説明

車両の診断装置

【課題】運転状態や使用条件が燃費に与える影響を排除して車両そのものの状態によって決まる燃費を計算することが可能な車両の診断装置を提供する。
【解決手段】
車速及び加速度からエンジントルクTe及び回転数Neを逆算するための駆動系モデルを記憶しておく。また、エンジントルクTe及び回転数Neに燃料消費量qを関連付けた燃料消費マップを記憶しておく。燃料消費マップはエンジンの実際の制御結果に基づいてデータを更新する。そして、所定の周期で、或いは、所定のタイミングで、車速で定義された診断用の走行パターンをメモリから読み出し、その走行パターンで車両を走行させた場合のエンジントルクTe及び回転数Neの変化を駆動系モデルによって計算する。そして、その計算結果と燃料消費マップとを用いて診断用走行パターンで車両を走行させた場合の燃費(モード燃費)Xを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関によって駆動される車両の診断装置に関し、詳しくは、車両の燃費を診断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、特に、内燃機関によって駆動される車両の燃費を計算する方法に関しては、かねてより種々の方法が提案されている。例えば、特開2006−183506号公報には、燃料噴射量とトルクとに基づいて燃費を計算する方法が開示されている。この方法によれば、所定期間におけるトルク及び回転数から内燃機関の出力が演算されるとともに、前記所定期間における総燃料供給量が演算され、機関出力と総燃料供給量との関係から燃費が演算される。
【特許文献1】特開2006−183506号公報
【特許文献2】特開2006−118480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両の燃費を左右する要因には、車両の使用条件、ドライバの運転状態、そして、車両そのものの状態が含まれる。従来提案されている燃費の計算方法は、特開2006−183506号公報に開示された方法もそうであるが、これら全ての要因を含んだ総合的な燃費を計算するための方法である。
【0004】
しかし、計算結果に基づいて燃費の改善策を講じようとした場合、車両の使用条件やドライバの運転状態が燃費に影響しているのか、或いは、車両そのものの状態(例えば、経時変化による内燃機関の劣化)が燃費に影響しているのかによって、改善策の内容は異なったものになる。例えば、燃費の悪化が前者の要因による場合には、使用条件を見直したり運転の仕方を変えたりすることによって改善することができる。これに対して、燃費の悪化が後者の要因による場合には、それを改善するには車両の点検・整備が必要となるし、車両の劣化の進み具合によってはあまり改善できない可能性もある。従来提案されている燃費の計算方法では、燃費の悪化が前者の要因によるものなのか、或いは後者の要因によるものなのか判別することができなかった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、運転状態や使用条件が燃費に与える影響を排除して車両そのものの状態によって決まる燃費を計算することが可能な車両の診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関によって駆動される車両の診断装置であって、
車速及び加速度から前記内燃機関のトルク及び回転数を逆算するための駆動系モデルを記憶する駆動系モデル記憶手段と、
前記内燃機関のトルク及び回転数に燃料消費量を関連付けたマップデータを記憶するマップデータ記憶手段と、
前記内燃機関の実際の制御結果に基づいて前記マップデータを更新するマップデータ更新手段と、
車速で定義された診断用の走行パターンを取得する走行パターン取得手段と、
前記走行パターンで車両を走行させた場合の前記内燃機関のトルク及び回転数の変化を前記駆動系モデルによって計算し、その計算結果と前記マップデータとを用いて前記走行パターンで車両を走行させた場合の燃費を算出する燃費算出手段と、
を備えることを特徴としている。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、
前記駆動系モデル記憶手段は、前記駆動系モデルを構成する係数或いは定数のうち、前記車両の諸元に関する係数或いは定数の書き換えが可能であることを特徴としている。
【0008】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記マップデータ更新手段は、燃料消費量、回転数及びトルクの各実際値を用いて前記マップデータを更新することを特徴としている。
【0009】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、
