A,24B)の作動状態を適切に監視することができ、常に適切なアシスト制御を実行することができる。
【0049】
また、上記実施形態においては、トルクセンサ20を複数のセンサとして2つの磁気センサ24A,24Bから構成するように実施した。この場合、トルクセンサ20を構成する磁気センサ24の数については、2つに限定されるものではなく、3つ以上の磁気センサ24を用いてトルクセンサ20を構成して実施可能であることはいうまでもない。この場合であっても、上記実施形態と同様に、異常の発生している磁気センサ24を的確に特定することができるため、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0050】
また、上記実施形態においては、電動パワーステアリング装置10におけるメインシャフト12a1を構成する出力側シャフト12a2に対してEPSモータ13を駆動力伝達可能に連結して、所謂、コラムアシストタイプの電動パワーステアリング装置10を採用して実施した。この場合、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とに相対角変位を生じさせることができれば、EPSモータ13の配設位置は限定されるものではなく、例えば、ピニオンシャフト12cに対してEPSモータ13を駆動力伝達可能に連結する、所謂、ピニオンアシストタイプの電動パワーステアリング装置10を採用して実施したり、転舵ギアユニットUを構成するラックバー15に対してEPSモータ13を駆動力伝達可能に連結する、所謂、ラックアシストタイプの電動パワーステアリング装置10を採用して実施することも可能である。これらの場合であっても、入力側シャフト12a1と出力側シャフト12a2とに確実に相対角変位を生じさせることができるため、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0051】
また、上記実施形態においては、トルクセンサ20が2つの磁気センサ24A,24Bから構成されるように実施した。この場合、トルクセンサ20が操舵トルクTsを出力できるように、ステアリングシャフト12に入力されるトルクの変動に起因して変化する物理量を検出するものであれば、例えば、捩れに伴う角度を検出する複数のレゾルバセンサ等、如何なる複数のセンサからトルクセンサ20が構成されてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様に、トルクセンサ20を構成する複数のセンサの正常又は異常を正確に判定することができ、その結果、アシスト制御を適切に継続させることができる。
【0052】
さらに、上記実施形態においては、電動モータ13(EPSモータ13)を駆動させることによりアシストトルクを発生させる電動パワーステアリング装置10に本装置を適用して実施した。この場合、例えば、油圧機構等、電動モータ13(EPSモータ13)以外の駆動力によってアシストトルクを発生させるパワーステアリング装置に本装置を適用して実施可能であることは言うまでもない。このように、電動モータ13(EPSモータ13)以外の駆動源を採用する場合であっても、この駆動源を特定加振周波数で駆動させることが可能であれば、トルクセンサ20を構成する2つのセンサとしての磁気センサ24A,24Bに強制的に出力させることが可能であるため、上記実施形態と同様に、異常が発生している側の磁気センサ24を的確に特定することができる。したがって、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0053】
10…電動パワーステアリング装置、11…操舵ハンドル、12…ステアリングシャフト、12a…メインシャフト、12a1…入力側シャフト(第1シャフト)、12a2…出力側シャフト(第2シャフト)、12b…インターメディエイトシャフト、12c…ピニオンシャフト、12d,12e…ユニバーサルシャフト、13…EPSモータ(電動モータ)、14…ピニオンギア、15…ラックバー、20…トルクセンサ(トルク取得手段)、21…トーションバー(弾性体)、22…磁石、23A,23B…磁気ヨーク、24A,24B…磁気センサ(複数のセンサ)、25A,25B…集磁リング、26…操舵角センサ、27…車速センサ、28…電子制御ユニット、29…駆動回路、C…電気制御装置(操舵制御装置)、U…転舵ギアユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって操作される操舵ハンドルを支持するステアリングシャフトと、前記操舵ハンドルの操作に対してアシストトルクを付与する電動モータと、前記ステアリングシャフトに入力される操舵トルクを検出するための複数のセンサを含んで構成される操舵トルク取得手段と、前記操舵トルク取得手段によって取得された操舵トルクを用いて目標アシストトルクを算出し、同算出した目標アシストトルクに基づいて前記電動モータを駆動制御するアシスト制御手段とを備えた車両の操舵制御装置であって、
前記操舵トルク取得手段を構成する前記複数のセンサは、それぞれ、前記ステアリングシャフトに入力されるトルクの変動に起因して変化する同一の物理量を検出し、同検出した物理量に対応する信号を出力するものであり、
前記電動モータを所定の条件により駆動させて前記ステアリングシャフトに入力されるトルクを変動させ、前記複数のセンサからそれぞれが検出した物理量に対応する前記信号を出力させるセンサ信号出力手段と、
前記センサ信号出力手段によって前記複数のセンサからそれぞれ前記信号が出力されると、出力された前記信号をそれぞれ前記ステアリングシャフトに入力されたトルクに変換し、同変換したトルクと前記所定の条件により前記電動モータを駆動させたときに前記ステアリングシャフトに入力されるトルクとして予め設定された判定トルクとを比較して、前記複数のセンサのうちで異常の発生しているセンサを特定する異常発生センサ特定手段とを備えたことを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車両の操舵制御装置において、
前記操舵トルク取得手段によって取得された前記操舵トルクが異常であるか否かを判定する取得操舵トルク異常判定手段を備え、
前記センサ信号出力手段は、
前記取得操舵トルク異常判定手段によって前記操舵トルクが異常であると判定されたとき、前記複数のセンサのそれぞれに前記信号を出力させることを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した車両の操舵制御装置において、
前記ステアリングシャフトは、少なくとも、
前記操舵ハンドルに連結された第1シャフトと、前記電動モータに連結された第2シャフトと、前記第1シャフトと前記第2シャフトとが軸線回りにて捩れ変形可能な弾性体を介して互いに軸線回りに相対的に回転可能に連結されており、
前記センサ信号出力手段は、
前記第2シャフトを軸線回りにて回転させても前記第1シャフトに連結された前記操舵ハンドルを回転方向に変位させないように前記弾性体を捩れ変形させて前記ステアリングシャフトに入力されるトルクを変動させる条件を所定の条件として前記電動モータを駆動させることを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載した車両の操舵制御装置において、
前記センサ信号出力手段は、
前記弾性体を介して互いに連結された前記第1シャフトと前記第2シャフトに対して、前記第2シャフトを介して前記弾性体を軸線回りにて捩り方向に振動させたときに前記第2シャフトのみが振動し、前記第1シャフトが振動しなくなる反共振周波数よりも大きく、かつ、前記第2シャフトを介して前記弾性体を軸線回りにて捩り方向に振動させたときに前記第2シャフトと前記第1シャフトとが共振して振動する共振周波数よりも小さい周波数によって前記ステアリングシャフトに入力されるトルクを変動させる条件を前記所定の条件として前記電動モータを駆動させることを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵制御装置において、
前記操舵トルク取得手段は、
前記複数のセンサのうち、前記異常発生センサ特定手段によって異常の発生しているセンサとして特定されていないセンサが検出した物理量を用いて前記操舵トルクを取得し、
前記アシスト制御手段は、
前記操舵トルク取得手段によって前記取得された前記操舵トルクを用いて前記目標アシストトルクを算出し、同算出した目標アシストトルクに基づいて前記電動モータを駆動制御することを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵制御装置において、
前記複数のセンサは、それぞれ、
前記ステアリングシャフトに入力されるトルクの変動に起因して変化する磁束密度を前記物理量として検出することを特徴とする車両の操舵制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載した車両の操舵制御装置において、
前記磁束密度は、
前記ステアリングシャフトに入力されるトルクの変動に起因した前記ステアリングシャフトの軸線回りにおける捩れによって変化することを特徴とする車両の操舵制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−148607(P2012−148607A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7102(P2011−7102)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】