前記マップデータ更新手段は、燃料消費量及び回転数の各実際値と要求トルクとを用いて前記マップデータを更新することを特徴としている。
【0010】
第5の発明は、第1又は第2の発明において、
前記マップデータ更新手段は、燃料消費量及び回転数の各実際値と前記内燃機関の運転状態から推定される推定トルクとを用いて前記マップデータを更新することを特徴としている。
【0011】
第6の発明は、第5の発明において、
前記マップデータ更新手段は、筒内圧センサによって計測される筒内圧から推定トルクを算出することを特徴としている。
【0012】
第7の発明は、第1乃至第6の何れか1つの発明において、
前記燃費算出手段による算出結果と所定の基準値とを比較し、前記算出結果が前記基準値に対して悪化している場合には警告を発する警告手段をさらに備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、診断用の走行パターンで車両を走行させた場合の内燃機関のトルク及び回転数の変化が駆動系モデルによって計算され、その計算結果とトルク及び回転数に燃料消費量を関連付けたマップデータとを用いて燃費が計算される。このようにして計算された燃費は、駆動系モデルで定義された所定条件のもと診断用走行パターンで車両を走行させた場合の燃費であって、車両の使用条件やドライバの運転状態の影響は受けていない。しかも、前記マップデータは内燃機関の実際の制御結果に基づいて更新されるので、車両そのものの状態、特に、内燃機関の状態は燃費の計算結果に着実に反映されている。第1の発明によれば、運転状態や使用条件が燃費に与える影響を排除して車両そのものの状態によって決まる燃費を計算することができ、その計算結果に基づいて公平に車両を診断することができる。
【0014】
第2の発明によれば、計測される車両の状態に応じて車両の諸元に関する係数或いは定数を書き換えることによって、車両そのものの状態によって決まる燃費をより正確に計算することができる。
【0015】
第3の発明によれば、マップデータの更新に燃料消費量、回転数及びトルクの各実際値を用いることで、内燃機関の状態をマップデータに着実に反映させることができる。
【0016】
第4の発明によれば、マップデータの更新に燃料消費量及び回転数の各実際値と要求トルクとを用いることで、トルクを実測する手段を有しない場合であっても、内燃機関の状態をマップデータに着実に反映させることができる。
【0017】
第5の発明によれば、マップデータの更新に燃料消費量及び回転数の各実際値と内燃機関の運転状態から推定される推定トルクとを用いることで、トルクを実測する手段を有しない場合であっても、内燃機関の状態をマップデータに着実に反映させることができる。
【0018】
第6の発明によれば、筒内圧センサによって計測される筒内圧を用いることで、高い精度でトルクを推定することができる。
【0019】
第7の発明によれば、燃費が悪化したときには警告が発せられるので、車両のドライバや使用者に対して車両の点検・整備を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図5を参照して説明する。
【0021】
本実施の形態において診断対象となる車両は、内燃機関(以下、単にエンジンという)によって駆動される車両であり、また、駆動系に手動変速機或いは電磁クラッチ式の自動変速機を有する車両である。エンジンの種類に限定はない。本実施の形態の診断装置は、このような車両に備えられる制御装置の一機能として実現される。車両の制御装置が診断装置として機能した場合の構成をブロック図で示したものが図1である。図1に示す構成は、制御装置のメモリに格納されたプログラムに従い制御装置のCPUが動作することで仮想的に実現される構成である。
【0022】
図1に示すように、診断装置は5つの要素2,4,6,8,10から構成されている。診断装置を構成する要素の一つが、診断用の走行モードデータを記憶した走行モードデータ記憶部2である。走行モードデータは診断用の走行パターンを車速で定義したものであって、グラフで表すと図2のようになる。走行パターンの具体例としては、10・15モードや米国LA4モードで規定された走行パターンを挙げることができる。走行モードデータ記憶部2に記憶されている走行モードデータは外部からの書き換えが可能になっている。
【0023】
診断装置の構成要素には燃費計算部4が含まれる。燃費計算部4は燃費モデルを用いて車両の燃費を計算する。燃費モデルは走行モードデータから燃費を計算するための計算モデルである。以下、燃費モデルで算出される燃費X[km/l]をモード燃費という。燃費モデルは駆動系モデルと燃料消費マップとから構成されている。図3は駆動系モデルの概念図である。この図に示すように、駆動系モデルはエンジンからタイヤまでのトルク及び回転の伝達特性をモデル化したものである。この駆動系モデルを逆方向から計算することで、走行モードデータからエンジン回転数Ne及びトルクTeを逆算することができる。燃料消費マップには、エンジン回転数Ne[rpm]及びトルクTe[Nm]に燃料消費量q[g/s]が関連付けられている。駆動系モデル及び燃料消費マップを用いたモード燃費Xの計算方法については追って詳細に説明する。
【0024】
診断装置はその構成要素として燃費OBD部6を備えている。燃費OBD部6は、燃費モデルを用いて計算されたモード燃費によって燃費診断を行う。そして、燃費診断の結果に基づき、図示しない車室内の警告ランプを用いてドライバ或いは使用者への警告を行う。診断装置による燃費診断の詳しい流れについては後述する。
【0025】
また、診断装置の構成要素にはマップデータ学習部8が含まれる。マップデータ学習部8は、内燃機関の実際の制御結果に基づいてエンジン回転数及びトルクと燃料消費量との関係を学習し、その学習結果に基づいて所定の更新周期で燃料消費マップを更新する。ただし、マップデータ学習部8による学習が行われるのは、エンジンが通常の制御状態にある場合に限られる。通常の制御状態とは、冷間始動時の触媒暖機運転や触媒再生のためのリッチスパイクといった特別な制御が行われていない状態を意味する。学習に用いられる情報は、エンジン回転数に関してはクランク角センサによって計測される実際値であり、燃料消費量に関しては燃料噴射量から計算される実際値である。トルクに関しては、トルクセンサを備えるエンジンであれば、トルクセンサによって計測される実際値を用いることができる。トルクセンサを備えていないエンジンでは、筒内圧センサ(CPS)が何れかの気筒に備えられていれば、筒内圧に基づいて計算される推定トルクを用いることができる。また、トルクセンサも筒内圧センサも備えていないエンジンでは、吸入空気量、点火時期及び空燃比に基づいて計算した推定トルクを用いるか、或いは、アクセル操作量等から計算される要求トルクを用いることができる。
【0026】
さらに、診断装置はその構成要素としてモデルデータ入力部10を備えている。駆動系モデルを構成する各種のデータ、具体的には車重やタイヤ径等の車両諸元、転がり摩擦係数等の各種の損失係数、変速機の変速パターン等のデータは、このモデルデータ入力部10から入力することができる。例えば、タイヤ交換によってタイヤ径や転がり摩擦係数が変化した場合には、駆動系モデルのデータも書き換えることで、駆動系モデルを実車に合わせた最新のものに更新することができる。
【0027】
次に、本実施の形態の診断装置による燃費診断の手順について図4のフローチャートを用いて説明する。図4に示すように、燃費診断の最初のステップS2では、燃費計算部4により燃費モデルを用いたモード燃費Xの計算が行われる。このステップの処理は比較的長い所定の周期で、或いは、エンジン始動時等の所定のタイミングで実行される。燃費モデルによる具体的な燃費計算の手順については後述する。
【0028】
次のステップS4では、燃費OBD部6による判定が行なわれる。燃費OBD部6は、燃費計算部4で算出されたモード燃費Xに関して、次の関係が成り立つかどうか判定する。Xiniは基準値であって、カタログ値や新車時の計測値が用いられる。aは1よりも小さい値の係数である。aの値は、少なくとも以下の関係が成り立っている間は、車両そのものに燃費上の問題はないと判断できるような値に設定されている。
X>a・Xini
【0029】
上記の関係が成り立っている間は、ステップS2の処理とステップS4の判定とが繰り返し行われる。
【0030】
上記の関係が成り立たなくなった場合、すなわち、モード燃費Xが許容値を超えて悪化した場合には、燃費OBD部6によってステップS6の処理が実行される。燃費OBD部6は、車室内、例えば、インパネ上の警告ランプを点灯或いは点滅させることにより運転者に対して警告を発する。
【0031】
次に説明するように、燃費モデルを用いて算出されるモード燃費は、車両そのものの状態によって決まる燃費であり、車両の使用状態やドライバの運転状態の影響を受けていない公平な燃費の評価指標である。したがって、モード燃費が悪化したということは、車両に何らかの問題が生じている可能性がある。本実施の形態の診断装置によれば、燃費診断の結果、モード燃費が悪化していることが判明したときには警告が発せられるので、ドライバに対して車両の点検・整備を促すことができる。
【0032】
図5は、ステップS2において燃費計算部4により実行される燃費計算の手順を示すフローチャートである。図5に示すように、ステップS2の処理はステップS202からステップS214までの処理によって成り立っている。前述のように燃費モデルは駆動系モデルと燃料消費マップとから構成されているが、ステップS202からステップS210までの処理が駆動系モデルによる演算であり、燃料消費マップはステップS212の処理に用いられる。
【0033】
燃費計算の最初のステップS202では、走行モードデータ記憶部2から燃費計算部4に走行モードデータが読み込まれる。燃費計算部4は走行モードデータから車速V[m/s]を取得し、車速Vから加速度α[m/s]を算出する。詳しくは、走行モードデータで規定される走行パターンの開始から終了まで所定の時間間隔(例えば1秒間隔)で車速Vを取得する。そして、取得した車速Vから前記の時間間隔で加速度α[m/s]を算出する。
【0034】
次のステップS204では、燃費計算部4は車速V及び加速度αに基づいて走行抵抗Rall[N]を算出する。走行抵抗Rallは以下の式に示すように空気抵抗Rairと転がり抵抗Rrollの和として算出することができる。
all=Rair+Rroll
【0035】
各抵抗値Rair,Rrollは予め実験により予め実験によって作成したマップによって、或いは、物理式を用いて算出される。それらマップや物理式は駆動系モデルの一部を構成している。また、計算に用いられる係数や定数のうち、車重やタイヤの転がり摩擦係数といった車両の状態によって変化しうるものについては、モデルデータ入力部10を介して書き換えることができる。
【0036】
次のステップS206では、燃費計算部4は以下の式によって車速Vからタイヤ回転数Na[rpm]を算出し、また、走行抵抗RallからタイヤトルクTa[Nm]を算出する。ここでRはタイヤの有効半径であって、これもモデルデータ入力部10を介して書き換えることができる。
Na=V/(2・π・R)
Ta=Rall・R
【0037】
次のステップS208では、燃費計算部4は以下の式によってタイヤ回転数Naからプロペラシャフト回転数Np[rpm]を算出し、また、タイヤトルクTaからプロペラシャフトトルクTp[Nm]を算出する。ここでiはデファレンシャルギア(D/F)のデフ比であり、ΔTはD/Fにおけるトルク損失である。ΔTの値は物理式、或いは、予め実験によって作成したマップによって算出される。
Np=Na・i
Tp=Ta/i+ΔT
【0038】
次のステップS210では、燃費計算部4は以下の式によってプロペラシャフト回転数Npからエンジン回転数Ne[rpm]を算出し、また、プロペラシャフトトルクTpからエンジントルクTe[Nm]を算出する。ここでiはトランスミッション(T/M)のギヤ比であり、Iはエンジン慣性モーメントである。本実施の形態ではトランスミッションは手動である。ギヤ比iの値は予め設定された変速パターンに従い決定される。この変速パターンは、トランスミッションが電磁クラッチ式の自動変速機であれば、その制御に使用されている変速パターンであり、トランスミッションが手動変速機であれば、燃費上最適と考えられる仮想の変速パターンである。変速パターンも駆動系モデルの一部を構成している。ΔTはT/Mにおけるトルク損失で、ΔTはエンジン(Eng)におけるトルク損失である。ΔT,ΔTの各値は物理式、或いは、予め実験によって作成したマップによって算出される。
Ne=Np・i
Te=Tp/i+ΔT+ΔT+I・i・i・α/R
【0039】
ステップS202からステップS210までの処理により、走行モードデータによって規定される走行パターンで車両を走行させた場合のエンジントルクTe及びエンジン回転数Neがそれぞれ所定の時間間隔で算出される。次のステップS212では、燃費計算部2はステップS210の計算結果を燃料消費マップに当てはめ、走行モードデータで規定される走行パターンの開始から終了までの所定時間間隔毎(ここでは1秒毎)の燃料消費量q[g/s]を算出する。
【0040】
最後のステップS214では、燃費計算部2は、以下の式に示すように車速Vの時間積分値と燃料消費量qの時間積分値とを用いてモード燃費Xを算出する。各時間積分の積分区間は走行モードデータで規定される走行パターンの開始時点から終了時点までである。下式におけるρは燃料密度である。
X=ρ・∫Vdt/∫qdt×10
【0041】
上述のように、本実施の形態の診断装置は、診断用の走行パターンで車両を走行させた場合のエンジントルク及びエンジン回転数の変化を駆動系モデルによって計算し、その計算結果と燃料消費マップとを用いて車両のモード燃費を計算する。本実施の形態の診断装置によって算出されるモード燃費は、駆動系モデルで定義された所定条件のもと診断用の走行パターンで車両を走行させた場合の燃費であるので、車両の使用条件やドライバの運転状態の影響を受けることはない。しかも、燃料消費マップのデータはマップデータ学習部8によってエンジンの実際の制御結果に基づいて更新されることから、車両そのものの状態、特に、エンジンの状態はモード燃費の計算結果に着実に反映されている。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明はトルコン式の自動変速機を備えた車両にも適用することができる。その場合、図5のフローチャートにおけるステップS210の処理を図6のフローチャートに示すステップS220,S222,S224及びS226の処理に置き換えればよい。
【0043】
図6のフローチャートについて説明する。ステップS220では、プロペラシャフト回転数Np及びプロペラシャフトトルクTpに基づいてトルコン回転数Nc及びトルコントルクTcが算出される。この計算にはトルコンの伝達特性を物理式、実験式或いはマップなどによってモデル化したトルコンモデルが用いられる。ステップS222では、トルコン回転数Nc及びトルコントルクTcからエンジン回転数Ne及びエンジントルクTeが算出される。
【0044】
トルコン回転数Nc及びトルコントルクTcの計算にはトランスミッションのギヤ比iが必要となるが、その決定はシフトポジションにしたがって行われる。シフトポジションの選択はステップS226で行われる。ステップS226では、ステップS224で算出されるスロットル開度θにしたがってシフト線図よりシフトポジションが選択される。ステップS224では、ステップS222で算出されたエンジン回転数Ne及びエンジントルクTeに基づき、予め用意されたマップからスロットル開度θが決定される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態としての車両の診断装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる診断用走行パターンの一例を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態にかかる駆動系モデルの概念図である。
【図4】本発明の実施の形態において実施される燃費診断の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態において実施される燃費計算の手順の流れを示すフローチャートである。
【図6】トルコン式自動変速機を備えた車両に本発明を適用する場合の燃費計算の手順の一部を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
2 走行モードデータ記憶部
4 燃費計算部
6 燃費OBD部
8 マップデータ学習部
10 モデルデータ入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関によって駆動される車両の診断装置であって、
車速及び加速度から前記内燃機関のトルク及び回転数を逆算するための駆動系モデルを記憶する駆動系モデル記憶手段と、
前記内燃機関のトルク及び回転数に燃料消費量を関連付けたマップデータを記憶するマップデータ記憶手段と、
前記内燃機関の実際の制御結果に基づいて前記マップデータを更新するマップデータ更新手段と、
車速で定義された診断用の走行パターンを取得する走行パターン取得手段と、
前記走行パターンで車両を走行させた場合の前記内燃機関のトルク及び回転数の変化を前記駆動系モデルによって計算し、その計算結果と前記マップデータとを用いて前記走行パターンで車両を走行させた場合の燃費を算出する燃費算出手段と、
を備えることを特徴とする車両の診断装置。
【請求項2】
前記駆動系モデル記憶手段は、前記駆動系モデルを構成する係数或いは定数のうち、前記車両の諸元に関する係数或いは定数の書き換えが可能であることを特徴とする請求項1記載の車両の診断装置。
【請求項3】
前記マップデータ更新手段は、燃料消費量、回転数及びトルクの各実際値を用いて前記マップデータを更新することを特徴とする請求項1又は2記載の車両の診断装置。
【請求項4】
前記マップデータ更新手段は、燃料消費量及び回転数の各実際値と要求トルクとを用いて前記マップデータを更新することを特徴とする請求項1又は2記載の車両の診断装置。
【請求項5】
前記マップデータ更新手段は、燃料消費量及び回転数の各実際値と前記内燃機関の運転状態から推定される推定トルクとを用いて前記マップデータを更新することを特徴とする請求項1又は2記載の車両の診断装置。
【請求項6】
前記マップデータ更新手段は、筒内圧センサによって計測される筒内圧から推定トルクを算出することを特徴とする請求項5記載の車両の診断装置。
【請求項7】
前記燃費算出手段による算出値と所定の基準値とを比較し、前記算出値が前記基準値に対して悪化している場合には警告を発する警告手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両の診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−151021(P2010−151021A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329685(P2008−329685)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】